勇者パーティに全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

【第一話】 ようやく役目が終わった。
今迄の辛い旅がいよいよ終わる。

俺は『英雄』として今迄、勇者パーティーの導き役として引っ張ってきた。

2年間に渡る、長き戦いの末にようやく魔王城へとたどり着いた。

異世界から来た勇者 礼二

聖女 ソラ

賢者 ルリ

剣聖 ジェイク

この4人を導き、戦いを有利に進める事が、この俺『英雄 セレナ』の仕事だった。

英雄と聞けばカッコ良いと思うかも知れないが実際は違う。

魔王相手に対抗できるジョブは『勇者.聖女.賢者.剣聖』の四職だけで、他のジョブの人間では相対出来ないと言われている。

俺のジョブ、英雄も貴重なジョブでこの世に1人しかいない、だが四職と比べたら霞んでしまう。

更に言うなら、英雄は『対人補正』は強いが『魔族相手には大した補正が掛からない』その為、魔物や魔族相手の戦闘では一歩及ばない。

その為、戦闘には殆ど参加しない。

だから、宿の手配や勇者パーティーが必要な物の調達。

それが俺の仕事だ。

そして『人間の世界で勇者パーティー』を守るのも仕事だ。

そして、今は魔王城の近くの森、俺の役目はようやく終わりを告げようとしていた。

【第二話】 裏切られて
「それでは、勇者礼二様、聖女ソラ様、賢者ルリ様、剣聖ジェイク様、此処で私は失礼します」

「ご苦労だったなセレナ、それじゃあな」

「お元気で」

「それじゃぁね」

「達者でな」

俺は勇者パーティーに背を向けて立ち去ろうと歩き始めた。

「ファイヤーボール !」

いきなり、賢者のリルが魔法を放ってきた。

そして、それに合わせるように、勇者の礼二と剣聖ジェイクが斬りかかってきた。

「いきなり何をするんだーーーっ」

「セレナーーっ、お前に生きていられると困るんだよ! 魔王を倒す前にお前を殺す」

「そうだな、お前さえ死ねば『誰も俺たちの悪事』は知られる事は無い」

「そうね、聖女の私からしても傷物の勇者は困るのよね」

「私もね」

「そうか、だから俺を殺そうと思うのか」

「そうだ」

まさかここ迄腐っているとは思わなかった。

はっきり言わして貰えれば『こいつ等勇者パーティーはゴミだった』

平気で物は盗もうとする、逆らえば暴力を振るいかねない、最低の人間だった。

俺はこいつ等を引率する様な立場だから、その都度たしなめていた。

恐らく、俺が居なければ、此奴らは此処に来るまでに『人殺し』や『盗み』『暴行』『辱め』をしかねなかった。

俺が甘すぎたのか?

『世界を救う為に戦うのだから』そう思い、ただ窘めるだけで留めた。

「これから、魔王と戦うのだろう、それに集中した方が良いんじゃないか? それに魔王さえ倒せば、莫大な報奨金が貰える、一生楽しく暮らせるのだろうがーーーっ」

「確かにそうだ、だがお前が生きていると目障りだ」

「そうだな、俺たちの本性を知っている、お前が邪魔だ」

「勇者に剣聖のお前達は、魔王を倒せば王家や貴族との婚姻も思いのまま、もう幸せが約束されているじゃないか?」

「だからこそ、汚点を知っているお前が邪魔だ」

「ならば、一筆書けば良いだけだ『セレナは使えない』そう手紙を書けば、俺は国を出て帝国にでも行く」

「お前は英雄で王の信頼もあるのだろう…無理だ、死んで貰う」

俺はこいつ等と戦いたくない、此奴らはこの後魔王と戦う、その時に万全の状態で戦って貰わなくてはならない。

「そうか、ならば仕方無い」

だが、こんな馬鹿な理由で死ぬのは馬鹿らしい。

出来るだけ怪我をさせないように、倒すしかないだろう。

【第三話】引き摺り込まれる。

『出来るだけ怪我させないように倒す』

そんな事は不可能に近い。

相手は、魔王を倒す為に召喚された勇者、この世界で最強の存在とその仲間。

女神から力を貰っている存在…

そして、その仲間の3人、どうやったら勝てると言うのだろうか。

それに対して『俺が有利なのは1つ』対人補正だ。

つまり『英雄』が唯一有利なのは『相手が人』の場合、戦闘力が増す。

これは『勇者が魔王を倒す存在』なのに対して『英雄は人間の悪』を倒すからだ。

「こっちは4人、向こうは1人だ、何をぐずぐずしている」

「そうだな、一瞬でかたずける、ソニックブレード」

ジェイクの音速の剣が迫ってくる。

どうにかかわしたが、掠っただけで肉がえぐれる。

「オラよ!相手は一人じゃねーんだよ」

礼二が普通に斬りかかってきた。

「うぐっ」

流石は、勇者パーティーだ連携が凄く出来ている。

『腐っても』そういう事だ。

このまま戦っていて良いのだろうか?

此処はもう、魔王城の目と鼻の先だ…俺が抵抗すればするほど『勇者パーティーは弱体する』

どうすれば良いんだ…

死にたくはない、だが…俺が抵抗すれば、する程、勇者達の力は弱くなる。

「フレイムアローーーーッ」

リル、魔法はつかうんじゃねーよ。

魔王と戦う時に…魔力が尽きたら、どうするんだ!

「待て、そんなに魔力を使って、どうするんだ、例え俺に勝てても魔王に勝てないじゃ無いか?」

「それは貴方が考える事じゃないですわね、ですが、どうせ貴方は終わりですから教えて差し上げましょう…私達は魔王を倒す宝具を手に入れたからですね、だから此処で多少消耗しても大丈夫なのですわ」

ソラが言う事だ嘘は無いんだろう。

「そうだ、これは魔族、人間に問わず、地獄へ落とす宝具だ、これがあれば負ける事は無い」

地獄? 地獄ってなんだ?

「地獄って言うのは何だ?」

「ハァ~この世界の人間は地獄を知らないのか? 人間を拷問し続ける鬼、まぁ悪魔が住んでいる場所さぁ~ まさか異世界にこんな物があるなんて思わなかったが」

「そうか、ならば、俺は…」

よく考えれば、俺が逃げれば良いだけじゃないか?

此奴らは、今此処を離れたら、再び魔王城に攻め込むチャンスを無くす。

そう考えれば、此処を離れられない。

ならば、俺は戦う必要もない。

勇者法も適用されない国迄逃げれば良い。

勇者の力が及ばない国まで逃げれば良い。

それだけだ。

俺は『逃げる』事にした。

ただ、4人の前から姿を消せば良い。

そう思い、踵を返して逃げようとするとジェイクが回り込んできた。

「おっと、そう簡単に逃がさないぜ」

くそっ、流石は剣聖、しつこい位に回り込んでくる。

相手には聖女が居て、確実に魔王に勝つ手段があるなら、多少の怪我をさせても良いだろう。

「仕方ない、ならこちらもいかせて貰う」

俺はタイミングを合わせて、斬り込んでいった。

狙いは相手の手首だ。

どんな剣の達人でも手が無ければ剣をふれない。

そして、斬り合いの中で一番最初に間合いに入るのは手だ。

ジェイクの剣が明らかに俺の首に対して垂直に振られた一瞬に内側に入り込み手首の内側に刃を向ける。

そのままジェイクの手首は俺の剣に自らぶつかり、手首ごと剣は中に舞った。

そして更に踏み込みジェイクの目に斬りつけた。

眼球を切り裂いたが…問題無い。

「俺の手がああああーーーっ、目が見えねーっ」

叫んでいるが問題無い。

相手には、聖女ソラが居る…殺しさえしなければ治せる。

「貴様ーーーっよくも、ジェイクをーーっ」

勇者が怖いのは魔法と剣を使い…更に絶望しない強い心を持っているからだ。

つまり、剣だけならジェイクに劣る。

しかも、かなり怒っているのか、剣筋が単調だ。

思いっきり剣を振り上げ、頭に剣を落とした。

これで、恐らく暫く動けないだろう。

さぁ…ずらかろう。

「うっうううっ..ルリ、宝具を使えーーーっ」

「ですが、これは魔王討伐に…」

「一回で壊れる様な物じゃない、良いから使えーーっ」

宝具だと…不味い。

それは魔王討伐に必要な物だ。

「待て、降参する」

「もう、遅い」

「開きなさい、地獄の門よ…かの者を我の名に置いて地獄に引きずり込め、インフェルノゲート!」

目の前に大きな顔が付いた扉が現れて開いていく。

なんだ、この禍々しい門は…

門はゆっくりと開いていき、そこから無数の黒い手が出て来た。

ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ…流石は魔王を倒す為の宝具…これは、駄目だ。

俺は黒い手から逃げようとしたが無駄だった。

手は剣では斬れなかった。

そのまま手で引きずられて、門に引き込まれる最中に俺が見た物は…宝具が粉々に割れて驚いている、賢者リルの顔だった。

【閑話】欲望の勇者

「嘘、インフェルノゲートって使い捨てだったの?」

「おい、礼二やばく無いか? これが無ければ魔王に勝てる保証はない」

彼等の前には地獄の門を開く宝具、インフェルノゲートが粉々になって落ちていた。

「そうだな、だが、これであの邪魔者のセレナが居なくなった、もう俺たちに文句を言う人間はいない」

「そうよね、本当に彼奴は煩かったわね、『魔王と戦うの止める』っていつか言ってやろうかと思ったわ」

「教会所属の聖女がそれを言っちゃ駄目じゃないか」

「そういう礼二こそ、勇者の癖に、色々とやらかしそうになっていたじゃない?」

「はんっ、俺は勇者だぜ、俺が戦わないと世界が困るなら、世界は俺に対して恩を返すべきだな…『金』『女』そんな物全部寄こせってーの…世界だぜ、世界に比べたら女の100や200笑いながら寄こせよな」

「それは俺も同感だな、俺たちが救ってきた数、これから救う数、それに比べたら、その位当たり前だ…万の人間を救うんだ、ならば良いよな、それ位」

「ジェイク、その通りだ」

「あんた達の言っている事はクズだけど間違ってないわ、私はアンタ達みたいな欲は無いけどさぁ、アカデミー出身だから良く解るわ、1人の犠牲で沢山の命が救えるなら、躊躇する必要は無いわ」

「ルリ、貴方は実験材料を取り上げられて腹が立っているだけでしょう?」

「新しい魔法の研究に『犠牲は必要よ』 魔王と戦ってやるんだから人間をその効果の実験に使っても良いでしょう?」

「その通りだ」

「所で、礼二、俺はお前が言う『地獄』って言うのを知らない…何だそれは」

「そうよ、賢者の私も知らないわ」

「教会でも聞いた事はありません、どのような所なのでしょうか?」

「俺も詳しくは知らない、ただ俺が居た日本という国には、悪い人間が死んだあとに送られる場所があって、そこでは毎日の様に拷問が行われている」

「拷問? だがセレナは英雄だぜ、逃げ出すんじゃねーか」

「あのよ、そうだなオーガを思い出せ…アレの数十倍怖え奴が億単位で生活して、たえず休む間も無く『拷問』をするんだ、幾ら彼奴でも逃げられないな」

「その様な恐ろしい世界があったのですか」

「俺も空想だと思っていたが、本当にあるとは思っていなかった…あそこに落ちたら、魔王だろうが、最早終わりだ」

魔王も強いかも知れないが…地獄にいったら、多分上が居る筈だ。

そんな場所にセレナの奴は落ちた。

彼奴が桃太郎でもない限り『鬼』には勝てる道理はない。

「それはそうと、これから俺たちはどうするんだ?」

「サクッと魔王を倒して凱旋して好き放題しようぜ、もう止める奴はいねーし、その実績があれば『何でも許して貰える』だろう」

「そうだな、礼二、サクッと行くか」

「そうですわね…行きましょう」

「いきますか」

欲望にまみれた勇者達は、そのまま魔王城に向っていった。

【第四話】落ちた先で
此処は一体何なんだ?

ただひたすらに落ちていく。

手に絡み取られたからどの位の時間が過ぎたのだろうか?

全く解らない。

だが少なくとも1時間や2時間なんて単位じゃない。

更に1日、2日という単位ですら無いと思う。

『水が欲しい』

『腹が減った』

そういう状態に陥るが…まだ落ちていく。

最早、死んでいるのか、生きているのかすら解らないが…どの位落ち続けているのだろうか?

1年?

10年?

100年?

それ以上なのか?

この穴はどれ位深いのだろうか?

此処までたっているのにいっこうに底につく感じがしない。

まさか、無間に落ち続ける、そういう宝具なのか?

恐ろしい『空歩』(空中を歩くスキル)を使っても落下が終わらない。

これじゃ、もし飛行魔法を使えても無駄な気がする。

とてつもない時間落ち続け…俺はようやく地面に着いた。

勿論、そんな高さから落ちて来たから、肉の塊みたいになって爆ぜた。

だが、可笑しい…確実に死んだ、そう思ったのに、暫くしたら体が元に戻っている。

その代り、今度は体の至る所から黒い炎が噴き出した。

「ああああーーーーっ熱い…水、誰か助けてくれーーーーっ」

昔、ファイヤーボールを喰らって死に掛けた事があるがそれの非ではない。

体が内側から焼き尽くされる、そんな気がする。

「助けて、助けてくれーーーーっ」

転がりながら叫んでいると、人影が見えた。

「助けて下さい」

そう言ったが…その先に居たのは…オーガすら子供に見える程の大柄な化け物だった。

頭には角が生えている。

「あん! 亡者か」

「此処は何処ですか? 助けて下さい….」

この時の俺は血迷っていたんだと思う。

目の前の化け物に助けを求めていたんだから…

「此処は無間地獄で俺は鬼だ」

そう言いながら、手に持っていた金属の棍棒で俺を殴り始めた。

「うわぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ、たす…けて」

幾ら謝ろうが、何をしても許してくれない。

だが…

可笑しい、全身が千切れて、まるでひき肉になっているのに…何故死なないんだ。

そして、鬼が立ち去り、肉片になった状態だった俺が…嘘だろう、体が復活するなんて。

俺は一体どうなっているんだ。

【第五話】 此処には希望も救いも無い

さっきの『鬼』という化け物はなんだ?

何をしても勝てそうな気がしない。

今迄、俺があった最大の敵は魔王軍の幹部クラスだが…そんなのは比ではない。

恐らく魔王ですら歯が立たない可能性がある。

だが…嘘だろう? あんな化け物の個体が1体だけじゃないなんて。

とっさに隠れたが、見つかったらさっきと同じ目にあわされる。

此処では食料は手に入らない。

水も手に入らない。

此処に来てから『飢え』と『水が欲しい』この二つしか考えられない。

はぁはぁ…助けてくれ…

暫く歩くと…嘘だろう、あの『鬼』という化け物は1体2体じゃない…数えきれない位居た。

しかも、人間らしき者を見つけてはいたぶっている。

セレナはついて無かったのかも知れない。

もし、彼が『英雄』以外のジョブ、例えば『魔法剣士』なら逃げただろう。

だが、『英雄』と言うのは違う、人類の希望であり『人々を救う』そんな面がある。

だから『苦しめられている人々』を見捨てる事が出来ない。

【行くしかない】

セレナの体に宿ったジョブが『人々を救え』そう語りかけてきた。

そのままセレナは突っ込んでいった。

「お前等、此処は俺に任せて逃げるんだ」

だが、誰もが動かない。

セレナがどんな人間かは解らない。

だが『勝てない』その現実だけは知っていた。

「亡者が俺たちをどうにか出来るつもりか?」

「あははははっ、まだ此処に来て間もない亡者か? お前が生前何者であっても俺たち『鬼』には敵わない」

「確かにそうだろう…だが俺はこれでも『英雄セレナ』と呼ばれた男だ、捨て置けない…行くぞ」

セレナはスキルで剣を作り出して鬼に斬りかかった。

セレナのスキル『武器創造』 これは今迄に自分の見た武器を複製できるものだ。

最もあくまで対人用、聖剣や魔剣等は複製出来ない。

鬼は一瞬驚いた顔をした。

「貴様、いったい何者だ…地獄には武器は持ち込めない筈だ」

「人間ではないのか?」

「お前等、俺がこの鬼たちを相手する、早く逃げるんだーーーっ」

亡者たちは一目散に逃げだした。

『これで良い…これで良いんだ』

「なんだ、お前、斬りに来ないのか?」

「うんっどうした、来ないならこちらから行くぞ」

最早これまでだ…30近い鬼に囲まれている。

どうやっても逃げるのは無理だな。

俺がそう考えていると…1体の鬼が金棒を振り上げ俺に攻撃してきた。

せめて1体だけでも、そう思い剣を振るったが、剣は鬼を斬る事が敵わず折れた。

そして金棒は俺の頭に振り下げられた。

その後はひたすらミンチになるだけだった。

「うがぁぁぁぁぁぁーーーーーっ」

命乞いは無駄だ。

「貴様、いつか、いつか殺してやるぞーーーっ」

「あのよ、お前は亡者で、俺たちは鬼、それが現実だ」

「….」

喋らないのでは無い、顔半分が潰れて喋れないのだ。

どの位の時間、潰され続けたのだろうか?

只の肉片になりそこから更に骨が砕ける位壊された。

一体この世界は何なんだ…そこ迄壊された俺の体が、また復活していた。

「武器創造ーーーっ槍」

俺は、槍を創造して、鬼の目を狙ってついた。

「嘘だろう…」

「馬鹿め、最初は神剣かと思い恐れたが、人間が使う武器では傷等つかない」

そこからは再度金棒で殴られ続けた。

だが、今度はミンチ状態になる前に鬼が話してきた。

「新しい亡者、あれを見ろ」

動けない体で鬼が指さす方を見た。

そこには、情けなく叫ぶ男が居た。

『俺と同じ亡者か? だが、態々あの男を見る必要が何故ある』

「時代が違うから見ただけじゃ解らねーのか? あの男の呼び名は『桃太郎』、どうだ名前位は聞いた事があるだろう?」

桃太郎? 桃太郎って誰だ。

「声も出ないか? 『日本一の桃太郎』それでも地獄じゃこのざまだ」

日本一? 解らない。

だが、何となく言っている事は解った。

多分、この男は有名な騎士とか英雄なのだろう…

それが無様に泣き叫び、赦しを請う姿を見せつけたいのだ。

『鬼」それが恐ろしい存在なのは解る。

有名な英雄がこのざまでは…

此処にはきっと…希望も救いも無いのかも知れない。

【第六話】 俺はやめない
『桃太郎』という存在について、他の亡者から聞いた。

なんでも桃から生まれた超人なのだそうだ。

昔し、老婆が川で選択をしていると大きな桃が流れてきたそうだ。

その桃を割って見ると、中から男の子が産まれた。

その男の子が桃太郎で、成長した桃太郎はやがて雉やサル犬を連れていき、鬼ヶ島に鬼退治に行く。

そして、鬼ヶ島の鬼を退治して宝物を巻き上げて村に帰ってきた。

そんな話だった。

『この話はまるで【勇者】の話しにそっくりだ』

召喚と桃の違い、鬼ヶ島と魔王城、鬼退治と魔王退治。

ほぼ似ている。

あそこで泣き喚いている男。

あれこそが、この世界の勇者だった男、そういう事か?

俺は桃太郎と呼ばれた男の傍にいき話し掛けた。

「おい、大丈夫か?」

「鬼、鬼怖いっーーーーーっ俺が悪かった助けてくれーーーーっ」

「おい、少し」

「嫌だ、嫌だぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ」

走って逃げてしまった。

「そこの若いの?」

「おれの事ですか?」

「そうじゃ、亡者でありながら『鬼』に戦いを挑むなんて奴は久しぶりに見たわ」

「そりゃどうも…」

「桃太郎な、幾ら話しても無駄じゃ、もう心が折れている」

「何があったんですか?」

その老人は桃太郎に何が起きたのか語り始めた。

桃太郎が地獄に来た時、多くの亡者は喜んだそうだ。

桃太郎は日本という国では知らない者はいない剣士だった。

『日本一』と名高い桃太郎、そして彼は『鬼退治』の第一人者だった。

それが地獄に来た。

『どうにかなるかも知れない』そう期待した。

桃太郎も此処に来た時はかなり勇ましかった。

武器は無い物の、彼はある物を利用して戦った。

だが…

「馬鹿な奴だ、此処は地獄、それも無間地獄なんだぜ」

「そうそう、鬼ヶ島? そんな所に居る鬼は落ちこぼれの中でも更に落ちこぼれ、地獄にすら居られない奴だ」

「まぁ『ただの人間』が落ちこぼれの鬼でも倒せれば自慢になるかな」

ただ、ただ俺と同じ様に肉塊になり、ミンチにされ続けた。

「ハァハァ…なんで、なんで僕の攻撃が効かないんだぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ」

「あのな、地獄って奴は下に行けば行くほど強い鬼が居るんだ、そして此処は最下層の無間地獄、落ちこぼれと一緒にされてもね」

「とはいえ、同族を殺されたんだ…ただで済むと思うなよ」

「そこからは『正に地獄』俺や他の亡者だってずうっと拷問されている訳じゃ無く、こう言う風に休む時間があるが桃太郎にはそういう時間が最近まで無かった…そして壊れたんだ」

「そうか…」

それじゃ仕方ないな。

「そういえば、貴方は名前は何ていうんだ」

「昔は、宮本武蔵と呼ばれたが、今はただの亡者じゃ…此処では名前なんて意味は無いさぁ…それでもお前はやるのか?」

「やる」

鬼がまたきた、休みの時間は終わったのだろう。

「武器創造ーーーっ剣」

ただ、ミンチにされるだけだが….俺は抵抗を止めない。

何度殺されようと、どれ程拷問をされようが『俺は英雄』抵抗は止めない。

【第七話】初めての勝利
他の亡者に無くて俺にだけあった物。

それはジョブとスキルだ。

『英雄』というジョブがこのどうしようもない逆境のなかで俺の心を支えた。

それと同時に、今の俺の周りには亡者が集まりつつあった。

それは、俺が鬼が現れると『1人で突っ込んで行く』からだ。

つまり、他の亡者からしたら『囮にして逃げられる』

いつの間にか俺は亡者の中では有名人になりつつあった。

「あの人…まだあきらめないないんだ」

「自分からミンチになりに行っているけど…大丈夫なのか?」

「あれこそが男の中の男だ」

娯楽の無い、地獄だからこそ『鬼と戦う亡者』の俺の話は話題になっていた。

ただ、向って行きミンチにされるだけ、その繰り返しだ。

この無間地獄において、そんな馬鹿な事をやっているのは俺だけだ。

他の亡者は『元強者』も含んで逃げている。

その結果、他の亡者たちは、暇な時間に色々と手ほどきをしてくれるようになった。

これが俺が学んだ『二天一流』だ、宮本武蔵と名乗る亡者からは2刀を使う剣技を習った。

佐々木小次郎と名乗る亡者から『巌流』という長剣を使う剣技を習い、奥義『燕返し』を学んだ。

「鬼が来たぞーっ」

「すまないな」

「後は頼んだ」

そう言いながら、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

まぁ結局は大半は捕まるのだが…それでも僅かな人間は逃げ延びる。

俺が突っ込むから、僅かながら逃げる時間が稼げた結果だ。

『武器創造…剣』

「行くぞ!」

「また貴様か? いい加減にしろ、鬼に亡者は勝てない」

「またお前か、凝りもせずに」

「行くぞ…」

はははっ『二天一流』も『巌流』も通用しない。

そして、いつもの様にただのミンチになる。

最早、数えきれない位、ミンチにされたせいか、痛みも余り感じなくなった。

俺のスキルにもしかしたら『痛覚無効』とかそんなスキルが宿ったのかも知れない。

本当の事は解らない。

だが、今の俺には『痛みが無い』だからかなり無茶が聞く。

ミンチになりながらも斬り続けた。

痛くないなら恐れる事は無い..ミンチにされながらも手を出し続けた。

そして、地獄の様な責めが無い時に、色々な亡者から技を教わった。

「儂の名前は塚原卜伝じゃ、鬼には通じなかったが教えてやるぞ『秘剣、一の太刀』じゃ」

「俺の名前は呂布奉先、槍の技を教えてやろう」

「恥ずかしい所を見せてしまった…『鬼』の斬り方を教えてやる、これでも桃太郎だからね…まぁ此処の鬼は斬れなかったけど」

どの位の月日がたったか解らない…とんでもない月日がたっている気がする。

恐らく信じられない位のスキルが身についていた。

だが、どれ程沢山のスキルを身に着けても『鬼は倒せないからレベルが上がらない』その結果、結局はやられっぱなしだった。

所が…長い年月毎日の様に責め苦を味わっているとチャンスが訪れた。

鬼同士も決して仲が良い訳でなく、稀に仲間同士で大きな喧嘩をしている。

その日は運が良かった。

かなり強い鬼にやられた小鬼が重傷の状態で歩いていた。

周りを見るが、他の鬼は居ない。

俺は『亡者たち』から教わった鬼の斬り方を試す事にした。

「武器創造…剣」

「貴様、何をする…殺してやる」

普段なら俺が作り出した剣じゃ鬼は斬れない。

だが、今の此奴は明らかに怪我をしていて肉が裂けている所がある。

全部の神経を集中して、その切口に突きを放った。

只の突きじゃない亡者の仲間から教わった『五月雨突き』

普段なら、俺の剣は鬼の固い皮膚や筋肉に阻まれて致命傷にならない。

だが…元々裂けていた場所に寸分たがわず打ち込んだ剣はそのまま鬼の体を貫通した。

「うわぁぁぁぁぁーーーーっ貴様」

鬼はあっけなく死んだ。

その瞬間…体に物凄い激痛が走った。

『痛覚無効』ですら痛いこの体の痛さ。

恐らく、とんでもないレベルでレベルが上がったのかも知れない。

激痛に耐え切れずに転がりながらも俺は、嬉しさを押さえきれずに笑った。

【第八話】 地獄の日々の終わり
まさか此処でレベルが上がるとは思わなかった。

これでようやくスタートに立てる。

「何か変わったような気がするな」

「実は死に掛けの『鬼』が居たのでどうにか倒したんです」

「それがどうかしたのか? 1匹倒した所で何も変わらないではないか」

「武蔵さん、変わりますよ」

「それは不味いのでは無いか?、桃太郎みたいに同族殺しとか言われて余計にいたぶられるのでは無いか?」

「呂布さん、俺は元からそんな物です」

「確かに変わらぬな、自分から何時も突っ込んで行くのだから」

「確かにそうだ、此奴は、いつもそれだ」

「卜伝さんに小次郎さん、言われて見ればそうですね」

「それでどう変わるんだ…俺みたいに恨まれるだけだろう」

「桃太郎さん、変わるじゃないですか」

話しが全然通じない。

話して見て解ったが、俺以外の人間にはレベルという概念が無いようだった。

無い物を説明しても仕方ない。

ただ、倒せばレベルが上がるならもう問題無い。

「鬼が来たぞー」

「任せておけーーーっ」

いつもの様に鬼が来た。

「なんだ、またおめーか?」

「また何時もどうりだ」

だが、今日からは違う。

「武器創造ーーっ…剣」

そのまま俺は何時もの様に突っ込んでいく。

そして、剣を思いっきり力任せに振り落とした。

何時もなら、このまま剣は通らないでただ撲殺されて終わった。

だが、沢山の技術や剣技はスキルになり身に着き、それがレベルが上がる事で開花した。

たった一匹の鬼…それを倒した事、その奇跡がセレナを変えた。

剣は鬼の肩をそのまま下まで切り裂いた、その状態で剣を跳ね上げる様に斬った。

燕返しにそれはよく似た剣技だった。

周りの鬼は驚きを隠しきれない。

今迄鬼に勝てるような亡者を見たことが無かった。

その驚いている瞬間に他の鬼も斬り捨てた。

斬れば斬る程に体が熱いくなり、レベルが上がっていくのが解る。

どの位強くなったのか解らない。

今ではもう鬼では歯が立たない位に強くなっていた。

だが、どんな強くなっても無間地獄から上に上がるのは膨大な月日が掛かりあがれないという。

今迄絶対強者だった鬼だったが、最早セレナには勝てないと解かり媚びる様になった。

そしてその結果…亡者も鬼も平和で暮らせるようになったが…体から出る火は消す事は出来なかった。

食料や水は手に入るが…鬼の食べている物は、人間界で食べている物には程御遠かった。

最早何もする事は無い。

亡者も鬼も揉める事無く生活している。

『上に登るとするか』

そう考えていると…1人の男に出会った、名前は『地蔵』と名乗った。

「お前亡者じゃないな? 何故こんな所にいるんだ」

俺は自分に起きた事を話した。

「成程、また凄い事になっておるな…良く只の人間が149京2203兆4400億年も心が壊れず耐えていた物じゃ…元の時代元の場所に送り届けてやろう…まぁ多少の時間の誤差は許してくれな」

「元の世界に戻してくれるのですか? 有難うございます」

「良いよ、どこぞの馬鹿が、生きたまま地獄に落とすなんて馬鹿をしたんじゃ、儂はそういう人間を助けるのが仕事じゃからな」

こうして俺の至極での辛い日々は突然終わった。

【第九話】魔王城

「此処は、あの時のあの場所なのか?」

目が覚めた俺の見た光景は魔王城近くの森だった。

俺は確か…地獄に落ちた筈。

自分の体は、元の様に見える。

だが、剣を振るって見ると、亡者に落ちた英雄たちが使っていた技がちゃんと使えた。

どうするべきか考え俺は魔王城に向う事にした。

魔王を倒す宝具を俺に使ってしまったからには『魔王』を倒せていない可能性が高い。

多分、今の俺なら相手が魔王だって恐れる事は無い。

そのまま魔王城に進み入っていく。

『何かが可笑しい』

魔王城に入るが、気のせいか魔王軍が殺気だっていない。

「貴様、此処は魔王城だぞ、直ぐに立ち去れ」

『立ち去れ?』可笑しい…何故斬り殺しに来ない。

だが、腑抜けているのは俺には好都合だ、ここは敵の本拠地だ。

『殺される前に殺す』

魔族相手に話す必要は無い…俺はそのまま斬りかかり殺した。

最早、魔族等簡単に倒せる。

自分でもどれだけ凄いのかすら最早解らない。

更に進むと騎士の様な姿をした魔族が居たが…問題無い。

「貴様、いったい何をしているんだ」

「人間が乱心したか?」

「今なら命までとらない投降しろ」

「問答無用だ、魔族は倒す」

「お前、何を言っているんだ? 馬鹿な冗談はよせ」

「乱心者だ捕らえろ」

「此奴ヤバイ奴だ…」

問答無用で俺は斬り殺した。

魔族が何か言っているが気にならない。

俺は『魔王を倒さない』といけない。

多分、勇者は破れた…勇者達は気に食わない。

だが『誰かが魔王を倒さない』といけない。

俺は確かに強くはなった。

だが、相手の数は多い。

だから油断せずに、素早く、最短で行かなくてはならない。

最早雑魚にしか過ぎない『魔族』を倒しながら突き進む。

余りレベルが上がらないから、恐らくそんなに強くは無いのだろう。

突き進むと一際大きな魔族が居た。

「久しいな、バルマン」

此奴は魔族四天王の1人【傲慢のバルマン】だ。

「貴様は、確か英雄セレナじゃないか? 死んだのでは無かったのか?」

何故こんなに油断しているのか解らない。

だが、こんなチャンスは無い。

武器創造で作った槍で呂布から教わった技で滅多つきをした。

鬼に比べたら遙かに脆いな。

簡単に穴だらけになった。

「貴様…何考えているんだ、もう…俺は」

「宿敵の俺を前に隙を作るなんて、愚かだなバルマン」

「卑怯者..狂人」

バルマンはそう言うと絶命した。

そのまま進んでいくといよいよ大きな扉があった。

いる、恐らく魔王がこの先に居る。

俺は扉をあけると、そこには魔王が居た。

確かに、昔の俺が見たら絶望を感じたかも知れない。

だが、今の俺には『そんな物は微塵も感じない』

「武器創造…聖剣クラソス(偽)」

俺はレベルが上がったせいで、武器創造のランクも上がったようだ。

今迄は、魔剣や聖剣を創造出来なかったが…今は出来る。

最も、恐らくは偽物なのだろう、本物には程遠い。

だが、それでも俺には充分だ。

「人間が何故此処にいる、迷い込んだのか、誰か」

俺は問答無用で斬りかかった。

滑り込む様に斬りかかり直前で跳ね上がった。

「奥義、一の太刀」

そのまま首を目指す…確かに固いが、鬼とは比べ物にならない。

そのまま剣は首に当たり、まるでバターでも切るかの様に魔王の首は斬れ滑り落ちた。

「人間とはここ迄卑怯な存在なのか…」

そういいいながら魔王は死んだ。

『卑怯』何を言っているか解らない。

沢山の魔族の足音が聞こえた。

魔族の四天王の1人バーバラの声と魔王子グルトンの声が聞こえる。

「お前…何故だーーーーっ」

「お父様は許されたのに…何で」

何を言っているのか解らない。

俺は魔王を倒す、勇者の導き手。

もし、勇者が魔王を倒せなかったなら、俺が倒す必要がある。

だが、虐殺は好まない。

もう、魔王は倒した…これで良い。

俺は敵陣を突破しながら魔王城を脱出した。

【第十話】七年 ?
魔王は倒した。

これで世の中も少しは平和になるかも知れない。

後は、王国に帰って様子を見るだけだ。

魔王が健在であったと言う事は『魔王』に勇者が負けた。

そういう事だ。

恐らく弱い者には地獄の様な光景が広がっているのかも知れない。

ならば…勇者達は最早死んでいる。

その可能性すらある。

そう思い王国に急ぎ帰ってみたのだが…

可笑しいな? 

門の所には普通に門番が立ち積み荷のチェックをしている。

『英雄』として入れば簡単に入れるが『何か様子が可笑しい』

だから、念の為俺は『英雄』の身分証明で無く冒険者証を使って入る事にした。

まぁいちいち細かく見たりしないだろうし大丈夫だろう。

しかし、やはり様子が可笑しい。

俺の方はばれない様に顔を伏せて口から下をマントで隠すようにしているが…見知った顔を見かけない。

俺はこれでも英雄だから、そこそこ顔は広い。

だが、此処の門番も周りの人間も顔見知りに今の所出会っていない。

俺の番になり、俺は冒険者証を見せた。

「随分と懐かしいタイプですね、もしかしてかなり田舎から来たのかな? 使えなくは無いけど、新しいタイプに変えた方が良いですよ? 今の物はペンダントタイプです」

「そうなのか?」

「はい、それでは王都へようこそ!」

しかし、不思議な事もあるもんだ、町並みは前と同じなのに何故か違和感がある。

知り合いによく似た人間は見かけるが、どう見てもかなり年上に見える。

友人や知り合いに似た顔だが、少し老けて見える。

親類かも知れないが、初対面の人間に挨拶されても困るかもかも知れない。

冒険者ギルドに顔を出した。

門番の言う通りなら、冒険者証を変えた方が良いだろう。

だが、随分と急な話しだな、そんな話は聞いた事が無い。

「すみません、冒険者証の更新をお願いしたいのですが」

「はい、ただ今」

「あらっ、セレナって死んでしまった英雄様と同じ名前ですね」

「よく言われます」

「ランクはA、凄いですね、直ぐに再発行…あら、貴方8年も依頼を受けていないんですね」

「そんな訳は、待って下さい、今は何年ですか?」

「今は王国歴397年ですが、本当に山にでも籠っていらしたんですか?」

嘘だろう、あれから7年もたっていたんだ…と言う事は今迄見た知り合いに似た人間は全部『知り合い』だったのか。

7年経った、そういう目で見れば…顔見知りが何人かはいる。

※この世界の人族の寿命は50年から60年位なので7年で結構違いが出ます。

「確かに、俺は結構人里を離れて生活していました…すみませんが此処数年で何が変わったのか教えてくれませんか?」

「それは依頼ってことですか?」

「それで構いません」

「それなら、見習い冒険者で充分ですね2時間銀貨1枚でそれを越えたら1時間当たり銀貨4枚の追加で如何ですか?」

「それでお願い致します」

「それじゃ、ハルト、依頼だよ、ここ暫くの間に何が起こったかこの人に教えてあげて」

「はいよ、依頼ならしっかり教えてやらなくちゃな、何でも聞いてくれ」

結局、礼二達、勇者パーティーは魔王と戦い負けた。

勇者にたどり着く前に俺はパーティーを守って死んだ事になっていた。

変な罪を着せられないだけましだ。

負けた際に礼二たちは『命乞い』をした。

その際に二度と魔族と争わない約束をさせられ『魔族や魔物と戦わない誓約(ギアス)』の魔法を受け入れる事で見逃して貰ったそうだ。

「そういう訳で更に、礼二たちは『四職』の地位(勇者.聖女.賢者.剣聖)を剥奪されて市民落ちになったんだ」

「随分軽い罪だな」

「まぁ、最初は禁錮刑になっていたけど、その後騎士団を頭に、討伐隊を結成して魔王軍に挑んだがこの国は負けてしまってね、それで『あの魔王には勝てない』と言う事で恩赦を受けて釈放されて、市民落ちさぁ」

「それで四人は?」

「ギアスのせいで最早ゴブリンすら倒せないからね、王都から出られず、確かソラさんは教会の平ヒーラーをしていたかな?」

「平ヒーラー、元は聖女なのに」

「だって、護衛をつけないと、王都から出られないから教会から動かないヒーラーだから」

従軍や旅が真面に出来ないからか。

「確かにそうかもな」

「後は、ジェイクさんは魔族や魔物と戦えないから兵士兼、剣術指南を王城でしている、だけど魔物も狩れないから騎士に馬鹿にされているよ」

「そうか…」

「ルリさんはアカデミー所属だけど、図書館の管理に回されたから王立図書館にいるかな、賢者として旅してたから、新しい実験や研究についていけなくて閑職に回されたみたいだ」

「そうか…それで勇者礼二はどうなったんだ」

「礼二な、彼奴は結局『勇者』じゃなくなったら、ただの嫌われ者になっちまったよ…多分その辺で飲んだくれてるんじゃねーかな」

「仮にも勇者だぞ」

「昔しか知らないあんたからしたらそうだよな? だけど『勇者の能力』は魔族や魔物に特化しているから、それと戦えないから意味が無い、それでも異世界から来たからって王様は助けようとしたんだが、どんな仕事も出来ない、しかも魔王に負けたのに偉そうにしていたからとうとう愛想つかされて城を追い出された」

「あと知っていたらで良いんだが、伯爵家のマリアーヌ嬢はどうなったか知らないか?」

「あっ、英雄セレナ様の婚約者だっけ、セレナ様が死んでから泣いてばかりいたけど、公爵家のリオン様が慰め続けて今じゃ夫婦仲睦ましいよ」

そうか…7年は長すぎだ、待っていてくれなくて当たり前だ。

「そんな事があったんだな、それでこの国は何か大きく変わった事はあるのか」

「ああっ、魔王に負けた事により、実質この国は魔族の支配下にある、簡単に言えば魔国に税金として国益の3割を払う事で見逃して貰っている」

「そんな事して大丈夫なのか?」

「人類からは裏切り者呼ばわりだな、特に『聖教国』は薄汚い国、『帝国』からは良く生きていられると罵倒されているよ…だけど、税金を払う代わりに魔国が後ろ盾だから、正面切っては何も言って来ない…まぁ見ての通り、少し物価が高いがそれ以外は何も変わらないな」

「そうか、色々教えてくれてありがとうな」

「依頼だからな、まぁこの程度の話でお金が貰えるんだから、こちらこそありがとうだ」

流石は冒険者だ、子供でもしっかりと欲しい情報をくれる。

俺は冒険者ギルドを後にした。

俺が住んでいた屋敷はもう他人の物になっていた。

俺の親は俺が子供の頃に亡くなったから身よりはいない。

きっと国が徴収して売ったんだろう。

マリアーヌは屋敷の外から見たが『笑っていた』はしゃぎまわる子供の頭を撫でていた。

その横にリオンが立っていた。

リオンは俺の親友、裏表のない奴だからきっと幸せにしてくれるだろう。

もし、あの時あの『勇者(馬鹿)』に関わらなければマリアーヌの横に居るのは俺だった…言っても無駄だ。

結局…俺はあの勇者(クズ)達に全部奪われてしまったのか。

屋敷に婚約者、存在、全部無くなってしまった。

『殺してやる』勇者パーティーは皆殺しだ。

殺して他国に逃げれば良い…それだけだ。

誰から殺してやろうか…

一番簡単に殺せそうな『聖女のソラ』から殺してやる。

そう思って、教会に行った。

「ちゃんと、掃除したの?」

「はい、しました」

「何処がしたって言うのよ? 下手糞、もう貴方は聖女じゃ無いのよ? しかも魔王に命乞いするなんて教会の恥さらしじゃない」

「すみません」

「私だったら生きて居ないわ…よく、そんなみっともない生き方出来るわね」

「すみません」

「ふんっ役立たずが、掃除が終わったら、次は皆の給仕をして、それから辻治療、貴方は休む暇はないわ」

「そんな、私、食事も睡眠も満足にとらせて貰えて」

「貴方の人生は贖罪の人生なの! 他のシスターと同じだとは思わないで…あなたのせいでこの国のシスターは世界中から下に見られているんだから」

俺はソラなんて大嫌いだ。

だが、此奴を貶して良いのは俺だけだ…何故なら『俺以外の人間には此奴は聖女だった』ちゃんと魔王の前に行き『戦い負けた』それだけだ。

宝具を俺に使ったが、それは勇者パーティーしか知らない。

つまり、他の人間にとっては『ただ負けた』それだけの存在だ。

全て押し付けて、任せて…『負けた』からこれなのか?

ソラは嫌いだ…だが、俺以外此奴を罵倒する資格は無い。

「あんた、なんでそんなにソラに辛く当たるんだ?」

ヤバイ、何故か飛び出てしまった。

「武器創造、剣」

「ああっ知らないのですね…この女は魔王に、ヒィーーッ」

俺はムカついたからシスターに剣を突き付けた。

「シスター、貴方はソラを馬鹿にしたが、この方は『聖女』として魔王の前に立った…それを馬鹿に出来るなら、こんな剣、簡単にあしらえるでしょう?」

「そんな事、私には出来ません」

「はぁ~ 真面に戦えないなら偉そうにすんなよ、そこの聖女を馬鹿に出来るなら、お前魔族相手に戦って来いよな、少なくてもそこの聖女は年単位で魔族と戦ってきたんだからさぁ…ムカつくからこのまま串刺しにしょうかな」

「ひぃ~ーーーーっ」

あらら気絶しちゃったよ。

「なんだ、此奴、こんなので気絶するなんて…」

「あの、私、貴方に会った事があるんですか?」

「無いな」

もう良い、此奴に関わりたくない。

「なら、なんで庇って下さったんですか?」

「何でもない」

チクショウ、俺は此奴を殺すつもりで来たのに、何をやっているんだ。

「あの、何かお悩みなら私が聞きましょう、これでもシスターで元聖女ですから」

「お前がーーーっ(俺を地獄に落としたからだ)」

なんでだろう..いえねーや。

「私が何かしたのですか?」

「いや、何でもない」

それ一言だけ話すと俺は教会を後にした。

※これを一話で終わらせるつもりでしたが長くなりそうなので2話になります。

【第十一話】七年?
くそっ、ソラの奴、頭に来る。

なにが『何かお悩みがあるのなら私が聞きましょう』だ。

お前達が原因だって言うのに。

だが、あんなに悲惨な生活に落ちてそれを言うなんて…まるで本物の聖女みたいじゃないか?

本当にムカつく。

だが、あんな顔をする奴『殺せない』な。

だったら今度はジェイクだ。

今の俺なら、あんな奴、瞬殺出来る。

どうせ、あいつの事だから騎士を虐めて悦に浸っているに違いない。

「たかが兵士の癖に偉そうに何でしている訳?」

「剣の指導だから…」

「あのさぁ、あんたが幾ら強くても魔物一匹倒せないんだろう?」

「そうそう、しかも魔王相手に命乞いするなんて人間としてどうよ?」

「俺たちは騎士だぜ、騎士道精神も持っていない様な奴から教わる事なんてねーよ」

「だったら、俺から一本取ってからいえ」

「あー確かに人間相手なら強いよな、だけどゴブリンにもスライムにも勝てないんだろう? そんな奴から何で学ばないといけない訳?」

「剣聖のスキル持ってれば強いよな? だけど、俺あんたが素振り一つして無かったのを知っているぜ」

確かにスキルがあれば努力は少なくて済む。

ジェイクは『自分を天才』に見せたくて、人前では遊んでいる様に見せていた。

だが隠れてしっかりと修行をしていたのを俺は知っている。

「…そうか」

「それに、あんた達が負けたおかげで今や魔族の手先みたいになっているじゃないか?」

「そうそう、これから先、野盗や盗賊、人を相手にしたり、魔物を狩る事はあっても魔族とは戦う事が無いなら剣なんてそこそこでいいんじゃね?」

「俺たちは騎士だぜ、たかが兵士が偉そうにするなっていうの」

ジェイクは殺したい位憎かったが…これは無いだろう。

魔王に負けたのが悪いと言うなら『騎士』たちだって負けた。

しかも大人数で…

なんか、勇者パーティー以上に『この国の人間』の方がクズに思えた。

だから、つい口に出てしまった。

「へぇ~この国ってあんなに弱そうな奴でも騎士になれるんだ」

「貴様、騎士を愚弄する気か?」

「訂正しろ…さもないとタダで置かないぞ」

此奴らは馬鹿だ。

本物の馬鹿だ。

「だってあんたら、負け犬騎士団だろう? 元剣聖を馬鹿に出来る立場じゃねーよ」

「貴様」

「もう許さんぞ、少し痛い目にあわせてやる」

「あのさぁ…勇者達は4人で戦って負けたんだぜ…あんたら万単位で行って負けたんだぜ、更に言うなら『あんたら騎士が負けた』のがこの国が魔族の支配下に置かれた本当の原因なんだぜ、責任転嫁するなよ」

「貴様、許せん、斬り捨ててくれる」

騎士の1人が襲い掛かってきた。

「思いっきり手加減はしてあげる…だがそれでも怪我したら、己の未熟だと諦めるんだな」

地獄の『鬼』との戦い。

それによって俺はとんでもなく強くなった。

手加減が難しい位に…

俺は軽く『人差し指1本でしっぺ』を相手の手首にした。

二本じゃ無くて一本のしっぺ、それも相手を気遣い、本当に優しく。

それなのに…

バキッーーーーツ

相手の剣を持った手首が折れてしまった。

しかも、どうにか繋がっている感じだ。

「ぎゃぁぁぁぁーーーーっ、俺の手がああああああっ」

「ごめんな、これでも充分手加減したんだ、すまん」

本当に手加減って難しいな。

「貴様、騎士にこんな事をしてただで済むと思うなよ」

「たしか、この国では犯罪者で無い限り、剣を抜いた騎士相手に一般人が戦い怪我させても罪に問われない筈だ」

「その通りだ、だが、それに何の意味がある、ここで半殺しになるのに」

「まぁ良い、全員で掛かってきても皆殺しにすれば良い」

「馬鹿な事を言うな、我ら騎士9名相手に…貴様」

一応相手は騎士、殺しては不味い。

俺は本当に軽く、地面を殴った。

地響きが起き、地面はまるで隕石が落ちたかのようにクレーターが出来た。

それを見て騎士達は顔を青くしている。

「「「「「「「「「ああああーーーーっ」」」」」」」」」

恐怖で叫び動けなくなっている。

「恐らく魔王はこの位の事は余裕で出来た筈だ、数万の後ろに居たから恐怖を感じなかったんだろう? 勇猛な騎士ならあの戦いで死んだんじゃないかな?お前らは後ろで隠れていたか、参加もしなかった様な奴だろうが、それをたった4人で戦った奴に何で文句が言えるんだ? 戦わなかった弱虫騎士がぁーーーーっ」

「ヒィ…貴方様は高位魔族様だったのですね無礼をお許し下さい」

そうか、まるで見たように俺が話したから誤解したのか。

「俺の事はどうでも良い、だが自分より高みに居る人間に指導を貰えるチャンスを見逃すんじゃないよ」

「「「「「「「「「解りました」」」」」」」」」

なんでまた庇っちまうんだ、こんな奴『どうでも良い』のに。

「あの、俺は貴方に何処かで会いましたか? なんで庇ってくれるんだ」

「お前なんて知らんよ…ただ俺は自分で戦いもしない癖にえばる様なクズが嫌いなだけだ! お前も『人間相手』なら戦えるんだろう? こんな奴ら、叩きのめしてやれよ」

「ああっ、だが俺の立場じゃ、それは許されないんだ」

「そうかよ…剣聖らしくないな、それじゃな」

「なぁ、あんた本当に俺を知らないのか?」

「知らねーよ…じゃあな」

本当にクズしか居ない。

騎士迄ここ迄クズなのかよ…

もう復讐する気は萎えた。

その後、ルリを見に図書館に行ったのだが、眼鏡をかけてすっかり地味な感じになっていた。

まぁ此奴の場合は、元からこんな感じだ。

多分、賢者に何てならなければ、元から地味な生活をしていたのかも知れない。

アカデミーからしたら完全に閑職の図書館の管理人…それなのに幸せそうに、さぼっている。

「おい、役立たず、この本をかたずけろ!」

「はいよ~」

「はん、次は此処に積んである本の整理をしろ」

「解ったよ~」

ははっ、さぼっているのが見つかってこき使われているな。

年下から明らかに馬鹿にされた感じに扱われているがめげて無いな。

「あなた、さっきから私を見ているけど、なんで?」

流石は賢者、鋭いな。

「いや『顔見知りに似た人が居た』それだけだ」

「そう、不思議だね、何故か私も貴方に親しみを感じる」

「そうか…じゃぁな」

俺は図書館を立ち去った。

此奴だけは…逆境の割には幸せそうだな。

後は礼二か…

彼奴は話によると飲んだくれているらしい。

金も無いらしいから、スラムにでもいるのか?

探すのは簡単だった。

だれからも相手にされず、酒瓶片手に座り込んでいた。

正に浮浪者だ。

俺は地獄で過ごしていたせいか、別人の様な雰囲気になっているようだ。

そのせいか、誰も気がつかない。

礼二もどうせ気がつかないだろう。

しかし、随分と変わった者だ。

綺麗な黒髪に甘いマスク、女に大人気の勇者が、今はただの浮浪者だ。

世の中に絶望したような目、綺麗だった黒髪は今は白髪が混じり鼠色だ。

俺より随分若い筈なのに、どう見ても俺より5つ以上老けて見える。

最早何処にでもいる、ただの浮浪者。

もう勇者だった面影は何処にもない。

もう良いだろう…復讐なんてする必要は無い。

此処に居るのは『ただの負け犬』

俺が王都にいる必要は無い、此処を出て、聖教国か帝国にでも行こう。

「おい兄ちゃん、さっきから何で俺を見ているんだ?」

「知り合いに似ていたからな」

「そうかい、俺はこれでも元勇者でよ…魔王にあと少し、あと少しで勝てたんだ」

「そうか、俺の知っている奴も勇ましかった、そうだな勇者みたいだったよ、俺より齢下だが良い奴だった」

「そうか、それで、そいつはどうしているんだ?」

「さぁな、俺は嫌われていたらしく…裏切られてな、今じゃ疎遠だよ」

「…なぁ、多分そいつは後悔しているかも知れないぞ」

「そんな訳あるか」

「俺もよ、昔、俺を見ていてくれた奴を不義理で裏切っちまった」

「そうか」

「その結果が、これだ!大切な仲間を全部失って、すっからかんよ」

「そうか…」

「ああ、もし元の時間に戻れるなら『あの時の俺をぶん殴っても』止めさせる」

「そうか、だが時間なんて戻せない」

「そうだな…だから俺は勇者じゃ無くて、飲んだくれになっているんだ…帰りたい」

「….何処に?」

まさか、あの時、あの場所に帰りたい、そういう事か?

「日本」

「そこがお前の故郷か…」

違った、故郷に帰りたい…そういう事だな。

「ああ…今でも思い出すんだ…父さんに母さん、口うるさい幼馴染」

こっちの都合で呼び出して『勝てなければポイ』この世界も案外クズだ。

俺だって帰りたいよ『お前が俺を地獄に送る前に』考えるだけ無駄だ。

「そうか、誰だって帰りたい場所や時はあるさ」

「ああ、帰りたい、日本に帰りたい」

「それじゃ、俺は行くよ、ほらよ、これやるよ」

「これは、金貨…しかも3枚ある」

「その3枚の金貨で人生やり直すも良し、飲み代に全部使ってしまうも良し、自由にしな」

「あんた…なんでこんな事をしてくれるんだ」

「故郷に帰れないガキが泣いているから、くれてやっただけだ…じゃあな」

俺は背を向け歩き出した。

彼奴らがもし成功していたら『俺は殺した』かもしれない。

此処まで落ちぶれたあいつ等は『殺した所で意味は無い』

聖教国に行くか帝国に行くか…いずれにしても、この国に居ようとは思えなかった。

【第十二話】 復讐がはじまる。

「父上を殺すなんて、許せない!」

この日、魔王城に1人の人間が現れた。

人間と不可侵条約を締結してから、はや数年。

今は穏やかな生活を送っていた。

『勇者達4人』あっさりと倒した父上は4人を許す事にした。

他の魔族は『殺すべきだ』そういうなか、父上は「憎しみの連鎖は誰かが断ち切らなくてはならない」

そう言って返してやることにした。

最も『勇者』『聖女』『賢者』『剣聖』を流石に野放しには出来ない。

今迄、魔族を何人も殺して来たんだし、罰は必要だ。

「命だけは助けてくれ…」

「頼む、もう魔族と敵対はしない」

「お願いです、慈悲を下さい」

「お願いします」

今迄無数を魔族や魔物を狩ってきた大罪人『勇者パーティー』それを父上は命乞いを聞いて許す事にした。

「ならば、今回は特別に許してやろう…ただ二度と戦えない様にギアス(誓約)をかけさせて貰う、もう二度と魔族に関わるな、そして人間に魔族を殺さない様に働きかけろ…良いな」

そう言い、父上は皆が『殺せ』というなか「憎しみからは何も生まれない、これで良い」そう言ってあっさりと拷問もしないで返した。

だが、人間は何処までも汚かった。

今度は数の暴力で襲ってきた。

万単位の軍勢で攻めて来たのだ。

これにより魔国は沢山の魔人が死んだ。

罪もない魔族や、弱い村に住んでいる魔族が犠牲になった。

勇者達は戦いを避けて進んできたからまだ良い。

今度は正面切った戦争、お陰でこちら側にも死人が出た。

だが、個の力が強い魔族は、人間の騎士団を倒し…そのまま我々は王都まで攻め登った。

正直言えば、このまま皆殺しにする事も出来た。

城門をこじあけ、玉座にまでたどり着いた。

王も王妃も王子も、最早我々のの手の中にある。

そして、此処でも我が父は…許した。

魔族に沢山の犠牲者を出したにも関わらずだ…

「もう二度と魔族とは争わない、だから許してくれ…こんの通りだ」

王は頭を下げた。

その様子を水晶で見ながら父上は条件をつけた。

「勇者の時は無条件で許した、だが、その警告を無視してお前達はせめてきた」

「それは…すまない、余が抑える事が出来なかったのだ…そうだ、余の命、それで許してくれぬか?」

命懸けの王の嘆願、それを聞き父上は…許した。

「お前が死んだら、妃や息子はどうなる? ならば、今回の件はお金で解決しよう…魔国は沢山の人間が死んだ、お前達が荒らしたせいで田畑はあれ、畑や村も焼かれた、死んだ者もいる、それらに充分な保証が必要だから、お前達の国から税金をとる事にする、お前達は負けたのだ仕方なかろう?」

「はい…それで許して貰えるなら…飲みます」

「幸い、王国は魔国に隣接している、こちらにも利はある、税金を貰う代わりに、そちらの国が何処かの国に責められたら助けを出そう、その代わり魔族が如何に友好的であるか広めて欲しい、今は無理でも、いつかは人と魔族が仲良く出来る社会が欲しいのだ…だから憎しみは魔族側で終わりにする…解ったか」

「その様な夢の世界…是非とも実現したいものですな…今後はその夢に力を貸しましょう」

あの言葉も誓いも嘘だった。

「此処まで父上は許したのだ…それなのに、父上は薄汚い人間に殺されてしまった」

「我が親友、バルマンもです、彼奴は四天王でありながら魔王様と同じく人との共存を考えていた」

「だが、人を信じたばかりに殺された…薄汚い人間め」

「人の言葉を信じて、城にまで入ってきたのに約束を守り、手を出さなかった」

「殺しに来ていたのに、人を信じて捕らえようとしていた」

「聖剣を使ったと言う事は『新しい勇者』を召喚した…そういう事だ、笑顔で誤魔化しながら裏で『機会をうかがっていたんだ』」

「皆の者、俺はもう『人間を許せそうにない』父上は『共存と平和』を考えていたが、俺はそれに背く、俺が死んだら父に怒られるだろう…だがそれでも俺は『人間が許せない』…皆殺しにしたい、この世の中から、全ての人間を排除したい、こんな俺でも王子で良いのか?」

「グルトン様、我ら家臣は皆、同じ思いです」

「人全てと言うのは兎も角、少なくとも王国は許せませんな…まずは王国に攻め入り、皆殺しにしましょう」

「我ら四天王、今や三人ですが、軍を編成して今度は王国の人間を皆殺しにしてみせましょうぞ」

「まずは、あの忌々しい王の首を必ずや王子に」

「我が偉大なる父を思い30日間喪に服すことにする…その後は復讐だ」

「「「「「「「「「「「「おーーーーーーっ」」」」」」」」」」」

魔族の復讐が始まろうとしていた。

【第十三話】 旅立ち

王国でもうやる事は無い。

此処にいても嫌な事を思い出すから、もう他国に行こう。

英雄セレナはもう7年前に死んだ事になっている。

今更、生きていたとなると何かと面倒な事になる。

元婚約者のマリアーヌや友人のリオンの事を考えても凄く気まずい。

2人とも正義感が強いから『俺が気にしてない』といっても絶対になんだかのリアクションをするだろう。

友人と婚約者の結婚、見ていて辛い反面幸せになって欲しいとも思う。

それには俺は邪魔者だ。

勇者パーティーの奴らも態々見る必要もない。

『もう復讐はしない』だが『助けもしない』それで良い。

この世の地獄を味わった…まぁ『本物の地獄』にいかされたのだが、もうそれは過去の事だ。

今更、7年前の事を言い出しても仕方ない。

元の時間に戻る事は出来ない。

それぞれが、その7年間で人生が変わってしまった。

ならば、新しい人生を生きるしかない。

それだけだ。

それに今の俺は、掛け値なしに『強い』

冒険者になれば、恐らく頂点まで駆け上がれるし、騎士になっても直ぐに出世できるだろう。

いや…多分、そんなレベルじゃない。

本気になれば『国相手に喧嘩が売れる』位の力はあるんだ…

この世界ならワイバーンやオーガキングを狩れば、暫く遊んでいられる位のお金になる。

そう考えたら『俺の人生は幸せが確定』したようなもんだ。

俺は落ちていた棒切れを掴んで放り投げた。

右が出たら帝国、左が出たら聖教国に行こう…結果は。

「右だな」

俺は帝国に旅立つ事を決めゆっくりと歩き出した。

                            

※終わりじゃ無くてまだ話は続きます。

【第十四話】 平和だな。
これから先やる事も無い…だからゆっくりと旅気分で帝国へは向かえば良い。

まずは『セレナ』と言う名前にサヨナラだ。

地獄の日々で容姿が変わったから、知り合いも気がつかない。

だが、名前が同じだと何かの拍子にバレるかも知れない。

幸い、帝国への入国はお金を払えば身分証が無くても入国は可能。

そして冒険者に新たになれば、新しい身分証が貰える。

その時に『身分証明』は必要ない。

『冒険者の過去はお互いに詮索しない』そういうルールがある。

つまり、此処で『英雄、セレナ』を捨ててしまえば、全くの別人として再スタート出来る。

俺は此処で冒険者証を思いっきり握りつぶした。

そのまま、ひたすら歩き続ける。

地獄で過ごしたせいか、困る事に偶に『食事』や『水』をとる事を忘れる。

最早この体は、食事や水すら嗜好品に過ぎない。

食べなくても飲まなくても生きていける。

恐らく、今の俺は『鬼』や『魔王』すら凌ぐ化け物なのだろう。

ただ、歩くだけで、強い魔物は出て来ない。

流石に人とはすれ違うが、それだけだ。

離れた所にオーガやオーク等も見たが俺をみた瞬間にガタガタ震えだす。

今は、普通に歩きたいから『殺気』を若干流しながら歩いている。

帝国ではどういった感じに過ごそうか?

まず名前だが、セレナからセレスに変える事にした。

全く違う名前も考えたが、呼ばれた時に反応出来ないと困るから似た様な名前。

辺境で狩りをして山で生活していたが、親が亡くなった事により『都心の生活』をしたくなった。

そんな感じで良いんじゃないかな?

あとはおいおい考えれば良い。

しかし、暇だ。

景色は良い。

人とはすれ違う…ただそれだけだ。

地獄に居た時は『ただ脱出』したかった。

ただ、ただ『普通の生活』に戻りたい。

そう思っていたが、今はただ退屈なだけだ。

俺の王国での仕事は『勇者を導き魔王と戦わせる事』だった。

だが、勇者が魔王を倒さなかったから代わりに俺が倒した。

俺の当時の仕事の中には『勇者が魔王を倒せなかった場合』の仕事もあった。

つまり、『勇者が魔王に負けた場合は、俺が戦う』そういう話だ。

魔王は倒した…7年前の任務は果たした。

婚約者はもう傍にいない。

不幸にでもなっていたら『助ける』そういう選択もあるが、これでもかって位幸せそうだ。

勇者パーティーへの復讐心も失せた。

俺はこれから何をすれば良いのだろうか?

やりたい事も無い。

まぁ、とりあえずは『冒険者』にでもなってワイバーンや竜種でも狩って生活するか。

本当に何も起きないな。

そうこう歩いているうちに帝国の帝都にたどり着いた。

「帝国へようこそ! 身分証を拝見します」

「すまない、無いんだ」

「そうか、それなら銀貨3枚預からせて貰ってよいか? 10日間以内に『冒険者証』等身分証明を持ってくれば返すぞ」

「解った」

俺は財布から銀貨3枚取り出すと門番に支払った。

【とある盗賊SIDE】

「お頭、あの馬車を襲わなくていいんですかい」

可笑しな事にお頭がさっきから震えている。

『騎士殺しのルソー』が怯えるなんて考えられない。

俺たち『マオー』が獲物を逃がすなんて考えられない。

お頭たちが盗賊を始める時に『魔王』の様に恐れられる盗賊団を作る、その気持ちを込めて『マオー』と名前を名乗った。

そのマオーを率いるお頭が…震えているんだ、可笑しいだろう。

お頭の二つ名は『騎士殺し』このあだ名は騎士がいようとお構いなしに襲う事からつけられた。

騎士すら殺し奪い続ける、その残虐さからついた二つ名だ。

「ああっ何だか今日は寒気がするだから襲わねー」

「貴族の馬車で、綺麗な令嬢が居るのにですか」

「俺はよー、直感だけで生きてきた、この感は外れた事がねぇー、解ったか」

本当に可笑しい事にお頭だけじゃ無くて、副頭も幹部も震えだした。

何が『マオー』だよ、ただの腰抜け野郎が…

「この腑抜けが!」

俺がそう言った瞬間にお頭は俺の背後に周り、俺の首にナイフを突きつけた。

「えっ…ああああああーーーーっ許して下さいーーーっ」

「お前が今生きているのは俺の気まぐれだ」

「はーはーはいっ」

腰抜けでは無かった。

お頭程の実力者が震える…まさか、近くにドラゴンか魔族でも居たのか?

俺はその謎の存在に恐怖した。

【森の主リュカル】

俺様はこの森の主をしているリュカル。

大白狼の変異種で通常の俺の仲間より数倍大きい。

此処まで大きく成れば、小型のドラゴンすら捕食可能だ。

俺様より強い魔物はこの辺りには住んでいない。

熊も、リザードも俺にとってはただのエサだ…

ドラゴンはこんな森にきっこないから、俺より強い奴は存在しない…嘘だろう。

なんなんだ、あの物凄くドス黒い気は…

遠くから俺を見ている。

駄目だ、あれを敵にしたら俺様は死ぬ。

俺様は恐怖から『遠くなのに寝ころんで腹を見せた』

運が良かった…俺様をチラッと見たが相手にしないで歩き始めた。

俺様は…今、死の淵から生還したんだ。

【オークキング】

そろそろ女が欲しい。

今いる女は苗床で使いつくして飽きた。

そこで仲間を率いて『人間狩り』をする事にした。

女は持ち帰り、男は殺す…そう考えて50人程で街道に向っていった。

だが…

「物凄い気が…する…これは魔王様かも知れない」

「キング、魔王様ですか」

「魔王様…解らないがそれに匹敵する気だ…今日は帰るぞ」

「帰るのですか」

「ああっ、魔王様の御前…で襲うのは不味い」

得体の知れない恐怖を味わい、オークは村へと帰っていった。

【第十五話】使者到来

魔王子グルトンは四天王のバーバラを中心に魔族の軍を結成した。

その数は約6万5千人。

その数で戦争を仕掛けるつもりだった。

その為の使者をツベール王国に送った。

これより、1か月後に攻め入る、そういう書面を持たせて。

【ツベール王国にて】

「ガルド国王、この度の事は許しがたく、これより1か月後、魔族はツベール王国に全面戦争を仕掛ける」

使者から話を聞いてガルド6世は狼狽えていた。

なんでいきなり戦争になるのか解らない。

これまで魔族とは『それなり』に上手くやって来た筈だ。

小さな揉め事すらきちんと対応出来ていた筈だ。

「待って下され、なんでこの様な事になるのです」

「ふんっ、白々しい! 我々を騙して魔王様を暗殺した癖に、何を言うのだ」

「魔王様が殺された、そんな事は初めて聞きました、詳しく教えて下され」

魔国からの使者は、今迄の経緯について顔を怒りであらわにして詳しく話し始めた。

「これでもしらを斬るのか!」

「待って下さい!『英雄セレナ』は7年前に死んだと聞いております、確かに遺体はありませんが、国に尽くした者として国葬を行いました、これは我が国の者なら全員知っております」

「ならば、魔王様を殺した者は何者なんだ! 人族である事は解っておる」

「それも可笑しな話だと思います、わが国の最強の人間は、元勇者パーティーでした、そんな魔王様を倒せるような存在が居たなら、我々はあの時勝利を納めていた筈です」

「確かにその方の申す事も一理ある」

「これは魔国の方もご存じだと思いますが『勇者』は死なない限り『次の勇者』は召喚出来ません、更に言うなら1度召喚したら死んでも10年間は召喚出来ない」

「確かにその様な事を聞いた覚えがある」

「良いですか? このツベール王国が優位に立っていたのは『勇者召喚国』だからです、そんな国に『勇者を越える存在』なんて居ると思いますか?」

「確かに言い分は最もだ、それではガルド殿は今回の件についてどの様にお考えか?」

「憶測であれば」

「それで良い、教えて貰えるか? 間違った戦争をする訳にはいかない」

「これはあくまで噂の範疇ですが、当国が魔国と交流を始めた事により『人類の裏切者』と考えた帝国と聖教国が独自に『勇者』を手にする方法の研究を始めたそうです「」

「そうか? それで内容はどういった物なのだ?」

「はい、聖教国の方は『ホルムニクス勇者』 帝国は『勇者召喚の再現』と『人造勇者』の開発をそれぞれが始めた模様です」

「それと今回の件とどういった関係があると言うのだ」

「よいですか? 勇者礼二パーティーは魔王様に勝てなかった、その時点では礼二はあれでも『人類最強』だった」

勇者は普通の人間が倒せない魔王と戦って貰う為に召喚するのだ。

それを上回る様な存在が居るなら、そもそもこの世界の人間だけで片ずける。

それが出来ないからこその召喚だ。

「確かに、勇者である以上はそうなのかも知れぬ」

「その勇者を越える様な存在は、絶対に存在しない、もし超える様な存在が居るとしたら、上の三つ以外考えられない」

「確かにこの国に魔王を倒せるような存在が居るとは思えない…解ったこの件はこちらでも調査してみる…軍を動かさないように話を進めるから、暫く待て」

「解りました」

こうして使者はとりあえず魔国軍に帰っていった。

【第十五話】冒険者ギルドにて
冒険者ギルド。

見た感じは酒場が併設されていて、いかにも荒くれ者が集う場所…そんな感じだ。

俺は意を決してカウンターへと向かって行った。

此処から新しい俺の生活が始まる。

そう考えると感慨深い物がある。

「初めて見る方ですね!今日はご依頼ですか?」

まぁ普通に考えて大人になってからの登録する者は少ないな。

食えなくなった農民や没落貴族等、少数しか居ない。

「登録を頼みたいのですが、お願い出来ますか」

「はい、登録ですね、こちらの用紙にご記入お願いします。文字は書けますか?」

「はい大丈夫です」

流石はプロだ、笑顔は崩れない。

「これで宜しいでしょうか?」

俺は

セレス

職業 剣士

家族は居ない。

それだけしか書いていない。

「構いませんよ、冒険者ギルドは来るものは拒まずです。 訳ありの方でも犯罪者で無い限りどなたでもOKです」

ちなみに、どういう仕組みか解らないが犯罪歴があると紙が赤くなり、ギルマスと面接になる。

軽い犯罪なら、なれると考えると案外敷居は低いのかも知れない。

「ありがとうございます!」

「但し、自己責任の厳しい世界だという事は頭に置いて下さい」

「解りました」

「それではご説明させて頂きます」

説明内容は、
冒険者の階級は 上からオリハルコン級、ミスリル級、金級、銀級、銅級、鉄級、石級にわかれている。
そして、案外上に行くのは難しく、銀級まで上がれば一流と言われている。

殆どが、最高で銅級までだそうだ。

級を上げる方法は依頼をこなすか、大きな功績を上げるしか方法はない。

銀級以上になるとテストがあるそうだ。

ギルドは冒険者同士の揉め事には関わらない。

もし、揉めてしまったら自分で解決する事。

素材の買取はお金だけでなくポイントも付くので率先してやる方法が良いらしい。

死んでしまった冒険者のプレートを見つけて持ってくれば、そのプレートに応じたお金が貰える。

そんな感じだ。

「解りました」

「はい、これが石級冒険者のプレートです、再発行にはお金が掛かりますので大切にお持ちください」

内容は全く王国と変わらなかった。

万が一を考えて聞いたが余り意味は無かったな。

「ありがとう」

お礼を言い立ち去ろうとすると受付嬢が話し掛けてきた。

「此処帝国では、帝王様は『強い男』を好みます、お辛いでしょうが実績があれば上に昇り詰められます、頑張って下さい」

彼女なりの励まし…そういう事か?

帝国は慣れていない。

ついでに宿屋について聞かないと。

とりあえず、今日は一日休み、明日は準備をして午後からは簡単な依頼を受ける、そんな所だな。

「この辺りで安く泊まれる宿はありますか?」

「それなら、当ギルドの仮部屋は如何ですか? 1日2食付いて小銅貨6枚、これは地方から出て来た初心者冒険者の支援だからかなりお得ですよ…但し最長で10日間まで、依頼を2日間で1回は受けて貰えなわないと出て行ってもらう条件です!」

「お願いします」

「場所は冒険者ギルドのすぐ裏です。食事はここの酒場で冒険者カードを出せば貰えます。便利でしょう」

「本当に便利ですね」

「あくまで支援ですので」

「ありがとうございました」

俺は、酒場で早速、食事を貰った。

確かにこの金額なら文句は言えない食事だ。

パンにミルクの様な物、何かの焼肉、スープがついていた。

味は悪くもなく、良くもない。

それを平らげると部屋に行った。

あらかじめ部屋番を教わり、鍵を貰っていたのでスムーズだ、

部屋の広さは3狭く、ベットとテーブルだけで一杯一杯だ、ベットには毛布がついている。

まぁ、あくまで支援、安宿の方がまだ広い。

それでも銅貨6枚で食事つきなのは破格だ。

俺は初心者じゃない、まして英雄だ、こういう施設は『本物の初心者』や『子供』に渡して早々と移るべきだ。

今日は疲れた、明日から頑張ろう。

【第十六話】魔族側の国
魔族の使者は国王と話した事をそのままグルトンに報告した。

冷静になったグルトンも確かに矛盾を感じていた。

最強戦力の勇者パーティーは弱者だった。

父上である魔王はおろか、四天王にすら歯が立たなかった。

そんな国の人間の誰があのような事が出来たのか?

四天王のバルマンを殺し、父である魔王をただ一人で倒した人間。

そんな存在あり得ない。

しかも、話では『英雄セレナ』という話がある。

確か、かの者は人格者と聞いた事がある。

死んだという話が濃厚だし…もし生きていたとしても『勇者以下』の存在の彼にこんな事は出来ない筈だ。

その後人間側からの報告で『英雄セレナ』の冒険者証が使われ、街道沿いに捨てられていたという話を聞いた。

やはり陰謀という事に間違いは無さそうだ。

これで『皆殺し』というのは酷なのかも知れない。

情報を聞いたグルトンの結論は…

「今回、王国を滅ぼす事はしない、だがこのまま進軍し王国を魔国の属国とする…その為の進軍だ」

6万5千もの魔族の軍勢に囲まれた王国は危機に瀕していた。。

【王宮にて】

「これは一体…戦争はしない、そういう話し合いであった筈、それなのにこれは一体」

「ああっ、戦争は回避するつもりではいる、だが今回の責任はそちらにある」

「それはどういう言った事でしょうか?」

「こちらは、我が父である魔王が討たれた、その上、四天王の1人までもがだ、しかも実際はどうあれ、その人間は、この国の昔の勇者の導き手たる『英雄』を名乗っていた、これをどう考える?」

※交渉の為、グルトンは話を盛っています。

「それは誤解です、我が国の英雄セレナは魔国に行く途中に死んでおります、実際に遺体は無い物のの国葬もすみ、その後今回の事件が起きるまで見た者はおりません」

「確かに策略の可能性が高い『人造勇者』『ホルムニクス勇者』そういう事だったな?」

「恐らくはその可能性は高いかと」

「そこで問題なのだが、どちらも『勇者』を冠するからには我が父魔王対策だろう?」

「そうかと思いますが」

「なら、責任は重大だ! お前達が、魔王を倒すべく行動を起こした、聖教国と帝国の行動を知らせなかった為に父は死んだのだ! お前の言う事を全面的に信じたとしたら…そういう結論になるな!」

ガルド6世は青ざめていた。

確かに、自分が言った事を考えたら、そう考えるのが妥当だ。

そして、どう言いつくろうともう『これ以下にはならない』

此処は交渉の席、しかも、自分は『弱い立場』だ。

自分の話し一つで、この国が亡びる。

「それで、どの様にすればお許しいただけるのでしょうか?」

「それでな、此処まできた戦費調達と、我が父への慰霊の為にこの国ツベールを正式に『属国』にする、今後我が国の住民は平民でもこの国の貴族扱いとなる」

「ななな、それは」

「本来はこのまま滅ぼしても良いんだぞ! 俺は『滅ぼしても良い』そう思っている」

「お許しを…」

「あと、あの忌々しい教会の女神像は即撤廃、代わりにこれからは我が魔族が信仰する邪神を信仰し、その横には我が偉大なる父魔王の像を作るのだ」

《これでは我々は人間を捨てて魔族の仲間入りするような物ではないか…だが、これを蹴れば国ごと皆殺しだ》

「そのお話し、謹んでお受けします」

「解れば良い、この話しを受けた事により『身の潔白』とする、だが俺は正直言えば『殺したい』だが死んだ父はそうは思わないだろう? 我が父に感謝するんだな」

「はい」

この後、ツベールは『魔族側の人間の国』となり、その事は世界に知れ渡る事になる。

【第十七話】ワイバーンは小物。
俺は今、冒険者ギルドに来ている。

そして1枚の依頼書を剥がして受付に持っていったんだが…

「馬鹿なんですか? セレスさん、その依頼書はワイバーンですよ」

「見て解るが」

「セレスさん、貴方は石級なんですよ? それがなんでオリハルコン級の討伐依頼を剥がしてくるんですか?」

「いや、『討伐は階級関係なくここ帝国では受けられる』と筋肉ムキムキの人から聞いたからな」

「はぁ~ギルマスですね? 確かにセレナさんは強そうですから、オーク位ならいいですよ? ですがワイバーンですよ? 一体で村が滅びる奴です」

知っている、まぁ『英雄』の時でも命懸けではあるな。

「知っているが『此処は帝国、強い男が好まれる』し『命は自己責任で討伐の依頼制限なし』なんだろう?」

「全く、死んでも知りませんよ? あと出来なかったら銀貨3枚のペナルティーですからね」

まぁ煩かったけど何とか受ける事は出来た。

そしてそのまま、ワイバーンが居るという岩場迄荷車をひきながら走った。

馬よりも、地龍よりも早く走れるのだから、馬車も馬も必要ない。

通常なら馬で1週間掛かる時間を僅か3時間で来てしまった。

更に体は全然疲れていない。

気配を察知。

ワイバーンが沢山居ると思っていたが、居たのは10羽位だ。

正直言えば、全部狩りたい所だが残念ながら俺には収納の手段が無い。

今回の報酬で実は収納袋(特大)を狙っている。

伝説のパーティーに居たとされる、幾らでも収納できる伝説的な美少女ポーターが居たら良いんだが、そんな存在…いない。

俺は力があるから3羽位なら持てる。

だから、3羽で我慢する事にした。

俺は、気配の方向に走り出した…居たぞ。

「みつけた」

「ぐわぁぁぁぁーーーーっ」

俺は怖いのだろうか?

気のせいかワイバーンが怖がっている気がする。

ああっ、武器を創造するのを忘れていた。

仕方が無い、そのまま飛び上がり、ワイバーンの頭を殴りつけた。

やはり…ワイバーン位なら剣すら必要が無い。

そういえば、地獄では、伝説の空手家や拳法家から技も習っていたな….

だけど、それすら必要ない。

ただ、殴るだけしいていうなら『親父のげんこつ』これで簡単に終わってしまった。

結局俺はワイバーン3羽を狩るのに僅か1時間位しか掛からなかった。

本当なら、幾らでも狩れるが、大型の荷車とはいえ3羽が限界だ。

地味に痛いが、今回の報酬で、収納袋(特大)を買えば、次からは凄く楽だ。

今回はこれでよしとするしかないだろう。

【第十八話】ギルマス ロジャースと収納袋
俺は大型の荷車にワイバーンを3羽載せて走っている。

その姿が…凄く目立っている。

普通なら多数の人数でひくような荷車を一人でひいて、その上にワイバーン程の大物まで積んでいたら、見られるのは仕方ないだろう。

「ワイバーンを3体も…まさかあの人が狩ったのか?」

「いや、多分運搬を任されただけだろう」

「しかし、何処のパーティーが狩ったんだ? 暫くウハウハじゃないか?」

「凄いな」

周りの声が聞こえて来るが、ワイバーンなんて俺には大きな鳥と変わらない。

ワイバーンは高額だから、そのままギルドに荷車事入って、受付にならんだ。

酒場併設のせいか入口はでかいから良いだろう。

そうすると受付嬢が飛んできた。

「あああっ、あのワイバーンを本当に狩って来たんですか?」

「この位なら、何とか狩れるからな」

「えーと、何人で狩ってきたのでしょうか?」

「この位なら一人で充分だな」

その言葉を言った途端に受付嬢は固まってしまった。

「そのワイバーンはギルドで預かって査定しますからご安心下さい、それより詳しいお話をギルマスとお話しして頂けますでしょうか?」

流石、ギルドの受付嬢顔色を変えず淡々と話している。

だが、よく見ると顔から大量の汗が噴き出している。

「解った」

ワイバーンはすぐにギルドの職員が荷車事裏に持っていった。

受け渡した後なら、もう盗難されてもギルドのせいだ。

気にする必要は無いだろう。

実は、もう俺の持っていた金はつきかけていた。

此処でお金が入らないと夕飯が食えない。

まぁ、食べなくても余り気にならないが。

応接室の様な部屋に通され、飲み物が出て来た。

此処はサロンだ。

本来なら高ランクの冒険者のみが商談等で使う部屋だ。

当然、石級の俺が入れる部屋では無い。

暫く待つと髭もじゃの親父が出て来た。

多分、この人が此処のギルドマスターだ。

「君が、ワイバーン3体も持ち込んだのかね」

「はい」

「たった一人で?」

「そういう事です」

明かに訝し気な目でこちらを見ている。

「それを信じろというのかね?ワイバーン1体辺り狩るのに騎士団一個師団、冒険者なら金級以下なら20人、1人で狩るならミスリル級でも難しい、3体を一気に狩るなら世界に数名しか居ないオリハルコン級じゃなくちゃ無理だ」

確かにそうだろうな?

俺が英雄と呼ばれて王国に居た時でも無理だ。

「だが、事実狩れたのは本当だ、冒険者は自分の能力を語る必要は無い、狩るコツがあるんだ、だがこれは俺の秘伝だ…教える気はない」

「まぁな、ワイバーンを狩る、秘伝があるなら、それは誰でも教えたくないだろう」

「その通りだ」

暫くすると、初老の男が部屋をノックして入ってきた。

ギルマスとその男は話していた。

「査定がすんだ、凄いな頭部以外殆ど傷が無い、満額買取なので金貨150枚(約1500万円位)になる」

「それじゃ、全額換金してくれ」

「すまないな、流石に全額は無理だ、何回かに分けて払う形にして欲しい」

この位の金額はあると思っていたが、意外だな。

最も、俺はお金を貰った後ギルドから買う予定の物があった。

その事をこれから相談しよう。

「収納袋の特大を買う予定だったんだが、今回のお金から天引きで購入可能ですか?」

収納袋は普通は道具屋で販売されているが、特大だけは違う。

特大は貴重な物なので『冒険者ギルド』『商業ギルド』で販売されている。

「逆にそうしてくれるとこちらも助かる、それで『特大』というのは便宜上でな、部屋二つ分を越える様な大きさから『特大』と言われる、セレナお前はどの位の大きさが欲しいんだ」

この位のお金は何時でも用意出来る。

それより、可能な限り大きな収容力がある物が欲しい。

「一番、収納力がある物は幾らだ」

「今ギルドにあるある最高の物は金貨100枚だ、小さな屋敷なら丸ごと入るぞ、そして認証せいで所有者以外には取り出す事は出来ない、まぁ此処までの物はまず無い」

「それなら、そいつを貰って、残りの金貨50枚は10枚だけ貰う形じゃ駄目か? 金貨40枚は3日間は卸さない」

「それで良いなら助かる、それでそんな収納袋を買うという事はこれからも大物を狙うわけか?」

「そういう事だな」

「そうか? それなら冒険者証を見せてくれ」

「はいよ」

俺は冒険者証をギルマスに渡した。

「ワイバーンを狩れる奴に石級は似合わない、直ぐに用意するから下で銀級の冒険者証を受取ってくれ、まぁ本来なら最低ミスリルの実力はあるだろうが、まだ初めてのクエストだ、1回での昇格はこれが限界だ、ついでにそこで、収納袋も貰える様にしておく、その時の登録は今回はサービスだ…それじゃもう良いぞ」

そう言うとギルマスはヒラヒラと手を振った。

「解った」

「そうそう、俺はロジャースって言うんだ、これから長い付き合いになると良いな」

「そうだな」

その後、俺は下に降り、新しい冒険者証と収納袋(特大)を貰った。

早速金貨10枚を俺は入れてみた。

【第十九話】 奴隷商売られていたのは…
ギルドの仮部屋は解約した、その代わりにギルドから部屋を斡旋して貰った。

衛生的な部屋を借りようと思ったら、流石は帝都、風呂付の部屋は無茶苦茶高額だった。

その為、シャワーとトイレのついた部屋が安かったのでそこに決める事にした。

月に銀貨8枚、王都でシャワーが付いた部屋では凄く安い。

しかも、ついている家具や寝具は自由に使って良いそうだ。

何か訳ありなのか聞いてみたら

「田舎から出て来た冒険者で大工の心得があったので自分でリフォームしたんだそうですよ、そこからは、察して下さい」

恐らく依頼を受けて…死んだか怪我して家賃が払えなくなった、そんな所だろう。

まぁ、亡者と暮らしていた俺からしたら、幽霊なんて居ても怖くも何ともない。

実に良い部屋だ。

「何となく解かった、そこにする」

ギルドの仲介手数料が銀貨1枚、家賃は前払い制で1か月分払う、合計銀貨9枚払った。

この建物はギルドの物らしいので、これから先、家賃はギルドに払えば良いらしい。

なんでギルドの物なのに仲介手数料が必要なのかは解らないが、そういう物なのだろう。

「それでは、これがカギになります」

カギを受取り、地図を貰って部屋に向った。

見もしないで決めてしまったが良かったのだろうか?

ついてみてみたら悪くない。

アパートみたいな物をイメージしていたら、小さな一軒家だった。

中に入ってみると、部屋は凄く整備されていた。

ベッドから家具まで全部あり、布団もあった。

衣類迄全部ある…これでこの部屋の前の家主は『多分帰らぬ人になった』これで決まりだ。

まぁ、寝具などは買い替えるとしても食器迄全部あるのはありがたい。

これで、住む所は決まった。

今日はこのままこの寝具で休むとして、明日にでも必要な物を買いに行くか。

【翌日】

寝具はそのまま洗濯して使う事にした、ある物は自由にして良いという話なので、洋服は古着屋に売る事にした。

服は、自前の物の他に数点プラスする為購入する事にした。

まぁ、オーダーで作る様な服は要らないから、古着屋で前の持ち主の服を下取りにだし、交換しただけだ。

元から食器から何からあるから、殆ど買わないで良いのはついている。

街中を歩いていると、気になる者を見てしまった。

顔見知りの人間が奴隷商に入って行くのを見てしまった。

可笑しい、こんな所にいる可能性は無い筈だ。

正直どうでも良い存在だったが、気になってしまった。

そのまま、俺は、奴隷商の中に入っていった。

「いらっしゃいませお客様、本日はどういった奴隷をお求めですか?」

どういえば良いのだろうか?

「いや、水色の髪の可愛らしい女性が連れられて行くのを見てね、後ろ姿が好みだから気になったんだ、あの子も売り物なのかな?」

「水色の髪? ああっ欲しければ売りますがお客様の目には止まらないと思いますよ」

「売り物なら、見せてくれるかな」

「いや、見せたくありません、お客様は多分買わないでしょうから、他の綺麗な子を見た方が良いですよ」

何故見せないんだ、売り物なのに。

「見せたくない事情があるのか?」

「絶対に買うならお見せしますが…そうだ、気になるなら、見物料として銀貨1枚頂きます、売値は奴隷紋つきで銀貨5枚で良い、商談が成立したら銀貨4枚追加で売ります、成立しなければ銀貨1枚は返さないで終わりで良いですか、これで如何でしょう?」

女の奴隷で銀貨5枚は異常に安い。

まるで老人の奴隷や廃棄奴隷を買う様な値段だ。

「解った、それで良い、約束の銀貨1枚だ」

「有難うございます、奴隷が旦那の見間違いであっても文句なしですからね」

「解った」

沢山の奴隷の檻の前を通り奥に行く…カーテンをあけ中に入ると臭い。

まるで馬小屋の様に臭い。

そして周りの檻には、『確かに碌な奴隷は居ない様な気がする』』

「この辺りは鉱山送りにしか使えない奴隷や老人の奴隷ばかりですね」

そう言いながら、金額が書いてあるプレートを見ると皆金貨1枚はしている。

普通に考えて金貨1枚+奴隷紋銀貨3枚、これが奴隷の最低線の値段だ。

コミコミ銀貨5枚という事は奴隷の値段は銀貨2枚。

あり得ない金額だ。

俺が見たのは女、確かに少しは歳を食っているが、有益な魔法が使える筈だからそんなに安い訳は無い。

「そうだな」

「さぁ、旦那が見たかった奴隷はそこの奥の檻だ、私は見たくないないから旦那一人で見てくれ、30分位席を外すからご自由に、では」

そう言うと奴隷商はカーテンの外に出て行ってしまった。

掛かっているボロ布を上にあげた。

女神と同じ、綺麗な水色プラチナの髪に透き通るような肌。

綺麗な美女…の残骸がそこには居た。

本来なら冷たい感じがするやや童顔の美女。

だが、顔には十字に大きな傷がある、そして片目はその傷のせいで失っているのか眼帯だ。

そして、両腕が無くなっている。

彼女はヒーラーとして一流だった筈だ。

だが、両手が泣ければ杖も持てないから魔法は使えない。

足は両方とも、無事だが、下着しかつけて無い体は傷だらけだった。

「酷いな」

「私を見たと言う事は、買ってくれるのですか? 手はありませんが、私に出来る事なら何でもします、だから買って下さい..ううっううお願いです」

これが、あの『聖女ソラ』なのか?

何があったのか…

「あの、貴方は聖女ソラ様ではないですか?」

「ううっ、私はソラじゃない、聖女じゃないただの女です」

「私は魔王に敵対した事がある者です、貴方に何があったのか教えてくれますか? 私はソラ様には少し縁があります」

「私は…ソラです…ううっ、もし買って下さるなら何でもします…だから買って下さい」

どうした物だろうか?

此奴らに俺は殺されかけた。

恨みはある、だが英雄という任務で勇者の導き手として行動していた時間が長いから『人生で親を除き一番長い時間を過ごした相手だ』(地獄は除く)

このままなら、多分『廃棄奴隷』だから死ぬ事は確実だ。

それが偽りの仮面でも妹の様に思っていた時期もある。

チクショウ…

「解った買うよ」

「…本当ですか?」

「ああっ、だから後で、貴方に何が起きたのか話してくれ」

「解りました」

俺は奴隷商を呼んでソラを買う事にした。

「本当に買うのですか? まぁ生娘ではありますからゲテモノ趣味なら一度試すのも良いでしょう」

「いや違う、遠い知り合いだったから買う、それだけだ」

「そうですか、温情で買う、そういう事もありますね、それなら死ぬ前に会えてよかったですね」

そう言うと奴隷商はソラに奴隷紋を刻んでお金を請求してきた。

「この奴隷紋に血を擦り付けて下さい、それでこの女は旦那の物です…それでは銀貨4枚お願い致します」

俺は銀貨4枚を渡して、指を奴隷商が差し出してきたナイフで切るとその血をソラに擦り付けた。

奴隷紋が輝き、これで契約は終わった。

これでソラが俺に逆らうと激痛が走る様になる。

「それで、流石にこの服は余りに汚すぎる、何か服を売ってくれないか?」

「それなら、銀貨3枚追加で頂ければ、『お披露目服』を着せた状態でお渡ししますよ、どうですか?」

話しを聞けば『そこそこの金額で売れた奴隷は風呂に入れて綺麗にして香水をふりかけ上等な服を着飾らした状態で引き渡す』との事だ。

「それでお願いする」

「解りました」

多分、奴隷はこういう場合話をしてはいけないと言う事なのか、ソラは全く話さない。

女二人がソラを連れて奥に引っ込んだ。

暫く、入れてくれた飲み物を貰いながら待つと髪と同じ水色のドレスを着た、ソラが連れて来られた。

「こちらで宜しいですか」

「ああっ、ありがとう」

俺は銀貨3枚にチップとして銀貨1枚追加して渡して、奴隷商を後にした。

最初、前を歩かせようとしたが、歩くのも困難そうなので仕方なく抱き抱えて歩く事にした。

「…すみません」

ソラは一言だけそういい、涙を流したかと思ったら、そのまま話さなくなった。

【第二十話】彼女に何が起きたのか。

取り敢えず、ソラを連れて部屋に帰った。

早速、ソラに話を聞こうと思ったら、気を失っていた。

そのままベッドに寝かせると、汗をかいていた。

抱き抱えている時から思っていたが、体が熱く感じた。

そしてかなり痩せている。

俺はソラを寝かしたまま買い物に出かけた。

ポーションと精のつく食べ物を買いに行き、急いで帰りった。

ソラはポーションも真面に飲めなかったので口移しで飲ませた。

そしてキッチンで具沢山のスープを作った。

寝ている物は仕方ない、俺もソラが起きるまで少し床で眠る事にした。

しかし、酷い物だ、ソラに何が起きたか解らないが過酷な事があったのは明らかだ。

ソラがこの状態なら、他の三人はどうなったのか…

別に気にする必要は無い。

ただ、目の前で見たから、話が聞きたくて買っただけだ。

ソラはうなされている。

暫く待つとソラが起きたので詳しく話を聞く事にした。

「約束だ、貴方に何が起きたのか教えてくれ」

「解りました」

ソラがポツリ、ポツリと話し始めた。

話しを聞くと、魔王が何者かに暗殺されて魔国が王国に攻めてきた。

その際に、信仰の自由を奪われ、教会は邪教を祀る様になり、シスターや神父は全員国外追放となった。

そういう事だった。

だが、それなら『ただの追放』だ。

此処までの事にはならなかっただろう。

「それだけなら、貴方の現状の説明にならない」

「私は聖女でしたので、それだけではすみませんでした」

更にソラはポツリと話し始めた。

四職(勇者 聖女 賢者、剣聖)のうち『賢者』と『剣聖』は問題は無く、立場は悪い物のそのまま追放される事も無く国で暮らしているそうだ。

何故、そうなのか詳しく聞くと…

「確かに四職と言われますが、勇者、聖女と賢者、剣聖とは大きく違いがあります、『勇者』と『聖女』は明らかに女神から貰った力『聖』なのに対して賢者は『聖』以外の魔法、『剣聖』は純粋な剣術補正…ある意味、魔族にも同じ様な力を持つ者もいる為、迫害の対象から外れたようです」

確かに言われて見れば、賢者は純粋な魔法、そこには闇魔法等も含む。

そして剣聖は剣術、その力の根源は『聖』に縛られていない。

その点で言うなら『勇者』『聖女』は完璧に女神側の人間、多少の差はあるのかも知れない。

待てよ、それなら『礼二』はどうなった。

「それなら二人は、そのままの生活なのか?」

「いえ、魔族は『力が全て』という事もあり、賢者も剣聖も今より待遇は良くなり、魔族軍に入るみたいです…ただこれはあくまで噂で聞いただけですが」

「それじゃ、礼二…いや勇者は」

「運が良かったのかも知れません、飲んだくれていたから『勇者』と解らなかったみたいで、そのまま気が付かれる前に逃げ出したみたいです」

「それじゃ、教会に居たからそのまま捕まり、こんな事になったのか?」

「はい、『聖女』と知ると両腕を斬り落とされ、そのまま追放という処分になりました」

だが、それだと顔の傷の理由が解らない。

「その顔の傷は?」

「あはははっ、ガルド国王に傷つけられた物です、何でも魔族への忠誠を示す為に自ら私の顔を傷つけ記録水晶に録画して魔国の王子に送るそうですよ、私は何のために頑張っていたのでしょうね」

悪いのはガルド国王だ。

魔王の討伐を『勇者に命じて、失敗した時にはお前が倒せ!』そう命令したのは国王だ。

自分が責任逃れする訳では無いが王国なのだから『王の命令は絶対』だ。

勇者が魔王を倒せば平和になる?

そんな訳は無い。

その後に間違いなく戦争になる。

そこに対する対処が俺はされていると思っていた。

あの国王は、愚王で『魔王が倒されれば、全部終わる』そう考えていたようだ。

そして王も貴族も『勇者』『聖女』に全て押し付けた。

本当にゴミだな。

まぁルリやジェイクは生きていく為に魔族軍に入ったのならもう関わる必要は無いだろう。

実力はあるのだから、案外幹部位まではなるかも知れない。

これで王国への対応は決まった。

助ける必要は無い。

幾ら国王からの直の命令とはいえ、俺にも責任はあると思っていた。

もし、ガルド王や貴族が、魔族との徹底抗戦をするのなら、俺は王国につき、魔族を蹴散らしたかも知れない。

だが、王はさっさと降参して自分達が生き残る為に魔族に降伏して、その責任を『勇者』『聖女』に押し付けた。

しかも2回もだ。

そんな国に忠誠など誓う必要は無い。

魔族は思ったより温和で『出る者は拒ない様だ』それなら嫌いな人間は国を捨てる事が出来る。

もう放置で良いだろう。

聖職者が追放で済んだんだ、逃げたい奴は他の国に逃げれば良い。

「どうされましたか?」

「いや、少し考え事をしていただけだ」

「そうですか?それより思い出しました、貴方は」

不味い、気がつかれたか、幾ら容姿が変わっていても年単位で過ごした相手だ、気が付かれても可笑しくは無い。

「…」

「この前、教会で庇って下された方ですね、あの時はお礼も言えず申し訳ございませんでした」

「いや、いい」

俺の言葉を聞くとソラは暫く黙っていた。

「今の私は多くの事は出来ません、役立たずなのは解っています…ですがそれでも出来る事があるならやらせて貰います」

「俺は善人じゃ無いかもしれない、女という意味でお前を使うかも知れないぞ」

俺には何故此処までの決意をするのか解らなかった。

「今の私には、多分それしか出来る事はありません…こんな役立たずを買って下さったのですから、それが所望なら構いません」

思ったより心が強かったんだな。

「今のは冗談だ、貴方は俺の話、相手になってくれれば良い『聖女なら癒しのエキスパート』だろう? ポーションの作り方や前に貴方が行っていた、俺が悩んだ時に話を聞いてくれれば良い」

「解りました、それで良いなら頑張らせて貰います」

そう言い、笑ったソラは醜い傷があるのに一瞬綺麗に見えた。

【第二十一話】リオンとマリアーヌ(リクエスト作品)
また、誰かが馬鹿な事をしたから魔族への支払いが増えた。

一体何処の馬鹿がしたんだ。

俺の名前はリオン.ド.ハイドラゴン。

ハイドラゴン公爵家の次男だ。

次男という立場だが、俺の兄は体が弱い、その為実質この家を取り仕切っているのは俺だ。

その為、公爵家に居ながら爵位を別に貰い『子爵』でもある。

これはあくまでもこの家の後継ぎは長男。

俺はその代理に過ぎない、そういう意味だ。

普通は俺の立場であれば他の家に婿に行き、貴族になれるのにそれを奪った。

そう思った親父が俺に公爵家から出ないのに罪悪感から貰ってくれた爵位だ。

まぁ、俺にはそんなのはどうでも良い。

実質、この家を仕切っているのは俺だ。

そして王に進言しているのも俺。

兄貴はただ、病弱で寝ているだけだ。

この状態が長く続いているから、この家の当主は黙っていても俺になる。

俺は悪人じゃない、だから兄貴を殺したりしない。

ちゃんと治療をしながら、死ぬのを待つだけだ。

俺には昔親友が居た。

親友の名はセレナだ。

『英雄』のジョブを持つ有能な奴だった。

俺にとっては一番の親友と言っても過言ではなかった。

貴族では無いが、セレナは『英雄』その為、貴族からも覚えは良く、あの堅物の親父ですら「セレナと遊ぶ」と言えば文句を言わなかった。

人に頼まれると「嫌」とは言えないお人好しだった。

正に、人を助ける姿は俺から見ても『本当の英雄』に思えた。

この国ツベールは本来は『勇者の国』と呼ばれていた。

その理由は「異世界の勇者」を召喚できる唯一の国だったからだ。

古代より伝わる、遺跡があり、その遺跡を取り込む様に城は作られた。

この遺跡こそが『勇者召喚』の為の物だった。

そして今世の勇者は「礼二」という名の日本という国からきた少年だった。

その頃、俺とセレナの間にもう一人遊び仲間が加わった。

その人間の名前はマリアーヌ、伯爵家の令嬢だった。

マリアーヌは令嬢らしからぬ女性であったが、そのお転婆姿に俺は惹かれていった。

当然、俺ばかりではなくセレナも惹かれていた。

三人で過ごしているうちに、セレナとマリアーヌががお互いに惹かれているのが良く解った。

俺は本当は良い人間ではない。

セレナもマリアーヌも俺を善人だと思っているが、善人では無い。

悪人ではないと思うが、貴族の汚さも当然持っている。

ただ『親友』と『思い人』の前では隠しているだけだ。

俺はマリアーヌが好きだ、だがセレナは親友だ。

考え抜いて決めた結論は『二人を祝福する』だった。

セレナ以外の男だったら、権力を使って脅すか殺すかしたかも知れない。

もしくはマリアーヌの家は伯爵、俺は公爵家の人間、圧力をかけたかも知れない。

だが、セレナは親友だ…だから諦めた。

だが、悪魔はそんな俺の心とは別に、俺を悪の道に戻した。

親父が俺にきいてきたんだ。

「勇者パーティーの事で国王も儂も頭を悩ましておる、リオン何か手が無いか」

親父に真剣に聞かれたから俺なりに考えた。

「誰かお目付け役か指導する人間をつけたら如何でしょうか?」

「確かに、それは良いかも知れぬ、だが相手は勇者達だ、誰が注意出来ると言うのだ」

此処で俺に悪魔が囁いた。

セレナだ、セレナが勇者達のお目付け役になりにそのまま旅立てば『マリアーヌを独占』できる。

それに旅立ってしまえば長い旅になる、それだけの期間があれば『マリアーヌを俺に振りむかせる事が出来るかも知れない』。

「それなら英雄セレナが良いと思います」

「確かに彼ならうってつけだ」

そのまま、俺の話は親父を通して王に進言され採用された。

セレナが居なくなり、マリアーヌの気持ちは俺に傾くと思ったがそうはならなかった。

「私はセレナが帰ってくる迄待ちます」

彼女は頑なに俺を拒んだ。

だが、2年程たった頃だろうか?

勇者達が魔王に負けて帰ってきた時に…セレナの死の知らせを聞いた。

聞いた時に俺の中で二つの心がうごめいていた。

『親友を俺が殺してしまった』という心と『これで邪魔者が居なくなった』という心だ。

セレナの国葬が終わってからもマリアーヌは何時も泣いていた。

泣いている女の心に付け込むのは簡単だった。

マリアーヌの中で1番はセレナだ、だがもし2番が居るとしたら俺だ。

慰めている間に男女の関係になり婚約をし結婚をした。

子供も出来て、今ではオシドリ夫婦として有名になった。

これは『親友セレナ』と交換に手に入れた幸せだ。

そこまでして手に入れたマリアーヌだ、絶対に俺は守らなくてはいけない。

俺はこの国の公爵家…この国に居る限り権力者でマリアーヌや子供は守れる。

この国を出て行っても問題は無い。

だが、俺はこの国を出て行けば、権力を失う。

そうしたら家族は守れない。

魔族の為に『ばれない様に勇者召喚の魔法陣』を壊したのに…

折角、王族や有力貴族に『魔族へ忠誠を誓う事で国が幸せになる』事を広めたのに。

それが無駄になる。

今や、この国は『魔族側の国』と呼ばれる様になった。

魔族が味方なら『魔族』を恐れる事は無い。

強国ですら魔族を恐れるのが実情だ。

あの勇者を召喚して魔王と戦おうとした国王ですら、恐怖し今では従うようになった。

何年も掛けて、俺や仲間の魔族と親しい貴族が『魔族の怖さと有用性』を説いた結果だ。

まさか国王が「帝国」「聖教国」と組んで魔国と戦おうとしていたと知った時は驚いたが。

貴族の大多数が反対した為に潰せた。

その作戦は上手くいき、二国から人類の裏切者呼ばわりされた王は、最早昔の様に『魔国と戦う勇敢な王では無い』

まさか、魔族怖さに聖女にあそこ迄するとは思わなかったけどな。

多分、親父や兄貴は魔族がそのうち殺してくれるだろう。

あの二人は未だにこの国の真の支配者魔族を嫌っている。

俺は手を汚さないで良い…すぐに親父も兄貴も魔族に殺されるだろうからな。

セレナ、最近まで俺は、お前にした事を悔いていた。

親友のお前は俺のせいで死んでしまったしな…

だが、『今は後悔していない』

何故なら、お前じゃマリアーヌを守れなかったからだ。

『英雄』で正義感の強いお前なら、魔族と戦う道を選ぶだろう、その結果マリアーヌは命を失う。

魔族と仲良くする俺だからこそ守れるんだ。

民なんて気にしなくて良い。

俺やマリアーヌは貴族なんだから、平民が100人死のうが関係ない。

俺とマリアーヌと子供が幸せならそれで良い。

俺は最近になり、良心の呵責からマリアーヌにお前にした事を話したんだ。

その時マリアーヌが何ていったと思う?

「結婚したのが貴方で良かったわ、セレナだったら私も子供も多分死ぬ人生しかなかった」

「貴方がそれをしてくれたから私は幸せに生きているのよ」だとよ。

女の心変わりは怖いな。

今では俺と一緒に魔族の特権階級と会食する位なんだぜ。

今の俺には愛する妻と子供が居て幸せだ。

だがな、今の幸せより…三人で馬鹿やっていた時の方が俺が楽しく思えるのは何故だ。

そして妻が『魔族と戦って死んだお前の話』を聞くたびに自分を恥じ泣きそうな顔になるのは何故だ。

俺たちはお金もあり、名誉もあり、子供にも恵まれて、幸せなんだ!

だからこれは気の迷いだ。

※感想欄からマリアーヌについて知りたいという話があったのでこんな風に書いてみました。

【第二十二話】奴隷?の生活
私の名前はソラ。

元は聖女だった。

そして今は奴隷の筈なんだけどな…あれぇ~。

本当に私は奴隷なのか解らなくなりました。

今の私には両手がありません。

しかも、顔に大きな怪我を負っています。

元は、まぁ聖女ですから、そこそこ美人だと思うけど…これじゃ価値はないわ。

一応ドレスを買った位だから、もしかしたら『夜の相手』ようなのかも知れない。

そう思ったけど、多分そんな筈は無い気がする。

人は信じちゃいけない、そう思っている。

実際に私に此処までの事をしたのは人間なんだから。

「それじゃシャワーでも浴びるか?」

「あっはい」

やっぱりそうだ、幾ら綺麗ごとを並べていても同じだわ。

多分、これから、するんだ…今の私にはそれを拒む事は出来ない。

ただでさえ奴隷、それに私は両手が無いから最早彼無くして生きて等いけない。

なら決まっている、彼が喜ぶように受け入れなくちゃ。

「熱く無いか?」

「はい」

可笑しい、彼は服を脱いでいない。

私の体に恐る恐るお湯をかけてシャボンで洗っている。

顔を真っ赤にしながら…

「悪いが、俺に触られるのは慣れてくれ…仕方ないだろう」

「…はい」

手が無い、私には選択肢は無い。

奴隷の私にはそもそも逆らう事など出来ない。

私が抱きたいなら気持ちなんて考えないで抱けるんだから。

何かされるかも知れないと思ったけど違った。

彼は私の体を洗っただけだった。

髪から体まで洗って貰って、凄く気持ち良い。

その後、私を拭き上げた彼が私に抱き着いてきた。

来るべき時が来た。

そう思った。

「せめて、暗くして下さい」

「??、いや俺はこれから少し出かけてくるから、疲れただろうから休んでいて、ドレスじゃ寝にくいだろうから毛布掛けてあげるから」

「はい?」

私は何か間違ったのかな?

ベッドで寝ているけど…何もしないの?

この状態なら、普通はあれしか考えられない。

今の私に、それ以外の使い道なんて無い筈だ。

実際に奴隷商も、そんな事を言っていた。

なのに…何で出かけるの?

まさか、変な物でも買ってくるつもり…

時間にして3時間位して彼は帰ってきた。

収納袋からベッドに寝具を取り出して並べ始めた。

「あの、ご主人様、それは一体?」

「君のベッドに寝具だよ? 流石に一緒に寝るのは嫌だろう」

「あの、私奴隷です」

普通の奴隷は床で寝る筈…性処理奴隷だって寵愛を受けなければ使ったあと床。

そんな話も聞いた事があります…あくまで聞いただけですが…

「そんなのは関係ないな」

そう言いながらベッドメイキングを彼はし始めました。

「本当にそれを使って良いのですか?」

「ああっ、あと裸じゃ目のやり場に困る」

こんな傷だらけの体を見ても顔を赤くするのですね。

「ごめんなさい、だけど私服も着れなくて」

「何だかごめん、それじゃ着させてあげるから」

「お願いします」

もしかして、さっき私に抱きついて触ったのは、服や下着の寸法を測る為って事なの?

馬鹿なこと考えた私の方が恥ずかしいわ。

いい歳した男性なのに、真っ赤になって服を着させてくれる、可愛い。

『可愛い』私がそう思ったの。

「どうにか着せ終わったな」

「はい、あっゴメンなさい」

「仕方ない、今度ちゃんとした服を特注する、暫く我慢してくれ」

私の腕は根元からないから、服がストンと落ちたわ。

あの赤く成られると私も困るのよ。

さっきまでと違って本当に恥ずかしいのよ。

そう言いながら彼は私の服を持っていた紐を使って首に掛けた。

我慢? これだってどう見ても古着じゃ上等そう。

奴隷の着る服じゃないわ。

奴隷なんてボロ布の服を着る物じゃない。

「それじゃ、飯を買ってきたんだ飯にしよう」

「はい」

正直言えばお腹が凄くすいているわ。

だけど、奴隷なんてパン1個とかよね…

ミノタウルスのステーキに赤ワイン!

彼は調理し始めたけど、流石にあれはくれないよね。

「ほらお前の分だ」

「これ食べて良いの?」

「食え」

「はい」

なんて誠実な人なんだろう。

さっき話した事に嘘が全く無いなんて。

食事が終わり、暫く話した。

今の私には、話し相手になる位しか出来ないから。

「さてと、今日は寝るか」

そう言うと彼は私のベッドの毛布を退けてくれた。

私が黙っていると

「どうした、ほら入れよ」

「はい」

此処でも何もなかった。

彼はローソクの炎を消すとそのまま自分のベッドで寝てしまった。

結局…彼は、私を何のために買ったの?

わからない。

態々お金を出して『介護がしたい』そんな人はいない筈だ。

だけど、これ…奴隷の生活じゃない。

新品のベッドに暖かい毛布に綺麗な服。

そして食事は高級なミノタウルスのステーキ。

可笑しいわ。

なんで私奴隷なのに『聖女』の時より良い生活をしているんだろう。

【第二十三話】 ワイバーンは狩り尽くしたようだ

「もう勘弁して下さい!」

何時もは笑顔の冒険者ギルドの受付嬢が泣きそうな顔で俺に話し掛けてきた。

「一体どうしたんだ? 俺なにかした?」

「何かしたじゃありませんよ! 毎日毎日、沢山のワイバーンを狩ってきて、解体が凄く大変なんですよ!、本当に勘弁うあぎゃかーーっ」

後ろからギルマスが拳骨を落とした。

「お前、ふざけんなよ! ワイバーンは貴重な素材なんだぞ! それを毎日狩って来てくれるセレスに何言っているんだ? クビにするぞーっ」

「すいません、ですが私もう3日間も家に帰ってないんですよ…布団が恋しいんです」

「俺だって帰ってねーよ、だがこの分だと帝国一のギルドの売り上げが期待できるんだ死ぬ気でやれ」

「ううっ」

「さあどっちが良い? 帝国一の売り上げをあげてボーナスを貰うか? それとも永遠の休みを貰うか?好きにして良いんだぞ」

「ううっ、解りました」

俺は悪い事している様な気がした。

「何だか取り込んでいるようだから、他のギルドに…」

「いや、何を言っているんだ、今日も元気にワイバーン狩ってきたんだろう? 5か10か、さぁどんとこいだ~」

「そう言って貰えると助かる、裏庭を使わせて貰って良いか?」

「ああっ構わない」

「怖い、裏庭でなんて怖すぎます」

受付嬢は嫌な顔を露骨にしているが、この状況で買い取りを頼まない選択は無い。

裏庭に赴き、俺は狩ってきたワイバーンを全部出した。

その数は、実に66体。

「ギルマス~っこれいつまで続くんですか?」

「これで2週間は帰れず徹夜だな」

「多分、忙しいのはもう終わりだと思うぞ」

「ほう、それは何故かな?」

「多分、これ岩場のワイバーンは全滅だからだ」

「確かに..えっ全滅しちゃったのか?」

「多分」

ここ暫くワイバーンを集中して狩っていたからな。

今日の66羽を併せて今現在狩ったワイバーンは92羽。

1羽金貨50枚計算で実に金貨4600枚(日本円にして4億6千万)これでもう暫くは仕事をしなくても良いだろう。

「凄く言いにくいのだが、お金の支払いを2週間位待ってくれないか」

まぁ急にこんな金額用意するのは難しのは解る。

普通は1羽狩るのにも数人で苦戦する筈だからな。

「何時もどうり、俺の口座に入れておいてくれれば良いよ」

「ありがとう」

睨んでいる受付嬢を尻目に俺はギルドを後にした。

【第二十四話】自分が恨めしい

私は奴隷の筈なんだけど….

どうしてしまったのだろうか?

可笑しい…聖女と呼ばれていた時よりも生活が数段良い。

あの時だって、貴族並みの待遇だったのに、今はそれ以上。

今の私は手は無いけどね、信じられない程幸せだとしか言えないわ。

「おはようございます」

私が目を覚ますと…

「おはよう」

そう笑顔で返してくれる人が居る。

どう見ても普通は恋人だと思うよね?

返してくれる人はセレス様。

立場は『私が奴隷』で『セレス様がご主人様』

私は手が無いからうまく起き上がれない。

実際はかなり見苦しくていいなら起きれるけど、優しいご主人様は腰に手を添えて起こしてくれる。

これでどうして奴隷なのか解らなくなる。

まるで恋人…それは違うわね。

まるで家族の介護をしているみたいだわ。

そこからが凄いのよ。

「本当にごめんなさい…」

「手がないんだから気にするな」

言い方はぶっきらぼうだけどさぁ~

此処からは私の着替え。

流石に下着姿を見られてしまうのは恥ずかしいけど仕方ないわね。

まぁ、それ以上の物を見せてしまっているから今更だけど。

寝間着から服を着替えさせて貰って、髪の毛をブラッシングしてくれる。

その後は朝食なんだけど…信じられる?

もう作ってあるのよ。

「いつもありがとう….」

幾ら私が性格が悪くても、これで感謝しないわけが無いわよ。

「気にすんな」

本当にぶっきらぼう、だけどその声は本当に暖かく感じるのよ。

私がひけめを感じる様な話をすると何故か悲しそうな顔をするから。

つとめて余りしないようにしているわ。

「凄く美味しいわ」

「そうか? 何時もと同じだぞ」

確かに何時もと同じだけど、新鮮な野菜のサラダにホロホロ鳥のソテーに柔らかいパンに同じくホロホロ鳥の目玉焼きにスープ。

これ貴族の食卓位にお金が掛かっているのよ。

ホロホロ鳥なんて普通はパーティーでしか食べない。

そして、そこからが私の一番苦痛な時間。

恥ずかしいけど、トイレ。

嫌な話だけど、両手が無いからね、彼にして貰わないといけないのよ、色々ね。

これ程恥ずかしくて苦痛な時間は無いわ。

だけど…彼は嫌な顔しないでしてくれる。

前にきいた話だけど、下の世話って夫婦ですらやりたがらない人が多いって聞いたわ。

それなのに、彼はしてくれる。

なんでこんな私を買ってくれたのか本当に解らない。

毎日の食事や買ってくれる物で解かる。

彼は凄くお金持ちだ。

多分、彼なら、こんな女じゃなくて綺麗なエルフだって余裕で買えたはずだ。

だけど、私を買ってくれた。

思い当たる節は一つしかない。

私が勇者パーティー時代に助けた人間、もしくはその家族なのかも知れない。

だからこそ、彼は私が教会で虐げられていた時に庇ってくれたのだと思う。

だけど、幾ら考えても思い浮かばない。

多分生活していくなかで思い出せればよいんだけど。

それに最近、気が付いてしまった。

彼、セレナさんは凄く美形なんだと言う事に。

髪はただ後ろで束ねていてボサボサだし、服装も普通の皮の鎧か安い服を着ているけど。

この前見てしまった。

一緒に暮らしているんだから、見てしまうのは仕方ないと思うのよ。

体は鍛えぬいた体をしているわ。

筋肉ダルマではなく、いわゆる細マッチョって奴。

勇者パーティーに居た、剣聖ジェイクや勇者礼二で、良い体を見慣れた私だけど、その二人の体以上に引き締まっている。

そして髪がボサボサだから気がつかない。

多分、私しか気づいている人は居ないと思うけど、凄い二枚目。

精悍な顔立ちと言えばいいのかな、兎も角凄くカッコ良いの。

これは私が奴隷だからじゃなくて本当にそう思うのよ。

なんで奴隷、しかも私なんか買ったのか解らない。

あんなにカッコ良かったら、それこそ酒場に居るだけで女なんてよりどりみどりの筈だと思う。

勇者パーティーに居た残念賢者なんかお金を貢ぎそうだわ。

それなのに銀貨5枚の私なんか買って、介護し続けて、お金を湯水のように使うなんて信じられないわ。

はぁ~この手が無いのが恨めしい。

この手があれば、帰ってきたらぎゅって抱きしめてあげるのに。

年下なんだから『お姉さんぽく』振舞えるのに。

凄く残念だわ。

※セレナは地獄で暮らした時間分齢をとっていません。

だけど、本当にセレスが誰なのか解らない。

本当に可笑しい。

例え、会った時がもうちょっと子供だとしても、あんなイケメンなんだから片鱗位は覚えている様な気がする。

年上なら、1人心当たりはある。

私が犯した唯一の罪。

自分を面倒見てくれていた人なのに、ただ窮屈というだけで殺してしまった『英雄セレナ』

あの時の私は何故か勇者礼二に引きずられていて正常では無かった。

恐らくは『勇者のスキル』のせいで仲間意識を擦り込まれ逆らえなかった可能性もある。

だけど、そんなのは言い訳に過ぎないわ。

自分を面倒みてくれていた人を殺した。

それは幾ら取り繕っても変らない。

だけど、私が彼を殺したのだから『彼の訳が無い』

確かに似ている。

そう思った事もあるけど、セレナは年上でセレスは年下。

だから同一人物じゃない。

私は、その事をセレスには知られたくない。

彼の心の中には『優しくて綺麗な聖女の姿』の私が居るんだと思う。

だから、こんなにも親切にしてくれるんだと思う。

こんな使い物にならない女を幸せそうに世話する物好きは、セレスしか居ない。

両手は流石に治らないけど、顔の傷はセレスが高いポーションを何個も買ってくれたからもう治った。

『お世話されているから』多分それだけじゃない。

私は多分、セレスが好きなんだと思う。

この手が無いのが恨やましい。

もし、この手があればセレスと一緒に依頼が受けられる。

今の私には、大好きなセレスに何もしてあげる事が出来ない。

自分の鼻が痒くても、自分では掻く事すら出来ない人間だから…

だけど、もし私が居る事でセレスが嬉しいなら、死ぬまで一緒に居てあげる。

そんな思いはあるわ。

本当に役立たずなのが恨めしいわ。

【第二十五話】 俺がソラを甘やかす訳

結局、俺の人生ってなんだったのだろうか?

親の顔は知らない。

俺が生まれてすぐに死んだと聞いた。

その後、俺は親戚に引き取られるが、実の子とは同じには扱って貰えず、まぁ結構酷い扱いを受けていた。

だが、俺は『英雄』のジョブを授かった。

そのおかげで、すぐに親戚から国が引き取り、騎士達と共に暮らすようになった。

『英雄』のジョブは凄い。

只の子供が、初めて持った剣で騎士相手に戦えるんだからな。

国に引き取られた、俺に待っていたのは、自由な暮らしだった。

騎士と一緒に訓練をし、後の時間は自由。

これが案外短く、休みも多くあったから、冒険者を始め、好きな事をさせて貰った。

その頃に、リオンとマリアーヌと出会った。

そして、初めて知った。

子供とは遊んで良い物なんだってな。

だから、良く三人で遊んだ。

『英雄』ってジョブは本当に凄いと思った。

だって貴族の令息と令嬢相手に「遊びましょう」って遊びに行っても歓迎してくれるんだ。

まぁ、その理由は『英雄』は悪い事をしない。

そういう話が元からあるからだ。

まぁ実際は俺だって聖人君子じゃないが…

だが、今迄の俺の人生って『自分は何も楽しんで無い事』に気が付いた。

何かある度に『英雄』の俺は頼られていた。

その為、何時もあちこち飛び回り奔走していた。

「盗賊が出ました、助けて下さいーーーっ」

「ワイバーンが住み着いたからどうにかして」

随分と人を助けた気がする。

それなのにだ。

俺は死んで国葬になった。

それは、まぁ、そこそこ派手な葬儀だったらしい。

だが、最近になって、自分の墓という場所を見に行ったら花すら上がってなく、掃除もされずに朽ちていた。

俺は1000なんかじゃきかない位の人を助けていた。

その結果がこれだ。

所詮、人間なんてこんな物。

喉元過ぎればなんとやら。

だから、俺はこれからは『自分の為に生きれば良い』そう思うようになった。

特に、ソラと暮らすようになってからは。

解ってしまった。

俺は自分の人生を楽しんでいない。

その証拠に、俺の記憶の中にある人物は王、リオン、マリーヌそれに礼二、ジェイク、ソラ、ルリ、これだけだ。

確かに関わった人数は沢山いるが、それは、ただ俺が助けた人間だけだ。

それ以外は希薄な関係に過ぎない。

ようやく、俺はソラとの関係が解ってきた気がする。

今の俺はリオンとマリーヌには会う事が出来ない。

死んだ事になっているから王に、まぁ元から会う気はないな。

そうすると俺に本当の意味で関わり合いがある奴は勇者パーティーしか居ない。

礼二やジェイク、ルリには俺は会わない方が良いだろう。

罪悪感を、感じるかも知れないし、このまま死んだ事にして置いた方が良い筈だ。

なら、俺という存在を知っていて、傍にいて貰える相手はソラしか居なかった。

俺を殺そうとした憎い奴らの仲間。

だが、俺の今迄の中で、長く傍にいた少ない人間。

背中を預けて戦った仲間の1人。

俺の中の『憎しみ』と『寂しさ』が戦い、勝ったのは『寂しさ』。

だから、彼奴を買ったんだ。

ただ、傍に居てくれるだけなら、幾らでも美女が買える。

だが、自分が過去に過ごした相手となれば、買えるのはソラだけだった。

これはソラに言う必要は無い。

生活するなら今の距離感でいい。

俺の心の中にしまっておけばよい。

そして、俺は。

「ただいま~ 今日は帝都で売っているプリンを買ってきた」

「凄く美味しそうですね」

ソラを甘やかしている。

最近のソラは『妹の様に思っていた』そちらの存在にしか見えないからだ。

【第二十六話】 家を買ってみた
「セレナさん、私は歩けますよ」

「良いから、良いから」

俺はソラを車椅子に載せて帝都の散歩に行こうとしていた。

結局ソラの腕はどうする事も出来ない。

聖女程のヒーラーが方法は無いと言う事はもう無理という事だ。

実際はエリクサールという秘薬なら治せるかも知れないがそれは世界に数本しか無いから諦めるしかないだろう。

という事で俺はソラを連れまわす事にした。

このまま引き籠りは良くない。

ソラは歩けるというが、やはりふらつきがちだから、車椅子を用意だ。

「解りました」

少し膨れているがこれがポーズなのは解る。

「さて、出かけるとするか?」

「それで今日は何処に行くのでしょうか?」

「流石に、あの部屋じゃ狭いからな、少し大きな部屋に移ろうと思う」

二人であれじゃ窮屈だからな。

「凄いですね、冒険者ってお金が無い人ばかりだと思っていましたのに、セレスさんは違うんですね」

ソラが『セレスさん』と呼んでいるのには理由がある。

大した理由では無く、単純に俺がそう呼んで欲しくて頼んだだけだ。

まぁよく考えたら、態々『ご主人様』とか『セレス様』なんて、そう言わせるのはこそばゆいからな。

多分、ソラも俺がお金を持っていると言う事は解っていると思う。

だが、今日の買い物は少し違う。

「まぁな、だが、今日の買い物は少し違う」

「へぇ~一体何を買うんですか?」

「今日買うのは、まぁ着いてからのお楽しみだ」

そう言いながら俺は車椅子を押した。

◆◆◆

「あの、依頼を受けるのでなく、何かを買いに来たのですよね? それなのになんで冒険者ギルドなんですか?」

「これから買う物は此処で斡旋しているからな」

「何を買うと言うのですか?冒険者ギルドで?それに私が一緒にくる意味はありますか」

「まぁ、今回の場合はあるな、何故なら買うのは家だからだ」

「家ですか?」

驚いている、驚いている。

流石に家とは思わなかっただろう。

「そう、家だよ、あの部屋じゃ手狭だろう?」

「私は普通に、いえ充分だと思いますが、それに今、買うと言いましたか? 借りるのでなく買うと」

王国だと土地はあくまで国、王の物。

貴族の領地では貴族の物で、あくまで貸しているだけだ。

だが、ここ帝国では違う。

この国では『力ある者は優遇される』

その考えから、土地や家も買える。

更に言うなら『爵位』も下の方なら買える。

「すいません」

「はい…セレスさん、今日もまさか…」

俺を見た瞬間にギルドの受付嬢の顔が青くなった。

「今日は素材は持ち込んでいないから安心して下さい」

「そうなんですか?良かった、本当によかった」

何も涙ぐむ事無いじゃ無いか?

「それで、今日は家を斡旋して貰いたくて来たんだ」

「家ですか?」

「ああっ、お金のあるうちに買おうと思って」

「そうですか? 確かに帝国は家所か土地も買えますもんね、解りました、斡旋させて頂きます」

そう言うと受付嬢は奥に引っ込むと台帳を持ってきた。

「セレスさん、冗談でなく本当に家を買うのですか? そんな高価な物を何でいったいなんで」

「ソラ、流石に二人であの部屋は狭い、だから新しい家をこの際思い切って買おうと思うんだ、一緒に住む家だから、ソラに見て貰おうと思ってな」

「私も見るのですか? 私は奴隷ですよ? 私はセレナさんの奴隷ですから何処へでもついていきますよ」

「それでも、一緒に選ぼう、一緒に住むんだから」

「そうですか?解りました」

俺一人なら今の部屋で充分だ。

ソラが居るから住み替えるのだからな。

「あの台帳を持ってきました、それでご希望の家はどんな家ですか?」

「そうだな、部屋は3つ以上でお風呂は譲れないな、あとトイレも出来たら二つあった方が良い、それからキッチンも広めの方が良い、ソラは他に注文ある?」

「セレスさん、それ本気ですか? どう考えても貴族の御屋敷じゃないですか? まさか、それ私の為とか言わないですよね?」

「まぁ半分はソラの為でもあるよ、一緒に暮らすんだからな」

「ありがとう…ございます」

手が無いんじゃ余り娯楽は出来ない。

なら、一番過ごす場所の家位は良くしてやらないとな。

「あの、お取込み中申し訳ありませんが、さっさと見てくれませんかね?」

台帳を見せて貰うと、要望通りの家は1件しか無かった。

場所も帝都にあり、冒険者ギルドと帝都守備隊の詰め所の近くにある。

これで良い。

部屋も4つあるし、問題無い。

「これにします」

「これですか? これ貴族様のお屋敷並みの家ですよ…あはははっでもセレナさんなら余裕で買えますね」

「それじゃ、これでお願いします」

「解りました」

「あの、セレスさん、この家の金額金貨1600枚に見えるのですが」

「確かに1600枚だな」

「こんな贅沢して大丈夫なのですか?」

「まぁ大丈夫だよ、お金はまた稼げば良いだけだ」

「無理はしてないんですよね」

「まぁな」

「それなら良いです」

「良いですね、こんな豪邸ポンですか…いいな」

「何か言いましたか?」

「何も言っていません、それじゃこちらで宜しいですか?」

「お願いします」

こうして俺は、新しく家を買った。

【第二十七話】やつあたり
まだ、新しい家の家具も買う間もなく、俺は日課の魔族狩りに出かけた。

王国が魔族側の国になってから帝国や聖教国に魔族が現れるようになった。

今迄は帝国に来るには王国を通過しないと大きく迂回しなければならなかったのだが、今は王国が素通り出来る為かかなり頻繁に来る。

最も帝国迄はたどり着けない。

帝国には俺が居るからな。

気配を察知すると俺は街道沿いに出ていった。

「貴様は王国の者ではないな? 王国の者で無いなら虫けらと同じである、故にこれから死を」

多分、魔族のそこそこ偉い奴だろう。

こんな言葉を最後まで聞くつもりはない。

相手がこちらを人と見做さない、そう言っているんだぜ、礼儀知らずも良い所だ。

今迄は、倒してギルドに持ち込みお金にしていたが、俺は良い事を考えついてしまった。

この戦いの様子を記録にとってしまおう。

この物言いなら『王国に責任をもっていける』

「ほう、その言い方では俺は人でないから、殺すと言う事で良いのだな? 言葉に気をつけろよ? その言葉の意味は『王国は同盟国だから殺さない』だが俺はそうで無いから『殺す』そう取れるが」

さぁ、これでどう言ってくる。

「その通りだ、我こそは魔族の幹部にして最強の一角、オルガとその部隊だ、まずは」

これは俺が聞いても仕方ない情報だから、聞く意味は無い。

「そんな事はどうでも良い、お前の侵攻には王国も関わっているかどうか? それが聞きたいだけだ」

「王国か、当たり前では無いか? 王国は我々の属国だ、無論仲間ではある、まぁ我らに仕えるのが奴らの立場だ」

良かった。

本当によかった。

魔族って、余り話さず『王国民かどうか確認して』すぐに殺しに掛かって来るから悩んでいたんだけどさぁ、此奴幹部だけあって良く話すわ。

はい『言質』とった。

さぁ、これでもう充分だ。

「そうか、俺はソレイ王国(適当にいっただけ)の勇者リヒト(これまた適当)その言葉は我が国に対する宣戦布告と捉えた、行くぞ!」

「その様な国があったとはな、我は帝国へ行く所だが、ゆくゆくは王国以外全てを」

聞く必要は無い。

もう言質はとった。

そんな国はねー。

だが、国に対して宣戦布告をしたのだ『その国の人間がどんな反撃をしても文句は言えない』筈だ。

俺はオルガとその部隊50人を皆殺しにした。

王国以外の国は魔族に人権は与えていないし、殺し合いを望んでいたのは向こうだから仕方ない話だ。

魔族を討伐したら結構なお金が、冒険者ギルドと帝国から貰えるが今回はオルガの首を除き、この死体は森にポイ捨てだ。

きっと、森の獣のエサになるだろう。

さっき、お金以上に欲しい物を手に入れる方法を思いついてしまったからな。

◆◆◆

「ソラ、悪いが指名依頼が入ったから3日間位留守にする、その間の事はギルドに頼んであるから、大丈夫だ、明日から、女冒険者が手伝いに来てくれる」

「そうですか? 暫くは簡単な依頼だけで、極力休む、そう言っていませんでしたか?」

「確かにそうだが、義理があって外せないんだ、すまないな」

「私に謝る必要はありません、ですが寂しです」

寂しい、なかなか嬉しい事を言ってくれる。

俺はソラに見送られながら、旅立った。

◆◆◆

ワイバーンよりも早く、高い城も1つ飛び。

地獄で過ごした俺なら、そんな高速移動が可能。

まぁ、実際はただ走るだけだが、土煙をあげながら走り、時には跳ねて走っていた。

という訳でたどり着いたのが、王国。

あらかじめ用意しておいた仮面を被る。

フルプレートの鎧の頭だけとった物だ、まぁ帝国からくる途中買った。

これから、俺が仕掛けるのは戦争だ。

故に名乗りをあげ、その根拠を言わなければならない。

「我が名はリヒト、ソレイ王国の勇者だ、魔族の手に落ち我が国に戦争を仕掛けるとは! これから我が国は報復措置に入る」

そう門の前で叫び、書面を門番に渡した。

これは正規の手続きだ。

この後のこいつ等の行動の責任は無い。

「あはははっ、それ、何かのお芝居か?」

「君ね、これは罪になるよ? 悪い事言わないから、すぐに立ち去りなさい」

まぁ、そう思うよな?

俺は1人なのだから。

だが『手筈は踏んだ』これで誰に責められるでなく、戦争の形にはなった。

さぁ蹂躙の時間だ。

俺は出来るだけ大怪我にならないように手加減しながら、相手を倒していった。

出来る事ならリオンに逢いませんように、そう願いながら。

正直言わせて貰えば、倒すのは簡単だ。

魔王にすら勝てない人間など、俺にしてみればアリに等しい。
だが、これでも俺は人間のつもりだ。

余り、殺したくはない。

だから、手加減して死なないように、怪我をさせても後で治療すれば治せるようにして倒している。

ちょっと本気になればフルブレート事、簡単に引き千切れてしまう。

手加減して戦うのがこんなに大変だとは思わなかった。

多分30分も掛かってない。

既に俺は玉座の前に居た。

「貴様は何者だ! 我が国は、余はソレイ王国などしらん」

俺は、オルガの首を投げつけて、記録水晶の映像を見せた。

「これはっ!」

「魔国と結託して貴国は我が国に宣戦布告してきた、魔族が王国以外の全てを滅ぼすらしいな? そして貴国は、それに手を貸している、ならば我がソレイ王国が貴国を滅ぼすのも当たり前の事だろう? 魔族に手を貸す国なのだ、そうなるのも仕方ないな」

この位脅せばどうだ。

「待って下され、余は、余は、こんなの知らぬ、魔族が勝手にやった事だ、我が国は知らぬ」

「ならば、魔族との同盟は嘘だという事だな? このまま、お前を縛り付けて魔国の前で、それを言ってみよ」

「それは…出来ません」

「何故だ? ならばこれは本当の事なのだな」

「ちっ違う、人類を滅ぼそうなど、余は知らぬ」

もうこの程度で良いだろう。

「その言葉、信じよう、今回の戦争は当国の勝利だ、戦費調達の為に幾つかの賠償を求める」

「解りました、わが国が敗戦した以上は致し方ありません、欲しい物は何でも差し上げましょう」

「それじゃ」

俺は宝物庫に案内させた。

そして目当ての物はあった。

俺の目当ての物は、『エルクサール』確かに世界で数本。

そのうちの3本は聖教国が所有している。

同じく3本は帝国、そして王国には4本ある。

数が多いのは、国王が自分や家族の為に金に糸目もつけずに買い漁ったからだ。

「まずは、このエレクサールは全部頂こう」

そう言い、収納袋に放り込んだ。

「待って下され、それは我が国、いや世界の秘薬、それだけは」

いや、これが必要だからきたのだ、寧ろ他の物はおまけだ。

「ならば、王族の命1人で1本返してやろう? 誰か俺の前で死んでみろ」

「それは…解りました」

結局、自ら死ぬ人間は居なかった。

その他に貴重な物なら『聖剣』その他、収納袋に入るだけの金銀財宝、金貨を詰め込んだ。

やはり収納袋にお金を掛けてよかった。

城の宝物庫の1/3位は入った。

「あっああっ城の宝が国の宝がーーっ」

これ位の宝なら無くなってもこの国は傾かない。

『聖女の腕を斬り落とし』『顔を傷つけた』その慰謝料。

『英雄』として俺には魔族と戦わせ、勇者が負けた時には『お前が倒せ』そういった癖に魔族にしっぽを振るように従ったことが気に食わない。

俺に魔王を倒すように頼んだなら『国民が全員死のうと魔族と戦争するのが筋だ』と思う。

あの時の俺は魔王はおろか、四天王にすら勝つ力は無かった。

その俺に『魔王を殺せと命令したのなら、命懸けで戦う義務』はあると思う。

だが、もしそうなっていたら、元親友も元恋人も死んでいた。

戦うも、戦わないもどっちを選んでも、多分俺は『納得しない』

これはだからただの八つ当たりだ。

だから、1/3だけ貰って終わりで良い。

これでこの国に関わるのは終わりで良いな。

「これで我が国への贖罪は終わった、だが今度魔族に肩入れした場合は、再び我が国が立ち塞がる、その時はこの国に私より強きものがこぞって滅ぼしに来るだろう」

「貴方程の者が他にもいるのですか?」

「居る、俺など親衛隊の中では弱い方だ、特に親衛隊長には逆立ちしても敵わぬ(まぁ嘘だが)」

泣き喚く王や貴族を無視しておれは城を去った。

しかしリオンが居なくて良かったな。

さぁ、帰ろう、我が家に。

【第二十八話】 これで良いと思います

「ただいま」

「お帰りなさい、セレスさん」

今は居ないが、俺が居ない間、ソラの世話を頼んでいた女冒険者はしっかりとお世話をしてくれていたみたいだ。

冒険者と簡単に言うが、言い方を変えれば、便利屋ともとれる。

こういう仕事でも『腕が良ければ、リピーター』がきて馬鹿にならない。

勿論、ソラの様子と屋敷の様子を見て感じ、しっかりと仕事をしているようだ。

これなら次回も何かあったら任せても良いかも知れない。

帰ってから暫くし部屋で考え事をしていた。

これから、俺はエレクサールを使ってソラの腕を治す。

だが、使うにあたって問題が一つある。

それはソラが元聖女だと言う事だ。

それは幾ら俺が誤魔化そうが、バレてしまう。

まぁ、別に構わないけどな。

「ソラ、ちょっとこっちに来て」

「何でしょう?」

「腕の治療に使える秘薬を手に入れたんだ、多分、恐ろしく糞不味いけど、飲み干して貰えるかな?」

「解りました、だけど、私の腕に効く秘薬ですか?」
「そう、あと少し痛いけど我慢して」

「えっ、きゃぁぁぁっ――――――痛い、何をするんですかぁ」

流石は聖女。

俺が何をしたかというと、ソラの腕のつけねをもう一回両腕切り落とした。

薄いハムの様な断面的な薄い肉片が落ちる。

「痛い、痛い、助けて、まさか私を」

確かに絵面は凄い事になっている。

両手が無く、その場所から大量の出血をしながらまるで芋虫のように這いずる美少女。

かなりホラーだ。

「何を勘違いしているのか解らないが、俺はお前を助けようとしているんだ」

「嘘です、折角、最近では痛みも薄れてきたのに、こんな、こんな酷い事を、良い人だと思っていたのに、私こんなだけど本当に好きになってきたのに、こんな」

これをしたのには理由がある。

エレクサールはその人間をどんな事があろうと『正常だった状態に戻す』もし、手が無い期間が長かったから『手が無いのが正常』と薬に判断されたら困るからだ。

「大丈夫だ、これは治療に必要な事だ」

「嘘です、こんな治療はありません」

「普通はな」

「うぐっ、うううんゴクッーーーハァハァ酷い、私は確かに奴隷ですが、体を刻まれて無理やりキスなんて、うぐっうぐっ、酷すぎるーーーっ」
いや、大切な薬を逆上して吐き出されたら困るからした事だ。

まぁ、キスと言えばキスになるのか?

「キスなのかも知れないが、これはソラを助けるために必要な事だ、だから許してくれ」

「そんな、私は奴隷です、頼まれれば、キスだけじゃなく、それ以上の事もするのは当たり前の存在、だけど、せめて初めてのキスは、普通に」

言われてみればソラは『聖女』だった。

そりゃキス一つした事が無い。

当たり前の事だな。

「そうだな、だけど俺はお前を奴隷とは思わない」

「嘘です、良い人だと思っていたのに、こんなううっ、ええっ腕が痛い、体が痛い、あああっーーーーあああっ、まさか私に毒を盛ったのですか、あああっ、嘘、貴方はセレナ、ハァハァ、そうですか、貴方になら私を殺す理由がありますね、解りました」

此奴は何を言っているんだ?

恨んでいるなら、放って置くなり殺すなりとっくにしている。

「ソラ、これは本当に違う、治療なんだ」

「うううっ、ですが、嘘です、なんで腕の部分の肉が盛り上がって来るのでしょうか、それに気持ち悪いです」

そう言うとソラは体の痛みから血の海の中で蹲っている。

「ソラは聖女だから詳しいだろう? エリクサールだよ、その薬は、安心しろ」

「エリクサール? そんな訳は…」

そう言うとソラは気を失った。

◆◆◆

私に一体何が起きているのでしょうか?

気が付くと私は裸でベッドに寝ていました。

頭の中がグルグルします。

魔王に負けて帰ってきて、悲惨な生活をしていました。

魔王が殺されてからは更に悲惨な事になり腕を斬り落とされて国外追放。

さらに、奴隷落ちして、買い手がつかない廃棄奴隷。

そんな私を買ってくれたのはセレスさん。

どんな扱いをされても生きているだけで幸せ。

そんな状態だった筈が、これでもかという程幸せな毎日でした。

貴族が住んでいる様な大きな屋敷に、高級な服。

食べ物も毎日高級な食材を使った物を料理してくれる。

それに、恥ずかしい話、下の世話まで。

これは聖女だった時も含んで、一番幸せな時間でした。

これが『本当の愛』なんだ『真実の愛』なんだ、本当にそう思いました。

『セレスさんと一緒に居る事』それが私の幸せ。

神の愛を説く聖女が、神以上に大切に思える人間に出会ってしまった瞬間です。

私は感情に乏しく、こういう時にどういう風に殿方に接して良いか解りません。

だけど、その相手、セレスさんは、セレナでした。

私達が殺そうとした人間が生き延びていたのです。

幾ら考えてもセレナが私を助けてくれる理由が解りません。

だけど、現実の私は助けられています。

『手がある…』

根元から斬り落とされた腕はしっかりと生えて治っています。

過去の戦いで傷ついた小さな傷も全部綺麗になっていました。

この秘薬はまさにエリクサールです。

世界に数本しか無く、基本的には一般人は見る事も無い秘薬。

聖女の私でも今迄見た事は無い程に秘薬。

『全てが信じられない』

自分を殺そうとした人間に何でここ迄親切になれるのか…

私だったら、多分奴隷から買う事すらしなかった筈です。

だから、私は聞かなくてはなりません。

それによって、後悔する事になっても。

「あの、セレスさん、いえセレナさん」

「おう、気が付いたかソラ、いけねー気付かれちゃったか?」

「はい…」

この方は何故、こうも普通で居られるのでしょうか?

私はこの方を殺そうとした。

それなのに、何故…解りません。

だから、聞かずにはいられませんでした。

「あのセレナさんは、何故私を助けてくれたのでしょうか? 私は貴方を殺そうとした、それなのに、それなのに、何故でしょうか?」

「ああっ、それな、確かにお前達のせいで、死より辛い思いをしたが、まぁそれも昔の事だしな」

「そんな訳無いじゃないですか!」

「俺にはそんな事だ、それに、今の俺にはお前しかいないからな」

「それはどういう事でしょうか…」

これは考え方によってはプロポーズ、な訳は無い筈です。

ですが、どうしてか顔が赤くなってしまいます。

「お前達に会うまでの俺は多分人間じゃ無かった」

そう言うとセレナさんは頭を掻きながら話し始めました。

『英雄』として沢山の人を助けてきたが、そこには『感謝する者と感謝される者』の関係しか無かった事。
王からは頼りにされ無茶な願いをされて、それを達成したら貴族に疎まれた事。

そんな中で、『親友』と呼べる友人と『婚約者』も居たが、自分が行方不明の間に結婚して子供もいた。

だが、その二人すらも貴族。

多分婚約者と結ばれても、親友との友好がそのまま続いても、そこにはやがて打算が入る。

「それと、今回の事とどう繋がるのでしょうか?」

セレナさんが凄く孤独なのは解りましたが、それと私を助ける事となんの関係があるのでしょうか?

「簡単に言ってしまえば『英雄セレナ』じゃなくてセレナとして付き合ってくれた人間は(地獄を除く)お前達だけだったと言う事だ、ほかの人間は『英雄』だから付き合ってくれていただけだ、お前だって解るんじゃないか?」

確かに、聖女だからと無茶な事させられていたのに、最後は手を切断してポイでしたね。

「話しは解りましたが、私達はその」

「確かに殺され掛かったが、そんなのはどうでも良い。結局はお前達は魔王討伐に失敗して悲惨な人生歩んでいた。それにお前達の悲惨な姿は俺にも繋がる、俺だって何か失敗したら同じ人生を歩まされた可能性も高い」

「話しは本当に解りますが、それと私を助ける事とどう繋がるのでしょうか?」

「簡単に言えば、俺は人を助けるために何時も翻弄されていたから、お前達4人しか深く付き合った人間は居ない、礼二は行方不明、他の二人はどうにか上手くやっている。それに、その三人だって、いつかは『親友と元婚約者』の様に結婚して家族を持って俺の元から去っていく」

「それって、どういう意味でしょう」

「だから、俺の傍から離れていかない人間が欲しかった、そこに俺にとっては、親交の深い4人のうちの1人が売られていたから買った、あの時の俺には解らないけど、多分、そんな所だな」

「それは私の事が好きってことですよね」

「それは解らないが、まぁ、一つの国全員の命よりソラの方が大切だな」

私も聖女でしたから、恋愛に疎いですが、それは間違いなく『好き』でしょう。

好きじゃ無ければそんな言葉は出てきませんよ。

「そんなに私が好きですか? それじゃ仕方ないですね、一生私はセレナさんの傍にいますよ、まぁ奴隷だから元からいなくちゃいけないんですけどね、そういう立場じゃ無くて、自分の気持ちで傍にいます」

「ありがとう」

「そう、これはプロポーズみたいな物ですね、そうですよね」

「そうなのか?」

「全く、そうに決まっています、もう返品はききませんので、ふつつか者ですがお願いしますね」

「解った」

なんだかすごくぶっきらぼうですね…まぁセレナさんの場合は言葉は少ないですが『行動で示す』タイプなんでしょうね。

私が傍に居る事で、それでセレナさんが幸せなら、それで良いと思います。

【第二十九話】 国を捨てるだけで良い

「凄い、冒険者ってこんなにお金になるんですね?」

「凄いだろう?」

「あわわわわっ私また2週間位泊まり込みですか?」

俺達二人は『ちょっと』狩りに行って帰って来た。

まぁ大量のワイバーンと少々の竜種を狩ってきたのだが。

それだけだ。

ギルドの口座にはもうどんな贅沢をしても一生使いきれない位のお金が溜まっていた。

これは俺だけの力じゃない。

「金貨1000枚(約1億円)出すなら、確実に治してあげますよ?」

「そんな暴利な話しあるか」

「ならば、教会にでも行けば良いじゃないですか~、あーあっ可哀想にお金持ちの癖にお金を値切るなんて、息子さんも可哀想ですね」

「確かにそのお金はある、だが、それを払ってしまったら我が商会は潰れてしまう、頼むから、貴方は元聖女だろう?」

「だから、なんですか? 私、聖女の時は皆を無料で助けていたんですよね、だけど、魔王に負けて帰ってきたら、酷い扱いを受けるし、挙句の果てに腕を切断されてポイです、そんな状態の私を助けてくれたのは1人だけです、その方以外は適切な料金を取る事にしたんですよ」

「どう考えても暴利だ」

「暴利じゃないですよ~ 大切な息子さんの命、貧乏な母親なら体を売っても助けますよ、貴方の全財産ですから安いですね、まぁ息子の命と財産、好きな方をとればいいんじゃないですか? 」

「解った、払う、払うから息子を助けてくれ」

「前金でお願いしますね」

ソラが悪徳聖女も副業でしているから、お金は凄い勢いで溜まっていった。

今思えば王国は馬鹿な事をしたものだ。

勇者→ 魔族と戦わなければ要らない。

剣聖→ 剣は確かに世界一かも知れないが 、帝国の重騎士騎士団1000名なら負けるんじゃないか。

賢者→ 宮廷魔術師300名なら負ける気がする。

他の三職は下位交換で賄える。

だが、聖女は下位交換できない。

瀕死の重傷者で聖女にしか治せない者は、100名のヒーラーでも治せない。

つまり『聖女』は唯一無二なんだぜ。

「セレス、国を捨てるだけで、こんなにも幸せになれるのですね」

「そうだろう? 『英雄』だ『聖女』だ言っても国は搾取するだけ、所詮は便利な駒あつかい、俺は兎も角、ソラは国や国民に捨てられたんだから、国や国民を捨てても文句なんて言われる筋合いはないさぁ」

「そうですね、私を誰も助けなかったんだから、おあいこですね」

「ああっ」

俺は最初から知っていた。

『国』『国民』さえ捨てれば幸せになれる事を。

俺は英雄だから、ソラは聖女だからとただ『偽りの感謝』というアホみたいな物でその貴重な力を使っていた。

正当な報酬をただ貰うだけで俺たちは『幸せ』になれる。

『復讐』なんてしなくて良い。

ただ、普通に生活するだけで幸せなんだから。

「さてと、今日はこれからどうしようか?」

「お金は幾らでもありますから温泉なんてどうでしょうか?」

「良いね」

俺とソラはお互いの顔を見て笑った。

                                  FIN

あとがき

読んで頂いていかがだったでしょうか?

本来は短編で書いていたのですが、少しだけ長くなってしまいました。

よく、追放物の小説を読んで、ざまぁする作品を読んだ事があるのですが、そんな事しなくても良いんじゃないか?

そういう思いから出来たのが『ざまぁ』しないシリーズです。

案外、復讐をするのって、現実社会では凄く体力を使います。

また、長い間には復讐心すら薄れていきます。

だったら実力があるなら、他の事をして成功して幸せになった方が楽なんじゃないか。

そこがスタートです。

最も、私はすぐに方向がずれてしまうので、到着はずれてしまいましたが。

拙い作品ですが最後まで読んで頂き有難うございます。

また、何処かで。

                    石のやっさん