ブレークザハートリベンジ! その「ざまぁ」は誰にも知られずに行われている!

第1話 縋ったから追放は免れた

パーティーリーダーであり勇者のジョブを持つガイアが告げる。

「悪いが今日でクビだ」

「ちょっと待ってくれないか?」

 ガイアとは幼なじみだ。

 「今迄ずっと仲間で支え合いながらやっとここまで来た」俺がそう思っていると思っているのか?

 そんな風に思っているのは、お前達の方だけなんだぜ。

 剣聖のエルザ

 聖女のマリア

 賢者のリタ

 五人揃ってSランクパーティー『ブラックウイング』そう呼ばれていた。

やや中二病な名前だがまぁガイアは勇者だし、剣聖や、聖女、賢者まで居るから可笑しくないな…

確かに最近の俺は取り残されていた。

ジョブの差で成長した3人に能力が追いついていないのは事実だな仕方ない。

だから、別にクビになっても良いと思っていた。

『裏で俺を馬鹿にしてあざ笑う、あれを見るまではな』

腐ってもSランクパーティーのメンバーなんだぜ、俺も。

此処を出れば、幾らでも次があるんだからしがみつく必要は無い。

こいつ等が凄いだけで他のSランクパーティーならまだ通用するし、Aランクまで落とせば恐らく引くてあまただ。

その位の価値はあるんだ…だから追い出されるなら『それで良い』そう思っていたんだ。

『だがガイア…やり方が汚いんだよ…お前はよ』

「ついて来れないのは分かっているだろ理人」

「そうだな、確かに魔法戦士の俺じゃ皆について行くのは…難しいな」

確かにその通りだ。

だがな、ガイア…お前の目的はそれじゃねーよな。

此奴の狙いは解っている、ハーレムが欲しいんだろう?

「勇者とし大きく飛躍するには大きな手柄が必要なんだ。残念ながらお前とじゃ無理なんだ。なぁ分かってくれよ、パーティを抜けてもお前が親友なのは変わりないからな。」

そんな訳ねーよな。

親友と言うなら、親友の恋人に手を出すか?

居場所を奪うか?

虐げたりするか?

まぁ、男の友達が俺しかいねーガイアにとっては『これでも親友』なのか…糞野郎。

他の奴はどうなんだ。

俺は元恋人であるリタの目を見た、彼女ももう昔の優しい目をして居ないしガイアの女になっているのも知っている。

「私もガイアの意見に賛成だわ!貴方はもうこのパーティについていけないじゃない。きっと近いうちに死ぬか大怪我をするわ..さっさと辞めた方が良い…これは貴方の事を思って言っているのよ」

まぁ、そう言うだろうな!俺と目を合わせないんだからな。

ふと、リタの左手に目が行く。

薬指には見覚えのない指輪があった、これは多分ガイアが買い与えた物だろう。

俺の指輪はもうしていない…まぁ解っているけどね

勇者と魔法戦士、仕方ないと諦めならつく。

他の2人も同じ指輪をはめていた。まぁそう言う事だ…

ハーレムパーティーに俺は要らない。

そう言う事だ…だがやり方が気に食わない。

だから、俺は

「リタ…そんな事を言わないでくれよ、確かにこの先は厳しいかも知れないけど、あと1年、いや半年で良い…此処に居させて貰えるように頼んでくれないか? これでも元恋人だろう? なぁ頼むよ」

「….」

「なんで何も言ってくれないんだよ」

「もう、貴方を愛していない」

そんな事は…もうとっくに気が付いていたさ。

「リタがガイアと恋仲になったのは知っている! それでも俺は幼馴染で友達だろう」

「し..知っていたの?」

「相手がガイアじゃ仕方ない、ガイアは勇者だ…他の男なら決闘だが、ガイアなら諦めもつく…別に恋人に戻りたい訳じゃない…此処にいたいだけだなんだ」

「ごめんなさい!」

「もう気にしないで良い…だが、此処に、頼むから居させてくれないか?」

もうどうでも良い事だ。

ただ、俺が振られて、新しい恋人がガイアそれだけだ。

「大人しく村に帰って田舎冒険者にでもなるか、別の弱いパーティでも探すんだな」

「ガイア、頼むから、此処に居させてくれないか? 1年、いや半年で良いんだ、俺にとってはお前達が全てなんだよ!」

 ガイアは俺とリタが付き合っているのを知っていて寝取ったんだ。

まぁいいさ…前の世界でも『恋愛と友情は別』そういう親友は居た。

だがな、何も言わずになんで、こんな事したんだよ。

相談も無し…それが気にくわねーな。

ガイアは勝ち誇った顔で俺を見ている。

思いっきり、俺をあざ笑っているんだな。

何をしても優秀で、顔も良くて、強くて、おまけに勇者に選ばれた。

そんなお前が、おれは自慢だったんだ。

こうなる迄は、親友だと思っていたからな!

リタは確かにおれの恋人だったが、それもお前のパーティに居るからなんだぞ…馬鹿野郎。

勇者パーティに居るならメンバー以外に選択肢が無いからな、エルザとマリアをお前が好きだから選んだんだぞ。

俺には親友だったお前が一番だからよ。

本音で言えよ。

「さようなら、理人」

「さようなら」

「貴方より!ガイアの方がごめん…」

 三人の幼なじみが一斉にお別れの言葉を言ってくる…思ったより堪えるなこれ..

「荷物持ちで良い…これから頑張るから、頼むお願いだ!」

「情けない奴だ、そんなに此処に居たいのか? なら、それを態度で示せ」

「そうね…本当に居たいなら態度で示すべきだわ」

「私は潔さが必要だと思うが…」

「そうね」

「解ったよ」

俺は『五体投地』を行った。

五体投地とは一般的には知られてないが『土下座』を超える謝罪行為だ。

大地に寝転がり…どうとでもして良いという事を表現している。

ガイアは意地悪くにやりと笑った。

ガイアはこの意味を知っている

「五体投地か…仕方が無い3か月だ、3か月だけこのパーティから抜けるのを待ってやるよ」

「ガイアありがとうな!ガイア達は世界を救う勇者達だ、俺はただの魔法戦士…せめてこの3か月ガイア達との最後の思いでにさせて貰うよ」

 「そうか、そうか…まぁ頑張れよ」

他の三人はもう、何も言わなかった。

第2話 前世

俺の名前が『理人』なのは不思議だと思わないか?

そう、俺は転生者だ。

5歳位の時に前世の記憶が蘇り、リヒトから理人と呼ばれる事になった。

だが…只のそれだけ。

よく言うチートなんかは無い。

しかもこの世界今では転生者は滅多に生まれないが、昔はかなり生まれた時期があり、マヨネーズも眼鏡も半世紀前には作られていた。

まぁ、俺位じゃ知識チートは出来ない。

この世界は前の世界でいう中世位だ。

今でこそ少ないが、昔は結構生まれたからか、色眼鏡で見られない事がせめてもの救いだった。

まぁ俺の前世は…只のサラリーマンだった。

特に変わった事が出来ないから、両親も凄いとは思わず『そうだったので終わった。

ただ、少し違うのが『昭和』という時代の激闘の時代に大学を卒業して社会人だった。

当時の日本は『アッシー君』に『メッシ―君』男は女に尽くすのが当たり前。

デートに誘いたければ5万円も持ってなければ困るし、旅行に誘うなら全額男持ちで高級ホテルは当たり前、そんな時代だった。

良い女に群がる男たち。

世の中が狂っていた。

恋愛や人間関係も今より過激で、足の引っ張りあいは会社でも日常でも当たり前だった。

クレイジー80ズ。

狂った80年代…のちにそう言われる時代。

そんな時代を俺は大学生から社会人で過ごした…

その記憶が薄っすらあるだけだ。

俺は決してあいつ等を許したわけじゃない。

だが、勇者パーティであるガイア達が魔王と戦わないと困るのは確かな事だ。

その中で俺は…精一杯の仕返しをする…それだけだ。

第3話 男の遊び

次の日から俺は今まで以上に4人を大切にする事にした。

「おい、理人! めし…えっ」

「「「凄い(な)」」」

「まずは、食事の前に、顔を洗って、口を注ごうか? ハーブ水を用意したからさっぱりするよ」

「ああっ」

「ありがとう」

「ありがとうございます」

「ありがとうな」

4人とも変な顔をしているな…

俺の前に居た世界では『男は女に尽くして当たり前』だったんだ。

それでも、貢だけ貢がされて終わる事が多かった。

『尽くす』事には慣れている。

「あっ、洗面器もコップもそのままで良いから…さぁ食べてくれ」

今日のメニューは 鶏肉のムニエルにスープに白パン。

前の世界じゃ大したこと無いが、この世界じゃ朝食は凄く質素だ。

だから、これですらかなり豪華な食事になる。

俺は今まで、前世の記憶の料理を作ったことは無い。

さぁ…どうだ。

「これ、お前が作ったのか?」

「まぁな」

「まるで貴族の朝食みたい」

「ああっリタ…恐らくはそれより美味い」

「美味そうね」

「ああっ凄く美味そうだ」

此処で少し罪悪感を煽っておこう。

「今まで悪かったな…幼馴染という事に甘えていた、確かに俺はそのうちついて行けなくなる、それを解っているから苦言してくれたのも解るんだ…だが、もう暫くしたら永遠のお別れだよな、だから残りの期間、大好きだった幼馴染とやりたかった事を沢山して思い出に残したいんだ…俺の我儘だ、気にしないでくれ」

「理人、お前」

「「「理人」」」

「冷めないうちに食ってくれ」

「ああっ」

「これ美味しい」

「美味いわね」

「確かに、これはいける」

「そうか良かったよ」

ハーレム状態にしたいから俺を追放したい…それなのに『感謝』されたら…心が痛いだろうな…まぁこれで会心する位の奴らじゃねーよな。

◆◆◆

「ガイア、眠ったか」

あの後、簡単な討伐を終えた俺たちはガブギの街についた。

この街は大きな街で沢山の酒場がある。

「なんだ理人か…俺は眠いんだよ!」

「しっ…静かに、大きな声を出したら皆に気が付かれるだろう? これから一緒に飲みにいかないか?」

「ハァ~、マリア達となら兎も角、お前と飲んで楽しい事ねえよ」

「そんな事言うなよ…親友だろう? ガイアが勇者になったから誘えなかったが、俺の夢は親友と酒を飲むことだったんだ、なぁ頼むよ」

「仕方ねーな…良いぜ」

どうにか誘えたな…

◆◆◆

「ここは…なんだか凄そうだな」

「気にするな、ガイアは勇者なんだから、偶にこういう場所で飲むべきだ」

「良いのかよ…これ」

「ああっ、実は俺、偶に狩りで金を稼いでいたから少しは金があるんだ…ほら」

そう言いながら明らかに汚い袋を取り出した。

「それ…」

「これは俺の夢の為のお金だ」

「夢?」

「ああっ、お前が勇者だから誘いにくかったが、幼馴染の俺の夢はこういう女が居る店でお前と遊ぶ事だ…本当なら成人してすぐに来たかったが他の幼馴染は女だし、お前は勇者になったから誘えなかったんだよ…一緒にこう言う場所に、親友のお前と行きたかったんだ」

「ああっ、確かにマリアやエルザの手前これないな」

「親友だろう? 男同士羽目を外して遊ぼうぜ」

「ああっ、そうだな…」

◆◆◆

「予約していた、理人だ…今日は皆の憧れの勇者ガイアを連れてきた、お金は気にしないで良い、最高の子を頼むよ」

「解ってます」

「おい」
「大丈夫、大丈夫、さぁ行こうぜ」

俺はちゃんとリサーチ済みだ。

この店は美人が多い、その中でも桁違いに美人なのが…

「ロザリーです」

「ミザリーです」

この二人だ。

特にロザリーは没落した貴族の令嬢で村娘なんかにはない上品さがある。
俺の感ではガイアのドストライクの筈だ。

「二人とも、今日のメインはガイアだからガイアを挟む様に座ってくれ、しかもガイアは知っての通り『勇者』なんだ、最高のもてなしを頼む」

「勇者様なのですか? 流石ですね風格がちがいますね」

「嘘っ、凄くカッコ良い…しかも凄いイケメンじゃない?」

「当たり前だろう? 勇者ガイアなんだからな、俺の自慢の幼馴染だし、昔からモテモテだぞ」

「おい理人…言いすぎだぞ」

「ガイアは気にしないで会話とお酒を楽しめば良いんだよ…あのよガイアは自分に自信なさすぎ『お前は勇者…お前を嫌いな女なんか世の中にいねーよ』そうだろう?」

「そんな訳ないだろう…」

しかし初心だね。

顔を真っ赤にしてさぁ…

「そうですね、凄くカッコ良いと思いますよ? お連れ様の言うように凄いイケメンです」

「本当に私の好み…凄~くかっこ良いです」

「そうかな…本当に」

「それじゃヘーテルのルビーボトル入れちゃうぞ! ガイアはお酒も好きだから、ジャンジャンついでくれ」

「太っ腹ですね」

「流石は勇者様ですね」

ガイアはご機嫌だ。

そりゃそうだ…この二人はこの店のナンバー1.2だ。

この街は前世で言う歌舞伎町に近い歓楽街。

ここのお店はキャバクラやクラブに近い。

しかも高級店…そりゃ綺麗に決まっている。

「それでさぁ、オークの大群が村を襲っていたわけよ…普通なら終わりだが…そこに俺が聖剣を持ってだな…」

「嘘、聖剣…もしかして、あの剣が」

「ああっそうだ…見たいか?」

「見たい」

「私も見たい」

「すみません…ただ見せるだけなので預けていた聖剣抜いても良いですか」

普通は剣なんて持ち込めないから預けてある。

「そうですね、お連れ様は勇者様なので『特別』ですよ」

「ありがとう…ガイアは勇者だから『特別に剣を抜いて良い』ってさぁ..ほら」

「ああっ…特別に見せてあげるぜ…これが聖剣エグゾダスだ」

「綺麗…」

「こんな綺麗な剣初めてみました」

当たり前だよな聖剣なんだから。

「良いか、ガイアが聖剣を抜いて見せてくれるなんて滅多にないんだ特別なんだぞ」

「ああっ素晴らしい物を見せて貰いありがとうございます」

「本当に目の保養になりました」

「良いんだ、良いんだ…今度はオーガと戦った時の話をしよう…」

上機嫌だなガイア…

◆◆◆

「いやぁ~偶には男同士も良いもんだな…なんだか俺ばかりモテて悪いな」

金さえ払えば、誰でもモテるさぁ…水商売だもんな。

「勇者がモテるのは当たり前だ、それにお前はイケメンなんだから、当たり前だ」

「そうか、そうだな」

「俺にとって自慢の幼馴染なんだモテて当たり前だ…お前といられるこの瞬間が俺の楽しみなのさ」

「ホモか?」

「違うわい、親友…親友だ」

「あはははっ冗談だ、冗談、ほらよ」

ガイアが肩を組んできた…久々だなこれは。

「さぁ充分楽しんだし帰るか?」

「ガイア…俺が連れて行きたい本命は次だ…」

「まだ、あるのか? 良いぜ、親友つきあうぜ」

「サンキューな」

俺はガイアを次の店に連れて行った。

第4話 勇者童貞を捨てる

「なぁ理人…此処は流石に不味い…俺は勇者なんだ、俺の子種は」

『勇者の子は優秀な子が生まれる』これは本当の所は迷信だ。

だが、その為『こういう行為』は余り推奨されない。

特に仲間内では不味い事になる。

それこそ、勇者が聖女を妊娠なんてさせたら、子供が生まれるまで聖女は戦えなくなるから…イチャついているが『やれない』

それは他の二人も同じだ。

それじゃ外でやればいいのでは、そう考えるかもしれないが、それも不味い。

『勇者の息子』はそれなりのブランドだ。

実際には大した能力が無くても…世間体からして不味い。

魔王討伐した暁には貴族、場合によっては王族を妻に迎える勇者に『娼婦や庶民との間』に子が居たらまずいだろう。

「だから、高級店に来ているんじゃないか? 場末の娼館じゃ確かに危ないな、だがこう言う高級娼館は女性に『避妊紋』を刻むから絶対に妊娠はしない…まぁ、その代わり金額は馬鹿みたいに高い。貴族や大商人、場合によっては王族がお忍びで使うのがこのクラスだ…口外も絶対しないから安全なんだぜ」

「そう、なのか?」

これは本当だ。

前世で言うところの芸能人、政治家、ご用達のVIP専門の風俗店みたいなもんだ。

「そうだよ、なぁ普通は俺たちの年齢なら、こういう事はもう経験済みなんだぜ、恐らく近隣の村で育った奴で童貞なんて俺たちだけだ…この先いつ終わるか解らない魔王討伐の旅…じじいになる迄童貞なんて悲しすぎないか?」

あはははっ、凄く考えていやがんの。

この世界は寿命が短い。

しかも農村部は早くに結婚して子供をつくるからこれも事実だ。

ただし…村だけ。

都心部は違うが、敢えてその事を言う必要は無いだろう。

「そうだな、そうだよな」

「それじゃ決まりだ、ほら行こうぜ」

俺はガイアの手を取って娼館に入った。

「いらっしゃいませ」

「予約していた理人ですが…」

「はい、チョチョリーナ嬢ですね」

「宜しくお願い致します」

「ちょっと待てよ! 普通はこういう所は相手を選ぶんじゃ」

「普通はそうだけど…ガイアには最高の相手をと思ったから指名しておいたんだ」

「俺は…」

「あの、私がチョチョリーナですが…そのチェンジなさいますか?」

「あっ…いや、良い」

「どうだ! ガイアの好みだろう? 違うか? あん!」

「違わない…ああっ済まない」

「それじゃ行ってらっしゃい!」

「ああっ」

ガイアはチョチョリーナ嬢に腕を組まれてそのまま奥の部屋に消えていった。

チョチョリーナ嬢はハーフエルフで、噂では貴族がエルフの愛人に産ませた子と言う話しだった。

本当の所は解らないが、綺麗なスレンダーなスタイルに尖った耳、透き通るような肌から、ハーフエルフなのは間違いないだろう。

風俗に詳しい、風俗のルポをしている変わった冒険者の記事ではナンバーワン嬢として何度も特集を組まれていた。

「それじゃ、2時間後に迎えにくる」

「あの、理人様は遊んで行かれないのですか?」

「今日は、良いや次回は楽しませて貰うよ」

「そうですか」

「ああっ、勇者であるガイアが気に入るようなら、また来る」

「解りました」

俺は娼館を後にした。

◆◆◆

『貢くん(みつぐくん)』の本領発揮。

俺はこの街の宝石商に来ている。

「理人様…ようこそいらっしゃいました」

「頼んでいたネックレスは用意できましたか?」

「無かったので、急いで制作してオーダーで用意しました、気に入って頂けると良いのですが…」

「あははっ、何をいいますか? 王家ご用達のこのお店の品が気に入らない訳がないでしょう」

「そこ迄言って貰えると宝石商冥利に尽きますな」

「早速、見せて貰えるかな」

「ただいま用意致します…」

剣聖のエルザには、獅子が緑色の石を咥えたペンダントを作って貰った。 勇ましくボーイッシュなエルザには凄く似合うと思う。

聖女のマリアには、美しい天使が抱えるように白い宝石を持つペンダントをお願いした。清楚なイメージの聖女の胸元にはピッタリだ。

賢者のリタには、蛇をモチーフにした赤い宝石を使ったペンダント。蛇は知恵を司るから賢者のリタに似合っていると思う。

「素晴らしい出来だ…思っていた以上に素晴らしい」

「お褒め頂きありがとうございます」

これなら、指輪と重ならないからつけて貰えるかもしれないな。

俺は昔の事を思い出した。

王に謁見した時の事だ。

俺は遠巻きにしか見てなかったが、綺麗なドレスや宝石を身に着けていた貴族を羨ましそうに見ていた気がする。

俺は質素な女性が好きだから、敢えて今まで触れてこなかった。

それに勇者パーティは『質素』な方がやっかみが無くて良いからな。

今はそんなのを気にする必要は無い。

喜んでくれると良いな…流石に、ガイアの風俗代やキャバクラ代を合わせてワイバーン1羽分を使ったから、要らないとか言われたらめげる。

◆◆◆

「どうだった?」

「ああっ、最高だった…こんな素晴らしい事があるなんて」

そりゃそうだな…最高の美女が初体験の相手、しかも超一流の風俗嬢で最上級の2時間コース、最高に違いない。

「良かったよ…それじゃ帰るか」

「ああっ、だが理人お前、今日は遊ばなかったそうじゃないか? なんでだ?」

「今日は勇者である親友のガイアの為の遊びだ、次回は俺も楽しむよ…ちょっと用事があってな」

他の皆へのプレゼントの話は少しタイミングを見た方が良いな。

「そうか、俺ばかり悪いな」

「いや、良いんだ勇者はモテるだろう」

「ああっ凄くモテるんだな」

実際にモテるのは事実だが…風俗だからお金を払えば更にモテるのは当たり前だ。

◆◆◆

久々にガイアと二人で歩いた。

夜風が気持ち良い…ガイアは上機嫌だ。

「なぁ、今日あった女達を見てどう思った?」

「凄く綺麗で『ああいうのを絶世の美女』そう言うんだな、そう思ったぞ」

「なぁガイア、これは他の三人には絶対に言わないで欲しいんだが、少し話して良いか?」

「構わない…男同士の話だな、解った」

随分と温和になった者だ。

「今日一緒に過ごした女達とあの三人を比べてどうだった」

「聞きづらい事を聞いてくるな…悪いが今日理人が用意してくれた女の方が遥かに上だったよ」

そりゃそうだよな…聖女だ賢者だ剣聖だというが外見だけで言うなら村娘…化粧すら真面にしていない田舎娘だ。

村では美人でも都会の本当の美人からみたら只の芋ねーちゃんだ。

ましてガイアも田舎者だから、都会の綺麗な女がさぞかし綺麗に見えただろう。

「俺にとって一番大事な親友はガイア、お前だから親友として、また一緒に馬鹿する様な悪友として言わして貰うけどよ…あの三人にお前は勿体ないよ」

「なんだよ急に」

少し顔が曇ったな。

だが動揺しているから此処から叩き込む。

「勇者のお前なら、今日相手した女クラスなら、簡単に尻尾振ってついてくるんだぜ…しかもあれでもお前が手にする女の中じゃ中の下なんだ、そこを考えた方が良いぞ」

「ちょっと待てよ、ロザリーやチョチョリーナの程の美人、俺は見たことが無いぞ、あれでも理人は俺の手にする女の中で中の下と言うのか? はっきり言ってしまえば、嫁にしたい位だ」

流石は田舎純情ボーイだな。

「やはり気が付いて居なかったか…悪い、パーティで唯一の男の俺が教えてやるべきだったな…勇者のお前が魔王を倒すだろう、そうしたらこの世の女なんかよりどりみどりなんだよ! 本物の貴族の令嬢から山ほど縁談が来るんだぞ」

「おい、マジか?」

「マジかじゃねーよ、こんなのはまだ付録だよ…本命は美姫で有名なマリン第三王女とか、美しい燃えるような赤髪の帝国の第二王女ティーナとかからの縁談が来る可能性も高い」

「おい…マジかそれ」

「それに勇者パーティ所属の男は複数婚可能だから 王女が正室、他の女が側室だぜ…欲しければエルフの奴隷も買って愛人か側室にできるんだ…そんなハーレムがお前を待っている。流石のロザリーもその中じゃ並み以下だな」

「お前騙しているんじゃないのか?」

「違う、本当の事だ…嘘だと思うなら少しは勇者の本とか読めばわかるぞ、歴代の勇者の中でハーレムを望んだ者は全員、そのレベルの物は手にしているんだ」

当たり前じゃないか?

魔王を倒すんだぜ…何でも手に入る。

「悪い、俺は字があまりな…」

知っていたさ。

此処で畳みかけるか…

「今までのお前は童貞の魔法に掛けられていたんだ、やりたい盛りの男がやれない状態で女三人と暮らすんだぜ…傍にいる女が特別な女に見えてきて当たり前だ…戦場に行くと女が居ない状態に何か月も晒されるからゴリラみたいな女騎士でも美女に見えるらしぜ…よくある事だ」

金で買えるレベルとはいえ『最高の女』を抱いた今のお前ならどうだ。

三人は平凡に見えるんじゃないか?

「確かに、大した女じゃないかもな」

そりゃそうだろう。

俺の前に居た世界で、三人クラスメイトでそこそこ可愛いレベル。

それが三人のレベルだとすれば、今日用意したのはナンバー1キャバ嬢にフードルクラスの女、外見だけならアイドルでも可笑しくない女だ。

「まぁ、今後どうするかよく考えた方が良い」

「そうだな…」

「それでな…親友のお前にお願いがあるんだ」

「なんだ急に…」

「あの三人にプレゼントしたり、デートするのを許してくれないか? ああっ勿論四職(勇者 聖女 賢者 剣聖)だから一線を越えたり、キスなんてしない」

「それなら俺と一緒に夜遊びした方が楽しく無いか?」

「それはそうだが…ガイアも含む4人とはもうすぐ、お別れだからな、小さい頃から10年以上一緒に居た幼馴染なんだ、前にも言ったが俺はお前達との思い出が欲しいんだ」

「あのよ…俺はもし魔王を討伐してもお前とは親友で居るつもりだぜ」

「無理だ、恐らく魔王城の手前の街で別れて…それが俺たちの最後になる。その後はガイア達が魔王を倒し…凱旋パレード、その後はもう俺なんか手の届かない所に皆が行ってしまう…もう無理なんだよ」

「でもお前、リタに…」

「俺だって1人は嫌だ!1人位幼馴染に傍に居て欲しいと思っていたんだ…まぁ寂しがりの俺の我儘だった…それが良く分かったよ」

「なんだか、悪かったな…良いぜ、三人と自由に付き合えよ、存分に思い出を作れば良い、だがあいつ等は4職だから魔王と戦うのに必要だ、一線は超えるなよ」

「解つている…だが良いのか? 三人ともお前の恋人じゃないのか?」

「そうだな…だが、理人…なんだかそれも解らなくなってきたんだ」

「まぁ時間は山ほどある、魔王と決着する時までに決めればいい…だが三人をとるなら、他は多分無理だぞ」

「ああっそれは解る…あいつ等は結構独占欲が強い」

「相談も気晴らしも俺が居る限り付き合うから、ゆっくり考えるといいさ」

「ああっそうしてくれ」

これで、3人から心が離れたかもしれないな。

第5話 甘やかす

少し眠い。

昨日の体験が余程楽しかったのか、明け方までガイアが俺の部屋で話し込んでいた。

今日泊まっている、この宿屋には残念ながらキッチンはついていない。

だから、朝食を予約することにした。

どうせなら…高級店デファニーにしようと思う。

今から出かけてくるか?

◆◆◆

「こんな朝っぱらなんの用ですか? お店なら8時からですよ」

「朝食の予約を取りたい」

「あのお客様、当店は高級店ですので、通常は1か月前に予約を入れなければ無理ですよ…当日なんてふざけないで下さい」

「そこを何とかお願いします」

「駄目な物は駄目です、例え貴方が貴族でも無理ですね」

「ほう…こんな事はしたくないんだが…」

「脅すつもりですか? 衛兵を呼びますよ」

「衛兵? 来た所で黙って帰っていくよ、もし揉めようもんなら確実に叩きのめせる…俺は竜より強い」

「デファニーは高級店です、脅しには屈しません! 斬りたければ斬れば良い」

「あのさぁ…俺の頼みを聞かないとお前だけの命じゃすまない、お前の家族全員がこの世界で生活出来なくなるぞ…」

「何の冗談ですかな? まるで国王の様な言い方をして頭がおかしいのですか」

俺はそのまま冒険者証を見せた。

「俺の名は理人、勇者パーティブラックウイング所属だ。此処で食べる予定の者は、聖女のマリア様、賢者のリタ様、剣聖のエルザ様だ、もし時間が取れれば勇者のガイア様も来るかも知れない…それを断ると言うのか?」

「ですが…食材が間に合いません」

「お前たちは勘違いしている…勇者様と聖女様は教皇様が中央聖堂で跪く存在…つまり女神の次にこの世界で偉いのだ、今日この場所に教皇様が来てもお前は食事を出さないのか?」

「そんな」

「勇者保護法にもちゃんと書かれているんだ…どうする? この世で最も尊ばれる方の食事を拒むなら、もう頼まない。だがこの事は聖教国の教皇様にお話しする…どんな高級店も教会から破門を受けたら誰も来なくなるんじゃないか…さぁ選べ」

「わ、私が間違っていました。予約を入れさせて頂きます」

「無理言って悪かったな…受けてくれた事感謝する」

「いえ、勇者様や聖女様の食事を用意できるなんて光栄でございます」

今の教皇ロマーニ三世は『勇者絶対主義者』だ。

勇者や聖女を二職といい、四職の中でも差別する位に勇者や聖女が好きな人物だ。

ある意味、狂信者と言っても可笑しくない。

冗談ではなく、勇者や聖女に恥をかかしたとなれば、本当に破門位には平気でする。

だから、俺の言った事は嘘ではない。

最も、本当にそんな事したら、パーティの評判が悪くなるから、普段はそんな事はしない。

◆◆◆

「ガイア、朝だぜ飯食いに行こう…良い所を予約したんだ」

「う~ん、昨日やりすぎて疲れたし、少し二日酔いなんだパスして良いか?」

「デファニーだけど」

「美味しそうだが、うぷっ、無理だ…思い出作りで、ほら4人で行って来いよ」」

「なんだか悪いな」

「良いんだ…今夜でもまた話ししようぜ」

「解った」

随分一日で雰囲気が変わったな。

◆◆◆

「エルザ起きているか?」

俺はドア越しに話した。

「ああっ起きているぞ…」

「今日の朝食は外食だから、出かける準備をして下に降りてきてくれ」

「解った、マリアとリタは私が声を掛けた方が良いかな?」

「そうしてくれると助かる」

「ああっ頼まれた」

エルザは野営の時は早く起きて剣を振るうから、いつも早起きだ。

他の二人は、どちらかと言えば寝坊タイプだ。

流石に幼馴染とはいえ、この齢になると部屋に入って起こす訳にいかないから凄く助かるな。

待つこと10分3人が降りてきた。

「理人おはよう」

「理人おはよう~ふわぁ」

3人が起きてくるまで10分。

これで解ると思うが…3人ともお化粧なんて全然していない。

前世で散々ワンレンボディコンのけばい女と過ごしてきた俺にはこの化粧気の無さは…実は好きだったりする。

「それじゃ行こうか?」

「おい、ガイアはどうした?」

「ああっガイアなら二日酔いだからパスだそうだ」

「ガイア行かないんだ」

「そうなんだ」

あからさまにガッカリしているな。

特にリタ…こういう顔されると、流石の俺も少し傷つく。

「今日の朝食は、凄く美味しい所を予約したから、期待してくれ」

「そうか」

「そうなの」

「だけど、何処で食べても、そんなに変わらないよ」

驚かせてやる。

敢えて説明しないで連れて行き驚かす。

これが、サプライズだ。

「さぁ着いたぞ…入ろうぜ」

「「「ここ(なのか)」」」

「そう、此処デファニーだよ…さぁ入ろう」

「ここは予約が取れなくて有名なんじゃないか?」

「確か予約1か月待ちと聞きましたよ」

「よくとれたね」

「まぁ、皆に喜んで貰おうと頑張ったんだよ」

「そうか、そうかありがとうな」

「ありがとう、理人」

「理人ありがとうね」

「さぁ、入ろうか」

「「「うん」」」

少しはサプライズできたのかな。

「これは…これは理人様よくおいで下さいました」

脅しが効いたのかかなり緊張しているな。

「ああっ、こちらが聖女マリア様、こちらが賢者リタ様、そしてこちらが剣聖であられるエルザ様だ、今日は最高のもてなしを頼む」

「はい心得ております」

「「「理人?」」」

「エスコートするのは俺の役だから気にしないでくれ」

そのまま個室に通された。

脅しすぎたのか?

態々VIPルームを用意していた。

「なぁ理人、一体どうやったんだ? 此処どう見ても普通じゃないぞ」

「エルザ驚く必要は無いな、まぁVIPルームって奴だ」

「凄いのは良いのですが…」

「大丈夫なの?」

まぁ、3職とはいえ、元は村娘、貴族でも何でもないから、こういう贅沢にはガイアと同じで慣れていない。

「支払いとかは気にしないで良い、此処は俺のおごりだ」

「あの、何でだ…」

「私に食事をおごる意味があるの?」

「私はその…別れたんだよ」

「ああっ、気にしないでくれ、3人がガイアの事を好きなのは知っているし、リタの事も完全では無いにしろもう諦めはついたよ…だから、これは、前に話した思い出作りの1つだ」

「「「思い出作り?」」」

「ああっ、皆が俺の事を気遣って言ってくれた事は解っているし感謝もしている…多分俺の実力じゃ魔王城の中では戦えない、だからその前の街でお別れだ…これは実は俺も解っていたんだ、そこがきっともう、永遠の別れだ。もし長く一緒に居られてもそこで終わりだ」

「そんなことは無いだろう、私は幼馴染だ、恋愛ではないが理人は友人だ」

「そうよ数少ない友達だわ」

「そうだよ恋人関係は終わらせても友情や幼馴染まで解消はしていないよ」

「そうじゃない…魔王を倒せばその後は凱旋に祝賀会…そしてもう俺とは住む世界が違う、ガイアと一緒になるなら王族、貴族との付き合いが多くなる筈だ…多分3人とも側室とはいえ庶民ではなくなる…もう一介の冒険者の俺とは違う世界の人間だよ、だから君たちと居られる最後の時間、それが今なんだ」

「そうだったのか…その、なんだ、この間は済まなかった」

「私も意地悪いったわ…ごめんなさい」

「私は…」

「リタは気にしないで良い…どうしても一人で良いから傍に居て欲しくて自分勝手に告白した…今思えば俺が悪い」

「ううん…そんな事ない」

「ただな、俺にとって三人は全員初恋の相手なんだ、1人じゃなく誰でも良いから生涯傍にいてくれたら、それだけで幸せ…そう思えるほどに魅力的な女の子なんだ…本当だよ」

確かに三人はガイアが好きだ。

だが、小さな村で一緒に育ったから…次に好きなのは俺の筈だ。

幼馴染として過ごした期間は10年を超える。

全く俺に気持ちが無いとは考えられない。

「ああっああ、そうだったのか?」

「まぁ私は気が付いていましたよ」

「まぁ、付き合っていたからね、解るよ」

ガイアへの思いが10なら俺にも5位の思いはある筈だ。

「それでな、俺の思い出作りなんだが、大好きな皆にしたい事をする事にしたんだ」

「ちょっと待てよ、私はもうガイアと付き合っているんだぞ」

「私だってそうよ」

「私も」

「知っているよ…だからこれは俺が一方的に好意を伝えるだけだ、勿論、キスやそれ以上の恋人がするような事はしない…ただ最後に思い出作りをしたい、それだけだ、勿論誤解されないようにガイアにも話を通したから安心して欲しい」

「そうか、ガイアに話してあるなら別に私は良いぞ…まぁこれでお別れというなら私だって寂しい物はある、幼馴染との思い出なら私も欲しい」

「そうね10年以上の付き合いだし、私も良いわよ思い出作り」

「ガイアが良いと言ったのよね、それなら良いよ」

「そう、ありがとう…とりあえず食事が来たから食べようか?」

「ああっそうだな、凄く美味そうだ」

「うん、凄く美味いわね」

「美味しいね」

まぁ朝食とはいえコース料理だ、美味いよな。

やはりVIP室で正解だな。

皆テーブルマナーなんて出来やしない。

当たり前だ…戦いの日々でそんな物は学んでいないんだからな。

◆◆◆

「凄く美味しかった、ありがとうな理人」

「こんな美味しい料理は初めてです、ありがとうね」

「うん、美味しかったよ」

「どう致しまして」

満足してくれて、良かった。

だがこれからが本番だ。

「それでね、皆にプレゼントがあるんだ」

「「「プレゼント?」」」

「はい、これ」

「おい、流石にこの箱は私でも知っているぞ…高級宝石店のだ」

「知らないわけないわ」

「一体、何が入っているの」

「良いから開けてみて」

「「「うん」」」

「これ…」

「ああっエルザは勇ましい女の子だから獅子をデザインに選んだんだ、どう気に入ってくれたかな?」

「気に入らない訳ないだろう、うん凄く綺麗だな」

「私のは天使ですのね」

「マリアは聖女だから天使が良いんじゃんないかと思ってな、どうかな」

「私、こんな高価なプレゼント貰った事ないわ、気に入らない訳はないわよ」

「私のはなんで蛇なの」

「蛇は俺の前世の世界では知識の象徴なんだ、賢いリタに凄く似合うだろう」

「へぇ~そうなんだ…ありがとう」

「プレゼントは良いが何で私達にこれをくれたんだ」

「ああっ、これは大好きな幼馴染へのプレゼントだ」

「私達にくれても…その何もしてあげられないわ」

「私も何も答えてあげられないよ」

少しへこむが…それは解っている。

「ああっ別に良いんだ、見返りなんて期待はしていないからな、ただ覚えておいて欲しい、その為だけに贈ったんだ」

「なんだ、それは?」

「俺という幼馴染が居た…それだけ覚えておいて欲しい…それだけだ」

「おい」

「えっ」

「あの…」

「勘定ならもう済まして置いたからゆっくりしていってくれ…俺は先に行くな」

「「「あっ」」」

まずはこんなもんかな。

第6話 ガールズトーク 嫌われ者
「理人はどういう気持ちでこれを買ったのだろうか?」

このペンダントがどれ程の価値があるのか、剣ばかりに生きてきた私だって解かる。

王室御用達の印が箱に押されている。

これは庶民ではなく、貴族や王族が買うようなお店で購入した物だ。

しかも、獅子だ。

どう考えても私の事をイメージしたオーダー品としか思えない。

「知らないし解らないわ、ハァ~本当にどうして良いか解らないわよ、嫌いな男なら突っ返すけど、相手が理人だもん、本当にどうして良いのか解らない」

マリアが困る位だから、私やリタは更に困るな。

多分、私達3人は多かれ少なかれ理人には好意を持っている。

私の中の理人は弟のようであり兄のようであり…私が男なら理人は親友というポジションだ。

一緒に居て楽しい存在でもあるんだ。

それに、もしガイアが勇者でなければ1/2の確率で理人の嫁さんになっていた。

一般人は複数婚は出来ない。

ガイアは3人の中ならマリアが一番のタイプだから恐らくマリアを選ぶ。

すると、当然リタと私があぶれるから、普通ならどちらかが理人と結婚する可能性が高い。

もし、四職にならなかったら、私とリタは理人争奪戦をしていたはずだ。

理人は気が利くし良い奴だからな…案外友達みたいな夫婦になっていた可能性はあるかも知れないな

私は気の置けない親友を恋愛を求める事により失うかも知れない…だから理人から逃げてガイアにいった。

それが、今更、初恋の相手だと言われても困ってしまう。

「なぁ、リタ、リタはなんでガイアに乗り換えたんだよ…理人から指輪を貰っていたよな? あれは婚約みたいな物じゃないのか?」

「私を悪者みたいに言わないでよ! ガイアを除くなら、理人が一番なのは確かよ、今だってこんな事されたら気持ちが揺らぐわよ、だけどそれを言うなら皆だって同じじゃないの? この中に理人が嫌いなんて言いきれる人いるの? 皆、2番目は理人じゃないの? 私はガイアは私に興味なんて無いと思っていたから理人の思いに答えたの…だけどガイアから告白されたんだから仕方ないじゃない…タイミングが悪すぎるのよ…ああっもう、本当に困るわ。理人がもっと嫌な奴なら良かったのに、ガイアとは比べられないけど、両親と比べたら理人を取りかねない位の…変な愛情があるのよ」

「エルザ、今更リタを責めても仕方ないわよ? あのままリタが理人と付き合って結婚、その結末は私も良かったと思ったのは確かだけどね」

「だろう? そうすれば…」

「今は、たらればの話をしても仕方ないわ…幸い理人はもう自分で決着つけたみたいだし『思い出作り』これに協力してあげれば良いんじゃない」

「だが、それで本当に良いのか? 理人は、そこそこイケメンで、私達につぐジョブ『魔法戦士』だ、他を探せば幾らでも相手がいるだろうに…」

「エルザ、そんなだから、男女なんて言われるのよ」

「そうだよ…理人は多分女に外見なんか求めてない気がするよ、小さい頃から一緒に過ごした思い出があるから、私達なんじゃないかな? そういう人だよ理人は」

「あのよ…そこ迄解っていて、何で理人からガイアに乗り換えたんだよ」

「また、その話し…仕方ないじゃないガイアの方が理人以上に好きなんだから、好かれていないと思っていたのに告白されたんだよ! そりゃ…」

「まぁリタは、性悪ビッチだから仕方ないわね」

「まぁそうだな、歴代嫌われ賢者ナンバー1、現勇者パーティ嫌われ四職ナンバー1だもんな」

「何、それ、酷くない? いい加減に私を悪者にするの止めて欲しいんだけど」

「いや、これは事実だから」

「冒険者、特に女冒険者には好感度ゼロどころかマイナスよ…私『リタなんか死ねばいいのに』そう酔っぱらって泣いている女冒険者も見たし、『ああいう女は碌な死に方しない』そういうギルドの職員の話も聞いたわ」

これは事実だ。

「なんで…ねぇ何で私、そんな人気ないの?」

「自覚無しか? 良いかお前、ギルドや街で散々理人と付き合った事自慢していただろう? しかも腕を組んで歩いたりしていたし、お揃いの指輪までしていたよな」

「そりゃ付き合っていたんだから、その位するよ」

「理人はあれでも面倒見がよいから結構な人気者なのよ…それを手ひどく振って、勇者に走った『ビッチ女』そう呼ばれて、やっかみも入って本当に嫌われているのよ!女冒険者にね」

「嘘だよね…只の冗談だよね?」

「決して冗談じゃない…賢者じゃ無かったら路地裏でブスッとか有っても可笑しく無いな」

「そう…私、そんなに嫌われているんだ、賢者なのに…」

「まぁどんまい」

「人気何てこれから回復していけば良いんだ」

「そうだね」

そこまでの覚悟は無かったのか。

『優しいと評判の理人を捨てて勇者に走った』

誰が見てもそう取れるし、本当の事だ、仕方ないだろうに

第7話 偽りの失意と次の予約
◆時は少し遡る◆

「最近はリタさんと一緒じゃないんですね」

受付嬢のハルサさんに聞かれた。

今までよく一緒に居たんだ、そりゃ聞かれるよな。

「あっさりと振られて、他の男性に取られちゃいました」

「えっ、理人様が振られたんですか? 凄い優良株なのに?信じられません、理人様以上の男性なんてそうは居ませんよ…相手は誰なんですか?」

「そう言われると凄く嬉しいですが、お恥ずかしい話、相手はガイアです。 あはははっ流石に勇者には勝てませんね」

「あの、失礼ですが勇者ガイアと理人様は仲の良いご友人同士に見えたのですが…」

「そうですよ、今も親友ですよ…ただガイアもリタも『恋愛と友情は別』そういうタイプなだけです」

「そうですか…お気の毒に」

「俺の事は気にしないで下さい…それよりこのワイバーン討伐俺が受けて大丈夫ですか?」

「それは塩漬け依頼ですから構いませんが、顔色が悪いですよ…大丈夫ですか?」

「今は仕事を頑張りたいんです」

「そうですか…頑張って下さいね」

俺はわざと、今にも泣きそうな悲しい顔を作ってギルドを後にした。

俺は別に悪く無いよな。

本当の事をただ言っただけだ。
人間…悲しければ愚痴の一つ位言いたくなるし、悲しければ泣きそうになる…当たり前の事だよな。

◆現在◆

「それでなぁ理人、次はいつ行くんだ」

「ああっそれじゃ、今夜早速いくか?ただどうする?」

「どうするって…どういう事だ?」

「いや、同じ子を指名するのか? それとも新たな可愛い子を探すのか? どっちが良い?」

「なぁ、理人、チョチョリーナさんより綺麗な子は居ると思うか?」

ロザリーじゃなく、チョチョリーナ…ね。

勇者ガイアは、そちらをお望みという事だ。

「だったら、今度はダークエルフかそのハーフのお店でも探してみようか? だが、今回は下準備がまだだから、今から街に行って探そうと思うんだが、3人には上手く言っておいて貰えるか?」

「ああっ、俺が用事を頼んだ事にする」

「それじゃ夜にまた部屋に迎えに行くからな」

この分なら飲みは要らないか…

童貞を卒業したばかりのせいかやりたい盛りなんだろうな。

なら『飲み』よりあっちだな。

俺は冒険者ギルドに向かった。

夢も希望もないが…冒険者の多くはかなり風俗を利用している。

下級の冒険者は安い場所をつかい…D級前後が高級風俗を知っている者が多い。

それ以上になれば、普通に恋をしたり場合によっては奴隷を購入する。

そして、そんな冒険者に風俗の情報を与えてお金を得る者もいる。

まぁ、前の世界で言うなら『風俗紹介所』みたいな物だな。

最も前の世界みたいにお店として構えるのではなく、冒険者が金稼ぎでやっているだけだ。

「はぁ~最高のお店を教えて欲しいだと! それはお客の好みだからな? どんなのが良いんだ?」

「ダークエルフ系の綺麗な女性が居て、それで可能なら長いコース設定が可能なお店が理想だ」

「あのよ…あるにはあるが…かなり前から予約を入れないと無理だぞ」

「それは問題ないから情報を教えて欲しい」

「ダークエルフ系でお勧めなのは…」

俺は情報を聞いて…その店に向かった。

◆◆◆

此処か?

『ブラッククリスタル』

「すみません、此処にジザベルとイザベルって娘いますか?」

「はい、居ますよ。ちょっと予約表みますね、ジザベルなら明後日の18時~ イザベルは明後日の19時~なら予約可能ですよ」

「いや、今日の18時から明日の朝まで借り切りでお願い致します」

「あのお客さん、話し聞いていましたか? 明後日まで無理なんです」

「そこを何とか入れて下さい」

「無理ですね、それにうちはオールナイトコースなんてやってないんだ、冷やかしなら止めてくれませんか?」

まぁ良いさ。

俺にはどんな無理な願いでも叶える魔法のアイテムがある。

勇者パーティの冒険者証だ。

俺は冒険者証をとりだして見せた。

「俺の名は理人、勇者パーティ、ブラックウイングのメンバーだ。そして俺は今夜、勇者ガイア様の相手を務める相手を探している…つまり、ジザベル、イザベルの相手をするのは勇者ガイア様だ、それでも断るのか?」

「ですが、もう予約が入っていまして…それに当店は0時で閉まるんです」

「あのさぁ、勇者様と言えば貴族や王族はおろか教皇様を超える貴人。その方への奉仕を断ると言うのか?」

「ですが…今日の予約を楽しみにしているんですよ…皆が」

「ほう…本当に断るのか? それなら『勇者の名前を出して断られた』と中央教会に伝える事になるな、風俗店の管轄は教会だ、この店の営業許可は無くなるな」

「そんな、貴方は勇者パーティですよね、それがこんな脅しみたいな事するんですか」

「脅し…脅しじゃ無いですよ! 勇者に奉仕するのはこの世界の人間の義務、そう勇者保護法にもある、勇者様は女神様が選んだ救世主。 人類の為に命かけて戦う勇者様は誰より優先される…そう思いませんか?」

「そんな詭弁だ」

「さっきから煩いな…本当の脅しって言うのはこういうのを言うんだ」

俺は剣の柄に手を掛けた。

「なっ何を…」

「勇者パーティは貴族階級以下は斬り捨てごめんだ、俺はまだ一言も斬ると言ってない…何処が脅しなのか言って欲しい…ちゃんと法律にも『勇者の徴収を邪魔する事は出来ない』とある」

「解りました、今日の予約を受けました…オールナイトコースで良いです」

「ああっ、受けてくれて感謝する…そうだせめてものお詫びに代金は2倍払うよ、それと迷惑賃として貴方に金貨3枚(約30万円)女の子にもそれぞれ金貨3枚払うよ…先払いでね、それじゃ二人で精いっぱいの奉仕を頼んだぞ」

「畏まりました」

◆◆◆

ハァハァ…こういうのはやっぱり俺は苦手だ。

人を脅したりする事は苦手だな…

まぁ良いや、これで今夜もガイアは楽しめるだろう。

ただ、こんな事を続けていたら…金が無くなる。

教会に提案したあれが通ると良いんだが…まぁ期待しないで待つか。

第8話 二回目の男の遊び

「今日のお店は此処なのか?」

「なかなかの門構えだろう? それで遊ぶ前に、少し話があるんだ」

「なんだ? 何かあるのか?」

「此処の所の遊びだが、俺が暇な時に狩りで稼いでいるんだが、流石にキツイ…教会と話をさせて貰って良いか?」

「親友だから任せるが大丈夫か?」

「これも過去の話だけど、結構相談に乗って貰えるみたいだ『娯楽費』が貰えたり、他にもサポートして貰えるみたいだ…勿論、会計役のリタには内緒でガイア専用で貰えるようにしたいんだが、どうだ?」

「なんだよ、改まって言うから驚いたが、俺に良い事ばかりじゃないか? 任せたよ…なんだか俺ばかり悪いな」

これで教会や教皇と話をする権利が貰えた。

先走って話を進めていた事があるがこれで大丈夫だ。

「良いって事よ…さぁ入ろうぜ」

「ああっ!」

◆◆◆

「これは、これはよくぞいらっしゃいました、勇者ガイア様」

「ああっ、遊びにきてやったぞ」

「お相手は勇者であられるガイア様だ、最高のもてなしを頼むぞ、オールナイトで2人…二輪車でな…」

「ちょっと待て…オールナイトで2輪車ってなんだ?」

「ああっガイアが前の時、楽しそうにしていたけど、時間が短いのを気にしていたから『朝までコース』にしておいたよ、これはこの店には本当は無いんだが、交渉したら店長が喜んでOKしてくれたよ」

「本当か? 悪いな…」

「良いって事よ」

「それで2輪車ってなんだ」

「それは女の子が二人で相手してくれる…そういうコースだ、これも特別に『勇者』だから受けてくれた事なんだぞ」

「そうか、本当に悪いな礼を言うよ!」

「さぁ、嬢がきたみたいだぞ」

「ジザベルです!」

「イザベルです!」

「「今日は宜しくお願い致します」」

「今日も凄い美人だな、ナイスだぜ理人!」

「そうか良かったな、流石に朝は迎えに来なくて良いよな」

「なんだよ理人は遊んでいかないのか?」

「こういう特別な遊びは『勇者』しか許されないからな」

まぁ、通常ではありえないコースだ。
「悪いから1人お前に回そうか?」

「いや、ここはガイア一人で楽しんでくれ、折角特別なコースを頼んだんだ…その代り、明日にでも感想を聞かせて欲しい、あと今日は三人をちょっと豪華なディナーにでも誘うつもりだけど良いよな?」

「ああっ構わないぞ、だけど本当にそれでお前は良いのか?」

「ああっ、俺にとって一番大事なのはガイアお前だけど、他の三人も大事な幼馴染なんだ」

「良いぜ、本当は親友だから口説いちまえって言いたい所だが…立場上言えないが、それで楽しいなら存分に楽しんでくれ」

「ああっそうさせて貰うよ、三人には適当に言っておくからな…それじゃ勇者ガイア様のお相手頼みましたよ」

「ああっ頼んだ」

「「はい」」

ガイアは二人に腕を組まれてそのまま奥に消えていった。

「苦労されますね」

「さっきは脅すような事して済まなかったな」

「良いんですよ、何だか苦労されているみたいで…当店で良ければ、またお力になりますよ」

額面通りに受け取っちゃいけない。

これは『沢山の迷惑料』を払っているからの言葉だ。

「ありがとう、ガイアはその…ちょっと大変なんだ、また変わった事を頼むかも知れないから、その時は宜しく頼むよ」

「はい、何時でもご相談にのりますよ」

俺は店のオーナーに笑顔で見送られ店を後にした。

第9話 オートクチュール
「今日もガイアは居ないのか?」

「仕方ないじゃないか? ガイアは勇者だから忙しいんだよ」

「だけど、討伐も此処の所、していないし、別に疲れる事はしていないわ」

「そうよ、そうよ」

「男には、そういう日もあるんだ、偶に一人で飲みに行ったり、男同士で飲むの位許してやらないと嫌われるぞ…その分埋め合わせは俺がするからさぁ、許してやれよ…」

「まぁ理人がそう言うなら私は構わないが…」

「居ない人の事をとやかく言っても仕方が無いわね」

「まぁ理人で手を打つかな」

この間の食事とペンダントが地味に効いている気がする。

多分、それが無ければ断られた可能性も高い。

「それじゃ行きますか? 姫様方」

「姫、お前なに言っているんだ」

「ぷふっキザですわね」

「なんの冗談、似合わないわよ」

確かにな…だがこれならどうだ!

宿の外には高級馬車を泊めてある。

勿論、御者もいる。

俺はエスコートするようにエルザの手を引いた。

「それでは参りましょう」

さあ…『アッシー君』の本領発揮だ。

この世界にはマーク?もソアラもスープラもBMWも無い。

だが、やる事は一緒だ。

「ああっ、あの理人?」

「どうしたのこの馬車…」

「これ、まるで貴族の馬車じゃない…」

驚いたか…そうだよな。

勇者パーティと言っても普段の旅は徒歩だ

乗っても乗合い馬車だ。

こんな高級な馬車なんて普段乗らない。

「何を言っているんだ? 勿論3人の為に用意したに決まっているじゃないか? 皆は凄く綺麗なんだから、こういう馬車が凄く似合うよ」

「あのな」

「あのね」

「私、こんな馬車」

3人の前に赤い絨毯が御者の手によって敷かれる。

「良いから、良いから乗ってくれ、周りが注目しているぞ!」

「ああっそうだな」

「そうね」

「うん」

サプライズはこの位派手な方が良い。

この世界の教会は『勇者』や『聖女』にはトコトン甘い。

近くの教会の大司教に聖女達に慰労をしたいから高級な馬車を借りたい…そう相談したらこの馬車を何処からか借りてきた。

大方、どこぞの貴族から借りてきたに違いない。

一神教のこの世界、貴族よりある意味教会の方が立場は上だ。

何だか三人とも落ちつかないな。

まぁ、三職とはいえ元は村娘だからそりゃそうだな。

「こんな凄い馬車を借りて、何処に食べに行くつもりだ」

「そうだな、マリア達に相応しい場所だよ…その前に1か所寄り道して良いかな!」

「私は別に構わないが、何処に行くんだ」

「別に構わないわ」

「良いけど、何処に行くの?」

「それは内緒、行ってからのお楽しみだ」

「「「そう」」」

◆◆◆

「さぁ着いたよ」

「おい、本当に此処なのか…」

「流石に場違いですよ」

「そうだよ」

確かにそう思うよな。

だが、そんなのは関係ない。

俺は間違いなく此処で頼んであるんだから。

『高級ドレスショップ ラチュール』

貴族から王族、大商人の娘までもが憧れるドレスショップだ。

通常なら3年待ちと言われる程の人気のお店で全てのドレスがオートクチュールの1品物で二つと無い。

俺は勿論、待つ気は無いから…『勇者特権』とおなじみの教皇の名前を出して短期間で作らせた。

まぁ、防具の修復と洗濯は俺の仕事だからサイズは解ってたしな。

「大丈夫だから行こう…ほら」

「ああっ」

「ええっ」

「そうね」

何で顔面が蒼白なのか解らないな。

◆◆◆

「これは、これは理人様、お待ちしていました」

「頼んでいた物は出来ているか? 聖女であるマリア様、賢者であるリタ様、それに剣聖であられるエルザ様に相応しい出来を期待している…あとこれから出かけるから着替えもお願いしたい」

「はい…ただいま用意させて頂きます」

「頼んだ」

「おい、理人これはどういう事だ?」

「まさかと思うけど…」

「此処は3年待ちが当たり前と聞いたよ…」

普通はそうだ、流石に買えるなんて思わないだろうな…

「なに言ってるんだか、此処はドレスを買う場所だよ、ドレスを買わない訳ないだろう? 3人に似合いそうな感じに仕上げて貰ったから…行った、行った」

「おい…」

3人とも女性店員に引っ張られる様に連れていかれた。

凄くたどたどしく歩いている…転ばないと良いな。

「理人様は何かお飲みになりますか?」

「そうだな紅茶を頼もうか?」

「はい、ただいま」

俺は一応男物のタキシードモドキに着替えた。

まぁドレスのついでに頼んだ、女性物と違い簡単に作れるらしい。

靴や小物も用意して貰ってコーディネートと化粧も頼んで置いたから時間は掛かるな。

俺は紅茶をすすりながら三人を待った。

一番最初に終わったのはエルザだった。

「理人、私にはこんなのは似合わないと思うんだが…」

「そんな事はない、凄く似合っているし綺麗だ」

「本当にそうか? 剣ばっかり振るっている、私だぞ」

「そんな事はない、本当に綺麗だよ」

エルザに用意したのは前の世界でいうチャイナドレスだ。

足が長く背が高いエルザには普通のドレスじゃ似合わない。

それに活動的な彼女ならこう言う足が出るようなデザインが向いて居る気がした。

「そうか、それなら良いが…少し変わったデザインだな」

「それは、俺が考えて、此処のデザイナーと話して作った物だからな」

「理人が考えたのか?」

「まぁな」

「あの、お連れ様にも飲み物をご用意しましょうか?」

「ああっお願いする、ミルクティーを入れてくれ」

「畏まりました」

エルザはミルクティーが好きだから、これで良い筈だ。

次に終わったのはリタだった。

「私こういうの着た事ないから、どう可笑しくないかな?」

リタに用意したのはいわゆるロリータファッションだ。

背が低く胸が小さい彼女には良く似合う気がする。

白を基調にして清楚なイメージにしてみた。

「凄く似合っている、見違えたよ」

「そう…それなら良かったわ」

飲み物を勧めて来ないから、すぐにマリアの準備も終わるのかも知れないな。

少し遅れてマリアが来た。

「なんだか、少し恥ずかしいわ」

「恥ずかしく思う必要は無いよ…まるでお姫様みたいだ」

「そうお世辞でも嬉しいわ」

マリアのドレスは純白のよくあるドレス。

だけど、生地と飾りにかなり気を使って作って貰った。

聖女の彼女には下手になにか考えるよりオーソドックスな物の方が似合う気がした。

「さぁ出かけるか」

「本当に何処に行くんだ」

「聞くだけ無駄ですよ」

「まぁ良いや、きっとまた驚かすんだね」

「それは内緒だよ」

再び俺は彼女たちをエスコートするように馬車に乗せた。

第10話 ホテルにて

「さぁ着いたぞ、行こう」

「此処なのか?」

「本当にこんな所を…」

「あの理人…嘘、本当に?」

驚いてくれたみたいだ。

俺が予約したのは『王国ホテル』貴族や王族階級が好んで使うホテルだ。

最も大本のホテルは王都にあるから此処は支店とか別院扱い。

それでも1泊辺りスィートルームは1泊あたり金貨17枚(170万円)は下らない。

「此処だよ、俺がしたかった事、それは着飾った皆と一緒にこう言う豪華なディナーを食べる事なんだ…これも俺の我儘だから気にする必要は無いよ、俺が皆と一緒にしたい事なんだから…まぁ昔から思い描いていた夢の一つだよ」

「理人、お前の夢は随分と私達を幸せにするような夢なんだな」

「これが理人、貴方が私としたかった事なの?」

「これが本当に、私としたい事だったの? 信じられない」

まぁ驚くよな。

やるなら徹底してやる…中途半端はしたく無いからな。

「そうだよ? 初恋の相手と幸せに過ごしたい。大好きな相手と楽しい時間を過ごしたい、男なら当たり前の事だと思うよ…まして相手が、大好きな凄く綺麗な幼馴染だったら、少し位見栄位張るよ」

「あの理人、私は、そのな」

「その、そんな風に思われていたの?」

「こんな風に私と過ごすのが理人の夢だったの?」

「まぁな…恥ずかしいから何度も言わないよ…まぁ良いじゃないか? さぁ行こう」

「「「うん」」」

◆◆◆

勿論三人はテーブルマナーが出来ないから、ちゃんと個室を取っている。

「これはこれは理人様、お待ちしていました」

「今日連れてきたのは見ての通りだ、最高のもてなしを頼む」

「畏まりました、肉と魚メインは選べますがどちらが良いですか?」

「どっちが良い」

「え~と解らないから理人にお任せる」

「そうね、任せるわ」

「私も」

「そう、それなら肉料理で、あるなら柔らかい子牛の物が良いな」

「畏まりました、それでワインは」

「お任せで構わないけど、渋みが少ない赤があったら、それにして欲しい」

「畏まりました」

俺は席までエスコートして席を引こうとしたが…流石は高級店、給仕の人がしてくれた。

「それじゃ乾杯」

此処は個室だし給仕も最低限でお願いしていたからゆっくり談話も出来る。

「嬉しいな…」

「どうかしたのか?」

「いや、やっぱり皆、凄く綺麗だ、昔から思っていたけど、やっぱり貴族なんて比べ物にならない位美人だ」

「ななな何を言い出すんだ」

「言いすぎだわ」

「そんな事ないわ」

「王城に行った時から思っていたんだ、ちゃんとお化粧してしっかりした服装をすれば、絶対に皆の方が綺麗なのにってな…個人的には呼び出したくせに、そういう物を用意しなかった国に腹がたっていたんだ…やっぱりそうだよ…うん、凄く綺麗だ、美姫と呼ばれるティーナ姫よりうん、やっぱり綺麗だ」

「剣ばっかり振るっている女だ、言いすぎだぞ」

「そうよ、流石に姫様とは比べられないわ」

「流石にそれはお世辞だよね」

まぁな。

「ハァ~リタ、俺は世界で一番可愛い、そう思ったからプロポーズしたんだ…あはははっ、そう考えたら俺の方が先に浮気したのかも知れないけど、俺は三人はタイプが違うけど同じ位綺麗だと思ってた、いや、今でも思っている」

「そうなのか?あ~あ、私が姫より綺麗だなんて、趣味が悪いな」

「うふふっ、まさか、ティーナ姫より綺麗だなんて、最高の誉め言葉だわ、ありがとう理人」

「そこ迄、私好かれていたんだ」

「もうこの話は無しだ、無し恥ずかしいから、食事に専念しよう」

「「「そうね…うん」」」

案外、楽しく話せたせいか時間はすぐに過ぎ去っていった。

「そろそろお開きだね」

「それでこの後は流石に何も無いよな」

「いや、あるよ、ちゃんとこのホテルロイヤルスィートをとってある」

「あっ、いや…それじゃ不味い…」

「うん、それは…聖女だから答えられない」

「うん…ごめんね」

顔が少し赤いな…困っている証拠だ。

この表情は、満更でもない気がする。

「誤解させて悪かった!勘違いしないでくれ、三人が俺じゃなくてガイアを好きな事を嫌に成程知っているから…だから俺は此処迄、今日は本当にありがとうな、ただ、俺は此処でリタイヤするが、皆にはちゃんと、ロイヤルスイートをとってあるから、今日はそのまま堪能して行ってくれ…俺はこのまま馬車を返しに行くから、明日は悪いが何時もの宿まで自分たちで帰ってきて欲しい…それじゃこれカギだ…じゃあな! 」

「「「理人…」」」

俺はわざと肩をすぼめて足早にその場から立ち去った。

第11話 金貨1200枚 
凄いな、理人が用意してくれたこれ…まるで体が蕩けるようだ。

浅黒の凄い美人が俺の事をひたすら気持ちよくする為に、あんな事ややこんな事までしてくれるんだ…二輪車とは良く行ったもんだ。

1人じゃなく2人でして貰う事がこんなに凄いなんて思わなかった。

しかも、このサービス、理人が俺の為に頼んで実現したそうじゃないか…持つべき物は、親友そんな所か?

「はい、ガイア様」

「これはなんだ?」

「水タバコですよ、ちょっとした薬草もブレンドしていますからより興奮するし口当たりも良いんですよ」

「そうか、こういうの俺初めてなんだ」

何だか驚いた顔しているな…どうしたんだ?

「そうですか? 案外病みつきになりますよ」

「そうか?…案外いけるな」

「そうでしょう、さぁどうぞ」

1本の水タバコを三人でまわしながら吸うのか…何となく背徳的な気がする。

「あの…聞きたい事があるんですけど…良いですか?」

「ジザベル、遠慮しないで何でも聞いてくれ」

「あの…理人様とガイア様の関係ってどんな関係なんですか?」

「あっ、それ私も聞きたいな」

何でそんな事聞くんだろう?

「ああっ彼奴は俺の親友だよ」

「親友なんですか?」

何で驚いた顔するんだ…俺と理人が親友だと可笑しいのか?

「イザベル、俺と理人が親友だと可笑しいのか?」

「あの…余りに噂と違うので驚いただけです」

「噂? なんの噂だ…」

「いえ、あくまで噂ですから」

「別に気にしないから言ってくれないか?」

「イザベル、ほら」

「うん、あのあくまで噂なんで気にしないで下さいね」

「解った」

嘘だろう…リタの事がそんなに噂になっているのか?

俺が理人から略奪した、確かに嘘じゃない。

だが、これは不味いぞ。

「その噂は嘘だ、リタは俺の事が好きで付き纏っているが、俺はその気はない、親友の恋人に手を出したりしないぞ」

「やっぱりそうですよね! あのビッチが勝手に乗り換えようとしただけですよね」

仮にも賢者なのに…この噂は不味いな。

「そうだ、俺も困っているんだ、好きでもないのにな」

「本当にあのリタビッチ性悪ですね、勇者様と同じ指輪しているなんて、きっと同じ指輪どこかで買ったんですね」

裏切ったのがリタという事だから俺に飛び火していないが、俺の略奪としれたら次は俺がこう言われるのか。

「ああっ凄く迷惑してるんだ」

「そうだよね!勇者様がそんな事しないって私は信じてますから! それで 私って勇者様から見て綺麗ですか?」

「ああっイザベルは凄く綺麗だよ」

「マリア様と比べたらどうですか?」

「比べ物になるわけないだろう? イザベルやジザベルの方がずうっ可愛いし綺麗だよ」

「本当ですか?凄く嬉しい」

「ねぇねぇ、もしかしてマリア様やエルザ様の指輪もリタと同じなのかな?」

賢者なのにリタは呼びつけ…相当嫌われているんだな。

「そうだよあの二人にも本当に困っているんだ、俺は勇者だからこれから魔王と戦うんだ、その為には『聖女』『賢者』『剣聖』とは仲良くしなくちゃならないんだ、それを彼奴ら本当に勘違いして困っているんだよ…」

「嘘っ本当かな? 怪しいなー――っ」

「うん、凄く怪しい気がする」

「はははっ俺が君たちに嘘なんて付くはずが無いじゃないか?」

「あの…勇者様ってそれなら恋人とか婚約者とか居ないんですか?」

「いないよ」

「嘘っ、それじゃ、三人が婚約者と言うのは嘘なんだ…」

「ああっ間違いだ」

「本当かな?」

「俺は嘘なんか付かないよ」

なんだ…これ凄い体を密着させてきて、さっきから頭がくらくらして二人の事ばかり考えている…

「ねぇ、ガイア様、それならこんな安物の指輪要らないよね」

ああっ駄目だ二人の事しか考えられない。

「ああっ要らないな」

「それならこれポイしちゃうね」

窓から指輪が…別に良いか…

「あの…ガイア様ぁ、私の事好きですか」

「ああっ大好きだ」

「ねぇねぇ私も?」

気持ちが良くて二人の事しか考えられない。

「ああっ好きだ愛している」

「あの…それなら私達と結婚しませんか? 勿論、側室で構いませんから」

「うん、私、勇者様が魔王を倒して帰ってくるまで待っていますから、貰ってくれませんか?」

マジか?

ダークエルフの美女が俺に結婚を申し込んできたというのか?

理人のいう事は本当だったのか…

「それ嘘じゃないよな?」

「はい、だけど私達娼婦だからお店から出る為に『身請け金』が居るんです、正直ガイア様には一目ぼれです…ですが無理ですよね」

「どんなに好きになっても私たちは娼婦ですから…汚れた女、ガイア様が『身請け金』を払ってまで傍に置いてくれるわけありませんよね」

本当にこんな美人が心から愛してくれていたのか?

見受け金さえ払えれば、側室になって貰えるのか…

「その金額は幾ら位になるんだ…」

「ごめんなさい…金貨1200枚(約1億2千万)になるんです…良いんです。無理なのは解っていますから」

「ごめんなさい…無理言いましたね、さぁ少し休んだし続き頑張りましょう」

凄く悲しそうな目だな。

綺麗で神秘的で…
俺も二人の事が好きだ…

さっきから体が凄く熱い。

これはチョチョリーナの時には無かった。

これが愛なのかな…もう3人なんてどうでも良い…

魔王討伐すらも…いや駄目だ、俺は勇者だそこだけは捨てられない。

「金貨1200枚、それだけ用意したら俺の側室になってくれるのか? 暫く待ってくれ、俺が必ずどうにかする」

「「本当ですか?」」

「ああっ勇者に二言は無い」

「嬉しいです」

「本当にありがとう…えへへっお礼に頑張っちゃいますね」

「私も…」

こんな美女が俺の側室になってくれるなら、確かにあの三人は魔王討伐以外の目的じゃ要らないな。

理人の言うとおりだ…だが金だ。

金が必要だ…理人に泣きついてみるか…親友だからきっとどうにかしてくれるよな…

第12話 これって…
「なぁ、マリアこれって、さぁ」

口に出さないでも解ります。

此処迄されて気が付かない女なんて居ないでしょう。

「エルザの考えている『それ』に間違いないわ…見返りは無い、プロポーズですね…」

「そうだよな、告白した所で私達がOKすることは無いし結果は解っている…それなのにこれをするんだ、そう思うと切なくてな」

「そうだよね、なんで私達なのかな?」

「それ、リタが言うのか?お前は最初理人を選んでいたんだよな…なんでお前はガイアに乗り換えたんだよ!」

「だって、ガイアから告白受けたんだから、仕方ないじゃない? 私ガイアの事が好きだったんだから!」

「本当にそうなのか? ガイアが勇者だからじゃ無いのか? だったら何でリタは理人の告白を受けたんだよ…」

「だって、ガイアは二人が好きで私みたいなタイプは嫌いみたいだったし…仕方ないじゃない」

此処の子は幼馴染なのに…人の事が全く考えられないの。

それをしたら、傷つくなんて気が付いてないのでしょうね。

「リタ、私やエルザは、最初からちゃんと意思表示していたわ、小さい頃からね、ちゃんと…貴方はどうなの? いつも理人の傍にいたじゃない? 他の女の子にも『理人は私の物なの』とか『私の彼氏』ってマウントとって居たじゃない?それでなんで…」

「仕方ないじゃない! また私が悪者扱いなの! ガイアが好きでも二人が居るから無理! そうすると村でその次に自カッコ良いのは理人だもん…しょうがないじゃない」

そんな気持ちだったわけね。

「私もリタは責められない…ねぇリタ、貴方はもう理人は良いのね?理人じゃなくガイアを選んだのよね…」

「そうよ! また何か言うの?」

「言わないよ…私も最低な女だから、私は解らなくなって来たわ…理人とガイアでどうして良いか解らないの」

「おいマリア…お前もなのか?」

「お前も…という事はエルザもなのね」

「まぁな…ガイアの側室なら、案外、理人の方が良いんじゃないか? そう思う自分が居る」

そう…そこが問題なのよ。

ガイアは勇者だから複数婚になる。

そしてその結婚相手の中に王族や貴族も居るから、私は一番じゃない、そして多分2番でも居られない気がする。

3番手以下の側室…幾らガイアが好きでも、そんな生活耐えられるのか解らないわ。

他の女と一緒にいる姿を見た時、愛し合っている姿を見た時冷静でいられるだろうか…解らない。

本当は1人で独占したかった、だけどそれが無理なのは、解っていた。

私とエルザとガイアの世界に…リタを入れてきたガイアだもの…此処から絶対に増えるわ。

「そうね、ガイアの3番手いかになるなら、理人の1番の方が良いのかも知れない、そう思うのよ! これは最低なのは解るのよ! だけど、私が一番愛しているのはガイア、それは嘘偽りはないわ!自信をもって言えるわ! だけどね、だけどね…私を一番に愛しているのは多分理人なの…無理なのに、それなのに…尽くして、尽くして、本当に馬鹿な奴…だけど気が付いちゃったのよ! 今の理人の姿が、きっと私の未来の姿だわ、どんなに尽くしても一番になれない。側室になった『私の姿』それが今の理人なんだって…だから私は『解らない』ガイアが好き…それが言えない私は、リタと同じだわ」

どうして良いのか解らないわよ…なんでこうなるのよ…本当に。

「私も同じだ、今でも私は2番手、マリアの次だ。マリアの序列が下がれば当然、ガイアからの気持ちの序列も下がる、3番手4番手になる位なら、理人の一番の方が良い…そう思うようになったよ。私はこんなに女らしく、大切に扱って貰った事はない、まるで今が夢のようだ、マリアの言うとおり、ガイアが今も好きだけど…今ですらガイアの一番は私じゃないマリアだ…愛される喜びを私は知ってしまった…もうどうして良いか解らないよ」

私でさえ心が揺らぐんだからエルザが揺るがない訳ない。

「ちょっと…まさか二人とも…まさかね」

「正直言えば、私は自分の気持ちが解らない…ねぇリタ、貴方はなんで理人の一番を蹴ってまでガイアの3番以下を選んだの?」

「私もそう思ったよ、一途に愛してくれる理人を蹴って、なんでガイアの私以下を選んだんだ」

「えっ、私って…3番以下なのかな」

「当然よ? 三人の中でガイアが貴方を好きなのは3番目、それは解るよね」

「私が三番目? ああっ…そうね、そうだわ、うん…」

「しかもそれはこれから下がる一方なんだぞ」

「そう…だよね」

リタはお花畑だから解っていなかったのね。

◆◆◆

「なぁマリア…もう寝たか?」

「ううん、寝てないわよ、リタは寝たみたいだけど」

「さっきの話だけどさぁ…ぶっちゃけどうするんだ?」

「解らないわ、でもね心が揺れ動いているのは本当なの、もし今の天秤が理人気持ちが傾いたら、どうなるか解らない…怖いな」

私だって同じだ。

「なぁマリア、こんな事考えちゃいけないんだけどな、このペンダント見るたびに思うんだ、これが理人の気持ちなんじゃないかなってな」

理人は勇者パーティに所属しているが、四職でないから国からの支援は無い。

だから、これを買うお金は当然自分で稼いだお金だ。

ドレスも食事もホテルもペンダントも、全部、自分の狩りで稼いだお金だ。

「そうね…理人が私達の世話や家事をしながら合間を縫って依頼を受けたり、狩りをして稼いだお金で買ってくれた物ね」

「ああっ…それなのにこれ、どう見ても高いよな」

「当たり前じゃない、王室ご用達の宝石にドレス、一流レストランの高級ホテル…好きすぎなのよ…理人は私達を」

「だな…物で人を決めちゃいけないが、理人は私達に自分の出来る全てを使ってくれた、それに引き換えガイアは」

「そこらへんの露店で買った指輪ね、これは」

「あ~もう、リタが悪いんだ、幼馴染として理人と結婚すればもう終わりだった筈なのにな」

「それを言うならエルザ、貴方が行けば良いじゃない」

「あ~本当に困るんだ! 今の理人かっこよすぎだろう? 心が動くんだよ本当に…自分が自分で無くなる位怖い」

「貴方がそう言うなら、そうなのね…見ていて食事から所作はまで凄く綺麗、正装をするとあんなにカッコ良いなんて思わなかったのよ…誤算だわ、本当に」

「それでマリアは本当の所どうなんだ?」

「心は凄く動くわ、ズルい女、そう思われるかも知れないけど、理人には魔王と戦う直前まで居て貰おうと思うの」

「それはどういうことだ?」

「私は聖女だから、魔王討伐から逃げられない…その時までに心を決めるわよ…正直、本当に解らないのよ」

「そうか、それならその話し…乗っても良いか」

「そうね…それが良いかも知れないわね」

私は最低な事を考えているのかも知れない。

だけど理人に此処迄心をかき乱されるなんて思わなかったな。

第13話 勇者の土下座と契約書
久々の一人だ。

今日はガイアもマリア達も居ない。

暫くはゆっくりしているか…

トントントン…

どうした?

三人は朝食のブッフェの予約をしたから恐らくは10時過ぎまで帰ってこない。

ガイアだってオールナイトコースで入れているから、まだ2時間は帰ってこない筈だ。

だれだ一体。

こんな朝早くから迷惑だ。

本当に誰だ…

「はい、今ドア開けますよ」

俺はドアを開けた…そこには…

「どうした…ガイア随分と朝早いじゃないか? まだ時間過ぎて無いだろう?」

「いや、この時間なら、エルザ以外は起きていないだろう?親友のお前に折り入って頼みがあるんだ」

態々起きてない時間を選んだって事は三人に聞かれたくない話しの筈だ。

「それは三人には内緒の話し、そういう事だな」

「ああっそうだ、親友のお前にしか頼めない事だ」

「三人は別の所に泊まっている、だがあと2時間もすれば帰ってくるから場所を変えようか?」

「ああっ、そうしてくれると助かる」

「解った」

なんだ…あのガイアが相当思い詰めている気がする。

それに目に隈があって凄く眠そうだ。

まぁ、こっちはあれの疲れだろうが…

俺はガイアと一緒に近く別の宿屋に来た。

前の世界と違って早朝から空いているファミレスみたいな物は無い。

定食屋を兼ねた酒場は空いているがこの時間は混んでいる。

だから自然と落ち着ける場所はこうなる。

前世のラブホと違い普通の宿屋だ。

討伐に夜間出ている冒険者は昼間眠る事もあるから、男同士で入っても可笑しいと思われない。

俺は宿屋に入り、オプションの朝食2人分を頼んだ。

「それでガイア、頼み事ってなんだ?」

いきなりガイアが俺の前に土下座をした。

あのプライドの高いガイアが土下座だと…このまま足で踏みつけたらさぞかし爽快に違いないが…流石に、今はしない。

「理人、頼みがある、俺に金貨1200枚貰えないだろうか?」

金貨1200枚だと前世でいう1億2千万じゃないか?

しかも貸してくれじゃなく…貰えないかだと。

「どうしたんだ…そんな大金、何に使うんだ」

「実は…」

ぼそぼそと話し始めた。

何となく話が読めてきた。

本当に呆れた…

幾ら童貞を卒業した純情ボーイでも勇者だろう。

恐らくは水タバコに麻薬か媚薬を仕込まれたんだよ、気付けよな。

そうしたら…通常よりかなりの快感を感じる。

その状態で二人で頭が一杯になったガイアを口説いたんだな。

「金貨1200枚か、流石に用意は難しいぞ」

こうなる事も考えて行動もしていたが…早すぎる、この状態になるまで俺の予想ではまだ2か月は掛かると思ったんだが…間に合わなかったか。

「理人お願いだ、その金額を用意できればイザベルとジザベルが結婚して側室になってくれるんだ、この通り頭を下げる、お前しか頼りになる奴が居ないんだ…なぁこれをどうにかしてくれたら、お前の願い、何でも聞いてやるから、本当に頼む、親友だろう?」

幾ら美人でも娼婦だお金さえ払えば抱ける女だ。

それに娼婦である以上は『身請け』か『年季明け』しか自由になる方法はない。

ましてダークエルフなら奴隷として買われてきて『年季明け』が無いかもしれない。

すると…『身請け』しか自由になる方法はない。

多分誰にでも『身請け』して欲しいと言っている筈だ。

爺だろうが誰だろうが娼婦をしているよりましだからな。

「…」

普通なら『無理だ』『馬鹿な事を考えるな』そう言う。

前の俺なら殴って目を覚まさせたが…今の俺はしない。

「なぁ理人そうだ、リタ…そうだお前にリタを返してやる、それでどうだ? 幼馴染で婚約者、好きだったんだろう? 返してやるからな…それで良いだろう? 金貨1200枚でリタがお前の物だ、俺も親友から奪う気は無かったんだ、なぁこれなら良いだろう?」

「…(どうすれば良い)」

金貨1200枚か…幾ら俺でも難しいな。

ワイバーンが1羽、金貨500枚だが、2羽じゃ足りなくて3羽必要だ。

俺じゃ頑張っても1日1羽が限界だ。

だが、空を飛ぶワイバーンを3羽も短期間で狩れるわけない。

どうやれば良いんだ。

ガイアが娼婦を側室にするチャンスだ。

是非ともどうにかしたいな…

「ああっもう解った、確かに彼奴らじゃ俺には釣り合わない! だがお前は幼馴染好きだろう? 『思い出が欲しいんだろう』もう、そんな必要は無い…マリアもエルザもリタも全員お前にくれてやるどうだ? これなら…良かったなもう『思い出』じゃない全員お前のもんだ…そして俺はお前に感謝するぞ…友情フォーエバーだな」

「…(腹を括るか)」

仕方ない、このチャンスは逃せない。

危険だが地竜をか水竜を狩るしかない…

決めた、やってやる。

「おい、理人聞いているのか? 親友の俺がお前の為にだな」

「あっごめん、考え事していた、それでなんだ?」

「だから金貨1200枚用意してくれたら三人をお前にやるって…」

マジか…

ガイアは本当に大丈夫なのか?

だが、此処迄のチャンスは二度と無い。

「そこ迄言ってくれるなら、俺も死ぬ気で金を用意する…だが金貨1200枚は大きな話だ、ギルドで公正証書作って貰ってよいか?」

「ああっ構わないぜ、流石は親友だ」

確かに金を用意できるのは俺だけだしな。

勇者は基本討伐してもお金は貰えない。

その代わり必要なだけ幾らでも教会や国から金が貰える。

だが、流石にこんな理由でお金は貰いにくいだろう。

「下賜扱いの拝領妻扱いで良いんだよな」

「その辺りはお前の好きで良いよ」

「解った」 

◆◆◆

商業ギルドに来た。

「いらっしゃいませ、勇者ガイア様に理人様、今日はどういったご用件でしょうか?」

「公正証書をお願いしに来た…大きな話だから証人2名は出来るだけ地位の高い人間にして欲しい、あと三国王宮預かりで頼む」

「解りました…そうですな証人2人は商業ギルドのギルマスと冒険者ギルドのギルマス…そしてもう一人通信水晶ですがこの街の領主 ブラウン伯爵様を加えた三人で如何でしょうか?」

「さっさと済ませちまおうぜ、なぁ」

「そうだな、その三人なら文句ない、お願いする」

流石勇者ガイアが直接絡んでいるだけある…すぐに準備が整った。

「それで証書にしたいのはどういった内容でしょうか?」

「簡単な内容だ、理人が俺に金貨1200枚を渡す、その代り、マリアとエルザ、リタの三人を理人にやる、そういう内容を書け」

「えっ、冗談ですよね」

「ふざけんな冗談じゃない…急いでいるんだ早くしろ」

「ひぃ、畏まりました」

「ちょっと待って」

「待て」

「証人が口を出すのは違反ですよ」

口を挟まれたら不味い…

「そうだ、俺は急いでいるんだ、早くしろ」

「「あっ、解った」」

「はい」

「『拝領妻』の名目で『下賜』する者とする。それを付け加えて下さい」

「あのガイア様、本当に良いんですか?」

「さっきから言っている、俺は時間が惜しい…早くしてくれないか!」

「はいただいま…急ぎで処理します…出来ました、それでは…」

書かれた内容を読み上げた。

多分、二人のギルマスと水晶越しに見ている領主は破棄して欲しい。

そう思っているに違いないな。

「それでは内容に問題が無ければ二人とも署名捺印をお願い致します」

ガイアと俺が署名して拇印を押した。

今回は勇者絡みだから、三国扱いにした。

この証書と証書のコピーが商業ギルド、冒険者ギルド、王国、聖教国、帝国の三国の王宮預かりになる。

その結果絶対に誰であろうと破れない制約となる。

「以上で手続きは終わりました、お疲れ様でした」

無事手続きは終わり、ガイアと俺に預かり証が渡された。

「それで、いつまでなら金貨1200枚用意できそうなんだ?」

「そうだな…流石に1週間は欲しい」

「そんなにかかるのか?」

「ああっ、このお金をどうにかするなら地竜か水竜を討伐するしかない、幸いな事に塩漬け依頼にどちらもあったから行ってくる」

「おい、大丈夫なのか? 死ぬなよ」

「あはははっ、死んだらごめんな…だがガイアが土下座までしてまでの頼み事だ、それに俺の欲しかった者を全部くれたんだ、死ぬ気で頑張るよ…一応、三人には指名依頼で出かけたと言ってくれ」

「解った、伝えておく」

「あとこれ、渡しておくな」

「おい、この金は…なんだ」

「俺に必要な金を残した残りだ、これから身請けしようとする女が他の男に抱かれるのは嫌だろう、それ位あれば1週間は貸し切れる」

「そうか、重ね重ね済まないな」

「良いぜ、親友だろう」

俺は冒険者ギルドに行き悩んだ末、地竜の依頼を受けた。

第14話 三者三様
すべて上手くいったな。

本当に危なかった、ジザベル達から話を聞かなかったから下手したら俺が悪者になる所だった。

『まさかリタが理人から俺に乗り換えた事』がそこまでの噂になっているなんて知らなかった。

本当は俺から積極的に口説いたんだが…そこはばれていない。

俺の勇者としての評判が落ちると不味いから、悪いがリタにはそのまま悪役で居て貰おう。

俺は今、目が覚めた。

4人の中で要らないと思っていた理人こそが俺にとって必要な人間だった。

本当に要らなかったのが本当は三人だった。

理人は俺に言った『俺とあいつ等は釣り合わない』と。

最初は少し警戒したが違った。

彼奴らは確かに可愛くて綺麗かもしれないが…あくまで少しはだ。

本物の美人を知ってしまったら、駄目だ。

『何て無駄な時間を過ごしてしまったのか』それしか思わなくなった。

マリアもエルザもリタも…戦うという一点を除いてしまえば、なんの価値も無い事に気が付いたよ。

料理や洗濯、家事は全部理人がやっている。

戦う使命があるから、やる事は出来ない。

今までは可愛いいと思っていたから許せていたが『それは嘘だった』

彼奴ら、女として終わっているじゃないか。

本当に綺麗な女性を見てしまったら…大した顔やスタイルじゃない。

一番ましなマリアだって平凡だし…

エルザなんてふくよかさなんて全くないな、あんな筋肉女じゃ今となったら抱く気にならない。

リタは背が低くガキみたいだ。

ただでさえ大した女じゃないに『やれない』んだぜ 「魔王との戦闘」が無いなら要らねーよ。

まぁ、今となっては、あの程度の女に無駄打ちしたくねーな。

その分、ジザベル達みたいな女に使った方がいいに決まっている。

『本当に無駄な時間を過ごした』

理人が居てくれて助かったわ。

彼奴が居なかったら、未だにあんなブスのご機嫌を取っていたのかと思えば…本当にぞっとするわ。

まぁ、魔王討伐迄は一緒に居るのはうざったいが我慢しかねーな。

理人の女になったんだから理人が上手くやるだろう。

しかし、理人は…あんなのの何処が良いのかね…まぁそのおかげで助かったけどよ…

俺にとってはもう使える駒にしか思えない要らない女を引き取ってくれて美女二人の身請け金をくれるんだ…

本当の親友だな。

これでリタの件もどうにかなるだろう。

もう誰もリタを略奪したなんて思わないだろう。

寧ろ、親友の為に幼馴染を全て譲った男として周りには『良い奴』に映るんじゃないか。

我ながら『良い奴』に思えるな

うん、要らない者を受け渡して、相手に満足までさせて、自分が本当に欲しい美女が手に入り、飛び火も防ぐ、一石四鳥じゃねーの。

案外俺は勇者だけじゃなく商人としても優秀なのかも知れないな。

◆◆◆

全く、冗談みたいな話だ。

女を知ってしまったせいか、麻薬か媚薬を盛られたせいなのか…少し、いやかなり可笑しくなっているな。

まさか、金貨1200枚で幼馴染を売り飛ばすとは思わなかった。

この世界では文字が書ける人間は6割弱。

ガイアは昔から勉強は嫌いだった。

四職だから恥をかかないように最低限の知識は教わった筈だ。

マリアやリタ、エルザはマナーこそ苦手だが、本を読んだり文字を書くことは出来る。

リタに至っては賢者の補正があるのか学者みたいに思える程、頭が良い。

5人の中で文字が書けないのはガイアだけ…いかに彼奴が勉強が嫌いだったかが良くわかると思う。

だが、それでもガイアはリーダーだ…パーティの事になればちゃんとした判断が下せていた。

少なくとも、昔のガイアなら、こんな事はしない。

『下賜』とは身分の高い者が身分の低い者に物を与える事を言う。

この世界では王が、功績のあった者に褒美を与える為に使われる事が多い言葉だ。

拝領妻とは、多分過去に異世界人が持ち込んだ可能性が高いが、身分の高い者が妻としている人物を部下に与える事を言う。

つまり…自分の妻を部下に与えるという意味だ。

実際に大昔の魔王討伐の功績で勇者が『王妃』を望んだ為に、約束だからと王が王妃を差し出した事があると聞いた。

今回の場合は、マリア、エルザ、リタはガイアと同じ指輪をしていた事から、婚約もしくは事実婚の状態にあったととれる。

つまり悪い言い方で言うなら『婚約者もしくは婚姻関係にある三人を俺の妻にと下賜した事になる』

勇者は、あくまで形式的にだが『この世界の人間で女神の次に偉い』とされているから行動的には問題が無い。

俺も一応は勇者パーティに所属しているから多数婚は認められているから受け入れるのに問題はない。

何が言いたいのかと言えば『拝領妻』なので『妻』なのだ。

あの書類にガイアと俺がサインした瞬間から、既にマリアもエルザもリタも俺の『妻』…結婚してしまった事になるんだぜ。

『本当にそうなのか?』と言われれば『本当にそうだ』としか言えない。

だって教会で一番偉いのは『女神の使いである勇者』だ、しつこく言うが『勇者』だ、その人間がサインした以上はこの結婚は有効で恐らく、王や教皇ですらもうどうにも出来ない。

公の書類にしてしまった以上…これは無効だと言えば勇者であるガイアの顔に泥を塗る事になるし、もしこの書類を無効だと言うなら『勇者であるガイアが書いた公文書が守られなかった』そんな汚点になるから守らない訳には絶対にいかないな。

多分、今頃…すべての書類に正式に俺の妻として三人が登録されている筈だ。

まさか、此処迄簡単に話が進んでしまうとは思わなかった。

俺から仕掛けたとはいえ、大丈夫なのか。

後は目の前のこの『でかぶつ』を倒すだけだ。

聞いてねーよ…ギルドの話では小型の筈だった。

それでも地竜である以上金貨2000枚は下らない。

それでも象2頭よりでかいのに…此奴はその数倍ある…大きさによって価格は変わるから、この大きさなら金貨1万枚は下らねー。

最悪、俺は死ぬかもしれない。

最後の最後にこれかよ

◆◆◆

「本当に美味くいったね」

「うん、本当に…これで多分、ガイア様、身請けのお金を必死になって集めるんじゃないかな?」

「そうあって欲しいわ、青い空の元自由に歩きたいもの、流石にあちこち売り飛ばされながら600年も娼婦をやり続けるのも飽きたわ」

「そうよね、幾ら私達が、本当はダークエルフとインキュバスのハーフだから、SEXが大好きでももう疲れたよね、それにどちらも姿形が変わらない種族だから人間には解らないけど、私達老婆だもんね」

「まぁね、もしエルフやダークエルフの男性がいたら『加齢臭がする』そう言われても可笑しくないわ」

「だよね…だけど人間は短命だから丁度良いんじゃない」

「そうねダークエルフの平均寿命からして数十年の命だけど、人間寿命とならどうにか釣り合うんじゃない」

「娼婦になってから600年、村で300年は過ごしていたから900年だから大体だけど900歳の花嫁か…良いのかな、私多分抱かれた数は10万の男じゃきかないと思うな」

「良いじゃない、ちゃんと汚れた女と申告したもん…それでも良いって言うんだからさぁ」

「そうよね」

◆◆◆

「勇者のガイア様から指名が入ったぞ…1週間貸し切りだそうだ『身請け』も本決まりだ、お金の目安がたったから1週間後には自由だ」

「やったわ」

「うん、これはうんとサービスしないと」

「そうね、ダークエルフ秘伝の麻薬に、インキュバス、サキュバス特性の催淫薬に媚薬…うんと気持ちよくして、もう人間の女なんかじゃ相手出来なくしてあげなきゃ…きゃははははっ」

「うんうん…良いね」

折角身請けしてくれるんだもん、思いっきりがんばんなくちゃね。

第15話 私たちの『嫁』理人
本当に凄い経験だったわ。

あの後、理人がまさかのエステまで予約していたのは本当に驚きよ。

寝ていたらノックで起こされて驚いたけど…本当に気持ち良かったわ。

「本当に楽しかったな…あの朝食の食べ放題も美味い物ばかりだ」

「ブッフェでしょう? しかもマナーが不自由分な私達を考えて、小さな個室まで用意…ああっ愛されるってこういう事を言うのね」

「マリア、足がふらついているぞ」

「ああっだって本当に楽しかったんだから仕方ないじゃない」

「そうだな…しかし、あんな尽くしてくれる理人を良くリタは捨てたもんだな」

「また悪口…確かに理人は昔から優しかったけど、こんなのは初めてだよ! あれは本当に理人なの? まるで別人にしか思えない」

「確かに、此処の所のは凄すぎるけど、理人なら恋人相手に此処迄尽くすのは想像がつくわ、リタ、貴方はおこちゃま過ぎたのよ」

「どういう事よ!」

「だってそうじゃない? 理人って凄く人に尽くすタイプだわ、今までだってお金を掛けてこそいないけど、ご飯を作るのは理人だし、洗濯も全部理人…女なのに恥ずかしいけど下着まで洗ってくれているわ、宿の手配もそうだし…朝の洗面の水も理人だもん」

「そうだな、私の場合はそれに剣の手入れが入るな、聖剣と違って私の剣は魔剣だから手入れが必要だ、今思えば彼奴には小さい頃から随分世話になったよ」

「へぇ~なんだか随分理人に優しいのね」

「そうね、正直にいうわ、もう私の中の天秤は二人とも同じになっちゃったわ…自分でも最低なのは解るけど、どうしようもないの、正直にいうとね『理人を嫁にするか、ガイアの嫁になるか』の葛藤なのよ」

「そうだな、うんその通りだ…上手く言うな確かに『理人は嫁』だ、畜生、男羨ましい、男なら両方娶るのに勇者パーティーなんだから女にも複数婚認めて欲しいよ」

「そうね、それが一番だけど、現実は厳しいわ」

「あのさぁ理人は男の子だよ…それが嫁」

「よく考えて見ろよ、私たちはプロなんだよ剣聖より強い剣士なんて居ないし、マリアにしてもリタにしてもそうならないか?」

「そうなるわね」

「言われてみれば…」

「よく考えなさいよ、リタは魔王を倒した後はアカデミーで教授とかになるんでしょう? 調べものをしたり論文を作成したりして疲れているリタ、そこに笑顔で「リタお疲れ」とコーヒーとサンドウィッチを夜食で差し入れる理人…これって『嫁』じゃないの?」

「確かに…嫁だよ! 理人恐るべし」

「あら、リタは考える必要は無いのよ、ガイアの嫁決定だから」

「そうそう、流石に理人からガイアに乗り換えたのに元鞘に戻るなんて無理だよ、リタビッチ」

「リタビッチ言わないでよ、私だって、私だって…心動いているんだから」

「そう、それじゃ理人に戻るの?」

「それは流石に難しいだろう」

「ううっ」

リタは兎も角、私やエルザはもう半分解ってしまいました。

私達の生活の殆どは理人が補っている事に

これは

『理想の男性』と『理想の嫁』どちらかを取るかと言う究極の選択です

私達が『女』であれば普通にガイアなのでしょうが…

私達は多分、女じゃない気がします。

家事が全くできない。

男に多分尽くすことを知らない私たちにはもうどちらを選ぶか決まってしまっているのかも知れません。

第16話 竜
幾らなんでもこれは無いだろう?

大型だなんて情報違いも良い所だ…こんな奴だれが倒すんだよ。

貴族が住む館並みの大きさがある。

此奴が魔王の正体だと言っても信じられる位だ。

此奴、上位種の火竜より強そうだ。

『やるしかない』

「ライトニングソードっ」

剣に雷を纏わせて斬りに掛かる。

「うがぁぁぁぁー―――っ」

駄目だ致命傷にならない、全然効かない…地竜にこちらの場所を教えた様な物だ。

「うぐっ、ぐわぁぁぁぁー―――っ」

ドガドガドガッ…

「ぷはぁ…ハァハァ払われただけでこれかよ」

尻尾で払われただけで、俺は数十メートル飛ばされ当たった木が全部折れていた。

ミスリルの鎧で良かった。

普通の鎧ならこれで死んでいただろう。

だが、鎧はもっても俺の体はもたなかったようだ、肋骨は折れて駄目だ。

立つのも精一杯だ。

「ぐあるぅぅぅぅぅぅぅぅー-っ」

地竜の牙が俺に迫ってきた。

そのまま俺を咥えると放り投げた。

大きな地竜が放りなげるんだ…その高さは小さなビルより高く感じた。

このままじゃ死ぬ。

「空歩―――っ」
俺は勿論、空何て飛べない。

だが、空を僅かな時間歩くことが出来る。

そのスキルが「空歩」だ。

悔しいな…本当に悔しい此処で此奴を倒せれば…美味く行くはずだった。

だが、俺にはもう死しかない。

だが、それも良いかも知れない。

娼婦を買う為にメンバーを死なせた…ガイアは醜聞まみれになるだろう。

三人も流石に死んだら、悲しむだろう。

それで良いんじゃないか?

只の魔法戦士が「本物の竜種」それもこんな強大な奴に挑むなんて間違いだったんだ。

だが、このまま死ぬのは悔しいな…最後まで抵抗させて貰う。

せめて一撃…

ならばこれだ。

「光よ我に集え」

大昔に俺と同じ名前の勇者が居た。

『勇者リヒト』

そんなに強い勇者じゃ無かった。

魔王と戦う事すら無かったらしい。

だが、その勇者リヒトは『ブラックウイング』偶然だが、今の俺の所属パーティと同じ名前のパーティを率いていた。

大昔に居たという、同じ名前のパーティの勇者。

親近感を覚えた俺は…彼を調べた。

そして彼の技を身に着けたくて修行した…

それがこれだ…

「これが勇者のみが使える必殺技 光の翼だー――っ」

本物には及ばない。

勇者リヒトが放った時は14枚の翼の大きな光の鳥が襲い掛かるという。

俺のは精々がが人間と同じ大きさの普通の2枚羽の光の鳥が向かっていくだけだ。

こんな物で勝てるわけは無いな…

「痛ぇな…お前リヒトなのか?」

巨大な地竜が話した気がした。

◆◆◆

此処は何処だ…洞窟か?

「おい、お前、リヒトなのか?」

地竜が話しかけてきた。

高位の竜は知能が高く人語を話すと聞く。

そんな存在に挑んだ俺は馬鹿だ。

「確かに理人ですが…貴方が知っているリヒトじゃありません」

何だか寂しそうな顔をした気がする。

「そうか、人間は竜と違い短命だからリヒトが生きている訳はないな…だがあの構えはリヒトに似ていたんだが、もしかしてリヒトの子孫か?」

「残念ながら血の繋がりもありません、ただ勇者リヒトに憧れていただけです」

「なんだ弱虫勇者のリヒトに憧れているのか、お前随分変わっているな…まぁ良いよ、それで此処には何で来たんだ」

嘘を言っても仕方ない、自分の事情を話した。

「そうか…俺は地竜じゃない竜の王族の一族だ…まぁ王位継承権は無いけどね、だが地竜の死体なら奥に二つ転がっているから持って行っても良いよ、ムカつくから俺が殺したんだ、八つ裂きにしたからバラバラだけど、確か全部じゃなくて討伐証明だけで良いんだよな」

「確かにそうです」

「此処には俺と君しか居ない、自分が倒した事にして持っていきなよ…俺は要らないからね」

「良いのですか?」

「ああっ、昔の友人を思い出させてくれたお礼だ、俺の血もお前が寝ている間に飲ませて置いたから多分すぐに体の傷も治る…それじゃ俺は行くから、君は少し休んでから持っていくと良い…それじゃな、懐かしい思い出をありがとう」

そういうと強大な竜は去っていった。

勇者リヒトとあの竜にどんな思いでがあるのか解らない。

だが偽りとはいえ言い訳に『思い出が欲しい』そう言った俺にはなんとなく、あの竜の気持ちが解った気がした。

第17話 痴女じゃない

「あのモーニングブッフェ、凄美味しかったわね」

「私は体を動かすから凄くお腹が減るんだ、好きな物を自由に選べて食べ放題って言うのも凄く良い」

「うん、スイーツまであって最高だね」

「そうね…」

夢の様な時間はもう終わり。

まるで魔法に掛けられた様な1日だったわ。

それは私だけでなく二人も同じように感じていたみたいです。

帰りの馬車も理人は用意してくれたみたいで、高級な馬車を用意してくれていました。

ですが、そこに理人は居ませんでした。

「あの理人は居ないんですか?」

「はい、御者と馬車を頼まれまして、丁重に頼むとの依頼でした」

「そうですか?」

此処迄して貰ったのだからお礼位は言いたかったのですが…

それ以上に『理人』が居ない事が凄く寂しく感じてしまいました。

「おい、とりあえず馬車に乗ろうぜ、御者さんが困っているぜ」

「そうね」
「うん」

◆◆◆

「マリアにリタ、寝ている時に考えていたんだが『何で理人』を泊まらせなかったんだ? 別に一緒で良かったんじゃねーの」

「普通男女で一緒に泊まっちゃ不味いわ、常識でしょう?」

「そうだよ、これだから野蛮人って呼ばれるんだよエルザは」

確かに普通ならそうだけどよ…うちは違うだろう。

「あのよ…私ら元から常識なんて無いんじゃねーの? だってよ、若い男によ、下着まで洗わせているんだぜ、理人を男だって認識しちまったから思うんだが、狩りや戦闘のあとなんて汗でべっちゃりしているよな? どうだ?」

「あの…そうね、確かにそうだわ」

「うん」

「それによ…マリアやリタは長く歩いた後は理人に足のマッサージをさせていたよな? 結構太腿近く、際どい所迄触らせていたよな?」

「ええっ、そうね」

「ちょっと恥ずかしいけど、そうだけど?」

「他にも髪を洗ってとかして貰ったり、なんなら野営の時にトイレの際に見張って貰った事もある?」

「さっきから何が言いたいの?恥ずかしい事ばかり思い出させて」

「そうだよ、本当に恥ずかしいよ」

「私が言いたいのは3つある!1つ目は 『理人は良い奴だから絶対に私達を襲わない』そうだろう? もしその気ならもうとっくに何かされている筈だ」

「確かに」

「そうだよね」

「2つ目は、私たちと理人の関係は同棲に近いと思うんだがどうだろうか? 宿は別だが、テントは別だが野営の時は一緒だ、飯も一緒だしトイレの番までさせているんだぞ、私はこの環境は同棲だと思うが違うのか?」

「そう言われてしまえば身も蓋もないわね」

「一緒に暮らしているよね…それがどうしたの?」

無自覚は怖いな。

昨日マリアが寝ても寝付けず思ったんだ。

絶対にそうだ…

「これは私もショックだったが…私たちは痴女なのではないか?」

「ハァ~何言っているのかしら? 先の2つは納得いくけど、そんな訳ないわ、私は聖女なのよそんな訳ないわ」

「私だって違うわ、大体ビッチなんていうけど経験がない私が痴女だビッチだ言われるのがおかしいのよ」

「あのよ、言わせて貰うけど! 生なましいから余り口に出したくないけどよ、つき合っても無い男に汚れた下着を洗わせてだ、同性の仲間が居るのに『眠いのを理由に断られる』からと若い男にトイレにつき合わせる…挙句の果てに『歩いて疲れた、討伐で疲れた』と言ってマッサージさせているよな? 『結婚まで指1本触れさせない』なんて乙女の言葉にあるが…自分の体を見ながら思ったんだが、胸と穴その物以外、全部自分から触らせてるぞ? これって痴女みたいじゃないか? それにつきあいが長いから結構裸も見せている気がするんだが、どう思う」

「ああっ、そう言われてしまえばかなり破廉恥に思えてきましたわ」

「ううっそうだよ、だけど、それを何で今更いうの」

ハァ~気が付いてないんだな。

「『絶対に襲わない男』『此処迄、既に許してしまっている男』だったら、一緒に泊まっても良かったんじゃないかな? そう思っただけだよ」

「ええっそうでっしたわね」

「言われてみれば、一緒に泊まっても良かったのかも」

朝起きた時に私は思ってしまった。

『理人が一緒ならもっと楽しかった』のかも知れないと。

「そうだろう?これも理人の思いで作りの一つなら乳位揉ませてやっても良かったんじゃねーのかな」

「はっ馬鹿じゃないの? 折角しみじみ話を聞いていたのに、馬鹿ですか?台無しだわ」

「エルザは本物の痴女だよ」

「違う…此処迄して貰った、お礼にその位までなら…」

「「もう、その話は終わり」」

「解ったよ」

私は『好き嫌い』の前に理人には借りがありすぎる気がするんだ。
借りを返す為に胸位なら揉ませてやっても良いんじゃないか?

そう思ったんだが…可笑しいのか?

第18話 理人のいない1週間 その?

夢のような1日が終わり…宿に帰った時、待っていたのはガイアでした。

「お前ら、遅せーんだよ、いつまで俺を待たせる気なんだ!」

私達はガイアと何か約束していたんでしょうか?

私の記憶にはありません。

「ガイア、何か約束していましたか? 私の記憶には無いのですが」

「私も無いぞ!」

「私も無いよ」

『チェッ』

今、ガイア、舌打ちをしましたわね、そうとう機嫌が悪そうですね。

「別に約束なんてしてねーよ! 俺はこれから大切な用事があるのに時間取らされて頭に来ているだけだ…連絡は『理人は指名依頼を受けて1週間位帰らない』以上だ」

「理人が1週間居ないのですか?」

「その依頼手伝った方が良いんじゃないのか?」

「危ない話じゃ無いの」

理人だってS級冒険者、指名依頼という事はかなり難しいに決まっています。

私達はお金は手に入らないですが、危ないなら手伝った方が良いに決まっています。

「はぁ? めんどくせーわ、いちいち説明なんてする必要はねーだろう! 『冒険者だから守秘義務があるんだろうよ』俺も知らねーよ、それじゃあな」

「待って下さい、ガイアは何処に行くんですか、理人が1週間も居ないなら、少し話しませんか? お昼も近いし、そうですね何処かお店にでも…」

《ハァ~此奴本当にクズだな》

「お前らやっぱり使えねーよ、理人が居ないなら普通の女なら『私が何か作ろうか?』そう言うよな? それがお店で食べる? なぁ女が3人も居て誰も飯もつくれないんだよな? 本当に最低だな」

「この宿屋はキッチンが付いてないぞ、だからそれは出来ないだろう?」

「そうよ」

「あのよ、だったらキッチンがあれば、お前たちは料理が出来るって言うのかよ? 理人みたいによ」

「「「それは」」」

《出来ねーの言うんじゃねーよ》

「出来ねーよな…本当にお前達は女子力無さすぎだわ、終わっているよ、それじゃーな」

「ちょっと待て、理人が居ないなら当分の生活をどうするか? 考えなきゃ駄目だろうが、何が気に食わないのか解らないが、少しは冷静に…なっ」

「嘘でしょう?」

「嘘だよね」

エルザがガイアの手を掴んだ瞬間気が付いてしまいました。

『ガイアの薬指に指輪が無い』その事に…

「ガイア、何で指輪がないの」

「よく考えてみたら、親友の恋人をとっちまうのは目覚めが悪い、だからリタ、お前との話は白紙だ、そこから考えたんだが、なぁマリアにエルザ…お前達との関係も男女の関係じゃない事に気が付いた、だから二人との仲も白紙だ」

「どういう事なのよ…私は長い付き合いの中でこういう関係になったんでしょう! リタは兎も角、私は納得いかないわ」

「冗談なんだろう? 可笑しいだろうがー――っ、私から告白したんじゃ無い、お前から告白してきたんだろうが」

「私だって…そうじゃない」

「ああっ、そうだ…俺も悪いのかも知れないが、本当に悪いのはお前達だ、確かにパーティメンバーとしては優秀だが、女としてはどうだ!家事も真面に出来ない、クズ女じゃないか? お前達程何も出来ない女なんて他に居ないだろう?」

「仕方ないじゃないか! 私は剣聖、マリアは聖女だ、その為の修行をして、そして旅に出た…他の女が親から家事を学ぶ時間に修行していたんだぞ、出来なくて当たり前だ」

「そうよ…私は近くの教会で朝から晩まで回復魔法を学んでいたわ」

「私だって似たようなもんだよ…」

私達三人は家事なんて学ぶ時間が無かったわ。

仕方ないじゃない…

「だから、お前達はクズなんだよ! 理人を見ろよ! 俺たちと旅をしながら、自分の食い扶持は自分で稼いでいるぜ、その上で家事は完璧にこなし、俺たちの雑用も一手に引き受けているじゃないか? なぁ、すぐ傍にちゃんとやれている奴がいる以上、そんなのは只の言い訳じゃないか? 俺はあいつの事は親友だと思うぜ! 此処迄してくれたんだ『友情』を感じるな! だが、お前達はどうだ? 『愛している』っていうなら、それ以上の事が出来たはずだ…だからクズなんだよ! 恋人なら理人以上の事してみろ!出来ないだろうがクズ!」

「出来ないわ、出来るわけないじゃない」

理人だっていきなり全部で来たわけじゃ無いわ。

努力して出来るように…ああっそうか…

理人は私達の為に頑張っていたんだ。

「そんな事言うならガイアはなんだ! こんな露店の安物の指輪で口説いてきただろうが、しかもこれは国のお金だろうがっ、理人がくれたネックレスやドレスは自分が稼いだ金で用意してくれた高級品だ、全然違うだろう…ようく解った『もうこんな物いらない』 ほら返すよ」

「駄目、エルザー-っ」

「そうかよ、それじゃエルザはそれで良いんだな、解った…それでお前達は」

「そうね、私は要らないわ、返すわ」

エルザが返すなら、私も返すべきだわ。

だけど、リタはもう後戻りが出来ない。

「後はリタだけだな…返せよ」

「いや…ガイアが口説いてきたんじゃない! 私は、もう引き戻せないもん」

「チビ野郎! もう良いわ、そんな安物くれてやるよ、ただ、それは別になんの価値も無い、ただの記念品だ…それじゃあな!」

「うっうっうわぁぁぁぁぁぁー―――ん」

「ガイア、お前何処に行くんだ!」

「いう必要ねーだろう! 恋人でも婚約者でもねーんだからな…もうお前達とは魔王討伐以外で関わらねーからな…とりあえず理人が戻る7日後迄会う気がねーから、それじゃ行くからな」

「勝手にすれば良いわ」

ガイアの様子が余りに可笑しい。

まさか、魔族に何かされたのかもしれないわ…調べないと不味いわ。

第19話 理人のいない1週間 その?
もう理人に譲ってしまった事は、理人が帰ってから説明すれば良いだろう。

まだ説明する必要は無い。

これでもう終わりだ…終わり、後はもうあいつ等に関わるのは討伐だけで充分だ。

金も貰ったし…1週間、娼館で入り浸りながら理人を待てばよいな。

彼奴らは…知らねーっ。

◆◆◆

「ごめん、私頭冷やすために素振りしてくる」

「ええっ行ってらっしゃい、私はちょっと冒険者ギルドに行ってくるわ」

「なんでだ?」

「様子がおかしいから、ガイアの調査を頼むわ、あと理人の指名依頼について聞いてくる」

「悪い、頼んだ、私は頭に血が昇っているから…ごめん」

「良いのよ」

リタはショックだったのか、あの後部屋に駆け込んで出てきません。

理人を振ってまでガイアを選び戻る事が出来ないから私達以上にショックでしょう…

私達も茶化してはいましたが、理人と別れてガイアを選ぶのはかなりの葛藤があった筈です。

そしてその結果がこれですから…

ガイアは本当に大丈夫なのでしょうか?

私が気持ちを先延ばしにしたのはチームワークを考えたからです。

あの状態のリタが戦えるとは思えないし、ガイアへの信頼が無くなれば後ろを気にしないでエルザも斬りこむ事はできません。

最悪『愛情』は無くなっても、『信頼』は必要です。

少なくとも今の状態のガイアの為に命を張る事は二人には出来ないと思います。

私も同じですね。

さて、済んでしまった事は仕方ありません。

私は…ギルドに行きますか。

◆◆◆

「そうなんですか?」

「はい、理人様が受けた依頼は、指名依頼じゃありません…塩漬け依頼です」

指名依頼じゃない? 塩漬け依頼。

確かに理人はS級ですから塩漬け依頼も受けています。

ですが、今まで、こんな1週間もかかる依頼を受ける事はありませんでした。

私達の為に離れる依頼は多分敬遠していたのでしょう。

それが今回に限りなんでそんな依頼を受けたのでしょうか?疑問しかありません。

「それで理人が受けた依頼はなんでしょうか?」

「それは守秘義務があるのでお教えできません」

「それでは『聖女の権利』を行使します」

「仕方ありませんね『地竜の討伐です』」

地竜ですって、そんな、ワイバーン迄は亜竜。

竜と言っていますが似て異なります。

ワイバーンは一流の冒険者なら狩る事は可能です。

ですが…その上になると途端に難易度があがります。

地竜ともなれば普通は騎士団2個師団で戦う相手です。

一対一ともなれば、私達でも危険です。

個体によってはガイアでも後れを取ります。

「そんな相手の討伐を何故理人は受けたのですか?」

「ハァ~そんな事知りませんよ!」

「知る限りで良いですお教え下さい、聖女としての命令です」

「拒否します…此処から先は『勇者ガイア様』絡みですからお話しできません」

「話せないという事は知っているという事ですね」

「そうですね…もし知りたいなら『勇者ガイア』の身辺調査とご自身の事を調べれば解かると思いますよ? 依頼なら受けますが」

仕方が無いわ。

これを調べないとスッキリしません。

「それじゃ依頼しますので宜しくお願い致します」

「畏まりました、危なくない依頼ですので金貨2枚で大丈夫ですよ…明日には多分調査は終わりますから、夕方以降なら何時でも来て下さい…まぁ驚きますよ」

「そう、また来るわ」

多分ギルドはある程度の事情を知っている気がしますね。

じゃなきゃ『驚きます』なんて言わないわ。

それに理人の件がガイア絡みなら…これでガイアの事も解るかも知れないわ。

「マリア様、これはギルドではなく私個人からのお願いです」

「何かしら?」

「もう少し、理人様に優しくしてあげられませんか?」

「あの…それどういう事なの?」

「リタ様が理人様を振って以来、いつも悲しそうな顔をしていましたよ? 親友の恋人を略奪する勇者、平気で恋人を捨て勇者に乗り換える賢者…それが『人類の希望』と言われる勇者パーティがする事でしょうか? それなのに、何も見返りも与えていない男に命まで捨てさせようとしますか…私利私欲や金の為に利用しきって殺すつもりですか?」

「あの、最初のは不本意ですがその通りです…ですが後半は解りません」

「それは調査で解りますから見て判断して下さい…あの、本音で一言言わせて貰ってもいいですかね?」

「はぁ…構いませんが」

「1人の男に散々世話になって命まで賭けさせたんだ…これからはちゃんと愛してやれ馬鹿女―――っ ついでに糞リタにもう二度と裏切るんじゃねー――っそう伝えて置いて下さい」

「なっ…」

「これは言ってはいけない事でしたね! 正直言えば、私、貴方達三人が羨ましくて、妬ましくて仕方がありません。理人様は凄い人気なんですよ! あんな悲しそうな理人様見たくありません…悲壮感を漂わせいつも悲しそうで…調査の結果を見れば解かるでしょうが、地竜の討伐なんて命賭けです…理人様死んじゃうかもしれません…誰のために自分の命を捨ててまで戦おうとしているか、しっかり考えて下さいね」

泣いているわね。

「解ったわ、凄く腹が立つけど泣きながら言うのなら多分私が悪いのでしょうね…ごめんなさい」

「良いんです、冒険者ギルドの受付として言ってはいけない事を言いました…こちらこそごめんなさい…それで明日の報告なのですが、出来たら三人一緒で来ていただけますか?」

「三人って私とエルザとリタでという事?」

「はい、極めて重要な話で、ギルマスも同席でお話する事があります」

「解ったわ、必ず連れてくるわ」

◆◆◆

「これはいったいなんなの?」

「いや、理人が居ないんじゃ、飯を食いに行くか買うしかないじゃん? だから買ってきた」

串焼きだけ50本…それにお酒…

「串焼きだけですか?」

「ああっ何処で飯買って良いか解らないから目についた屋台で買ってきたんだ」

「そう…ごはんは解ったけど、なんで床が濡れていて、荷物がぐちゃぐちゃなの?」

「いやぁ~風呂を沸かそうと思ったんだけど、使い方間違って水浸しにしちまったんだ、タオルが何処にあるか解らないから探したらこんな事に」

「それならなんでリタに聞かないの?」

「まだ、部屋でグスグス泣いているから聞けねーんだよ…それよりギルドに行ってどうだった?」

「理人が受けたのは『指名依頼』でなく塩漬け依頼だったわ、しかも『地竜の討伐』だって」

「不味いな、理人が死んじまう今すぐ助けに行くぞ!」

「無駄よ…何処にいったか解らないわ、それに日時の差があるから、着いた時にはもう」

「ああっ間に合わないな…それでなんで理人はそんな依頼を受けたんだ」

「それが私達に関わっていそうなんだけど、明日まで教えて貰えないみたい」

「変だな、教えないという事はもう情報は掴んでいる…そう言うことだろう」

「多分ね」

「死なないでくれ…そう祈るしか無いな、流石に危なくなったら逃げるだろうけど」

「そうして欲しいわね…それとね」

「他にも何かあるのか?」

「そのかなり強く、理人の事言われたわ」

「仕方ないだろう」

「そうね、それで明日は三人で来て欲しいって言われたの」

「そうか…それならリタを明日は部屋からださないとな」

「まだ部屋から出てこないの?」

「ああっ、最悪一人ボッチになるかも知れない…そう思っているんだろうな」

「そうね」

「まぁ、私からしたら自業自得だ」

「確かに」

今は幾ら考えても仕方ないですね。

ですが…その前にこの水をどうにかしないと、眠れません。

第20話 理人のいない1週間 その?

しかし、良い女とはこんなに違う者なんだな。

幾ら見ていても飽きない。

抱けば抱くだけ…味が出るというか快感が増してくる。

「はい、どうぞ!」

「ありがとう」

氷魔法を使ったレモン水が出てきた。

食事は高級レストランから取って貰って…水タバコも美味い…最高だ。

凄いな、ザベル達は、この水タバコの調合も行っていて、幾つかのフレーバーがあるそうだ。

そのフレーバーによって快感に差がでるらしい。

チョチョリーナ嬢も凄いと思ったが、この快感は無かった。

だが『気が付いてしまった』

俺は勇者だから、幾らでも女を側室に出来る。

「どうかしたの?ガイア様?」

「いや、凄く幸せだなと思って」

「そうですかぁ~でも、この幸せはずうっと続いていくんですよ、ねぇイザベル」

「そうですよ…それじゃ休んだらまたしますか?」

「そうだな、よし頑張ろう」

「「きゃぁガイア様 凄ぉぉー-い」」

理人が帰ってきたら相談だな。

だが、問題は金だ…流石に理人にもう一度とは行かねー。

この店の責任者に聞いた話しではチョチョリーナも買えるらしく『なんなら話をつけましょうか?』ということだ。

『身請け金』さえあれば…手に入る。

ダークエルフが手に入ったんだ、普通のエルフも欲しい。

勇者は幾らでも側室が手に入る。

理人なら親友だ、きっとどうにかしてくれるよな?

勇者最高だ!

◆◆◆

「ほら、リタ行くぞ」

「嫌だ、私いかない…」

「いい加減駄々をこねるな、私だって機嫌が悪いんだ出てこい」

「嫌だ行かないよ…だってお外は私が嫌いな人しかいないんだもん…一生部屋からでないもん」

ハァ~ガイアに直接振られてから、まるで子供になっちゃいましたね。

そこまでショックだったんですね。

まぁ思い人に振られ、前の恋人には戻れない…そして世間はリタを嫌っている。

まぁ辛いでしょうね。

だからと言って連れて行かない訳にはいかないわ。

「仕方ない…斬る」

後で弁償するしかないですね…

エルザが扉を斬ってしまいました。

まぁ剣聖のエルザなら扉を斬るなんて簡単ですね。

「嫌だ、いやぁぁぁぁー―――外はいやぁぁー-」

「仕方ないですね」

泣いているリタをストレージに持っていたロープで縛り上げエルザが担ぎました。

勿論、猿轡をしています。

「ふぐっふぐぅぅぅぅぅぅー―――っ」

まぁ、これでも勇者パーティですから人攫いに間違われる事はないでしょう。

「あんまり手を焼かせないでリタ」

私だって気分よくありません。

ガイアに腹が立っているのに…洗顔の準備も無ければ、髪をとかしてくれる人も居ません。

髪を洗った後に手入れをしなかったせいか、エルザも私も髪はボサボサです。

まぁ泣きはらして目が腫れているリタよりましです。

理人が居ないとこんな所迄綻びが出るなんて…

あの時、理人が食い下がらないで去って行ったら、そう考えると鳥肌が立ちます。

「それじゃ行きますか?」

「そうだな」

「ふぐー-っふぐっ」

リタを担いだエルザと一緒に冒険者ギルドに向かいました。

◆◆◆

「ようこそ、マリア様にエルザ様…え~とリタ様」

「随分と昨日と違う気がするわね」

「そりゃ依頼されれば依頼主、依頼主は神様です、対応は違いますよ」

なかなか良い性格しているわね。

「そう、まぁ良いわ、それじゃ報告をして貰えるかしら?」

「そうですね、それではサロンの方でお話しましょうか? 途中からギルマスも来ますので、まずは報告から致します」

「宜しくお願いするわね」

◆◆◆

「まずは理人様が地竜を狩りに行った経緯についてお話しします。これは勇者ガイア様に金貨1200枚を渡す約束をされたからです」

金貨1200枚とんでもない金額じゃない?

普通に考えたら、そんな金額必要になるわけないわ。

「ふぐうううっ」

「あっごめん、猿轡外すわね…」

「酷い」

「何で、ガイアはそんなお金が必要になったんだ!」

「ぷはっ…そうだよ、私達4職はそれぞれスポンサーが居て、特に勇者のガイアと聖女のマリアは教会、しいては聖教国が後ろ盾だから、必要なお金は必要なだけ貰えるんだよ…私やエルザより恵まれているのに…可笑しいよ」

お金に困っている雰囲気は何処にもありません。

何故、そんなお金が必要なのでしょうか?

解りませんが、もし本当に必要な物なら私と一緒に教会に請求すれば、如何に金貨1200枚とはいえ2~3日で用意できます。

それに何故、そのお金を理人が用意しなくちゃいけないのかも解りません。

「勇者はお金に困らない…何で金が必要なのか? そしてそのお金を何で理人が用意しなくちゃいけないのかも解らねーよ、その当たりも掴んでいるんだよな?」

「はい、ですが…この情報は90パーセント正しいと言えますが10パーセントは憶測が入る、そこだけは許して下さい」

「ああっ情報とはそんな物だ、それは解っている」

「そうですか? 勇者であるガイア様は娼館に入り浸っておりまして…」

「嘘は止めてよ…ガイアは勇者だよ、それは流石に無いよ」

「そんな事流石にしないと思います、教会所属なんですから」

「ちょっと待てよ、ギルドが冗談なんていうわけないだろう、二人とも話を聞こうぜ」

「ええっ、そうね」

「そうだね」

確かにギルドがこんな悪質な冗談をいう訳ありません。

どんな話なのでしょうか?

ですが…勇者とはいえガイアは男です。

娼館に行くくらい目を瞑っても良いのかも知れません。

確かに昔の友人が結婚していくなか、まだ経験すらないのは辛いのかも知れません…女の私には解りませんが…

「それでは続けさせて頂きます…ガイア様は娼館に通っていまして今現在二人の娼婦に嵌まっております」

「まぁ仕方ないですね」

「男だもんな」

「ちょっと幻滅したけど仕方ないね」

「此処からが問題なのですが…ガイア様はその二人の女性を『身請け』しまして側室にする約束をしたそうです」

「冗談でしょう! ガイアは勇者なのよ! 娼婦を側室なんて、そんな!」

「幾ら何でもそこ迄馬鹿じゃないだろう?」

「あり得ないわ」

「あの不敬を承知で言わせて貰えれば馬鹿だったんですね…ちなみにその身請けのお金が二人して金貨1200枚なんです、ピッタリ合うと思いませんか? まぁ憶測はかなり入りますが…」

確かにガイアが金貨1200枚欲しい訳は解かるわ。

だけど…何故、その金額を理人が用意するのか解らない。

「確かにそれが本当ならガイアが金貨1200枚必要な意味は解ります…ですが、何でそれを理人が用意する必要があるのでしょうか?」

「地竜を相手にするなら命掛けだ…最悪死すらあり得るぞ、そんな理由で命なんて賭けられる訳ない、幾ら理人がお人好しでも断るだろう!」

「幾らガイアの為でもね、そんな理由じゃ動かないよ」

幾らなんでも、娼婦をガイアの側室にする。

そんな馬鹿な事の為に命なんて賭けるわけないわ。

「それはね…ガイア様が、理人様にとって一番欲しい者を代償に出されたらです」

「「「理人が一番欲しい物」」」

「ハァ~本当に鈍感ですね…理人様が可愛そう…愛ですよ、愛、此処から先は『勇者案件』ですので実際に立ち会った、ギルマスが話します…少しだけお待ち下さい」

『愛?』 なんですか。

第21話 理人のいない1週間 その?
「勇者絡みだから、此処からは俺が話そう、今回の話の立会人は俺だ」

立会人という事はガイアと理人との間に何だかの契約がなされた。

そういう事ね。

しかも、ギルマスが立ち合いという事はかなり重要な契約がなされた…そういう事ですね。

「立ち合い人という事は、何だかの契約がなされた、そういう事だな?」

「一体どんな契約なのでしょう?」

「そんな金額と釣り合う物なんて聖剣位しか思いつかないよ」

「あるぜ! 勇者ガイアが持っていて、彼奴が喉から手が出るほど欲しい者…例え命と引き換えにしても欲しい者がな」

勇者の地位…聖剣ですか? ですが、それは絶対に手に入りません。

いったいなんでしょう?

金貨1200枚の価値あるもの…

「なんでしょう」

「さっぱり解らないな」

「なんだろう?」

「はぁ~っ、理人に同情するぜ『お前達に決まっているだろう?』お前達だ!」

「「「私達!?」」」

「ああっ、それ以外に彼奴が欲しい者なんて無いだろうが! そんなのも解らないのか? よく考えて見ろ! あいつはS級なんだぜ、あんたら程じゃねーが有能だ。ワイバーンを1人で狩れる位強いからな勇者パーティを離れて金が欲しいなら1か月金貨500枚(約5000万円)位は稼げるんだ…地位が欲しいなら彼奴ほどの男だ貴族のお抱えにすぐになれるし爵位だって夢じゃねー、それが何であんたらと居るのか考えた方がいいぜ」

「確かに好かれているのは解っています、愛されているのも、ですが…」

「まさか、そんな命がけで好きになっているって思わなかった」

「そんな…私なんて事を…」

「あのよ…あそこ迄の男がよ、なんで女物の下着を洗って、下働き全部して、一銭にもならないのに旅に参加してるんだ? お前達という女を諦めれば、彼奴なら貴族との婚約、女冒険者との恋も思うがままだ、欲しけりゃエルフの奴隷だって簡単に買える金位すぐに溜まるぜ、好きだから他にあるか、彼奴にとってかけがえのない存在じゃなきゃそこ迄しねーよ」

「そうですね…確かにその通りです」

「あいつが私達に付き合う必要は無いな」

「そうだよね、逆に理人が私を捨てれば幸せになれる…そうだよ」

「だからよ…この結果も解ってやってくれ! はっきり言うぞ、この話は理人からじゃねー、それは見ていた俺が保証する、金が欲しいガイアがせっついていた…だから責めないでやって欲しい」

「今の話の何処に理人を責める話があるのですか?」

「理人が私達を好きだという話じゃないのか?」

「そうだよね」

「だから、金貨1200枚の対価をガイアが渡したって言っただろう? それがこれだ!」

「書類ですか?」

「書類?」

「書類? なにかの契約書…」

「良いから読んでみろ」

「うっ嘘…これ本当に、わわわわわ私が理人の妻になっています」

「私が理人の嫁さんだと…これ本当なのか?」

「嘘…本当に私もお嫁さんになっている…だけどこれって大丈夫なの? 不味くないの?」

「そうよ、魔王討伐の最中の勇者パーティが結婚なんて出来るのですか?」

顔が、にやけてしまいますが…そんな事が通るなんて信じられません。

「これ、公的に通るのか? 正直言って私はこれで良い…理人の嫁さんならうん、悪くないが…四職が魔王討伐前に結婚なんて聞いたことが無い」

「私もそうです! これは本当に大丈夫なのですか?」

「私も嬉しい…こんな私でも理人が欲しいって言うなら、お嫁さんにでも何でもなってあげるけど…こんな話が通るとは思えない」

「それがな、これが恐ろしい事に通るんだよ、背筋が凍った! これは三国の王宮にまで預ける公正証書だから不備が無いか調べたんだ…だが、この証書を無効にするとガイアが理人を騙した事になるから誰も否定できない…勇者が詐欺をしたなんて事には出来ないからな」

どういう事なのでしょう?

普通に考えてまかり通らない…そう思うのですが…

「書類をよく見てくれ! 『下賜』と言う言葉と『拝領妻』という言葉があるな」

「「「確かに(あります)(あるね)」」」

「拝領妻じたいは滅多にないが王族や大貴族が部下の功績に対して褒美として『自分の妻』を与える…そういう事らしい。そして下賜という文面もある『下賜』は知っての通り目上の立場の者が下の立場の者に褒美を与える事だ…実際にこの世界をまわしているのは教皇様や王様だが、形式上は女神の使いである勇者が一番偉いという事になっている…その勇者が下賜と言う言葉で与えてしまった物に対して他の者は口なんて挟めないだろう」

「ですが、私はガイアの妻じゃありません」

「ああっ、私もだ」

「婚約が良い所じゃないかな?」

「そこなんだよ! この契約書の怖い所はよ…つまりそこを突っつくと勇者ガイアが詐欺を働いた事になるんだ、だからあんたらは不本意だと思うが、ガイアとあんたらが『事実婚』にあったという事にするしかない、まぁお揃いの指輪を一緒に着けていたから大きな意味でそう取れるしな。 その上で理人がガイアやあんたらのお世話を一生懸命していた事実は誰もが知っている」

「解りにくいですね」

「さっぱり解らない」

「賢者の私が理解できない程難しいよ」

「俺も良く説明出来ねーが『この世で一番偉い勇者が『下賜』という名目で与えた拝領妻』は誰も口を挟めないし、下賜した物を返せなんてガイアも言えないから…もうこの通りにするしかねー、そういう事だ」

「あの、それは私は正式に『理人の妻』という事ですか?」

「私もそうなんだよな! そうか私もう人妻なのか、うんそうか、そうか」

「ああっ二人は良いわよ…私も嬉しいけど、謝らなくちゃ不味いよ…どうしよう?」

これで良い筈なのですが、理人が居ないので実感がわきません。

「一応は三人とも結婚した事になるな…おめでとう」

一応?

「一応ってなんですか? 私はもう理人の妻になっていますよね?」

「私は、そのなんだ、理人の新妻で間違いないんだろう?」

「私、奥さんなんだよね」

「そうだがよ…忘れて貰っちゃ困る、今彼奴は地竜を狩に行っている! 結婚してすぐだが、最悪すぐに未亡人だな」

「そう言う冗談は笑えませんよ」

「ギルマス…それは笑えないな」

「ねぇ、口は災いの元だよ」

「悪かったから、杖を持ったり剣を抜こうとするな」

心配で、心配でたまりません。

ですが…今の私達にはどうする事も出来ないのです。

理人…貴方が私を『妻』にしたんですから無事に帰ってきてください。

エルザとリタと待っていますから…ね。

第22話 動き出した

「説明しなくて良かったんですか?」

「いいんじゃねーか? あいつ等しっかり理人の奴、好きみてーじゃねーか! 態々説明なんて要らねーだろう!」

「本当に飽きれますね、あとでトラブっても知りませんよ」

「ああっそうしたら俺が責任をとる」

「そう言いながら部下に丸投げするんだから! まぁ良いですけどね、ハァ~なれました」

「溜息つくと幸せが逃げるぜ」

「誰がつかせるんですか? どこかに理人様みたいな良い男いませんかね」

「いねーな、あれは特別だ」

「解っていますよ!そんなの…今頃三国はパニックになっているでしょうに…」

「がはははっ、冒険者ギルドは貸しはあっても借りはねー、商業ギルドのコロバスは可哀そうに大変だ…良いか? 冒険者ギルドは、何があっても勇者の命令、全部の責任はガイアのガキのせいで押し切るぞ」

「ギルマス…勇者パーティ、理人様除いて嫌いですもんね」

「いや、実際に話してみて、あの三人は悪い奴じゃねー、まぁ女としちゃどうかと思うが嫌な奴じゃ無かったな」

「という事は勇者は嫌い…そう聞こえますが?」

「言わねーよ問題になるからよ…ただジョブやスキルに頼って努力しない奴は好かない…それだけだ」

「同じじゃないですか?」

「好かないは好きじゃない…それだけだ、嫌いとは言ってねーよ」

「まぁ同じに聞こえますが、そういう事にしておきましょう」

ギルマスは言いませんでしたが…今頃、各所のお偉いさんは偉い事になっているでしょう。

世の中には順番という物があるのです。

まぁ、私もメンドクサイから『勇者ガイアが悪い』それで終わらせます。
自分達の婚姻の価値を解らない勇者が悪いのです。

◆◆聖教国ホーリーにて◆◆

「教皇様、ゆ、ゆ、勇者が勝手に側室を決めて…聖女様達も勇者様が下賜した形で理人殿と婚姻させてしまいました」

「あの勇者は本当にやんちゃですね、ですがそこが可愛いと思いませんか? 子供とは愚かな程可愛いのです…ですが安心なさい、実は私は理人殿とひそかに文をかわしてました、聖女マリアの嫁ぎ先として理人殿は申し分ないと私は判断しました…あの男なかなかのものです…手土産もありますよ、そうですねローアン大司教にも1つの権利を上げましょう、私と1つずつ分けましょう、さぁ読んでみなさい」

私は教皇様から手紙を見せてもらいました。

「教皇様…この権利一つ私に下さるのですか?」

「はい、他の者には内緒ですよ…恐らく帝王と王にも同じように2つ権利を理人殿から渡すと書いてあります…どうでしょうか?」

「絶対に揉めませんね、教皇様がでる必要はありません、このローアンが全て納めてみせます。理人殿に誰にも文句は言わせません」

「それではローアンお願いしますよ」

◆◆アレス帝国◆◆

「ふざけるな! 勇者ならいざ知らず、剣聖エルザが理人と婚姻しただと…これでは我が家に招きいれる計画が台無しではないか」

「かっか、するでないモンゴメリ卿…実はお前にも一つ良い話を持ってきた」

「帝王様、こんな事ゆるされませんぞ」

「その文を見てから言え…それでも理人が嫌いか? それならお前は俺の敵だ、潰すぞ」

「この話に私が1口乗れるのですか? 理人殿は素晴らしい御仁ですな…勲章でも出しますか?」

手のひら返しが早い、これも貴族か。

「うむ、すぐに用意して勲章と一緒に届けなければな、人選は俺とお前で一緒にするぞ、最高の者を用意だ」

「ええっお金と権力全部つかい、最高の者が必要ですね」

「ああっ、忙しくなるぞ」

◆◆王国レイクパルド◆◆

「この度の勇者の失態、王はどの様にお考えか?」

「儂は文句等ない『赦す』まぁその前に勇者に文句など言えんわ」

「だったら、この理人のほうだけでも」

「書類に不備はないと聞いた…『赦す』」

「そんな、貴族たちになんといえば、良いのです」

「そうか…そうじゃな、お前、悪いが貴族を全員黙らせろ」

「自分の子息の伴侶に三職の誰かが欲しいという話が叶わない…どうしろと言うんです」

「そんな物、元々勇者ガイアが娶ったら終わりじゃないか」

「ですが、娶ったのが理人と言うのが問題です」

「仕方ない、お前にも権利をわけてやるから、黙らせろ…儂は理人の味方じゃ、ほれこの権利、お前にもやる、仕方ないの」

「これ…ですか…あははははっこれくれるなら、私が後ろ盾になります、勲章と一緒に最高の者を送り届けましょう」

「ああっ、これから一緒に吟味するぞ」

「はい」

何かが動き出した。

第23話 帰ってきた理人?
俺は深夜遅くにガブギの街についた。

3人に会う前に金をガイアに払いたかったからだ。

冒険者ギルドは24時間営業。

良く買い取り金が無い、なんて物語はあるがこの世界ではない。

もし、現金が無ければ冒険者証明が口座を兼ねていて振り込まれる。

まぁ銀行の口座みたいなものだ。

「ただいま~、討伐証明と換金お願い」

「はい! 理人さま!」

「驚くのは良いけど! 今回の情報ミスは危なかったよ」

「情報ミスですか? いずれにしても地竜の討伐ならギルマス立ち合いです、裏の倉庫で素材を見ながらお話をさせて頂きます、詳しくはそちらでお願い致します」

「それじゃ頼む」

「はい」

裏の倉庫の地竜の素材をストレージから取り出した。

討伐証明部位の頭の中央の角2本を手前に置き、他の素材は無造作に置く。

殺されてすぐだったようで素材はちゃんと回収できた。

流石にあそこ迄の大きさは無いが、サイズ的には大型と言っても過言では無い。

「おい、理人…何か手違いがあった…あああっ、これは済まない」

実際に会ったのは最早地竜ですらない…だが、もし彼奴じゃなくてこっちと遭遇しても多分俺は死んでいた。

大型2体じゃ、今のガイアだって単独じゃ無理だ。

まぁ将来は解らないが。

「まぁどうにか出来たから良かったけど、場合によっては死にかねない」

「本当にすまなかったな…まさか大型2体とは」

「いや、どうにかなったから気にしないでくれ」

本当は俺じゃ無いから、余り強くはいえない。

こっちもある意味如何様だ。

「それじゃ、詫び料も加算して計算させて貰う、討伐報酬は1体当たりこの大きさなら金貨2000枚(約2億円)だが情報ミスの詫びを加算して金貨2200枚、2体で金貨4400枚(約4億4千万)本来は竜種はその金額に素材の報酬も含むが、輸送の手間を考え金貨2000枚(約2億円)合計金貨6400枚(6億4千万)でどうだ」

文句ないな。

寧ろ悪い位だ。

「それで良い、金貨1200枚は金貨で欲しい、そしてガイアを呼びに行ってくれないか、報酬は金貨1枚、あと金貨100枚をギルドに寄付するから、1週間位飲み食い無料にして欲しい」

「いつも済まないな」

「あとギルマスに立ち合い料金として金貨100枚出す、お願いできますか?」

「破格過ぎるだろう1/10でも多い位だ」

「大物を狩った時のご祝儀だよ、そうだ担当の君にも金貨5枚ご祝儀で出すよ」

「ありがとうございます」

冒険者は妬みも多い。

稼いだ時は、その分出す…これをしないと嫌われる。

これだけ使っても金貨4995枚余る、充分だ。

◆◆◆

暫く待つとガイアが現れた。

連れてきた冒険者に金貨1枚のチップで銀貨2枚渡した。

多分まだ子供だ、笑顔でお礼を言って帰っていった。

「理人、苦労かけたなそれで金貨1200枚はどうにかなったのか?」

「まぁどうにかなったよ、それじゃギルマス立ち合いで引き渡しをするぞ」

「ああっ、ありがとうな」

「一応はギルドで数えているが、ちゃんと自分の方でも数えてくれ」

「ああっ、解った…だがめんどくさいから娼館の主を連れてきたんだ、直接渡してあげてくれ」

ガイア…まぁ仕方ないのか?

普通は娼婦を身請けする事は隠すだろう。

相手は冒険者ギルドだぞ、バレバレでも体裁位は整えるべきだ。

だが、それは敢えて言わない。

昔の俺ならとげとげ文句を言ったが『もう言わない』と決めた。

「それじゃ、一応は俺からガイアに渡すお金だから、ガイアから渡してやってくれ」

「ああっそうだな」

俺はガイアに金貨の入った袋を渡した。

するとそのまま金貨の入った袋をガイアは娼館の主に渡した。

「それでは数えさせて頂きます」

そう言うと、娼館の主は金貨の数を数え始めた。

流石は商人、金貨1200を僅かな時間で数え終わった。

「確かに、金貨1200枚頂きました、これでお二人は貴方の者です、おめでとう御座います…それでパーティは如何なさいますか?」

「パーティってなんだ!」

「娼婦が足を洗い、幸せになるのはおめでたい事で御座います、そこで、盛大なパーティを行うのです、ましてジザベルとイザベルは看板娘です、是非とも盛大にお願い致します」

なんだか…昔の吉原みたいだな。

ガイアの顔を見ると俺の方を見ている…

仕方が無いな。

「それでそれは幾ら位使えばガイアの面子が保てるのですか?」

「そうですね金貨100枚位で如何でしょうか?」

約1千万かよ…下級貴族の令嬢の奴隷が買えるじゃないか。

「理人…」

仕方ないな出すしかないか?

「あのギルマス、俺に手紙は届いてませんか?」

「流石に無いのか? いや済まなかった」

「何も届いてないぞ」

なら仕方ない、此処までは俺が出すしかない。

だが、少しは自重して貰おう。

「解った、おれの口座から金貨100枚用意するよ…だがガイアこれは本当は三人とちょっと贅沢するつもりの金だったんだ…」

「そうか、悪いな」

「まぁ良いや親友だからな」

それなら要らないとは言わないんだな。

「それにな、理人にちょっと相談があるんだ」

「え~となにかな?」

「そう警戒するなよ、少し寂しいぞ! 実はな折角ダークエルフの二人を手に入れたからな、エルフも欲しくなったんだ、娼館の主に聞いたらな、チョチョリーナも身請け可能だって言うんだ、どうにかならないかな?」

「それで幾らなんだ」

チョチョリーナは明らかに二人より格が上だガブギの街の正真正銘の看板娼婦だ。

安いわけはないな。

「金貨900枚で御座います」

「金貨900枚…」

約9千万、エルフの血が入っていると考えたら安いのかも知れない。

以前、奴隷好きの冒険者から聞いた話だと、高級なエルフの奴隷は億単位だった。

元娼婦だから…だから安いのかも知れない。

「無理か、無理だよな…だけど理人親友だろう、本当に頼むどうにかしてくれ」

俺は既に裏で行動を起こしていた。

「いいぜ、どうにかするよ…それでそのお金何時迄なら待って貰える」

「本来は身請けの話は早い者勝ちで御座います…」

「解った、手付で金貨10枚入れる、それで10日間、待ってくれないか?」

「本来は出来ませんが、二人も身請け頂き、パーティ代も払って頂けるようなので、特別にそれでお待ちして貰える様に話をつけます…但しもし期間を過ぎても残りが用意できなければ金貨10枚はペナルティとして返せません…宜しいですか?」

「ああっ構わない」

「理人、ありがとうな」

「ああっ、実はガイアにもっと楽しく生きて貰いたくて、サプライズを考えていたんだ…ガイアハーレムを作ろうと思ってな、まだ上手く行くか解らないが…それに賛同してくれるなら良いよ」

「ハーレムって、本当か?」

「ああっ、実は余りガイアに我慢させちゃいけないと思って計画中なんだよ、それと同時に、ガイアにある程度自由になる金をどうにかならないかと今あちこち交渉中なんだ、それが上手くいけばチョチョリーナもどうにか出来るし、他の女も調達できる…相談しないで勝手にして済まないな」

なんだ、ガイアが振るえている…勝手な事して怒らせたか?

「お前こそが心の友だ、親友だ、なに言っているんだ俺の幸せの為に動いて悪い事なんて無いぞ…本当に感謝している」

満面の笑みでガイアは娼館の主とギルドを立ち去っていった。

◆◆◆

「疲れた…地竜より疲れた…俺が手に入れた金について言わないでくれてありがとうございました」

「ギルドには守秘義務があるからな…大変だな」

「大変そうですね」

「まぁね」

ギルマス達の同情の目で見送られながら俺もギルドを後にした。

第24話 帰ってきた理人?
「なんだこれ…」

昨日は宿屋に泊まって久々に宿屋に帰ってきたら…

服や下着は散乱していて食べ物の入った入れ物もそこら中に転がっている。

ゴミ屋敷…それが一番近いかも知れない。

「おはようございます理人…無事だったのですね、良かった本当に良かった~」

「ふぁ~あ、おはよう理人、その分だと上手くいったようだな、本当に良かったよ…うん」

「理人お帰り~ 本当に心配したんだよ」

心配してくれたのは凄く嬉しいのだが…

お前達の方が心配だよ!

いや出来ないなら、なんで冒険者ギルドに行かないんだ。

実質下級の冒険者は便利屋だから、掃除のエキスパートも居る。

出来ないなら頼めば良いのに。

「うん、心配掛けてごめんね…」

たとえ髪が汚くてふけが出ていても。

着ている服が汚れていても、幼馴染に心配されるのは嬉しい。

「あの皆、お風呂に入っていないように見えるけど、なんで?」

「それが私が壊してしまったらしくて湯が沸かなくなっちゃったんだ」

「最初は水で我慢して水浴びしていたんだけど…」

「寒いから入らなくなっちゃったんだ」

疲れているから今日はゆっくりしたかったんだが…

これじゃ、掃除するしかないな。

「まずは俺が部屋掃除して風呂直すからそのまま休んでいて」

「あの…理人の事、なんて呼べばよい?」

「旦那様か、それともご主人様がいいか?」

「いっそうの事…ダーリンとか?」

「う~ん、とりあえず…掃除終わる迄待って」

「そうだね」

「確かにそうだな」

「そうだよね」

掃除する事2時間、お風呂の修理に1時間、水を張る事30分…

「ふう~ようやく元に戻った…後はほら、三人ともお風呂に入ってきて」

「「「解った(わ)(よ)」」」

しかし、服も汚い物ばかりだ、なんで宿屋に洗濯をお願いしないんだ。

下着以外の衣服は袋に詰めた、下着は後で洗うとして、今着る分が無い…仕方が無い買ってくるか?

俺は宿屋に洗濯を依頼して、その足で服屋に来た。

サイズは解っているから適当に購入して急いで宿屋に戻った。

勿論、下着もだ。

急いで帰り、浴室の扉の中に服を置く。

「洋服と下着を買ってきたから此処に置くな」

「「「はーい」」」

これで後は三人が出てきたら、髪を拭いてあげて、魔道具を使ってブローすれば…ようやく元通りだ。

結局、お昼過ぎまで掛かってしまった。

これで、終わった…後は夜にでも下着を洗えば終わりだな。

だけど、何時から俺は女物の下着にときめかなくなったんだろうか?

なれって怖いな。

「それでね、理人さっきのだけど…」

「ああっ、今からお茶入れるから少し待って」

「「「ああっ…うん」」」

俺もまだ心の整理がついていない。

なんだか改めて見るとなんだか恥ずかしい。

「さぁ、お茶を入れたから飲みながら話そう」

「そうね」

「そうだな」

「うん、そうしよう」

「まずはごめん…その皆を買うような真似して」

「別に気にしないで良いわ、悪いのはガイアだから、まさか娼婦欲しさに売り飛ばされるとは思いませんでした…事情はギルマスから聞いてますから…それより良かったの?」

「ああっ、本当に良かったのか?」

「後悔してないの?」

何を言っているかさっぱり解らない。

「何を言って居るのか解らない」

「ハァ~ガイアがダークエルフの娼婦2人買うお金、金貨1200枚用意したんでしょう? そんなお金私達に使って良かったのか…そういう事よ」

「確かに私はそこそこ美人だが、一部の人に嫌われゴリラ女と呼ばれている。流石にダークエルフには敵わないな」

「私だって可愛いと言われるけど嫌いな人からはチビだもん…」

何を言っているんだ…

お前達の魅力はそれじゃないよ

「馬鹿だな…なんでたかがダークエルフより自分を下に見るのか解からない、それにたかが金貨1200枚用意しただけで驚くんだ! たいした金額じゃないだろう」

「そんな訳ないわ」

「凄い大金じゃないか」

「地竜を狩らなきゃならない位大変だったんじゃない」

「あのさ…俺は三人が好きだ…誰か一人で良い傍にいてくれたらそう思っていたよ。そして今よりももっと高い対価を払って、それでも俺はガイアに負けた」

「嘘でしょう、前にもお金を払った事があるの?」

「マリア違うよ、前に俺が賭けていたのは『命』だよリタやマリアが詠唱する時間を稼ぐために盾になっていたじゃないか? エルザの背中を何回守ったと思う? 『命』を預ける位の相手じゃなくちゃ出来ないだろう?」

「うふふっそう言えばそうですね」

「そうだな、すっかり忘れていたな」

「うん、良く私は守ってもらっていたね」

「それに俺と皆の付き合いは長いだろう、マリアが8歳にもなって漏らしていた事、エルザが女らしくなりたくて胸を揉んでいた事やリタが背を伸ばしたくて牛乳を大量に飲んで下痢した事も良い思い出だ」

此奴らのカッコ悪い所も全部知っている。

「もういい加減忘れて欲しいな…だけどそれがどうしたの?」

「私もいい加減忘れてくれ…だがそれがどう繋がるんだ」

「その話は恥ずかしいよ」

「思い出って凄く大切な物だと思う、少なくとも俺はそうだ…『俺との思い出をもっている幼馴染』なんて三人を除いて他に居ない…俺が欲しいのはエルフでも絶世の美女でもない…一緒の時間を過ごした幼馴染が欲しい、そんなのは『此処以外』じゃ手に入らない…これが地竜じゃなくて魔王であっても挑戦したと思うよ」

「「「理人」」」

「流石に疲れたから寝させて貰って良いか?」

「あの理人して欲しい事ない? 妻だし大抵の事は良いわよ」

「ああっ私も同じだ、して欲しい事があったらしてやるぞ…私はお嫁さんなんだろう?」

「うん、何でも良いよ?」

「そう? それなら膝枕をして欲しい」

「「「うん、解った」」」

◆◆◆

「理人は私に頼んだんですよ?」

「はぁ、私の目を見てたぞ、私だろう」

「違うよ膝枕なら、前にもしたよ…私が良いに決まっているよ」

ハァ~駄目だ眠い、こりゃ今日は膝枕は諦めた方が良いな。

第25話 嬉しい誤算

朝起きると両腕に重みを感じた。

三人が俺に腕枕されたように眠っていた。

幸せに感じるけど、腕が少し痺れている。

気付かれないようにゆっくり手を抜き外に出た。

此処の宿屋はキッチンがついていない。

この世界の宿屋は冒険者を含み自炊をする者も多いから、ついている宿屋も多い…何処か移動しても良いかも知れない。

しかしガイアは大丈夫なのか…ここガブギの街に来てからまだ一度も討伐をしていない。

本来は勇者パーティは旅から旅が当たり前なのだが…

何も起きていない平和な街にこんなに勇者パーティが居ついていちゃ問題だな。

だが、これから先は兎も角、過去は問題が無い。

色々と各国の王と話しているから、咎められることは無いだろう。

「おはよう理人、今日も朝から4人のお世話か? 精が出るな」

「まぁ今は一人欠けて3人なんですが、折角声を掛けてくれたんで、朝食ように弁当を買わせて頂きます、A級冒険者セット4つにハーブティもつけて下さい」

「なんなら、今度S級冒険者セットもつくるかな…」

「そんなの買う人は5人しかいないし無駄ですよ」

「だな、それじゃ銀貨2枚だハーブティはサービスしておくよ」

「ありがとうございます」

ちなみにA級冒険者セットは1人前銅貨5枚(約5千円)と少し高い。

この店では朝から仕事にでる冒険者が急いで買えるようにこういうシステムにしている。

別に等級通りの弁当を買う必要は無い。

あとは大通り沿いの洋菓子やでケーキでも買って帰れば良いな。

これで今日の朝食分は買い出しが済んだ。

折角、大通りまで来たんだから宝石商に足をのばしてみるか…

「いらっしゃいませ理人様」

店に入るとオーナが笑顔で話しかけてきた。

前にペンダントを作っているからか何も言われなかった。

今の俺は弁当をぶら下げていて普段着…入ってから気が付いた。

こういうお店には本来は似つかわしく無い。

だが、流石は高級店だ。

俺の顔をしっかり覚えている。

「この度はご結婚おめでとうございます、本日はリングでございますね」

「その事は一般的にはまだ知られていない情報だと思うんだが…」

「そこは各王室ご用達の当店、情報網がございます」

「成程、それじゃ話が早いな、オーダーで4人分のリングでお勧めのリングはありますか?」

「はい、ご用意してございます」

デザインの提案でなく『用意してある』どういう事だ。

「用意してある…のか」

「はい、こちらでございます、世界に数少ないブルースター鉱石を4つに割って作ったリングにございます。ブルースターには古来より『信じあう心』『幸せな愛』と言われる言葉があり、事実、この4つの鉱石の内1つでも砕ければ残り3つの鉱石も運命を共にするように砕けます…どうでしょうか?」

確かに凄く良い…だが宝石の高い物はエルフや城より高い。

これが安い訳ない様な気がする。

「欲しいと思うがこれは幾らなんだ…俺は勇者じゃないから高額だと手が出ない」

「本来は金貨1000枚(約1億円)でございます」

「金貨1000枚」

手が出ると言えば出る…婚約指輪兼、結婚指輪だ奮発するべきだな。

「ですが、この指輪は理人様に献上致します」

うん?! 献上ってどういうことだ…

「献上とは無料でくれるって事?」

「はい、左様でございます」

「理由を聞いても良いか?」

「理人様が今、行っている事に『参加』させて頂きたいのです」

「それは何処で聞きました? 今現在は王族とその周りの一部しか知らない事だと思いますが」

「当店は王宮ご用達です、王に一番近い商人でございます」

そうか、確かに宝石やドレスも絡んでくるか…きっと王族にも話しをしているんだろうな…

「解りました…一枚加えるようにするよ、その代りすぐに全支店に話を通しておいて、それプラス『勇者』に対する特典を頼む」

「特典ですか?」

「ああっ、値引きなんて要らない、だがそうだなVIP室での商談やその際には高級ワインの提供や手に中々入らない菓子を出す『特別な客』そう思われるようにしてくれ」

「成程、早急に準備します」

「それじゃ…これ本当に貰っていくけど良いんだな」

「はい、それと教皇様から伝言がございます」

「なんでしょうか?」

「これをとの事です」

「つつ通信水晶!」

まさかこんな魔法具まで寄越すのか?

これ、国の重鎮でも持ってない筈なんだけどな…

「もしかして今回の話は聖教国の教皇様からですか」

「はい、凄く期待されていますよ…もう準備も整って早ければ今日のお昼には届くそうです…ちなみにブルースターの提供は教皇様で本来は市場にでないのですがコレクションの一つを特別に…」

「大体解ったから、怖いから聞きたくない」

まさかと思うけど、国宝級の石を4つに割って加工したのか…

「左様ですか」

「それじゃ1枚噛んだ事だし早速お願いしても良いですか?」

「勿論でございます」

「それじゃ此処を午後から会場として使わせて」

「はい、それでは本日は閉店しましてご用意を」

「そこ迄しないで良いから小さな部屋を1つ用意して、豪華な立食パーティの準備を、本来ホテルを借りるのが正しいんだが、早く用意しないと間に合わない…すみません」

「良いんですよ…それより連絡しないで良いんですか?」

「そうですね」

◆◆◆

嘘だろう…連絡したら、聖教国ホーリーから空竜艇を出すそうだ、しかもアレス帝国からは聖教国ホーリーまでワイバーン騎士団が持参し…王国レイクパルドからはグリフォン騎士団が持参…まとめてくれたのはありがたいけど…そんな事すれば確かに来るよ。
教皇専用の秘蔵の空竜艇だもんな。

しかもこの水晶、ローアン大司教に繋がっているんだ…聖教国のナンバー2だよ…

頭がぐちゃぐちゃになるな…

◆◆◆

「おはよう」

「おはよう、何だか疲れていない、大丈夫?」

「まだ疲れが抜けてないのか? 今日はゆっくりしていたらどうだ」

「そうだよ、偶には夕方まで眠った方が良いよ」

「いや、たった今疲れたんだ…それより、待たせてごめんね」

「これは…指輪ですか? そう、そうよね結婚したんだから、理人本当にありがとう」

「しかし、綺麗だな、この青い石、あまり見たことが無い、ありがとう」

「ありがとう理人…嘘、また無理して無い? これブルースターじゃない…これ買う為にまた地竜とか言うんじゃないよね? 私もっと安いので良いから無理しないで」

「リタこれそんな高いのか?」

「そんなにするの…」

「うん、多分金貨1000枚はするよ、だけどそれだけじゃないんだよ…現存するブルースターは少なくてほぼ流通していない筈だよ、だから今言った価値は本来の価値、どうしても欲しいって事になるとその数倍は出さないと譲るって事にはならないんだ」

そういう事は先に教えておいて欲しかったな。

「あの理人これは返しましょう」

「確かに綺麗だけど理人とは釣り合わない」

「私は賢者だからこれは凄く欲しい、だけどどんな宝石でも理人を危険に合わせる位なら要らない」

嘘だろう…なんでだろう…なんで。

駄目だ、油断すると涙が出てしまう。

「大丈夫危険な事はしないから、討伐とかしないから安心して受け取って…ただここ2日間程凄く忙しくなるんだ、その代償も兼ねて安くして貰ったんだ…それに着けてくれない方が俺は悲しいよ」

「そうですね…理人がそう言うなら、どう似合ってますか?」

「そうだな、やはり妻なのだから薬指にリングは当たり前だなどうだ?」

「憧れのブルースターの結婚指輪なんて、私多分世界一幸せな花嫁さんだよ」

「皆、ありがとう」

「「「理人…間違っている(よ)(わ)」」」

「えっ」

「指輪を貰ったのは私達」

「そうだぞ…なんであげた側がお礼を言うんだ」

「理人変だよ」

「そうかな」

「「「そうだよ…だからね」」」

「「「理人ありがとう」」」

こんなの不意打ちじゃないか…指輪より俺が大切だって…
何だよこれ…駄目だ我慢できない…

「ちょっと手が汚れているから、洗面所行ってくる…手を洗ったらご飯にしよう」

俺は涙が出る前に洗面所に向かった。

第26話 ガイアにサプライズ?
「それじゃちょっと出かけてくる」

「何の用事? 私も手伝おうか?」

「偶には荷物位持つよ」

「私も一緒に行く」

気持ちは嬉しいがこれからの用事はガイア絡み。

楽しい事は起きない。

「これからの用事は…そのガイア絡みだから」

「ガイア…流石に会いたくありません…すみませんお任せして良いですか?」

「私が行くと…ごめん殴りたくなるから無理だ」

「ごめん、私も会いたくない」

「当たり前だよ気にしないで良いよ…その辺りの距離も含んで話してくる…まぁ出来るだけ良い条件で纏めてくるつもりだよ」

「ごめんなさい…お任せします」

「本当は私は当事者だから行くのが筋だが悪いな」

「ごめんね」

まぁガイアになんて会いたくないだろうからな。

うん、凄く気持ちが解る。

「多分、今日、明日である程度話は終わると思うから、そうしたらお休みにしようか?3日間位かけてどこか旅行に行かないか?」

「あの…それ大丈夫ですか?」

「三職なのに旅行、良いのか?」

「出来たら嬉しいけど、無理だよ」

普通はそうだ…だが今現在討伐すらしてない。

そう考えたら今現在『休んでいる』みたいな物だ。

それに今後、勇者であるガイアは恐ろしいけど怠惰になると思うから…幾ら休んでも問題は無くなる…予定だ。

「まぁ大丈夫だと思う、そこもどうにかするつもりだから、安心して欲しい」

「あの、余り無理しないで下さいね」

「そうだよ、もし何か危ない話になったら何時でも頼ってくれ」

「もう夫婦なんだからね」

う~んこう言うの凄く良いな。

「ああっもし困ったら助けて貰うよ…行ってくる…今日は多分遅くなるから、好きな物食べてゆっくりしておいて、それじゃ行ってきます」

「「「いってらっしゃい」」」

◆◆◆

「ガイア?」

此奴なんでまだ娼館にいるんだ?

別のホテルや宿に行ったと聞かないから来てみたら、まだいた。

もう身請けも済んだし、ホテルにでも移れば良いのに…

「ああっ…ちょっと待ってくれ」

「ああっ待っているけよ、少し娼館の主と話をするからゆっくりで良いよ」

「解った、ハァハァ」

明らかに昼間からやっていたな。

◆◆◆
「あのお聞きしたいのですが、何でガイアは此処にいるんですか?」

「ハァ~実は困っておりまして」

「どういう事ですか?」

「何でも此処から出て行きたくないと駄々をこねられまして困っています…二人の送別パーティがまだですから居て貰う権利はございますが…その困るんですよ、他のお客様が寄り付かなくて」

確かに『勇者』が個室で励んでいる横で抜くには度胸がいるよな。

童貞君や気の弱い奴は来たくないだろうし…しかも美女を独占した状態の勇者を見たら…惨めになるだろう。

モテる奴も来るかも知れんが、こういう所に来る奴は彼女が居ない奴が多い…それじゃ一時の夢も見れないだろうな。

「それで、お話があった足を洗うパーティですがお金はそのままで構いません、ガイアと二人抜きで、食事会みたいに出来ませんか?」

「主役の三人抜きでですか?」

「はい、だってこのままガイアが居座っていたら困るでしょう?」

「そうですね、それなら1日お休みにしてパーティだけ開いて、娼館やお世話になっている人に食事やお酒を振舞いましょう」

「だけど…これはガイアが良いと言ったらですよ」

「理人様、お願いですから頑張って下さい」

◆◆◆
とりあえず、娼館の主に部屋を借りた。

「理人どうした…くだらない話じゃねーよな」

「まず、一つ目だが、流石に勇者が娼館に入り浸るのは不味いから、そろそろホテルに行かないか?」

「いや、俺が居たらお前ら気まずいんじゃねーか?」

「馬鹿だなガイア」

「お前、今俺に馬鹿っていったか、あん!」

「ガイア、俺たち親友だろう? 俺はガイアの為に動いているんだこれくらい許してくれ」

「まぁ良いぜ、親友の特権だ許してやる」

「ありがとうな…お前とこうして対等に話せるのが俺は嬉しいんだ」

「まぁ良いや、そんな事で礼を言うなよ」

「それで話を戻すけど、もう二人も身請けしたんだしホテルに行こうぜ、言っておくが俺たちと一緒じゃない『王国ホテル』のスィートだ」

なんでそんなに驚くんだ。

「いや、流石に不味く無いか? あそこ凄く高いんだよな…お前がご機嫌取りで一泊した位だろう」

「そりゃ俺たちは不味いよ…だがお前には関係ないだろうが」

「最近凄く口が悪くなったぞ」

「ああっそうだ…これも俺にくれた褒美だ『親友』ってそんな物だろう、本音で話して相手を思いやる…違うか? 俺はかなりガイアの為に頑張っていると思うが」

《確かに此奴は俺の為に頑張っているな『親友』仕方ねー世話になっているからな》

「まぁ仕方ねーな、お前は俺に対して敬意とか要らねーよ、まぁ俺が王になっても、好きに話していーぜ」

それはもう無いんだよガイア。

だがそれは今いう事じゃないな。

「ありがとうな親友! それでさっきの話に戻すが、お前は『勇者様』なんだよ、あくまで形式上は女神の使者でこの世界で一番偉い…まぁ実質的な権力は無いけどな…だから王侯貴族並みの生活が許されるのが当たり前だ」

「そうか、俺にはその資格はあるんだな…だが実質金は無いぞ、どうするんだよ」

「それも気にしなくて良い、今日の夕方には根本的に解決するから」

「何かあるのか?」

「ああっサプライズだ、まずはお前の大切な側室、二人を連れて王国ホテルに行こうか?」

「マジで? マジで良いんだな?」

「ああっ構わないよ、それでジザベルとイザベルのパーティなんだが三人とも出席無しで娼館側で振舞って貰う形にしようと思うんだがどうだ?」

「それも何か理由があるのか?」

「体面だよ、勇者と側室なんだから態々『娼婦』だったなんて広めない方が良いんじゃないか? お前は偉いんだから」

「そうか…そうだよな…理人の言う通りだ」

最近のガイアは物を考えない傾向にある。

おかげで俺のお世辞が通用するから良いんだが大丈夫か?

「それじゃ、娼館の主と俺は話すから、二人と一緒に出られる様に準備してくれ」

「ああっ、解った…それで催促するようで悪いんだがチョチョリーナなんだが…」

「そうだな、深夜で良ければ今日、嫌なら明日にでも買いに行くか?」

「マジ…本当に良いんだな? それなら深夜でも今日が良い」

「そうか…その代り今日の夕方のサプライズ、俺の指示に従って欲しい」

「ああっ、何でも指示通り動いてやるよ…あと、もう一つあるんだが…」

まだあるのか?

「それでな…イザベルとジザベルなんだが、お前が三人にペンダントを上げたのを知ってな、欲しがっているんだ、何とかしてくれないか?」

「ああっ解ったよ…それも今夜解決してやる」

「マジで」

「ああっ今日のサプライズの会場は宝石商だ俺がペンダントを買ったな…好きなのを買ってやると良いよ…ただ悪いが今日は二人は連れていけないからな」

「本当に…助かるよ、了解だ」

「ああっ任せておけ」

俺は娼館の主とパーティの件について話、馬車の手配を頼んだ。

◆◆◆

「ガイア様、今日から王国ホテルで暮らすって本当ですか?」

「本当にあんな所で暮らせるのですか?」

「ああっ本当だ、親友の理人が用意してくれたんだ」

「「理人様…ありがとうございます」」

ガイアがいかれるのも解る。

本来気位が高い種族なのに、この二人にはそれが無い。

気さくにお礼を言うダークエルフ、人気があるのも良くわかる。

チョチョリーナもそうだよな…あんに笑うエルフは珍しい。

これ、俺の前世で言うなら風俗街のナンバー1~3迄、自分の物にした事になるな…ガイアはさぞ風俗通いの男に嫌われるだろうな。

「ああっ、本当に凄いのはガイアだから」

「あっそうですね、ガイア様ありがとう」

「ありがとうございます」

「それでガイア様、あのペンダントの件なんですけど」

「どうにかなりそうですか?」

「そうだな、大丈夫だ(汗)」

ガイアってもしかしたら女(美人限定)に無茶苦茶弱いのか…

流石に女の魔族に誑かせられたりしないよな。

「ああっ、それなら、ガイアに任せるなら今日の深夜、自分で選ぶなら明日どうにかなるよ」

「う~んガイア様に選んで欲しいけど、自分でも選びたいな」

「そうだよねイザベル迷っちゃうな…ジザベルどうしよう?

「迷うよね…そうだ両方が良い…うん両方、駄目かな? ガイア様」

本当に流石は元娼婦、良い根性しているな。

「理人、親友だろう、どうにかしてくれないか?」

これは前世なら貢君とおり越してATMだな…

だが、実は、俺の腹は痛まない…そういう作戦だ。

「あっガイアが良いなら大丈夫だよ…」

「そうなのですか? それじゃガイア様お願い」

「お願いします、ガイア様ぁ~その分今日は寝かせないから」

「あのジザベルさん…今日はガイアは遅くなるから無理だと思う」

「あははっ嫌だ、忘れちゃった」

「もうジザベルはドジなんだから」

ああっ、本当に疲れたな…

王国ホテルについた。

「それじゃ少し待ってて」

「ああっ頼んだ」

「「行ってらっしゃい」」

「行ってきます」

◆◆◆

「すみません」

「あっ理人様、いらっしゃいませ、今日もお泊りのご予約ですか?」

「ああっロイヤルスィートは空いている?」

「はい空いております]

「それじゃ連泊で7泊予約入れて貰える」

「7泊ですか…凄いですね!」

「俺じゃなくてガイアの名前で頼む」

「大丈夫ですか? 結構な額ですよ」

「解っている…勇者を中心に少し体制が変わるんだ、此処は帰りの清算で良いんだよね」

「それはそうですけど」

「なら心配はないよ、国が払ってくれるから」

「なら、安心ですね…勇者パーティの理人様が言うのですから信用します」

「泊まるのは勇者だから丁寧なもてなしを頼むよ、ちなみにロイヤルスイートってもう一部屋ある?」

「ないホテルもありますが当ホテルにはございます」

「それじゃ、その部屋も明日から6連泊でお願いする」

「凄いですね…」

「あと今夜2食ルームサービスでお願いしたい」

「畏まりました」

「あと、夕方までで良いんだが、一番安い部屋貸して欲しい」

「どうするんですか?」

「俺が寝るんだよ」

「そうですか…大変ですね、大型の予約を入れて頂いたので、その位サービスしますよ」

「ありがとう」

俺は馬車迄行き、ガイア達をエスコートした。

「後はベルボーイに頼んだからついて行って欲しい、二人のルームサービスも頼んだから食事も安心してくれ、それじゃふぁーあ…3時位に迎えに行くからな」

「理人はどうするんだ?」

「ああっ、死ぬ程眠いから寝る…今の俺はどんな美女の誘惑よりベッドの誘惑の方が強い」

「そうか、解った3時だな」

「ああっそうだ…じゃあな」

これで少し眠れるな。

第27話 ガイアにサプライズ?
疲れた、本当に疲れた…だけど…これで眠れる。

2時30分にモーニングコールをお願いしたから大丈夫だ。

「ふぁ~あ、良く寝た」

まずはフロントに行きあらかじめ、ガルガリ(宝石商の名前)に用意して貰った馬車がついているか確認した。

流石、王室ご用達だけの事はある、貴族が乗るような立派な馬車だ。

「ガイア、起きているか?」

「ああっ、流石にちゃんと準備しているぞ」

聖剣を腰に差し、軽装鎧を身に着けていた。

この恰好のガイアは確かにカッコ良い。

中身を知らなければだが…

「それじゃ行くか?」

「ああっ…」

◆◆◆

「理人、何だこの馬車は? すげーな」

これは貴族が乗るような高級な馬車だ。

マリア達も驚いたんだから、ガイアも驚くだろう。

ガイアが驚いている間に御者が目の前に絨毯を敷いた。

「ガイアは勇者何だぜ、これ位で驚く事ないだろう? さぁ行くぞ」

「ああっ…なぁ、こういうのにも、これから乗れるのか? 」

俺は前世で友人のソアラに乗った時に感動した。

それに近い物があるのかも知れない。

「その気になれば乗れる…それはガイア次第だ」

「本当にすげーな」

まるで子供の様にはしゃぐガイアを連れて俺は宝石商に向かった。

◆◆◆

「いらっしゃいませ理人様、準備は整っております」

「女性たちは?」

「先にお通しして、ブッフェを楽しんで頂いております」

「それじゃ、そのまま今しばらく料理を楽しんで貰っていて欲しい…所で送ってきて下さった方は?」

「私どもが受け取り先と解り、安心されて帰られました、流石に空竜艇を長時間止め置く事は無理がございます」

確かに世界に一台…大型の空竜に部屋を搭載した乗り物。

それが長い間此処にあったら目立つだろうな。

「そうですか、何か書類を受け取りませんでしたか?」

「はい、此処に」

俺は貰った書類の封筒の封を開けた。

ちゃんと約束の物が入っている…これがガイアへのサプライズ第一段だ。

「ガイア、まずは買い物からだ『勇者の買い物』の仕方をこれから教えるから、ちょっと時間をくれ」

「解ったが、俺の買い物の仕方?」

「そう、ガイアの買い物の仕方だ…あのリヒャールさん、私が妻に送ったペンダントクラスのペンダントを…9つ用意して下さい! 勿論、買うのは勇者ガイアだ前に話したVIP待遇を頼む」

そう言えば、名前も聞いていなかったな、失礼な事をした。

名札をつけていてくれて助かった。

よく見たら役職も書いてある。

しかも彼…支店長、此処のトップなのか…

「はい、心得ております」

「おい、俺は金を持っていないぞ…大丈夫なのか?」

ああっ大丈夫だよ、たった今からな。

「ああっ、もうお前は無限にお金が使える魔法の道具…は冗談だが、何でも買える道具が手に入るんだ気にするな」

「それになんで9つなんだ…2つでいいんだ」

「馬鹿だな…二人にプラスしてチョチョリーナの分で3つは必要だろう? 後の6つは…この後のサプライズ絡みだ」

「まぁ良い、理人の事に任せた」

その後、ガイアと共に、あらかじめ話していたVIPルームに案内された。

すぐに高級なシャンパンが用意された、ソファーも豪華だ。

「ああっ任された…それじゃ行くぞ…ブラックカードじゃなくてブラック小切手ぇぇぇぇぇぇー――っ」

「はぁ~お前頭可笑しくなったか? そんなメモ帳なんて出して」

「これはメモ帳なんかじゃ無い…うちでの小槌だ」

「なんだ、小槌?」

「あぁ、この世界にこの話は無かったな…これはな俺が考えた小切手だ、このメモ帳には聖教国の透かしが入っていて…簡単に言えばお金の代わりになる」

本当は『ブラックカード』みたいな物を作りたかったが技術的に難しかった。

そこで出来たのがこの『ブラック小切手』だ。

小切手も一部の商人が使っているだけでこの世界ではメジャーで無かった。

だから、教皇様に相談して作った。

この小切手と勇者の証しの冒険者証で何でも買い物が出来るようにした。

しかも、そのお金の請求は聖教国に行き…一旦は聖教国で支払い、その後で三国(王国 聖教国 帝国)で割って負担する。

「まさか冗談だろう?」

ガイアがそう言うのも当たり前だ。

前の世界では当たり前だけど…この世界では余り知られてない方法だ。

これはもう一つのサプライズと抱き合わせで話を続けてきた結果、実現した事だ。

ただこのブラック小切手…請求書が聖教国の中央教会に一旦届く。

つまり『何に使ったか 教皇様にはまるわかり』そしてお金を負担するのだから、帝王様にも王様にも全部知られてしまう。

「本当だよ! ガイアは勇者なんだ! 世界の希望なんだから、国がガイアの為にお金を使うのが普通だろう? これからは何でも欲しい物は手に入るぞ…ただ気を付けて使えよ、何でも買えるからって城とか買うなよ」

「ああっ、解っている…凄いな!」

「それじゃ、これから練習してみようか?」

「練習?」

「ああっ早速、プレゼントの宝石を買ってみようぜ」

「そうだな」

◆◆◆

「ガイア様、理人様ご用意が出来ました…デザインや石はまちまちですが、理人様が奥様にご用意したのと同ランクのペンダントをお持ちしました」

「さぁ…ガイア好きな奴を選べ」

「あのさ…俺こう言うの解らないんだ、理人に任せてよいか?」

好きな女へのプレゼントを…人に任せるかね。

「そう言うことはリヒャールさんに相談すると良いよ、なんたって此処ガルガリの一店舗を任せられた責任者なんだから」

「そうか」

「だが今日は俺が手伝ってやるよ…贈る相手はダークエルフ2人にエルフ1人、あとの6人は、もうリヒャールさんは会っていますよね? それぞれに似合いそうなのを…そうだガイアにも一つ選んでくれませんか?」

「俺も必要だと思うか?」

「ガイアは二枚目だから似合いそうだぞ」

「そうか…そう言うなら貰おうか?」

「畏まりました」

流石は支配人を任されるだけの事はある。

それぞれのイメージにあったペンダント10個を選んでくれた。

「それじゃリヒャールさん、早速これで払わせて貰って構いませんか?」

「ハイ構いません」

「それで幾らですか?」

「どのペンダントも理人様が奥様に送られたペンダントと同じ金額で金貨30枚(約300万円)ですそれが10ですので金貨300枚になります」

「それじゃ…練習してみようか? まずこの欄に金額を書いて…サインを書く」

俺はブラック小切手の使い方をガイアに教えた。

「これで良いのか?」

「ああっ大丈夫だ…それをお金を払う相手に見せて渡す」

「こうか?」

「はい確かに受け取りました」

「これで終わりだ…簡単だろう?」

「確かに簡単だな」

「本当は冒険者証みたいなカードにしたかったが出来なかったんだ…まぁ、何回か使っていけば慣れるさ」

「そうだな」

「多分3か月もすればどこでも使えるようになると思うが…今の所は此処ガルガリと王国ホテル位しか使えない、だから大きな買い物は、このシステムが浸透するまで此処、ガルガリを通してくれ…暫くはガイアのコンセルジュをリヒャールさんに頼んで良いでしょうか?」

「コンセルジュ?とは何でしょうか?」

あれ、もしかしてこの世界には無いのか?

「ガイアの欲しい物を探したり、相談にのる仕事です…折角ブラック小切手があっても今の所浸透してないから使えないお店ばかりです。これが浸透するまでの間、ガイアの買い物のお金のたてかえをお願いしたいのですが大丈夫ですか? 勿論手数料を貰って頂いて構いません」

「それならお受けいたします」

「早速で申し訳ないですが…対面式後…たてかえをお願い致します」

「良いですよ…何を買われるのですか…」

「チョチョリーナという娼婦です」

「畏まりました」

「どうだ、今回の顔合わせが終わったら、これで買いに行けるよ」

「ああっありがとう」

「ガイア、感謝はまだ早い…次が本命だ」

「まだ何かあるのか…理人 ありがとうな」

「良いって親友だろう?」

次が…俺の本命だ。

第28話 ガイアにサプライズ?

「ガイア、次が今回のサプライズの本命『ガイアハーレム』だ」

「まさか、前に話していたあれか? 嘘だろう! あれが本当に実現するのか? あ~心の親友だ」

凄いな…長年ガイアと付き合ってきたが、こんな顔のガイアは見たことが無い。

今なら殴っても軽く許してくれそうだ。

だから、思い切って殴ってみた。

勿論、軽くだよ…軽く腹パンした。

「てぃ!」

「理人、いきなり腹を殴ってなんの真似だ」

驚いた顔をしているが、怒ってないな。

「多分、これから最高の者が手に入る…だが、ある意味戦場なんだ…気を引き締めろって意味だ」

本当はただ試したかっただけだけどな。

「そうなのか…楽しい事だらけだと思うが?」

「楽しい事も沢山あるが、大変な事も沢山ある、それがハーレムだ…ガイアは経験がある筈だ」

「別にないぞ」

ガイアは本当に能天気と言うか…ある意味本当の勇者だ。

「あのよ…今の俺の嫁三人は一応元ガイアの恋人だっただろう? あの三人にイザベルとジザベルを加えたら血の雨が降りそうじゃないか?」

「ああっ聞いただけでも寒気がしてきた!」

「だろう? だから、これから今後について話そうと思う…凄く大切な事だ」

「解った!聞くよ」

少し前のガイアなら聞く耳持たなかっただろうな。

だが、此処迄お膳立てしたからかちゃんと話を聞いてくれそうだ。

◆◆◆

「ハーレムには大きく二つある『一つは全員が平等なハーレム』『二つ目は、ちゃんと序列があるハーレムだ』」

これに失敗すると大きな問題になる。

俺の所はまぁ完全に『平等』こう決めている。

「何となく言いたい事は解った『優先するか』『平等に』という事だよな?」

「その通りだな、どちらにするかはガイアが決めるんだ」

「解った」

凄くキリリッとした顔をしたが多分解ってないだろうな…

「それとハーレムを作るからには『必ず体の関係を持つこと』そうだな、最低でも1週間に1回は必ず相手する事、勿論一切の避妊はしないで中に出せよ…」

大体ハーレムはイチャコラするのが本筋じゃない…それはあくまで『子作り』の延長線上にあるだけだ。

「あのよ…俺は構わないが、そんな事して構わないのか?」

ある意味、ガイアは勇者だから、今まで我慢させられていた。

真逆の話を聞いて驚いただろう。

「本当に呆れた…ハーレムは子作りの為にあるんだぜ、子供を作るのを優先するのが当たり前だ、逆に子供を作らないならこんな物は作らない」

「だがよ…妊娠させたらどうなる? 旅に響くだろう?」

此奴…何時から可笑しくなったんだ。

また馬鹿が進行した気がする。

「あのな…ハーレムのメンバーは戦闘要員じゃない、普通に子供を産めば良いだけだ」

「そうか…だが、その子はどうなるんだ?」

「ガイアが好きにすれば良い…一緒に育てるもよし『妊婦なんか要らない』と国に返すも良しだ、最初に言っておくけどハーレムのメンバーはガイアが気に食わないと思ったら、何時でも交換するから言ってくれ…まぁ『やり捨てゴメン』だ…まぁ出来る事なら妊娠させて捨てるのがベストだな」

「お前…そんな鬼畜みたいな事して大丈夫なのかよ…」

「ああっ、大丈夫だ…これはガイアが勇者だから可能なんだぞ、まず妊娠したら各国から『莫大な一時金』が妊娠した女性に支払われる、そしてその後は各国が保護しながら一生面倒を見る、まぁ家を買って貰えて働かないで一生を過ごせる位の保証はある…だから『妊娠』させてやった方が幸せんだ…頑張れ」

「本当に良いんだな、だが何故そこ迄…」

「それは聞かないでくれ…親友の為に裏技を使って頑張った..そう言うことだ」

「ありがとうな、お前は本当に…俺の親友だ」

「そう言って貰えるなら苦労したかいがあったもんだ」

「ああっ本当にありがとうな」

「それで、ハーレムの構成なんだが…」

「まだあるのか?」

「これで最後だ、このハーレムの第一陣には、聖教国、帝国、王国からそれぞれ2人ずつ計6人加わっている…最初のお試しみたいなもんだ、一緒に居て面白くないと思ったら、すぐにチェンジするから言って欲しい…また増やすのは自由だ、但し各国同じにする事、例えばもっと欲しいなら各国1人増やして9人には可能だ…だが帝国だけ1人増やして7人とかは無理だ…あと増やした枠は減らせないからな」

「そうか…ならケチケチしないで倍に増やすか?」

「あのな…そんなことして体がもつのか? もう9人なんだぜ、体を考えて行動しろよな」

「そうだな、解った」

「あと、これからの事だが、ハーレム迄持ったガイアは俺の嫁と一緒に行動しにくいだろう?」

「ああっ、確かに気まずいな」

「雑魚の相手なら別行動で充分だ…幹部クラス相手や魔王討伐の時に共闘する、別動隊みたいに俺たちがなれば良いんじゃないか…そう思うんだがどうだ」

「それ良いな! 俺あいつ等と実はもう話したく無かったから、窓口は理人がしてくれ」

一応は幼馴染なんだけど…ある意味スゲーな。

「ああっ、そう言うと思っていたよ…ほら」

「これは通信水晶じゃないか?」

通信水晶はスマホや携帯じゃなくトランシーバーみたいな物だ。

対になる一台にしか繋がらない。

「ああっ俺とガイアの間の通信用に教皇様がくれた、今後はこれで連絡してくれ」

「こんな物まで貰えるんだな…これ凄く高価なんじゃないか」

「勇者だから当然だ! あとついでにもう一つ」

「まだ、何かあるのかよ」

「俺は顔合わせに最初立ち会ったら、チョチョリーナを身請けしてくる…その清算をしようぜ、その方が楽だろう! チョチョリーナはそのまま、二人が居るホテルに連れていこうと思うがどうだ?」

「なんだか悪いな」

「構わない…だが一つだけ悪いと思うなら、1度で良い、俺に詫びろ!」

「何を怒っているのか解らないが親友のお前が怒るんだ、詫びるから、理由をいえよ」

「俺の追放未遂の話だ…あの時俺は本当に傷ついたし、4人が居なくなると思って凄く辛かったんだ」

「そうか…俺もあれは『俺が悪い』そう思っていたんだ、俺にとって大切なのはあんな3人じゃなくて『理人』お前だった…これは本心だ…『済まなかった』」

なんでだ…俺はこれを聞きたかったのに…凄く薄い気がする。

「ああっこれでもう良いさ…さぁ清算が済んだらいよいよハーレムだぜ」

「ああっ」

俺はリヒャールさんを呼ぶとチョチョリーナの代金に足を洗うご祝儀に2割足した金額でブラック小切手をガイアに切らせた。

娼館だとまだブラック小切手は使えない。

だから、ガルガリでお金を清算して貰わなくてはならない。

その為の手数料が15パーセント、そして担当してくれた人間に5パーセント入る様にした。

これなら面白味が立て替える側にもあるだろう。

◆◆◆

「さぁお待ちかねのガイアのハーレム要員だ」

「「「「「「ガイア様初めまして」」」」」」

6人の美女に挨拶されガイアは…だらしなく鼻の下を伸ばしている。

まぁ、当たり前だ、各国の王が選んだ選りすぐりの美女だ…

多分…これは失敗するかも知れないな。

「それじゃ、後は大丈夫だよな…俺は行くからな」

「ああっ…本当に…凄い…」

「お前は勇者だ、そんなんでどうする、頑張れよ!」

「ああっ」

俺はガイアに声を掛けるとその場を後にした。

第29話 応援している

俺はお金を貰ってチョチョリーナを身請けしに行ってきた。

一応、イザベルとリザベルの娼館の主に話をし、手紙を書いて貰い持参した。

その際に謝礼として金貨1枚払った。

これは自腹だ。

そして今…王国ホテルのイザベル達の部屋に来た。

「「理人様」」

なんだ、この部屋…特殊な香りが漂っているな。

五感を刺激し高揚感を煽るこれは…

「理人様、出た方が良いですよ…これは媚薬を香に混ぜた物です」

「その方が良さそうだな…ガイアがぼうっとしているのはこのせいか」

「此処じゃ不味いから、ロビーに行こうか?」

「そうですね」

「あははっそうしましょう?」

◆◆◆

二人は俺に咎められるのか気にしているのか、少ししょげている。

「イザベルにジザベル…何を勘違いしているのか解らないが、俺はお前達の味方だ、それを行う事でガイアが楽しめるならジャンジャンやって良いぞ」

「あの宜しんですか?」

「てっきり怒られると思っていたのですが」

「そんな事して大丈夫なのですか?」

まぁ普通は怒るな。

「だって三人は側室だし、勇者を楽しませるのは当たり前だろう? 君たちはその道のプロなんだから、ありとあらゆるテクニックを使って勇者を楽しませる…悪い事があるか大いにやりたまえ」

「本当に良いの?」

「流石に、媚薬や麻薬の類はまずいと思ったんだけど…助かります」

「私は使った事ないのですが…」

「愛とは手に入れるのはそう難しい事じゃない…だが維持する事は困難だ…いつまでも飽きられず、愛される、その為にそれが必要ならやるべきだ」

恋愛はスポーツでないし、騎士道なんて関係ない。

卑怯な事をしようが手に入れた人間が勝ちだ。

前の世界とは違いこの世界は麻薬は嗜好品。

別に犯罪じゃない。

こう言った努力を俺は否定したくない。

「あの…まさかご理解頂けるとは思いませんでした」

「本当に…」

「それが悪い事でないなら、私もしてみます」

「ああっ、これから先、ガイアはハーレムを持つ…恐らくはその中で三人が残れるならやがては古参になるんだ、正室を除けばハーレムのリーダーになる存在だ、スタートこそ同じだがそれは権力を握る事につながる」

「そんな大きな話なんですか?」

「凄い話ですね」

「娼婦の私にそれができるのでしょうか?」

自分が既に『凄い』という事に気が付いてないのか?

「既に君たちは選ばれた女性だ…何しろ、貴族の令嬢を差し置いて勇者の側室なんだからな…俺は恋愛とは違う意味で君たちが好きだ、ある意味、似ているからな」

「「「似ている」」」

「そうだろう? やり方は違うが一生懸命尽くす、同じだよそこに貴賎は無いと俺は思っている…これから加わる令嬢は身分も容姿も良い女ばかりだ、そんな中で君たちが勝つ姿、それがみたいんだ、応援しているよ」

「「「理人様」」」

「あと、今のガイアは湯水のようにお金が使える…美味くねだれば何でも買って貰えるはずだ…モチベーションが上がるだろう? これは此処だけの話だが、もし辛い娼婦の時代を過ごした仲間がいるなら買って貰って側室に加える事も可能だ…頑張れよ」

「あの…本当に良いんですか?」

「凄い話ですね」

「そう言えば、私『側室』なんですね…」

「ああっ、そうだ、ただ勿論これは此処だけの話だからな…心から応援しているぞ」

「「「ありがとうございます」」」

本気になった一流の娼婦…凄く面白いな。

◆◆◆

「ただいま~」

「「「おかえりなさい」」」

風呂も沸いて無いし食事も無い…それでも誰かが家で待っていてくれる…それは案外嬉しい。

「皆、ご飯はもう食べたよな」

「いえ、食べてません…買ってきたものですが一緒に食べましょう」

「そうだな、まぁ待っていたんだ」

「一緒に食べた方が美味しいもん」

食事は無い…そう思っていたんだけど、あるんだ。

「それじゃ、お茶を入れるから一緒に食べよう」

「「「はい」」」

あ~癒されるな…これで充分だ。

食事を食べながら話をした。

「実はな、その件なんだが…恐らく早いうちに傷ついた女の子を保護しなくちゃなくなるから…フォローして欲しい」

「あのガイアが何かするのですか?」

「あいつが一体何をすると言うんだ」

「それは良いけど…どういう事なの」

「いや、まだ確定して無いけど、何かありそうな予感があるんだ」

「理人の予感は結構当たるのよね」

「そうだな、留めておくようにするよ」

「慰めれば良いんだよね」

「ああっ、本当に済まないが何かあったら宜しく頼むな」

そんな俺の予想通り…ガイアとの通信水晶が光輝いた。

まさか、今日の今日でもう起きるとは思わなかった。

早いな。

直ぐに俺は自分のホテルの3人部屋を2つ予約して王国ホテルへ向かった。

第30話 素人童貞
王国ホテルに着くとガイアとイザベルとリザベル、チョチョリーナが居た、三人とも小さく手を振っている、3人は上手くいっているようだ…6人の令嬢は恐らくは部屋だな。

お互いの部屋が離れていて良かった。

大体起きた事は俺には理解できる…後で令嬢達には土下座をして謝ろう。

「理人~あの女達、本当に最低だぞ、確かに面は良いし、スタイルも良いがそれだけだ」

まぁこうなるのは解っていたし理由も解るが…聞いておくか?

「一体何が起きたんだ!」

「あの、女達最低だぞ、折角の初日だから誰かを選んで『抱いてやろう』としたんだ、マリーナという女を選んだんだが、自分から服を脱ぎそうに無いし、俺の服も脱がそうとしない…仕方ないから俺が脱がしてやったら…汚いんだよ体が、あそこは臭いし、なんだか汚れているし、それでもめげずにしてやろうとしたら…痛がりやがって、悲鳴をあげやがった…そしたら他の5人が来て部屋から俺を追い出すんだぜ…」

やはり、こうなったか。

こうなると思っていたんだ…

だが、これで良いと俺は思っている。

『女の気持ちを解らない奴に処女の価値は解らねーし勿体ない』

大体、快感を得たい…そこに重きを置くなら『処女』は害しかない。

男を喜ばせるテクニックを知らないし、穴の中は初めてなのだから恥垢が溜まっていて汚い…

それに穴に突っ込めば痛がるし無茶なんて出来ない。

だが、そこに覚悟が加わるから愛おしい。

『大好きな男に体を捧げる』その心が愛おしいそう感じるんだ。

それが解らない男にその価値は絶対に解らないし、『女の覚悟と愛おしさ』は解らないだろう。

だが…ガイアはそれで良い。

昔の俺ならぶん殴ったが…

今の俺はガイアにそれをしない。

「イザベル、それって女としては最低な事か?」

「そうですよ? 大好きな殿方に抱かれるなら体のお手入れはしなくちゃ、いけません…最低限のマナーですよ、不衛生な体で何もしない…最低ですね」

まぁ俺が味方だと思っているなら、そう言うだろうな…

敢えて否定をしない。

「その通りだ、こんな女を寄越した教皇様や帝王様、王達には俺から伝えるよ…「良い女を」とだけ話した俺が悪かった、6人は俺がこの後回収していくから安心してくれ…次は俺も口を挟むから期待して良いぞ、すぐにガイア好みの綺麗な女を送って貰うからな」

「ああっ悪いがそうしてくれ…お前の好意は嬉しいがこれじゃあな、まぁ悪いのはお前じゃない、あんな女を選んだ教皇たちが悪いんだ気にするな…それで一応話しておくが、チョチョリーナには娼婦時代を共に過ごした妹分の娼婦がいるんだ、買ってやって良いか、人族だが家事が得意らしい」

話が早いな…

もう行動に起こしたのか。

「ああっ構わないよ、俺が離れるから世話をする人間は必要だと思っていたんだ、リヒャールさんに言ってブラック小切手を換金して貰ってくれ」

「ああっ、解った」

「勇者のお前に恥をかかせて悪かった、それじゃ彼女たちは回収していくから」

「ああっ夜遅くご苦労だと思うがそうしてくれ」

「ああっ、それじゃ俺は彼女達の部屋に行って、そのまま引き取っていくよ…帰りに挨拶は悪いからしないよ…じゃあなまた」

「じゃあな」

こうなると思っていたが…此処迄とはね。

『素人童貞』これにガイアはなった。

これは俺の前世で結構いた存在だ。

要は風俗や援助交際でしか経験が無い男の事を指していう言葉だ。

チョチョリーナもリザベルもイザベルもプロ中のプロだ。

男を満足させることが彼女達の仕事だ。

自分から服を脱ぎ男の服を脱がし、満足させるために磨いたテクニックを使うし、自ら腰を振る。

しかも最高級の娼館で最高のコースなら男はマグロで良い。

それこそ『男は寝ているだけで』気持ちよくして貰える。

そして男が喜ぶような事の殆どには答える筈だ。

体だって一流となれば常に磨き上げて衛生面でもしっかりとしている…

『何もしないで最高の快楽を得た人間』はもう真面なSEX等出来ない筈だ。

この世界の世界観は中世に近い。

流石にベルサイユみたいに糞尿垂れ流しでは無いがウオシュレットは無いしシャワーも毎日は浴びない。

そんな世界だ…

そんな世界で、裸を見せるのを前提にした職業以外…衛生的で綺麗な女性は少ない。

これでもう…万が一にもマリア達三人へ戻ることは無いだろう。

もし、戻る事があっても自分勝手に何もしない男が普通の女には受け入れられず破綻するはずだ。

まぁ、これからの人生『経験者』とだけ過ごせば良いぜ。

◆◆◆
「本当にごめん!この通りだ」

俺は令嬢たちの部屋へ行き土下座をしている。

「あんな屈辱初めてです…側室候補として此処に来たのに…私、怖かったけど、頑張ったんです…初めてなのに、勇気をもってお相手しようとしたのに…ううっううう」

「俺には謝る事しかできません…ですが、貴方達みたいな綺麗で優しい人にあんな鬼畜勇者は勿体無いです…国に帰れるようにしますから帰りましょう」

「確かに、あんな奴に嫁ぎたくないけど、これでは傷物じゃないですか? もう真面な婚姻など出来ません…責任が貴方にもあるなら、貴方が私達を貰ってくれませんか?」

「すみません、俺には妻がいますので、これ以上娶れません…ですが、今回の話は正式な婚姻じゃありません、いわばお試し期間です、経歴に傷がつかない様に致します…それに必ず教皇様に頼んで、良い夫が得られる様に口沿いをお願いします…それで溜飲を下げて頂けませんか?」

彼女たちは被害者だ。

こうなるように俺は仕向けた…

理由は話せないが誠心誠意謝るのが筋だ。

「無能な友人を持つと苦労されますわね」

「そうですね、被害も浅いからもう良いじゃないですか?許してあげましょう、この人は関係ないのですから」

「身の潔白は貴方が証明して頂けますか?」

「はい、教皇様にお願いして書面で用意します」

「はぁ、初日で終わり、随分不細工な終わり方ですね…これ以上貴方は謝る必要はないですよ…ですが、あの鬼畜勇者への恨みは生涯忘れませんわ…まぁこれ以上貴方を責めても仕方ありません…もう良いですわ」

許して貰えたので、俺は、彼女たちを俺の借りているホテルに移した。

後の事はマリア達に任せて教会に走り事の次第を話して協力を得た。

翌日、ユニコーンの馬車に揺られ、聖騎士の護衛の元彼女たちは各国に帰っていった。

ユニコーンの馬車には『処女』しか乗れない。

これなら『身の潔白は誰が見ても解る』ように俺からの配慮だ。

これからが…また大変だ…

第31話 教皇への報告
「確かにチェンジは可能という話であったが6人全員交換ですか…理由をお聞きしても宜しいですか?」

俺は翌日すぐに通信水晶で連絡をとった。

内容を聞いたローアン大司教が事態を重くみて、すぐにロマーニ教皇を呼びに行った。

今回、此処迄の無理が全部通ったのには理由がある。

それは『勇者の子供』を各国が手に入れる方法を俺が提案したからだ。

実はもうガイアは『傷物』だ。

別に娼婦を側室にする事は問題が無い…だが順番が問題だった。

勇者が最初に抱いた人間が娼婦…これは法律的には全く問題が無い、だが体面としての問題がある。

一国の姫や大貴族の娘が…他の女を抱いた男に嫁ぐ、それが問題だった。

王族や貴族の嫁は基本的に『処女』だ、男女が逆転しているとはいえ、お手付きを嫌う貴族や王族が既に肉体関係にある娼婦の側室が居る存在に後から嫁ぐのは、気位が高い彼等には出来ないだろう。

そこで『勇者の子供は欲しいけど、嫁がせにくい』そんな状態が生まれていた。

そこで俺が考えたのは勇者のハーレム枠を各国に譲る事だった。

とりあえず各国から2枠ずつ、ガイアが望むなら枠は平等に増やす。

これには『勇者絶対主義』のロマーニ教皇は凄く喜んだ。

妊娠した暁にはその女性を自分の養女にするらしい。

その結果、教皇は自分の孫に勇者の血の入った子が手に入るという事になる。

実際の所は迷信だと思うが…勇者の子は優秀で『英雄』にすらなる。そう言う話がある。

その為『勇者の子供』と言うのはブランドだ。

それが手に入るチャンスとして今回それぞれの国に側室枠を2つ渡す約束をした。

その見返りが…聖女、賢者、剣聖を嫁に貰った俺へ対するやっかみ潰しと勇者に対する資金援助だった。

それがいきなり躓いた…訳じゃない。

こんな時のサポートもちゃんとすると提案済みだ。

「ローアンから話を聞きました、こちらで用意した女性に何か問題がございましたでしょうか?」

「少し無礼を承知でお話しても宜しいでしょうか?」

「構いません、此処だけの話で済ませます」

「勇者ガイアは面倒な事を嫌います、その為『処女』が問題でした…勿論、女性は『処女を婚姻まで貫く』のが本分、女性たちに落ち度はありません。責めないであげて下さい…そして心が傷ついてますので出来たら良い縁談を探してあげて下さい」

「それは良いのですが…それでは、どういう女性を用意すれば良いのでしょうか?」

「不敬を承知で言わせてもらいますが」

「この場は気にしませんから宜しくお願いします」

「簡単に言えば、性技に優れ見栄えが良く若い子じゃないと子作りは無駄だと思います」

簡単に言えば娼婦か愛人だ。

「普通は男は『処女』手つかずを望むと思いますが」

「ガイアはその奉仕されるのは好きですが奉仕するのを嫌います、その様な女性で無いと相手は難しいと思います、難しいとは思いますがご考慮して頂かないと同じ事になります」

「それでは致し方ありません、そういう人間を探すか『作る』かして急ぎ派遣します…二国からも来次第、また空竜艇でお届けします」

今『作る』といったな…まさか洗脳か。

俺が知る必要は無いな。

「今度こそ『勇者の血を引く孫』が手に入ると良いですね」

「正直待ちどうしくて仕方ありません」

「あとこれはまだ解りませんが、その確率を上げる方法があるかも知れません」

「本当ですか、それは是非とも」

「それじゃこちらも話が進み次第また提案させて頂きます…それで帝国と王国への報告は如何なさいましょうか? 通信水晶はこの1つとガイアと連絡用の合計2つしかありませんので連絡とるなら文になりますが…」

「それなら此方で協議しますのでご安心ください」

あくまで自国を優先したいから『自分達』を通して欲しいのだろう。

まぁ、その方がいちいち手紙をしたためないで済むから楽だな。

まぁこの世界…王よりも教皇の方が偉いし勇者関連だから、これで良いか。

「それじゃ、お手数を掛けますが宜しくお願い致します」

「はい任されました…あと『確率を上げる方法』は他言無用で当国にのみご相談お願いいたします…場合によっては報酬を出しますので宜しくお願い致しますね」

「畏まりました」

信じられない程丁寧な教皇の対応で報告が終わった。

しかし、勇者パーティなのに戦わないで良いのだろうか?

まぁガイアがあれじゃ暫くは討伐なんて無さそうだな。

第32話 ホワイトウイング

「皆には迷惑かけたな」

彼女達が帰っていった翌日、俺は仲間に謝った。

一晩中あの日寄り添って話をしてくれていた。

今回の件が大して問題にならなかったのは彼女達の功績だ。

「あれは理人が悪いんじゃないよ、ガイアが悪いんだから気にしないでよいわ」

「そうだよあの鬼畜、勇者じゃ無かったら斬り殺してやる」

「ガイアは勇者かも知れないけど、女の敵、今思えばなんで私あんなの好きだったんだろう…意味わかんない」

まぁ、『処女を捧げよう』とした令嬢を保護した時に、傷ついて泣いて話す令嬢の様子を見ればこうなるな。

「それでな、この間話したバカンスはゴメン暫く延期だ、それと一点ガイアに許可を貰ったから、これから俺たちは別動隊になった、だから新しくマリアを中心にパーティを組もうと思うんだがどうかな?」

「バカンスは仕方ないわよ…まぁ元から難しいと思っていたから大丈夫よ…だけどパーティを組みなおすならリーダーは理人が良いわ」

「そうだな、理人中心にこのパーティは纏まっているからそれが良いだろう」

「そうだよ…それでパーティの名前は決まっているの?」

「うん、皆が嫌じゃ無かったら『ホワイトウイング』にしようと思っているんだ」

「ホワイトウイングですか?」

「名前に意味があるのか? なんかこうイメージが掴めないな」

「何か由来があるの?」

「皆のイメージが『天使』だから天使と言えば白い羽、元のブラックウイングから考えたんだ…駄目かな?」

「うふふっ全く理人はそんな事真顔でいうんだからもう…うん良い名前ね」

「確かにうちは理人以外は女だから、うんそれでいいと思う、少し照れるけどなぁ」

「理人のイメージがそれなら、私も賛成」

女ばかり三人で聖女もいるから白のイメージは合うと思う。

「それじゃ後で冒険者ギルドで登録しなおしてガイアに報告してくるな」

「手数ばかりかけて申し訳ないわ」

「私もすまないな」

「ゴメン」

「まぁ、あんな事があって更にこれだ、顔を見たくない気持ちも解るから気にしないで良いよ、あと少しでガイア問題も解決するから、そうしたらバカンスに出掛けよう…そのまま我々は別動隊だから、そうだな南の方に討伐に行くか?」

「良いんですか?」

「それで大丈夫なのか?」

「平気なの?」

「ちゃんと別動隊になるんだから問題は無いよ、ガイアも俺たちも普通の魔族なら自分達で狩れるから普段はそれで十分だ、幹部クラスの上位…しいて言うなら四天王クラスの討伐や最終局面の魔王討伐の時共闘すれば良いだけだ」

「それ凄く良いわ…もうガイアと関わらずに済むなんて、うん最高」

「まさか、あそこ迄クズだったとは…あの泣いている令嬢は下手したら私達の姿だった、あんな奴とはもう一緒に居たくないから助かった」

「ハァ~百年の恋ももう冷めたわ、泣いている令嬢を見たら、本当に付き合わなくて良かったよ…なんだか全部任せてごめんね」

「それじゃ行ってくる」

俺はそのまま冒険者ギルドへと出かけて行った。

◆◆◆

「別動隊の登録ですか? 勿論可能です」

前世とは何もかもが違う。

恐らく前の世界なら色々と手続きが大変なのだろうが…

結構すんなりした物だった。

もしかしたら、手続きが難しいかと思っていたが、俺たちが勇者パーティで信頼があるから全て省略可能だという事だった。

「それじゃ…パーティ名はホワイトウイング、リーダーは理人様と、これで終わりました…しかし理人様は凄く面倒見が良いですね…抜ければ直ぐに幸せに成れるのに…」

「そんな訳ありませんよ」

「そんな事ありません、天下のS級ランクで紐無し…家庭的な子が良いならメイドさん、共に戦いたいなら冒険者幾らでもよりどりみどりですよ」

「そうですかね…」

「そうですよ、出来る女が良いなら『私』なんてどうですか? 貴方好みに染まりますよ!」

確かに俺が人気があるのは解っている。

だが、もう俺は二度と同じ過ちを起こさない。

そう決めた。

「嬉しいですが、そんな冗談に引っかかりませんよ…それじゃ」

「そんな」

彼女は受付嬢、悪評がたっちゃ可哀そうだ…冗談にしてあげるのが一番だ。

◆◆◆

「ハァハァ、理人待たせたな」

童貞卒業したばかりでやりたい盛り。

とはいえ、もう昼だ…よく飽きないな。

まぁ、あれだけの美女に求められていたらそうなるか?

「それでどうした?」

「ああっ、女達6人は無事返した…次の美女は直ぐに選定して送ってくれるそうだ」

「そうか、それは任せるから報告は無用だ」

「そうか…俺とお前の付き合いもかなり長くな」

「どうしたんだ一体」

「今度来る6人をお前が気に入った時点で…少し距離をとろうと思う…前から少し話していた別動隊を正式にする事にしたんだがどうだろうか?」

「ああっ、俺とお前達が別行動するって奴だろう? 大物をやる時以外は確かにそれで良いぜ…まぁその時はかなり先だな」

俺たちはまだ勇者パーティーとしては未熟な状態だ。

RPGで言うなら魔王の討伐がレベル30以上で出来るゲームでレベル10位、まだまだ序盤だ。

そう考えたら1年位は別行動になりそうだ。

「俺は言い方が悪いがガイアの事を弟みたいに思っていた」

「まぁお前が言うならそうなのだろうな? 小さい頃は助けて貰ったから否定はしないぞ」

「ああっ、今回、ガイアは莫大なお金に自由に沢山の女を得る権利を俺が提案して通した…それに権力もある程度行使できるようになったと思う」

「確かにそうだな…そうだ褒美として欲しい物があるか? 何でも買ってやるぞ」

「いやそう言うのじゃない、もうガイアは自分で欲しい物を何でも手に入れられる…だからもう俺は弟とは思わない、1人の男、まぁ本当の意味で親友に戻ろうと思うんだ」

「確かに、もう俺はお前に頼る事は少ないだろう…そうだな、だが親友だとは思っている、何か困った事があれば今度はお前が言ってこい、力になるからな」

なんだ…いまガイアが随分真面に思えたぞ。

「ありがとうな…それでガイアに聞きたいが子供は好きか?」

「なんだ、お前知っているだろう」

「ああっ確かに嫌いなのは知っている…聞きたいのは自分の子供の事だ」

「ああっ多分、同じだと思う」

「そうか、それじゃ少しイザベルとジザベル、チョチョリーナともう一人はえーと」

「リナだ」

「その4人と子供について取り決めをしたいんだが良いか?」

「どうしたんだ?」

「子供が出来たら、流石に旅は難しいだろう? 妊娠したら教皇様の方で一旦引き取って出産後ガイアに戻す…そういう事を考えているんだ、教皇様の好意で子供も引き取っても良いらしい…どうだ?」

「ああっそう言うことか? なら構わねーよ…ただ短めにな」

「ああっ解っているさ」

ぶれないなガイアは

◆◆◆

「えーと子供ですか?」

「そう子供」

俺は子供をどうしたいか聞いてみた。

産んで育てたいならそれも良し…母子の情を引き裂く必要は無い。

だが、昔からガイアは子供が嫌いだ。

恐らく、子育てには参加しない。

赤ん坊が泣いていたら舌打ちする位だからな。

「私たちは娼婦ですから子供は欲しくありません、そうよねジザベル」

「そうね、私も欲しくはないですね」

「ならば…」

俺は子供が出来たら聖教国に譲ってはどうかと提案した。

莫大な一時金にその後の保証を教皇自らがしてくれる事を条件にした。

「妊娠期間中の保証もしてくれるのですかね」

「勿論、聖教国で出産までの期間もしっかり面倒を見てくれる」

「それなら私達二人はその話に乗るわ」

「私も」

「それでチョチョリーナさんは」

「私は解りません、赤ちゃんを育てたい気持ちもあれば、手放したい気持ちもあります」

「今決まらないなら、その時が来たら考えれば良いよ」

「そうですか? それならそれでお願い致します」

「二人はそれで良いのか?」

「「はい」」

「それじゃ手続きはこちらでするから」

教皇様にこの事を話して、後は…6人が来たら、ようやく1段落つくな。

第33話 引き渡しとリア充
ガイアハーレムの第二陣が来た。

見た感じでは、妖艶な女性ばかりだ。

胸が空いたドレスにスリットの入ったスカート。

悪く言えば品が無い。

良く言えばセクシー、そんな女性ばかりだ。

今回は『王国ホテル』で食事をしながら顔合わせをする予定だ。

予約は俺がしたが支払いはガイア…まぁブラック小切手があるから大丈夫だな。

名前や詳しい境遇は敢えて聞かなかった。

教皇様との通信水晶越しの話では『わけあり』の令嬢ばかりだそうだ。

中には結婚して旦那を腹上死までさせたという不名誉な令嬢もいる。

トラブった時に頼られても困るから、簡単な挨拶に留めた。

「俺の名前は理人だ、一応勇者ガイアの親友だが今日限りで忘れてくれて構わない、君達にとって唯一尽くすべき男性は勇者ガイアだ…そしてガイアはよく言う『英雄色を好む』の典型的タイプだ、今日此処にいる貴方達は色事にたけた女性の筈だ…頑張ってくれ、無事妊娠した後の褒美はもう各自聞いていると思う、誘惑し常に勇者に愛されるように励んでくれ」

「あの…それは貴族としての慎みも気にしないで良いという事ですか?」

「そんな物は要らない。色仕掛け、破廉恥なんでもありだ、人前ですら気にしなくて良い…勿論、ガイアに嫌われない様に細心の注意をしたうえでだが」

「いきなり裸でベッドに突入しても咎められませんか?」

「最初に言ったように…何でもありだ、ガイアが拒まないなら人前で押し倒して行為に及んでも構わない…今の君たちのライバルは元娼婦、そしてガイアは『色を好む』ある意味、そこは戦場だ」

「それは素晴らしいですわね…じゅるっ」

「本当に良いんですね? 私…こんな見た目ですが性欲が強くて困っていたんです」

凄いなまるでカエルを見つけた蛇だな。

「頑張って、ガイアを虜にしろよ!今のガイアは権力もお金もある、気に入られれば何でも手に入るからな」

「宝石は、私宝石に目が無いのよ」

「幾らでも…王宮ご用達のガルガリのこの街の支店長がガイアの相談役だ、上手くねだればガルガリの宝石は君の物だよ…金貨30枚位の奴ならもう既に今の側室は2個は買って貰っている」

「素晴らしいですわね…やる気が出てきましたわ」

「今のガイアなら、大抵の物は買える、何でもおねだりするが良い…ただこれは此処だけの話だ、絶対にガイアには言うなよ」

腐っても貴族の令嬢だ口は堅いだろう。

◆◆◆

王国ホテルに着いた。

「今日から此処が君たちの住むホテルだ…勇者は旅生活になるが、このランクのホテルに泊まる事が多い、ただ田舎だと流石には宿屋になるが…さぁ皆の為にガイアが宴を開いてくれている…ブッフェ式だから自由に楽しんでくれ」

「「「「「「はい」」」」」」

ガイア…凄いなこれ…規模こそ小さいが、楽団もいて曲を奏でている。

まるで王族のパーティだな。

◆◆◆

俺はノックしてガイアの部屋に入った。

「凄いな…」

女四人を侍らせた状態のガイアがそこに居た。

まるでリア充その物だ。

しかも下着はつけているものの三人は裸に近い。

「だろう? 理人は俺の親友だからな、見せてもいいんじゃないかと思ってな」

「そうです! 気になさらないで大丈夫ですから」

「まぁ、私達は体が自慢ですから、見られるのは気になりません」

「ええっ、この位なら」

「触らしてはやらないが親友だから、好きなだけ見てって良いぞ、この4人は絶対に手放さないが…欲しければ何時でも俺に言えよ、買ってやるからな」

「そうだな…将来そういう時が来たら頼むわ」

絶対に来ない…うん…こない。

「ああっ、任せておけ」

「それじゃ6人は下に居るから手がすいたら行ってやってくれ」

「ああっ解った」

「それじゃ前回の事があるから3日間位はガブギの街に居るけど、問題ないようなら俺たちは旅立つからな」

「ああっ確かバカンスに行くんだな」

「そうだ、ガイア程じゃないが俺も骨休みさせて貰う、何か困った事があったら通信水晶で連絡くれ…あっあれ」

「ああ気が付いたか? もう1人増やしたんだ」

「あのよ…ハーレムは平等に…」

「大丈夫だ、三人から薬を貰っているから平気だ24時間でも頑張れるぜ」

「それは…大丈夫なのか?」

「はい、私達の秘薬は副作用無し…夜はビンビンになり、強敵と戦う時は臆病風に吹かれなくなり高揚感が増します、優れものなんです」

「ついでにエルフの秘薬も使ってます…こちらも副作用なしです」

可笑しいな…ハーレムの主で女を侍らせているガイアが…飼われている様に見えるのは俺だけだろうか?

「そうか、ガイア、体に気をつけて頑張れよ…あと討伐もしっかりしろよ」

「ああっ、解っているって」

「そうか…それじゃ俺はいくわ」

「折角だから、パーティで食っていけば良いだろう?」

「このパーティはガイアハーレムのパーティだぜ、皆で楽しんでくれ…俺は家でささやかな晩餐を食べるとするさ」

「そうか…それじゃあな」

「ああっ」

俺は王国ホテルを後にした。

※ あと数話で第一部ガイア編が終わる予定です。

第34話 旅立ち(第一部 完)
何事もやりすぎは良くない。

この程度の仕返しで充分だ。

良く恋人が奪われたからって凄まじい『ざまぁ』という仕返しをする話を小説で目にするが…あれ本当に意味があるのか?

そう思うんだ、復讐って思ったより労力を使うんだぜ。

しかも、人を追いやればそいつは一生恨み続ける。

今度は自分が『仕返しされる側』になりかねない。

危なくて仕方ないだろう。

ガイアは気が付いていないけど、ガイアはもう沢山の物を失った。

あのままのガイアが頑張っていれば、恐らくガイアは魔王討伐後、どこかの国のお姫様を妻に貰い、王族になった可能性もあった。

王配にすらなり得る可能性もあった。

王族を妻に持ち側室を迎えて素晴らしい生活が待っていた筈だ。

それがもう…恐らくは魔王を倒しても貴族、それも中級以下の可能性が高い。

良い縁談が無くなるという事はそう言うことだ。

最初に来た、ガイアハーレムの6人は教皇様や王様帝王様が厳選した女性だ…恐らくは貴族、それも話した感じでは、かなり上の位の令嬢の可能性が高い…その令嬢に『恥をかかせて恨まれた』以上はこれから社交界にはさぞかし、悪い噂が飛び交うだろう。

それにその親族も勇者のガイアには流石に何かしはしないだろうが、悪い印象しかなくなるだろう。

勇者大好き教皇様は兎も角、帝王様や王様も今回の事で幻滅したに違いない…本当の令嬢より『娼婦』の様な女性を選んだんだ仕方ないだろうし、国のお金で娼婦や宝石を買い漁っているんだ…うん仕方ないな。

そして…ガイアは男の喜びを本当の意味で知る事はない。

肉体関係はキャッチボールだと俺は思っている。

一方的に求めるだけで、自分から何もしなければ『本当の快感も愛も得られない』

少なくとも俺は、そう思うんだ、もうあいつは『女を喜ばせる喜び』をきっと生涯知らずに終わる気がする。

◆◆◆

此処迄しておいてなんだが…俺は誰からも責められないだろう?

だって、ガイアが『女が欲しい』と言えば『女を世話した』

欲しいであろう『お金』も『宝石』何でも手に入れる方法を与えた。

前世でいうなら『無限に使えるブラックカード』『美女がよりどりみどり』そんなリア充にしてあげたんだぜ。

しかも俺の苦労は誰もが知っているし、何よりガイア自身が知っているから、文句は恐らく誰からも出ない筈だ。

ガイア…楽しいか?

凄く楽しいよな…

だがな…その虚しさにいつか気が付く。

全て手に入れた様な高揚感が嘘だったってな。

今のお前はまるで前世の俺だ。

それが5年後なのか10年後なのか、はたまた30年後なのか解らない。

その時が来たら、手を貸してやるぜ。

俺はこれでも『お前を親友』そう思っているからな。

◆◆◆

「なにか考え事?」

「どうしたんだ、深刻な顔をして」

「私で良ければ、相談に乗るよ」

あの後、イザベルとジザベルに子供が出来たら、教皇様に引き渡せるという話をしたら、凄く喜ばれた。

その報酬としてお金をくれると言ったが辞退。

そうしたら、別荘をくれる事になった。

貸すでなく『くれる』のだ。

場所はガルイサム…高級別荘地で温泉があり景色も良く、海が近くて、食べ物も美味い。

「いや、これからバカンスだろう? 凄く楽しみなんだ」

「私だって初めてだからうん、楽しみだよ」

「まさか、まだ魔王討伐中なのにバカンスなんて出来るとは思わなかったな」

「海の水ってしょっぱいんだよね」

「ああっ、俺も楽しみだ」

今度こそ、俺は約束のバカンスに出掛けた。

エルフだってダークエルフだって買う事はお金さえあれば買える。

だが、幼馴染は絶対に買えない。

例えどんなであろうと傍にいるだけで幸せだ。

今の俺は…うん凄く幸せなんだ。

(第一部 完)

※次の話で閑話を書きます。
 何故理人がこんな行動をしてこんな感じになったのか、ある意味回答が次の閑話です。
その次は、第二部のスタートです。
此処迄応援、本当にありがとうございました。

第35話 【閑話】 理人
※理人の前世は今の日本でなく1970年代位を想定した架空の日本です。

良く女を親友に寝取られたって騒ぐ奴がこの世界は多いけど…そんな騒ぐ事か?

そんなの寝取られる奴が間抜けなだけだろう?

恋愛と友情は別物でしょう?

少なくとも俺が居た世界じゃそうだったし、俺もそう思う。

まぁ『すげー腹は立つけど』友達辞めるまでいかねー。

そう思う。

大体、俺の憧れは フェラーリのたかさんやBNWのおおかみさんだったから、寝取られる奴、取り返せない奴が悪い。

それが当たり前だった。

大体この世界は凄く固いんだよな。

俺が居た世界じゃ『良い女は殆ど非処女』だ。

可愛い女が未経験な訳ないよな。

大体、女子高校生にもなって処女だと「なにそれ..きもーい」とか「蜘蛛の巣はってんじゃん」そう馬鹿にされる世界だった。

大学まで珍しく純情な女の子が居ても…大体、サークルとかで先輩に食われて、黒髪が茶髪に代わって、ミニスカートでパンツ見せながら男に色目使うような女に代わる。

良い女の多くは六本木や原宿のディスコに居るけど、ボディコン着てパンチラいや、パンモロ状態だぜ…

良い女は男をとっかえひっかえするから、男経験なんて二桁はあるのが当たり前だった。

そういう女に群がってナンパする…それが俺の前世だった。

中学まで野球少年だった俺は、高校に入ると女にモテたくてバイクの免許をとりナンパを始めた…夏は湘南、日常は原宿、渋谷でいつも声を掛けていた。

「へぃ、彼女お茶しない」とナンパしていた訳だ。

まぁ高校生でバイクじゃ成功率は低いけど、偶には成功してホテルまでいったりするし、付き合えたりもするが、大体最後は振られる事が多い。中には「これだからガキは嫌いなのよ」と心をえぐっていく女もいるんだ。

そんなのでめげちゃナンパなんて出来ない。

勿論、俺がナンパで引っかける女も例外はなく…ほぼ処女じゃない。

大学生に成るころには、バイクは中古のソアラになり、女を口説く為にDCブランドのスーツを着てプレーントウの靴を履くようになった。

時代は少し変わって、女を口説くのにはまめさやお金が必要になった。
『アッシー君』『メッシ―君』『貢ぐくん』この三人を持つのが良い女の証しなんて言われていた可笑しな時代に変わっていった。

まぁ俺も一通り経験はしたよ。

本当のリア充じゃ無ければ、そうでもしないと良い女を物にできない嫌な時代だ。

有名なミュージシャンが、変な歌を歌ったから…そんなデートが流行り…スキー代からホテル代も全部持つことになったのは苦い思い出だ。

まぁやれたが…その為の出費が30万じゃ割にあわないだろう。

今思えば当時は男も女も相手をとっかえ、ひっかえしていたから…友達同士、気がついたら『穴兄弟』そんな事すらよくあった。

綺麗で派手な女の子なら、中学で処女を卒業…高校では肌を焼いて茶髪になってミニスカにルーズソックスでパンツ丸見えで街を歩く、コギャルになる奴が多い。

勿論身持ちの固い子もいるけど、イケメンならナンパしてホテルへGO状態だ。
多少不細工な奴や おっさんは ホ別3万円でGOだ。
※ ホテル代別で3万円。

田舎なんかだとパチンコ屋とカラオケBOX、そしてラブホ位しかないから、より都会より凄かった。

そんな世界で生きてきたんだ…貞操観念なんて俺は気にしない。

過去は過去…今が重要だ。

女の過去なんて気にしたらキリがない…

俺だって三桁は経験したから文句なんて言えないな。

そんな俺がガイアに略奪されたからって怒るわけが無い。

唯一許せないのは俺を追放しようとした…それだけだ。

話は戻るが

そんな生活をしていた俺が、ある時から気になる奴らが出来た。

地味な男に地味な女。

いつもジーンズに草臥れたシャツを着ていた。

キャンパスでもどこでも幸せそうにイチャついていた。

車も中古の軽自動車…

俺は何時もそいつらを『見下していた』

ダサい。

ああはなりたくない。

なんであんな安物着てキャンパスに来るんだ。

みっともねーな。

俺はテニス部の女もチア部の女も食った。

俺の横に居る女を見ろよレベルがちげーだろう。

だが…何故かむなしい。

ある時、俺の中で悪魔が囁く。

『あれの方が本物のリア充なんじゃないか』

お前がDCブランド辞めて車を手放したら、お前の周りの女は何人、傍に居てくれるのか?

居ないだろう?

『本当にお前を愛してくれる人間なんて居ない』

その悪魔の囁きは次第に俺の頭を支配していった。

気がついたら…毎日が楽しく無くなっていった。

ナンパをすれば幾らでも女を抱ける。

何故だ…車があるから、カッコ良いから…

お洒落なお店を知っているから…

『それは本物じゃないだろう』

どうしたら…『本物』が手に入る。

DCブランドを辞めた…

足が無いと困るからソアラはそのまま。

まぁ間接照明と大型TVの部屋もそのままだ。

気になった二人と話をした…そうしたら…

『幼馴染』だった。

仲良くなればなるほど…『二人だけの世界』を持っている事を知った。

今思えば、小さい頃の俺には『親友』『幼馴染』はいた。

だが、俺は『ナンパで女を手に入れる事』に夢中になり、斬り捨てていた。

大切な物を俺は知らないうちに斬り捨てていたんだ。

その『幼馴染』を大切に育てあげたのが此奴らなんだ。

もう『手遅れ』だ。

前世の記憶は今では虫食いだ。

何故死んだかも今じゃ思い出せない。

だが社会人になってもきっと俺は本当の『愛』をきっと手に入れられなかったんだろう。

だが…覚えている。

容姿なんて関係ない。

沢山の思い出を共有して沢山の時間を共に過ごした…

『幼馴染』こそがきっと最高の女なのだと。

今度こそは『間違えない』

次回から第二部がスタートします。

第二部は三人との関係が中心になります。

第36話 第二部スタート 男女交際AB

「まさか、バカンスに来れるなんて思わなかったわ」

「本当に、こんな事まで許されるとは思わなかったな」

「まさに理人様様だよね、本当に最高の旦那様だね」

流石の理人も疲れたようで別荘で眠っている。

そこで私たちは暇だったので近くを散策することにした。

本当の所は『皆で話し合い』をしたくて散歩に来たんだけど、多分同じ事を考えていると思うな。

「いま、リタから旦那様と言う言葉が出たけど…あっちどうしようか?」

「ああっ私も考えていた、正式に夫婦だし、ガイアがあそこ迄羽目を外しているんだ、幾ら理人が聖人君子だとしても、まぁ性欲位あるだろうな」

「それで実際、私達ってそういう事して良いのかな? これからも討伐はしなくちゃいけないし、女の子だから妊娠もあるよね…どうなのかな」

男の場合はそんなの考えなくて良いですが、女性なのでどうしても考える必要はあります。

いつの間にか真実は捻じ曲げられて『事実婚』の状態に私たちはなっていましたが、勇者であるガイアですら婚姻が出来なかった事情はその辺りにあります。

妊娠してしまったらかなりの期間戦う事が出来ずに討伐できませんから。

「そうね…だけど『婚姻』は何故か正式にしているから、そういう関係になっても良いとも取れるわ」

「正式に結婚したんだから良いんじゃないか? 妊娠が気になるなら避妊紋という手もあるだろう?」

「あのね、三職はそんな物刻めないよ…それに刻んでも、私たちは耐性があるから完全には効かない可能性もあるよ」

「そうよね、聖女だから呪印は効きずらいわね…それでどうするの?」

「こう言うことは当事者の理人に聞くしか無いんじゃないか?」

「そうよ! 私達にはそういう風習は無いけど、理人は新婚旅行だって喜んでいたし…うん、相談した方が良いと思う」

確かにそうですね…

ガイアの様子や醜聞は理人が私達に話さなくても耳に入ってきます。

元娼婦を身請けしてから、毎日破廉恥な事ばかりしているそうです。

村に居れば、もう結婚して子孫作りの為に子作りしていても可笑しくない…そういう年齢です。

田舎なので将来畑を耕してくれる、子供作りは重要ですから。

女の私たちはそうでも無いですが…男の子は結構辛いと聞いた気がします。

「そうですね…相談しましょう」

「それでどう言い出すんだ?」

「そこはやはり賢者のリタに任せます」

「えっ、私? なんで…恥ずかしいし、無理…これはやはり聖女のマリアが適任だと思うな」

「私がですか? エルザ、貴方前に乳とか言って…」

「あはははっゴメン、流石にムズいわ」

「はぁ~解りました」

もう暫くしたら理人も目を覚ますでしょう。

そうしたら…相談ですね。

◆◆◆

「理人あのね、ちょっと」

何でだろう、三人とも顔が赤い気がする。

「そう言えば、散歩は楽しめた? 海とかどうだった?」

俺はこの世界に来てから海を見ていない。

楽しみだ…最もこの世界には水着はあるけど七分シャツに七分ズボンだから目の保養にはならないけどな。

「ああっ、その辺りを散歩してきただけだから、空気が美味い、それしか無かった、本格的なのは明日、理人と一緒に行こうと思ってな、それよりマリアが相談があるらしいんだ」

「そう、マリアが相談があるんだって」

「ちょっと、二人とも酷いよ…えとね、あのぉ、夫婦になったわけだし…あの..夜の営みって…どうするのかなって」

それで顔が真っ赤な訳か…耳まで真っ赤にして…可愛いい。

実は、それについては問題ない。

流石に婚姻までした男女に『子作りするな』とは言えない。

だからこそ、ガイアですら婚姻は出来なかった。

まぁ、歪めて事実婚にしてしまったわけだけどな。

だから、やれる、やれないと言う話であれば『やれる』

だが、それには責任が伴う。

もし、妊娠等で戦えない人員が居たら…

『欠けた状態で任務を行う』

そういう事になる。

勿論、そんな事は怖くて出来ない。

一応は教皇様達から行っては良いと言われているけど義務が生じるんだ。

俺は今の内容を話した。

「そうなのね…許可は出ているけど実際には出来ない、そういう事なんだ…理人ゴメン、こんなに頑張ってくれたから答えてあげたかったのに」

「なんだそれ酷いな…許可はするけど実質出来ないって事だろう?」

「あの…それで理人は辛くないの」

こう言うのって嬉しいな。

俺の事もちゃんと考えてくれているなんて。

「それならさぁ…Bまでしてみない?」

「「「B?」」」

俺の前の世界は性に奔放な反面順序だててという反面もあった。

(※理人が居た日本は1970年代に近い世界観の日本です)

Aはキス
Bはペッテイング
CはSEX

この世界から考えたら飛んでもない世界だった…そう思う。

何しろ中学生や高校生の少女の読む雑誌に バナナを使った口技の練習の仕方が書いてあったりした。

普通のしっかりした雑誌やトレンディ雑誌には必ずSEXの特集が組まれていて、どうすれば喜ばせられるのか?

こんな男は性的に嫌われる…なんて普通に書いてあった。

普通に大学生の女の子や女子高生が「〇〇の特集が為になるよ」

と話している…今思えば凄い世界だったな。

確かにもう結婚もしているし、今の状態が『新婚旅行』みたいな物だからそろそろそういう事をしても良いのかも知れない。

「ああっ、そう言った行為をAがキス、Bがペッテイング、Cが最後までそういう風にABCに分けて現した物だ」

「それでB:ペッテイングとは何ですか?」

不味い、恥ずかしくなってきた。

「最後の一歩手前の…事だ」

「確かに、突っ込まなくちゃ子供は出来ねーよな…うんそれなら妊娠なんてしないな」

「エルザ…良くそんな事大きな声でいえるよね…恥ずかしいよ」

「あの…理人がそれで良いなら…もう妻ですしお相手してもいいですよ」

「ああっ良いぜ」

「私も…良いよ」

まだ、そこ迄しなくても良いと思っていたんだが…

自分達から言ってきたし、断ったら恥をかかした事になるよな。

「そうだな、それじゃ折角だからお願いしようか、いっぺんに三人は恥ずかしいし無理だ、ただ俺は三人とも同じ位好きだから選べない…順番は三人で決めて欲しい」

「あの…何時から?」

「今夜からで…どうかな?」

「解った…話し合って、早速今日から誰か行くから」

「ああっ楽しみにしている」

前の世界では経験があるが…この世界じゃ初めてだ。

流石に上手く出来るかどうか…自信は無いな。

第37話 マリア初めて(未満)の夜
ガルイサムは凄いな。

前世で言うなら軽井沢の高級別荘地に熱海か伊東を合わせたように海がある。

しかもこの別荘…温泉まで引き込まれている。

更にその中の一部屋は恐らく、教皇様が籠って仕事をする為なのかお風呂にトイレまで全部ついている部屋がある。

夜までまだ時間がある。

本当ならあのまま俺も散歩に行きたかったけど、話の流れでそれは明日になってしまった。

高級別荘地というのは凄い。

中央に管理棟があってそこに頼むと、食事でも何でも有料だが届けてくれる。

色々と相談にも乗って貰える。

コンセルジュは無いとリヒャールさんは言っていたが…そういう言葉は無いだけでシステムとしては有るのかも知れない。

良く考えれば執事が普通にいる世界でない訳ないな。

夜の食事は頼んであるが、昼は頼んで無かったので急遽頼んだ。

一緒にお茶を飲んだり、お菓子を食べながら過ごしたが、

三人とも緊張しているのか、会話は弾まず…そして夜を迎えた。

誰が来るのか俺は解らない。

期待と興奮で胸がドキドキしていた。

自分では手慣れた物だと思っていたが…転生して初めての経験だ。

心は慣れていても体が慣れていないのか…微妙に手が震えているのが解る。

トントン…ドアがノックされた。

部屋に来たのはマリアだった。

薄手のピンクのキャミソールの様なパジャマが見ていて可愛い。

「あの…きましたわ」

俺以上に緊張しているのが解る。

「とりあえず入って」

「はい」

緊張をほぐす為に用意していた紅茶を入れてあげた。

「あの…すぐに始めるんじゃ…無いんですか?」

この世界じゃ皆そうしている。

恐らく高級な娼館以外じゃ、やる時は『やるだけ』だと思う。

特に村じゃ生活の流れでしているから、まぁそうだ。

だが…俺は違う。

俺が居た世界では『雰囲気作り』が凄く大切だった。

それに失敗するとあと少しで…なんて所でビンタをされて帰られてしまう。

「夜は長いから、ゆっくりで良いとおもうよ…お互い初めてだから俺なんてほら…」

そう言いマリアの手をとり俺の胸にあてがった。

「あっ…」

「ほらね、ドキドキしているでしょう? マリアだって緊張しているんじゃない? だからゆっくりとしよう」

「そうね…うん」

少し、緊張がほぐれたようだ。

紅茶を飲みながらマリアと話した。

会話の中に『綺麗』『可愛い』『好き』を混ぜながら気をつけて話す。

マリアはだんだん笑顔になっていった。

「それじゃ、一緒にお風呂に入ろうか?」

「え~と…うん」

そのままマリアの手を引き一緒に風呂場まで来た。

本来なら男がシャワーを手早く浴び、その後に女性がゆっくりとシャワーを浴びて…その間に男が準備を整えるのがマナーだが、この世界にはそんなマナーが無い。
恐らくはそう言った文化が発展しなかったのかも知れない。

「あの…理人、わたし…」
「大丈夫だから、こう言うのは相手の事を思いやってしたい事をすればいいんだよ…マリア愛しているよ、うんぐううんうん」

俺はマリアにキスをした。

「ううっ?!うっうんぐうんうん、ぷはっ…理人…うんぐっううんうん」

最初は驚いた顔をしたマリアだったが、途中からは自分から唇を押し付けてきた。

舌の使い方は解るわけないから凄く拙いが…逆にそれが一生懸命で可愛らしく、愛おしく思えた。

俺はキスをしながら手早くマリアを脱がせて自分もそのまま服を脱いだ。

恥ずかしそうにマリアは下を向いた。

そのまま再び手を引いてお風呂に入り椅子に座らせた。

「あのね…理人、私本当にどうして良いか解らないの…お母さんに聞いた事はあるけど…これ、全然違うし…それにお母さんから聞いたのは、そのね」

この世界のこういう生活は凄く淡泊だ。

前の世界の俺みたいな事は、普通の人間は誰もしない。

「さっきも言ったけど、こういうのに決まりは無いよ、初めてなんだから解らなくて当たり前だとおもう…だったらこうしない? 俺はマリアにしたい事が沢山あるからする…マリアはその中で自分もしたいと思った事があればすれば良いと思うよ」

「うん、解った」

俺はお風呂に入るとマリアを洗い始めた。

シャボンをタップリつけて『素手で』

もう既に始まっている。

「そんな、嫌、恥ずかしいし…そこは汚いよ、駄目だって」

「俺はマリアを愛しているから、マリアに汚い所なんて無いと思っているよ…だから気にしないで」

「はぁはぁ気にするよ…そんな」

結局、俺は2時間近く掛けマリアを三回逝かせる事ができた。

途中からはマリアも俺の体を洗うと言い出し、同じような事をしだした。

たどたどしく真っ赤な顔で体を密着さえていたマリアが凄く可愛い。

「そろそろ出ようか?」

「ええっうん」

マリアの体を手早く拭いて俺も急いで拭いた。

歩いてベッドに行こうとするマリアを俺は抱き上げた。

所謂、お姫様抱っこだ。

「もう驚くじゃない」

「ごめん、これも俺がやりたかった事だから」

「嬉しいから良いけど…ちょっと恥ずかしい」

「だけど、これからもっと恥ずかしい事をするんだよ」

「もう、そういう事は口で言わないでよ…恥ずかしいんだから」

そのままベッドに行きマリアを降ろした。

「愛しているよマリア」

「私もよ」

「ちゃんと言って欲しいな?」

「愛しているよ…理人くん…これで良いかな?」

『くん』か…

「ありがとうマリア」

「もう、理人くんったら…あっそんな駄目だよ、そんな所汚いよ、あっ口なんて、本当に…あっ」

「好きだよ、愛しているよマリア…」

「ずるいよ、それ嫌って言えなくなる…それになんでそんな手慣れているの…可笑しいよ」

「違うよ、俺は大好きなマリアに自分がしたい事をしているだけだから」

「それなら、良いけど…これ違うよ、教わっていたのと違うから」

気が付くともう朝になっていた。

マリアをもう数えきれない位逝かせた。

途中からマリアも俺を真似て色々してきたが初めてなのか凄く拙い。

だが、一生懸命なのが凄く可愛く愛おしい。

1回俺をいかした時のホッとした笑顔は凄く可愛らしかった。

今、マリアは俺の腕の中でスヤスヤと可愛らしい笑顔で寝ている。

俺は前世では変わり者で、行為その物よりも終わった後が好きだった。

腕枕をして眠っている笑顔が凄く好きだった。

それは偽りですら愛おしかったのに..ましてそれが本物なら愛おしさが止まらなくなる。

第38話 『理人』が『理人くん』に変わった

「おはよう理人くん!」

マリアの笑顔がすぐ傍にあった。

マリアの笑顔を見ながら俺はまた眠ってしまったようだ。

「おはよう…え~と、なんて呼べば良い?」

『理人くん』こう呼ばれていたのは子供の頃だ。

幼馴染とはいえ村での事。

前世で言う同級生とは違い微妙に年齢に違いがある。

マリアは俺やガイアより2つ年上で幼馴染の中では一番年上だった。

だから良くお姉ちゃん風邪をこじらしていた。

最もそれは心地よくて、自分おやつを減らして俺たちの分を増やしてくれたり、怪我して泣いていると治療してくれたりとまるで本当の姉みたいだった…まぁ凄く不器用だったんだけどね。

「私、思ったの、理人くんにあんなに愛されて、あれが理人くんの私に対する思いなら、ちゃんと答えないといけないってね、もう理人くんの前じゃ聖女ぶるのも辞めるよ…だから理人じゃなくて『理人くん』って呼ぶことにしたの、だから『理人くん』もほらね」

これでどう呼んで欲しいのか解った。

ちょっと恥ずかしいけど、これがマリアの『愛』だそう思えるから仕方ない。

「マリ姉(まりねぇ) これで良い?」

「うん、ありがとう理人くん、愛してるわ、ちゅっ」

いきなりキスされた。

まぁ軽いキスだけど…凄く嬉しい。

「それじゃ、理人くん流石に汗でベトベトだからシャワー浴びようか?」

「そうだね、浴びようか? あれマリ姉?」

マリアに腕を掴まれた。

「理人くん…それ、もう仕方ないなぁ~、そんなにしちゃって、それも愛だよね! シャワーの前にしちゃおうか…ねぇ」

「マリ姉、流石に汚いよ」

「理人くん、昨日お姉ちゃんには汚い所はないって言ったよね? 勿論、お姉ちゃんも同じ思いだよ、だから気にしないで良いよ…ほらね」

お姉ちゃん…目がすわっている。

そのままマリアにベッドに逆戻りさせられ押し倒された。

お互い汗まみれなのに気にしないで、また行為にふけっていった。

結局シャワーを浴びるまで行為を繰り返し2時間近く掛かった。

◆◆◆

「はい、理人くん、あ~ん」

「マリ姉、流石に少し恥ずかしい…」

あれからシャワーを無事終えて今は皆と朝食をとっている。

「あの…マリア一体どうしたんだ?」

「何か様子が変なんだけど? どうしたの?」

「別に可笑しくなったわけじゃ無いわ、昨日凄く理人くんに愛されてね、自分に素直になっただけよ! 元の私ってこんな感じだよ?忘れちゃった」

「そうだったかな~」

「確かにお姉ちゃん風邪拗らせていたけど、そうだっけ?」

「そうよ! だから聖女様はおしまい…あっ義務を放棄したわけじゃ無いわ…好きな理人くんの前位は、昔のままの、本当の自分に戻ろうと思ったのよ」

「だからと言ってそれは変わりすぎな気がするが」

「そうよ可笑しいよ…」

「変わるわよ…貴方達だって絶対に変わるから」

「あの理人、一体何があったんだ」

「どうしちゃったの?」

「理人くん、二人で愛し合っただけだよね」

「そうだね…」

一番素敵に思えた時の幼馴染に戻ったマリアには、何も言えなかった。

◆◆◆

マリアに話を聞きたかった私達は、理人に出掛けるのはお昼からにしようと話をした。

そしてリタの部屋に3人でいる。

「それでどうしたんだ?」

「何かあったの?」

どうも、朝あってから様子が可笑しい。

確かに昨日の夜の事は女にとって大きな出来事だ。

だからと言ってこんなに何かが変わるとは思えない。

「別に私は私…ただ理人くんの好きな私によりなりたいだけ」

「それはどういう事なんだ?」

「いきなりそれってどうしたの?」

余りに変わりすぎだ。

「あのね、理人くんは特別なの…他の人とは全然違うの…抱きしめられながら一晩中愛しているっていってくれるし、それに私には汚い場所なんて無いって…思い出してもうふふふ」

一晩中?

何かが可笑しい…

「いや、今一晩中って聞いた気がするが」

「普通は40分位から長くても2時間位じゃないの? うちのお母さんから聞いた話だと1時間くらい…と教わったよ」

私もそうだ…親からもそう聞いたし…実際に偶然に見てしまったものもそんな感じだった。

「でしょう…だけど理人くんは違うわ、一晩中愛してくれて、本当に愛してくれているのが解るわ、まぁ実際に経験しないと解らないわ…こほん、だから私は、理人くん多分、一番私を好きだった頃の私になりたい、そう思っただけよ」

正直言って、何を言っているのか半分しか解らない。

だけど…マリアが凄く幸せそうなのは解った。

一緒に散歩した時に自分から手をつないだり、腕を組みに行くマリアの姿は…今迄で一番幸せそうだった。

第39話 リタ 初めて(未満)
まさか、あそこ迄マリアが変わるなんて思わなかった。

リタやエルザはまだ解る。

二人とはもし村で生活していたら結婚する可能性はかなり高かった。

勇者パーティでも無ければ複数婚は許されていない。

マリアとガイアは何時も一緒に居てべったりだった。

俺にとってマリアは『親友の彼女』そして齢の近い姉、そんな想いが強かった。

だから、三人の中でこんな事にならなければ…俺なんて好きになってくれない筈だった。

それが…

「理人くん、こういうの好きかな?」

散歩の先のお店で見つけた白いワンピースは正に俺好みだった。

三人と一緒に出掛けたなか、自分からグイグイ俺を引き摺りまわしている。

「理人くん手を繋ごうか?」

恋愛は戦い…そう思いながらも『親友の彼女』だからと一番距離を置いていた存在だ。

エルザとリタはそれを見て驚いているが…

子供の頃のマリアはこんなだったよ。

俺やお前達にお姉ちゃん風邪ふかして、面倒見が良い奴だった。

だが恋愛は人を変える。

ガイアに好かれるようにと、好きな男に好かれるように変わる。

そして聖女と言う責務が更にマリアを変えた。

俺の知っている幼馴染のマリアは今のマリアに近い。

ただ…本当はお姉ちゃんとしてはポンコツだ。

「久しぶりにマリ姉、手を繋ごうか?」

「うん」

「二人の世界が作られている様な気がする」

「うん、そうだね」

マリアと手を繋いだのを見たリタは何だか悲しそうに見えた。

多分、俺から一旦ガイアに乗り換えた事を気にしている気がする。

この世界だったら致命的だな。

俺が前に居た世界とかなり違い、この世界はかなり男尊女卑が強い。

男の浮気はかなり許されるが女の浮気にはかなり厳しい。

気にするなって言うのが難しいか。

だけど、今回の話は…リタも半分被害者だ。

俺があんな事しなければガイアの側室になった筈だ。

ただ…いつかは浮気三昧をされる気もするけどな。

「理人くん、何処見ているのかなぁ~」

「ああっちょっとな…」

「まぁ他の女なら兎も角、二人も私と同じ妻だから良いけどね、次はあと明後日か…私もっと頑張るからね」

「今のままでゆっくりで良いよ、時間はたっぷりあるんだから」

「そうよね、うん、沢山、沢山あるんだもん」

まさかマリアとこんなになれる日が来るとは本当に思わなかったな。

◆◆◆

今日はどっちが来るのかな?

エルザかリタか?

これもサプライズと考えているのか教えてくれない。

本来の俺は相手の事を考えて作戦を組みもてなす。

だから、行き当たりばったりは少し苦手だ。

特にリタは何かしらのフォローが必要な気がするしな。

トントン。

「開いているよ」

どちらだ…

「ごめん…私どの面下げて此処に来て良いか解らない…良いのかな」

顔色が青いな…相当気にしていたんだな。

「とりあえず部屋へ入ろう…余り気にしていないから」

「そんな事ないよ…色々な人から理人が元気が無かったって聞いたよ…本当に私」

確かに気にはしていた。

だが、その落ち込みはリタが思っている程じゃない。

前の世界では結構振られた経験がある。

だがそれは自分で乗り越えてきた。

本当に欲しい物なら諦めない。

取られたら取り返せば良い…それだけの事だ。

「それなら、償ってもらおうかな?」

「うん…」

リタは体が小さいし軽いだから…

俺はリタの脇の下に手を入れた。

「えっ…」

驚いているリタを無視してそのまま上にあげていく。

所謂、高い、高いだ。

「そうれ、リタっ」

そのまま俺はくるくる回りだした。

「きゃっ、なにしているの?」

「リタが償いたいと言うから、俺がリタにしたい事をしているだけ…ずっとこうしてみたかったんだ」

「そう…こんなんで償いなんてならないと思うけど…理人がしたいなら良いよ」

まるで少女漫画の一部の様にくるくると回った。

案外これ…

「目が回るうー――っ」

「うん、凄く目が回ったよ…少し気持ち悪い…こんなのが楽しいの」

「うん、相手がリタだからね、これは他の二人には出来ないな」

「確かに私みたいな小さい子じゃないと出来ないけど…そんなに楽しいの?」

「うん、楽しい…相手がリタだから」

「そう…だけど私、理人を裏切ってガイアに走ったんだよ、街じゃリタビッチなんて言われている位…もし私が賢者じゃなくてガイアが勇者じゃ無ければ最後の一線だって超えていたかもしれない…心という意味なら多分本当に『ビッチ』て言われても仕方ない事したんだよ…それなのにこんな事で許して貰えるの?」

前世でナンパばかりしていた俺からしたらリタなんて可愛いもんだ。

「リタは謝る必要は無いよ」

「だけど…私、沢山、沢山理人を傷つけた…たぶん、うぐっううんううん」

俺はリタを引き寄せキスをした、下を絡めるような濃厚なキスだ。

リタは目を見開いて驚いていたが、そのまま目を瞑り、俺を受け入れてくれた。

「あのな…俺はリタが思っている以上にリタが好きだ、例えあの時のリタがガイアと一線を越えていても多分、本当に嫌いにはならなかったと思う…多分頑張ってそこから取り返す努力をしたと思う」

前世では良い女で処女なんてまずいない。

友人同士で可愛い女の子や綺麗な女の子は取り合っていた。

そんな俺がリタがガイアに行ったからと責められない。

「嘘…」

「俺は諦めが悪い…実際にリタ達と別れたくなくて縋りついただろう? 多分、リタがガイアとの間に子供が出来ていたとしても諦めなかったかもしれない…もしリタがガイアと別れて次の男性と付き合っていたとしても諦めなかったと思う」

前世の女で派手で綺麗な女は沢山の男性と経験があった。

下手に知ってしまったら2桁、中には100人斬りなんて強者までいた。

女の過去を詮索しない…それがルール。

本当に好きならバツ一子持ちだって充分俺は受け入れられる。

俺の知り合いにはバツ三の4人の子持ちを受け入れた奴もいた。

まぁ相手は元スチュワーデスで凄い美人だったけど。

「凄いね…それ本当? 私そんなに愛されちゃっていたんだ…なんだかゴメン…そこ迄なんて気が付かなかった」

「恥ずかしいからその話はもうやめよう…それよりお風呂に行こう?」

「お風呂…もしかして一緒に入るの? 少し恥ずかしい」

そう言いながらも顔を赤くしながらついてきてくれた。

俺は手早くリタのブラウスに手を掛け…

手早く脱がし始めた。

「嘘、服も脱がしてくれるの? なんで」

「俺がしてあげたいからだからよ」

「へぇ~本当に理人って、こういう細かいお世話好きだよね…」

「まぁな」

この世界はこう言うことに凄く淡泊なのは知っていたけど、此処迄なのか?

前世とはかなり違う。

そのまま二人して裸になり…俺は手にシャボンをつけた。

「洗ってあげるよ」

「うん…あっちょっと、そう言うのは背中だけで良いよ…あっあっそんな所、そんな所は汚いし良いから…うぐっううん?!」

俺はキスで口を塞いだ。

「うんぐっうん、ぷはっ…全然汚くない、好きな人に汚い所なんてあるわけないよ」

「だけど…ああっいや、そんな…もういいよ..ダメいや、それいやぁぁ…ああっ うそ、なんか理人手慣れてない」

「こういう経験は殆どないよ…リタが喜んでくれるように俺がしたい事をしているだけだよ」

口では駄目と言うが途中からリタは力を抜いて目を瞑っていた。

体は正直に反応して気がついたら4回もリタは逝っていた。

途中からリタも拙いながらも同じようにしてきたが…上手くはいかなかった。

それでも一生懸命する姿や俺を受け入れてくる姿は凄く可愛いく綺麗に見えた。

流石に少し疲れたみたいだ。

そのままバスタオルで拭き上げ、お姫様抱っこしてベッドに運んだ。

目を潤ませ、口を半開きさせてリタはは熱い目で俺をみていたが何も言わなかった。

ベッドに降ろすと…

「まだするの…」

そう言ってきたが、それは拒絶じゃなく期待に見える。

「勿論」

「そうなんだ…」

顔を赤くして凄く可愛い…

だけど…ちょっと困らせたい。

だから、わざとリタから見えるように行為を行った。

「ちょといや…それ恥ずかしい、お兄ちゃん、やめてそれ凄く恥ずかしいから..ああっお兄ちゃん、理人お兄ちゃん恥ずかしいから」

結局、此処でもリタは感度が良いのか5回程逝った。

途中からリタも俺に色々してきて、俺も一度は逝った。

安心したのか疲れたのか…そのまま眠ってしまった。

お兄ちゃん…か。

リタは俺より一つ年下で幼馴染の中で一番年下だ。

そのせいか小さい頃は妹扱いを皆でしていた。

リタはリタでお菓子などを皆が優先してくれるので甘んじて受けていた。

齢が一つ年下である事以上に妹扱いされるには別の訳がある。

それは凄く背が小さいのと胸が全くない。

前世で言うならそう…小学生に見える位だ。

だから、女らしい女が好きなガイアからは好かれないタイプの筈だ。

何しろ、少し前まで『ガキ』扱いしていたからな。

そう考えるとガイアは、リタを本気で好きじゃ無かった気がする。

恐らくはマリアやエルザのついでに此奴も、そう思ったに違いない。

しかし、リタの寝顔は、うん子供みたいで凄く可愛い。

俺は決してロのつく趣味は無い。

屈託のない顔というか無邪気な笑顔とかそう言う意味だ。

俺はそのままリタの髪を撫でた。

くすぐったそうな表情をして眠り続けるリタが凄く愛おしく思えた。

第40話 この世界でロリは好まれないし言葉も存在しない。
『お兄ちゃん』か、久しぶりにそう呼ばれた気がする。

これは、少し前に付き合っていた時でも呼ばれていない。

背が低く幼い顔立ちのリタはコンプレックスを抱えていた。

簡単に言えば、胸が小さい、背が低い、顔が幼い…これだ。

この世界に『ロリコン』という言葉は無い。

前の世界なら『ロリータ』という映画がヒットしてそういう思考が発達したが…そもそもその映画が無いんだから、そう言う言葉自体が無い。

更に言うなら都心部は兎も角『村』では嫁として嫌われるタイプが正にリタだ。

農村部では実際の所はそのタイプが働き者と限らないが、体が大きくて胸がでかくて働き者に見える女性が好まれる…前世でいうなら肝っ玉母ちゃんタイプだな。

だから背が低くてチビのリタは『嫁』として人気は無い。

まぁ『賢者』になったから途中からは関係ないが…

俺がガイアとの旅の中で『リタ』を選んだのも、ガイアは村で育ったから、リタの容姿が好きでない…実際に俺が付き合い始めるまでは見向きもせず…マリアとエルザとばかり話していた。

まぁあぶれた者同士がくっついた…そんな所だ。

そんなリタだが…『そんなのは俺には関係ない』

俺の前世の世界は『ロリコン大国』そう言っても過言で無い世界だ。

※理人のいた日本は1970年代80年代の世界観の日本です。

俺も言えないが、大人がアニメでは『魔女っ子』に嵌まりコミケでは、それの薄くてエロい本が高値で売られていて人気のあるサークルの物は即完売する位だ。

そのヒロインは小学3年生~5年生だった。

多分リタが居たら、彼氏にコスプレとかやらされていそうな気がする。

現実世界でもイチゴちゃんと言って15歳未満の女の子を口説いて投稿雑誌に投稿自慢するナンパ師もいた。

そんな世界で生きてきた俺には、リタの容姿は関係ない。

だが…その需要性はこの世界では俺位しか知らない。

だから俺は『妹みたいで可愛い』そういう元気づけをしていた。

そこから…リタはマリアと逆に『妹キャラ』を押し出すようになった。

実際に『お姉ちゃん風邪をこじらした』マリアから結構おやつをせしめていた記憶がある。

しかし、年頃になったからか賢者になったからか…もうそう言う行動は無くなったんだが…

◆◆◆

「理人お兄ちゃん、早く、早く」

「そんなに理人くんを引っ張らないでよ」

「マリアが遅いんだよ…そうだよねお兄ちゃん!」

「そんなに早く引っ張ったら理人くんが転んじゃうじゃない」

「手を離せば、良いんじゃないか?」

「なんで…離す必要ないよねリタ」

「そうだよね、ちゃんと支えているから平気だもん!」

「そうか、なら良いけど転ばないように注意してくれ」

何だか、あの輪の中に入っていけない。

それになんだ…リタの呼ぶ『お兄ちゃん』って。

確かに小さい頃にリタは理人の事をそう呼んでいたが…

そんな呼び方する齢じゃないだろう…

まるで子供に戻ってしまったみたいだ。

「あの…一体なにがあったんだ」

「エルザ、あのな…」

「大丈夫ですよ! エルザも今夜経験すれば、私たちの気持ちが解るわ」

「うん、そうだよ…あんな事やこんな事、経験しちゃったらもう、お兄ちゃんから離れたくなくなっちゃうよ」

「そう…なのか?」

私だって理人を愛している。

既にもう妻だし、旦那様だと思っている。

だが、これは異常に思える。

マリアはもう少しなんというか『聖女』っぽさが無くなった。

まるで、姉といって大人ぶっているが…あれはそう…女の顔だ。

リタにしてもそうだ、妹みたいに振舞っているが、良く理人に体を密着している。

一体、何が変わったんだ。

確かに男女の営みは大切だと私だって思う。

だが、母親から聞いた話や、既に結婚した村の女性から聞いた話では…そこ迄凄い物と思えない。

なんであそこ迄懸想しているんだ…

「うん、うん『愛してる』と囁かれて」

「あんな事やそんな事されたら…もう駄目、愛さずにはいられないわよ…」

「そうか…」

何だこの疎外感は…こんな1人だけ疎外感を味わう位なら『最後なんて選ぶんじゃなかった』

第41話 エルザ初めて(未満)

『理人くん』に『理人お兄ちゃん』か本当に永かった気がする。

俺の両親はもう死んでいない。

運が良い事に、俺の住んでいた村は裕福な村だった。

その為、そのまま他の家を手伝いながら、生活が出来た。

住んでいた家もそのままで生活させて貰えて、田畑も一旦は村長の物になる物の、俺が成人したら返してくれるらしい。

これは法整備されていないこの世界では破格の条件だった。

俺は転生者…だが、この世界で使える様な知識は無い。

そんな俺に1つだけあった物…それは『大人ながらの要領の良さ』だった。

子供が良い子にするのは難しい、だが、大人の心と知識を手にしている子供が良い子になるのは難しくない。

村の中限定であれば村長は王様で、大地主は貴族だ。

だから、頑張った。

遊びも減らして、お手伝いもし、村で評判の良い子になった。

幸いな事に同じ位の歳の子は男2人に女3人…男の方が少ないから結婚であぶれることは無い。

ガイアは男前だが、相手に早々とマリアを選んだ。

三人ともそこそこ可愛いから、態々揉める事も無い…エルザかリタから選べばよい。

ガイアの家は裕福だし…村の有力者、ガイアが村長に将来なる可能性もあるからな。

リタは普通に可愛いが、この世界、特に村では人気が無い子だから、リタが良いかも知れない。

俺は虫食いで前世の記憶が全部あるわけじゃ無い。

ナンパしている記憶や女の記憶、友人の記憶はあるが…親や家族の記憶はない。

一人の記憶ばかりだから、今世だけじゃなく前世も家族に恵まれてなかったのかも知れない。

その心の隙間を埋めるのが恐らく、ナンパを含む男女交際だったのかも知れないな。

モデルの卵やレースクィーン、かなり可愛い子を抱いていた。

だが、抱けるだけでその中で俺を本気で愛している女が居たのか?

口では言っていたが…怪しい物だ。

だからこそ、キャンパスで見つけた地味なバカップルが羨ましく思えた。

多分、あれが『本物のリア充』なんだ、そう思えた程だ。

『勇者』…別になりたくない。

『貴族、王』…なんだかメンドクサイ。

『少し贅沢出来るお金』と『惚れた女』それ以上を俺は欲しいと思わない。

『1人で良いんだ』

そう思っていた俺に優しい笑顔でほほ笑む二人が居る。

「理人くん」

「理人お兄ちゃん、どうかした?」

「ああっ考え事していた」

幸せだな今の俺は…

◆◆◆

俺もガイアの事を言えないかも知れない。

『1人だけで良い』そう思っていたのが『2人になり』気がついたら『3人とも欲しくなった』

もし勇者パーティじゃ無ければ『1人を選ぶ』しか無かった。

それが『三人』という選択肢が貰えた…此処だけはガイアに感謝しか無いな。

今夜これから来るのは『エルザ』だ。

エルザはボーイッシュな感じの女の子…
前世で言うなら、剣道少女、もしくは陸上とかで日焼けしている部活少女で性格が…男に近い。

思い出も、魚釣りした思い出や虫取りした思い出…更に言うならガイアと殴りあっていた思い出すらある…エルザに対して男みたいな思い出しかない。

小さい頃、ガイアはオーガ女とか馬鹿にして捕まって殴られていた記憶がある…負けたのはうんガイアだ。

それも齢が上がるとともにお淑やかになってきたけどな。

トントン

俺の返事を待たずにドアが開いた。

「やぁ理人、来てやったぞ…性処理すればいんだよな?」

まぁこういう奴だ。

「いや、確かにそれだが、違う…『愛の営み』って奴だよ」

「いや愛とかは解るが、その『営み』って奴が解らない…私は理人に世話になりっぱなしだし、良い奴だという事は知っている。男の中で理人以上に好きな奴は居ない、だから『愛している』それは多分間違いない…だから、理人がしたい事はなにしても構わない、だが私からどうして良いのかは解らないんだ」

「そんなの気にしないで良いんじゃないか? 好きとか愛しているに形なんか無いだろう…俺はエルザが好きだから、俺が好きなようにエルザを愛するし、もしエルザが俺を好きならそれに答えてくれれば良いだけだ…こんな風にな…うぐっううんうん…ぷはぁ」

俺はエルザに近寄りキスをした。

舌を絡めるような濃厚な奴だ…エルザは受け入れてくれたが、何をして良いのか解らず舌は動かせていない。

「いきなりだな」

「だが、エルザは嫌がらないで受け入れてくれた、これが..うんぐ?!ううんううっ」

いきなりエルザがキスしてきた。

「うぐううんぷはぁ…さっきのお返しだ…あはははっ理人驚いている…これからする前に聞いておきたい事があるんだ、本当に私も一緒で良いのか?」

「なんで、そんな事聞くんだ?」

「ほら、私って女じゃないみたいだろう? 性格だってこんなだし、体だって鍛えているからゴツゴツしているし、手だってゴツゴツしている…その私としたって、女じゃなくて男としているみたいに思えるんじゃないか? ガイアにも村男やチビにも陰口を叩かれていたし…」

「ああっ、オーガ女って奴か」

「そうだよ…態々言葉にだすなよ…理人デリカシーが…なんで私の手をとる…あっなにするんだ…ああっああ、おい、なぁ理人」

俺はエルザの右手をとると、そのままエルザの人差し指と中指を口に含んだ。

「あ~む…言いたい奴には、うむあむ…言わせて置けばいいよ、俺はこんな事が出来る位にこの手が好きだからな」

「こんなゴツゴツした手が好きだなんて…お前位だ、あははぁくすぐったいよ…うう、ムズムズする」

俺はエルザの指を口から離した。

涎で糸が出来てなんかエロイな。

大体、三人は顔が凄く綺麗で整っている。

マリアはある意味付け込むすきが一切無い。

その点リタやエルザには他の人間から見て付け込む隙がある。

それだけだ…リタがチビで貧弱そう…エルザは男みたい。

その二つだ。

エルザは恐らく『母親や父親には凄く受ける』まぁリタと逆だ。

力があって丈夫、農家の娘にはもってこいだ。

その反面、男からは…微妙だ。

恐らく、その容姿は、多分本当の所は嫌ってないと思う。

だが、その身体能力の高さが嫌われる原因じゃないか…俺はそう思っている。

小さい頃から、冒険者か騎士に憧れていたエルザは体を鍛えていた。

そして、喧嘩も強く男の子にも負けなかった。

この世界は男尊女卑が前の世界より強い。
きっと…エルザに勝てない男が、そう言っているだけだ。

俺にはそんな『貧弱ボーイ』みたいな考えは全くない。

前世で言うなら『汗が輝くスポーツ少女』『剣道小町』『美しすぎるボディービルダー』を合わせた感じにしか見えない。

充分可愛く、綺麗だ。

「確かにエルザは男みたいだな、小さい頃から一緒に馬鹿やったし、更に言うなら、女の子の癖に裸になって一緒に川遊びまでしていたしな」

「ほら見ろ、やっぱり手が好きだなんて言っても女とは見ていないんだろう? ガイアと同じだ」

「あの馬鹿、何か言ったのか?」

「ガイアは何か言ったのか?」

「ああっ何回も言われたよ…男みたいな体ってな」

「あの…それで何でガイアの物みたいな顔してたわけ? お揃いの指輪までしたじゃん」

「必要だと言ってくれたからだよ」

「それは…」

目を悲しそうに伏せたな。

「まぁ別の意味だろうな…戦力としての意味が大きいんだろうな、そういう意味も全くないわけじゃ無いが、薄いと思う…その証拠に二人には良く抱き着くけど、私にはそう言うのは全くなかったよ、あはははっ笑えるだろう」

彼奴『なにやってんの?』

「男らしい…それが何か問題があるのか」

「問題だらけだろう…女として見れない…そういう事じゃないか」

「俺にとってエルザは普通に可愛い女の子に見えるよ」

「そんな訳ないだろう? さっきだって『男みたい』って言っていたじゃないか?」

「俺にとってエルザは『親友』であり『可愛い妻』だ…男みたいに竹を割ったような性格の親友に、女らしい可愛いらしい性格を持った可愛い妻、両方持っているなんて最高じゃないか?」

「なっなななな…理人」

顔が真っ赤だな。

「ほら、ちゃんと女らしくて可愛いじゃないか」

「そうか、理人がそう思っているなら、それで良いんだ…そうだ、あははっ、早速しようか? ほら、えいっ」

そう言うとエルザは手早く服を脱いで、裸になってしまった。

まぁ良いか…

「それじゃ、お風呂でも入るか…」

「お風呂? すぐにしないで良いのか?」

「時間はたっぷりあるんだ、ゆっくりしよう」

「解った、それじゃ早速入るか」

風呂場に行くと体も流さず、そのまま湯舟にエルザは入っていった。

前の世界だったら怒られるな。

「久しぶりだな、こうやってお風呂に一緒に入るのは」

「そうだな、私だって女だ…流石に大きくなったら…こら」

「そうだな」

「おい、いきなりは、ああっそんな、そんな所迄、そこ触るのは駄目だっ、なんで私の腰を浮かそうとするんだ、そんな、それじゃ丸見えじゃないか…ばか、恥ずかしい…いや、そんな所迄、恥ずかしい、流石に恥ずかしいぞ…ああっ」

そういえば、二人の時は…湯舟ではして無かったな。

前世の風俗店じゃ、湯舟の中でもするテクニックがあったな。

「ちょっ、そんな…なんでそんな手慣れているんだ…ハァハァ」

「俺は大好きなエルザに自分がしたい事をしているだけだって」

「だからって」

結局、俺はエルザを湯舟で2回、シャボンを使って2回逝かせた。

エルザも途中から負けん気が強いから俺の真似をしだした。

一生懸命に拙いながら頑張るようすは凄く可愛く俺も1回逝ってしまった。

「凄いな?!これじゃ、マリアやリタが変わる筈だ…えっ理人、何をするんだ!」

俺はエルザをお姫様抱っこした。

「嫁さんになるとこんな事もしてくれるんだな…うんうん幸せだ…これから一緒に寝るのか?」

「エルザ、夜は長いって言ったじゃないか?」

「え~と、それは…そうかお話でもするのか?」

素なのか、それとも恥ずかしくてはぐらかしているのか?

「違うだろう…お風呂の続きをするに決まっているじゃないか? そうじゃ無かったら、体拭いたあと服着るだろう?」

「ああっ、そうだな…」

俺はエルザをベッドに軽く放り投げ、そのまま押し倒した。

「ちょっと、また、ああっそんな所…うそ、それは汚いってそんな、そこはああっ駄目だってそんな」

お風呂と違ってベッドだと色々な事が出来るからな。

もう何回逝かせたか解らない。

多分10回位は逝かせた…

その横で、エルザは俺の体を今もまさぐっている。

凄いな…『剣聖』 凄い体力だ…

「そろそろ寝ないか?」

「いや、私ばっかり逝って悪いからな…私もがんばらないと、れろっ」

「エルザ、俺は充分満足しているから…」

「そうか…私は満足していない、私ばっかり気持ちよくして貰って、理人は2回だ…せめてあと一回行くまで頑張る…これは私の意地だ」

生真面目で頑張り屋…こういう所も、可愛い。

強くてカッコ良くて頑固で…可愛い。

何故、それが皆に解らないのか…な。

第42話 理人は…
「あれはなんなんだ…聞いていたのと話が違うぞ! ああいうのって30分から1時間位だって聞いていたぞ」

「本来はそのはずですよ…お母さんから私が聞いたのもそんなもんです…実際に親の…その営みを見ちゃった事があるけど、そんなもんでした、理人くんのとは全く違います…あれが『愛』と言うのなら凄く愛されているんですよ…私」

「私達でしょうマリア、だけど二人とも凄く勘違いしているよ? それは最後までした場合の時間だよね? お父さんやお母さんのを見た時はそうだったよ! 理人お兄ちゃんは…あの、その最後までしないであの時間だったんだから」

私たちは少し早起きしてお茶をしています。

三人とも経験した後だから、これからの事を少し話す事にしました。

確かに言われてみればそうです。

一晩中寝ないでした行為が、まだ始まりだというなら『全部』となったらどうなるのでしょうか?

「ああっそうね、確かにそう、だけどそれ以上に凄いのは、え~とあれよ! そう私の体の中で理人くんが触れてない所は…何処も無いわ…あの…それも手だけじゃなくて舌で…」

「あれ、あれ、あれね…理人お兄ちゃんは、可笑しすぎるよね! 『愛してる』『好きだ』『綺麗』『可愛い』を連呼しながら、その一番汚い部分まで舐めるのよ…恥ずかしくて死にそうだったけど…それが凄く気持ち良くて…汚い所なんて無いなんて言って…ああっ『愛されているんだ』そう思ったら…もう駄目だよね…何でもしてあげたくなっちゃう」

「ああっ昨日自分がして貰って解った、あれは本当に反則だ…頭の中が理人に書き換えられる…幾ら好きだ愛してる、なんて綺麗事を言っても本当にそうなのか、解らない…だが『私の中に汚い所はない』と言い切り、あそこ迄されたら『全てが本当なんだ』としか思えない…どんどん好きが加速していって、他の男になんて絶対出来ない事を理人にはしたくなる…もう私はきっと理人抜きじゃ生きていけない…これ程迄人を愛した事は無い…そうなってしまったよ」

「そんなのあたり前だよ、理人くんだもん…だれど理人くんは私がどれ程好きなのかな…本当にそう思っちゃう…夫、旦那様、だけど…お嫁さん…全部埋め尽くされちゃったよ、もう駄目、最早理人くんは私を愛するために女神が作ったとか言われても信じちゃう」

「ハァ~私もそう思うよ…なんで私、理人お兄ちゃんにあんな酷い事したんだろう? もし今の私があの時の私をみたら極大魔法放っちゃうよ…もう身も心も全部お兄ちゃんの者だよ」

うんうん、確かにそうだ…もう私達は理人くん無しでは生きられない…その位好きだ。

「さあ、今日は私の番だし、今から夜が楽しみ、今日は私も理人くんの為に頑張らないと」

「マリア、最初の一順を決めただけだよ? 今日からの分はまだ決まってない、私だってお兄ちゃんと…そのしたいもん」

「そうだろう? あの順番は最初の一順だけだ」

確かにそうだけど…

「そう、それならそれで良いけど、これからどうするつもり?」

「誘った者勝ちで良いんじゃないかな」

「待て、そんな事したら、理人が困るんじゃないか?」

「それじゃ、どうするの?」

「あのさぁ、私思うんだけど、私達がどうしたいか、じゃなくて理人くんがどうしたいかじゃない?」

「そうだな…うん理人がどうしたいかだ」

「そうね、お兄ちゃんに決めて貰う、それで良いって事だよね?
それじゃマリアがお兄ちゃんに今後どうしたいか聞いてよね」

「まぁ言い出しっぺだからな」

「あのねぇ、この間も私だったじゃない、今度は…」

「お願いマリアお姉ちゃん」

「お願いするマリ姉!」

「それズルい…だけどもうそれ私に効かないから…そう呼ばれて、本当に嬉しいのは『理人くん』にだけだもん」

「そう、本当に使えないよ」

「全く」

「二人とも酷いよ」

「仕方ない、この間がマリアだったから今度は私でいいや…次はリタだからな」

「まぁ仕方ないよね」

色々ごちゃごちゃしていますが….

私を含む三人がもうどうしようもない程、理人くんの事が好きな事は凄く解りました。

第43話 ガイアに奴隷を勧める
朝起きてリビングに行こうとしたら、三人がお茶をしていた。

楽しそうに話していたので邪魔しちゃいけないと思い部屋に戻った。

もう一寝入りするか朝風呂に入るか考えていると通信水晶が光りだした。

これはガイアの方の水晶だ。

何か嫌な予感がしながらも出てみると…

「理人、久しぶりだな、それでちょっと相談があるんだ…」

なんか嫌な予感がするが、話を聞かない訳にいかないな。

「なんの相談だ?」

「いや、あのな、最近ちょっとした事があって」

ガイアの話はこうだ。

教会からの通信水晶が光り、出てみると…余りにお金を使いすぎているから『もう少し抑えてくれ』

そう言われたそうだ…まぁ至極ごもっともな話だな。

「まぁ、教会から言われたなら、しかた無いんじゃないか? 9人も女が居るんだから、ホテル代以外を少し自粛すれば良いんじゃないかな?」

そんなに困る話じゃないと思うが。

「それがさぁ、イザベルとチョチョリーナが居なくなっちまったし令嬢も3人居なくなっちまったから今は4人しか居ないんだよ…それで次を買おうと思ったら、金遣いについて教会から注意が入ったんだ…そこでお前に知恵を借りようと思ったんだ」

知恵を貸すのは別に良いが…なんで5人が居なくなったのか聞きたい。

「それで…なんで5人も居なくなったんだ、しかもイザベルとチョチョリーナが何故居なくなるんだよ」

「それはだな」

ガイアの話では『妊娠薬』という魔法薬を後から来た6人が持っていたとの事だ。

その薬を飲むと暫くの間、毎日が排卵日状態になり妊娠しやすくなる。

但し、妊娠を促進させる影響で胎児の成長が早くなり、数日でお腹が出てくるそうだ。

お腹が出るのって確か4か月から5か月くらいだっけ…男の俺には流石に解らないが、そんな感じだったと思う。

妊娠して一気に4か月目状態になるのか…魔法って何でもありだな。

その結果、無事に妊娠して3名が国元に帰っていった。

そこ迄は解った。

彼女たちは『妊娠』を目的にしているから子供が出来たら帰る…普通の事だ。

だが、問題はチョチョリーナとイザベルだ。

チョチョリーナは迷っていたから解らないがイザベルがガイアの傍から離れるとは思えない。

「話は解った、だが…それで、何故チョチョリーナとイザベルがお前の傍から居なくなるんだよ」

「理人はお子様だから知らないんだな、良いか経験豊富な俺が教えてやる、女って妊娠すると体が汚くなるんだぜ…乳首やあそこは黒くなってグロテスクでなんか胸の触り心地も悪いんだ…さらに言うと締まりも悪くなって気持ちよくねーんだよ」

此奴、何言っているんだ?!

そんなのは当たり前じゃねーか。

「それでどうしたんだ?」

「ああっ、チョチョリーナとイザベルにその事言ったらキレられてよ…三人と一緒に聖教国に行ってしまった」

此奴は…更にクズに育っているな。

普通は金と女が自由に手に入れば、優しい人間になる可能性も高いがガイアは違ったようだ。

そりゃ、聖教国に行くな。

普通に妊娠して男と別れたら経済的な不安で我慢する女性が多い。

だが、今回の場合は違う、相手が勇者だから莫大な一時金が貰える。

そして、育てるにしても手放すにしても、その後のサポートはしっかりとしてくれる。

『ちょっとした金持ち』になって『その後の生活も万全』

我慢する必要は無い。

幾らガブギの最高級娼婦とは言っても娼婦だ。

嫌な思いも沢山してきていただろう。

娼婦の中で恵まれていようが、そこ迄落ちたんだ、絶望だってあった筈だ。

そんな彼女たちが幸せになれるんだ。

『辛くてもいつも笑顔で頑張っていたご褒美だ』

そう考えるとこのシステムも悪くない。

「おい、理人聞いているのか? おい、何で黙っているんだよ!」

「あっ、悪いな、考え事していた」

「おい、お前、俺が困っているのに…なに呑気な事言っているんだ!」

「黙れよ! どうにかしようと思って考えているんだろう! 考えが纏まらなくなる…」

「あっ…すまない」

少しイラッとしたから、かなり横柄な態度をとったが、それで素直に謝るんだから…親友ではあるんだな。

「少し、話はズレるが…バカンスが終わったら俺たちは南に討伐に向かう…だからガイアは北に向かってくれ」

「別に構わないが、それに理由があるのか?」

「北国美人って言ってな寒い国の方が美人が多いんだ」

「そうなのか? だがその前に『買う』と揉めそうだから困っているんだ…なぁ本当に何とか出来ないか」

少しは自分で考えろよな。

「そんなの簡単だろう…買うんだよ…今度は奴隷をな」

「奴隷だと…その方が不味いだろう」

「ガイア、お前は運が良い、俺たちがパーティから抜けた…だから文句言われずに奴隷を買う事が出来るだろう」

「どうしてだ」

「良いか? 戦闘にも使えて『性処理可能奴隷』を買えば良いんだ、エルフは弓の使用にたけているからそう言う奴隷を買うんだ…奴隷に落ちた女騎士、案外剣を使えるダークエルフとかも居るかも知れないぞ…必ず条件をつけて『非処女、性経験あり』可能なら『娼婦経験有り』を指定すれば良いんじゃないか?…魔王との戦闘に『必要な物』の購入は勇者保護法で認められている…大手を振って買えるぞ」

「そうか、そうだよな! 流石だな理人」

「ああっ、まだガブギに居るならリヒャールさんを頼ればどうにかしてくれる、手数料は取られるが安全だ」

「ありがとうな、理人」

「良いって事よ、それじゃ俺はあと3日間程、バカンスを楽しんだら南に向かうからな…」

「ああっ解った」

ガイアは…ガブギから離れられるのかな…あの街は前世の歌舞伎町みたいで居心地が良いからな。

第44話 最高に楽しく素敵な生活(第二部 完)

その後、この地にあるガルガリに行き、ガルガリのガブギ支店に取り次いで貰った。

リヒャールさんに代わって貰って、さっきの件を連絡した。

勿論、購入奴隷の『条件』について話した。

間違って処女でも購入したら、今のガイアじゃ暴言を吐いて傷つけそうだし、只の『性処理可能な奴隷』を買っても同じく傷つけそうだ。

そう考えたら、愛人経験があるかやはり娼婦出身じゃないと難しい気がする。

ガルガリは宝石商で高級店、勿論、商業ギルドにも大きなお金を落としているし、大きな力を持っている。

そして、奴隷の販売関係は『商業ギルド』の管轄だ。

お金に糸目をつけないのであれば、きっとどんな奴隷でも用意してくれる筈だ。

今後はガルガリがしっかりフォローするだろう。

お金の方は…知らない。

◆◆◆

今回の妊娠で聖教国が3人、他の国が1人ずつ、ガイアの子供を手に入れた事になる。

チョチョリーナは何となく母性が強いから子度を手放しそうにないが、あとの4人は手放す筈だ。

もし、手放さないにしても権力者の養女にしたりと、何だかの繋がりを持つことだろう。

それぞれの国が『勇者の子』を手に入れた。

今なら、恐らくガイアの奴隷購入は黙認されるし、また3人各国から選りすぐりの女性が補充される。

ただ、ガイアはさっきの話の中で補充の話を考えていなかった気がする…人数を増やしすぎて困らないと良いな。

それにいつかこの『ガイアバブル』は崩壊する。

それにはまだまだ時間が掛かると思っていたが『妊娠薬』なんて物があり、更に胎児の成長が進む副作用があった。

果たして各国は何人、勇者の子を欲しがるのだろうか?

欲しいという者に行き渡った時…このバブルは崩壊する。

まぁ暫くは大丈夫だろうな。

◆◆◆

「また難しい顔をして理人くん、ほら遊ぼうよ」

「うわぁっ冷たっ」

「理人お兄ちゃん、今は遊ぶ時間だよ!」

「そうだぞ、理人…理人はこうだ…えぃっ!」

ドブンッ。

「うわぁぁぁ ぷはぁ~エルザ、水飲んじゃったじゃないか?」

プールに投げ込まれた。

「あはははっ、ぼさっとしている理人が悪い…」

「そうかよ…だったらこうだ…」

俺はエルザに近づいてブラをはぎ取った。

今、俺たち4人はプールで遊んでいる。

流石、教皇様の別荘、本当に何でもあるな。

最初、海が近いからと海水浴にいったのだが、面白くない。

だって、この世界の水着は、前世で言うところの囚人服に近く肌を晒す女性は居ない。

この三人も例外でなく同じ服を購入して持っていった。

少し一緒に遊んでいたが、俺がつい前世の水着の話をしてしまったら、マリアが『だったら下着でプールで遊ぼう』そういう話しになって今に至る。

「なっ…それがどうかしたのか? 何なら下も脱ぐか? そうれっと」

俺が返事する間もなく、エルザはさっさとパンティを脱いで、そのまま、プールに飛び込んできた。

「エルザ…」

「あれっ、何で、理人は顔を赤くしているんだ? プールもお風呂も一緒だろう? ほうら気持ち良いだろう」

経験が無いとは言わないが、此処は人が居ないとはいえ外だ。

確かに前世じゃ外でした記憶もあるが…その殆どは夜だ。

「ああっズルい!そうね夜まで待たないでも昼間もありよね、理人くん」

「そうだよ、良く考えたら待たなくても良いよね? 理人お兄ちゃん」

今はバカンス中だし、昼夜気にしなくて良いか。

それにエルザは剣聖だし体を鍛えているから簡単には振りほどけない。

「そうだな…しようか? そら!」

「ちょっと、理人それは流石に恥ずかしい、おいこら、ああっ」

俺は少しエルザを持ち上げて、その胸に吸い付いた。

「ちょっとお兄ちゃんズルい」

「理人くん、本当は今日は私の番なんですから」

「時間はたっぷりあるんだから、ゆっくりいこうよ」

結局、外であるにも関わらずやり始め、気が付いた時には夕方になっていた。

「はぁはぁ…理人くん、凄いよ」

「お兄ちゃん、もう、ハァハァ」

「私はまだ出来る、理人を逝かせる迄まだ続けるからな」

「流石に肌寒くなってきたからもう入ろう」

三人を3回ずつ逝かせた事に安心して、少し不満げなエルザを気にしながら部屋に戻った。

◆◆◆

流石に三人を一緒に相手して疲れた俺は少し横になった。

4Pかやればどうにか出来るもんだな。

だがこれは本来はやるべきでないと俺は思っていた。

三人は幼馴染だから良いが一度に相手出来るのは本来は2人まで、まして本番が無いのであれば尚更だ。

つまり、一人には寂しい思いをさせてしまう。

前の人生で、もう顔も思い出せない先輩が3P以上はするなよ…『余程の奴じゃない限り1人あぶれさせて、将来破綻させるからな』

そう言っていた記憶がある。

男女が偏った状態なら、相手は2人まで3人…一対三になった時、相手への行為は中途半端になる。

そう言われた記憶だ。

確かにそうかも知れない…

だが、幼馴染はやっぱり良い。

俺がしない間、まだ拙いがあぶれた1人に対してフォローをしようとしていた。

これなら破綻しないと思う…俺が怠惰にならなければ。

『愛』と『性』を完全に一緒には出来ないが俺は近い物の様な気がする。

『女にモテる』『ハーレム状態になる』その生活に慣れると男の多くは怠惰になる。

女にして貰うのが当たり前、相手に尽くさせて、自分が相手に尽くさなくなる…その状態が長く続けば、相手の気持ちは離れていく。

当たり前の事だ。

これも誰が言ったか解らない。

『クンニが出来ない男にフェラして貰う資格はない』

そう言った人がいた。

言い方は身も蓋も無いが、これは一方的ではいけない…それが言いたいのだと思った。

カッコ良く言い直せば

『恋愛はキャッチボール、ボールを投げなければ返ってくることは無い』

その通りだと俺も思っている。

だからこそ俺は『尽くす』のを止めない。

この世界の人間は可笑しいと言う奴もいるし、ドMなのかと大昔に言われた事もある。

きっと俺は寂しがりや、だったのかも知れない。

『傍に誰かに居て欲しいから、離れて欲しくない無いから、こういう性格になったのかも知れない』

うん?!

俺の横に横たわる様に マリア、リタ、エルザが寝ていた。

ほらね…ちゃんとボールが返ってきた。

俺にはこの三人で充分…他には要らない…

今の生活が、俺にとって、最高に楽しく素敵な生活なのだから。

                   第二部 FIN

※ 書いていて思った以上に纏まったのでここで第二部を完結します。

第三部がこの作品の完結編。

激闘…そして理人にとって、本当のざまぁの相手が明らかに…

ご期待ください。

第45話 第三部スタート 旅の始まり。
ガイアが馬鹿やってくれているからこちらは目立たないが、そろそろ旅に出た方が良いだろう。

「今日は少し真面目な話がある」

「そう、解ったわ」

「そろそろ、気を引き締めるか」

「そうだね」

流石だな…俺の雰囲気を察して目の色が変わった。

『カッコ良い』そう思ってしまうのは不謹慎かも知れない。

「ガイアと話した事だが、今現在は丁度、四天王が南北に二手に別れて活動している、俺たちはそのうち南方にいる二人を叩く予定だ」

「私達はその2人を倒してからガイアに合流、そういう流れで良いのかしら?」

「まぁ四天王は4人、ノルマ二人は妥当だな」

「そうね、四職のうち3人が居るんだから仕方ないよね」

俺にとって本当に大切な者を間違えちゃいけない。

その為には『少しでも助かる選択、生き残る選択』をしなくちゃならない。

俺にとってガイアは親友だ。

命の次に大切な存在だ。

重ねて言うが『命の次』に大切な親友だ。

それは今でも変わらない。

だが、それはあくまで命の次。

自分の命には代えられない。

だが…俺には命以上に大切な者が三人もいる。

それが、マリア リタ エルザだ。

他の人間は『何を馬鹿な』そう言うだろうが…感情という物は自分でも解らない。

俺の前世はナンパ者だった。

※理人の前世は現代の日本でなく1970~80年代の近い感覚の日本です。

ナンパ者と言うと硬派に比べてカッコ悪く、ちゃらいイメージが強いだろう?

漫画やドラマの主人公は熱血硬派の男が主人公…大体が、不良やヤクザを怖がり、女を置いて逃げる卑怯な奴…それが軟派な奴。

それが軟派だと…勘違いするな…それは軟弱者だ。

真の軟派者は…女の為に命を懸ける者を本来はいう。

まぁ、俺は女性を口説き、遊ぶ…本物じゃ無かった。

だが、本当の軟派は違う。

こんな言葉が、俺が生きた世界にはあった。

『男一身硬派とは女1人を愛すべし!』

カッコ良いだろう?

だが、軟派はそれを超えていく。

『男一身軟派とは女の為に死するべし!』

女1人を愛さず沢山の者を愛すが、その全ての女全部の為に命を懸けるのだと…それが軟派なのだ。

そう熱く語っていた…

此処迄、語ってなんだが…俺は違う。

前世の憧れ、幼馴染との恋を手に入れた…だから違う。

だが…『女の為なら命がけ』そこだけは忘れないつもりだ。

「また考え事?」

「最近良く考えてばかりいるな」

「本当に可笑しいよ」

「いや、つい三人の事ばかり考えてしまって…言い出しっぺの俺が悪い…」

「「「あっ…ううん、仕方ない(な)(よ)」」」

「それで、俺たちが担当する、四天王は『空の女王 フェザー』『死霊の王 デスラ』だ…順番はまだ未定だが、早いうちにそのどちらかとやるつもりだ」

「いきなり四天王とやるの? 無茶だと思う」

「流石に無茶だと思うぞ」

「そうだよ、もしこのメンバーにガイアが居ても無理だよ」

その通りだ…

他の皆は希望を持っているが、俺の考えでは『ガイアは魔王に勝てない』そう思っている。

ガイアの能力は俺より僅かに強いだけ…

本当に強い勇者は文献によると、最初からまるで超人の様に強い。

今現在で四天王に届かないようでは、もう絶望的だ。

今のメンバーで四天王の1人に勝てないのなら…もし2人掛で来られたら壊滅する。

それをしないのは、何か事情があるのか遊ばれているのかだ。

俺が南を選んだのは、こちら側の四天王はまだ攻略の可能性はある。

『何か手を打てそうだ』その程度だがまだ勝機を拾える可能性があるからだ。

俺の旅の目的は『魔王討伐』ではない。

死の運命にある幼馴染、いや俺の今の妻をどうにか助けるかの旅だ。

例え全てを犠牲にしても…必ず助けてみせる。

「まぁ、今のままじゃ無理だ…時間はあるから、何かしら手が打てるかも知れない…勝算を掴む迄無理に戦わずに他の討伐をし着実に力をつけて行こう」

「そうね、理人くんの言う通りだわ、無駄死には意味がない物ね」

「悔しいが、今の私じゃどうにも出来ない」

「理人お兄ちゃんが冷静で良かったよ」

俺たちのバカンスは終わった。

再び、絶望への辛い旅が始まる。

第46話 エビルの街

要塞都市ジブヤ
人工5万6千人、四方を高い壁が守り、入り口には複数の大型ゴーレムが守る、正に要塞と言う名にふさわしい大型都市だ。

だが、俺たちはそこにはいかない。

その一つ手前の街エビルに来ている。

人工1万6千、ジブヤに比べればかなり小さな街だ。

だが、俺は敢えてこの街を駐屯場所に選んだ。

「理人くん、此処迄来たのならジブヤまで行った方が良かったんじゃないですか?」

「そうだな、あそこの方が何でもある」

「そうだよね、都市として大きいし、栄えているよ」

確かにそうだ。

だが、敢えて少し手前のこの街にした。

「俺は兎も角、勇者パーティは人気者だから顔が割れている可能性が高い、大都市より街の方が身バレが少なく自由に過ごせるから選んだんだ…それに此処にも王国ホテルの支店があるから、それなりにすごせるからな」

「さすが理人くん、そこ迄考えているんだ」

「そうか、確かにそう言われればこちらの方がゆっくり過ごせそうだな」

「そこ迄考えていたんだ、流石理人お兄ちゃん」

「まぁな…だけど、俺にとっては、良いベッドと風呂付の部屋があれば、他に欲しい物はないからな」

最近、前世の習慣に随分拘りだしてしまった気がする。

今迄野営も風呂も無い暮らしはさほど苦痛でなかったが…最近は妙にベッドやお風呂が恋しく感じる。

「そ、そうですね、やはり敷物を敷いていても下になってくれる理人くんは背中が痛そうですものね」

「そうだな、理人はいつも『好きな人に汚い場所なんて無い』っていってくれるが、汗まみれじゃ流石に…本当は臭いだろうし…なんだか悪い気がする」

「そうだよね? お風呂に何日も入ってない状態で…その、股に口付けられるのはかなり恥ずかしいよ…理人お兄ちゃんのせいで慣れてはきたけどさぁ」

そういう意味で言ったんじゃないが…そうもとれるよな。

こんな事言っている彼女達だが、逆の事も言える。

汗だくだったり、お風呂に入って無いのはお互い様だ。

それでも求めてくるし、相手に対して奉仕できる。

人間である以上は『汚い』そういう感情はある筈だ。

それでも『したい』という事は、淫らな行為ではあるが、そこに『愛』があると思う。

あくまで憶測だが、こんな事は『娼婦』だって出来ない筈だ。

あれからは、本当に凄かった。

若いからお互いにやりたい盛りだ。

一度、やりだしたら、歯止めはもう効かない。

野営中もお構いなしにしていた。

その結果、俺は『見張り役』を免除された。

彼女達は三人、俺は一人。

俺が居なくちゃ出来ない。

だから、三人のうち一人が見張りをして二人を俺が相手にする。

そんなお約束みたいな物が自然とできた。

「そういう意味で言ったんじゃないんだけどなぁ…良いベッドとお風呂があれば体が休まる…そう思っただけだ」

「「「あっ」」」

三人とも顔が真っ赤だ。

旅をしているし、最後の一線を越えられないが、それでも今は『新婚』でもあるのだ。

初々しい反応も、凄く可愛い。

「恥ずかしがらないで良いよ、さっき言ったのは本当に違うけど、言われてみれば外じゃ集中して出来ないから、その通りだよ、 今は『新婚』なんだから、それ位当たり前じゃないか?」

「そそ、そうよね『新婚』なんだから毎晩位は、当たり前よ…うん」

「そうだな言われてみれば『新妻』なんだから、あはははっうん可笑しくない」

「そうだよね! 付き合いが長いから忘れがちだけど、理人お兄ちゃんの私は『お嫁さん』なんだから、うん当たり前だよね、恥ずかしがる必要も無い…うんうん」

この世界は、前の世界に比べると、こういう行為は凄く淡泊な気がする。

まぁそれは『他所は他所、家は家』で良いと思う。

蚊に刺されないで済むし衛生的に出来る…そう考えたらホテルはありがたい。

◆◆◆

エビルの街にある王国ホテルに部屋をとった。

流石にガイアみたいにスイートルームは取らない。

ツインルームで充分だ。

それでも今まで過ごしてきた宿とは全然違う。

ちなみに、このお金は俺が、狩りで稼いだお金で賄っているから、国のお金ではない。

「凄く良い部屋…お風呂も大きくて綺麗だね、理人くん」

「これなら、三人で充分は入れるな」

「そうだね、汗だくだし早速皆でお風呂入ろうよ、理人お兄ちゃん」

完全にその気モードになっている…

「そうだな…ずうっと外だから集中して出来なかったから…今日明日とイチャつこうか?」

「「「うん」」」

俺は今日の夜から明日のお昼までルームサービスを頼み、三人と一緒にバスルームに向かった。

第47話 変わる日常と変わらぬ勇者
変われば変わるもんだ。

まさか3人が此処迄変わるなんて思っていなかった。

あの後、3人と一緒にお風呂に入り…そのまま行為に及んだ。

マリアもエルザもリタも、まだまだ拙いが自分から俺に色々してくれるようになった…だが、そこで甘えちゃいけない。

女に尽くされるようになり、そこで自分が尽くさなくなるとそこからの好意は下がる一方だ。

女を侍らす様なイケメンが…気が付くと周りから女が居なくなり孤独になる…そんな光景を前世では結構見てきた。

だから…俺は決して彼女達に尽くす事はやめない。

口から舌、指、場合によっては息まで使い喜ばせる事を忘れない。

一緒に居て貰える感謝、愛して貰えている感謝を込めて「愛している」「好きだ」「綺麗だ」「可愛い」その思いを込めながら耳元で囁く…これはきっと死ぬまで止めないと思う。

お風呂場で3人を2回程逝かせた後…場所をベッドに移した。

だが、此処迄だった。

「すーすー、ううん理人くん…すき」

「理人…愛しているからな…すーすー」

「う~んお兄ひゃん、だいひゅき~」

3人とも行為の最中に寝落ちしている。

ただでさえ旅で疲れているのに…きてそうそうお風呂であんな事したんだ、眠くもなるだろう。

ベッドですやすや眠る三人の手をそっと放して、俺はベッドを後にした。

高級なホテルは景色も違う。

前世のホテル程じゃないが結構な高さがある。

他に建物が無いからかなり先まで見渡せる。

俺はどうしてしまったのか?

3人は今、満足したように眠っている。

精力的には満足した物の…俺は眠くない。

此処に来るまでも、やっていた。

昼間は移動している。

そして夜は3人の相手をしているのだが…その状態で体が全く疲れていない。

魔法戦士で体も鍛えてはいる。

それでも疲れはある…だが今の俺にはそれが一切無い。

自分に何があったのか解らない…解らない物は幾ら考えても仕方ない…悪い事では無さそうだからゆっくり考えて行けば良いだろう。

◆◆◆

久しぶりのお酒をたしなみ夜景を見ていると、通信水晶が光りだした。

出ない訳には行かないな。

「久しぶりだな、どうした?」

「ああっ、お陰様で仲間が揃いつつあるからお礼の連絡だ」

映し出されるメンバーの中にジザベルが居たのでほっとした。

チョチョリーナとイザベルが去ってしまった以上、多分ガイアのハーレムを纏められるのはジザベルしか居ない。

しかし…見慣れないメンバーばかりだ。

俺が知っている、ガイアのメンバーは令嬢の残り3人とジザベルの4人だった筈だ。

だが、3人の令嬢が居ない。

そして、前に居なくなった分も合わせて6人が新しい令嬢になっていた。

「令嬢は全部入れ替わったんだな…」

「まぁな、前の連絡からあと、妊娠が解ったんだ…だから体が気持ち悪くなる前にさっさと返したんだ…もう乳首か黒くなったグロイ体なんて見たくねーし、緩んだ穴なんて使いたくねーからな」

「そうか…それで後ろに居るのが、新しい令嬢と前側に居るのが新しいメンバーか?」

「そうだ…なかなかの強者だぞ…ほら挨拶しろ」

「お初にお目にかかります、私の名はペンテ、聖騎士です」

「テレス 上級ヒーラーです」

「カミアです…魔導士です。宜しくお願い致します」

「とりあえずガイアを頼んだ…宜しくな」

「理人、なかなか良いメンバーだろう?」

多分、ガイアは気が付いてないな…

外見だけは確かに美人だ。

「悪いが重要な話がある…ジザベルと新しい令嬢各国1名を残して他は部屋から出てくれ、これは政治的な話なんだ悪いね」

「重要な話か? 仕方ないな、お前らちょっと席を外してくれ」

「悪いな…ガイア、あの3人は愛玩用にしかならない、そのまま側室…いや夜の相手ようにした方が良い」

「なんでそんな事言うんだ? あれでも奴隷商お勧めの女達だぞ」

「そう言えば、奴隷の購入にはリヒャールさんは立ち会ったんだよな?」

「そうだが…」

「恐らくは『愛玩用』をガイアが楽しめるように『戦闘用』として買ったんだと思う…その証拠に彼女達は確かにジョブには恵まれているようだが、歴戦の強者の様な雰囲気が伝わってこなかった」

「そうなのか?」

「ああっ勿論、オーク…もしかしたらオーガなら狩れるかも知れないがその上は無理だ」

「だったら、どうすれば良いんだ…やはりお前に」

不味いな…

「大丈夫だ、その為に令嬢に此処に残って貰ったんだ…口を挟んで良いか?」

「ああっ、構わない」

「聖教国所属の令嬢は、国から最高のヒーラーを 帝国所属の令嬢は最強の戦士、王国からは最高の魔法使いをそれぞれ、勇者のパーティに派遣して貰えるようにお願いしてもらえないか?」

「「「はい、解りました」」」

「これで、人員はどうにかなる筈だ」

「流石は理人だな」

前はこの位の事はガイアも出来たはずだ…

「あと…すまない、今度は令嬢達に外れて貰ってくれ」

「ああっ解った…悪いお前達も席を外してくれ」

「「「はい」」」

「ガイア…絶対にジザベルは手放すなよ! ジザベルも悪いがガイアから離れないでいてくれ…この通りだ」

「おい理人どうしたんだ? 別にそこ迄する事ないだろう」

「良いか、ジザベルはガブギの街のベスト3に入る娼婦だ…恐らく色事に関しては右にでる者はいない。同格のイザベルやチョチョリーナを手放した今…替えはきかない…大切に扱った方が良い」

「そうか…解った」

「俺たちは、情報を集めたら四天王のどちらかの攻略に取りかかろうと思う」

「そうか…頼んだ」

「ああっ…それじゃガイアも頑張れよ」

ガイア…部屋の様子から見るとガブギから動いてないのか?

大丈夫なのか…彼奴。

◆◆◆

まだ皆、寝ているな…

この寝顔を見れるのは夫になった俺の特典だ。

俺がどうにかしないと…

折角手にした幸せが逃げていく。

俺は意を決してホテルから出かけた。

俺は冒険者ギルドに行き、依頼を出した。

「『死霊の王 デスラ』の眠る場所を突き止めて貰いたい」

四天王…最弱の男 デスラ…お前は必ず俺が倒す!

第48話 デスラとの戦い?
眠らないでも問題はないだけで、眠る事は出来るようだ。

恐らく今の俺には睡眠は嗜好の一つになってしまった気がする。

「所で何しているの?」

気が付くと上半身が脱がされてマリアとエルザに抱き着かれていた。

リタはまだ寝ているようだ。

「昨日途中で寝ちゃったから、続きをしようと思って」

「そうそう、気がついたら寝ちまったから続きをな」

随分、積極的になったもんだ。

「そうか…だけど寝ている時にするのは、まぁ良いや…それじゃ」

「ううん、あ~っ二人ともズルい! 私もちゃんと混ぜてよ、理人お兄ちゃんもそういう事始めるならちゃんと起こしてよー――っ、もうあむっ」

いきなり足を甘噛みされた。

「リタ、俺も今起きたばかりだ…確かに昨日は不完全燃焼だったからしようか?」

「「「うん」」」

こうなるのを見越して朝食も昼食もルームサービスを頼んでいたから問題は無いんだけどね。

◆◆◆

本来は皆、アウトドア派だったのに…気が付くとインドア派になっていた。

凄いなこれ…

流石に前世でも此処迄連続でしまくった記憶は無いな…

あれっ…俺もしかして同棲も経験が無かったのか…

まぁ、今が幸せだから、それで良いな。

結構激しくしていたせいか…三人ははまた寝ている。

お昼までにはまだ時間がある…少し出かけてくるか。

冒険者ギルドに足を運んだ。

「理人様、デスラの眠っている場所が解りました」

「そうですか?それでどこですか?」

思ったより早く見つかったな。

今日はゆっくりするつもりだったが…逃げられると困る…行くしかない。

詳しい場所を聞いた。

俺は勇者パーティ所属なので情報の提供料金は俺ではなく聖教国に請求が行く。

「済まないが子供冒険者に俺のパーティに少し出かけてくるとの伝言を頼む、後は魔獣捕獲用の小型の鉄箱をくれ」

「解りました、すぐに用意します、両方で金貨2枚と銅貨3枚になりますが宜しいでしょうか?」

「ああっ、宜しく頼む」

◆◆◆

死霊の王 デスラ
此奴の厄介なのは『数の暴力』それに尽きる。

1万にも及ぶ死霊を従える死霊の王。

単体では恐らくそこ迄は強くない。

だがデスラを倒すという事は1万の死霊と戦うという事だ。

四天王では単体なら最弱…だが1万との戦闘が避けられない為、それを考えると案外1番強い可能性もある。

だが、此奴には明確な弱点がある…それが死霊ゆえ…昼間は土に戻り眠る事だ。

そこをつく…

俺はデスラが眠っている場所に来た。

早速、掘り出しに掛かった所…すぐに見つかった。

この状態のデスラは動かない、まるで岩の様な状態だ。

だったらこの状態で討伐すれば良いんじゃないか?

そう思うかも知れないが、この状態のデスラは倒せない。

ミスリルの剣でも、聖剣でも傷すらつかない。

この状態のデスラは絶対に倒せない。

夜になれば倒せるが、1万もの死霊がすぐに現れ守られてしまう。

デスラを倒すには『夜に1万もの死霊と戦いながら倒す』それしかない。

湖にでも沈めてしまえば…そう思うが。

この辺りには湖は無いし、沈めても死霊は泳げるらしく意味が無い。

更に死霊はマグマでも死なないらしく火山に放り込んだ勇者が居たらしいがそれでもデスラは死ななかった。

『夜に1万の死霊と共に倒す…それしか方法はない』

俺はデスラを鉄箱に放り込み、ある場所に向かった。

こんな鉄箱、復活したデスラなら簡単に壊すだろう。

だから、早く移動しなくちゃいけない。

数の暴力に立ち向かうのなら、更なる数の暴力を使えば良い。

以前に教皇様を含む王達と話した事がある。

この魔王軍との戦闘の優先性についてだ。

『魔王軍の討伐は全てに優先する』

そう聞いた…だから俺がこれからする事は問題ない。

だが…知られたらきっと、誰もが非難するだろう。

俺のする事は…まるで悪魔だ。

だが、俺は間違わない…あの三人を守るためにはこれしかない。

俺はデスラを担いでジブヤに向かった。

第49話 デスラとの戦い?
俺は要塞都市ジブヤに来た。

街によっては手荷物検査もある。

ここジブヤの検査はかなり徹底した物だ。

だが…俺には関係ない。

冒険者のランクがS級。

勇者パーティの所属の為顔パスだ。

「へぇ~勇者パーティ、二つに別れたんですね」

「まぁな」

「はっ、申し訳ございません、どうぞお通り下さい」

「ご苦労様」

こんな感じだ。

◆◆◆

俺は適当に歩きながら裏道を歩いた。

勿論、寒さよけのフードを来て顔が解らないようにして…

『この辺りで良いか』

恐らくはスラム街の近く、人が周りに居ない場所。

そこにテスラを置いていく。

相手が『数の暴力』を使うなら『それ以上の数で対処』すれば良い。

此処、要塞都市ジブヤの人口は5万人を超える。

その中には騎士や魔導士がいるんだから、どうにかなるだろう。

1万の死霊VS一般人5万。

案外、良い勝負になるだろう。

勇者保護法には『魔王討伐はあらゆる事に優先する』とある。

そして教皇様や諸国の王が『すべてに優先する』そう言った。

吐いた言葉の責任はとって貰う。

『覆水盆に返らず』

全てに優先するなら…5万人が死んでも良いよな?

俺にとって大事なのは3人だけ、更におまけでも4人…それ以外はどうでも良い。

勇者パーティは俺からしたら『究極の貧乏くじ』だと思うんだ。

だってそうだろう?

俺がワイバーン1体狩ると金貨500枚(約5千万)は下らない。

なのに…それより手ごわい魔族と戦っているのに…支援金しか貰えない。

魔族との戦いなんかしないで冒険者でもしていた方が遥かに見入りが良い。

ガイアは馬鹿だが勇者だ。

よくも悪くもエゴの塊、前の世界で言うならエリート意識が高い。

そんな人間に『勇者』なんて最高の地位を与えたらもう手放せないだろう。

俺はあいつと畑でも耕しながら安いエールでも飲む生活がしたかったがもう無理だ。

彼奴の中にある『選民意識』『エリート意識』はもうどうする事も出来ない。

勇者なんて馬鹿な生き方しかできないなら…仕方ない。

だが、勇者はな…他の冒険者より遥かに狩れない物を狩っているんだ…

死ぬまで他の奴の為に命がけで戦う。

世界その物を救う使命があって…最後は魔王と1/2以下の命がけ…

何でも貰って、良いんじゃないのか?

はっきり言えば『この世界最強の貧乏くじ』だ。

1/2と言ったが…実際はそれ以下だ、魔王に負ける勇者の方が多い気がする。

旅から旅を繰り返し、命がけの戦いを強いられて、最後は死ぬ可能性の高い相手と殺し合い…それを1人の人間に望むなら…

『全部差し出す位の覚悟』はした方が良い。

その一人の欲望を存分に満たす位当たり前だ。

◆◆◆

「そのスケスケの下着とブラ6組と穴が空いた下着3つ下さい」

俺は今下着屋に来ている。

俺が何をしているのかは、あの三人には知られたくない。

だから…

「お客さんも随分好きだな、これ結構高いんだぞ、ビッグモスの糸からつくる高級品だぞ」

「ああっお金は気にしないで良いんだ、あっそこのピンクのキャミソールとネグリジェも3つくれ」

「ありがとうございます、おまけして全部で金貨3枚になります」

「はい、金貨3枚ね…あと近くに、丈が短い…こう何とも言えない服を売るようなお店はないかな」

「好きだな~かなり若いのに…隣の隣がそうですよ」

出かけた理由が必要だからな、それも買っていこう。

そろそろ夕方だ…服を買ったら、一旦、エビルの街に戻ろう。

ここはもうすぐ戦場になる。

第50話 悪夢
『此処は何処だ?』

我が眠っているい間にまた何処かに運ばれたか…

何処に運んでも無駄だ、我は夜、その本来の姿を取り戻し、近くの人が住む集落を皆殺しにする…せいぜいが半日遠ざけるのが限界だ。

『此処は…可笑しい、廃墟じゃなく人が多く居る』

だが、やる事は決まっている…

『死霊召喚…殺して、殺して、殺しまくれ』

我の能力のその怖さは『数』すべての人間を殺してやる。

◆◆◆

「うわぁぁぁー-っなんでこんな所に死霊がいるんだぁー-っ」

『人間…殺す』

「おかあさん、おかあさん助けてー――っ」

「早く逃げないと、ああっ駄目、私が、私がぁぁぁぁー-っ」

「いやぁぁぁぁー――お母さんがお母さんが死んじゃうだれかー-」

「私は良いから…早く逃げなさい…良いから早くー――っ」

次々に人は殺され蹂躙されていく。

だれか、だれか助けてくれ…誰か。

来た…『魔道機巧部隊』これで助かる。

「ゴーレムよ、死霊を駆逐して人々を守るのだー――っいけー-っ」

「うごぉぉぉぉー――っ」

これで助かる…そう思った…だが…

ゴーレムが叩きつけても、首がとれようが無視して術者に襲い掛かっていく死霊を前にどんどん軍隊は押されていった。

逃げないと…

我が子を守り犠牲になった母親。

この子位は助けても…駄目だ…子供は死霊に掴まれている…ゴメン。

俺は子供を見捨てて逃げた。

この都市、最強の『魔道機巧部隊』が歯が立たないなんて…

何処に、何処に行けば助かるんだ…

気のせいか死霊の数が増えている気がする。

そうだ、教会だ…死霊の天敵は『聖なる物』だ、あそこなら…

あそこなら…助かる。

俺は死霊から逃げるように教会に向かった。

教会が見えてきた…だが様子が可笑しい。

駄目だ…死霊が取り囲んでいる…

教会の聖騎士たちが押されている…

どうにか教会の敷地に入り込めないか考え裏に回った。

裏側の門には死霊が居ない…そこから入り込み、正面に回った。

「いれてくれ…頼む、あけてくれー――っ」

「済まないがそれは出来ない…司祭様達が集団魔法で結界を張ってくれた…だから此処は開けられないんだ」

「そんな…」

聖騎士10人が入り口で戦っている…死霊をたしかに倒しているが…焼石に水だ。

100を超える死霊に囲まれて徐々に押されている。

「ホーリーバインド…駄目だ数が多すぎる」

「陣形を崩すな…崩したらおしまいだ、そこの少年、教会に入れないなら逃げろ!」

「何処へ…」

「何処へでも良い、此処はもう終わり、ぐふっ」

「あああっ….」

「少年、これをやる…これをかぶって…逃げなさい」

聖騎士が上級聖水を投げてくれた。

俺はそれを被って逃げた。

何処へ…逃げれば良いんだ…冒険者ギルド、領主様の屋敷…何処に逃げれば良い。

後ろで、さっき俺に聖水をくれた聖騎士の首が契られて転がっていた。

その他の聖騎士も最早殺されていて動かなくなっていた。

逃げて、逃げて、逃げたが、何処も戦場になっていた。

領主様の屋敷は死霊に囲まれていた。

だから、冒険者ギルドに逃げた。

「早く、入るなら早く入りたまえ」

間一髪、俺はギルドに救われた。

「ハァハァ、有難うございます」

「良いんだ、だがそう安心も出来ない、今は戦える冒険者の多くは、外に出て戦っている、此処は要塞都市この辺りの要だ…此処より大きな街は近くに無い…助けは間に合わない」

「それじゃ…」

「自分達で戦うか逃げるしかない…相手は死霊だ、夜が過ぎ去れば居なくなる…明日の朝まで持てばこちらの勝ちだ」

「そうですよね…」

「戦闘が出来ない者は隠れていれば良い…明日の朝まで逃げきれたら助かる」

「はい…」

「さぁ、行くぞ…俺たちが出た後はしっかりと戸締りをしてくれ」

「「「「「はっ」」」」」

冒険者5人を残してギルマスは戦いに出て行った。

商人のジョブしかない俺はその背中を見送る事しか出来なかった。

◆◆◆

「まさか…今回の黒幕はデスラだったとは…」

「ほう、此処に来る者がおるとはのう…少し遊びが過ぎたわい」

「怯むな、今此処には、この都市の最高戦力が集まっている、相手は四天王とはいえ、単体では大したことないと聞く、行くぞー-っ」

「「「「「おおうー――っ」」」」」

俺たち冒険者、軍、聖騎士などは戦いながら分析し…此処にたどり着いた。

「我々がお前を潰す…魔道機巧部隊…集団詠唱…」

これなら俺達の出る出番は無いな。

家よりでかいゴーレムが3体、デスラに向かった。

これでデスラは終わりだ。

「俺達冒険者は、残りの死霊をせん滅しつつ…救助、教会の方は…」

ドゴー―――――ツ、ガラガラガラ…

「なっ…嘘だろう、あの巨大なゴーレムが…馬鹿逃げろー――っ」

駄目だ間に合わなかった…この都市を守っていた、魔道機巧部隊が死んでいた…

そうか…俺たちは囲まれていたのか。

だが、可笑しい…確かに魔道機巧部隊は死霊に後ろから殺されたのかも知れないが…ゴーレムの破壊の意味が解らない。

まさか、あの小柄なデスラが壊したとは思えない。

「我を、大した事が無いだと…たかが人間の分際で、よう言うた物よ! 真の姿を見せてくれるぞ! 竜化―――っ」

デスラの体を黒い霧が包んだ…その霧は大きくなりその中から巨大なドラゴンの骨が現れた、ゴーレム所ではない…大きな屋敷位はある。

「ドラゴンゾンビ…」

「「「「ドラゴンゾンビだー―――っ」」」」

「死霊を束ねる我が死霊より弱い訳が無かろうがー―――っ、この姿を現したからには…この都市は全滅だぁぁぁぁー-」

終わりだ、こんな物に普通の人間が勝てるわけが無い。

もうこの都市は終わりだ…

勇者でも無ければ…此奴には勝てない…

黒い炎で焼かれながら…己の無力さを感じながら俺は死を迎えた。

第51話 死闘の前のお楽しみ
「理人くん、急に出かけてどうしたの?」

「急用か? 出かけるなら一緒に出掛けたのに」

「まさか理人お兄ちゃん、変な所行ってないよね!」

夕方に帰ってきたらこれだ…言い方は至って自然だが、少し目が怖い。

「ああっ、ガイアとこの間、通信していた時に見てちょっと羨ましくてな」

「ガイアはかなり破廉恥な事をしていますよね? それが羨ましいってなんですか? まさか理人くん、娼館に行ったんですか? それだと…お姉ちゃん悲しいなぁぁぁぁぁー-」

「理人…違うよなぁぁぁ、そんな所行ってないよな? なぁ私の目をみろよ…なぁ」

「理人お兄ちゃん…そんな事しないよね? お兄ちゃんはリタ達だけが好きなんだよね」

ガイア…この三人はとんでもなく独占欲が強いんだ。

『幼馴染』だから3人は仲が良い…だがそれが通用するのはこの3人のみ…他は認めない。

それ以外に浮気をしたら…地獄しかない。

「違う、違うぞ! ガイアの通信水晶でな、こんなのを着ていた娘がいたんだ…それで皆に着て欲しいなぁって、そう思っただけだ」

俺はストレージから買ってきた物を取り出した。

「理人くん、それって」

「理人、それはなんだ?」

「理人お兄ちゃん…それなぁに?」

娼館に行って無いって理解したんだろう…さっき迄の恐ろしい顔が、いつもの優しい顔に戻った。

「これを着た、皆がみたいんだ」

「お洋服に…下着ですか? きゃぁ…理人くん、本当にこれ着て欲しいの?」

「うわぁ…凄いな、これ乳首の所が穴あいているし、他もスケスケで裸みたいだな、まぁ着ても良いけどな」

「下着だけじゃないよ…この服着たらパンツ丸出しになるよ、しかも胸も谷間が凄いよ…まぁ理人お兄ちゃんが見たいなら、うん
着てあげる」

渋々みたいに聞こえるけど、手に取って色々みている。

ふぅ~、ちゃんとした言い訳を考えていて良かった。

それに耳を赤くしながらも嬉しそうに、眺めているし。

「そ、それじゃ早速、着てみるね」

「まぁ、理人が着て欲しいなら…早速着替えてくる」

「そうだね、だけど理人お兄ちゃん、外ではこれ着なくて良いよね?」

「こんな姿、他の男には見せたくないから、勿論部屋の中だけで良いよ…当たり前じゃん」

「そうね…理人くんだけ、そういう事よね?」

「確かに理人以外には見せられないな」

「まぁ理人お兄ちゃん専用、そういう事だよね!」

こんな姿他の人には見せて欲しく無い。

「そうだな、確かに俺の者みたいで…嬉しい」

「「「そう」」」

「理人くん、理人くん、お姉ちゃん恥ずかしいけど着てみたよ…どうかな?」

「結構、凄いな、これ全部丸見えじゃん」

「凄いね、理人お兄ちゃん、なんだか裸よりもエッチに見えるよ…理人お兄ちゃん、鼻血が出ているよ」

ガイアの周りの女性が着ているのを見てもちょっとエロイな位にしか思わなかったけど…

身近な人間が着ていると…なんだか凄くエロく感じる。

しかもチョイスが凄い。

マリアは紫の下着を上下身に着け…勿論スケスケ、しかも乳首と股の所には穴が空いている。

エルザも似たような感じだが赤でレースが加わっている。

リタはピンクで透けていて、その上に透き通るキャミソールを着ている。

小さい頃から一緒の幼馴染が着る…凄く興奮する。

「ああっ、ゴメン、興奮したみたいだ、洗面所で拭いてくる」

「そう、興奮したんだ、お姉ちゃん嬉しいな」

「そうだな興奮したなら我慢しちゃ体に良く無いな…うん相手してあげるよベッドに行こうか?」

「理人お兄ちゃん我慢は体に毒だよ…お嫁さん、なんだから何時でもしてい良いんだからね」

そのまま手を引かれて、ベッドの所に連れて行かれ押し倒された。

これどう考えても『しても良い』じゃないよ? 

3人の方が『したかった』んだよな…買ってきた下着に着替えてくれて、誘ってくれるのは凄く嬉しいから良いんだけどな。

結局、エロい下着を身に着けた幼馴染の魅力に勝てず、いつも以上に励んでしまった。

◆◆◆

そろそろか?

今はもう深夜…3人は俺の横で寝ている。

この下着、まじまじと見ると凄くエロい。

また興奮してきたが、今は駄目だ。

そろそろ、デスラVSジブヤの戦いも大詰めだろう…

俺がデスラを倒すチャンスは此処からの僅かな時間しかない。

幼馴染のあられもない姿に後ろ髪をひかれつつも俺は部屋を後にした。

第52話 死闘? 優しすぎる敵

深夜遅く、俺はジブヤにたどり着いた。

要塞都市の面影はなく、破壊の限りを尽くされていた。

この都市のシンボルの大きなゴーレムも此処には無い。

恐らくは戦闘に駆り出されたのだろう…

自分が作り出したとはいえ、無残だ…

あちこちに死体が転がっている。

だが、これは仕方が無い…教会や国の言う所の『世界を滅ぼしかねない魔王の幹部との戦い』

この位の犠牲で済むなら安いだろう…

俺は勇者でも無い、四職ですらない…そんな人間が、化け物と戦うのだ…

各国の騎士団ですら逃げ出す相手に戦いを挑むのだ、手段は選べない。

『只の魔法戦士が魔族の四天王に挑むんだ』

仕方ないだろう…

しかし、思った以上に死霊が多い…逆に生きた人間は見かけない。

まさか…完敗したのか?

そんな…

「貴様が今回の黒幕か?」

デスラか…倒されていないと思っていたが…周りに死霊が数百は居るじゃないか…

流石にこれだけの犠牲を払ったんだ逃げるわけにはいかないな…

「ああっ魔法戦士、理人参る!」

まさかここまでの数が残っているとは思わなかった。

勝てる要素が無い。

まさか5万対1万で此処迄残っているとは思わなかった。

デスラ+少数…場合によってはデスラ単体だと思っていたが…甘かったな。

もう…死ぬしか…可笑しい。

死霊の中に飛び込んで斬りこむ…死霊の攻撃を食らう筈が、何故か避けられる。

しかも、こちらの一撃は確実に相手の息の根を止めていく。

「ほう…我を討伐しようとするだけあって、なかなかでは無いか。お前が勇者ガイアだな…だが、我には届かぬ、我が正体はドラゴン…真のドラゴンの恐ろしさを見るが良い…」

嘘だろう…聞いてないぞ…まさか、デスラの正体がドラゴンゾンビだなんて…

「…ドラゴンゾンビ」

「いかにも…さぁ死霊には手を出させん、一騎討ちで受けてやろう、勇者よ!」

「俺は勇者ではない…勇者パーティの魔法戦士、理人だ!」

俺が倒したワイバーンは亜竜…骨だけとはいえ本物のドラゴンに勝てるわけはない。

だが…心の何処かに…負けない…そんな気持ちがあるのは何故だ。

どうせ勝てないなら自分自身、最強最高の技を使うしかない。

「ほう、勇者でも無い男がただ一人で我に挑むのか? もしかしたらこの都市の人間と戦い疲弊でもした我を討ち取るつもりだったのか?」

図星だ…

「行くぞ、これが『本来は』勇者のみが使える奥義! 光の翼だぁぁぁぁぁー-っ」

体が熱い…今迄俺は翼は2枚しか出せなかった。

今俺の背中には7枚ずつ14枚の翼が出ている。

「貴様ぁぁぁぁー――勇者じ無い…何じゃそれわー-っ」

可笑しい、背中に現れた羽が光じゃなく土色の羽に見える。

「俺にも解らないな…」

その羽が、光の翼のように切り離されデスラに襲い掛かった。

たったの一撃だが、その羽はデスラの骨を切り刻みバラバラにした。

「貴様、よくも我をこの様な姿に…等と言うと思うかー-っ」

一瞬でデスラは体を再生させた。

「体が再生された」

「お前は馬鹿か? 我は死霊の王…不死じゃ」

何故出来たか理由は解らない。

だが、いにしえの勇者リヒトの技を完全再現出来た…それをもってしても勝てない…こんな奴誰も勝てない。

恐らくガイアが居ても死ぬしかない。

ガツン…なっ!

頭を軽く殴られた。

「なっ!」

「お前、人間じゃ無いな! さっきの翼は竜ではないか? しかも『泣き虫勇者 リヒト』の技と竜の合わせ技まで使いおって、我の遠縁じゃないのか? 」

俺は『勇者リヒト』に憧れて技を模倣した事を話した。

「ほう、名前が同じだから憧れ、技を覚えたと言うのか?」

「その通りです」

逆らっても無駄だ…

「だが、さっきの羽は何だ? あれは竜の物じゃ…お前竜人間(ドラゴニュート)か?」

「普通の人間ですが…」

「そんな訳あるまい『鑑定』…なっお前…我の血を引く者から『血の加護』を貰っているではないか? もう良い…去るが良い!」

「もう良いんだ…五万もの犠牲を出して、貴方を討伐出来なかった…俺は終わりだ…悔いはないとは言わないが、殺せ」

「はぁ~難儀じゃなぁ~ ひぃひぃひぃひぃひぃ孫位から加護を貰っている奴を虐めるのは忍びないのぉ~ パチン…ほれこれで良いじゃろう?」

可笑しい…肉片だったり、焼け焦げた人間が再生していく。

「なっなっ…」

「馬鹿か? 我は死霊王と馬鹿な人間が呼んでおるが、真の名前は『冥界竜デスラ―ド』じゃ、死後の世界は我の管轄じゃ…死霊にしないで人間のまま肉体を与え生き返らせた…ゴーレムや城壁や建物は知らんぞ…あとほれ…」

この能力…前世の神話のハーデスに近いんじゃないのか?

冥界って事は死後の世界…まさかそこの支配者なのか?

更に見ていると、デスラは自分の角を1本、斬り落とした。

「これは…」

「我の角じゃ…これが有れば、我を討伐したと皆は思うじゃろ? まぁお前の面子もあるじゃろうから300年ほど眠っていてやろうぞ」

可笑しいな?

魔族の方が人間が出来ている気がする…それに俺に優しい。

「デスラ…いえデスラ様…」

「なんじゃ、いきなり泣きよって…我はこれ以上は甘やかさんぞ…えい…泣くな馬鹿者、仕方が無いのぉ…我も加護をやる…」

デスラの体から黒い霧が現れ、俺を包んだ。

「泣き虫なのは『彼奴と同じ』じゃな…同じように加護をくれてやった…まぁ死なずに頑張るのじゃ」

「どんな加護…ですか」

「内緒じゃ…それでは我たちは去る」

そう言うとデスラ…いやデスラ―ドは死霊を引き連れ去っていった。

どう見ても、教皇や王、帝王より人として出来ている気がする。

それに…俺の過ちすら無かった事にしてくれた…

あれは魔族じゃ無くて神なのではないか?

思わずそう思った。

◆◆◆

「英雄 理人様だっー-あの手にあるのは…デスラの…」

「勇者パーティの理人様が討ち取ったぞー――っ」

真面目に凄いな…さっき迄死んでいた人間が傷もなく復活している。

「ここのギルドは大変そうだから…エビルの街の冒険者ギルドに提出するわ…」

いたたまれなくなり…俺はジブヤを急いで後にした。

第53話 謎の令嬢+1
俺とデスラ…いやデスラ―ド、どちらが正しいか。

もう解ってしまっている。

デスラ―ドだ。

何が四天王最弱だ…あれは神じゃないか…

指先一つで5万もの体を再生して死から復活させた。

前世で聞いた、オリンポスの神々…そのハーデス、いや下手したらゼウス+ハーデス合わせた力を持っている…

自分が助けて貰ったからと言う訳ではない。

だが、見たことが無い女神より、デスラの方が神々しく思えてしまった。

頭の中で嫌な答えが出てしまった。

『今まで魔王軍に本当に勝った人間は居ない』

恐らくは、今回の俺の様に何か思う所があって『わざと勝利を譲って貰った』のではないだろうか?

デスラは、俺が憧れた、同名の勇者 リヒトを知っていた。

あの時のデスラや前に会った竜種の目は敵を見る目じゃなくて『優しい目』だった。

勝ったのではなく、魔族に愛されたのではないか?

その結果偽の『魔王討伐』という栄誉を貰ったのではないか?

そうとしか思えない。

自分が何を貰ったのか解らない、だがくれたのは『呪い』じゃなくて『加護』だ…

どう考えても『神』に近い存在じゃないか…

デスラ―ドが神に近い存在なら、そんな存在を四人も統べる魔王ってどの位凄いんだよ。

いや…もしデスラみたいな人格者だとしたら…まさか。

これは流石に考えてはいけないな…

敗北以上に打ちのめされて俺はエビルの街に帰ってきた。

◆◆◆

「朝帰りですか? リヒトくん、何やっていたのかなぁ~」

「態々、夜中に出て行くなんて、娼館か? 娼館に行っていたんだな、あん!」

「酷いよ…理人お兄ちゃん、こんな恥ずかしい物我慢して着たのに…」

流石にあれ程した後に…あはははっそれは無いな。

それに俺が浮気などする筈ないじゃないか…5万人の命と引き換えにしても守りたい…そう思える程好きなんだからな…

悪魔に魂を売り飛ばしても守りたい…そう思っていたんだからな。

「ちょっと…ねぇ理人くん、何があったの…ゴメン私が言いすぎちゃったの」

「信頼している、信頼しているからなぁ…泣かないでくれ、頼むから…ああっもう、ほら」

「理人お兄ちゃん、本当に何があったの? そんな顔してたら、理人お兄ちゃんが泣くから、ひくっすんすん、私だって凄く悲しくなるよ」

「ゴメン、今は少しこうして居て欲しい…」

そう言うと俺は三人を抱きしめた。

自分でもどうして良いか解らない。

そんな俺を三人は抱きしめ返してくれて、優しく髪を撫でてくれた。

◆◆◆

気が付くともう朝になっていた。

あのまま俺は眠ってしまったようだ。

朝早くから通信水晶が輝いていた。

不味い…ガイアの方でなく教皇の方のだ。

「すみません、出るのが遅れて」

嘘だろう、教皇であるロマーニと大司教のローアン、いわば聖教国のトップ二人が水晶に映し出されている。

「よいよい、気にするでない…獅子奮迅の活躍をしたのだ疲れているだろう…四天王の一人デスラの討伐を祝いたく、こうして連絡した迄だ…しかもあの、デスラの正体がドラゴンゾンビとは思わなかった…そこでだ、理人殿には『ドラゴンズレイヤー』の称号と教会にある、もう一つの『聖剣デュラン』を褒美として渡す事が決まった、今日はその報告までじゃ」

「見ていた者から話は聞きました、何でも、あの古の勇者リヒト殿が使ったという『光の翼』を使われたとか…神々しかった、そういう報告が沢山来ています…領主からも『救って貰いありがとう』という感謝の手紙がきておりますぞ…そこで私の方からは教皇様と話し合い、かねてから理人殿が呼ばれている『英雄』それを正式に名乗る事の許可…あと、綺麗な令嬢を一人婚姻相手として派遣する事を決めましたぞ」

不味い、不味い、不味い…デスラより怖い…

「待って下さい! 私にはもう分不相応な妻が3人もおります、ですから謹んで」

そんなの受け入れたら、三人から何を言われるか解らない。

「理人殿…幾ら妻を娶ったとはいえ『男としてお辛い』でしょう? 神職者の私でも、貴方の今の状況はお辛いのが解ります、ガイア殿は妻こそおりませんがもう8人の子持ち、解りますぞ」

あれ…子供の人数が合わない…それに『妻こそおりません』そこが解らない。

「あの、ガイアはその…娼婦3人は側室にした筈ですが…」

「ああっ、その事でしたら…3人とも側室は辞退すると申し出がありましてな、今現在も仕えている方…えーとダークエルフの方は『愛人で良いわ』との事です、こちらに来られた方二人は『人間として尊敬出来ないから…側室は辞退します』と言われました、ああっしっかりと今後のフォローは国がしますからご安心下さい」

いや、他にも居たよな。

「国から派遣した令嬢の方々はどうしたんですか? まさか…」

「ハァ~、最初に派遣した令嬢たちは上位貴族の令嬢が多く、彼女達と親交を重ねております…追い返された者、妊娠した者両社とも『ガイア殿を毛嫌い』しております、「側室になるなら死んだ方がまし」とまで言う始末で、教皇様の遠縁でもある帝国の公爵令嬢は…『魔王を倒しても社交の場で地獄を見せてあげます』と高笑いして日々派閥を超えて話しまわってます…このままでは社交界にガイア殿が出てもダンスのパートナーにも困るかと思いますよ」

彼奴…なにやってんの!…チョチョリーナにリザベルにイザベルにまで嫌われたのか…

娼婦から身請けして嫌われるなんて普通は無いぞ。

「話は戻しますが…私には分不相応な妻が3人おりますから満足です」

娼館や風俗を除き、子供を作る=性処理のこの世界じゃ、あそこ迄過激が前技はないだろうから理解できないかも知れないが…充分満足だ。

「確かに、私も教皇様も神職者ですが、気を使わないで良いのです。あのガイア殿の色ボケ…こほんっ、見れば、理人殿がさぞ辛いのは解りますぞ…理人殿はガイア殿と違う、誠実な方です、故に私も本腰を入れ探しました、綺麗なだけじゃない『絶対に理人殿が好きになる方で…3人とも揉めない方』を用意しました」

そんなの心辺りは無いぞ…3人以外に…どう考えても居ないよな。

「そんな人ならガイアに…」

「この話は理人様だけの話です…ですが揉めると困るのでガイア殿にも年齢だけ伝えましたよ、そしたら『ババア』は要らないからと言ってましたからご安心を…このローアンが理人殿に喜ばれるように動いたのです…絶対に後悔させませんから、ぜひお娶り下さい」

「これはサプライズだから…詳しくは話せんが、このロマーニもこの女性を気に入る事は保証する受けて貰えぬか?」

これほぼパワハラだな、だけど断れないな…

「この理人、謹んでお受けいたします」

結局、正体不明の令嬢を1人受け入れる事になった。

◆◆◆

「理人くん、反省していますか?」

「教皇様に逆らえ…」

「愛があれば大丈夫だ、理人なら断れたはずだ」

さっきの話を途中から聞かれたみたいだ。

無理だよ…相手は教皇とローアン大司教なんだからな…

君たちと違って四職じゃないんだから、本来は口すらきけない程偉い人なんだぞ…

「来るなら仕方ないけど…理人お兄ちゃん、私きっと優しく出来ないよ! ある日突然泡とかふいて死んじゃうかもよ」

「その冗談はやめてくれ、賢者のリタなら本当にできるんだから…」

「出来るんじゃないよ? やるんだよお兄ちゃん」

怖い、怖すぎる…

「その前に…なんで、理人くんにそんな話が来たの?」

「そう言えば、他にも褒賞みたいな話も聞いたが」

「私達…何も功績あげていないよね」

言いたくないな…これは嘘の話だ…

だがデスラ―ドは記憶の操作まで出来るのか?

なんだか話が違いすぎるな…

「デスラを討伐したから…」

「「「えっ」」」

驚くのは当たり前だ…これ自体、本当は嘘だ。

話していて…辛いな。

「デスラを単独討伐したから…褒賞を貰ったんだ…これからギルドに言ってくる」

「ちょっと待って 理人くん」

「おい、冗談だよな」

「理人お兄ちゃん」

俺は三人と一緒にギルドへ向かった。

第54話 ロザリオ

「これは間違いなくデスラの角です…おめでとうございます! 実際の授与はまだですが、冒険者証に『ドラゴンスレイヤー』の称号を入れさせて頂きます…そして史上12人目のSSランク認定、これは三国の王からの推薦でギルドからも許可が正式に降りています…あと褒賞ですが理人様は勇者パーティとはいえ、一般人です。その為報奨金として金貨50000枚(約50億円)が支払われます」

「そうですか…」

心が痛い…俺は5万人を見殺しにしただけだ。

「理人くん、凄いね…」

「ガイアや私達だってSランクだし『ドラゴンスレイヤー』なんて持ってないぞ…流石私の夫だな」

「凄いよ、理人お兄ちゃん、それ賢者より凄いんじゃないかな?」

実力で得た物なら…駄目だな…もし俺が討伐できたとしても5万が死んだ上に成り立っている。

今と同じ、いやそれ以下の気持ちになったかもしれない。

『デスラ―ド』に俺は救われた。

討伐した…そう言われると、なんだか心が切なくなる。

「そう…ありがとう」

そう答えるのが精いっぱいだった。

ギルドを出ると歓声があがった。

ジブヤの人達だ。

「英雄理人ばんざ~い」

「理人さん、本当にありがとうございます…貴方がきてくれなかったら娘共々、死んでいました…本当にありがとうございます」

皆ボロボロだ…そうかデスラ―ドは体は治したが、建物やその他はそのままだ。

ボロボロの姿でなんでだ…

「理人様、貴方のおかげで妻は助かりました…娘もです…感謝しきれません」

「息子をありがとう…死なないで済みました」

帰っても、廃墟みたいな都市で暮らさなければならない。

そんな生活でも態々来てくれた…すべてが嘘なのに…

そのまま、ギルドに引き返した。

「済まない、今回手に入れた金貨50000枚は全部ジブヤの領主に送って欲しい…復興に役立てて欲しいと」

「宜しいのですか?」

「皆、ゴメン良いよな!」

「それでこそ理人くん…勿論」

「ああっ構わない、私は何もしていないからな…だが、人を救うのが勇者パーティだ」

「ひとり馬鹿が居ますけどね、私は理人お兄ちゃんに賛成だよ」

「それじゃ、お願いする!」

流石の俺もこれは受け取れない…多分これでも足りない位だろう。

「凄いね、英雄はどこぞの馬鹿勇者とは大違いだ」

「国からの支援も無いのに…命がけで手に入れた報奨金をポンだ、男だねぇ~」

「あれが、英雄理人様…カッコ良いだけじゃなくて優しい」

言われれば言われる程、虚しさが増す。

「命を救ってもらったばかりじゃなく、お金迄寄付してくれるなんて」

「貴方はの事は一生忘れません…子孫全員に代々伝えていきます」

「良いんだ…気にしないでくれ」

「あの激闘だ…理人様をお引止めしちゃ悪い」

「「「「「「「「「「英雄万歳」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「「ドラゴンスレイヤー万歳」」」」」」」」」」

「大した事してない…忘れてくれ」

「理人くんは本当にテレ症ですね」

「ああっ奥ゆかしいな」

「流石は理人お兄ちゃん」

もう良い。

このまま考えていたら神経が可笑しくなる。

忘れよう…これは俺の黒歴史だ。

◆◆◆

教皇様から通信水晶で連絡があった。

今日、『聖剣デュラン』と『俺の婚姻相手』が来るそうだ。

相変わらず、凄いな、貴重な空竜艇をこんな事で使って良いのか?

「理人くん、まぁ来るのは仕方ないけど…場合によっては帰って貰おう」

「そうだな、私達が居れば必要ないよな? どうしても、だが私達が『揉めない方』って言うのが気になるな」

「そうだよね…他に幼馴染なんて居ないし…誰だろう?」

俺にも心辺りは無い。

幼馴染はこの三人。

それ以外は居ない筈だよな。

◆◆◆

空竜艇から、ロマーニ教皇にローアン大司教が降りてきた。

「済まないが此処で略式で授与式をさせて頂く」

降りてきた途端に絨毯が轢かれた。

俺は急いで跪いた。

ちなみに三人は跪いていない…

三職だからな…

「もう良い理人殿、これからは跪かなくて良い、妻や友が跪かないなか1人跪くのも辛かろう、この度の活躍は見事であった『聖剣デュラン』と『ドラゴンスレイヤー』の称号『英雄』を授ける…英雄は跪く必要は無い」

「はっありがとうございます」

「うむ、それでは謹んで受け取るが良い」

もう良いや開き直ろう。

俺は、ドラゴンスレイヤーの勲章と聖剣、英雄の証明書を受け取った。

「それでは、忙しいのでこれで、もう少しゆっくりしていきたいが、ガイア殿がな」

彼奴何かしたのか?

「何かあったのですか?」

「いえ、お伝えするような事じゃないのです…少しお金使いの事でお話しようとガブギにこの後行く予定です」

彼奴…まだガブギに居るのか?

「すみません」

「理人殿が気にする必要はありませんから」

「そうです…あれは…当人のせいですから」

「なんだか、すみません」

ガイアの事もそうだが…今回の手柄は嘘だ。

その意味も込めて謝った。

「こちらが、お約束の『婚姻相手』です」

「「「「えっ、ロザリオ様」」」」

嘘だろう、俺の住んでいた村を統治する貴族の娘、ロザリオ様。

俺の憧れにして…三人が頭が上がらない相手。

大司教が本気になるという事はこう言うことなのか?

「お久しぶりですわ、理人…いえ嫁ぐのですから理人様と呼ぶべきですわね」

俺も幼馴染三人も驚きが隠せない。

確かに彼女なら俺は文句はない、三人と同じように愛せると思う。

そして三人も姉の様に従い憧れていたから仲良くやれる筈だ。

だが…彼女は侯爵家に嫁いでいった筈だ。

しかも当主の家に…

つまり人妻だ…しかも侯爵夫人。

ありえない。

「ふぁはははははっ、いつも理人殿には驚かされてばかりだから、その仕返しじゃ…驚いたであろう」

「この方で、問題はない筈だと思いますが…教会が全勢力を使い調べ上げた、理人殿が聖女様達以外で愛する可能性のある唯一の方の筈です、まぁかなり年上ですが…どうですか?」

「ですが…ロザリオ様はオルレアン侯爵家に嫁いだ筈です」

「理人殿…貴方は私達が欲する者を与えてくれた…そして努力の末、かっては勇者すら殺したデスラを倒したのだ…この世の理の一つ位捻じ曲げても欲しい者を望むべきだ…ガイア殿とは違い、しっかりと手柄を立てているのですから」

「教皇である私が貴方に貸しばかり作るのもね…少しだけお返しします…侯爵家なんてどうとでもなります…私も含み、帝王に王、全員が貴方に借りがあるのです…何かあったら何時でも頼って下さいね…では口惜しいですがこれで失礼しますよ…理人殿」

教皇達は直ぐに飛竜艇に乗って帰っていった。

ガイア…幾ら使ったんだよ…

◆◆◆

「理人様、いい加減返事を下さいませ…まさか、この状態で年上は嫌とか、経験者は嫌とか言いませんわよね」

年上って言ってもまだ20代後半、前の世界じゃまだまだ充分若い。

この世界じゃ短命なせいか、完全に年増扱いされる。

(一般的な寿命が60歳位の世界です)

「あの、ロザリオ様は良いのですか? 旦那とか愛していたんじゃないのですか?」

「愛していませんわ、政略結婚ですから、しかも子供も出来なかったせいで、酷い扱いでしたわ…でも原因は多分私じゃなくオルレアン侯爵の方ですわ、だって妾が2人居て、その二人も妊娠していませんでしたわ」

「もう一度言いますが、ロザリオ様は本当に俺で良いんですか? 領主様とかに恨まれたりしませんか?」

「良いに決まってますわ…それより理人様は本当に私で宜しいんですの? 結構年上ですし、もうおばさんと言われても仕方ない年齢ですわ、それなのにローアン様からお話がきまして驚きましたわ、別人って事は無いですわよね?」

「俺はロザリオ様が嫁いでいかれると聞いて、馬車を見送った時に泣いた位好きでしたから…」

「それなら良かったですわ…オルレアン侯爵は教皇様から差し出すように言われたら、簡単に私を手放しましたわ…まぁ『子供が産めない女』と馬鹿にされていましたから、教会の印象を悪くする位なら要らないのですわね、私の実家の方は自領の出身者が四天王を倒してドラゴンスレイヤーの称号を貰った事で王に褒められ、教皇様が直々に話をしましたから、最早自慢の種ですわね、お母さまの話では『娘の婚姻相手は教皇様が間に立ち『英雄』『ドラゴンスレイヤー』だと言いふらしている様ですわね…もう既に義理の息子呼ばわりですわ…それなら私が嫁いで理人様が悲しんだ分、これから沢山沢山埋めて差し上げますわ』

「ロザリオ様…特別に今夜はお譲りしますが…4人の者ですからね」

「今日はお譲りしますが、基本は私たちは全員でします」

「理人お兄ちゃんといつも4人でしているんだから…1人占めは今夜だけだからね」

三人とも俺と同じでお世話になっていたし、確かにロザリオ様なら問題は無いな。

第55話 勘違いは加速する

「これから進言ですな」

「ええ、しかし『勇者絶対主義』を貫いている、この私が、勇者様に苦言を言う、こんな日が来るとは思いませんでしたよ」

「失言しても宜しいでしょうか?」

「この部屋には二人しかおりません…小声でなら構いません」

「では…こほんっ、あのガイアとかいうクソガキは本当に勇者なのでしょうか? 大きな手柄を上げるでもなく、精々ががオーガを狩る程度、それなのにあの、豪遊三昧…理人殿の方が余程勇者らしく見えます」

「ええっ、私にもそう見えますよ…あの粗末な恰好見ては、特に…しかも聖女様や賢者に剣聖が余程、お好きなんでしょうね…彼女達にはしっかりした身なりをさせていました、私は沢山の人間の相談に乗ってきました、理人殿の目に彼女たちの目…本当にお互いに愛しているのが解ります、三人を望んだ時に躊躇しましたが、今なら間違いなかったと言い切れます」

「ええっ、しかも先程入った冒険者ギルドの報告では、報奨金を全部ジブヤの領主に送ってしまったそうです、理人殿のパーティの方が本物の勇者に思えてなりません」

実は私は気になっていた事があります。

それは、理人殿の使った『光の翼』の事です。

勇者でも無い人間が努力で2枚とはいえ翼を出せた…それですら奇跡です。

ですが…今回の報告で14枚の翼を出したとの報告がありました。

しかも、不思議な事に、その翼はドラゴンに見えたそうです。

相手はあの四天王のデスラ…しかもその正体はドラゴンゾンビ。

その様な相手に、単独勝利をした人間等、伝説の中にも居ません。

私の中にある仮説が生まれました。

だからこそ、今回は破格値な報酬を用意したのです。

王に頭を下げ、侯爵家の正室をも手に入れ差し上げました。

幾ら、夫婦仲が悪くてもこんな事までした教皇は居ません。

婚姻を踏みにじる等、神職者なのですから行う訳ありません。

「そう見えるのは、当たり前です! 勇者ガイアは恐らくは弱い勇者です…魔王はおろか四天王にすら敗北するでしょう…余りに勇者にしてはお粗末です」

「教皇様…それではまるでガイア殿が、偽物のように思えますが…」

「いえ、間違いなく本物です、ですが魔王、下手したら四天王にすら負けるでしょう」

「それは聞き捨てなりませんぞ! 幾ら教皇様でも、言って良い事と悪い事があります」

「いいえ、事実です」

「それでは、この世はまた絶望の時代がくるのでしょうか?」

「いえ、そうはなりません…歴史の中で2度だけ『勇者を凌ぐ真の救世主』が現れ世界を救ったではないですか」

「ハァ~『女神の騎士』ですよね…あれは眉唾で嘘だったと証明された話です…信じているのは教皇様位ですよ」

私だって信じられません。

「では、ローアン、この鑑定紙を見なさい…」

「教皇様、幾ら気になっても、許可なく鑑定するのは良くないですぞ…理人殿のですね…凄いもんですね…なんですか、これ虫くいじゃないですか?」

「そうでしょう…かなり精度の高い物を使いましたが『半人※※』と伏字があります、凄いのは『竜の王族※※の加護』に『神竜※※※※※※の加護』とあります」

「それがどうか? あああっあああー――――っ」

「気が付きましたか? 女神が与える最強のジョブが『勇者』ならば…それ以上の力はどうやって与えるのでしょうか? 先代の教皇様達は、もしそんな力が宿るなら『他の神から分けて貰うしかない』そう言われていましたね…異端視されましたが」

「そうですよ、この世界は一神教…女神様の他には邪神しかいませんよ、そんな馬鹿な事は…」

「じゃぁ『神竜※※※※※※の加護』とは何でしょうか、読み取れる所に『神』とあります…これは竜の神が存在する証拠です。」

「ああっ…まさか、『半人※※』とは『半人半神』でしょうか」

「恐らくは…我々は歴史的瞬間に立ち会ってしまった…恐らくは勇者の素養が無いガイアが勇者になった為、女神様は憂いだのでしょう…そして『神竜※※※※※※』の力を借り…女神の騎士、理人殿を誕生させた…生まれた時は『魔法戦士』なので偽装していたのか、途中から与えたのかは解りませんが」

「そんな、理人殿が『女神の騎士』だったなんて、引き戻しましょう」

「ローアン、それは浅はかですよ…理人殿は平凡な日常を好まれますから、そっとしておきましょう…但し、諸国の王と10大司教には伝えます…残り9人には貴方がお伝えください」

「教皇様…知っていたんでしょう…」

「何の事ですか?」

「可笑しいと思いましたよ、そわそわしながら、秘蔵の聖剣の手入れを入念にさせ…『ドラゴンスレイヤーの勲章を用意』していましたよね…しかも強い口調で『英雄』の称号について話し合い…挙句の果てに教会の諜報機関全てに『理人殿の望まれるものを探すのです』ですからね…まぁロザリオさんの件には1枚噛ませて頂きましたから、私は文句ないですが…」

「文句が無いなら良いでしょう?」

「理由を教えておいてくださいよ『オルレアン侯爵を離婚させて、その妻を差し出させよ』なんて驚きましたよ…しかも『差し出すなら、オルレアン侯爵の母親に上級シスターの地位を与える、差し出さぬなら破門なんて…』」

「喜んで差し出したではないですか」

「そりゃぁ夫婦仲が冷え切っている状態で、その二択なら、こうするでしょう…しかも母親は中級シスターの資格が欲しくて教会に寄進する様な人物なのに『上級』ですからね」

「まぁ、そのおかげでローアンも1枚噛めたから良いでは無いですか」

「そうですね…感謝します…それでこれからどうするんですか?」

「理人殿は平凡を好まれる…このまま自由にさせてあげるのが良いであろう…物欲も無いようだし…望まれるなら何でも差し上げて、望まぬなら放っておいて差し上げるのが一番です」

「そうですね…問題は」

「ガイアじゃな」

勘違いは加速する…

第56話 ロザリオと
「それでは今日からお世話になりますわ、理人様、マリア、エルザ、リタ」

目の前にロザリオ様が居る…

まさか、こんな者を褒賞に持ってくるとは思わなかった。

この国の教会の力、教皇、大司教の力の凄さが良くわかる。

如何に夫婦間の間が冷めていても、相手は侯爵家…醜聞になるから離婚なんてしない。

しかも側室でなく正室で、政略結婚、別れることで両家の結びつきが壊れるから無理だ。

最も、王ですら逆らえない教皇や大司教が動くなら簡単なんだろうな…逆らえば破門とかいえば貴族とて、生きてはいけない、それがこの世界だ。

「よ、宜しくお願い致します!」

「宜しくお願い致します、ロザリオ様…いえロザリア」

「宜しくなロザリオ」

「ロザリオ…さん、宜しくお願い」

「皆、随分固いですわね、理人様は私の旦那様ですわ、ですからロザリオで宜しいのですわ…他の三人も昔は兎も角、今は三職、エルザみたいにロザリオで宜しいのですわよ」

固くなるのは仕方ない。

ロザリオは面倒見が凄く良く、この世界では珍しい砂糖菓子なんかもくれたが、領主様の娘だ…齢もかなり上だから、本当の意味で姉のような存在ではあるが、流石に緊張位するだろう。

「まぁぼちぼち慣れるから気にしないで」

「そうですわね、ですが理人様にはすぐに慣れて貰わないと困りますわ…そのお歳なのにお辛いでしょうから、お任せ下さいですわ、これでも妻の経験がありますから一通りは知っておりますわ」

「ちょっと待って!ロザリオ…あの、それは最後までするって事?」

「マリア、当たり前なのですわ…貴方達は三職、妊娠を考えたら、そういう行為は出来ませんわよね? だからこそ、私がそれを補うのです、私の務めなのですわ」

「ロザリオ…私は、理人に不自由なんてさせてない、口や胸を使ってしっかり満足させてあげている…最初はやられっぱなしだったけどな」

「そうだよ、リタだって理人お兄ちゃんとはラブラブなんだから、不自由なんてさせてないもん」

「それで理人くん? ロザリオとは最後までする気ですか?『お姉ちゃん悲しいな』」

話し方は優しいけど、背中に前世で言う般若が浮かび上がっている。

「三人とも、なにそんなに怒っていますの?その三人は大げさに考えてますが、そんなたいした事じゃありませんわ、精々が1時間、長くて2時間一緒にすごすだけですわ…その後は久しぶりにそうです5人一緒に寝ながらお話しでもするのもいいですわね」

「ロザリオ…ふふふ、勘違いしていますよ、私も理人くんとするまで、そう思っていましたわ」

「そうだよな、私もお母さんに聞いたのはそんなだったな…理人は違う」

「理人お兄ちゃんは兎に角凄いの! はぁ~あれはまったく違うよ…」

こう言われてしまうと流石に顔が赤くなるな。

幼馴染が三人で性の話をしているんだからな。

「それはどういう事ですの、理人様はまだ経験が無いはずですわ…確かに夫婦関係は冷え切っていましたが…私は妻だった経験がありますわ、経験者ですわよ…」

「まぁまぁ、今日は理人くん貸し切りだから、明日詳しく聞きますね…理人くん、お姉ちゃんが悲しくなる事はしないよね?」

ちょっと怖い…これは拗らしている時のマリア…マリ姉バージョンだ。

「マリ姉…解ったよ」

「理人…剣聖って腕力だけなら四職最強なんだよ…信頼を裏切るような奴じゃないよな?」

もし一線超えたら…まさかな。

「理人お兄ちゃんはリタが悲しくなるような事しないよね?」

目の前で顔を伏せ気味で上目遣い

ズルいよな…三人とも、俺の弱い所ばかりつくんだから。

「今日は、一線は超えないから大丈夫だ」

「「「そう約束(だ)(だよ)(ですよ)」」」

「あの、さっきから何を話していますの? そんな大きな話じゃありませんわよね?」

マリアもエルザもリタも…服も宝石も欲しがらない。

あげたら喜ぶが…それは勘違いじゃなければ『俺からのプレゼント』だからだ。

一日の恐らく1/3以上、場合によってはまる一日、やっている。

そう考えたら死活問題なんだろな。

◆◆◆

ハァ~相手は、理人なのですわ。

確かに小さい頃から慕われていたとは思っていましたわ。

あれだけロザリオ様と追いかけられて、『好き』と言われれば解らないわけありませんわ。

ですが…それは子供の頃のお話ですわ…

ままごとの様な『恋』それだけですわ。

10歳近く、歳が離れているんですから、普通は結ばれるわけありませんわよ。

確かに小さい頃から利発で、地味ですが可愛い子だとは思っていましたわよ。

だけど、此処迄歳が上ですし、それに近い歳の幼馴染がいたら、それと結婚して終わる筈ですわ。

それに貴族と村人、幾ら我が家が寛容でも年頃にでもなればもう会う事は少なくなりますわね。

凄い物ですわね…あの幼かった子供の理人が『今でも私が好きだ』なんて…ローアン大司教から話を聞いても信じられませんでしたわ。

女冥利につきますわね。

そんな長い事想われていたなんて凄いですわ。

はぁ~ 月日は凄い物ですわね、子供だった理人があんなに逞しくなっているのですわ…しかも、顔つきも変わって凄くカッコよくなっていますわね…地味だと言うかも知れませんが凄い美少年でしてよ、『英雄』『ドラゴンズレイヤー』とまでなった鍛えぬいた体、前の夫のぷにぷに肥満とは全く違いますわね。

ですが、月日は残酷でもありますわね…10代と違って少しお腹が弛んだ気がしますわ…気のせいかお肌の張りもあの頃と違う気がします…ムダ毛は処理しましたが…そう言えば私の体はもう何年も殿方が触れていませんわ…大丈夫でしょうか? まさかカビなんて生えてませんわよね(笑) はぁ~ この体で十代のそれも鍛えぬいた英雄と言われる少年の相手をしなくてはいけないのですわ。

昔なら…言っても仕方ないですわ…私の若い頃はまだ理人様は子供…こうでも無ければ重なる事はありませんでしたわね。

理人様は初めてのようですし…思い出に残る様にしてあげないといけませんわね。

確かに結婚はしていましたが、もう何年もしていませんわね、やり方は大丈夫ですわ…考えていても仕方ありませんわね。

はぁ~行くしかありませんわね。

この服装なら淫らに見えませんし…かと言って地味じゃないですわね。

◆◆◆

トントン…

「理人様…その夜伽に参りましたわ」

俺は緊張しながらドアを開けた。

「どうぞ、入って」

「お邪魔しますわ」

「どうぞ」

見た瞬間からドキっとした。

俺達は十代だ…この世界の成人は14歳。

前の世界の人間が今の俺を見たら、マセガキって呼ぶだろう。

つまり、肉付きが良いだけで、リタだけじゃなくマリアもエルザも前世なら未成年も良い所だ。

だから何となく体に幼い感じがある。

それに対してロザリオは、20代後半…大人の女性だ。

「嫌ですわ…そんなに見られたら…もしかしたら体を見て失望されました、まぁおばさんみたいな歳ですし、仕方ありませんわ」

目が泳いでいて泣きそうな顔をしている。

こういう時は…

「うぐううんっぷはっ、そんな事ないよ、思わず綺麗なんで見惚れた位だ」

この世界は寿命の問題なのか10代後半で行き遅れ扱い…30歳にもなれば『性処理奴隷』としても余程の美人じゃなければ安値になる。

まぁエルフやダークエルフとかでなく人族限定の話だ。

「うんぐううん! 嘘ですわ…私下手したら貴方に母親が居たら貴方より母親に近い歳ですわ」

「そう? 俺はそうは思わないよ…本当に綺麗だ」

「幾らなんでも、その言い過ぎですわ…この歳の女性がううんううっぷはっ、何で言わせて頂けませんの!」

「ううんううっぷはっ、俺にとってロザリオは凄く綺麗で可愛い、だから貶すのは許したくないんだ…ロザリオ本人にでもね」

「そんな事言われたのは初めてかも知れませんわ…私図に乗っちゃうかも知れませんわよ」

「それで良いよ、ロザリオは綺麗だ…本当にそう思うから、それじゃ行こうか?」

俺はロザリオの手をとり、そのまま抱っこした…所轄、お姫様抱っこだ。

「あの…私を抱いて何処に行きますの…ベッドの方向じゃありませんわね」

「一緒にお風呂に入ろうと思って」

「うふふっ、そういう事ですのね、理人様は、雰囲気作りが美味いのですわね…確かに一緒にお風呂に入るのでしたら、時間は長くなりますわね」

俺はロザリオを風呂場でそっと降ろした。

「お背中だったら、私が流しますわ」

「最初は俺がするから、その後で頼むよ」

「えっ…なんで、手にシャボンをつけていますの?」

「それはロザリオにしたい事があるからね」

「えっ….嘘、理人様、そこはしなくて良いですわ…汚いし恥ずかしいですわ、えっえっええええっ、そこは駄目ですわ…ああっ本当に恥ずかしいのですわ…あああっちょっと」

「ロザリオは綺麗で汚い場所なんてないよ」

「そんな、ハァハァそんな所自分でも…ハァハァ駄目ですわ、本当に駄目ですわ…そんな、なんで、ハァハァ うぐううん、体洗っている最中にキスなんてハァハァ…駄目、そこは本当に、そんな…なんで口を近づけてますの…そんな嫌、それは恥ずかしいですわ…いやぁ」

「お嫁さんなんだから気にしないでうん、良いでしょう」

「気にしますわ、ハァハァ、そんな初めてなのに…可笑しいのですわ、童貞なのでしょう…なんでそんなに慣れていますの、はぁはぁ可笑しいですわよ」

「俺はロザリオに、してあげたい事をしているだけだよ…まぁ最後の一線は超えてないだけで、少しは経験はあるけどね」

「そんな、こんなのは違いますわ、私が知っているのと違いますわー――っ」

結局、お風呂場で5回ロザリオを逝かせたら…ロザリオは気を失ってしまった。

俺は体を拭いてあげて、そのままベッドへ運んだ。

「あれっ…理人様私…」

「うん、気を失っていたからベッドへ運んだんだ」

「私、気を失ってしまいましたのね…本当に理人様は凄いですわ、こんなの私は初めてですわ…これが夫婦の営みだとしたら今までのは何だったのでしょう…凄いですわ、心からお慕い申し上げますわ…理人様? あの…そこはああっ、またそんな所、本当に恥ずかしいですわ…うぐっううん」

俺はロザリオにまたキスをした。

ロザリオも俺に舌を絡めてきたが…やはり拙い気がする。

この世界ではかなり淡泊だから慣れてないのか。

「うぐううんっぷはっ…さっきのはただお風呂に入っただけだよ…これからが本番だよ」

「まだ…するんですの?」

「新婚だからね…」

「ああっ、そんな…ハァハァ私ばかり逝かされてハァハァ、もうどうして良いか解りませんわ」

そう言いながら両手を広げて抱きしめてくれるロザリオは凄く綺麗で可愛く思えた。

気が付くと朝方になる迄やり続け…10回ほど逝ったあと、そのままロザリオは眠ってしまった。

『凄く美人だよな』…本当にこの世界の男は勿体ないことしているよな…女性が本当に綺麗に見えるのはこれからなのに。

◆◆◆

なんなんでしょうか? これ…本当に可笑しいですわ。

若くて綺麗でカッコ良い理人様が、あんな事やこんな事…思う度に顔が真っ赤になり火を噴きそうになりますわ。

こんな夫婦の営み…聞いた事ありませんわよ…

夫婦の営みって、ただ抱き着かせてあげて、棒の出し入れだけではありませんの…

理人様のは全くの別物ですわ…

『汚い所はない』とか真顔で言って、あんな事やこんな事…もう私の体で理人様の触れていない所はありませんわ…しかも手だけじゃなく口でですわ…

これが本当の夫婦の営みだと言うなら、今までのは違いますわね。

だって気持ちよくなんてありませんでしたから…

愛が無ければあんな事出来ませんわね。

触られるたび、キスされる度に自分の体が理人様に染まっていくようですわ…

もう私は理人様無しで生きていけない気すらします。

さっきから愛おしそうに私の髪を撫でながら理人様が私の顔を覗き込んできます…

私、もう起きているのですが…このまま寝たふりするしかありませんわね。

第57話 クズ勇(友)

しつこい位に通信水晶が光っている。

考えが纏まらないから放置していたら…余りにもしつこく光りだす。

「理人くん、ガイアだってもう良い大人なんだから放って置いたら」

「幼馴染だが…彼奴は女の敵だ」

「理人お兄ちゃんは人が良すぎるから…もう絶縁しても良い位だよ」

「ガイアは余り評判は良くありませんわ…貴族令嬢の間で悪い噂が飛んでいますわよ」

確かに女の敵で最低ではあるが親友ではある…仕方ない。

「悪い、ガイアと話をするから、部屋に籠るよ」

それだけ伝えると俺は部屋に籠った。

◆◆◆

「ハァ、ハァやっと出たな…大変な事になったんだ」

顔に相当な焦りがある、教皇様やローアン大司教、何を言ったんだ。

「一体どうしたんだ?」

「それが、折角理人が、俺の為にくれたブラック小切手に制限がつけられたんだ」

どの位迄、下げられたんだ。

まぁ無制限にして無駄使いすればそうなるな。

「それで幾ら迄下げられたんだ?」

「一か月、金貨800枚だ、少ないだろう?」

馬鹿か?

金貨800枚(約8千万)でなんで文句が出るんだ?

流石にエルフやダークエルフを購入しようとすれば足りないが…人族の奴隷なら貴族の没落令嬢すら余裕で買えるぞ。

「それなら、充分すぎる気がするが…多分こっちは月に金貨10枚~20枚で回っているぞ」

「お前は、あんな幼馴染で満足しているからだ…良いか、良い女という物は何かとお金が掛かるもんなんだよ!」

「そうか…流石に俺もどうすれば良いか解らないな、教皇様達は何か言っていなかったのか?」

「ああっ、実績を上げれば、考えると言っていた」

だったらやる事は一つだろう。

「なら、そろそろ、旅だったらどうだ? 四天王の一人でも倒せば、多分解除してくれるだろう」

「ああっ…そう言えば理人は、デスラを倒したんだってな」

本当は倒してないんだがな…

「ああっ」

「まぁ、理人が単独で倒せるなら、四天王も大した事無いのかもな」

「いや、俺が倒したのは、その中では一番弱いデスラだからな…絶対に油断するなよ!」

「解った、解った…気をつける」

絶対に解ってないな…

記録水晶越しに見える女の数…なんだこの数。

「あの…ガイア、今チラッと見えたんだが、裸の女性、しかもエルフやらダークエルフやらが見えたんだが、目の錯覚か?」

「いや…見間違いじゃないぞ、リヒャールさんにお願いして、この街の娼婦や奴隷になっているエルフやダークエルフを全部買ったんだ、コンプリートだぜ、凄いだろう?」

ひい、ふう、みぃ、よ…嘘だろう見える範囲だけで7人も居る。

まぁ、流石に娼館や奴隷になるのが少ない種族だからな、それ程じゃないが…いったい何人いるんだ…

「それで、一体何人買ったんだ」

「ああっ23人買った…ああっもう妊娠した奴は教皇が引き取っていったから…今、俺の手持ちは14人だ」

「そうか…」

映る範囲に令嬢もジザベルもこの前買った筈の戦闘用の女奴隷も居ない…

そう言えば、ジザベルは…この間話した時何も言っていなかったな。

「全部美人だろう?」

「ジザベルや令嬢たちはどうしたんだ?」

「なんだ、 ジザベル欲しかったのか? 事前に言ってくれれば、俺のお古で良ければあげたんだが…一応は可哀そうだから、ジザベルも令嬢達も『妊娠薬』つかって妊娠させてやったよ」

ますます拗らせているな…

「それで居ないのか? ジザベルとは上手くやっていたんじゃないのか?」

「それがな、他のエルフやダークエルフから聞いたんだが、俺達から見たら若く綺麗に見えるが、他のエルフから聞いたらお婆ちゃんらしいんだ…『あんな歳の女同族なら絶対に抱きません』と他のエルフが言うのよ」

「そうか…」

「ああっしかも他のエルフから『加齢臭だってしますよ』って言われてな、よく見ていると香水やお香で匂いを誤魔化していたんだぜ…それ聞いたらもう駄目だ…ババアだと解ったらもう抱きたくなくなったわ、まぁ付き合いも長いから、それでも妊娠はさせてやったけどな」

「それで、ジザベルや令嬢は何処に行ったんだ」

「ああっ、ジザベルについババアって言っちまったら『貴方にはもうついて行けません』ってババアの癖に文句言うから、教皇に引き取って貰ったよ」

「令嬢は?」

「可哀そうだからよ…『妊娠薬』使ってやってやったよ…お前との約束だからよ、ちゃんと孕ませてやったよ…だけど此処だけの話な…絶対に他の奴には言うなよ?」

なにか重要な話か?

「俺…もう豚はいらねーや」

此奴何言っているんだ、中身は兎も角、外見は各国選りすぐりの美女だぞ。

「ガイア…目が腐ってないか? 凄い美女達じゃないか?」

「なんだ、理人、彼奴らも欲しかったのか? 中古で良ければやったのにな…あれ豚だぜ…お前もロザリオのババアと豚2人にオーガと暮らしているもんな…ほら見ろよ…」

ガイアはいきなり近くのエルフを引き寄せ胸を掴んだ。

「きゃぁぁぁー-恥ずかしいです、ガイア様」

「よく見ろよ、このスレンダーな体、こういう、良い女を抱いちまうとよ…あの程度、美人とは思えなくなるぜ、肉の塊、本当に豚みたいに思えてよ、しかもジザベル達はババアだから加齢臭がするが、若いエルフは人族に比べて匂いも臭くないんだぜ、もう普通の女は臭いから豚にしか思えなくてよ…抱きたくねーんだわ」

これがガイアの本性か…

此処迄変わる物なのか…信じられないな。

一応は勇者だぞ。

「それで?」

「教皇に頼んでもう派遣しないで良いって言った…そうしたらよう『そうですか』だと」

多分、もう各国最低限、必要な『勇者の子』を手に入れたのかも知れないな…崩壊じゃなく、自分から壊すなんて思わなかったな。

金貨800枚それでも出してくれる教皇様は…優しいと思うな。

「ガイア…補充がきかないなら、その14人は孕ませないようにした方が良いんじゃないか? 流石に手放したくないだろう?」

「なんでだ? 避妊なんてしたら気持ちよくねーだろう、それに幾らエルフでもよ…飽きないなんて嘘だぜ、数回したら飽きるんだ…そうだ今いる14人の中から1人か2人飽きたらやろうか?」

「そんなの貰ったら4人に殺されるよ…残念だけど無理だな」

「あいつ等ブサイクの癖に妙に嫉妬深いもんな…理人可哀そうに(笑)」

「ああっ、俺はそれで満足だから良いんだが…戦闘用奴隷はどうしたんだ」

「ああっ、解放した」

「どうしてだ…」

流石に魔族との戦いは無理だが当座の間の戦力にはなるだろう。

「だってよ、あいつ等は令嬢以下なんだ、今の俺が抱きたいと思うか?」

「思わないな」

「だからお払い箱、解放したんだ」

女性の奴隷で性処理可能…しかも戦闘も出来る。

高かった筈なのに…なにしているんだ…此奴。

『仲間居なくちゃ不味いだろう? 四天王や魔王との戦いどうするんだ』

「あのよ…親友だから怒らねーが、俺は勇者だぜ、お前が単独で四天王の一角を倒したんだ、俺に出来ねーわけないだろう」

「…そうだな」

何を言っても無駄そうだ。

「俺には仲間なんていらねーんだ、ただ抱ける女が居れば十分だ」

ガイア…いったい…お前何処に行くんだ…

「そうか」

俺にはもうそれしか言えなかった。

第58話 理人また休む
しかし、ガイアも随分とクズになったものだ。

確かに堕落する環境は俺が与えたものだが…此処迄あれだけでなるわけが無い。

世の中には金持ちでも、リア充でも、権力があっても、堕ちない人間も多い。

元から素養があった…それだけだ。

この世界の人間は簡単に『友人』を辞めるが、前の世界では実害がなければ、案外友達関係を続ける事は多かった。

今の世界じゃ考えられないが、彼女を寝取られても、そのまま友人関係を続け、寝取られた彼女とも友人を続ける事すら良くあった。

ガイアの事は『女関係』と『お金』と『エリート意識』この3つを除けば、あれでも俺から見たら『友人』と言える要素はある。

その3つの悪い点だが『女関係は女の趣味が完全に違う』から今のガイアとは前と違って揉めない。

お金は、スポンサーがガイアにはいるから揉めない。

エリート意識は、別動隊だから影響は受けにくい。

俺には実害は余りない…

前の世界はかなり可笑しな世界だった。

不良が漫画やドラマで流行っていたから、クラスの2/3が不良。

女の子で凄いのになると、二枚刃のカミソリで人の顔を斬る奴や、巾着とか言ってスカートを捲った状態で上でスカートを縛り上げる奴もいれば、中高生なのに売春経験が100人を超えてるやつも居たな。

男では平気でバッドで人を殴る奴もいたし、シンナーで歯が無くて頭の可笑しい奴もいた。

大学になると、サークルと称して女を口説く事ばかり考えている奴もいて、中にはお酒に睡眠薬をいれてやってしまう奴も…男でも女でも居た。

何故か知らないが…可笑しな奴が周りに沢山居た記憶がある。

要は『実害があるかどうか』だが、今のガイアは『うざい』だけで俺には実害はない。

やっている事は、女の敵で酷く思えるが…ガイアに妊娠させられると…

莫大な一時金。

その後の生活保障。

奴隷や娼婦からの解放。

奴隷からの解放は主人しだいで…下手したら一生こき使われて終わる。

娼婦だって身請けされなければ年季明けの頃にはもうかなりの歳だ。

しかも、奴隷の解放も娼婦の年季明けも…その後の保証は全くない。

そう考えたら、素人童貞のマグロガイアと、暫くやるだけで…安心した生活が一生続くなら、案外幸せなのかも知れない。

国の財政は…知らないけどな。

しかし…ガイアはなんで、先が読めないんだ。

貴族の令嬢を『もう要らない』と言ってしまったから…もう詰んだ。

魔王を倒した後は、令嬢のうちの誰かを正室にして、貴族として余生を暮らすのが普通だ。

そこには『サポート』も含まれる。

はっきり言ってしまえば『俺たちは馬鹿だ』普通の人間が学問をしたり、家業を継ぐ修行をしている間、ただひたすら戦う。

終わった後に冒険者になるなら兎も角、それ以外の生き方を選ぶなら誰かにサポートして貰わなくては生きていけない。

そのサポート役が妻だ。

特に勇者の場合は王配になったり、貴族、領主になるケースが多い。

俺達以上に妻によるサポートが必要だ。

エルフは確かに美しく綺麗だ…だが今でこそ人権はあるが『亜人』という人間も多い、その為、貴族や王族の妻には向かない。

貴族の令嬢の妻候補を捨てたガイアはこの先…出世の見込みもそうだが、人生で大きく困る気がする。

◆◆◆

「理人くん、これからどうするの?」

「四天王の一角、デスラを倒したのだから、次は『空の女王、フェザー』を狩に行くのか?」

「理人お兄ちゃん…次は私も戦うから」

「理人様…一緒に戦えない私がふがいないですわ」

「それだけど…ジブヤの領主がささやかなパーティを開いてくれる話がきている、拠点をジブヤに移して…暫く休もう」

「理人くん、大丈夫なの?」

「この間、バカンスを楽しんだばかりで不味く無いか?」

「私だって休みたいけど…理人お兄ちゃん、不味いよ」

「理人様が良いと言うなら文句はありませんわ」

普通なら少し休んで『フェザーを討伐に向かう』のが正しい。

だが俺はそれを遅らせたい。

恐らく、俺達4人掛かりでもフェザーに勝てない。

デスラ―ドでさえ、あの強さ…フェザーを怒らせたら皆殺しにされる。

今現在、俺たちは四天王を一人倒した事になっている。

足並みを揃えるなら…ガイアが一人四天王を倒すまで行動しない…そういう選択をしても問題ない筈だ。

「それじゃ、ジブヤに拠点を移して、暫くはゆっくりしようぜ」

「「「「うん」」」」

俺達は、暫くジブヤでゆっくりする事にした。

◆◆◆

『俺には仲間なんていらねーんだ、ただ抱ける女が居れば十分だ』

あれが…ガイアの本音なのか?

『仲間なんていらねー』か、それが本音だと言うなら…すげー腹が立つ。

まぁ、その位で友達を辞める必要は無いな。

第59話 単独勇者の絶望
俺達5人は要塞都市ジブヤに来ている。

俺は凄く心が痛い。

「英雄理人様、これ食べて下さい…凄く評判が良いんですよ…勿論無料で良いんで!」

ニコニコしながら肉屋の親父が大量の串焼きを押し付けてきた。

「この服、奥方様達に如何ですか? 勿論、感謝を込めてプレゼントします!」

今度は服屋だ。

本当に心が痛い…

俺はこの都市の人間を犠牲にしてデスラを討とうとして失敗。

結局は、ほぼ全員を死なせてしまった。

敵であったデスラが、まるで神の様な人物じゃなければ…この都市は廃墟になり、死体だらけだった筈だ。

「理人様…お母さんを助けてくれてありがとう…これあげる」

貧しい身なりの少女に飴を差し出された。

「ありがとう」

本当に心が痛い…もう忘れようと思っていたが、いざ来てみると…駄目だ。

「理人様…私大きくなったらお嫁さんになってあげるね!」

「大きくなっても忘れて無かったらね」

「うん、約束だよ」

そう言うと顔を真っ赤にして走っていってしまった。

「随分と理人はモテるな…まぁ都市を救った英雄だから当たり前か?」

「相手は子供だから、すぐ忘れるよ」

「理人くん、多分あの子は忘れないよ? 絶対にね」

小さな子供のいう事だからな…

なんでそんな事言うんだろう?

「理人お兄ちゃんは天然すぎるよ…ハァ~、あのね、あの子の話じゃ、理人お兄ちゃんは、あの子のお母さんが死に掛けているのを助けたんだよね?母親の命の恩人で『英雄』でカッコ良い、そんな男性忘れると思う…私なら忘れないよ」

「だけど子供だよ、きっと」

そこ迄言いかけた時に腕をロザリオに引っ張られた。

「忘れるわけないですわ…実際に私が理人様の妻になっているのが証拠ですわ」

そうか…

あの子の思いが、子供だった頃の俺と同じなら…

「俺、不味い事言った?」

「理人くん…あの子は8歳位、6年もすれば大人だよ…6年後『お兄ちゃん約束したからお嫁さんになりに来ました』って来たらどうするのかな?」

「多分、忘れるって」

「そうか? じゃぁ理人、想像して見てくれ…マリ姉じゃない、とびっきり美人な聖女様がいました、小さい頃の理人の母親と自分が死に掛けた状態で助けてくれたら…忘れるか?」

確かに忘れ無さそうだ。

「エルザ、マリ姉じゃないに悪意を感じますが…理人くん、そう思ううよ」

「理人お兄ちゃんにとってのロザリオと同じじゃない?」

「そうですわ」

割と本当に不味い事しちゃったのか?

「6年後考えるから良い…」

心が痛いな…俺のせいできっと彼女の母親は死んでいる。

母親を殺したのに、感謝され、愛される…

痛い。

◆◆◆

「今宵は、存分に楽しんでいってください」

そうジブヤの領主に言われ、ブッフェ形式で食事を振舞われたけど…

本来ならこれを食べる資格があるのは、寧ろデスラの方だ。

俺じゃない。

このままじゃ、神経がすり減ってしまう…

だから、忘れる事にした…

この都市を救ったのは俺…そう思う事にした。

「しかし…凄いですな『英雄』はあんな巨大なドラゴンゾンビを放り投げるとは」

「『光の翼』ですか…まるで勇者みたいでしたぞ」

この都市の要職者が集まってきていた。

俺がどんな活躍をしていたのか…俺自身が解らない。

俺は一体どんな風に活躍したんだー-っ。

◆◆◆

「2週間位、留守にする」

「ガイア様、戦いに行かれるのですね」

「ああっ勇者だからな…」

俺達はガブギの街から次の街ヨヨグに来ている。

此処から先は俺一人…この近くに四天王の一人バモンが居ると聞いたからだ。

次の女を手に入れるには金が要る。

その為には理人曰く実績が必要だという…彼奴が倒したデスラは四天王最弱だ…四天王の序列1位のバモン…此奴を倒せば文句はない筈だ。

奴隷商から買ったエルフのリリの話では、自分と一緒に『ハイエルフ』も居たらしい…此奴に存在について奴隷商に聞いてみたら…その存在を教えてくれた。

ただ、その金額は金貨8万枚 (約80億円)だった。

これを買うにはブラック小切手の限度額解除しか無理だ。

だから、俺は、その金を得るために1人になる必要があった。

だが、ヨヨグの街からでた途端に筋肉の塊のような男に出くわした。

「貴様が勇者ガイアだな?」

「俺がガイアだとしたら、何だ」

「我が名はゾルベック…バモン様の副官をしている…俺は強い男が好きだ、一騎討を望む」

なんだ…副官だと…倒しても実績にもならねーな。

「お前など眼中にない…」

「ふぅ、我がストレージには莫大な金銀財宝が入っている、もし俺に勝てばその財宝はお前の物だ…やろうぜ」

「そうか…ならば戦ってやろう…勇者ガイア参る…」

「ああっ来い!」

たかが副官俺なら楽勝だ、財宝という位だ、ハイエルフは無理でもエルフ位買える金は…えっ…

「どうした勇者、驚いたか!」

嘘だろう…此奴の動きが見えない…今のが当たっていたら死んでいたぞ…

『看破』

これでどうだ…これで此奴の動きは見切れたはずだ。

俺はすぐさま攻撃を仕掛ける…『瞬歩』

瞬歩とはただ速く移動するだけではなく、全ての動作が2倍速くなるスキルだ。

看破と瞬歩、これなら、どんな素早い奴でも捕らえ攻撃が出来る。

そのまま俺は斬り込む…これなら外さない。

「奥義…聖光剣―――――っ」

聖魔法と光魔法を聖剣にかけて斬る、俺の最強剣技だ。

もう、終わりだ、これで俺の勝ちだ。

「ほう、随分と速く動いたもんだ…だがまだ遅いな! そらよ!」

馬鹿な…手が掴まれただと…

そのまま、俺は岩に叩きつけられた…

「うわぁぁぁぁー―――っ ぐわっ、げふっ、あああー-っ」

一度だけじゃない。

2度3度とまるでおもちゃの様に叩きつけられた。

「うわぁぁぁぁー――っ止めろー-っ止めてくれー-っ」

「敵に情けを乞う、それが勇者か? お前達は魔族にとっての天敵だ…人間がゴブリンやオークを嫌悪するように、我々は勇者を嫌悪している…止める理由は無いな」

「助けて…助けてくれー―――っ」

だが、決して止めてはくれない…俺の体があちこち千切れていくのが解る…最初は激痛が走っていたが、今はただ冷たくなっていくだけだ…

血や肉がただ、ただ飛び散る。

最後にはとうとう…俺の掴まれていた腕が千切れた。

そして…ようやく、この戦い…いや蹂躙が終わった。

だが違った…街から騎士やヒーラー冒険者が助けにきた。

無駄だ…

「貴様ぁぁぁー――っ勇者様になにをするー-っ」

「ああっ勇者様、今回復を掛けます、そちらの方、この腕と足を押し付けて…必ず勝って下さいね『自己犠牲 パーフェクトヒール』 これで大丈夫、元どおりですぐふっ…頼み…ましたよ」

自分の命と引き換えに俺を助けたのか。

「さぁ一緒に戦いましょう…我らがフォローしますから」

「ほう…そこの虫けらを助けにきたか? だがそいつじゃ俺には勝てない」

嘘だろう…あれでもまだ手加減していたのか?

「うわぁぁぁー-勇者様、早く一緒に…」

「早く、我々が盾になる」

「私達が押さえつけますから、聖剣の一撃をー-っ」

そんな…そんな…

俺を助けに来た騎士が頭を潰され横たわった。

盾になって時間を稼いでくれた大楯を持った冒険者の首がなくなった。

嘘だ…嘘、これが…魔族の力。

四天王にすらなって無い魔族の力…

自己犠牲で俺を回復してくれたヒーラーの死体を俺に投げつけてきた。

「だとよ…勇者、もう一度やるか! 体は治ったようだな」

嫌だ、嫌だ…もう戦いたくない…俺は死にたくない。

「俺は…戦いたくない…もう」

「勇者様、何を言うんですか、我々は貴方と共なら死んでも構いません」

「私は死ぬまで、回復魔法を掛け続けます…戦いましょう」

「今度は、俺が盾になる、だから…」

無理なんだよ…そんな事しても此奴には勝てない。

「勇者…俺はこれでも魔族としては慈悲深い、人間は無条件にゴブリンやオークを殺すが、俺は敵で無いなら…殺しはしない『一寸の虫にも五分の魂』昔の転生者が言った言葉だ、もし降伏するなら聖剣を差し出せ…それでお前は見逃してやろう」

「勇者様駄目です!」

「それを差し出したら終わりです!…私たちは死んでも良いですから…戦って下さい!」

「勝てないならそれで良い…一矢報いてやりましょう」

俺は…死にたくない。

「聖剣は差し出す…助けてくれ…」

俺は聖剣をゾルベックに差し出した。

ゾルベックが俺の聖剣を受け取ると聖剣は光を失い黒く変わった。

そして粉々になった。

「約束だ…見逃してやる、虫けらに興味はない、俺は立ち去るとしよう…飛んだ無駄足だったな」

ゾルベックはそのまま立ち去った。

「「「「「うわぁぁぁぁ聖剣がぁぁぁぁぁー-勇者様ぁぁぁぁうわぁぁぁぁぁぁぁー――――――っ」」」」」

俺は絶望の中、立ち尽くすしかなかった。

※ 恐らく、あと少しで完結予定です。こちらを終わらせたらもう一つのお話を更新し始めます。
 

第60話 明暗
俺は部屋に戻り引き篭もった。

魔族が怖い…だがそれ以上に街に出るのが怖い。

通信水晶がさっきから光りっぱなしだ…

理人に相談しようと思ったが、流石の彼奴でも無理だ。

「ガイア様、でないで良いんですか…」

「ああっ…」

仕方なく俺はでる事にした。

「ガイア、要件はわかっていますね」

解っている。

教皇ロマーニにローアン大司教が水晶に映っていた。

俺は聖剣を差し出し、魔族に敗れた。

しかも、最悪な状態でだ…

「解っております…裁きをお受けします」

俺にはもう受け入れるその選択しかない。

「ガイア、貴方が選べる未来は二つです『罪人勇者』となり、自分の人生を魔物の討伐に費やすか、何もかもを捨てて『只の人』になるかです…市民権の無い平民になる事です…どちらにしますか?」

※都市部で暮らす平民は大型の都市で暮らす権利を持つ、貴族より下だが平民の中では優位、これをこの世界では市民権という。

俺はもう戦えない…

「平民に戻ります」

「それではガイア、もう私達が貴方に会うことは無いでしょう…今迄ご苦労様でした、これより勇者として全てをはく奪します、冒険者のランクもFランクまで下げてのスタートです」

「教皇、それは…」

「はっ? お前はもう只の平民ですよ? 様をつけなさい…その前にちゃんと教会づてに面会の申し入れをしなさい…」

そう言うと通信水晶は切れた。

◆◆◆
暫くすると、教会直轄の聖騎士が此処になだれ込んできた。

「勇者…いや、ガイアお前から全てを回収させて頂く」

そう言うと、装備にブラック小切手、通信水晶に僅かなお金、ストレージに装備を回収された…そして…

「待て、その女は俺の奴隷だ」

「ハァ~だから? 彼女達を購入するお金は国から出ている…婚姻でもしていれば何だかの権利はあるが、無かろう回収だ」

「お前達」

「「「「「…」」」」」

誰も何も言わないのか…

「解った」

結局俺は…着ている物だけで無一文でホテルを追い出された。

◆◆◆

教皇からの通信水晶が光っている。

嫌な予感がする。

「理人殿、実は困った事になった」

教皇とローアン大司教がガイアに起こった事を話し始めた。

4人も俺の横で話を聞いている。

「そこまで落ちたのですか?」

「やはりクズだったな」

「ハァ~何をやっているのかな」

「評判通りでしたわ」

だが、俺はこれで良いと思っている。

四天王最弱があれなのだ…絶対に魔王には勝てない。

『運が良かった』

俺にとって妻たちは『俺の命より大事な存在』

だから、彼女達を守るためにガイアを犠牲にする選択をした。

四天王と戦い死ぬか戦闘不能になれば、そこでこの戦いは終わる。

流石に勇者抜きで戦えとは言わないだろう。

『死なないでくれてありがとう』

ガイアにはそういう気持ちがある。

ガイアは悪友だが俺の中で、妻たちが『命より大事な人』であるなら『命の次に大事な人間』位の価値はある。

死んで欲しいとは思っていない。

気の置けない親友だ。
※ 間違った使い方ですが70年代はこういう使い方をしたので敢えて使っています。

「それで今回はどういったご用件でしょうか?」

「ああっ、理人殿達には二つの道がある、このままの待遇で『魔王討伐』を目指して、今の待遇を守るか? それとも只の平民に戻るかだ、好きな方を選んで良いぞ…まぁ敢えて後者を選ぶ者は居まいが…」

教皇って馬鹿なのか?

利口だと思っていたが、此奴もアホの子なのか?

「皆に聞きたいが…これ俺が決めて良いか?」

「このパーティのリーダーは理人くんですお任せします」

「ああっ、夫である理人に任せる」

「理人お兄ちゃんに任せるよ!」

「解った」

さぁ、此処からが俺のターンだ。

この日をどれだけ待ちわびたか…

「どちらも嫌ですね」

「理人殿、何を言われるのだ…」

「はっきり言わせて貰えば『俺は誰からも何も貰って無い』だから只の平民になる必要は無い…市民権は『勇者、魔王絡み』とは関係なく冒険者として活躍して得たものだ、ランクもSSは別だがSまでは自力で得た…返せと言うならSSランクだけ返せば良いだけだ」

「だが、妻は…」

「これはガイアが勇者だった時に正式に下賜された…王が退陣しても下賜した物が無効になる…そんな話は聞いたことが無い、そこから考えたらSSランク、ドラゴンスレイヤーの称号、英雄の称号、聖剣デュラン、ロザリオも返す必要は無いな…貰った別荘も同じだと思いますが」

「確かにそうかも知れませんが…私は教皇ですよ? そんな物幾らでも無効に出来ます」

「四天王の一人デスラを倒した功績が無効になるのですか?」

「そうだ、理人殿、教皇様に逆らうのか? 今なら」

「そうか、倒した事無効にされちゃうのか…なら仕方が無い、俺…魔王軍に行くわ…丁度四天王の席も一つ空いているし、魔族は力が全てだから、此処以上の待遇を約束してくれそうだ…うん、そうしよう。功績が無効になるなら『倒した事も無効』にしなくちゃな…いっそうの事教会からエリクサールを奪ってデスラ蘇らしちゃおうか?」

「理人、貴方という人は、許せません、破門にします」

これははったりだ…だが…使える筈だ。

「破門にされたなら仕方が無い…どこかの宗教国家の教皇殺して国を奪うしかないかな…この世界、破門にされたら生きづらいからな…うん、そうしよう」

「理人…貴方いった、何を言っているんですか?」

「ああっでも教皇とかメンドクサイな…そうだローアン大司教、俺がさぁ、横の老害殺してあげるから『教皇』やらない? 対価は、俺を許す、それだけで良いぞ、安いだろう」

「それは本気ですかな…」

「ローアン…いったい何を」

「教皇…忘れてないか? 俺は一つの都市5万を滅ぼせる様な敵を単騎で倒せるんだ…聖教国に押し入って逆らう者を皆殺しにしながら、貴方を殺して玉座に座る事なんて朝飯前だ…それでどうする?」

「それは…」

ローアン大司教が短剣を抜いている…まさか…

「決断が遅いですな…これも国を守る為です…死んで貰います」

「待ちなさい、ローアン…ローアン、何故…」

ローアン大司教だけじゃない…他にも沢山の大司教がナイフを持って教皇に迫っていた。

「教皇様…お忘れですか…思い出して下さい…貴方が言った事でしょう、ガイアへの怒りで忘れたのですか…」

「ああっ…そうです、理人様ならガイアの代わりに魔王を倒してくれる…そう思っていたので少し可笑しくなりました…ローアンよくぞ私のめを覚まして下さいました、礼を言いますよ」

「解って下さればよいのです…理人様、教皇様はガイア様の事でお疲れだったのです…この度の無礼お許し下さい」

何がどうしたんだ…しかも『様』をつけ始めた。

「俺も言いすぎました、この通り謝ります」

「構いません、私の方こそ『破門』など馬鹿な事を申し訳ありませんでした…それで理人様は、今後、どの様に暮らしたいのでしょうか?」

「俺たちは静かに暮らせたらと思っています、魔王討伐に関わらず冒険者として生活するか、あるいは畑でも耕しながら仲良く家族で暮らせたら、それで良いんです」

「随分、慎ましい生活ですね」

「俺は親友や幼馴染が勇者や三職になっていたから付き合っただけで、そんな事が無かったら…きっと田舎で畑を耕して暮らしていました…その生活がしたいだけです、勇者が戦わず魔王に止めを刺せるというガイアの持つ聖剣が無くなった今…元に近い生活をしたいそれだけです」

「そうですか…それなら差し上げた別荘の周りの土地も差し上げますから、そこで畑でも作って暮らしてみては如何ですか? ガルイサムは高原ですし高級な野菜の産地でもあります、小さいですが街もあり冒険者ギルドもあります」

「そうですね…ですが良いんですか? 魔王討伐から離れる俺達に土地迄くれるなんて」

「構いませんよ…今迄下賜した物は理人様の言う通りです、返す必要はありません…ただ、聖剣が無くなってしまったので、聖剣デュラン、三職に貸し与えた聖なる武器だけは、将来次の勇者様や聖女様が現れた時に返して頂ければ結構です」

まぁ、あの武器は魔王討伐で必要だから仕方ないな…だが、あんなおもちゃじゃデスラでも倒せない…絶対に。

「それは約束しましょう」

「それでは、今後はゆっくり過ごし下さい『貴方が再び旅立つ事があれば聖教国、教会は援助を惜しみません』それではその時まで…」

「はぁ…」

何を言っているのか解らないが丸く収まったならそれで良いな。

◆◆◆

ガルイサムは魔国から遠く離れている…戦争になっても巻き込まれる事は少ないだろう…

もう、俺は冒険者の範囲でしか戦うことは無い。

「理人くん、結構良さそうな土地だね」

「耕しがいがあるな」

「結構広いね、土いじりは久しぶりだね、理人お兄ちゃん」

「そうだな…暫くはまたバカンスを楽しんで…それからは趣味の範囲で冒険者と農業でもしよう」

「理人くん、いつまでバカンスを楽しむの」

「どの位、休むんだ」

「理人お兄ちゃん、1週間位は休むの?」

「そうですわね…私も1週間位は休みたいですわ」

お金には困らない…まだ前世のお金に換算して億単位のお金は有る。

皆、贅沢しないから、あまり減らないし…ワイバーンを狩れば金貨500枚(約5千万)稼げるから、このメンバーで行って20も狩ればもう生涯遊んで暮らせる。

「そうだね、1か月位休んでからで充分だよ…それより、ほらな」

「理人くん…あっそうだよね…うんそうだ」

「そうだよな…あははははっ魔王と戦わないという事はそういう事だよな」

「理人お兄ちゃん…そうだよね」

「私はとばっちりですわ、最初から問題ないのに、今まで本当に待たされましたわ」

もう彼女たちは三職じゃない…

その日の夜は…本当の意味で燃えた….

此処には俺の欲しかった者全部がある…

うん、幸せだ

                  【本編 完】

※  これで本編は終わります。
 ですが、解りずらい所と、ガイアやこの世界はどうなるのか?
  その辺りを含めまして閑話やエピローグ等あと数話続きます。
  その中で『本当に理人の本心』も書く予定です、今しばらくお付き合い下さい。

第61話 【閑話】ガイアと
俺は冒険者ギルドにガイアの捜索を頼んだ。

すると直ぐに連絡が入ってヨヨグの街に居る事が解った。

助けに向かいたい…そう相談した。

「理人くん、まだガイアの面倒みるんだ…もう絶縁で良いんじゃない?」

「理人…もう見捨てるべきだぞ」

「理人お兄ちゃんが優しいのは解るよ…だけどもう良いんじゃないかな?」

「私は話でしか聞いておりませんが、本当にゴミみたいな男になりましたわ…昔は可愛らしかったですのに」

「確かにそうだけど…親友だと思ってはいるんだ、最後にもう一度だけ助けてやろうと思っている」

「理人くんならそう言うよね」

「まぁ、お人よしな理人ならそう言うか」

「理人お兄ちゃんはやっぱり、見捨てられないよね」

「友情に熱いのも理人様の素晴らしい所ですわ」

妻たちに許可を得て俺はガイアに会いにヨヨグに向かった。

ヨヨグの街を探す事半日、ガイアは直ぐに見つかった。

こんな短時間で変わり果てていた。

あのお洒落で自信で溢れていた面影は何処にも無い。

只の物乞いにしか見えない。

幾ら勇者の地位をはく奪されてもジョブが無くなったわけじゃ無いし、能力が無くなったわけじゃ無い。

「ガイア、どうした?」

俺は声を掛けた。

「理人…俺を見るな、見ないでくれー――っ」

泣き喚くガイアを押さえつけ話を聞いた。

「俺が金が無くなった途端にこれだよ…あははは、飯すら此処暫く食ってない」

「あのよ…幾ら勇者待遇が無いとはいえ、Sランク冒険者が生活に困るわけないだろうが」

「Fランクに落とされた」

「何故落とされたか解らないが…剣も無いようだが、お前なら、オーガ位なら拳で倒せるだろうが」

「それがよ…常時依頼も含んで、仕事が受けさせて貰えないんだ」

何処かから圧力が掛かっているな。

恐らくは聖教国、もしくは教皇か…

「ガイア、ギルドに行くぞ!」

「おい、理人、何でだよおい…」

「良いから来い、お前は騙されている」

「だから、なんだ」

俺は聞いてないぞ…ガイアのランクが下がっているなんてな。

確かに勇者パーティではあるが、此奴はワイバーン迄なら恐らく俺と同じで狩れる。

オーガの群れ位なら狩った事があり、そういう実績でランクは上がった。

そこに国の関与はない。

しいて言うならSランクは実力者の承認が必要だが…それを考えてもAランクまでしか引き下げは出来ない筈だ。

俺はヨヨグの冒険者ギルドに行き受付にいった。

「おい、話がある…今すぐギルマスを呼べ!」

「理人様、はい只今…」

こういう時SSランクは便利だ。

「理人様、これはどういう事ですか? 大声でまるで喧嘩腰じゃないですか?」

「おい、何でガイアがFランクに落とされているんだ! しかも常時依頼も受けられないとは可笑しいだろうが!」

「そ、それは聖剣を魔族に差し出す様な奴を信頼できないし、教皇様からも…」

馬鹿な語っちまったな。

「あのよ…ギルドは国をまたがる特別機関で王にも従わない、そう言う話だろう? あんた何言った? 教皇様も…教皇様に忖度したならギルドの規約違反じゃないのか?」

「だが…教皇様から言われたら」

「そうか…それなら教皇様に連絡してみるわ…」

「なっ」

俺は通信水晶で教皇様に連絡をした。

わざと周りに見えるように…

「どうかされましたか理人殿!」

「ローアン大司教…実は今ヨヨグの冒険者ギルドに居るのですが、此処のギルマスが教皇様が冒険者ギルドに圧力を掛け、ガイアのランクを下げたと言うんですが…本当ですか?」

教会はクリーンなイメージが汚れるのを嫌う。

だから、返事も想像はつく。

「何をおっしゃっているのですか? そんな事教皇様はしませんよ、私が保証します」

「ありがとうございます…お手数を掛けました」

「だ…そうですよ、ギルマス、今教皇様の名前を使って語りしちゃいましたよね? 流石に教皇様の名前を語ったら『死罪』ですよ! 私は英雄ですから斬る権利があります…殺すよ」

「待て、待て…待ってくれ」

「なぁ、一体誰がガイアをFランクに落とせと言ったんだ?」

「だから、それは教皇様が..あああっ」

「今連絡しただろう? ローアン大司教様が、それは無いと言っていただろう? 仕方ないヨヨグのギルマスがローアン大司教様に嘘をついていると言った…教皇様にも嘘ついているそう言ったと今すぐ連絡してやる」

「待って下さい…待って」

「待ってやるから、今直ぐガイアをSランクに戻せ、戻せなければ報復&デストロイだ」

「理人…」

今回の件は恐らく悪いのは教皇たちだ、間違いなく怒りからFランクに落す指示を出した。

だが、これを俺には言いたくないから『言って無い』そう言った。

これで、誰からの指示も無いのにガイアをFランクに落とした事になる。

魔王討伐は『依頼じゃない』ならば、『依頼の失敗』が無いのに降格させた事になる。

さぁどうする…

「報復…デストロイ?」

「『冒険者の命は自己責任』これは冒険者同士の争いにギルドは介入しないんだろう…それに多少やりすぎても犯罪者にならない…腹いせにヨヨグの冒険者を皆殺しにしても文句無いよな…ルールだ」

「私一人では決められないんです…すぐに連絡をしますから待っていて下さい」

「そうか…ガイア待とうか?」

「ああっ」

俺達二人は、サロンに通され待つことになった。

お腹がすいているのかガツガツとガイアはお菓子を食っていた。

待つこと20分…ギルマスが此処に来た。

「お待たせしてすみません…これを」

ギルマスが冒険者証を差し出してきた。

ちゃんとSランクって書いてある。

「それじゃ非を認めるって事で良いんだな?」

「はいギルド側のミスです、申し訳ございませんでした」

「今、このギルドの直轄の武器屋で最高の武器は何?」

「それならミスリルの剣が一振りあります…金貨200枚ですね、買われますか?」

「だったら、それを賠償金として貰えますか?」

「そんな、何故ですか?」

「ハァ~、良いですか? ガイアがランクを落とされたのは『冒険者ギルド』のミスだったんでしょう?」

「はい、だから今、戻しました」

「だったら『その罪を教皇様に着せた貴方は死罪』ですよね? 更に不当にガイアに常時依頼すら受けさせなかったのはヨヨグのギルドのミス…貴方の命とこのギルドの不正の賠償金がミスリルの剣で済むなら安いでしょう?」

「はぁ~解りました…ミスリルの剣を渡します」

「ガイア良かったな、これでSランクに戻るしミスリルの剣も手に入った」

「理人、済まない」

「それじゃ、武器屋に取りに行くから、話通して置いてくれ」

「はい」

俺達は冒険者ギルドを後にした。

◆◆◆

ミスリルの剣を無事貰い…俺はガイアに革袋を放り投げた。

「これはなんだ?」

「金貨10枚入っている…それで再起頑張れよ」

「くれるのか?」

「まぁ…親友だからな、だが今のお前は最低だぞ…女にあそこ迄したんだ、俺の嫁は全員お前を嫌っている」

「そうだな…」

「お前は無意識だろうが、『俺には仲間なんていらねーんだ、ただ抱ける女が居れば十分だ』と言ったんだぜ」

「記憶にある」

「なぁガイア、俺はお前の仲間だし親友だ、要らないのか?」

「要らない訳ないだろうが」

「そうか、暫く俺はお前と距離を置く、嫁が嫌っているからな」

「解ったよ…女なら誰でも俺を嫌うだろうな…最低な事をしていたと今なら解る」

「それなら、此処からやり直せ…良い剣に少しのお金、それがあればお前は大丈夫だ『超人ガイア』なんだからな」

「ああっ、そうだ昔はそんな字で呼ばれていたな…そうだな慣らしでオーガでも狩って、その次はワイバーンでも狩る」

「そうそう、そうすればすぐに奴隷も買えるな」

「それは、暫くは良い…ソロで頑張ってみるさ」

「そうか…今迄何回もお前を助けた、今回もな…俺が困ったら今度はお前が助けてくれ」

「ああっ約束する、今度は俺がお前を助けてやる」

「それとな…」

「まだ、あるのか?」

「次会った時はエールを奢れよ、酒飲もうぜ」

「ああっ、そうしよう」

俺はガイアと別れた。

これ以上は『暫くは手を貸さない』

彼奴には勇者のジョブがある…冒険者なら一流で活躍できるはずだ。

頑張れよ。

第62話 【閑話】 宗教者たち
「ローアン、先程は助かりましたよ」

「正気に戻って頂いて良かったです…よりによって『女神の騎士様』にあの様な事を言うなんて」

「どうかしていたのです…余りにも勇者がお粗末だったので、頭が混乱していました」

「そうですよ…あと少しで私達が教皇様を殺さなければならなかった」

「殺して頂いても構いませんでした…教皇たるこの私が『真の女神の協力者』を破門なんてとんでもない事を言い出したのですから」

「他の10大司教も同じです、誰も教皇様が背信者などとは思っていません…ですが…」

「そうですね『女神の騎士様』には何かお考えがあるのかも知れませんね」

「はい…あと、ご報告ですが、女神の騎士様から連絡がありまして、ガイアのFランク降格は教皇様の指示かというお話がありました」

「そんな…それでなんと答えたのですか?」

「雰囲気から、ガイアに肩入れしているのが解りましたので『そんな事教皇様はしませんよ、私が保証します』と答えておきました」

「助かりましたよ、ローアン」

「別に構いません…私だって『女神の騎士様』に嫌われたくありません、まぁその為にギルドに犠牲になって貰いました」

「それは仕方が無い事ですね…女神の騎士様が肩入れなさるなら仕方がありませんね…ガイアの罪も水に流しましょう…普通の信徒扱いで留める事にします」

「聖剣を差し出すなんて本当に腹立たしいですが…致し方ありませんね…それで女神の騎士様へ与える土地ですが」

「それならもう決めております、ガルイサムの空いている土地の5割を未来永劫税金が掛からない形で差し上げましょう」

「ごごご5割ですか…それは土地というより最早領地ではないでしょうか?」

「ローアン…あの方は女神の騎士…本物の救世主なのですよ、誰もが下の存在、私より偉い存在ですから…その位、当たり前です」

「そうですが…静かに暮らしたいと言っていたと思いますが」

「そうですね、ですから…私、作る事にしました、女神の使徒たる理人様の為の村をです」

「あのお聞きしても宜しいでしょうか?」

「簡単な事です、理人様が好きになった女性は、幼馴染や過去に憧れた人物です…思い出を大切にする方なのが良くわかります、ならば住むロケーションも同じなのではないかと思いました」

「それで…」

「はい、ですから理人様の故郷の村人で仲が良かった村人や奥方様のご家族を全員移民させ…同じ環境を整えたらどうかと、そして私と10大司教の数人がガルイサムの教会に引っ越せば…色々と便宜をはかれます」

「この中央教会は誰に任せるのですか?」

「それはローアンに任せます…それに伴い、そうですね貴方に『教皇代理』の称号を上げますよ、おめでとうローアン」

「嫌です」

「いま、何と?」

「嫌ですと言いました…私もガルイサムに連れて行って下さい」

「なぜです、10大司教から頭一つ抜け出せるのですよ」

「私だって神職者です、地位よりも『女神の騎士』に仕えたい…当たり前じゃないですか、ですがそんな事したら、嫌われますよ…」

「そんな事はありません」

「理人様は、ささやかな幸せを好む方です…絶対嫌われますよ」

「それでは、私にどうしろと!」

「理人様は、静かに暮らしたいのです…約束の土地…そうですねガルイサムの2割でも与えて、後は何か相談が無い限り放って置いてあげましょう…それが良いと思いますよ」

「解りました、ローアン、貴方の言うことは最です、嫌われては致し方ありませんから、それが良いのかも知れませんね」

「はい…我々は近くの教会にただ移り、見守れば良いと思います」

「それが良いかも知れませんね」

◆◆◆

「なぁ、あれ諫めないで良いのか?」

「教皇様と大司教様の話に割ってなんて入れないだろう」

「ああっ、どうして上は常識が無いのでしょうか、ガルイサムの2割といえば、村幾つぶんか解っているのでしょうか? 楽に大きな村10個分を超えますよ」

「そんな物、貴族でもない限り貰っても困るだけですよね」

「司教様、伝えるべきでは」

「大声で話していますが…これはシークレットです…話は聞かなかった事にして此処を離れましょう…良いですね」

「「「「「はい」」」」」

ローアンですら…実は狂っていた。

その後、教皇を含む聖教国の権力者の半分がガルイサムに移り住んだが…その人選は熾烈を極めた。

第63話 【閑話】 魔族の事情
「デスラ―ドよ、お前急に魔王城に帰ってきてどうしたんだ?」

「なんだバモンか? それが…面白い奴にあったから、我の討伐証明に必要な部位をくれてやった、あと加護もな」

「随分珍しい事もある物だな、気難しいお前が体の一部だけでなく加護までやるとは…俺の知っている限りお主が加護を与えた人間は過去に二人しか居なかった筈だ」

「まぁな、だが…あの人間を見た瞬間、大昔戦ったリヒトという勇者を思い出してしまった、つい懐かしくなって、何かしてやりたい…そう思ってしまった」

「あの、泣き虫勇者か…腕を斬り落とされ、片足になっても俺に向かってきた…あのガキか」

「だが、お主も認めてしまっただろう? あの諦めない目…本物の勇者じゃ」

「まぁな、俺よりもフェザーが気に入ってしまったじゃないか?「この子を殺すなら私が相手だー-っ」とかいきなり裏切って攻撃しやがって…殺されるかと思ったわ…しかもご丁寧にパーフェクトヒールで完全治療した挙句、記憶迄消して人間界に手を繋いで出て行きやがった、帰ってきたのは70年後、ババアに擬態迄していていて最初フェザーだと解らなかったわ」

「あれは堕天使、元天使だからその部分に触れたのだろう、だがガキ呼ばわりするお主もしっかりと加護は与えたじゃないか?」

「ああっ…あの諦めない目、俺は凄く気に入ったからな、フェザーが連れて行かなければ、俺が部下にしたい位だった」

「何の話?」

「いや、デスラ―ドが、リヒトそっくりな奴を見かけてな…加護を与えたそうだ」

「嘘…ねぇ、その子本当にリヒトに似ていたの? そんなに似ていた? 加護を与えたって事は、性格も近いのかしら? 今から」

「待て、フェザー、せめて300年は手出し無用じゃ、手を出すならその後じゃバモンもじゃ…我が加護を与えたのじゃもう理人は不老不死じゃ、もしお前達が関わるなら300年は手出し無用で願いたい…我は300年眠る約束をした、お前達も関わらないで貰いたい」

「そうか、それなら俺は人間に擬態して、どういう奴か見てこよう」

「私もそうしようかな? リヒトにそっくりなんだぁ、しかも今度は不老不死…うんうん、楽しそう」

「いい加減にしろ…バモン、お前が強さを求める余り、四天王筆頭に魔王を殺してしまうから…儂が困っているんじゃないか…」

「だが、デスラ―ドお前が、二人の能力をその後取り込んだんじゃないか」

「したくてしたんじゃないわい…そうしないと世界の秩序が壊れるからしただけじゃ…魔王は城から出ないから幾らでもごまかせるが…おかげで2役儂がやる羽目になったわい」

「瞬間移動が出来るから良いじゃねーか?」

「なんだと!」

「ああっ解った300年待てば良いんだな? 解ったから睨むなよ」

「ふん」

「それじゃ、私は関係ないわね…行ってきまー-す」

「待つのじゃ…お前だって同じじゃ、天使の癖に女神がムカつくとか言って手傷負わせて堕天した身じゃないか?」

「だから、こうして四天王になっているんじゃない」

「あのな…魔王様も居ない、四天王筆頭も居ない、儂がどれだけ困っているか解るか? 理人は将来、四天王に加えたくて加護をやったのじゃ、暫く放って置いてくれ」

「そうなんだ…解った、私見ているだけにするよ…じゃあー-っ」

「待つのじゃ」

「なぁデスラ―ド、俺も行った方が良いんじゃないか? 理人って奴がリヒトに似ているなら…暴走するぞ」

「頼むのじゃ」

何でじゃ…なんで我ばかりが苦労せねばならぬのだ。

不老不死とはいえ…疲れたわ。

第64話 エピローグ
全てが終わった。

俺達5人はガルイサムに帰ってきて数日…凄く退廃的な生活を送っていた。

今迄、最後まで出来なかったんだから仕方が無いよな…

もう戦う必要も無いし、お金にも困らない

暫く、遊んで後は…仕事をすれば良い

俺にとって大切な者…それはマリア、エルザ、リタ、ロザリオの妻4人に悪友のガイアだけだ。

後はどうでも良い…妻や悪友の家族が居るから故郷は気になるがそれだけだ。

それなのに、そんな大切な存在にこの世界は絶望的な未来を望んだ。

何度も言うが『他の奴らはどうでも良い』

顔も知らぬ他人の命より、自分の仲間の命が大切なのは当たり前だろう。

俺達、村民は莫大な税金を課されている。

俺の前世で言う『納税』の義務を果たしている。

ならば『守って貰う権利もある』

ならば、俺の悪友や幼馴染にやらせるな…税金は払っている。

ならば、自衛隊の様にまずは戦闘職の騎士が戦えよ…そう言いたい。

彼奴らは前世持ちの俺と違い…まだガキだ。

そんな奴らを騙して戦わせるなよ…俺にとってこの世界がクズだ。

前の世界のお爺ちゃんや、ひぃ爺ちゃんは言っていた。

『進め1億火の玉だ』と…

もし、本当に魔王が人類の敵なら、この世界全員が戦えば良い。

パン屋も、娼婦も八百屋も、そんな商売、暫く辞めて上は王様、下はスラムの人間まで全員で戦えば、案外早期に決着はつく。

恐らくはそれで勝つのは人類…と思っていた。

まぁ、デスラと戦ってそれは間違いだったと気が付いたが…

だがな…それでもこの世界は可笑しいと思ったんだ。

何で悪友や幼馴染が、命がけの戦いをしている時に、戦闘職の騎士が酒飲んで居られる訳?

商人が街の中で平和に暮らして笑っていられる訳?

『もっと悲壮感を出せよ』

俺の前の世界の戦争では『赤紙』で健康な男は招集されて戦地に送られたらしい。

全ての国で同じように健康な男をかき集め…総力戦を挑むのが正しい。

それをしないで、誰かに戦闘を世界の平和を押し付けてのほほーんと暮らす…この世界の人間が許せなかった。

だが、もう悪友も、幼馴染もその戦いの輪から外れた。

これから先は…騎士や聖騎士が国が矢面に立って戦っていく…

俺から見たら『正常な状態』になる。

死の運命から幼馴染も悪友も外れた。

「どうしたのかな理人くん?」

「なぁ、また考え事か?」

「最近、理人お兄ちゃん難しい顔ばかりだね」

「心配事なら相談して欲しいですわ」

「いや、何でもない」

もう考えるのは辞めよう…後は面白可笑しく生きていくだけだ。

                       FIN

※終わりと言いながら、もう一話プラスします。

その後はあとがきで、本当に終わります。

第65話 エピローグ2 蛇足
何だ!これ…

皆が寝ているからと一人散歩していたら…

近くの教会が綺麗になっている。

ただ見ていたら…なんで、ロマーニ教皇が居るんだ…

嘘だろう、それだけじゃないローアン大司教まで…

目が合ってしまった。

「理人様、こちらへ引っ越して参りました」

「これからは隣人みたいな者です、宜しくお願いしますね、困った事がありましたら、私か教皇様まで是非ご相談下さい」

なんで教皇たちが此処に来るんだ。

まさか、まだ、死の運命から逃れていないのか?

「宜しくお願いします」

それを言うのが俺の精一杯だった。

◆◆◆

『私は守護天使…ホワイトフェザー、私が加護を与え守る人は何処ですか』

「教皇様…天使様です、天使様が降臨なさっています」

「ああっ、教皇に生まれて今まで天界の住民が降臨する等みたことがありません」

ああっ、あれはリヒトだ…

リヒト、その者にしか見えないわ…

あの子は私とリヒトの子…それともリヒトの転生者なの…

だけど、間違いなくリヒトが混じっている。

『リヒト、会いたかったわ…どれ程、私が貴方を待ちわびたか解らないわ…貴方に私が加護を与えます、今は去りますが…いつかまた、貴方に会いに参ります…』

人間のメスの匂いがしますね。

どうせたかが人間、80年もすれば死ぬでしょう。

殺してしまいたいですが、それで嫌われたら意味がありません。

80年や100年等、永遠に生きる私にとっては一瞬です。

そこ迄待てば『このリヒト』は私の者。

ええっもう、寿命にも運命にも奪わせないわ。

◆◆◆

「やはり、理人様は『女神の騎士』だったんだ」

「ローアン、さっき天使様が直に守り、ジョブでなく加護を与える人間なんて歴史にも居ませんよ…あああああっ」

止めろ…止めてくれー-っ

何だこれは…教皇が大司教が俺に跪いている。

なんなんだあの天使は…

まだ、逃げられないのか…

※ これはちょっとしたジョークです。

前の話で終わりにするも、この蛇足で終わりにするも、読んで頂いた貴方に任せます。

あとがき
理人が『ざまぁ』したかった相手。

それは勇者ガイアでもなく、幼馴染でもなく『この世界』でした。

まぁ、ガイアにも少しは腹を立てていましたが…

ファンタジーに突っ込んでも仕方ないですが、少し前に歴史の資料館を見た時に『赤紙』が展示されていまして、当時の戦争の資料があり…国全部で戦っていたのが解りました。

そして、1970年代から1980年代。

今と違い…とんでもない時代でした…真面目に理人みたいな考えじゃ無いとやってられない時代でした。

湘南や原宿でナンパが流行っていましたから…普通に未成年で20~30人の男性経験者が居たり…女子大生はワンレンボディコンのパンツ見える姿でディスコで遊んでいて男遊びをする女性も多い。
凄い時代でした…
だって本当に女子高生が『処女ってきもいよね? 股に蜘蛛の巣はっているんじゃない?』と街中で会話。

こういう時代だったので、綺麗な彼女はやっていて当たり前。

同じ大学の派手な子を彼女にしたら、自分の友達5人と過去に肉体関係があった、こんな話はざらでした。

そこで、寝取りに強くめげない主人公、理人の設定に 70年代から80年代からの転生者という設定を入れました。

40代以上の人なら…うん、そんな時代だと解って貰えそうですが、若い方には違和感があると思いますが…

『そんな時代があったんだ』そう思って貰えると助かります。

最後までお付き合い頂きありがとうございました。