善良で優しくて気弱な僕.、前世は卑怯で情け容赦無い、歪んだ人物だった…変わる事から始まる楽しい復讐人生

崩れさる僕の日常
この世界は僕にとっては辛い事しかない。

それは、この国、いやこの世界が実力主義だからだ。

ただの実力主義なら別に構わない…努力すれば逆転できる、そんな世界なら別に仕方ないと思う。

だけど、ラグナトランは違う、産まれて直ぐに才能が解ってしまう。

それはステータスという形で現れ、そのステータスの差は絶対にひっくり返らない。

例えば魔法の才能が10ある人間と100ある人間が居たとしよう..その二人が努力して能力が上がるとしたら10の人間が努力して12になるなら、100の人間が同じ努力をすれば120になる。

能力のある者は簡単な努力で能力が向上するが、無い物はどんなに努力しても勝てない。

生まれつき全てが決まってしまう、それがこの国ラグナトランに産まれた人間の定めだ。

僕の名前はセロ…一応、ラドルフ伯爵家の長男に生まれた。

5歳まで僕はセロリックという名前だった、セロリック=ラドルフそれが正式な名前だった。

そして父も母も凄く優しく接してくれていた。

良く、貴族どうしの茶会にも連れて行って貰ったし、同じ位の友達もいた。

ちゃんと、僕付きのメイドも居た。

それが変わったのは僕が5歳の時だ。

この国の法律で5歳まではステータスを見てはいけないそう言う法律がある。

それは、自分の子供のステータスが低いとすぐに教会に捨てる親が居るからだ。

それは貴族であっても同じ。

「いよいよ今日はお前のステータスが見れる日だな」

「多分、セロリックなら沢山の才能に恵まれると思うわ」

「そりゃ、そうだろう…大魔法使いであるお前と勇者である俺の子だ..最低でも、魔法か剣術どちらかの才能に恵まれるさ」

「ふふふ..そうね、私はこの子に魔法を教えるのが楽しみだわ」

「俺は剣術と身体強化を教えるのが楽しみだ」

「両方の才能に恵まれたなら…魔法剣士に馴れるかも知れないな」

「私はそこまで高望みはしないわ..何か一つ優れた所があればそれで良いわよ」

「そうか..そうだよな」

《僕のお父様もお母さまも凄いんだ..きっと僕も..》

僕はラドルフの跡取りなんだ..偉大なる勇者のアベルと大魔法使いスジャーナの子だ、絶対に良いステータスに決まっている。

「お父様、お母さま..両方の才能を持っていたら…僕は勇者と魔法使いどっちを目指せば良いのかな?」

どっちから教われば良いのかな? 本当に疑問に思った。

「そりゃ、勇者に決まっているだろう? 俺の様になりたく無いのかセロリックは?」

「いいえ、私の様に魔法使いになりたいのよね…汗くさく剣なんて振るわないで、杖の一振りで相手を倒す方がカッコ良いわよ?」

「勇者だ」

「いいえ魔法使いよ」

「ご当主様も奥方様もセロリックお坊ちゃんが困ってますよ!」

「あらいやだごめんなさい」

「どっちでも良いぞセロリック!」

執事たちと沢山のメイドに見送られ教会に行く。

その目は物凄く皆が暖かった..この日までは。

教会に着くとお父様は金貨の入った袋を寄進していた。

平民の子供は纏めてステータスの啓示の儀式を行う。

だが、貴族の子は教会を貸し切り..一人だけ儀式を行うのが通例だ。

平民の子と違い、貴族の子はほぼ全員ステータスが高いのが当たり前だ。

それは父親や母親には優秀な者が多いからだ。

案外、両親に勇者や賢者を持つ親は少なくない。

親にとっては、自慢になりうる実の子のステータスを初めて見れる特別な日….この日は本来ならこの後、豪華な食事をして親からプレゼントを貰うのが当たり前だ。

そのプレゼントは魔力にたけた者なら、杖、剣術や槍術に優れた者ならその武器を貰う。

本来なら、僕にもそういった日になる筈だった….

司祭様に呼ばれて、祭壇に上がった。

お父様とお母さまは椅子に座って見ていた。

司祭様が祈りを捧げて..光が降りそそぐ…そして僕の手にしっかりと紙が握られていた。

司祭様やお父様やお母様が紙を覗き込んだ。

時間が凍り付いた。

「「本当にこれが俺の(私の)息子のステータスか(なの)」」

両親は真っ青になり、司祭は気まずい顔をして僕を見ていた。

僕の両親が居なくなった日
「まぁ低いと言っても貴族の子供としてはですから..」

「低いにも程があるわよ魔力適正が20しか無いのよ!しかもMPが40何て」

「魔法が使えるだけまだ良いじゃないですか.子は神からの賜りものです」

「使えるだけ良いですって…魔力が最低、子供の時に魔力適正が100無ければ真面な魔法使いになれないわ..これじゃ絶望的じゃない」

「剣術が30だと…本当に俺の子か? ..スジャーナお前まさか浮気でもしたんじゃないのか?」

「アベル…私を疑うの?」

「そういう訳じゃない..解っているさ…魔力適正が君の子で低い訳が無い..違うのは解っている…済まない」

「アベルが悪い訳じゃないわ…この子が悪いのよ!」

「スジャーナ…そうだな…だけどセロリックだって悪気がある訳じゃない..」

「悪気でやられてたまりますか..」

「済まない、セロリック、先に馬車で帰ってくれないか?」

「あの、お父様、お母さま…僕は」

「済まない、今はお前の顔も声も聴きたくない…黙って帰ってくれ..」

「解りました」

僕は何か取り返しの付かない事をしたのだろう…あんなに悲しそうなお父様とお母さまを見たのは初めてだ。

「セロリックお坊ちゃま! 何で一人で帰って来られたのですか? ご主人様は奥方様は?」

「解らない…」

僕は1人で部屋に戻った。

自分に何が起こったのだろうか…今日は、本当は食事をしてプレゼントを貰って最高の日となる筈だった。

《何でこんな事に》

その日の夜にお父様とお母さまが帰ってきた。

「セロリック、ご主人様と奥方様がお呼びです」

《あれっ聞き間違いかな..いつもと違う気がする》

「いいから待たせない様に直ぐに行きなさい!」

《聞き間違いじゃない…》

僕は無言で部屋を出た。

「返事も出来ないのか? これだから出来損ないは..」

《出来損ない..僕の事か?…》

ドアをノックした。

「入れ」

不機嫌な声だ、初めて聴いた。

「はい..お父様..」

「なぁ…セロリック..聞いて欲しい…お前は貴族の義務を果たす事は出来ない」

凄く、重々しい声だ、胸が締め付けられる。

「何でですか? お父様、何で僕が..義務を果たせないのですか?」

「それはね、セロ、貴方が出来損ないだからよ!」

これは本当にお母さまなのか..まるで他人みたいな顔で僕を…

「僕は出来損ないじゃない!」

「いいえ、出来損ないよ! 魔法も駄目、剣も駄目、駄目駄目駄目駄目..何で生まれてきたの? 本当に私の人生で唯一の汚点よ? セロリックなんて名前貴方には立派すぎるわ..三代前のおじい様の名前何て貴方には必要ないわ…今日から貴方はセロよ、セロ」

「あの、お母さま..貴族は最低でも四文字以上の名前を..」

「貴方は…そうね、貴族の家に産まれたら..学院には入れなくちゃいけないし義務だわね..でも貴方はきっと卒業もできないと思うわ! だから、今から平民の名前にした方が良いわよ? だからセロ..貴方はセロよ」

《何で、何で僕は》

「セロリック…いやセロ。母さんの言った事は辛いと思うが本当だ…お前の能力ではラドルフは継げない…将来この家は、私とスジャーナに新しい子ができなければ、養子を貰う事になる」

《僕は、僕は…》

「そう、貴方はもう要らない子なのよ!」

「スジャーナ、これでも血は繋がっているんだ、そこまで言うな! だがセロ、君をもう僕たちの子と扱う事は出来ない! それだけは解ってくれ、能力の無い君にはラドルフは渡せない、だが、私とスジャーナと血のつながりはある。だから、貴族法にのっとり、学院の卒業までは面倒をみよう…ただ、ラドルフに貢献を出来ない君は…これからは使用人と同じに扱う…良いな!」

「何で、貴方なの? 何で、こんな思いしなければいけないの!」

「もう良いじゃないか?なぁ..ではセロ、これは杖と剣だ受け取れ…もうこういった物を君に渡すことは無い..受け取れ」

《何の装飾も無いただの使い古しの剣と古びた杖…》

「言いたい事があるなら言いなさい..今なら聞くだけは私もスジャーナも聞こう…だが、その扉をでた瞬間から、君は..ただの使用人と同じ扱いだ..いいな」

「出来損ないに学院まで入れてあげるのよ…それだけでもあり得ない厚遇なのを自覚なさい!」

何を言ってももう僕の運命は変わらないだろうな。

「ご期待に応えられずに申し訳..ございませんでした」

僕は部屋から逃げるように出て行った。

「セロ」

「ルドル..どうしたの!」

「ルドルではない、ルドル様だ、まぁ慣れないだろうから暫くはルドルさんと呼びなさい」

「ルドル..様」

「そうだ、私は執事、セロお前は今日からは使用人と同じ扱いだ、しかも一番の新参者だ、総てのメイドや使用人に必ず「さん」を付けるように…以上だ..今日は特別だもう寝て良いぞ」

この日から僕はセロリックでなく、セロ…この屋敷で一番下になった。

不幸の中の幸せ、幸せの中の不幸
次の日から、僕の使用人としての人生が始まった。

朝はいきなり5時に起こされた。

「セロ、お前は一番の新米なのだから、誰よりも早く起きなくてはいけないのだ、まだ何も出来ないのだろう、今日の所は水汲みをしなさい!」

「解りました」

自分で自覚しなければいけないんだ…僕はもう使用人なんだから..

慣れない手つきで僕は桶を持った。

まだ子供の僕にはとても重く感じた…

「セロは本当にグズなんだから…まぁ子供だから仕方ないか..水は半分にして回数増やして運んだ方が楽だよ」

「ありがとうございます」

「まぁ頑張りなセロ」

この家は本当に徹底している、もう僕をこの家の子供として扱う人はいない。

それから1年が経ち6歳になった。

学園に入るのは10歳だからあと4年ある。

流石に1年経つと家での仕事には慣れてきた。

スジャーナはあれから人が変わったように冷たくなった。

酷い時には僕にムチを入れる事もある。

何回かムチで叩かれた時にもう母親と思う事は無くなっていた。

お父様はまだ少しは愛情があるのか基本的には無視だが、たまにお菓子をくれる。

「これは親子の情では無い..子供の使用人には先代も普通に菓子をあげてた..それだけだ」

そういうお父様の顔は、昔のお父様に見えた。

そんなある日の事…スジャーナは妊娠をした。

これには、お父様をはじめ、他の使用人も全部喜んだ。

僕は…気持ちは複雑だ。

《あの中年ババア、あの年で妊娠したのか..良くあんな香水臭い糞ババアとやれるな》

誰だろう、スジャーナの悪口を言ったのは…だけど、周りには誰も居ない。

「可笑しいな…空耳かな」

その日から、スジャーナは僕に対してムチを振るう事は無くなった。

愛情が…そんなことは無い、完全に僕に興味が無い…それだけだ。

それと同時にアベルも僕に対して興味がなくなったのだろう、子供扱いする事が無くなった。

もう、心の中でもお父様と呼ぶことは無いだろう..

無関心は僕にとっては前に比べて幸せだったのかも知れない。

スジャーナにムチを打たれて痛い思いをする事も無いし、アベルにたまに優しくされて妙な気分になる事もなくなった。

だが、この頃から僕は夢を見るようになった。

《妊婦って簡単に死んじゃうんだよね..殺すなら今だよ》
《流産したらあのババアとジジイ悲しむよね..楽しくない?》

僕の頭の中で誰かが話しかけてくる。

そして、夢の中で僕は両親を楽しそうに殺していた。

弟を楽しそうにいたぶっていた。

あと少しで殺してしまう、大体がその時に目を覚ます。

《僕はそんな人間じゃない》

心で否定する…だが、死んでしまえば良いのに..そう思う自分も何処かにいるのかも知れない。

それから、また3年の月日が過ぎた。

僕は9歳になり後1年後には学園に入る。

もうここまでくると、しっかりと使用人の仕事が板についてきた。

最近はルドルにも褒められる事がある。

「セロは良く頑張っているな9歳とは思えない…執事を目指してみたらどうだ? 来年から学園に行くのだろう?将来仕えたい主を探してみても良いかもな」

メイドの人達も良く話してくれるようになった。

「セロもどうにか使えるようになったわね…これなら普通に屋敷仕えが出来ると思うわ」

最初の頃冷たかったのは、僕が貴族として生きれないならと平民ならでは生き方を教えてくれる為だった。

そう思うと彼らは凄く優しい人だったのかも知れない。

《お人よしが..人間に良い奴なんて居ない》

また何処からか男の声が聞こえてきた。

学園入学まで後1年、僕の仕事は少し減らして貰えていた。

それは学園で学ぶ基礎を勉強する為。

魔法も剣術も僕には誰も教えてくれない。

ただ、この館で書斎に入る事は許されているので勝手に本を読んで勝手に学んでいた。

魔法を使うのも本格的な討伐も学園で最初から教えてくれるので、今は何もすることは本来は無い。

だが、殆どの貴族が家庭教師を雇い勉強してから入学してくるから..落ちこぼれたく無いなら、学んでおいた方が良いだろう…特に僕は落第=働くなのだから。

仕事が終わって部屋に帰った。

だが、その日は僕の部屋に弟(血縁上)のヘンドリックがいた。

そして、その足元には折れた杖と刃こぼれを起こした剣があった。

僕がその生涯で親に初めて、そして最後に貰った物。

そう思ったら僕は叫んでいた。

「何をするんだ!」

「出来損ないのセロには杖も剣も要らないだろう..だから壊してたんだよ」

咄嗟に僕はヘンドリックを突き飛ばしていた。

「うわーん」

ヘンドリックが泣きだした。

そして駆けつけてきた、スジャーナがファイヤーボールの魔法を使った。

それの直撃を受け僕は意識を失った。

《だから殺しとけばよかったんだ》

そんな声がした気がした。

冤罪と助けと誕生
気が付くと僕は地下室で鎖に繋がれていた。

背中が物凄く痛い、多分火傷をしているのだろう。

目の前には、ヘンドリック、スジャーナ、アベルがいた。

「セロ、お前は出来損ないの癖に、可愛いヘンドリックに手を挙げるなんて..何てことをするの!」

スジャーナがキンキン声で叫んでいた。

ヘンドリックは僕の方を見るとアッカンベーをしていた。

「セロ、何か言いたい事があるならいってみろ」

僕は、あった事をそのまま伝えた。

この国は一応は身分制はあるが法治国家でもある、貴族であっても正当な理由もなく平民の物を壊したりしてはいけない筈だ。

「それが言い訳か…解かった、ではヘンドリックお前は本当にそんな事をしたのか」

「僕はしていない、セロが自分で壊して僕を突き飛ばしたんだ」

「そうか、ならセロが悪いな..」

「何故、僕が..自分の物を壊したりする必要があるんですか..するわけ無いでしょう..可笑しい」

「出来損ない、ヘンドリックが嘘をついたと言うの? どこまでもおぞましい」

「まぁ、待て、セロ、私はこの国の法律に基づいて審議した..セロお前が悪い、謝れ、それで終わりにしてやるから」

「待って下さい、僕は悪くありません」

「セロ、教えてやるよ..この国では証拠が無い限り、貴族と平民の意見では貴族が行った事が正しいとされる..証拠はないのだろう」

「ありません..」

「なら、謝るんだ..それで」

「悪くないのに謝りません」

「仕方ないわね、じゃぁお仕置きしなくちゃね」

スジャーナの杖から火の玉が飛び出して来た..ファイヤーボールだ、その玉は僕の足に辺り僕の足を焦がした。

「熱い、熱い、熱い..何するんだ!」

「貴族に平民が罪を着せたのよ..これ位当たり前じゃないかしら?」

「お前、幾ら何でもやりすぎだ、相手は子供だぞ..セロ、お前もいい加減認めろ、謝罪したらそれで許す、だから謝れ」

「嫌です!」

「良い度胸ね、私が手加減したり許すと思わない事ね..ファイヤーボール」

今度はさっきのと違い、大きな火の玉が僕を焼いた。

《多分、全身大やけどだ…》

「強情をはるな、謝れ、謝ればそれで全部終わる」

「嫌です..僕は….本当にやっていない」

《だから、殺せと言ったのに》
《お前は誰だ》
《僕は君だ》
《僕?..僕なのか?》

「もうやめて..セロじゃない..僕が..僕がやったんだ」

「なぁ..おい…僕じゃ無い..証拠がでたんだ..どうするんだ」

「済まなかった」
「ええ、済まなかったわねセロ」

「おい、流石に無実の者に貴族が魔法を使い攻撃をした..これは重罪じゃないか?」

「….」

「無実の者に罪を着せて、魔法を使って攻撃したら貴族だって罰を与えられるだろう..公平な判決をいえ」

「俺は何も見ていない..」

「そうかよ…何が公平だ….何が法律にのっとってだ..」

「見ていない物は見ていない…」

「そうかよ…そいつもまだ3歳だ..そんな嘘をつくような奴は碌なもんじゃない…そいつも僕と同じで出来損ないだ」

「セロ…貴様、もう情けなど掛けてやらん」

アベルは剣で僕を殴った。

「それがお前の正体だ…何が正義だ、何が勇者だ…」

「もう、こんな出来損ないは殺してしまいましょうアベル..」

「いや、それでも相手は子供だ、そこまですることは無い…だが貴族への無礼の処罰はしなくてはな」

「それはなりませんぞ、アベル様、スジャーナ様」

「何だルドルか?何故だ?」

「これは記録水晶です..これにはしっかりと、ヘンドリック様が杖を壊している証拠、嘘の証言をした事、そして奥方様が魔法で無実の者を攻撃した証拠が記録されています…そしてアベル様はしっかりと簡易裁判方式で話された」

「いや、これは家族の問題だ」

「残念ながら、セロは家族と扱うな使用人扱いしろと命令されています..適用されません」

「どうすれば良いんだ」

「しかるべき処置を」

「解かった、セロ、この度の事は全ての責は私にある..ラドルフの名において謝罪する」

「謝罪で済むか..この火傷は治らない」

「済みませんな..宝物室のエリクを持ってきました..これでようやく釣り合うでしょう」

「貴様、それは先代が王家から貰った家宝だぞ..」

「ですが、これで無いとこの傷は完全に癒えません」

そう言うと、ルドルは僕にエリクをドバドバと掛けた。

「ああ、我が家の家宝が…貴様は首だ」

「そうですか、では私はお暇させて頂きます」

「ルドル、ごめんなさい僕が強情をはったばかりに」

「おや、セロはちゃんと謝れるじゃないですか」

「だって、ルドル…退職手当も貰えずに辞めてしまうんでしょう?」

「ええ、今のご主人様は執事として仕える価値はありませんな、ご主人様だけならいざ知らず、あの奥方に息子では忠義を誓う事はできません」

「執事は主の事を悪く言わないんじゃなかった?」

「主じゃなくなりましたから」

「そうだね、これからどうするの?」

「私は優秀ですから引く手あまたです、侯爵家辺りに仕えようと思います..ただ第二執事ですが」

「えっ、侯爵家に行けるんだ凄いね」

「セロも行きませんか? 使用人の一人位ならつれていけますよ」

「ありがとう..でも僕はやる事があるから」

「そうですか..ではこれで失礼します」

ルドル..ありがとう…

心の中の闇がセロを包み込んだ..自分が誰だかしっかりと向き合った。

自分の正体が解かった

さぁ、復讐の始まりだ…

覚醒…むかつくガキは殺すに限る。
《ふあはははははは..思い出した、思い出した..僕は前世ではこんな人間じゃ無かったよ!》
《何で、僕は善良な人間になろうと思ったんだ…そういう人間は全員負け犬になる運命だったじゃないか》
《優しさ? 愛? そんな物は踏みつけて壊す為にある…そうしてきたじゃないか》
《弱い者は騙され奪われ、死んで行き、強い者のみが幸せを手に入れられる..知っていた筈だ》

さぁ、ここからが僕の本当の物語の始まりだ。

最初に思い知らせてやるのはヘンドリックだ。

こいつは、僕がこの世界で手に入れた大切な物二つを台無しにした…やり返したって良いだろう。

お前が、だだの弱者だという事を思い知らせてやる。

まぁ、今の僕が殺せそうなのは此奴だけだからな。

僕は近くにある森の中を歩いている。

僕が勝手に出歩いても、誰も文句は言わない。

アベルもスジャーナも優秀な執事であるルドルを首にしたので、執務室に閉じこもって仕事をしている事が多い。

それと前の事件の気まずさがあるのか..基本無視だ。

ヘンドリックは相変わらず横暴だが…気にしない。

僕がこの家の子である以上はどんなに嫌いでも学園に通わせなければならない。

つまり、後約1年養ってから学園での4年間は最低線の面倒は見て貰える..なら何も一生懸命仕事などする事も無い。

ルドルが首になり、何か思う事もあるのだろう、そして僕に起きた事を知っているからメイド達は寧ろ同情的だ。

だから、僕は自由を満喫している…表向きは。

前世の記憶なのか人格なのか良く解らないが、それが蘇ってからは僕の全てが変わった。

こうして、森の中を歩いていても考え方が全然違う。

次から次へ、どうやったら人が殺せるか..そんな事が色々思いついてしまう。

既に何種類かヘンドリックの殺し方は思いついた。

後はどれにするか決めるだけだ。

「へーそんなに大きくて綺麗な花が咲いている場所があるんですか?」

「うん、凄く綺麗だった..アンに見せてあげたい位」

「セロ、お仕事は良いんですか…」

「どうせ、僕の事なんか誰も見ていないからね…頑張ったってだれも褒めてくれないからさぁ」

「そんな事はありませんよ…」

「そう? でもアン、ありがとう..じゃ」

これは布石だ。

あえて、近くにヘンドリックが居る時に話した。

性格の悪いヘンドリックの事だ、これで僕が出掛けた時に何かするだろう。

次の日、僕は森に出掛けた。

《しめしめ..ヘンドリックがついてきた》

僕はあえて、周りを見張るようにしてキョロキョロする。

《ヘンドリックはこっちを見ている》

そのまま、花が生えている場所に向かった。

ヘンドリックがついてきている。

「この花はいつ見ても綺麗だ、見ると心が癒されるな」

ワザと僕は聞こえるように言った。

そして暫く見た後、静かにその場を立ち去った。

そして、立ち去る振りをしてヘンリックの様子を見ていた。

《うん、やっぱり此奴はクズだったな…俺が大切にしてそうだ..そう思ったのだろう》

花をむしって、踏みつけていた。

僕は音を立てずにヘンドリックに近づいた。

後ろから石でヘンドリックを殴りつけた。

「うわわわわわわわわいてぇー、いてぇー」

ヘンドリックは頭を押さえて蹲っている。

僕は追撃の手を緩めない。

もう一度、蹲っているヘンドリックの頭を潰すように殴りつけた。

頭の皮がむけ、白い頭蓋骨がでてるが、それでも死なない。

「おおおお前はセロ..こんな事してただで済むと思うなよ..母上に」

《本当に此奴は煩いな》 がつっ、手で抱えている頭を手ごと上から殴りつけた。

グチャという音と共に手が潰れた音がした。

「うあわわわわわわわっわわわわ」

「残念だな、此処にはスジャーナもアベルもいないんだ..3歳のお前が9歳の僕に勝てるわけが無いだろう」

「セ、セロ..兄弟だよ僕たち」

「思ったことは無い..」

僕は石でヘンドリックを殴り倒した。殴って、殴って、殴った。

顔が陥没している..流石に死んだだろう。

暫くしたら、僕はヘンドリックの一部を切り取り、石に縛り沼に沈めた。

沼地一帯を蓮が覆っている…ここの沼は凄く深い、上手く沈めば浮かび上がって来ないし…もし、浮かび上がっても暫くは蓮で隠れるから見つからないだろう。

ヘンドリックは3歳とは思えない位..流暢に話をしていたな…思考もたったの3歳とは思えなかった。

そう思うと此奴はステータスが高かったのかも知れない。

だが、此奴はまだ子供だから知らなかったんだろうな…嫌われるという事は死ぬリスクが増えるって事を…僕を無視するだけで幸せに暮らせたのに…

いずれにしても、此奴は死んでしまった、もう未来は無い…

殺せるかどうか心配だったが杞憂だった..昔の様に全然抵抗ない..

僕の勝ちだ。

溜まらない
流石は跡取り息子だな….

夜になりヘンドリックが居ない事が解ると、家人総出で探す事になった。

流石に危ないのでメイドは出ない。

最終的には近くの村の者まで集めてヘンドリックを探したのだが見つからなかった。

本当に何処にいったんだろうか?(笑)

《流石に沼に飛び込んで蓮迄は刈らなかった..まぁ当たり前か》

僕も八つ当たりをされるといけないので一生懸命探す振りをした。

「まだ見つからないのですか、ヘンドリックは…子供がそんな遠くに行くはずが無いわ…草の根分けても探しなさい…見つけた者には、何かしら報奨も出します」

「俺からも頼む…大切な我が子なんだ..お礼は出すから探し出してくれ」

最初はまだ余裕はあった。

それから三時間も経つと

「まだ見つからないのですか?さぼっているんじゃないでしょうね? 見つかるまで寝ないで探しなさい」

スジャーナがキンキン声で怒鳴り始めた。

「きついだろうが、頼む、この恩義には必ず報いる..この通りだ」

アベルは言葉遣いこそ丁寧だが、やめさせようとはしない。

そして、日が暮れ夜になった。

この世界には魔獣や魔物が居る..夜の森は危険だ。

「アベル様、スジャーナ様、流石に夜の森は我々には危険です…又明日の朝からに致しませんか?」

村長が村人を代表して提案してきた。

「息子が、その危ない場所に居るのです、それなのにお前達は捜索をやめると言うのですか? 幼子が寒い中ひもじい思いをしているかも知れないのに平気なのですか?」

「すまない、大切な1人息子なのだ…押して頼む」

結局、村人たちは猟師等を中心にして寝ないで探したが何も見つからなかった。

《仕方ない…そろそろ次の仕掛けだ》

「アベル様…スジャーナ様」

「セロかどうしたのか?」

「……」

二人してつまらない者を見る目で僕の方を見た。

「これが、落ちていました」

「何が落ちていたというのです..」

近づいてきたスジャーナに僕はそれを渡した。

「これは..」

頭が追い付いていないのだろう….

「これは、ヘンドリックの….いやあややややややややややああああああああ」

そう、僕が渡したのは沼に沈める前に切り取っておいた…ヘンドリックの手だ。

勿論、石で叩いて潰しながら取った。

これなら、多分、魔物に襲われた、そうとるだろう。

「そそそそそそれはヘンドリックの手で間違いないのか」

「間違うもんですか..間違いなくヘンドリックだわ」

「セロ、これは何処で見つけた」

流石はアベルだ動揺をうまく隠している。

「はい、森の奥の沼地で見つけました」

念の為に違う沼地を指定した…もし見つかった場合の言い訳もできるからだ。

「その場所はリザードマンやゴブリンが出る場所だ…これではもう死んでいるだろう」

「そんな、貴方..せめて遺体だけでも探しに」

「生きている者ならともかく俺は領主だ..死んでいる者の為に領民を犠牲には出来ない」

「場所が解かったのです..今から探しに..いえ探しなさい」

「もう、無理だ..皆済まなかった..今日はこれで解散だ..明日は休める者は仕事を休んで良いぞ」

「アベル、何を言うの! ヘンドリックが可愛くないの?」

アベルは叫ぶスジャーナの手をとると無視して引っ張っていった。

だが、明かにその二人の目には光がなかった。

《くううううううう溜まらない、嫌いな奴が絶望に染まる瞬間、偉そうな奴の泣き顔…これがいい…まだまだ、終わらないよ…僕の楽しみは》

母子に戻った日(表)
母子に戻った日(表)

【本文】
次の日からのラドルフ家は暗いの一言に尽きた。

長男は出来損ない、そんな中産まれた期待の跡取りも死んでしまった。

まぁ暗くもなるだろう。

《ククククッ..あぁ凄く楽しいな…まぁ八つ当たりを受けるメイドや使用人は悲惨だが》

《さぁ次の仕掛けに入るか》

僕はドアをノックする…

返事は無い..だが、そのまま無視して入った。

「スジャーナ様、失礼します」

「なにかしら…セロ..出て行きなさい..」

《フフフフ うまい具合に落ち込んでいるな》

「はい、すぐに出て行きます..ですが、この薬湯を飲んで頂けませんか?」

「毒でも飲ます気なの..それを持って出て行きなさい!」

「そうですか..ここに置いておきます..お願いします..」

「要らないって言ってるでしょう..こんな物..」

「いたっ..解りました..出て行きます..その代わりゆっくりと休んで下さい..」

顔にぶつけてやったわ..これで来ないでしょう…本当に忌々しい。

死ぬならヘンドリックでなく彼奴の方が死ねば良かったのよ。

結局、どこにもヘンドリックの死体はなかった。

だから、お墓に納めてやることもできない。

あれから、アベルとも口をきいていない…

もう、養子を貰う事しか方法はないかも知れないわね。

次の日もあの忌まわしいセロが来た。

「スジャーナ様 失礼します..今日はおかゆと薬湯を持ってきました、少しで良いんです食べて下さい」

「お腹はすいてないわ..要らないわ」

「そんな訳無いじゃないですか?もう2日間も何も食べていないんですよ?…せめて、せめて薬湯だけでも飲んで下さい..お願いします」

「要らないって言っているでしょう..しつこいわ」

おかゆを頭からかけてやったわ..どう熱いでしょう..さぁ文句でもいってみなさい。

「スジャーナ様…また来ますね」

忌々しい事に毎日のように彼奴がきた。

アベルはあれから一日も来てくれない…

メイド達は私が当たり散らすからもう来ない..私に用事がある時は忌々しい此奴が代理でくる。

本当に忌々しい、今日もあと2刻もすれば忌々しいセロがくる。

「スジャーナ様、今日も薬湯とおかゆを持ってきましたよ」

「そう、要らないわ…いつもと同じよ..」

「ですが、このままでは死んでしまいます」

「それもいいわ..死ねば..ヘンドリックに会えるわ…」

「ヘンドリックが羨ましい..」

「セロ..貴方今何と言いました!…死んでしまったヘンドリックが羨ましいって言ったのですか? 手だけ残して魔物に食われて死んだヘンドリックが…」

「羨ましいですよ..死んでまで貴方に愛されているヘンドリックが…同じ様に愛して貰えるなら..命何て..うぐっ…すいません言い過ぎました..罰は後で受けます..失礼します」

「待ちなさい..セロ」

頭の中が可笑しくなっているのかも知れない。

今なぜだか一瞬、そんな訳が無い..自分でも解らない感情が湧きあがってきた。

《そう言えば薬湯って言っていたわね…ポーションならともかくそんな物が家にあったかしら?》

私は薬湯を手に持ち「鑑定」呪文を唱えた。

幾つかの薬草をすり潰して作られたお茶…滋養強壮と体力を回復する効果がある。

《こんな物何処で手に入れたのかしら..ポーションよりも高そう..セロにはお金なんてあげてない、まさか盗んだの…明日来た時にでも聞いてみましょう》

次の日、セロは来なかった。

メイドに聞いたら、今日は一日帰らないそうだ。

やっぱり彼奴は忌々しい..会いたくない時ばかり来て、会いたい時には来ない。

次の日は…ちゃんとセロは来た。

「スジャーナ様 今日もおかゆと薬湯をお持ちしました…そして今日はスジャーナ様が好きなアプルもありますよ」

「セロ..貴方に聞きます..この薬湯はどうやって手に入れたのですか? 貴方が買える物ではない筈です」

「これはですね、僕が作ったんです」

「作ったの?どうやって」

「それはですね、森にあるライト草にムニエル草にジギ草を混ぜて煮沸するんです。そうするとこの薬湯になります。」

「それは何処で知ったのですか?」

「はい、スジャーナ様が顔色が悪いようなので書庫の本で調べて作ってみました」

「そう、なかなか良い出来ね」

「ありがとうございます」

「それで、貴方は昨日は何処に行っていたのですか、アベルから許可は貰ったのですか?」

「すいません、許可は貰っていません」

「勝手な事をして怒られても知りませんよ…それで、何処に行っていたのですか?」

「隣町までアプルを買いに行ってきました」

「そう…ですか?《確かにアプルは時期が少し外れていますね..この近くじゃありませんね》」

あれっ手に怪我をしている。

「セロ、その手は何ですか?怪我をしているようですが」

《ヤバイ、これはヘンドリックを殺した時に怪我した物だ》

「薬草を採取した時に怪我をしました」

《確かに余り聞いた事が無い薬草でしたね..もしかして棘があったのでしょうか?》

「少しは気をつけなさい…今日は少し食欲が湧いてきました..ちゃんと食べます」

「有難うございます」

「それでは出て行きなさい..あまりジロジロ見られては落ち着いて食べれませんから..」

「はい、では後で食器を下げに来ます」

セロが居なくなる。

何故か寂しく感じる…

私は薬湯に手を伸ばした…正直不味いなんて物じゃない、だけどこれはあの子が手に怪我をしてまで取ってきた物だ..体にも良い物だ..飲もう。

おかゆか…正直食べたくはないけど..食べないと心配するんだろうな..少しは手をつけますか。

アプルか..正直余り良い実じゃないわね…だけど、この時期には本来は無い物だわ..探すの苦労したんだろうな..

私はあの子を捨てたのに..虐めたし..ムチ迄打ったのに..何でここまでしてくれるのかしら?

そういえば、セロは言っていたわ…

「羨ましいですよ..死んでまで貴方に愛されているヘンドリックが…同じ様に愛して貰えるなら..命何て..」

ちゃんと言っていたじゃない..この続きは決まっているじゃない..「命何て要らない」そう言い掛けていたんじゃない。

涙が出て来た…捨てたはずの子なのに..未だに私を慕ってくれるの?

良いわ..出来るだけこれからは優しくしてあげよう…こんなにも優しく愛してくれるのだから…

母子に戻った日(裏)
私は直ぐに私付きの使用人にセロをした。

アベルにそう言った時には心配されたが「虐めたりはしないわ」

そう伝えたら許可が降りた。

話をした時にセロは凄く嬉しそうだった。

私はセロにご褒美をあげる事にした。

決して可笑しくはない…体の調子の悪い主人に尽くした使用人に対して褒美をあげるのは当たり前の事だ。

「ねぇセロ、何か欲しい物とかありますか? 今回はお世話になりましたから特別に褒美を与える事にしました」

「あるにはあるのですが、言ったらスジャーナ様に怒られます」

「まぁ私に怒られる様な事をしたの?正直に言いなさい怒りませんから!」

「本当に怒りませんか?」

「ええ約束します《内容によっては怒りますけどね》」

「その、お母さまって呼びたいです..」

《何でしょうか..この不意打ち…セロってこんなに可愛い子だったかしら》

「コホン、良いですわよ..この部屋の中でだけなら…ここでだけですよ」

「本当? お母様…ありがとう!」

《この子は本当はこんなに甘えん坊だったのね..いきなり抱きつくなんて..悪い気はしませんね》

「抱き着いて良い何て言ってませんよ!」

「ごめんなさい」

「ふふふ、嘘よ、まぁ、私も、もう年齢的に子供は作れないと思いますから..少し位なら甘えても構いませんよ」

「何を言っているんですかお母さま! お母さまはまだ齢なんかじゃないですよ?凄く綺麗ですよ!」

「そうかしら?お母様はそんなに綺麗?」

「はい、世界で一番綺麗です!」

私は凄く残酷なのかも知れないわ..最近は死んだのがセロじゃ無くてヘンドリックで良かったって思っている。 多分だけど、貴族の子供でここまで母親にべったりな子は居ないわ…私はこんな言葉は掛けて貰った事がない、アベルはこういうストレートな感情を私にぶつけてきたりしない。
ヘンドリックはどう考えても大きくなってもこうは成らないだろう。
そう考えたらこの子は小さい頃から私に甘えていたわね.
世界で一番綺麗か…子供に言われても案外ときめく物ね。

「セロにとってお母様は世界で一番綺麗なの?」

この子といると何だか心地よい…女としての自信が戻ってくるわ。

「はい、だから子作り頑張って下さい…お母様ならきっと…もう一度子供が作れます」

《これはメイド辺りから聞いた知識かしら? 教えた相手が解ったら叱らなきゃ》

「セロは随分ませているのね! お母様は知らなかったなそんなにませていたなんて…お母さまも今はセロが一番よ!だけど赤ちゃんが出来たら一番じゃなくなっちゃうかもよ?セロはそれでよいのかしら?」

「我慢します」

「何で我慢するの?」

「だって僕は..出来損ないだから…..」

《私…セロを傷つけていたんだ...》

「セロ..安心して良いわ…赤ちゃんが生まれてもセロが一番よお母さま約束するわ!」

「本当ですか? アベル様より?」

《えっアベル..そうきたか…》

「ええっアベルよりもね」

「ありがとう」

《凄く嬉しそうな顔ね..不思議な子..この子と話していると子供だって言うのをたまに忘れる..本当に口説かれている..そう錯覚してしまう》

セロによって私は…女としてまだ生きれる、そんな自信が取り戻せた。

……………………………..

………..

親として既に心はセロを愛している…だけど、この家には跡取りが必要だ。

女としての自信を取り戻した私は又アベルと体を重ねた。

アベルは私と違いまだヘンドリックの死を引きずっているのか元気がない。

多分、私の体にももう飽きたのだろう..淡泊だ。

そして待望の三度目の妊娠をした。

「これで我が家も安泰だな…」

アベルが少しだけ元気を取り戻した気がした。

ようやく、ラドルフにも光が戻った気がした。

だけど、セロが心配だわ…

「セロ…あのね」

「もう、知っています..女の子が良いな..」

「何を言っているの?男の子が良いわよお母さまは」

「女の子なら、お母さまを取られないから女の子の方が良いです」

「ふふ、大丈夫よ男の子でもお母さまの一番はセロよ」

《お腹の子はこの家を継ぐんだから、私くらいはセロの傍に居ても良い筈よ》

「安心しました」

《だけど、この子結婚できないんじゃないかな?ここまで私が好きじゃ..まぁ今だけかもしれないけど》

だが、この幸せは永くは続かなかった。

主治医が訪れて定期的な母体診断の時の事だった。

「お気の毒ですが流産しました」

「えっ何かの間違いじゃないんですか?」

「嘘だろう先生」

アベルもスジャーナも頭が真っ暗になる。

「そして、残念ですがもう奥方様はもう子供が生むことが出来ないと思われます」

「そうですか」

アベルが先に立ち去った。その背中は凄く寂しそうだった。

私も後をついていった。

執務室にいった。

「俺とお前の結婚は失敗だった」

「どうして、どうしていまそんな事をいうの?」

「お前だって貴族なんだ、解かるだろう?跡取りを作れない女に価値ちは無い当たり前の事だ」

《何も言い返せなかった..歳の事もあるが..もう子供を作れない..本来なら家を出されても文句は言えない》

「仕方ない、養子を貰うか側室を貰うかする悪く思わないでくれ」

《側室…》

「解りました」

ふふふ、私もやっぱり出来損ないじゃないか…よくこれでセロを出来損ない何て言えたもんだわ。

「セロ…お母さまは駄目だったみたい.もう終わり…女として終わっちゃった!」

「どうしたのですか? お母さま」

「赤ちゃん、流産しちゃった」

「それならまた」

「お医者様がもう、二度と子供が作れないって..もう駄目なのよ!」

「…….」

「アベルは側室を貰うか..養子を貰うそうよ..私と結婚したのが間違いだってさ..わたしもう要らないんだわきっと」

「アベルはおかあさまを要らないんですか?」

「うん、要らないと思う..いえ確実に要らないわね…女として貴族の妻として本当に終わっちゃった..」

「そうですか、ならお母さまを僕に下さい!」

この子が今何を言ったのか理解できなかった。

「えっ?」

柔らかい唇が押し付けられた..ようやく何をされたのか解った。

セロは私にキスをしてきたんだ…

「セロ..何ですか?」

頭がパニックになった、自分どうしていいのか解らない

「僕はお母さまが好きでした、子供としても好きですが一人の男性としても好きです」

その言葉を聞いてようやくキスされた意味が解かった。

「ちょっと待ちなさい、まってセロ…一回落ち着きましょう..ねぇ..私達親子よ不味いわ!」

「関係ありません..僕はお母さまを世界で一番愛しているって言いましたから、お母さまも僕の事世界で一番好きだって」

「駄目よ」

「僕は世界で1番、お母さまを愛しています..絶対に寂しい思い何てさせません..だから..」

「セロ…その言葉の意味..本当に解って言っているのね?」

「はい、愛してます..お母さま」

結局私は拒めなかった。

今迄、こんなに求められたことは無い。

凄く怖い..この子のしてくれる事が、囁いでくれる言葉が触られる事が全て気持ちいい。

こんなの経験したことは無い。

これが本当に好きな相手に対してする行為なのかもしれない。

何時までたっても終わらない..気が付くともう明け方になっていた。

「セロは全く強引なんだから…まったくしょうがないわね」

「ごめんなさい」

《あらあら、もう子供になってしまったのね…》

「まぁ良いわ..本当にセロはお母さまの事が好きなのね? 親子としてではなく女性としても?」

「はい」

「仕方ない子ね、だったらこういう事したんだから、今度からはスジャーナと呼びなさい」

「スジャーナ様」

《何で暗くなるのかな..あっそうか》

「違うわ、本当に好きな者同士は名前で呼ぶのよ? だからスジャーナ…様は要らないの」

「スジャーナ」

「なぁにセロっ こんな感じにね」

「ありがとうスジャーナ」

「だけど、良いの? 私は子供が産めない体なのよ?《まぁ親子なのに子供作っちゃ問題だけど》」

「その方が良いよ、僕たち親子だから子供は作っちゃだめだと思う..それに」

「それに何よ!まさかここまでして何か文句言う気なの…」

「子供が生れなければずうっと僕がスジャーナの一番で居られるから嬉しい…」

「全くセロはずるいわ..わたしばっかりドキドキさせられて」

多分、この子が傍に居るから私は女として生きて行ける..まさかこの歳になってこんな感情が芽生えるなんて..多分、もう私はセロなしじゃ生きられない。

だって、この子は、私の愛しい子供で…最愛の恋人なのだから…

母子に戻った日(極み)
良く考えなければいけない。

僕は冷静になった。

後二人、殺してやろうと思っていたが…殺してしまったら僕はどうなるんだ。

恐らく、この家は親戚に乗っ取られるか、国に取り上げられてしまう。

そうなったら、今より立場が悪くなるか孤児になるかしかない。

そう、どちらか一人を残さなければいけない..

どちらを残すか考えた末にスジャーナを残す事にした。

残した、理由の一つは単純に此奴が女だからだ…

僕は早熟なのか既に精通が始まっている、そして前世の記憶があるせいか疼く。

そろそろ、肉体関係の相手が欲しい。

だが、メイドに手を出したくはない..こいつ等は、きつい事を言いながら結局は僕が一人で生きれるように手を貸してくれていた節がある..ルドルと同じだ…自分の立場の中で手助けをしてくれていたんだ。

僕は薄汚い悪人だ..間違いなくそうだ…だが親切な者を傷つける程のゴミじゃない。

そう考えたら..もう一人しかいないスジャーナだ。

こいつは、性格はともかく顔と体は良い女だ。

この世界ではもう20代後半や30代は女と見なされなくなる…実に勿体ない。

僕から言わせればようやく「女らしさ」が出る頃に要らないなんて勿体ないと思う。

顔と体が良ければ…簡単だ性格を壊して自分好みにすれば良い…それだけだ…

子供を亡くして落ち込んでいる女なんて格好な獲物だろう…逃す意味が無い。

まずは..従順な子供として気に入られる事からだ…

僕は出来損ないの子として捨てられたが..この女にとっては腹を痛めた子でもある…絶対に少しは愛情があるはずだ..そこから攻めてやる。

ヘンドリックがいるなら..無駄だろうが、死んでしまった今なら、そして悲しんでいるいまなら付け込めるはずだ。

「スジャーナ様、失礼します」

「はい、すぐに出て行きます..ですが、この薬湯を飲んで頂けませんか?」

出来るだけの笑顔と優しさを出して近づく…当然拒否される。

だが、この時点で既にこの作戦は成功したと感じた。

同じ拒否でも全然違う..ムチを振るっていたあの女とは思えない程、弱々しい。

これなら落とすのは簡単だ。

「スジャーナ様 失礼します..今日はおかゆと薬湯を持ってきました、少しで良いんです食べて下さい」

どんなに嫌われようと頭からおかゆをかけられようが通う。

そして、どんな時も笑顔で微笑む事を忘れない。

これで良い..それだけで落とせる筈だ。

まさか、この女も周りの人間も僕が口説こうとしている、何て思って無いだろう。

捨てられても健気に母親に尽くす子供にしか見えない筈だ。

実際に使用人やメイドも僕を不憫な子だと見ている。

特に頭からおかゆを掛けられた後は、扉を睨んでいたメイドが居た。

「何故、そこまでするのですか?」

ある日メイドに尋ねられた..勿論本当の事は言わない。

「解らないけど..捨てられても子供だからかな..何されても近くに居たいそう思うんだよ..特にああも弱々しい姿を見ちゃうとね..」

そう答えたら、泣きそうになりやんの…

「いつかその思いが奥様にも伝わると良いですね..」

使用人やメイドにこの「健気な子」作戦は通用している。

この健気な子作戦は意外にもアベルにも通用していた。

ある日、アベルに呼ばれて執務室にいった。

「俺はお前に感謝しなければいけないのかもな」

「何の事でしょうか?」

「スジャーナの事だ…色々と気に掛けてくれているのだろう!」

《此奴も落ち込んでいるんだろうな…全然違うな》

「使用人が主人に気を遣うのは当たり前の事です」

「それは違うな…ルドルだって他のメイドだってあそこまではしない」

「答えはありますが、今の私がそれを口にする訳にはいきません」

「許すから答えろ」

「親子ですからね….」

「何だ、その答えはちゃんと答えろ」

《これで解らないのか..大丈夫か此奴》

「僕はもう家族ではない…それは解っています。 正直、鞭で打たれて、殴られて、馬鹿にされた時は死んじまえ..そう何度も思いました」

「そうか…我々の不幸が楽しいのか、お前からしたらそうだろうな…嫌いなヘンドリックが居なくなってさぞ楽しかろうな!」

「最初、ヘンドリックが死んだと思った時嬉しかったのは事実です」

「そりゃ憎まれて当たり前だ、俺だって同じ立場なら憎むだろう..確かにそれだけの事をした..だったら出て行くか?..その方がお互いの為だ..当座の生活費位はくれてやる」

「出て行きません」

「我々が憎いんだろう?」

「ええ、ですが…それでも愛しているんです..スジャーナ様もヘンドリック様も勿論、貴方も」

「…..」

「血のつながりって怖いですよ..あんなに嫌いだったヘンドリックが死んだのに嬉しさより悲しさが出るんですから….居なくなったと知ったら探さずにはいられなかった」

《そう言えば..セロがヘンドリックの腕を見つけた場所は魔物が出る場所だ..そこまで探してたんだ…此奴は》

「…….」

「親子ってズルい…どんなに嫌っても、憎んでも、悲しいそうな姿を見てしまうと、それ以上にどうにかしてあげたい…そう思ってしまう…ムチで叩かれ、殴られて、殺されかけても…嫌いな気持ちに心からはなれない」

「そうか」

「正直、自分の心が解りません…」

「そうか、下がってよいぞ…スジャーナの事頼んだぞ」

「はい」

<アベルの気持ち>
親子か..そう言えばセロは俺に少し似てるな…憎いけど愛してるか..俺には言えない。

俺は貴族だ、才能の無い者は見捨てるしかない…今でも間違った判断で無い..そう思う。

だが、セロに幸せになって貰いたい..そんな気持ちも何処かにあるのかも知れない。

血の繋がり、親子か、確かに怖いな…本当に恐ろしい。

《良心が痛いだろう? 今はまだこれだけにしてやる》

「スジャーナ様 今日もおかゆと薬湯をお持ちしました…そして今日はスジャーナ様が好きなアプルもありますよ」

《今日はいつもと違うな…》

《ようやく食べてくれるのか..良かった》

……….

うん、全部完食している、薬湯も飲んでいる。

これで次の段階だ。

僕は一度、スジャーナを立ち直らせる事にした。

褒めて、褒めて褒めちぎった。

スジャーナはすっかり、明るさを取り戻した。

そして夫婦生活に戻れるように促した。

これで良い..これが多分、スジャーナの女としての最後のチャンスだ。

だが、失敗するのは解っている…クククッ此奴が落ちるのが楽しみだ。

知っているか? 漢方薬には副作用がある物がある。

その副作用の中には妊婦が飲んだら..確実に堕胎する物がある。

そして定期的に飲み続けると子供が出来ない体になる物もある。

何で知っているかって?

前の世界でゴムを使うのが嫌だから..僕は生派なわけ…

だけど、妊娠したら責任が発生するでしょう?

だから、この薬を飲ましてたんだよ彼女気取りのセフレに…

将来、子供が出来ない体になるって?

別に良いじゃん? ただのセフレなんだからさ..将来何て気にしてやる必要ないよ。

それに、表向きは普通の滋養強壮の漢方薬だからばれないし安心だ。

だがこの世界には怖い事に魔法がある、鑑定がある。

もし、この魔法が優秀で副作用まで読み取れたら…失敗だ。

だが、そこまでは読み取れないだろう..僕はそっちに賭けた。

話は戻るけど…スジャーナに飲ましてたのはその薬に近い物。

似た薬草探すのに苦労したよ。

だから、どんなに頑張ってもダメな訳。

これで、貴族の女としては最底辺でしょう!

子供が作れないんだから。

だけど、僕が手に入れるなら最高だ。

「顔が良くてスタイルが良くて妊娠しない女」

後はもうひと踏ん張り..親子の愛情を男女の愛情に挿げ替えるだけだ。

これでアベルが死ねば..子供が作れないスジャーナが残る訳だ。

次の子が産まれないなら..もう僕は安泰だ。

これで、お財布代わりになってくれて、性欲を処理してくれる女が手に入った。

復讐? …..しているじゃん? 貴族の女として最底辺の子供を産めない体になった挙句、不貞をしてその相手は、実の息子。更に言うならそいつは最愛の息子を殺した男。
僕はまだ子供だし…保護者必要だ。

どうせ選ぶならアベルじゃなく、色々な意味で使えるスジャーナを選ぶでしょう?

これからが楽しみだ。

閑話 アベル
最近はスジャーナとセロが随分仲良くなった。

これは俺にとっては実に好ましい事だ。

最初、スジャーナがセロを自分付きの使用人にしたいと言い出した時、正直迷った。

スジャーナは一度セロを殺しかけた事がある。

普通に考えて…無実の者を殺したりできないだろう…ヘンドリックが嘘をついたのは誰が見ても解かる。

出来損ないと切り捨てたセロに俺とスジャーナが唯一買ってやった安物の杖と剣..あんな物でもセロは大切にしていた。

だが、俺は貴族なんだ…ヘンドリックが嘘をついていたとしても…信じない訳にはいかない。

スジャーナだって解っていたはずだ…なのに彼奴はセロを火で焼いて死ぬような大怪我をさせていた。

あそこでルドルが来なければ…セロは死んでいたかもしれない。

俺はそこまで冷酷にはなれない。

出来損ないと切り捨てたが..幸せになれるならなって貰いたい..少なくとも死んで欲しい等思っていなかった。

そのスジャーナがセロを自分付きにしたいと言い出した..正直、彼の将来を考えたら断るべきだった。

だが、俺はそうしなかった。

ヘンドリックが死んでしまって可笑しくなっていたスジャーナの生贄にした。

気がとがめたが…スジャーナとセロ比べたら..悪いがスジャーナだ。

「虐めたりしないから」そうは言っていたが心配だった。

杞憂だった。

しかも、セロは、あんなに落ち込んでいたスジャーナを支え切った。

もういちど妻の笑顔を見れるとは思わなかった。

だけどねセロ、君はまだ子供なんだな…君が出来損ないと解かった時…その時からもう私達は冷え込んでいたんだよ…

ヘンドリックの時も義務みたいなものだったんだ。

正直、もう私の中では側室を貰う..そう決めていた。

養子は無い..出来る事なら自分の血を引いている子が欲しんだ。

だが、仕方ない..義務から何回か体を重ねた..運が良かった。

子供が出来た..これで一安心だ….

正直、側室を貰いたい反面..スジャーナが怖かった..君にしたような事を側室や子供にするんじゃないかと…

スジャーナはもの凄く気性が荒い…それは一緒に戦っていたから解っている。

だから、子供が出来たと聞いて安心したんだ…

だけど..結果は流産だった。

しかも、もう子供は作れない…

俺はまた家族を切り捨てなければ成らない…

ステータスの低いセロ、死んでしまったヘンドリック、そして子供の作れない妻

平民だったら…せめて下級貴族だったら切り捨てないで済んだのかもしれない。

これで俺は側室を貰わなければ成らなくなった。

スジャーナには養子の話もしたが、私は家族が欲しいんだ..それは無い。

せめて、スジャーナと仲が良かった貴族の娘がいたら良かったんだが….そんな者は居ない。

だが、最近は随分と明るくなった。

全部君のおかげだ..これならもしかしたら側室を貰っても、その子共がこの家を継いでも上手く行くかも知れない。

君は確かに出来損ないだ…だけど、ラドルフに貢献できない..それは取り消すよ。

君なら案外..貴族は務まらなくても一流の執事にはなれるかも知れないな。

タイムリミット
「離れでセロと暮らそうと思うの!」

スジャーナが突然きて言い出した。

「どうしたんだ急に?」

俺は正直驚きを隠しきれない。

「いえ、ね、私は残念だけどもう子供が産めないわ」

「そうだな」

「だから、もう受け入れる事にしたわ、私だって貴族だもの、子供を産む事の出来ない女に価値が無い事位解るわよ…だから諦めたの」

「そうか、理解してくれて助かるよ」

「どうせ、貴方は側室を貰うわよね..跡取りは必要だからね」

「そうだな…済まない」

「良いのよ、仕方ない事だわ…だからね、もう心の整理をする事にしたのよ…どうせあの部屋も側室に引き渡さなければならないなら早い方がよいわ」

「本当に良いんだな」

「ええ」

「それはそうと、最近は随分セロと仲が良いんだな」

「そうね…だってもう私にはあの子しか居ないじゃない? 貴方は側室をやがて迎えるわ..そうしたら私より側室と一緒にいなきゃ不味いわよ! それに、子供が出来たら私なんかに構っている暇はないわ」

「本当に済まないな」

「別に良いわ..だけど、悪いけど、今の地位は勇者の貴方と大魔法使いの私で築いた物だから悪いけど財産は分割して貰うわよ」

「それは仕方ないな..お前と俺で築いた物だ..だが家を潰す様な金額は駄目だ」

「解っているわ」

「なら良い」

「それじゃ私は行くわね」

………何だろうか…何故か俺が捨てられたような気がするのは気のせいか。

「ねえセロ…今日から離れで暮らすわよ」

「急にどうしたの?お母さま!」

「セーロー….此処には貴方と私しか居ないのよ?」

「スジャーナ」

「なぁにセロ」

《まさか、此処まで変わってしまうなんて…流石に想定外だ》

「どうして急に離れで暮らす事になったのですか?」

「だって、ほらもう私は子供が産めないじゃない…だからアベルは側室を迎えなくちゃいけないわ..なら寝室も全部明け渡した方が良いじゃない」

「スジャーナ、それ本当は違うでしょう、絶対」

「そうね、だって私が好きなのはセロよ..だったらアベルの傍にいる必要はないじゃない..離れに行ったらもう人目を気にせず居られるわ..特に夜はね」

《やりすぎたのか..確かに暇さえあれば抱き続けていたが…まるで別人じゃないか》

「そうだね、凄く楽しそうだ」

《確かに気は楽になったが…》

「あのさ..側室がきたらスジャーナはどうなっちゃうの?」

「気にしてくれるの? 本当にセロは優しいわね..もうお役御免だわ..そうね私もセロと一緒に王都に行こうかしら..ここに居ても意味無いし..お金は気にしないで良いわ..それなりの金額が貰えるはずだから一生お金には困らないわ」

「うん、楽しそうだね!」

「セロならそう言ってくれると思ったわ!」

ラドルフ家は勇者であるアベルと大魔法使いのスジャーナが作った家だ。

スジャーナの言う通りでも結構な金額が貰えるだろう..だがそれで良いのか…

少なくとも、側室に子供が出来たら…ラドルフの跡取りはそいつだ。

幾ら財産を分けてくれるって言っても限界はある筈だ…少なくとも半分半分という訳にはいかない筈だ。

それに、多分貴族で居られるかどうか解らない..スジャーナの価値も..僕と同じでほぼ無くなる。

そう考えるなら…アベルが側室を貰う前に..殺さなければならない。

アベルが側室を貰う前に殺せれば…スジャーナは女伯爵となる筈だ。

だが、アベルは勇者だった筈だ…どの位強いんだ。

「スジャーナ僕に魔法を教えて…あとスジャーナが大魔法使いだった時の事教えて」

「どうしたのセロったら!」

「だって、僕はスジャーナの事知らないんだもの..好きな人の事をもっと知りたいんだ」

「急にもう..良いわよ..後で教えてあげる」

《この子は本当にずるいわ..いつもドキドキさせられる..もう離れる事は出来ないわ》

寝物語…勇者とは
僕は今ベットの中に居る。

する事をすまして..今はスジャーナの頭を撫でながら横になっている。

前世の僕は確かにクズだったが母親とこんな事はしていない。

というかババア相手にそんなことは出来ない….だが..近親相姦の恐ろしさは知らなかった。

正直に言うと…嵌る..それしか言えない。

母親としての本能なのか..スジャーナは僕がして欲しい事が直ぐに解るようだ…そして嫌がる事無く大抵の事はしてくれる。

僕の体も、心も多分、セロの体や心に引きずられるのか..心地よい。

「アベルにバレるのが怖いな..」

「ふふふ、可愛い事を言うのね、バレても問題ないわよ..子供の産めない私はもう女じゃないから…私を愛してくれるのは貴方だけだわ」

最近になってスジャーナが解かった気がする。

此奴にとって1番好きな人は別格だという事だ。

多分昔は

アベル>>>>>>>>>>ヘンドリック>>>僕

こんな感じだったんだろう、だけど、今は

僕>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>アベル

こんな感じだと思う。

此奴は母親にはなれない女で、総てが男優先の女だ。

前の世界では育児放棄とかして男につくすそういう駄目女だ。

《何でもするから捨てないでと男に縋りつく..そういう女だった。》

それだけだ。

スジャーナの髪を触りながら囁きかけた。

「そうだ、スジャーナ…スジャーナの昔について教えて」

「どんな事が聞きたいの? セロになら何でも教えてあげるわ」

「大魔法使いの時の話が聞きたいな」

「そう、解ったわ」

《そこから解かった事は…勇者や大魔法使いは思った程ではない、そういう事だった。》

「そう言えばアベルやスジャーナはドラゴンとか魔王を倒したの?」

「ふふふ、セロはこんな事する位大人なのに..子供の所もあるのね..嬉しいわ」

《たまに、母親みたいな顔もするんだよな..まぁ良いけど》

「だって、勇者や大魔法使いでしょう」

「セロ、それは物語の話でしょう…本当の勇者は魔王種を倒せばその資格を得られるのよ」

「どういう事なの?」

「魔王種とはキングという名前がついた魔物の事よ..ゴブリンキング、オークキング、オーガキングって感じね…これらの魔物を6人以下のパーティで倒せば…リーダーが勇者、火力系の魔法使いに 大魔法使い、回復系の魔法使いは 聖女(女のみ) その他役割によって 賢者 剣聖 等の地位が与えられるのよ」

《伝説の勇者とかでは無くて良かった》

「そうなんだ、勘違いしていたよ..それでスジャーナ達は何を倒したの..」

「私達は..アベル、私の2人でトロールキングを倒したわ..」

《微妙だ…だが二人で倒した..どの位の強さなんだ》

「トロールキングってどの位強いの?」

「そうね騎士一個師団を出せば倒せるんじゃないかな..」

「それって凄いね」

「そうよ..私は凄いのよ..だけど、私の全部は..セロ 貴方の物だわ」

僕はスジャーナに抱きしめ、目を閉じた。

少なくとも勇者は思った程では無かった..だが充分に強い。

二人で騎士一個師団..ならその半分だとして15人、どうにかなるかも知れない。

そろそろアベルには消えて貰わないと困る。

アベルの死(表)
その日は朝から騒がしかった。

スジャーナの髪を撫でながら寝ていると、けたたましくノックがされた。

「スジャーナ様、セロ様起きて下さい」

最近ではスジャーナは周りを気にすることなく僕と寝ている。

周りはそれに何も言わない。

近い者は気が付いているかも知れないが…遠い物は親子仲が良い、そう思っていると思う。

「何事ですか?」

スジャーナが、貴族らしく返事をすると..

「アベル様が、アベル様が死にました」

「嘘、アベル様が死ぬなんて…」

「嘘よアベルが死ぬなんて..っ直ぐに行きます」

僕たちは、服を着て急いでアベルの部屋に向かった。

そこには安らかに眠るように死んだアベルの死体があった。

「医者は呼んだのですか?」

「はい、間もなく来ると思います」

「そうですか…誰もこの異変に気が付かなかったのですか?」

「はい、朝来た時にはもう、旦那様はもう」

「アベル、アベル、死んでしまうなんて…私はこれからどうすれば良いのでしょう」

正直僕は悲しくはない..だが、お芝居をしなくては不味い。

「アベル..いえお父様が亡くなるなんて..どうして」

その後、医者が来てアベルの死体を診た。

「何か原因は解りませんが..心臓の発作が原因かと思われます」

「そうですか…確かにアベルは最近、体が弱くなってたのかも知れません」

「お気になさらない事です..人は何時かは死ぬのですから」

「はい」

そして、翌日には神父が呼ばれ静かに葬儀が行われた。

スジャーナが悲しそうな顔をしていたのでそっと手をさしだした。

あっけなかった、僕はアベルを殺す方法を色々考えていたのに..何もしないうちにアベルが死んでしまった。

アベルの死 (裏)
私は気が付いてしまった。

セロがアベルを殺そうとしている事に。

本来なら、子供が親を殺そうとしているのだ止めるべきなのだと思う…

だけど、嬉しくてしょうがない..実の親を殺そうとしている息子が愛おしくてしょうがない。

だってセロは私の為に殺そうとしてくれているのだから..ここまで愛されているのかそう思ったらもう…駄目ね..ついニヤニヤしてしまう。

あの子は私に何も言わない..だけど、毎日肌を合わせているから..解ってしまう。

あの子は本当に優しい…私が「子供が出来ない体」そういう話をすると良く見ないと解らない位だけど、悲しい顔をする。

「側室の話や離れの話」をした時も嬉しいという顔と悲しい顔両方が見れた。

そして、そんなセロが私の昔の事を聞いてきた。

どちらかと言うと私より勇者としてのアベルの事について熱心に聞いてきた。

自分では隠しきっているつもりだろうけど…解ってしまうわ…アベルを殺そうとしているんでしょう。

だけど、私は貴方がアベルを殺すのが怖いわ。

アベルが死ぬことも、殺そうとする貴方が怖いからじゃない…貴方が万が一負けて殺されてしまう..それだけが怖いのよ…

私は多分、セロ、貴方が死んでしまったら生きていけない。

セロ、貴方が傍に居る事..体をあわせる事はもう私にとって当たり前の毎日なのよ

それが無くなるなんて考えられないわ。

だったら…貴方がアベルに何か仕掛ける前に…私が殺すしかない。

そう考えたら、早い方が良い、側室を迎えたらチャンスが減る。

私は大魔法使い…その仕事の中には暗殺から仲間を守る事も含まれる。

つまりは暗殺についてもエキスパートだ。

真正面から戦えば勇者であるアベルに私は勝てない..だが裏なら話は別。

王都なら死因は解るかもしれないが..この辺りなら絶対に死因が解らない殺し方が出来る。

そんな方法は幾らでも知っている。

そして私はそれを実行した。

アベルが好む食材で私やセロが食べない物に毒をいれた。

それだけで良かった…後はそれをアベルが何時食べるかだけだ。

万が一にもセロが食べてしまうといけないので…暫くは自分たちの食事は私が作った。

メイドには「側室が来た時の為に馴れないと」とか「最近息子が愛おしくて..昔を思い出して料理したいのよ」そう言っていたから万が一にも疑われないだろう。

上手くいった…

私はアベルが死んだ時や葬儀の時には悲しそうな顔をしたり、泣いたりもした。

本当は全然悲しくないわ…だってアベルなんてとっくに愛していないから…

だけど、セロには冷酷な女と思われたくない..本当は違っても優しい女だと思われたい。

だから、悲しそうにしていた。

本当は…凄く嬉しい..これで好きな時に好きなだけセロと愛し合える..

その日の夜、私は..いつも以上にはしたなく、燃えた…

セロと過ごす時間は..本当に気持ちが良く..愛おしい..この時間の為なら何でもする。

私はそういう女なのよ。

1年の猶予
アベルが死んでしまった事で僕の学園行きは1年遅れる事になった。

学園への理由は「当主が亡くなった事による、継承についての整理」と表向きはなっている。

だが、本当の理由はスジャーナが離してくれない。

「アベルが死んじゃったから、女伯爵になっちゃった…まぁ私も子供がもう産めないし、セロが生きがいみたいな物ね! 残りの人生はセロと楽しみながら生きていけばいいわ、セロの代でラドルフ伯爵家はもう終わりで良いわね!」

どこまでもスジャーナは女だった。

これってさりげなく僕を愛しているという言葉以外に、《浮気は許さない》そういう話が含まれているんだ。

だって、どんなに無能だって貴族だよ僕は、そしてラドルフ家は伯爵だ、幾ら僕が無能でも男爵家や子爵家なら婚姻の話位持ち上がるよ..だけど、さらりと結婚はさせないで潰すみたいだ..凄いよこれ。

思っていても貴族である以上は言ってはいけないことだと思う。

最近ではメイドや使用人にも関係はばれている。

だが、さすが伯爵家の使用人、余計な事は言わない。

親しいメイドのアンに聞いてみた。

「良いじゃないですか? お母さまの愛情を取り戻せて、それにそういう関係は案外貴族様には多いんですよ」

「そうなのか」

「はい、よく聞く話です」

ちなみに、下手にメイドと仲良くするとスジャーナの機嫌が悪くなり、そのメイドに風当たりが強くなる。

だから、アンには特別な人間になって貰った。

先に先手を打って、「スジャーナと仲良くなりたくて考えていた時から助言してくれていたお姉さん」そんな感じでスジャーナに話した。

実際に本当に子供一人であそこまで行動できるか考えたら、普通はできない、それなら協力者が必要だ。

居ない筈の協力者を彼女にした。

まぁ、話もしていたから全部嘘ではない。

その事を話したらスジャーナは凄く喜び、他のメイドよりアンを一つ上に扱うようになった。

たまに銀貨をもらってアンも喜んでいるから良いんだけどさ..

アンが僕の傍に良くいるがスジャーナは笑っている。

たまに二人でアイコンタクトしてして居ることに気が付いた。

僕は見張り役を作ってしまったようだ。

そして、僕は侯爵家にルドルを迎えに行ったが居なかった。

多分、あの時に言ったことは事は僕を安心させるために言った嘘だったんだろう。

ルドルを探すために冒険者ギルドに依頼を出しに行ったら、ルドルがいた。

ルドルは凄くやつれていた、何かの品物を換金していたがどう見ても銅貨だ。

「ルドル!」

「セロ…これは恥ずかしい所を見せてしまいましたな」

ルドルは歳だ、いかに優秀でも再就職なんてあるはずが無い。

それなのに、此奴はそれを捨てて庇ってくれたんだ。

やっぱり、ラドルフ伯爵家、いや僕にとって必要な人間だ。

「ルドル、お願いだラドルフに帰ってきてくれないか?」

「セロ、お前にその権限がないだろう?」

「そこで座って話さないか?」

話せることは全部話した。

スジャーナが子供の産めない体になった事、自分との仲が良くなった事、嘘をつきたくないから男と女の関係であること。 そして自分が恐らく次の当主になるが…そこでラドルフが潰れる可能性が高い事。

「なるほど、話は解りました。それなら私はラドルフではなく、セロ様とスジャーナ様に仕えれば良いわけですな」

「お願いできるかな?」

「解りました、セロお坊ちゃん、いやセロ様、昔のように務めさせていただきましょう。あっ執事になる前に一言」

「はい」

「セロ、面構えが変わりましたな、それと形はともかく取り戻せて良かったな..ここからは執事に戻りますので平にご容赦ください」

「うん、ありがとう」

これで多分、どうにかラドルフも回るだろう。

これからが学園に入るまでの一年…スジャーナに魔法を死ぬ気で教わろう。

そう考えた。

幸せな一日
スジャーナについて魔法を教わろうとした最初の日

「これはねセロ、決して意地悪を言うためじゃないのよ? もう一回教会に行きましょう!」

スジャーナについて教会に行った。

前と同じようにお金を払いステータスを見てもらった。

今回はかなり細かい所までみてもらった。10歳になった僕はもう適正でなく実際のステータスが解る

セロ
LV 2
HP 80
MP 240
ジョブ 魔法使い (転生人)
スキル:アイテム収納、闇魔法レベル1 火魔法レベル1 風魔法レベル1 水魔法レベル1 格闘レベル1

ちなみに(転生人)は他の人にはぐちゃぐちゃした文字に見えるらしい。

「流石、ラドルフの名に恥じない素晴らしい才能ですな、特に魔法については天才としか言いようがありません!これなら学園でも十分上位の成績を狙えますな」

「司祭様、この数値は間違いないのね…」

「はい、間違いなくセロ様は凄い才能に恵まれていますね」

「この子は、前にここでステータスを見て貰った時に魔力適正が20って言われたわ! そして剣術適正30って、これはどういうことなのかしら、前の時に何か間違いがあった、そういう事かしら!どう説明してくれるの? この子の一生をあと少しで終わらせてしまう所だったわ」

「このようなステータスの子がそんな適正の訳ありません、前の司祭の間違いとしか..」

「この事は王宮にも伝えます..厳しく」

「すいません、司祭様、ちょっと席を外します、お母さま、落ち着いてね」

「これが落ち着いていられますか? セロは..」

「良いから、ちょっとね..」

僕は無理やりスジャーナの手を引いて馬車に戻った。

「セロ..あなた、うぐうんううう」

何時ものようにキスをした。

「スジャーナ、落ち着いてくれた」

「まぁ、はい落ち着いたわ、だけど教会は本当に許せないわ、絶対に抗議しなきゃ」

「それだけど、多分、司祭様は悪くないと思うんだ」

「セロ、それはどうして、そう思うの?」

ここで、僕が気付いた3つの事の内1つをスジャーナに伝える事にした。

それに多分、これが一番スジャーナが喜ぶ話だと思う。

「上位の魔法使いに魔力を流して貰うと、魔法の素養のない人でも魔力があがったり才能に目覚めるという本を読んだんだ」

「それは私も知っているわ、それとどう関係があるの?」

「手を触れて流すだけでそうなる事があるんだよ、僕とスジャーナは何していたのかな?」

スジャーナの顔が茹蛸のように赤くなる。

「そうね、そういう事なのね」

「手を触れて流すだけで、そういう事が起きるなら、それ以上の事をすればもしかしたら、こういう奇跡が起きるんじゃないかな?」

「そそそそそ、そうね、あれだけ愛し合ったから、確かにそれ以上に魔力は流れていたかも知れない..それに、最後までしちゃってた訳だから、一体感やふれあいから快感まで全部共有しているから、可笑しくないのかも..」

「でしょう? ほら、闇魔法レベル1 火魔法レベル1 風魔法レベル1 水魔法レベル1 スジャーナの苦手な光魔法は入っていないよ?」

「ほんとだわね!」

「あのね、これはスジャーナが僕を愛してくれたからおきた奇跡なんだよ! ありがとうスジャーナ!」

こういう所、本当にずるいと思うのよ、大人になったり急に子供になったり、恋人といて子供として私の愛を根こそぎ持っていくんだから…今は母親として愛しましょう..

「よかったわねセロ..それじゃ司祭様の所へ行こうか?」

「うん」

しかし、これ世紀の大発見だけど、どこにも公表できないわね..恐らくただ体を重ねただけじゃこんな事は起きないわ、もしそれで起きるなら高級娼婦は全員、大魔法使いになるわ。
恐らく、母子それが原因だと思う。同じような素養を持つとか、肉体の一部が同じとか、そういった別の条件が必要な筈よ。 近親相姦が条件…到底発表はできないわね。

戻ると司祭は青ざめていた。

「さっきは取り乱して申し訳なかったわね、逆ならともかくこれは喜ばしい事だから文句は言わないことにしたわ! 前の司祭は許せないけど、あなたはしっかりとこの子の才能を見出してくれた、それで前回の事は水に流します!」

「お許し頂きありがとうございます」

「良いのよ!今日は素晴らしい日だわ、司祭様もこの子の幸せを祈って頂戴!」

「はい」

「それじゃ、今日は最高のレストランで最高の食事を食べて帰りましょう!」

「はい」

スジャーナは凄く楽しそうにセロと一日を過ごした。

それは本来ならセロが5歳の時に過ごす筈だった楽しい一日だった。

幸せな一日 (裏)
僕はステータスを見た瞬間なぜこうなったのか3つの事が思い浮かんだ。

そしてそのうち2つは非常に不味いものだった。

だから、スジャーナが喜ぶ答えに誘導した。

「上位の魔法使いに魔力を流して貰うと、魔法の素養のない人でも魔力があがったり才能に目覚めるという本を読んだんだ」

「それは私も知っているわ、それとどう関係があるの?」

「手を触れて流すだけでそうなる事があるんだよ、僕とスジャーナは何していたのかな?」

スジャーナの顔が茹蛸のように赤くなる。

「そうね、そういう事なのね」

「手を触れて流すだけで、そういう事が起きるなら、それ以上の事をすればもしかしたら、こういう奇跡が起きるんじゃないかな?」

「そそそそそ、そうね、あれだけ愛し合ったから、確かにそれ以上に魔力は流れていたかも知れない..それに、最後までしちゃってた訳だから、一体感やふれあいから快感まで全部共有しているから、可笑しくないのかも..」

「でしょう? ほら、闇魔法レベル1 火魔法レベル1 風魔法レベル1 水魔法レベル1 スジャーナの苦手な光魔法は入っていないよ?」

「ほんとだわね!」

「あのね、これはスジャーナが僕を愛してくれたからおきた奇跡なんだよ! ありがとうスジャーナ!」

これが円満な答えだと思う。

スジャーナにしても自分と体を重ねる事で僕を幸せにできた。

女として母親としても満たされた気持ちになれたと思う。

だけど…

多分、本当は違うと思う、恐らく僕が考えた説の中で一番ない説だ。

ここを見てほしい。

セロ
LV 2 ←
HP 80
MP 240
ジョブ 魔法使い (転生人)
スキル:アイテム収納、闇魔法レベル1 火魔法レベル1 風魔法レベル1 水魔法レベル1 格闘レベル1

LV 2になっている。

僕はまだ討伐をしていない。

普通の貴族の子供は学園に入るまで討伐はしない。

じゃぁ僕が討伐したものは何か、ヘンドリック僕の弟だ。

人を殺したからここまでのステータスが手に入ったのか正直解らない。

それとも、身内を殺したからこうなったのか解らないがLVが上がってステータスが上がったのなら何だかの関係があるだろう。

少なくとも他にLVが上がった意味が解らない以上ヘンドリックを殺したことに意味があると思う。

あとは多分(転生人)
が何だかの作用を起こしたのかも知れない。

幾ら考えても仕方ない…解らないことは解らない事なのだから。

原因と魔法の才能
きょうはスジャーナから魔法の基礎を教わっている。

それでどうしても一つだけ聞きたい事があった。

「レベルや経験値って人間を殺しても入るの?」

「何故、そんなことを聞くのかしら? 今の授業と関係ないよね!」

「いや、ふと思ったんだ、もし、人を殺して経験値が入るなら王都の処刑人は凄く強いんだろうなって」

「馬鹿ね、同族は殺しても経験値は入らない…常識でしょう! そんなの当たり前すぎて本にも書いてないわよ!」

「そうだったんだ..ごめんねスジャーナ」

「ちゃんと身をいれて聞きなさい」

これでおおよそ、自分に起きた事が解った。

恐らく真相はこうだ。

ヘンドリックを殺した、普通なら経験値は入らない、だが僕は恐らく人間というくくりから抜けている

つまり、恐らく僕はこの世界で人間というくくりから少し外れている…つまりこの世界の人間で無く、転生人という別種族なんだと思う。

だからヘンドリックを殺してレベルがあがった。

子供一人殺してレベルがそんなに上がる物だろうか?

いや、これも説明がつく、ヘンドリックは勇者と大魔法使いの子供だ。

そう考えたら、魔物になおせばキングやロードだ。

例えばゴブリンだ、長年鍛え上げたゴブリンよりも生まれたばかりのゴブリンキングの方が遙かに高い経験値が入る。

そう考えたら ヘンドリックはキング種に値したのかも知れない。

早目に殺して正解だった。

恐らく、彼奴が強くなりだしたら、もう終わりだった。

「セロ、ちゃんと聞いていますか?」

「ちゃんと聞いているよ…だけど、魔法基礎概論は、全部覚えているんだ..だから違う事がしたいと思って」

「本当に覚えているの? じゃぁ幾つかの質問に答えて」

「正解だわ、凄いわ、流石私のセロ、いったい何時覚えたのかしら?」

「悲しいから言いたくない..」

「あっごめん..」

僕は才能が無いといわれてからの唯一の自由が本を読む事だった。

少しでもと思い、書庫の本は大体一通りは目を通している。

「大丈夫だよ、スジャーナ、だけど僕は書庫の本は大体読んでいるんだ..だから実技を教えて」

「ええっ解ったわ..それなら私の十八番よ、任せなさい!」

外に出て修練場に向かう。

ここはスジャーナやアベルが体が鈍らない様に鍛えていた場所だ。

「最初はやっぱりファイヤーボールからかしらね?」

「その前にスジャーナに見て欲しい魔法があるんだ?」

「そう、魔法迄独学で勉強していたのね..いいわ見てあげる」

魔力は僅かで良い、拡散しないように圧力をかけるようにして抑え込む、そして解き放つ。

「ファイヤーニードル」

「何も起きないじゃない?失敗したの? へんな名前の魔法ね..聞いた事も無いわ」

「スジャーナ、的を見に行こう」

「やっぱり何とも..嘘、これは!」

「やった貫通しているでしょう?」

的は小さな穴があき、プスプスと音がたっている。

「凄いわね、これどうやったの?」

「ほら、ボクって魔力が絶望的って話しだったじゃない? だから魔力は少な目で威力がでる魔法を考えたんだ」

《この子はやっぱり私の子だわ、魔力なんて関係なかったのね..この子がもし、魔力適正が20のままで才能が無くても、一流にまで手が届いていたんだ》

「凄いわね、これ、こんなに目に見えない程の炎で板を貫通するなんて..どうやったの?」

「魔法に圧縮をかけて..」

「待って、圧縮何それ..」

《しばらく聞いて意味は解った..だけど、それセロにしか出来ないと思うよ、だって大魔法使いの私に再現できないんだもの》

「対人用のオリジナルスペルか..凄いわねセロ」

「そんなに凄いかな..これ」

充分凄いわ、魔物相手には通用しないけど、対人なら、初見に限定すればアベルや私にも通用するわ。

見ない針で目を潰されたら十分な脅威だわ。

「うん、よく頑張ったわセロ、今日はまたおいしい物を食べに行きましょう」

「ありがとう、スジャーナ」

この子にの最大の武器はこの発想力だわ..だから私はアドバイスしかしない。

何故ならこの子は私以上の天才なのだから。

ボウフラのように
結局、僕は学園には通ったが…ボウフラのように何もしないで普通に過ごした。

学ぶ事は殆どなく、授業その物も面白くも何ともない。

ただ、出席して、テストで高得点をとればそれだけで良い..

スジャーナに聞いたら

「私より優れた魔法使いなんて10人も居ないわよ!」

との事だった。

じゃぁやるだけ無駄じゃないかな?

本当にそう思った。

女も手に入れたし財産もある。

そして、それを食いつぶしても誰も文句なんて言わない…

なら、簡単だ、前世の様に、面白、可笑しく生きれば良い。

ボウフラのようにクズのように日々楽しく暮らせば良い。

それだけだ

FIN