私の日常
私の名前は愛子。
都市伝説の口裂け女の妹だ。
私たちは三姉妹だったけど、お姉ちゃんたち二人はもう殺されちゃった。
退魔士とかいう人に焼き殺された。
だけど、私はこんなに醜くて化け物みたいな力もあるのに、、、人間なんだって。
信じられなかった。
「お前は、まだ人間だ、だから殺さない」
そう言って退魔士は去っていった。
私は、殺して下さいと何度も頼んだのに殺してくれなかった。
姉たちを失った、私はどうすれば良いの?
私が生きてこれたのは姉たちが居たからだ。
1人で化け物の私が生きていける訳がない。
真面目になろうと、こんな醜い私を雇う店はないだろう。
死ぬ事以上に過酷だ、、、と思う。
そんな私は、、今浮浪者として生きている。
ロリコンの男が声を掛けてきたが、私の顔を見た途端に逃げ出した。
そりゃそうだ、私って正真正銘の化け物だもん。
そしてせっせと今日もゴミ箱をあさっている。
ゴミ箱の中から食いかけの鮭弁と飲みかけのお茶があった。
うん、凄く良い日だ。
お姉ちゃん達が居た頃が懐かしい、、お姉ちゃん達は人を狩れるから、お金に困らなかった。
だから、ホテルに住めたけど、、今じゃ夢。
お風呂は何時入ったのかな?
まぁ醜い私にとって身だしなみはどうでも良いけど、、最近、体が痒い。
正直、私も化け物だから人を狩る事は出来るかも知れない。
だけど、怖くて人が殺せない。
うん、化け物としても失格だね。
正直、家出少女みたいな者だから、たまに声を掛けてくる人もいるけど、、醜いから顔を見た瞬間逃げ去る。
ある意味、襲われないから、この顔も悪くない。
美少女だったら、ロリコンと変質者に襲われて大変だったと思う。
まぁ、本来の私は襲う側なんだけど、、
お弁当を食べお茶を飲むと、、、眠くなってきた。
まぁ、、私なんて気にする人は居ないから、、このまま寝ようかな、、、
出会い
目が覚めると見知らぬ街に私は居た。
ここは何処だろう。
どこかがおかしい、、あれ、私、、裏通りで寝てたはずなんだけど、、ビルが無い。
周りを見てよく漁るポリバケツのゴミ箱が無い。
そして、街並みがやけに古臭い気がする。
「なんでレンガ作りの家しかないのかな? どう見ても遊園地のアトラクションか中世のヨーロッパにしか見えないよ、、何があったのかな?」
まぁ私の場合は何処に居ても一緒なんだけどね、居場所が無いから。
だけど、これからのご飯はどうしようかな?
前の場所ならゴミ箱のある場所も把握できていたし、お弁当が捨てられてそうな場所も解る。
だけど、新しい場所に来たから何も解らない。
暫く休んだら、、表通りにでも行こうか。
「うん、そんな所でどうしたの? 何かあったのかな?」
少し年上の男の子が話しかけてきた。
不味い、私、、顔を隠していない、、仕方ない、怖がらせる気はないけど、、そのまま振りむこう。
そうすれば怖がって立ち去るだろう。
「どうしたか言ってくれなきゃ俺解らないよ、、馬鹿だから、、倒れていたみたいだけど大丈夫?」
あれれ、可笑しいな?
何で怖がらないんだろう?
私はポーチから鏡を出してみて見た。
いつも通りの口が裂けた醜い顔だ。
「あの、私が怖くないんですか?」
可笑しいのだ、この人は私を怖がらない。
それ処か凄く優しい目で私を見つめてくる。
母さんやお父さんが私がまだ小さい時に見つめていた目。
お姉ちゃんに口を引き裂かれる前に、私を好きだった男の子が私を見ていた目。
こんな目で見られるなんて、、、どの位ぶりだろうか。
「なんで、怖がらないといけないんだ?」
おかしいな。
どうして、怖がらないの?
「私、、凄く醜いでしょう、、化け物みたいでしょう」
「化け物? 君みたいな可愛い女の子が化け物なら、俺なんて悪魔か魔王だな、、君と俺がどちらかが化け物なら、、多分俺が化け物になると思うよ?」
私は彼を見た。
凄く綺麗な人だった。
良くポスターなんかで見る芸能人より綺麗だった。
こんな綺麗な人がなんで化け物なんだろう、、これはもしかしたら仮の姿で私と同じ化け物なのかな?
だったら、嬉しいかな?
「あの、お兄さんは、その化け物なんですか?」
化け物なら一緒に居てくれるかな?
1人は結構辛いんだ。
「まぁ、、化け物に見えるかも知れないけど、、人間だよ」
人間なら、なんで化け物なんて言うんだろう?
凄く、綺麗なのに。
「最初の話に戻るけど、何か困っていたんじゃないの? あんなところで寝ていた位だから」
「確かに困っているけど、、、」
「俺で良いなら話し位聞いてあげるよ? まぁ貧乏だからお金の話には乗ってあげれないけど?」
「そう、、じゃぁ聞いて貰える?」
私は自分が化け物だという事を誤魔化して自分について伝えた。
両親は居ない事。
三姉妹で暮らしていたけど、姉二人が殺されてしまった事。
その後は行く先が無かったので一人で浮浪者みたいな生活を送っていた事。
今現在も行く先が無い事。
彼は私を見ると泣きながら、辛かったんだね。と言い続けた。
手を握られたり、頭を撫でられた時には私も涙がでてしまった。
こんな優しい事、、された記憶が無い。
暫くすると、彼は顔を赤くしながら、モジモジしながら話してきた。
「行く所ないなら、俺んちに住まないか? 正直余り綺麗な所で無いけど外よりはましだと思う」
まずい、、、こんなに優しくされたら、、好きになってしまう。
自分でもチョロいと思うけど、、私に優しい人間なんて、、他には居なかったから
「いいの? 迷惑じゃないの?」
「迷惑じゃない、、寧ろ嬉しい」
「そう、、嬉しんだね、、だったら住ませてくれる?」
私が傍にいて嬉しいなんて言われると思わなかったな。
普通は私を見ると、石をぶつけてくるのに。
「そう言えば、名前きいてなかったね、、私は愛子って言います。宜しくね」
「俺はトーゴって言うんだ、、まぁ冒険者をしているんだ、、駆け出しだけどね」
トーゴ君か、、、可愛いって言って貰ったせいかな、、凄くカッコよく見えるよ。
いや、、言われる前から、、凄い美形にしか見えなかったけどね、、あれっ冒険者なんて仕事珍しいね。
中二病なのかな、、、それでも良いや、、私には優しい人には間違いないんだから。
トーゴの家にて
ここ絶対に知らない世界だわ。
どう見ても昔の外国にしか見えない。
しかも、魔法使いの恰好や騎士の恰好をした人が歩いている。
うん、多分、ここ異世界だ。
だけど、私みたいな化け物がいる位だからそんな世界があってもおかしく無いと思う。
「トーゴくん、いつ見ても綺麗だね」
私から見て、どう見ても綺麗な大人のお姉さんがトーゴ君に話しかけてきた。
あれっトーゴ君、凄く嫌そうな顔している。
「何をいっているんですか、冗談はやめて下さい」
「冗談じゃないんだけどな、、あれっ、その化け物みたいな女の子なに」
やはり、私は醜く見えるんだな。
それが普通だよね。
私は顔を隠すようにトーゴ君の後ろに隠れた。
「愛子の事は悪く言わないでくれますか? 大切な友達なんで、、すいません失礼します」
「ちょっとトーゴくん、待ってよ」
トーゴ君は不機嫌そうに私の手を引っ張る様にして早歩きをした。
「ごめんね愛子、、あの人も悪い人じゃないんだけど、頭が少しおかしくてさ、、あんなに醜い顔なのに自分が美人に見るみたいなんだ、、まぁこんなに醜い俺に優しくしてくれる人ではあるんだけどな」
いや、あの人おかしくないよ?
トーゴは凄く美形だし、あの人も凄く美人だよ。
「あのさぁ、、トーゴ君に聞きたいんだけど、トーゴ君からみてさっきの人と私、どっちが綺麗?」
「なに、そんな事聞くんだ? そんなの愛子に決まっているだろう」
そうなんだ、おかしいのはこの世界じゃなくトーゴ君なんだ。
美醜がが逆転しているのかと思ったけど、、違うみたいだ。
多分、トーゴ君の中でだけ美醜が逆転しているのかも知れない。
だけど、嬉しいな、、綺麗なんて言われた事ないもの。
お姉ちゃんに口を裂かれてから、今までずっと嫌われるだけだったから。
「愛子、家に着いたぞ、、余り綺麗じゃないけどな」
うん、確かに汚いね。
だけど、ゴミを漁って外で寝ていた私からしたら、うん立派な家だ。
「ねぇトーゴ君、、ここお風呂ってある」
「ないな、お風呂なんて余程の金持ちじゃないと入らないんだけど、愛子ってお嬢様?」
「大昔はね」
「大昔、愛子も冗談がきついな、、どう見ても俺より年下だろう」
うん、私って少女にしか見えないんだった。
「冗談だよ」
「あっ、だけど此処安い割には水浴場がついているんだ、良かったら浴びてきなよ」
「うん、そうさせて貰う、、、そのありがとう」
体が凄く痒かったから正直助かる。
しかし、トーゴ君も余りお金が無さそうだ。
無料でお世話になるのも悪いから、私も仕事を探そうかな?
ここは異世界だから、私に出来そうな仕事もあるかも知れない。
うん、そうしよう
初めての夜。
水浴びを済ました私はトーゴ君の服を借りた。
そして桶を借りて、今迄来ていた服を洗濯している。
水浴びをして解かったけど、私は凄く汚かったんだな。
垢も沢山でたし、綺麗な水が私の体を洗うとすぐに茶色く濁ったから。
多分、匂いも臭かった、、と思うんだけど、、トーゴ君臭くなかったかな。
服も、水浴びをしてから解かったけど、凄く臭かった。
そりゃそうだ、私浮浪者をしてたんだもの。
臭くて汚いのは当たり前だよね。
これで、少しはまともになったかな?
「トーゴ君、ごめんね時間掛かって」
「別に、そんなに待ってないから良いよ、それよりお腹すいているだろう? 食事用意したから一緒に食べよう?」
スープとパンと何かの肉料理。
だけど、私の座る所には肉料理があるけど、トーゴ君の所には無い。
「トーゴ君、何でトーゴ君の分の肉が無いの」
「今日は余りお腹がすいてなくてな、気にしなくていいんだ」
「そう、だけど、私も余りお腹すいて無いから半分こしよう」
「そう、じゃぁそうしようか」
嬉しいな、暖かいご飯なんてどの位ぶりかな。
それより、誰かとご飯食べるなんて姉さん達が死んで初めてだ。
それにコソコソと口元を隠さないでご飯が食べれるなんて、夢みたい。
駄目だ、油断したら涙がでちゃう。
「どうしたんだ、愛子、さっきから元気ないけど」
気遣いが凄く嬉しい。
「何でもないよ、、ただ、誰かと食事するなんて暫くなかったから戸惑っているだけ」
「そう、それなら良いんだけど」
ご飯を食べ終わると楽しくお話しをした。
誰かとしゃべるなんて、もうずっとして無かった。
これ、凄く楽しい事だったんだ。
気が付かなかった。
そうだ、トーゴ君に相談しなきゃ。
「トーゴ君、明日から私、なにをすれば良い」
「別に、何もしなくても良いよ、、愛子が傍に居るだけで嬉しいからさ、何か遣りたい事が見つかるまでゆっくりしてればい良いよ」
傍に居るだけで嬉しい、、そうなんだ。
何か夢みたい。
「そうだ、トーゴ君は、私が傍に居ると嬉しいんだよね?、、だったらトーゴ君の仕事を手伝うよ、、そうしたら何時も一緒に居れるよ」
一緒に居たいのは私なんだけどね。
「じゃぁ、愛子も冒険者になってくれるの? そしてパーティ組んでくれる。」
この辺りは案外ゲームに近いのかな、、、でもトーゴ君嬉しそうだ。
「うん、トーゴ君が喜んでくれるなら、、いいよ」
「やったーじゃぁ明日ギルドに行って愛子の冒険者登録をしてパーティ申請しよう」
「うん」
そしてこれから寝ようとした時に困った事になった。
ベットと毛布が地取り分しかない。
そりゃそうだ、ここには昨日までトーゴ君しか居なかったのだから
「俺が床で寝るから、愛子はベットを使って」
「いいよ、、、私昨日まで外で暮らしていたから床で充分だから」
「駄目だよ、男として女の子を床で寝かすなんて出来ない」
嬉しいな、トーゴ君にとって私は女の子なんだね。
「じゃぁ 一緒に寝ようよ」
「それは男として、、」
「トーゴ君、私と一緒に寝るのは嫌、、?」
「そうじゃないけど、、男女だぞ」
「トーゴ君、変な事しないよね」
されても別にい良いんだけどね。
こんな化け物で良いんなら。
「勿論、しないさ」
「じゃぁ、問題無いじゃん、一緒に寝よう」
こうして、私はトーゴ君と一緒のベットで寝た。
嬉しくて涙が出そうになった。
だけど、私が泣いてしまうと多分トーゴ君が起きてしまうから一生懸命我慢した。
暫くするとトーゴ君が涙を流しているのに気が付いた。
もしかしたらトーゴ君も寂しかったのかな。
私は両手を回すとトーゴ君の頭を抱きしめた。
トーゴ君が泣き止んだのでそのまま私も眠りについた。
ギルドへ
「おはよう、愛子」
「おはようトーゴ君」
「今、朝食が出来るから少し待ってて」
うん、何だかトーゴ君お母さんみたいだ。
「うん、じゃぁ顔洗ってくる」
今日の朝食はスープとパンだ。
この世界の朝食ってこんな感じなのかな。
まぁ、ゴミ漁っていた私からしたら、うんご馳走だね。
「いただきます」
「愛子、いただきますって何?」
「私の村でご飯食べる時の挨拶なんだ、気にしないで」
「そうなんだ、、珍しいね」
そうか、それじゃご馳走様も言わない方が良いのかな。
「トーゴ君、ご飯ありがとう」
「どういたしまして」
「それじゃ、そろsろ行こうか」
「何処に行くの?」
「昨日話しただろう、ギルドだよ」
「うん、行こう」
「ここがギルドか凄いね」
「うん、この街は迷宮があるから、ギルドも大きんだよ」
「へぇーそうなんだ、で私は何をすれば良いのかな?」
「まずは、登録だな」
ここは、凄くいいなぁ。
危ない仕事かも知れないけど、怪我人が多い。
腕が片方無い人も居るし、傷だらけの人も多い。
これなら、うん口が裂けていても問題が無さそう。
トーゴ君は私の手を引くと受付の方へと向かった。
「トーゴ君、今日は何の用?」
「今日は冒険者の登録とパーティの申請にきました」
「その横の女の子の登録ね、、お嬢ちゃんは文字は書ける」
酷い顔、その口は誰にやられたのかしら、こんな女の子にこんな事するなんて、魔物じゃなくて人間ね、、盗賊にでもされたのかしら、、、いずれにしても辛い人生だわ。
「遠い所からきたから解らない」
「そうだったら代筆してあげるわ」
「ありがとう」
「まず、名前と年齢を教えて」
「愛子、、12歳」
本当の年齢は解らないけど、、確か、小学生で良い筈だ、、うん、私は永遠の12歳。
「そう、得意な武器とかある?」
えーと、この世界に鎌とかあるのかな。
「鎌とかありますか?」
「鎌ね、確かに農村とかで武器に使う人がいるって聞いた事あるけど、、珍しいわね」
「あるんですね、だったらそれで」
私って言えば鎌だもんね、、、
「他に特技はある? 魔法が使えるとか?」
「ありません、、体が丈夫位かな」
うん、体は丈夫だね、その気になればオートバイより速く走れるから。
「以上で登録終了ね、、それじゃ今冒険者証を発行するから待ってて、その前に簡単に冒険者の説明をするね」
1.冒険者のランクは 上から アドマンタイト級、オリハルコン級、ミスリル級、金級、銀級、鉄級、銅級に分かれている。 案外上に行くのは難しく、鉄級で一人前、銀級になるとその支部でエース、金級になると普通に会える最上位、、そこから上は余程の事がないと見ない位いない。
2、依頼については基本自分の階級の物しか受けられない。但し、適性がありとギルドが認めた場合はその限りでない
3.自分の命は自己責任
4.依頼を受けて実績を積むと上の階級にあがれる
5.ミスリル級以上に上がるには国王の推薦が必要になる
「こんな感じかしら、だけど、愛子ちゃんの場合は、トーゴ君とパーティーを組むんだから解らない事は彼に聞けばいいわ」
「解りました」
「はい、これが冒険者証ね、最初の発行は無料だけど、再発行には銀貨1枚必要だから注意してね」
「はい」
「じゃぁ、今度はパーティの申請ね、リーダーはトーゴ君で良いのかな」
「おう」
「パーティ名は何にするの?」
「何が良いかな、、愛子は何か希望がある?」
「特には思い浮かばないからトーゴ君が決めて良いよ」
「うーん、困ったな、、それならディアでどうかな」
「どういう意味」
「その、愛おしいって意味、、何だけど、、」
「それ良いな、、うん、それにしよう」
トーゴ君ったら、全く、、、
「じゃぁ、パーティ名はディアね、、いちゃつくのは後でしてね、独身のお姉さんには目の毒だから、はい、これで登録は終了、、で今日はどうするの?」
「依頼は後日受けるとして、今日は愛子に必要な物を買いに行きます」
「そう、じゃぁこれで手続き終了ね」
「これから、どうするの?」
「そうだな、愛子の装備と必要な物を買って、、今日は外食しようか」
「うん、行こう」
「まず、ここが武器屋なんだけど、鎌何て売っていたかな?」
「鎌は買わなくて大丈夫だよ、、持っているから」
「えっ、愛子手ぶらだったよね」
「うん、この鎌は念じると出てくるんだよ、お姉さんの形見なんだ」
これは口裂け女の能力だけど、言えないよね。
「それ凄いね、多分高級な武器なのかも知れないね」
「そうかも知れないけど、お姉ちゃんの形見だから解らないの」
「そうか、じゃぁ武器は要らないなら、愛子の服と装備だね」
「あの、トーゴ君、お金は大丈夫なの?」
「俺は正直言って余り稼げてないけど、、今迄お金を使ってなかったから沢山あるから大丈夫だぞ」
「そう、なら良いんだけど、、本当に大丈夫?」
この時、私は知らなかったんだ、、なんでトーゴ君がお金を持っていたのか。
「さぁ愛子、今度は防具屋だよ」
流石、異世界、武器屋にも驚いたけど、防具屋も凄いね。
「どれでもとは言えないけど、気に入ったのあったら選んで」
本当は要らないんだけどね、何しろ拳銃で撃たれても私、痛いだけで死なないから。
「そうだね、トーゴこれが良い、、大丈夫」
私は安い皮で出来た胸当てと小手とブーツを選んだ、れも安いからというのが一番の理由。
「もっとちゃんとした物でも良いんだぞ」
「これで充分だよ、私は素早いのが自慢だから、身軽なのが一番だから」
「そう、愛子がそれで良いなら、いんだけど」
その後、トーゴ君は私の私服から下着、日常品を一式揃えてくれた。
下着を買う時に真っ赤な顔をしていたけど、、これ全然色気も無いんだけどね、、
「さぁ、思った程、お金を使わなかったから、食事は豪華に食べようか? 好きな物食べて良いよ」
私はお肉とスープを頼んだ、トーゴ君も同じ物を頼んでいた。
凄く楽しい一日だった。
明日からはトーゴ君とお仕事だ、、この楽しい日々が明日も続きますように
化け物だけど、私は神様に祈った。
トーゴの過去
僕は女が嫌いだ。
僕の両親は冒険者だった。
父が生きていた時は楽しい生活を送っていたけど、依頼に失敗して父が魔物に殺されてから母は変わってしまった。
父を失ってからは母はその喪失感に耐えられないのか酒と男に溺れた。
悪い男に騙され蓄えを使いつくした母は、父に似た俺を犯した。
せめて愛情があれば、それでも良かったのかも知れない。
一切の愛情は無く、ただの性処理道具として使われるだけだった。
機嫌のよい時には性処理道具。
機嫌の悪い時には醜い、ブサイクと罵られながら暴力を振るわれる日々。
俺の母の思い出は暴力とレイプしかない、それ以外の事もあったはずなのに、、それしか思い浮かばないんだ。
そして散々ぱら暴力を振るっていた母だが、ある日生活費を稼ぐために依頼を受けてあっさり死んだ。
おかしな事にあんなに嫌いな母親なのに涙が出てきた。
独りぼっちになった俺は冒険者になった。
子供の俺に出来る数少ない仕事がそれしか無かったからだ。
だが、右も左も解らない子供に冒険者の仕事は過酷だった。
出来る仕事は薬草の採取位しかない。
当然、そんなお金位では生活は満足に出来ない。
そんなある日ベテラン冒険者の女に迷宮に誘われた。
何も知らない俺は喜んでその話に乗った。
そんな俺を待っていたのは、、ただの性処理だった。
地下1階までは優しかった冒険者が、地下2階に降りて人が居ないのを確認すると俺を押し倒した。
当時の俺は泣きながら街を歩いたのを覚えている。
その後、俺は冒険者をしながら娼夫をしていた。
どうせ、犯される位なら自分から売ってやる。
自暴自棄になっていたのだと思う。
そして、そのお金で装備を揃えて、技術を身に着けようやく一人前の冒険者になれた。
今では体を売らずに生活出来るようになれた。
確かに男は体を売れば生活が出来る。
そういう女も多くいる。
しかも、男は少ないからマグロでも良いんだから楽だよな。
そういう奴もいた。
だが、子供の頃からそんな生活を送って来た俺には女は醜い化け物にしか見えない。
本当の所は、見るのもおぞましい位嫌いだ。
女の顔を見るだけでも吐き気がする。
まぁ、それじゃ生きていけないから猫を被っているけどね。
だけど、そんな俺が、、女が嫌いなハズの俺が、、天使に会った。
その女は他の女と全く違った。
路地裏で横たわっている姿を最初に見た。
普段の俺なら男なら助けるが、女なら見捨てたと思う。
だが、不思議な事に、その女からは嫌な感じがしてこなかった。
興味を引いた。
だから、相手は女なのに声を掛けた。
「うん、そんな所でどうしたの? 何かあったのかな?」
何故、俺はこんな優しい声で話掛けるのだろうか?
「どうしたか言ってくれなきゃ俺解らないよ、、馬鹿だから、、倒れていたみたいだけど大丈夫?」
おかしいな、俺は女が嫌いなのに何故か此奴には優しくしてあげたくなる。
「あの、私が怖くないんですか?」
何でそんな事言うのかな、、こんなに可愛いのに。
あれっ今俺、なんて思った、、此奴の事可愛いと思ったのか?
「なんで、怖がらないといけないんだ?」
他の女ならいざ知らず、こんな可愛い子怖がる訳がない。
「私、、凄く醜いでしょう、、化け物みたいでしょう」
全然見えないな、、どっちかと言うなら天使かな?
うん、絶対に可愛い。
「化け物? 君みたいな可愛い女の子が化け物なら、俺なんて悪魔か魔王だな、、君と俺がどちらかが化け物なら、、多分俺が化け物になると思うよ?」
確かに俺にとって女は全部化け物だけど、、何だろう、この子は違う気がする。
この天使のような子が化け物なら、体を売って生きた事もある俺はもっとおぞましい存在だと思う。
「あの、お兄さんは、その化け物なんですか?」
「まぁ、、化け物に見えるかも知れないけど、、人間だよ」
本当に化け物だと思ったのかな、、俺そんなに醜いのかな?
彼女から身の上話を聞いた。
彼女も又独りぼっちだった。
だから、俺は誘った。
「行く所ないなら、俺んちに住まないか? 正直余り綺麗な所で無いけど外よりはましだと思う」
うん、男から誘うなんて、はしたないな。
だけど、このチャンスを逃したくなかったんだ。
正直言って一目惚れだったと思う。
しかも、これが俺の初恋だと思う。
今迄の人生で汚くない、いや可愛くて綺麗だと思えた女は彼女しか居ない。
もしかしたら、こんなに好きになれる女性は二度と現れないかも知れない。
はじめてドキドキした。
待っている時間が怖くて仕方なかった。
「そう、、嬉しんだね、、だったら住ませてくれる?」
そして、俺の夢の様な時間が始まったんだ。
ギルドで、、狩りをする
今日は私の冒険者レビューの日。
トーゴ君と一緒にギルドに来ている。
一緒にボードを眺めて、依頼を見ている。
と言っても、私は文字が解らないのでただ一緒に眺めているだけだけど。
「愛子、どんな依頼をしてみたい?」
「うーん、正直言って解らないからトーゴ君が決めて良いよ」
「じゃぁ、初めてだから、基本の薬草採取でいいかな?」
「うん、、、良いよ、それにしよう」
「あら、トーゴ、貴方化け物を飼っているって本当だったのね?」
妙齢の女性が東吾君に話掛けてきた。
化け物って、うん、私の事だ。
「何か用ですかクレイマーさん、俺は、依頼をこれから受けるんで忙しいんだが」
「どうせ、いつもの薬草採取でしょう? それともゴブリンの駆逐かしら? どちらも常時依頼だから急ぐ事ないでしょう?」
「愛子、行こうか、、」
「あらっ逃げるの? 男は良いわよね、銅級でも体を売れば贅沢な生活が出来るんだからね」
私は、今聞いた言葉で解ってしまった。
トーゴ君がどうしてお金を持っていたのか。
正直、私はそんなの気にしない、多分売れたなら私だって売っていたと思う。
最も、化け物の私なんか買う奇特な人は居ないだろうけど、、
それよりも、そこまでして手に入れたお金を私に使ってくれた事が寧ろ嬉しかった。
目の前の女が凄くムカついた、、、トーゴ君を貶すなんて、、殺したくて、殺したくて仕方ない。
「トーゴ君、行こうか? 醜いおばさんの相手をするより、薬草採取の方が楽しいよ」
「糞ガキ女、、醜いおばさんって私の事かい」
「他に誰が居るのかな?」
「そこまで馬鹿にされちゃ生かしておけないね、決闘だ」
「クレイマーさん、謝ります、だから許して下さい」
「トーゴが昔のように私達の相手をしてくれるなら考えてやるよ」
トーゴ君が震えている。目には涙が浮かんでいる。
「わか「謝る必要ないよ悪いのはこのおばさんなんだから」
「お前ぜってー許さない、殺してやるから 練習場に来い」
おばさんはスタスタと歩いていった。
「愛子、、殺されちゃうよ?、、謝ろう」
「謝らない、、あのおばさんは私の大切なトーゴ君を馬鹿にしたんだもん、死んでも許さない」
「、、、、」
「愛子ちゃん、、私言いましたよね、自分の命は自己責任って、、今回はまだ新人という事で一緒に謝ってあげますから、、、謝りましょう、、殺されてしまいます、、」
「受付のお姉さん、、相手が私を殺してもいいって事は、、私があのおばさんを殺しても、、罰はないよね」
「冒険者同士の決闘扱いだから、殺されても殺しても自己責任、問題はありません。 だけど、クレイマーさんは金級、このギルドでは1,2を争う冒険者、、万が一にも勝ち目はないですよ。」
「そう、じゃあ殺しちゃおうか、、、」
「愛子、謝ろう、俺も一緒に謝るから、、なぁ」
私の事心配してくれるんだ、、、、嬉しい、、だけど駄目だ。
「駄目だよトーゴ君、私にとってもうトーゴ君は大切な人なんだから、ここは引けない」
「そこまで言うなら私も何も言えないわ、、冒険者の命は自己責任、惚れた男の為に散るのもいいかもね、 仕方ない立会人は私がしてあげるわ」
「ありがとう、お姉さん名前は?」
「マチルダよ」
「じゃぁマチルダさん、立ち合いをお願いします」
「うん、引き受けた」
愛子は闘技場に行くとそこにはクレイマーの他に二人の女が居た。
「クレイマーさん、そこの2人は何でしょうか?」
「うん、立ち合い人はマチルダか? まぁ良い、別に一対一とは言ってないだろう?」
「貴方は、金級冒険者として恥ずかしくないのですか? 銅級冒険者一人に三人掛かりなんて、しかもそこの2人は銀級でしょう」
「いや、そいつ殺したらトーゴが手に入るだろう、、此奴らも分け前が欲しいらしくてな」
「ちょっと待って下さい、そんな話はしてなかったでしょう」
「今、言った」
「そう、私の命とトーゴ君が掛かっているんだ、だったらこっちが何も貰えないなんて不公平だよね? そっちは三人の命と全財産、、その位じゃないと釣り合わないよね」
「いいいぜ、出来るもんならやってみな」
「わかった、、じゃぁトーゴ君、ちゃっちゃとやっつけちゃうからね」
「愛子、もう止めないよ、、だけど君が死んだら、俺も死ぬからな、、」
「じゃぁ 絶対に負けられないね」
私は今、初めて狩をする。
「ギルド職員が立ち合いの決闘ですから、もう変更は利きません、良いですね」
「「「「解かった」」」
「解りました」
「では、はじめ」
クレーマー達、三人は剣を抜いた。
それで良い、木刀とか出されたら気が引けちゃうからね。
私は思いっきり走って一人に体当たりをした。
その一人は弾き飛ばされて起き上がってこない。
私は100メートルを6秒で走れる。
更に本気を出せば、バイクのスピードより速く走れる。
計った事ないが、姉は新幹線より速く走れた。
その速さで体当たりしたんだ、多分、、死んでいる。
「だっせーな彼奴、不意を突かれたからって気絶しやがって、私はそんな簡単にいかないぞ」
もう一人の女が剣を振りかぶる。
殺す気なんだね。
うん、遅いね止まって見えるよ。
「そうですか、、じゃぁ私も行きますよ」
私は鎌を取り出して構えた。
「なんだ、それ鎌なんて取り出して、、だっせー」
此奴は、まず、私と同じ顔にしてやる。
素早く走ると鎌を滑らして歯と頬っぺたの間に滑り込ませた。
そして、そのまま手前に鎌を引いた。
「ぎゃぁぁぁぁ、私の口がぁ口がぁ」
「どいてろ、あたしがそいつを仕留めてやる」
本当に遅いな、こんなんで金級なんだ。
退魔士並みに強かったらどうしよう?
そう思ったんだけど、、、弱い、弱すぎる。
軽く、剣をかわすとそのまま鎌で片目と鼻を削いだ。
あれっまだ反撃に来ないのか、なら片腕も頂いちゃおうかな。
そのまま剣を持っている方の腕を切り落とした。
これで、戦えるのはさっき口を裂いた奴だけだ。
「くるな、くるな、もう許してくれ、、頼むよ、ね頼むから」
私は容赦なく片腕を切り落とした。
「や、や、や、辞めて、、お願いだよ、、お願い、、ね」
もう片方も切り落とした。
しかし、この鎌は本当に良く切れるな。
流石、姉さん仕込みの鎌だ。
「あのさぁ、、これは決闘だから、、降参すれば終わりなんだけど、、どうする」
「降参、降参するから」
私はそいつに背を向けてクレイマーの方へ歩いていく。
1人は死んでいるし、此奴は腕が両方ない、もう襲ってこないだろう。
私はクレイマーに鎌を向ける。
「まった、もう降参する」
「そう、解った、、降参を受け入れるわ」
「勝者、愛子、、、さぁ治療士を呼んできますね」
「待って、マチルダさん、その治療代は誰が払うのかな?」
「そんなの当人が払うに決まっているじゃないですか? このままじゃ死んでしまいます」
「その人たちはお金を持ってないよ?」
「そんな訳ありません、銀級や金級の冒険者はお金に余裕があります」
「だけど、決闘に全部賭けて負けちゃったから、、それは全部私の物だよね?」
「あぁ、そうでした、、ね、、慈悲の心はありませんか?」
「無いな、この人達には」
「だ、そうです、クレイマーさん」
「そんな、なぁ頼むよ、ねぇトーゴ、もう馬鹿になんてしないからさぁ、、ヒュー ヒューねぇ」
「これじゃ、もう何も出来ないよ、、ねぇ愛子、治療士代出してあげれないかな?」
「トーゴ君が言うなら仕方ないな、、良いよ、今回1回だけの治療費は出してあげるよ」
治療士は間に合わなかった。
出血が多く、着いた時には全員死んでいた。
決闘の後に
決闘が終わった後、私はトーゴ君を見た。
怖がってないだろうか?
嫌われないかな?
正直、自分でやったとは言え残酷だったと思う。
正直トーゴ君に嫌われたら生きていけない。
「トーゴ君、、私」
私にとって永遠に近い時間待った気がする。
本当は数秒なのに。
「愛子って凄いね、、まるでベテラン冒険者みたいだった」
「そう、たいしたことないよ」
現金な物だ、さっきまで私の心は絶望に染まっていたのに、今は嬉しくてしょうがない。
「そうだ、トーゴ君、クレイマーってお金持ちなのかな?」
「金級冒険者だから、そこそこ金持ちだと思うよ、、確か家も持っていたと思う」
「やったー、これで家賃がいらなくなるね」
「そうだね、だけど愛子、今日みたいな事は辞めてくれよ」
「何で」
やっぱり怖かったのかな、、
嫌われちゃったのかな、、、、
流石に人を殺すのは不味かったかな、、、
「愛子が死んだら、、そう思ったら凄く怖かったんだ、、だから心配をさせないで欲しい」
うん、凄く可愛いねトーゴ君は、だけど私は化け物だから死なないと思う。
少なくともこの世界じゃ私の弱点は誰も知らない筈だもの。
「私は強いから大丈夫だよ」
「それでも心配なんだ」
駄目だな、そんな顔をされたら、もう何も言えなくなっちゃうよ。
「うん、気を付けるよ」
(マチルダ サイド)
止めるべきだった。
結果は、全然違ったけど、大変な事になった。
私は、クレイマー達の財産の目録を整理しながらため息が止まらなかった。
その私をキラキラした目で見ている少女と少年、胃に穴があきそうだ。
私の予想では、愛子という少女が死んで、トーゴ君が犯されて愛子の後追い自殺をする。
そんな未来しか見えてなかった。
トーゴ君も冒険者だ自分が賭けの対象だから、約束は守るだろう。
だけど、心は自由だ、、、死んでも文句はない。
トーゴ君は、、物凄く愛子を愛していたみたいだから多分、死ぬだろう。
そして、愛子も同じ様にトーゴ君が好きみたいだ。
だから、殺されると解っても、決闘を受けた。
そう思っていた。
ならば、その気持ちに答えてあげよう、、正直嫌な役だけど、立会人を引き受けた。
だが、結果は違っていた。
蓋を開けてみたら、銅級冒険者、しかも昨日登録した愛子の勝利。
しかも三人とも死んでしまった。
後で考えて見たら、愛子が強い、、そういう予想もついた筈だ。
あの口は何だ、、何者かに切られたのだろう。
だが、愛子は死んでいない。
そこから考えられる真実は、、そこまでの相手に少なくとも反撃をして、場合によっては殺した。
そう考えられる。
そして、立ち合いを見た私だから解る。
あの半端でない速さだ。
クレイマーだって金級冒険者だ、そのスピードは常人から見たら神速に見えるだろう。
実際に彼女はワーウルフの様な素早い魔物も普通に狩っていた。
その刃を彼女は簡単にかわして反撃した。
しかも、銀級冒険者はただの体当たりで死んでいた。
鎧をはがしてみたら、骨が折れて刺さっていた。
まるで、オーガにでも踏みつぶされたみたいだ。
そこから考えられる愛子の実力は オリハルコン級の実力、、場合によってはアドマンタイト級の力があるのかも知れない。
恐らく今回の決闘で使った技は二つ「身体強化」と「アクセル」だ。
それを無詠唱で使ったんだと思う。
身体強化した体で体当たりすれば、、死ぬだろう。
アクセルを使わなければ、、、あのスピードで動けるわけがない。
だけど、私は昔ミスリル級の冒険者のアクセルや身体強化をみたけど、あそこまでスムーズでは無かった。
ミスリル級を遙かに超えた少女。
うん、金級や銀級じゃ歯が立たない訳だ。
「はい、クレーマー達の財産、、ギルドにある分の計算が済んだわ、これが目録ね」
市街地の家の権利 一件
金貨 28枚
銀貨 32枚
「これが、ギルドの預り分、クレイマーの家はそのまま受け渡すから、中の物も全部貴方達の物でいいわ、あとの2人については書類を渡すから、宿屋に許可を得て全部持って行ってね」
「ありがとう、マチルダさん」
2人は笑顔で立ち去って行ったけど、、、、正直頭が痛い。
このギルドの虎の子の金級冒険者と銀級冒険者が死んでしまった。
もう、このギルドにはもう金級冒険者は居ないし、銀級もあと1人しか居ない。
考えても仕方ない、、、マスターに丸投げしかない、、、うん、そうしよう
新居に移動
私はトーゴ君と一緒に荷車を押している。
2人の銀級冒険者の所持品を宿屋に貰いに来た。
宿屋へはギルドから連絡があったので簡単にカギを貸して貰えた。
2人の冒険者の宿には碌な物が無かった。
ただ、武器やその手入れ道具があったのが嬉しかった。
他には大した物はなかったが仕事道具だけは良い物があった。
それらを頂いた屋敷に運び込んだ。
「思ったより小さいね」
「そりゃそうだよ、この街は近くに迷宮があるから土地が高いんだ、だけど小さいけど部屋は3つもあるしリビングもお風呂もある、、充分じゃないか」
「そうだね、これでお風呂も入れるし、、うん充分だよ」
「これで愛子にも部屋もベットも用意できるな」
「、、、、何か言ったかな?」
「いや部屋とベット、、」
「要らないよ、、でもベットが1つ増えたからくっけて大きくしよう」
「そうだね」
「一緒じゃ嫌かな?」
「嫌じゃないさ」
「それなら良いんじゃないかな?」
「そうだね」
「所で、金貨28枚ってどの位の価値があるのかな?」
「そうだね、本当に節約すれば、金貨1枚で1年暮らせるよ」
「じゃぁ、これで暫くは落ち着けるね」
「そうだね、でもそれは愛子の物だから、自分の事に」
「違うよ、2人の物だよ」
「そう、、だけど僕は自分で稼いで愛子に食べさせたいから俺は働くよ」
うん、トーゴ君は凄いね、お金を手にしても人が変わらないんだね。
「そう、解った、、だけど私は私でトーゴ君に幸せになって欲しいんだ、、それは覚えておいてね」
「うん、解ったよ」
「トーゴ君、まずはお掃除だね」
「そうだな」
「それが終わったらご飯食べに行こう、今日くらいは良いんじゃないかな?」
「うん、豪華に食べよう、、、そして明日からは依頼を頑張ろう」
だが、次の日も冒険者の仕事は出来なかった。
やっと薬草採取にいく、、いけたらいいな
マチルダはギルドマスターに金級冒険者のクレイマーが死んでしまった事を伝えた。
「あのクレイマーがか、何かの間違いではないのかね?」
「間違いありません、その、、決闘の立会人をしたのが私ですから」
「クレイマーを倒したのか? 相手は何人だ?」
「三対一です」
「ほぉ、三人とはいえあのクレイマーに勝つとはなかなかの腕前だな」
「違います、三人がクレイマーで倒したのが一人です」
「その冒険者の階級は?」
「銅です」
「銅、、ミスリル級、、いやどんなに下に見ても同じ金級ではないのか?」
「間違いなく、銅です。」
「今、このギルドに金は居ない、銀ですら1人になってしまった、そいつを私の権限で金にするしか無いな」
私は今日こそはとトーゴ君と一緒にギルドに来ていた。
色々邪魔されてまだ、冒険者デビューしてない。
まぁ、2人の家が手に入ったから良いんだけど。
「トーゴ君、今日こそは薬草採集にいこうね」
「あぁ、受付に手続きをしに行こう」
もう、2人に文句を言って来るものは居ない。
それどころか、愛子と目さえ合わせようとする者も居ない。
金級冒険者クレイマーの無惨な姿を見た彼らは恐怖に引き攣っていた。
腐っても冒険者、、命はさほど惜しまない。
だが、あんなに無惨な死に方はしたくない。
目を切られたり、口を裂かれたり、手を切り落とされる。
その苦しさは常に戦いに身を置く冒険者だからこそ解る。
愛子は躊躇なく、人を方輪にする技を使う、つまり、愛子と戦うという事は方輪になる可能性が高いという事だ。
体が資本の冒険者にとって最も、、戦ってはいけない相手だ。
もう、このギルドで愛子に絡んでくる者はいないだろう。
それは勿論、トーゴも同じだ、トーゴに何かすれば確実に愛子に殺されるのだから、、、
だから、邪魔をされずに依頼が受けられる、、、ハズだった、、
「すいません、愛子さん、トーゴ君、マスターがお呼びですので2階に来て貰えませんか?」
まさかの受付で邪魔が入った。
渋々二人はギルドマスター室に向かう。
「喜べ、2人とも、愛子は金級冒険者に昇格だ、トーゴも特別に銀級にしておいたぞ」
「トーゴ君、金級になると何か良い事があるのかな?」
「依頼に制限が無くなるから自由に依頼が受けられる、、それがメリットだな、、後は何かと融通してもらえる」
「逆にデメリットは?」
「緊急依頼を受けなくちゃいかなくなる」
「危ない依頼も受けなくちゃいけないのか、、、じゃぁパスしようか?」
「えっ、愛子どうして」
「いや、トーゴ君と楽しく過ごせれば良いから、危ない依頼を受けなきゃいけないなら、、辞めようかなと」
「そうだね、そう考えたら要らないね、、銅級で充分だ」
「二人とも何を話しているんだ?」
「えーと、昇給の話は、、パスさせて下さい」
「パ、、パス、、するの? 可笑しい俺の聞き間違いか?」
「本当にパスします」
「何故だ、誰もが憧れる金級の冒険者になれるんだぞ」
「危ない仕事は受けたくないんで」
「収入だって大幅に上がるぞ」
「この間、臨時収入があったので、困っていないので充分です」
「あの、私からもお願いします、、どうにか受けて貰えませんか、、このギルドに上級冒険者が居なくなってしまって、、本当に困るんです、、、助けて下さい」
「マチルダさんには借りがあるから仕方ない、、、受けるよ、その代わりトーゴ君も金にして貰えないかな」
「マスター?」
「仕方ない、不本意だが、無理して受けて貰うんだ仕方なかろう」
「じゃぁ 登録しなおすから下に来てくれる」
「「解かった」」
「はい、2人とも登録しなおしたら、これが新しい冒険証ね」
「トーゴ君、これ綺麗だね」
「本物の金で出来ているからな、確かに綺麗だ」
「はい、それでは、この依頼を」
「今日は薬草採取をします」
「いえ、出来たらオーガとかの討伐をですね、、、」
「今日は薬草採取でお願いします」
「はぁ、、解りました、薬草採取ですね、、2人で10本以上の採取をお願いしますね、、」
「マチルダさん、投げやりじゃないですか?」
「トーゴ君さぁ、、何処の世界の金級冒険者が薬草採取なんてするのかな、、」
「新人の仕事は薬草採取から、当たり前じゃないですか?」
「もういいや、、疲れた、、だけど、何処の世界に金級冒険者を倒せる新人がいるんだろうか」
「すいませんでした」
「じゃぁ、薬草採取、、頑張ってね」
悲しそうな顔でマチルダは2人を見送った。
最終話 愛子ちゃん異世界に生きる
「あの、すいません、オーガが出たので討伐をお願い出来ませんか?」
「うん、良いよ」
実際に愛子が戦ってみたのだが、、この世界のモンスターは大して強くはなかった。
だが、空を飛ぶワイバーンを見た時には驚かされる、自分では勝てないという事を知った。
しかも、もっと強いドラゴンも居るらしい。
そういう物はミスリル級以上の冒険者に任せれば良いんだ。
そう考えたら、金級である私たちはオーガクラスを相手していれば充分義務を果たしていると言える。
今ではトーゴ君も一対一ならオーガは倒せる。
多分、もうクレイマーより強いと思う。
そんな事はどうでも良い。
今、私は、、、凄く幸せだ。
トーゴ君が居て、、愛してくれている、、他に必要な物はない。
姉に口を裂かれて化け物になって不幸せだと思ったけど、
この力が無ければトーゴ君を守れなかった。
そう思うと、その不幸すらも今の幸せには必要だったのかも知れない。
今の私は、、、、うん、幸せだ。
「愛子、、今日は何の依頼を受ける」
「どれにしようか?」
楽しい日常は今日も続いていく。
いつまでも、いつまでも
後書き
別の話の閑話で口裂け女の話を書いたら人気があったので書いてみました。
どんな化け物でも、愛してくれて幸せに成れる世界がある。
そういう内容を書きたくなって書きました。
最初は口裂け女の長女にしたかったのですが、沢山の人を殺している彼女が救われる話は人によって受け入れられないのでは、、そう考えて三女にしました。
三女は結構、被害者っぽい描写もあるし、被害者でもあるのでヒロインとして書いても良いか、そう思いました。
またどこかで、私の作品を読んで頂いたら幸いです
石のやっさん
この作品は、昔に書いた作品を、私を応援して下さる方の為に発掘して掲載しました。
今も未熟ですが、更に未熟なのはお許し下さい。