いつもの日常
僕たちはいつもの様に授業を受けていた。
どこにでもある何時もの光景。
この学校は進学校ではない、かといって不良校でもない。
皆んなは、普通に授業を静かに受けている。
そして、授業が終わり昼休みがきた。
仲の良い者同士が集まって昼飯を食って、その後は仲の良い者同士で集まって楽しそうに話をしている。
僕はというと弁当を急いで食べると、教科書を枕に寝ていた。
別に虐めにあっている訳でもない。
仲間外れにあっている訳でも無い。
みんなは僕の事情を知っているので放って置いてくれているだけだ。
「なぁ、セレスが寝ているぜ、静かにしてやろうよ」
「黒木君、大変だもんね…あっちにいこうよ」
そう、あくまで僕の睡眠を妨げないようにしてくれているだけだ。
何故、そうしてくれているのか?
それは、僕が苦学生だからだ。
僕の両親は、子供の頃、交通事故で亡くなってしまった。
幸いに祖父母に引き取って貰えたけど、このご時世、普通の老人は暮らすので精一杯だ。
二人は優しく僕に接してくれる…だがお金の余裕は無い。
「「お金の事は心配しなくて良いぞ(のよ)」」
そうは言ってくれるけど、家計が苦しいのは解りきった事だ。
年金暮らしできついのに高校に行かせてくれる。
そして、足りないお金を稼ぐためにバイトやパートをしている祖父母。
少しでもお金を稼いで楽をさせてあげたい。
だから、僕は高校に通いながら働く事にした。
僕は「高校を辞めて働く」と言ったが、祖父に怒られた。
そして「働くのは良いが、高校は卒業しなさい」そう祖母に言われ今に到る。
最初は皆が僕に話し掛けてくれていたし、遊びにも誘ってくれていた。
だが、僕の事情が解ると、今の様になった。
みんなは僕に優しい。
僕が放課後、倉庫整理の夜勤で働いている事を知った結果、勝手に担任とクラス委員が話して、僕は放課後に残らなくてはならない日直は免除された。
同じく、放課後に残る掃除当番も免除だ。
そして、僕が少しでも休めるようにうちのクラスの人間の多くは、休み時間なのに騒がない。
正直済まない気分で一杯だ。
だが、そう思う反面《普通に接して欲しい》そう思う僕が居る。
多少体がきつくても義務である、日直や当番をしたかった。
義務を果たして普通の生活を送りたかった。
だれもが僕に優しい…その反面….
《皆んなから可哀想な子》そう思われているような気がして仕方が無い。
だから…僕は友人1人出来ずに孤独だと思うようになった。
僕の分は無かったので別の物を貰いました。
その日もいつものように教室で寝ていた。
昨日の倉庫整理は大物が多くて疲れた。
そのせいで熟睡していたようだ。
だがこの日はいつもと違っていた。
「セレス、起きろ」
「黒木くんで最後だから早く女神様の所にいって」
「えっ女神様? 何が…」
「セレスが寝ているときに異世界の召喚で呼ばれたんだ、そして今は異世界に行く前に女神様が異世界で生きる為のジョブとスキルをくれるって。」
「冗談は…」
僕は周りを見渡した。 白くて何もない空間のようだ。
嘘ではない、僕をだますためにこんな大掛かりな事はしないだろう。
「それじゃ、先に行くぞ、お前もジョブとスキルを貰ったら来いよ」
そういうと彼らは走っていってしまった。
どうやら、ジョブとスキルを貰った者から先に転移していくみたいだ。
僕は、女神様らしい女性のいる列に並んだ。
次々にジョブとスキルを貰っていく中、いよいよ最後の僕の番がきた。
だが、ここで急に女神様がおかしな事を言いだした。
「あれっおかしいな、ちゃんと人数分ジョブとスキルは用意したはずなのに…なんで一人分足りないの?」
「あの、女神さま?」
「あっさっき寝ていた子だよね? ほかの子が「アイツ疲れているから寝かせておいてあげて」というから寝かせて置いたんだけど、事情は解らないよね?」
「はい」
「簡単に言うと、異世界で魔王が現れ困っている、そしてその国の王族が勇者召喚をして君たちを呼ぼうとした…ここまでは解る?」
「何となく小説とかで読んだ話に似ています」
「うん、同じような小説が最近はあるよね! まさにそれ! それで私は女神イシュタリカって言うんだけど、そのまま行ってもただ死ぬだけだから、向こうで戦ったり暮らせるようにジョブとスキルをあげていたんだけど…」
「そうなんですか?」
「困った事に一人分足りないのよ…そうか解ったわ…担任の分が計算に入ってなかったんだ…失敗した」
「あの、女神様?」
「あのさぁ…ごめん、君の分のジョブとスキルが無い…どうしよう?」
「僕に聞かれても困ります」
「そうよね..困ったわ…このままだと君だけ何もない状態で行かなきゃならなくなる」
「元の世界に戻すのは?難しいですか」
「この魔法はクラス全員に掛かっているから無理だわ…」
「そうですか…じゃぁ僕だけ何もない状態で行くしかないんですね」
《普通はこの状態だと泣き喚いたり、罵倒するんだけど何故、何も言わないの?》
「あの、ごめんなさい」
「良いですよ…僕が行かないと勇者が召喚できなくて国が困るんですよね? 僕が我慢すれば…それで助かるんでしょう?…行きますよ…ううっ」
《何で僕だけいつも…いつも..こんな思いしなくちゃいけないんだろう》
「あの、本当にごめんなさい..何かないかな..あっあった、これ私じゃなくて前の担当の神様が数百年以上前に作ったジョブなんだけど、これで我慢して..少なくとも神様が作った物だから良いものだと思うわ《多分》」
「そうですか?」
「あと、そうだ、これだと私から何もあげてないのと同じだから神託で教会に貴方の名前を伝えて力になってあげるようにお願いしてあげる…本当にごめんなさい!」
「解りました、逆に迷惑をお掛けしました」
「良いのよ..私のミスだから…ではセレス黒木、あなたのご武運を祈ります」
こうしてクラスの最後の僕は異世界へと転移した
召喚された先で
僕が目を覚ますとクラスのみんなは既に一か所に集まっていた。
その前に、明かに中世の騎士の様な恰好をした人物がいて、その先には綺麗な少女と多分王様なのだろう、偉そうな人物が椅子に座っていた。
「最後の一人が目覚めたようです」
騎士の報告を受け、王の前にいた美少女がこちらの方に歩いてきた。
「ようこそ、勇者の皆さん、私はこの国アレフロードの王女マリンと申します、後ろ座っているのが国王エルド六世です」
担任の緑川が代表で一歩前に出た。
「こちらの国の事情は女神様に聞きました。そして我々が戦わなくてはならない事も…だが私以外の者は生徒で子供だ..できるだけ安全なマージンで戦わせて欲しい。そして生活の保障と全てが終わった時には元の世界に帰れるようにして欲しい」
「勿論です、我々の代わりに戦って貰うのです。戦えるように訓練もします。そして、生活の保障も勿論しますご安心下さい。 元の世界に帰れる保証は今は出来ません。ですが宮廷魔術師に頼んで送還呪文も研究させる事も約束します」
「解りました、それなら私からは何もいう事はありません、ほかのみんなはどうだ? 聞きたい事があったら遠慮なく聞くんだぞ」
同級生が色々な事を聞いていた。
どうやらここは魔法と剣の世界、僕の世界で言うゲームの様な世界だった。
クラスメイトの一人工藤君が質問していた。
「ですが、僕たちはただの学生です、戦い何て知りません、確かにジョブとスキルを貰いましたが本当に戦えるのでしょうか?」
「大丈夫ですよ、ジョブとスキルもそうですが召喚された方々は召喚された時点で体力や魔力も考えられない位強くなっています、しかも鍛えれば鍛えるほど強くなります。この中で才能のある方は恐らく1週間位で騎士よりも強くなると思いますよ」
「それなら安心です…有難うございました」
《そうか、それなら大丈夫かな》
僕はこの時はそう思っていた。
「もう、聞きたい事はありませんか? それならこれから 能力測定をさせて頂きます。 測定といってもただ宝玉に触れて貰うだけだから安心してください…測定が終わったあとは歓迎の宴も用意させて頂いております、その後は部屋に案内しますのでゆっくりとくつろいで下さい」
僕は測定が不安で仕方なかった。…何故なら僕だけ自分のスキルやジョブが解らないから。
僕はここでも可哀想な子なのか
その後すぐに水晶による能力測定の儀式が始まった。
これは異世界から召喚した者たちのスキルとジョブ、能力が見て取れるものだそうだ。
僕はいつもの定番で一番後ろに並んだ。
測定を終えた者はみんな、はしゃいでいた。
「僕は賢者だった、しかも聖魔法のジョブがあったんだこれアタリじゃないかな?」
「私も魔導士だった、最初から土魔法と火魔法が使えるみたい」
「いいなぁ私は魔法使いだって、どう見ても魔導士より下よね、魔法も火魔法しか無いんだもの」
《そうか、てっきりみんな自分のジョブやスキルは解っていると思っていたんだけど、何を貰ったのかここに来るまで解らなかったんだ…心配して損した…自分だけが得体の知れない物を渡されたのかと思ったけどどうやら違ったようだ…測定して初めて解るんだ…良かった》
「気にする事はありませんよ! この世界では魔法使いになるには沢山の修行をして初めてなれるのです。魔法使いでも充分に凄い事です。」
「本当? 良かった!」
会話を聞く限り、魔法使いや騎士等が多いみたいだが、それでもハズレではなくこの世界で充分に凄いジョブらしい。
そしてアタリが恐らく、賢者や魔導士なのだろうか、そう考えると大当たりは勇者、聖女辺りの様な気がする。
実際には、聞き耳を立てて聞いている限りでは、凄いと思えるようなジョブは今の所「賢者」と「魔導士」位しかでて無さそうだった。
「やった、私、大魔道だってさ、魔法も最初から4つもあるよ..当たりかなこれは」
《どうやら魔法を使う、最高のジョブは大魔道かな、そうすると賢者や魔導士は中アタリだな、大アタリは 勇者、聖女、大魔道、大賢者当たりだろう。大魔道のジョブを引いた平城さんを見た時に担当の人が驚いた表情を見せていたから》
《大当たりがどの位凄いのか知りたい》
「平城さん、大魔道なんて凄いね…僕はこれからなんだけど、どれだけ凄いのか気になるから教えてくれないかな?」
「セレス君かー 良いよその代わりセレス君の測定が終わったら私にも見せてね」
「うん、わかった」
「はい」
平城 綾子
LV 1
HP 180
MP 1800
ジョブ 大魔道 異世界人
スキル:翻訳.アイテム収納、闇魔法レベル1 火魔法レベル1 風魔法レベル1 水魔法レベル1
「比べる人がいないから解らないけど..何だか凄そうだね」
「うん、何でも五大ジョブらしいよ!だけど、まだ他のジョブ 勇者も聖女も大賢者、聖騎士も出ていないからセレス君にもチャンスはあると思う」
「そうだね」《僕のジョブは何かな 嫌な予感がするけど》
「これは凄い、勇者のジョブがでたぞ」
《やっぱり、勇者は大樹が引いたな、そう考えるとそれぞれの性格を考慮してジョブが決まっている気がする、そうすると聖騎士が大河、大賢者が聖人、聖女が塔子かな》
僕の読みは当たった。
そしてとうとう僕の番になった。
「あれっ可笑しいな…こんな文字見た事が無い..そして数字が低い何か意味があるのか?」
「あのどうかされたのですか?」
「それが、計測の水晶が可笑しいのか、文字が可笑しいのです…これが何て書いてあるか解りますか?」
「えっ、そんな馬鹿な」
せれす
れべる 1
HP 7
MP 4
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく
もちもの:なし
《何で、僕だけが…》
ここでも僕は…可哀そうな子になるのかも知れない。
可愛そうな子以下かも知れない。
僕はその後何度も自分のステータスを見直した。
間違いなく、何度見ても
せれす
れべる 1
HP 7
MP 4
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく
もちもの:なし
だった。
これ以上困らすのもいけないと思い、僕の担当の人に自分にが解かったステータスを教えた。
「私には変な文字にしか見えないのですが、そこまで低い事なんて無いと思います。 恐らくケタが二桁違うのかも知れません。 調べてみますからご安心下さい」
「ちなみにこのステータスだとどの位でしょうか?」
「村民でももっと強いですね…10才位の子供以下でしょうか? だから多分間違いだと思います」
「流石にそれはないでしょう?」
「私もそう思います。 だから調べてみます、ご安心下さい」
約束は約束だ…悲しいけど平城さんには見せないといけない。
「平城さん、僕のステータスなんだけど…」
「あっセレス君も終わったんだね、どれどれ えっ本当なのこれ!」
「何かの間違いかも知れないっていっていたけど..」
「そうだと思うよ、流石に普通の人の十分の一以下何て無いと思うから」
「他の人のステータスもそんなに高いの?」
「そうだね、さっき騎士の工藤君と魔法使いの法子のステータスを見せて貰ったんだけど…こんな感じだったと思う」
工藤 祐一
LV 1
HP 200
MP 50
ジョブ 騎士 異世界人
スキル:翻訳.アイテム収納、剣術レベル1 水魔法レベル1
坂本 典子
LV 1
HP 60
MP 190
ジョブ 魔法使い 異世界人
スキル:翻訳.アイテム収納、火魔法レベル1 水魔法レベル1
「そうなんだ、だったら一桁間違っていても可笑しくないかも?」
「そうだよ、それにセレス君だけひらがなって言うのも可笑しいから絶対間違いだと思う
よ ひらがなだけど ゆうしゃ って書いてあるから二桁違っていても可笑しくないかも?」
「やっぱり、平城さんにもひらがなに見えるんだね」
「違うの?」
「僕にはひらがなに見えたけど、この国の人には文字が解らないらしいんだ」
「そうかー大変だね、あっゴメン呼ばれたから」
「うん、引き留めて悪かったね」
「じゃぁね」
皆んなの1/30のステータスだなんて何かの間違いだよな….
もし、本当だったら僕は..可哀そうな子処じゃない…ただのお荷物以下になってしまう。
勇者や大賢者じゃ無くても構わない…せめて普通になりたかった。
結果が間違いでありますように…願うしか無かった。
旅立ち
その日の夜には予定通りの宴が行われた。
普通に立食形式でバイキングに近い感じだった。
幾人かのクラスメイトは貴族の方や王族の方としゃべっていたが僕は元から話すのが苦手なのでひたすら食べる方に没頭した。
僕の部屋も他の者達と同じ待遇の1人部屋だ。
良くあるライトノベルにあるような差別は一切なかった。
次の日から魔法の練習やら訓練が始まった。
座学については一生懸命学んだ。
そして、訓練は一緒に行っていたが初日からもうついていけなかった。
元々の能力差があるのだ無理だろう。
余りに僕の能力が低いので、一日訓練を休んで、さらに細かい測定ができるアカデミーで検査を受けた。
実際にはこの前の測定で解ること以外に 体力や耐性、防御力等の数値もあるそうだ。
異世界から召喚された者は、それら能力は確実に高いので測定はしないのが通例らしい。
殆どの者が例外なく訓練さえすればこの国の騎士や宮廷魔術師を超える能力を手に入れるのだそうだ。
だけど、僕は
「測定の結果、この国の平均的な15才位の男の子と同じ位ですね」
だそうだ、簡単に言うならこの世界の普通の人間と何ら変わりない。
良くあるライトノベルならここで仲間に見放されて殺されたり、国から追放されるのだろう、だが、そうはならなかった。
「貴方は前の世界では平和に暮らしていた、それを攫うようにつれて来たのは我々だ…気にする必要は無い…君がこの世界で生きて行けるようにバックアップしよう」
どこまでもこの国は優しかった。
座学は一緒だけどもう訓練は別だった。
他のクラスメイトは普通に剣を振れるのに、僕だけは未だに振れない。
それなのに、クラスメイトは何も言わない。
ただただ僕を気遣うだけ。
そして、僕だけが別に訓練する事になった。
それでもちゃんと騎士が一人ついて色々と教えてくれた。
そして一か月がたった。
クラスメイトはもうこの城の騎士すら相手にならない位強くなりレベルも5~10位迄上がっているのに、僕はレベル1のまま、何も変わらなかった。
それでも待遇はあくまでも他のクラスメイトと同じだった。
そして、今日僕は王女マリンに呼び出された。
「セレス殿、今迄調べてみたのですが、貴方の状態については何も解りませんでした」
「そうですか…もしかしたら僕は、追放されるのですか?」
「そんな野蛮な事しません…私もこの国もそんな恥知らずな事はしません。 ですが、今の貴方には戦うという事は出来ないでしょう?」
「確かにそうですね」
「セレス殿は何かやりたい事や夢はありますか?」
「特にはありません」
「そうですか、父と考えた事をそのままお伝えします。良いですか?」
「はい」
《やっぱり何か不味い事になるのかな?》
「まずはここに残って文官を目指すのはどうでしょうか? 幸い、座学は優秀で特に数学は秀でています。頑張れば将来、徴税管になれるかもしれません。」
「他の皆んなは?」
「明後日から演習に行きます…そしてその後はそれぞれがパーティーを組んで魔族との戦いに行きます…誰かが魔王を倒すまで帰ってきません」
「そうですか…」
「他の方からも頼まれました、貴方が困らないようにお城で面倒を見てくれないかと」
「そうですか…」
《やっぱり、僕は…此処でも同情されて生きていくのか…いっそ馬鹿にしてくれれば良いのに…お前なんて要らないって…捨てられた方がまだよい…これじゃ誰も恨めないし..ただただ人より下にいて同情されるだけだ..》
「あの、城を出る事は出来ませんか?」
「外の世界は危ないですよ…考え直した方が」
「それでも僕は…外に出たいと思います」
「解りました、出来るだけセレス殿の意見を尊重します、ですがバックアップはしっかりさせて頂きます」
そしてついに他のクラスメイトが遠征に行く日が来た。
僕はクラスメイトを送った後、城を出た。
頼んで、クラスメイトには僕が城から出て行く事は内緒にして貰った。
城を出るのにこの国が用意してくれたのは…
王からの推薦状…これがあればどのギルドにも入れるし、やりたい仕事があった場合は見習いや弟子からなら確実に採用してくれるそうだ。
支度金として金貨4枚…贅沢しなければ1年位暮らせるお金らしい
服を含む日用品一式
鋼鉄のナイフ…本当は剣をくれるつもりだったが僕には持てなかった。そうしたら、態々騎士用の剣を一本折って作ってくれた。
どこまでもこの国は優しかった。
これは本当は感謝しなきゃいけないのだろう。
実際に僕も感謝はしている…だけど、その反面…同情され続けるのはつらい。
外にでれば、もう僕に同情する人はいないだろう。
怖い反面、だれからも同情されない生活の事を考えると…僕は楽しくて仕方なかった。
冒険者ギルドへ
僕は城を出るとその足で冒険者ギルドへと向かった。
異世界と言えば冒険者だろう。
僕の場合は推薦状があるから、もしやってみて無理そうなら他を探そう。
冒険者ギルドは直ぐに見つかった。
みた感じは酒場が併設されていて、いかにも荒くれ者が集う場所…そんな感じだ。
僕は意を決してカウンターへと向かって行った。
「初めて見る方ですね!今日はご依頼ですか?」
「登録を頼みたいのですが、お願い出来ますか」
「はい、登録ですね、こちらの用紙にご記入お願いします。文字は書けますか?」
「はい大丈夫です」
僕はありのままを記入した。
名前 せれす
レベル 1
職業 不明
特技 算術
まぁ、数学が素晴らしいと褒められたからこれで良いだろう。
「ご記入ありがとうございます..あれっ その歳でレベルが1なのですか? しかも特技が算術って、商業ギルドに行った方が良くないですか?」
「これでは登録できないでしょうか?」
「構いませんよ、冒険者ギルドは来るものは拒まずです。 犯罪者で無い限りどなたでもOKです」
「ありがとうございます!」
「但し、自己責任の厳しい世界だという事は頭に置いて下さい」
「解りました」
「それではご説明させて頂きます」
説明内容は、
冒険者の階級は 上からオリハルコン級、ミスリル級、金級、銀級、銅級、鉄級、石級にわかれている。
そして、案外上に行くのは難しく、銀級まで上がれば一流と言われている。
殆どが、最高で銅級までだそうだ。
級を上げる方法は依頼をこなすか、大きな功績を上げるしか方法はない。
銀級以上になるとテストがあるそうだ。
ギルドは冒険者同士の揉め事には関わらない。
もし、揉めてしまったら自分で解決する事。
素材の買取はお金だけでなくポイントも付くので率先してやる方法が良いらしい。
死んでしまった冒険者のプレートを見つけて持ってくれば、そのプレートに応じたお金が貰える。
そんな感じだ。
「解りました」
「はい、これが石級冒険者のプレートです、再発行にはお金が掛かりますので大切にお持ちください」
「ありがとうございます、所でこちらではお金とかは預かって頂けますか?」
「はい、可能です」
僕は支度金として貰った金貨4枚を出して生活費として必要な銀貨1枚を貰う事にした。
「金貨3枚+銀貨9枚=390万スベル確かにお預かりしました。記帳しますのでプレートをお出し下さい」
1すべる1円位だから390万円の預金と10万円分の現金を持ち歩く形になる。
そう、僕はここで推薦状は出さなかった。
もし、登録に必要なら出したかも知れない。
だけど、僕は自分の力で勝負したかった…勿論、出せば待遇が変わっただろう。
ただ、そうした場合は僕の正しい評価はされなくなるだろう。
とりあえず、今日は一日休み、明日は準備をして午後からは簡単な依頼を受ける、そんな所か。
「この辺りで安く泊まれる宿はありますか?」
「それなら、冒険者の寮に入られたら如何でしょうか? 1日2食付いて1日1000スベル、これは初心者冒険者の支援だからかなりお得ですよ…但し最長で半年迄、冒険者を辞める時には出て行ってもらう条件です」
「お願いします」
僕は、最初に1月分3万スベルを払った。
「場所は冒険者ギルドのすぐ裏です。食事はここの酒場で冒険者カードを出せば貰えます。便利でしょう」
「本当に便利ですね」
「あくまで支援ですので」
「ありがとうございました」
僕は、酒場で早速、食事を貰った。
一番近い物は学校の給食だろうか?
パンにミルクの様な物、何かの焼肉、スープがついていた。
味は悪くもなく、良くもなく。
それを平らげると寮に行った。
あらかじめ部屋番を教わり、鍵を貰っていたのでスムーズだ、
部屋の広さは3畳位だろうか? ベットとテーブルがありベットには毛布がついている。
うん格安のビジネスホテルみたいなものだ。
これで当分の拠点と仕事は決まった。
今日は疲れた、明日から頑張ろう。
初めてのお仕事(ルルとメメ)
今朝は早くから冒険者ギルドに来ている。
流石は冒険者ギルドの酒場だけあって早朝から営業していた。
朝食をかき込むように食べて僕はギルドの受付にいった。
「昨日は登録有難うございました」
「貴方はセレスさんですね」
「覚えていてくれたんですね」
「はい、冒険者さんの名前を覚えるのも仕事の一つですから」
《あんだけステータスの低いのに冒険者になろうとする人はなかなかいませんからすぐに覚えましたよ、そして黒目に黒髪、嫌でも覚えますよ》
「ありがとうございます! 所で今日から仕事をしようと思うのですが、お勧めの仕事はありますか?」
「そうですね、見た所しっかりとした装備は持っていますから、薬草の採集か、スライムの討伐位が良いと思いますがお一人で行かれるんですか?」
「はい、仲間とかはいませんので…」
「そうですか、お一人で、正直心配でなりませんが」
「ですが、仲間も居ないし、こればかりはどうしようもないんで頑張ってみます」
「それなら仕方ない….あっルル、メメ、良い所に来たわ。今日も薬草の採集に行くんでしょう? 良かったら今日だけでもセレスさんを連れてってあげてくれないかな?」
「何でメメがそんな事しなきゃいけないのー」
「そうだよ、幾らソフィさんの頼みでもルルも嫌だよー、薬草の沢山ある場所は知られたくないから」
「ギルドから特別報酬を出すけど駄目かな?」
「「駄目」」
「そうか残念ね」
「だけど、何で新人の為にギルドが報酬出すの 珍しいじゃん? どこかの貴族のお坊ちゃんとか?」
「違います…本当に新人育成の一環です…仕方ないですねセレスさん頑張って」
「「ちょっと待って! 一緒に行くのはそこの兄ちゃん(お兄ちゃん)な(の)わけ」」
「そうだけど、駄目なのよね」
「そのお兄ちゃんならメメは良いかなー 」
「ルルも特別に引き受けるよ、特別報酬宜しくね!」
「だ、そうです、今日は初日だから、そちらのルルさんメメさんについていって仕事を覚えて下さい、彼女達も同じ石級ですが、もう新人の域は終わる所です、もうじき鉄級に上がるレベルですから学ぶ事は多いと思います」
「ありがとうございます! ですが、メメ先輩も ルル先輩も良いんですか?」
「メメ先輩…うん、メメは大丈夫、しっかりと仕事をおしえてあげる」
「まぁ、特別報酬も出るみたいだから、うんルルも引き受けたよ」
「ありがとうございます! 今日一日宜しくお願い致します」
「「宜しくねー」」
「ソフィーさんも有難うございました」
「これも受付の仕事ですから気にしないで下さい」
「それじゃぁ 行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」
にこやかに送り出されて僕はこの世界で初めての仕事へ出かけた。
閑話 黒髪、黒目は美形の証し
(ソフィーサイド)
しかし、驚いたな、あんな美形の男の子が冒険者登録するなんて!
黒目に黒髪、まるで勇者様みたいな外見、あれほどの美形にあったのは初めてだ。
最初に登録に来た時は驚いた。
異世界勇者様が登録に来たのかと本当に思った。
だけど、書いたステータスに驚いた、勇者様ならあんなにステータスが低い訳が無い。
だけど、話し方や文字が綺麗に書ける事からそれなりの教養の高さが解る。
しかも、特技が算術ですって、そう考えたら商会やお城勤めだって出来るかも知れない。
そう考えるなら、彼ほどの掘り出し物はなかなかいない。
美形で教養が高い男の子なんて、こんな所では出会いが無い。
私もそろそろ22才、結婚だってしたい、あんなに高条件の男なのだ、多少は優しくなってしまうのは仕方無いと思う。
ギルドの特別報酬は500スベルも出せば良いだろう。
これは流石に請求は出来ないから私の自腹だ。
二人合わせて1000スベルの出費で、自分が売り込めるなら安い買い物。
ルルとメメも彼を見た途端に態度を変えた。
彼女達も13才既に成人しているし、 普通の少女なら黒髪黒目の男性を気にしない訳が無い。
彼女達にチャンスを与えるのは気に入らないが仕方が無いか…
さぁ、帰ってきたらとびきりの笑顔で迎えてあげなくちゃね。
ついつい顔が緩んでしまう…
(ルルとメメサイド)
最初私達はソフィさんがおかしくなったのかと思った。
私達の薬草採取にいきなり新人を連れて行けというの…頭がおかしくなったとしか思えないわ。
ギルドの受付、しかもベテランなんだ、解らない訳ないじゃない?
私達下級の冒険者にとって薬草が大量に採れて安全な場所はそれこそ財産だ、他人、それも誰か解からない相手に教える訳にいかない。
勿論、さっさと断ろうと思った。
だけど、何で、態々ギルドがお金を出すんだろう?
貴族のお坊ちゃんかな?
興味がわいたのでルルが聞いていた。
あっ何となく解かった。
ソフィさん、もう良い歳だからな…相手が美形だから公私混同したんだ。
多分、あのカッコ良いお兄ちゃんに好かれたいんだろうな。
確かに…うん、超美形じゃないかな。
メメ何てどう見ても目がハートマークだ。
あっ、私の意見も聞かずにOK出しちゃったよ。
仕方ないな…確かに美形の兄ちゃん相手なら受けるけどさ…普通は金額交渉位しないと…
あれ、私も、特別報酬の金額交渉忘れていたよ..多分、スズメの涙しか出ないだろうな、私もメメの事が言えないな。
《まぁ良いか、今日の薬草採取は凄く楽しそうだし》
初めての仕事 薬草採取
ギルドのソフィさんの紹介で薬草採取の仕事にルルさんとメメさんと出かけた。
「そういえば自己紹介をしていませんでしたね、僕の名前はセレスと申します宜しくお願いします」
《こちらの世界では貴族でも無い限り苗字はない筈だからこれで良い筈だ》
「そうなんだ、ルルはルルだよ」
「メメです宜しくね、所でセレスさんはもしかして勇者様の血を引いているんですか」
「えっ、別に引いてないと思うけど何で?」
「綺麗な、黒髪、黒目だから、そう思ったんだけど違うんだ」
「違うよ」
《まぁ勇者と同じ国からは来たんだけどね》
「へぇーだけど、黒髪に黒目は凄くカッコ良いね、正直言ってルルの好み!」
「ルル、ずるい、私だってセレスさんカッコ良いと思います!」
「ちょっと待って! 黒髪、黒目ってカッコ良いの?」
「えっ、セレスさん知らないの? 黒髪、黒目って言えば初代勇者様から始まって、勇者様に多い特徴だよ、他の国はともかく、この国では綺麗な男性の象徴じゃない」
「そうなんだ、知らなかったよ…ありがとう」
「その黒髪、黒目でも、セレスさんは美形だと思うよ」
「メメもそう思う」
「そうかな! 僕から見たらルル先輩やメメ先輩の方が可愛くて綺麗だと思うけど!」
「「えっ先輩って!」」
「うん、冒険者として先輩なんだからそう呼ぼうと思ったんだけど、嫌だった」
「うん、別に嫌じゃ無いけどメメが可愛いって本当?」
「ちょっと、メメだけじゃないからね…本気ですか」
「普通に可愛く見えるけど…可笑しい?」
「「可笑しく無い…うん」」
《セレスさんって黒髪、黒目なのに横柄じゃないんだ》
《優しい黒髪、黒目って…居たんだ、凄い当たりかも》
黒髪、黒目には異世界から召喚された者が多い。 美形の象徴でもあるけど、我儘な者が多い。
優しい黒目、黒髪は少ない…それでもこの世界では黒髪、黒目は憧れの相手である。
「それじゃ頑張ってメメが薬草の取り方を教えてあげるね」
「私も教えてあげる」
そして、ルルとメメの薬草が生えている穴場についた。
確かに、これがお金になるなら教えたくはないだろう?
「さぁ、セレスさん、メメが薬草と毒消し草の取り方を教えるね」
「今日は私が警戒、する番か? 仕方ないな…じゃぁセレスさん、ルルが、スライムの警戒をしているからメメと一緒に採取してね」
「警戒?」
「うん、薬草が生えている周辺は湿地が多いからスライムがでるんだよ、だから片方が見張りをしながら採取しているんだ…安心して、スライムは遅いから倒すのも逃げるのも簡単だから」
「ありがとう、ルル先輩」
「うん」
「これが、薬草で、これが毒消し草、葉っぱが黄ばんでいるものや小さいのは取らないでね、根っこの周りから土ごととって土を振るい落とすのがコツだよ」
「こんな感じかな」
「うん、うまい、うまい その調子で頑張ってね」
「はい、メメ先輩」
「うっ、うん」
《こんな傍で…思わず顔が赤くなっちゃう》
「こらーメメ、手を止めるなよー はっきり言ってセレスさんの方が沢山採取しているよ」
「煩いな、解ったよルル」
「セレスさん..ちょっとこっちに来て」
「はい、ルル先輩」
「ちょっとルル…何?」
「セレスさん、あれがスライムだよ」
「へぇー あれがそうなんだ」
「そう、あれに捕まると火傷するから気をつけてね、沢山出たら逃げる事、スピードは遅いから簡単に逃げられるから、1~2匹なら簡単に倒せるから大丈夫、ほら中心に何か塊が見えるでしょう? そこを叩くように斬りつければ簡単に死ぬから」
「そう、なんだやって見ようか?」
「はい」
僕はナイフを抜いて言われるように叩いてみた。
スライムはバシュッという音と共に水になった。
その中心には小さな石があった。
「その石が魔石だよ、買い取って貰えるから必ず回収する事、スライムは簡単だけど、他の魔物は解体しないと手に入らないから大変なんだ」
「へぇーちなみにこれで幾らになるの?」
「1000スベル位…だから小遣い位にしかならないよ…だけどゴブリンになると15000スベルになるから必ずとる癖をつけた方が良いよ」
「なんてルルは言っているけどね、ルルだってまだゴブリンを倒した事は無いんだよ」
「そりゃそうだよ、私はまだ石級なんだから、というかメメお前も一緒だろうが!」
「まぁ、メメなら1匹やそこら倒せると思うけど、集団でいるしもし負けたら女の子はほら怖いから」
「そうだな私も同じ」
《確かにゴブリンは…そうだよなライトノベルでしか知らないけど 苗床って奴か》
「まぁ、女の子は危ない事はしな方が良いよね」
「うん、だけど鉄級に上がるなら避けては通れないんだけどね」
「そう、常時依頼だからね」
「そうか」
「さぁ、今日の分は充分採ったし帰ろうか」
三人して歩いてギルドに帰った。
ソフィさんは笑顔で迎えてくれた。
最初、2人は此処で得た金額の1/3をくれようとしたが辞退して、スライムの魔石だけ貰った。
「「「何で….」」」
「だって、今日の採集地はルルとメメの物だし、仕事を教わっただけだから貰えないよ」
「だけど、同じ階級なら山分けが原則なんだよ…受け取って」
「僕は授業を受けたような物だから、仕事を教わった報酬分を払った、そう思ってくれない?」
「セレスさんが良いなら良いけど本当に良いの?」
「うん」
「じゃぁ、その代わり今日の夕飯はルルとメメが奢るね」
「それじゃお言葉に甘えようかな」
二人と一緒に夕飯を食べた。
何と二人とも同じ寮に入っていた。
基本の夕飯にプラスして豪華な肉料理をルルとメメが奢ってくれた。
多分、これは赤字じゃないかな…何故か受付からソフィさんがこっちを睨んでいたけど僕は何かしたのかな?
「所で、セレスさんは明日どうするの?」
《どうしようかな? そうだ、教会に行ってみようか》
「明日は教会に行ってから、同じ様に薬草の採取をしようかと思う」
「そう、なら明日も私達と一緒に行動しない?」
「良いの?」
「ルルも午前中は休んで午後から仕事をするつもりだったから..うん良いと思う《嘘だけど》」
「じゃぁ お昼のギルドで待ち合わせで良いかな?」
「うん、良いよ」
二人と約束をして僕は寮に帰った。
二人も後からついてきた…同じ寮だから当たり前なんだけど…
教会と新しいスキル
朝起きると早速、ギルドの酒場に朝食を食べに行った。
そこには既にルルとメメが居た。
せっかくなので一緒に朝食を取る事にした。
今迄一人で食事をとる事が多かったけど、こうして誰かと話しながら食べる事は思った以上に楽しかった。
「そう言えば、セレスさんは将来は何を目指しているんですか?」
唐突にメメに聞かれた。
「僕? 僕はまだ何をしたいか解らないんだよ…とりあえず将来したい仕事を探している状態かな、メメは将来はどうするの?」
「私達の目標は、とりあえず冒険者で成功する事かな、銀級位になる事が目標、その後の事は銀級になってから考えようと思っています」
「そうか、とりあえずの目標があるだけ凄いね」
「そうかな、これは殆どの冒険者の目標だから普通だと思うよ」
「そうなんだ、頑張ってね」
「それじゃ、セレスさん、又お昼にね」
「うん、お昼に此処で待っているよ」
二人は先に食事を食べ終わり出て行った。
「セレスさん、すっかり仲良しさんですね」
「はい、ソフィさん有難うございました」
「今日もお二人と一緒にお仕事ですか?」
「はい、午後からですが一緒に仕事に行く約束をしています」
「そうですか..《チェ彼奴ら報酬あげて損したわ》」
「どうかされたんですか?」
「いえ、何でもありません、それじゃまた後で、頑張って下さいね」
僕は当初の予定通り教会に行った。
「あの、もしかして貴方が セレス黒木さんですか?」
「あの、そうですが、何で解かったのですか?」
「はい、教皇様の所に神託が降りまして似顔絵が送られて来ましたから」
「そうですか!」《あの女神様、ちゃんと伝えてくれたんだ》
「はい、女神リリス様を祭る教会全てが貴方の生活をサポートします、ご安心下さいね」
「所で、教会がサポートしてくれるって何をして下さるのでしょうか?」
「それについてはとりあえず…ご説明させて頂きますからどうぞ、こちらへ」
「はい」
応接室の様な場所に通された。
「はじめましてセレス黒木さん、私はこの教会の司祭をしております。クロムと申します」
「クロム様ですね」
「はい、早速ですがまず、セレス様には女神リリス様から新たなスキルが授かれる筈です。そのスキルの名前はステータスです。能力が低いので何時でも自分の状態が解る事が出来るスキルだそうです」
「そうなのですか?」
「はい、後で女神リリス様に祈りましょう…そうすればそのスキルが宿る筈です」
「有難うございます」
「その他の支援としては何処の教会も貴方が生きる手伝いをします」
「生きる手伝いとは何でしょうか?」
「教会と言えば呪いの解除、怪我や毒の治療です。それらの治療を優先的にそして格安に提供します」
「どの位の金額でしょうか?」
「とりあえずは無料です…ただこの先、状態を見て見直しするそうです。」
「そうですよね、当たり前の事ですね」
「はい、あくまで、ステータスが低いセレス様への権利ですので、もし強くなるようなら考え直す、そう考えて下さい」
「解りました」
「では、これから一緒にリリス様に祈りましょう」
司祭と一緒に祈りを捧げたら、体が少し熱くなった。
「さぁ これでスキルが宿った筈です、どうぞお試し下さい」
「はい、ステータス」
せれす
れべる 1
HP 7
MP 4
つよさ 32(8)
ぼうぎょ 12(6)
けいけんち:3
そうび :こうてつのないふ: じょうぶなふく: かわのくつ
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす
まほう:
もちもの:おうからのすいせんじょう:スライムのませき
「どうですか?見えましたか?」
「はい、おかげさまで自分のステータスが見えるようになりました」
「それは良かったです」
「所で司祭様、このステータスの意味は解りますか?」
「心苦しいのですが解りません、何しろ自分でステータスが見える人間は貴方しか居ないと思います。鑑定持ちであっても自分のステータスは道具を使わなければ見えないのが普通ですから」
「そうですか」
「はい、このスキルを持っているのは恐らく世界でセレスさんだけだと思います」
「有難うございました」
「いえいえ、又困った事がありましたら教会まで来てください」
「はい、本当にお世話になりました」
僕は教会を後にした。
楽しい仕事と忍び寄る影
約束通りに再び冒険者ギルドにきた。
ルルとメメはもう既に酒場で飲み物を飲みながら待っていた。
「遅れてごめん」
「全然待って無いよ!」
「そうそう、いつもならメメはもっと遅いから大丈夫だよ!」
「ルル、何を言っているのかな? メメはいつも約束より遅れたりしないよ!」
「まぁそういう事にしておくか」
「酷い! セレスさん、メメは遅刻とか滅多にしないんだよ!」
「うん解かっているから大丈夫だよ」
「ルル、余り変な事言わないでよ、セレスさんが信じちゃうからー」
「はいはい、メメは滅多に遅刻しないよ? うん3回に1回位しかしないよ? これで良い」
「ルルー」
誰かが一緒だとこんなに楽しいんだな、倉庫整理の仕事は基本オジサンしか居なかったからね。
そう考えたら、同い年位の仲間がいるバイトを選んだ方が楽しかったかも知れない。
「さぁ、そろそろ仕事に行かない?」
「そうだね、メメをからかってもお金にならないしね」
「ルルーやっぱりからかっていたんだね…うん行こう」
三人は楽しく話しながら薬草採集に向かった。
森に入ってからも楽しく話しながら歩いた。
そして、昨日とは違った薬草の採取地についた。
「あれっ、ここは湿地帯じゃ無いんだね?」
「うん、ここが実はルルたちの秘密の採取地なんだ、昨日の場所は他のパーティーも知っている場所だけど、ここは多分、ルル達しか知らないと思う」
「そんな所に連れてきて貰って良かったの?」
「セレスさんは特別! 他の人には絶対に教えたりしないんだから…教えちゃ駄目だからね!」
「ルル先輩、メメ先輩、解りました…絶対に教えたりしません!」
「宜しい」
「何かメメが偉そうなんだけど、此処見つけたの私だからね!」
「あれ? そうだったかな? 此処見つけたのはメメじゃなかったかな?」
「メメー怒るよ?」
「嘘うそ、冗談だよ、うん」
「もう」
いつもの様にルルが周りを警戒しながら薬草の採取が始まった。
だが、ルルはセレスが気になって仕方が無い、メメと楽しく話している姿を見るとどうしても警戒を怠り、そっちに意識がいってしまう。
ルルとメメは大きなミスをしていた。
ルルやメメより上の階級や永く冒険者をしている者がいる、そういった存在が街からこんなに近い穴場を見逃すだろうか? 普通は見逃がす訳が無い。
もし、ルルやメメが友人に他の冒険者が居たら、これから起こる悲劇は防げていたかも知れない。
いや、せめてソフィにだけでも報告していたら、ここに人が来ない理由が解かったかも知れない。
そして、いつもの様にルルがしっかり警戒していれば…もしかしたら回避出来たかも知れない。
人が来ないのは何故だろうか?それにはちゃんとした理由があるのだ。
これが経験を積んだ冒険者なら、その理由は必ず考える。
だが、彼女達の経験の浅さから、その理由を考えなかった。
その甘さのつけが…やがて重なり牙をむく事をまだ彼女達は知らない。
楽しい日々の終わりと僕の死(残酷な描写注意)
人間が、草を取りに来るから、この場所は我々にとっては最高の狩場だ。
だから、この草が増えるように他の動物が近づかないようにしていた。
柔らかそうな肉と遊び道具になる人間が簡単に手に入る、貴重な場所だ。
ここに来る人間は弱いから簡単に殺せる、そして我々にとって貴重なメスも多いから貴重な狩場だ。
だがここに来る獲物の数が減っている。
この前に攫ったメスも何人も子供を産ませたから、壊れてきている。
犯そうが何をしようが反応しないから面白くない…そろそろ次を見つけて食べる時期だ。
次を探さなくてはいけない…だがここ暫く、避けるようにこの辺りに人間が来ない。
今日もまた….イタゾ…オモシロイオモチャが二ヒキに、ニクが1ヒキ…ナカマをヨボウ…狩の時間だ。
ルルがセレスからようやく目を離して周辺の警戒に戻ると茂みが動いたような気がした。
持っていた剣を使い、茂みをかきわける。
《足跡がある..しかも新しい、この足跡はゴブリンだ…まずい、囲まれる前に逃げないと》
「メメ、セレスさん、まずい、この辺りにゴブリンが居る、すぐに採取を注意して逃げないと」
「ルル、それは本当なの?」
「良いから、急いで足跡からして、複数のゴブリンが居るから、早く」
だが、遅かった、に取り囲まれたあとだった。
ルルが見つけた足跡は偵察していたゴブリンの足跡では無かった。
既に取り囲み、監視していたゴブリンの物だった。
逃げようとする獲物に対してゴブリンの威嚇が始まった。
「「「「グワーッ、グエー」」」」今迄に聞いた事が無い程気持ち悪い声が聞こえた。
「嘘、もう囲まれていたの?」
ルルは顔が真っ青になっていた。
「もうおしまいだ…」
メメはは体が震えていて立っているのも辛そうだ。
二人は知っていた、ゴブリンに負けた後の運命を嫌に成るほど聞かされていた。
散々になぶり者にされた挙句、犯され、無理やり子供を産まされ最後には殺される運命を。
もし、運よく後で助けられても、その時には人間としての尊厳は全て奪われ街に帰れても、、蔑まれるだけの存在になる。
そんな運命しか無い。
セレスもそれは知っていた。
だけど、本当の怖さを知らなかった。
漫画やライトノベルでは知っていたが、それは架空の話しの事…だから恐怖に押しつぶされずに体が動いた。
囲んでいるゴブリンは10に満たない…もし自分が普通に他のクラスメイトのジョブがあったら簡単に倒せるレベルだろう。
《死ぬかも知れないのに何で冷静になれるんだろうな…僕が死んでもただ、それだけだ、だけどメメやルルは違う女の子としての全てを奪われてしまう》
セレスの頭が思った以上に冴えた。
直ぐにルルやメメに近づき顔を引っ叩く。
「ルル、メメ、しっかりして 僕が切り開くから」
鋼鉄のナイフを引き抜きゴブリンに切り込む、一匹のゴブリンを切り捨てた。
ゴブリンの恐怖はその数だ、一匹なら非力なセレスでも倒す事は出来る。
ひるんだ、ゴブリンの隙間に二人を突き飛ばすように投げた。
「ほら、ルルしっかりして、メメもいい加減にちゃんとして..」
「セレス」
「セレスさん」
「いい加減にしろ、そんなには持たない…早く逃げろ」
怖さを押さえて静かに声を掛けた。
セレスはナイフを構えて二人を守るように立ちはだかった。
幸い、お城で剣術は習った、足止め位なら出来るだろう。
「やだ、セレス、セレス」
「セレスも一緒に逃げて..」
「いい加減にしろ..もう一回殴るよ」
「「セレス….うううううわーん」」
二人はようやく走って逃げて行った。
《うん、これで、まずは大丈夫..だけど、まだ時間稼ぎはしないと 一匹殺したから警戒してくれた助かった》
「「グ、グ、ググ」」
《まだ警戒しているな、だけど此処を後にしたら直ぐにルルやメメを追っていくんだろうな、やるしかない》
僕は再び鋼鉄のナイフをで攻撃をした、さっきの様に上手くいかない。
さっきのは不意を突いたから殺せただけ…僕は普通の人間と同じこんな物だろう。
周りのゴブリンが急に吠え始めた。
警戒していた相手が雑魚だと気が付いたのだろう…そしてそんな相手に貴重な獲物を取り逃がした怒りからかその叫びは大きくなっていった。
《あれっ、これ怖いな..足が竦む、だがやってやる》
ゴブリンが錆びた剣で攻撃してきた。
躱したつもりだが、かすった。そのまま僕はナイフを突き出した。
運良く、ゴブリンのお腹に刺さりそのまま倒れた。
腕が凄く痛い、お城ではゴブリンは雑魚だと教わっていたけど強いじゃないか。
少なくともルルやメメがあそこまで怖がっていたんだ、一般人にとっては脅威なんだろう。
《後、8匹倒せる気がしない、だが一匹でも多く道連れにしてやる》
ゴブリンの槍が僕の足に刺さった。
《叫びたいほど痛い、だけど叫んだところで こいつ等が喜ぶだけだ》
僕はナイフを振り回したが、当たらなくなった。
《此奴ら、頭が良いなもうこっちのリーチを読んでいる》
他のゴブリンが僕の反対側の足を狙ってきた、上手く躱したがまた掠った。
《いて~、この野郎、此奴ら僕をいたぶって殺す気だ、そうはいかない》
僕はタックルのように一匹のゴブリンに組み付き倒した、所詮はゴブリン小学生並みの体格だ、そのままナイフを胸に突き立てた。
頭の中で何かが鳴ったような気がする。
少しだけ体が軽くなった、元よりも軽い。
だが、組み付いて馬なりになった状態を見逃す程甘くは無い。
2匹のゴブリンが僕の腹に槍を刺してきた。
さっき程簡単には刺さらなかった気がしたが、それでも内蔵にまで食い込んだだろう。
《これであと7匹…だけど、案外死なない物だな》
「さぁ、ゴブリンども、僕はもう歩けないぞ…さっさと殺しに来やがれ!」
挑発に乗ったように「グエエアエアエアエア」と叫びながら飛び込んできた。
《バーカ、相打ちなら簡単なんだよ!》
そのまま自分の体で受けると持っていたナイフを頭に振り下ろした。
うん、殺せた。だが、その代償に僕のお腹にナイフが生えていた。
本当は槍の穂先もナイフも抜いてはいけないのは解る…だがこれじゃ動けない。
痛いのを我慢してナイフを抜き取り、穂先も抜いた、勢いよく血が流れだした。
《後、6匹…後1匹で半分だ…ヤバイ意識が朦朧としてきた》
「もう、お前らの目的の女はいないぞ…今更追いかけても無駄だな…僕の勝ちだ!」
「「「「「「グワーグエーグワー」」」」」」
意味が分かったのか怒りが増したように残り全部のゴブリンが襲い掛かってきた。
錆びたナイフで僕の足が斬られた…足が宙に舞い投げ捨てられた様子が見えた。
ナイフを頭に叩き込む、1匹のゴブリンの脳みそが飛び出した。
だが、そこまでだった。
ナイフを持った僕の手を2匹のゴブリンが押さえつけ、僕の腕をナイフごと千切った。
もう片方の手でゴブリンの目を潰した。
だが、他のゴブリンに手を押さえられ僕のナイフで手が刺された。
片方の目が潰れたゴブリンが僕を滅多打ちにしていた。
抵抗できない僕をゴブリンどもはオモチャのように壊していった。
何故か僕はその様子を冷静に見ていられた。
《ルルとメメがこんな目に会わなくて良かった!》
体が寒いな、目も見えない…僕は…死ぬんだ。
そう思うと悔しかった。
《ゴブリンども次に会ったら殺してやる》
その思いと共に…目の前が暗くなった。
元神様との邂逅
暗い中僕は声を聴いた。
暗い世界がいきなり明るくなった。
「おお勇者よ死んでしまうとは何てこった!」
《なっなんだ》
「ようやく目が覚めたようですな」
「貴方は一体誰ですか?」
「わ、私? 私は元神様です」
幾ら何でも怪しすぎる、だってこの神様と名乗る男、頭にチューリップハットを被っていて、右手にゲームソフトを持っているんだもの…
「本当に神様なんですか?」
「本当に元神様です!」
《怪しい、前に会った女神様は、何となく神様に思えたけど、この人はそうは思えない》
「あの、これでも元神なので考えている事は解るぞ」
「すいません、所でその神様が何で僕の前に来たんですか? もしかして死んでしまったからまた転移か転生するとかですか?」
「それは無い…何故なら君は死なないからね…私は君に喜びとお詫びに来たのさ」
「死なない? 喜び? お詫び? 何ですかそれ?」
「まぁ長い話になるが聞いてくれ」
「まぁいいですけど」
「まず、君達が出会った女神リリスだが私の後を継いでまだ20年位だ」
「そうなのですか?」
「うむ、話を戻すぞ? 最近、私は疲れてしまって引退したのだがその原因は、最近の若者にあるんじゃ」
「….それで」
「いや、地元の者を勇者にしても異世界から勇者を呼んでも、最初からみんなが強力な力を欲しがる、実に嘆かわしいと思わないか?」
「普通そうだと思いますが…」
「馬鹿者が! ロマンが無いじゃないか! 弱い者が努力をして強い者を倒すから感動を呼び物語となるんじゃ」
「そうですかね」
「うむ、そうじゃろう? 熊が暴れているから助けて下さい、そんな依頼があったとしよう」
「何ですかそれ」
「まぁ良いから、聞け」
「はい」
「熊が暴れているから助けて下さい。 その代わりマシンガンをあげます」
「はい?」
「マシンガンを貰った人物がそのマシンガンで熊を撃ち殺しました…ほら感動など何処にも無いだろう?」
「いや、だけど住民からしたら、危険な熊を倒して貰うなら早い方が良いですよね? 負けるかも知れない武器や時間が掛かる方法よりよっぽどWINWINな関係ですよね」
「セレス、君までそんなこと言うのか、まぁ今の子じゃ仕方ないのかの」
「その方が犠牲も無く幸せな世界が作れますよね?」
「まぁ 良い、だが儂は力なきものが努力や研鑚をして強い者を倒すのが好きなのじゃ!」
《この神様、若いのかじじいなのか言っている事が解らないな、どっちだ》
「そうですか、それで僕になんの用でしょうか?」
「まずは喜びから…私の作ったスキルやジョブを使ってくれてありがとう!」
「もしかして、このジョブやスキルを作ったのって…もしかして」
「うむ、儂じゃ」
《私、儂 何だこの神様は》
「それで?」
「その能力は女神リリスが作った物に比べると劣るようだが優れた力もある」
「そうは思えませんが…本当ですか!」
「うむ、まずそのジョブとスキルの最大の能力は…死ななくなる事じゃな」
「死ななくなるんですか?」
「うむ、弱いうちに死んでしまったら困るからその様にしたんじゃ、すごいじゃろ?」
「確かに」
「これは、女神リリスのジョブには無い物じゃ…強力な力が使える代わりに命の保証が無くなっておるのじゃ…死なない、これは凄い事じゃないかな?」
「確かにそうですね…もしかしてこれが喜びですか…それじゃお詫びは?」
「君だけは元の世界に帰れない」
「はい?」
「君だけは元の世界に帰れない」
「そうですか? 聞いても構いませんか」
「うむ、君が死なないのはこの世界にそのジョブが括りつけられているからじゃ…死なないようにする為にはそれしか無かったのじゃ」
「そうですか…解りました」
「本当にスマン..」
「貴方がピンポイントで僕を狙った訳じゃないですし、このジョブが無かったら何もない状態でもっと苦労したかも知れません…気にしないで下さい…元の世界に親も居ないし、しいて言うなら世話になった祖父と祖母の事だけが気になります」
「そうか、帰れない君の為じゃ元神として君の祖父と祖母には幸せな人生を約束しよう」
「有難うございます」
「良いんじゃよ! 元の世界に帰るぬ君への特典じゃ」
「所で神様…は老人なんですか? それとも若いんですか?」
「神は皆んな年寄じゃ、リリスも同じじゃ、引退するまで若い喋り方してたから、所々可笑しいのも知れぬが..まぁ仕方ないのじゃ」
「そうですか…」
「あっ間違ってリリスに歳の事は言っちゃいかんぞ…ではもう会う事もないじゃろうが…頑張って君の物語を見せてくれ…儂はずうっと君を見守っているぞ..」
再び僕は暗い世界に落ちていった。
ほんのちょっとだけ 強くてニューゲーム
「大丈夫ですかセレスさん!」
僕は目を覚ました。
「此処は何処でしょうか?」
「教会ですよ! セレスさんは死にかけた状態でここに降ってきたんです」
《あれは夢では無かったでも、、死なないとは言え大怪我の状態にはなるんだな》
「そうだったのですか、ご迷惑を掛けて申し訳ありません!」
「いえ、それは良いんですが…何故いきなり教会の本堂に現れたのでしょうか? 司祭様が教皇様を通じて女神様に祈りを捧げて貰ったそうですが…解らなかったそうです」
「僕にも、それは解りません…ですが、多分能力の低い僕の事を女神様が心配して奇跡を起こされたのだと思います」
「そうですよ…うん、女神様は慈悲深いですから」
「僕もそう思います」
教会は話しの通り、お金を一切受け取らなかった。
司祭様やシスターと一緒に女神リリスに祈りを捧げ教会を後にした。
外に出ると僕は「ステータス」と唱えた。
僕のステータスは
せれす
れべる 2
HP 14
MP 8
つよさ 40(16)
ぼうぎょ 18(12)
けいけんち:53
そうび :こうてつのないふ: じょうぶなふく: かわのくつ
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす
まほう: ヒーリング(NEW)
もちもの:おうからのすいせんじょう:スライムのませき
ほんの少しだけ強くなったようだ。
リリとメメはあの後大丈夫だったのだろうか?
僕は気になり冒険者ギルドへ向かった。
救助と責任
時は少し遡る。
ルルとメメは走っていた。
可愛らしい顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっている。
その頬っぺたにはしっかりとビンタの跡が残っていた。
セレスが体を張って逃がしてくれた…自分達では到底勝てない。
だったらどうするか…出来るだけ早く援軍を呼んでくるしかない。
震える足で彼女達は怪我するのを構わず走った。
そしてボロボロの状態でギルドへと走り込んだ。
「助けて下さい..ゴブリンにゴブリンに襲われて」
直ぐに、その状況を確認したソフィが対応した。
状況は直ぐに解かった。だが、ここは冒険者ギルド慈善団体では無い…救出をするのも討伐をするのもお金が要る。
「解かったわ…それで、緊急依頼を出すにして、救出依頼? 討伐依頼?」
「どっちでも良いですけど…急いで、セレスさんが」
「解っているわ…だけどお金はあるの? 緊急依頼で相手は無数のゴブリン、通常討伐で1体3万スベル…10体で計算して30万スベルそこに緊急依頼を掛けるのだから上乗せ10万スベル、合計40万スベル直ぐに用意して」
「「持っていません….」」
「そう、ならば諦める事ですね…依頼料無くして冒険者ギルドは動きません」
二人は自分の持ち物やお金を見渡す。
薬草採取で日々食いつなぐ石級冒険者の自分たちの持っている物、現金10万スベル。持ち物全部を手放しても15万スベルにも満たないだろう。
「あの、だったら、持っているお金全部10万スベルで私達の護衛をお願いします」
「それなら、至急依頼をかけます」
緊急依頼なので直ぐに貼りだしをして、酒場に居る冒険者の人たち一人一人声を掛けていく。
10万スベルならあまり割に合った仕事では無い。
まして銅級冒険者なら単なる小遣い稼ぎだ。
だがセレスは見目麗しい。
運良く、セレスを見ていた女冒険者が何人かいた。
だから、通常は割が合わず引き受け手の少ない依頼であったが、直ぐに引き受け手が見つかった。
驚く事に銅級ではなく、銀級の冒険者のミラが依頼を引き受ける。
「緊急依頼なんでしょう? ほら直ぐに行くよ」
ミラはメメとルルを引き連れて直ぐに森へと向かった。
「これはもう無理だな…」
4匹のゴブリンの死体とおびただしい血…そこから考えられることは殺されて食べられた…それだけだ。
もし、この時に生きていたとしても、巣に持ちこまれるまでに死んでいるだろう。
「セ..セレスさん..オェッ」
メメはその惨状を見て盛大に吐き出した。
「何で、何で…そんな」
解り切っていた、自分より弱いセレスがゴブリンを食い止める…ならこうなるのは当たり前だ。
何故、逃げたんだ…そう思う自分と、逃げなければ自分も死んでいた..もしくは慰み者になっていた。
どうする事も出来なかった…そんな自分に嫌気がさした。
ルルはもう何も喋らなかった。
「お前ら、もう気は済んだか? ゴブリンが帰ってくる前にここを去るぞ」
冒険者ギルドに帰ってきた。
二人の様子を見たミラは1万スベルだけ取って返した。
ソフィはルルを呼んだ。
「ルルさん、8万スベルをお返しします。」
「何で?」
「ミラさんが貴方達を見て手数料だけで良いとお金を返してきました..ギルドの手数料を取った8万スベルお返しします」
「そうですか…」
「ギルドは全て自己責任です。 死んでしまってもそれは自分の責任、問題はありません、ですがどうしても言わせて下さい」
「何を…」
「貴方は何故、情報を集めようとしなかったのですか? あの場所が新人には危ない場所であることは殆どの冒険者は知っていました」
「そんな…」
「勿論、ギルドでも把握していました…何故、相談をしてくれなかったのですか? 大方、自分達だけの場所として確保したかったのでしょう? その気持ちも解らなくはありません…ですが..」
「何でしょうか…」
「その結果、貴方達は新人1人死なせてしまった..その事だけは忘れないで下さい…そして、今回助かったのは、新人が命を捨て貴方達を守った事…そして運が良かったそれだけです、それを踏まえてこれからは慎重な行動をお願いします…ギルドからは以上です」
「あの…ソフィさん..その」
「暫くは私以外の受付けに並んで下さい…私、頭で理解が出来ても心までは押さえきれそうにありません」
能面のような冷たい顔で、ソフィは2人を睨みつけた。
「「ごめんなさい」」
「馬鹿じゃないですか! 貴方達が本当に謝らなくちゃならないセレスさんは死んでしまったんですから..謝る事なんて出来ませんよ」
静かにソフィは立ち去った。
「どうしようかルル」
「辞めようか…メメ」
二人が心底落ち込みギルドで佇む中、陽気な声が聞こえてきた。
「どうしたんですか、ルル先輩、メメ先輩?」
「「セレスさん?」」
驚いたように目を見合わせる。
気のせいか受付けをはじめ、総ての注目が集まっている気がした。
事情聴取
「本当にセレスさんなの?」
ルル先輩が泣き顔で震える声でこちらを見つめてくる。
「僕以外に何に見えますか?」
「本当に、セレスさんだ、無事だったんだね! 良かったー」
メメ先輩が飛び込んできた。
「どうしたんですか?メメ先輩?」
「だって、だってセレスさんが死んじゃったと思ったから…心配で..えぐっ」
確かに死んでいたんだけど…
セレスはメメの頭を撫でながら話した。
「大丈夫ですよ…僕は死んでませんよ…ほらね」
「本当に心配したんだからな」
ルルが後ろから抱き着いてきた。
「有難うございます」
こんな時、気の利いた言葉も浮かばない…誰かに心配されるってこんなに嬉しい事なんだ。
「セレスさん、感動している所申し訳ないけど、ちょっと良いかしら?」
ソフィが声を掛けてきた。
周りを見回すと何故か他の人もこっちを見ている。
「解りました」
僕はメメとルルから離れソフィさんのカウンターへと向かった。
「私も話しを聞いて良いかな?」
「ええ、ミラさんは当事者の一人ですから同席した方が良いでしょう」
別室に通され、ソフィさん、ミラさん、ルル先輩、メメ先輩と話をする事になった。
「状況について教えて貰えますか?」
「それはルルたちが..」
「静かにして下さい! 私はセレスさんに聞いているんです!」
「採取していたら、ルル先輩がゴブリンの足跡を見つけて撤退しようとしていた所、ゴブリンに囲まれました」
「それで、何故一番未熟な貴方が残って食い止めようとしたのですか?」
「僕は男です、だったらゴブリンに負けても殺させるだけで済みます…女性の場合は地獄が待っています。 なら食い止めるのは僕が適任だと思いますが..違いますか?」
「冒険者の命は自己責任…ギルドにはどうこういう事は出来ません…ですが大切にして下さい」
「はい、これからは気をつけます」
「本当に気をつけてくださいね」
「解りました」
「私からも良いかな?」
「貴方は?」
「私の名前はミラ…今回、君を探しに行ったそちらの2人に同行した者だが…」
「それは大変迷惑を掛けました」
「礼はいい…依頼だからな、だけど何で君は生きているんだ…現場は君の血であふれていたぞ」
「気が付いたら教会に居たので、誰かが助けてくれたのだと思います」
《嘘はついていないないよ》
「そうか…運が良かったのだな」
「所でセレスさん、冒険者カードは持っていますか?」
「はい」
ソフィはセレスから冒険者カードを受け取るとカードをチェックした。
「セレスさん、ゴブリンを討伐したんですね 記録に4匹とあります」
「死に物狂いで戦いましたから」
「その様ですね、素材は無くてもゴブリンは常時討伐対象ですから報奨金がでます…後でお渡ししますから窓口に来てください」
「解りました」
「聞きたい事は以上です」
セレスとルルとメメが帰った後、ソフィとミラは残って話をしていた。
「なぁソフィさん、そんな奇特な人っていると思うか?」
「普通はいませんよ…何者なんでしょうね..皆目見当もつきません」
「お金を請求しないから冒険者じゃないだろうしさ…騎士や衛兵の訳もない」
「本当に誰が助けたのか解りません…」
だれがセレスを助けたのか、疑問に思う二人だった。
別れのセレナーデ..と復讐心
ゴブリンの討伐報酬は5000スベルだった。
本来なら魔石が15000スベル、合わせて2万スベル。
1スベル当たり1円位だから約2万円、ゴブリン単体なら元の世界の小学生くらいの力だ、そう考えると、とんでもない悪人で人を平気で殺しに来る小学生が数人で武器を持って徒党を組んでいる。
そいつの始末代金が1人2万円…なんだか安すぎる気もする。
僕は、ソフィさんの窓口で2万スベルを貰うと、酒場で待っていたルルとメメの所に行った。
二人に6700スベルを渡そうとした。
「何ですか?セレスさんこのお金は?」
メメが首を傾げた。
「これはゴブリン討伐のお金、この間の話で何でも三等分、そういう約束したでしょう」
「それは駄目! 私達はセレスさんを見殺しにして逃げたんだから!」
「あの、場合は仕方ないよ…見捨てたんじゃないよ…僕が二人を逃がしたんだから」
「そうじゃない…私は…」
「僕は男だからね…」
「それでも..」
結局、お金は受け取って貰えなかった。
「所で、今日はどうしたの? 何か相談?」
二人は気まずそうな顔をした。
「あの…セレスさん、私達…冒険者を辞めようと思うんだ」
「あの、メメ先輩もですか」
「ごめんね…セレスさん」
「そうか…なら仕方ないよね…女の子だもの怖いの解るよ」
「本当にごめんなさい」
「セレスさんごめん…」
「謝らなくて良いよ! 所で二人とも冒険者辞めた後どうするの?」
「私はまだ、どうするか決めてません」
「私も国に帰るか、ここで仕事を探すか考え中..」
「そう? そうだ、1週間位はまだここに居るかな?」
「辞めてからも10日間は寮にいられるから、多分居ると思う」
「メメも多分居ると思う..」
「それならお別れ会をするから暫くは居てくれる?」
「「うん」」
僅か数日だけど、楽しかったな…久々に「普通」の生活を送れていた。
同情される訳でも無く「普通」に接して貰える…本当に楽しかった。
それを壊したのは…ゴブリンだ…
待っていろ….弱い僕…この「ゆうしゃ」セレスが皆殺しにしてやる。
ゴブリンを狩る男
次の日セレスは冒険者ギルドに早朝から向かった。
ギルドにつくと、おもむろに一つの依頼書を剥がした。
剥がした依頼書は「ゴブリンの討伐」
ゴブリンの討伐は常時依頼なので剥がしていく必要は無い。
ただ、依頼書を剥がして受付に持っていけば正式依頼となる。
正式依頼で受けた場合は1匹辺りの討伐代金が1000スベル増える。
その代り、3匹以上を1日で狩らないとならない。
そして、失敗すれば、違約金は無い物のギルドの評価はマイナスになる。
その為、僅かな増額の為に正式依頼にする者は殆どいない。
だが、僕はあえて正式依頼にする為に、剥がした。
これは殺された僕の復讐…
たった数日だけど、楽しかった日々を奪った…
たったそれだけの復讐…
「ソフィさん、これを受注します」
「セレスさん…えっゴブリンの討伐..この間死にかけたでしょう..それなのにやるのですか? 正直お薦め出来ません!」
「冒険者の命は自己責任…そしてゴブリン討伐は鉄級の依頼なら、受けれますよね? 一つ上の依頼まで受けられるのですよね!」
「その通りですが…」
「だったら問題は無いですよね! まぁ受けられないなら常時依頼で行いますから別に構いません」
「そこまで言われるなら仕方ありませんね..どうぞ」
ソフィは渋々受け付けた。
《この間までただ綺麗なだけの男の子だったのに…素直だったのになぁ…》
「それじゃ行ってきます」
森に向かう、三人で向かった時はあんなに楽しかったのに、1人だとこんなにつまらない。
とりあえず、ステータス。
せれす
れべる 2
HP 14
MP 8
つよさ 40(16)
ぼうぎょ 18(12)
けいけんち:53
そうび :こうてつのないふ: じょうぶなふく: かわのくつ
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす
まほう: ヒーリング(NEW)
もちもの:おうからのすいせんじょう:スライムのませき
こんな物か?
後は実際にヒーリングが何処まで役に立つかだな。
そのまま、僕は森の中を進みゴブリンと遭遇した場所まできた。
そのまま、何食わぬ顔で薬草を摘んでいた。
今回は、こちらはあくまでゴブリンに会うまでの暇つぶしだ。
この前の討伐記録を見て、思った事がある。
僕は確か、ゴブリンを5匹倒して1匹の目を潰したはずだ。
だが、実際の討伐は4匹…つまり1匹打ち漏らしたゴブリンがいる。
そして目を潰したゴブリンもいる、そいつらを含み、最悪でもあの場にいたゴブリン残り6匹をぶち殺す。
それが終わったら、この辺りにいるゴブリンは全滅させてやる…
それが、僕の最初の戦場だ。
《この前の場所に足跡がある…これをたどって行くか?》
足跡をたどって行くと頭を勝ち割られたゴブリンの死体があった。
此奴はぼくが頭を叩き割った奴だ…此奴が死ぬ前に僕が死んだから経験値が入らなかったのか。
そこから更に足跡をたどって行くと、たどった先には…洞窟が見つかった。
正直、どの位の数が居るのか解らない…だが、どうせ僕は死なないんだ、ならどうするか!
なら、簡単、そのまま入れば良い。
セレスは真正面から洞窟に入った。
入ってすぐにゴブリンが居た…しかも目にはボロ布を眼帯の様に巻いていた。
多分、あの時のゴブリンだ。
「よう、また会ったな」
そのゴブリンは驚いたような顔でこちらを見た。
その瞬間、ナイフを首に突き立てた。
レベルが2になったせいなのだろうか? この間より楽だった。
《結局、勝手に死んでいた奴も含んで6匹、最低あと4匹はいる….だけど、この洞窟はかなり大きいもっと沢山のゴブリンが居てもおかしくない》
そのまま進んで行くと2匹のゴブリンが居た…正直ゴブリンの見分けなんてつかないから、此奴らがあの時のゴブリンなのか解らない。
だけど、憎しみを込めて斬りかかる..簡単に1匹は殺せた。
だが、もう一匹のゴブリンの攻撃を足に受けた。
だが所詮は非力なゴブリン、僕がナイフを横に振りぬくとすぐにお腹が斬れてそのまま苦しみながら死んだ。
今現在の僕の状態はと、「ステータス」
せれす
れべる 2
HP 12/14
MP 8
つよさ 40(16)
ぼうぎょ 18(12)
けいけんち:77
そうび :こうてつのないふ: じょうぶなふく: かわのくつ
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす
まほう: ヒーリング(NEW)
もちもの:おうからのすいせんじょう:スライムのませき
うん、ヒットポイントが2だけ減っていた。
大したことは無い さぁ、先に進もう。
またゴブリンが2匹居た..こちらには気が付いてないようだ。
後ろから近づき喉を掻き切った。
慌てたもう一匹のゴブリンが距離を取ると大きな声で叫んだ。
「グエー グエー」
他のゴブリンが駆け付けてきた。
《おや?思ったより多いんだな?》
気が付くとまた10匹を超えるゴブリンに囲まれていた。
思った以上に大きいんだなここは…
《さぁ、僕が死ぬ迄に何匹殺せるかな…》
「さぁ!かかって来い!」
セレスはゴブリンの集団に襲い掛かった。
ゴブリン討伐 中編
死ぬ気で戦ったからだろうか?
10匹のゴブリンでも倒す事は出来た。
結局、今日一日でゴブリン14匹を倒した。
不思議な事に強くなった感覚と体が上手く動かない感覚がある。
ステータスを確認しよう。
せれす
れべる 5
HP 2/68
MP 8/38
つよさ 56(32)
ぼうぎょ 28(22)
けいけんち:189
そうび :こうてつのないふ: じょうぶなふく: かわのくつ
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす
まほう: ヒーリング、ファイヤーボール(NEW)
もちもの:おうからのすいせんじょう:スライムのませき
そういえば戦っている時に頭の中で音が鳴っていた気がする。
レベルが上がり体が強くなったがHPがもう2しか無いから体が上手く動かないのかも知れない。
《ヒーリング!》
途端に体が軽くなった。
せれす
れべる 5
HP 32/68
MP 4/38
つよさ 56(32)
ぼうぎょ 28(22)
けいけんち:189
そうび :こうてつのないふ: じょうぶなふく: かわのくつ
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす
まほう: ヒーリング、ファイヤーボール(NEW)
もちもの:おうからのすいせんじょう:スライムのませき
体が随分楽になった。
だが、これで終わりではない…洞窟は奥に続いていて奥から無数のゴブリンの声が聞こえる。
《ここは思ったより大きな巣なんだな》
岩の傍に一匹いるのが解る。
《斥候かな?》
僕は覚えたばかりのファイヤーボールを唱えて使ってみた。
小さな火の玉が飛んでいきゴブリンに当たった…どうやら死んだようだ。
これで15匹
せれす
れべる 5
HP 32/68
MP 6/38
つよさ 56(32)
ぼうぎょ 28(22)
けいけんち:197
そうび :こうてつのないふ: じょうぶなふく: かわのくつ
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす
まほう: ヒーリング、ファイヤーボール(NEW)
もちもの:おうからのすいせんじょう:スライムのませき
奥には恐らく想像以上に無数のゴブリンがいる。
死んでも大丈夫だが、好んで死ぬ必要は無い…今日の所はこれで撤退しよう。
幸い、ゴブリンは襲ってこなかった。
冒険者ギルドに帰り、受付に並ぶ。
何故か僕の受付の番になると、受付の人にソフィさんが変わって貰っていた。
「あの、ソフィさん、何で急に変わられたのですか?」
「今日のセレスさんの受付をしたのが私だから…気になったので変わって貰いました…ところで素材は?」
「ありません」
《やっぱり失敗して逃げてきたんですね…賢明です! それで良いんです..》
「そうですか、それなら任務失敗の手続きをしますね、新人の失敗はよくある事です、お気になさらないで次頑張りましょう!」
「いえ、倒しましたよ…素材が採れなかっただけで」
「えっ..そうですか、すいませんプレートを見せて頂けますか?」
「はい」
「15匹も狩られたんですか?…」
「はい…素材は怖くて採れませんでしたが」
「あの、失礼ですがどのような狩り方をしていたのですか?」
セレスは自分が行った事をそのまま話した。
「貴方は…それだと死にますよ…」
「冒険者の命は自己責任…死んでしまっても問題無いでしょう?」
「大切な人が悲しみますよ!」
「すいません..僕にはそういう人が居ませんので..」
ソフィがセレスの目を覗くと…そこには悲しそうな目が見えた。
「解りました…受付としてこれ以上の事は言えません…ですが、顔見知りが死んでしまったら…私だって少しは悲しみます…少しは気を付けて下さいね」
「解りました」
5000+1000スベル併せて6000スベル×15=9万スベル。
報奨を受取ると僕はギルドを後にした。
ソフィの葛藤
私は最近、気になる冒険者がいる。
その人の名前はセレスさんといい、黒髪、黒目の美形の男の子だ。
黒髪、黒目と言えば、勇者様や過去の偉人に多い容姿で、美形の象徴だ。
本物の勇者やその仲間は大体が王族や貴族と結婚してしまい市民には高嶺の花だ。
最初、セレスさんを見た時に私は一瞬目の前に勇者様が現れたと思い目を奪われた。
多分、冒険者の中でも女性はかなり関心を引いたと思う。
だけど、登録の内容を見たら…驚く程弱かった。
うん、これじゃ勇者様やその仲間じゃない。
という事は、私でも手が届くかも知れない。
最初の依頼を受けに来た時、彼はソロだった。
このレベルで、ソロじゃ危ないなんてものじゃない…どうにかしないと。
かといって、ベテランに頼むと断られる…訳ない、黒髪、黒目だそのままパーティーに組み込まれてマスコットにされるかも知れない…どうしよう。
そう考えた私は新人の中で無難に、薬草採取をこなしているルルとメメのパーティに彼を紹介した。
最初彼女達は断ろうとしたが、彼を見た途端に引き受けた…うん、解る、私も冒険者だったらそうする。
それから、彼は物凄く楽しそうに彼女達と仕事をしていた。
《いいなぁ 羨ましい..あの会話に私も入りたいな…》
何度思ったか解らない…だけど、ある日突然悲劇が訪れた。
彼のパーティーがゴブリンに襲われたのだ。
しかも、事もあろうに、彼女達を逃がす為に彼が一人残って戦ったそうだ…戻ってきた彼女達の顔が青ざめていて泣き顔なのは解かった。
だが、私は彼女達に優しく等出来そうにない…
冒険者の命は自己責任…当たり前だけど、彼をおいて逃げて来た事。
事前に情報取集しなかった事…これは彼女達が招いた事だ。
彼女達は有り金をはたいて救出しようとしたが…そんなお金じゃ緊急依頼なんて受ける訳ないんだよ。
私なら出せる…だけど、ギルドの受付がそんなお金を出したら公平性が失われる。
実際に同じ状況に陥った冒険者をお金が出せないからという理由で切り捨ててきた私が好みの男性ってだけでだす訳には行かない。
婚約者でも彼氏、家族でも無いのに助ける訳にはいかないのだ。
なかなか、結論に至らない..じれったい。
結局、彼女達が再度現地に行く…その護衛の依頼という形で出してきた。
うん、そのお金じゃそれしか出来ない。
だけど、セレスさんの黒髪、黒目の美形がここで発揮された。
この金額じゃ普通は受け手がなかなか出ない。
だけど、セレスさんを少なからず思っていた女冒険者が何人もいた。
その結果…銀級冒険者のミラさんがこんな破格の金額で受けてくれた。
だけど…多分、間に合わないと思う。
駆け込んで来て直ぐに対応できたとしても絶対に間に合わないだろう…
結果、現地にはおびただしい血と4匹のゴブリンの死体があったとの報告。
彼はもう…ゴブリンの巣穴に運び込まれたのだろう。
もう、食料になっているだろう。
私の目は曇っていたのだと思う。
こんな情報収集も出来ないものに彼を預けてしまった。
そう思うと、自分の見る目の無さに…怒りが込み上げてきた。
そして、彼女達はもう駄目だろう…完全に目が死んでいる。
上にあがって行く冒険者は絶望に打ちひしがれた時に解る。
こういう目にあった後、気持ちを切り替える事が出来る者、立ち上がれる者が本当の意味の冒険者になる事が出来る。
彼女達はゴブリンの怖さ知った。
もし、このまま続けていても無駄だろう。
だけど、冒険者ギルド側から「辞めろ」とはルール上言えない。
だけど、同じような事が起きないように「キツイ注意」が必要だ。
それとは別に 期待を裏切ったこいつ等の顔は見たくない…
多分、いつか八つ当たりしかねない…距離を置く事にしよう…
だけど、セレスさんは凄い事に帰ってきた。
顔を見ると凄い事に、恐怖が何処にも見当たらない。
なんだか、僅か一日なのに一皮むけた気がする。
今迄が線が細い少年だとすると、いきなり何か掴んだような顔をしていた。
この顔をした冒険者は必ずといって良い程伸びる。
あの顔をした冒険者が鉄級、銅級と瞬く間に登っていき銀級まで上り詰めたのを見た。
その反面、危ない依頼に挑戦して死んでいくのもあの顔をした時だ。
そんな大変な時期なのに…ルルとメメから冒険者を辞める話を聞かされた。
何もこんな時に…そう思ったが…手続きをされた以上仕方ない。
もう私には関係のない人間だ。
だが、これで完全に彼のストッパーが外れる。
彼女達二人と居る彼は最初に会った時と違い楽しそうだった。
多分、彼も私と同じで孤独な人間なんだろう…
そして、それを奪ったもの…ゴブリンに殺意を向けていかないだろうか?
心配だった。
そして案の序…彼はゴブリンの復讐に手を出した。
次の日に、「ゴブリンの依頼書」を剥がして持ってきた目は明らかに復讐者の目をしていた。
私は後悔している。
最初にルルとメメを紹介しなければ…彼は今でも薬草採取をしていたのかも知れない。
紹介したのがベテランなら、楽しく今でも過ごしていたのかも知れない。
すべて、私の失態だ。
私に出来る事は…もう彼が死んでしまわないように祈る事しか出来ない。
そして、彼に出来るだけの笑顔を…それしか出来ない
冒険者の命は自己責任…その組織の一員なのだから…
ゴブリン討伐 後篇
最初の頃に比べたら、たった数日でかなり強くなった気がする。
せれす
れべる 5
HP 68/68
MP 38/38
つよさ 56(32)
ぼうぎょ 28(22)
けいけんち:197
そうび :こうてつのないふ: じょうぶなふく: かわのくつ
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす
まほう: ヒーリング、ファイヤーボール(NEW)
せれす
れべる 1
HP 7
MP 4
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく
もちもの:なし
うん 最初の頃のこれに比べたら全然良い。
HPなんて9倍なんだから全然違う。
だけど、同級生の不遇ジョブでも
工藤 祐一
LV 1
HP 200
MP 50
ジョブ 騎士 異世界人
スキル:翻訳.アイテム収納、剣術レベル1 水魔法レベル1
坂本 典子
LV 1
HP 60
MP 190
ジョブ 魔法使い 異世界人
スキル:翻訳.アイテム収納、火魔法レベル1 水魔法レベル1
これだった。
つまり、此処まで強くなったと思っていても同級生の中に混じったら魔法使いや騎士のジョブのLV1にも届いていない。
《無い物ねだりしても仕方ない、うん…僕は弱くても死ぬことが無いんだ..そう切り替えて頑張るしかないな…まぁ正しくは死ぬけど復活するが正しいんだけど》
まぁ、他の同級生のように戦う宿命から抜け出て、自由に冒険者をさせて貰えるだけありがたい、そう思う事にしよう。
さぁ、今日もゴブリンを倒そう…
後1週間位でどこまで出来るか…
「ソフィさん、今日もゴブリン討伐、宜しくお願い致します」
「あの、セレスさん…普通の冒険者は、あれだけの討伐をしたら普通は1日は休みます、悪い事は言いません今日は休まれたら如何でしょうか?」
「いえ、大丈夫です!体調はばっちりですから」
「そうですか…冒険者の命も行動も自己責任です…頑張って下さい!」
《驚いた…この間もまるで別人のように思えたけど…どうしたのかな、気のせいか今日は落ち着いて見えるわ》
「はい、頑張ってきます!」
僕は手を振り冒険者ギルドを後にした。
さぁ気持ちを切り替えよう…
僕はそのままゴブリン討伐にむかう。
いる場所は解っている、昨日のように洞窟に突っ込んでいく。
昨日襲われたばかりだからか、ゴブリンは警戒していた。
洞窟に入るとゴブリンが既に4匹槍をもった状態で待ち伏せしていた。
《残念だな..今の僕にはただの障害物だ》
「ファイヤーボール、ファイヤーボール」
二発のファイヤーボールで二匹を仕留めて、そのままナイフで切り込み首を二つ飛ばす。
《レベルアップって凄い…こんなに簡単に此奴が倒せるなんて》
まるで、おもちゃのようだ。
そのまま、押し入るように進んで行く…やはり待ち構えていた。
《そりゃ、そうだあんだけの数が倒されたんだ、それ以上で待ち構えるのは当然だ》
洞窟の中の大きな場所に出た…そこにはざっと見た感じ30を超えるゴブリンが待っていた。
《さぁ、血祭りにあげてやろうか!》
ゴブリンから矢が放たれた。
《ゴブリンアーチャーか…だがこの程度の矢なら簡単に弾ける》
そのまま、矢を手で取ると、近くのゴブリンに突き立てた。
悲鳴と共に、1匹のゴブリンが死んだ。
そのまま、数匹のゴブリンが素手で襲い掛かってきた。
《どうやら、僕を押さえつける気だな…だが甘い》
元々腕力的にはゴブリンは子供みたいな力しかない…弱気にならず、恐怖さえなければ簡単に払いのけられる。
そして、逆に殴りつけ、ナイフで喉を掻き切ると共にそのままナイフで切りつける。
面白い位殺せる。
逆にゴブリンのナイフが刺さるかと思ったが薄皮1枚斬る事が出来ない。
気が付くと又頭の中で何かの音が響いた。
多分、レベルが上がったのだろう。
だが数が多い、ステータスを見る余裕はない。
《数は暴力…よく言われる事…その通りだ》
だが、それは、そこそこ実力があればこそ、《弱い奴なんて幾らいたって烏合の衆だ》
だが、その余裕がセレスの勘を鈍らせた。
火の玉がセレスに襲い掛かる…しかも一つではない..10を超える火の玉が飛んできた。
《これがゴブリンメイジか? ヤバイ、死ぬかも…》
避けたが、避けきれなかった二つ程の火の玉が着弾する。
《確かに熱い…だが、これなら子供の頃に花火で火傷した時の方が余程熱かった》
やっかいなので他のゴブリンを後にして、そのまま突っ込む、お返しとばかりファイヤーボールを叩き込み、そのまま切り込んだ。
ゴブリンメイジはそのまま全滅させたが、遠巻きに居たゴブリンアーチャーが矢を放ってきた。
《30匹だけじゃなかったのか…もう彼是20匹は倒した筈だが…数が減っていない…増援がきたんだ》
無数の矢がセレスを襲うが矢は刺さらなかった…だが当たると痛い事は痛い。
ゴブリンアーチャーは矢が刺さらないと見ると目を狙ってきた。
《うざったい!》
先にゴブリンアーチャーがいる所に斬り込んだ。
「ファイヤーボール×3」
《確実に数は減ってきている》
「はぁはぁ、ヒーリング」
《力が戻った気がする…多分レベルも幾つかアップしたはずだ》
恐らく、50匹を超えるゴブリンを倒した気がする。
周りにはゴブリンが居なくなっていた。
だが、奥から、こちらを見ている不気味な奴がいた。
中学生位の身長のゴブリン3匹が武装したゴブリンを引き連れてきた。
《これが多分、ボス戦だホブゴブリンとゴブリンナイトか》
出し惜しみなしだ…僕の全力で迎え撃ってやろう。
ありったけの力を振り絞り、戦った。
ゴブリンナイトにはファイヤーボールを叩き込み斬りつけた。
ホブゴブリンにはてこずったが、今の僕の敵ではなかった。
《やったぞ…全滅させた》
疲れた…少し休んだら今日は魔石を回収しよう..そして..
「えっ..」
後ろから凄い衝撃が僕を襲った。
《ヤバイ、ヒーリングを掛けていなかった》
「サワガシイカラ キテミタラ…ゼンメツダト ニンゲンメ」
《ゴブリンキング…何で僕はホブがボスだと思っていたんだ…あれっ力が出ない》
そのまま、僕は…意識を失った。
ゴブリン討伐 その後に
「大丈夫ですかセレスさん!」
可愛らしいシスターの声で目を覚ました!
「ありがとうございます! シスター アン」
あの後、街であって話したら、このシスターの名前はアンという事が解かった。
「また、血だらけで教会に居ましたけど、何をすればそこまで怪我をするんですか?」
「えーと、魔物と戦って死に掛けました」
「そうですか…余り驚かせないでくださいね」
「はい…所で僕はどの位寝てましたか?」
「三時間位ですかね」
「そうですか、有難うございます」
お礼を言うと僕は教会を飛び出した。
「ステータス」
せれす
れべる 10
HP 128/128
MP 108/108
つよさ 126(102)
ぼうぎょ 98(92)
けいけんち:1047
そうび :こうてつのないふ: じょうぶなふく: かわのくつ
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす
まほう: ヒーリング、ファイヤーボール スリープ(NEW) ライト(NEW)
うん、かなり強くなった気がする。
同級生のLV1 位の力は手に入れたかな…微妙だけど。
さぁ、もう一度…ゴブリンを狩りに行こう。
多分、ゴブリンキングで最後だ。
ここでゆっくりしていたら…逃げるかも知れない。
ゴブリンの洞窟に押し入る。
ゆっくりと静かに歩く、奥まで行くと扉があった。
扉を開けるとゴブリンキングが苗床にした女とやっていた。
女は完全に壊れているようだ..目が死んでいてただうめき声しか出していない。
他にも一人いるが、多分死んでいる。
《お前だって不意打ちしたんだ、おあいこだろう》
「スリープ」
ゴブリンキングはあっさり眠った。
僕は、そのまま、ゴブリンキングの目を潰した。
痛みでゴブリンキングが目覚ます。
「キサマ、オレノメオ…コロシテヤル」
「馬鹿め..目の見えないお前など怖くは無い、的にしてやる」
遠巻きにファイヤーボールを叩き込んだ…ゴブリンと違って簡単には死なない。
だが、20発も叩き込んだ頃にはとうとう力つきた。
途端に頭にいつもの音が響いた。
流石はゴブリンキングたった一匹で凄い経験値だ。
せれす
れべる 11
HP 128/138
MP 68/116
つよさ 136(112)
ぼうぎょ 105(99)
けいけんち:1347
そうび :こうてつのないふ: じょうぶなふく: かわのくつ
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす
まほう: ヒーリング、ファイヤーボール スリープ ライト
ゴブリンキングの魔石だけ回収して、他はギルドで相談しよう。
流石におかしくなっているとはいえこのままには出来ない。
よだれを垂らして焦点のあって無い少女をそのままおぶり、僕は帰途についた。
ギルドのドアを開ける。
僕が少女を背負っているのを見ると、すぐにソフィさんが気が付きこちらへと向かってきた。
「セレスさん、一体? よく見ると…そちらは…嘘..ルージャさん…何があったのか教えて下さい」
途中まであった事を話す…
「待って下さい! その話は大きすぎます…ギルドマスターに一緒に報告しましょう」
そのままついて行くと大きな扉の前に案内された。
「ギルドマスター…その信じられませんが、あのゴブリンの巣穴が攻略されました」
「そうか…で一体誰が来てくれたんだ…攻略者は銀級冒険者のどのパーティだ…それとも流れの金級冒険者か」
「それが..石級のセレスさんです」
「えっ、嘘だろ..」
ギルドマスターはすぐ僕のプレートを確認した。
「なんだこれは…ゴブリン58匹 ゴブリンアーチャーが22匹 ゴブリンメイジが10匹 ゴブリンナイトが8匹にホブゴブリンが3匹 キングが1匹 まだ支払ってない…1日で倒したのか..一人で」
「まぁ、死に掛けましたが」
《死んだとは言えない…》
「その割には元気そうだが?」
「先に教会に行って治療を受けてきました」
「なるほど、それで素材はどうした」
「取る余裕が無いからそのままです」
「だったら、手数料は掛かるが 回収はギルドでして良いか?」
《あの数の解体は難しい…》
「はい、お願いします」
「解かった…それで今回の働きに対してだが…まず二階級上がって階級は銅級にするぞ..本来なら銀級でも良いレベルだが二階級までしか一度には上げられないのだ…済まぬな」
「いえ、ありがとうございます」
「優秀な冒険者はギルドの宝だ、これからも活躍を期待しているぞ!」
「はい、がんばります」
「それじゃ、セレスさん、素材の買取は回収が終わってからですが報奨の精算を先にしましょう」
「ありがとうございます」
「額が大きいのでこのままここで計算しますね」
「はい」
ゴブリン58匹×6000スベル=34万8千スベル
ゴブリンアーチャー22匹×8000スベル=17万6千スベル
ゴブリンメイジ10匹×9000スベル=9万スベル
ゴブリンナイト8匹×1万4千スベル=11万2千スベル
ホブゴブリン3匹×3万スベル=9万スベル
ゴブリンキング=40万スベル
ゴブリンキングの魔石=120万スベル
合計241万6千スベル
「一日の収入にしたら凄い収入ですね…これに魔石が加わったらどうなるんでしょうか?」
20万スベルだけ懐に入れて221万6千スベルはそのまま預けた。
疲れたので1回寮に戻って休んでいた。
ギルドから呼び出されたので向かった。
「魔石の回収が出来たので精算しますね、すいません、一部回収ができないものがありました」
ゴブリン42匹×1.5万スベル=63万スベル
ゴブリンアーチャー22匹×2万スベル=44万スベル
ゴブリンメイジ10匹×2.2万スベル=22万スベル
ゴブリンナイト8匹×3万スベル=24万スベル
ホブゴブリン3匹×4万スベル=12万スベル
合計165万スベル
「手数料を2割引きますので132万スベルです」
勿論、全部預けた。
「あのソフィさん、今日は暇ですか?」
「私ですか? セレスさんが誘ってくれるなら何があっても暇を作ります!」
「それでしたら、一緒に食事をしましょう!」
「はい、喜んで」
「すいませんが、ミラさんにも声を掛けて貰えませんか?」
「あっ、ミラさんもなんですね」
「はい、お世話になりましたので」
「そうですよねー」
《まぁ、そんな物ですよね》
「じゃぁ、今日の夜、こちらの酒場で」
「はい、楽しみにしています」
《さぁ、ルル先輩とメメ先輩も誘ってみよう》
楽しみだ…こうして僕の長い一日が終わった。
プレート更新と誘い
一旦、寮に戻ってきた。
ルル先輩とメメ先輩はちょうどこれから出かける所だった。
「こんにちはルル先輩、メメ先輩!」
「あっセレスさん、こんにちわ!」
「うん、こんにちわ」
「所で、2人とも今晩は空いていますか?」
「うーん、夜なら空いているよ!」
「私も空いてる」
「じゃぁ、今日、前に話した送別会をしようと思うから…夜になったらギルドの酒場に来てくれる!」
「あっ、本当に誘ってくれたんだ..うん、楽しみにしている」
「わたしも!」
「それじゃぁ」
「あのさぁ…セレスさん、あの、ギルドで聞いたんだけど…ゴブリンの依頼を受けているって本当なの?」
「メメも聞いたよ! 昨日は15匹も狩ったんでしょう? ギルドで噂になってたー」
「ここ暫く、確かにゴブリンばっかり、狩っていたと思う」
「何で、何でそんな危ない事を」
「あの時だって死に掛けたんでしょう…何で」
「ただの逆恨み!」
「「逆恨み!」」
「うん、だってこの数日凄く楽しかったからさ..ルル先輩やメメ先輩と仕事をするのが、それがゴブリンのせいで終わっちゃったと思ったら腹が立ってもう…本当に殺してやりたくなったよ..あっ、本当に殺したんだった」
「そんなに楽しかった?」
「うん、それじゃ..夜にまた」
「うん、またね」
「また」
「どうしたのかなメメ、途中から急に静かになってたけど」
「あのさぁ…これどう考えても…好かれてないかな?」
「好かれてるって..何?」
「ルルは鈍感だなー、 一緒に居るのが楽しくて、それをゴブリンが壊したから、倒しまくっているって…普通に考えてメメが好きなんじゃないかな? ちがうかな?」
「あのさぁ…メメ、セレスさんは私の名前も言っていたよ」
「うん、だから、ルルやメメが好きなんじゃないかな?」
「そうなのかな? だけど、それは先輩として尊敬とかじゃないの?」
「あのさぁ…ルルもメメもカッコ悪い所しか見せて無いよ..先輩としてなら好かれないと思うよ!」
「確かにそうだね!」
「国に帰るなんて勿体ない…メメは帰らないで、此処で仕事を探そうと思う…ルルは帰ってもよいけど」
「ちょっと待って! よく考えたら、そんなチャンス滅多に来ないじゃない! 国に帰っている場合じゃないわ…私も此処で仕事を探すわよ」
こうして二人は田舎に帰るのを辞めてここに居る事を決意した。
ギルドに戻ってプレートの更新手続きを進めた。
「セレスさんの能力は…あれっ何でかな映らない!」
「不思議な事に僕の能力って鑑定できないみたいなんです。」
「そうですか、稀に生まれつき、阻害の能力が発動している人が居るって聞きましたけど会ったのは初めてです」
「どうすれば良いですか?」
「そうですね、信頼してますので自己申告でお願いします」
「はい」
セレス
レベル 11
職業 不明
能力 回復魔法 火魔法 睡眠魔法 光魔法 (本当の初級)
「こんな感じで良いでしょうか?」
「えっ、こんな短期間でレベルが10も上がったんですか?」
《あれだけ倒せば…そうなるかな…だけど此処までは上がらないわよね》
「はい」
「そうですか..それで回復魔法と火魔法は解りますが、他のは何ですか? 睡眠魔法と光魔法って聞いた事がないんですが..」
「えーと睡眠魔法は相手を眠らせる魔法で、光魔法は光魔法です」
「あの良かったら..実演して貰えませんか?」
ギルドの修練場のはじに来た。
僕は一通り見せた。
「凄いですね、初級のレベルとはいえ、ヒーリングとファイヤーボールを覚えるなんてなかなか居ません」
「居ないのですか?」
「はい、普通は、どちらか一つですね、攻撃なら攻撃 回復なら回復 最も暫くレベルが上がればセレスさんもどちらかに偏って行くと思います。」
「そうなんですか」
「それで、セレスさん此処からがおかしいんですよ…光魔法はレアですが、聞いた事があります。まぁ明かりがとれるだけのあまり意味のない魔法だと言われてますが…睡眠魔法って何ですか? 人や魔物を眠らす魔法..初めてみました」
「珍しいのですか?」
「本ですら書かれているのを見た事がありません」
「あの、黙っておいて貰う事は出来ますか?」
「はいギルドは守秘義務がありますのでご安心下さい、記載からも光魔法と睡眠魔法は消しておきます」
「有難うございます」
セレス
レベル 11
職業 不明
能力 回復魔法 火魔法 初級
これで登録しなおす事に僕は決めた
プレゼントと小さな誤解
プレートの更新を済ますと…夜まで時間が空いた。
どうしようか考える。
もしかしたら、ルル先輩とメメ先輩にはもう会えないかも知れない。
そう考えると、送別会みたいな物だからプレゼント位買っておいた方が良いかもしれない。
街に繰り出すと、道端でアクセサリーを販売している人が居た。
可愛らしいブローチが売っていた…こんな物で良いだろう。
二人だけに渡すのもなんだから、ソフィさんとミラさんの分も買う。
こんな物で良いだろう…
夜になる…あらかじめギルドの酒場に予約を入れておいた。
料理も別料金を払って豪華な物を用意して貰った。
最初に着いた僕は、みんなが来るのを待った。
一番最初にソフィさんが来た。
見た感じ何時もの制服と違いお洒落をしていた。
お洒落をしたソフィさんはいつも以上に綺麗だった。
遅れてミラさん、メメ先輩、ルル先輩が来た。
この四人は可愛い..さっきから周りの人がチラチラこっちを見ている。
(あれっ、行き遅れのソフィとミラが男連れ? 嘘…あれ噂のルーキーじゃないの?)
(冒険者を引退するルルとメメでしょう? 落伍者が何でセレス君と食事してるの?さっさといなくなれば良いんじゃない?)
(羨ましいな…黒目、黒髪の男の子とお食事…いいなぁ)
彼らが見ていたのは…セレスだった。
「これ、全部メメの為に用意したの?…ありがとう」
「メメの為だけじゃないでしょう…みんなよ、みんな」
「そうですよ、セレスさんはみんなの為に食事会を用意したんですよ…ね」
「あの、私も良いの? ただ護衛依頼を受けただけなのに..」
「えぇ、ミラさんは碌に報酬も貰わなかったんでしょう? 凄い迷惑かけたからそのお礼です」
「そ、そういう事なら遠慮なく…ありがとう、セレス君」
ミラは素早く移動すると..セレスに抱きついた。
「「「な、何をしているんです(か)ミラさん」」」
周りの三人が引き剥がそうとした。
三人だけでなく、酒場の中の他の女冒険者が一瞬凄い目つきで睨みつけていた。
「うーん、流石、若い子の肌はすべすべだねー 親愛を込めただけだから、怖い顔しないで..ほら、もう離したから..」
「….」
女性耐性の無い僕は顔を赤くして黙る事しか出来なかった。
女性に抱きつかれた記憶は、チクショウ、母さんしかない。
「そう言えば、セレス君….今は1人なんだよね! 何だったら私とパーティ組まない?」
《あれっ、他の冒険者の..特に女性の冒険者が睨んでいる…そうか、銀級の冒険者はこのギルドじゃ数人しか居ない…多分、女冒険者の憧れなんだろうな…》
「すみません、暫くはソロで頑張ります」
「そう? パーティ組みたくなったら何時でもいってね..待っているから」
「はい」
女冒険者たち
《けっ、死ぬまで待っていろっての! 銀級だからって》
《歳考えて行動しろよ…おばさんなんかセレス君が相手にするわけ無いだろう》
《あんなに可愛いセレス君とじゃ釣り合わないよね、おばさんじゃ》
何故かミラさんは周りの冒険者を睨みつけている。
「あの、いい加減に席に着きませんか?」
「そうですよね.すいませんソフィさん」
「セレスさんは悪くないですよ! 悪いのはそこのミラさんです」
「セレスさん、今日はありがとう…メメやルルの為に送別会を開いてくれて」
「うん、ルル先輩やメメ先輩には大変お世話になったからね…この位はさせて」
「ありがとう、セレスさん…でももう私は冒険者辞めちゃったから 先輩ではなくルルって呼んで貰えるかな?」
「はい、ルルちゃん?」
「ちゃ..ちゃん..」
ルルは顔が赤くなる…
「いけなかったかな」
「いいいいいけなくないけど..ちょっと驚いただけ..本当にそれだけなんだよ」
「えールルだけずるい..メメもー」
「はい、メメちゃん…これで良いかな」
「うん」
「あの、食事が冷めてしまいますよ…セレスさん」
「すいません、ソフィさん」
《私だってせめて後少し若かったら ソフィちゃんと呼んで貰いたいわよ》
楽しい時間はあっという間に過ぎて行った。
「そうだ、皆んなにプレゼントがあるんだ」
「「「「プレゼント」」」」
「うん、これいつもお世話になっているから…はい」
「開けて良い!」
「どうぞ」
四人はプレゼントを開けると顔が驚きに変わった。
「あの、セレスさん、これ本当にメメにくれるの? 」
「はい、ありがとう…一生大切にするよ」
《ただのブローチなのに何で..》
「ルルも大切にするよ…本当にありがとう」
「あの、セレスさん、私25何ですけど..いえ何でもありません..有難うございます」
「セレス君の気持ちは解ったよ…うん、頑張って銀級まであがってきて、待っているよ」
《あれっ…どうしたんだ》
「はい、頑張ります」
セレスは知らなかった…前の世界でもプレゼントには色々な意味があるように、この世界でも同じ様にある。
この世界でブローチを渡す意味は 「君に相応しい人になりたい」
勿論、セレスはその事を知らない…だが
四人はブローチを潤んだ目で胸につけた。
閑話 騎士と魔法使い
「だけど、このジョブっていうのは凄いな!」
「本当にね、武道をやっていた、祐一君なら解らなく無いけど..私まで強くなっているんだから」
「そうだね!典子は本を読むのが好きだっただけなのに、普通に戦えるんだから不思議だよな!」
僕たちは、今、騎士が追い込んできた、オークを倒している。
勇者や大魔道のスキルを持つ者はもう既にここにはいない、更なる強い魔物を求めて、先に進んでいる。
だが、僕たち、騎士や魔法使いのジョブではまだそこまで進めない為にここに残って地道な修行をしている。
正直あせるが…これでもこの世界のベテラン冒険者より実力は上らしい。
工藤 祐一
LV 5
HP 1000
MP 300
ジョブ 騎士 異世界人
スキル:翻訳.アイテム収納、剣術レベル5 水魔法レベル3
坂本 典子
LV 5
HP 300
MP 990
ジョブ 魔法使い 異世界人
スキル:翻訳.アイテム収納、火魔法レベル6 水魔法レベル3
僕も典子もレベルは5に上がった。
レベルがあがればスキルも増えるのかと思ったらそういう訳ではないらしい。
生まれながらにしてスキルは決まっていて滅多に増える事はないらしい。
ただ、絶対ではなく、死ぬほど努力をすればごく稀に増える事がある。
魔法や剣は使っていればレベルはあがるが、新しい技や魔法は…しっかりと練習して技や詠唱を覚える必要がある。
ただ、レベルを上げるだけでは、魔法は強力になるだけ、剣術はただ使い方が上手くなるだけだ。
この辺りはゲームとは違う…案外世知辛い。
僕らは、もう少しレベルを上げたら、勉強をしなくてはいけないらしい…この辺りはしっかりと教えて貰えるそうだ…その為にお城から騎士や魔法使いがきている。
「これで15匹だね」
「典子は良いよな、遠巻きに魔法を使うだけだから」
「魔法い使いだからね」
「騎士はいちいち攻撃するから..俺なんて血だらけだよ」
「仕方ないよ、今度、水魔法でシャワー代わりになる魔法でも教わろうかな」
「そうしよう、さぁいよいよ最後だ、もうひと踏ん張り頑張ろう!」
「うん」
だが、水は出せるけど、温水には出来ない事を知って、2人はうなだれる事になった。
閑話 勇者達と小さなミス
俺の名前は 大樹 ある日突然、異世界にクラス事呼び出されて勇者となった。
クラスメイトのみんなもそれぞれが優れたジョブを貰っていたが、その中でも優れたジョブだそうだ。
俺たち五大ジョブは魔王に対する切り札だそうだ…確かに他のみんなより優れていた。
確かに切り札だ。
そして、僕たち5人はパーティを組んで演習をしている。
勿論、勇者とはいえ、最初は弱いので騎士団一個師団と行動を共にしている。
最初は他のクラスメイトも一緒だったが、直ぐに僕たちのパーティは物足りなくなり、先へと進んでいる。
今日の相手はキラーウルフマンの群れだ。
今迄、戦っていた、オークとは違い、スピードだけなら一流の冒険者を超えるそうだ。
「今日のキラーウルフマンってどんな奴?」
聖騎士である大河が騎士団の団員に聞いていた。
「狼と人間のあいのこみたいな感じですね…これ以上はお教え出来ません! 鑑定して初見の相手の対応を身に着ける..それも今回の演習の目的ですから」
「たしかにそうだ!」
「はい、ですが、聖騎士である大河様であれば簡単に倒す事は可能かと思います」
「まぁ、それなら良いや!」
「そうね、まぁ私や塔子は後方支援だから、気にしないけど、大河や大樹は斬り込まないとならないから大変よね」
「なんだか、それじゃ大賢者の僕も..楽しているみたいじゃないかな?」
「そんな事言ってないよ? うん聖人も頑張っているよ」
「そう、それなら良いんだけど」
そして、キラーウルフマンの住んでいる森についた。
騎士達が探している間、俺たちは待機だ。
そしてキラーウルフマンの群れが見つかり、その傍まで見つからないように5人で向かっていく。
大賢者である、聖人が鑑定の魔法をかける。
「大丈夫、1匹、ステータスが見えにくい奴がいるけど、大した事無いよ」
「それなら、私が、ファイヤーウオール」
大魔道の平城が炎系の上位魔法を使った。
すると、キラーウルフマンの群れは消し炭のようになった。
「なんだ、今回も俺や大樹の出番はなしか?」
「そういうなよ…まぁ相手が強くなれば俺たちも嫌でも戦わなければならなくなるさ」
「そうだな」
《グルルルー》
「何だ!」
一匹のキラーウルフマンが立ち上がり襲ってきた。
「この死にぞこないが…」
大河の一撃で簡単に死んだ。
「生き残りが居たのね!」
「一匹位仕方なくない?」
「そうだね」
「まぁ、魔法の中心から外れていればそう言う事もあるかもね」
だが、この時に誰も気が付かなかった。
このキラーウルフマンは魔法の中心に居たのだ…たかが雑魚のキラーウルフマンが上位魔法に耐えて立ち上がり攻撃してきた事を経験の無さから見逃してしまっていた。
平和な日常
レベルも上がったし、今日も僕は狩にきている。
狩る相手はキラーラビット。
よく、ライトノベルだとゴブリンの上の獲物はオークだったりするけど..実力差ありすぎじゃないかな。
実際はそんなことは無く..ちゃんとゴブリンよりちょっとだけ強い魔物もいた。
そして僕はゴブリンよりちょっと強い魔物のキラーラビットを狩にきた。
キラーラビットはウサギに角をつけて歯が尖った感じの魔物だ。
今日の目的は魔法だ..まだ実戦で余り、魔法を使った事が無いから..練習を兼ねてきた。
適当に狩ったら..今日は帰る予定だ。
《おっ3匹いるな》
「スリープ」
この呪文は凄いな..複数の魔物をかなりの確率で眠らせる事が出来る。
《起きないように静かに近づいて..ザク、ザク、ザクと》
起きないうちに殺す事が出来た。
素材の皮を剥いで、魔石を手に入れて終わり。
次は、、居た…
「ライト」
うん、一瞬驚いただけで逃げたな..これは不意を衝くか洞窟で明かりをともす位しか使い道が無いな。
その後、後6匹狩って合計9匹狩ってギルドに帰った。
うんもう少し魔法の訓練をした方が良いかも知れない。
「ソフィさん換金お願い出来ますか?」
「はい..今日はキラーラビット9匹ですかこの位が丁度良いと思います」
実は、前のゴブリン討伐時に、ソフィさんに心配された。
それから、僕はある程度計画的に仕事をするようにした。
「私、今日はもう仕事が終わりだから酒場で待っていてくれますか?」
「はい」
「お待たせしました」
軽く食事をして僕の冒険の目標について計画を建てる。
綺麗なソフィさんが居るせいか注目を浴びている気がする。
《また行き遅れがセレスくんの所にいるよ..あれ越権行為じゃないかな》
《あんな事、して貰った覚えないよね…》
たまにソフィさんは凄い目で睨んでいる…
そこにミラさんが加わり..色々な話しを聞く
「今日もまた仕事が決まらなかった」
「私は..返事待ち」
求職中のルルとメメが加わる。
うん、毎日が楽しい..こういった生き方も良いかもしれないな..
だが、その歯車が少しづつ壊れ始めている事にこの時僕はまだ気が付いてなかった。
最初の犠牲者
僕は異世界から来た。
名前はトシだ、苗字が元はあったけどこの世界では呼ばないのが普通なのでこのままトシで良い。
俺が引き当てたジョブは聖騎士だった。
最初このジョブを引いた時は大当たりだと思った。
だって聖騎士だよ? ライトノベルとかでは主人公格だ。
だが、これは中アタリで大当たりじゃなかった…
だけど、魔法が使える剣士だから凄くバランスが良い。
最初はパーティーを組んでいたけど….異世界人って凄くモテるんだよ。
このチャンスを逃すのは勿体ない..だから遠征に出たあとは仲間と組まずにソロで活動している。
そして、今日…俺は後悔する事になる。
俺は..正直いって勇者のパーティーに入れなかった時点で一線で戦うのを辞めた。
もっと下のジョブの奴らが戦っても余裕のある森や洞窟に潜って戦っている。
それでもこの世界の人間では手強い相手らしく…褒め称えられる..うんこれで良い。
今日も、いつもの様に騎士や魔法使いですら簡単に戦える場所で狩をしていた。
《あれは鎧騎士だ..余裕だな..ただ少し色が黒いようだが亜種だろう..亜種は強いらしいが精々が少し強い程度だ..充分狩れるな》
気が付かれないように静かに近づいた..
「ガガガ..」
「もう、遅い..一閃..」
「ガガがガガガ」
「キカヌ…シネ」
《そんな馬鹿な..一閃で傷一つつかないなんて》
あれっ..何で俺の剣と腕が宙を舞っているんだ….
《ヤバイヤバイヤバイヤバイ…逃げないと駄目だ》
痛いの我慢してひたすら走った、走って走って走った。
気が付くと俺は森を抜けて..近くの街に戻っていた。
助かった、そう思ったら痛みが増してきた..
「大丈夫ですか..大変だみんな来てくれ」
その声を聴いた途端に俺は気を失った。
《こんなの…聞いてねー…》
塩漬け依頼
街に逃げ込んできたのが聖騎士でしかも異世界人だと解った。
しかも、その聖騎士の腕が無くなっていた。
直ぐに教会に運び込み治療をしたが流石に欠損した腕は治せなかった。
無い物を生やす事は流石に聖女クラスでも出来ない。
せめて欠損した腕を持ち帰ってくれれば繋げたかも知れないが、何者かから逃げるようにしてここ迄来たんだそれを言うのは酷だろう。
彼は聖騎士で異世界人だこの事は王宮にも報告をしなくてはならない。
またそれ以前にこの街の近くには聖騎士ですら倒される魔物が居る。
その事に対処しなくてはいけない…正直、ただの街長の私には荷が重すぎる。
王宮に手紙を書き、この街の冒険者ギルドに相談した。
ギルドに最初討伐の依頼をしたが受け手は居なかった。
聖騎士が倒されたんだ、最低、金級可能ならミスリル級は必要かもしれない。
そういうレベルの冒険者でも高額で無ければこんな仕事は引き受けないだろう。
この依頼は塩漬けになった。
王宮からの手紙も貴重な勇者は出せない、そういった内容だった。
街には不安しかない…責めて状況を知りたい、そこで討伐から数ランク落として調査依頼に変えた。
それならと銀級冒険者が引き受けたが…帰って来なかった。
そして、調査依頼も塩漬けになった。
だが、森には入れなければ薬草すら手に入らない..結果、他のギルドに依頼を出して貰った。
そして3か月後ようやく依頼を受けてくれた冒険者が現れた。
銅級冒険者のセレスが依頼を受けてこの街にきた。
悪魔の騎士とゆうしゃのよろい
森の探索..階級は問わず、その情報により報酬は変わります。
そんな依頼が貼りだされた。
だから、この依頼についてソフィさんに聞いてみた。
「その依頼ですか? その依頼は隣町のギルドの物ですね…聖騎士トシ様の腕を切り落とした、鎧騎士に似たモンスターの討伐依頼を出したけど、申し込みが無くて..調査依頼にしたのに銀級が帰って来なかったから、その後引き受けてが無く塩漬けになっていた物です」
「そうですか」
《トシ..片腕を無くしたのか…余り交友はないけど..》
「だったら、これ僕が受けます」
「セレスさん、また悪い癖が出ていますよ…聞きましたか? 銀級冒険者ですら失敗した依頼ですよ?」
「解っています、ですが聖騎士のトシとはちょっとした縁があります、ですのでこれを受けさせて下さい」
「頑固なのは解ってます…但し危ないと思ったら逃げて下さいね」
「解りました」
《これは僕に向いた、いや僕の為の依頼だ、聖騎士が倒される様な相手じゃ普通の人間には無理だ、これが討伐なら受けれない…だが調査なら万が一があっても死なない僕なら何とかなる》
こうして僕はこの依頼を受けた。
歩いて隣町に向かう。
隣町に着いたら教会に行くのを忘れない。
そうしないとまた元の街からスタートしなければならないから。
街につき教会にお祈りをした。
その足でこの街の冒険者ギルドに顔を出した。
「おい、本当にこの依頼を受けるのかい?」
「そのつもりですが? 制限は無い筈ですよね?」
「確かに無いが銀級ですら失敗した依頼なんだが大丈夫かい?」
「僕にはちょっとした特殊能力がありまして逃げ出す事には自信があります」
「そうか? だったら森の奥に入った証拠にジギ草を一株持ってきてくれ、それさえ持ってくれば森に入ったという事で最低限の銀貨1枚を渡そう…後は内容次第でプラスする..良いかな?」
「解りました」
そして僕は森に向った。
まずは、奥に行きジギ草をとった。
そのまま、適当に森を歩いた。
問題の魔物は見つからない。
だが、もっとおかしい事が解る。
ここまで、他の魔物に会って居ない事だ。
普通に考えてこれだけの森だ、これだけ歩けば戦わないまでも魔物の影位みる筈だ、だが見かけない。
ふいに後ろから強烈な殺気を覚えた気がする。
直ぐに僕はしゃがみこんだ..僕の首の所を銀色の光が通り過ぎた。
そのまま走って距離を取った。
見た瞬間にまがまがしさを感じた。
確かに見た目は鎧騎士にしか見えない。
だがまず色が違う、聞いていた色はやや黒いと聞いて居たが違う..漆黒と言っていい程に真っ黒だ。
まるで悪魔だ。
「きさまはゆうしゃだな…このあくまのきしがあいてしよう..いきてかえれるとおもうな」
話とは違う…流暢に話すし知能も高そうだ。
確実に強敵だ..
「スリープ」
僕は呪文を唱えた..旨くいった..眠ったようだ。
これで、何回か無条件で攻撃が出来る。
「ファイヤーボール」
炎の弾が悪魔騎士に当たった..少しはダメージが通ったか..嘘だ、無傷に見える。
「ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール」
此処までしてようやく少し鎧が焦げた気がした。
「ゆうしゃ..」
「スリープ」
また眠ったようだ..
「ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール」
「きさま..ころす」
「スリープ」
うん、眠ったようだ..
「ファイヤーボール、ファイヤーボール。ファイヤーボール」
「ぎぎぎ」
「スリープ」
僕は気が付いた、スリープを掛けた後3回の攻撃まで此奴は起きて来ない。
「ファイヤーボール ファイヤーボール ファイヤーボール」
「スリープ」
同じ事を繰り返し、MPが底をつきかけた。
ヒーリング1回分を残した状態になった..僕は悪魔の騎士に斬りかかる。
「ゆううううううしゃーーーー」
断末魔の声と共に、悪魔の騎士はそのまま倒れた。
そして、その場所には黒い大きな魔石と宝箱が現れた。
魔石を拾い、宝箱を開けた..宝箱には汚い鎧が入っていた。
薄汚い鎧、だがこの鎧を手に取った時僕は何故だか涙が流れた。
まるで自分の体の一部を取り返したそんな気がしたんだ。
僕はこの鎧を装備した。
身に着けた途端に急激に強くなった気がした。
せれす
れべる 13
HP 128/158
MP 68/132
つよさ 136(112)
ぼうぎょ 9102(102)
けいけんち:1347
そうび :こうてつのないふ: せるすのよろい(ゆうしゃのよろい): かわのくつ
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす
まほう: ヒーリング、ファイヤーボール スリープ ライト
なんなんだこの防御力はぼうぎょ9000、考えられない そしてせるすのよろい(ゆうしゃのよろい)は何なのだろうか..
これなら僕も魔王軍相手に戦えるかも知れない。
鎧の秘密
僕はギルドに帰ってきた。
そして、受付にいってジギ草を出した。
ジギ草と交換に銀貨1枚を貰う。
「情報を伝えたいんですがどうすれば良いでしょうか?」
「はい、今回の事件はギルドにとって大きな事件です、その為ギルドマスターが直々に聞きます、少しお待ちください」
そのまま、僕は小部屋に通されギルマスを待った。
「早速調査に向ってくれたか? それでどうだった森は?」
「森は静かでした、しばらく散策したのでですが、通常であれば出会うであろう魔物が殆ど出ませんでした」
「そうか、それは不気味だ..他には情報はあるか?」
「はい、調べて歩いていたら鎧騎士にしか見えませんが悪魔の様に真っ黒な鎧騎士に出会いました..しかし片言では無くかなり流暢に言葉を発していました」
「そうかご苦労様だったな..あとはこっちでやる」
「あの、その鎧騎士ならもう倒しましたから大丈夫ですよ?」
「へっ?銅級冒険者なのにか?」
「はい、結構手強かったですが」
「何か証明はあるか?」
僕は魔石を見せた。
「これは凄く大きいな..まるで中級のドラゴンクラスの大きさはある、ドラゴン並みという事なら、聖騎士だって1人じゃ負けるだろう..しかも色が黒い..こんな魔石は見た事が無い..ドラゴンの魔石以上の価格は約束するから譲って貰えないだろうか?」
「ええっ別に構いませんよ」
「感謝する..あとそうだ、私の方から推薦状を書いて置くから、多分向こうのギルドに帰ったら多分昇進すると思うぞ」
「有難うございます」
報告を終え、この街のギルドを後にした。
僕にはどうしても気になる事がある..勿論、この鎧の正体だ。
この鎧は凄い事に、自由に纏ったり脱いだりできる。
いや、冗談で言っているのではなく、纏いたいと思っただけで自動的に纏う事が出来。
脱ぎたいと思ったら消えていく..どこに消えていっているのかは解らない。
教会につき神父さんにシスターに寄進をして祈った。
「また会う事になるとはの」
再び僕は白い空間に居た。
そこには元神様が居た。
だが、その顔は以前とは違い物凄く険しいものだった。
「どうかされたのですか?」
「いや、なに、凄い物を手に入れたなと思っての..」
「この鎧について何か知っているのですか?」
「それはゆうしゃ専用の防具じゃ..見た目は良くないし、ゆうしゃ以外がきても鎖帷子位の能力しかない、だが、ゆうしゃが着た時のみ凄い力を発揮するものじゃ」
「だから、これこんな凄い防御力なんですね」
「そうじゃ..ほかにもゆうしゃ専門の武器屋道具があるから、探して見るのも手じゃな」
「解りました..探してみます」
「だが、恐らくは見つからんじゃろうがな」
「何でですか?」
「それは、お前さん以外にはガラクタにしか見えないし、実際にお前さん以外が装備してもガラクタみたいな力しかUPしないからじゃ」
「逆を返せば、僕には凄い力をもたらす物なんですよね」
「そうじゃ、じゃがガラクタに見えるから大事にされていない、案外道端に捨てられているかも知れないし、開けた宝箱にあっても放置されている可能性もある」
「確かに」
「まぁ、本気で探すのでなく、あくまでついでに考えるのがよかろう」
「そうですね」
「それじゃあ頑張れ..ゆうしゃよ」
可笑しい、あれはある筈が無い..あれは初代ゆうしゃ セルスの鎧だ..本来はこの世界から消え去った物だ..なんでこの世界に存在するのじゃ..調べてみるしかないのかもしれん。
真魔族のカギと魔神の卵
魔王ベルクは焦っていた。
「異世界人か?」
「はっ異世界から勇者を含む者が召喚され次々に魔族や魔物を殺しまわっています」
またか、つい、そう思ってしまう。
先代も、先々代の魔王もこの異世界から呼び出された者に倒されている。
我々は古の境界から先には攻め込む事はしていない。
それなのに、理不尽にも人間はそこから先の土地を求めて責めてくる。
今回もまた虐殺が始まるのだろうか..そしてまた大量虐殺の末、我は殺されるのか。
自分たちの力で攻めて来るなら仕方ない、そう思うが、態々神々の力を借り異世界から強い者を呼び出し攻めてくる…
毎日の様に魔王様、魔王様と助けの声が聞こえる。
流石にもう限界だ。
だが、勇者や異世界人相手に戦えるとなると我や四天王以外には居ない..
だから打って出る事が出来ない。
「我が倒れればまた魔族側が衰退する…そろそろ潮時か…四天王を呼んでくれるか」
「はっ」
「よくぞ来た四天王よ」
「我が剛腕は魔王様の為に」
魔族剛腕のマモウ
「我が英知は魔王様の為に!」
魔道王トール
「我が破壊は魔王様の為に!」
破壊王ズール
「我が風は魔王様の為に!」
天空女王モーラ
「四天王よ、この鍵を渡そう..この鍵で各地の封印を解くのだ」
「宜しいのですか魔王様..」
「モーラ良いのだ..魔族が滅ぶよりは良い..それに綻びも出来ておる..そのカギを開け、真の魔族を復活させよ!」
「「「はっ」」」
「それで、魔王様はどうするのですか?」
「カギを使い封印を解いたら..もう一度ここに戻って来てほしい..そして魔神と共に..勇者達を葬って欲しい…余の最後の願いだ..」
「魔神の卵..使うのですか?」
「どうせ死ぬなら..この世界の人類も道連れだ..」
「「「「さらばです..魔王様」」」」
「さぁ、魔神の卵を持て..余の命と引き換えに最強の魔神を誕生させてくれようぞ」
封印の先にあったもの
とうとう此処にきてしまった。
四天王のモーラは鍵を差し込むかどうか悩んでいた。
太古の昔からいる真魔族、姿形は自分たち魔族と変わらない。
ただ違うのは、闘争本能が高く何があろうと死ぬまで戦い続ける。
そして人間に対しては一切の慈悲は無く命乞いなど一切聞かなく殺すことしかしない。
私はそう聞いている。
そんな物者たちを世に送り出してしまって良いのだろうか?
8代前の魔王様は「どんな嫌いな人族であっても滅ぼしてはならない」そう言って封印された者だ。
「モーラ様、何を躊躇っているのですか?」
「そうだな、これは魔王様の勅命だ、やるしかない」
鍵を差し込み封印を解いた。
「そんなバカな…これでは意味が無い!」
モーラ達が見たものはただの干からびた多数のミイラだった。
《これで良かったのかも知れない》
そんな安堵感と共にモーラ達は魔王城へと帰っていった。
魔王の死
四天王が魔王城に戻ると、魔王は全ての力を卵に注ぎ込み死にかけていた。
「よくぞ戻ったな、して首尾はどうだ?」
トールが代表して答えた。
「それが、可笑しな事に全ての者がミイラのようになっておりました」
「そうか、知らなかったのだな、それは魔力が枯渇しているだけじゃ、直ぐに周りの魔力を吸い集め復活する、時間の問題じゃ…捨ておけ…あと、今までの忠義は余は死んでも忘れん、最後にこの魔神の卵をお前たちに託す..余の全てを注ぎ込んだ…あと2週間もすれば魔神様が生まれる…それまで何としても守ってくれ…」
「「「「はっ命に代えて」」」」
それを聞くと魔王ベルクは安らかに死んだ。
まるで魔族の勝利を確信したがごとく…
閑話:気質の差
トシは王宮に帰り、そのまま引き籠っていた。
その様子を周りの人間が冷ややかに見ている。
確かに腕1本失ったのは辛いと思う、だがこうも我儘されると示しがつかない。
部屋に引きこもり、食事を要請し何もしない、これでは異世界召喚者の威厳が保てなくなる。
そう考えた、国王エルド6世はトシを呼び出した。
「聖騎士トシよ、もう傷は癒えたと聞くそろそろ活動をしてくれぬか?」
「王様..」
「言いたいことがあるのなら申してみよ!」
「俺は戦うのが怖くなった、もう戦いたくない」
「それでどうするというのだ? 一から勉強して文官でも目指すか? それとも冒険者になるか? 手に職をつけて仕事でもするか? 応援するぞ」
くしくもそれはセレスに言った条件と同じだった。
「俺は、何もしたくない…」
ただの学生だった人間が腕を片方失う、これが普通の感情だ。
前の世界なら両親が養ってくれる。
だが、ここは異世界だ。
「そうか、なら金貨4枚を渡そう、平民なら1年間遊んで暮らせる金額だ、どこへでも好きなところに行くがよい!」
「王様、俺を、俺を捨てるのか?」
「捨てるなら国外追放する、国としては一流の剣士にまで育て上げた、片腕であっても一流の冒険者や兵士にまでなれる力はある、それ程の人材を手放し、お金までやる..かなり譲歩しているつもりだ」
「俺は..」
「国外追放じゃない、城下町で暮らすのも良い、1年間遊んで暮らせる金を渡した、期間を掛けて遊びながら将来自分がどうしたいか考えるのが良いんじゃないか?」
「解りました」
トシはお金を貰うと出て行った。
「お父様、聖騎士トシの監視はされないのですか?」
「捨ておけ、そんな価値などない」
「ですが、セレスにはしっかりと監視の目を光らせておいでですよね?」
「あの者とは気質が違っておる」
「気質ですか?」
「まぁこれは経験を積まねば解らぬよ、そうだ、セレスの監視の報告書を見せてやろう」
マリンは報告書に目を通した。
「異世人なら普通にできる、だがあのステータスだそれを踏まえてどう思う?」
「あれ程才能やステータスの低い者が銅級冒険者ですか? やはり特殊な才能があったのでしょうか?」
「それは違うぞ、低級冒険者と一緒に薬草採取からはじまってゴブリンの討伐その受けた依頼から考えると努力したに違いない」
「そうなのですか?」
「銅級冒険者は一流ではないが一人前だ、そこまで自分の力だけで這い上がった」
「随分と気に入られたものですね」
「余は運命を自分で切り開く者が好きじゃ、そういう者はどんなに能力が無くともいつかは大きく育つ」
「お父様がそこまで評価しているなら、そうですね私もセレス殿、そう呼ぶようにしましょう? たしかにかの者が城を出ていく時ににここまでなるとは思いませんでしたわ! 」
「それでも、恐らくこれが限界じゃろうな、王である余と会うこともなかろうよ!だが運命を自分で切り開いたそれには素直に称賛じゃ」
「私も称賛しましょう」
報告がまだ入ってないから二人は知らない。
聖騎士トシですら敵わなかった魔物を倒したのがセレスだった事を…
セレスは信じられない速度で強くなっている…その事を
勇者セルスの冒険
元の街に戻ってきた。
僕は早速、ギルドに報告にいった。
何時ものようにソフィさんの受付に並んだ。
依頼が無事に終わったのでサインがしてある報告書を提出した。
「凄いですねセレスさん、あの塩漬け依頼を達成するどころか討伐しちゃったんですか! うわぁ昇格の推薦状までありますよ..早速、マスターに報告です!」
ソフィさんが僕の腕に手をまわして引っ張っていく..周りの目が険しいものに変わる。
人気者の受付嬢に気に入られている仕方ない甘んじて受けよう。
《なんで行き遅れのソフィがセレスくんにべた付くのかな!》
《あれ公私混同だよね、今度やったら文句いってやろうかな?》
本当は自分がこの世界では美少年であることをセレスは知らない。
「凄いなセレスは、あの聖騎士様が倒せなかった魔物を倒すとはな、しかもあのケチで有名なあの町のギルマスからだ、異世界から召喚された聖騎士様ですら負けた魔物の討伐だ、文句なく2階級上げても良いだろうな、いや聖騎士トシ様が倒せなかった相手を倒したそう考えると金級にして、ミスリル級の申請を王宮に出す..それが妥当だな」
「そんな凄い事を僕はしていません!」
「あのなぁ..謙遜もしすぎると良くないぞ! セレスが謙遜すると、そんな弱い魔物に聖騎士が負けた事になるんだ、だから今回は金級は黙って受け取れ! これはギルマス権限で与えられる最高の階級だ。そこで終わらせたら今度は聖騎士のトシ様は召喚者だから王宮の立場がまずい、だから王宮にも花を持たせなければならない、まぁミスリルなんぞはこの世に20人と居ないからまず貰えないから安心しな..ただ王宮から何だかの報償はでると思うぞ、断るな! 断られて困るのは相手なんだからな」
「解りました」
「それじゃ、金級になった記念だ何か欲しい物はあるか?まぁ俺の懐からだから高い物は断るかも知れねがな」
特に無いな、そうだあれだ。
「勇者セルスについて何か知っていますか?」
「勇者セルスについてか? 知っているぜ何ならその書物をプレゼントそれで良いか?」
「はい、お願いします」
「解った、俺の子供の頃の宝物だ大切にしろよ」
「絵本ですか?」
「ああ、勇者セルスの冒険、子供の憧れの勇者の絵本だ」
「あの、勇者セルスは本当にいたんですか?」
「居たとか居なかったとかあるが正直わかんねぇ..ただすぐそこの森に錆びた剣が岩に刺さっていて、それがセルスの剣らしい」
「誰も抜かないんですか?」
「誰も抜けねえらしいな! 最も子供が遊びで挑戦する以外今じゃだれも抜こうとはしないぞ?」
「何でですか?」
「ああ、剣の価値を鑑定で調べたんだよ!価値があるなら岩を削岩しようって事になってな..そしたらなんと1スベルの価値だってよ..今時子供のおかし位しか買えねー…まぁ錆びた剣じゃ当たり前だな」
「確かにそうですね、だけど抜いたら自分の物にして良いんですか?」
「構わねぇよ 1スベルの剣だからな」
「へーセレスさん、勇者に憧れていたんですか? それで一文字違いの名前もその辺りに由来しているんですかね..もしかしてまだ憧れています?」
「その、はい」
「納得です…だからたまに凄く頑固になるんですね..可愛いですね」
「やめてください」
「案外、剣にもチャレンジしたりして」
「さぁ知りませんよ僕は」
《《やるなこれは》》
生暖かい目で見られていたたまれなくなった僕は話が終わるとそそくさとギルドを後にした。
とうとう僕は強くなった。
僕は夜になってから森へと向かった。
勿論目当ては勇者セルスの剣だ。
昼間だと冒険者見習いの子供達が遊び半分で来ているらしい。
抜けるかどうか解らないが、もし抜いた時に子供達の前だと変な具合の騒ぎに成りそうだ。
だから、誰も来ない夜を選んだ。
《あれだ、確かに錆びた剣が岩に刺さっている》
僕は近づき一気に剣を引き抜いた。
凄い、この剣を持った途端に体がすごく熱くなった。
ステータス。
せれす
れべる 13
HP 158/158
MP 132/132
つよさ 12112(112)
ぼうぎょ 9102(102)
けいけんち:1347
そうび :せるすのけん(ゆうしゃのけん): せるすのよろい(ゆうしゃのよろい): かわのくつ
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす
まほう: ヒーリング、ファイヤーボール スリープ ライト
凄い、冗談なのかと思う位に強い。
しかも、このゆうしゃ専用武器、自分の意思で装着できる。
使いたいそう願うと自分の体にいつの間にか身についている。
そして不要だ思うとどこかに消えている。
その間は何処に行っているのか解らない。
だが、これ本当に良いのかな?
実際に比べてみないと解らないけど、勇者達に近いんじゃないかな?
これで勇者セルスの道具は盾と靴だけだ。
これは流石に何処を探したら見つかるか解らない。
とりあえず ガラクタ市に来てみた。
《案外、こんな所にあったりして》
例えば、こんな所の樽の中にとか..
「おっ見て行ってくれるのかい? その樽の中にある物は全部、10スベルで良いよ、ガラクタしか無いからね..だけど治せば使える物もあるよ! 」
「有難うございます、見させて下さい」
錆びた盾(ゆうしゃのたて) ボロボロの靴(ゆうしゃのくつ)
《マジ、マジなのか? こんな簡単に見つかっちゃったよ》
「あんた、本当にそれを買うのかい? それ一番のゴミだよ..まぁ買ってくれるなら二つで10スベルで良いよ」
「買います」
「毎度ありー」
こんなので良いのか?
こんな簡単に強くなって良いのかな、僕まだれべる13なのにこれ最強装備だよ。
せれす
れべる 13
HP 158/158
MP 132/132
つよさ 12112(112)
ぼうぎょ 19102(102)
けいけんち:1347
そうび :せるすのけん(ゆうしゃのけん): せるすのよろい(ゆうしゃのよろい):せるすのたて(ゆうしゃのたて):せるすのくつ(ゆうしゃのくつ)
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす ゆうしゃせんようまほう
まほう: ヒーリング、ファイヤーボール スリープ ライト、ぼると
僕は一体どうなっちゃっているんだろうか?
今迄のが嘘のように装備が揃ってしまった。
これ、本当にハズレのジョブなのかな?
充分、本当の勇者と渡り合える位強いし、死なないという強みもある。
今の僕はもう弱く何てない!
期待外れ
僕は教会に朝から飛んでいった。
今日は奮発して20スベルを寄進して祈った。
やはり、今回も女神では無く元神が現れた。
「どうしたのじゃ、凄くご機嫌だが?」
「ついに揃えたんですよ、ゆうしゃの装備一式ほら」
「マジですか?」
「マジです!ほら!」
せれす
れべる 13
HP 158/158
MP 132/132
つよさ 12112(112)
ぼうぎょ 19102(102)
けいけんち:1347
そうび :せるすのけん(ゆうしゃのけん): せるすのよろい(ゆうしゃのよろい):せるすのたて(ゆうしゃのたて):せるすのくつ(ゆうしゃのくつ)
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす ゆうしゃせんようまほう
まほう: ヒーリング、ファイヤーボール スリープ ライト、ボルト
「可哀想な事をしてしまった」
「どうしたのですか?」
「いや、すまんの、解かり易いように表示されるようにしてあげような」
せれす
れべる 13
HP 158/158
MP 132/132
つよさ 112(+30)(+12000)
ぼうぎょ 102(+60)(+19000)
けいけんち:1347
そうび :せるすのそうび(けん よろい たて くつ)(ゆうしゃのそうびぜんぶそろった!)
かご:ゆうしゃのそうびははずすこともかえることもできない ゆうしゃまほうがつかえる
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす ゆうしゃせんようまほう
まほう: ヒーリング、ファイヤーボール スリープ ライト、ボルト
+の数値は、今は使えない。
「これはどういう事ですか?」
「わし、ぼけていた、すまない、つい昔のつもりで話してしまった」
「説明して下さい」
「本来「ゆうしゃ」は、その昔わしがまだ神だった時に、今の魔族ではない魔族と戦う為に作ったんじゃ」
「それは解りますけど、だから何なんですか?」
「その時の初代勇者がセルスでその装備していた最後の武器は聖なる武器として引き継がれていったんじゃ」
「これが、その武器や装備ですよね?」
「そうじゃが、これは当時の魔族専用武器での!」
「まさか!」
「そうじゃ! 今の魔族達にはただの武器にしかならない..見た目のまんまの能力じゃ」
「うがーっ、まさか最初の(+30)(+60)が今の能力そういう事ですか?」
「すまぬ、この前は昔を思い出してつい興奮してしまって、すっかり勘違いじゃ」
「あの、もしかしてこれって《ゆうしゃのそうびははずすこともかえることもできない》ってまさか」
「うむ、聖なる武器だから他の武器に持ち換えれないように加護がついておる」
「それってこの世界だと、ほかの武器を持てないという呪いじゃないんですか?」
「うむ、そうかも知れぬ、だが、ゆうしゃの装備に選ばれるというのは光栄な事なのじゃ、この世界の聖剣に選ばれると同じ位のな」
「だが、それは?」
「使えないの…なーんも役には立たないボロ装備じゃよ」
「なんなんですかーこれ、またハンデが増えた、そういう事ですか..」
「すまぬの..ただ一つだけ良い事もあるぞ..これじゃ《ゆうしゃまほうがつかえる》じゃ」
「これは?」
「ゆうしゃのみが使える、雷を纏った魔法が使える、これはこの世界ではお前だけじゃよ!」
「能力はどの位強力なんですか?」
「うむ、炎や水でも同じ威力の魔法はあるのぉ」
「そうですか..はぁー」
《また僕だけこんな思いしなくちゃいけないんだな》
「本当に済まなかった..」
「良いんです..」
「何か、罪滅ぼしをいつかさせてもらう本当に済まなかったの」
次第に涙が流れて来た。
せれす
れべる 13
HP 158/158
MP 132/132
つよさ 112(+30)(+12000)
ぼうぎょ 102(+60)(+19000)
けいけんち:1347
そうび :せるすのそうび(けん よろい たて くつ)(ゆうしゃのそうびぜんぶそろった!)
かご:ゆうしゃのそうびははずすこともかえることもできない ゆうしゃまほうがつかえる
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす ゆうしゃせんようまほう
まほう: ヒーリング、ファイヤーボール スリープ ライト、ボルト
って本当は..
せれす
れべる 13
HP 158/158
MP 132/132
つよさ 142
ぼうぎょ 162
けいけんち:1347
そうび :せるすのそうび(けん よろい たて くつ)(ゆうしゃのそうびぜんぶそろった!)
かご:ゆうしゃのそうびははずすこともかえることもできない ゆうしゃまほうがつかえる
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす ゆうしゃせんようまほう
まほう: ヒーリング、ファイヤーボール スリープ ライト、ボルト
こんな力しか無いのに金級冒険者…
こんなんじゃ魔族なんて戦えないじゃんか..今回のは運が良かっただけだ。
結局、駄目じゃん、あの身に着けた時の高揚感は一体何だったんだよ…結局僕は弱いままじゃないか!
王宮にて
その日王宮は湧いていた。
「お父様、大変です、あのセレスのミスリル級の昇格願いが届いております」
「マリン、それは本当か?」
「はい、あの聖騎士トシが倒された魔物の調査をしてそのまま討伐されたようです!」
「性格的に問題があったとしてもトシは聖騎士だった。そのトシが負けた魔物を倒した相手がただの冒険者では話が可笑しい」
「では、どの様に?」
「民衆とは夢物語が好きなのじゃ…本来なら異世界人が、特に勇者が活躍していれば問題なのじゃが..」
「確かに今は芳しくありません。 聖騎士のトシ以外にも精神的に脆い者がそろそろ出そうです」
「そう考えたら、好機じゃ。このままミスリル級を認め、異世界人だと発表じゃ..更に手柄をたてたらオリハルコン級を視野にいれていく」
「そうですね」
「これで離れ始めた異世界人の求心力があがるじゃろう」
「本当に良い考えです」
就職祝と昇格依頼
今日は本来はルル先輩とメメ先輩の就職祝をする筈だった。
「メメ先輩もルル先輩もギルドに決まったんですか?」
「うん、中々仕事が決まらなかったんだけど、丁度、解体と薬草の仕分けの人が歳で辞める話があったから応募したんだよ」
「うん、そうしたら丁度二人分空きがあったからそのまま雇って貰えたんだ」
「良かったですね…それじゃ今日はお祝いしなくちゃ!」
「奢ってくれるの?」
「はい」
「やったーあと、ギルド職員になったからそのまま寮を使わせて貰える事になったから何時でも訪ねてきて良いよ」
たたたたたたっ
「はぁはぁ..決まりましたよ!」
「どうしたんですか? ソフィさん息せき切らして!」
「決まったのよ! セレスさんのミスリル昇格が、正式には王宮で授与式が終わった後ですが..」
「あの、セレスさん、そんな階級迄上がっていたの?」
「ミスリルに昇格って事は今でも金級って事だよねメメ聞いて無いよ!」
「うわーこのギルドのエースってセレスさんだったんだね…そんな人がパーティ組んでくれていたんだ」
「違う、たまたまだって」
「セレスさん悪い癖ですよ、特に今回は誇らないと負けた人の名誉も考えて下さい」
「解りました」
正直気が重い。
本当の僕は
せれす
れべる 13
HP 158/158
MP 132/132
つよさ 142
ぼうぎょ 162
けいけんち:1347
そうび :せるすのそうび(けん よろい たて くつ)(ゆうしゃのそうびぜんぶそろった!)
かご:ゆうしゃのそうびははずすこともかえることもできない ゆうしゃまほうがつかえる
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす ゆうしゃせんようまほう
まほう: ヒーリング、ファイヤーボール スリープ ライト、ボルト
こんな能力なのに、ミスリル級?
笑うしかない…
「セレスくーん、酷くないかな? もう金級だよね? そして今度はミスリル級だよね? それは私より上じゃん? 何で教えてくれないのかな?」
「ミラさん、別に黙っていた訳じゃないんです、本当に忙しくて!」
「まぁ、良いや..今日はセレスくんのミスリル昇格のお祝いだ奢るよ!」
「いえ、今日は僕が奢ります、メメ先輩とルル先輩の就職祝を奢る約束でしたから」
「そう? じゃあ奢って貰おうかな?」
こんな楽しい日々が何時までも続く..僕はそう思っていた。
何の根拠も無く。
謎の魔物には出会えなかった。
その物たちは暗い洞窟から現れた。
最初はそれらは干からびたミイラのような物だった。
だが、周りから魔力を吸い上げ、魔物の形を成した。
その姿は今いる魔物達とほとんど変わらない、だがその力は全然違っていた。
とある森の中の事、銀級冒険者のセルスタンは驚きを隠せなかった。
この辺りで一番弱い筈のスライムがサーベルウルフを捕食していた。
絶対におかしい、スライムなんかは駆け出しの初心者でも狩れる。
その逆にサーベルウルフを倒すとなると最低でも銅級冒険者の依頼だ。
例え、サーベルウルフがどれだけ怪我していてもスライムに遅れはとらないだろう。
その前にスライムは怖がりサーベルウルフに近づきはしない。
セルスタンは鑑定の魔法を唱えた、だが何も見る事が出来なかった。
もし、セルスタンが鑑定を掛けたあと、知る者が見たら..こう表示されたはずだ。
すらいむ (真魔族)
セルスタンが気が付かない間に他のスライムが近づいてきた。
セルスタンが斬りつけると簡単に切り伏せられた。
《多分、あれは亜種か突然変異だ》
この日のセルスタンの報告から、レベルの可笑しい魔物の情報が沢山上がってくるようになった。
そしてその影響はセレスの近くでも起き始めた。
「いやーどじっちゃったよ!まさか、キラーラビットに遅れをとるなんて思わなかったよ!」
「ミラさん、冗談ですよね!」
「うん、本当の事だよ! だけど、あのキラーラビット可笑しいんだ、考えられない位強かった」
《銀級のミラさんが怪我をする何て可笑しい..そんなキラーラビットが居るのか? もしかしたらあの悪魔騎士の様におかしな存在が混じっているのかも知れない》
「うん、僕も気をつけるさ」
「何言ってんだよ、ミスリル冒険者のセレスくんが、そんな物にビビる必要ないぞ」
「そうだな..うん」
笑っているけど、傷は辛そうだな..あの傷じゃ暫くは働けないだろうな。
「ミラさん!」
「どうしたんだいセレスくん」
「お大事に!」
「おう」
僕は近くの森に来ている。
ここ暫くしてなかったレベル上げと謎の魔物の調査だ。
せれす
れべる 13
HP 158/158
MP 132/132
つよさ 112(+30)(+12000)
ぼうぎょ 102(+60)(+19000)
けいけんち:1347
そうび :せるすのそうび(けん よろい たて くつ)(ゆうしゃのそうびぜんぶそろった!)
かご:ゆうしゃのそうびははずすこともかえることもできない ゆうしゃまほうがつかえる
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす ゆうしゃせんようまほう
まほう: ヒーリング、ファイヤーボール スリープ ライト、ボルト
今の僕はこんな感じだ。
出来る事なられべる20は目指したい所だ。
普通に森を歩いてみた。
どっちか解らないがキラーラビットが現れた。
以前の僕でも一撃で倒せる魔物だ、もし一撃で倒せなかったら可笑しい事になるだろう。
さぁ勝負だ。
《可笑しい、一撃どころか剣の一振りで三匹のキラーラビットが狩れてしまった》
ここまで簡単に狩れる筈はないんだが..
ワーウルフにキマイラ、本来なら苦戦するような相手が易々と狩れてしまう。
そして体は全然疲れない。
聞いた話と違う、これなら寧ろ前より弱くなったそんな感じがする。
少なくとも相手が強くなった気はしない。
何だか可笑しいのは確かだ、同じ種族なのに強い奴や弱い奴がいる、これじゃギルドも困るだろう。
推奨レベルなんて解らない。
滅茶苦茶だ。
だけど、どの魔物も弱い、通常の魔物の力の物、弱体化した物..いずれにしても話にあった、強い物には会っていない。
まぁ倒し続ければいつか出会うだろう。
気が付くと今迄の最高記録とでもいえる数の魔物を倒していた。
せれす
れべる 17
HP 158/233
MP 132/204
つよさ 172(+30)(+12000)
ぼうぎょ 150(+60)(+19000)
けいけんち:1947
そうび :せるすのそうび(けん よろい たて くつ)(ゆうしゃのそうびぜんぶそろった!)
かご:ゆうしゃのそうびははずすこともかえることもできない ゆうしゃまほうがつかえる
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす ゆうしゃせんようまほう
まほう: ヒーリング、ファイヤーボール スリープ ライト、ボルト しょうのう ファイヤーボム
ここまでほぼ無傷だ。
れべるが上がると各種ポイントの上限も上がる。
流石に回復はしないようだ。
ここで「しゅうのう」の魔法が手に入ったのが大きい、上限はあるのかも知れないが大量の素材や道具が収納できる。解体しないでも素材が簡単に収納される。しかもこれがMPを使わずに出来る凄いお得だ。
ボルトは雷の魔法だったが、威力はファイヤーボールと変わらなかった。
ファイヤーボムは複数のファイヤーボールが爆発する。
これなら予定のれべる20迄直ぐに上がるだろう。
それからも魔物を倒し続け気が付くとれべるは20になっていた。
せれす
れべる 20
HP 158/333
MP 132/279
つよさ 202(+30)(+12000)
ぼうぎょ 195(+60)(+19000)
けいけんち:2397
そうび :せるすのそうび(けん よろい たて くつ)(ゆうしゃのそうびぜんぶそろった!)
かご:ゆうしゃのそうびははずすこともかえることもできない ゆうしゃまほうがつかえる
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす ゆうしゃせんようまほう
まほう: ヒーリング、ファイヤーボール スリープ ライト、ボルト しょうのう ファイヤーボム ヒ―リスト
ヒ―リストはどうやらHPが完璧に回復する呪文のようだ。
結局、ここまで魔物を倒しても強いという謎の魔物には出会えなかった。
めぐりあえない
「セレスさん、森に討伐に行かれたのですよね? どうでした」
「それが運が良いのか悪いのか出会えなかったよ!」
「その割には素材を持って無いみたいですが..」
「ああ、今出すね!」
頭の中でしゅうのうから出したい素材をイメージした。
目の前に凄い量の素材が現れた。
「それ、どんな魔法ですか?」
「収納っていう魔法なんだけど..」
「そんな魔法見た事無いですよ! 商人の中で豪商と言われる方が家宝で収納袋っていうアイテムを持っていますが、この世で10も無いです..それを魔法で再現…」
「まずい..」
「しょうがないなセレスくんは、誤魔化してあげますよ! セレスくん、この手品どうやったの?」
「内緒です!」
《なんだ、手品か?》
《そうだよな、あんな事が出来たら..護衛任務全部セレスくんの物じゃん》
「ですが、これ凄い量ですね! まさか今日一日で狩ったんですか?」
《不味いな》
「ここ暫くの分です」
「そりゃそうですよね!」
魔石から素材までの換金と討伐報酬を加えたら 520万スベルになった。
これは自分でも過去最高だった。
何よりも素材の回収や解体をしゅうのうが全部やってくれるのが嬉しい。
その後も冒険者の負傷は増えていった。
そして今では銅級ですら活動が困難な場所になっていった。
だが、不思議な事にセレスが何回調査をしに行っても「強い魔物」には会えなかった。
授与式
授与式の日が決まり、僕は王宮に来ていた。
ここで僕は正式にミスリル級の承認を受ける事になる。
久しぶりの王宮に思わず緊張するかと思ったがそうでも無かった。
勇者の大樹、聖騎士の大河、大賢者の聖人 聖女の塔子 大魔道の平城さんが居たから。
だが、何でこの時期に居るんだ。
「やぁセレスくん久しぶりだね! まさかあの後城から出て行ったなんて知らなかったよ!」
「うん、流石にお荷物は嫌だったからね..冒険者にでもなろうと思って」
「随分、頑張ったんだね、今日、ミスリル級になるんでしょう?」
「まあね..出来る範囲で頑張ったらなれた、それだけだけどね」
「だけど、セレス、あの後に急に強くなったりしたのか?」
「見せても良いけど悲しくなるから感想は無しでお願い」
せれす
れべる 20
HP 158/333
MP 132/279
つよさ 232
ぼうぎょ 255
けいけんち:2397
そうび :せるすのそうび(けん よろい たて くつ)(ゆうしゃのそうびぜんぶそろった!)
かご:ゆうしゃのそうびははずすこともかえることもできない ゆうしゃまほうがつかえる
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす ゆうしゃせんようまほう
まほう: ヒーリング、ファイヤーボール スリープ ライト、ボルト しょうのう ファイヤーボム ヒ―リスト
「やっぱり、その変な状態が続いているんだね」
「うん、ただ、ひらがなはこの世界では読めないらしくて助かるよ」
「なんだか ゆうしゃ っていうのが悲しいな本当に」
「だから、言わないでよ! 自分でも解っているからさ..所で皆んなはどの位凄いの?」
「ごめんな、セレスくん、勇者パーティーは国の決まりでステータスを教えられないんだ」
「そうか、残念だな」
「そうだ、僕のHPだけなら教えてあげるよ 9800だよ」
「大賢者なのに9800もあるんだ、約30倍…凄いんだね!」
「そりゃ勇者パーティの一員だからね」
「所で、何で勇者パーティがここに居るの?」
「ああ魔王城を攻略する為に魔王の森迄調査に行ってたんだけど、最近おかしな魔物があちこちで出るんだ、その調査を頼まれてな..そう言えば、セレスも戦ったんだろう? どうだった?」
「確かに強かったけど、スリープという魔法が効いたからどうにか倒せたよ!」
「そうか..それからはあって無いのか?」
「うん、不思議な事に僕は出会えないみたい..ハハハ」
「結構、クラスの仲間も酷い目にあった奴も居るから遭わないに越したことないさ」
「ここにいらしたのですか? そろそろ授与式が始まります、セレス様もご用意して来てください」
「「「「じゃぁな(ね)セレスまたな(ね)」」」」」
授与は滞りなく終わり、僕は正式にミスリル級の冒険者になった。
だが、これが大樹達、勇者の元気な姿を見る…最後になるとは思いもしなかった。
魔神王の復活
おかしな事に未だに勇者達が攻めて来なかった。
剛腕のマモウは高笑いする。
「いい事じゃないか? これで確実に邪神は復活する!」
「ですが、マモウ、魔王の森まで来て引き返したのが気になりませんか?」
「相変わらず、モーラは臆病だな、今更来たところでもう手遅れだぜ! これで勝ちだ!」
「だが、残念な話がある..」
「どうしたのだズール」
「まだ、魔力が足りてないようだ..だから、足りない魔力を我の身をもって補おうと思う、だが..」
「解った、それでも足りないというのだな、更に不足ならこのマモウがいく…安心するが良い」
ズールとマモウの全ての魔力を吸い取ってもまだ、魔神の卵は復活する兆しがなかった。
「仕方ありません、私も行きます」
「モーラ、俺が行く」
「何をいっているのですか? 残るなら四天王最強のトール貴方が残るべきですわ」
そして、モーラの魔力を吸い込んでも卵に異変は起こらなかった。
「俺で最後か…あとは頼んだぞ..」
部下にあとを任せた。
《頼むからこれで目覚めてくれ、孵化してくれ》
卵がかすかに光りだす。
そして声が聞こえてくる。
《弱き者よ大義であった..お前らの仲間は我と真魔族が保護する事を約束しよう》
「貴方様は魔神様なのですか?」
《確かに魔神だ…だが世を知る者は魔神王…魔神王と呼ぶ、魔神王エルドランそれが魔族の神にして魔族を守る者だ》
「後はお願いします!魔神王様」
《任された..それから伝えて置く、魔族にとっては死は終わりではない、永い輪廻の末更なる強い魔族に蘇る..今は静かに眠るが良い..》
トールはそれを聞くと静かに眠りについた。
「ハハハハハっ余は帰ってきたぞ、勇者など恐れるに足らず…人間など全て滅ぼしてくれるわ」
その日、人類にとって本当の恐怖が復活した。
騎士と魔法使い…その死
「何故だ..何故..」
異世界から召喚された騎士、祐一は焦っていた。
本来なら簡単に倒せる筈の鎧サソリ相手に苦戦をしている。
目の前には魔法を使い果たして典子が倒れている。
俺たちがこんな奴らに負ける筈が無い…
だが実際には確実な死が襲ってきている。
俺や典子がこんな鎧サソリに負ける筈がない..実際に更に数段上のサーベルライオンを狩っていたんだ。
それなのに、何が起こっているんだ..
幾ら斬りつけてもたかが鎧サソリが斬れない..可笑しい。
しかも此奴ら今迄と違って逃げないし、見逃しもしてくれない。
確実に総力戦を挑んできている。
此奴らを皆殺しにするしか助かる道はない..だがそれは出来ないだろう。
俺だけなら可能性はあるかも知れないが..典子を抱えてじゃ無理だ。
「仕方ないか..」
「此処で死ぬしかないな..典子守ってやれなくてごめんな!」
典子は答えない..なぜなら死んでいるから…
「本当にごめんよ、俺がふがいないばかりに…俺はお前らには殺されないよ」
典子のバックから爆裂石を取り出した。
そして魔力を注ぎ込んだ。
爆裂石が赤に変わり爆発が起きた。
そして二人の体はバラバラになり吹き飛んだ。
その肉片を鎧サソリは美味しそうに食べていた。
希望の勇者
何が起こったのか解らない。
最近では、下位冒険者や元より上位冒険者にも犠牲が出ている。
幾つかの場所では冒険者のランクはあてにならず最早適正ランクが解らない。
あちこちのギルドで悲鳴があがっている。
沢山の素材や討伐の案件があるのにどのランクの冒険者に依頼を頼めば良いのか解らない。
かなりランクの下の依頼を受けさせても、それでも足りないと言わんばかりに犠牲が出ている。
しかも、絶対的な強さを持つ異世界人にも犠牲者は出ている。
こちらで確認が出来ただけで、心が折れて戦えなくなった者や怪我した者も多数出ている事が把握している。
そして、これは伏せているがとうとう死人まで出た。
こんな事は過去の歴史でも知っている限りない。
だが、こんな時こそ、希望の光がある。
勇者達だ。
「勇者の皆さん、お願いです、魔王の森の調査をして頂けないでしょうか?」
「解りました、所で何故一度戻るように王命が降ったのでしょうか?」
「それが、可笑しな事に魔族側の力が強まっています。 その事を伝えたかったからです」
「大丈夫ですよ、姫様、その強い魔族相手にあのセレスでさえ勝てるんですよ? 僕らなら楽勝です」
「そうですよね! 勇者様達なら大丈夫ですよね?」
「セレスからステータスを見せて貰ったけど..概ね1/30以下だったよ、余裕だって」
「そうですね、解りました、ですが、貴方達こそが世界の希望なのです、取り越し苦労なのは解っています。そのまま魔王を倒しに行くのではなく、今回は調査をお願いします…」
「解りました、今回は1週間位調査して帰ってくる、それで良いですか?」
「はい、それで問題が無ければ、その次こそは魔王討伐をお願いします」
「「「「解りました」」」」
ブレーブキラー
魔王ベルク 魔族剛腕のマモウ 魔道王トール 破壊王ズール 天空女王モーラの死体を前に、魔神王エルドランは考えていた。
こ奴らもさぞかし無念だったろう。
今、余が蘇らせてやろう、最強の真魔族としてな。
魔神王エルドランは、魔神王の収納庫からロボットの様な物を取り出した。
先の大戦で作ったブレーブキラー、対ゆうしゃ用の武器だ、この体をお前達に与えよう..これで存分に殺すが良い。
エルドランが呪文を唱えると魔王と四天王の体から黒い炎の様な物が飛び上がった。
そして、その炎の様な物はブレーブキラーに吸い込まれた。
ブレーブキラーの目が赤く光る。
「これはどういう事だ、何故、生きている」
「魔王ベルク、どうだその体は!」
「貴方様、もしや魔神様でしょうか?」
「うむ、お前らのおかげで生き返った魔神王エルドランだ」
魔王ベルクは確信した、これで魔族は安泰なのだと。
「ですが、何故私は生きているのでしょうか?」
「余の復活実に大義であった、その褒美で四天王と一緒にその体を与えたのだ」
「この体には四天王も一緒に居るのですか?」
「うむ、その位の魔力が無ければその体は動かない..アダマンタインで作り、魔法術式を組み込み、どんな魔法も利かぬ不死身の体..ブレーブキラーだ」
「ブレーブキラーですか! 確かにただ事じゃない力を感じますが」
「その体を使い、異世界の勇者とやらと存分に戦うが良い..自分の手で復讐を遂げるのだ」
「チャンスを下さり有難うございました」
「うむ、存分に戦うが良い一戦士としてな」
魔王として四天王としてではなく一魔族としての戦闘。
願いは叶えてやったぞ…これで貸し借り無しだ
勇者散る ?
魔王の森に調査に行った。
入口近くにそいつは居た。
金属で出来ていて一番近い物で言えばSF映画にでてくるロボットだ。
多分、此奴も魔物なんだろう。
「どいて、1発で仕留めるわ! ヘルファイヤーバースト」
大魔道の平城さんが魔法を放った。
ヘルファイヤーバーストとはその名前の通り、地獄の様な業火を相手にぶっつけて更に爆発させる炎系の最強呪文だ、この呪文を受けて生きていた魔物は居ない。
だが、そいつには効かなかった。
というより、傷一つついて無かった。
「なぁ、人間よ何故、私に攻撃を仕掛けた!」
「それは魔物だからよ!」塔子が怒鳴るように答えた。
「ああ、確かに私は魔族だ! だが、言葉を話すしそれなりに知能もある…何故会話をしようと思わないのだ、今とて邪魔なら、「どいてくれないか?」その一言で話がすんだかも知れないのだぞ!」
「魔物は人間を襲う…だから攻撃した、それだけだ!」
「だったら聞こう! ここは魔王の森だぞ、他国の領地に無断で入り、あまつさえそこの国民を殺し物資を奪っていく、そんな人間がいたらその国の国王はそういった輩を討伐するように命令を下す。当たり前の事だと思うが違うのか?」
「だが、森に入らなければ人間は生活が出来ない」
「それも違うぞ! 人間と魔族の土地の大きさの差は2対1で魔族の土地の方が狭い、さらに我々の土地は火山や砂漠も含むから実際には4対1かも知れぬ、それなのに何故、こちらの森にくるのだ」
「だが、人間の土地には森など無いから仕方ないでしょう?」
「それは自分達が悪いとは考えられないのか! 自分たちの森を切り開き街を作った、その結果緑が少なくなるのは自分たちのせいだとは思わぬのか?」
「だが、魔族は邪悪な者だ倒さなければならない..」
この魔物の話を聞いた時に頭の中で戸惑いが生じた。
確かにそうだ、自分たちの世界でどうだったか考えた。
国境を越えて魚を取った人達が捕まったニュースを見た時がある。
いっている事は同じだ..言い返す事も出来ない。
だが、勇者である以上それを受け入れる事は出来ない。
「そうか、我々は随分我慢をしたしさせた、森の外の人間も襲わなかったし、魔族領から外に出て襲う事はさせなかったが…どうやら違ったようだ…邪悪な者..それで済まされるなら..我々も同じにしよう、人間は邪悪だから滅ぼせ..そう言えば良かったのだな..今、解った..私は甘かったのだと..これ以上の対話は要らぬ..さぁ戦いをはじめよう!」
「こんな奴は俺で充分だ、シャイニングブレード!」
聖騎士の最大の技、それを国宝の一つミスリルで出来た剣「始祖の剣」に載せて斬りつけた。
始祖の剣とはこの国の初代の王が持っていた剣で名剣中の名剣だ。
「腕が未熟..」
その魔物はけだるそうに細い腕を軽くふるった、その手にしているのはどう見ても鋼鉄の剣にしか見えない。
「なっ..」言葉を発する間もなく、その一振りは簡単に聖騎士である、大河の足を切り落とした。
五大ジョブの中で聖騎士は一番弱く、他の4つと違い複数人存在する..だからといってこんな簡単に斬られる物ではない..まして彼の装備はミスリルだ。
「こんな物なのか勇者パーティーとは..」
大河の足を拾いに行こうとする塔子を見つけると、その魔物は素早く近づき腕を切り落とした。
「残念、それを私が許すとでも..」
「貴様、よくも塔子を..獄炎の炎よ! 極寒の氷よ! バーストアタック!」
これは賢者が操る魔法の中でも最強と言われる呪文だ、右手に獄炎を宿し、左手にマイナス迄高めた冷気をを作り、交差させて爆発させる。
「うむ、効かないな..それじゃこっちの番だ..それ」
「かは..」
「喉を少し切らせて貰った、これで呪文は使えないな..」
「綾子…援護を頼む..」
「解ったわ、ファイヤートルネード」
「行くぞ、これが勇者の最強技、光の翼だ」
聖剣と大樹を大きな光が包む、そしてやがてその光は一つの塊となり鳥の姿になった。
「切り裂け―」
「うむ、これは当たる痛いな..ならばこうだ」
その魔物は、大河を拾うと光の翼めがけて投げつけた
「大河ーっ」
大河はチリとなって燃やし尽くされた。
その光景を見た瞬間、心が折れた。
一番最初に心が折れたのは大賢者の聖人だった。
「だずけてくれ」
斬られた喉で命乞いしながら逃げようとした。
だが、簡単につかまり連れ戻された。
放心状態の勇者大樹はあっさりと気絶させられた。
「さて、お楽しみの素材回収だ..」
樽詰め勇者
気が付くと俺たちは猿轡をされ縛りあげられていた。
「おや、目が覚めたようだな..これからは素材の回収だ…」
魔物は塔子に近づいた。
「この髪は綺麗だな、回収するとしよう」
髪の毛を取られるのは嫌だ、だが死ぬのはもっと嫌だ..塔子は目をつぶった。
「うぐううううっ」
魔物は頭皮と頭蓋の間にナイフを滑り込ませて頭皮ごと髪を切り取った。
塔子の頭には頭蓋骨が見えていた。
「此奴は煩そうだ..先に喉を潰そう..」
「うがっうが..」
「さて、次は歯だな..あまり美しくないが..頂くとしよう」
「いはやいはやはや..いはやー」
「これで歯も頂いた..後は毛皮だ」
「いややややはははははいやー」
塔子が人体模型のような状態になっていた。
それでも生きているのか体がビクビクしていている。
俺はその光景を黙ってみていた。
声を出して自分にその矛先が向かない様に沈黙していた。
だが、結局、俺を含む4人は同じ目に遭った。
「何、悲しそうな顔をしているのだ、お前ら人間が毎日やっている事じゃないか? キラーラビットの皮を剥ぎとり、ウルフマンの歯を抜く、同じ事をしただけだ…お前らは魔族を残酷だというが、ここまでした事は流石に無い筈だ..だが、お前らは此処までいつもしていたのだぞ…お前らは生きて返そう..私は慈悲深いのだ..お前ら人間のように命まではとらん」
そういうとその魔物は仲間を呼んだ。
「この者達が死なぬように回復魔法をかけてやれ」
「はっキラーマシン様」
そして、俺たちは樽に詰められ何処かに運ばれていった。
勇者散る ?
ブレイブキラーは溜息をついていた。
あれが勇者だと!
確かに強かったが、上の力をもって初めて解った。
あれはただのガキだと!
ただ、強大な力もおもちゃのように与えられただけのガキだ!
その昔、命がけで自分と交渉に来た王子。
死ぬのは解っていて..大切な者を守るために命をはった騎士。
脆弱な力で知恵を使い私を罠に嵌めようとした者。
敵ではあるが、それぞれの誇り高い姿は機械の体になっても心にある。
だが、あいつ等は駄目だ、殺す価値も無い。
誇りもないから敬意を払う気も起きなかった。
だから、素材あつかいして送り返した。
勇気のある者が勇者というなら違うだろう勇気が無いのだからな…
その日4つの樽が何処からともなく、王宮の前に置かれていた。
衛兵が不審に思い樽の中を覗くとそこには皮を剥がされ、歯も無い人間が入っていた。
そして、それが勇者達だと解ると王宮に戦慄が走った。
最早、魔族に対抗する方法は無い…そう思うほかに無いのだから…
小さな希望
樽の中の勇者達を保護した。
皮を全て剥かれて髪も無い、そして歯を全部抜かれていた。
その姿は毛皮や剥製を作る時に廃棄された動物に似ている。
生きてはいる…だが、女性たちは自分の姿に絶望し部屋から出て来ない。
勇者も大賢者もガタガタ震えまともな会話も出来ない。
これで人類はもう終わりだ…魔族に対しての切り札はもうない。
勇者達と一緒に手紙があった。
「これより1か月後に我々魔族は進行を開始する、もし今迄の事に対する申し開きがあるなら魔王城迄こい」
それだけが書かれていた。
勇者パーティが負けた今、誰が魔王城に行けるというのだ、恐らく騎士団を送り込んだ所で無駄だろう。
マリンは悩む、勇者達があのようになり、他の異世界人も死んだり行方不明。
頼める相手は1人しか居ない、だがその1人も勇者の1/30の能力しかない。
これは「死んでください」そう頼むような物だ。
《それでも頼むしかない…王族とは何て浅ましいのでしょうか…》
「ミスリル級の冒険者セレス殿に招集をかけなさい!」
そう騎士に命令をした。
日常
以前より体が軽くなり、簡単に魔物が狩れる。
確かに同じ種類の魔物でも強い奴もいるが、それでも倒せない程じゃない。
今のギルドでこの森で素材を採れるものは自分を置いて他ならない。
何故だか解らないが、強い魔物に出会うらしい。
まだ、僕は出会っていない、出会った所で殺されても僕は復活出来る..
ならばと恩返しを兼ねてギルドの素材回収から、緊急な物を自分が出来る範囲で全部受けた。
自身のレベルアップを兼ねて倒して倒して倒しまくった。
帰るのが面倒くさいので、そのまま死んで教会に移動する。
最近、覚えた事は死んで教会についたらすぐに身を隠す事だ。
ポーションで魔力を回復させて、ヒ―リストを唱えればそれだけで済む。
これならお金も移動時間も節約できる。
教会にいても、ミスリル級の授与式のあと異世界人として発表されたので咎められない。
まぁ、異世界人=女神の選んだ戦士だからこそだ。
そして、そんな毎日を過ごしていた今の僕は
せれす
れべる 100
HP 158/11393
MP 132/9480
つよさ 6399
ぼうぎょ 8910
けいけんち:101110
そうび :せるすのそうび(けん よろい たて くつ)(ゆうしゃのそうびぜんぶそろった!)
かご:ゆうしゃのそうびははずすこともかえることもできない ゆうしゃまほうがつかえる
じょぶ:ゆうしゃ
すきる:ほんやく すてーたす ゆうしゃせんようまほう
まほう: ヒーリング、ファイヤーボール スリープ ライト、ボルト しょうのう ファイヤーボム ヒ―リスト マギホーリア トレース
マギホーリア=全ての状態異常を治す
トレース= 壊れた物を修復する、但し修復された姿は掛けた者のイメージに依存する。
ここまでは成れた。
これならミスリル級の冒険者としても充分だと思う。
最も僕が予想するに勇者パーティに入ったら多分最弱だと思うが、これが僕なんだ仕方ない。
だが、僕を殺せるような魔物はもう此処にはいない。
だから、僕は歩いて帰るようになった。
全権委任とガールズ
「セレスさん、何時も本当にすいません」
「ソフィさん、気にしないで下さい、これ今日の素材です…金額は困らない位に下げて買取りお願いします」
「自分から買い取り額を下げるなんて、そう言いたいけど..今のギルドじゃ..本当にごめんなさい!」
「何を言っているんですか? こういう時はお互い様です」
「ありがとう..所でセレスさんに王宮への招集が掛かっています!」
「解りました、明日にでも向かいます」
「それが急ぎみたいで馬車が外で待っています」
「解りました、直ぐにでも向かいます!」
王宮に着いた。
話を聞いた..
勇者達の状況も聞いた。
だから引き受けるしかない..幸い僕は死なない、勝てと言われれば無理だが、1人で魔王城に行き、意見を伝える事位は出来るだろう!
「解りました王女様、この仕事受けさせて頂きます」
「ありがとうございます、実質こちらは敗戦国みたいな物です! 少しでも優位に立てるように交渉をお願いします! 最悪、このまま居ても滅びるだけです…そう考えたら、生存を勝ち取る、それだけでも助かります…全権を任せますからお願いします!」
「それは王様も認めているんですか?」
「勿論です、後で全権委任の儀式を行います…ご安心下さい!」
「解りました」
こうじて、僕は人類の未来を背負う事になった。
僕は、勇者達の部屋に向った。
一緒に転移してきた者で生き残っているのは最早彼らしか居ない。
行方不明者が少量居るがほぼ絶望らしい。
今、彼らが大変な状態になっているのは解る。
だが、会っていこうと思う。
「平城さん、居る?」
返事が無い..だが気配はある。
無理やり部屋に入った、明かりがついてない。
「平城さん!」
「嫌嫌いやあああああああ来ないで!」
「いやああああああ!」
平城さんと塔子さんはベッドでは無く部屋の霞で毛布を被って震えていた。
彼女達に何が起きたのか知っている、当然姿も…
「マギ ホーリア..駄目だこれじゃ治らない..状態異常の回復では無くなった物は無理なのか」
「そこにいるのは、もしかしたらセレスくんかな?」
《精神異常は治ったのか..試してみる物だ》
「セレスさんなの?」
僕が近づこうとすると
「やめて、私、今化け物みたいな姿だから…魔法でも治せないんだって..だから来ないで..」
「お願いだから…こないで、もう戻らないんだって..ううっううう」
「だったら少しだけ話を聞いて、僕は明日魔王城にむかうんだ、その前に君達に会いたかった」
「嘘、セレスくん、逃げた方が良いよ..死んじゃうから..」
「セレスさん、逃げた方が良い..絶対に敵わない」
「うん、それは解っている…だから交渉に行くだけ..だけど怖いんだ、だから勇気を別けてくれないか?」
「勇気ってどうすれば良いの?」
「目をつぶっているからハグして欲しい」
「「私(私達)はそのね」」
「知らないよ、僕には学校を代表する二大美少女にしか思えないから!」
「良いよ」
「解った」
《あははは、私は化け物みたいなのに美少女だって》
《本当に物好きだなセレスさんは》
「それじゃ目を瞑るから..」
「絶対に目を開けないでね..」
「開けたら許さないから..」
《多分、セレスくんが私を抱きしめる最後の人だよ…こんな化け物だれも抱きしめてくれないよ》
《セレスさんって暖かいな..それに意外にに筋肉質だったんだ》
セレスは2人を思いっきり抱きしめた
ごめんね、僕は恥ずかしがりやで女の子の顔が見れなかったんだ、だから僕の知っている限りの美少女をイメージするから、それで許してね。
「トレース」
「「何をしたの(かな)?」」
「ごめんね、元通りには出来ないんだ、だけど少しは癒えていると思う..力が無くてごめん」
「そんな、セレスくんのせいじゃないよ..」
「うん、そうだよ」
「それじゃ..もし生きて帰れたら、今度は2人からハグして!」
「良いよ、暗い所で良いならね」
「うん、私も良いよ」
「解った、約束だよ..」
「「あっ..」」
セレスくんは行ってしまった。
《悔しいな..》
《どうしたの塔子?)
《あんなに優しくて良い男に出会えたのにこんななんだよ私》
《確かに参ったよね..知らなかったよ私もセレスくんがあんなにカッコ良かったなんて》
《本当に優しくて暖かい..》
《うん、本当に..男の子のカッコ良さって落ちてみないと解らないね》
《本当に、今迄チヤホヤしていた城の人もこの姿見た途端、来なくなったし》
《来るのは医者だけだよね》
《男なんて同じ化け物なのに怖がるし..最低だよね》
《本当に最低だわ、私達が酷い目に遭っているのに、自分所に来ない様に静かにしていたし》
《ねぇ、セレスくんも負けたら同じ姿になるんじゃないかな》
《セレスさんもこうされるかな?》
《私、もしセレスくんが同じ様になって帰って来て、私を受けいれてくれるなら..プロポーズしようかな》
《セレスさんなら受け入れてくれるかも? この国一夫多妻もOKだから私もしようかな? 案外化け物同士上手くいくかもね》
自分達から恐怖が無くなっている事に二人は気が付かなかった。
旅立ちと ボーイズ
大樹と聖人の部屋にも来た。
「大樹さん 聖人さん居る!」
同じ様に音はするけど返事はない。
ならやる事は一緒だ。
無理やり入った。
「ひぃー助けてくれー俺だけで良いんだ、見逃してくれー そうだ、僕は魔族、魔族の勇者になる..だからもう辞めてくれないか..そいつらの事は忘れる、何だったら僕がそいつらを殺す..だから..許してくれ」
「僕は勇者じゃない! 勇者は彼奴だ僕じゃないんだ..そうだ魔族の為にこれからは働くだから、だからやめてくれ」
聞いてて嫌になった。
僕は前の世界では此奴らに憧れていたんだ。
此奴らがまぶしくて、輝いて見えた。
「スリープ」
「マギホーリア」
「トレース」
これで元通りとはいかないけど、普通には暮らせる筈だ。
それじゃあな、次に会う時は元に戻っていてくれよ。
「挨拶は済ませてきました」
「そうですか、それでは..」
「はい、略式で簡単に済ませて下さい..時間が惜しいです、あと4人の面倒をお願いします!」
「解りました、4人の事はお任せ下さい!」
「お願いします」
「さぁ、お父様の所に参りましょう!」
「はい」
略式なので王、宰相、公爵、侯爵 マリア王女の5人の全権委任承認で行われた。
セレスは書状と一振りの剣を貰った。
この剣は儀式用の剣なのでただのお飾りだ。
ただ、この剣を持っている時は王と同じ権利を行使できる。
「すまぬなセレス殿、この国いやこの世界の全てを背負わせて」
「この国は僕に優しかった、紹介状に金貨4枚..役立たずだった僕に本当に優しかった..だから、僕はこの国を守りたい!」
「そうか、この国は良い国か..頼みましたぞ セレス殿!」
「行って参ります!」
「私は少し解った気がします、これが気質という物なのですね!」
「あの目がな気になった、どこまでも澄んでいて絶望的なステータスにも負けていなかった!」
「そうですか! 私はまだまだですね」
「ああいう人間は一番手強い、どんな逆境からでも努力を積み重ねて這い上がってくる、大昔まだ召喚術が無かった時代にいた勇者や英雄と同じようにな」
「そこまで見込んでいたのですか?」
「いや、そこまでは思っておらんかったよ流石にな」
「ですが」
「彼に全部託した、サイは投げられた、後は運を天に任せて祈るだけじゃな」
「ええ、それしかありません..私も女神に彼の無事を祈る事にします」
復活の美少女
私は朝が嫌いだ…否応なしに醜い顔を見ないといけないから。
幸いこの国では鏡は貴重品で手鏡しかない..だから見ないで済む。
ただ、それでもどうしても見てしまう者がある。
それは塔子ちゃんだ、魔族の拷問にあった日から私は1人が怖くなった。
それは塔子ちゃんも一緒だ、だが、私達は皮を剥がれて醜い、相手の醜い姿を見る度に自分の醜さも解る。
大樹と聖人?
自分が助かりたいが為に私達を捨てようとした人間なんてどうでも良いよもう。
千年の恋も冷めたわ..本当に、まぁ向こうもこんな化け物どうでも良いでしょうけどね!
だが、この日は違った。
私が目を覚ますととびっきりの美少女が横で寝ている。
《何の悪戯なのかな》
正直腹が立った、こんな醜い私の傍に美少女を寝かすなんて..何がしたいんだ。
《だけど、この美少女どこかで見た気がする…あっ目を覚ました》
「あんた、何でここに居るの?」
「そういうあんたこそ何でここに居る訳? 醜い私への嫌味なのかな?」
「「あれっその声」」
「塔子ちゃん?」
「綾子ちゃんなのかな?」
「嘘、何この体、元の体より綺麗だよ..」
「本当だよね! ほくろ一つ無いし、よく見ると元の面影はあるんだけど、かなり可愛くない?」
「本当だよね、正直、お化粧で誤魔化していた部分がそのまま美化されているよ?」
「うん、何故かパッドでかさましした分も胸が大きく成っている..不思議」
「どうでも良いけど、服着ない?」
「そうだね、今迄擦れていたいから裸で生活していたもんね」
服をしっかり来てみた。
「うわっこのブカブカなんですけど?」
「等身が一つ違うんだから当たり前かな」
手鏡をとってみた。
「嘘、これがわたしなの…綺麗、私が成りたかった私じゃない!」
「私だって綺麗になったよ..自分比160%位」
「これセレスくんが治してくれたんだよね?」
「だけど、何で元の姿じゃないんだろう..」
「昨日は感動して聞かなかったけどセレスさん言っていたよね」
「トレース」
「ごめんね、元通りには出来ないんだ、だけど少しは癒えていると思う..力が無くてごめん」
「トレースって確か投影って意味だったと思う」
「っていう事はこの姿はセレスさんから見た私達じゃない?」
「セレスくんから見た私ってこんな美少女なんだね」
「私だって凄いよ?」
「あのさ..こんなに綺麗にセレスくんから見えていたって事は絶対に、私の事嫌いじゃないよね?」
「あのさぁ綾子ちゃん、それは綾子ちゃんだけでなく私もだからね!」
「そうだね、帰ってきたら約束通りハグして、それから私告白しちゃおうかな?」
「良いね、それ、私もそうしようっと」
「早く帰ってこないかな..」
「本当に…」
ガールズサイド
久々に廊下を歩いた。
今迄と違って全てが綺麗に見える。
「自分の容姿一つでここまで世界が違って見えるなんて思わなかった..」
「そうだよねー綾子ちゃん、昨日まで本当に死のうかと思っていたのに..今日は本当に違うよ」
「うん、うん食事も旨いし..心も弾むよね?」
「綺麗にして貰って言うのもなんだけどさ男の子の価値って外見じゃない..そう思わない?」
「そう思うよ..所詮外見なんて怪我一つで無くなる物じゃない? 今回の件でそう思った..」
「そうよね! 前はさ貴族の綺麗な男性や大樹達を見て、ときめいたけどもう無いわ」
「うん、男の子の価値は、困っている女の子を見捨てない、それだけだよね」
「そう言えば大樹達もちゃんと元に戻っていたわね!」
「残念ながらセレスくんボーナスは無しだったけど..元には戻っていたわ」
「流石に気まずそうに話してきたから、今後どうするのか聞いたら、呆れちゃうわ本当に!」
「その話は初耳です..どうするって言っていたの?」
「二人とも貴族の令嬢と結婚するそうよ…側室つきで」
「まぁ、前と違ってこっちに来てから ハーレムを作るなんて言っていたからね…」
「だけど、本当にアホとしか思えない、側室にならないか? だって「私は束縛するタイプだから無理」って言ったら、あっさり諦めたわ..まぁお互いに嫌な記憶があるから社交辞令だと思うけど?」
「それは社交辞令だと思う..私だって皮を剥かれた大樹の姿が浮かぶんだから、相手も同じだよ?」
「うん、そう思うな! もう好きでは無いけど、幼馴染として思うんだよね! その貴族の令嬢達、全員あんた達が醜い時にお見舞い一つしなかったし、気持ち悪がっていたんだけどね! それで良いの?って」
「それで言うの?」
「言わないよ! それでこっちに来られたら困るからさ」
「そうだよねー だけど、大樹や聖人にとってはハーレムエンドだから幸せそうで良いんじゃない? そこに私達が居なくても問題無なさそうだし」
「まぁお幸せにって所ね…だけど、本当に薄情だよね…」
「そう、大河くんが死んだのに..何も思わないなんて」
「親友だったの筈なのに」
二人して城の庭に来た。
ここには大河くんの遺品が埋められている。
花束を置いて手をあわせた。
だが、遅れて二人が来た、大樹と聖人だ。
「いよ、元気か?」
「昨日からわね!」
「ははは、そうだね…これセレスくんがしてくれたんだって?」
「そうよ..感謝しないとね」
「ああ、そうだな、結局彼奴に全部押し付けてしまった…本当に情けない」
「僕もそう思うよ…」
「そうよね…」
「それで俺たちなんだけど…ここに居ても仕方ないから明後日から..その婚約者の家に行く事になったんだ」
「そう、おめでとう!」
「だから、セレスが帰ってきたら伝えてくれ..ありがとうと…….」
「続きがあるのね! 怒らないから言ってごらんなさい!」
「あのな、お金は幾らでも出すから、俺の領地に来てくれって伝えてくれ」
「何でかしらね? お礼でもするの?」
「いや、婚約者が、セレスくんに整形魔法を掛けて貰いたい..そう言うんだ」
「本当に馬鹿ね! まだ、借りを作る気…まぁ良いわ! 昔のよしみで伝えてあげる!」
「悪いな!」
「最後だから大河にお別れをしていこう」
「そうだな」
「「俺(僕)はこれからハーレムで暮らすんだ…安らかに眠ってくれ」」
「「化けて出るからやめなさい」」
笑いながら、2人は去っていった。
ボーイサイド
「これで良かったんだよな、聖人!」
「ええっ正しいと思います、僕たちは修復は無理だと思います」
「綾子を見る度に 泣き叫びながら皮を剥かれ、歯を抜かれる光景が悪夢の様に蘇るんだ、助けを求めているのに助かりたい一心で目を瞑った」
「それは僕も同じだ..塔子の泣き叫ぶ声が今も頭から離れない」
「これがある限りもう元には戻れないだろうな!」
「うん、それだけじゃない、大河の死も思い出してしまうよ..どうにかあどけて見せたけどね」
「ああっ冗談で側室にならないかと言ったが、正直なられても困る」
「そうだね! 顔を見る度に恐怖の記憶が蘇るんだ..一緒に居るなんて無理だね…」
「それは俺も同じだ..」
「だから、縁談を受ける事にしたんだ…」
「そうやって逃げるしかないしね….」
「結局はこれしかないのか..」
「うん、後は時間が解決してくれるのを待つしか無いよ!」
「お互いにこれから齢をとってお爺ちゃん、お婆ちゃんになってその時には笑って会いたい物だな」
「そうですね..とりあえず、今は笑って別れましょうか?」
「こんな気持ちでハーレム生活が始まるとは思わなかったな」
「ええ」
こうして勇者パーティは別れていった。
交渉決裂
僕は早速、魔王の森へと向かった。
魔王の城は何処にあるか解らない、そして魔族側との交渉なのだから極力魔物を殺さない方が良いだろう。
魔物との戦いを避けながら森を進む、けもの道を過ぎた所にそいつはいた。
恐らく、此処から道がある所を見るとこの先に魔王城がある可能性が高い。
そして、その姿は僕にはロボットとしか見えなかった。
何かに認識して動くのかも知れない。
「すみません、此処を通してくれませんか?」
「人間よ、此処を通ってどうするのだ…」
「私は人族の代表として此処に来ています、魔王城に魔王様と交渉に参りました、通して頂けないでしょうか?」
「そういう事であれば、案内をしよう…だが、魔王城には魔王は既にいない…偉大なる魔神王エルドラン様だくれぐれも粗相のないように行動されよ」
そのまま、案内を受け魔王城に着いた。
見た瞬間から解かるこれは戦うなんてとんでもない存在だ。
直ぐに僕は片膝をついて下を向いた、目を合わす事はしない。
「貴様が人族の代表か、許す面をあげよ」
静かなその声、だがその声からは明らかに逆らう事が出来ない絶対強者の雰囲気がただよっている。
僕は静かに頭を上げた。
怖い何てものじゃない..辺り一面、魔族の強者で埋まっていた。
その中でも、さっきのロボットの様な魔族と魔神王には到底敵わないだろう。
「はっ」
直ぐに顔を上げた。
「よくぞここまで参った人族の代表よ、お前達は魔族に対して何を望む!」
《何を答えれば良いんだ..》
「和平、平和を望みます!」
「うむ、だがな人族の代表よ今は勇者を失い、魔族に対する切り札が無い今..どのように交渉するのだ」
「それは魔神王様の慈悲に縋るしかありません」
「それは虫が良いのではないか? さんざんぱら魔物や魔族を狩り続けた…そんな人族が慈悲を求めるのか..」
「はい、恥を忍んでお願いします!」
「虫の良い話じゃ..抵抗手段が無いから降伏する..今迄散々魔族や魔物を殺してきた人族が慈悲じゃと..そんな物は余には無い…もし..死にたくないなら全力で戦う事じゃ..全て余が蹂躙してくれる」
《最早ここ迄か..》
「なら、人族がどのように動こうが戦争をするそういう事で宜しいのですか?」
「やっと解ったのか人族よ..呼び出したのは茶番じゃよ茶番..どんな話になろうと人族への侵攻は止めるつもりはない..さぁとっと帰るが良い!」
周りの魔族からは侮蔑の笑い声が聞こえる。
《もう終わりだな..なら勝てないまでもやるしか無いのか!》
「どうした? お前の命は保証しよう..とっとと帰るが良い..」
「なぁエルドラン…魔族は強ければ王になれると聞いた事があるが、それは間違いないか?」
「貴様、魔神王様にその口の利き方..万死に値する」
「ふざけんじゃない! 人族を滅ぼすというのなら敬意を払う必要はない..なぁ..聴いているんだよ? 魔族は力が全て、それで間違いは無いのか?」
「答えてやろう…魔族は力が全てだ、但しそれはこざかしい策でなく正面切って戦い勝てばの話だ、ゆえに人族のお前はこの場では一番弱い..それを聞いてどうするというのじゃ」
「人族は決して弱くは無い…エルドラン、お前に決闘を挑む!」
「無礼な..余が虫けらと決闘だと..余は慈悲深い、解った、もしお前が余が指名した者と決闘して勝利したならばその決闘を受けよう!」
「二言はありませんね!」
「魔神王の名に置いて約束しよう..さぁ ブレーブキラー..この人族と立ち会うが良い!」
「人族よ..私が相手だ..」
《此奴か?》
セレスは知らなかった…ブレイブキラーが勇者達を倒した事を。
ブレ-ブキラーは知らなかった….目の前にいる男が「ゆうしゃ」である事を。
セレス 死す!
「人間よ、私はお前の様な者は嫌いではない、先手を譲ってやるから掛かってくるが良い」
ブレーブキラーは油断をした、勇者パーティーの一撃すら効かなかったこの体には何も通じない、その自信があった。
「解りました、それではいきます」
セレスは最初の一撃に全ての力を注ぐつもりで剣に魔力を込めた。
自身最強の魔法のボルトを剣に込めてそのまま斬り込んだ。
「ボルトースラッシュー」
多分この攻撃でも効かない..だがこれは意地だ..人類には牙がある..それを伝えたかった。
ズガーンッガガがガガー
「貴様、何をした、この私が吹き飛ばされる等、ありえない」
「僕はゆうしゃだ..お前などに僕は負けない!」
「ならば、私はブレーブキラー、勇者を倒した者、お前などに負けない!」
再び、剣に魔法を掛けて斬りつける..
「油断しなければそんな攻撃、私には効かない」
「そうですかね、その割にはそちらから攻撃が来ません..躱す事しか出来ないんじゃないですか?」
「何を!」
ブレーブキラーは素早く剣を振るった。
「その程度のスピードなら余裕で躱せます」
避けた体を回転させそのまま剣を振るった。
ガキーン
こちらの攻撃も効かない…
「その程度の攻撃は私には効かない、避ける意味も無い..」
戦えば、戦う程、相手の強さが解る。
だが、不思議な事に体の疲れはない。
「ならば、これだ!」
イメージするは鳥..頭上に飛び上がり頭上から斬りつけた。
キン
「この体には効かないな..」
《何だ此奴は..勇者たちなどより遙かに手強いじゃないか? 何者なんだ此奴は!》
ブレーブキラーは焦っていた。
こんな筈ではない..本来ならもうとっくに殺しているはずだ..だが此奴はまだ生きている。
「ならばこれでどうだ!」
体を立てに回転させその勢いで斬りつける。
「効かぬと言っているだろうが」
ブレーブキラーはそれすらも効かない..
だが、僕には手持ちはこれしかないボルトすら効かない以上はこれを続けるしかない。
どの位の攻防を繰り返してきたか解らない..とうとう僕も攻撃を受けただが..
「何だ、その程度だったんだ..それなら避ける必要はない、受けて立つ」
「お前、これに耐えるのだな..面白い、もう死ぬのも構わぬ、全部叩き込んでやる」
何だ、なんだ彼奴は、ブレーブキラー相手に互角だと。
そんな存在は余は1人しか知らない….そんな相手がこの世にいるとしたら「ゆうしゃ」しかいない。
彼奴がゆうしゃなら..魔族には敗北しかない。
「極限魔獄炎」
「えっ..」
油断した..巨大な炎が僕を襲った..そしてそのまま僕は….死んだ。
「魔神王様、これは一体、魔族の神聖な決闘を汚すような事を何故するのですか!」
「あの様な虫けらとの約束など守る必要などない..お前には失望したぞ、せっかく強靭な体に生まれ変わったのにあの程度とは..」
「それがいい訳ですか? あの者は正々堂々と私に戦いを挑んでいた、そしてあのまま行けば勝敗はどちらに転んだか解らなかった」
「ならば、どうすると言うのだ!」
「私が魔神王、お前に挑戦する…私とあの者は互角だった..それが私の..」
「もう、良い掛かって参れ」
「極限魔獄炎」
ブレーブキラーも同じ様に燃えている。
「これ程の力を持ちながら、貴方様は何故あのような…」
「答える気が無い..そのまま死ぬが良い」
《許せ、余にはあの者が「ゆうしゃ」に一瞬思えたのだ、「ゆうしゃ」だとしたら伝説では不死身の体を持っておる..あの程度で死ぬなら..それはゆうしゃでは無い》
「さぁ、これからは魔族の時代だ..これより」
「はぁはぁはぁ そうはいかないぞ、魔族ども僕が相手だ」
高々と声が響き渡った。
神と女神の会話
「なんてことでしょう..あの世界は魔王ではなく魔神王が復活してしまいました..もう終わりです」
「終わらんよ..まだ」
「貴方は、この世界の管理人だった方ですね..ですが私が送った勇者達はもう戦えなくなりました..誰がこの世界を救えるのですか?」
「うむ、儂が作ったジョブを持つ者がおる」
「あの者の事を言っているのですか..確かに力をつけましたが勇者1人に及ばない者に下級とはいえ神の力を持つ者は倒せません」
「倒せるよ..彼奴なら」
「お戯れを」
「あのさ、リリスあんたが考える勇者って何だ?」
「勇気ある者…です」
「違う、勇者とは魔王すら殺せる究極の人型兵器なのだ」
「何を物騒な事を言うのですか?」
「少なくとも儂が作ったゆうしゃはそうじゃ」
「だとしても、あそこに居るのは魔神王、魔王じゃないです..魔王から進化して神に近づいた者ですよ?」
「負けぬよ、セレスは、セレスはあの世界で眠っていたゆうしゃの装備を呼び起こした者..負けぬ」
「それではセレスなら勝てるというのですか?」
「……まぁ見るが良い..ゆうしゃの怖さが解る」
不死身の人間と戦うって事は…
セレスは再び魔王城に現れるとあたり構わず魔族に攻撃を仕掛けた。
「ファイヤーボム」
多数の魔族が炎に包まれ燃えて行く。
「貴様、卑怯だぞ」
「卑怯? 一対一の決闘の時に後ろから攻撃をした者達が言える事じゃないよね?」
無差別に剣を振り回した。
セレスの意思に反応するように剣が青く輝く。
そして、その剣に触れるとバターの様に魔族は斬れて行く。
「貴様、アルタは戦う力がない魔族だ、それでも襲うのか?」
「ふざけるなよ! これから人間は皆殺しにするんだろう? なら魔族は皆殺し、当たり前の事じゃないか? 魔神王が言ったんだ、これからは容赦しない、女も子供も皆殺しだ」
「許さんぞ、貴様、この魔戦将軍カルダが相手だ!」
「煩いよ、語る位なら手を動かせ…」
「ボルトーっ」
「何だ、簡単に燃えるじゃないか? その程度で将軍なのか? 人間の強者なら簡単に倒せるぞ!」
「大変です魔神王様、死んだはずの彼奴が攻めてきました!」
「馬鹿な、余が出よう」
「貴様、アンデットか?」
「知らないよ..そんな事はね!」
「お前は…魔族をここ迄殺して心が痛まないのか?」
「さっきまで僕は、仲良くしようと思っていた、だから魔王城に来るまで魔物も魔族も殺さずに来た、そしてそちらのルールに則って決闘した..なのに..人類を滅ぼすって言った上で卑怯な攻撃までしたんだぞ、皆殺しにすると言った者やその仲間は殺されても仕方ないだろう? 」
「言いたい事はそれだけか? 死ぬが良い」
魔神王から何かが飛んできた..そして僕は死んだ。
《何なんだ彼奴は、余が来るまでにこの被害はなんだ..人類とはあそこまで怖い物なのか?》
魔王の森近くの教会で目覚める
「ヒ―リスト マジックポーションを下さい」
「はいこちらにございます」
「ありがとう、お金に糸目はつけない、ありったけのマジックポーションを此処に集めて下さい..お金は王宮が全部払いますから安心して下さい」
「話しは聞いています..直ぐにご用意しておきます」
「行ってきます」
セレスは三度魔王城に現れた。
「随分と瓦解したもんだな」
「お前は、さっき魔神王様に殺されたはず!」
「地獄の底から蘇ってきたよ…魔族を殺せってな..」
そしてまた僕は魔族を狩った。
さっきよりも強い魔族は減っていたので楽だった。
殺して、殺して殺して殺して殺し尽くす..
「貴様、呪ってやる、絶対に殺してやる..」
「恨むなら魔神王を恨むんだな! だって人族を皆殺しにするそうだぞ? 殺すと言われれば弱くても抵抗するしかないだろう? お前の家族が僕に殺されるのは魔神王のせいだぞ? 魔神王がやると言っている事と僕がやっている事、何が違うんだ..同じじゃないか? お前らが殺しに来るから僕がさきに殺しに来るんだ」
「ならば、魔族が人間を襲わなければ.」
「知らんな! お前の考えでは止められないだろう? だから死ね!」
「貴様、殺しても何故死なない?」
「魔神王、貴様は殺す」
「安らかに死ぬが良い..レイスウオール」
僕はまた死んだ..
また、魔王の森近くの教会で目覚める
「ヒ―リスト マジックポーションを下さい 急いで!」
「はい!」
「ありがとう、ごくごくっ行ってきます」
115回死んだ。
だが、その頃になると魔王城は恐怖に包まれていた。
「また、彼奴が攻めて来るぞ..なぁどうすれば良いんだ..」
「もう、将軍クラスは全滅だ…ノーライフキングだってあそこまで不死身じゃないぞ」
「どっちが魔族なんだ..俺は家族が皆殺しにされたんだ..あれは悪魔だ」
「次来たら、どうするんだ、将軍が敵わない、騎士クラスじゃ時間稼ぎも出来ない..魔神王様なら倒せるけど、直ぐにまた襲ってくる..」
「さぁ、魔族よ、僕が死ぬか、魔族が滅びるか勝負だ」
再び、僕は虐殺を繰り返した。
そして
「貴様、今度こそ死ぬが良い..冥界暗黒派」
「再び、僕は戻ってくる、戻って来るぞ魔族..楽しみにしているが良いさ」
また僕は死んだ。
魔王の森近くの教会で目覚める
「ヒ―リスト マジックポーションを下さい 急いで!」
「はい!」
「ありがとう、ごくごくっ行ってきます」
僕が130回死んだ時魔神王は城の前で待っていた。
「おや、そう来たか?」
「ここで待っていれば、余がお前を殺せる! 最初からこうすれば良かったんだ!」
「あのさ、次に僕が此処に来ると思うのか? ここまで瓦解すれば軍を再編成するまで2~3か月は時間が掛かるんじゃないか? なら僕は2か月間別の場所を襲うとしよう? じゃあな魔神王!」
「待て!」
「待って下さいじゃないのか? 人族は魔族に対抗する手段がある…それを僕が証明したんだ、あの時と立場が違う!」
「待って下さい、これ以上魔族を襲わないで下され」
「何で、僕がそれを聞く必要があるのかな? 僕は和平を望み、慈悲を貴方に縋った、蹴ったのはお前だ!」
「それは、あの発言は取り消す..和平を和平を望むぞ..それなら良いのだな!」
「お前は僕がそれを望んだ時に何て言った..」
「……」
「蹂躙すると言ったよな? お前は王、いや神なのだ..その言葉の重みを考えるのだな!」
「解った」
「なら、この話は終わりだ..僕は全権を委任されている、和平交渉を進めよう!」
1.魔族は人間を襲わない
2.人間は魔族を襲わない
3.お互いの領土に関してはこれからお互いの文官同士が検証を行い境界を決める
4.境界には新たな街を作り、そこで交易をしていく。
5.その他の事はお互いの代表が話し合ってきめる。
こんな所だ。
「こんな感じでどうかな?」
「余には不服は無いが..良いのか? 実質敗戦国なのだぞ、魔族側は」
「平等が一番だよ..魔族は人間を殺した、僕は沢山魔族を殺した…これからはそう言った事を無くして幸せに暮らせる世界が..まぁ殺戮者の僕にはいう権利はないか」
「それは魔族側も同じだ」
僕が出来るのは此処までだ、後は国に丸投げだ..
しかし、気づかれなくて良かった…僕の能力には大きな欠点がある。
それは、「殺されずに監禁されてしまう」事だ…そうされてしまったら手も足も出ない。
それにき気づかれる前のスピード勝負…本当に余裕が無いのはこちらだ
おしまい
魔族側と人間側の交渉が始まった。
結局、今現在の境界を維持しながら、お互いが攻撃を仕掛けない。
大まかにそう決まった。
これからは戦いで無くお互いが話し合い対話して決めていくそういう骨組みが出来た。
魔族側に嫌われたと僕は思っていたが、
全部の攻撃を正面から仕掛けた事でそうでも無かったらしい。
「魔族は強さが全て」そういう面がある。
決闘中に後ろから攻撃した、それを魔神王が行った事実がある以上魔族的には僕は被害者扱いだそうだ。
まぁ、助かるけど。
そして、今回の手柄で僕は領地を貰った。
場所は、魔王の森の近くの土地だ。
多分、魔族の監視も仕事に含まれると思う。
冒険者ランクはオリハルコン級で、貴族としての地位は子爵を貰った。
王様は侯爵と言い出したが新参者がそんな者になったら絶対に良い事は無い..だから下げて貰った。
僕の領地には
平城さんや塔子さんが補佐として来てくれた。
ギルド側からはソフィさんやルル先輩やメメ先輩が来てくれた。
だけど、これから先、冒険者ギルドは無くなる事になったので他の仕事を考える必要があるかも知れない。
ミラさんも誘ったが、この辺りでは通用しないと断られてしまった。
「さぁ、さぁ飛び込んできて良いんですよ?」
「約束ですからハグしましょう!」
平城さんや塔子さんは僕に会うといきなり手を広げた。
よく考えたら、あの時は勢いで凄い事をしてしまったもんだ。
そのままハグすると…
「「結婚して下さい」」
二人から告白を受けた。
何がなんだか解らない。
僕にとって二人は高嶺の花で絶対に手が届かない存在だった。
僕が黙っていると
「裸よりはしたない状態でハグしちゃったんですよ?」
「あの時は私もついハグしちゃったけど、裸よりすごい状態でハグしちゃいました..責任とってくれます?」
確かに、彼女達は裸の状態から更に皮が1枚無かった。
そう考えれば..そうなのかな?
まぁ良いや..手が届かないそんな子からプロポーズ受けたんだから
「僕で良ければ」
これからの世界ではもう、僕や勇者も戦う事は無いだろう…
こうして僕の冒険は終わった…