何かが可笑しくなった!
僕の姿は、髪の毛はシルバーブロンドに透け通るような白い肌、目はとび色の目をしている。
外人なのかって?
違うよ、普通の日本人だって。
日本人にそんな奴は居ない..うん、僕もそう思うよ。
僕は子供の頃、不思議な世界に行っていた…当時の僕はそれが「怖い者」にしか見えなかったんだ..
だけど、そこで暮らすうちに、それが「綺麗に見えるようになった」
そんなある日、僕は突然、元の場所に戻された。
(あれっ? 僕は夢を見ていたのかな? 時間..10分も経ってないや)
だけど、夢には思えなかった。
凄い長い時間、此処では無い何処かに行っていた気がする。
だけど、時間も日時もさっき友達から別れて直ぐを物語っている。
(まぁ良いや..夢でも見ていたんだろう? 帰ろう)
家に帰る為に何時もの道を歩く..可笑しい、何だか不気味だ。
何時もお菓子屋、何時もの八百屋。
可笑しいな、顔が可笑しく感じる。
お菓子屋に近づいた。
座っているのは「何時ものオバちゃん」の筈..うん遠巻きに見たら、オバちゃんだ。
だけど、近くで顔を見たら..化け物にしか見えない。
「何時もありがとうね、健坊..今日は..」
僕は後ずさりをすると、そのまま走って逃げた。
「可笑しな子だね..全く、サイフでも忘れたのかね」
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
化け物しか居ない。
どこもかしこも化け物しか居ない。
だが、どの化け物も襲ってこない..そのまま家まで走って帰った。
「お兄ちゃんお帰りなさい」
(七海なのか…どう見ても化け物だ)
「ただいま..」
「あらっ帰ったの?」
「ああっ」
「顔色悪いわよ?」
「少し体調が悪いんだ、夕飯まで部屋で休む」
「そう? 薬飲む?」
「良いよ」
僕は部屋に逃げるように入った。
母さんも七海も化け物にしか見えない..
だけど、声は間違いなく本人だ、僕は頭が可笑しくなってしまったんだろうか?
寝て起きたら..きっと普通に戻っている筈だ。
自分探し
眠りながら、自分が暮らして世界について考えて見たが…思い出せない。
やっぱり、あれは夢か妄想の類だったのだろう。
実際に時間はたっていないのだからそれ以外はあり得ない。
公園で寝ていた位だから疲れていたんだろう…
「起きた」その事実がある以上は間違いなくそうだ。
随分、「長い夢だった」そう思うが、詳しい事が思い出せないという事はそういう事だろう。
きっと、疲れているんだ。
朝起きたら、七海も母さんも、きっと普通に見える。
さっさと寝てしまおう。
朝になり、起きた。
僕にしては誰にも起こされずに起きるなんて数少ない事だ。
よくよく考えたら、雑誌なりネットを見るだけで良い筈だ。
ベットの下からグラビア本を取り出した。
友達から貰って隠してある宝ものだ。
嘘だろう..僕の大好きな竹中つぐみが化け物に見える。
体は普通の人間だが、顔が物凄くおぞましい。
だけど、水着やその体形が、これは竹中つぐみなんだと認識させてくる。
薄い本をやぶりゴミ箱へ捨てた。
マンガを読もうと手に取った。
嘘だろう..主人公もヒロインも皆んな怪物だ。
泣ける程感動した、物語も..絵が全部怪物。
逆に、おぞましい程醜い怪物や敵役が美女や美男に見える。
しかも、残酷な奴や醜い化け物限定。
こんな世界なら、僕はうん敵側の方に入りたくなる。
その位、酷かった。
やはり、母さんを見ても七海を見ても化け物にしか見えない。
それもかなり醜悪だ。
「健一、朝食が出来ているわよ..すぐに食べなさい」
「ああ、ありがとう..」
僕はどうなってしまったんだ..
「お兄ちゃん、年頃なのは解るけど、さっきからお母さんの胸や七海の胸をガン見するのはどうかと思うよ?」
「あっゴメン..そんなつもりは無かったんだけど」
怖くて顔が見れないんだよ…
「お兄ちゃん、やましい事でもあるの? 冗談で言ったんだけど、また胸見てる」
顔が見れないんだから仕方ないじゃないか..
「今度はもっと下..何で? 本当に変態じゃないなら七海の目を見て話して…」
決意して、七海の目を見た。
体がガタガタ震えだした..怖い、怖い何て物じゃない…
「お兄ちゃん、体の調子が悪かったんだね、ごめんね」
「あらっ健一、本当に体調が悪そうね? 学校休む?」
「そうだね、母さん、そうさせて貰うよ」
「母さんは仕事に行くけど、お金置いていくから具合が悪くなったら病院に行くのよ?」
「解った..」
ふぅ..七海は学校に行ったし、母さんは仕事だ。
これで、夕方までは1人、少しだけ落ち着ける。
遠足やアルバムを引っ張り出した。
幼稚園の写真やクラス全員が全部化け物にしか見えない。
好きになった女の子も仲の良かった友達も全部が化け物だ。
この分じゃ、この世界全部が僕には化け物にしか見えないだろう。
家にあったDVDも片っ端から見た。
アニメも映画も..主人公やヒロインは化け物。
悪役でも美形な悪役は化け物。
醜い悪役はまだましだが、化け物は化け物。
恐竜はそのまま。
その中で、ホラー映画に出てくるモンスターだけは逆に美人や美男に見えた。
(もしかして、昔の僕にとって「怖い物、恐怖を感じる者」のみが綺麗に見えるのかな)
しかし、シュールだ。
化け物を襲う、美男、美女。
化け物の血をすする美女に、大きな美男子が斧をもって不細工な女を連続して殺していく話し。
此処までしてようやく、自分の事が少し解った。
僕にとって怖い者程、綺麗に見えてそれ以外の者は化け物に見える..多分それが正しいのかも知れない。
ただ、それが解った所で何も出来ないし変わらない。
自分が狂ってしまっている事が解っただけだ。
僕にとっての理想の女の子
高校生になった。
相変わらず、僕の目には殆どの人間が化け物に見える。
だが、少しは慣れた。
慣れただけであって「恐怖」を感じない訳ではない。
今日も朝から化け物母さんと化け物になってしまった七海と顔を合わせる。
「母さん、おはよう! 七海もおはよう!」
僕にとってこの世界はお化け屋敷の中に監禁されているような物だ。
流石に、耐性もできた。
「おはよう、健一」
「おはよう、お兄ちゃん」
「頂きます」
作って貰った朝食を食べて、学校に向う。
流石に、人間が化け物に見えるから外に出たくない、なんて言えない。
黙って学校に通うしかないのだ。
最近になって解った事がある。
良く小説に「美醜逆転」なんて話があるが、この目はそのレベルじゃない。
例えば、全校生徒憧れのマドンナ百合子さんは..二目と見れないレベル、初めて見た時には心臓が止まるかと思った。
真面目に体が恐怖で凍り付く、恐らく夜道で会ったら悲鳴をあげて逃げ出すと思う。
それじゃ、全校で一番不細工と言われる、猿川さんは…見れるけど化け物。
一番近い者だと、オークとかミノタウルス? 頭が豚や牛の化け物とかだと襲われたら怖いけど、見てる分の恐怖は薄れるじゃない? そんな感じ。
いずれにしても「人間には見えてない」これ酷すぎないかな?
「美醜逆転」にしてもふり幅が可笑しすぎるだろう。
そんな中でまだ真面に見えたのが「犯罪者」それも残酷な犯罪を犯した人間であればある程真面に見える。
写真やテレビだけじゃ解らないので、新宿で無差別殺人をして12人殺した男の裁判を傍聴した。
架空のDVDの主人公とかではなく、リアルな人間では一番真面に見えた。
だが、それでも、それでも..整形に失敗した不細工な男レベル。
つまりギリギリ人間に見えるレベルだ。
そこから考えたのは、多分この目は「ただの美醜逆転」ではなく人間限定で「恐怖と美しさ」が逆転しているのではないか?
そういう事だと思う。
そして困った事がもう一つ。
それは僕が、凄くモテるという事だ。
白髪だと思ったのはプラチナブロンド。
女の子曰く、とび色の目に透き通るよな肌..「まるでマンガの王子様が居たらこんな感じなのかな」そう言われる。
決して自惚れでなく、毎日の様に告白を受けている。
元の僕は、頭が可笑しくない無いなら..黒目、黒髪だったし。
モテた記憶もない。
羨ましいか?..そんな事思った事も無い。
だって、寄ってくるのは..僕にとっては化け物なのだから。
学園のマドンナ百合子さんから告白された時は..死ぬかと思った。
本当に心臓が止まりそうになった、恐怖で。
頑張って「付き合えない」と断ったら泣いて走り去った。
だが、未だに僕を諦めていないらしく..もっか一番の恐怖だ。
このままでは僕は、女の子と恋愛なんて絶対に出来ないだろう。
だから、僕が女の子と付き合う為には前の僕にとって「これでもかという怖い女の子」を探さなければならない。
「都市伝説、怪異何でも情報掲示板」
図書館で色々な本を漁って見た。
アイドルや美人画は全滅、見ただけで体に震えがきた。
ブサカワだろうが、不細工だろうが、化け物にしか見えない。
そんな中で「昭和、平成犯罪史」という本があった。
この本には、昭和と平成時代の事件が写真つきで載っていた。
昔の本なのか、犯罪者の写真も載っていた。
犯罪者が少しは真面に見えたから期待が出来る。
やっぱり、少しは真面に見えたが、全部が不細工だ。
一応はギリギリ人間に見えるランクの者もいるが、不気味な人間にしか見えない。
その中で、美男、美女と言える者が二人居た。
1人は「食人鬼、久保田」
女を50人程殺して、その女を冷蔵庫に保管して食べ続けていた。
後に、その様子を小説にした「一杯のスープ」という小説の主人公になっている。
2人は「吸血姫 マリア」
マリアは貴族を祖先に持つ女性だったが、若さを保つ為に少女を殺してその血であふれたお風呂に入っていた。
捕まるまでに殺した少女の数は100人を超えると言われている。
だが、ふと此処で気が付いてしまった。
確かに二人とも美男美女に見える。
だが、2人とも、「絶世の美男、美女」では無い。
しいて言うなら、久保田は「その辺りにいるちょっとカッコ良い兄ちゃん」マリアははクラスで「可愛いんじゃ無いの?」そう言われるレベルだ。
つまり、前だったら普通にその辺に居るような人間だ。
それより、僕は気が付いてしまった。
もし、久保田やマリアレベルの人間に巡り合えたとしてどうする?
外見は真面でも..殺人鬼だぞ。
僕の身が危うい。
もし、僕の身が危うく無くても、犯罪に手を染める事になるかも知れない。
流石に友人や恋人の為に前科者になるのも刑務所に入るのも嫌だ。
駄目じゃんこれ。
次に目に入ったのは「日本の妖怪地図」だった。
挿絵を見て思ったのは、真面に見えるのは人型だけで、しかも顔だけだった。
例えば「牛鬼」や「さざえ鬼」みたいに元から人間ではない者はそのまま。
「ろくろっ首」や「人魚」は顔だけが美形..体はそのまま。
「雪女」「座敷童」はちゃんと綺麗に見える。
妖怪なんか、なかなか会えない。
しかも、その中でも人型に会えなければ意味が無い..難しいだろう。
そんな中、ようやく解決の糸口が見つかった。
それは都市伝説だ、僕が手にしたのは「都市伝説大全」だった。
都市伝説の怪異は人型の物が多い。
しかも、この「都市伝説大全」普通の都市伝説のほかに幽霊などについても書いてあった。
何より「普通に綺麗に見える女性の挿絵」が良い。
だが、発売日を見たら昭和61年だった。
スマホで見てもイムゾンにも売っていない。
だけど、凄く欲しい。
カウンターに持っていって相談した。
「この本が欲しいのですが、何とか買う事は出来ないでしょうか?」
「どういった理由でしょうか?」
本来は図書館では本を売る事は無い。
そうしないと貴重な絶版本などが買いとられてしまうからだ。
僕は、「母さんが同じ本を大切に持っていたが、無くしてしまったので探していた」そう伝えた。
「そういう事なら..これは特別です」
僕が本を汚してしまい、弁償という形にしてくれた。
当時の定価の800円を支払い、書類を書いて、本を貰った。
だけど、この本には怪異が起った場所も書いてあるが、伏字になっていた。
例えば、東京 S区なんて感じだ..何となく新宿なのかな?
とかは解るが本当にそうかは解らない。
だから、僕はHPを作った。
「都市伝説、怪異何でも情報掲示板」
こんな感じだ。
実際に怪異に出会わないと解らない..だけどやってみる価値はある筈だ。
シンデレラの幽霊
「都市伝説、怪異何でも情報掲示板」をアップしたが、流石に情報が来ない。
そりゃそうだ。
見よう見まねで作ったHPで直ぐに、沢山アクセスなんて来ない。
そんな中で1件だけメールが来ていた。
「シンデレラの幽霊って知っていますか?」
シンデレラの幽霊? 知らないな。
ネットで調べてみた。
?埼玉県、国道〇〇〇号線の交差点の近くにある廃墟にラブホテルの近くに出る。
?シンデレラの様に綺麗な服を着ている。
?凄く綺麗な美女らしい。
?出没は深夜12時~2時が多い
この4つしかネットには書かれていない。
だが、メールにはこの国道の名前とラブホテルの名前まで書いてあった。
名前は匿名だけど場所の詳しい写真までが添付されていた。
更に、会う為に必要な物にバラの花束が必要とあった。
(この場所家から自転車で30分位だ、今夜早速行って見るか)
夜中に出て行くのだから、家族に見つかると不味い。
母さんと七海が眠るのを待って、静かに玄関から出て自転車に乗って出かけた。
目的の場所は夜だというのに暗くは無かった。
オレンジ色の車用の街灯がこうこうと輝いていて寧ろ不気味に明るかった。
昼間なら国道だから車の往来は山ほどある筈だがこの時間だと殆ど無い。
僕は別に退魔師とかではない。
今回の目的は怪異が果たして自分の目にどう見えるか知りたい、それだけだ。
今の僕には視聴覚的には「普通の人間」の方が怖い。
百合子さんなんて、今迄見たどんなホラー映画よりも怖い。
(しかし、やる事が無い)
コンビニで買ってきたコーンスープを飲みながらスマホでゲームをしていた。
「こんな所で..何をしているの?」
後ろから女性の声が聞こえてきた。
声がなんとなく、普通ではない。
後ろを振り返ると綺麗なドレスを着ている女性がたっていた。
距離は結構遠い。
あんな処から声がハッキリと届く訳は無い。
今の声は間違いなく耳元で聞こえた。
目を凝らしてしっかりと見た。
(まだ解らない、解らないが此処から見ている分には綺麗な女性に見える)
少しづつ近づいてくるのが解る。
歩いてないのにだ..
つまり、彼女が怪異だ。
「貴方は逃げないの?」
ここから話しても無駄だろう..だから心で念じてみた。
(逃げないよ)
「そうなんだ」
どんどん、彼女は近づいてくる。
近づいてきて解ったが、彼女が着ているのはウェディングドレスだった。
とうとう、彼女は僕のすぐそばまで来た。
もう普通に会話できる距離だ。
「貴方は怖がらないんだね..」
僕は、彼女をじっくりと見た。
少し、青白いが間違いなく綺麗な女性だ。
口から血が出ている以外、うん問題無い。
「怖がらないよ? だって貴方は綺麗な人にしか見えないからね」
「そう、だったら話を聞いてくれない..」
年齢は恐らく20代後半位だろうか?
花嫁衣裳に身を包んだうん、凄く綺麗だ。
「良いですよ、僕で良かったら」
久しぶりに人間らしい人間と話せる…相手が怪異であっても凄く嬉しい。
「昔し、そこのラブホテルで結婚式のサービスをしていたのよ…」
「ラブホテルなのに結婚式ですか?」
「勿論、ちゃんとした物じゃない…ラブホテルの一番高い部屋に教会のミニチュアみたいな部屋があって、そこで式の真似事ができるのよ…」
「そんな部屋があったんですね」
「そこは..高いけど、他にもプールのついた部屋やディスコ付きの部屋もあった..まぁそれは関係ない話ね」
「はぁ」
「私も彼も貧乏だったし、お金が無いから結婚式も上げれそうになかったのよ..だから真似事だけでもしようか? そうなったの」
「そうだったんですか?」
「ちょっと聞いていますか?」
「聞いているよ!」
(他人の恋バナや惚気を聞いてもな..確かに美人ではあるけど)
「それでね、本格的にやろうって事になって、貸衣装やさんで私はウェディングドレスを借りて、彼はタキシードを借りてこのホテルの前で待ち合わせたのよ」
「へぇー、それでウェディングドレスを着ているんですね」
「そうなのよ..それでね、私は彼を待っていたんだけど..」
「何かあったんですか?」
「約束の時間になっても彼が来なかったのよ..」
「何かあって遅れたんですか?」
「ううん、解らない、何時まで待っても彼は来なかった…それでこんな格好でラブホの前に居たから変なのに絡まれて、逃げようとしたら車に轢かれて死んじゃったのよ」
「そう、なんですか?」
「そう」
「それで、何で此処で化けて出ているんですか?」
「解らないわ..だけど、何か未練があるのかも知れない」
「そう、僕に何か手伝える事はあるかな?」
「そうね…だったら、そこで結婚式の真似事に付き合ってくれない」
「僕なんかで良いんですか?」
「歳は離れすぎているわね..だけど、私を見て怖がらなかったのは..貴方だけだから仕方ないわ」
(僕から見てこんなに綺麗だという事は普通の人から見たら凄く怖い..そういう事だ)
「そう、僕で良いならお手伝いさせて頂きます」
二人して廃墟のラブホテルに入っていった。
彼女のちからのせいかボロボロのホテルが、急に綺麗になった。
まるで営業しているホテルの様に見える。
「凄いな? これが廃墟だったホテルか…信じられないな」
「他は何も出来ないけど..これだけは不思議と出来るんだよね」
「本当に凄いな..」
「さてと、少年..お姉さんと結婚式をさっさとしようか?」
(あれっ僕の服装がタキシードに変わった)
「服装が変わっている」
「そりゃ、式を挙げるんだもん、タキシードじゃなきゃね」
「そりゃ、そうだ」
声が何処からともなく聞こえてきた。
「貴方は病める時も健やかな時も彼女を愛する事を誓いますか?」
「誓います」
「貴方は病める時も健やかな時も彼を愛する事を誓いますか?」
「誓います」
それでは誓いのキスを..
彼女は目を瞑った。
僕はそのまま、彼女の口に口づけをしようとしたが..
「ありゃ..流石に幽霊だから出来ないのか..残念」
「そうみたいですね…」
彼女の体が急に光り輝きだした。
「わわわ私し…結婚式が上げれなかったのが未練だったみたい..ありがとう、これでもう思い残す事は無いわ!」
「良かったですね!」
「うん、君の事は忘れないよ…ありがとう..」
「僕も貴方の事は忘れません..貴方みたいな綺麗な人に会ったのは初めてだから..」
「そう? 嘘でもうれしいわ..」
「嘘じゃありません、本当に本当に綺麗です…」
「うれし..」
(逝っちゃったか..あっ名前も聞かなかった)
世界が可笑しく見えるようになって初めて…綺麗に見える人に出会った。
もし、彼女がこの世に居てくれるなら、毎日でも会いにくるのに残念だ。
まぁ、彼女は成仏出来たみたいだから..良いか….
口裂け女のいる場所【迷走】
折角情報をくれた人が居たので調査報告をアップした。
「シンデレラの幽霊」はあの場所で亡くなった、花嫁姿の女性の可能性が高い。
近くのラブホテルで結婚式を上げれるサービスがあり、彼氏と式の真似事をしようとしていた所事故にあい、死んだ女性の幽霊という話が濃厚。
但し、これは私が調べた結果であり真実は解りません。
こんな感じだ。
交差点の写真や廃墟のラブホの写真にモザイクを掛けて行った証拠として入れた。
「但し、これは私が調べた結果であり真実は解りません。」
これを入れないと炎上したり、否定の話が来るかも知れない..だからあくまでも、「そう思った」にしないと不味い。
その為、入れた。
(これで良しと..しかし、綺麗だったな..ああいうのを美人と言うんだ)
このホームページのアクセス数は108..良いのか悪いのか解らない。
メールは…あっ! 来ている。
「口裂け女の発祥の地」
また随分とメジャーな話が来たな。
ただ、これは多分、眉唾物だろう。
余りにも有名な話しすぎる。
ネットで調べてみたらあるわ、あるわ。
?口が耳まで裂けている。
?マスクをしてコートを着ている。
?「私綺麗」と美女が聞いてくる、そして答えると「これでも綺麗」とマスクを外す。(綺麗が美人の場合もあり)
此処までが共通の話し、この後は対処法だ。
?最後まで「綺麗です」「美人です」で通す。
これによって助かったという話もあるが、「それなら私と同じにしてあげる」と口を裂かれるという話もある。
?手に「犬」と書いておく
見せると逃げていく..この理由は解らない。
?ポマードと叫ぶか、ポマードを投げる。
そうすると逃げて行くらしい
?べっこう飴をあげると見逃してくれる
?「にんにく」と叫ぶ
どう考えても、可笑しい。
一部にある特徴
?新幹線より速く走れる(バイクという説もある)
?鎌を持っていて引き裂いてくる
?実は三姉妹だ
正体は?
?狐憑きによって口が裂ける呪いを受けた女
?事故により口が裂けた女
?実は大昔からいる妖怪
?遊女の幽霊
ネットでちょっと調べればこの位は出てくる。
ただ、問題は此処からだ、この話は嘘だという説も沢山あるのだ。
「教育ママが子供の脅しの為に広めた」
「女子大学生が人を脅すいたずらで口紅を耳まで引いてお化けの真似をした」
等だ。
だが、今回のメールは少し違っていた。
口裂け女の発祥の場所についてのメールだ。
東京B区説や岐阜県説、大阪説もあるのに..このメールでは場所を..
家の近所にまで絞り込んできている。
可笑しいな..このホームページには住所なんて入れていない。
それなのに、この場所も家から近い。
「口裂け女の本当の出没場所は帝央大学の中にある池の傍、もしくは歴泉公園の噴水傍です」
「時間は夜中の12時から2時までの間」
此処まで絞られていて家から近い..行くしかないだろう。
問題は、公園に行くか大学に行くかだ。
よく考えたら、大学は夜中は警備されている可能性もある。
まず、行くなら公園だろう?
この間と同じ様に寝静まるのを待つ。
静かに気づかれないように玄関から出ていく。
そのまま、歴泉公園の噴水迄来た。
時間は11時50分時間まで10分ある。
そのまま近くの茂みに隠れた。
今回は、相手が相手なので周辺に気を配りながら様子を見ていた。
此処も街灯があり明るい、だけど、人は通らない。
大きな公園の中央、夜中にわざわざ来る人は少ない。
まぁ、偶には恋人通しで来る事もあるらしいが..今の僕には化け物にしか見えないから見たいとは思わない。
1時を回った頃だろうか?
コートにマスクの女が現れた..話に聞く「口裂け女」のいでたちだ。
確かに不気味だ、今回は警戒の為に双眼鏡を持ってきていた。
双眼鏡を除いて僕が見た女性の姿は..化け物だった。
しかも、百合子どころか、芸能人ですら見た事無い化け物。
前の世界なら..口裂け女かも知れない、だが僕の目に化け物に見えるという事は..普通人。
つまり、人間だ。
暫くしたら彼女は居なくなった。
(これは悪戯か、彼女を見間違えただけじゃないか?)
どっちにしても2時になったので今日はもう現れないだろう…
僕もそのまま立ち去った。
口裂け女のいる場所【出会い】
昨日は完全な空振りだった。
しかし、あの女性、恐ろしく気持ち悪かったな。
今迄で群を抜いて化け物だった。
と言う事は、かなりの美女だという事だ..そう考えるなら絶対に怪異では無い。
「お兄ちゃん、眠そうだけど..大丈夫?」
「ああっ七海、大丈夫だよ!」
少しは慣れたけど..凄く怖い、
「また、お兄ちゃん、七海の胸見ている..変態!」
「いや違う」
「前は七海の顔を見て話してくれたのに..何で?」
お前の顔が化け物に見えるからだよ、とは言えないよな。
「最近、何か目をみて話すのが恥ずかしくなって..悪いけど我慢してくれないか?」
「そう? まぁ良いや…」
「健一、お母さんとも目を合わせてくれないの?」
「ごめん、何だか恥ずかしくて」
「そう? 健一もお年頃ってわけね」
慣れたとはいえ、化け物しか居ない中に1人ボッチ…正直心細い。
いや、この状況に何時かは慣れるかもしれないが、恋愛は諦めないといけない。
(正直、幽霊でも良いから、真面な女性に逢いたい)
学校に渋々行く..
下駄箱には何時の様に手紙が入っているが、そのまま放置だ。
昔なら大切に持ち帰って返事を書いた。
だが、今の僕にはこの世界の女は全部化け物だ..だからこの手紙に価値は無い。
(健一くんは本当にクールだよね、女に興味ないって感じだよね)
(だけど、あの美貌だもの納得、納得)
(あの百合子さんも撃沈したんだよね..クールで素敵よね)
これが、化け物で無いなら凄く嬉しいんだけどね…
授業も余り身に入らない。
「あの、健一君は好きな人はいますか?」
「居るよ」
「そうだよね..ごめんなさい..」
祐子さん..昔だったら、多分付き合ったんだと思う..凄く可愛い子だった。
声が元のままの分余計不気味に見える。
「お前、どんな子だったら付き合ううんだよ? 凄く羨ましいぞ」
健司もやっぱり化け物にしか見えない..
「シンデレラの幽霊かな」
「確かに綺麗らしいけど、幽霊だぞ」
「そうだね」
「お前絶対に変だぞ」
「そうかな」
それは解かっているよ。
家に帰ったら
「疲れている」と言って休んだ。
今日は大学の中にある池に行ってみよう。
門は夜になると閉まるが、塀を登れば入れる。
調べて見たら、池の近くには大切な施設は無いからカメラはついてない。
行ってみても問題は無いだろう。
夜中に目を覚まし、大学に向う。
そのまま、農学部の低い塀をよじ登り大学に入った。
夜の大学はひっそりとしていて怖い筈だが、リアルお化け屋敷にいる僕には怖くない。
そして、目的の池に来た。
(あれっ、可笑しいな昨日と同じ女が居る)
結局、これはガセだったのか?
それとも、あそこに居る女が俺を騙す為に..いや無い..此処が近いなんて知る訳は無いだろうが。
目が合った..女が急に走ってくる。
(見つかった..怖い、化け物中の化け物..体に恐怖が走るレベル)
「わーたーし、美人?」
怖いわ…本当に恐怖だ。
「美人じゃありません..不細工です」
「えっ..聞き間違いかな..私美人」
だから怖いわ..確かに僕が恐怖する位だから美人なんだろうけど、化け物にしか見えない女に付きまとわれたくない。
「だから、不細工です」
「えっ..もう良いわ..これなら怖いでしょう」
そうか、考え違いをしていた。
口裂け女はマスクを外さなければ美人だし怖くない。
と言う事は、「俺にとっては物凄く怖い」マスクを外して初めて怪異になる。
マスクを外したその姿は..凄く美人だった。
口は大きいけど笑顔が凄く綺麗だ、美人だけど可愛い..
昔し、ホラークィーンと言われた女優が居たけど、それ以上だ。
「凄く綺麗だ、マスクを外すとまるで女神にしか見えない」
「ちょっと、貴方可笑しく..ない..普通とぎゃくよ..」
「だけど、本当にそう思ったから仕方ないじゃないですか?」
(可笑しい、可笑しいよ..この人)
「これなら..どうかな」
(マスクをつけたらどうなるのかしら)
「..マスク..をつけない方が綺麗です」
マスクつけてると、最も怖い化け物になるんだよ
「そうですか? 貴方にとって、マスクを外したこの姿の方が良いというのですか? この醜い姿が」
「はい、凄く綺麗です、口は大きいけど、笑うと女神みたいです、長い髪も素敵ですしまるでアイドルみたいです」
「冗談でしょう..そんな風に見える訳がないわ」
(だけど..私に恐怖を感じて無いのだけは解るわ..私の中の殺戮意欲がわかない、それにあの目だ、マスクをとったのに凄く優しい目をしている)
「そう見えるのだから仕方ありません、マスクをとった貴方は凄く綺麗です」
「本気…で言っているの?..なら友達になれるのかしら?」
「なってくれるの?」
「ええっ」
「連絡先を教えてくれる?」
「….無いわ」
「えーとスマホとか?」
「持ってないわ」
「それじゃどうすれば良いんだろうか?」
「それなら、私の家を教えてあげるから、貴方の家を教えて…」
「良いよ..はい」
(何、この人..私に住所本当に教えるなんて)
「ありがとう..それじゃ、私の屋敷に招待するわ..妹が二人いるけど平気なはずよね」
(平気な訳ないわ..化けの皮を剥いでやる..私が綺麗な訳ない..)
「その二人はお姉さんと同じ様に綺麗なのかな」
「私の名前は涙(るい)よ..私が本当に綺麗に見えているなら..綺麗な筈だわ」
「そう、それじゃ招待されちゃいます..楽しみだな」
「お姉さまが獲物を連れて来たわ」
「若い男..恐怖で引き攣った所を残酷に殺してあげるわ」
「凄い、お屋敷ですね」
「古いだけよ..」
「凄い、お嬢様なんですね、お屋敷に凄く似あっています」
「…..」
(本当に調子が狂うわね..本当に私が綺麗に見えると錯覚を起こしてしまう)
「あの?」
「聞こえているわ…ありがとう」
「獲物が入ってきたわお姉さま」
「若い獲物だわ」
(あれっ可笑しい..お姉さまがマスクしてないのについて来ている)
(何があったの)
(私達三人を見た者は全員が凍り付いた、そしてショック死した、余りの恐怖に耐えかねて、例え私一人なら大丈夫でもそれで終わりだわ)
「さぁ、着いたわよ」
「凄いですね、中に入ったらまるでお屋敷です」
「ありがとう、妹達を紹介するわ、仁美、愛…お客さんよ」
「はい、お姉さま、今行きます」
「窓から見てたわ…若いお客様ね」
(二人とも素顔のままだ、流石に凍り付いたわよね..さぁ)
驚いた、姉妹揃って凄い美人だ。
容姿を例えるなら、長女の涙さんは大人っぽい美人OL、次女の仁美さんは綺麗な大学生のお姉さん、三女の愛さんは僕と同じ高校生くらいだ。
共通して言える事は三人が三人とも美人だという事だ。
「綺麗だ..幽霊じゃ無くてちゃんとした人間だ」
「嘘でしょう、三人を同時に見て凍り付かないなんて」
「喜んでいるように見えますわお姉さま」
「だけど泣いているよ」
「やっぱり、怖いのよ泣いているんだから」
「愛は違うと思う..だって嫌な感じがしないよ」
「おい、何で泣いているんだ?」
「だって、凄く嬉しいんだ…こんなに綺麗な人に出会えるなんて…本当に嬉しい」
「「「えっ」」」
あり得ない筈の出会いが..この日起きた。
口裂け女のいる場所【三姉妹】
「あのさぁ、それ本当なの?」
愛さんが僕の顔を覗き込んできた。
顔が近い…多分、怪異だから半分脅しが入っているのかも知れない。
「愛さん、顔が近いです..そのですね..」
どう見ても..怖がっていない、顔が青くなるどころか赤くなっている。
「健一君..私のイメージってどうなの?」
「凄く可愛らしく見えます、少しボーイッシュで目が凄く綺麗です」
「本当かな? 例えば、私がキスしてあげるって言ったら嬉しい?」
「嬉しいに決まっているじゃないですか?」
「そう..だったら..チュッ」
「えっええええええっ」
嘘でしょう別の意味で驚いている、本当に喜んでいる。
私達の怖さは口にある、その口が頬っぺたに触れたのに怖がるどころか嬉しがっているよ
「お姉さま、健一君..本当に私が可愛く見えているみたいだよ」
「本当かな? 怪しいな..それなら..これでどうだ..ペロっ」
私はこの男の首筋を舐めた。
「仁美さん、嬉しいけどくすぐったい..」
「そそう、くすぐったいよね? うん、ごめん..」
「いや、仁美さんみたいな美人にされたら嬉しいから謝らなくて良いです、ただ照れちゃいます」
「本当に綺麗に見えているんだ、それなら私はどんな風に見えているの?」
「少し年上の女子大生の綺麗なお姉さん、神秘的で、本当かな? 怪しいな?がミステリアスで似合っています」
「そうなんだ? うん神秘的でミステリアス..そんな事初めて言われたよ..ありがとう」
「ちょっと待って、それじゃ私はどう見えているのかしら?」
「綺麗なお姉さん、仕事ができる女って感じです」
「あの、女神みたいとか、アイドルみたいって言ったのも全部本当なの?」
「はい」
「だけど、泣く程感動する物なのかな? ただ出会えただけなのに」
「僕にとってはそうなんです」
「あのさぁ..君が私達を好意的に見てくれるのは解るよ? 全然怖がってないんだからさぁ..だけど君は良いの?」
「何がですか?」
「私達は口裂け女なんだよ…人間じゃ無いんだよ?」
「そうだよ、愛は化け物なんだよ! 世間一般的にはさぁ」
「仁美だってそうだよ」
「うん、私もそうだ」
「気にしません」
だって僕にとって人間に見える人は貴方達しか居ないんだから。
「私は多分健一くんには優しく出来ると思うよ? だけど、平気で人を殺すような奴なんだよ愛はそれでも友達になれるの? あはははっ健一君は殺さないよ? それは約束できるかな!」
それは解ってて近づいたんだ..それでも僕は..
「健一君..君は怖がらないし、優しいから仁美は優しくなれるんだよ? さっき首筋舐めたでしょう? 貴方が怖がったら殺していたかも知れないんだ」
「私の噂は知っているよね…「口裂け女」ニュースでやっていたり、雑誌に載っている事の半分は真実なんだ..人間としても犯罪者だと思う?それでも良いの」
この居心地の良い場所を失いたくない。
此処を出たら、僕にとっては化け物しか居ない世界に戻るんだ。
「涙さん、仁美さん、愛さん..その話は聞きたくない..僕にとっては凄く綺麗な三姉妹と友達に慣れた..それだけじゃ駄目なのでしょうか?」
「健一君がそれで良いなら愛はそれで良いよ」
「私も良いよ、それで」
「そうね、別に良いわ」
「ありがとう..本当に嬉しい..」
「さぁ今日は遅いわ..何時でも来て良いから今日は遅いからもう帰った方が良いんじゃないかな?」
「あっ、こんな時間、また来るね」
「うん待っているね」
「私も」
僕にとっての楽しい時間はあっという間に過ぎて行った。
また恐怖の時間が始まる。
彼女達の事情
「健一くんって凄い美少年だったよね?」
「そう思うよね、最初で会った時に、正直いうと妬ましかったわ..あんなに綺麗な顔をしているんだからね、鎌で引き裂いてやろうと思った位」
「涙お姉様が、そう思うのも解るわ..あんな顔で、綺麗って言われたら..殺意が湧いちゃうよね」
「本当にそう思うわ..しかもマスクを取る前に、「不細工」を連発するのよ! 私、口が裂けて無ければ美人の筈でしょう?」
「その筈ですよ..私も涙お姉さまも愛もそういう怪異ですもん」
「そうよね..だけど、マスクを外したら..ああなのよ! 本当に鎌で引き裂かないで良かった..」
「プラチナブランドに鳶色の瞳…色白の綺麗な肌..理想の男の子だよ..うん、私の好みだよ」
「仁美お姉さま..年齢的には私の方がぴったりだと思うんだけど」
「そうかな? あの位の男の子は普通は年上が好きな筈よ?」
「そうよね、年上のお姉さんが好きよね! 何しろ、私は女神みたいらしいからね..うふふ」
「涙お姉さまは年上すぎると思うけど..付き合うなら私位が一番だと思う」
「違う、違う違う! 高校生くらいは同級生と付き合うのが普通だって」
「「「うううううーっ」」」
「あはははっ、可笑しいの? 誰が殺すかじゃ無くて、誰が付き合うかだって」
「健一君の前じゃ..ただの女の子、そういう事なんだね」
「うん、化け物じゃなくて…女の子になるんだよね、衝動的殺意がなくなっちゃうよ」
「まぁ良いんじゃない? 健一君は、口裂け女と認めてくれた上で、付き合ってくれそうだから」
「そうだね」
「化け物でも良い..なんて、愛、正直言うと涙が出そうになっちゃった」
「同じだわ」
「私も同じ」
「いつ来るのかな?」
「流石に毎日は来てくれないと思うよ」
「学生だもん、毎日は難しいと思うよ」
「そうだよね…」
楽しみに待っている、それしか無いのね。
口裂け女と呪いのリカちゃん人形
明け方僕はこっそりと帰ってきた。
そのまま気が付かれないように二階に上がった、時間は5時。
2時間半は眠れる。
今日からは楽しみがある。
この恐怖から逃れられる場所があるんだ。
目覚ましがなり何時ものように起きる。
化け物にしか見えない、母さんにも妹にも慣れた。
「おはよう、母さん、七海」
「おはよう、お兄ちゃん、今日は顔をみて話せるんだね」
「何があったのか、お母さんは聞かないわ..解決して良かったわね」
気持ち悪い、母さんも七海も元は凄く綺麗だった。
声は一緒で体も一緒、それなのに顔、正確には頭部が化け物なんだ..
「そうだ今日は友達の家に寄って帰るから、遅くなるよ」
「そうね、最近は、引き籠りがちだったから良いわよ」
「それじゃ行ってきます!」
「お兄ちゃん、元気が出て良かったね」
「本当にそう思うわ、何があったのか解らないけど..昨日まで真っ青だったものね」
「本当に真っ青だったよね」
今日も恐怖の一日が始まる。
登校も地獄そのものだ。
子供から、大人まで全てが化け物、顔だけではあるが「ゾンビすら生ぬるい」そこ迄気持ち悪く見える。
ただ、異臭がしたり、声は不気味では無い。
何かが原因でそう感じるのか解らない、だが写真からフィギュアまで全部が気持ち悪いののだから認識だけでかたずけられない。
小さな子供から大人まで満遍なく気持ち悪い。
下駄箱には何時ものように手紙が入っている。
最近では、持ち帰るようにした。
今の姿でなく、昔の姿を思い出しながら読めば..良い、そう割り切れた。
化け物達に混じり、授業を受ける。
普通に会話し、普通に過ごした。
最初に比べて我慢出来ないレベルでは無い。
「健一君、良かったら帰り、カラオケでも行かない?」
「ごめん、用事があるから..」
「それじゃ、また誘うね」
「相変わらずクールだね健一君は」
「他の男子と違うよね」
「全く女子何て眼中にないって感じ」
「そこがまたいいよね」
聞こえているよ。
ごめん..流石に化け物とはわざわざ一緒に遊びたくない。
今日は凄く楽しみが待っている。
三姉妹に会える..あそこの空間だけが今の僕の心を癒してくれる。
近くのスーパーで、ケーキミックス他、食材を買う。
ただ、遊びに行くのも忍びないので料理でも作ろうと思う。
「涙さん、遊びに来ました」
「あっ健一君、本当に遊びに来てくれたんだ」
屋敷の中から涙さんが顔を出した..と言っても門をくぐって来ているから外からは見えない。
やっぱり綺麗だ..もし僕が社会人になってこんな上司が居たら、幾らでも残業すると思う。
そのまま、中に入ると他の2人もいた。
いいなぁ..ここは本当に気が休まる。
まぁ違う意味では緊張するけど。
「いらっしゃい、健一くん」
「本当に来てくれたんだ、嬉しいよ」
歓迎されているのが解る。
「あの、台所借りてもよいですか?」
「台所? 別に良いけど何するの?」
「料理でもしようかと思って」
「健一君が作るの?」
「勿論」
「本当? 楽しみ」
「男の子の手料理か? 初めて食べるよ..楽しみ」
「うん、私も」
僕が作ったのは「キャベツロール」に「ホットケーキ」まぁお子様メニューだ。
食事というよりは軽食って感じ。
「これ食べていいの?」
「本当に美味そう..」
「このホットケーキ..生クリームが載っている」
美女三人が楽しそうに食べてくれるんだ..見ていてそれだけで楽しくなる。
「健一くんは食べ無いの?」
「うん、これから食べるよ..ただ」
「ただ、どうしたのかな?」
「綺麗な女性に囲まれて食事しているから、つい食べそびれちゃう」
「そ、そうなんだ..昨日も聞いたけど..私ってそんなに綺麗なのかしら」
「はい、本当に凄い美人ですよ」
「私はどうなの?」
「凄く綺麗です」
「ありがとう」
「私は?」
「凄く可愛いと思う」
「本当..うん健一くんもカッコ良いよ..凄く」
学校とは違う..本当に可愛い子に言われると照れてしまう。
「そう言われると照れちゃいますよ」
「だけど、健一くん位カッコいいなら女性にモテるでしょう?」
「少しは..だけど、全然タイプじゃない人から言われるのと、自分から見て美人に言われるんじゃ、全然違いますよ」
「そうか..えっそれじゃあ、愛って健一くんのタイプなのかな?」
「凄く可愛いと思います」
「ちょっと..私はどうなの?」
「仁美さんも綺麗だと思います」
「私は? 私は?」
「涙さんも綺麗です」
三人とも、美人と言われたいらしく、こういう事を良く聞いてくる。
元から「私美人って」聞いてくる位だから..そういう物なのかも知れない。
本当に綺麗だから良いんだけどね..
楽しい時間はあっという間に過ぎていき..20時になった。
「流石に、そろそろ帰りますね」
「そうだね、残念…」
「明日もきてくれる?」
「来て良いなら、来たいです」
「勿論、良いわ」
「なんなら、住み着いても良いわよ」
「そうそう、大歓迎だよ」
「それじゃ、明日も来ますね」
帰り道に可愛らしい人形が落ちていた。
家にあった、フィギュアもポスターも気持ち悪いから捨てた。
なのに、この人形は..可愛い、もしかして化け物の人形なのだろうか?
少なくとも、僕の目には凄い美少女の人形に見える。
うん、拾って帰ろう。
「ただいま」
「お帰りなさい..夕飯はどうする」
「食べたからいいや..それよりお風呂入って良い」
「もう七海も私も入ったから何時入っても良いわよ」
「それじゃ入らせて貰うよ」
「しかし、この人形かなり汚れているな」
(…..)
シャンプーで髪を洗って、汚れている体を洗う。
随分、綺麗になったな..
しかし、凄く可愛い人形だ。
「見れば、見るほど綺麗だ..凄い美少女だ..だけど足が何で3本あるんだろう..まぁ良いか?」
(….)
部屋に持ち帰り人形の髪を乾かした。
真ん中の足は..とった方が可愛いんだけど….
「ごめんね」
謝りながら、真ん中の足を切り落とした。
そこをパテで埋めて、ソフビカラーで着色した。
前のフィギュアで使った残りがあって良かった。
「これで良しと..ほら可愛くなったよ」
答える訳はない、だけど、僕の唯一の人形だからつい..話しかけてしまった。
前の人形の服を取っておいて良かった。
この制服を着せて..ほら「ツンデレ魔女」の出来上がり。
(….)
「やっぱり、お人形はこうでなくちゃ..うん、凄く可愛いや」
(……)
「お休み..」
勿論、人形は答えない。
電気を消して僕は眠った。
夜中になってようやく私は動けるようになった。
「わたし..リカちゃん..呪われているの…」
「本当は、貴方の人形になりたかった..凄く嬉しかったの..だけど私は呪われているの..だから出ていくね..」
人形はその小さい口でキスをすると..切断された足を持って窓をあけ出て行こうとした。
「待って..」
「何で気がついちゃったの..出て行こうとしたのに..」
僕は都市伝説の掲示板をやっている..寝るとき気が付いた。
あの人形は「3本足のりかちゃん人形」なのではないかって。
「呪いについて教えてくれないかな」
「私の声を..聴きたくなくなるの…だけど、鼓膜を破っても私の声は聞こえなくならないの」
良かった、かくれんぼして、「異次元に連れて行かれる」やおままごとで「刺し殺される」じゃ無ければ良い。
「それなら、此処にいてくれないかな? 君みたいな綺麗な人形に初めて出会ったんだ」
「私の声..怖がらないの?」
正直、凄く声が可愛い..声優さんと話しているみたいだ。
「凄く可愛いと思うよ?」
「本当?」
「うん、君は理想の人形だよ..人形ってどんなに愛しても、気持ちには答えてくれないし話しかけてもくれない..なのに君は話せるんだよ」
「そうなのかな..」
「そうだよ、声が聞こえるだけの呪いなら構わないよ..だって君の声は..凄く可愛いんだから」
「そう? そんな事言われた事が無い..ならいい..居てあげる」
何だか、ツンデレ魔女より、シャギーで青髪で目が赤い女の子と話しているみたいだ。
僕は、オタクじゃないけど..これオタクの憧れじゃないかな?
少なくとも僕には、家に居る時も安らぎの場所がある。
この世界で唯一の..娯楽だ。
アニメも、漫画もテレビも全滅なんだから。
眠くなるまで話した。
悲惨な身の上まで聞いた。
「そろそろ寝ようか? 僕は平気だけど、他の人の前でしゃべっちゃ駄目だよ?」
「解っている」
電気を消して今度こそ本当に寝た。
(私、リカちゃん..呪われているけど…幸せなの)
口裂け女のいる場所【消滅】 口裂け女篇 完
「涙お姉さま、明日は私達が料理作りませんか?」
「そうね良いわね..だけど料理なんて、何十年も作って無いわ」
「カレーなら作れるんじゃないかな? 愛、人間だった時に作ったよ」
「そうだよ、解らなければ、本を見ながら作れば良いんじゃないかな?」
「それじゃ、愛は本を買ってきてくれる」
「オーケー」
「それじゃ私は食材を買って来るわ」
「それじゃ、私は必要そうな鍋や、食器を洗って用意して置くわ」
愛は三姉妹の中では日籠りがちだった..自分の姿を見て怖がる姿が嫌だった。
だけど、健一の為なら..勇気を振り絞り買い物に出た。
仁美は、愛程ではないが同じく人が嫌いだ。
だから、外には余り出ない..殺戮衝動が起きた時にだけ外出していた。
涙は鍋を洗いながら..健一という少年の顔を思い出す。
私が綺麗なんて変わった子だわね..
しかも、あんな美少年なのに..
あんな目で私を見た人は..1人だけ居たわ..まだ私が人間だった時に「愛している」って言ってくれたっけ
あの時、私は振っちゃったのよね..自分が美人だと思っていたから..
そして、整形に失敗して..顔が化け物になって..
人を殺して..本当の化け物になった..
本当に変な男の子..私が綺麗だなんて.しかも嘘じゃないわ..本当に困ってしまうわ..
うふふっ..
嘘、なんで..なんで体が透けていくの..
いきなり、ドアが空いた。
「涙姉さん..本を買いに行こうとしたら..体が、体が透けてきたの」
「愛、涙姉さん、貴方達もなの..」
そうか、理由は解かった。
想いが叶ってしまったからなんだ..
心から「綺麗」って言って貰えたらから、呪いがとけてきたんだわ…
「仁美、愛..多分、呪いがとけてきたのよ..本当に綺麗って思って貰えたから」
「そうか、私達..想いが叶ったから..消えちゃうんだ」
「まだ消えたくない..」
「無理よ..もう」
「あと、3時間で健一くんがくるんだよ..まだ消えたくない」
「わたしだってそうだよ..」
「私も..そうだ」
「健一くん…愛が居なくなると寂しがるよ…」
「うん..そうだよ..私がいないと」
「嫌だ..まだ消えたくない」
呪いの消えた口裂け女は脆かった..
それから、5分もしないうちに彼女達は消えた。
床は涙なのだろうか? 濡れていた。
そして、屋敷は..廃墟に戻っていった..
三姉妹が居なくなった後
辛い学校が終わった。
これから、夜家に帰るまでが僕にとってのパラダイスだ。
楽しみだ..今日は何を話そうか?
凄い美人姉妹だけど、口数が少ない..そうだ、明日は家のゲーム機でも外していこう。
とりあえず今日は….
嘘だろう..屋敷が廃墟になっている。
門を開けて中に入る..綺麗な庭が、雑草だらけだ.そのまま家の扉迄進んだけど釘付けになっていては入れなかった。
「涙さーん、遊びに来たよ」
「仁美さん」
「愛さん」
幾ら叫んでも、返事は無い。
1時間位はいたと思う..頭が解ってしまった..ここはもうただの廃墟..三人は居ないって..
そして幾ら待っても、此処には帰ってこない。
きっと、何かがあったのだろう..
また会えると良いな..僕は歩き出した。
1人は辛い..
また僕は化け物の中に…違うよ..まだ、まだ心の支えがあるじゃないか?
今日は..まだ時間がある。
僕は商店街のある店に向った。
そこは、いまの僕には「呪いの館」だった。
昔は「天使の館」みたいに見えていたんだけどね..
「ドールショップ ミザイリア」
高級ドール専門店、アダルトな物ではなく、小さい物から大きな物まで、球体関節の物を含み売っている。
眼球から頭部、体、自分でカスタムする事も可能。
いまの僕には、悪魔のパーツにしか見えない。
お目当ては、洋服や家具だ。
動けるのだから使い勝手が良いように用意してあげても良いだろう..
僕は、お小遣い以外にもネットを使って小銭を稼いでいる。
高校生としては結構な金持ちだ。
あの子の為に..ベットとテーブル..服を数着買った。
まぁ結構な痛手だが..良いさ
家に帰ってきた..
「健一、今日は随分早いのね」
「うん、母さん、ただ今」
僕は、急いで部屋に入りカギを掛けた。
「ただいま」
まだ夜じゃないから喋れないか..
「居てくれてありがとう..君まで居なくなったらって考えたら悲しくなっちゃったよ」
(….何で泣いているのかな..)
「これ買ってきたんだよ? これから組み立ててあげるね」
(…..昼間は動けないし、喋れないのがじれったいよ、何があったのか聞けないよ)
僕は買ってきた家具を組み立てた。
棚の一部に、ベットとテーブルを置いてとちゃんと布団も買ってきたから置いた。
後は洋服3枚も横に置いた。
(これ..凄いわ..どう見ても高そう..私には縁が無い..そう思っていたお洋服に家具..他の人形が着ていて羨ましかった..)
「喜んでくれるかな?」
(あたりまえじゃない…すぐにでもお礼が言いたいわ….だけど…動かないのよ..)
「それじゃ、夜までお休み」
(そうね..その方が沢山お話しできるわ..また泣いているし..悲しい事があったのね..うん、動けるようになったら一杯慰めてあげるわ)
人形ラバー
「起きなさい!」
「うーん」
私は思いっきり頬っぺたを蹴っとばした。
「うーん」
こういう時は人形って本当に不便ね、軽いから全然効かないわ。
「いい加減に起きなさいって!」
「あっ、おはよう…」
「おはようじゃないわよ、今は深夜よ」
「そうだよね、そうじゃなくちゃ君が起きている訳ないよね」
「そうよ? 昼間は動けないんだからさぁ..所で何で泣いていたのよ..良かったらお姉さんに話なさい!」
「お姉さん?」
「そうよ..多分私は、貴方のお母さんより年上だわ」
「へぇー何歳なの?」
「乙女に歳なんて聞かないの..マナーよ!」
「解った」
「解れば良いわ…それで、あんた、何で泣いていたのよ?」
何か話し方が違ってきているな..まぁこれはこれで凄く可愛いけど..
僕は、今迄の経緯を話した。
「成程ね..多分彼女達は..消えたわね」
「消えた?」
「そうよ!」
「どうして消えちゃうのさ」
「だって口裂け女って寂しい怪異だと思うのよ 恐らく口が裂けて醜いから誰からも「綺麗」って言って貰えない? そうじゃない?」
「そうだと思うけど」
「多分、私と同じ様に呪いが掛かっている..そう考えたら、どうすれば呪いが溶けると思う?」
「解らない」
「馬鹿ね..心から綺麗..そう思ってくれる人が居たら、呪いが溶けてしまうんじゃないかな?」
「そうなのかな」
「そうよ」
「それじゃ、僕のせいで彼女達は消えてしまった..そういう事なのかな」
(また悲しそうな顔しているわね..)
「本当に馬鹿ね..彼女達は幸せになったのよ..だってそうでしょう? 「綺麗」本当にそう思う人が現れて..呪いが溶けたんだから」
「そうかな」
「そうよ..怪異にとって呪いが無くなるのは幸せな事だわ..だから、貴方は三人を幸せにした..それで良いじゃない?」
「そうか、うん、それなら良いや、ありがとう」
「良いのよ..」
「君は消えたりしないよね..」
「そうね、私の呪いは一つじゃないから大丈夫よ」
「そうなの」
「うん、多分、誰かの人形になる..これは健一が解いちゃったけど..もう一つは、私を醜く作った者への恨み..多分、相手は死んでいるからもうこの呪いは溶けないわ…安心した?」
「うん、安心した」
「ほら、今日は特別に横でねてあげるから..もう寝ましょう」
「心配かけてごめん」
「良いのよ、私は貴方の人形なんだから」
人形ラバー?
「口裂け女」情報は正しくありませんでした。
確かに、ご指定の場所に行ってみましたが、訳ありの美人が居るだけでした。
コートを着てマスクをしていたけど、はずして貰ったら凄く綺麗な女性でした。
その女性には綺麗な姉妹が居て三姉妹でした。
お屋敷にいてまるでお嬢様みたいでしたよ…写真を撮らなかったのが残念です。
事情があり引っ越すそうなのでもう会えないでしょう。
但し、これは私が調べた結果であり真実は解りません。
彼女達は本当に「僕から見て綺麗だった」怪異と語られるより「綺麗な女性」と語られる方が彼女達も嬉しいだろう。
報告書を掲示板に載せた。
次はまだ入って無い。
そして僕は..
「ルイ…私の名前はリカなんだけどな」
「あの、それは商品の名前じゃ無いのかな? だから君の名前!」
「それ口裂け女の名前じゃない? 他の女の名前を私につけるのね?」
「ごめん..嫌なら他を考えるけど」
「良いわ、それで、貴方にとっては絶世の美人の名前なんでしょう..良いわそれで」
「そうありがとう ルイ」
(凄く嬉しわ…名前が貰えるなんて思わなかったな..不意打ちよ、不意打ちすぎるわよ)
「良いわ、お礼何て、名前をありがとう、健一」
「どう致しまして」
「それでさぁ..ルイ、良かったらデートしない?」
「あのさぁ..健一、私は人形なのよ?」
「だから?」
「人形とデートなんて恥ずかしくないの?」
「別に..僕の周りにはルイより綺麗な子はいないからね」
(また不意打ちだわ)
「そう、なら良いわ..人形に話しかけていて変態を見るような目で見られても知らないわよ?」
デートと言っても、ただ夜の公園を歩くだけだ。
ルイは夜で無いと喋れないし、動けない。
ただ、月を見ながら歩くだけだ。
だが、それが良い。
昼間もしデート出来ても、化け物のなか歩くのだ楽しむ事なんて出来ないだろう。
ルイはポケットの中から顔だけ出している。
「月が綺麗だね」
「そうね」
「花も綺麗だ」
「そうね」
「だけど、ルイには負けるけどね」
「全くもう、良くそんな歯が浮くセリフがでるわね…もしかして、女扱いが上手いのかしら?」
「今の僕には君しか居ないからね」
本当に馬鹿ね、私は貴方の人形だもの..私には元から貴方しか居ないのよ。
凄く幸せだわ。
醜い姿に生まれて、だれかに愛して貰える日なんて来ないと思っていた。
人形は誰かに愛される為に作られるのよ。
たった1人に愛される為に..
今の私の相手は..貴方だけだわ。
「そう、ありがとう..私も大好きだわ」
ただただ、夜道を歩くだけのデート..それが1人と一体にとってはとても楽しかった。
トイレの花子さん【出会い】
久々にメールがあった。
「トイレの花子さんの情報です」
ただ、困った事に、出現場所が小学校のトイレだった。
しかも女トイレだった。
うーんどうした物かな?
小学校に忍び込む、これでも不味いのに、よりによって..女子トイレだった。
どうしようか..
夜になった。
結局、僕は誘惑に負けた。
夜中に小学校に忍び込んだ。
「あのさぁ、健一って救いようが無い変態だよね?」
「何を言っているのかな?」
「だってそうじゃない! 人形持って、小学校の女子トイレに侵入して幼女を探す..だれが聞いても変態って言うと思うよ」
「ううっ言い返せない」
「それじゃ、健一は変態という事で決まりね」
「….」
確かにその通りだけど、仕方ないじゃないか?
普通の人間が化け物にしか見えないのだから。
周りを警戒しながら忍び込んだ。
何故か、ドアのカギも掛かって無かった。
3階の女子トイレの前に来た。
「本当に変態なのね..入るんだ」
「あのなぁ」
「まぁいいわ、健一が変態なのは解ったから…」
ルイの声にめげずの女子トイレに入った。
夜中のトイレは不気味だが、日常から不気味な生物と暮らして居る僕には怖くない。
さてと、手前側のトイレからノックを3回して「花子さんいらっしゃいますか」と言っていく。
全部のトイレをに3回する。
そして今が4回目..3番目のトイレになった。
噂通りなら、此処に花子さんは居る筈だ。
開ける前から誰かが居るのは解った。
ドアを開けると、そこにはおかっぱ頭に、赤いスカートに白いブラウスの女の子が居た。
だが、
「お兄ちゃん遊んで..遊んでくれないと..」
確かに可愛い、可愛いけど..思った以上に子供だ。
「はい、ロリコン決定ね..変態でロリコン救いようの無い男ね」
「いや、流石に..ただ僕は人間に飢えているんだ」
「そう?なら良いわ」
「お兄ちゃん..変な人なの? 人形とお話しするなんて..」
「違うよ、この人形は話す人形なんだ、ほら」
「…..」
「おーいルイさん..」
「….」
「お兄ちゃんやっぱり変な人じゃない..話さないじゃない」
「あはははは..慌てちゃって可笑しいの..」
「人形が喋った..何で?」
「そりゃ、花子さんが居る位だもの人形が喋っても可笑しくないでしょう?」
「….たしかに」
「それで、花子ちゃんは遊んであげれば良いの?」
「そうだけど?」
「それじゃ、これで遊んでみない?」
「なにこれ?」
僕は子供と遊ぶのは苦手だ..だから認知堂のスモッチというゲーム機を持ってきた。
「それじゃ、これやってみようか? 上から落ちてくる物の形を併せて行くゲーム..やり方は」
「こんな感じ?」
「上手い、上手い..そんな感じだね」
「これ…凄く楽しいね」
結局、花子は明け方…消えるまでゲームで遊んでいた。
「お兄ちゃん..まぁいいや..またね」
「またね」って事はまた此処に来ないといけないのかな
そう度々は来れない..捕まったら..変態犯罪者扱いされるリスクはそうそう犯したくない。
トイレの花子さん【同棲?】
久々に更新しました。
待ってくれていた方有難うございます。
【本文】
さてと、花子さんには出会えた。
僕から見て人間に見える数少ない女の子だけど..
小学校に忍び込んでしかも女子便所に行くのはリスクが高すぎる。
捕まったら「ロリコン犯罪者」扱いされかねない。
ただでさえドール愛好者みたいな目で見られるのに、これにロリコンまで加わったら、生きていく自信が無い。
まぁ冗談だけど。
今日も疲れた、トイレに入って寝よう。
「ふぅーっ」
「お兄ちゃんっ!」
「うわっ」
「ちょっとお兄ちゃん汚い、こっち向かないで」
確かに怖くはないけど流石におしっこしている時にいきなり出て来られたら驚くよ..
「お兄ちゃん! 今日からここ花子のお家になるんだから、汚くしないでよ!」
驚いてはみ出してしまったおしっこを雑巾で拭きながら幼女に怒られる僕っていったい。
なんか必要以上に煩いから、学校の掃除当番以上に丁寧に綺麗にした。
「こんな物で良いかな?」
「今日の所は、これで良いよ! それじゃスモッチ貸して!」
僕は部屋からゲーム機を持ってきて花子に貸してあげた。
「それで、どうした?」
「いや、別れ際にお兄ちゃん凄く寂しそうだったから、来てあげたのよ! どう嬉しいでしょう?」
「来てあげたって..花子さんって自由に行き来できるの?」
「うーん出来ないかな? 偶にここ嫌だなと思って霊力使うと出来るんだけど..小学校の女子トイレ限定だったよ」
「それで何で?」
「解らないけど..できちゃった..これは愛の力かな?」
「そう、そうなんだ」
「何か思っていた反応と違うんだけど..ここはありがとうって抱きしめるシーンだと思うな」
この化け物に囲まれた状況で、幼女でも可愛い女の子が近くに居るのは嬉しい。
僕は高い高いするように花子を抱き上げた。
「ありがとう」
「何か違う気がするけど良いわ」
だけど、どうすんだこれ..トイレは家族も使うのに..
「このトイレ、家族も使うんだけど、不味くないかな?」
「大丈夫よ? ノック3回して「花子さんいらっしゃいますか」と言わなければ私に繋がらないし..繋がっても出る出ないは私の勝手だから」
「それなら、安心だね」
「だけど、出ないだけで此処には居るんだから..これからは綺麗に使ってね」
あれっ? それってここで僕がようをたすところを..常に美幼女に見られ続けるという事?
幸い我が家には二つトイレがあるから極力1階のトイレを使うようにしよう。
「解った」
花子は凄く可愛い、おかっぱ頭に綺麗な瞳、僕の小学生時代に同級生に居たら、間違いなく人気者になるだろう。
「どうしたの? お兄ちゃん花子の事見つめて! もしかして愛の告白」
「うん、確かに凄く可愛いいよ!」
「そんな、照れちゃうよ? 頑張って此処まで来てよかった..」
「だけど、僕はちゃんと良識あるから安心して、ロリコンじゃないから」
あれっ何か地雷を踏んだ?
寒気がするし、体が動かない..金縛り。
「お兄ちゃん..そう言えばあのお人形さん..ロリとか言ってたよね..幼女だから恋愛の対象にならないとか言わないわよね?」
「流石に、小学生と付き合うのは不味いでしょう」
「あのさぁ..花子は年上なんだよ? 昭和には存在していたから、お兄ちゃんのお母さんやお父さんより年上は確実..大丈夫だよね!」
可愛くても都市伝説なんだ..指一つ動かせない。
「そうだね」
「解れば良いんだよ..うん、そういう訳で、花子は合法ロリだからね..」
ロリ婆ぁ..それが浮かんだけど..言ったら殺されそうだから黙っておこう。
次に探すのは..
僕の世界は..人形と幼女だけ。
それだって出会えたのは奇跡に近いかも知れない。
それ以外はただの恐怖でしかない。
恋愛も友情もこれじゃ育む事も出来ない。
だけど、出来るなら同年齢の友達が欲しい。
また都市伝説について調べてみた。
僕から見て可愛いかったりしそうなのは「カシマさん」「テケテケ」「ヒキコさん」「三本足のサリーちゃん」「ブキミちゃん」思ったより少ない。
ただ、どれも問題がある、「カシマさん」「テケテケ」は五体満足じゃない..どんな美少女でも 上半身だけとか体のパーツだけとかどうなのだろうか?
周りの女性よりはまだ良いと思う..多分妹の七海よりはいけるとは思う、だけど、それでも怖い。
そう思う可能性は高いと思う。
「三本足のサリーちゃん」は男だという説もある..変質者の男と知り合っても仕方ない。
「ブキミちゃんは」花子と同じで幼女だ..運よく出会えたら嬉しいが、癒しが増えるだけだ。
そうすると自然と選べるのが「ヒキコさん」になる。
だけど、彼女は性格に問題がある。
何しろ彼女の都市伝説は…
雨の日に人形を引き摺っている、背の高い女性。
目はつりあがり口は裂けている..そして引き摺っているのは人形ではなく実は元は子供だった肉塊。
彼女を見た子供は肉塊になるまで引きずられて、捨てられる。
だけど、
その正体は
?顔を傷つけられたいじめられっ子。
凄い美少女で教師からも愛される優等生。
それが同年代から疎まれて虐めに発展、そして石をぶつけられ、校庭中を引きづられて顔が崩れてしまった。
その少女が後にヒキコになった。
?親の虐待から引き籠った可哀想な少女
両親から酷い虐待を受ける日々を受けていた少女が家を飛び出した時に男に車でレイプされた。
身も心もボロボロになった彼女は両親を殺害してそのまま居なくなった。その少女が後にヒキコになった。
?可愛らしくスタイルが良い女の子が学校では虐め、家では虐待にあって..その結果顔が潰れた。
その少女こそがヒキコ。
何が言いたいのかと言えば..どの話も「元が美少女」という設定があるのだ。
そう考えると..リスクは高いが、この子が一番良いかも知れない。
「都市伝説、怪異何でも情報掲示板」に書き込んでみた。
「「ヒキコ」さんの情報求む」
ヒキコさんが上手くいかなかったら..いよいよ「都市伝説大全」やメジャーで無い物に掛けるしかないかも知れない。
ヒキコさん 幸せになると居なくなる。
掲示板に書き込みがあった。
タイトルは「ヒキコさんの情報ありますがお勧めしません」
そう書いてあった。
内容を見ると。
埼玉県 ●●付近の河原に出た情報があります。
おおよその位置は添付した地図を見て下さい..
ですが、彼女は精神に異常をきたしています、捕まったら最後ミンチの様にズタボロにされて殺されます。
どうなのだろうか?
今回の情報も詳しい場所が書いてある。
行こうと思えば行ける、更に天気予報では暫く雨が続く..凄く都合が良い。
だが、半分死を覚悟しなくてはならないかも知れない。
行く価値はあるのだろうか?
誘惑に負け僕は行く事にした。
その理由は、彼女をモデルに書いた挿絵が本当に美人に見えた。
今迄の相手で本当に年齢が近く..友達になって貰えそうだ
その誘惑に勝てなかった。
会えるかどうか解らない..
それに様子が可笑しかったら、逃げれば良い。
それだけだ..
恐怖を自分で押さえ大丈夫と判断した。
次の日は本降りの雨だった。
まさに会いに行くには丁度良い。
河原につき、探し回る。
なかなか居ない。
そう簡単に見つかる訳は無い..
そう思っていたけど..その子は居た。
白いワンピースで雨に濡れている。
髪の毛は凄く長く腰まで伸びている。
そして、その容姿は..凄く綺麗だ、昔も今も此処まで綺麗な子に出会った事は無い。
口裂け三姉妹よりも綺麗で元居た世界のアイドルも敵わない。
だが、その手の先には既に肉塊が握られていた。
良く見ると…小さな女の子だった、これは凄く不味い..幾ら綺麗でも人殺しは不味い。
美少女が..怖く見えてきた。
逃げよう..
目があってしまった…「私は..醜いかぁー」叫んでこっちに走ってきた。
僕は虐め等した事は無い。
だから殺されない。
逃げきれないから向き合った。
「私は醜いかぁー」
「…綺麗です」
「私は醜いかぁー」
「可愛いです」
手を視界に入れない様にして彼女だけをロックオン。
顔だけ見ていれば凄い美少女だ、大人っぽくて本当に綺麗だ。
「私は…醜いか…」
「スタイルも良いし..うん凄く綺麗」
「私は..」
「綺麗で可愛いいし、スタイルも良いです..でも僕は普通の人間なので、その手に持っているのが怖いです」
やはり都市伝説の化け物なんだ..まるで人形を捨てるように投げた..川まで届いて沈んでいった。
「これで怖くないか..」
「うん」
「….」
「…」
「あの、その、本当に醜くない?」
「はい」
「どうしよう? 貴方は虐めとかしない人なのは解るの! どうしようか?」
「ひきこちゃんはどうしたい?」
「私は友達が欲しい、味方が欲しい、だれも私の味方になってくれなかった」
「良いよ、今から友達で」
「ありがとう」
雨の中一緒に遊んだ…
遊ぶと言っても何も無いから鬼ごっこしてただお話ししただけだ。
それだけで彼女は嬉しそうに笑う。
だけど、どうしても不思議な事がある。
僕の目に見える彼女は凄い美少女にしか見えない。
そして、怪異になる前の彼女は多分今の僕が見ているように他の人にも見えていた筈だ。
凄く綺麗な美少女で性格も良い..それなら何で虐めにあっていたのか解らない。
「複雑そうな顔..貴方が何を考えているから解るわ..だけどそれは友達だからこそ言いたくない! だけど復讐はもう終わっているわ」
だけど、さっき子供を殺していたよな..
「そう、それなら良かったね」
「うん」
「あはははっようやく終わる事が出来るわ..友達が出来たからもう未練がなくなっちゃったんだ」
そんな、また居なくなっちゃうのか…
「そんな、私が居なくなったら寂しい?」
居て欲しい..だけど僕がそれを言ったら、彼女はまた子供を殺し続けるのかも知れない。
「うん、寂しいけど我慢するよ..ひきこちゃんが幸せになるのが一番だよ」
「本当に優しいのね…もし貴方があの時、あの場所に居たら私はこうならなかったかも知れない」
「もし、今度生まれ変わって、君が僕の傍にいたら、必ず守ってあげる」
「ありがとう..さようなら」
結局行っちゃったか…
彼女が浮かばれるには友達が必要だった。
そして、僕は彼女のような友達が欲しかった。
どっちみち、僕と彼女は繋がる未来は無かった..
友達に不幸になって欲しいとなんて思わない。
幸せになると居なくなる怪異も多い。
どうすれば良いのか解らない..
「うっ寒っ..帰ろう」
トイレの花子さん 悔しい
今日は母さんも七海も居ない。
良かった、こんなに体調の悪い日に二人を見たら..余計体調が悪くなる。
僕は何をしているのか?
雨の中傘もささずにヒキコさんと遊んでいたから風邪をひいた。
そして、今現在トイレのドアを開けっぱなしで体の上半身をトイレ室に突っ込んで毛布を被っている。
「お兄ちゃんって酷いよね…他の女に会いに行って遊んだ挙句風邪をひいて花子に看病させるんだから」
別に頼んでない..だけど、そんな事は言えない。
ルイも昼間は動けないから、もっぱらこの家には花子と僕しか居ない状態だ。
だけど、こういう時に居てくれるのは凄く嬉しい。
周りは全部化け物なんだ。
そんな中でちゃんとした人間に見える彼女に看病して貰えるのは..確かに嬉しいんだ。
「花子ちゃん..ありがとう」
うん、彼女はトイレからは長い時間は出られない..だから看病っていっても洗面所でタオルを濡らして額に当ててくれるだけだ。
「あーあ、私って便利な女みたい..」
「ごめんね..だけど、僕は花子ちゃんに出会えて嬉しいよ..今僕が居る世界で花子ちゃんが居なかったら..僕はもう..」
何、それ..えっ愛の告白?..その続きは何かな..だけど辛そう..お兄ちゃん可哀想。
仕方ないな。
トイレから出られないのが辛いよ。
私にはこんな事しか出来ないんだもん。
私はお兄ちゃんの頭を抱えると膝枕をした。
それ以上私はお兄ちゃんにしてあげられないから。
トイレの花子さんなのが悔しい..トイレから出られないのが悔しい。
こんな時に、冷蔵庫から氷も持ってこれない、おかゆも作れない..
なんで、ただの花子じゃないんだろう..
花子は初めて「トイレの花子さん」が悔しいと思った。
隙間女か八尺様に逢いたい
花子の看病のお陰で熱が下がった。
カルトな物を除くと案外女性絡みの都市伝説って少ない。
色々調べても解らなかった…だけど、ネット仲間の友人がアドバイスをくれた。
メリーさんの電話 隙間女 くねくね 六尺様 の4種類だ。
この中で、くねくねは駄目だな..地域が限定されているし…他の話と違い女と特定されていない。
もし、女性で可愛くても話も出来ない様な奴だから会話に困る。
そう考えると、メリーさんの電話 隙間女 六尺様の3つ。
メリーさんの電話はお人形だよな?
そう考えると、隙間女と六尺様しかない。
どちらにすれば良いのかな?
隙間女は
一人暮らしをしているある青年が部屋の中でだれかの視線を感じた気がした。
もちろん、部屋には彼の他にはだれもいない
。
気のせいかな、そう思って彼はそのことを忘れてしまった。
ところが、その日以来彼は毎日のように部屋の中で 誰かに見つめられているような気がするようになる。
彼の部屋はアパートの3階(4階)なので外から覗かれているとは考えにくい。
部屋のどこかに誰かが隠れているのではないかと思い家捜しをしても見たけど見つからなかった。
後日、 彼の部屋のタンスと壁の間にある僅かな隙間の中に女が立っており、じっと彼を見つめていた。
八尺様は
八尺様とは、ある村に封印されていた、正体不明の女の姿をした怪異でという話だ。
気に入った男に付き纏い、魅入った人間を数日のうちに取り殺してしまうという。
成人前の若い男性、特に子供が狙われやすいとされ、相手を誘い出すために身内の声を出すこともある。
容姿はバラバラだが2.4mのワンピーズを来た女性説が多い。
悩むな…理想を言えば隙間女なんだけど…
だっていきなり同棲からスタートなんて最高じゃん。
だけど、呪われた物件なんて探すの大変だ…
八尺様も…地方っぽい…
直ぐにはどうにか出来そうもない。
また掲示板頼みだ…
八尺様
掲示板に立て続けに書き込みがあった。
1件目は八尺様の居る地域や場所の書き込みがあり行ってみた。
結論から言うと駄目だった。
身長が2.4m、背が高い凄い美人だった。
ハリウッドスターを無理やり日本人にすればこんな感じだ。
「ぽっぽぽ、ぽ、ぽっ、ぽぽぽ…」
本来なら此処で逃げ出すのだが、僕の目的は逢いに来たんだ。
「あらっ、逃げないの?」
「貴方に会いに来たから」
「えっ私? そうじゃぁお話しでもしましょうか?」
そう言いながら、彼女は会話に詰まってしまった。
「自分から言い出したけど…私人と余り話した事はないわ」
よく考えたら彼女は怪異だから人と話す事は少ないだろう…
鬼ごっことかして見たが、彼女にはすぐ捕まるし…腕相撲も敵わない。
こんなデートしたら人間の女の子だったらすぐに怒って帰るだろう。
鞄の中にチョコレートがあるのを思い出してあげた。
「二人で食べた方が美味しいから半分こしよう」
そう言って笑った彼女の笑顔は凄く綺麗だった。
背が高い以外は凄い美人だ。
ただ見つめ合っているだけで…幸せな気分になる。
気が付いたら、辺りはもう暗くなっていた。
此処はかなり遠いけど、またどうしても逢いたい。
「また会ってくれますか?」
「私ね、凄く嬉しかった…追い払われないのも…優しくされたのも初めて…だから」
大きな体で僕を抱きしめて、軽くキスしてくれた。
「もう、会わない…私は相手を殺してしまう怪異だから…私の物にしちゃうと1週間で死んでしまうから」
「そう…」
「うん、だけど死にたくなったら言って…楽に死なせてあげる」
不思議に怖くない…僕が死ぬ時には死神じゃ無くて…こんな美人に迎えに来て貰える..うん怖がることは無い。
隙間女
隙間女の話の方は嬉しい事に、空き家の話だった。
友人が住んで居た借家のアパートに隙間女が住み着いて逃げ出すように引っ越した。
そういう情報だった。
しかも、この情報源の人の計らいで、荷物の運び出しが友人が怖がって出来ない為、家から外に荷物を運び出す条件で1日貸してくれる事になった。
次の日学校をさぼり、約束の家に行った。
小太りの男が居た。
「お願いします…」
顔が真っ青で此処にも居たくないそんな感じだった。
引っ越しも受けて貰えずに困っていたそうだ。
と言う事は確実に出るという事だ。
部屋の荷物を片っ端から外に出した。
「これで宜しかったのですか?」
「ありがとう」
カギを受取った。このカギは封筒に入れて不動産屋さんに郵送して欲しいという事だった。
後はテープを全部出る時に持っていく。
それだけ約束した。
「これ」
「なんですか?」
「お礼…」
紙封筒を渡すとその男は逃げ出すように居なくなった。
封筒の中には5千円はいっていた。
ラッキー…
今日は此処に泊まるつもりなので折角だからお弁当とお菓子でも買いこんでくるか?
コンビニで買ってきた…来てくれた分として全て2つ。
いよいよ部屋に入った。
部屋中の隙間がテープで張ってある。
可笑しいな? こんなに怖がる話だったかな..
テープを剥がしてこちらから探しまくった。
隙間から赤い服の美女がこっちを覗き込んでいる。
頭の中でペラペラな感じをイメージしていたが違った。
魚眼レンズで除いた感じに普通の女の子に見える。
ポスターみたいだったらどうしようそう思ったが違う。
「あの…」
「私に話しかけているの? あちこち覗き込んでいたけど探していたのかな?」
赤い服を着て黒髪の美女…
「探していたんだ、この部屋の隙間に美女が居るって」
「そう、それでどうだった?」
私は人によって見え方が極端だから..どうなのかしら?
「凄い美人だった」
「そう、良かった…それで此処に住んでくれるのかしら?」
事情を話した。
「そうか、此処に居るのは一日だけだなのね?」
「うん、どうにかして此処から出られないのかな?」
「それどういう意味?まさかお祓い」
「違う、出来れば一緒に住みたいんだ」
「あら、嫌だ、いきなり同棲の申し込み?」
「そうだけど…」
「本当? 初めてだわこんなの? 良いの?良いの?」
「勿論」
「やった..私もう離れないから..ふつつか者ですが宜しくー」
彼女が付いてきてくれるなら、此処にいる必要はないから、テープを持ってカギを掛けて撤収した。
家に帰ってきた。
「こんな遅くまで何やっていたの?」
ひたすら謝って許して貰えた。
これからは彼女が居る..これで恐怖が少し減る。
「ちょっとトイレに顔出しなさいよ..浮気者」
花子の声が聞こえてきたが、後にする事にした。
本当についてきてくれたのかな?
心配で部屋中の隙間を探した..嘘、居ない。
「あんた本当に私が好きなのね? 必死な顔をしちゃって」
「居てくれたんだ…ありがとう」
「居るに決まっているじゃない…私凄い寂しがりやなんだから」
「ロリコンの次は喪女か…貴方本当に変態じゃないでしょうね…」
「人形が喋った…なんで」
「貴方だって似たような物じゃない…」
「そうね…」
三人も普通に見える…いや綺麗な者に囲まれて…僕の生活はようやく..怖さから少し解消された。
僕のオアシス
僕は結局学校を辞めた。
その代り生きていくためにデイトレ等の投資や在宅でできる仕事を探して必死に働いている。
外の世界は怖い者ばかり…全てが化け物に見えるこの部屋こそが僕のオアシスだ。
あの後、必死に色々探したけ見つからなかった。
三人も手元に居てくれる…それだけでも奇跡かも知れない。
暫くして、家族は全員引っ越した…体調が悪くなったという事だ。
よく考えたら…この家には怪異が3つもある。
その一つでも大変な事になるのに3つ…耐えられないのだろう。
「健一はどうしても此処から離れないのね」
「お兄ちゃん出ていこうよ…ここ何だか可笑しいよ」
嫌、俺にはアンタたちが化け物だから..
「ごめん、俺は此処が良い」
結局、ここの家賃を僕が払う事でそのまま住み続ける許可をもらった。
お金を貯めて将来は此処を買おう。
トイレは6畳み位に広くして部屋にしよう…
部屋のあちこちに隙間をつくって綺麗に掃除..
豪華なドールハウスも買わなくちゃな…
「ほら健一膝枕してあげる..こっちに来なよ」
「トイレに来なさい..膝枕なら花子がしてあげる」
「私は..そうだ逆に頭に乗ってあげるわ」
元の世界に戻れない、世界は恐怖に満ちている。
だけど、此処だけは、この空間だけは…僕が見つけたオアシスなんだ。
此処があれば僕は生きていける。
【FIN】
あとがき
読んで頂き有難うございます。
変った物が書きたくて、今迄書いていた美醜逆転にスパイスを加えたつもりが..
思ったより全然書けなくて苦戦しました。
逃げるように、他の作品ばかり更新していました。
ただ、そろそろこちらも終わらせないとそう考えて執筆を開始しました。
ですが、思った以上に書けずに苦戦ばかりです。
それでも読んでくれる方が居るので頑張って書いてみました。
実は私は闘病中で偶に入院しているのですが、夜の病院でこんな内容でも都市伝説を書くのは少し怖いですね…
有難うございました。
また、別の作品で
石のやっさん