毎日が楽しい!
僕の名前は黒木翔、平凡な何処にでもいる普通の高校生だ。
だが、僕の僕の学園生活はとても輝いている。
まるで、そう小説の主人公みたいに毎日が充実しているんだ。
うん…凄く幸せだ。
「おはよう黒木くん」
可愛らしい綺麗な声から僕の朝は始まる。
この声の主は白百合さん、黒髪黒目の凄く可愛い美少女だ。
「おはよう白百合さん、いつもの様に手を繋いでも良い?」
出来るだけ爽やかな声を心掛けて返事を返す。
「黒木くんがしたいなら、いいよ、だけど私なんかと手を繋いで恥ずかしくない?」
誰がそんな事おもうのかな? 可愛い子と手を繋ぐなんて幸せ以外の何者でもないよね?
「何で、白百合さんと手を繋ぐと僕は幸せな気持ちになれるんだよ」
「そう、、なら良いけど」
白百合さんは俯いて、顔を真っ赤にしている。
「可愛いね、白百合さんは」
「もう」
この子は、白百合京子さん。背がちょっと低いけどおかっぱ頭で凄く可愛い女の子。
着物とか着ても似合いそうな感じかな、良く黒髪、黒目の浴衣とか似合いそうなヒロインって小説やマンガにいるよね、そんな感じ。
僕の知っている限り白百合さんより可愛い女の子は居ないんじゃないかな?そう思ってしまう
学園一、いや日本一可愛いと僕は思っている。
そんな子が僕の彼女なんだよ?信じられないよな。本当に
「おう、翔くん」
朝から、まるでイケメンキャラの声優の様な声で挨拶がされる。
「東吾くんおはよう」
この声の主は東吾くん。日本最大の企業北條グループの会長の息子。その事を言うと嫌な顔をするから言わないけど、凄いよね。
最初出会った時には凄く喧嘩したけど、今では良い思い出だね
僕から見たら物凄いイケメンでかっこよい。頭も良いしスポーツも万能。神は二物を与えないなんて嘘じゃん、本当にそう思う。
正直いって【羨ましい】と何度喉から出かかったか解らないよ。
良く女の子に囲まれている。これで性格が悪ければまだ良いんだけど、性格まで良いときちゃ文句も言えないよね。
最初、物凄く絡まれていたけど、間に白百合さんが入ってくれてからは友達となった。
他の人は呼び捨てなのに僕には「くん」をつけてくれる。これは親友の証なのだそうだ。
「おはようございますわ 黒木様」
「おはようございます。金剛さん」
アニメで言うなら貴族令嬢様な感じの声のとんでもない美少女。
僕はアニメに余り詳しくないけど、えーと縦ロールっていうんだっけ貴族のお嬢様の髪型。
それが彼女には良く似合っている。
彼女の名前は金剛里香さん。東吾くんには及ばないけど、日本を代表する企業の正真正銘お嬢様。
最初は車で学園に通って来ていたのに、今では何故か徒歩で通っている。この学園の生徒会長。
白百合さんが可愛いと言うのなら、この人は美人と言う言葉が良く似合う。
【麗しの生徒会長】と言えばいいのかな。
良く【語尾にですわ】という言葉をつけているけど、王女様や貴族の様な里香さんには似合っていると思う。
「おはよう 翔君、今日も元気だな」
「おはようございます。東条さん」
彼女の名前は東条楓さん。 この学園の副会長で剣道部の部長。見た感じは正にクールビューティー。
カッコ女性その言葉が一番似合う様な気がする。剣道では大きな大会でも良く優勝している。
それなのに生徒会の仕事ちゃんとこなせている、本当にどれだけハイスペックなのかな、そう思ってしまう。
「おはよう お兄ちゃん」
「おはようございます 西城さん」
彼女の名前は西城歩美ちゃん。お兄ちゃんって呼んでくれるけど、本当の兄妹じゃない。
凄く可愛いから、お願いしたら、そう呼んでくれるようになった。
生徒会の書記をしている。背が低い白百合さんより背が低い。
見た目まるで小学生の女の子。僕はあまりそっち系の趣味は無いけど、子役の子なんかより絶対に可愛く見える。
もし、本当に兄妹で、こんな妹にお兄ちゃんなんて呼ばれたらもうメロメロになるだろう。
多分、彼氏なんて連れて来たら…多分ショックで寝ちゃうな。
最初、大ゲンカをしたけど、その場で仲直りした。
たまに同い歳なのに「お兄ちゃん」って呼んでと頼むと仕方ないなと笑って呼んでくれる。
こんな人達が僕みたいにかっこ悪い男の子に構ってくれるんだ…毎日が楽しくて仕方ない。
怪物カーニバル ~ある少女の日記より~
今日も朝から悲しい光景を私たちは見ている。
なんでこんな悲しい物を見なくてはいけないのかな。
この世界で凄く貴重な男の子。
その中でもこんな綺麗でカッコ良くて優しい男の子は他には居ない。
まるで王子様の様な男の子…黒木翔様の…怪物カーニバルだ。
この世の中は、男不足で、男女比が1対10になっていて女の子には凄く不利になっている。
だから、女に生まれたら死ぬ気で恋愛を頑張らないと男の子を手にする事は絶対に出来ない。
そう10人に1人の選ばれた女性しか結婚や恋愛は出来ない、いやかなりの男性は女が嫌いだから、実際には30人に1人かも知れない。
そレ程までに、貴重な男子。その中でも本当にダイヤよりも遙かに貴重な美少年…それが翔くんだ。
学園一の美少年、もしかしたら日本一の美少年を化け物のような女が独占しているんだ。
嫉んでも仕方ないよね。
白百合京子は黒木君の彼女だ。
いつも羨ましい事に黒木くんと手を繋いでいる。
これが可愛い子なら納得がいく。仕方ないと我慢もするよ。
だけど、彼女はどう見ても可愛いとは言えない、同性の私達からみても気持ち悪いんだよ。
座敷童にしか見えない、言っておくけど、可愛い描写のではなく、怖いほうのね。
目は確かに大きいけど、出目金のように見える、ホラー映画やマンガで見開いた目の子とかいるじゃん、そんな感じ。
確かに肌も白いけど、綺麗な感じで無く病的な青白い感じにしか見えない。
だけど、黒木君はそんな彼女の手をはにかみながらいつも握っている。
そういう風にして貰えるなら私だって頑張るよ?
朝早く起きてお風呂に入ってメイクだってするよ?
なのに、その笑顔は、多分学園で不細工な女たちにしか向けられない。
北條東吾は学園で唯一嫌われている男だ。
男だったら、正直言って勝ち組の筈なのに此奴とだけは付き合いたくない。
はっきり言ってキモイの一言しかない、幾ら男不足でも薄気味悪い男となんて付き合いたいとは思わないだろう。
此奴とは、男女比1対10でも結婚なんてしたくない、本当にそう思う。
こいつと結婚する位なら一生処女で良い、多分他の女もそう思っている筈だ。
そこまで思いたくなるくらいキモイんだよ? こんな男は他には居ないよ。
しかも性格まで悪いから、男子にも女子にも友達は誰もいない。
その事が解っているから金持ちの親は此奴にに月に300万も小遣いを与えている。
お金でつる以外に友達が出来ない。そう考えたんだと思う。親も最低な人間だよね。
たまにお小遣い欲しさから女子が付き合う事もある。
だけど、お財布がわりなので、欲しい物が無ければ絶対に付き合わない。
見ているだけでキモイ、ATMと思わなくちゃ関わりたくないよね。
なのに黒木君は親友になってしまった。
ただ、不思議な事にこんな最悪な男が黒木君にはとても優しいんだ。
金剛里香、やたら偉ぶっている陰湿な生徒会長。
何を勘違いしているのか成金の娘の癖に、大した家柄でも無いのに、貴族の様な喋り方をしている。
不細工なくせに縦ロールにして痛々しいったらありゃしない。
確かに頭は良いかも知れないよ、仕事は出来るかもしれないよ。
だけど、ちょっとした事で凄く癇癪をおこして怒る様な人を誰が認めるのかな?
ブサイクで性格がきつい此奴には友人なんて生徒会以外にはいない。
だけど、此奴も黒木君には優しい。
東条楓
確かに剣道も強いし、しっかり優勝もしている、生徒会の仕事もしっかりしている。
だけど、どう見てもカマキリにしか見えない様な顔をして、何時も怒っている。
性格も強烈でいつもネチネチ怒る様な人間
こんな性格が最悪な人間誰が付き合うっていうのかな?
その性格が災いして、剣道部は此奴1人しかいない。
西城歩美
生徒会の書記をしている。
良く子供みたいな言葉を使っているが物凄く痛い。
確かにロリといえばそうかも知れないが、子供の様な可愛らしさは皆無。
不細工で小生意気なガキにしか見えない。
もしこんな奴が自分の子供だったら…すぐ捨てていると思う。
こんな怪物みたいな中に黒木君はいる。
この世界は一夫多妻だ、この中に入ってやっていける自信は私達にはない。
黒木君は黒魔術でも掛けられているんじゃないか?そう思うってしまう。
実際に、そんな噂もある。
もし、呪いなら解けてくれないかな?
本当にそう思うばかりだ。
黒木くんLOVEな女の子の日記より。
白百合京子 弁友 ~私に天使が舞い降りた~
私の名前は、白百合京子。
いわゆる私は恋愛弱者です。
ただでさえ男女比が1対10なのに、その女の子の中でも私は群を抜く不細工に生まれてしまった。
背は低いけど、スタイルは悪くない。後ろ姿だけなら女性の中でも綺麗な方かも知れない。
たまに後ろから私をのぞき込む男の子がいるんだけど…私の顔を見たら大体が顔を顰める。
なんでこんな不細工に生まれてきたんだろう…お母さんも妹も美形なのに私だけが家族でブサイク酷いよ。
男子でも女子でもは態々「気持ち悪い」「キモイ」そう言いに来る人までいる…知っているよ、自分の事だもん。
ついたあだ名は呪いの市松人形。どれだけ可愛くないかがそれで解ると思うな。
別にもう良い、諦めがついたから。
恋愛なんて物は、可愛く生まれた女の子が熾烈な争いの果てにようやく手に入るもの。
そして、手に入ったとしても油断したら直ぐに他人に取られてしまうもの。
つまり、物凄く可愛い女の子でさえ、愛して欲しいなら一生努力しなければならないんだ。
私みたいな不細工ははスタートラインにも立てない。
そう、諦めるしかないんだよ。
今日も恋愛強者がベンチで男の子達にお弁当を食べさせている。
どのお弁当も凄く豪華な物ばかりだ。
女の子の親が恋愛を応援する為に老舗の仕出し屋やデパートで購入してきた物や、有名焼肉店の丸上宴のマツザカ牛カルビ弁当。
どれ一つとっても5000円以下の物はないと思う。
「このお弁当はどうかな?」
「どうかなって いつもと同じ黒田屋の仕出し弁当でしょう、何も感じない」
「そう、他に食べたい物があったら、何でも言ってね用意するから」
「ああ、」
いいなぁ…羨ましい。男の子に我儘言って貰えるなんて、一度で良いから私に給仕させて貰えないかな。
私には一生縁が無い物だよ、解っているけどね。
妄想位は良いじゃない。
私は、周りから見えない端っこ陣取り、木に寄りかかって体育座りをしながらお弁当を食べ始めた。
ここは向こうからは茂みで隠れて見えないが、こちらからはお弁当を食べさせて貰っている、男の子が見れる絶景のスポットだ。
いいでしょう? この位は。モテない女が覗き位したって、神様だって許してくれるよね。
だが、この日は何時もと違っていた。
「駄目だよ、可愛い女の子がパンツなんて見せちゃ」
あれっ妄想しすぎたのかな? 男の子の声が聞こえるよ…私可笑しくなったのかな?
それより、誰だろう? 男の子にパンツなんて見せた女の子は。
そんな物、見せて怒鳴られたり怒られたりしないなんてどれ程の美形なのだろうか?
私は、周りをキョロキョロ見回した、どんなリア充なのか気になったからだ。
すると、複雑そうな顔をしている…天使がいた。
本当の天使じゃないよ? まるで王子様か天使にしか見えない、それ位の美少年という事だよ!
「だから、女の子がパンツなんか見せてたら駄目だって」
そう言うと天使は近づいてきて、開いている私の足を手で閉じた。
嘘、男の子に…足触られたの…
「えっ 私?」
周りからはクスクスと笑い声が聞こえてきた、醜態をさらしていたのは私だったんだ。
そうか、この天使の様な男の子は私のパンツが見えて不愉快だから注意しに来たんだ。
男に文句なんて言えない。それどころか怒鳴らないだけまだマシななのかも知れない。
いやそれ以前に私なんかが口ごたえしたら、周りの女子から何されるか解らない。
「ごめんなさい、不愉快な物を見せて」
「別に不愉快じゃないけど、女の子なんだから気を付けないとね」
天使の様な男の子は笑っていた。
えっ話してくれるの? しかも、笑顔で、私、挨拶だって男の子から返して貰った事もないのに。
「ブサイクな私の汚い物を見せてごめんなさい」
男の子相手だしっかりと謝った方が良いよね。
「いや、何でそういうこと言うのかな? 凄く可愛いと思うし、その眼の毒だから注意しただけなのに」
「本当にごめんなさい…もうしません…あれっ可愛い?」
可笑しいな…反応が違う気がする【可愛い】多分聞き間違いだよね。
「そうだよ、可愛い女の子がパンツ丸見えでお弁当食べていたからさぁ注意しただけだよ?」
「そ、そう…」
不味い、顔が真っ赤で喋れない。男に耐性が無いから…どうしよう..
だけど、これは多分虐め何じゃないかな?
不細工な女を「「可愛い」って」褒めちぎって調子に乗ったら「はぁ何言ってんの不細工」とか「豚が何勘違いしているの」という様な酷い言葉を浴びせる残酷な遊びが確か一部男子で流行っているって聞いた事がある。
私、何か気に障る事をしたのかな?
ただ、パンツを見せただけでここまでしないよね? するよね、こんな不細工のパンツを食事中に見せたらんだから怒られても仕方ないね。
だけど、やり方が気に食わないよ…男の子なんだからさぁ「見苦しい物見せるな」って言えばいいだけなのに。
どうせ、後で罵声を浴びせられるんだろうからセクハラしてあげるよ。
「ごめんなさい、お詫びにソーセージをあげるから許して…はいあーん」
これでこの陰湿な遊びを辞めるだろう。
この箸で私はお弁当を食べていた。つまり、この箸には私の唾液がついているんだから、このソーセージは食べられないよね。
こんな間接キスみたいな事。そんな事できるのはリア充の中でも本当に一部だけ、私は見たことが無い。
ほらね、周りの女が唖然として手を止めて見ている。
さっさと怒ってあっちに行きなよ。
「えっくれるの? 有難う」
嘘、ソーセージを美味しそうに食べている。
周りの女の子は驚いて、ポカンと口をあけて見ている。
そりゃそうだ、普通男女の食事と言ったら、男性が食事をしているのを女性が給仕するだけだ。
ただ、お弁当を渡して少し離れて見ている。 喉が渇いてそうだなと思ったらさっと飲み物を差し出す。その位だ。そして食事は一緒にはとれない。昼休みは男の子に全部使い、次の休み時間に自分達は食べる、これ以上の事が出来る人など殆ど居ない筈だ。
「嘘…食べた」
「そりゃ食べるよ。そうだ、これお返し、はい」
彼は私にパンを差し出した。ただのコッペパン、だけど、それにはしっかりと天使の様な男の子の歯型がついていた。
多分、この一口はオークションにでも掛けたら30万円は降らない筈だ。
そんな凄い物を彼は私に差し出して来たんだよ? 固まるのも仕方ないよね。
そしたら、何を勘違いしたのか彼は「ごめんね、転校したてでお弁当用意してなくてパンと牛乳なんだ」恥ずかしそうに笑った。
「そんなこと無いよ?でもいいの?」
男の子が口にした物をくれるなんてありえない。
私は多分、気を緩めたら気を失ってしまうかも知れないし、鼻血を出して倒れる醜態を晒すかも知れない。
「はい、あーん」
「あーん」
「牛乳も飲む?」
このストローもそうだ、彼の唾液がついている、凄い貴重品だ。
いいの、本当にいいの?間接キスだよこれも?
「の飲む、飲ませて下さい」
「はい」
彼はパンと牛乳で足りているのかな、多分足りていないよね。
あげると言ったら私のお弁当食べてくれるのかな?
「あの…良かったら私のお弁当食べる?」
「くれるなら、貰うよ、、本当にいいの?」
「はい」
「丸ごとはないわ」
えっ食べてくれないの? 食べかけじゃ嫌だったのかな?
そりゃ、そうだ、だけどこんなチャンス見逃せない。
「ごめんね、コンビニで何か買ってこようか?」
「何言ってんの? 半分こして食べようよ?」
これは…夢でも見ているのかな? 男の子と一緒の食事、そんな夢物語、小説位にしかないよ。
その後、本当に、お互いにあーんをしながら食べた。
周りの女の子は、血の涙を流すような顔でこちらを睨んでいた。
こんな事はフィクションの世界にしか無い。
頬まで抓っている女の子も居る。
知らないよ、そんな事は、だって私も何が起こったのか解らないんだから。
夢の様な、楽しい時間はあっという間に終わってしまった。
「そう言えば、名前をきいてなかったね」
「そうだね」
これはただの夢、もうこんな奇跡は二度と起きないだろう。
ただの彼のきまぐれだろうね。だけど一生分の幸せを感じたからもういいや。
「僕の名前は黒木翔って言うんだ。 えーと名前を教えてくれる?」
「白百合京子です…」
ただ、きっと聞いただけだと…思う。期待なんかしちゃだめだよ。
「じゃぁ白百合さん、これからもよろしくね」
「えっ…それって友達になってくれるという事なの?」
本当なのかな..あり得ないわ。
「もう友達になったと思ったんだけど、、駄目?」
「駄目じゃない…むしろお願いします。」
「うん、いいよ」
「それじゃ、明日も一緒にお昼食べてくれる?」
「喜んで」
こうして私の夢の様な日々が始まった。
白百合京子 奇跡の様なお昼の時間。
私は、今日全速力で学校を後にした。
本当に急がないといけない、急がないと間に合わなくなっちゃう。
早く帰らないとお母さんがデパートに行ってしまうから。
周りの目なんて気にしてられない。
心臓がドキドキして張り裂けそうだけど、構ってなんていられらない。
早く、速く、体の限界を無視して走った。
ようやく、家に着いた時にはお母さんはカギを閉めて出かける所だった。
「ハァハァ~待ってお母さん」
どうにか間に合った…本当に良かった。
「どうしたの京子、そんなに息せき切らして」
「わ、私の分もお弁当買ってきてください」
「なぁに、貴方も食べたいの? だけど駄目よ、奈々子の弁友のボーイフレンドの分なの。奈々子が食べるのとは違うのよ」
「違うよ、私もようやく弁友が出来たの、だからお願いだから買って!」
「そうなの、まぁいいわ、そういう事なら貴方の分も買ってくるわね」
この子に弁友ねぇ~どんな子なのか、まぁ良いわ。
「ありがとう、お母さん」
「いいのよ、頑張って」
その日の夜。
奈々子は明日のお弁当の確認をしていた。
弁友がいる女の子には、一番気を使う時間だ。
「お母さん、何時もの四越デパートのお弁当買ってきてくれた」
「ええっ買って来たわよ」
「ありがとう、知君はこれしか食べないからごめんね」
この世界の男は甘やかされ【食に煩い】
その為、指定された食事を用意する、これも弁友を持つ女の子の仕事の一つだ。
「いいのよ、奈々子の為だもの、そのまま頑張って落として頂戴ね。その為なら母さんなんでもするわよ」
母親にとっても【息子】を持つのが一つのステータスになるから全面的に協力する。
「ありがとう、知君は普通の男の子だから競争相手も多いから大変なんだ、お母さん手伝ってね」
「はいはい」
「あれっお母さんお弁当が二つあるよ」
「それがさ、京子もようやく弁友が出来たみたいなのよ、だから同じ物買ってあげたの」
「お姉ちゃんが? 不細工なのに?」
「そういう事言わないの、多分相手の子もきっと不細工なんだと思うわ。だけどあの京子にようやく弁友が出来たのよ、応援してあげなさい」
「そうね、お財布代わりでもあのお姉ちゃんに男の知り合いが出来たんだから応援してあげなきゃ…だけどお母さん、お姉ちゃんの学校には北条東吾って、有名な不細工男子もいるんだけど…それじゃないかな?」
「まぁ京子は不細工だから、ブサメンの北条東吾でも仕方ないわ、そうねあの人なら京子でも付き合ってくれるかも?、まぁいずれにしても、奈々子、京子に男の人との付き合い方を教えてあげなさい」
「わかったわよ、お母さん…だけど私はあの人をお兄ちゃんって呼ぶのは嫌だな」
「そう言う事言わないの…京子だって家族なのよ」
「はーい」
この世界は何処までも男に甘く女に厳しい。二人の母、佐和子は昔、子役出身の国民的アイドルだった。
「佐和子の朝」という彼女主演のドラマは国営放送でも有名な連続ドラマで視聴率が38%を占める程。
そんな佐和子にしても、何とか物に出来たのは陰気で不細工な男だった。
それでも、それはこの世界では勝ち組。
男女比1対10の世界だから、単純に考えて10人に1人しか男を手に入れる女は居ない。
しかも、その貴重な男の多くは女性が嫌いだから結婚できる女性は恐らく3%位しか居ないのかも知れない。
そんな世界でSEXをして子供を作ったのだ、幾ら相手が不細工でも間違いなく勝ち組と言える。
結婚した後も佐和子は男に尽くした。
男が喜ぶ事の全てを考え心から尽くした。
だが、ある日男は「もう飽きた」そういって家を出て行ってしまった。
昔の自分に似た奈々子。この子は昔の自分にそっくりな美少女だ。
頑張れば、必ず男を手に出来るだろう。
まぁ今は少し高望みして、普通の男の子と付き合っている。
普通のレベルの男は競争相手も多く、金持ちの女も多い。
不細工ならまだしも、普通レベルの男の子なら女なんて幾らでもとっかえひっかえ出来る。
険しい恋だけど母として応援してあげようと思う。
逆に京子。この子は凄くブサイクだ。スタイルは昔の私みたいに良いのに、顔は陰気なあの人そっくり。
女の子としては終わっているわね。
だから、今まで女の人生を諦めていたはずだった。自分でも解って筈なのに、ここにきて弁友が出来た。
こんな子と付きあってくれるのだ、きっと不細工なはずだ、もしかしたらブサメンで有名な北条東吾かも知れない。
そうでなければ、お小遣い目当ての子かも知れない。
それでも、この子みたいな女の子は普通は相手にしない、件の北条東吾は別だけど。
北条東吾以外なら、多少のブサメンでも月15万円位までなら出してあげても良いかも知れない。
そう思った。
「お母さん、お風呂あがったよ」
「そう、随分ゆっくりだったね」
「うん、隅々まで洗っていたから」
「お姉ちゃんの弁友ってどんな人?もしかしてブサメンで有名な北条東吾だったりして…」
「違うよ!うん、私には勿体ない位、かっこよい人だよ王子様みたいにね」
「そうなんだ、写真とかある?」
「流石にそこ迄はまだ…」
「そう、じゃぁ今度撮ったら見せてね」
流石にハードルが高いよね、私だって一緒に写真を撮ってもらえるまで半年以上かかったんだから。
絶対に知君には敵わないわよね。だって知君は普通の男子なんだから。
可哀想だから比べないようにしよう。
「わかったよ。写真撮ったら見せるね」
「お母さんにも見せてちょうだいね」
「うん」
多分、見たら吃驚するだろうな…
【次の日の昼休み】
白百合京子はソワソワしていた。
何時もは惨めったらしく独りで食べていたお弁当だが、今日からは弁友がいる。
しかも、その相手は超がつく程のイケメンなのだ京子でなくてもソワソワするに違いない。
まして、京子は男の子とは無縁の生活を送っていたのだから、その喜びは一際大きい。
待ち遠しくてチャイムが鳴ると、すぐに教室を飛び出した。
少しでも良い場所を取る為には必要な事だ。
事実、ベンチがとれなかった為に男の子の機嫌が悪くなる、そんな事もある。
京子の狙いは日当たりが良い端っこ、それ程までに熾烈な場所じゃない。
約束の裏庭につくと、失敗がないように、すぐに持ち物をチェック。
母が用意してくれた四越デパートの弁当OK。
ウーロン茶、お茶、コーラーOK。
レジャーシートOK、うん、忘れ物は無いよね。
私がお弁当をチェックしていると待ちに待った黒木君がきた。
「白百合さん、もしかして待った?」
「待ってないよ?今きた所」
「そう、なら良かった」
「うん、それじゃ用意するからちょっと待ってね」
「凄いね白百合さん、レジャーシートまで持って来たんだ、凄いね」
「勿論、今支度するから待っててね」
「僕も手伝うよ」
うわぁ、周りの目がちょっと痛い。
確かに驚くよね、こんな風に手伝ってくれる男の子なんて普通はいないもんね。
「はい、これ早速食べて」
「あれっ何で白百合さんは食べないの?」
不思議そうな顔で黒木くんが見つめてくる。
きょとんとしてて凄く可愛く見える。
「男の子の給仕をするのが普通だと思うんだけど?」
「えぇーそれじゃ楽しくないから一緒に食べようよ」
「いいの?」
えーと、これは何処かのライトノベルか少女漫画なのかな?
男の子と一緒に食事…信じられない。
「いいの、いいの」
黒木くんは軽く流すけど…これ凄い事だよ?
「じゃぁ早速、食べよう」
「白百合さん、それ何?」
「これ、黒木君に喜んで貰おうと思ってデパートで買ってきて貰ったんだよ?」
「確かに、美味しそうだけど、僕は白百合さんの手作りの方が嬉しいかな」
これは夢に違いない…もしかして私まだ家で寝てるのかな?
「女が手に触れた料理で良いの?」
男は女を基本嫌っていて女が手に触れた物は基本食べたりしないはずなんだけどな。
「白百合さんなら気にならないかな。むしろ嬉しい」
「本当、じゃぁ明日から私作ってくるね」
「ごめんね、催促したみたいで」
「全然、むしろ嬉しい事だから」
男の子にご飯を作るなんて少女漫画かドラマとかの架空の話だと思っていたよ..実際に奈々子ですら、ううんお母さんですらした事が無いんじゃないかな?
「それじゃ、僕もお弁当を作ってきたから一緒に食べようか」
から揚げにハンバーグに卵焼きとサンドイッチがあった。
「これ黒木君がつくったの?」
「うん、美味しいかどうか保証はしないけど」
私の為のお弁当…幸せ過ぎだよ。
【周り】
「私、幻覚を見ているのかな? あそこに手作り弁当を持っている男の子がいるよ」
「私にも見えているから幻では無いと思うけど…信じられない」
「いいな、あれ…」
【男がつくったお弁当】
この世界で料理をする男は殆どいない。男女比1対10なので男は基本何もしないのが当たり前だ。
傲慢な性格が多いので家事なんてする男はいない。
実際に男が握るおにぎりやさんが過去に話題になったが、おにぎり一個1万円でも繁盛していた。
それでも店主の男は面倒くさいと閉店した。
また、一部上場企業の社長の夫は妻の為にレトルトのお味噌汁を入れてあげるのだそうだ。
ただ、お湯を入れるだけのお味噌汁。それでも男が作ったというだけで手料理でその価値は高い。
もし、本当に男が作った物なら、お湯に塩を入れただけの物をスープです。と出されてもお金を出す女は山ほどいる。
「本当に食べて良いの?」
「白百合さんの為に作ったんだから食べて貰わないと困るかな」
おいしいよ、おいしいよ、おいしいよ、おいしいよおいしいよ、おいしいよおいしいよ、おいしいよ
こんな経験普通はあり得ないよ?
「白百合さん、そんなに急いで食べなくても」
「あっごめんなさい」
「まぁ、嬉しいけどね、それより、はいお茶」
「ありがとう」
【周り】
「なにあれ? まさか、あれ男の手作り弁当なの?」
直接見たにも関わらず、未だに信じられない子すらいた。
「嘘、あれが彼の手作りなら10万円だって出すわよ」
「何、馬鹿な事言っているの? アレを彼が作ったと言うなら相場は30万~のオークションでしょう」
「あっ、今お茶を注いでいたわ、男が給仕するなんて信じられない」
「何、あれ…私は夢をみているのかな?」
「どうだった、白百合さん」
「とっても美味しかった」
男の子が作ったお弁当が不味いなんてあり得ないよね。
例え、デスソースまみれでも完食しちゃうよね…しかも本当に美味しいんだから。
驚きだよ。
「そう、それは良かった。所でこのお弁当半分食べてくれない?」
「どうして、美味しくなかった? ごめんなさい」
「違うって、ただ流石にお重は多すぎるよ」
「要らない物は残して良いよ?」
「残すのは勿体ないから、食べるの手伝ってね、、、はい、あーん」
「あっ あーん」
このあーんはずるい、こんな事されたら、女なら例え吐く程苦しくても食べてしまうだろう。
結局、私は黒木君のあーんに負けてお腹一杯を通り越して食べさせられてしまった。
「「ごちそうさまでした」」
「そうだ、黒木君お願いがあるんだけど」
「うん、何」
「一緒に写真を撮って欲しいんだけど?」
「僕と?」
「駄目だよね?」
流石に駄目だよね。
【周り】
「あーああいつ勘違いしちゃって、男が簡単に写真なんか撮らせるわけないのに」
「あれで嫌われるよ、馬鹿だよね」
「うん、僕で良いなら、、せっかくだからくっついてと、スマホ貸してくれる?」
【周り】
「嘘だ、あんな男がいる訳がない」
「だけど、あれ」
うっそ、肩組まれちゃった。こんなのってあるの?
そして黒木君はポーズを取ると3枚シャッターを切った。
「はい、これ」
「あああああああありがちょう」
私が動揺して噛んだのは仕方ないと思う。
「はい、次は僕の番」
再び、黒木君に肩を抱かれる。
そして黒木君は自分のスマホで同じような写真を撮った。
私は顔を真っ赤にして固まってしまった。
「ごめん、馴れ馴れしかったかな、嫌だったよね?」
そんな事ある訳がない。女ならお金を積んででもして貰いたい事だ。
「そんなこと無い」
それしか言えなかった。
「これ、待ち受けにするね」
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
これは夢だ絶対に、だがつねった頬っぺたは凄く痛かった。
「白百合さん面白いー」
彼の楽しそうそうな黒木くんの笑い声が聞こえてきた。
白百合京子 家族
はぁ~夢みたい、今迄の不幸が嘘みたい。
今でも信じられないよ~
「お母さん、明日から私の分のお弁当は買わなくていいわ」
「あらっ可哀想にもうフラれちゃったの?」
「まぁ、お姉ちゃん1日だけでも良かったじゃない? 良い思い出が出来たんだから」
普通はそう思うよね。
嫌味じゃ無いのは解るけど酷いな、、男と触れ合える、それだけで幸せなんだから。
一緒に食事をした。それだけで1週間は自慢できる…だけど違うんだよ。
この幸せはまだまだ続くんだから。
「違うよ、ただ黒木君は、既製品より手作りが食べたいんだって、だから、明日から頑張って作るんだよ」
「京子、それ本当なの?」
佐和子は信じられない、男が女の作った手料理を食べるなんて普通ならあり得ない。
事実、自分の経験でも、手料理を食べて貰う様なことは人生で3回位しかない。
「お姉ちゃん、もしかして夢でも見ているのかな? 幾ら相手が不細工な男でも、それは無いって」
「だけど、本当だから、だからお母さんお弁当の材料だけお願いできないかな?」
「いいけど…本当なのね?嘘だったらお母さん許さないわよ」
「嘘は言わないよ」
「じゃぁ準備してあげるわ、、可愛い娘の為ですものね…嘘じゃ無いのね?」
「うん」
「でも、本当なら外見はともかく性格は随分良いのねお姉ちゃんの弁友って」
「むうっ 外見だっていいもん」
「何、膨れているのお姉ちゃん、幾らなんでも、流石に知くんみたいな普通の男の子じゃないでしょう?」
多分、黒木くんの写真を見たら驚くだろうな…
「じゃぁ、写真見てみる?」
「えっ、もう写真撮らせてくれたの? 凄く性格の良い人なのね、どんな男の子でも掘り出し物じゃない。京子は、チャンスが少ないんだから手放しちゃ駄目よ」
「本当そう思うよお姉ちゃん」
「はい」
「嘘、何この美形、合成じゃないのよね…肩まで組んで貰って、まるで恋人みたいじゃない。 京子これ本当にアプリとか合成じゃないのね」
こんな綺麗な男の子が京子の相手なの? どう考えてもあり得ないレベルの男の子じゃない。
「嘘だ嘘だ嘘だ…これ男優だって勝てない位美形じゃない。あれっだけど、これ可笑しいよ、やっぱり嘘だ、だって横にほら違うお弁当があるよ」
「横見て、ちゃんと私のお弁当もあるでしょう?」
「京子、これって、、そうすると まさか」
「うん、黒木君が私にって作ってきてくれたの?」
「京子、大金星、お母さん、こんな子にお母さんって呼んで貰えるなら何でもするわ」
「気が早いよお母さん」
「そうだ、お弁当の材料だったわね? これから、母さん、フォワグラとキャビアと松坂牛買ってくるわね」
「お母さん、知くんのお弁当は」
「チェ、ついでに買ってくるから良いでしょう」
「ついでって、、お母さん酷い」
「あのね、母さんは可愛い息子が欲しいのよ? 黒木君と智くんじゃ太陽と石ころ位の差があるじゃない?差があるのは当たり前でしょう?」
「だけど、知くんだって、、、あれっ確かに違うよね? 私が間違っていたかも。お姉ちゃん頑張って黒木くん落としちゃえ、応援するからさ」
よく考えて見れば、お姉ちゃんが黒木君を落とせば、私のお兄ちゃんになるよね?
そこから頑張って第二婦人になればいいじゃん!
だったら、知くんは邪魔だよね。
「本当に」
「勿論、お母さんもう知くんのお弁当は要らないや」
「やっぱり気が付いたのね?」
「勿論だよ、お母さん」
「そう、だったらやる事は一つ、全力応援あるのみだわ」
「了解」
次の日、知くんは男なのに【昼食抜き】という体験をしそうになったが、他の女の子が弁当を渡した為事なきを得た。
「お前なんか知らない」そう知くんは奈々子に言ったが、奈々子は気にしなかった。
白百合京子 ~夢の始まり~
ここ暫く、僕は白百合さんと一緒にお弁当を食べている。
白百合さんみたいな、美少女が僕と一緒にご飯を食べてくれるんだから、とっても嬉しくてしょうがない。
周りも僕みたいな奴がこんな完璧美少女とお弁当を食べているのが珍しいらしくよくこっちを見ている。
【周り】
「何で、あんな美少年があんな化け物みたいなドブスと付き合っているのよ」
「何で、何で、何で、何で あんな出目金女が食事係なの、手料理食べてくれるって何」
この世界の男は基本、女が作った料理なんて食べない。それこそ男に飢えた女に催淫剤でも入れられたら目も当てられない。
事実年間そういった事件は数件起きているし、睡眠薬で眠らされて誘拐される様な事件も起きている。
そうでなくても、女が触れた物を【汚い】と嫌う傾向が男には結構ある。
例えば、インスタントコーヒーを女が入れてそれを男が飲む位であればそれは婚約以上の信頼関係があると言える。
この世界の弁友(べんとう友達)はちゃんとした業者の商品をシュリンクが付いた状態で男性に渡すだけだ。
男性はこシュリンクを見て未開封かどうか確認してから手を付ける。
それでも一時とはいえ女が手にした物を食べて貰えるのはそれだけで他から見たら羨ましいのだが。
【周り】
「あのさぁ、、私がお弁当を作ってきたら食べてくれたりするかな?」
それを聞いた男は露骨に顔を顰めた、明かに不愉快そうに見える。
「する訳ないだろう? そんな事言うならもういい、他の子に弁友変えるからいい」
「ごめんなさい…」
「あの、1万円あげるからあの、あーんってやってくれない」
まぁ、長い付き合いだから仕方無いか…男は腹が立つのを押さえて、少しはサービスしてやるか。
そう思った。
「1万、ちょっと安すぎだろ。まぁ、君とは長い付き合いだから、1口3万円ならいいか」
「本当、じゃぁ明日9万円もってくるから3口お願いできるかな」
「仕方ない、ほれ」
「もぐ」
「ほれ」
「もぐ」
「ほれ」
「もぐ」
「じゃぁ、明日9万円もってこいよ」
これは男からして貰えたと考えたら、考えられないレベルのサービスだ、婚約まであと少し、そこ迄の関係を意味している。
横で黒木たちを見て無かったら、歓喜して喜ぶレベルだ。
「うん…持ってくるよ…」
なんか違う…むなしい…これちがうよ…贅沢にも彼女はそう思ってしまった。。
【黒木、白百合SIDE】
「今日はハンバーグを作って来たよ! これは母さん仕込みで自信があるんだ」
《お母さんに教わったの?》もしうちのお母さんと一緒に料理なんて作ったら…お母さん手が震えて料理できなくなるんじゃないかな。
「ふぇ、これもしかして、全部黒木君の手つくり?」
「うん、だけど僕はお子様メニュー位しか作れないから」
男の子の手料理のお弁当…これとんでもないよ。
こんな物、普通はどんなにお金を積んでも買えない気がする…本当に良いのかな?
【作れない】いぜんに【男の子が作った】それだけで、凄い価値があるんだけど。
「そんなこと無いよ? 男なのに此処まで作れるなんて凄いよ」
男性で料理が美味い、そんな男性滅多にいないよ。
「だけど、白百合さんなんて本格的なコースじゃない? これは僕には作れないよ」
「私みたいなブサイクな女のお弁当食べてくれるんだもん。この位」
「白百合さん、怒るよ」
「ごめんなさい、私何か怒らせるような事した、本当にごめんね」
「うん、した。僕は白百合さんが好きだから一緒にご飯食べているんだよ?」
「えっ」
「白百合さんは僕にとってはとっても可愛い女の子なんだから」
「えっえっ」
「誰でも、自分の好きな子を馬鹿にされたら怒るでしょう?」
「本当にごめんね」
どうしよう顔が真っ赤になって黒木君の顔が見られない。
私の事が【好きな子】なんて嬉しすぎる。
だけど、嫌われるのが怖い。
「駄目許してあげない」
手が震えだした。
「ごめんなさい、本当にごめんなさい、許して」
元の独りに戻りたくない。
【周り】
「あれ、絶対捨てられるね」
「馬鹿じゃないの? 調子に乗りすぎだってーの」
「じゃぁ許してあげるから、僕の言う事聞いてくれる?」
えっ、許してくれるんだ。
「何でも聞きます。だから…許して」
「じゃぁ、今日は一緒に帰る事」
ええっ。
「えっ、それって罰じゃなくてご褒美だよ?」
「そうなの、僕は白百合さんと一緒に帰りたかったんだけど邪魔かなと思って我慢してたんだけど」
えっ…聞き間違いじゃないよね。
「本当に?…じゃぁ、、例えば、毎日一緒に帰りたいって言えば帰ってくれるの?」
あははっ夢みたい。
「勿論、今日から一緒に帰ろうか?」
「うん」
此処までくると、もう現実じゃないみたい。
「白百合さんの家知らないから、帰りがけに教えてね?」
うん、これ夢見ているんじゃないかな?
「勿論、教えるよ 絶対に教える」
「もし、近かったら、朝も一緒に登校しようよ?」
そんな話、ライトノベルの世界しか知らないよ。
「本当に、本当?」
本当に夢みたい。
「うん、あの聞きづらいんだけど、白百合さんって友達が多いの?」
いない、居たとしても黒木くん優先だよ。
「余り居ないかな」
「だったら、白百合さんのクラスに休み時間とか遊びに行ってもいい」
凄くよいなぁそれ…
「いい、いいに決まっているよ」
「そう、じゃぁこれからは手加減しないよ」
「あの、手加減って?」
「さぁ、」
普通この世界の男性は例え付き合っていても一緒に登校したりしない。
そして学校では男から話し掛けられない限り女から話しかけないのが通常の光景。
一緒に登校するなんて光景は小説や少女漫画にしかない。
昔本当に仲の良い男女が一緒に登校したそういう話があった。
だけどそれは、男が歩く後ろをただ無言で歩いている。ただそれだけだった。
それから、私は夢の様な時間を過ごすようになった。
黒木くんの【手加減しない】ってこういう事だったんだ。
「白百合さぁーん、遊びに来たよ」
えーと、女の子を呼びつける男の子は稀にいるけど、向こうからくるなんて信じられないよ…クラスの皆は口開けてポカンとしているし。
「えっ 黒木君、本当に遊びに来てくれたんだ」
「うん、だけど休み時間って15分位しかないから、お話しをする位しか出来ないね」
男の子とお話しできる…女の子にとって、その【お話】が最高の時間なんだよ。
「そ、そうだね」
【周り】
「うそ、男が女の所に遊びに来るなんて…」
「ねぇ、あれが黒木翔くんか凄く美形…それが何で出目金に会いに来ているの?」
「嘘、嘘、嘘、幻覚が見えるよ」
確かにこんなの誰も信じられないと思う。
そして次の時間も黒木君はきてくれた。
その次の時間も…
本当に夢みたい。
そして、帰りは校門の所で私を待っていてくれた。
「黒木君、もしかして待たせちゃった」
「全然、待ってないよ? それじゃ帰ろうか?」
「うん」
黒木くんは私の手に自分の手を重ねるように握った。
「嫌じゃ無ければ手つないでもいい?」
良いに決まっているよ、それより手…汗ばんでないかな?
気がつかれないようにスカートで拭いた。
「うん」
私は顔を真っ赤にして何も喋れなくなった。
だって、男の子、それも超美形な黒木くんが私の手を握ってくるんだもん。
緊張して喋れるわけ無いよ。
だけど、これだけは女として伝えなければいけないと思う。
もし、勘違いだとしたら全てを失ってしまうかも知れないけど。
それでも、言わないといけないと思う。
正直、怖くて仕方ない。
「黒木君、大好きです。付き合って下さい」
本当は、不細工だけどとつけたかった。
だけど、黒木君はそういうと怒るから、普通に言うしか無いよね。
黒木君が黙っている。
この瞬間が凄く長く感じた、実際は数秒なのに、何時間にも感じる。
そして、私の手を離した。
やっぱり駄目だったんだ。
もっと可愛い女の子だったら、そう考えると涙が出て来た。
あれっ黒木君が手を握り直している。
これって…嘘、恋人繋ぎだ。
こんなの見た事もない…小説とかドラマでしかありえないよ~
「僕も、白百合さんが大好きです。付き合って下さい」
私は顔が真っ赤になって何も喋れなくなった。
黒木君はそんな私を手を引いて歩いている。
色々黒木君が話していたけど頭に入って来ない。
気が付くと私は家の前で黒木くんを見送っていた。
多分、私は世界で一番幸せな女の子だと思う。
世界中の男の子全員に不細工って言われても構わない。
だって、こんなにかっこいい黒木君がいつも傍にいてくれるんだから。
【雑学】この世界に置ける男の料理の価値
男の手料理なんて物はこの世界の女性まず食べる事が出来ない。
前の説明で少しだけしたが…
ただ男が握っただけの【おむすび】は1万円でも行列ができた。
どう見ても歪で、みそ汁もつかない、只の塩握りでだ。
ちなみに、インスタントの味噌汁に男がお湯を注いでだした。
カップ麺にお湯を注いだ。
それだけでも男が行えば手料理だ。
そんな物ですら、恐らく目の前で行うなら5千円位の価値はある。
ちなみにこんなエピソードがニュースになった。
女を嫌う男とはいえ、まだ子供の時はそこ迄ではない。
とある幼稚園で、おままごとをして遊んでいた。
男の子が主夫の役をしていた時の事だ。
※この世界は女が働くのが当たり前で、主夫はまず叶わない夢です。
勿論、この夢のおままごとは競争力が激しく、なかなか相手に選ばれないのだが…それはさて置き。
男の子が 泥と砂でお団子を作って女の子に差し出した。
「ご飯が出来まちた、食べて」
「あやた、いつも家事ありあとね」
仲睦ましく家族に見える。
だけど、女の子は…泥団子のおかずに、泥水のお味噌汁に砂のご飯を泣きながら食べている。
この子は虐めにあっているのか…違う。
本当に喜んで食べていて感動して泣いている。
周りの子は、遠巻きに羨ましそうに見ている。
この料理はお母さんがつれていく、最高級のフレンチを上回る。
周りの誰もがそう思うだろう。
彼女は一つの夢を叶えてしまっていた。
多分、この後、この男の子は成長するにつれ、こんな事はしなくなる。
そして、多分彼女を嫌うようになるだろう。
だが、土や砂とはいえ【男の子の手料理を食べた】
それは彼女の心に一生、幸せな思い出として残るだろう。
ちなみにこのニュースがテレビで放送されてから、匿名だったのに幼稚園の場所がバレ…土団子を求めて女が殺到した。
その結果、くだんの男の子はトラウマを抱え転園していった。
男の手料理…それはこの世界に置いて、とんでもない価値がある。
【IF】【書き下ろし】 公園の幻想的美少(幼)女 溝口梨々花 【上】
※ これは、時系列で言うなら、この物語が始まる前の話です。
作品、本編と繋がるかどうかは未定です。
僕は心が疲れていた。
僕には他の人には言えない秘密がある。
毎日が辛い…
引き籠りには余り成りたいと思わないから、我慢して散歩に出かけた。
やっぱり、駄目だ…此処は…
自販機でジュースを買い、公園のベンチで休み小説を読んでいた。
小説は良い、文字だけだから、嫌な思いをしないですむ。
暫く休んでいると一人の少女に目がいった。
僕は、ある事情で人の顔を見ないようにしている。
だけど、僕は、その少女に目が釘付けになった。
黒髪のショートヘアに、大きく綺麗な目。
子供特有のずんぐりむっくりした体形でなく、スリムですらっとしている足。
実際の世界なら、バレーを習っているようなマドンナみたいな凄い美少女。
二次元なら…魔法少女。
アダルト漫画なら…子供に見えない、大人びた少女。
そういう風に見える。
僕はロリコンでは無い、だけど、彼女の美しさに、つい見入ってしまう。
正に、魔性の少女。
それが一番近いかも知れない。
幾ら心が疲れているからって、相手は子供だ…手を出してはいけない。
頭は解っている。
うん、大丈夫だ。
だが、どうしても目で追ってしまう。
不味い、目が合ってしまった。
「お兄ちゃん、何見ているの?」
ヤバイ、ヤバイどうしよう?
いいや…正直に言おう、こんな美少女に嘘をつきたくない。
「君が可愛いから見惚れていたんだよ…ごめんね」
不味い、見ている人に通報されないかな、幾ら男性が優遇される世界でも、ロリは不味いよね、多分。
何かやらかしてしまった気がする。
「そんな嘘つかなくても良いよ? そんなに怒って無いからさぁ」
「嘘じゃ無いよ、本当に可愛いから見てたんだよ」
僕は何を言っているんだ? この子多分小学生それも低学年位じゃないかな? 少女ですらない、少し大人びているけど幼女だ。
「そこ迄言うの? 本当にそれ、言い張るなら遊んでくれるの?」
遊ぶ…変な事を想像しちゃったじゃないか…不味い、これじゃ変態だ。
「お兄ちゃんの思っている変な事じゃ無いよ? 普通に遊ぶだけだよ…?」
そうか、そうだよな、ハァ~気が滅入る、幾ら精神的に落ち込んでいてもこれは無い。
だけど、こんな可愛い幼女相手なら普通に遊ぶのも悪くないよね。
「それじゃ、遊ぼうか?」
「本当に遊んでくれるんだ? わーいお兄ちゃんありがとう…凄く嬉しいよ」
いきなり抱き着いてきた、子供なのに凄く良い香りがする、シャンプーかな。
「それで何して遊ぼうか?」
「うーん、そうだね砂場で山つくるの手伝って」
「解った」
一緒に砂で山を作った、偶に手が触れるとつい顔が赤くなる。
彼女も顔が赤くなっている気がするけど、子供がそんな事考えるわけ無いから気のせいだと思う。
よく考えたらこの子の名前も知らない。
「僕の名前は黒木翔、と言います、名前教えてくれる?」
「え~と溝口梨々花です…お願いします」
やっぱり凄く可愛い、耳まで真っ赤にしている。
そのまま一緒に砂で山を作ったり、トンネルを作っていたら、周りの大人と目が合った。
不味いな、だけどこんな楽しい時間は邪魔されたくない。
不審者を見るような眼差しを我慢して、遊び続けた。
僕はロリコンじゃないと否定が出来なくなってきた。
偶に見えるパンツにブラウスから除く鎖骨と小振りな胸…それに喜ぶなんて変態じゃ無いか?
それからあとも望むままに遊んだ、一緒にブランコにも乗ったし、滑り台も一緒に滑った。
何より梨々花ちゃんが喜んだのは肩車だった。
「お兄ちゃん、凄く高い高い..凄く楽しいよ」
「気に入って貰えて嬉しいよ」
いよいよ周りの目が怖くなってきた。
耳を澄ますと《通報》とかいう声が聞こえてきた。
良く見ると僕たちを見て泣いている子供がいた。
多分、本当に不味いのかも知れない。
梨々花ちゃんもそれを聞いたのかも知れない。
「黒木お兄ちゃん、今日は本当にありがとう」
「どういたしまして」
「凄く楽しかったよ、大きくなったら梨々花と結婚してくれる?」
不味い、一瞬ときめいてしまった。
どうせおままごとに違いない、なら答えは決まっている。
何か小道具は無いかな?
あれが良い…僕は近くに落ちていた缶のプルトップをとって指輪の代わりにして左手薬指に嵌めてあげた。
「梨々花ちゃんが大人になって、忘れて無かったらね」
梨々花ちゃんは顔を真っ赤にして周りを見渡すと…小さな声で「ありがとう」と言って走っていってしまった。
「あっ」
慌てて走って追いかけたが、何処にも梨々花ちゃんは居なかった。
これは幻だったのか…かき消すように、美(幼)少女は消えてしまった。
【IF】【書き下ろし】 公園の幻想的美少(幼)女 溝口梨々花 【下】 ~夢の終わり~
私には友達が誰もいない。
醜いというだけで誰も私を愛してくれない。
お父さんは誰か知らない…だけどお母さんは私を見る度に暴力を振るう。
「折角、男と結婚出来たのに、お前のせいで台無しだ、お前のせいで、お前のせいで…」
私だって好きで醜くく生まれた訳じゃない。
普通の女の子に生まれたかったよ。
凄く毎日が辛い、こんな顔だから勿論、男の子から嫌われる。
そして女の子にはさらに嫌われる。
「梨々花、近づかないで、あんたが居ると智樹くんが気持ち悪がるから」
確かに解るよ…だけど1人ボッチは辛いよ…
1人は嫌だよ…
何時もの様に1人で寂しく遊んでいると1人の男の人が目に入った。
凄く綺麗な男の人…醜い私と違って、綺麗で美しくてこんな容姿に生まれたら絶対に幸せだと思う。
まるで絵本の王子様が飛び出してきたのかな? そう思える位綺麗だった。
そんな人がさっきから私を見ている…そんなに醜い私が目障りなのかな。
それとも、見世物感覚で見ているのかな?
兎も角、まるで観察するような目で私を見ている気がする。
不味い、目が合ってしまった。
何か変な目で見ている気がするよ。
少し腹が立った。
醜い私が、そんなに見たいの?
「お兄ちゃん、何見ているの?」
男の人にかける言葉じゃないのは解るよだけど口から出てしまった。
不味いかも知れない…男の人が急に黙った。
この人…やっぱり凄く綺麗だ、周りの女の人からは明らかに避難の目が向けられていた。
幾ら子供でも、男の人に嫌われる様な事はしちゃいけない…それは常識だし、これはモラル違反かも知れない。
だけど、男の人はとんでもない意地悪な言葉を発してきた。
「君が可愛いから見惚れていたんだよ…ごめんね」
そんなに怒っているんだ、この醜い私が、可愛い…酷いよ。
慣れていても、心が傷つくよ…だったら醜いからとか化け物って正直にいってよ…
モンスターガールなんてあだ名の私に《可愛い》…そうかこのお兄ちゃんは私を虐めたいんだ。
周りの人の目が怖い…男に謝らせるな。
そう言う目で皆が私を見る。
「そんな嘘つかなくても良いよ? そんなに怒って無いからさぁ」
男が謝っているんだ…本当は虐めでも許すしかない。
「嘘じゃ無いよ、本当に可愛いから見てたんだよ」
そこまで虐めたいの…本当に心が痛いんだよ、やめて。
「そこ迄言うの? 本当にそれを言い張るなら遊んでくれるの?」
周りの目が避難に完全に変わった《遊ぶ》という言葉が性的な脅しに取られるかもしれない…犯罪者になるかも知れない。
言い過ぎちゃった。
※この世界の話。
この世界は男女比が1対10なので、何でも男性に有利です。
例えば、《男性がトイレに少女を連れ込み悪戯をしました》どうなるのでしょうか?
答えは、少女に喜ばれ、両親からも喜ばれます。
女の子は子供のうちから《男性が貴重》な事を教えられていきます。
1クラス40名の小学校があったとして本来は4人は男性がいる筈ですが引き籠りが男性には多いので1名いるかいないかです。
こんな世界ですから、もしいい大人が少女に悪戯しても、ただの悪戯なら「よい思い出をありがとう」
逆に性的な物なら「嘘、セフレになれるの」《この世界の男性の多くは性的な事を嫌いますからこれはラッキーなのです》
そして男性が50歳位で少女が8歳だとしても真剣に好きだと言う話なら、喜んで婚約して結婚出来る年齢になったら、かなり高額な持参金で結婚になる…そんな感じです。
逆に少女とはいえ嫌がる男性に悪戯したら、犯罪者の烙印が押され、人生が終わる場合すらあります。
ある、少女はひとの良いおじさんを騙してキスしようとしました。
子供だから許されはしましたが、人格端正施設送りとなりました。
また、動画が流れてしまいかなり困った事にもなりました。
こんな世界なのです
(説明終わり)
「お兄ちゃんの思っている変な事じゃ無いよ? 普通に遊ぶだけだよ…?」
多分これでセクハラにならないよね…大丈夫かな。
「それじゃ、遊ぼうか?」
嘘、これは何かな…まさか本気で言っているのかな…
もし、これが嘘じゃ無いなら、私はなんて酷い事をしていたんだろう。
だけど…本気なのかな?
「本当に遊んでくれるんだ? わーいお兄ちゃんありがとう…凄く嬉しいよ」
いきなり抱き着いた、これで突き離すでしょう?
本性を現すよね。
「それで何して遊ぼうか?」
本気なのかな?
「うーん、そうだね砂場で山つくるの手伝って」
「解った」
一緒に砂で山を作った、偶に手が触れるとつい顔が赤くなる。
当たり前じゃない…男の人の手があたるんだもん…それに着ているシャツが汗で濡れて肌が見れるんだもん。
「僕の名前は黒木翔、と言います、名前教えてくれる?」
このお兄ちゃん…名前まで言ってきたよ…これ絶対に虐めじゃないよね。
ごめんね、疑って…男性の中にごく稀に子供みたいなピュアな人が生まれると言うけど、それなのかな?
※普通の世界じゃ知恵遅れの人の事です。この世界では女性を嫌わないからこう呼ばれます。
「え~と溝口梨々花です…お願いします」
凄く楽しいな…こんな夢みたいな事初めてだよ。
そのまま一緒に砂で山を作ったり、トンネルを作っていたら周りの大人と目が合った。
この位犯罪じゃ無いでしょう…羨ましいからってそんな目で見なくていいじゃん、私まだ子供だし…友達も居ないんだから。
お兄ちゃんは周りも気にしないで沢山遊んでくれた。
王子様みたいなお兄ちゃんが遊んでくれる。
凄い夢のような時間。
周りの人は、それをスマホで撮っていた。
気にしない…この時間の方が凄く大切だもん。
生まれてから一度も楽しい事なんてなかったから…凄い幸せ。
一緒にブランコにも乗ったし、お兄ちゃんが抱っこしてのブランコ…えへへ夢みたい。
滑り台も一緒に滑ったよ…抱っこして一緒に滑ってくれるの…こんな事できる女の子はなかなか居ないよね?
周りから憎しみの篭った目が向けられるけど気にしないよ?
今日だけは、今だけは私が主人公だもん、ヒロインだもん。
嘘…肩車、これは…夢みたい。
※子供とはいえ、男性の頭に性器が押し付けられる、この世界じゃあり得ない光景になります。
絶対にこの世界の男はプライドが高いのでしない行為です。
「お兄ちゃん、凄く高い高い..凄く楽しいよ」
女の子なら一度は夢に見る肩車…今迄の事が嘘みたい。
こんなの夢でも見たことが無いよ。
「気に入って貰えて嬉しいよ」
気に入らない訳が無い…これと引き換えなら死んでも良い…本当にそう思う位の幸せだもん。
いよいよ周りの目が怖くなってきたな。
多分、もう動画を持って通報したかも知れない。
同い年位の女の子は泣いているし…終わりにしなきゃ。
多分、お兄ちゃんはピュアな人だ、怖い思いはさせちゃ駄目だよね。
「黒木お兄ちゃん、今日は本当にありがとう」
「どういたしまして」
「凄く楽しかったよ、大きくなったら梨々花と結婚してくれる?」
私の人生は多分、これで終わるかも知れない…最後に楽しんでも良いよね…もう終わりだから。
「梨々花ちゃんが大人になって忘れて無かったらね」
想像以上だよ、まさか指輪をくれるなんて、缶からとったブルトップだけど…これはきっとダイヤモンドより価値がある。
周りが凄く騒がしい。
男の人が結婚の真似事をしたんだ、そりゃ大事になるよ…やっぱりお兄ちゃんはピュアな人なのかな。
だけど、凄く綺麗で王子様にしか見えないよ。
遠くからサイレンが聞こえてきた。
夢の時間は終わったんだね。
「ありがとう」
それだけ伝えると私は公園から走って出て行った。
泣き顔は見せたく無いから…
公園を出て右に曲がった所で捕まった。
「男性保護機関 だんきの者です、ちょっとご同行頂けますか」
「はい」
下手に抵抗したら、黒木のお兄ちゃんに見つかる。
車の中から私を探しているお兄ちゃんが見えた。
私は車の中で見えないように頭を下げた。
結局私は施設送りにならなかった。
ただ、あの公園への立ち入り禁止命令が出されて、引き取りに来たお母さんに凄く怒られた。
動画をアップロードされた結果、街には居づらくなり引っ越した。
お母さんは益々私が嫌いになりお婆ちゃんに預けて何処かに行ってしまった。
お婆ちゃんは私の顔に似ているから唯一私を虐めない人だから、今の方が逆に良いと思う。
黒木おにいちゃん…私一生懸命勉強して偉くなって何時か会いに行くよ…待ってて。
梨々花はプルトップを強く握りしめた。
北条東吾 オレンジジュース
俺の名前は北條東吾。
この国で一番の企業、北條グループの跡取り息子だ。
普通であれば、男に生れて日本を代表する企業の御曹司なのだから幸せな人生は確定している。
正にパーフェクトな勝ち組人生、だがその中で俺には無い物があった、それ一つが無いだけで俺の人生は最悪だ…俺に足りない物、それは容姿だ。
もし、俺に容姿があれば、社長である母は俺を企業の広告塔へ押し出し、宣伝やイメージに使うだろう。
この世界では凄く貴重な男なのだから。
だが、俺にはそれが無い為に、ここで静かな学園生活を送っている。
御曹司という強力な後押しがあるのに女にモテないのだから、恋愛は絶望的だな。
子供の頃に、俺付きのメイドに「僕と結婚してくれる?」と言った事があった。
このメイドは俺に姉のように接してくれていた。
とても優しく接してくれていたんだ、子供ながら何かしてあげたい…本当にそう思ったんだ。
この世界は凄く男が少ない。
まして、彼女は妙齢な歳だ…喜んでくれると思った。
俺は彼女のの笑顔をただ見たかった、それだけだったんだ。
だが、次の日には辞表を出して辞めてしまった。
俺はこの時まで気がつかなかったんだ…自分が醜いと言う事に。
俺はその時から頑張り続けている。死ぬ程勉強も頑張り、成績は常に10番以内。
スポーツだって人一倍、頑張り何でもできるようになった。
俺の努力を知らない者は不細工とは言え流石に北條家の血を引く者。そう言っていた。
違う、俺は才能なんて殆どない、能力的にはかなり低い、ただ北條の名を汚したくないから努力しているだけなんだ。
ただ、醜い。それだけで何をやっても旨くいかない。
世界は本当にこの世界は残酷だと思う。
サッカーやっても、陸上をやっても、どんなに活躍しても女も男も相手の方しか応援しない。
そんな俺に母は友達を作って欲しかったらしく、破格のお小遣いをくれるようになった。
「とりあえず、食事に誘ったり、遊びに行ったり、友達を作りなさい」そう言われた。
だけど、それで寄って来るのはお金目当ての奴ばかりだ。
そこまでしてもただの【友達】すらいない。
物だけ買わせて、だれ1人仲間にすらなってくれない。
例えば、弁友一つとっても俺は違うんだ。
俺が女の分まで弁当を購入して振舞ったり、場合によってはシェフに来て貰って立食パーティーだ。
それでも、最初だけで、今じゃ誰も一緒に食事をしてくれない。
友達は無理、諦めた。
日常を諦めたある日、俺はとんでもない物を見てしまった
おれより醜い白百合京子が、凄い美形の男と楽しそうに話していたのだ。
確かに俺は不細工だ、それは認める。
だが、あれに比べればまだまともだ、この学校で一番不細工な人間は誰か。
そう聞けば、恐らく全員が白百合京子そう答えるだろう。
おれは恐らく不細工な方から数えて10番目位だろう…最も男ならダントツの一番だが。
俺はついガン見してしまい、不用意に近づいてしまった。
そうしたら黒木に気がつかれてしまった。
「白百合さんは僕の物だから渡さないよ」そう言うと白百合の手を引っ張ってどっかに行ってしまった。
「流石の俺もそいつは要らないよ」そう言いたかったが、その時の白百合の嬉しそうな顔が羨ましかった。
翌日、廊下で黒木に会った。
俺はこいつに、凄く興味がでたので話をしてみたくなった。
「黒木で良いのかな」つい、ぶっきらぼうに話してしまった。
黒木と名前は知っていたが、俺は人と話すのが下手なんだ…話す相手がいないんだ、仕方ないだろう。
「うん、僕は黒木であっているけど、君はえーと…誰?」
「北條東吾だ」
「北條東吾くん…うん、覚えたよ。僕の名前は 黒木翔だけど」
「そうか」
凄く綺麗だ..同じ男として凄く羨ましいな。
「所で、何かよう?」
「特にようは無いんだが、、話してみたくてな」
「別に良いんだけど、白百合さんは渡さないよ?」
いやいや、それは本当に要らないからな。
「いや、別に好みでは無いし、とったりしないから安心しろ」
「なら、いいや、じゃぁジュースでも買って話しをしよう」
「そうか」
「じゃぁちょっとジュース買ってくるね」
「おい」
俺が相手なのに…奢らなくて良いのか?
「はい、ジュース、オレンジで良かった?」
「あぁ、別に何でもいいぞ」
そう言えば、俺にジュースを買ってきてくれた様な奴はいなかったな。
俺のおごりで俺が買いに行く、それが当たり前だったな。
「そう、で何?」
「いや、お前が白百合京子と楽しそうに喋っていたからさ気になってな」
「本当に白百合さん狙いじゃないんだよね?」
だから、そういう目で見る必要はないんだ…流石の俺もあれは要らない。
「違う、むしろ、お前の方が気になった」
「僕? 何で?」
「いや、楽しそうに話していたからさ」
「普通に友達や彼女と話したり、食事をしていたら楽しいと思うけど?」
「そうなのか? 俺はそういった経験が殆ど無くてな…友人自体が殆どいないんだ」
「そう、普通に居そうな気がするけど?」
北条くん程のイケメンで友達がいない…信じられないな。
此奴馬鹿にしているのか?俺みたいなブサイクがモテる訳ないだろう。
「いないから困っているんだろうが、嫌味か?」
「嫌味なんて言わないよ。本当にいないんだ、解った。だったら僕と友達になる?」
「本気で言っているのか?嘘じゃ無くて」
「本気だけど?…友達になりたくないのかな?」
「いや、頼む」
「じゃぁ今から友達だね」
黒木は俺の手を取りブンブン振り回していた。
そして休み時間が終わりそうになると、彼奴は手を振り去っていった。
何かこういうの凄く良いな。
オレンジジュースかぁ…これって彼奴の驕りなのか?
俺って誰かに奢って貰ったことは無かったな。
飲み終わった缶ジュースの缶を俺はハンカチで包みカバンにしまった。
北条東吾 ~涙~
それから暫くして俺は悶々とした生活を送っている。
黒木翔と友達になったのだが、今迄ほぼ一人で過ごしていたのだから、何をして良いか解らない。
朝は俺を見ると黒木が挨拶をしてくれるから、それに挨拶で返す、それだけだ。
だが、今日はいつもと違っていた、お昼に黒木が訪ねてきたのだ。
「今日さぁ白百合さんが風邪で休みだから一緒にお昼食べない?」
成程、白百合が休みだからか、しかし、友人と食事か? どうすれば良い?
今からじゃケータリングも間に合わないな。
「あぁ」
俺がそう答える前に黒木はお弁当を広げてしまった。
「これ、黒木が作ってきたのか?」
「そうだよ、白百合さんの為に作ってきたんだけど、今日風邪で休みみたいだから、良かったら摘まんでよ」
「そうか、じゃぁ俺のも摘まんでくれ」
「凄いね、これ松坂牛のステーキ弁当じゅない…凄いね」
【周り】
「嘘、何で黒木くんが北條なんかと食事しているわけ」
「あれが黒木くんの手作り、一口だけでも食べたい」
「じゃぁ遠慮なく頂くね…うんまい」
「あぁ、じゃぁ俺も貰おうか」
誰かが作った弁当なんて初めて食べたな。
【周り】
「ねぇ、黒木くん、北條なんかと食べないで私達と食べようよ」
「そうだよ、北條なんかと食べたら美味しくなくなるよ」
「なんで?」
「だって北條ってキモイじゃん!」
「どうして、北條くんはカッコ良いと思うよ」
「庇わなくて良いと思うけど」
「北條くんは頭も良いし、スポーツ万能、どこがキモイのかな?」
「だってブサイクじゃん」
なんでこうも、人の心を逆なでするのかな?
「良く解ったよ。だけど、僕から見たら北條くんは凄くカッコいい。僕は北條くんと昼飯が食べたいから黙っててくれる」
ここで女子は気が付いた。男子は仲間意識が強いという事を忘れていた。
黒木くんにとっては既に北條は仲間なんだ。これ以上貶すと絶対に嫌われてしまう。
「そうだね、男同士で楽しんでいる時に邪魔してごめんね」
「僕もごめんね」
そしてまた元通りに弁当をついばみ始めた。
「なぁ黒木、俺の何処がカッコいいんだ」
所詮、口先だけだろう? それとも北條に恩でも売りたいか、それとも何か意図があるのか。
「そうだね、まずはサッカーの時にハトトリック決めてたよね。僕には出来ない」
「そ、そうか」
あれ見ててくれたんだな、なんだ此奴は見ててくれたんだな。
「野球だってピッチャーやってたよね、ノーヒットノーラン、普通に凄くない」
「そうか」
あれも見てくれていたのか…
「頭が良くて、スポーツ万能、逆に聞くけど、何処がかっこ悪いの?」
そうか、此奴の彼女は白百合京子だったな。本当に人の中身を見ているそういう奴という事だ。
【俺は醜いんだ】そういうのは野暮だな、此奴は容姿じゃ無くて中身を見ている、そういう奴なんだからな。
「そうか、俺ってカッコ良いのか?」
此奴だけは俺の中身をしっかり見てくれている。
「僕からみたらカッコ良い男の子にしか見えないよ」
「そうか、黒木、何か欲しい物ないか?」
「じゃぁジュース買ってきて、僕はウーロン茶」
「ジュース?」
いや、俺はパソコンとかゲーム機とかブランド物とかそういう意味で言ったんだが…まぁ良いか。
「この前は僕が奢ったんだから、今度は北條くんの番でしょう?」
そうか、此奴にとっては北條とか金持ちとか全く関係ないんだな。
「そうだった、じゃぁ買ってくるよ」
「うん、お願い」
「後、北條は辞めてくれ、友達なら東吾で良い」
「解った、じゃぁ東吾くん、僕も翔で良いよ」
「解ったよ、翔くん」
そう伝えると、俺はジュースを買いに教室から出た。
暫く歩くと俺は涙が止まらなくなり、歩けなくなってしまった。
トイレに駆け込み、何度も顔を洗ったが涙が止まらない。
結局、教室に戻るまで10分以上掛かった。
翔くんは「遅い」と少し怒っていたけど、その声さえ俺には心地良かった。
金剛里香 ~くす玉~
私の名前は金剛里香と申しますわ。
北條グループとは比べ物になりませんが、そこそこ、いいえかなり裕福な家庭で育ちましたの。
うちではお嬢様と呼ばれていまして、世間に出るまで知らなかったのですわ。自分がものすごく、ブサイクだったという事を。
生まれてから、今までずうっとお嬢様と呼ばれていましたし、先日結婚して辞めたお手伝いさんにもお姫様みたいと言われてましたから、しっかり信じていましたわ。
ですが、よくよく考えてみれば多分陰で、冷笑していたんでしょうね。
まぁ勤め人が雇い主の娘にブサイクとは言えないでしょうからね。
学校に入学してからは諦めましたわ。
だって、どんなに頑張っても、悪口しか言われないんですもの。
ついたあだ名が清少納言ですって。あんまりですわ。
それでも私なりに相当頑張ったんですのよ。
最初は、少しでも人の役に立つようにクラス委員になりましたの。
そうしたら、普通では考えられない程の仕事を押し付けられましたわ。
それでも、文句を言わずに頑張っていたのに、悪口しか言われませんの。
酷いと思いませんか?
私くしはいつかは認めてもらえる。そう思って生徒会長に立候補しましたの。
そしたら、見事に当選。
初めて誰かに認めて貰えた。そう喜んでいたのに、、ただ、忙しいから誰かに押し付けたかった。
生徒会長なんて、それだけの役職でしたわ。
生徒が悪い事をすると代表で怒られるし、めんどくさい仕事は全部押し付けられる。
ただ、それだけの仕事。
しかも、生徒は私の言う事なんて聞いてくれないから自分1人で頑張るしかない。
だからいつも遅くまで居残って頑張るしかありません。
実際には他にも副会長と書記もいるのですが、、
「会長いくら頑張っても誰も私達の事なんか認めてくれないんだから適当で良いでしょう」
「そうそう、最低限の事だけしてれば良いと思うよ」
こんな感じですわね。
最も、最低限の仕事をしてくれるだけ他の方よりは、遥かにましですわね。
今日も誰も手伝ってくれないから、1人でくす玉を作っていますわ。
歓迎会ように作っているのですが…多分作ったのが私だと知ったら、新入生も喜びませんわね。
だけど、やるからには意地です。手は抜きたくないのですわ。
「先輩、何をしているんですか?」
「見れば解るでしょう?くす玉を作っているのですわ」
あれ、幻聴でしょうか? 男の子の声が聞こえてきますわ。
「お一人でですか」
「だぁれも手伝ってくれないから、1人でやるしかないのよ」
「そうなんですか」
あれ、今の声は確かに男の子? いよいよですわね、幻聴が聞こえてくるなんて。
思わず振り返ったけど…やはりいません。
また作業に戻っていたら…うわっ、本当にいました。
「先輩、これ良かったら飲みませんか?」
「…これって」
「ジュースですよ。勝手にオレンジにしちゃいましたけど。」
「…これ、私にですの?」
「はい、後これタオルです。水で濡らして絞ってきたから使うと気持ちいいですよ。それに顔が少し汚れています」
「本当に使って良いんですの?」
これは夢なのでしょうか? 天使の様な男の子が私にジュースとタオルを差し出してきたのです。
「その為に濡らしてきたんですから」
「そうですわね、、使わせて頂きますわ」
「先輩、少し休みましょうよ」
「そんな時間はないのですわ」
「僕も手伝いますから」
「手伝ってくれるますの?」
「はい」
私は彼と10分以上話してしまいました。
しかし、彼は嫌じゃないのでしょうか?
私の様にブサイクな女と話すなんて…だけど不思議と笑顔ですわね。
暫く、話した後、彼は本当に作業を手伝ってくれました。
男の子が手伝ってくれるなんて普通はあり得ませんわね。
誰かと一緒にする作業がこんなに楽しい何て知りませんでしたわ、しかも相手がこれ程の美少年だから余計ですわ。
苦痛で仕方の無い仕事、嫌々やっていた仕事。それが誰かが一緒にいてくれるだけでこんなに楽しいなんて。
くす玉は二人で作ったら、驚く程簡単に出来上がってしまった。
「あの、何で手伝ってくれたのですか?」
「誰だって頑張っている人が居たら手伝いたくなるでしょう?」
嘘ですわ、今までどんなに頑張ってもだれも認めてくれないし、手伝ってなんてくれませんでしたわ。
「だけど、今まで手伝ってくれた人なんておりませんわ」
「そう、なんですか? 僕で良かったら、これからも、手伝いますよ」
この世界の男はお手伝いなどしない。
例えば食事後にお皿を台所に運んだら男の場合は手伝った事になるのだ。
それですら行う男は殆どいない。
「本当に? ありがとう、あと、これ少ないけど…はい」
「何ですか、それ」
「お手伝い賃ですわ」
この世界の男は基本無償では何もしない。
お手伝い賃を払っても余程の破格じゃなきゃまず動かない。
「先輩、怒りますよ?」
「5万円じゃ少なかったかしら?」
「何を言っているんですか? 僕が先輩を手伝いたかったから手伝った。それだけですよ」
はい?こんな男性が世の中にいるのですか?
もし、居たとしても、私なんかに微笑むはずはありませんわ。
「あの、また手伝って欲しいと言ったら手伝ってくれるのかしら?」
今日のはただの気まぐれですわね。それでも充分嬉しかったのですけど。
「手伝いますよ。先輩と一緒なら楽しいですから」
「本当に?」
私くしみたいなブサイクといて楽しい訳ないでしょうに。そう思ってしまっいました。
そして知らないうちに口に出してしまいました。
「だけど、私くしみたいなブサイクと一緒に仕事しても楽しくないでしょうに」
自分に自信が無い。これ程の美少年と自分じゃ釣り合わない…その劣等感からつい出てしまいました。
「どこがブサイクなんですか?僕には先輩は、、そうですねまるで社交界で踊る令嬢のようにしか見えません」
嘘だ、どうせこの人も私を馬鹿にしているんですわ。
あのお手伝いさんや他の方と一緒。
私は彼を気が付くと睨んでいた。
馬鹿にしている。そう思うとさっきまでの行動すら忌々しく感じましたわ。
それに気がついたのか彼はいきなり話し始めた。
「やっぱり、報酬を貰っていいですか?」
やっぱり、そういう事なのですね。
「幾らほしいの?」
10万円位なら払ってあげるわ。
「お金は要らないから、踊ってくれませんか先輩?」
「えぇ ちょっと」
嘘、私の手を握っているの? なななな、なんなのですか?
なんで、男は冗談でも普通はこんな事しないのですわ。
「本当に、こうして曲もないのに踊るだけでよろしいのです?」
まずいですわ、男に手何て握られた事なんてないのですわ…いきなりですから汗ばんだままですわ。
ダンスはこれでも上流階級ですから踊れますが。
顔が赤くなってしまいます。
「はい、先輩と一緒にいると本当に楽しいんです。作業してても、こうして踊っていても」
優しい顔。
そうだ、この顔はお父様が私に向ける顔だ
どんなにブサイクでも、世界一可愛いと言ってくれたお父様。
「そう、貴方も楽しいのですわね。私も凄く楽しいのですわ、所でお名前は?」
「黒木翔ともうします。」
「私は、金剛里香といいますわ」
「金剛先輩ですね」
「金剛でいいですわ」
「金剛…さん」
「それで手を打ちますわ」
「では、黒木様、私はこれで失礼します!」
「あの、様は辞めて頂けませんか?」
「里香と呼んでくれたら辞めますわよ」
「じゃぁ、良いです」
本当に名残惜しいのですわ…迎えの車が待っていなければこのままもう少し居たいのに…
本当に断腸の思いですわ。
次の日の歓迎会に合わせ、私はくす玉を釣り竿で釣り上げるように改良したの。
歓迎会が進んでくす玉を割る時がきました。
私は釣り竿を担いで、そのままくす玉ごと、黒木様の所へと向かいましたわ。
「あれ、金剛先輩、どうしたんですか?」
「むっ違うんじゃありませんの?」
「金剛…さん」
「はい、では歓迎しますわ、黒木さん」
私はくす玉を割った。
くす玉を割ると「大歓迎、黒木翔様」と書いた垂れ幕が紙吹雪と共に降りてきた。
彼の顔が少し赤くなった気がする。
私は頑張ってクスクス笑いをしていますが、実際には心臓が破裂しそうですわ。
「ありがとう、金剛さん」
黒木様は私の手を握ると凄く喜んでくれた。
これはずるいのですわ、こんな事されて喜ばない女なんていませんわよ。
ほら、周りの女子が凄く怖そうな目でみてますわね。
そんな目しても怖くもなんともないのですわ。
他の人なんて知らない。
私を認めてくれて、私に暖かい目を向けてくれる黒木様。
冷たい目を向ける他の人。
差別するのは当たり前ですわよ。
私だって人間なんですからね。
私を差別したのですから、私が差別したって問題ないハズですわね。
そう思いません?
白百合京子 金剛里香 ~二人目の恋人~
私は新入生の為のシオリ制作を口実に黒木様を作業に誘いましたの。
黒木様がいらっしゃるなら二人は邪魔ですので先に帰らせましたわ。
二人っきりで作業していると今までと全くちがい至福の時間になりますわ。
前の時にはジュースを奢って頂いたので、今度はわたくしの方でジュースと御菓子をご用意いたしました。
「黒木様はもう付き合っている人はいるのでしょうか?」
「彼女の事?いますよ」
えっいらっしゃいますの?
思わず動揺してしまいましたが、それはそうですわね、ここまでの美しい方に交際相手が居ない方が可笑しいですわ。
「そうなのですか? どんなかたですの?」
悔しいですが、さぞかし美しい方なんでしょうね。
「白百合京子さんっていって凄く可愛いんです。」
可愛いい羨ましいぃ あれ、白百合京子ってあの方ですわね。
私、以上のブサイクな方なハズですわ。
「白百合京子さんって前髪が揃っていて、古風な日本人みたいなイメージの方ですわね」
同じ名前の方は居ないハズですわ。
悪口を言わないのであればこんなイメージで良いはずですわね。
「流石、生徒会長良く知っていますね。そんな感じですね。日本人形みたいで凄く可愛いんです。」
かっ可愛いいのあれが? 呪いの市松人形が?
だったら、私にも可能性はありますわね。
「そんな風に言われると妬いてしまいますわ」
「金剛、、さんもフランス人形みたいでお綺麗ですよ。白百合さんが日本美人なら、金剛さんは西洋美人です。」
「そ、そうですか?」
白百合京子と並べられるのは余り嬉しくないですが、美人と言われるのは嬉しいですわね。
「本当に美人ですよ、、先輩は」
「余り謂れ慣れていないので照れてしまいますわ」
フランス人形、西洋美人。凄く心地よい響きですわ。
こんな事言われたら、ときめいてしまいますわね。
「それは見る目が無いからですよ。僕から見たら凄く素敵な人にしか思えません。まさに憧れの生徒会長、そう思いますよ」
これですわ。これこれ、私くしはこう思われたかったのですわ。
その為に、一生懸命勉強して、一生懸命生徒会の仕事を頑張ってきたのですわ。
「そんな事はありませんわ。私なんかまだまだですのよ」
「そうですか、それでも何にでも一生懸命な金剛さんは素敵です。」
「ありがとう」
ありがとうしか言えなくなってしまいましたわ。
だって、わたくしが言って欲しい事全部言ってくれるんですもの。
油断したら泣いてしまうかもしれませんわね。
黒木様が、私を見てくれる、なら他からもうどう思われようと気になりませんわ。
嬉しくてしょうがありません。
「あの、黒木様お願いがありますの」
「はい?」
「あの、もしも、もしもですよ、白百合さんが認めてくれたら、わたくしも彼女にして貰えませんか?」
「金剛さんはそれで良いんですか?」
「どうして、そんな事を聞くのですか?」
「正直言って僕は凄く独占欲が強いんです」
「独占欲? そうは思えませんが?」
「はい、例えば白百合さんが他の男性と仲良くしたり、金剛さんが他の方と仲良くしてたら凄くやきもちを焼くと思う」
「そうなのですか?」
私と仲良くしてくれる男なんて絶対にいませんわね。
もし、居たとしても黒木様を知っちゃったら、他の男なんて見えなくなりますわよ。
「確かに男が少なくて一夫多妻という事は解っているんでけど、なかなかふんぎりがつかなくて」
「だったら、一度、白百合さんとお話しさせて頂けませんか? それで白百合さんがOKしたら考えてくれる。これならどうでしょうか?」
「わかりました…それで良いなら…」
この世界で一夫多妻は普通の事だ。
男性は嫌でも5名以上の女性を娶らなければならない。
その為、結婚を考える時には一緒に暮らす事になる、他の妻の存在も気にしなくてはならない。
実際に第二婦人と夫が仲良くなりすぎて、第一婦人が執拗に第二婦人を虐め続けた例もある。
そうならない為にも恋人の時期から一緒に過ごすのは理想的と言える。
黒木程の男性なら20人を超える人数と結婚してもおかしくない。
相手が美形なら躊躇したかも知れない。
だけど、自分と同じような白百合京子なら案外仲良く出来るかも知れない。
そう、金剛里香は思っていた。
【次の日の昼休み】
今日も楽しく黒木君とお昼を過ごしていると他の女が近づいてきた。
生徒会長の金剛さんだ。
「こんにちは、白百合さん」
「こんにちは、金剛会長、何か御用ですか?」
普段であれば別に気にならない、むしろ金剛会長は私に普通に話してくれる数少ない人だ。
だけど、今は…邪魔されたくない。
一分一秒でも、黒木君と二人っきりを楽しみたい。
だから、返事は少し冷たい感じになっていたかも知れない。
「黒木君と一緒で構わないから少しお話がしたいのですわ」
多分、例の話だ。
「あの、僕は席を外した方が良いですか?」
「一緒で構いませんわ」
「私も黒木君が一緒の方が良いと思う。」
「そう」
「所で、今日はやっぱり、黒木君についてのお話しですよね」
「そうですわ、黒木様についての事ですわ」
「大体、の事は何となく解りますが、一応教えてください」
僕は口を挟まない方が良いだろう。
「黒木様の第二彼女になりたいので許可がほしいのですわ」
「第二彼女…ですか? 第一彼女じゃなくて?」
「正直、貴方じゃなければ押しのけても第一彼女を目指しますが、白百合さんなら第二で充分ですわよ」
この世界では、第一と第二では大きく違う。例えば結婚した場合、第一婦人に許可を得なければ第二婦人とは結婚できない。
最も、これは二人ともという意味であって、どっちか1人で良いなら、第一婦人と離婚して第二婦人を取る事も男には出来るのだが。
それでも一夫多妻制においては第一婦人と言うのは一種のステータスだ。
これと同じ事が恋人同士でも言えて、結婚生活の縮小版がこの世界の恋人関係と言える。
「私なら…ですか? 何故ですか?」
「だって、貴方は私の知っている限り、凄い努力家なんですもの。それに私は貴方と一緒に居て楽しそうにしている黒木様も好きなのですわ」
「それは、大雑把に言うと黒木君と一緒に私も気に入ってくれたという事なの?」
「そうですわね。それに、恐らく黒木様にとっての一番は白百合さんなのですわよ。恐らく私以外の誰であってもそこは不動だと思いますわよ」
「……」
そうか、黒木君の一番は私なんだ。
まずい、顔がどうしても赤くなっちゃうよ。
「だから、このお話は、白百合さんが駄目っていうのであれば諦めるそういう話しなのですわ、ですがもし許して頂けるなら、私くしもその輪の中に加えて欲しいのです。」
「そういうお話しでしたら、、断れる訳ないじゃないですか。 黒木君が多分、私が良いって言えば良いよ位の事は言っているのでしょう?」
「その通りですわ。だけどあくまでも白百合さんが良いならの条件つきなのですわ」
「仕方ない…良いですよ」
「本当に良いの白百合さん」
「まぁ、嫌かどうかと言えば嫌ですけど、、遅かれ早かれ黒木君はモテるからこうなると覚悟はしていたし…相手が金剛さんなら…良いですよ」
「ありがとうございますわ」
「私だって、相手が金剛さんじゃ無ければもっと考えました。だけど一生懸命仕事をしている、会長なら、良いですよ」
「私くしも黒木様程ではないでが白百合さんも大好きですわ」
「私も黒木君程ではないですが金剛さんも好きですよ」
この世界の男性は複数の女性と結婚するのが普通だ。
それならば、自分が好きな人で固めた方が良いに決まっている。
だが、殆どの男性は女性が嫌いなのでお金を貰って結婚したり、形だけの結婚をして放棄している。
そういう意味では仲の良い仲間で固まって結婚するのは望ましいし、ストレスにならない。
そういった意味では白百合と金剛のような関係は正に理想の関係と言えた。
「それでは、白百合さんの許可も得ましたので、告白させて頂きますわね。 黒木様、私と付き合って下さいませ」
「はい、僕は白百合さんと同じように金剛さんも大好きです。付き合って下さい」
「…思わず気を失ってしまいましたわ、、ありがとうございます」
「金剛さん、そのうち慣れると思います。黒木君と付き合うとこういうのが毎日になるので」
この世界では、はっきりと好きという男は少ない。
又、男性が付き合ってという事も殆ど無い。
例えば一般的な物であれば
女 「私と付き合って下さい」
男 通常「ああ」、良いパターンで「宜しく頼む」
こんな感じでだ。
「これが毎日なのですか? まさに夢の様な毎日なのですわ」
「楽しいのですが、汗はかきっぱなしで、心臓はドキドキしっぱなしです。制汗剤とタオルは用意した方がよいですよ」
「そうですの? 有難うございます」
やっぱり白百合さんは優しくて良い子だ。
私はそう思った。
他の女なら、こんなアドバイスはしない。
「あの、そろそろ、ご飯に戻りませんか? 僕お腹すいちゃって、沢山あるから金剛さんも一緒に食べようよ」
「良いのですか?」
「私の分も食べていいよ」
そして、金剛里香は二人のあーんを目撃する事になった。
それを見て羨ましいと思っていたら、二人してあーんをしてきた。
私はオズオズと口を差し出した。
黒木様、白百合さんの順に食べた。
私もお返しとばかりに二人にあーんをした。
これって何の小説?
そう言える程に充実した時間だった。
周りの女子は始終、物凄い顔で睨んでいたが白百合さんと同じように気にしなかった。
こうして見ると黒木様と付き合えたこともそうだが、白百合さんと友達になれたのも嬉しい。
彼女となら黒木様抜きにしても親友になれたかも知れない。
一瞬、二人も恋人が出来た。そんな錯覚がした。
彼女とならこの先も旨くやっていけるだろう。
そう思うと、これからの楽しい毎日を思ってしまい迂闊にもよだれを垂らしてしまった。
そんな私を白百合さんは「解るよ」そんな感じの生暖かい目で見ていた。
黒木様は不思議そうな顔で見ていた。
ただ、これだけでも夢みたいなのにこれですら、まだ始まりに過ぎない事を私は知らなかった。
東条楓 ~応援~
私の名前は東条楓。
この学園の副会長だが、それよりも剣士として有名だ。
母は鬼姫と言われる有名な剣道家でそれはとても美しくて強かった。
そして小さいながら道場を開いている。
小さい頃の私は母の様になりたくて竹刀を握った。
それが私の剣道人生の始まりだった。
私は正直言ってブサイクだ。この学園でブサイクな女ベスト5を選べば必ず入るだろう。
だから、直ぐに恋愛や青春に見切りをつけて剣の道に打ち込むようにした。
だが、ある時に気が付いてしまった。
私には味方が居ない事に。
この学園には剣道部が無かった。
だから、私は剣道部をたちあげた。
そして僅かながらに部員も入ってきた。
私なんかについて来てくれたんだから、そう思い熱心に指導した。
母から学んだ事を教えてあげたい。そう思って指導したら、1人も残らなかった。
私がどうして辞めるのか聞いたら
「ネチネチ言われてやる気がなくなった」
皆にそう言われた。
だけど、剣道にはこの細かい指導はどうしても必要なんだ。
剣道は武道でありチャンバラ遊びじゃ無いのだから。
その事を説明したら
「剣道が幾ら強くても、周りからブーイング受けるだけじゃないですか?」
「先輩と一緒に大会に出ても、カマキリ女のいる学校と馬鹿にされるだけですし…もう無理です」
「正直、臭いし男にモテないし、こんなスポーツやる意味ないです」
剣道その物を否定する者を引き留めても仕方ない。
そのまま辞めてもらった。
幸いな事に私は、全国大会の優勝者なので剣道部は存続できた。
但し、部員は私1人だ。
だから、いつも1人で素振りしている。
それしか出来ない。
だが、この学園には金剛里香がいた。
金剛里香は昔は私と同じ剣道少女だった。
最も、小学校レベルの話しだが。
そこで、稽古相手をお願いしたのだが、「もう剣道は辞めましたわ」と断られてしまった。
それでもとお願いしたら、「生徒会に入ってくれるなら良いですわ」そう提案された。
こうして私は副会長になる代わりに金剛に練習相手になって貰っている。
金剛にとって生徒会を頑張る事が私にとっての剣道を頑張る事と同じなのだろう。
金剛は生徒会の仕事を一切手を抜かない。
誰も期待なんてしてくれないし、一生懸命頑張ったって評価されない。
なのに、彼女は居残りしてまでも頑張る。
私がもし男なら多少ブサイクでも惚れるかもしれない。
だが、男は元より女ですら彼女を評価しない。
流石に直接褒めたりしないが、私はそんな彼女を誰よりも評価している。
何しろ彼女はもう剣道は辞めたのに律義に私の練習相手をしてくれるのだから。
最も、小学校で辞めてしまった彼女では余り練習にはならないのだが。
それでも1人でやる練習よりは寂しさを感じないだけ楽しい。
だが、最近では私は剣道その物にやる気を無くしつつある。
それは金剛にとっての生徒会の仕事と同じで誰も評価をしてくれないからだ。
練習も1人、大会に出ると悪者扱い。
酷い時には罵声も浴びせられる。
「そんなカマキリ女に負けるなよ」
「翔子ちゃん頑張ってそんなカマキリみたいな女なんか叩きのめしちゃえ」
だれも私なんか応援してくれない。
精々たまに金剛が見に来るだけだ。
だからむきになって叩き潰した。
そして益々嫌われていく。
このまま剣道を続けていてなんになるのかな。
思わず、そう呟いてしまった。
そう呟いてしまってからは嫌な事ばかり考えてしまう。
誰にも認めて貰えず、ただ嫌われるだけの剣道。
どうして私は剣道を続けているのだろう?
勝ってもだれも喜んでくれない。
学校に賞状やトロフィー飾られるし、表彰はされるけど誰も私を見てくれない。
今は戦国ではない、剣道が強いからって人生にとって何か得になるのだろうか?
母の様に魅力が無い私では道場を継いだ所で直ぐに潰してしまうだろう。
ただ強いだけの剣道など無価値ではないだろうか?
「何か悲壮感がこみあげている顔をしていますわね」
「まぁな、最近色々と考えていてなぁ、そう言えば金剛最近やたら楽しそうだな?」
「私くしは、そうですわね、毎日が楽しくて仕方ありませんわ」
「そうなのか?何か良い事でもあったのか?」
「えぇ、それは置いといて何を悩んでらしたの? 私くしで宜しければ聞きましてよ」
「実は」
私は自分の思いを全て金剛に語った。
こいつなら私の思いを解ってくれるだろう。
「そんな事で悩んでましたの?」
「そんな事って、私にとっては重要な事だ」
「そうですわね、でしたら東条さんにも私くしの幸せをお裾分けいたしますわ」
「お裾分け?」
「次の大会を楽しみにしていると良いですわ」
そして、翌週になり全国大会の個人戦が始まった。
正直、今の私は余り気合が入っていない。
相変わらず、私は悪者あつかいだ。どこからともなくカマキリと馬鹿にする声も聞こえる。
「はぁ、もう引退しようかな」
私はこの大会を最後にもう剣道を辞めようかそう考えていた。
金剛はいったいこの大会で何をするのだろうか?
金剛は少し遅れてきた。そしてその横には白百合京子が居た。
もう一人連れてきたのか、、確かに嬉しいが、それが何になるのだろう。
だが、その横に良く見るともう一人いた。
「あれっ 男の子?」
あれは、美少年で有名な黒木翔だ。
うん、彼が見てくれるならテンションはあがるな。
【周り】
「あれっ剣道の試合に男の子が来ている、珍しいね」
「本当、ボーイッシュな女じゃない? こんな汗くさいスポーツ見に来ないって」
「でも、あれ」
「うん、絶対に男の子だよ。しかも凄い美形、、、誰の応援に来たのかな」
「多分、あの美少女剣士にきまっているでしょう」
「天上心美かぁ、、あの方なら、、ありかな?」
そして、ついに私の順番になった。
相手は天上心美だった。
事実上の決勝戦ともいえる組み合わせ。
天上心美は大胆にも黒木翔の方にむいて投げキスをしていた。
普通はそう考えるよな。
こんな汗くさいスポーツを応援にくるとしたら美少女の自分の応援に違いないと。
そしていつもの様に私にはブーイングが始まる。
「あらっ、あらっ楓さんはいつも嫌われておかわいそうに、私は美少年の祝福で試合にあがるというのに」
「そうか、いつもの事だ」
「今日の私はいつもよりテンションがあがっています。貴方なんか瞬殺で倒してみせますよ」
「そうか、やれるもんならやって見な」
黒木翔は今日を楽しみにしていた。
白百合さんと金剛さんに囲まれた状態でスポーツ見学。
黒木的には両手に花のデートだ。
しかも、金剛の友達の応援で来ている。
黒木は事前に事情について金剛より聞いていた。
だから、応援する為に仕込みをしてきた。
そして、東条楓を見た時にテンションがあがった。
黒木的にはクールビューティーな美少女だ。
そして黒木は上着を脱いだ。
その姿に周りは目を奪われた。
「黒木様、そのお姿わ、、」
「黒木くん、ちょっとそれは目の毒かな」
冷静な振りをしているが、二人して油断したら鼻血がでそうな程真っ赤な顔になっていた。
【周り】
「嘘、男が何であんな薄着なの、、ねぇあれ」
「試合なんて見てられませんわ」
黒木の姿はさらしを上半身に撒いた。いわゆる応援団スタイルだ。
もちろん、この世界にそんな応援をする男はいない。
基本、男は肌を晒さないのがこの世界の基本だ。
そして、女を嫌うのでこんな事お金を積まれてもする男はまず居ないだろう。
こんな応援の仕方は漫画やドラマにも無い。
男の肌を見たせいか、会場は鼻をハンカチで押さえる人間、慌ててトイレに駆け込む人間すら出ている。
「ふっ男にあそこまでさせてしまう私の魅力が恨めしい」
「そう…」
(黒木君は金剛が連れてきたんだ、あれは私の応援だ)
そう思ったら凄く気合が入った。
「はじめ」
「フレーフレーとう、じょう、フレフレ東条、フレフレ東条」
「嘘…私の応援じゃない…東条の応援…」
天上心美はこれでもかとアホ面を晒していた。
私は容赦なく面を打ち込んだ。
「一本それまで」
「アハアハあはははは、嘘だ」
天上心美は信じられない物を見るように私を見ていた。
【周り】
「嘘、あの美少年の応援相手 東条楓なの」
「あの、カマキリの応援で上着を脱ぐなんて、、信じられない」
「だけど、これであのカマキリを貶したら、あの美少年に嫌われるよ?」
「今日はブーイングやめておこうか?」
「そうだね」
結局、その後の試合も何時も以上に力を出した、東条楓の1人舞台だった。
白百合京子も金剛里香も下を向いて鼻血を垂らしていた。
私は表彰式が終わり、賞状とメダルを受け取ると黒木君の所にむかった。
初めて応援をしてくれた人。
しかも、あんな恰好までして大きな声で応援してくれた男性。
感謝しかない。
これが一番私の欲しかったものだ。
「黒木君、応援ありがとう。」
「東条先輩、凄かった。かっこ良かったよ」
「本当に、そう思う? 本当にかっこ良いって思ってくれたの?」
まずい、涙が出て来た。
「うん、だってあれは相手に打たせずにして勝つ。昔の剣豪のような剣だもん。初めてみました。」
「わかるの?」
「はい、あまり強くないけど昔し少しだけ剣道をしていたから」
「そうなんだ、、剣道をしたことあるんだね。」
「本当に少しだけです。だけど、本当に東条先輩かっこ良かったなー」
「興味あるなら、少しで良いから剣道場に顔出してみる? といっても私しかいないのだけど」
「良いんですか? だったら今度顔出させて頂きます。」
「絶対に顔出してよ」
「はい、それとは別に東条先輩、優勝おめでとうございます!」
黒木君は私に近づいてくるといきなりハグしてきた。
「黒木君!」
「僕は、先輩の剣道が好きなんです。辞めたりしないで下さいね」
「わかった…」
私は顔を真っ赤にすると固まってしまった。
だって、上半身があれでハグだよ。
幾ら私でも平常心でいられるわけ無いだろう?
一言だけ返しただけでも凄いと思う。
黒木君は我にかえった、白百合京子と金剛里香に引きずられていった。
もう、私が剣道を辞める事は無いだろう。
だってあれ程の美少年が私を応援してくれているのだから。
西城歩美 ~怪我したけどラッキー~
私の名前は西城歩美と言うのだよ。
背が低くて138センチしかない。
私みたいな背が低く子供みたいなタイプは本来この世界では勝ち組なのです。
この世界の男は基本、女らしい女は好まないの。
どちらかと言うと女らしくない女が好みの人が多い。
私の様な胸が無い女はモテる特徴の一つ。
つまり、貧乳こそが正義なの。
更に私はもの凄く背が低い。
大人の女性は気持ち悪いが、妹等家族で過ごすからなのか妹タイプならいける、そういう男性もまた多い。
完璧なロリっ子に生れた私こそが需要がある、いわゆるモテ女のはずなの。
だけど…
「あの子気の毒ね」
「おしいねあれで顔が可愛ければ彼氏の1人位作れるのに」
「他が完璧なだけに痛々しいわ」
そう、私には決定的な欠点があった。
物凄く、可愛くないのだ。
私は、いつも良く知らない男にぶつかられる。
「ごめん大丈夫?」
「大丈夫ですの」
「げっキモイ」
よくある事、もう慣れたよ。
これはいわゆる男の遊び。
好みの女の子にわざとぶつかりそこから出会いを始めるという物。
私は後ろからみればロリっ子美少女なので良くやられる。
これで可愛ければ、
「ぶつかって悪かった」とか言って貰えてワンチャンス貰える。
つまりアピールするチャンスが男から貰えるという物なの。
普通の女子なら喜ぶイベントなのだが、私にとってはただ痛いだけだ。
何しろ後ろからぶつかられて傷だらけになった挙句に馬鹿にされる。
正直言って、【これいじめじゃないかな】そう思ってしまう。
今日もまた男に突き飛ばされた。
いつもと違うのは結構強く突き飛ばされたので痛くてすぐに起き上がれなかった。
勿論、男は私の顔を見るなり走って逃げた。
余りの痛さにそのままでいると今日は何時もと違いそこから声を掛ける男がいた。
「あの、大丈夫?」
大丈夫な訳ない、すごく体が痛い。
だけど、この男も私の顔を見たら逃げ出すに決まっている。
「良いから、放っておいて」
私はヒステリックに怒鳴ってしまった。
どうせ、顔見たらすぐに立ち去るのでしょう?
怪我したってブサイクだから助けてくれないのでしょう?
「大丈夫じゃなさそうだよ? 救急車でも呼ぼうか?」
「大丈夫です…」
「じゃぁ歩けるようになるまで傍にいるよ」
私は彼の方を振り返った。
これでいなくなるだろう。
あれっ可笑しいな、私の顔を見たのに居なくならないなんて。
「本当に大丈夫?病院行くなら付き添おうか?」
「…….」
あれっ、、凄い美少年。
何で、何で心配してくれているのかな。
「とりあえず、足擦りむいているね、よいしょっと」
嘘、何で私の足にハンカチなんて撒いてくれるの。
「ああああ、ありがとう。」
「それより、本当に大丈夫なの」
「少し痛いけど大丈夫です」
私は立とうとしたが足が痛くて立てなかった。
「病院、自宅、学校 何処に行きたいの?」
どうしよう? もしかしたら足挫いたのかな?
「じゃぁ病院」
「解った、よいしょ」
嘘、嘘、嘘、嘘、嘘、嘘、 私お姫様抱っこされている。
そして、彼はタクシーを呼び止めそのまま一緒にタクシーに乗ってくれた。
病院につくと待合室まで肩を貸してくれた。
何が起きてしまったのかな。
こんな事普通じゃありえない。
この世界では考えられない事だ。
普通の男性は本当に女と関わるのを嫌がる。
例え、女が困っていても余程の美人でなければ放って置く。
それが余りに酷いので近年では死に瀕している人を見捨ててはいけない。
そういう法律が作られた程だ。
それでも見捨てる男は多い。
そして、世間的に優しいと言われる男でも電話位しかしない。
例えば、怪我して動けない女性を見かけたら、警察か消防署どちらかに連絡をするだけ。
それ以上の事はまずしない。
勿論、ついてなどいてくれず、そのまま立ち去る。
それですら、優しい男なのだ。
結局、黒木は治療が終わり、母親が迎えに来るまで付き添っていた。
最初、母親は黒木に対して、怪我をさせたのだから責任を取って欲しいと詰め寄った。
だが、その後で実は黒木は加害者ではなく、怪我した彼女に付き添ってくれていた、それが解り平謝りした。
「そう言えば、名前を聞いていなかったね」
「あ、私? 西城歩美です」
「僕は黒木翔です」
「うん、知っているよ? うちの学校の有名人だもん」
「えっ、歩美ちゃんって高校生だったの? 小学生じゃなかったの?」
「うん、黒木君と同じ、高校一年生だよ」
「そうだったんだ、てっきり年下だと思っていたよ」
「良くそう言われるから気にしないよ」
「よかった」
「でも何で、その、助けてくれたの?」
「うーん、可愛い女の子が困っていたら助けるでしょう」
可愛い? そんな事言われた事はないよ? キモイとしか言われない。
「そう、私、私、黒木君にとっては可愛いの?」
「うん、妹にしたい位ね」
妹? 本当の妹なら何時も一緒に居られるよね。だけど妹じゃ恋愛も結婚も出来ないよ。
「そうか」
「どうしたの?」
「うーん、何でもない」
「あっそうだ、僕学校へ行かなきゃ。今からなら午後の授業に間に合う」
「私は今日は休もうかな? 所で黒木君、何か歩美にして貰いたい事ある?」
男にここまでして貰ったんだもん。お礼しなくちゃお金かな? それともゲーム機とか?
傍で母親は顔を青くしながらその様子を見ていた。ここまでの事を男がしたんだ最低でも100万は見なくちゃいけないかも知れない。
「そうだな、そうだ、お兄ちゃんと呼んでくれない?」
「そんなんで良いの?」
「うん、だって歩美ちゃんって理想の妹みたいだから、お願いして良い」
「うん、解ったお兄ちゃん、勉強頑張って」
これ、少し恥ずかしいな。
「うん、頑張るよ、ありがとう歩美ちゃん、それじゃ僕はいくね」
でも、あの笑顔が見えるなら幾らでも言いたいかな。
「じゃぁねお兄ちゃん」
「うん、それじゃね歩美ちゃん」
黒木君は手をブンブン振ってくれた。
私も黒木君が見えなくなるまで手を振った。
周りの目が痛い。
看護婦も他の患者も私を睨んでいる。
だけど、一番怖かったのは…お母さんだった。
「歩美、お母さん心配したのよ…それなのに美少年といちゃついているってどういう事なのかしら?」
「それは、えーと」
「しかも紹介もしてくれないのは何故かしら?」
この後、母親に2時間近くクドクド怒られた。
だけど、私はそれでもニヤつきが止まらなかった。
だって、今までの不幸が嘘のように幸せな一日なんだもん。
【IF】黒木のアイドル物語 落ちてから…釘宮恵
私の名前は《釘宮恵 くぎみやめぐみ》
アニメの声優兼仮面アイドルをしていた。
本業は声優で、私は本当は、それ一本で生きていこうと思っていた。
実際に声優として人気があるからそのままで良いと思っていた。
だが、世の中はそれだけで許してくれなかった。
「零の使い魔」という名前のアニメのヒロイン役で自分でも驚く程の人気が出てしまった。
アニメの内容は魔法学園に通うヒロインが情けない男の子を召喚した話だった。
ドラゴンやサラマンダー等強力な使い魔を召喚したり可愛い動物を召喚するなか普通の人間を召喚したヒロインは馬鹿にされた。
だが、ヒロインの召喚した使い魔は女では無く、貴重な男だった、しかも線が細い美少年。
更にその少年は巨大なロボットをクリエイトする力を持っていて、そのロボットの戦闘力でのし上がっていく話だ。
そのヒロインの水色の髪のメイジの声優をしてから私は自分でも驚く程の人気が出た。
こんな世界に居ない「あんた馬鹿~っ」と男を罵倒するヒロイン、普通はあり得ない話なのだが。
貴重な男性を犬扱いするキャラクターが女子に受け、あり得ない筈の設定に男子が嵌った。
こんな男をムチ打つような最低の女…どうして好きなのか解らないわよ。
だが、この成功が失敗だった。
だって私は凄いブスなんだから。
一切のメディアに顔出ししない予定だったが、貴重な男からの人気の為に姿を出さずにはならなくなった。
そこで
「アニメのキャラクターの固定観念を崩したくないので」と言う事で仮面をつけてメディアに顔を出した。
背が低くスタイルの良い私は受けが良かった。
しかも、ツンデレボイスで人気が出てしまいCDまで出す事になったわ。
そこ迄は良かったのよ。
人気が出たことにより、女性からも、男からも仮面の下の顔を見て見たい。
そんな話が出てきだした。
その結果…ストーカーに会い(相手は女)
とうとう、素顔が晒されてしまった…その結果、全てを失った。
最初は凄く嫌われてネットでも誹謗嘲笑が多かった。
「こんなブスだったなんて」
「こんなキモイ女がレイズたんだったんて」
「死んで欲しい」
それはどんどん増えていき、そして私は気がついたら《男性が顔を見たくもない芸能人ナンバー1》になり、事実上無職になった。
勿論、今の私にはファンも居ない。
お金を稼いでいたから生活には困らない。
だから、人の目が怖いから、ひたすら引き籠っていた。
今の私は凄く世界が怖い。
もし私に美しさがあればきっと素敵な旦那さんが出来たのかも知れない。
身長は145?で胸は無い。
髪はヒロインの様に水色じゃないけど、黒髪でセミロング。
いわゆるロリ体型。
男の子の殆どは巨乳や背の高い女性を嫌う…まさに完璧な美少女なのよ。
仮面さえ被ればね…あはははっ、私って顔以外は何も欠点が無いのに…
ここまでの容姿や才能をくれたのなら顔もくれても良いじゃない。
とうとう、罵倒や冷やかしのメールや電話も掛かっても来なくなった。
禊がおわったのかな。
誹謗中傷は無くなったけど、世間は私を無視する事に決めた様だ。
まぁコンビニにあるゴシップ漫画に「実はレイズ(ヒロインの名前)はとんでもないブスだった」とか書かれたらお仕舞よね。
名作と言われた「零の使い魔」のDVDも今や古本屋とかで80円で売られている。
私のせいで名作の価値が無くなっちゃった…本当に疫病神ね私は。
引き籠り生活を続けていると、久しぶりに電話が鳴った。
電話にはブルーのランプがついている。
嘘、私に男からの電話…あり得ないわよ。
※ この世界のスマホや電話は男からの電話の場合、青いランプがつきます。
どうせ、嫌味かクレームの電話よね…まぁ良いわ、男の声が聴けるなら…
「この電話、釘宮恵さんの電話ですか?」
「そうよ! それで何かよう!」
「あの僕、女の子の友達が居なくて、良かったら友達になって貰えませんか?」
ななななっ何を言っているのかしら? この人、青いランプだから男よね…
だけど、可笑しいわね! 女の子が男の友達が出来ないなら兎も角、男の子が女の友達が出来ない訳ないじゃない。
それこそ、公園で「僕と友達になって下さい」って叫べば、幾らでも集まってくるわよ。
「ななな何を言っているのかしら? 落ち込んでいる私をからかって何が面白いのかしら?」
「からかってませんよ、僕は最近ネットで貴方の事を知ってファンになったんです、だからからかってませんよ」
そうか、もしかしたら、思った以上に齢が若いのかも知れないわね。
もし、ネットで私の顔を知らなければ、うん私は理想的な女の子だ。
「あなた、私の顔を知っていっているのかしら?」
「はい、凄く可愛らしい顔ですよね」
やっと解った気がする。
この人は今迄余りネットをしなかった人だ。
だから、私の素顔を知らない。
恐らくは声優兼、仮面アイドルの私しか知らない。
確かにあの仮面はレイズを模した仮面だから凄く可愛い。
そう言う事か…
「そうなんだ、ありがとう、でもいきなり会うとか怖いから、メールと電話からで良いかしら? そういう友達なら良いわよ」
「有難うございます」
「良いのよ、暇だからね、好きな時に電話でもメールでもして頂戴」
「有難うございます」
私だって誰かと話したいわ。
しかも相手が男なら凄く嬉しい。
私の顔がバレるまでの暫くの時間なのは解っているわ。
だけど…久々に聞いた男性の声…話さないという選択はどうしても出来なかった。
【IF】 黒木のアイドル物語 君は僕の唯一のアイドル…釘宮恵
僕にとってこの世界は辛い事ばかりだ。
男女比が大きく男に偏って、本来は男にとっては天国の様な世界。
だけど、僕の目は凄く可笑しい。
殆どの女性が、気持ち悪い化け物の様見える。
テレビのアイドルはとんでもない化け物。
女芸人は少しは真面な化け物に見える。
兎も角、どうしてなのか? 今の所僕の周りの女性で真面に見える存在は居ない。
幸い…いっそうの事目を潰してしまおうか?
そう考えていた。
だが、駄目だ…見てしまった以上はもう、この目を潰しても全ての女性のイメージが化け物に思えると思う。
奇形児、ブス、不細工、キモイ それに女を足して潜っても駄目だった。
何処にも真面に見える女性は居なかった。
美少女、美女なんて贅沢は言わない。
真面なら….そう思って探していた。
この世界は…酷い。
アニメにフィギュアまで醜い化け物人形…何処にも救いがない。
そんな僕の数少ない趣味はライトノベルだ。
小説を購入→表紙を破り捨てる→ページは飛んでしまうが挿絵を破る、これで僕専用の小説が完成する。
そして気に入った物があれば、テレビ番組が聞けるラジオで音声だけを聞く。
画像さえなければ、何とか楽しめる…辛い、耳の保養は良いから、目の保養が欲しい。
今の僕に普通に見える、グラビア写真やプロモーションビデオをくれるならローンを組んでも買うと思う。
諦めきれず探し続けていると、何気なく、ブスで潜っていると気になる記事があった。
《男性が顔も見たくもない芸能人 ナンバー1》
凄く気になる…もしかしたらとはやる気持ちを元に、その醜いという顔の画像を探した。
頭の中に衝撃が走った。
背は低いけど…本当の美少女だった。
昔、秋葉原で見た声優兼アイドル、その姿だった。
僕にとって、唯一存在するアイドル、他は今の所化け物しか居ない。
直ぐに近くのブック市場に行った。
釘宮恵写真集は3冊あった、その全てが100円コーナーにあった。
CDは山ほどありこちらも100円 全種類9枚買いそろえられた。
DVDは4枚ありこれは4枚セットで250円の特売だった。
アニメは買わない…だって絵が気持ち悪いから…と思ったけど安いから買った。
結局、5000円も使わずに一揃え、揃ってしまった。
家にそれらを置いて、神保町迄足を延ばした。
ほぼ引き籠りの僕が此処まで来たのは凄いと思う。
【周り】
「あれって男じゃない?」
「男じゃなくて多分お鍋だよ..だけど綺麗」
「そうだよね、もし男だったら男性専用車両かタクシーに乗るって」
よく考えたらタクシーに乗れば良かった。
そこで、ポスターと追加の写真集を買って帰った。
家中にお札代わりに釘宮恵のポスターを貼った。
ようやく悪夢が少し減った気がした。
不気味な仮面をつけているけどその下は紛れも無く美少女だ、そう考えたら凄く嬉しい。
写真集も同じ仮面をつけているけど、うん化け物じゃなく、その下は…そう考えたら水着も凄く可愛く見えてくる。
僕はオタクではない筈なのに部屋中が《釘宮恵 漬け》になっていた。
だが、とうとう本物に会いたくなった。
どうしたら会えるのだろうか?
アイドルならコンサートに行けば会える。
だが、釘宮恵さんはもう引退していた。
仕方なく僕は《男性保護機関》の出張所に相談しに行った。
案外、僕は現金なのかも知れない、普段は怖くて歩きたくない道を普通に歩けた。
「はぁ、元アイドルと付き合いたいの? その女は結婚してないんだよね」
相談員を男と女と選べたので男性を選んだ。
「はい」
「それじゃ、住所を聞いて押しかければいいだけじゃねぇ…まぁ9割大丈夫だろうよ」
「あの、相手は人気者ですよ?」
「はぁ~女は飢えているからさぁ、あんたが最後までやってやるって言えばもう離れる訳ないだろうよ、ここに相談する位だから、それも念頭に入れているんじゃねーのか」
話を聞いていて良く解らない。
仕方ない、ので女性に変わって貰った。
女性のアドバイザーの方はまるで刑務所の面会室みたいな作りの部屋だった。
「確か、黒木さんは記憶が無く施設に入っていたのですよね」
「はい」
「まず、アイドルの方は、半分男性とお付き合いしたくて活動している方が殆どです、アイドルの事を愛$(ドル)って言ってお金で愛を買う様な人と馬鹿にする隠語がある位です」
「どういう事ですか?」
「半分は、お金を貰うのでなく、お金を払って露出をして男性と付き合いたいそう言う方が多いですね…まぁ真剣に芸能活動している人も居ますが少数ですね」
マジか…アイドルだけは違うと思っていたが、そんな事無かった。
「アイドルや女優は違うと思いました」
「流石にハリウッドとかは違いますが、それでも男性からのファンレターは返さない事は無いらしいです」
「だったら、僕がアイドルと付き合いたいと言ったら紹介とかして貰えるのですか」
「連絡先位ならお教えしますよ? 一体誰なんですか? その幸運な女性は?」
「釘宮恵さんです」
「あの山姥声優ですか?」
「…」
「あっすいません、あの顔に問題があって引退された方ですよね」
「はい」
僕には凄い美少女なんだけど…そうなるのか?
「最初に言って置きますが、殺したいとか? 嫌がらせ目的じゃないですよね」
「何で、そんな事聞くんですか?」
「いえね、そう言う方が、多かったので」
「違います、あの素敵な声が凄く好きなんです…だってあの」
「解りました、本来はこんな事はしないのですが、両手全ての指紋採取と、決して嫌がらせではなく交際目的という誓約書を書いて下さるなら、彼女の個人情報をお渡しします」
「宜しくお願い致します」
凄いなこの世界は男性に限り…個人情報の保護は無いに等しい。
釘宮恵さんみたいな状態でなければ、芸能人の住所や連絡先が簡単に教えて貰えるんだから。
「あの…こんな簡単に教えて大丈夫なんですか?」
「何を心配しているんですか?」
彼女は何を言っているか解らない、そんな顔でこちらを見た。
「そうですね、例えば男性に襲われたり、そのレイプとか…」
男性にだって不細工はいるし、凄く嫌いなタイプの男性なら嫌がるだろう。
前の世界だって、実際に女性が男性を襲った事だってあった。
「あはははっ黒木さんは面白い人ですね、確かに好みの男性じゃ無ければ嫌でしょうが1回こっきりなら女性は拒まない可能性が高いですよ? 万が一妊娠でもしたら莫大な一時金が入りますし、男性を満足させたという事で、その関係が立証されたら《優良母体認定》が貰えますからね、第一、女嫌いの男性が襲うなんて夢物語です」
「それ本当ですか?」
「はい、もし黒木さんが女の子襲うなら、私に問題無いって言われたと言って貰っても良いですよ…あははは可笑しい、あっ怪我はさせないで下さいね、殴ったり蹴ったりは暴行ですから」
何だか凄いな。
結局僕は、釘宮恵さんの電話と住所メアドとパーソナルデーターを貰った。
ただ、パーソナルデーターはあくまで本人の申告だから誤魔化しが入っているらしい。
後は、連絡するだけなんだけど…相手はアイドルだよ…そう簡単に出来ない。
心臓がドキドキする…
何回もスマホをとりだしては、手にして置くを繰り返した。
その結果、26回目で勇気を出して電話番号を押し切った。
「この電話、釘宮恵さんのお電話ですか?」
「そうよ!それで何かよう!」
夢にまで見た彼女の声が返ってきた。
※ 一応こちらは IFの物語にする事にしました。
このヒロインを出してしまうと他のヒロインが食われてしまう可能性がある為です。
その代り、この恋愛の話は数話連続で完結予定です。
【IF】 黒木のアイドル物語 天使の様な彼との生活…釘宮恵篇(終)
「この電話、釘宮恵さんの電話ですか?」
「そうよ! それで何かよう!」
勇気を出して良かった。
夢にまで見た彼女の声が返ってきた。
「あの僕、女の子の友達が居なくて、良かったら友達になって貰えませんか?」
この世界ならもしかしたら友達になって貰える可能性もあるのかも知れない。
「ななな何を言っているのかしら? 落ち込んでいる私をからかって何が面白いのかしら?」
この話し方は間違いなくあのツンデレボイスだ、まさか生で聞けるなんて思わなかった。
「からかってませんよ、僕は最近ネットで貴方の事を知ってファンになったんです、だからからかってませんよ」
「あなた、私の顔を知っていっているのかしら?」
「はい、凄く可愛らしい顔ですよね」
世界はどう言うか解らない、僕にとってはたった1人の美少女だ。
「そうなんだ、ありがとう、でもいきなり会うとか怖いから、メールと電話からで良いかしら? そういう友達なら良いわよ」
「有難うございます」
「良いのよ、暇だからね、好きな時に電話でもメールでもして頂戴」
「有難うございます」
この日から毎日が楽しい、本当にそう思えるようになった。
一日中引き籠り、恵さんのプロモーションを見たり、CDを聞いた。
仮面の下が本物の美少女だと解っているから、普通に見れる。
電話はどうしよう? メールは?
凄く悩ましい。
正直言えば、長電話したい、更に言えばテレビ電話もしたいしメールもしたい。
だけど、恵さんだって忙しいから我慢した。
最初は10分だけと決めていたが、気がつけば15分、30分と増えていき、気がつけば3時間以上話すようになっていった。
恵さんは凄く優しい。
僕の要望に併せて偶にアニメのキャラクターボイスで話してくれたりする。
本当はテレビ電話で話したいけど、彼女は凄く拒否していた。
どうしてもとお願いいしたら、仮面付けてならとようやく少しだけ話してくれた。
逢いたい、本当に逢いたい本当にそう思った。
【釘宮恵SIDE】
人気が落ちて全てが過去の栄光になった、私に青いランプの電話が鳴った。
絶世期でも無かった、男性からの直電。
まさかと思い電話に出たら…
「この電話、釘宮恵さんの電話ですか?」
「そうよ! それで何かよう!」
「あの僕、女の子の友達が居なくて、良かったら友達になって貰えませんか?」
男の子が友達になりたいっていうんだから…信じられない。
私、山姥なんて言われているんだからね。
綺麗な女の子だって男友達を作るのは難しいのにこの顔じゃ無理な筈だよね。
これは奇跡としか思えない。
「ななな何を言っているのかしら? 落ち込んでいる私をからかって何が面白いのかしら?」
ちゃんと返せないのは仕方ないと思うのよ。
「からかってませんよ、僕は最近ネットで貴方の事を知ってファンになったんです、だからからかってませんよ」
本当に真剣そうだった。
しかも声が凄く綺麗、顔は解らないけど美少年の様な気がする。
「あなた、私の顔を知っていっているのかしら?」
「はい、凄く可愛らしい顔ですよね」
そうか、この人は《仮面をつけた私》しか知らないんだろうな。
「そうなんだ、ありがとう、でもいきなり会うとか怖いから、メールと電話からで良いかしら? そういう友達なら良いわよ」
「有難うございます」
「良いのよ、暇だからね、好きな時に電話でもメールでもして頂戴」
「有難うございます」
もし私が美少女だったらもうこれでゴール。
この顔が凄く憎い。
男の子が私を好きになってくれそうなのに…
この男の子は本当に良い男の子だった。
電話もしてくれるし、メールもしてくれる。
しかも、男とは思えない程会話が旨くて、何時間も話してくれるようになった。
こんなに男がしてくれるんだから…私は声優として彼が喜ぶように話してあげた。
すると凄く喜んでくれた。
世間からは《声優 釘宮恵》は死んだ、だったら彼一人の声優になっても良いと思った。
本当は醜い私、なら私が演じた美少女キャラクター全部を彼にあげよう。
そう思った。
その反面、もしかしたら《ネ鍋なのか》と疑いがあった。
こんな優しい男性なんて居ない…
だが違った。
テレビ電話で見た黒木くんは凄い美少年だった。
こんな美少年芸能界にも居ない。
もし芸能界に入るならぜにーずが直ぐに売り出すだろう。
彼はやがて私に会いたがるようになった。
私だって会いたいよ…男に会いたくない女なんて居る訳が無い。
ましてあれだけの男性だもん、もし手を握れたらそれだけで1日幸せだ。
もしキスなんてしようものなら10年間笑っていられると…思う。
だけど、私には肝心の美貌が無い。
だけど…これ以上会わないのは酷い事している気がした。
だから彼を招く事にした。
本当は男性を部屋に招くのは良くない、マナー違反だ。
だけど、私は怖くて部屋から出られない。
夢の時間は終わりだ。
最後に顔を見せて謝って…終わりにしよう。
貴重な男性の時間をこれ以上奪っちゃ駄目だ。
【二人】
ようやく、恵さんが会ってくれる。
しかもいきなりお家デートだ。
ケーキ買って、花束を用意した。
緊張しながら、インターホンを鳴らした。
「いらっしゃい…」
どうしたのかな、かなり顔が青いな。
《嘘、男の子がケーキに花束なんて、凄く良い男の子なんだ》
「お邪魔します」
「ええっ、あっお花ありがとう…ケーキ迄買ってくれたんだね」
「うん、だってようやく会えたんだから」
《駄目だ、早く伝えないと黒木くんが可哀想だ》
「そう、だけどあたしは」
《私は手が震えた、その震えた手でマスクを脱いだ》
「うんどうしたの?」
「黒木くん、私、私マスクしてないよ?」
「うん、そうだね」
「そうだねって…この顔で平気なの」
平気も何も、凄い美少女じゃない、この世界でたった1人だけの美少女。
「うん、元から知っていたよ…その顔も含めて、好きなんだから」
可愛いって褒めてあげたいけど、違うんだよなこの世界は。
「本当に? ほんとにこの顔でも良いの?」
「勿論」
「あの、何か欲しい物あるのかな? 車、時計、無理すればタワマン位なら買えるよ」
「そう言うの要らないよ、それより家に上がって良い」
「ほんと? そうだね、何だかごめん、どうぞ」
《私はあわててた、出前を取らないと…だって振られるの前提だから何も用意してなかったし》
「ありがとう」
《恥ずかしいな、部屋の掃除もしていない》
「出前をとろうと思うけど、何が良いかな、初めてだしフランス料理のコースにしない?」
《初めての男性とデートなのにプレゼントも何も用意してない、まさか、まさかこんなことがあるなんて思わないわよ》
「冷蔵庫見ても良い?、材料があれば何か作るよ」
「そう…ありがとう」
「軽食で悪いけど、ケーキと飲み物があるから良いよね」
《男の子の手作り…嘘だ》
「あの、このオムライスハートが書いてあるんだけど..」
「だから、何? 好きで無ければ態々、住所や電話調べたりしないよ」
《私は頭がおかしくなったのかな…彼はきっとラノベの住民なんじゃないかな》
「そそそそ、そうなんだ! わたわた私の事が本当に好きなんだ…」
「そうだよ」
「だったら、だったら、結婚しなさいよ!」
《興奮して間違えた、これ引かれるわ…ついレイズのセリフを言ってしまった》
「流石にまだ結婚は、早いと思うけど、それはアニメのセリフだけど本気なのかな?」
《やっぱり引かれた、どうしよう…あり得ないセリフだわ》
「ごめんなさい…だけど本気だわ」
「それじゃ、結婚前提で付き合おうか? 最初は同棲からで良いかな?」
「えっえええええええええっ..良いの?」
「うん」
【釘宮恵SIDE】
次の日には黒木くんが私の部屋に本当に引っ越してきた…あり得ないわ。
4LDKだったらから1部屋を黒木くんの部屋にした。
一番大きな部屋にするとつもりだったんだけど….7畳の一番小さい部屋が良いと言って選ばれちゃった。
男性が一番狭い部屋だなんてあり得ないわ。
しかも部屋の中を除いたら…なにこれ、私ばかりなんですけど…どんだけ私の事が好きなのかしら?
信じられない。
黒木くんは施設に居たから物をあまり持っていない。
時計を買ってあげようと思ったら
「スマホがあるから良い」ですって…
男って本来はお金が掛かる筈なんだけど…黒木君は違う。
だけど、男にお金を使わないなんて女としてあり得ないわ。
だから「どうしても何かあげたいから」って言ったら…
本当に、本当に馬鹿なんだから…《恵》って真顔で言うのよ?
そんな者、男と暮らし始めた時点で全部捧げているわよ!
髪からつま先まで全部男の者、当たり前じゃない…馬鹿じゃないの?
結局、黒木くんが喜ぶのは全部私絡みばっかり….
私の素顔の写真が欲しいっていうから、スマホで撮ったら、そのまま引き延ばしてポスターにするし…ブスなのに凄く恥ずかしいわ。
何かして欲しいことあるかって聞いたら、コスプレして欲しいっていうし…
此処まで天使みたいだから、少し困らせようとして「お風呂に入ろう」って言ったら本当に入っちゃうし
「少し恥ずかしいね」だって…恥ずかしいのは私よ…だって男が入るわけ本当なら絶対に無いんだから…
しかも極めつけは、ついムラムラして押し倒しちゃったら、逆に押し倒されかえされちゃって…「良いの」だって。
私、女なのに、コクンって頷いちゃったわよ、仕方ないじゃない処女なんだから。
だけど…もう忘れられないわ、そのまま朝までなんて信じられないわ。
もしかして、私はエロ漫画か何かの主人公なのかしら?
じゃないと…こんな都合の良い男の子なんて居る訳無いわ…
まぁ、こんな事話しても絶対に誰も信じないわね、
自分ですら夢にしか思えないんだから。
本編スタート 黒木翔 ~ここは何処?~
僕の名前は黒木翔。
先週までは派遣でどうにか生活していたけど、この度、見事にクビになりました。
頑張って次の仕事を探してみたけど、このご時世、見つからなかった。
頼れる両親も居ない僕は家賃も払えずアパートも追い出された。
だから僕は漫画喫茶で寝起きしている。
だが、とうとう漫画喫茶に泊まるお金も無くなった。
このまま、乞食になるか、死ぬしかないのかな?
世の中不公平だ。
サイフの中は1000円だけ、今日からは漫喫にも止まれないな、どうしよう。
とりあえず、最後のお金でカレーでも食べよう。
多分これが真面な物が食べれる最後の日だ。
だが、幾ら歩いてもいつも食べていたカレー屋が無い。
あれっここは秋葉原なハズだよね。
今迄、何年も通った街だけど、こんな場所知らない。
おかしい、メイドさんも居ないし、アニメ関係の看板もない。
よく見ると、秋葉原に居たはずなのに周りはまるでオフィス街のようだ。
キョロキョロと周りを見回す。
本当に知らないここは何処なんだ。
「どうかなさいましたか?」
女性に声を掛けられた。
振りむいて後ろを見ると化け物が居た。
逃げなきゃ、僕は走って逃げた。
「どうかなさったのですか? 男性が走るなんて事情をお聞き…」
又、化け物だ、逃げなきゃ。
だが、何処に行っても化け物しかいない。
この世界は何時から化け物しか居なくなったんだ。
しかも、この化け物はメスが多いのか男のタイプは余り見かけない。
幸い、醜い以外に問題は無く襲ってこない。
ならば、仕方ない、相手にしない事にしよう。
だが、この化け物たちは僕を放っておいてくれない。
「あの、どうかされたんですか?」
「困っている事があるならご相談ください」
「道に迷っているなら道案内しようか?」
対応は凄く親切だ、ただ、人間に見えないだけ、そう考えよう。
そして、僕は何時までもこうしてても仕方ない。
かといって、見知らぬ化け物と話すのも怖い。
僕は、化け物を避けるように歩いた。
ようやく、お目当ての交番を見つけた。
交番に入って話しかけると婦警の恰好をした化け物がいた。
怖いし、気持ち悪いけど我慢して話しかけた。
「あの…すいません」
「どうかされました? 」
「あの、道に迷ってしまったようなのですが、秋葉原駅はどっちでしょうか?」
「秋葉原ですか、そんな場所は聞いた事はありませんよ」
「あの、だったら淡路町でも構いません。」
「それはどこですか? 」
どうしよう、ここは僕の知らない世界なのかも知れない。
ならば、仕方ない…
「あの、どうやら僕は、その記憶を無くしてしまったか、可笑しくなってしまったみたいです」
「そうですか、だったら持ち物を見せて頂けますか?」
「はい」
「何も身元が解るものがありませんね」
「そのようですね」
「貴方は貴重な男です。 記憶がなく行くところが無いのならこちらから、男性保護施設に連絡しますが良いですか?」
「男性保護施設ですか?」
「知らないのですか? 男性の場合はそこに行けば衣食住の面倒を見て貰えます。記憶もあやふやなら、とりあえず入所して見るのが良いとおもいますよ」
これでとりあえず、住む場所は貰えそうだ。
「お願い致します」
ここは何処か解らない。
化け物しか居ないけど、とりあえず、生活の基礎は手に入りそうだ。
元よりは良かったのかもしれない。
黒木翔 ~男性保護施設~
男性保護施設についた…
僕には涙しか浮かばなかった。
化け物のようなのは女だけかもと淡い期待を持っていたのだが、、、男も化け物だった。
僕自身、決して面食いでは無い。
寧ろ理想は低い方だ。
例えば、クラスの女子に告白されるとしたら、多分5~6人除いて断ったりしない。
だって、僕なんかと付き合ってくれる女の子なんてまず居ないから。
その5~6人だって友達からで良いならOKする。
その僕でも嫌悪感がこみあげるんだ。
レベルで言うならゴブリンやオーク、西洋の妖怪クラス。
実際にモンスターな訳では勿論ないよ、ちゃんと人間には見えている。
そうだな、よくテレビでドキュメンタリーとかで整形に失敗した人とか、事故に遭った人の醜い写真が出る事があるでしょう?
あれを数倍酷くした感じ。
そんな人しか居ないんだ。はっきり言ってあんまりだ。
「ようこそ男性保護施設へ」
「あ はい」
「最初に施設に入るに至って規約についてご説明させて頂きます。」
この施設は男性専用の施設なので女性の連れ込みは厳禁。
門限はなく何時でも自由に出入りして頂いて構わない。
一日2万円のお金を支給する。
その代わり、積極的に女性と触れ合うように努力する事。
女性とデートする時は別に5万円支給。
女性と結婚した場合は祝い金として500万支給、その代わりここをでて貰う。
「あの何で、そこまで優遇されているのですか?」
おかしい、いくら何でも話が旨すぎる。
「そこからのご説明が必要ですか? あぁ記憶が曖昧なお方でしたね」
「はい、お手数をお掛け致します」
「今から数百年前に戦争があったのは知っているわね」
「すいません。知りません」
「その戦争で核兵器が無数使われたのよ。人類の半分以上が滅びたわ」
「そんな事が…」
「その後、生き延びた人類は見事に世界を復興させたけど、、その後大変な事が起きたのよ」
まさか、それでこの世界の人間は醜くなったのか
「何がおきたのですか?」
聞くのが怖い、それが元で化け物みたいな外見になってしまったのか?
「正常な男性が生れなくなったのよ」
うん、違った
「正常な男子って何ですか?」
「正常な男子って言うのは子供が作れる男の事よ、正常じゃない男子は子供が作れない男の事。ここまで良い」
「はい」
「そりゃ酷かったのよ、男が生れる確率が当時は1%以下、しかもその1%以下の中の7割以上が…その立ちさえしないのよ?」
よくそれで滅びなかったな。
「良く大丈夫でしたね?」
「その後、頑張ったのよ、今ではインポの男性は少ないし、10%は男性も生まれてくるようになったわ」
酷い、せっかく男女比が1対10の世界に来られたのに、、人類が皆んな化け物しか居ないなんて。
「そうですか、それでやっぱり、核の影響で。多少外見とかも変わったりしたのでしょうか?」
この世界の人類が醜いのはやはり放射能とかの影響のせい?
「何のこと? 外見は何も変わってないでしょう? おかしな人ね」
「そうですか?」
「そうよ」
「それで僕はこれからどうすれば良いのですか?」
「そうね、見た所学生さんのようだから近所の学園に通いながら男女の触れ合いを目指して下さい」
本当は僕は24歳なんだけどね。でもゆっくり学校なんて通った事無いから、、良いかも、、
「解りました」
「後、何か聞きたい事はありますか?」
そうだ、これだけは聞かないといけない。
「僕の外見ってどうですか?」
「普通に美少年だと思いますが…何か?」
僕から相手が化け物に見えるのだから、相手からは僕が化け物に見える…なんて事はなかった。
良かった。
出会い
正直いってここでの生活は居心地は悪くないのだが、毎日が辛すぎる。
テレビを見ても化け物しか出て来ない。
物凄く、気持ち悪い化け物がフリフリスカートで歌を歌っている。
多分、これがアイドルなんだと思う、最悪だ。
お笑い芸人は少しはまともだけど…ブサイクだ。
これって凄く致命的なんだ。
ご飯も美味しいし、待遇も良いんだけど、いつも周りには化け物しか居ない。
一番近い状態だと、世界がゾンビだけになりました、だけど、このゾンビは凄く優しく襲ってこない。
そんな感じ。
そんな中に居たら、美味しい筈のご飯も美味しくない。
昨日なんて夜中にトイレに行った帰りに化け物を見かけて、怖さで自室のベットに潜り込んだ。
まぁ、少しは慣れてきたんだけどね。
そしてこの世界にきて3日目。
僕は学園に通う事になった。
まだ、時期は4月、新入生とそんなに学力の差はないだろう。
だが、物凄く苦痛だ、やはり若い化け物しかいない。
たちの悪い事に声は別に化け物の声ではなく普通に聞こえるんだ。
【周り】
「凄い美少年が歩いているよ、、あれうちの制服じゃない」
「転校生なのかしら、、あんな美少年が居たら見落とすわけないよね」
「私狙っちゃおうかな」
気持ち悪い。
学校につくと職員室に立ち寄った。
担任を紹介されて教室にいった。
簡単に自己紹介を済ませて席に着いた。
僕に向けてくる目が気持ち悪い。
好意を持ってくれているのは解るんだけど。
だけど、どうしても受け付けられない。
良く話しかけてきてくれる。
これが普通の人なら、嬉しいのに体が拒絶反応をおこす。
昼休み、食事を誘われたが僕はやんわりと断った。
食欲も無いけど、何か食べなきゃ、僕は牛乳とパンを買った。
食べる場所として、化け物を見ないですむスポットを捜し歩いていた。
裏庭に人が余り居ない場所を見つけて座ると、反対側にスカートが捲れているのにお弁当を頬張っている女の子が見えた。
あれっ 普通の足に見える。
まじまじとパンツから先に見える太腿をみた。
化け物には見えない綺麗な太腿だった。
そこから上へ顔を向ける。
そこに居たのは、前髪ぱっつんの凄い美少女だった。
もとの世界のアイドルだってここまで可愛い子は居ないと思う。
幾ら、男女比が1対10でもこの子位可愛かったら、さぞかしモテるだろう。
元の世界で、1万人に1人というアイドルの女の子が居たが、確実に、それ以上可愛い。
ここまでの美少女だったら1対10の世界でもそのハンデなんて吹き飛ばすだはずだ。
だが、どうしても友達になりたい。
化け物しか居ない世界で初めてみた人間に見える女の子。
今迄見た事が無い程可愛い子。
心臓はドキドキしている。
この子に嫌われたら、そう考えるだけで不安だ。
もしかしたら、この世界で1人しか居ないかも知れない、僕から見た可愛い女の子。
「駄目だよ、可愛い女の子がパンツ何て見せちゃ」
何で僕はこんな声の掛け方をしたんだよ。
ほら、彼女はキョロキョロと不審者を探し出した。
そして、目があった。最悪だ。
だが、変態と思われたくはない。
ここはこのまま押し通そう。
「だから、女の子がパンツなんか見せてたら駄目だって」
そういって足を閉じた。
周りからクスクスと声が聞こえる。
女の子は顔を真っ赤にしながら
「ごめんなさい、不愉快な物を見せて」と小さく答えた。
別に不愉快じゃないんだけど、どうしよう困った。
「別に不愉快じゃないけど、女の子なんだから気を付けないとね」
寧ろ、良い目の保養なんだけど言えないなこれ。
女の子は目を細めたかと思うと
「ブサイクな私の汚い物を見せてごめんなさい」
凄く悲しそうな顔で答えた。
何で、ブサイクなんていうのさ、、君は究極美少女じゃないか?
どちらかと言うと僕の方がブサイクになるよ。
「いや、何でそういうこと言うのかな? 凄く可愛いと思うし、その眼の毒だから注意しただけなのに」
「本当にごめんなさい…もうしません…あれっ可愛い?」
「そうだよ、可愛い女の子がパンツ丸見えでお弁当食べていたからさ、注意しただけだよ?」
「そ、そう…」
最初不思議そうな顔をしていたけど、彼女は顔を真っ赤にして俯いてしまう。
暫くすると彼女は急に何かを決意した様に
「ごめんなさい、お詫びにソーセージをあげるから許して、、はいあーん」
と言った。
良かった嫌われてないようだ…しかもこれって間接キスじゃん。
「えっくれるの? 有難う」
僕はソーセージを美味しそうに食べた。
何か返してあげたかったけど、食欲が無かったからパンと牛乳しかない。
仕方ないからこれを勧めた。
こんな物なのに彼女は嬉しそうに食べてくれた。
そしてお弁当まで半分わけてくれた。
凄く優しい女の子だった。
僕があーんと彼女に食べさせるとおずおずと彼女は食べてくれた。
凄く、嬉しい。
しかも、僕にも彼女があーんと食べさせてくれる。
嬉しさが止まらない。
泣きたくなるのをグッと堪えた。
僕は君に会えなければ自殺や目を潰す事を考えたかも知れない。
だって、僕の周りには化け物しか居ないのだからね…
たった一人の女の子。
それが白百合さん、君なのだから。
感謝しかない
白百合さんと別れて教室に帰ってきた。
よくよく考えてみれば、あれだけ仲良くなれたのだから「一緒に帰ろう」って約束すれば良かった。
そんな事を考えているとクラスの化け物女達が近づいてきた。
「ねぇ黒木くん、昼休みに白百合と一緒にご飯食べていたって本当?」
「本当だけど?」
「そんなブスと食事する位なら私の弁友になってくれない? 一食3万円位までで良いなら用意するから」
「ちょっと、それずるくない? 黒木くんは私が狙ってたのに、あーんしてくれるなら毎日ミシェランクラスのシェフに食事を用意させるわ」
「白百合さんと比べたら、私の方が遙かに綺麗ですよ。あーんして下さい」
【気持ち悪い】
自分に好意を持ってくれているのは解る。
だけど、本当に受け入れられないんだ、怖いし気持ち悪いんだ。
ごめんね。
だけど、白百合さんってこの世界の感覚だと余り綺麗じゃないのかな?
それなら僕は凄く嬉しい。
だって、僕の目には究極の美少女にしか見えないんだから。
だけど、これって下手な断り方をしたら白百合さんに矛先がむかうよね…気をつけないとな。
どうしよう。
「あのさ、皆んな、僕に記憶が無いのを知っているよね?」
「うん、知っているけど急にどうしたの?」
「深刻な話し?」
この世界の女性は基本的に皆んな優しい。
だけど、ごめん。
本当に気持ち悪くて、生理的に受け付けないんだ。
「多分、家族に白百合さんに似た人が居たんだと思う。妹なのかな」
「えっ」
「そうなんだ」
「だから、彼女と食事を一緒にした時に、何だろう、凄く懐かしい気持ちになれたんだ。だからごめんね。他の人との食事はちょっと」
「そうか、確かにうちの兄ちゃんも私には優しいや…でも、女は基本、敵だ。なんて言っているしね」
「家族…黒木君の家族は凄くブサイクなんだね。でもそれなら仕方ないや」
化け物にしか見えないけど、、優しい。
少し、胸が痛む。
だけど、ごめんね、怖いし、気持ち悪いし、体が受け付けない。
僕は学校の帰り道にスーパーへ寄った。
豪華なお弁当を購入しても良いけど、せっかくだから手作りのお弁当を用意したい。
と言っても男の一人暮らしだからお子様のようなお弁当しか作れないけど。
白百合さんが喜んでくれたら、本格的に料理の勉強をしようかな。
食材を持ち込み寮の調理場を使い料理を作る。
寮にいる化け物が寄ってきた。
【周り】
「嘘…男が料理しているよ…夢かなこれ」
「あんな美少年が料理…あのおかず3万なら即決で買うよ」
「から揚げ一個1万で譲ってくれないかな」
そこで、僕は考えた。
こっちの味覚にずれが無いか知りたかった。
だから、一口大に切ったおかずを小皿に作り化け物達にあげる事にした。
「これ、良かったら試食します?」
凄い勢いで群がってきた。
全員が旨い、旨いと言っているので問題は無いだろう。
実際に黒木の料理はおいしい。
だけど、この世界の女なら男が作った物なら絶対に不味いと言わない。
その辺の雑草をただ炒めて出しても旨いと言って食う。
だから、本当はあてにならない。
次の日が待ちどうしくてこの日は眠れなかった。
昼休みが来るとチャイムと同時に教室をでた。
なのに、白百合さんはもう既に裏庭にいった。
白百合さんがテキパキとレジャーシートを敷いていく。
慌てて僕も手伝った。
レジャーシートを引き終わると白百合さんは「はい、これ早速食べて」とお重を渡してきた。
そして、周りを見回すとどこのカップルも男だけが食事をしていて女は食べていない。
だけど、僕には関係ない。
だって僕は白百合さんと一緒に食事をしたいんだ。
だから「あれっ何で白百合さんは食べないの?」そう言った。
白百合さんは凄く驚いた顔で「男の子の給仕をするのが普通だと思うんだけど?」何ていってきたけど、「えぇーそれじゃ楽しくないから一緒に食べようよ」とお願いした。
白百合さんの顔が少し赤くなった。
僕はこの顔が凄く好きなんだ。
そしてオズオズと「いいの?」って、嬉しさが止まらない。
「いいの、いいの」とおちゃらけて返したけどさ。
だけど、白百合さんのお弁当を見て少し落胆した。
確かに豪華なお弁当だけど、手作りじゃない。
昨日の教室での話しを思い出した。
たしかに、豪華なお弁当を用意するとあの化け物達は言っていた。
だから、高額なお弁当を買ってくるのが多分ここの常識なんだ。
そんな事、僕は知らないよ。
「これ、黒木君に喜んで貰おうと思ってデパートで買ってきて貰ったんだよ?」
「確かに、美味しそうだけど、僕は白百合さんの手作りの方が嬉しいかな」
手作りのお弁当を催促した。
白百合さんは耳まで赤くなった。
本当に可愛い。
明日からは手作りをしてくれる約束をした。
嬉しくてたまらない。
僕の見る限り世界一の美少女の手作り弁当、嬉しくない訳がない。
「それじゃ、僕もお弁当を作ってきたから一緒に食べようか」
「これ黒木君がつくったの?」
「うん、美味しいかどうか保証はしないけど」
わぁ目が潤んできている。嬉しんだな。
凄く綺麗で可愛い。
こんな顔が見れるなら毎日でも作りたくなる。
「本当に食べて良いの?」
僕は苦笑いしながら許可をだすと、凄い勢いで食べ始めた。
まるで、急いで食べないと無くなってしまうと思っているような食べ方だった。
大丈夫なのかな?
喉に詰まったりしないかな?
僕は気になるのでお茶を注いで渡した。
「ありがとう」
嬉しさがこみあげた。
僕はと言うとまだ貰ったお弁当の半分位しか食べていない。
白百合さんに見惚れていたのと、お重の弁当で量が多いせいだ。
昔なら余裕で食べたけど、ここ暫く食欲がなかったせいで沢山食べれなくなっていた。
それを見ると白百合さんの目が曇った。
どうしよう。
そうだ、昨日みたいに楽しみながら食べよう。
「残すのは勿体ないから、食べるの手伝ってね…はい、あーん」
「あっ あーん」
結局、あーんをお互いにしていたら直ぐにお弁当は無くなった。
白百合さんにあーんをして貰うと食欲が増すんだから現金なものだ。
そして、その後写真をおねだりされた。
プリクラみたいな感じで良いのかな?
凄く肩に手を回してポーズを作った。
勿論、自分用にも撮影した。
うん、これは待ち受けにしよう。
次の日も又白百合さんと一緒にお弁当を食べている。
毎日一緒に食べる約束をしたんだから当たり前だ。
だが、今日は物凄く外野が煩い。
「何で、あんな美少年があんな化け物みたいなドブスと付き合っているのよ」
「何で、何で、何で、何で あんな出目金女が食事係なの、手料理食べてくれるって何」
僕は聞こえない振りをしているけど、白百合さんの顔が悲しそうになるんだ。
辞めて欲しい。
暫くすると外野から変な声が聞こえてきた。
「あのさぁ…私がお弁当を作ってきたら食べてくれたり」
「する訳ないだろう? そんな事言うならもういい、他の子に弁友変えるからいい」
「ごめんなさい…」
「あの、1万円あげるからあの、あーんってやってくれない」
「1万、ちょっと安すぎだろ。まぁ、君とは長い付き合いだから、1口3万円ならいいか」
「本当、じゃぁ明日9万円もってくるから3口お願いできるかな」
「仕方ない、ほれ」
「もぐ」
「ほれ」
「もぐ」
「ほれ」
「もぐ」
「じゃぁ、明日9万円もってこいよ」
「うん…持ってくるよ…」
この世界の男って最低だ。
僕はああはなりたくない。
お弁当の話をしていたら急に白百合さんの顔が曇ってしまった。
「私みたいなブサイクな女のお弁当食べてくれるんだもん。この位」
こんな顔をさせてしまった自分が許せなかった。
どうしたら良いのかな、解らない。
だけど、これは怒るべきなんだ。
そんな気がした。
「白百合さん、怒るよ」
白百合さんは少し怯えていた。
「ごめんなさい、私何か怒らせるような事した、本当にごめんね」
凄く悲しそうな顔になった。
僕も胸が苦しくなった。
だけど、これは話さなくちゃいけない。
これから二度と悲しい顔をさせたく無いから。
「うん、した。僕は白百合さんが好きだから一緒にご飯食べているんだよ?」
「えっ」
「白百合さんは僕にとってはとっても可愛い女の子なんだ」
「えっえっ」
「誰でも、自分の好きな子を馬鹿にされたら怒るでしょう?」
「本当にごめんね」
白百合さんの顔が赤い。
どうやら伝える事が出来たみたいだ。
だけど、これで許してあげない。
僕は、これでも今まで好きを押さえていたんだ。
だから、押さえるのを辞める。
「駄目許してあげない」
白百合さんの顔が青くなった。
周りがアホなこと言っているが見当違いだ。
「ごめんなさい、本当にごめんなさい、許して」
ちょっと虐めてごめんね。
「じゃぁ許してあげるから、僕の言う事聞いてくれる?」
「何でも聞きます。だから、、許して」
「じゃぁ、今日は一緒に帰る事。」
もう我慢は辞める。
自分が白百合さんにしたい事を伝える事にした。
「えっ、それって罰じゃなくてご褒美だよ?」
「そうなの、僕は白百合さんと一緒に帰りたかったんだけど邪魔かなと思って我慢してたんだけど」
「本当に?…じゃぁ…例えば、毎日一緒に帰りたいって言えば帰ってくれるの?」
「勿論、今日から一緒に帰ろうか?」
「うん」
白百合さんの笑顔がまぶしい。
僕は本当に白百合さんが好きなんだ。
だからいつも笑顔でいて欲しい。
「もし、近かったら、朝も一緒に登校しようよ?」
「本当に、本当?」
僕は何時でも君と一緒に居たい。
「うん、あの聞きづらいんだけど、白百合さんって友達が多いの?」
「余り居ないかな」
「だったら、白百合さんのクラスに休み時間とか遊びに行ってもいい」
「いい、いいに決まっているよ」
少しの時間でも一緒にいたい。
「そう、じゃぁこれからは手加減しないよ」
「あの、手加減って?」
好きって感情を一切止めない事だよ。
「白百合さぁーん、遊びに来たよ」
「えっ 黒木君、本当に遊びに来てくれたんだ」
「うん、だけど休み時間って15分位しかないから、お話しをする位しか出来ないね」
「そ、そうだね」
外野の声は知らない。
もう好きな気持ちを止める気はないから。
帰りも校門の所で待っていた。
一緒に帰りたいから。
白百合さんの手の温もりを感じたいから許可を貰って手を握った。
優しく彼女が痛がらないようにそっと握った。
「嫌じゃ無ければ手つないでもいい?」
「うん」
正直言って余裕なんてない。
僕は何を喋れば良いのかも解らなく頭が真っ白になった。
白百合さんも多分同じなのか顔を真っ赤にして喋らない。
ただ、嬉しいだけの時間が過ぎて行く。
「黒木君、大好きです。付き合って下さい」
先を越されてしまった。
本当は僕から告白するハズだったのに、悔しいけど物凄く嬉しい。
だったら、返事をする前に行動で返事をしよう。
一回、手を放す。
彼女の目が一瞬にして悲しそうな目になる。
そんな目をしなくていいんだよ、ほら。
恋人繋ぎに手を握り変えた。
「僕も、白百合さんが大好きです。付き合って下さい」
白百合さんは顔が真っ赤になって何も喋れなくなった。
僕ははそんな彼女の手を引いて歩いている。
何を聞いても一言しか返してくれない。
どうしよう、でも何とか白百合さんを家まで送り届けた。
ねぇ白百合さん。君が僕を天使だって言っているのを知っているよ。
だけど、僕にとって君は天使どころか女神なんだよ。
僕はね、この世界で絶望しかけていたんだ。
だって、周りは化け物しか居ないんだもの。
たったの数日だけど、自殺も考えたんだ。
だが、それはどうにか思い留まった。
次に考えた事は目を潰す事だった。
何度アイスピックを手にしたか解らない。
目さえ潰せば化け物の姿は見えない。
声だけ聴いていれば化け物を美少女に思える日がいつか来るかも知れない。
そうすれば、ここは地獄ではなく天国になる。
そんな事も考えていたんだ。
多分、君に出会わなかったら、きっと僕は目を潰していたと思う。
だから、この世界で君に会えた奇跡が凄く嬉しいんだ。
多分こんな奇跡は2度と起こらないと思う。
僕は白百合さんが思っている以上に君が好きなんだ。
だが、奇跡はまだ続く事をこの時まだ、黒木は知らなかった。
月明りのなか二人で
ここ暫く、僕は殆どの時間を白百合さんと過ごしている。
朝も一緒に登校したかったけど、施設とは反対の方向なので諦めた。
学校についてからは休憩時間の2回に1回は一緒に話しをしている。
最初の頃は毎時間ごとに押しかけていたのだが、白百合さんは何があっても僕を優先してしまう。
それだと迷惑になりそうだから2回に1回に減らした。
最近では化け物にも少しは慣れた。
そういう物だと認識したら、前程は怖くは無くなった。
まぁ、生理的に受け付けないのはどうしようもない。
今日も1日楽しく過ごして今は下校の最中だ、、いつもの様に恋人繋ぎで手を繋いで歩いている。
白百合さんを見ていると、未だに顔が少し赤くなる。
横を見ると白百合さんの顔も赤い。
周りの女性が凄い顔で睨んでいるけど、もう気にならない。
今日の白百合さんは何時もと雰囲気が少し違っていた。
さっきから下を向いてブツブツいっている。
「あの、黒木君良かったら今日家に寄っていきませんか?」
真っ赤な顔で、まるで告白をしてくれた時のように誘ってくれた。
「うん、良いよ」
僕も顔は真っ赤だ。
「あの、お母さんと妹が、どうしても黒木君に会いたいっていうから、ごめんね?」
そうだよね、残念、二人きりじゃないのか。
そりゃそうだ。
「そうか、残念だな。僕は白百合さんと二人きりの方が良かったんだけど」
白百合さんは急にワタワタしだした。
顔はもう茹蛸なんじゃないかなと思う位赤い。
そう思える程、真っ赤だ。
「あの、黒木君冗談でもそんな事は言わない方が…良いと思う…本気にしちゃうから」
「酷いな、冗談で僕はそんな事言わないよ? 白百合さんが誘ってくれるなら喜んでついていくよ」
【周り】
「何なの、何なの あれ、冗談だよね、あれだけの美少年が部屋に行くって」
「あの女、きっと物凄い金持ちなのよ、そうじゃなきゃありえないわ」
「ありえない…あんなブスが…部屋に男を連れ込むっていうの」
「いいなぁ…じゅる」
「本気で言ってくれたなら…今度、本当に誘っちゃうからね」
「うん、楽しみにしている。」
白百合さんは、もっと真っ赤になってブツブツ言っている、まぁこれもとっても可愛いいんだけど。
この世界の男は基本的に女の家に行くことは無い。
結婚をしても殆どの男性は女性とは別の部屋で暮らす者の方が多い。
一部には自分の奥さんや娘等、家族にだけは優しい者もいるがそれはあくまで少数派だ。
恋人同士でもし部屋に入る男がいたら、それは最低でも結婚を視野に入れていて、信じられない程その女性を愛している男性。
そういう事になる。
「ところで、白百合さん、白百合さんの家族ってどんな人?」
「お母さんは元子役出身の女優で、妹の奈々子はお母さんに似ています。 二人とも私と違って美人です」
白百合さんが少し落ちこんだように見える。
「ほうら、またそんな顔をする。僕にとっては白百合さんより好きな人なんて居ないんだから…安心してよ」
僕は握った手に力を込めた。
本当にそんな事ばかり言って信じちゃうよ。
「うん、解った…その、本当にありがとう」
それしか言えなかった。
「初めまして黒木君、京子の母親の白百合佐和子と申します」
「初めまして黒木さん、妹の奈々子と申します」
気持ち悪い。
化け物の中でも群を抜いて気持ち悪い。
だけど、此奴らが白百合さんの家族なんだ、我慢しないと。
「初めまして黒木翔と言います」
「おかあさん、本当に美少年だよ、テレビに出ているアイドル何て比べ物にならない位だよ」
「こら、奈々子はしたない、すいませんね黒木さん」
気持ち悪い
「いえ、別に…」
何か話さないといけないけど、駄目だ旨く話せない。
「そういえば、黒木さんは京子と付き合っているのですか?」
「あっ、それ奈々子も聞きたい」
これなら、話せそうだ。
「勿論、お付き合いさせて頂いています。」
「あの、こんな娘のどこが気に入られたのですか? 良かったら妹の奈々子の方とどうですか? 奈々子は京子と違って凄く綺麗でしょう?」
「黒木さんが良いなら、その奈々子と付き合いませんか?」
また白百合さんが落ち込んでいる。
「化け物とは付き合えません」って言えたら凄く楽なんだけど、、どうしよう。
「僕が好きなのは京子さんなんで、すいませんがその話しはお断りします」
白百合さんの顔が真っ赤になった……本当に可愛いい。
「ななな何で、奈々子の方が可愛いいのに、、どうして」
「どうして京子が良いのか教えて頂けますか」
どう答えようかな。
角が立たないようにしないと、下手な事言ってしまったら、白百合さんがきまずい思いをする。
「確かに貴方達は綺麗で可愛いのかも知れません」
「なら、良いじゃないですか」
「ですが、それだけなんです、綺麗で可愛いだけじゃ愛せません」
本当は体が拒否るから無理なんだよ。だって化け物にしか見えないんだから。
「愛…嘘、貴方は京子を愛しているって言うんですか? こんなブサイクなのに?」
「僕も愛なんて知りません、だけど、僕は外見だけでなく京子さんの全てが好きなんです」
「全てですか?」
「はい、僕の為に美味しいお弁当を作ってくれたり、おしゃべりしたり、白百合さん、いえ京子さんと一緒に居ると毎日が楽しくてしょうがないんです。」
「京子と、、そんなに一緒にいるのですか?」
「お昼は一緒に食べているし、休み時間も一緒に居る事が多いですね。帰りも一緒ですね」
何、それ、、羨ましい。
そんなに男って好きになってくれる物なの?
私の時と全然ちがう。
なにこれ、お姉ちゃんって完全なリア充じゃない?
いいなぁ、、あれ
「あのっ、そんなにお姉ちゃんと一緒に居て、、窮屈って感じないんですか?」
「うん、感じないね、、これが他の女性と京子さんの差なんだよ。僕にとって京子さんは一緒に居て楽しい人だから」
「京子と一緒に居て楽しいのですか…実の娘ですが、その余り容姿が良いとはいえません」
容姿が悪いのはお前達だよ。言えたら楽なんだけどな。
「何で外見ばかりの話しをするのですか? 僕にとって外見なんて、そんなに価値がありません。性格が良くて、明るくて何時も傍に居て貰いたくて、そんな風に思える人なんです。」
よくよく考えたら、奈々子じゃなくて京子でもこの人が結婚したら私の義理の息子になるじゃない。
別に奈々子を押す必要は無いわね。
奈々子の方がうまくやれると思ってチェンジを狙ってみたけど、ここまで京子を好きならまず、安心だわ。
ここで、ごり押しして嫌われた目も当てられない。
「私も母親として安心しました、そこまで京子を好いてくれているなんて、試すような事をしてごめんなさい」
これで嫌われずにすみそうね。
「いえ、僕も少しむきになって済みませんでした」
「いいのよ…京子と結婚したら義理の母になるんですからお気になさらずに」
「そうよ、奈々子も妹になるんだから気にしなくて大丈夫」
うぐっ…そうなるのか?
この化け物達が家族に、絶対別居しよう。
「白百合さん」
あれっフリーズしている。
あっそうか、、そりゃなるよね。
好きだと連呼して、気が付いたら結婚の話しだからね。
「おーい京子さん」
「あれっ黒木君…あれ」
「そうだ、そろそろ帰らなきゃ」
「まだ良いんじゃないですか? そうだお寿司でも取りますからね」
結局引き留められて夜まで居る事になった。
「流石にもう遅いので帰りますね」
「そうだ、京子もう遅いから、黒木君を途中まで送っていってあげたら」
「そうだね、男の独り歩きは危ないから途中まで送るよ」
そうか、この世界だと男の方が貴重だから危ないんだな。
「ありがとうございます。」
「月が綺麗だね白百合さん」
「本当に、ねぇ、さっき話していた事…本気」
「最初からそう言ってたでしょう? ただ、正直お母さんと妹さんとは一緒に暮らしたいとは思えないな」
化け物とは一緒に暮らしたくないな。
「そう…じゃぁ私だけなら将来貰ってくれるの?」
「京子さんなら勿論大歓迎だよ」
「そう、私本気にするからね」
「うん、良いよ本気にして、、寧ろ本気にして貰えないと困る」
「ありがとう」
月明かりの中二人は寄り添って歩いた。
そしてどちらからともなく手を繋いだ。
家族計画
次の日の放課後、僕は白百合さんを喫茶店に誘った。
相変わらず、白百合さんはこういう時は、真っ赤な顔をしている。
「あのぉ なななななんのお話しでししゅか」
噛んだ。
「そんな緊張しないで大丈夫だよ、白百合さんは何が飲みたい?」
「黒木君にお任せします」
「そう、じゃぁ レモンティー二つお願い致します」
「はっはいレモンティーですね」
ウェイトレスさんが真っ赤になっていたが、化け物にしか見えないから、赤くなっても気持ち悪い。
レモンティーを飲んだら白百合さんは落ち着いたようだ。
「黒木君、私を喫茶店に誘ったという事は何か相談とか悩みごと?」
「うん、僕ね家族が欲しいんだ」
「家族…ぶっ」
白百合さんはレモンティーを盛大に噴出した。
かかか家族が欲しいって事は、あれの誘い?
相手が黒木君なら嬉しいけど…あれ下着は…まずい子供っぽい奴だ。
どうしよう?
汗っぽいけどこれはシャワーを浴びるから別に良いとして…
【周り】
「ななな、嘘だどうしてあんな不細工な女が、夜の誘いを受けているんだ」
「あれって、あれの事だよな」
「鼻血、鼻血が出る」
「おーい、白百合さん」
「はっ、ごめん黒木君今何て言ったの」
【多分聞き間違えだよね】
「えーと、家族が欲しいって言いました」
やっぱり、聞き間違いじゃない。
「えーと子供が欲しいなら私頑張るけど…その黒木君は…その…わた」
「ゴメンそれ勘違いだから、いや勘違いでもないんだけど、今日はその前の前の相談」
周りの化け物が聞いているけど、、まぁいいや。
「あの、私し何を言って、、本当にごめんなさい」
「いや、嫌ではないよ。いつかはそういう関係になると思うし…ただ、今日は別の話し」
いいいいいいいつかはそういう関係に?
そそそそそうなんだ。 そうだよね。
はっ、ちゃんと聞かないと。
「別の話しって何かな」
「だから、家族の事だよ。ほら僕は一般的には何人かの女性と結婚しなきゃならないでしょう?」
「そうだね、黒木君はその、沢山の人と結婚したいの?」
「そんな事はないよ、確か最低5人以上が好ましいんでしょう? だから最低人数の5人で良いと思う」
「そうなんだ!」
(良かったー黒木君だったら20人以上と結婚しても可笑しくないのに最低の人数で良いなんて)
「うん、その1人が白百合さんだとしてさ、あと4人と結婚しなくちゃ」
「……」
「はぁーあと4人見つかるのかな」
「ちょっと待って黒木君…今のって」
「うん、白百合さんと結婚するとして後4人と結婚しなきゃならないんでしょう?」
「ちょちょっと待って、私し黒木君と結婚できるの?」
「婚約はまだ、申し込まないけど、将来、結婚したいと思っているよ」
「えーそれなら婚約してくれてもいいんじゃないかな」
「それでも良いんだけど…もう暫く恋人としての毎日を楽しみたいし…それに白百合さんとは今すぐ結婚しても良いけど…その奈々子ちゃんとは結婚したくない」
「えぇ、、奈々子、あんなに美人なのに?」
「うん、僕が好きなのは白百合さんだし…それに僕が「白百合さんと付き合っている」って言っているのに奈々子ちゃんの方にした方が良いって勧めてくるの、本当に酷くない」
そうだ、お母さんも奈々子も私から黒木くんを取り上げようとしていたんだ。
よく考えたら許せない。
「そうだね…確かに酷いと思う」
「だから、後の4人は僕だけじゃなく白百合さんも一緒に好きになってくれる。そんな人を探したいんだ」
「そうなの、だったら他の4人は籍だけ入れる関係でも良いんじゃないかな?」
「そんなのあるの?」
「えっ黒木君知らないの? 男の人を戸籍に入れるって、それだけで勝ち組だから、籍だけ入れて1度しか会わない、そんな人も居るよ」
「そうなんだ…驚いた」
「うん、うちのお父さんもお金の為に沢山の女性と結婚していたし、お母さん元女優だからお金があったけど、うちのお母さんに飽きたら出ていったよ…まぁ戸籍はそのままだけどね」
この世界の男って最低だな。
「そうなんだ、でも僕は暖かい家庭が欲しいんだよ。家に帰ったら好きな人が出迎えてくれて、朝は一緒にお早うって言って、美味しものを食べる時には一緒に頂きますって言って、寝る時にはおやすみなさいで一日が終わる、そんな生活がさ」
こんな男の人って居るの?
これって女なら大人から子供まで皆んなが望む夢だよ。
だけど、そんな夢を叶えた女性なんて一人も居ない。
こんな事聞かされたら、大統領だって何処かの国の王族だってプロポーズしにくると思う。
「うん、家族になってお互いがお爺ちゃん、お婆ちゃんになるまで一緒に居たいんだよ」
「それ本当に言ってくれるの? もう嘘だなんて言ったって私、私、聞かないよ? いいの」
「うん、約束するよ、だから後4人探してみようと思うんだ。僕が好きになれて白百合さんも好きになれそうな人」
「そうだね…それ凄くいいね」
「ある意味、二人纏めて結婚してくれて一緒に居て毎日楽しく過ごせるような人を探そう」
「そうだね、それ凄く楽しそう」
「家族になれそうな人が見つからなかったらずっと一緒に二人だけで居るのも良いんだけど…一応探してみようと思う」
「そうだね、籍だけ入れるのは問題が後で起きる場合もあるから、その方が良いかも」
「最もそれでも、一番好きなのは白百合さんだよ」
「……」
「ちょっと白百合さん泣かないでよ」
「だって、だって黒木君が悪いんだよ」
僕はそっと白百合さんの目頭にハンカチをあてた。
今迄、不細工って馬鹿にされて生きてきた。
男とは一生縁が無いと思って生きてきた。
だけど、今の私を見て羨ましくない人なんていないと思う。
沢山の男性になんてモテなくても良い。
私が欲しかったのはたった1人の理解者だったんだ。
たった1人で良いから愛されたかった。
それは本当なら絶対に会えない夢のような話しなのに黒木君が現れた。
黒木君は私の欲しい物を全部くれる。
だったら、私も黒木君の欲しい家族をプレゼントしたい。
本当は二人きりが良いけど、私も一緒に愛してくれる女性なんかが居たら、それはそれで楽しい毎日だと思う。
家族かぁ…ずるいな、それ私も欲しい物だと思う。
たしかに奈々子やお母さんじゃ、私の幸せより女の幸せを取るとおもうし…
何で黒木君は私の幸せばかり考えるんだろう?
この人は私を幸せにするだけに生きているのかな。
そんな事すら考えてしまう。
私は結局30分近く泣き続けてようやく泣き止んだ。
黒木君は何時もの私の様にワタワタしていた。
たまには逆があっても良いよね、黒木君。
多分、私は今日は眠れないと思うから。
泣いている白百合さんを見て僕は後ろめたかった。
僕が、白百合さんの家族を排除したいのは、僕には化け物にしか見えないからだ。
しかも、他の化け物と違って、性格まで酷いからだ。
どこの世界に姉の恋人を盗ろうとする妹がいるのだろうか?
どこの世界に姉の恋人を妹とくっつけようとする母がいるのだろうか?
僕には信じられなかった。
黒木は知らない。
この世界では「恋愛と友情と家族愛は別物」そういう言葉がある。
男の為なら家族だろうが親友だろうが抜け駆けするのが当たり前なのだ。
そう考えたら佐和子や奈々子は当たり前の事しかしていない。
詭弁だ、もし奈々子や佐和子が化け物でなく、白百合さんと同じ位綺麗な人だったら喜んでいた筈だ。
白百合さん本当にゴメン。
だって白百合さんと一緒に暮らして凄く幸せでも同じ空間に化け物が居るのは耐えられないんだ。
だから、白百合さんと二人きりで過ごすか、同じように化け物で無い人を探したいんだ。
せめて家の中だけでも化け物でなく、家族と過ごしたい。
君には言えない僕の夢、我儘を許して欲しい。
2人目が居た
白百合さんにOKを貰った僕は他の家族候補を探し始めた。
僕の目に化け物に見えない人を探すにあたって、しっかりと顔を見ないといけないのが辛い。
今迄の僕は常に下を向いて顔を見ないようにしていた。
そうすれば怖い物と向き合わないで済むからだ。
ここは僕にとってはリアルお化け屋敷なんだ。
たいしたことないそう思うかも知れないけど、物凄く怖いお化け屋敷に閉じ込められて一生出れません。
そんな環境でも同じ事言える?
顔を上げてしっかりと前を見る。
目の前には…化け物の群れしか見えない。
気持ち悪い…
本当に気持ち悪いし怖い…
僕はトイレに駆け込んで吐いた。
暫く、歩くと…普通に見える男子を見つけた。
僕にはその男子が希望に思えた。
少なくとも白百合さん以外に人間に見える人が居た。
希望はある、そう思えた。
灯台下暗し。
白百合さんと同じ様に人間にちゃんと見れる人が居た。
生徒会長だ。
僕が怖さの余り、下をばっかり見ていたから見落としていたんだ。
早速、僕は生徒会長の金剛さんに会いにいった。
金剛さんは1人で一生懸命何かを作っていた。
その一生懸命な横顔にしばし見惚れていた。
綺麗な女性が一生懸命仕事をしている。
それだけで、この人の、人の良さが解る。
きっかけが欲しい。
緊張する中幾ら見てても仕方ないので思い切って話しかけた。
心臓がドキドキして止まらない。
手には汗が滲んでいる。
声を絞り出すようにしてようやく声を出せた。
「先輩、何をしているんですか?」
「見れば解るでしょう?くす玉を作っているのですわ」
凛とした声で返って来た。
「お一人でですか」
「だぁれも手伝ってくれないから、1人でやるしかないのよ」
皆んなの為に一生懸命なんだ、良いなこの人。
少しでも応援できないかな。
顔とかも汚れているし、そうだ、濡れたタオルとジュースでも用意しよう。
少し休憩を取って貰えれば話もできそうだ。
僕は、自分のカバンからタオルを取り出すと水飲み場にむかった。
そして近くの自販機でジュースを買った。
金剛さんの近くに行くともう一回声を掛けた。
「先輩、これ良かったら飲みませんか?」
出来るだけの笑顔を作って話掛けた。
さっき以上にドキドキしている。
「……これって」
金剛さんは驚いた表情でジュースを受け取ってくれた。
「ジュースですよ。勝手にオレンジにしちゃいましたけど。」
無難な感じでオレンジジュースにした。
「…これ…私にですの?」
「はい、後これタオルです。水で濡らして絞ってきたから気持ちいいですよ。それに顔が少し汚れています」
「本当に使って良いんですの?」
凄い驚いた表情をしている。
もしかして、これ程の美人でもこの世界では男に縁が無いのかな。
「その為に濡らしてきたんですから」
「そうですわね、、使わせて頂きますわ」
あっ笑った、凄く綺麗だ。
「先輩、少し休みましょうよ」
「そんな時間はないのですわ」
「僕も手伝いますから」
「手伝ってくれるますの?」
「はい」
10分位だろうか金剛さんは話し相手になってくれた。
ただ、ただ何時もの日常を話しただけだったが凄く楽しい。
金剛さんはよく笑う。
そのしぐさ一つとっても何処かの令嬢か王女様の様だった。
楽しい、もっと話しをしていたい。
だけど、足の下を見るとくす玉が転がっている。
この人はたった一人でこれを作っていたんだな。
金剛さんと一緒にくす玉を作っていく。
凄く楽しかった。
よく考えてみたら僕はこの世界に来てから満足に何かした事はなかった。
せいぜいの頑張りは、白百合さんのお弁当を気合入れてつくる位。
それ以外は流しているだけだった。
だって、化け物と一緒じゃ気持ち悪くて、怖くて何かやる気にならない。
多分、金剛さんや白百合さん以外とでは気持ち悪くて一緒になんていられない。
楽しい時間はあっという間に終わってしまった。
名残惜しくて仕方がない。
仕事が終わると、金剛さんがお金を渡してきた。
しかも、5万円も。
お金なんて要らないよ。
だって金剛さんと一緒に作業が出来た事が嬉しいんだから。
だから
「何を言っているんですか? 僕が先輩を手伝いたかったから手伝った。それだけですよ」
そう素直に伝えた。
そうしたら金剛さんは泣きそうな顔になった。
だけど、その顔の意味は悲しいんじゃなくて嬉しいという意味だ。
知っている、たまに白百合さんもする表情だから。
「あの、又手伝って欲しいと言ったら手伝ってくれるのかしら?」
オズオズと金剛さんが聞いてきた。
手伝うに決まっている。
楽しくて仕方が無いんだから。
「手伝いますよ。先輩と一緒なら楽しいですから」
素直にそう答えた。
「だけど、私くしみたいなブサイクと一緒に仕事しても楽しくないでしょうに」
何でそんな事を言うのかな?
金剛さん位に綺麗な人は白百合さん位しか知らない。
「どこがブサイクなんですか?僕には先輩は、、そうですねまるで社交界で踊る令嬢のようにしか見えません」
もし、令嬢とか王女様が居たとしたらこんな感じだと思う。
僕の目にはブサイク何かには見えない。
急に金剛さんが僕を睨み始めた。
知っている。
同じ目を白百合さんに向けられた事があるから。
だけど、そんな目を向けられても僕にとって君が素敵で綺麗な人である事は変わらない。
だから報酬を貰う事にした。
勿論、お金なんかじゃない、一緒に踊って貰う事にした…曲は無いけど。
手を取り腰に手を回した。
それだけで実は心臓はドキドキしていた。
何でこんなにキザな事をしたのか解らない。
だけど、金剛さんは令嬢に見える様な人だからこういう姿が何となく似合うと思ったんだ。
暫く踊っていると彼女はクスっと笑って
「本当に、こうして曲もないのに踊るだけでよろしいのです?」
と言ってきた。
金剛さんの顔も少し赤い。
くす玉作りの報酬と言うなら僕にとっては破格値にしか思えない。
「はい、先輩と一緒にいると本当に楽しいんです、作業してても、こうして踊っていても」
素直にそう思えた。
だけど、楽しい時間はもう終わってしまう。
「そう、貴方も楽しいのですわね、私も凄く楽しいのですわ、所でお名前は?」
「黒木翔ともうします。」
「私は、金剛里香といいますわ」
「金剛先輩ですね」
「金剛でいいですわ」
「金剛…さん」
「それで手を打ちますわ」
「では、黒木様、私はこれで失礼します」
「あの、様は辞めて頂けませんか?」
「里香と呼んでくれたら辞めますわよ」
「じゃぁ、良いです」
本当に良いなこの人。
どこまでも凛として綺麗な人だった。
一緒に居られた時間は化け物の恐怖も忘れて楽しかった。
こんな綺麗な人がブサイクなんて、この世界はもしかしたら美醜が逆転しているのかな。
そう思った。
白百合さんも、金剛さんも僕にとってはとびっきりの美人だ。
それがブサイクだと言うならそういった可能性もあるかも知れない。
次の日の新入生の歓迎会が行われた。
新入生の代表が壇上にあがる。
化け物のくせに金剛さんを侮蔑するような目で見ていた。
わざとだろうかアクビまでしている。
あれっ金剛さんの周りにも普通に見える人が居る。
ここからじゃ遠くて見えないな。
そういえばくす玉が吊るされていない。
何でだろう?
金剛さんは新入生に「新入おめでとう」と一言だけ伝えると引っ込んでしまった。
周りは何があったのか解らずザワついている。
あれっ、金剛さんが僕の方に走ってくる…釣り竿についたくす玉と一緒に。
金剛さんは僕の前で立ち止まった。
「あれ、金剛先輩、どうしたんですか?」
「むっ違うんじゃありませんの?」
「金剛…さん」
「はい、では歓迎しますわ、黒木さん」
私はくす玉を割った。
くす玉を割ると「大歓迎、黒木翔様」と書いた垂れ幕が紙吹雪と共に降りてきた。
凄いサプライズだった。
こんな綺麗な人が僕だけを歓迎してくれる。
嬉しくないはずがない。
僕は顔が真っ赤になった。
金剛さんはクスクス笑っている。
この人にもこんなお茶目な面があったんだ。
「ありがとう、金剛さん」
僕は金剛さんの手を両手で握った。
だけど、これって大丈夫なのかな凄く心配なのだけど…….
まぁ金剛さんが喜んで笑っているのだからそれで良いか。
違った。
寮につくと僕は仮設を確かめる為にパソコンの前に居た。
男性保護施設の部屋はこれでもかと設備が良い。
GAALLという検索エンジンに不細工 写真と入力して画像を見て見た。
答えは気持ち悪い。怖い。
不細工がこの世界で美人なら不細工は美人ではないのだろうか?
その仮説は間違っていた。
確かに化け物の中では若干はましな感じはする。
それでも僕には人間には見えなかった。
しいて言うなら、少しは人間に見える。
それだけだった。
美醜逆転世界では無かった。
だが、僕にとって白百合さんは絶世の美少女だし、金剛さんは絶世の美女だ。
何を基準に僕にとって人間に見えるのか、さっぱり解らない。
今の所、ちゃんと人間に見えたのは、白百合さん、金剛さん、そして金剛さんの傍に居た二人。
そして廊下ですれ違った男性。この5人だけ。
確かに不細工っていう女性の方が気持ち悪さや怖さは低い。
だけど、それは化け物の中での話しだ。
実際に白百合さんのお母さんや妹さんはこの世界では美形らしい…群を抜いて不細工だった。
化け物の中では美人=恐ろしい程不細工 不細工=少しはましな感じ、この位の差はある。
だけど、何処を境界にして人間に見えるかが解らない。
しかも、今迄見た中で、僕が人間に見える人は例外なく美形だ。
…幾ら考えても解らない。
とりあえずは考えても解らないので後回しだ。
今日もいつものように白百合さんとお昼を食べていた。
そこで僕は白百合さんに相談をした。
「白百合さん、少し気になる人が見つかったんだ」
「それって、前に言っていた家族って奴かな」
「そう、白百合さんが恋人って感じなら彼女はお姉さんって感じ」
「そうなんだ…」
そうか、もう見つかったんだ。
もう少し二人でいたかったなぁ。
「あっ、まだ解らないよ? 相手の人とこういった話しもしてないから」
「そうなの? だけど黒木君が好きって言った時点で断る女の子は居ないと思うよ?」
「そうかな…だけど、僕は条件付きだからね、僕だけでなく白百合さんも一緒に好きになってくれるかが重要だから」
この人は本当にもう、ここまで愛情表現されたら嫌なんて言えないよ。
「そうだね、付き合うのが決まったら紹介してくれる? 私も好きになれるか考えたいからね」
「うん、ありがとう、もし話が進んだら付き合う前に必ず白百合さんに会わせるよ」
「心配だけど少し楽しみもあるんだよ、私以外に黒木君が家族にしたい人ってどんな人かなって」
「えーと」
「今はまだ良いって、楽しみにしているから」
「そう」
家族かぁ 黒木くんの言う家族って本当に暖かい感じがする。
うちの本当の家族は男が絡めばすぐに揉める。
一応はちゃんと愛情を貰って育ったけど、やはり男が絡んだら敵になりそうだった。
もし、黒木君が普通の男の子で奈々子に取られたら多分私は一生許さないと思う。
だけど、黒木君を同じように愛して、仲良く複数の人で暮らす。
それが、本当に仲の良い友人だったら、楽しいと思う。
いずれにしても私には幸せな未来しかないな、つい少し前までには考えられない位幸せだ。
本当に黒木君は私の天使なのかも知れない。
二人目の彼女
最近の黒木君は放課後、私と帰らない事がある。
黒木君はちゃんと報告してくれるから心配は無いのだけど、いつも一緒が当たり前になっているからちょっと寂しい。
それが凄く贅沢なのが解るんだけどね。
今日、黒木君は金剛さんと一緒にシオリ作りをしている。
今思えば「私もつきあうよ黒木君」というのが正解だったと思う。
だけど、仕方無いじゃない。
私は黒木君と付き合うまでほぼ1人で過ごしていたから、こういう時に頭が回らないんだもん。
多分、黒木君の家族計画で狙っている二人目は金剛さんなんだと思う。
金剛さんは生徒会長をしていて数回しか話した事は無いけど、私に対しても普通に接してくれていた。
多分、素晴らしい人だと思う。
黒木君は本当に凄いな、金剛さんは本当に優秀な人だ。
外見と言うハンデが無いなら間違いなくこの学園のナンバー1の女の子だろう。
最近になって思うんだ。
黒木君は外見とは関係なく女の子の内面を見ているんじゃないかって。
だってそうじゃ無ければ私なんかを彼女に選ばないもの。
次の日、いつもの様にお昼を黒木君と過ごしていると、金剛さんが近づいてきた。
来るべき日が来たんだな。
そう思った。
「こんにちは、白百合さん」
「こんにちは、金剛会長、何か御用ですか?」
金剛会長は正直いって嫌いじゃない。
寧ろ、好きかも知れない。
この学園で数少ない私にも普通に接してくれた人だ。
黒木君が家族として選んだのがこの人で良かった、と思う反面二人の時間の邪魔をされたくないそんな感覚が走った。
だから、返事は少し冷たい感じになっていたかも知れない。
「黒木君と一緒で構わないから少しお話がしたいのですわ」
やっぱり、この話しだ。
「あの、僕は席を外した方が良いですか?」
どうなのかな、見苦しい話になるから外して貰った方が良いかな。
「一緒で構いませんわ」
「私も黒木君が一緒の方が良いと思う。」
そうだね、黒木君は当事者だもの、やっぱりいて貰った方が良いよね。
解っているけど、確認の意味で聞いてみる。
「所で、今日はやっぱり、黒木君についてのお話しですよね」
「そうですわ、黒木様についての事ですわ」
やっぱりそうだ。
「大体、の事は何となく解りますが、一応教えてください」
将来一緒の家族になる可能性があるのだからちゃんと聞かないと。
「黒木様の第二彼女になりたいので許可がほしいのですわ」
「第二彼女ですか? 第一彼女じゃなくて?」
「正直、貴方じゃなければ押しのけても第一彼女を目指しますが、白百合さんなら第二で充分ですわよ」
正直驚いた。
実の妹の奈々子ですら私を出し抜こうとする。
だけど、この人はどうしてそんな事が出来るのだろう。
「私なら…ですか? 何故ですか?」
理由が聞きたかった。
誰だって一番に愛されたいそう思うはずだ。
「だって、貴方は私の知っている限り、凄い努力家なんですもの。それに私は貴方と一緒に居て楽しそうにしている黒木様も好きなのですわ」
そうか、そんな風に見てくれるんだ。
この人は黒木君だけでなく、私も黒木君の一部と捉えて好きなのかな。
「それは、大雑把に言うと黒木君と一緒に私も気に入ってくれたという事なの?」
やっぱり、そうだ。
「そうですわね。それに、恐らく黒木様にとっての一番は白百合さんなのですわよ。恐らく私以外の誰であってもそこは不動だと思いますわよ」
そうか、黒木君の一番は私なんだ。
まずい、顔がどうしても赤くなっちゃうよ。
改めて他の人から言われると照れちゃうよ。
「だから、このお話は、白百合さんが駄目っていうのであれば諦めるそういう話しなのですわ、ですがもし許して頂けるなら、私くしもその輪の中に加えて欲しいのです。」
「そういうお話しでしたら…断れる訳ないじゃないですか。 黒木君が多分、私が良いって言えば良いよ位の事は言っているのでしょう?」
この人ちゃんと私の事まで考えてくれている。
この先一緒に居るならこういう人じゃなきゃ駄目なんだ。
「その通りですわ。だけどあくまでも白百合さんが良いならの条件つきなのですわ」
本当は二人きりが良いけど…それは叶わない。
だったら、金剛さんの様な人で本当に良かったかも知れない。
「仕方ない…良いですよ」
ちょっとがっかりした顔になるのは勘弁してほしい。
言えただけ自分を褒めたい位だ。
「まぁ、嫌かどうかと言えば嫌ですけど、遅かれ早かれ黒木君はモテるからこうなると覚悟はしていたし、相手が金剛さんなら、良いですよ」
多分、金剛さんじゃ無かったら私はこの場で答えを出せなかったと思うよ。
「ありがとうございますわ」
不細工な笑顔が素敵に見えた。
最も私よりは綺麗なのだけど。
「私くしも黒木様程ではないでが白百合さんも大好きですわ」
これは金剛さんなりに私の事も好きなんだという告白だ。
あれっ私しいつの間にか金剛会長でなく、金剛さんって呼んでいる。
もうとっくにこの人に心を許しちゃっているんだ。
「私も黒木君程ではないですが金剛さんも好きですよ」
うん、多分私も黒木君以外に好きな人って考えたら金剛さんしか居ないな。
「それでは、白百合さんの許可も得ましたので、告白させて頂きますわね。 黒木様、私と付き合って下さいませ」
金剛さんは颯爽と告白をした。
告白をし終わった後、気絶しかかっていたけど。
「金剛さん、そのうち慣れると思います。黒木君と付き合うとこういうのが毎日になるので」
多分、驚きの連続になると思う。
「これが毎日なのですか? まさに夢の様な毎日なのですわ」
これって、多分いつも程ではないよ?
「楽しいのですが、汗はかきっぱなしで、心臓はドキドキしっぱなしです。制汗剤とタオルは用意した方がよいですよ」
「そうですの? 有難うございます」
気が付いたら汗なんてかかない体質の私が汗だくになるんだよ?
黒木君が食事に金剛さんを誘った。
大丈夫かな金剛さん。
私は黒木君といつもの様にあーんをして食べさせあっている。
金剛さんは顔を真っ赤にして固まっている。
白い肌がまるで茹蛸のように真っ赤だ。
《黒木君…》
黒木君は私が言いたい事が解ったようだ。
「「金剛さん、あーん」」
悪い笑顔でおかずを箸で摘まんで金剛さんの口元へ運んだ。
金剛さんは震えるように口を静かにあけた。
解るよ、これ凄い破壊力だもんね。
最近は少しは慣れたけど、最初は凄く照れたもの。
ほら、周りの女性の顔が凄く歪んだ。
あっ金剛さんもあーんしてきた。
2人っきりも良かったけど金剛さんも一緒でも楽しい。
多分、金剛さんも私と境遇が近いからかな。
最初、黒木君がとられる、そう思ったけど違った。
私たちの楽しい輪に金剛さんが加わって更に楽しくなった。
そんな感じだ。
これが多分、黒木君の言っていた家族なのかも知れない。
金剛さんの顔はまるで蕩けそうだった。
だけど、金剛さん知っている。
これ、まだ序の口なんだよ ?
幸せ過ぎる日常
白百合さんと金剛さんの2人と正式に付き合うようになって数日ようやく僕の精神も安定してきた。
せっかく男女比1対10なんて本来は夢の様な世界なのにその殆どの女性が化け物にしか見えない。
気づかれては居ないと思うけど僕は白百合さんに依存していたんだと思う。
彼女以外の全てが化け物なんだ、だから必要以上に一緒に居たと思う。
白百合さんは喜んでくれていたから良いけど。
お昼休み、日課となったお弁当。
今日からは金剛さんが加わって3人で食べる。
2人を前にすると周りの化け物達が見えにくくなるのが凄く嬉しい。
「私は料理は不得手でして、だから仕出しを用意しましたわ」
「金剛さんって何でも出来そうなのに料理は苦手なんですか」
「まぁ人には得て不得手があるから、白百合さんみたいな本格的な料理は僕には作れないし」
「男で料理するだけでも凄い事ですわ、、男の手料理なんて私し昔におにぎりを食べた事しかありませんもの」
「もしかして金剛さん、あの1万円おにぎり食べにいったの?」
「1万円おにぎりってなに?」
「黒木君、知らないんだ、昔におにぎり専門店があって、そこの名物メニューが目の前で男がおにぎりを握ってくれるというサービスだったんだよ」
「まさか、そのおにぎりが1万円もしたの?」
「そうなのですわ、ただの塩おにぎりで1万円、具が入ったものは1万2千円しましたのよ」
「まさか金剛さん、お金出してそれ食べたの?」
「えぇ 母と私で3個づつ、具入りを食べましたわ」
「えーと、それって7万2千円 おにぎり6個で、払ったって言う事?」
「そうですわ、、白百合さんも食べたのではなくて」
「うちは予約をしたけど順番待っている間に閉店しちゃったから」
「そりゃそうだそんなもの…あれっ予約で一杯って事は黒字だよね」
「えぇ閉店理由が、飽きたからですわ」
「ねぇ、金剛さん、そんなにそのおにぎりは美味しかったの?」
「いえ、不味かったですわね…ただ男が作っただけで」
「そうなんだ」
「昨日、黒木様の手料理を食べた時に思わず嫉妬してしまいましたわ、白百合さんはいつもこんな物を食べていたなんて」
「金剛さん、今日からは貴方も同じ物をたべるんだよ。同じ思いで見られるから覚悟してね?」
「今日からは金剛さんが居るから少し多めに作ってきたよ、それから、金剛さんにお願いがあるんだけど」
「黒木様、何ですの?黒木様のお願いなら何でも聞きますわ」
「苦手で良いから金剛さんも良かったら手料理持ってきてくれない」
「私の手料理を食べて下さるのですか?」
「黒木君は本当に手料理が好きなんだよ」
「女の手料理を食べるなんて凄いですわね…だけど本当に私は不得手でして」
「それでも、金剛さんの手料理が食べたいな…例え焦がした卵焼きでも良いから作ってくれないかな?」
ここれなんのマンガなのですの。
今、白百合さんが言っていた意味が解りましてよ、確かに制汗剤とタオルが必要ですわね。
「黒木様が食べてくれるなら、頑張って作ってきましてやぁ」
「金剛さん噛んでいるよ…でも強烈でしょう?」
「強烈なんてものじゃききませんわよ、これ、殆どマンガやライトノベルの世界じゃありませんか」
「大げさだな二人とも」
相変わらずだな黒木君は。
失敗作でも良いから手料理が食べたいなんていう男は架空の世界しか居ないのに。
ほら、金剛さん、すごい顔になってる。
ここは絶対天国だと思いますわ。
そして、あーんを繰り返し食事は進んで行く。
最近は今迄と違い、周りに余り化け物はいない。
実際には居るけど距離がとられている。
同じ事をして欲しいと言われるのが嫌な男が、この場所での昼食を嫌がったからだ。
逆に1人で昼食をとっていた女はすこし距離をとって遠巻きに眺めている。
「そうだ、せっかく三人で付き合い始めたんだから写真を撮り直さない」
「いいね、黒木君撮ろう」
「へっ?」
黒木様はいきなり私と白百合さんの肩を抱き寄せると頬っぺたがくっつきそうなほど接近してきた。
そして、自分のスマホを取り出して写真を3枚撮った。
あっ、黒木様が離れてしまう。
「黒木君、今度は私の番」
「はい、こんな感じで良いかな?」
また顔がくっつく位、黒木様が接近してきた。そして両腕は私と白百合さんを抱きしめている。
「うん、これで大丈夫だよ」
今度は白百合さんがシャッターを切った。
ああ金剛さんフリーズしちゃた。
解るよ、これ普通じゃ絶対あり得ないもんね。
だけど、これが黒木君の日常だから、ドキドキが止まらなくなっちゃうでしょう?
一応、第一彼女だから助け船ださないとね。
「金剛さん、スマホ貸して」
「はい ふぇ」
フリーズしている金剛さんからスマホを受け取った。
「黒木君、今度は金剛さんの分」
「うん、こんな感じで良いかな」
「大丈夫だよ、、いくよはいチーズ」
私は同じ様に3枚写真を撮った。
「しし白百合さんこれこれはなんでしゅか」
「金剛さん、昔の私みたいに噛んでるよ?」
「噛みもしますわよ? あんなに黒木様が接近してくるんですもの」
「私も黒木君も、一緒に撮った写真をスマホの待ち受けにしてるの、だから金剛さんもどうかなと思って」
「スマホ?」
今気が付いたように金剛さんがスマホの写真を見た。
「黒木様の写真…勿論、私しも待ち受けにしますわよ…これって幾ら払えば良いんですの?」
「あの、金剛さん、そういう事言うと黒木君が不機嫌になるから」
「金剛さんも白百合さんも…その彼女でしょう? お金なんて取らないよ?」
そうでした、黒木様はそんな利己的な人では無いんでしたわ。
「そうでしたわね…ごめんなさい」
「でも、せっかくだから報奨を貰おうかな? 明日のお弁当に必ずハンバーグを作ってくること、それでどう」
「わかりましたわ、美味しいハンバーグを用意致しますわ」
「期待しているよ」
「はい」
「そう言えば、今日は金剛さんは忙しいの?」
「今日は生徒会の用事も無いから何もありませんわ」
「そう、じゃぁ校門で待っているから一緒に帰ろう」
「解りましたわ」
はぁ、白百合さんがいった意味がようやく解りましてよ。
これってまるでドラマの主人公になったような物ですわ。
これでもかって楽しい事の連続。
嬉しくて、嬉しくて心臓のドキドキが止まりませんわ。
汗は書きっぱなしですし、顔はこれでもかと赤くなりますわ。
私は汗は余り汗をかかない方ですがタオルは気が付いたらびっしょびしょ…
絞れてしまう程。
凄い、毎日ですわね。
つぎの休み時間も遊びにきますのよ、、驚きましたわ。
「金剛さん、遊びに来たよ」
そう白百合さんの声が聞こえたと思ったらその横に黒木様が…
ただ、お話しをしているだけで、クラスの皆んなが注目してますの。
白百合さんに聞いたら
「もう慣れました」
ですって、これって慣れるのかしら?
放課後、僕は白百合さんと金剛さんを待っていた。
金剛さんは僕と白百合が手を繋いでいるのをみると羨ましそうに見ていた。
反対側の手はカバンを持っているから手を繋げない。
金剛さんがちょっと寂しそうだ。
僕は白百合さんの手を離した。
「あっ」
白百合さんの顔が曇った。
「白百合さん、金剛さん、三人だと手が繋げないから、今日は腕を組んで帰らない?」
「う腕を組むんですか?」
白百合さんはオズオズと僕の腕に手を回した。
同じ様に金剛さんも手を回してきた。
うん、両手に花だ。
カバン側が金剛さんになるのは仕方ないだろう。
これ、なんなのかな?
こんな事して歩いている男女なんて見たこと無いよ?
黒木君の顔がすぐ横にあって…凄い。
手を繋ぐどころじゃないよ、これ、本当に黒木君は女の子を喜ばせる天才だね。
これはなんなのです。
こんな事している男女なんてドラマでも見た事ありませんわ。
黒木様のお顔がすぐ傍にあって、凄く幸せですわ。
さっき手を繋いでいるのを見て羨ましかったですが、、これはそれ以上ですわね。
「さぁ帰ろうか」
「「はい」」
「あの、2人とも前を見ないと転ぶよ」
「「転んでもよい(よ)(ですわ)」
仕方ないゆっくり歩こう。
今迄、以上に周りの目が集まっている。
露骨に立ち止まって見ている化け物。
あそこの男女のペアは財布ごとお金を男に出した。
あれっそれでも断るの?
2人は真っ赤な顔で必死に僕の腕を抱え込んでいる。
うん、可愛いから良いんだけどね。
そうこう歩いているうちに金剛さんと別れる交差点についた。
「それじゃ、金剛さん又明日」
「はい、、黒木様又明日…そうだ、思い出しましたわ、実は私二人にお願いがありましたの」
「お願いって何?」
「あの、嫌じゃ無かったら今度、剣道の応援に付き合って欲しいんですの」
「白百合さんはどうする?」
「私はスポーツ観戦って嫌いじゃないから黒木君が決めて良いよ?」
「そう、所で応援相手って誰ですか?」
「一応生徒会で副会長をやっている、東条さんなんだけど、、嫌われ者だから応援する人が居ないのですわ」
「東条さんって歓迎会の時に金剛さんの周りに居た人」
「そうですわ、右にいたと思いますわ」
それなら、あの時にちゃんと人に見えた人の可能性が高いな。
「解った、僕で良いなら応援に行かせて貰うよ、その大会って何時?」
「次の土曜日ですわ」
再び腕を組んで歩いていく二人を見て羨ましかった。
何で、私の家はここから反対方向なのですの。
多分、東条さん死ぬほど驚きますわね。
強くてカッコよい男
私は今迄剣一筋に生きてきた。
剣以外の事なんて何も知らない。
母のように強く成れば全てが手に入ると思っていた。
だけど違っていた。
母には剣以外に美貌があったのだ。
だからこそ強く成れば輝けた。
だが、私にはその美貌、美しさが無かった。
だから、幾ら強くなっても悪者にしか成らない。
よくよく考えたら、怪人が幾ら強くても子供は応援しない。
寧ろ、正義の味方の敵として強ければ強い程嫌われる。
最近になって気づいてしまった。
私の剣道を応援する者なんて誰も居ないんだという事に。
家に帰ってテレビをつけた。
特撮ヒーローが怪人を倒していた。
怪人はあっさりと死んだ。
だけど、考えて欲しい。
その怪人は悪者だけど、ヒーローを倒す為に死ぬほど努力したんだ。
テレビでは映されないけど努力したはずだ。
あんな凄い筋肉は鍛え上げなければつかないんだよ。
解らないよね。
「私も此奴と一緒だ」
そう考えると涙がこぼれた。
「一生嫌われ続けるのか」
そんな事ばかり考える。
そんな私にも友人は居る
1人目は金剛里香
剣道の練習相手が居ないので偶然出会った、金剛に練習相手をお願いした。
生徒会の副会長になる約束で相手してもらっている。
それがもとで友人になった。
しかし、本当にやる気がない学園だ、副会長が居ないなんて。
なんでも、金剛曰く、指名制なのだそうだ。
だが、金剛は人気が無く指名をだれも受けて貰えないんだそうだ。
「名前だけでもいいから」そう言われて副会長に成った。
成ったからには最低線は手伝おうと思う。
2人目は西城歩美
私より先に生徒会に入っていた。
常に男にぶつかられて怪我をしている。
怪我している所を金剛が助けてそれ以来生徒会の書記になったそうだ。
まぁこいつは仕事も手伝わずにただ喋ってジュースを飲んでいるだけの存在なのだが
それでも金剛曰く「居てくれるだけ嬉しい」との事。
この2人が私の辛うじて友人と言える人間だ。
他には居ない。
誰1人幸せな者は居ない。
だが、突然金剛は変わった。
私と同じ光の無い目をしていたハズなのに今は目がキラキラ輝いている。
私と同じ不細工なこいつが何故か綺麗に見える時がある。
何が起きたのだろうか?
不思議に思っていた。
いつもの様に人生について考えていると金剛が話し掛けてきた。
「何か悲壮感がこみあげている顔をしていますわね」
こいつの場合、これは嫌味ではない。此奴なりの励ましなんだ。
「まぁな、最近色々と考えていてなぁ、そう言えば金剛最近やたら楽しそうだな?」
今迄とは違う、毎日が本当に楽しそうだ。
「私くしは、そうですわね、毎日が楽しくて仕方ありませんわ」
本当に楽しそうだ。
私は全ての悩みを打ち明けた。
「そんな事で悩んでましたの?」
そんな事だと?
どれ程の悩みかお前なら解かるだろう?
「そうですわね、でしたら東条さんにも私くしの幸せをお裾分けいたしますわ」
「次の大会を楽しみにしていると良いですわ」
なにを言っているんだ。
なぜクスクス笑っているんだ。
何も答えぬまま金剛は去っていった。
そして、大会当日私は驚く物を目にした。
黒木翔だ。
あの美少年を金剛は連れてきた。
はっきり言う。
彼一人が応援してくれるなら、この会場の全員が敵でも叶わない。
これは私だけでないと思う。
女性であれば1000人の同性の応援より1人の男の応援だ。
金剛は最高の応援を連れてきたんだ。
これで頑張らない訳にはいかない。
最初の相手は天上心美だった。
美少女剣士と名高い人。
いつもこの人と対戦すると私は悪者扱い。
私の母の様に全てを持っている人。
いつもの様にブーイングが始まる。
だけど気にならない。
今日の私には最高にして最強の味方がいる。
「あらっ、あらっ楓さんはいつも嫌われておかわいそうに、私は美少年の祝福で試合にあがるというのに」
「そうか、いつもの事だ」
「今日の私はいつもよりテンションがあがっています。貴方なんか瞬殺で倒してみせますよ」
「そうか、やれるもんならやって見な」
残念だな心美。
あの応援だけは私の物なんだよ。
今日だけは私がヒロインだ。
嘘だ、黒木君が…半裸で私を応援している。
心美が何を言っているかなんて聞こえない。
体がいつも以上に素早く動いた。
心美の面に容赦なく打ち込んだ。
あれっ何で此奴、防がないの。
いや確かに一本入る様に打ち込んださ。
だけど、入るにしても少しはかわすでしょう。
判定もでているのにまだおかしな事を言っている。
「アハアハあはははは、嘘だ」
天上心美は信じられない物を見るように私を見ていた。
なんだ此奴、美少女なんて言われていたけど…モテて無かったんだな。
なんで私はこいつが羨ましかったんだろう。
この日私にブーイングは起きなかった。
しかも、あんなに応援されてるんだ負けるわけにはいかない。
あそこまでされて勝てませんでした、なんて言えない。
横の2人に少しイラつくけど…
この日、私は気分よく竹刀を振るった。
これ程調子よく戦えた日は無い。
今日の私はヒロインなんだ優勝できない筈がない。
本当に苦戦しないで優勝できた。
黒木君にかっこよい所が沢山見せれたと思う。
私は表彰式が終わり、賞状とメダルを受け取ると黒木君の所にむかった。
これは彼の応援の結果でもあるんだ。
しかも、あんな恰好までして大きな声で応援してくれた男性。
私にとっては人生で一番の応援だった。
「黒木君、応援ありがとう」
心からそう思った。
油断すると涙が出てしまう。
「東条先輩、凄かった、かっこ良かったよ」
「本当に、そう思う? 本当にかっこ良いって思ってくれたの?」
嘘っ嘘っ私の剣道がかっこよい、本当にそう思ってくれるの?
まずい、涙が出て来た。
「うん、だってあれは相手に打たせずにして勝つ。昔の剣豪のような剣だもん、初めてみました。」
「わかるの?」
私のそれが拘りなんだよ。
それっ母親以外に言われた事無いんだ。
「はい、あまり強くないけど昔、少しだけ剣道をしていたから」
「そうなんだ…剣道をしたことあるんだね。」
男なのに剣道経験者なんだ。
一緒に剣道してみたいな。
「本当に少しだけです。だけど、本当に東条先輩かっこ良かったなー」
「興味あるなら、少しで良いから剣道場に顔出してみる? といっても私しかいないのだけど」
「良いんですか? だったら今度顔出させて頂きます。」
「絶対に顔出してよ」
まぁ来てくれたら、めっけもん位に考えておこう。
「はい、それとは別に東条先輩、優勝おめでとうございます!」
黒木君は私に近づいてくるといきなりハグしてきた。
「黒木君!」
「僕は、先輩の剣道が好きなんです、辞めたりしないで下さいね」
「わかった…」
私は顔を真っ赤にすると固まってしまった。
だって、上半身があれでハグだよ。
幾ら私でも平常心でいられるわけ無いだろう?
この日から私に剣道以外に好きな者が出来た。
そしてそれから数日後、、本当に黒木君が道場にきた。
お邪魔虫2人連れて。
「東条さん、顔出しにきました」
「黒木君、本当に来てくれたんだ、歓迎するよ二人も」
「なんかおまけみたいな扱いですわね…この間までしつこい位に練習に付き合わせたくせに」
「それは、お前も女なんだから解かるだろう?」
「そうですわね。ですが白百合さんが黒木様の第一彼女で私が第二彼女なのですわ、一緒に来るのが当たり前ですわよ」
「そうなんだ…いいな」
(まだ第二までしか、いないなら充分だ)
「あのっ白百合京子と言います。宜しくお願い致します」
「宜しくね」
「僕も自己紹介した方がよいですか?」
「大丈夫だよ、ハグまでされたんだからさぁ…もう友達でしょう」
「そうですね」
東条は顔が赤くなった。
この世界において男の友達が持てる女性は少ない。
冗談で言っただけなのに真顔で返されるとは思っても見なかった。
「ハハハ、それで今日はどうする?」
「そうですね、余分な面とか竹刀とかありますか?」
「部室に余分なのが幾つかあるけど?」
「それ、貸してもらえますか?」
「いいけど、、まさか、相手してくれるの?」
「えぇ、僕も久しぶりに体を動かしたいし、そうだ金剛さんと白百合さんもやってみない」
「そうですわね、私くしもやってみようかしら」
「私は見学でいいです。経験無いので」
さまに成っている。
ちゃんと着付けているし、いっぱしの剣士に見える。
「黒木君は、どの位出来るの? まさか有段者とかかな?」
確かに僕は有段者だ、前の世界では3段だった。
だけど、こっちでは恐らく登録はない。
「今度話しますが、余り詳しく覚えていません、だけどそこそこ強かった記憶があります」
「まぁいいや、それじゃ 軽く準備運動して素振りをしたら、立ち合ってみようか」
「はい」
準備運動が終わり、素振りに入った。
「……凄い、これが男が振る剣なのか?」
この世界では男は余り剣道をしない。
更に言うなら男女比が1対10なので剣道をやる男子すらまず見ない。
競技人口があまりに少ない為に男子の大会は地区大会を飛ばして、都大会、県大会から始まる程だ。
それゆえに男子の剣道のレベルは低い。
「さぁこれから軽く立ち合いをしようか? それじゃ」
「待ってください、東条さん、最初の黒木様の相手は私くしですわ、貴方じゃ強すぎて黒木様の相手になりませんわよ」
そうでも無いと思うが
「ハハ、そうだね、じゃぁ最初の相手は金剛さんにお願いしようかな? ただ、これは剣道だから手加減は無しだよ」
「わかってますわ」
金剛も多少は手加減をしたと思う。
だけど、それにしても凄すぎる。
一瞬にして面を取るなんて。
「こ、これは敵いませんわね、、黒木様、ますます惚れ直しましたわ」
「すごいや黒木君、素人の私から見ても凄いのがわかるよ」
「今度は私の番だね。本気でいくよ?」
「そうこなくちゃ」
本気で打ち込んだ面を透かされ、逆に打たれそうになった。
凄い、凄い、凄い、凄い、凄い、凄い、凄い、凄い、凄い、
これ、絶対に心美より強い。
心美相手なら苦戦はするけど、勝ち筋が見える。
だけど、黒木君相手じゃ見えない。
「はぁはぁ、凄いね黒木君は」
「ついていくだけでやっとですよ」
結局勝負は私が面を決めて勝った。
終わった後に私は少しおかしな所に気が付いた。
「黒木君、最後の打ち込みの時、何か変な動きしていたけどあれは何かな?」
「あれはですね、剣道以外も武道やっていてその動きがでちゃいました」
「そうなのか? それはどんな武術?」
「そうですね、やってみますか?」
再び、立ち合いの形に対峙した。
ただ、違う事は黒木君が防具をつけていない事。
「本当にこれで良いのか? 」
「黒木様、それは危ないから辞めた方が良いのですわ」
「黒木君、危ないよ」
「危なかったら辞めるから大丈夫です」
「そうか、ならばいくぞ」
東条は竹刀を縦横無尽に振るっているが、先読みした黒木に全てかわされてしまう。
そして内側に黒木は入ろうとしている。
それに気が付いた東条は距離をとり対峙した。
「凄いですわね、当たらないなら確かに危なくないですわ」
「綺麗、まるで踊っているよう」
結果、黒木が内側に入り込み軽く喉に触れた。
その事の意味に気が付いた東条は竹刀を降ろした。
「負けだな、もし実戦なら刀を掻い潜り喉を斬られた、そういう意味か」
「はい、その通りです」
「凄まじい古武術だな、名前は何というんだ」
「内緒です」
本当に世界は広い。
剣道で私と同等。
他の武術を使うなら私より上、そんな男が居る。
「黒木君、私とつきあってくれないか?」
「東条さんの相手なら何時でもつきあいますよ」
違う意味で言ったんだけど、、まぁいいや、時間もチャンスも沢山ある。
次こそはしっかり伝えよう。
涙
私はその後も、黒木君相手に何度か練習を重ねた。
黒木君はまるで錆が落ちるようにどんどん強くなっていった。
もう既に私相手に古武術ではなく剣道でも負けなくなっている。
本当に素晴らしい男性だと思う。
姿形だけでなく、中身も一級品だ。
最近になって、少し彼の事が解ったような気がする。
彼にとって外見は全く価値が無いのかも知れない。
白百合京子、黒木君の第一彼女だ。
彼女は確かに群を抜いて醜い。
彼女よりブサイクな人間は探すのは難しいだろう。
金剛里香 黒木君の第二彼女で私の親友だ。
彼女は白百合さん程でないがかなりのブサイクだ。
白百合京子が日本式ブサイクだとしたら金剛は西洋式ブサイクだ。
私は二人をどう思っているのか聞いた事がある。
白百合京子が完璧美少女で、金剛里香が究極お嬢様だそうだ。
どう考えてもおかしい。
じゃぁ私はどうなのか聞いてみた。
クールビューティでボーイッシュなんだそうだ。
嘘だとしても言い過ぎだ。
その事を今日も道場に来ていた邪魔な2人に伝えた。
2人とも凄く顔が赤くなった。
私は二人を茶化していたら、黒木君が急に真剣な顔になった。
「だったら、僕も目を瞑るので三人も目を瞑って暫くお話しませんか?」
黒木君が言うんだ、誰も反対しない。
15分位目を瞑った状態で会話をした。
私を含み三人とも驚きを隠せない。
白百合さんの声やイメージが本当に美少女にしか思えなくなってきた。
本当に金剛は貴族令嬢のようだ。
「本当ですわね、白百合さんは本当に可愛らしい感じに思えて、東条さんは確かにクールビューティーですわね」
「黒木君の言う通りだぁ、金剛さんって凄いお嬢様にしか感じられない。確かに東条さんはクールビューティーって感じかな」
私と同じに感じたみたいだ。
「それが僕にとっての皆んなのイメージなんだ。」
そうなのか、確かにこのイメージが黒木君のイメージだとしたらあの対応も解る。
うん? ていう事は私のイメージもこの通りなのか?
まずい、顔が赤くなってきた。
だけど、これではっきりした彼はやっぱり外見で判断は一切しない。
寧ろ、外見は一切考えていない?
外見で無く中身で見る。
それは正に綺麗ごとだ、口にする偽善者はいても本当にそれを実践している者はいない。
だが、ここに本当にそういう生き方をしている人が居る。
「本当に…そんな風に思ってくれていたんだ…」
「本当にそう思って頂けていたんですの…」
あぁーあボロボロ涙流してみっもないな。
あれ、私も、、あれっ泣いているんだ。
あんな事、綺麗に生まれた女が一生懸命尽くした末に、ようやく言われるような言葉だ。
泣いても仕方ないよな。
「うん、僕には三人とも凄く綺麗な女性にしか感じられません」
この追い打ちはズルい、、ますます泣き声が強くなった。
どこまで私達を泣かせれば気が済むんだ、黒木君は。
金剛家へ
昨日、誘いがあったので今日の放課後、金剛さんの家に遊びに行く事にした。
白百合さんや東条さんも誘ったのだが、何故か遠慮されたので、僕と金剛さんだけだ。
いつも歩いて一緒に帰っているのだが、今日は校門に凄いリムジンが止まっている。
うん、お嬢様の様な金剛さんに良く似合っている。
「凄いね、この車」
「えぇ、一応、母が事業をしているものですから」
「そういえば、金剛さんのお母さんってどんな人」
金剛さんは少し、寂しそうな顔をしながら
「私によく似た人ですわ…」
「そうなんだ」
僕は嬉しくなった。
金剛さんに似た人ならきっと凄い美人だ。
その後、車の中で金剛さんと色々な話をした。
どうやら、金剛さんのお母さんは凄く有名な家電メーカーの社長だった。
なんでも華族の血まで引いているのだそうだ。
金剛さんはやっぱり、本当のお嬢様だったんだ。
金剛さんの家に着いた、うん、どう見ても豪邸だね。
多分や球場どころか遊園地より大きいんじゃないかな?
「あの、これが金剛さんの家」
「古くて大きいだけですわ」
家の玄関につくと沢山の人がいた。
どうやら歓迎されているようだが気持ち悪い。
化け物の軍団にしか見えない。
すっかり、忘れていた。
殆どの人が僕には化け物に見える。
使用人が沢山いるという事はそれだけ化け物が多いという事だ。
金剛さんが着替えると言うので別れると
青い顔の僕をよそに、化け物メイドに案内され、大きな広間に通された。
秋葉原に居るような偽物じゃないリアルなメイドさんが居る。
ただし、その姿は飛び切り醜い化け物だった。
顔さえ見なければ、そう思いやや下を見ている。
確かに顔さえ見なければ、若くて綺麗なメイドに見える。
だがそれを許してくれない。
「あの、緊張しなくて良いのですよ?」
多分、彼女達は自分の容姿に自信があるのだろう、下から僕をのぞき込んできた。
同じ事を綺麗な人がやればすごく可愛く見えるんだろうな。
だが、僕からみたら、恐ろしく醜悪な化け物なんだ。
僕は顔を青くしながら、
「気にしないで下さい」
それしか言えなかった。
周りから「初心で可愛い」なんて声も聞こえてきたが気持ち悪いだけだ。
暫くして着替えが終わった金剛さんが来た。
凄く綺麗だ。心の中からそう思う。
ようやく僕は落ち着きを取り戻した。
金剛さんの着ているドレスは大人っぽく、膝より少し短いスカートは綺麗な足をより綺麗に見せている。
「私くし、足だけは自信ありますの、、思いっきって着てみましたわ」
「凄く綺麗ですよ、金剛さん…本当に貴婦人みたい」
「ありがとうございます」
周りの化け物メイドの目は明らかに泳いでいる。
暫くすると、そのまま金剛さんを大人にした様な女性が来た。
【良かった】
僕は本当にそう思った。
ちゃんと、人間に見える。しかも物凄い美女だ。
金剛さんの親と言うのだから、そこそこの年齢のハズなのにどう見ても20代にしか見えない。
姉妹と言われればそう思える程若く見える。
美魔女だ。
「はじめまして、金剛さんのお母さん、僕は黒木翔と申します。」
不味い、顔が赤くなる。
「貴方が黒木さんね、初めまして私くしは金剛小百合と申します。」
金剛さんが明らかに「不服ですわ」そう言いたげな顔で僕を見ている。
「ところで、黒木さんは娘と付き合っているって事で間違いないのかしら?」
「はい、お付き合いさせて頂いております」
「それは本気なのですか? 正直うちの娘はブサイクで恐らく持参金を沢山積んでも貰い手が無いでしょう。そしてもし結婚しても形だけの物で愛されないと思いますわ、そんな子を貴方みたいな美形が…信じられません」
金剛さんが凄く悲しい顔になった。
こんな顔をさせちゃいけない。
「お言葉ですが、小百合さん。 僕だったら里香さんをお嫁さんに貰えるならお金なんて要りません。正直言いまして僕は金剛家ほど裕福じゃありませんが、大人になってお金が稼げるようになったら寧ろ養ってあげたい…そう思う位大好きです」
うん、金剛さんは顔を真っ赤にして、凄く嬉しそうだ。
「それ、本気でいっていますか? まさか毎日のように一緒に、昼食をとっていたり、お互いに手作りのお弁当を食べさせあっているって…本当の事なのですか?」
「はい、そういうお付き合いをしてしています」
「女が作ったお弁当、しかも娘が作る不味いお弁当を本当に召し上がっているのですか?」
「確かに、まだ美味しいとは言えないかも知れません。だけど、金剛さんが手に怪我してまで作ってくれるお弁当を食べるのは僕の毎日の楽しみの一つです」
小百合は信じられなかった。
自分と同じ位、醜い娘をここまで好きになれる男がいるのか?
正直、お金目当てでも充分だった。
それでもここまで醜い娘と付き合ってくれるなら上々だ。
正直、私はモテた事がない。
ホストクラブに行けば、高級店で最高に高いお酒を入れても避けるように男がついてこない。
私の傍に居るのなら、幾らでも貢いであげるのに、その条件ですら逃げられる。
若い男に我が社の重役の椅子を用意するからと迫ったら、翌日に退職届けを出されセクハラで訴えられそうになった。
正直に言うと醜い男にすら嫌われたので数億円だして人工授精して出来たのが里香だ。
その私にそっくりと言われる娘を好きだという男が現れた。
正直言えば、まだ信じられない。
「そうなのですか?」
「はい、今日はお土産にお弁当を作ってきました。一緒についばみませんか?」
何かお土産を考えていたんだけど、金剛さんの家は裕福層だから良い物が思いつかなかった。
よくよく考えてみたら1万円もだして男の握ったおにぎりを食べたのだから、お弁当が良いかなと思い用意してきた。
「それは、貴方の手作り弁当…頂いて宜しいのですか?」
「どうぞ、一応沢山作ってきたので皆んなで食べましょう」
黒木様が悪い笑顔を浮かべていますわね。
「小百合さん…あーん」
「ふぇ…ふぇ…あーん」
「はい、金剛さんもあーん」
「あーん、美味しいですわ黒木様」
「それじゃお返しですわ…あーん」
「はい、小百合さんも」
「はっはい…あーん」
「ちょっと待って…貴方達いつもこんな食事をしているの?」
「何時もしていますわ」
「何時もしています」
お金積んでもこんな事してくれる男性なんていません。
これは本当に娘を愛している…間違いありませんわ。
ですが、女として凄く羨ましくもあります。
「いいなぁ、いいなぁお母さんもたまにでいいから混ぜてもらえないかな?」
「何を言っていますのお母さま、黒木様に迷惑ですわ」
「里香っそんな事言わないでねっ」
「別に構いませんよ」
「「えっ」」
「そんな事言って期待しちゃいます。約束ですよ」
「黒木様、余り母を甘やかさないで下さい」
「いえ 別に構わないよ? 金剛さんのお母さんって金剛さんそっくりで綺麗だから全然大丈夫だよ」
「綺麗…この私が、(里香これはなにかの冗談ですわね)」
「お母さま…黒木様は…本気なのですわ」
「まだ、沢山あるから食べませんか…」
楽しい食事は続く。
「そろそろ、遅いから帰りますね」
「良かったら泊っていっても宜しいんですのよ」
「流石にそれは…今日は帰ります」
「そうですわね、それじゃ家までお送りしますわ」
「私も」
結局、施設までリムジンで送って貰った。
2人とも一緒に乗ってくるなんて思わなかった。
また一人化け物じゃない人間に会えた事が僕には嬉しかった。
この世界に対する僕の考え
この世界について解った事について僕なりに考えてみた。
1、この世界の人間は基本、物凄くブサイクで気持ち悪い者しかいない。ただ、その気持ち悪さには差があり、二度と見たくない化け物クラス~物凄く気持ち悪いけど、人間には辛うじて見えるクラス(整形等で失敗した人や病気で顔が崩れた人レベル)までいる。
2、美醜がが約転しているのでは? そう考えてブサイクと言われる人を多数見てみたが、一部の人を除いてやはり化け物にしか見えなかった。
3、その中で何故か、白百合さん、金剛さん、金剛さんのお母さん、東条さん、他、男性で1人、壇上に金剛さんと東条さんと一緒に居た女の子 計6人だけが人間に見えた。しかも、人間に見えた6人はいずれも超がつく程美形だ。
4、男女比のせいか、男性には凄く優しい世界
5、この世界で僕はかなりの美形らしい
こんな所だ。
僕だってただ、遊んでいた訳ではない。
それなりに行動した。
学園でブサイクランキング10位という女の子にあったけど、やはり化け物にしか見えなかった。
これで、完全に美醜が逆転した世界とは言えなくなった事が解ってしまった。
つまり、ブサイクでもブサイクなままに見える者が殆どだった。
但し、美人と呼ばれる人間と比べると、ブサイクと呼ばれる人間の方が若干は気持ち悪さや怖さがましに感じる。
実際にテレビでアイドルとお笑い芸人を比べたら、お笑い芸人の方が遙かに気持ち悪さが無かった。
とりあえず、考えなければいけない事はなぜ、白百合さん達はちゃんと人間に見えるのか?
化け物に見える人間との違いはなんなのか?
その二つだ。
だが、それ以外にも調べなければいけない事もある。
僕が狂っていないのかだ。
普通に考えたら世界がおかしいのか、僕がおかしいのか、どっちだ?
そう考えれば、僕個人がおかしいと考えるのが普通だろう。
そして、僕はこことは違う世界で暮らしていた記憶がある。
そう考えたら、僕自身が実は精神が病んでいた人間。
そうであってもおかしくない。
幾ら考えても今は答えはでない。
最悪、ちゃんと人と見える人間が6人しかいない可能性もある。
とりあえず、今できる事は、早目に時間を作って残り二人に接触する事しかないだろう。
妹のような女の子
僕はもう一人のちゃんと人間に見える彼女にアプローチをはじめた。
最初は金剛さんか東条さんに紹介して貰おうと思ったがなんか言いにくい。
流石に、彼女や自分を好いてくれている女の子に女の子を紹介してくれとは言えない。
だから、登校時間より早い時間に赴き、学園の一本道で待ち伏せする事にした。
僕の目に化け物に見えないのは三人を除いて彼女位だから見分けは簡単につく。
暫く待っていると、目的の彼女がやってきた。
だが、後ろからいきなり男性に突き飛ばされた。
突き飛ばした男は彼女をのぞき込んでいた。
多分、助け起こすのかな。
そうして暫く見ていると、すぐに彼女を無視して走っていった。
酷い、酷すぎる。
彼女は痛そうにして起き上がれない。
すぐさま僕は駆けつけた。
「あの、大丈夫?」
恐る恐る僕は声をかけた。
「良いから、放っておいて」
彼女は怒っている様だった。
だが、どう見ても大丈夫そうじゃない。
「大丈夫じゃなさそうだよ? 救急車でも呼ぼうか?」
「大丈夫です…」
彼女は大丈夫って言うけど、絶対に大丈夫じゃない。
本当に大丈夫なら起き上がって歩き始めているはずだ、どうしようか?
下手に何か言って怒らせても仕方ない。
暫く、見守るようにしよう。
「じゃぁ歩けるようになるまで傍にいるよ」
それだけ伝えて近くに座った。
彼女はようやく、僕の方に振り返った。
凄く可愛いい、白百合さんに対しての可愛いじゃなくて妹みたいな子に対する可愛いだ。
正直いって前の世界の子役の女の子なんか比べ物にならない。
こんな子を突き飛ばすなんて、さっきの男に憎しみを覚えた。
出来るだけ笑顔で怖がられないように聞いた。
「本当に大丈夫?病院行くなら付き添おうか?」
「….」
彼女は答えてくれない。
足から血が出ているのが痛々しい。
何か手当をしないと。
「とりあえず、足擦りむいているね、よいしょっと」
とりあえず、ハンカチで血止めしないと、これでよいかな。
「ああああ、ありがとう。」
ようやく話してくれた。
噛んだ姿も凄く可愛いい。
だけど、彼女は起き上がらない。
思ったより痛いのかも知れない。
「それより、本当に大丈夫なの」
「少し痛いけど大丈夫です」
彼女は立とうとしたが足が痛いのか立てなかった。
これ心配かけないように言っているやせ我慢だ。
絶対に怪我している。
「病院、自宅、学校 何処に行きたいの?」
どうしよう? もしかしたら足挫いたのかな?
選択の幅を狭めて聞いた。
「じゃぁ病院」
「解った、よいしょ」
歩けないんだから仕方ないよね。
僕は彼女を抱きかかえるとタクシーの通る大通りに行ってタクシーを呼び止めた。
そのまま、一緒にタクシーに乗り付き添った。
真っ赤になって黙っている彼女が可愛い。
こんな妹が居たら、多分毎日が楽しくて仕方なくなると思う。
足は骨折まではして無いが、捻挫していて物凄く腫れていた。
湿布をしてもらって包帯が巻かれていた。
彼女は母親に連絡したそうだが直ぐには来られないようだ。
話始めると彼女は止まらなかった。
実はこういう目に沢山遭っているらしい。
僕は知らなかったけど、あれはナンパのひとつらしい。
確かに僕のいた世界でも、ナンパの仕方の一つにぶつかるという物はある。
だけど、こんなに小柄の女の子に怪我する様な体当たりはしない。
「しかし、酷いね怪我するようにぶっかってきて、好みじゃないなら逃げるなんて」
「本当にそう思うよ。せめて、ごめんなさい位言って欲しい」
「そうだよね、怪我でもしたらどうするんだ…本当に言ってやりたい…そう思う」
「えっ…男なのに怒ってくれるんだ」
「どうして?女の子に怪我させるような事したら謝るのが普通だと思う」
「そ、そうだよね…」
不味い、男の人にこんな優しくして貰った事なんてない。
顔が赤くなってきた。
「うん、こんな可愛い顔に傷でも出来たらどうすんだ、、本当に思うよ」
「うん、有難う」
可愛いなんて言われたこと無い。
どうしよう。
これって何回も夢見た光景だ。
もし、私の顔が醜くなかったら、あっても可笑しくない話だ。
本当に可愛いな。
さっきからチラチラとこっちを気にしながら話してくるし。
下から覗き込むようなしぐさ。
金剛さんの家の化け物メイドと違って本当に可愛い。
頭撫でたいな。
駄目かな。
僕は頭に手を伸ばそうとした。
あれっ、これって私の頭を撫でてくれるのかな?
私は目を瞑って頭を出そうとしたら、お母さんが凄い勢いで走ってきた。
「貴方、幾ら男だってやって良い事と悪い事があるのよ、人に怪我させて責任取りなさい」
「あの、すいません、僕じゃ無いんですが」
「なにが僕じゃ無いよ、逃げられなかったからここに居るんでしょう? 本当に男って最低だわ、この子がどんだけ怪我したか…」
「お母さん違うの!」
「何が違うの、歩美は少し黙ってて母さん、この男に責任取らせるから」
「だからお母さん違うの! この人は怪我した私を病院まで送ってくれたの」
多分、私は頭を撫でて貰えるチャンスが潰されたから、少し怒っていたかも知れない。
「歩美…それ本当なの?」
「うん、信じられないけど…本当」
「母さん、歩美から聞いても信じられないわ…はっ、本当にすいません、私ったら勘違いしていたみたいで」
「別に構いませんよ、彼女の日常を考えたら、そう思うのも仕方ありません」
うん、だから近づかないで怖い。
彼女と違って怖いからさぁ。
「そう言えば、名前を聞いていなかったね」
「あ、私? 西城歩美です」
歩美ちゃんね。
名前も可愛らしいな。
「僕は黒木翔です」
「うん、知っているよ? うちの学校の有名人だもん」
そんなに有名なのかな。
あれっ同じ学校って事は高校生という事?
「えっ、歩美ちゃんって高校生だったの? 小学生じゃなかったの?」
そうだね、あの時に金剛さんの傍に居たんだから小学生の訳ないよね。
だけど見れば見るほど小学生にしか見えないな。
「うん、黒木君と同じ、高校一年生だよ」
「そうだったんだ、てっきり年下だと思っていたよ」
「良くそう言われるから気にしないよ」
この世界の男性は女を嫌う。
胸の大きい女やふくよかな女は嫌われる傾向が強い。
その為、子供みたいに見えるやボーイッシュは一種の誉め言葉だ。
勿論、小学生に見るも同じ位に誉め言葉になる。
「でも何で、その、助けてくれたの?」
「うーん、可愛い女の子が困っていたら助けるでしょう」
可愛い? そんな事言われた事はないよ? キモイとしか言われない。
本当にそう思ってくれるのかな…本気な訳ないよね。
「そう、私、私、黒木君にとっては可愛いの?」
「うん、妹にしたい位ね」
妹? 本当の妹なら何時も一緒に居られるから嬉しい。
だけど妹と思われるという事は、恋愛対象じゃないのかな。
「そうか」
あれっ歩美ちゃんが暗くなった。
「どうしたの?」
「うーん、何でもない」
お兄ちゃんみたいな男友達が出来ただけでもラッキーだそう思おう。
「あっそうだ、僕学校へ行かなきゃ。今からなら午後の授業に間に合うから」
えっ、学校に行っちゃうの?
私は、流石にこの足じゃ迷惑掛けちゃうな。
「私は今日は休もうかな? 所で黒木君、何か歩美にして貰いたい事ある?」
男にここまでして貰ったんだもん。お礼しなくちゃお金かな? それともゲーム機とか?
結構お小遣いが溜まっているから大丈夫だよね…多分。
お母さんは、真っ青な顔している…まさか凄くお金が掛かるの?
「そうだな、そうだ、お兄ちゃんと呼んでくれない?」
「そんなんで良いの?」
えっ、本当にそれでお礼になるの?
寧ろ嬉しい位なんだけどな?
「うん、だって歩美ちゃんって理想の妹みたいだから、お願いして良い」
「うん、解ったお兄ちゃん、勉強頑張って」
これ、少し恥ずかしいな。
だけど、黒木君凄く嬉しそう。
「うん、頑張るよ、ありがとう歩美ちゃん、それじゃ僕はいくね」
あの笑顔が見えるなら幾らでも言うよ。
これ夢じゃないよね?
今迄の男日照りが嘘のよう…
「じゃぁねお兄ちゃん」
今は、妹に徹しよう。
そして愛を勝ち取って絶対に物にしなきゃ、こんなチャンス二度と無い。
「うん、それじゃね歩美ちゃん」
黒木君は手をブンブン振ってくれた。
凄く嬉しいな、あんなに喜んで手を振ってくれる。
こんな日がくるなんて信じられない。
あれっ、、涙がでてきた。
嬉しくても涙が出るんだ…初めて知ったな。
私も黒木君が見えなくなるまで手を振った。
周りの目が痛い。
看護婦も他の患者も私を睨んでいる。
そりゃそうだ、こんな光景私だって見せられたらムカつく。
だけど、一番怖かったのは…お母さんだった。
怖い、怖い、怖い 確かに心配してきたら、自分そっちのけで男とイチャついていた。
うん、怒られて当たり前だ。
「歩美、お母さん心配したのよ、、それなのに美少年といちゃついているってどういう事なのかしら?」
確かに弁解も出来ない。
「しかも紹介もしてくれないのは何故かしら?」
確かに、紹介するべきだ…だけど、幸せすぎて忘れていた。
仕方ないんじゃないかな?
あの状況じゃ。
この後、母親に2時間近くクドクド怒られた。
だけど、私はそれでもニヤつきが止まらなかった。
だって、今までの不幸が嘘のように幸せな一日なんだもん。
全員とつきあい始めた。
今日の私は今迄とは違うのだよ。
何故なら、昨日、黒木君というそれは凄くカッコいいお兄ちゃんが出来たからだ。
最も、お兄ちゃんと言っても血は繋がっていない。
ただ、妹みたいに思って貰えているだけ。
だから、将来的には妹から恋人になってお嫁さんも夢では無いのだよ。
昨日までとは今日からは違う。
その為には…白百合京子と仲良くならなくちゃいけない。
黒木君と白百合京子の仲は有名だから。
まずは、2人の妹分になって、頑張って第二彼女を目指す。
そんなところからスタートしなくてはならないかな。
同い年だけど、仕方ない。
話せる時間はある程度あった方が良い。
なら、突撃するのは昼休み。
一応、美味しそうなお弁当は買って来た。
昨日、お母さんに言ったら、いそいそとデパートまで行って買ってきてくれた。
お昼になった。
さぁ突撃なのだ。
あれっ? 白百合京子以外にも二人いる。
ふーん、そうか、やっぱり女の友情なんて紙よりも薄いんだね。
「黒木君…貴方の妹 歩美ちゃんが遊びに来ましたよ」
二人は凄い形相でこちらを見てくる。
私は形式的に挨拶をした。
「あれっ金剛会長と東条副会長もこちらにいらしたんですか?」
そう、私は生徒会の書記なのだ。
「あれっ歩美ちゃんって二人の知り合いなの?」
まぁ、多分同じ生徒会だよね。
「「「歩美ちゃん」」」
嘘、黒木君が、苗字でなく下の名前で呼んでいる…嘘だ。
黒木様が…下の名前で呼ぶなんて…悪夢ですわ。
黒木君に下の名前で呼ばれるなんて…羨ましい。
「うん、歩美は生徒会で書記をしているんだよ」
「そうか、うんそれなら、知り合いでも可笑しくないか」
「うん、しかし金剛ちゃんも東条ちゃんも、最近構ってこないから可笑しいなと思っていたんだけど黒木君の所に来ていたんだね」
「もしかして、友達付き合いの邪魔していた? ごめんね」
「別にいいよ。だけど歩美も1人で寂しいから加わっても良い?」
僕は白百合さんの方を見た。
白百合さんはやれやれって顔をしている。
うん、多分OKっていう意味だ。
「歩美ちゃんなら大歓迎だよ」
「わーい、ありがとう、お兄ちゃん」
これ言われると弱いんだよな。
「お兄ちゃん? ちょっと西城さんどういう事なのですか?貴方と黒木様は同い年でしょう?」
「そうだぞ、西城…図々しくないか?」
「薄情な、金剛ちゃんも東条ちゃんも歩美知らない」
二人とも歩美の事なんかそっちのけで黒木君と遊んでいたんだ。
ふーん、でも私でも一緒だから責められないけど。
「歩美ちゃん、そんなこと言わないで皆んな仲良くしようよ」
「そうだね、お兄ちゃん」
「なんだか黒木様嬉しそうですわね、別に意地悪とかじゃなくて、詳しい事が知りたいだけなのですわ。教えてください」
「あっ 私も知りたいです」
僕は昨日あった事を話した。
「そんな事があったんだ」
「それで、妹みたいな喋り方をしているのですわね」
「うん、歩美が妹みたいな喋り方をしていると黒木君が喜ぶから」
「そうなんだ、確かに西城は子供っぽいからな」
「うん、東条ちゃんみたいに大きくないからね」
「私のどこが大きいんだ」
「背も大きいし、胸も大きいよね?」
この世界では背が高くて胸が大きいのはブサイクの象徴で男に嫌われる体型の代表である。
「西城…君は私に喧嘩を売っているのか?」
「黒木君…東条ちゃんが歩美をいじめるよ」
歩美ちゃんは僕の後ろに隠れた。
「案外、目ざといのかな?」
「西城さんはああ見えて結構腹黒いのですわよ、白百合さんも気を付けた方が良いですわよ」
「あれっ金剛ちゃん何か言った?」
「何も言って無いですわよ」
いつもの様にお弁当を食べ始める。
いつもと違うのは今日は5人だという事だけだ。
「ところでお兄ちゃん、三人とはどういう関係なのかな? 白百合ちゃんは彼女なのは解るけど?」
「白百合さんが第一彼女で金剛さんが第二彼女、東条さんとは友達?になるのかな」
「ふぇ、白百合ちゃんが第一彼女で金剛ちゃんが第二彼女か…もう既に2人も彼女が居るんだね」
「うん、そうだね」
「歩美も3人目の彼女になりたいかな?」
「ちょっと待った…3人目の彼女は私だ」
「東条ちゃんは別に彼女じゃないよね? だったら関係ないよね?」
「確かに私は彼女じゃないな? だけどお前も彼女じゃないだろう?」
「そうだけど…だから、今から告白するんじゃないかな? 少なくとも先に告白したのは歩美だよ?」
「わっ私だって告白したんだ」
「って事は、断られたの?東条ちゃん可哀想…」
「嫌、違う…勘違いされただけだ」
「白百合ちゃんは私が第三彼女じゃ嫌かな?」
「私は、黒木くん次第かな、前に黒木くんと話したんだけど、最低人数の5人を目途に家族みたいに付き合いたいって言うのが黒木君の理想だから、それを応援したいだけだよ…だけど、答えはもう決まっていると思うの」
「えっ、それって」
「黒木くんが西城さんを妹みたいって言ったんでしょう?だったら、それは家族にしたいって事だよね? そうじゃないかな黒木くん」
「そうだね、確かに西城さんなら付き合いたいと思う、東条さんもね」
「だって、西城さん…さぁ頑張って」
「あの、黒木君…その私を彼女にして下さい」
「あのさぁ、西城さんに聞いても良い?」
歩美ちゃんじゅなく西城さんって呼ぶのは真剣な話なのかな?
「何でも聞いて」
「勿論、彼女にはなって貰いたいけど、条件付きなんだけど良い?」
うわぁ付き合って貰えるんだ。
なら、どんな条件でも飲むよ?
当たり前じゃん。
「彼氏になってくれるなら何でもするよ? 黒木のお兄ちゃんの為なら何でもするよ?」
「恋人兼、妹になって下さい」
それで良いの?
そんな事なら嫌じゃないに決まっているよ。
「妹? 勿論良いけどどうして?」
「さっき、白百合さんが少しだけ話したけど、僕が本当に欲しいのは家族なんだ、勿論、血は繋がって無いけど恋人になってくれるなら、家族のように大切にしたい、他の男みたいに今だけとか飽きるまでとかじゃなくて、年寄りになって死ぬまで一緒にいたい、そう思うんだよ」
「本当に、本当なのそれ、嘘じゃないの?」
まずい、私死んじゃうのかな?
こんな幸せな事なんて絶対に起きない。
夢じゃないよね。
「うん」
「いいよ、歩美、黒木君の彼女になるよ、そして妹にもなるよ…これって黒木君の妹と彼女両方になれるって事で良いんだよね?」
「勿論」
「じゃぁ第三彼女は西城さんで決定だね…黒木くん」
「あの、黒木様…西城さんが妹兼、彼女って事は私くしはどうなるのですか?」
「金剛さんはお姉さん兼彼女かな…ほら、何となく生徒会長のお姉さんってカッコ良くない?」
「お姉さん兼彼女ですか? 凄く良いですわ、確かに歳も一つ年上ですわね」
「黒木君、私は、私は」
「白百合さんは…うーん恋人、奥さん…そんな感じ?」
「家族の役割が無いのは寂しいですが、奥さんは凄く良いですね」
「皆んな楽しそうだな…私を除け者にして」
物凄く暗い、魚の目の腐ったような目で東条さんが言い出した。
「貴方がいけないのですわ、さっさと告白しないから」
「告白はしたんだが…まぁ良い」
「あの、東条さん、私からのアドバイスですが、早くしっかり告白しないと駄目ですよ?」
「白百合さん…それはどういう事?」
「はぁ、何を聞いているんですの貴方わ。白百合さんの言いたい事は、黒木君は5人までしか付き合わないという事なのですわ。もう3人埋まってしまいましたので、後枠は2人しかないのですわ…貴方がヘタレだから…第三彼女は西城さんに盗られてしまいましたのに…本当に真剣みがありませんわね」
「そうだな…すまん黒木君、解りにくい告白で…剣道ではなくちゃんとした異性として付き合ってくだしゃい」
「せっかくのクールビューティーなのに噛んだのですわ」
「うるさい、金剛」
「うん、良いよ、だけどさっきの話で大丈夫? お姉さん兼彼女で」
「勿論、いいさ…ありがとう」
こうして僕たち5人は正式に付き合い始めた。
女(化物)より友情
「それで今日はなんで俺のところで飯を食っているんだ?」
「たまには男通しで親睦を深めようと思って」
「そうか、まぁ俺はお前の彼女達は苦手だから顔は出したくないからな」
あの化け物の群れの中に入るのは流石につらい。
「そう?まぁ彼女達と一緒に居る時に遠慮してくれるのは有難いけどね」
「そうか、大丈夫だ、邪魔はしないからな」
翔は本当に良い奴なんだが…女のセンスだけは悪すぎる。
俺と違って美形なんだから幾らでもいい女が捕まえられるのに此奴はこの学園のブストップ4と付き合っている。
「そう言えば、東吾くんはどんなタイプが好きなの?」
「俺か? 俺は…そうだな湯浅萌子さんとかかな?」
「湯浅萌子? 芸能人とか?」
「お前、湯浅萌子を知らないのか? この学校のクィーンだろう。」
「クィーンって何? 」
「この学校の男が投票して決める、女子の人気ナンバー1の事だ。湯浅萌子さんは2年連続クィーンなんだ」
「そうなんだ、どんな人なんだろう?」
「ほら、そこにいるだろう。あの物凄く綺麗な人だよ」
少し離れた所に他とは比にならないブサイクな化け物が居た。
正直、見た瞬間から気持ちが悪くなった。
此奴と付き合うなら、僕は自殺を選ぶ。
目があった瞬間、この化け物が手を振ってきた。
「おい、湯浅さんが手を振っているんだ返してあげなくて良いのか?」
「いや、好みじゃないし、僕は彼女持ちだからね」
「お前、本当に変わっているな」
僕と東吾くんが話していると、最低愛悪の化け物、湯浅萌子が話しかけてきた。
気持ち悪い。
今迄の比で無い
。
油断すると吐いてしまう。
体が本当に鳥肌になり、悪寒が走った。
「男の子、2人でなに話しているの? もしかして私の噂?」
あながち嘘ではない。
嘘では無いけど…話しかけないで欲しい。
僕は無視したいけど、横の東吾くんは顔が赤い。
うん、嬉しいんだね。
「湯浅さんのの噂だよ…(棒読み)」
「そうなんだ、嬉しいな」
駄目だ、顔を見て話すと震えがきた。
友情の為だ、我慢、我慢、我慢…
「ほら、東吾君、、湯浅さんだよ…話さないと」
「俺は…いい」
俺はいいじゃないよ?
こんな化け物押し付けないでよ?
君が好きだと言うから話しているんでしょう。
「ねぇ…どんな噂をしていたのかな? 私、凄く気になるなぁ」
顔を見ないようにしよう。
そうすれば…どうにかなるか。
「うん、東吾くんの好きなタイプが湯浅さんみたいな人なんだってさぁ」
「翔くん…辞めろよ」
「えっ、北條君? じゃぁ黒木君にとって…私って好みじゃないの?」
こっちに話が来たよ。
「僕はもう彼女が4人もいるから充分かな」
「私が5人目になってもいいよ! ほら黒木君の彼女達、性格はともかく外見はね?」
「白百合さん達の事言っているの? 僕にとって白百合さんでも金剛さんでも東条さんも、西城さんも君なんか比べ物にならない位可愛いよ」
「何言っているの? 私はクィーンなのよ、あんな化け物なんかよりブサイクな訳ないじゃない」
うーん、僕から見たら、太陽と石ころ処じゃなく、宇宙全部とウンコより差があるんだけど、勿論ウンコは此奴。
だけど、この世界では此奴が美少女なんだよな…
「確かに湯浅さんは綺麗なのかも知れないけど…性格が好みじゃないから、だって君のことが好きだって言っている男の前で、他の男を口説く様な人は…好きになれないから…ごめんね」
「そう…じゃぁいいや…私用事思い出したから」
「そう」
「お前、本当に良かったのか? あの湯浅萌子だぞ、さっきの雰囲気だったら第5彼女でもいけそうだったじゃないか? 俺に遠慮なんてすること無かったんだぞ」
「僕にとって東吾くんは友達だよ、東吾くんと湯浅さんどっちか取るなら東吾くんを取るよ」
白百合さん達なら絶対に白百合さん達だけどね。
究極の化け物と友達なら友達を取るよね。
「そうか」
「うん、東吾くんは僕にとって大切な男友達だからさぁ…恋人4人以外に好きな人は…うん君しか居ないかな」
というか、人間に僕の目に見える人は全部で6人しかいない。
東吾君は貴重な僕にとって化け物でない人間の一人だ。
「お前な…残念だな俺が女だったら…第5彼女になってやったのに」
「それは同じかな、僕が女だったら東吾くんの彼女になってあげたのに」
此奴は本音で俺と話すから心地良い。
この話も俺を嫌って無いから出てくる話だ。
正直、白百合達が居なかったら毎日、此奴の所に入り浸っているかも知れない。
白百合達化け物とは一緒に居たくないけど、此奴とは一緒に居たいとは思う。
だが、此奴は白百合達と一緒に居る時が一番楽しそうで、凄く良い笑顔をして居るからあそこが此奴の居場所なんだろうな?
「不毛だな」
「不毛だね」
「そうだ、翔くん、今度俺の家に遊びに来ないか?」
「そうだね、じゃぁ今度遊びに行こうかな?」
「あぁ来てくれるなら家族で歓迎する」
結局、明日の放課後、東吾くんの家に遊びに行く約束をさせられてしまった。
女神降臨
東吾くんを校門の前で待っているとリムジンが止まった。
うん、金剛さんの時と同じだ。
「翔くん、さぁ行こう」
「凄いねこの車」
「まぁ俺は一応、北條だからな」
確かに、東吾くんの家は天下の北條グループだから当たり前か。
しかし、財閥の跡取り息子なのになんで、東吾くんは人気が無いのだろうか?
流れるようにしなやかな髪に、綺麗な瞳…前の世界なら確実に王子様キャラだ。
それこそ、完璧なリア充だろう。
確かにこの世界では醜いのかも知れない。
だけど、財閥の跡取り息子だよ?
本来なら、金目当ての女が幾らでも集まってくるだろう。
だが、それすらも彼には無いらしい。
性格は少なくとも悪いとは思えないんだけどな。
「さぁ、冷たい物もあるから乗れ」
「うん、ありがとう」
「あらかじめ言っておく、俺の家族は俺と比べても醜いんだ」
「そうなの」
なにそれ、期待しちゃうな…東吾くんより醜いなら…僕にも人間に見える可能性がある。
「あぁ、俺の家族は皆んなブサイクだ、その…お前の彼女達と比べても上を行く、使用人も母が醜い者しか雇わないから…ブサイクな者しか居ない…騙したようで済まない」
もしかして…そこは天国なんじゃないかな…楽しみだ。
車で20分。
東吾くんの家に着いた。
正直凄く驚いた。
金剛さんの家を見た時にも驚いたけど、その何倍もあるような屋敷というよりお城というような家だった。
「流石、北條家、凄い屋敷だね」
「大きいだけだ、使用人が少ないから半分も使っていない」
「なんで、使用人が少ないの?」
「ここは、化け物屋敷なんてあだ名がついているからな、特に母の容姿は、、もの凄く醜い。令和の妖怪と呼ばれている。その母や姉妹の醜さを気にしないでくれる者、更に自分の容姿の醜い者のみしか採用しない、だからだ」
「そうなんだ」
凄いな、それなら白百合さん並みの美少女が居るかも知れない。
大きな玄関に三人のメイドさんが居た。
化け物じゃない。
ちゃんとした人間、しかも美少女2人と美熟女1人。
ここは…やはり天国なのか?
「お帰りなさいませ、、おぼっちゃま」
「うむ、今日は友達を連れてきたんだ、宜しく頼むよ」
「はい、貴子様より聞いております、私たちは余り、顔を出さないように致します」
「そうだな」
「東吾くん、東吾くん、この人達紹介して」
こんな凄い美人、知り合いになりたい。
それ以前に久々に見る【化け物じゃない人】だ。
「なっ、どうしたんだ急に」
翔くん、どうしたんだ?
湯浅萌子の時ですらクールが君がこの化け物三メイドに…まさかな
「いや東吾くんと僕は友達でしょう?だったら僕はこのメイドさん達とも友達になりたい、そう思ったんだけど、、名前とか聞いても良いのかな?」
「翔くんがそうしたいなら、どうぞ」
本当に此奴は…何て奴だ…外見なんか本当に気にしないんだな。
それでなければ白百合を彼女になんてしないか。
「僕の名前は黒木翔って言います、これからも遊びに来ますので、宜しくお願い致します」
「ご丁寧にありがとうございます、私の名前は白金薫と言います、ここのメイド頭をしています。何なりとお申しつけ下さい」
凄く色気のある人だ。
この人は美魔女だ。
本当の年齢は解らないけど、30代前半の綺麗な女優さんという感じだ。
前の世界なら、僕なんか口なんて聞いて貰えない位の綺麗な人だ。
「私は、園崎仁美って言います。宜しくお願い致しますね、黒木様」
綺麗なお姉さん。
それに尽きる。
こんな人に膝枕をして貰ったら、、起きたくなくなるな。
「あ、あたしは古木ナンシーです、宜しく」
ボーイッシュな感じでハーフなのかな?
金髪に近い茶髪が綺麗だ
本物の綺麗なメイドさんだ。
「うん、宜しくね。これ後で食べて…」
「有難うございます…これは…なんなのですか黒木様」
「お土産代わりのお弁当…三人で後で啄んで、最も僕の手作りだから、本職のメイドさんから見たら拙く思えるかも知れないけど」
「「「手作りのお弁当…私達に本当ですか」」」
「食べてくれると…嬉しいな」
「「「有難うございます」」」
「翔くん、気を使わせてすまんな…」
やはり、此奴は他の奴と全然違う。
化け物メイドと呼ばれるこいつらに対してもこの対応、これなら母や姉、妹でも大丈夫かも知れない。
だが、翔くん、もう少しだけ試させてくれ。
親友の君の友情を試してばかりの俺を許してくれ。
「男の手作り弁当、その価値はお金にしたら凄く高額だ。こいつらの給料を越えてしまう、だからそれぞれのメイドに何か返して貰ったらどうだ」
さぁ、お前は何を望むのか
お金か?それとも
「お礼なんて、なくても良いんだけど…でも嫌じゃ無かったらメイドさんにお願いをしたい事があるにはあるんだけどな、少し恥ずかしい」
「あの、黒木様、、なんなりと申しつけ下さい」
「そうですよ…男の手作り弁当なんですから…指でも目でも差し上げますわ」
怖い流石に冗談だよね。
黒木は知らない。
10人に1人位は男の手作り品を食べられるなら方輪になっても欲しい。
そう考える女の子はこの世界にはいるのだ。
もし、白百合さんの立場になって愛して貰えるなら…殆どの女性が両手や両足位差し出すかも知れない。
ちなみに「奴隷になれは」逆にご褒美になる可能性すらある。
「本当、気にしないでなんでも言って…黒木様のしたい事なら何でもしますよ?」
「本当に? じゃぁ…最高のお茶のサービスと膝枕に耳かき…頼んでも良い」
前の世界で秋葉原で看板で見た事があるんだけど、お金が無く貧乏だったから入った事ないんだよね。
ねぇ、あれ本気で言ってらっしゃるのかしら…普通にご褒美ですよね。
うん、私達がしたくても出来ない事だよね?
多分冗談を言っただけですよ。
「そういう事だ、、翔くんはこんな奴だからお前らも、普通の女の子と同じに扱ってくれる、だから翔くんの前ではブサイクなんて思わず、普通に接してくれ」
「「「解りました、後でお伺いさせて頂きます」」」
凄いな翔君は…俺はあいつ等が気持ち悪いんだ。
だが、これから出会う者は比べ物にならない。
俺は家族だ…その家族なのに…気持ち悪いんだ。
凄く優しくて、暖かいのに怖いんだ。
「古臭くて悪いんだが、まずは母に挨拶にいこう」
「凄いね、まるで本当の王様か貴族みたいだね」
「翔くん、あながち間違っていない、我が母は令和の妖怪、ある意味では王様以上だ」
「凄いね、うん」
「あの、翔くんは怖くないのか? その、母の事が」
「なんで、東吾くんみたいな人なんでしょう?」
「あぁ、妖怪と呼ばれる、ブサイクな権力者が君は怖くないのか?」
「別に」
ここまで、ブサイクと言われると…本当にブサイクなのか…もしかしたら究極の美しい人なのかどちらかだ。
「母上、ただ今帰りました。お約束の友人の翔くんを連れてきました」
「その方が黒木翔ですか、確かに美しい方ですね」
嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ…こんなに美しい人がこの世にいる筈がない。…もし、神話の豊穣の女神が実在したら、こんな方なのかも知れない。
「やはりね、醜い私に普通に接する事が出来る者などいませんわ…貴方の言う通り多少はブサイクでもいける方だったんでしょうが…私相手には無理だったようですですね…これからも息子を宜しくお願いしますね…私がどれほど醜くても家族には関係ありませんから…」
【なんて寂しそうな目をするんだ】
流石の翔くんでも無理だったか。
白百合京子は醜いと幾ら言っても人間には見える。
だが、母や俺の姉妹は正真正銘の化け物にしか見えない。
この世で一番醜いと言われる程だ。
母や姉妹達に比べれば、俺はまだ人間の範囲だ。
最初から勝負にならなかったんだ。
だけど、俺はそれでも勝負したかったんだ。
怖くて、醜くて、吐き気が催す程の者だけど家族なんだ。
あの白百合にさえ奇跡が起きた。
俺の家族に起きても可笑しくないだろう?
勝負は終わったな…君でも、いや翔くんでも無理だったか、、
あれっ余りの綺麗さに意識が飛んでしまった。
この人は泣きそうな顔をしている。
こんな顔をさせてはいけない…
こんな卑屈な事を言わせてはいけない。
「初めまして美しい女神様、僕は黒木翔と言います。その、お目に掛かれて光栄です」
「「女神様」」
「女神様? それは私の事ですか? からかっているんですか? 」
「からかってなんかいませんよ女神様」
「ふざけないで下さい! こんなに醜い私が、私が女神なんて」
そうだよね、確かにこれ程、美しく僕の目に見えるという事は、この世界では恐ろしい程にブサイクなんだろうな。
何しろ、僕には人間にすら見えていない。本当に女神のように神々しくしか見えないんだ。
逆を返せば、この世界では怪物を通り越した悪魔や魔王に見えるんだろうな。
「少なくとも、僕は貴方と一緒に食事を楽しんだり、同じ時を過ごしたい、そう思っていますよ」
「お金目当てでも、そんな事言った男は初めてだわ…幾ら欲しいの? 100億、それとも1000億…あげるわよ…幾ら欲しいの? 今日一日付き合ったら欲しいだけあげる」
「あの、その前にお名前を教えてくれませんか?」
「えっ私の名前 北條貴子よ」
そう言えば、私…名前なんて聞かれた事なかったかしら。
「お金なんて要りませんよ…僕の方が貴子様と仲良くなりたいのになんでお金が要るのですか?」
「じゃぁ…そうだ、総理大臣、総理大臣にしてあげる」
「そんなの必要ありません。ただ、友達になりたいそれだけじゃいけないんですか?」
「本当にそれで宜しいのですか?」
「はい」
「私何か騙されていませんか?」
「そんな事しませんよ」
「あの、これは…東吾説明してくれませんか?」
「説明と言っても、翔くんはこういう奴としか言えない」
「そう解ったわ」
私は多分夢を見ている。
北條家は元々お金持ちの家だったけど、私の前までは日本の大手企業の一つに過ぎなかった。
それを私は小さい頃から手伝い世界の北條と言われるまでにした。
今現在、世界で一番の金持ちと言えば私の事だ。
私は小さい頃から学校という所に行った事が無い。
小さかった私は事業の才能があるから親を手伝っているそう考えていた。
学校に行かなくても必要な勉強は全て家庭教師が教えてくれた。
13歳の頃、私は初めてお母さまに我儘を言った。
「友達か恋人が欲しい」そう言った。
それから暫くして、目の見えない16歳の少年をお母さまは連れてきた。
彼は14歳の時に事故に遭って光を失ったのだそうだ。
その時に両親を失い施設にいたのだそうだ。
私は仕事以外の全ての時間を彼に使った。
目が見えないから、トイレに行く為には手を引いてあげなくてはいけない。
お風呂も怪我するといけないから洗ってあげないといけない。
私だって女だ、何度、狼になりかかったか解らない。
だけど一生懸命抑えた。
それから、5年がたち私は18歳になり、彼は21歳になった。
彼は赤い顔をしながら、私に告白をしてきた。
「俺は北條の家に救われて、貴子に頼らなくては生きていけない。そんな俺で良いなら結婚してくれないか?」
勿論、私は了承した。
「ところで、貴子はどんな顔しているの?」
彼に聞かれた。
私は自分がどんな容姿なのか解らなかった。
小さい頃から家から出た事がなかったから。
だからメイドに自分の容姿を聞いてみた。
「お嬢様程お綺麗な方はおりません」
メイドはそう答えた。
だから、私はそのまま彼に伝えた。
彼は私にハミカミながら
「そんな綺麗で優しい貴子を独り占めできる俺は幸せだな」
そう答えた。
そして彼は「我慢させてごめんね、、良いよ」
そう優しく答えてくれた。
私は彼に不誠実な事をしたくなかったのでしっかりと結婚して籍を入れた。
そして、それから体を何回も合わせた。
気が付けば子供も三人もできた。
しかし、18歳からの2年で三人の子供を作った私ってどんだけ性欲の塊なんだろうか?
彼に話すと「まぁ女は仕方ないよ」笑ってくれた。
私はこんなに自分を愛してくれる彼の目を治してあげたくなった。
幸いな事に天下の北條財閥だお金は幾らでもある。
お金をバラまき医師学会にお願いしたら、凄腕の眼科医を紹介してくれた。
手術は無事成功、彼は最初に「私や家族を見たい」そう言ってくれた。
そして、包帯をといて私を見ると…
「お前が貴子なのか?…その子供が俺の子なのか?…化け物だ」
彼はそのまま私や医者の制しを振り切り屋上に行き、そのまま飛び降りた。
そして…死んだ。
この時になって初めて私は知ったのだ。
私が醜いという事を、しかもその醜さは…人に見えない程、まさに化け物にしか見えない姿形だという事を。
ここまで醜い私は…人前に姿形を現さない方が良い。
私には財産がある。
それが可能だ。
だが、どこからか私の容姿の噂が広まり、実業家の手腕と醜い容姿から令和の妖怪と呼ばれるようになった。
そして、私の子供の三人も、もれなくブサイクだった。
まぁ東吾は少しはまともなようだが、それでもブサイクだ。
だが、東吾は娘とは違い、馬鹿にされても学園に通い続けた。
金の力でも何でも良いから友人ができたらいい。
そう思い莫大なお小遣いを与えたが…近づいてくるのは東吾から金だけむしり取るクズばかりだった。
そんな東吾が最近、急に明るくなった。
親友が出来たそうだ。しかも、「翔くん」「東吾くん」と下の名前で呼び合うのだそうだ。
この子は最近、クズしか寄って来なかったせいか人を嫌っていた。
決して心を許さない。
それが此処まで心を開いた。
ある時、空き缶が置いてあったのでメイドが処分しようとしたら、凄く怒っていた。
東吾が怒るなんて滅多にない。
理由を聞いたら、「親友に奢って貰ったジュースの缶なんだ」
そう言うと東吾は大切そうに机の上に置いた。
私は、そんな彼に挨拶がしたくなった。
息子の友情の邪魔はしたくない。
だが、興味が抑えられなく東吾に家に連れてくるように頼んだ。
凄く綺麗な子だった。
まるで神に祝福されたような温かい笑顔。
これ程綺麗な子は見た事が無かった。
こんな子が東吾の友達になってくれた。
嬉しくてたまらない。
だが、私が挨拶をしたらいきなり固まってしまった。
東吾から「翔くんは外見では判断しない」そう聞いていたが所詮私では無理だったようだ。
だが…違った。
私が…女神だって
女神、女神、女神、女神、女神、女神、女神、女神、女神
うん、あの女神だ…妖怪でなく女神だ。
目を見る…信じられない…本気で言っている。
私は令和の妖怪と言われる女…人の嘘なら簡単に見破れる。
お金が欲しくて言っているのかな?
それならそれで良い…ここまで幸せな気分が楽しめた…恵んであげる。
違うの?…嘘…だったら地位かな…違うの?
何もあげなくても…そんな優しい笑顔をむけてくれるの。
本当に?…顔を見た…本当に友達になりたいだけ?…私と?
いいわ…私が女神なんでしょう?
北條の力を使って…私は貴方の女神になってあげるわ
北條の財力なら神にだってなれるのだから。
美人姉妹
「翔くん…君は本当に凄いな」
「何がだい、東吾くん…僕なんかしたかな」
「いや…俺の母親の事だ…あんなに喜んでいた母は見た事が無い」
「そう…凄く良い人なのに」
俺はあんなに喜んでいる母を見た事が無い。
大きな商談に成功した時でも笑顔になった事は無かった。
だが、今日の母は始終笑顔だった。
それは翔くんがお金や権力を欲しているのではなく、純粋に母を友達にしたい。
そういう思いで話していたからだと思う。
俺は息子だ。
だが、血を分けた息子の俺ですら母は怖いし気持ち悪い。
はっきり言って同じ部屋で1週間も暮らしたら発狂するだろう。
それなのに、此奴は女神だと言い出した。
そして、恋する男の様な目で見ていた。
そんな目を母は向けられた事が無い。
だから、母は嬉しそうな目で俺に助けを求めてきたが…知らないよ。
翔くんが何を基準であんな優しい行動をするか俺も解らないからな。
俺は最初、翔くんがブス専なのかそう思った事があった。
だが、学園では翔くんの恋人達以外のブサイクには一切靡かなかった。
翔くんが何が基準で好き嫌いが決まるのか俺には解らない。
だが、翔くんは好きになった者にはとてつもなく甘い。
母が驚くのはこれからだ。
願わくば後2回この奇跡が起きて欲しい。
俺はそう思うばかりだ。
「そうか、母は良い人か」
「うん」
それはお前にだけだよ。
そう言いたくなる。
「次は、妹の所に行ってみるか?」
「姉妹なら一緒に会った方が良いんじゃないかな?」
「すまない、言いにくいが二人とも引き籠りなんだ」
「そうなんだ、じゃぁ仕方ないね」
僕は物凄く期待している。
貴子さんは、まるで女神の様な人だった。
それと同じ位醜いなら…僕にとっては同じ位美しいのかも知れない。
「おい、美優いるか?」
「お兄ちゃん、なにかよう?」
「今日は俺の友達が来ているんだ」
「そう、じゃぁ美優は部屋から出ないようにしているから大丈夫だよ。だけどお兄ちゃんにもようやく友達が出来たんだね、、良かったね」
「それでな、美優良かったら…美優も一緒に会ってみないか?」
「嫌だ…どうせ、皆んな…美優の事、化け物だとか気持ち悪いとしか言わないんだもの」
「そんな事いわないで…試しに会ってみないか?」
「嫌だ、嫌だ、嫌だ…だって馬鹿にされるか、怖がられるか、気持ち悪がれるだけなんだもの」
聞いてられなかった。
こんなのってない。
もし、この子が僕の目から見て、醜くても友達になってあげよう、そう思った。
この子は、僕と同じなのかも知れない。
世の中の人間が化け物にしか見えない僕。
世の中の人に化け物にしか見られない彼女。
違うのかも知れないけど、、孤独感は同じだろう。
僕がもし、白百合さん達や北條くんに出会えなかったら…やはり引き籠ったと思う。
「初めまして美優ちゃん…僕は、東吾くんの友達で黒木翔って言うんだ…美優ちゃんとも友達になりたいんだけど…ここ開けてくれない?」
「嘘だ…そんなこと言って開けたら…化け物だ…気持ち悪い…無理だって逃げるんだ…」
「僕はそんなことしないよ」
「嘘なんだもん、そんなこと言っても…絶対に逃げるんだもん」
実は、今回の前にも美優に友達を作ろうとした事があった。
その時には、北條財閥の更に下の子会社の社員の息子に白羽の矢をたてた。
その母親は莫大な借金があり、一家心中を考えていた。
死ぬくらいまで思い詰めていてその息子も死のうとしていたのなら、その借金を払ってやれば感謝位するだろう。そう考えていた。
だから、息子が美優と友達になるなら借金の全額を払ってやる。
そう母が持ちかけた。
その家族はその提案にすぐに飛びついた。
顔合わせの日、実際に美優を見たその家族は、無礼にもそのまま立ち去ろうとした。
引き留め、事情を聴いた。 すると、その家族は美優がいるにも関わらずにいきなり叫びだした。
「私にもプライドはある。化け物に子供を差し出す気はない…息子を化け物に差し出す位なら死を選ぶ」
怒った母はそいつの会社に圧力をかけてクビにした。
そして、その他にも圧力をかけて地獄に落とした。
1週間後、その家族は借金苦で自殺した。
そりゃそうだ、ただのサラリーマンが10億近い借金があれば死ぬしかないだろう。
ただ、この事で美優は深い心の傷を負った。
死んだような目で美優は「私と友達になるなら死んだ方がましなんだね…私ってそんなに化け物なのかな?」そう言っていた。
それ以降、ただでさえ不登校だった美優は屋敷の中を歩く事もしなくなり部屋に引きこもった。
「僕はそんなことしないよ」
「嘘つき…信じない」
「はぁ…仕方ないかな…東吾くん…僕は君の友達だよね? これからする事を許してね」
「翔くんは友達だから…何でも許してあげるけど…何をするんだ」
僕は東吾くんの許しを貰うと、扉に体当たりをした。
ドラマと違って物凄く固い。
「何をしているの?」
「開けてくれないから、無理やり開けようとしているだけだよ」
「やめて、やめて、やめて」
「せーの!」
扉はビクともしない。
「翔くん、この扉を壊そうとしているのか…簡単には壊れないぞ」
「うん、だけどこれ壊さないと美優ちゃんには会えないのでしょう? ならやるしかないじゃん」
何回も扉にぶつかっていった。
全然ビクともしない。
そりゃそうだ、普通の家ならともかく、ここは北條家だもの華奢な扉がついている訳はない。
「翔くん…手から血が出ているじゃないか…もう辞めろ…」
「ごめんね、東吾くん、これは意地だから辞められない」
「そうか、ちょっと待ってろ」
東吾くんは仁美さんに言ってカギを持ってこさせた。
よく考えたら、カギをもってくれば良かっただけだ。
扉を壊そうとした自分が恥ずかしい。
「開けないでよ、お願いだから」
「ゴメン美優、翔くんは俺の友達だから、翔くんが開けると言うなら俺は開ける」
「止めてよお兄ちゃん、、止めてよ」
「さぁ…開けたぞ 翔くん」
「解った」
僕はドアを閉められる前に部屋に入った。
美優ちゃんは慌ててベットに飛び込んで頭から布団をかぶった。
「嫌ぁ 見ないで…見ないでよ」
僕は、妙な背徳感を覚えたが、そのまま布団をはぎ取った。
「見ないで、見ないで、見ないで」
美優ちゃんは顔を手で一生懸命隠していた。
驚いた、この子もただごとで無い位に可愛い。
貴子さんが女神なら、この子は天使だ。
慌てて布団に潜って、顔を隠したからパンツが丸見えになっている。
仕方ない。
「美優ちゃん、顔を隠すのも良いけど…そのパンツが見えているよ?」
慌てた美優ちゃんはスカートを押さえた。
「あの、美優ちゃん…僕が君を怖がっているように見える?」
僕はわざと美優ちゃんの顔を覗き込むように目を見ながら話しかけた。
「見えない、だけど…美優、、気持ち悪くないの? 化け物に見えるんでしょう?」
「見えないよ…天使にしか見えない」
「ふぇぇぇぇー 天使ってあの頭に輪っかが付いている天使さんの事?」
「うん、そうだよ」
北條家ってビックリ箱なのかな?
この子も人間に見えない。
東吾くんとそんなに歳が違わないはずなのに…歩美ちゃんより年下に見える。
しかも貴子さんと同じ様に…人間に見えない。
本当に天使にしか見えない。
「本当に美優、怖くないの、気持ち悪くないの?」
「うん、怖くないよ」
僕は美優ちゃんの頭を撫でた。
美優ちゃんは嬉しそうに目を細める。
「本当に怖くないんだね、頭って撫でられるとこんなに気持良いんだね」
美優ちゃんの顔が赤い。
そして見つめているとポロポロと泣き出した。
僕は美優ちゃんを抱きしめるとそのまま顔を僕の胸にあてた。
僕は美優ちゃんを抱きしめながら、泣き止むまで頭を撫で続けた。
「ごめんね…泣いちゃって」
上目遣いで僕を見つめてくる。
これは凄い、目が離せなくなる。
「別に気にしないよ…寧ろ嬉しかったかな?」
「なんで?」
「天使みたいな美優ちゃんを抱きしめられたからかな…」
「そうなんだ…黒木くんなら何時でも抱きしめていいよ…えへへ」
「そう…じゃぁせっかくだから…」
これ、凄い…体が心から溶けちゃう…離れたくなくなっちゃう。
翔くん、君は一体何者なんだい。
あれ程、化け物みたいな母を女神と呼んだり、この気持ち悪い妹を天使だって。
俺にやれって言われたら出来ない…妹とはいえ、これ程醜い女を抱きしめて頭を撫でるなんて。
勿論、妹だから、可哀想だからどうにかしてあげたい、そんな気持ちはある。
だけど、同情心はあるけど、母や姉や妹と結婚してやるのか、そう聞かれたら全力で逃げる。
そして、どうしても結婚しなくちゃいけない…そんな状態になったら自殺するだろう。
それなのに君は…もう俺には翔くんは…慈悲深い神にしか見えない。
「翔くん、悪いが次は姉の所に行かなくちゃいけないんだ…そろそろ」
「あっゴメン、美優ちゃん…痛くなかった?」
「ううん、ぎゅっとされて凄く気持ち良いし、嬉しくなるから…大丈夫」
「じゃぁ、僕いくね、挨拶が終わったら…あれっ東吾くん、今日これからどうするの?」
「考えてないな…翔くんがしたいようにして良いんじゃないか?」
「じゃぁ、僕が作ってきたお弁当を食べながら、手が空いている人で集まって遊ぼうか…それで良いかな」
「えっ」
俺が、母や姉と妹…更に三人のメイドと遊ぶのか…幾ら翔くんと一緒でも嫌だな…
美優をみた。
目が笑ってない。
邪魔したら殺す。
そんな顔をしている。
恐らく、母にもこれを断ったのが解ったら…何されるか解らない。
「俺は用事があるから、美優と他に手の空いた者と遊ぶといいよ」
これで良い筈だ…美優の顔から殺気が消えた。
「それじゃ、美優ちゃん、また後でね」
「うん、黒木くんもまた後でね」
天使の笑顔に送られて僕は美優ちゃんの部屋を後にした。
「次は姉だな」
「うん、お姉さんなんだね、どんな人か楽しみだね」
「楽しみなのか?」
「うん、楽しみだよ? 何でそんな事聞くの?」
翔くん…本当に楽しそうだな、嫌々じゃないのかな?
「それなら良かった」
「玲奈姉さん…入って良い?」
「東吾…どうしたの、貴方が私の所に来るなんて珍しいじゃない」
「いや、姉さんに紹介したい人が居るんだ」
「私にね? 正直会うだけ無駄じゃねぇ? どうせ顔見たら逃げ出すだけじゃん」
この人も人に見えない。
もう驚く事はやめよう。
北條家は特別なんだ。
「初めまして、玲奈さん、僕は黒木翔って言います、東吾くんの友達をしています」
「おおお男…ゴメン、こんな醜い顔で…すぐにどっか行くからね…安心して」
この人も良い意味で人に見えない。
北欧神話のバルキリーの様に凛々しく綺麗だ。
何故、北條家の人がこんな風に見えるか解らない。
だけど、規格外に…物凄く綺麗に見える。
「そんな事言わないで下さい。僕には玲奈さんは醜くなんて見えませんよ」
玲奈さんの顔が物凄く怖くなった。
明かに怒っている。
そんな様子が見てわかった。
「醜くないだと…嘘言うなよ! この吐き気を催す程気持ちの悪い顔のどこが醜くないんだ」
弱った、僕から見て物凄く綺麗って事はこの世界では凄く醜いって事だ。
「僕は人を外見では見ません…貴方は、凄く魅力的に思えます」
「それはな、お前が、そんな綺麗な人間に生れたから言える事なんだ、男に限らず女ですら私を見たら逃げ出すんだ…なぁ…この顔が醜くない訳がないだろう?」
私は小さい頃から自分が醜いって事を知っていた。
だから、人とは付き合わずに生きてきた。
弟の東吾は気づいてないかも知れないが、お前が私を化け物を見る目で見ているのを知っているぞ。
まぁそれでも気にかけてくれるだけありがたいがな。
あの三人のメイドだってそうだ、どんなに醜くても私たちはまだ人間なんだ。
そんな目で私を見やがる。
私の仲間は多分、妹の美優。貴子母さん位しか居ない。
私と同じ位、いや母さんに到っては私以上の化け物だ。
その三人だけが私の仲間。
他は…私を見下すだけの敵だ。
そう考えて生きてきた。
綺麗な顔立ちで光の中を歩いてきた人間。
此奴は私とは違いさぞかし幸せな人生を送っているのだろう。
お前なんかに私の気持ちが解ってたまるか。
「幾ら言われても、僕には玲奈さんが綺麗な人にしか思えません…信じて貰えないのは悲しいけど…どうしたら信じて貰えますか?」
こいつ、、借金でもあるのか?
随分粘るな…だけど…可笑しいな…此奴と話していると自分が美女にでもなったような気分になる。
だったら、絶対にお金を払っても男がしない事を言ってやる。
「信じて欲しいのか? だったら私にキスしろ…もしやれるのなら信じてやるよ」
これは幾らお金を積んでもやる男はまずいないだろう。
普通の女なら、金を積んだらやる奴もいるかも知れない。
だが、私位に醜い女に出来る男なんかいない筈だ。
どうしようかな?
別に口にキスしても良いんだけど、したらまずいよね。
だったら、ほっぺで誤魔化すしかないな。
「それで、信じてくれるなら…チュ」
「えっ、えっ…」
「流石に少し恥ずかしいから僕は行きますね、これから皆んなで遊ぶつもりなんで、もし時間がるなら一緒に遊びませんか?」
これで良いのかな?
流石に彼女がいるんだから口は不味いよね。
「翔くん…男の唇はそんな安い物じゃないぞ…幾ら挑発されたからって」
なんで翔くんは姉さんにキスが出来るんだ。
俺には絶対できない。
姉さんとキスするか、ウンコとキスするかなら間違いなくウンコを選ぶ。
それに流石の姉さんも顔とは思っていなかったと思うぞ。
どうしてもしたいなら手にでもすればいい…それでも普通はやらない、それで充分だったはずだ。
いや充分どころかあの姉の容姿じゃ、億単位積んでやって貰えるのか解らない。
俺なら10億でもやらないな。
翔くんは俺の話を聞いていないのか、顔を赤くして出て行った。
「あの…東吾、私、今頬っぺたにキスされたのか?」
「あぁ、されていたな」
「私は悪い事をしたのかな?」
「したな、翔くんの人の良さに付け込んで最低だよ姉さんは」
「そうか…黒木くん、彼にとって私は化け物じゃないんだな」
「翔くんだからね…彼は美優にも母にも優しかったからね」
「本当?」
「あぁ嘘じゃないよ、だけど姉さんはもう嫌われたかもね?」
「なんでさ?」
「あんなセクハラしたらどんな男だって嫌いになると思うよ」
「謝ったら許してくれるかな」
「さぁね」
「あっ、だけど黒木くん、後で遊ぼうって誘われていた…嫌われてないよね」
「チェ…気づいたか?」
「東吾?」
「ともかく、翔くんは物凄く純粋で優しんだから付け込むなよ」
「もう、しないよ…私を化け物って見ない唯一の男に嫌われたくは無いからね」
姉さん、凄く嬉しそうだな。
翔くんはこの屋敷の人間全員と仲良くなれそうだな。
奇跡だな…本当に良かった。
どんなに怖くても醜くても家族だから。
パラダイス
「翔くん、悪いけど俺は用事があるから失礼するよ、母さん、後は頼むね」
「任されましたわ」
俺はここに居たくない。
すぐにでも逃げ出したい。
流石に翔くんのお弁当を逃しても居たくない。
1人でも恐ろしいのにここには、母さんから美優、玲奈がいる。
そして3人の化け物メイド迄揃っている。
正直、何時もの翔くんのメンバーなんてこれに比べたら可愛いもんだ。
彼奴らとなら、嫌な気持ちはこみ上がるが、一緒に居ても我慢ができる。
吐き気がするだけで、気持ちが悪いだけで耐えられる。
だが、このメンバーなら本当に吐く。
多分一口も食べられない。
体はもう寒気が止まらない。
肌にはこれでもかと鳥肌がたっている。
「東吾はもう下がった方がいいな、これから忙しいんだろう」
玲奈姉さん、感謝だ。
「悪いな翔くん、後は俺の家族と楽しんでくれ」
「うん、悪いねそんなに忙しいのにつき合わせちゃって」
「俺から誘ったんだ、、いいさ、じゃぁ翔くん、また明日」
「うん、また明日」
しかし、見れば見るほど壮大だな。
真ん中に女神のような貴子さん。
その右にはバルキリーみたいな玲奈さん。
その左には天使みたいな美優ちゃんがいる。
そして、その後ろには美しい三人のメイドがいる。
ここだけ見たら、まるで勇者として召喚された雰囲気だ。
「私はこの世界の女神をしている貴子といいます」
そんな話をされても信じてしまう位絵になっている。
「あの、黒木様、どうかされたのですか? 顔が赤いですよ」
「いや、皆さんに見惚れてしまっていただけです、気にしないで下さい」
「そうですか…」
気にしないでいられるわけないでしょう?
そんな目で見ないでください、、体の芯から熱くなってしまいます。
東吾が言っていた、これは翔くんだから…それしか考えられない。
さっきは気が付かなかったけど、こんな目をした人が私を気持ち悪いなんて思っているわけない。
ふぇぇ、凄く優しい目だ、やだ、さっきの事思い出しちゃうよ。
「これが…男性の手作り弁当なのですか?」
「ここには、本職のメイドさんがいるから拙い物ですが食べて頂けませんか?」
「いいの、いいの、これ本当に食べていいの」
「本当にお弁当だ…凄いな」
「美優、男の人の手料理、なんて初めて、早く食べたい」
「それじゃあ、まずは貴子さんから、どれが食べたい」
「私はハンバーグがよいわ」
なんで、聞くの箸を渡してくれれば良いのに
「じゃぁ、貴子さん、あーん」
何これ、何これ、何、何、何、何、
「あーん」
美味しい、こんな食べさせられ方したら石鹸だって美味しく食べちゃうと思う。
「美優は卵焼きが食べたい」
「じゃぁ はい美優ちゃん、あーん」
凄く、美味しい…なんでか知らないけど…これ美味しすぎるよ。
「あの黒木くん…私は肉団子」
「はい」
「何で、箸を渡すのさ…あーん、してくれないの?」
「嘘です、はい あーん 意地悪されたからお返しですよ」
「酷いな…でもゴメン…この通り」
「じゃぁさっきのお返しが欲しいな」
お金とかかな、ほっぺにキスだから10億円くらいかな。
まぁ大した痛手じゃないけど…
「はいっ」
僕は自分の頬っぺたを突っついた。
えっえっ…これって…何…
「お返しは僕がしたのと同じように頬っぺたへのキスです」
「あのさぁ…それ本気なの?」
「同じ事返してって言うのは普通じゃない?」
普通じゃないよそれは。
男のキスが太陽と同じ位価値があるとすれば女のキスの価値なんて石ころみたいなものだ。
まして醜い私のキスなんか…ゲロ以下の価値しかない。
でも、それでも欲しがったんだよな、黒木くんは、、
「解った…行くよ…ぶちゅ」
黒木君が笑った。
仕方ないじゃないか?
キスなんて縁のない世界で生きているんだからさぁ。
旨く出来る訳ないだろう。
「僕より、深いキスだったからお返しが必要ですね チュッ」
わーわーわー…キスされた、今日1日で2回も…
私、死ぬのかな…こんなにラッキーなんだもん。
あれっ…ヤバイヤバイヤバイ…悪魔が5人こちらを見ている。
精神的にではなく物理的に殺されるかも知れない。
「黒木くん、なんでお姉ちゃんになんかキスしたの? 美優のこと可愛いって言ったのは嘘なの?」
「美優ちゃんにもキスしても良いの?じゃあ、ここが良いかな チュッ」
嘘、おでこにキスされた、うん、黒木くんはやっぱり、美優の黒木くんだ。
「美優もしてあげるね、だから屈んで」
僕が屈むと同じように額にキスをしてくれた。
2人とも顔が真っ赤だ。
「あの…黒木さん…私にはそのしないのですか」
僕は貴子さんを抱きしめて同じ様に頬っぺたにキスをした。
同じ様に貴子さんも頬っぺたにキスを返してくれた。
メイドさんの三人は食い入るように見ていた。
楽しい食事の時間は過ぎていった。
「さぁ何しようか、皆んなは何かしたい事がある」
「その前に黒木様、私たちはまだ、お弁当の代金を払っていません」
「そうだったね…だけど別に良く」
「良くありません…すぐに準備しますので少し待って下さい」
前の世界で秋葉原の看板にあった事をそのまま伝えてしまったけど、膝枕と耳かきってワンセットだよね。
結局はお茶を薫さんが用意してくれて二人で堪能した後、仁美さんとナンシーさんが片耳づつ耳掃除をしてくれた。
薫さんが少し機嫌が悪そうだったけど、三人で役割を決めたみたいだから口出しをしない。
逆に、今度は貴子さん達三人が食い入るように見ていた。
その後、トランプで遊んだのだけど、勝った人が他の人に一つ命令できる。
そんなルールにしたら、凄い緊迫したゲームになった。
結局、僕は勝てなかったけど、お願い事が膝枕や頭を撫でる。
ばかりだったので楽しかった。
楽しい時間はすぐに過ぎていった。
僕が帰る時にはリムジンで施設まで送ってくれた。
車を運転していた仁美さんが僕の住んでいるのが施設だと解ると悲しそうな顔をした気がする。
僕は施設の自分の部屋に明かりをつけると…寂しくなった。
東吾くんは生きる
最近、俺には親友が出来た。
名前は黒木翔って言うんだ。
そいつは物凄く不思議な奴だった。
そいつは物凄く美しいくせに何故かブサイクばかりを好きになる。
しかも、学園一美しいと言われる…湯浅萌子がモーション掛けたのにあっさりとかわしていた。
ブサイクなら誰でも愛するのか?
そう思ったが、そうでは無かった。
彼なりの特別なルールがあるようだ。
俺は中途半端な化け物だ。
俺から見たら、母や姉や妹は恐ろしくて仕方ない化け物なんだ。
醜いし、気持ち悪いし…怖い。
北條が世界一の金持ちで凄いと言われても
欲しい物は何でも手に入ると言われても
その幸せすら、家族を見ると一瞬で失われるんだ
もし、俺が美形だったら、いやせめて普通であったなら外に幸せを求める事が出来たかも知れない。
だが、俺もブサイクなんだ。
中途半端なブサイク…他人から見たら化け物。
男という絶対的な優位に生まれたのに…相手にされないブサイク。
誰も傍にいてくれない程のブサイク。
笑ってしまうよ……家族を醜いと思って他の者と仲良くなりたい。
だけど、他の人からはブサイクで気持ち悪い、と思われる存在。
俺は何で中途半端に生まれてきたんだろうか?
家族と同じ位の化け物だったら、諦めもついたのかも知れない。
そうしたら、母や姉や妹とも仲良くなれたのかも知れない。
逆に翔くんの様に…いやそれは贅沢だ…普通の男に生れたら、学校で友人を得て幸せだっただろう。
俺は化け物を嫌いながら、人には嫌われる中途半端な化け物なんだ。
何処にも生きていける所はない。
俺と同じ位ブサイクな奴と言えば、翔くんの彼女達と家の三メイドだ。
だが、、俺にとって此奴らは化け物だ、家族程では無いが気持ち悪くて付き合いたいとは思わない。
勿論、此奴らだって俺を気持ち悪いと思っているだろう。
自分がどんなに気持ち悪く、ブサイクでも相手にブサイクを望んでいる訳では無いのだ。
実際に俺は湯浅萌子の様な美少女が好きだし、此奴らも翔くんが好きなのを考えればわかるだろう?
何が言いたいのかと言えば、凄く孤独なんだ。
中途半端だからどちらにも慣れない。
この孤独が永遠に続くかと思うといつも死にたくなる
だが、そんな孤独な俺の前に彼奴が現れたんだ。
まるで、この世界全てに愛されたような男、黒木翔が…
そして、そいつは俺の親友となってくれたんだ。
しかもそいつは俺のことを東吾くんと呼んでくれる。
だから、俺は敬意をこめて翔くんと呼んでいる。
俺は…翔くんと出会わなければ…多分孤独に耐えられなくて自殺したかも知れない。
翔くんの男の友達は俺しか居ない。
うん、確実に親友と言えるだろう。
そんな翔くんが俺の家にきてくれた時の事だ。
翔くんはこの屋敷の人間全員と仲良くなれそうだな。
奇跡だな…本当に良かった。
不思議な事に化け物にしか見えないけど、俺にも家族を思いやる気持ちが僅かにあるその事に気が付いた。
翔くんと幸せそうな家族を見たらそう思ったんだ。
どんなに怖くても醜くても家族だから。
本当に、良かった…これで…? これで何だ?
これで、俺も死ぬことが出来る。
そうか、俺は死にたかったのか?
自分が惨めでも、どんなに辛い人生でも生きていたのは家族が心配だったから…死ねなかったのか?
だから、幸せそうな家族を見た時に、死にたくなったのか?
俺は…死なないよ。
だって、俺が死んだら翔くんが悲しむだろうからさ。
それに女版、黒木翔が現れるかもしれないじゃないか…まぁ現れないかも知れないけどさぁ。
まずは…白百合チャレンジだな。
白百合アタック 失敗(北條東吾)
俺は翔くんが帰った後の家族を見て驚いた。
相変わらず気持ち悪くて仕方がないが、三人共に物凄く機嫌が良い。
母は恐ろしい笑顔で笑いっぱなしだし、姉はクネクネしながら自分を抱きしめている。
妹はニコニコ笑って気が付くとよだれが垂れている。
まぁ、翔くんからキスされたのだからそりゃ頭もおかしくなるだろう。
幸せ?…うん幸せそうでなによりだ。
だけど、これを俺が望んでいたのかな…違う気もするが、まぁいいや。
「東吾、良い所にきましたね、お小遣いです」
まじか…どう見ても2億はある。
「母さんが1億、私と美優で5千万ずつ併せて2億…これ位がいいかな? もっと欲しいならあげても良いけど」
「そうそう、お兄ちゃんが黒木くんを連れてきてくれたんだから…感謝の気持ちだよ」
正直、毎月の300万円だけでも充分なんだがな、翔くん以外友達は居ないから使う事もないし。
「別に、友達を連れてきただけだから、要らない」
「そう、なら貴方の口座に入れておくから使いたい時に使いなさい」
この三人には俺とは違い金儲けの恐ろしい才能がある。
母は財閥の頭だから当たり前だが、姉も妹もおかしい位に金儲けが旨い。
投資を行い、事業を起こして簡単にお金を稼ぐ。
僅か10万円足らずのお金から気が付いたら、2人とも200億以上の資産を稼いでいた。
部屋を見ても投資の本すら無いのに…不思議としか思えない。
機嫌が良かろうが、怖くて気持ち悪いのは変わらない。
だが、俺は自分が耐えられる限界までこの部屋にいた。
「東吾、まだ居たのですか? 貴方が私たちの傍にいるなんて珍しいですね」
「いえ、これで失礼させて頂きます」
俺はトイレに入ると…吐いた。
胃の中に入っていた物は全部吐いた。
10分、俺にしては頑張った方だろう。
そして、メイドの三人もすこぶる機嫌が良い。
白百合達はこのレベルの醜さだ。
なら、このメイド達に囲まれて堪えられれば白百合たちの醜さにも耐えられるはずだ。
「すまないが、今日は食事の間給仕をしてくれないか?」
「珍しいですね…まぁメイドですからその位はしますが…お互いに実りがないと思いますが」
食べた気がしない…駄目だ、、
「すまない…もういい」
「そうですか」
不機嫌そうに彼女達は立ち去った。
俺はまたトイレに駆け込むことになった。
次の日、俺は、白百合アタックをする事にした。
白百合アタックとは、白百合達と付き合えるように耐性を付ける事だ。
翔くんの周りにはかならず、彼奴らがいる。
親友として振舞うには翔くんの彼女達にもそれなりに敬意を払うべきだろう。
せめて、1時間、一緒の空間に居ても大丈夫位な耐性は必要だ。
そうすれば、お昼を一緒にとる事も出来るだろう。
白百合アタックといっても第一婦人が白百合だからで、別の人間でも構わない。
自分に一番近い人間は…金剛だ。
金剛家は実業家どうし、多少の付き合いはある。
廊下で金剛を見かけた。
チャンスだ声を掛けないと…
「金剛さん、ちょっと良いかな?」
「北條…なにかようなのかしら? 正直、気持ち悪いから話したくないけど…黒木様の友達だから仕方ないですわね、、ようがあるなら言いなさい」
「あのさぁ…おえっ…ゴメン…いい」
「そう、ならいきますわ、」
俺はトイレに駆け込んだ。
胃の中の物を全部ぶちまけた。
もう吐く物は無い、次は少しは耐えられるだろう。
「西城さん、少し良いかな」
「歩美になにかようなのかな?…げっ北條東吾…」
気持ち悪い、だけど、此奴は黒木君の友達だ。我慢、我慢。
「いや、翔くんの彼女だから…友達と…うぇぇぇ…ごめんやっぱりいい」
「なんで吐いているの、キモイ」
俺は走り出すとまたトイレに駆け込んだ。
男子用のトイレは少ないから、上着はゲロまみれだ。
しょうがない、今日はもう帰ろう。
寒気や拒絶反応は我慢できるが、その後の吐き気はどうする事も出来ない。
そして、まともに喋れないんじゃ無理だ…白百合アタックどころか、まだましな金剛や西城で挫折だ。
諦めよう。
だが、おかしい、彼奴らはなんで大丈夫なんだ。
例えば、翔くんの彼女達だ、翔くんを中心に4人は普通に仲良くしている。
三人のメイドは仲間意識があって仲がいい。
うちの家族も三人仲がいい。
もしかしたら同性なら同じ位のレベルの醜さなら気持ち悪くならないのか?
そう考えたら…男に生れて醜い俺にはああいう仲間は出来ない。
何しろ、俺以外の男は少なくとも数人の女を侍らす事が出来ている。
俺ほどブサイクな男はこの世に居ないだろう。
やはり…俺は北條なんだな。
おかしい、他の人間も彼女達を見たら、同じ様な気持ち悪さを覚えるだろう。
だけど、俺みたいに吐いた人間は見た事が無いぞ。
まぁ、近づかないからなのかも知れないが…
俺だけ何かが違うのか?
まぁ深く考えても仕方ない。
目の保養の為に湯浅萌子でも遠目で見てみるかな?
キスキスキス
「黒木くん、なにか私に言わなきゃいけない事があるんじゃない?」
今日のお昼は白百合さんの不機嫌な顔からスタートした。
金剛さんの方を見る。
明かに金剛さんも、私も不機嫌なんですの、そんな顔でこっちを見ている。
歩美ちゃんは涙目で下側から覗き込んでくる。
「黒木君、私は恋人兼、姉なんだろう? だったら隠し事は無しにしてくれ」
僕は本当に困った。
心当たりは、ある。
もし、彼女達を怒らせるような事をしたならば北條邸での事だ。
だけど、行く事はちゃんと彼女達に許可を取った。
責められる謂れは無いと思う。
中で何があったかは、知らない筈だ。
どうすれば良いのだろうか?
「えっと、北條家に遊びに行った時の事かな?」
「そうですわ…私達を差し置いて…あんな破廉恥な事を」
「それを、なんで知っているの?」
「それはですね、貴子さまが自慢げにうちの母に…黒木様とキスをしたと話してきたのですわ」
小百合さんと貴子さんって知り合いだったのか、まずい、まずい、まずい、確かにあの時僕は調子に乗っていた。
キスをしまくっていた。
「認めますの?」
「認めます…だけど弁解させて貰っていいかな?」
「黒木くん、私達彼女だってキスをして貰ってないのに…酷い」
「お兄ちゃん…酷いよ」
「何を弁解したいんだ黒木君は…」
「あれは親しい人へのキスで恋人へのキスではありません」(汗)
「黒木くん…キスにそんな差は無いよ? どう差があるの、あるのなら言ってみて」
「北條家でしたのは頬っぺたや額へのキス」
「ほら、やっぱりキスしたんじゃない? それがどう違うの」
「白百合さん…これが恋人にするキスだよ」
僕は白百合さんの口にキスした。
「うぐ…んんんん ぷはぁ」
「「「…….」」」
「…」
「おーい、白百合さん」
もしかして気絶しているのかな?
仕方ないな。
もう一回、軽くキスした。
「あれっ…今、私キスされたんだ…心臓が止まるかと思った」
「これが、恋人どおしでするキス、解ってくれた?」
白百合さんは頭をカクカクと縦に振った。
「ちなみに、口にしたキスは白百合さんが初めてだから…ファーストキスだよ」
白百合さんは鼻血を出すとまた気絶してしまった。
「黒木様…ずるいのですわ…確かに白百合さんが第一彼女ですが、二回も続けてなんて、なんて、なんて」
「そう、じゃぁ金剛さんには…チュッ…うぐ」
「えっ…うぐ…うぐ…ぷはぁ」
金剛さんには首筋にキスしてから口にキスをした。
「黒木様…黒木様…にキスされた、キスされ…きゅぅ」
鼻血だして倒れてしまった。
「つ、次は私の番です」
「そうだね歩美ちゃんには僕からでなく、歩美ちゃんからキスして欲しいな?」
「あああ歩美からするの?」
「うん、駄目」
僕は歩美ちゃんがよくするように下から覗き込んだ。
ずるい、ずるいよあんな顔されたら駄目なんて言えない。
恥ずかしくて顔が見れない。
体が震えちゃう。
どうしよう、どうしよう?
「あっ、ついでにお兄ちゃん愛している、そう言ってからね」
「おおおお兄ちゃん愛していりゅ」
噛んだ。可愛いな本当に。
しかし、いつまで経ってもキスしてこない。
仕方ない。
「歩美ちゃん、時間切れ」
「そんな、お兄ちゃ…んぐ、んぐんん」
「んぐ、んぐんん、待ちきれないからこっちからしちゃった」
歩美ちゃんは鼻血を垂らしてえへへと言いながらしゃがみこんだ。
「あのぉ 黒木君…私は、その」
「うん、勿論するに決まっているよ?」
僕は東条さんの頭に手を回してそのままキスをした。
「うん…うん、うぐ..うぐうんんん」
東条さんはそのまま気絶した。
流石クールビューティー 鼻血は出していない。
しかし、キスで気絶なんて、この世界の女性はなんて男性に耐性がないんだろうか。
黒木は知らない。
この世界の女性で男性にキスなんてして貰える女性なんて殆ど居ない事を。
仲の良いおしどり夫婦が、妻の誕生日に頬っぺたに軽くキスするその位の物だ。
つまり、結婚して妻になっても、余程愛しあっていないとして貰えない。
中には、死ぬまでキスをしない夫婦もいる。
だから、他の女にキスをしたと聞いた時の彼女達は黒木が思った以上に怒っていた。
つまり、頬っぺたへのキスも額にキスも完全に愛し合う者が行うキスだ。
では、口へのキスはどうなのか?
してくれる男など居ない、冗談で無く居ない。
少なくても目にした人は殆どいないはずだ。
もし、どうしてもという話なら、考えられない金額がつくと思われる。
実際に無理やり、男にキスをしようとした女が無期懲役になった。
未遂でそれなのだ、、どれ程凄い事か解ると思う。
一番最初に金剛さんが復帰してきた。
「あれっ、私くしは何を…そうですわ…謝りますわ…黒木様、これが恋人にするキスだというのであれば通常のキスは…違いますわね」
駄目ですわ、顔が赤くなって旨く喋れなくなる。
お顔が見られませんですわ。
さっきから唇に目がいってしまいますわ。
黒木は勘違いをした。
「あれっ もう一回キスをした方が良いのかな? チュッ」
今度は流石に軽くフレンチキスをした。
「あぁ…これなら、何とか…何とか…何とか耐えられましてよ」
「そう、良かった」
「黒木くん、ごめんなさい…私、こんなに大事にされていて、こんなに大切に思われているのに、それなのに疑ったりして…だけど、心配なの、いつか黒木君が私の前から居なくなっちゃうんじゃないかって…本当にごめんなさい」
「仕方ないな、白百合さんは、大丈夫だよ、僕は何処にもいかないから」
「うん、解った」
「心配なら、もう一度キスしようか?」
「それは…その」
白百合さんがモジモジしだした。
「残念、時間切れです」
「えっ、そんな、チュッ」
「待ちきれないから僕からしました」
「はっはっ…もう心臓が止まるかと思っちゃったよ」
「歩美ちゃんも東条さんも起きて来ないね」
「仕方ありませんわ、あれは強烈ですもの」
「そうだよ黒木君、嬉しいけど、本当に驚くもん」
仕方ない二人にも
「「何するの(んですの)」」
お姫様をおこすのは王子のキスが定番だから。
「白百合さん…王子がキスする話なんて知っていますか?」
「知らない、そんな話があるなら絶対に本を買うもん」
「ですわよね…そんなお王子が主人公じゃリアリティがないですわ」
「ほら歩美ちゃん、寝ていると風邪をひくよ? チュッ」
「くくくく黒木お兄ちゃん、またキスをした…」
「うん、だけどもう倒れないでね」
「大丈夫だよ、歩美、倒れたりしないよ」
「東条さんももう起きて…ほら」
「あれっ、私にはキスはないのかな」
「うん、薄目開けて起きているのが解っていたしね」
「そんな…」
「はい、チュッ」
「ああああ、不意打ちはじゅるいと思います」
「あははははは、東条さん面白い」
「金剛さん」
「どうしたのですか?白百合さん」
「私達っていつからこんなに贅沢になったのかな?」
「どうしたのですかいきなり」
「だって、少し前まで、男の子の友達なんて一生できないって思っていたんだよ」
「同じですわね」
「だけど、黒木くんと友達になって、弁友になって、毎日一緒に過ごして」
「そうですわね」
「それだけでも感謝しなきゃいけないのに彼氏になって貰って」
「…….」
「なのに、今度はやきもちまで」
「私くしも焼きましたわ」
「普通なら、もっと沢山の彼女がいるのが当たり前なのに、」
「そうですわね」
「本当に贅沢だよね、、こんな生活、世界一の美少女でも送れないんじゃないかな?」
「そうかも知れませんわね」
「二人とも深く考えすぎだよ。歩美はねお兄ちゃんが嬉しそうならそれで良いと思うよ? それが一番なんじゃないかな?」
「そうだな、私もそう思うぞ」
「その通りですわ」
「私、思うんだ、黒木君は寂しがりやだから、本当は家族が沢山欲しいんじゃないかって」
「そうですわね」
「だから、5人に限らず、黒木君の好きになった人とは全員家族になろうと思うの」
「白百合さん、何をいっているのかな? そんなの当たり前じゃない。歩美は最初からそう考えていたよ?」
「あれ程の美男子5人で済む訳ないだろう」
「その通りですわ、ですが暫くは人数は少ない方が良いですわね」
「そうだね、流石 お姉ちゃん」
「私くし、貴方の事嫌いではありませんわ…ですが…お姉ちゃんは辞めて..下さいまし…」
「そう、残念」
「うん、皆んななに話しているの?」
「「「「何でもありません(せんわ)」」」
この日の彼女達は一日中幸せそうだった。
但し、周りの人間からは気持ち悪さ倍増だった。
さよなら お姉ちゃん
最近、私はお姉ちゃんが羨ましくてしょうがない。
正直言ってお姉ちゃんはブサイクの極みだ。
お姉ちゃんに匹敵するほど醜い女はまずいない。
それに対して私は勝ち組だと思う。
母であり、子役出身のアイドル、佐和子にそっくりな顔立ち。
間違いなく、私は美少女だ。
ブサイクな男なら確実にゲットできる。
それどころか、普通の男の子である知君ともつきあっていた。
家の中でも中心はいつも私だった。
息子が欲しいお母さんはいつでも私の味方だった。
あの時までは。
ブサイクなお姉ちゃんに弁友が出来た。
ブサイクで醜い姉の事だ、相手はさぞかしブサイクに違いない。
母も私もそう思っていた。
だが、お姉ちゃんの弁友は、この世の物とは思えない程の美形だった。
彼に比べたら、テレビで見たアイドルでさえブサイクになるだろう。
正直、その美しさは称えようがない。
最初、お母さんは確実に彼を手に入れる為に、ブサイクな姉でなく私を彼女にしようとしていた。
私も黒木さんを狙ってみた。
酷い事をしたと思う、やっと出来た姉の彼氏を奪おうとしたのだから。
だけど、その勝負に負けたのは私だった。
黒木さんはしっかりと答えた。
「僕は外見だけでなく京子さんの全てが好きなんです」
女に生れたなら一度は夢見る言葉だ。
実際にこんな言葉を言う男を私は見た事が無い。
羨ましくてしょうがない。
お母さんはもう二人を応援する側に寝返った。
可愛い息子が手に入るかも知れない。
寝返るのは当たり前だ。
しかも、その後の2人の熱々っぷりを聞いたら、凄く嬉しそうだった。
そりゃそうだ、あんなに仲が良いのだ、その姿にお母さんは結婚まで時間の問題、そう思ったに違いない。
あれ程、愛おしそうな目で黒木さんはお姉ちゃんを見ているんだ、誰でも解る。
そして、今迄私の居た家族の位置はお姉ちゃんに奪われた。
今では、お母さんはお姉ちゃんに付きっきりだ。
「ねぇ京子、その黒木君とは旨くいっているの? 歓迎するから連れてこれない?」
お姉ちゃんはいつも嫌そうな顔をする。
そりゃ、そうだ、せっかくできた彼氏を私とお母さんで盗ろうとしたんだ、嫌がれて当たり前だ。
「うん、旨くいっているよ、他にも彼女はできちゃったけど、しっかり第一彼女だし。何時も愛して貰っているよ、だけど余り黒木くんは家にきたくないみたいなんだよね」
もう、お姉ちゃんにかっての暗さは全くない。
自信満々に答えるのだ。
「そうなんだ、だけど母さんも黒木さんに会いたいのよ、又今度誘ってくれないかしら」
「解ったよ、また今度誘ってみるよ」
嘘だ、誘うもんか。
お母さん、忘れたのかな、私とお母さんで黒木さんを取り上げようとしたんだよ?
連れてくるわけ無いじゃん。
「楽しみにしているわ、京子は私の夢を叶えてくれる、本当に良い娘に育ったわね」
それ、少し前に私に言っていた言葉だよね。
最近になって解ったんだ。
お姉ちゃん、凄く辛かったんだなって。
家族の中では殆どいないもの扱い。
目の前にいるのに、ただ居るだけ。
優しい顔で母さんは語りかけてくるけど、能面にしか見えない。
優しく見えるけど何も期待しない目。
そして哀れみの目。
こんな生活をお姉ちゃんは送っていたんだ。
私はなんでお姉ちゃんに優しくしなかったのかな?
何で黒木さんを取り上げようとしたのかな?
ちゃんとした妹として…姉として扱っていたら、お姉ちゃんは優しいからあの輪の中に入れてくれたかも知れない。
黒木さんを見てしまったから、もう知君には何も感じなくなっちゃった。
知君以外の男も全部価値なんてない。
だって黒木さんみたいに本当に女を愛していないんだもの。
本物を見てしまったから、もう偽物じゃ満足できないと思う。
お姉ちゃんは、今光の中で生きている。毎日幸せそうだ。
でも私は 闇の中にいるんだ。
だけど、こうなる前は…お姉ちゃんはもっと暗い闇の中にいたんだと思う。
永遠に誰からも愛されない、そういう闇の中に。
お姉ちゃんは強かったんだね。
こんな地獄が永遠に続く恐怖に耐えて生きていたんだから。
私は…駄目だ…
生きていけないよ..
.
誰も私なんか見てくれない世界じゃ…
生きていけない…
だから…さようなら…グチャ
その日 奈々子はビルから飛び降りた。
醜くなったら…天国行きだった
その日私は母からの連絡で早退をした。
妹の奈々子がビルから飛び降り、自殺未遂を計ったと言うのだ。
幸い命は助かったけど顔に大怪我を負ったらしい。
理由は解らないけど、私は黒木くんに来て貰おう事にした。
自殺未遂を起こしたという事は原因があるんだと思う。
私や母が言って駄目な事でも男の黒木くんなら聞いてくれる事もあるかも知れない。
そう思い、同行をお願いした。
事情を聴いた僕は白百合さんと一緒に早退をした。
教師に止められると思ったが、簡単に受理して貰えた。
何処までも、男に優しい世界だ。
僕は正直戸惑っている。
白百合さんの妹だ、怪我した時位は優しくしてあげたい。
まして自殺未遂までしたんだ優しくしてあげる必要が絶対にある。
だけど、僕にできるのだろうか?
あの化け物のような奈々子に優しくなんて出来るのだろうか?
だが、泣いている白百合さんに一人で行けなんて言えなくて、、病院にいる。
僕と白百合さんを見つけた佐和子は笑顔で近づいてきた。
おかしい…何で娘が自殺未遂までしたのに笑顔なんだ。
「京子、本当にすまなかったわね、勉強中に呼び出したりして、黒木さんも娘についてきてくれてありがとう」
「それで、奈々子はお母さん、大丈夫なの?」
「命はね…だけどあのバカ娘、よりによって顔から落ちたから…女としての一生は終わり…本当に馬鹿な娘」
なんで、ここまで辛辣なんだ。
親子の愛情なんて無いのか。
「そんなに大変な事になっているのですか?」
「顔が半分…崩れているのよ…なんであんな馬鹿な事したのかしら…あれなら死んでくれた方がましだわ…何処かに捨てたい位よ 幸い、京子が頑張って黒木さんと付き合っているから良いけど…本当に馬鹿な事してくれたわ…正直顔も見たくないわ」
これじゃ奈々子ちゃんが可哀想だ。
幾ら化け物だからって、家族から見放された女の子は見捨てられない。
「お見舞いをしても良いですか?」
「さっき、意識を取り戻したみたいだし大丈夫じゃないかしら? 私はここに居るから二人で行ってくれば良いんじゃない?」
部屋は個室だった。
白百合さんはドアをノックした。
「どうぞ…」
力の無い声がかえってくる。
あの自信に溢れた明るい感じの声ではない。
「あっ、お姉ちゃん…黒木さん!…嫌っ見ないで」
奈々子ちゃんは布団を被った。
ここで帰る事なんて出来ない。
さっきの母親の態度で何となく解かった。
彼女は母親から見捨てられたのかも知れない。
原因は解らない。
でも以前の佐和子は物凄く奈々子をを可愛がっていた気がした。
だけど、今日の佐和子からは一切の愛情が見えなかった。
その原因は、僕の可能性もある。
僕から見てブサイクでも醜くても白百合さんの妹だ。
孤独の寂しさは前の世界で嫌になるほど味わった。
どんなに醜くても、こんな子を一人にしちゃ駄目だ。
僕は無理やり布団をはぎ取った。
目のやり場に困った。
その理由は彼女が寝間着を着ていないで包帯に巻かれていたから。
お腹や胸の一部が見えていた。
前の世界なら間違いなくセクハラ扱いだ。
彼女は両手で顔を隠している。
手からはみ出た血だらけの包帯が痛々しい。
「黒木くん、やめてあげて」
「ごめん、白百合さん…辞められない」
「なんで、こんな嫌がる事する黒木くんなんて…黒木くんじゃない」
「それでも辞めない…白百合さんも僕の彼女なら僕を信じて」
「二人して奈々子を馬鹿にしにきたんでしょう?…良いよ、幾らでも馬鹿にすれば良いよ、私、お姉ちゃん以上の化け物みたいになったんだから…見たいんでしょう! 見れば良いじゃない! ねぇ化け物みたいになった私がみたいんでしょう…ほら」
僕は自分の目のおかしさに初めて感謝した。
美少女ミイラが目の前にいる。
やや茶髪で、ちょっと生意気そうだけど…原宿とか渋谷に居そうな美少女だ。
「私は、馬鹿になんてしない! 私だって不細工だもん」
「だけど、私は化け物にしか見えないもん、夜、子供がこの顔みたら泣くんじゃないかな」
私は奈々子に何も言えなくなった。流石に顔に大怪我を負った状態では何を言っても無駄だろう。
治らないのを知っていて大丈夫なんて言えない。
「もう見たから良いでしょう! もう帰って、帰ってよ」
「そう、僕はもう少しここに居たいんだけど…駄目?」
「悪趣味…醜くなった奈々子をそんなに辱めたいの? 黒木さんって顔は良くても、性格は凄く悪いんだね」
「そうかもね、だけど醜い子って何処にいるの?」
「黒木くん、いい加減にして! それ以上奈々子を馬鹿にしたら…幾ら黒木くんでも怒るよ!」
「お姉ちゃん…良いよ…本当に奈々子は…もう良いよ…好きなだけ見れば…化け物がみたいんだよね黒木くんは…好きなだけ見れば良いよ…その代わり二度と来ないで」
「嫌だ」
「黒木くん…そんな人だったんだ…私の好きな黒木くんじゃない…なんでそんなに奈々子を虐めるの」
僕には血だらけの小悪魔系の美少女が包帯を巻いているようにしか見えない。
だけど、言っても無駄なんだろうね。
僕にここまで可愛く見えるという事は、とてつもなく醜くなったという事だろうから。
「白百合さん、少し黙って、奈々子ちゃん、少し話良いかな?」
「嫌だって言っても、無理やり聞かせるんでしょう? 言えば良いじゃない!」
「まず、僕は人を一切外見では判断しない」
「幾ら何でも…嘘だよ…普通のブサイクならともかく化け物だよ…顔が崩れているんだよ、奈々子は、もう学校にも行けないよ…これじゃ…だれも奈々子なんか相手にしてくれない」
「僕だけじゃ不満かな」
「不満な訳ない…だけど、どうせ騙すんでしょう? 二人して笑いものにするんでしょう? されても仕方ないよ、私だってお姉ちゃんを馬鹿にしてたからさ、…良いよ…どうせ私は…化け物なんだもん」
「そう、じゃぁ何しても良いんだ」
「勝手にすれば、何するのか知らないけど、どうぞ」
「そうするよ…チュッ」
僕は奈々子ちゃんの頬っぺたにキスをした。
「嘘、…それってキス」
「何しても良いんだよね、、」
今度は包帯の上から額にキスをした。
「ちょっ、ちょっと待って、黒木さん…なんで奈々子にキスしているの? そうだ、私多分死んでいるんだ、死んでいるからこんな幻想見ているんだ」
「死んでないよ? ほら僕はここに居るよ」
僕は奈々子の手をとり自分の頬っぺたを触らせた。
「黒木さん…これは一体…何なの…ねぇ…まさか本気なの?」
「散々、付き合って欲しいような事いっていたのに…心変わりするの? その程度だったんだ」
「違う、奈々子は今だって」
「そう、だったら妹から始めない?」
「妹? キスまでしてくれたのに妹なの…なんで?」
「そうだよ妹、だって僕は奈々子ちゃんのこと知らないから、妹兼、友達から付き合ってみない?」
「本当に、付き合ってくれるの? 私頑張るよ、化け物みたいになっちゃったけど、、それでも良いなら絶対に頑張る」
「それじゃぁちょっと出かけてくるね」
「あぁ…あそこまで期待させて、馬鹿にして…もう気が済んだでしょう? お姉ちゃんも出て行って」
「出て行かないよ、だって黒木くん帰って来るもの」
「私を喜ばせてから、地獄に落とすんだ…そこまで酷い事した覚えはないよ…お姉ちゃん」
「断言してあげる…これから暫くしたら奈々子は夢の様な体験をするって」
「悪夢をみるだけだよ」
「そうかな? ほら帰ってきたじゃない」
「本当だ、、嘘、、本当に戻ってきてくれた…だけど黒木さん、それなに?」
「うん、ヨーグルトにプリン、怪我した奈々子ちゃんでもこの位なら食べれるよね」
「大丈夫だけど、お見舞い、そうかお見舞いを忘れたから買いにいったんだね、、疑ってごめんなさい」
「うん、それじゃ…あーん」
「お姉ちゃん、これってなに」
「なにって、ほら奈々子口をあける」
「はい、あー」
嘘、黒木さんが食べさせてくれるの? 嘘、こんな事してくれるなら絶対に嫌われてない。
いや、好かれているよ。
そう言えば、さっきキスまでしてくれたんだ。
「はい、もう一口 あーん」
「あーん」
結局プリン2個とヨーグルト1個を食べちゃった。
黒木さんは外見で人を判断しない。
お姉ちゃんはそう言っていたっけ。
昔の私は凄く性格が悪かったのかも知れない。
お姉ちゃんから彼氏の黒木さんを取り上げようとしたり本当に最悪の女だったんだ。
だけど、今の私はどうなのかな…多分、お姉ちゃんの気持ちが解って少しは反省したのかも知れない。
物凄く気持ち悪い顔になったけど、、黒木さんが居てくれるなら…その方が幸せだ。
お姉ちゃんはきっと私にチャンスをくれたんだ。
そうじゃなきゃ、自殺未遂の私の所に黒木さんを連れてくるはずがない。
しかも、黒木さんが私を虐めていると思って怒ってくれた。
私には出来ないな。
だって、それで好きな人に嫌われたらと思ったら、怖くて言えないよ。
なんだ、私しっかりお姉ちゃんに愛されているじゃん。
「まず、僕は人を一切外見では判断しない」
本当にそうなんだ。
まずいじゃん。
私多分、性格そんなに良くない。
料理はお姉ちゃんに敵わない。
あの優しい姉のようにならないといけないのかな?
私になれるのかな?
貴子への相談
学校で白百合さんに相談された。
奈々子ちゃんと母親が凄く揉めているらしい。
まさか実の母親が如何に顔に傷を負ったと言っても娘を追い出そうとするなんて僕には信じられなかった。
「それ本当なの? いくら何でも自分の娘を追い出すなんて」
「うん、そうなりそうなの、病院代は払ってあげるのが私の最後の愛情だって言っているから」
「酷いね」
「うん、私も酷いと思うけど、自殺しようとしたことが気に食わないみたい…それに奈々子があんなになっちゃったから…」
「それで、奈々子ちゃんはどうなるの?」
「多分、本当に追い出されると思う」
「行くあてはあるのかな?」
「無いと思う」
余計なお世話かもしれないけど…どうにかしてあげたい。
僕の頭で考えると相談に乗ってくれそうな人は金剛家か北條家だ。
色々考えた挙句、僕は貴子さんに相談しようと思った。
休み時間に僕は東吾くんに話をしにいった。
「東吾くん、貴子さんに相談したい事があるんだけど、暇な日を聞いてくれない」
「えっ、遊びに来てくれるの?助かるよ、翔くんは顔パスって言っていたから何時でも大丈夫だよ、それにうちの母さん達なら、翔くんが遊びにくるって言ったら総理大臣との会談だってキャンセルすると思うよ」
良かった。
翔くんには言えないけどあれから母さんは毎日
「黒木君はいつくる?」
そればっかり聞いてくるし。
姉さんも美優も毎日聞いてくる。
正直怖くて仕方なかった。
「今度、誘ってくる」そう言うと、
「今度とは何時なの? 時間の設定も出来ないの?」
そう言い返される。
本当に良かった。
「翔くん、早速、母さんに聞いて見るね、間違いなく大丈夫だけど」
「もしもし、母さん、今日翔くんが遊びにきたいって言うんだけど良いかな?」
「東吾、母が断ると思うのですか? 黒木くんとの約束は最優先、来たいと言うのなら、私の予定なんて聞かなくていいです。 地球の裏側でも飛行機で駆けつけます….私は基本、家から出ませんけどね」
「では、放課後連れて行きますので宜しくお願い致します」
「リムジンを回すように伝えておきます…東吾、流石です」
「今日になってしまったが大丈夫か、翔くん」
「ありがとう、東吾くん、いきなりでごめんね」
「いや、うちの家族は、翔くん中心だから、いつ来ても大丈夫だ」
「そうなの」
「あぁ平気だ、俺に話なんてしなくてもいつ来てもらっても良いぞ」
メイドも含めて誰1人歓迎しない者は居ないのだから。
リムジンで迎いが来て、僕は北條邸にいる。
前と同じ様に三人の美しいメイドが迎えてくれた。
「「「黒木様、いらっしゃいませ、精一杯奉仕させていただきます」」」
いつ見ても綺麗だ。
こんなメイド達がいる東吾くんが羨ましい。
「どうしたんだい、翔くん」
「いや、いいなぁと思ってさぁ、こんなメイドさんに囲まれて生活している東吾くんが羨ましくて」
「翔くん、、それは本気で言っているのかい? 」
母さんや家族のお気に入りでなければ、今すぐ普通のメイドに変えて貰いたい。
湯浅萌子、みたいな美人が良いに決まっている。
何が好き好んでブサイク三人に囲まれていなくては、いけないんだ。
だけど、翔くんは本気で言っているんだよな。
「翔くんが気に入っているなら、引き抜いて貰っても構わない」
いや、寧ろ引き抜いてくれないかな。
「無理だよ、僕は保護施設にいるんだから、お金も家も無いんだからさぁ」
「君は本当に価値が解らないんだな、、翔くんは本当に常識に欠けるよ」
「常識?」
「そう、君程の美少年なら無料…いやお金を払ってもメイドになりたい子は腐る程いるって事だ」
「流石に、冗談だよね?」
「そう思うか? 園崎ちょっと」
「なんでしょうか?」
「いや、翔くんがメイドのいる生活がいつかしたいって言うんだけど…園崎ならどんな条件を提案する? あくまで架空の話だが」
「黒木様のメイドですか? 黒木様のメイドになれるなら…そうですね、持参金を幾らか用意して…後は毎月1000万円位までなら払いますよ…あっこれ黒木様がそれしか価値が無いって事じゃなくて、私の貯金から考えるとその位しか出せない…それだけですね」
「えっ、それ本気ですか? 給料を払うんじゃなくて…何でお金が貰えるの?」
「翔くんは自分の価値が本当に解ってないな、君と一緒に暮らせるなら女なら、多分自分の全てを差し出すと思うよ?…そうだよな園崎?」
「差し出しますね。もし、本当にメイドが欲しい、そう思ったら、この園崎にお願いします。直ぐにでも一緒に暮らして、生涯尽くしますから」
「なぁ本当だろう?」
「本当なんだね、驚いた」
「それで、いつから契約します」
「園崎…これはあくまで架空の話だ、言っただろう?」
「そう…ですね、ですが、黒木さんなら何時でもウェルカムです」
「ありがとう、何時かお願いするとしたら必ず園崎さんに声を掛けます」
「本当ですか? 私、待ってますからね」
「はい」
「翔くん、行こう母さんが楽しみに待っているから」
「そうだね、お願いするのに待たせるのは悪いよね」
「母上、翔くんを連れてきたよ」
今日の翔くんは母さんに頼みがあるのだから、母上と言わなければな。
俺は、プライベートなら母さん、公式な話では母上と呼ぶようにしている。
「東吾、黒木くん関係の時はすべて母さんでいいわよ?」
「そうですか、それでは俺は席を外しますね」
東吾くんはすぐに立ち去った。
一緒に聞いて貰っても良かったのに。
「ところで黒木様、いや友達だから、黒木君と呼んでも良いかしら」
「好きに呼んで貰って良いですよ」
「それじゃ…とりあえずは黒木君で呼びます、今日は黒木君は何か相談があるんでしょう?」
「ええ、実は貴子さんの所でメイド、他の仕事でも構わないのですが、住み込みの仕事ありませんか?」
「まさか、黒木君が働くの?…な訳ないですね、、確かにうちは人手不足だから1人どころか、何人でも雇えますが、その相手が仕えるのが私で良いかどうかですね、私や家族を怖がらない、それさえクリアできるなら、黒木君の推薦なら…雇いますわ、住み込みも問題ありません」
「ありがとうございます、そのなんて言ってよいか」
「良いのですよ…実は手紙をしたためてあります」
「手紙ですか?」
「ええ、心細いでしょうから、すぐに白金に届けさせる事にします。来るかどうかは彼女次第です」
「ありがとうございます…ですが、貴子さん、もしかして奈々子さんについて知っていました」
「ええ、私は貴方の女神ですから、何でも知っていますわよ」
この人には叶わない、本当にそう思う。
私は、黒木君を見張らせている。
彼が私を女神と呼んだあの日から、黒木君が困った時にすぐに対応できるように北條の手の者に見守らせている。私の部下は警察よりもはるかに優秀だ、だから何でもわかるわ。
勿論、奈々子さんの事も事前に知る事が出来た。
まだ、逢ったことは無いが奈々子さんは私にとって好ましい人物だと思う。
まずは何よりも私達並みに醜くなった。
自分も化け物みたいになったのだ私達を怖がらないだろう。
そして、彼女も黒木君を好きだという事だ。
それならば、ガールズトーク(ほとんどが黒木君の話)も出来る。
更に彼女は黒木君の顔見知りだ、黒木君が顔を出す可能性が少しは上がるだろう。
「貴子さんって本当に女神みたいですね、それで僕は女神様に何を献上すれば良いのでしょうか?」
「何もいりませんよ、ただ貴方が顔を出してくれることが何よりも嬉しいのです」
「貴子さんに会う事は僕だって凄く嬉しいです。だけど、少しは恩返しさせて下さい。そうだ、夕飯でも作りましょうか?」
「夕飯? もしかして手作り料理を作って下さるのですか?」
「えぇ、急に来たから食材も買ってきてないので、食材は使わせて頂きますが」
「そんなの気にしないで良いです、何でも使って下さい」
その後、厨房を借りて僕はカレーライスとサラダを作った。
出来は余り良いとは言えなかったけど、皆んなに好評だった。
だけど、メイドさんが主人を押しのけてお代わりするのはどうかと思うが…気にしないようにしよう。
ガツガツと食べ終わった後に「あーん」を忘れていた事を思い出して少ししょげていたけど仕方ないと思う。もうカレーも無いし。
北條邸は僕にとってまさに天国だ、だけどここに永く居ると僕は駄目になってしまうかも知れない。
居心地が良すぎる。
此処には僕の欲しい物が全部有る。
後ろ髪を引かれるように僕は帰る事にした
だが、ここを天国だと思っているのは黒木だけ。
世間一般ではここは化け物屋敷なのだから。
奈々子の目標
私は行き場を失った。
昨日は黒木さんが来て浮かれていたけど、今日母に事実上の絶縁を言い出された。
美しい者や可愛い者が好きな母には今の醜い私は見たくないのだろう。
息子が欲しいという母の夢は私ではなく京子お姉ちゃんに移った。
それで、母にとって私は不要な物になった。
そして、自殺未遂によって私は顔を失った。
多分、母にとって最期の私の価値…自信が子役時代の容姿に生き写し。
それが無くなったからむ私は無用の物。
いや、幼い自分の姿を壊した、憎い人間になったんだと思う。
病院を出た後、私には行く場所がない。
男に生れたなら、男性保護施設に行けば良いのだが残念ながら女性の保護施設は無い。
どこか住み込みの仕事を探さないといけないがこの姿じゃ何処も雇ってくれないだろう。
乞食になっても、この姿の私にはお金は入らないだろう。
あと3日間で退院…その後は…本当に死ぬしかないのかも知れない。
今思えば、馬鹿な事をしたもんだ。
だけど、姉は凄く優しかった。
帰り際に「お姉ちゃんがどうにかするから」
そう言っていた。
その姿を見て、黒木さんが完璧美少女、そう言った意味が解る。
優しさ、健気さ、尽くす姿、完璧だ。
姉に無かったのは容姿だけだ。
他の男は多分、この容姿が凄く配点が高いのだろう。
だが、黒木さんはこの容姿の配点が凄く低くて5点とかなのかも知れない。
そうすれば、あら不思議95点の美少女だ。
それどころか全く配点が無いのかも知れない。
黒木さんがいう容姿が全く関係ないなら、うん間違いない完璧美少女だ。
見る目が無いのは黒木さんじゃなくて世の中の男なのかも知れない。
完璧美少女を容姿が悪いというだけで捨てるのだから。
凄いな、それしか言えないや。
「本当にどうしよう、恥を忍んで黒木さんに相談しようかな」
ドアのノックの音がした。
誰だろう?
お姉ちゃんかな? もしかして黒木さん?
「どうぞ」
せめて明るく答えた。
2人は私にとって大切な人なのだから。
だが、入ってきたのは見知らぬメイドさんだった。
しかも、私程でないけどブサイクだ。
「あの、どちら様ですか?」
「初めまして、私は北條貴子様にお仕えするメイド頭の白金薫と申します」
「北條貴子…令和の妖怪の?」
「そうですね、確かに奥様の事を世間ではそう言っていますね」
「あの、奈々子は全く面識が無いのだけど、その貴子様がなんのようなの?」
昭和の妖怪、世界の黒幕、世界一の金持ち、、、そんな凄い人が私に興味なんて持つのかな?
「奥様の元に黒木様が来られまして、奈々子様の生活をお願いされました」
「黒木さんが…本当に?」
「はい、それでこちらを奥様がお書きになりまして持参しました、詳しい事は私も知りませんのでそちらを確認下さい」
「そうですか、お手紙を態々持ってきてくれたんですか? 有難うございます」
「確かに渡しました、これで私は失礼させて頂きます」
「ありがとう、あれっご苦労様…なんて言えば良いんだろう」
「感謝の言葉は頂きました。じゃぁね奈々子ちゃん今度は同僚として会いましょう」
「なんでしょうか」
「いえいえ、では」
私は手紙を見た。
凄く優しい手紙だった。
化け物屋敷への招待。
つまりは、北條家に住み込みで勤めませんか、というお誘いだった。
書いてある給料や待遇も考えられない程良い。
以前の私ならそれでも化け物屋敷なんか勤めないと断ったかも知れない。
だけど、私も今は化け物。
北條貴子は化け物なんて言うけど…絶対に違う。
この手紙からは凄く優しい人なんだと感じ取れる。
絶対に良い人だ。
それにこれは黒木さんが私の為に頭を下げて貰ってくれた仕事だ。
嬉しい、昨日の夢はまだ続くんだ。
嬉しい、あれ程の美少年が奈々子を気にかけてくれる。
黒木さんは人の事ばかり褒めるけど、、自分が完璧美少年なんじゃないかな?
私も黒木さんみたいに優しい人になりたい。
お姉ちゃんみたいに優しくてよい女になりたい。
黒木さんは100点満点
お姉ちゃんは95点
私は…多分40点、、違う10点だ。
せっかく、メイドとして雇って貰えるならお姉ちゃんみたいになる。
うん、頑張ろう。
奈々子の目には悲惨さは無くなっていた。
その眼は遙か先の目標を見据えていた。
IF金髪の王子様
家族が幸せそうな笑顔で笑っている。
良かった。
翔くんと幸せそうな家族を見たらそう思ったんだ。
どんなに怖くても醜くても家族だから。
本当に、良かった…これで、俺も死ぬことが出来る。
俺は醜い家族が怖かった。
中途半端に醜い俺は家族とも旨く打ち解けられない。
かと言って、普通の人間からは醜いから相手にされない。
この孤独には耐えられない、もう限界なんだ。
悪い、翔くん後は君に任せた。
俺は死ぬことにするよ。
きっと、優しい君は怒るだろうな。本当にすまないな。
俺は用意した毒を飲んだ。
ここは何処だ、俺は死んだはずだ。
なのに何で、こんな所に居るんだ?
「あの、すまないが、此処が何処だか教えてくれないか?」
「何かのイベントですか? そういうキャラなのかな? ここは秋葉原ですけど…知ってますよね?」
「秋葉原、、知らないな」
「もしかして異世界転移キャラですか? 凄く似合ってますよ、もっと話していたいけど、すいません待ち合わせがあるので…ごめんなさい」
「いや、引き留めてすまなかった」
今の男の子凄く綺麗だったな。
モデルさんなのかな?
時間があれば絶対にお茶したかったのに…残念
秋葉原か、知らないな。
そんな街あったかな、しかしここはどんな街なんだ。
醜い女のミニスカート姿なんか見て面白いのか?あんな女の写真集を誰が買うのか。
さっきから、醜い女がメイドの恰好をして客引きしているが、もう少し真面な女が用意出来ないのか。
うちのメイドよりはかなりましではあるが、、人によっては吐くぞこれ
ここの街はなんなんだ、キモイ男の看板にキモイ女の看板、化け物都市かここは…
しかも、漫画のキャラクターまでもがキモイ女が表紙だ。
男は俺みたいな醜い男が書いてある。
一瞬俺かと思ったぞ…買わんよこんな本。
しかし、掲示板の地図を見ても住所表記を見ても解らない。
本当にここは何処なんだ。
言葉は通じるから問題無いし、文字も読める。
あとは金か。
あそこのATMで試してみるか?
なんで使える?
ここどう見ても知らない場所なのに、金は使えるんだな、、まぁ、一安心だ。
しかし、さっきから俺の事、写真を撮る奴が多いな。
そんなに醜い男が好きなのか。
俺ほどではないが醜い男のマンガや看板がある。
ここは醜い者好きが集まる変な街なのかも知れない。
「あの、写真を撮らせて貰っても良いですか?」
微妙系ブサイクがさっきから、時々写真を撮りたがる。
だが困った事にこいつ等に悪い感情がないんだ。
俺の事を馬鹿にする言葉。
冷たい視線。
それらが一切なく、本当に優しい目で見てくる。
俺みたいなブサイクな男の写真1枚で喜んでくれるんだ。
断れないな、今迄、こんな顔をしてくれた人なんて…翔くん位しかいない。
「俺で良いなら…どうぞ」
それしか言えない。
だが、出来る事ならこいつ等じゃなくて、あっちから見ている美少女に言って貰いたいな。
あの、ガラガラで良いのか? バックを引きづって眼鏡をかけている子とかに。
遠巻きに見ているだけで何でこないんだ。
ここの街はブサイクに優しい。
だったら、俺から声を掛けても大丈夫なのかな?
「あの、もし良かったら写真一緒に撮らない?」
「あわっわ私とですかな」
なんでそんなに慌てているんだ、まぁ凄く可愛いけど
「そうだけど、駄目か?」
どうしてだろう? この人さっきから綺麗な子に囲まれていたのに、何で私と写真を撮りたいのかな。
今日はイベントとかでなく、ただ、同人誌買い漁りにきたからメイクもしてないし….
どうみても根暗女子にしか見えないと思う。
だけど、凄い美形だぁ….遠目でも凄かったけど、近くで見たら王子様か御曹司がBLの世界から飛び出してきた。そう錯覚しちゃう位…綺麗。
「駄目じゃないです、寧ろお願いしたいです」
「そうじゃぁ、撮ろうか」
俺は自分のスマホで彼女と並んで写真を撮った。
「あの、私も良いですか?」
「勿論」
彼女は嬉しそうに写真を撮った。
本当に嬉しそうだ。
この街は本当にブサイクに優しい人の多い街なんだな。
「ありがとうございます」
お礼を言われた。
こんな美少女にお礼を言われたのは初めてだ、、誤解しちゃだめだ。
こんな子が本気で俺を好きになってくれる訳がない。
連絡先を聞こうと思っても無駄だ。
「こっちこそ、ありがとう」
醜い俺だが出来るだけの笑顔をしよう。
彼女は固まってしまっている。
此処までは無理か?
俺の家族の笑顔みたいに気持ち悪かったんだな。
すまんな、調子に乗った。
俺は申し訳ない気持ちを抱えながらその場を立ち去った。
今日はなんて良い日だろう。
まるで、漫画の主人公になったみたいだわ。
私は正直いってブサイクだ。
だれも私なんか相手にしてくれない。
だから、二次元に逃げた。
漫画や小説だけが私の友達。
漫画の主人公や小説のキャラクターは私を虐めないからね。
今日もいつもように新刊の漫画や小説、同人誌を買い漁っていたら、人混みが出来ていた。
邪魔だよ、イベントなんかしないで欲しい。
そう思って見ていたら、凄い美形の男子がその中心に居た。
私は二次元の男が好きだ、アイドルとかは一切関心が無い。
その男子は、三次元の男には見えなかった。
まるで、私が手にしている本の鬼畜系の御曹司もしくは何処までもヒロインに甘いちょっと冷たい王子様にしか見えなかった。
そんな彼が、綺麗な女の子から態々離れて、私の所へきたんだ。
もしかして、私…本当は…漫画のヒロインだったのかな?
なんて思ってしまった。
まぁ、そんな都合の良い話はなく、写真だけで終わっちゃったけどね。
この写真、金髪の王子様を私のスマホの待ち受けにしよう、今度皆んなに自慢しようかな。
だが、彼女は知らない。
その王子様は孤独な世界に居たから、、勇気を出せば簡単に口説けた事を。
正に彼女の小説の言葉でいうならチョロインだった事に気が付かなかった。
「洗体?」
ちょいブサイクな女子学生に声を掛けられた。
「それって、何なんだ」
「いやお兄さん、知らないの?可愛らしい女の子が水着で体を洗ってくれるんだよ」
ここでは男でなく女が体を使ったサービスがあるのか?
まぁブサイクな俺には都合が良いんだけど
「本当にかわいい子が居るのか?」
「居るよ…遊んでいかない」
「じゃぁ行ってみようかな?」
「案内するね」
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイこんな美少年が本当に食いついちゃったよ。
話がしたいから、遊びで声かけたのにこんな人の体が洗えるチャンスがあったなら…呼び込みのバイトにしないでサービス担当の方が良かったな。
俺で大丈夫なのか?
俺は言っちゃ悪いがブサイクだぞ、金を払っても傍にいたくない男だ。
何十万円払っても手すら握って貰えない男だ。
そんな俺の体を水着で洗うだと…多分、この子店に怒られると思うが…大丈夫なのかな?
「ここの三階がお店になります。このチケットを持って桃子の紹介って言えば良いんでお願いします」
あぁ気が引ける。呼び込みする子と違って、サービスする子はここの店ブサイクしか居ないんだよね。
HPの写真は全部修正かけているし、大体、本当にかわいい子なら、風俗に近い洗体じゃなくてメイドさんしているでしょう。
金が欲しい可愛い子なら風俗にいくでしょう。
大通りになら綺麗な子が居る洗体のお店もあるけど、客引きが必要なこんな奥まったお店だしね。
仕事だから悪く思わないでね。
俺は言われた通りにエレベーターに乗って三階にいった。
くたびれた男が受付をしている。
「あの、桃子さんの紹介で来たんですが、これチケット」
「はい、それじゃ1万2千円だけど割引ついて1万1千円ね、直ぐにいけるから」
「あれっ女の子選べないんですか?」
「今日は混んでいてね」
この店は実は凄く悪質なお店だった。
客引きに可愛い女の子を3人程使っている。
彼女達は客引き専門なので決してサービスはしない。
そして、店には実はブサイク女一人しか居ない。
この女が洗体サービスする女…
だから断られないように前金でお金を貰って、そして彼女を見て断ったら
すいませんキャンセルする場合でも前金は返せません。
そういうシステムだった。
ただ一つのメリットはブサイクだけど女が若い、それだけだった。
だから、それを知っている人は此処には来ない。
俺みたいな醜い男の体を洗うのだ、多少のブサイクは我慢だ、白百合クラスだったらお金は捨てたと思い帰れば良い。
「あの、初めましてこれから体を洗わせて貰う、萌子と言います」
嘘だ、嘘だ、こんな美少女が俺の体を洗うだと。
萌子と聞いて驚いたけど、あの湯浅萌子ですら足元にも及ばない位、綺麗で可愛い。
こんな子が本当に水着姿で洗ってくれるの?
嘘だ、こんな美少年が私の前で裸になるの?
洗わせてくれる訳無いか、多分怒って帰るよね。
「どうされましたお客様」
この後、凄い罵声がくるんだ。解っている。
こんなブサイク想定してないでしょうから。
仕事、仕事、1万円以上この人は払っているんだから仕方ない。
「綺麗、本当に可愛い、本当に俺なんか洗ってくれるの?」
嘘、こんな優しい対応されたこと無いよ…私、
、
中年親父にすら物投げられた事もあるのに。
「勿論です。その水着はどれが良いですか? 本当はビキニはオプションでお金が掛かるけどサービスしちゃいますよ」
この位のサービスは個人判断で大丈夫だから、付けちゃうよ?
「それは本当は幾らなんだ」
「5千円ですが、お金はいりません」
「駄目だよ、俺の相手をしてくれるんだから払うよ、はい5千円」
「いいの?」
私は精一杯彼の体を洗った。
やっちゃいけない一線を越えないギリギリのサービスをしてあげた。
胸を押し付けたり、下半身を押し付けながら時間を掛けてサービスした。
こんな男の子は初めてだから。
私は凄く醜い。だから皆んなに嫌われる。
実際にサービスを受けるお客は居なく、居たとしてもオジサンが金が勿体ないからと嫌々受けるだけ。
だから、凄く嫌そうな顔しかしない。
しかもブサイクで我慢しているんだからと抜く行為までさせられそうになった事もある。
最も、店が対応してくれてその場合は叩き出してくれるけど。
私だって女だ綺麗とか可愛いって言われて嬉しくない訳ない。
喜んでくれるのが解る。
「頭撫でて良いか?」
本当は良くない、お客から触るのはマナー違反だ。
だけど、彼になら触らせても良い。
ううん、触ってもらいたい。
「本当はいけないんですが、お客様なら特別に良いですよ」
この人に喜んで貰いたい。
だから、醜いのに笑顔を作ってみた。
大切な物を触る様に頭を触ってくる。
こんな幸せな触り方された事が無い。
正直、お店のルールが無いなら性的な事だってしてあげたい。
まぁ処女だからやり方解らないけど。
楽しい時間はすぐ終わってしまった。
今、私は体を拭いてあげている。
「萌子さん、他のオプションって無いの?」
あるにはある。
メイド散歩だ。
だけど頼んだ人はいない。
ブサイクな私を連れて歩きたい人なんていないから。
「メイド散歩って言うのがあります」
「それ、どんなサービス?」
「1時間 1万5千円で私とデートするサービスです」
「そんなのあるの? お店の時間って8時までだから、残り5時間、、7万5千円払えば萌子さんを貸し切れるの?」
何を言っているんだろう?
そんなお金出せば、本物の風俗で綺麗な子と遊べるじゃない。
ブサイクな私に使う金額じゃないよ。
「それじゃ萌子さんと散歩5時間で」
嘘、本気なのかな?
本当に7万5千円出しちゃったよ。
店員は驚いていた。
「マジですか?」
「はい、メイド散歩5時間入りました」
「そうか、じゃぁ俺も支度しないとな」
「私も着替えないと」
このお店は変な店の癖にしっかりしている。
女の子が危ない思いしないように、気づかれないように店員がついていく。
そして危ない時には間に入る。
「あの、お待たせしました。ところで何てお呼びすれば良いのでしょうか?」
「北條東吾だから、北條でも東吾でも好きな方でよい」
「では東吾様、行きましょうか?」
「手を繋いでくれるのか?」
「お嫌なら離しますが…」
「嫌じゃない、寧ろ嬉しいが、その萌子さんは良いのか?」
俺みたいな醜い奴と手を繋いで歩くのは恥ずかしくないのか。
こんな美少年と手を繋いで歩けるなんて夢みたい。
しかも、これ東吾様がお金出してまで求めてくれたんだ。
考えられないよ。
「良いに決まってますよ…私は嬉しいですから大丈夫です」
「嬉しいのか、ならいいが」
手に汗かいてきたきた、彼女は本当に嫌じゃないのかな。
「それで、東吾様、これから何処に行かれますか?お食事、カラオケ何処でもついていきますよ?」
「何処でも?」
「あっだけどエッチな場所は駄目です」
顔が赤くなった。
本当に東吾様は可愛いな、私個人はそっちだってOKなんです。
だけど、厳しいルールがあるから、駄目なんです。
無ければ…私から…いえそれは不味いですね。
「そんなところに誘ったりしない、、そうだ食事でもしようか、よく考えたら朝から何も食べていない」
「良いですね、ただ食事の場合は東吾様の驕りになるんですが大丈夫ですか?」
「あぁ構わない」
「それで、東吾様、ここで食事をするんですか? ここは凄く高いですよ」
俺はさっき歩いている時に 橋の近くに高級そうなレストランを見つけていた。
多分、昔からの老舗なんだと思う。
俺だって少しはカッコよい所を見せたい。
「構わないさ 萌子さんお金には余裕があるから」
「そう、無理とかしてない、本当に大丈夫なの? 私安いものでも良いよ」
最初に1.1万円、オプションで5千円、更に散歩で7万5千円、合計9万1千円。
十万円近く使わせちゃった。
幾らお金があるからってどう見ても私と同じ位の年齢だ。
20代?下手したら10代かもしれない。
本当に大丈夫なのかな?
「俺は萌子さんみたいに綺麗な人に優しくして貰った事なんて無いんだ、この位はさせて」
「うううん、私は逆に、こんなに男の子に優しくしてもらった事がないよ?、夢みたいにしか思えないの」
「じゃあ、夢の続きを見ようよ」
「うん」
東吾様は無理して凄く豪華な物を注文してくれた。
簡単に切れるジューシーなステーキにサラダにデザート。
多分、東吾様、いや東吾くんは未成年だ。
ここまでの食事なのにワインが入っていない。
無理しちゃって。
こんな事されたら、私凄いいい女みたいじゃない?
こんなにブサイクなのにさぁ。
本当に好きになっちゃうよ。
その後、お話ししたり、カラオケにいったりして楽しい時間は過ぎていった。
あと3分で時間は終わり。
私はしたい事がある。
だけど、それは出来ない。
東吾君に迷惑を掛けるから。
「もうじき、終わっちゃうな」
「終わっちゃうね…」
「萌子さん、俺は貴方程、綺麗な女性は見たこと無い、これ程楽しい時間を過ごした事も無かった。これからも、ずっと一緒に居てくれないかな」
「東吾くん、凄く嬉しいけど駄目…あぁ聞かれちゃった」
「お客さん、当店は引き抜きやナンパはお断りなんですよ。ちゃんとお店に書いてあったでしょう? ただで済むと思うなよ」
「解っている。だから、最後のオプションを頼もうと思う」
「ガキが何を言っているんだ、なぁルール違反して何が解っているんだ、なぁ」
「100万だ、受け取れ」
「なんだ、これは」
「あんたこそルールをちゃんと読めよ、本番行為の強要、女の子を口説くような行為、引き抜く様な行為及びスカウト行為があった場合は100万円頂きます。それがルールだろう。張り紙に書いてあったぞ」
「ちゃんと違反と書いてあるだろが」
「あのさぁ、罰金が書いてある場合はその金額を払えば罰は受けた事になるんだぞ、交通違反だってそうだろう? 駐車違反しても罰金払えば罪は問われないだろう」
「何が言いたいんだ」
「だから、これは100万円払うなら、口説いても良いという事になるんだ。だからオプションと同じだろうが」
「そうか、、あの張り紙は昔から貼ってある、確かにそう書いてあるな」
「萌子さん、これで大丈夫だ。貴方が好きです。どうしようもない位にだから俺と付き合って下さい」
「ほ本当に私で良いの? 後で嘘とか言っても取り消しきかないよ?」
「そんな事は言わない…何時までも一緒に居て欲しい」
「うん、絶対に離れないからね」
「確かにルール違反にはならないな、だが、どうする店は辞めるのか?」
「はい、辞めさせて頂きます」
「そうか、じゃあな、俺はこの100万円を持ち帰って説明しなきゃならない。胃が痛いが、あの張り紙を貼ったのはオーナーだ文句は言えんだろう、、一応履歴書は処分しておくから安心するが良い….お幸せに」
「迷惑を掛けたな」
「あぁ仕方ないさ、ちゃんと筋を通したんだ、、後は任せておけ」
ブサイクな女に100万円…なかなか出来ないな。
…….
「なんて夢を、翔くん見たんだけど、凄い楽しかった」
興奮して東吾くんが話してきた。
ここまで興奮する東吾くんは珍しい。
「そうなんだ良かったね」
だけど、秋葉原にしてもステーキ屋にしても、まんま、僕の居た前の世界だ。
東吾くんには言えないけど、もし、東吾くんが僕の居た世界に行けたら….多分現実になる。
だって君は僕から見たら、君は金髪の王子様にしか見えないのだから。
IF 都市伝説の王子様
全てが憎くて仕方ない。
私は、誰もが羨むほどの美人だった。
だけど、より一層美しくなりたい、その願望から整形手術を繰り返した。
今迄、成功しかしなかったから、私は油断をしたのかもしれない。
必ず成功する…そんな根拠は何処にも無かった。
「貴方の美貌はもう完成しています、これ以上手術をする必要はないでしょう」
「煩い、お金なら幾らでも出すから、もっと綺麗にして頂戴、これ位では満足できないわ」
「ですが、もう何回も整形を繰り返していますから、手術に顔が耐えられるかどうか解らない…お勧めできません」
「もう頼まないわ、貴方みたいな藪医者に頼まない」
いつも手術をお願いしていた整形外科は私の手術を断った。
それでも、私はどうしても手術を諦められなかったから、他の整形外科を探した。
後から考えれば、いつもの整形外科の言う事は正しかった。
3件程断られた後、私は路地裏に汚い整形外科を見つけた。
ここも断れるだろう。
そう思っていたが、ここの病院はあっさりと私の手術を引き受けた。
今迄の病院とは違い、ここの医院長は自信満々だった。
「腕の悪い医者はそう言うでしょうね…ですが、私なら何回でも手術は可能です、納得のいくまで手術をさせて頂きます」
今考えれば、うさん臭かった。
大手の病院が出来ない事をこんな病院が出来る訳は無かったんだ。
手術は失敗して私は…美貌の全てを失った。
だが、ここで辞めておけば、これ以上の醜い姿にはならないで済んだ。
少なくとも人ではいられた。
手術を失敗した、医者は私に次の手術を勧めた。
「ここで辞めたら勿体ないですよ。これは綺麗にする第一段階…失敗ではありません、私を信じて後数回手術をさせて頂ければ、確実に美しくなります」
胡散臭い。
そう思ったけど、もう引き下がる訳にはいかない。
そして、私の顔は化け物となった。
医者に追求しようと思ったが、医者は無免許の医者だったらしく私の手術の後警察に捕まった。
幸い、お金は無事に帰ってきた。
そのお金を持って私は、いきつけだった整形外科に行った。
「だから、辞めなさいと勧めたんだ、手術は出来ませんよ、貴方の顔はもう限界を通り過ぎて崩れているんです…….諦めて下さい」
他の医者にも聞いたが…誰も私を治せる者はいなかった。
そして、私は容姿に引っ張られるように心も化け物になった。
私には妹が二人いる。
今、思えば妹たちに罪は一切ない。
ただ、姉妹のなかで私だけが醜くなったのが許せなかった。
ただの八つ当たりだ。
一番下の妹を押さえつけて口を裂いた。
妹は泣いていたが良心は痛まなかった。
二番目の妹の口も裂いた。
私は精神病院に入れられたが、そこも抜け出し、縫合された妹の口を再び裂いた。
私達に両親はいない。
妹たちは、こんな私でも愛してくれていたのだろう。
ここまでした私を警察に突き出す事をしなかった。
そして、妹達は私と同じような醜い裂けた口へと変わった。
妹達は私を訴えなかったが、醜い顔に耐えられなかったのか、、自殺した。
これで私は本当に独りぼっちだ…そして、人間ではなく本当の化け物になった。
私は、赤いコートを着て、マスクをつけて、右手に鎌を持ちながら電柱の横に立つようになった。
「私…綺麗」
「えっ綺麗だと思うけど?」
そりゃそうだ、マスクで私の醜い部分は全部隠れている。
しかも、私はスタイルも良い。
「これでも、綺麗?」
私はマスクを外す。
男性の多くは凍り付く。
そして、その相手を私は残虐に殺すのだ。
肯定しても、否定しても殺す、、私に出会ってしまったら、、確実な死しかない。
この日も何時ものように獲物を探していた。
後ろ姿の綺麗な少年をみつけた。
「私…綺麗」
少年は何も言わない。
最初から不審者扱いか…ムカつく…こんな美しい少年…私と違いさぞかし楽しい人生を歩んできたに違いない。
顔を切り刻んでやりたい。
だが…何かが違う。
他の人間の様に私に恐怖を覚えてないような気がする。
しかも何故か…私に対する目が…壊れてしまう前の私に対する男の様な目をしていた。
手が震える…こんな事は今迄無い。
マスクを外せない…外すのが怖い。
「これでも、綺麗」
マスクを外した。
さぁ、、怖がるだろう?
その恐怖したお前を私は…あれっ可笑しいな。
怖がらない…なんで。
「凄く…綺麗だ…所で、こんな暗闇で貴方みたいな綺麗な人が何をしているんだ?」
おかしい、おかしい、おかしい…、私を綺麗だって。
助かりたい一心でそういった奴はいた。
だけど、そいつの顔は恐怖で引き攣っていた。
それなのに、此奴は顔を赤くしながら、まるで綺麗な女性に本当に話掛けられたみたいに…嬉しそうな顔をしている。
これは、そう、私がまだ化け物になる前の美しかった女性だった頃…年下の男の子から告白された時にその少年がしていた目だ。
今、思えば、どんなに綺麗になっても、あんな風に本当に好きになってくれた人はいなかったな。
殺せない…
「何で、私の様な化け物に…そんな優しい目を向けるの?」
どうしても聞いてみたい。
「逆に聞くけど、何でそんなに美しい顔なのに化け物なんて言うんだ…正直、貴方程綺麗な人は見た事がない」
この少年は何を言っているの?
私は化け物なのよ。
「嘘、言わないで、こんなに口が裂けている化け物女なのに」
「裂けている? 確かに大きな口をしているけど…凄く綺麗だと思うのだが、、」
そんな事言わないで…嘘だと解っても…信じたくなっちゃうよ。
「嘘…だったら私に…キスできる? 出来ないハズよ」
これは夢なのか?
暗がりから凄い美女が出て来たかと思ったら、、俺にキスを求めてくるんだ…
何かの冗談なのか…それとも本当に夢なのか?
「俺みたいな醜い男が…あなたの様な美人にキスをしても良いのか?」
こんな、王子様のような少年が醜いなんて何の冗談なのかしら?
「私は、、貴方にキスして貰えたら…嬉しいわ」
「もう取り消しは利かないからな…チュッ」
俺はこの美人の頬っぺたにキスをした。
「嘘、本当にキスをしてくれたの?…だけど何で頬っぺたなのかしら」
優しいキス…学生の頃を思い出すわ。
「自分を大切にした方が良いぞ…俺みたいなブサイクじゃなくて…ちゃんとした人とするべきだ」
「そんな人いないわ…私を綺麗なんていう人は貴方位しかいないわ」
私は化け物なのよ? 恐れられこそすれ好かれる訳ないじゃない。
「俺をからかうのはよせ…貴方みたいな美人がモテないわけない」
「モテないわ…私からしたら貴方みたいな美少年が私に優しくする方がおかしいのだけど」
「からかうな、じゃぁ俺が…あんたと付き合いたいと言ったらあんたは付き合ってくれるのか?」
冗談はよせっていうの。
「えっ…普通につきあうわ…付き合わない訳ないでしょう? 何だったら結婚でもしてみる?」
こんな美少年には綺麗な時でも告白されたこと無い。
まぁ未成年相手に、結婚は言い過ぎだと思うけど?
「そこまで言うなら信じるけど…もう取り消し利かないからな? いいんだな?」
こんな美人に告白されるなんて夢としか思えない。
「そっちこそ、嘘とか冗談なんて言わないでね…そんな事いったら殺すわよ!」
少しヤンデレなのかな?
美人が言うとこういうセリフも可愛く聞こえるな。
「本当に俺でいいんだな、気が変わると怖いから、直ぐに婚姻届け書いて貰うぞ…本当に良いんだな?」
「書くに決まっているじゃない…貴方こそ、本当にいいの?」
「いいに決まっている…俺はこれでもブサイクなのを除けば優良株だからな、愛してくれるなら、絶対に幸せにする…だから俺から離れないでくれ!」
「わかったわ、妻として頑張る…だから幸せにしてね…貴方!」
……
「なんて夢を、翔くん見たんだけど、凄い楽しかった 年上の美人のお姉さんが素敵だったな」
興奮して東吾くんが話してきた。
最近、良く東吾くんは夢の話をしてくる。
「そうなんだ良かったね」
だけど、これ僕のいた世界の都市伝説の口裂け女の話だよな。
東吾くんなら…口裂け女でも口説いちゃうのか?
だけど、秋葉原に、都市伝説の口裂け女…もしかして東吾くんは夢で僕のいた世界に行ったのかな。
そんな事はないか…
IF都市伝説の王子様(裏)
全てが憎くて仕方ない。
私は、誰もが羨むほどの美人だった。
だけど、より一層美しくなりたい、その願望から整形手術を繰り返した。
今迄、成功しかしなかったから、私は油断をしたのかもしれない。
必ず成功する….そんな根拠は何処にも無かった。
「貴方の美貌はもう完成しています、これ以上手術をする必要はないでしょう」
「煩い、お金なら幾らでも出すから、もっと綺麗にして頂戴、これ位では満足できないわ」
「ですが、もう何回も整形を繰り返していますから、手術に顔が耐えられるかどうか解らない…お勧めできません」
「もう頼まないわ、貴方みたいな藪医者に頼まない」
いつも手術をお願いしていた整形外科は私の手術を断った。
それでも、私はどうしても手術を諦められなかったから、他の整形外科を探した。
後から考えれば、いつもの整形外科の言う事は正しかった。
3件程断られた後、私は路地裏に汚い整形外科を見つけた。
ここも断れるだろう。そう思っていたが、ここの病院はあっさりと私の手術を引き受けた。
今迄の病院とは違い、ここの医院長は自信満々だった。
「腕の悪い医者はそう言うでしょうね、 ですが、私なら何回でも手術は可能です。納得のいくまで手術をさせて頂きます」
今考えれば、うさん臭かった。
大手の病院が出来ない事をこんな病院が出来る訳は無かったんだ。
手術は失敗して私は、、、美貌を失った。
だが、ここで辞めておけば、これ以上の醜い姿にはならないで済んだ。
少なくとも人ではいられた。
手術を失敗した、医者は私に次の手術を勧めた。
「ここで辞めたら勿体ないですよ。これは綺麗にする第一段階、、失敗ではありません。 私を信じて後数回手術をさせて頂ければ、確実に美しくなります」
胡散臭い。
そう思ったけど、もう引き下がる訳にはいかない。
そして、私の顔は化け物となった。
医者に追求しようと思ったが、医者は無免許の医者だったらしく私の手術の後警察に捕まった。
幸い、お金は無事に帰ってきた。
そのお金を持って私は、いきつけだった整形外科に行った。
「だから、辞めなさいと勧めたんだ、手術は出来ませんよ、貴方の顔はもう限界を通り過ぎて崩れているんです…諦めて下さい」
他の医者にも聞いたが…誰も私を治せる者はいなかった。
そして、私は容姿に引っ張られるように心も化け物になった。
私には妹が二人いる。
今、思えば妹たちに罪は一切ない。
ただ、姉妹のなかで私だけが醜くなったのが許せなかった。
ただの八つ当たりだ。
一番下の妹を押さえつけて口を裂いた。
妹は泣いていたが良心は痛まなかった。
二番目の妹の口も裂いた。
私は精神病院に入れられたが、そこも抜け出し、縫合された妹の口を再び裂いた。
私達に両親はいない。
妹たちは、こんな私でも愛してくれていたのだろう。
ここまでした私を警察に突き出す事をしなかった。
そして、妹達は私と同じような醜い裂けた口へと変わった。
妹達は私を訴えなかったが、醜い顔に耐えられなかったのか、、自殺した。
これで私は本当に独りぼっちだ…そして、人間ではなく本当の化け物になった。
私は、赤いコートを着て、マスクをつけて、右手に鎌を持ちながら電柱の横に立つようになった。
「私…綺麗」
「えっ綺麗だと思うけど?」
そりゃそうだ、マスクで私の醜い部分は全部隠れている。
しかも、私はスタイルも良い。
「これでも、綺麗?」
私はマスクを外す。
男性の多くは凍り付く。
そして、その相手を私は残虐に殺すのだ。
肯定しても、否定しても殺す、、私に出会ってしまったら…確実な死しかない。
この日も何時ものように獲物を探していた。
後ろ姿の綺麗な少年をみつけた。
「私…綺麗」
少年は何も言わない。
最初から不審者扱いか、ムカつく、こんな美しい少年、私と違いさぞかし楽しい人生を歩んできたに違いない。
顔を切り刻んでやりたい。
だが……何かが違う。
他の人間の様に私に恐怖を覚えてないような気がする。
しかも何故か、、私に対する目が、、壊れてしまう前の私に対する男の様な目をしていた。
手が震える…こんな事は今迄無い。
マスクを外せない…外すのが怖い。
「これでも、綺麗」
マスクを外した。
さぁ、、怖がるだろう?
その恐怖したお前を私は…あれっ可笑しいな。
怖がらない…なんで。
「凄く…綺麗だ…所で、こんな暗闇で貴方みたいな綺麗な人が何をしているんだ?」
おかしい、おかしい、おかしい…私を綺麗だって。
助かりたい一心でそういった奴はいた。
だけど、そいつの顔は恐怖で引き攣っていた。
それなのに、此奴は顔を赤くしながら、まるで綺麗な女性に本当に話掛けられたみたいに、、嬉しそうな顔をしている。
これは、そう、私がまだ化け物になる前の美しかった女性だった頃、、、年下の男の子から告白された時にその少年がしていた目だ。
今、思えば、どんなに綺麗になっても、あんな風に本当に好きになってくれた人はいなかったな。
殺せない…
「何で、私の様な化け物に…そんな優しい目を向けるの?」
どうしても聞いてみたい。
「逆に聞くけど、何でそんなに美しい顔なのに化け物なんて言うんだ…正直、貴方程綺麗な人は見た事がない」
この少年は何を言っているの?
私は化け物なのよ。
「嘘、言わないで、こんなに口が裂けている化け物女なのに」
「裂けている? 確かに大きな口をしているけど…凄く綺麗だと思うのだが、、」
そんな事言わないで…嘘だと解っても…信じたくなっちゃうよ。
「嘘…だったら私に…キスできる? 出来ないハズよ」
これは夢なのか?
暗がりから凄い美女が出て来たかと思ったら、、俺にキスを求めてくるんだ。
何かの冗談なのか…それとも本当に夢なのか?
「俺みたいな醜い男が…あなたの様な美人にキスをしても良いのか?」
こんな、王子様のような少年が醜いなんて何の冗談なのかしら?
「私は…貴方にキスして貰えたら…嬉しいわ」
「もう取り消しは利かないからな…チュッ」
俺はこの美人の頬っぺたにキスをした。
「嘘、本当にキスをしてくれたの?…だけど何で頬っぺたなのかしら」
優しいキス…学生の頃を思い出すわ。
「自分を大切にした方が良いぞ、、俺みたいなブサイクじゃなくて…ちゃんとした人とするべきだ」
「そんな人いないわ、、私を綺麗なんていう人は貴方位しかいないわ」
私は化け物なのよ? 恐れられこそすれ好かれる訳ないじゃない。
「俺をからかうのはよせ、、貴方みたいな美人がモテないわけない」
「モテないわ、、私からしたら貴方みたいな美少年が私に優しくする方がおかしいのだけど」
「からかうな、じゃぁ俺が、、あんたと付き合いたいと言ったらあんたは付き合ってくれるのか?」
冗談はよせっていうの。
「えっ…普通につきあうわ…付き合わない訳ないでしょう? 何だったら結婚でもしてみる?」
こんな美少年には綺麗な時でも告白されたこと無い。
まぁ未成年相手に、結婚は言い過ぎだと思うけど?
「そこまで言うなら信じるけど、、もう取り消し利かないからな? いいんだな?」
こんな美人に告白されるなんて夢としか思えない。
「そっちこそ、嘘とか冗談なんて言わないでね…そんな事いったら殺すわよ!」
少しヤンデレなのかな?
美人が言うとこういうセリフも可愛く聞こえるな。
「本当に俺でいいんだな、気が変わると怖いから、直ぐに婚姻届け書いて貰うぞ…本当に良いんだな?」
「書くに決まっているじゃない…貴方こそ、本当にいいの?」
「いいに決まっている…俺はこれでもブサイクなのを除けば優良株だからな、愛してくれるなら、絶対に幸せにする…だから俺から離れないでくれ!」
「わかったわ、妻として頑張る…だから幸せにしてね…貴方!」
だが、この幸せは永く続く訳はない。
私は口裂け女…都市伝説の化け物。
妹達を自殺に追い込み、罪のない沢山の人を殺し続けてきた。
私は、もはや人間ではない。
今の私は、憎しみでできた化け物だ、憎しみの気持ちが無くなったら、この体も維持は出来ないだろう。
だけど、こんな私でも愛してくれた、そんな彼の傍に少しでも長くいたい。
だが、そう長い時間、私は彼の傍には居られない…憎しみの気持ちが無くなった今、私は…消えてしまう。
神様、お願いです。
少しでもいい、彼の傍に居させて下さい。
そして、私が…いなくなった後、彼が悲しまない様にして下さい。
地獄にも行けずにこの世から消えてしまう、私が哀れだと思うのなら最後の慈悲をください。
彼女は東吾と楽しい時間を3日間過ごした。
今迄の不幸が嘘だったかのような楽しい時間だった。
そして、3日後…消えるように彼女はいなくなった。
東吾は知らない街を走り回りって探した。
狂ったように泣きながら探した。
だが、、幾ら探しても彼女は見つからなかった。
そして、東吾は悲しみのまま眠りについた。
神は彼女の思いを聞き届け…東吾の記憶を消した。
だが…東吾は今迄、愛を知らない。
自分を愛してくれた人を忘れる事は無かった。
そして、彼女との記憶は、、夢として彼の中に生き続ける。
決して消える事のない記憶と共に…
………
「なんて夢を、翔くん見たんだけど、凄い楽しかった 年上の美人のお姉さんが素敵だったな」
興奮して東吾くんが話してきた。
最近、良く東吾くんは夢の話をしてくる。
「そうなんだ良かったね」
だけど、これ僕のいた世界の都市伝説の口裂け女の話だよな。
東吾くんなら…口裂け女でも口説いちゃうのか?
だけど、秋葉原に、都市伝説の口裂け女…もしかして東吾くんは夢で僕のいた世界に行ったのかな。
そんな事はないと思うけど…….
北條邸にて 白百合奈々子
私は新たな決意と共に北條邸を訪れた。
ここの主は昭和の妖怪とも呼ばれる北條貴子だ。
醜い、その一点を除けば、恐らく一流中の一流の人物だ。
ある意味、世界で一番すごい人物と言っても過言ではない。
黒木さんが行き場の無い私の為に用意してくれた仕事場、恥をかかせる訳にはいかない。
門の前に立ち尽くす事10分。
その屋敷の広大さに驚きが止まらない。
息を吸い込んだり吐いたりする事3分…私はようやく勇気をもって呼び鈴を押した。
「どちら様でしょうか?」
鈴を転がしたような可愛い声だ。
こんな声の人はさぞかし美女なんだろう。
「初めまして、白百合奈々子と申します」
「はい、黒木様にも、奥様にも聞いています、今門を開けますのでお待ちください」
驚く事に門は自動で開いた。
門が開きそこから家の玄関まであるいて2分程掛かった。
本当の豪邸ってこういう物を言うんだな、、元の家も佐和子御殿なんて言われていたけど、これに比べたら犬小屋にしか見えない。
家の玄関まで行くと、私と同じ様に醜い女性が三人居た。
昔の私なら多分目を背けていたかも知れない。
だけど、今の私の目から見たら、凄く洗練された姿に見えた。
あれは、多分お姉ちゃんと同類だ。
外見以外は全てを身に着けた完璧美少女なのかも知れない。
「はじめまして奈々子さん、私はメイド頭をしています、白金と申します」
「園崎です、宜しくね奈々子さん」
「あたしは古木、宜しく」
「私は、白百合奈々子です、お願いします」
「「「うん、宜しくね」」」
やっぱり、完璧美少女だった。
この人達もお姉ちゃんと同じで醜い以外、、は本当に凄く見える。
「もしかして、ブサイクなんで驚いた?」
「そんなブサイクなんて、私なんかブサイク処かお化けですから」
そう、今の私は…うん遙かにブサイクだ。
「うん、そうだね…だけど、奈々子さんも黒木様が好きなんでしょう?」
「あれ程、優しくて綺麗な人は居ませんから、奈々子も大好きです。もと言う事は皆さんもそうなんですか?」
「「「はい」」」
「だけど、黒木様には恐らく外見の美しさは、、余り価値が無いと思います。 何しろ、本当の化け物、、これは絶対内緒ですよ…ですら女神と褒める方ですから…あの方に好かれるには内面を鍛えるしかないと思いますよ」
「私もそう思います」
「ならば、私たち4人は仲間でライバルです、一緒に頑張りましょう」
うん、白金さんには叶わない、本当に外見以外は完璧熟女だ。
この人は、長く生きた分、お姉ちゃんより凄いかも知れない。
「奈々子さん、今何か失礼な事を考えませんでしたか?」
「いいえ、何も考えていません」
まさか人の心が読めるのかな?
「お話しをしていたいですが、まずは当主の貴子さま、長女の玲奈様 二女の美優様にご紹介致します。その後に長男の東吾を紹介します」
「あの、何故、東吾様だけ敬称が無いのでしょうか?」
「あぁ、基本、東吾…様は私達には寄って来ないので空気と思って構いません…何か言われた時に対応してあげれば構いません」
「男性なのに雑に扱って良いのでしょうか?」
「見れば、雑に扱う訳が解ると思います」
「そうですか」
「さぁ、行きますよ…ついて来てください」
「はい」
「こんにちわ私がこの屋敷の主の貴子です、宜しくね奈々子ちゃん」
この人がここの主、確かに群を抜いてブサイクだ。
確かに私なんか比べ物にならない化け物。
だけど、この人は世界一の金持ちだ、世界一の権力者だ。
それが、何でここまで腰が低いのだろう…
「どうか、されたのですか? 奈々子ちゃん?」
これは試験は失敗かな、雇えないわね。
「あの、なんで貴子さまはそんなにお優しそうなのですか?」
まさか、この子は…まさかね。
「私が優しそうに見えるのですか?」
うん、確かにこの人はブサイクで醜い…だけど、私の母のような冷たさがない。
まるで、人を包み込むような優しい雰囲気が漂っている。
なんで、この人が化け物なんだろう…
「はい、凄く優しいそうな人に…私には思えて…すいません使える身なのに口がすぎました」
「いいわ、気にしないで貴方は友達になれそうね…本当に優しそうに見えるのなら、暫く私と話さない?」
「宜しいのですか?」
「えぇ いいわよ、白金、暫く席を外してくれる」
「畏まりました、貴子様、用事が済んだらお呼びください、玲奈様と美優様への紹介が済んでいないので」
「そう、なら二人ともここに呼んできて、その方が早いでしょう?」
「畏まりました」
暫くして玲奈と美優が部屋に来た。
「その人が奈々子ちゃん、黒木くんが言っていた人だね 私は玲奈宜しくね」
「私は美優、、黒木くんの天使をしています」
「ちょっと美優…天使ってなんだ?」
「うん、黒木くんが美優の事、天使なんだって」
「そうなの…私は綺麗としか言われて無い…いいなぁそれ」
「お母さんはね…女神様なんだって…天使より女神様の方が上ですよ」
「女神より天使の方が可愛いいもん」
「女神の方が天使より偉いもん」
「いいなぁ、2人とも、そんなあだ名で呼ばれて…私なんか…私なんか…綺麗しかいってもらえてないよ…そうだ奈々子はなんて言われたの?」
「あ、私は…妹兼友達からだそうです…だけどキスまでして貰いました」
「キスは…全員して貰ったよ…妹と天使ってどっちが上なのかな?」
「うーん、天使の方が可愛いけど、傍にいるって意味なら妹の方が上じゃないか?」
「お姉ちゃん、自分が何も言われていないからって美優にやつあたり」
「違うだろう、お前は妹だから、私と同じ家に住んでいるけど…天使は私と住んでいない…ほら、傍にいるって意味なら妹の方が上じゃないか…それに妹は…家族だぞ」
「お姉ちゃんの意地悪…だけど、いいな、奈々子さんは妹か…確かに身内だね」
「私なんか、まだまだ、黒木さんが一番好きなのは…私のお姉ちゃんですから…私なんて最近まで相手にもして貰えなかったんです」
「えっ、黒木君にそんあ人が居るの…知らなかった…東吾はそんな事言わなかったわ」
「奈々子ちゃん…それについてもっと詳しく教えて」
「奈々子ちゃん、それ本当?」
あれっ何故か私…さんからちゃんに呼び方が変わっている。
「私の知っている範囲で良ければ…」
私は知っている限りの事を教えた。
「そうなのですか、黒木君には第4彼女まで居るのですね」
「はい、第一彼女が、姉ちゃんで白百合京子って言います」
「そう、さぞかし綺麗な方なんでしょうね?」
話を聞くと三人は驚いた。
自分達と同じ全員がブサイクだと言うのだ。
ただ、更に驚いたのが全員が奈々子の言う通りならハイスペックなのだ。
白百合京子、奈々子の姉で、彼女の言うには醜い事以外は学業優秀、出来ない料理が無い 完璧美少女
金剛里香、彼女については私の方が詳しい、彼女は私の友達の娘だ、華族の家柄の家電メーカーの1人娘、醜いという事を除いてはハイスペックだ。あの子が居る限り金剛家はこれからも海外に出し抜かれること無く家電業界を牛耳るだろう、まだ若いがいずれは私の足元位には近づいてくるかもしれない。
東条楓 実戦派剣道の道場の跡取り娘、母親は鬼姫という美しい剣道家だったが、彼女には美しさは遺伝しなかった。カマキリの様に長い手足を持つ醜い娘、だけど、彼女は剣道の才能は母親を越えていた。その証拠にある時期から一度も彼女は負けなくなった。 だが、それ程の才能を持ちながら、世間は天上心美を100年に一度の天才と呼ぶが、何故、そいつに負けないこの子を天才と呼ばないのか疑問に思っていた。 玲奈が実はフアンで彼女の記事を集めていた…なんでも醜い彼女が綺麗な剣士を倒す姿に憧れたそうだ。
西城歩美 妹みたいな女の子らしい、この子についての情報は無いが、奈々子曰く、妹兼彼女という事からそれなりに優秀なのだろう。 妹と言う言葉を聞いた時に美優が、妹ポジションが三人居るって騒いでいた。 だけど、黒木君なら三人纏めて妹にしてくれるだろう。
「凄いな、、真面目に黒木くんは外見で無く中身重視なんだ、、疑ってはいなかったけど…うん、凄い、東条楓を彼女にしているのは凄いな…あの人は日本一の女剣士だ…まぁ外見は良くないけど」
「それを言うなら、金剛里香を彼女にしているのは凄いですわ…もし次世代の才能ある若者というなら、身内贔屓でないけど、間違いなく 玲奈と美優です。 ですが、もし他に誰かを上げるなら金剛家の里香になります」
「それを言うなら、お姉ちゃんもです。私の母は、白百合佐和子です。子役からスターに上り詰めた。その母の外見以外は全て受け継いでいます。 外見というハンデが無いなら、料理は旨いし、誰にでも優しいし、母は偽物だけど、お姉ちゃんは演技でなく本当に内面の素晴らしい女の子です。何よりも黒木さんが第一彼女に選んだし、一番お姉ちゃんに時間を使っています」
「ねぇ、、その西城さんの情報は無いの? その子がなんか美優のライバルになる気がするんだけど」
「すいません」
「残念だけど仕方ないか」
「今度、お姉ちゃんに聞いてみます」
「ありがとう、奈々子ちゃん」
「あの、貴子さま、それで私はどの様な仕事をすれば良いのでしょうか?」
「そうね、私達と遊んでくれれば良いわ」
「遊びって何でしょうか?」
まさか、何か危ない遊びをさせられるのかな、遊んでお金が貰えるわけ無いし。
「そのままよ、今日みたいに話し相手をしてくれたり、美優とゲームしたり、玲奈と散歩したり、そういう遊び全般ね…勿論、新しい遊びや楽しい話題の提供も入るわよ」
「それで良いんですか?」
「えぇ、、それで充分ですね、美優や玲奈は他にやって貰いたい事ある?」
「それで充分じゃね」
「美優も他にはないかな」
「本当にそれだけで良いのですか?」
「そうね、じゃぁ他に…貴子ちゃんって呼んでくれる?」
「それ良いね…じゃあ私は玲奈ちゃんでいいや」
「じゃぁ美優は美優ちゃんって呼んでね」
「本当にそれでいいのですか?」
「いいのよ、家事はメイドに任せて何もしなくて良いから、私達と楽しむ事を考えて頂戴」
「はい」
「そうだ、給料の提示がまだだったわね…年収で1億2千万…まぁメイドの倍でどうかしら?」
「幾ら何でも貰いすぎだと思います」
「そう、じゃぁ年収で9千万…これ以上は下にはしないわ…貴方は若いから半分支給して半分は貯金にするわね…貴方も黒木様と一緒で自分の価値を知らないのね」
「価値ですか? それじゃ一体」
「内緒です、それじゃ今日は疲れたでしょう? 休んでいいいわ」
「4時間30分…凄いわね」
「美優は驚いたよ、私たちの醜さに耐えられてこんなに一緒に居られた人居ないよ」
「本当にそうだ、弟の東吾なんて30分…それでも凄いのにね」
「そう、そう園崎ちゃんが1時間半、メイド頭の白金だって2時間が限界」
「だけど、あれが限界なんて思えないわ…あのまま幾らでも居れそうだったわ」
彼女達が黒木以外で一番欲しかったもの、それは友達だった。
自分達と長く居られるメイドを見つけるのにどれ程大変だったか。
だけど、そのメイドですら恐怖心があった。
今では少しはマシになったけど、それでも心の中で恐れている。
あれほど、私達を恐れなかった人間は黒木君しか知らない。
「楽しかったわね」
「うん、黒木くんみたいに奈々子ちゃんは私が全然怖くないんだね」
「そうだな、、明日も楽しみだな」
「ええ、、明日は何をしましょうか? 流石、黒木君の推薦ですわね本当に素敵な子」
明日が楽しみだ。
再び北條家へ
いつもの様に楽しみながらお弁当を食べていると東吾くんが話掛けてきた。
白百合さん達と居る時に東吾くんが話しかけて来ることは珍しい。
だが、最近はごく稀にだが話掛けて来ることがある。
但し、絶対に白百合さん達の顔は見ない。
最初、胸元を見ていたが、金剛さんに「持ち悪いですわ」と言われてから、足元を見ている。
逆に、白百合さん達も決して東吾くんを見ない。
この辺の法則が今一僕には解らない。
東吾くんも白百合さん達も僕から見たら凄い美形だ。
という事は、この世界だと物凄くブサイクという事になるのだが…白百合さん達は東吾くんを見ると気持ち悪がる。
東吾くんに到っては吐く時もある。
本当に気持ち悪い存在なら、白百合さん達同士でも気持ち悪がってもおかしくない筈だ。
解らない事を幾ら考えても仕方が無い。
「翔くん、今日うちに遊びに来ないか?」
奈々子ちゃんを紹介したんだから、様子を見に行かないのは不義理にあたる。
そして何よりも、僕自身が北條邸に遊びに行きたい。
「そうだね、奈々子ちゃんの様子も気になるから、行くよ」
「正直、助かった、 次は何時くるんだって煩くてな」
「ちょっと待って下さい、今日は私達もお伺いして宜しいでしょうか?」
これまた珍しく、白百合さんが北條邸に来たがった。
「あぁ、白百合達なら問題が無いと思うぞ、特に東条は姉のお気に入りだからな」
「えっ、私を気に入っているってどういう事?」
「姉は、自分では遣らないが剣道を見るのが好きでな…まぁ東条のフアンだ」
「そうか、なかなか良いお姉さんだね、私のフアンなんて通だね、、私も会うのが楽しみだ」
放課後、いつものようにリムジンが迎えに来た。
いつもと違うのは、今日来たリムジンがいつものより大きかった事だ。
うん、、あれより大きなリムジンがあったんだね。
東吾くんは珍しく助手席に座った。
そりゃそうだ、吐いたら困るからね。
「所で皆んなは北條家の人と面識はあるの?」
「ないです」
「ないよ」
「ないな」
「私くしは、母のお伴で貴子様には何回かお会いしておりますわ、ただ、他の方には面識がございませんの、良く母から比べられるのでこの機会にお会い出来たら嬉しいですわね」
「そう言えば、貴子さんと小百合さんは知り合いだったね」
「ええ、だからうちの親はしょげてますわ、家は1回しか来てないのに、北條家には2回、しかも奈々子さんの事で貴子さまが相談を受けたと聞いて手が震えておりましたわ」
「そそうなんだね」
「所で、なんで、北條家は何回も行きますのに、他の家には殆どいかれませんの?」
「あっ、それ私も知りたいな」
「歩美も知りたいかな」
「うん、白百合さん所は正直言って佐和子さんと反りが合わないからかな…最初に会った時には白百合さんじゃなく奈々子ちゃんを勧められたし…そして今回の奈々子ちゃんへの仕打ち、、正直行きたいとは思わないよ…あっでも白百合さんの部屋限定なら…行きたいんだけどね」
「よく考えたら至極ごもっともな話だね…今となったら私も余りお母さんに愛情ないかも」
「そうしたら、私くしの家はどうなんですの?」
「小百合さんは理想のお母さんみたいで別に問題無いよ、ただ、メイドさんからのアプローチが少しね」
「確かに、あのメイド達は黒木様を狙っておりましたわね、だけど女なら仕方ない事なのですわ」
「そうなんだけどさ、僕が金剛さんと付き合っているのを知っててアプローチしてくるのはね」
本当は化け物にしか見えない…とは言えないから、この辺りが無難かな。
「あらっ、あのメイド達は、凄く美人なのですわよ…1人は元ミスワールドなのですわ」
「そう、僕からしたら金剛さんの方が綺麗に見えますよ」
「もう、そんな事ばかり、、まったく…」
「あのさぁ…私の所へはなんでこないんだ?」
「えっ東条さん…招待されてないからじゃないかな?」
うん、東条さんからは招待をされてないよね。
「何だ、皆んな、そんな残念な子を見るような目で見るなー」
「貴方って人は本当に竹刀を持っている時と日常は違い過ぎますわね」
「確かに竹刀持つと落ち着くけど」
「それなら、歩美のところは何で?」
「東条さんと一緒…だと思う」
「あれっそう言えば歩美も招待してなかった」
出来たら、東条さんと西城さんの家には行きたくなんだけどね。
「あれが、北條家なのですわ」
「凄く大きいね、うちとは大違い」
「そりゃ、そうだ、、世界の北條家だ、、まぁ確かにうちの道場よりも大きいが」
「あれっ東吾くんどうしたの?」
「何でもない…」
運転している、白金といい、よくこれだけのブサイクに囲まれて気持ち悪くならないな。
最近、もう一人例外が居て驚いたが、、、俺には耐えられない。
吐かなかった自分を褒めてあげたい位だ。
「黒木さん お久しぶりです」
「あれっ、奈々子ちゃん、何で私服なの? メイド服着ないでいいの?」
「奈々子はメイドでなく…友人枠で採用されたみたいなのでいいんだそうです」
「それって、どんな仕事するの?」
「お話しとかトランプとかですね」
「東吾くん…本当にそんな仕事あるの」
「あぁ…彼女は母さんのお気に入りだからな…悪いが俺は用事があるからこれで失礼する、後は白金任せたぞ」
相変わらずですね坊ちゃまは。
「はい、任されました」
悪いな、流石にこれだけの化け物が揃うと駄目だ、気持ち悪さが止まらない。
「じゃあね東吾くんまた後で」
「またな翔くん」
「それで白金さん、今日はどうすればいいの?」
「そうですね、まずは、黒木様以外にもおりますので、奥様にご挨拶して、その後は奈々子様にお聞きください」
「奈々子様? 奈々子ちゃんの方が後輩なんじゃないの?」
「奈々子様は特別ですから」
「奈々子、凄いじゃない…もう出世したの?」
「お姉ちゃんに比べたらたいしたこと無いよ?」
「私? 出世なんてしたかな?」
「黒木さんの第一彼女でしょう? それ以上の出世なんてあるのかな?」
「えっ、この方が第一彼女なんですか?」
「そうだよ白金さん、、この人が私のお姉ちゃん、黒木さんの第一彼女…」
「そうですか、、羨ましいですね、、それではついて来てください、、奥様の所にいきますよ」
「貴方達が、黒木さんの彼女ですか羨ましいですね」
「第一彼女の白百合京子です」
「そう、貴方が京子さんね、妹の奈々子ちゃんにはお世話になっているわ」
「奈々子に居場所を作って頂いて有難うございました」
「いえ、本当に助かっているの」
「お久しぶりですね貴子様」
「お久しぶりね里香ちゃん」
「本当に久しぶりですわ、今日は玲奈さんや美優さんに会えるのかと思うと楽しみですわ」
「そう、そう言えば里香ちゃんはうちの娘にあった事はなかったわね」
「はい、だから楽しみなのですわ」
「西城歩美です、宜しくなの」
「成程、貴方が黒木さんの妹なのね」
「妹って、、確かにそうですね」
少し、美優に似ているかも知れないわね。
「東条楓です。宜しくお願い致します」
「知っているわ…剣道が上手なのよね、うちの娘がフアンなのよ、後で会ってあげて」
「はい、わかりました」
凄いわ、この子たち、私を拒絶しないなんて、これなら皆んな友達に成れそう。
こんなに長い間私と一緒に居られる人はなかなか居ないわね。
奈々子ちゃんと同レベルなのかしら?
「それじゃ、今日は何をしようかしら?奈々子ちゃん」
「玲奈さんと美優ちゃんを呼んでゲームとかどうでしょうか?」
「いいいわね、、ただもう一声欲しいわね」
「だったら、一番になった人の言う事を他の方が聞く、そんな感じでどうでしょうか?」
「いいわ、それ」
「ところで奈々子ちゃん、ゲームは何をするの?」
「何にしましょうか? 黒木さんは何かやりたいゲームはあります?」
「僕?」
何が良いかな?
正直、前の世界ではボッチだったから人と遊んだ事は殆どない。
この人数で遊べるとなるとトランプかボードゲームしか思い浮かばない。
「トランプ、もしくはボードゲームが良いんじゃないかな?」
「そう言えば、この前に地下室でボードゲームを見つけました、あれ使って良いですか?」
「そんな物あったかしら? あるのなら使ってもいいわよ…悪いけど奈々子ちゃん持ってきてくれる?」
「ちょっと重そうなので、園崎さんお手伝いして貰っていい?」
「はい、奈々子様」
凄いね、奈々子ちゃん本当に出世したみたいだ。
「これなんだけど?どうかな」
見た感じは普通のボードゲームで中心にルーレットがあって1~8の数字がある。
車のようなコマとトランプみたいなカードがついている。
普通のボードゲームより大きく広げると畳1枚分以上はある。
タイトルは 「婚活女子、人生は奪った者勝ち、、奪っちまえばこっちの物」
なんだ、このゲーム。
「これは、もしやうちと北條家で開発したボードゲームですわね」
「そうそう、私と小百合で考えて企画だけしたものね、、黒木くんが居るなら面白そうだわ、やってみない?」
「確かに面白そうだ、これなら何人でも遊べるし、良いかも」
「ところで、一番になった人は他の人に言う事を聞かせられるんだよね、、だけど、これには、常識の範囲という条件をつけないといけないと思うんだけど」
「流石、白百合さん、気配りが旨いね」
「そうだよ、じゃないと私、一番になったら、黒木くんと結婚したいとか言うかもしれないもの」
「あははは、そうですわね、そうしないと大変な事になる所でしたわ」
「そうですね、確かに、そうしないと北條の財産を全部くれ、何て言う人もいるかもしれませんし」
絶対にそんな物より、黒木君の結婚権を狙うでしょうけどね。
「じゃぁ優勝者は常識の範囲で自由にお願いが出来る、で良いのかな? それとテレビみたいに賞金を出したらいいと思う。美優は1千万だすよ」
「美優、これは北條家の主催だから、いいわよ母さんが5千万だすわ」
「あの、流石に出しすぎではないですか?」
「良いのよ黒木君、5千万位なら、10秒もあれば稼げるから」
「私や美優はそうはいかないけど、1日位で稼げるお金だよ、、心配は要らないさ」
本当に北條の人って凄いスペックだな、、
「それじゃ始めようか? 黒木君は悪いけどカードマンお願いできるかな」
「カードマン?」
「そう、カードの内容を実行する人、、これは男の人の方が面白いから」
「解りました」
じゃんけんで順番を決めてルーレットを回す順番は次のようになった。
白金薫
白百合京子
金剛里香
園崎仁美
東条楓
西城歩美
北條美優
古木ナンシー
北條玲奈
白百合奈々子
北條貴子
「私からですね、日ごろの行いが良いせいなのかしら1番手です、5ですね」
恋愛マス 恋愛カードから1枚引いて貰う。
「それじゃ、僕はこのカードを引いて、内容を実行すればいいんですね」
「そうみたいですわ」
「では、、黒髪がいつも素敵ですね、その髪を触れせて貰っても良いですか?」
僕は白金さんの髪を優しく触った。
「なななな何をしているの、黒木様、、いきなりそんな事なさるなんて、もしかして私も彼女にして….」
「白金さん、違うよ、、ほらこれ」
「あっカードの内容なんですね、、だけど、これは凄い…」
「「「「「そういうゲームなんだ、これ」」」」
「じゃぁ今度は私の番、、恋愛マスこい、こいと、、3はえっ失恋マス」
もう、ルールは解っている。
失恋カードから1枚引いて実行をした。
「ごめん、お前みたいな女、好きになれないから二度と顔をみせるな」
軽く白百合さんを突き飛ばした。
「うそ、うそ、うそだ、、黒木くんにフラれたら、、私生きていけないよ、」
「違うよ、白百合さん、これ、これ、このカードの内容」
「そうだよね、ゲームだよねこれ」
「うん、僕が白百合さんを嫌いになるなんて無いから安心して」
「でも、これ凄いゲームだ、地獄か天国かまさにルーレット次第、、次は絶対に恋愛マスに止まらないと心が持たないかも」
「はい、はい、次は私の番ですわね、やりましたわ5ですわ」
「里香、いつもありがとう、君が居るから僕は生きていけるんだ」
僕は里香を抱きしめた。
「そんな、里香の全ては黒木様の物…なのですわ」
「はい、はい、これはゲームですよ金剛様、次は私の番 6 」
「君には飽きた、もう二度と俺の前に顔出すな」
「これっゲームだとしても心が痛みますよ…辛いわ」
「次は私の番だな…4 何も書いてない」
「これは何もイベントが起きないマスみたいですね」
「何も起きないのが案外、一番面白くないかもな」
「そうですね」
「次は歩美の番だね、、7ハプニングマス?」
「何かこのハプニングというカードを引くみたい」
ハプニングカード
隣の人とじゃんけんして勝ったら彼に10秒間ハグして貰って好きなセリフを言って貰える。
負けたら、踏みつけられながら周りから罵られる。
「じゃぁ東条さんじゃんけんお願い…やった…勝った」
「じゃぁ、、このセリフでおおおお願いなの」
噛むという事は結構際どいセリフなのかな。
「うん、解った、歩美ちゃん、愛している僕と結婚してくれないか?」
うん、凄く大胆だね。 10秒感 ハグした。
「うん、歩美で良かったらお嫁さんにして下さい」
「なんなんですか? そんなカードがあるなんて、私の番になったら絶対に引くよ」
「あれ、いいなぁ…美優も引きたい、恋愛マスかハプニングマス、、やったハプニングますだ」
ハプニングカード 隣の人と睨めっこして勝ったら 壁ドンから頬っぺたにキスして貰い、好きなセリフを言って貰える。逆に負けたら、失恋カード3枚引く事になる。
「古木さん、勝負です」
「あははは…古木さん、美優は主なのに少しは手加減してくれても」
「絶対に嫌です、あんなの美味しい思い、他人にされてたまりますか…さぁ敗者は失恋カードです」
「お前みたいな女大嫌いだ、一生部屋から出て来るな」
「くすん」
「何でお前みたいな女がいるんだ、俺の前から消えてくれないか」
「うぐ、くすん」
心が痛いけど仕方ないよ、、ルールだから
「まだ、俺の前に居るのか、とっとと消えろ」
「うわーん、黒木君ごめんね、すぐに居なくなるから」
「違うよ美優ちゃん、これゲーム…ゲームだからね」
「そ、これゲームだよね、本当に黒木君は、美優の事嫌いにならないよね?」
「ならないよ」
「黒木君、頭は撫でちゃ駄目…それじゃゲームにならないから」
「お母さん」
「美優、今はゲーム中だから親子でも敵よ」
そんなに真剣にならなくてもいいんじゃないかな。
「次は私と…3恋愛マスだー」
「ナンシー君を離したくない」
僕は、ナンシーさんを後ろから抱きしめた。
「これ、解っているけど…凄いね、超楽しい」
「おっ、次は私だな…告白マス 何だこりゃ」
「告白カードを引くみたいです」
告白カード 好きな人に壁ドンをして愛を囁く
「それじゃいくよ、好きでしゅ、愛してるぞ」
あっ噛んで赤くなった。
「ありがとう、玲奈さん」
「あっ暫く私は見ないでくれ、汗が止まらなくなるから」
「はい」
「次は奈々子ですね…白マス…つまらない」
「次は私ですわね…恋愛マスですね」
恋愛カード 膝枕をして貰い頭を撫でて貰える。
「さぁ 黒木さん…どうぞ」
ゲームは2時間続いた。
皆んなが泣きながら笑っていた。
このゲーム、精神に良くないと思う。
毎日続けたら心が壊れるんじゃないかな?
結局、優勝したのは貴子さんだった。
「私が優勝したのだから、願い事をお願いします。ここの皆んなで海に遊びに行く事です。 以上」
海か…楽しみだな。
海にて
海か…僕はなんで楽しみだ、なんて思ったのかな。
今僕は、北條家の用意してくれたバスに乗っている。
バスと言っても、中はまるで応接室みたいな作りだ。
テレビにカラオケ、冷蔵庫、至れり尽くせり。
そして周りには白百合さんを始めとする美人揃い、こんなリア充な状況なのに僕は沈んでいる。
さっき、窓から外を見て知ってしまった。
化け物の群れが大量に海にいる事を…
そうだ、あの時に僕はすっかり忘れていたんだ…
自分の置かれていた状況を…
あの時は白百合さん達の水着姿を思い浮かべて喜んでいたけど、よく考えたら他の化け物達も水着姿、しかも大量発生している。
僕はここに来るまでに何回も吐いた。
最初は景色を見たくて窓際にして貰ったけど、今は内側にいる。
「大丈夫、黒木くん…体調悪そうだね」
「黒木様、体調が悪いなら少し休まれた方が良いかも知れませんわ…良かったら膝を貸しますわよ」
僕は金剛さんに甘えて膝を借りた。
白百合さんが「あっ」と声を出していたが僕には余裕が無かった。
周りが全部、こっちを見ていたが、僕は目を瞑った、少しでもこの恐怖を忘れる為に、、
「黒木様、黒木様 着きましたわ」
「あっ、金剛さん…ごめんね…大変じゃ無かった?」
「大丈夫ですわ、、黒木様の寝顔を近くで見れましたので役得ですわよ」
「そうですよ、金剛さん羨ましすぎるよ」
「第一、第二彼女は良いよね、両隣だから、歩美も隣ならチャンスがあったのに」
「そういう意味では美優は反対側だから黒木君が見れる場所だから…ついていたのかな?」
「まぁ、でも膝枕していた、里香ちゃんの1人勝ちですね、帰りは私がしても良いんですよ?」
「お母さんズルい」
「母さん、私も横暴だと思うぞ」
「まぁ冗談ですよ? 」
良かった。
北條家専用のプライベートビーチだって…化け物と一緒じゃないんだ…
北條家万歳、金持ち万歳…そう言いたくなったがグッと堪える。
ちなみに東吾くんは来ていない。
理由は勿論解っている。
いつもの事だ。
だけど、東吾くんがいたら一緒に恋話とか出来たのに…まぁ好みは合わないけどね。
流石に夜は1人部屋なのかと考えたら少し寂しい。
うん、僕はしっかりと愛だけじゃなく友情にも飢えていたんだな。
まぁ、居ないものを幾ら考えても仕方が無い。
とりあえず、水着に着替えて下に行こう。
水着は貴子さんが用意してくれた。
この世界では男は胸を隠す。
だから、前の世界のスクール水着と競泳の水着に近いデザインだ。
勿論、下は間違っても見えない様に七分だ。
下に行くと、歓声が上がった。
だけど、此処まで隠れているなら、殆ど服と同じだと思う。
それより、困った事に胸を隠してない。
前世で言うと男の水着のデザインを着ている。
デザインはピンクや赤で可愛いのだが。
「どうしたの黒木くん、下なんか向いて」
白百合さんもトップレスだ。
この世界なら自由に見ていいんだけど…やっぱり無理だ。
僕は、目隠ししながら貴子さんに頼んで、皆んなに男物の水着を用意してもらった。
「黒木様のお願いだから着ましたけど、男の水着を着るのってなんだか背徳感がありますわね」
「ごめんね」
「仕方ありませんわ、黒木様がそんなに恥ずかしがりやなんて思いませんでしたわ…女の胸なんて幾らでも見ても良いし、触っても構いませんのに」
「黒木君ってもしかしたら、凄く良い家の出身なんじゃないかな? 確か旧家とかだとお互いに肌を晒さない家もあるんだよね、美優知っているよ」
「そうなのかも知れませんね、確かに温室栽培のように女性にやさしいですから」
「まぁ、いいじゃない、ここはプライベートビーチだから他にだれも居ないから良いんじゃない」
「まぁ、歩美もこれで黒木君とこれで遊べるなら、いいかなって」
「皆んな、ごめんね」
「大丈夫だよ…それだけ黒木くんが私を大切に思っているってことだよね」
「白百合さん…そこは私達ですわよ」
「そうだね、金剛さんごめんね」
プライベートビーチって凄いな、見渡す限り、本当に僕たち以外誰も居ない。
貴子さんに感謝だな。
最近になって思うんだ、今の状況が一番楽しいなって、僕には他の人は化け物にしか見えない。
あの後もインターネットをはじめ、色々な写真集も見たけど、全部の人が化け物にしか見えなかった。
だから、この人たちだけが僕の世界。
全てだと言っても良いのかも知れない。
探せば、まだ居るのかも知れないけど、これ程探して見つからないなら近くには居ないだろう。
最悪、居たとしても外国とかに居たら一生合わないかも知れない。
そう考えたら、この広い世界の中で僕にとって人間に見える人に会えたのは運が良かったとしか思えない。
しかもその全ての人がまるで物語の中から出て来たような綺麗で可愛い人ばかりだ。
正直、この人達とだけで暮らせたら凄く幸せだと思う。
そして、その願いは恐らく、貴子さんに頼めば叶ってしまうと思う。
だけど、僕は貰ってばかりじゃ嫌なんだ…沢山、沢山の愛情を貰っているから、返してあげたいんだ。
何時か愛情を返してあげれる方法が見つかったら…その時は…
「黒木くん、どうしたの考え事?」
「何でもないよ…白百合さん達の事を考えていた」
「私たちの事? どんな事かな?」
「今は内緒、それより白百合さん泳ごうか」
僕は白百合さんの手を取って皆んなの所へ歩き出した。
ゲーム作り
海で楽しく遊んだ後、僕は貴子さんに呼び出されていた。
貴子さんの寝間着はパジャマでは無く、薄いネグリジェだった。
うん、目のやり場に困る。
「黒木君、これから玲奈と美優も来るからちょっと待っててね」
「はい、所で何のお話しですか?」
「この間、やったゲームあるでしょう?」
「確か、「婚活女子、人生は奪った者勝ち、、奪っちまえばこっちの物」でしたっけ」
「そうそれなんだけど、実は欠点がこの間ので解かったから黒木君に協力して貰えないかなと思ってね」
「欠点ですか?」
「そう、欠点」
「それはなんだったんですか?」
「それはね…読み手の男がいない事よ」
「確かに、あれは男の読み手がいないと成立しませんね」
「それでね、黒木君…声優をやってくれない」
「声優ですか?」
「可能なら、写真付きでお願いしたいんだけど」
「それって声優って言うのかな? 出来たら写真無しの方が嬉しいんだけど 写真無しじゃ駄目ですか?」
「まぁ、それでも大丈夫だわ」
「なら、引き受けます」
「ありがとう、報酬は売り上げの5%でどうかな?」
「充分です、本当に良いんですか?そんなに貰って」
「えぇ、、勿論よ」
「それで、その仕事は何時からすればいいんですか?」
「今から大丈夫かな、協力者として玲奈と美優も呼んであるからもうすぐ来ると思うの」
「お母さん何か用? 美優これから寝ようと思っていたんだけど」
「だったら寝てても良いわよ…残念黒木君がいるのに…じゃぁ美優お休みなさい」
「美優全然眠くないよ、うん眠れなくて困っていたの」
「そう、それなら良かったわ」
「母さん、用って何?」
「少し、玲奈に手伝って貰いたい事があるんだけど」
「もう、夜中だよ、明日じゃダメなのか?」
「だったらいいわよ、他あたるから…せっかく黒木君が居るのにな」
「それを早く言ってよ…大丈夫さ…うん」
あれれ、何で2人が必要なのかな。
ただの録音なら僕1人で充分なハズなのに。
僕は貴子さん達、三人についていった。
そしてその先には、、収録室があった。
本当に北條って凄いな…何でもある。
「ここは、趣味で私達が歌を歌うスペースです、まぁカラオケ室みたいな物ですね」
「その割には凄い機材ですね、何だか高そうな機械も沢山ありますね」
「テレビ局に比べたら大した事ありませんわ」
普通はテレビ局と比べないよね、、流石、北條家としか言えない。
「ところで貴子さん、なんで玲奈さんと美優ちゃんが猿轡をされているんですか?」
「彼女達は黒木君の相手役兼モニターです」
「つまり、黒木君には彼女達に順番にカードの内容を読んでいって貰います」
「カードを読むだけで良いんですね」
「はい、ただそこに相手がいると思って話して下さい、その為に二人には来てもらいました」
「成程、その方が雰囲気が出ますね」
「ええ」
最も良いカードはかなり抜いているんですが、、
「だけど、猿轡は可愛そうな気がするんですが」
「これは収録です、余計な音が入ると不味いんです」
「それじゃ仕方ないかな」
僕は2人相手に交互になる様にカードを読んでいった。
「君の事を愛している、もう離さない」
「お前なんか生きている価値はない死んでくれるか?」
「僕は君無しじゃ生きていけない、ずっと傍に居てくれ」
「お前みたいな汚い女見たこと無い…消えろ」
玲奈さんや美優ちゃんは、赤くなったり、青くなったり凄く忙しい。
だけど…可愛いな…本当に好かれているのが解る。
だって、これはあくまでカードを読んでいるだけなのに、凄く嬉しそうな表情になったり、凄く悲しそうな表情になったりするんだから。
だから僕は、失恋カードの時には弱めに、恋愛カードの時には心を込めて読み上げた。
すると、どうだろう恋愛カードを読み上げる時の顔の表情が、まるで蕩けるような顔に二人ともなった。
そして残りのカードは2枚。
まずは玲奈さんのカードから
「世界で1番君を愛しています、、死ぬまで、いや、死んでからも一緒に居て下さい」
そして僕は玲奈さんの猿轡にキスをした。
うん、直接唇にはしてないから…恋人のキスではないよね、、、
次は美優ちゃんのカード
「いつまでも一緒に居ようね、君は僕の天使だから」
今度も同じく猿轡にキスした。
2人が喜んでくれると思ったんだけど、、、2人とも気絶してしまった。
「玲奈さん、美優ちゃん」
「大丈夫でしょう…2人とも気絶しただけだから」
あんなに感情が高ぶっているのにキスされたら、、気絶位すると思いますよ。
だけど、そんなに優しい事をする男性は、、多分貴方しかいないと思いますけどね。
「さぁ、残り4枚は私相手にお願いします」
「貴方が、世界で一番好きなんだ、、結婚して下さい」
「貴方の為に、おししいご飯毎日作るよ、、だから夫にしてくれる?」
「結婚してくれるよな? もう式場は予約したんだ、、俺に恥をかかせるな」
「結婚しようか?」
あれっこれって全部、結婚絡みのカードじゃない。
「母さん、結婚絡みのカードが出ないと思ったら、先に抜いていたんだね」
「お母さん…ずるい…美優もプロポーズされたかったのに」
「これは発案者の特権です…呼んであげたのは誰かしら? 独り占めも出来たのよ?」
「「そうですね」」
死んだ目で貴子さんを見ている。
うん、確かにずるい…と思う。
「黒木君…このデータを媒体に焼いてゲームにつけてランダムに聞こえるようにするからね、、小百合と話してすぐに商品化するから…印税楽しみにしてね」
「「これは女なら絶対に買うね」」
「そうかな」
声優って儲かるんだね…この世界限定
ゲームの音声作成の日から2か月がたった。
何気に、通帳の記入をしたら、300億の金額が通帳に振り込まれていた。
振り込み人を見て見たら…北條カンパニーと書いてある。
うん、貴子さんしか考えられない。
僕は、今日は学校を休んで、、北條邸に向かった。
いつ見ても凄いとしか思えない。
門が開いてそのまま進む園崎さんが僕を迎えてくれた。
いつ見ても綺麗なメイドさんだ。
「黒木様、奥様がお待ちです」
「来ると思っておりましたわ、、黒木君」
「酷いですよ、黒木さん、私とは全然会ってくれないのに貴子とは、何回も会っているなんて」
「すいません、小百合さんは問題ないんですが、メイドさんがちょっと」
「あの子達が粗相をしたのですか?」
「そうでは無いんですが、グイグイ来られると」
「まぁ…それは…だったら外でなら会ってくれますか?」
「そうですね、外でなら…良いですよ」
「本当ね、、約束したわよ」
「おい、小百合、いい加減にしてくれ、先に仕事の話しをしよう」
「そうですわね、すっかり忘れていましたわ」
「あの、この300億って金額はなんでしょうか?」
「これね、あのゲームが1個6000円で1億個売れたから6000億円、その5%だから300億、約束通りの金額のハズですよ」
「そんなに売れたんですか? あのゲーム」
「ええ、ボードゲームだけでなく、テレビゲームも含んで歴代ナンバー1売り上げ更新中。しかも、生産が間に合わないから1億なのよ、まだまだこれから伸びるわよ」
「凄いですね」
それしか言えない。
これだけあれば、最悪引き籠りライフが送れる。
「社会ブームにもなっているらしいわ、不登校の子に 失恋カードの言葉を聞かせたら、直ぐに学校に行ったらしいわよ」
「そうね、高校からも沢山受注が来て、成績の良いクラスは 恋愛カードのCD版を流して、成績の悪いクラスに失恋カードのCDを掛けたら…顕著に差が出たらしいわ」
「そうなのよ、ボードよりも黒木君の声の入っているCDが凄く人気が出ているみたいね?」
「「次は彼氏が優しくて眠れない」というCDと「彼氏が冷たくて死にたくなる」その辺りを企画しているんだけど、どうかな?」
「もし、企画が決まったら言って下さい、出来るだけ協力しますから」
二時間で300億円、時給150億円…異常すぎる。
良いのかな、これ。
流石に、ニートは嫌だから、声優というのも良いのかも知れない。
妹デー
僕は今日遊園地に来ている。
その理由は数日前に遡る。
学校で廊下を歩いている時に歩美ちゃんにあった。
「黒木君はお兄ちゃんしてないと思います」
行きなり言われてしまった。
確かに、忙しさから余り構ってなかった…と思う。
「最初は、歩美にだけ構ってくれないのかと思いましたが、美優ちゃんや奈々子ちゃんにも構ってないのが解りました」
「そ、そうだね」
「だから、妹代表として今週の日曜日は妹デーにさせて頂きました」
「妹デーって何」
「黒木君はお兄ちゃんになりたいんですよね? それなのに妹デーを知らないんですか?」
これは真っ赤な嘘だ。
この世界に妹を可愛がる男なんて少数派だ。
「ごめんね、知らない」
「妹デーとは妹とデートする日です。」
「そ、そうなんだ」
「だから今週の日曜日は私達、妹三人とデートして下さい」
「解かったけど、、何処に行くの?」
「ネズミ-ランドに行きましょう」
「解かりました」
「あれっ嬉しくないんですか?」
「嬉しいです」
そんな理由で僕は来たくも無い遊園地にいる。
夢と希望があふれるネズミ-ランド。
だけど、僕には恐怖と絶望溢れるネズミ-ランド。
だってさぁ…周りは全部化け物なんだもの。
まぁ可愛い三人の妹が傍に居るのだけが唯一の救いだ。
そんな恐怖溢れるネズミ-ランドだけど、今日は美優ちゃんが居るから頑張ろうと思う。
引き籠りの美優ちゃんが部屋からでてきたんだから、うん我慢しよう。
だが、黒木は知らない。
この世界でデートなんかして貰える女性は余りに少ない。
もし、デートの誘いなんて来たら、例え目の前で親が死にかけていても無視してデートに直行するだろう。
だが、それ程の恐怖は黒木には訪れなかった。
そう、黒木には女神貴子と天使美優がついていた。
引き籠りの美優は他の人に会いたくなかった。
いっそうの事、ネズミ-ランドを買ってしまおうか、そう考えてが少しお金が足りない。
というより、買うにしても、日にちが足りないはずだ…
そこで、母、貴子に相談した。 すると
「ネズミ-ランド…あそこは私の持ち物よ…いいわ、黒木君の為だもの1日貸し切りにしてあげる」
私の為じゃなく…黒木君の為なのは…釈然としなかったが、そんなこんなで無事貸し切りとなった。
だが、それでも恐怖はあった。
着ぐるみを着たキャラクターのネズ君やネズミちゃんは良いにだが…姫系や王子様系は…この世界の綺麗な人間…黒木には最低、最悪の化け物だ。
「今日は一日黒木君をお兄ちゃんと呼びます」
「「おー」」
歩美ちゃんの掛け声と共に妹デーがスタートした。
「何から乗ろうか?」
「お兄ちゃんにお任せいたします」
流石、奈々子ちゃんテキパキしているな。
「じゃぁ観覧車とかどうかな?」
「観覧車、、良いね 乗ろう、乗りょう」
美優ちゃんは噛んだな。
「じゃぁ行こうか?」
観覧車の前に来た、三人は乗る席順でじゃんけんをしている。
ようやく決まったようで一緒に乗り込んだ。
右前に 歩美ちゃん
左前に 奈々子ちゃん
隣が美優ちゃんだった。
「つい反射で隣を選んじゃったけど、隣ってお兄ちゃんの顔も見えないし 話づらいしハズレでした」
「歩美はね前だとお兄ちゃんの顔を見ながら話せるから満足だよ」
「そう考えたら、やっぱり前が、、アタリだね、、そのお兄ちゃん」
歩美ちゃんは本当にすごいな、本当に妹みたいだ。
他の2人は少しテレがでているのかな。
まぁ、元ボッチの僕には何も言えない…何しろさっきから三人に見惚れてばかりだから。
こんな凄い体験はここの世界に来なければ出来なかったと思う。
これ程の美少女三人に囲まれるなんてありえない話だ。
「どうしたのお兄ちゃん、急に黙り込んで歩美、心配しちゃうよ」
「いや、凄く幸せだなと思ってさ」
「それは、、歩美と一緒だと凄く幸せだという、、」
「ちょっと歩美ちゃん待って…そこは皆んなと一緒にだと美優は思うよ」
「うん、奈々子もそう思う…というか自分の世界に持って行こうとしないで下さい」
「そこはやっぱり、皆んなかな…勿論、歩美ちゃんも美優ちゃんも、奈々子ちゃんも皆んなと一緒に居いると、うん凄く楽しいし…幸せだね」
「そう、お兄ちゃんは幸せなんだね、美優はそんなお兄ちゃんを見ている時が一番幸せだよ」
美優ちゃんが僕の方にしだれかかってきた。
「隣だとそんな事ができたんだ」
「流石に前ではできないよ…他人の幸せぶりを見るのは奈々子的にはちょと辛いかも」
そう言えば奈々子ちゃんは顔に凄い怪我をしているんだったな。
だけど、僕の目には凄く可愛く見える。
痛くないのかな。
「そう言えば、奈々子ちゃん顔とかは痛くないの?」
「痛くないと言えば嘘になります…だけど我慢できない位痛い訳じゃありません」
「そうなんだ、痛いんだね」
「だけどこの顔にならなければ、お兄ちゃんと仲良くなれなかったし、皆んなとも仲間になれなかったと思います。そう考えたら、この顔に感謝です」
強いな、僕には美少女に見えるけど、顔が崩れる位の怪我なんだよな。
「奈々子ちゃん、、」
僕は奈々子ちゃんの頬に触れた。
「お兄ちゃん」
「うん、痛いの痛いの飛んでいけー」
「おおおお兄ちゃん、、奈々子、、もう痛く無くなっちゃったよ…うん」
そんな事無いのに、本当に強いね、、多分僕だったら耐えられないと思う。
「そう、そんな奈々子ちゃんには…これだ」
僕は奈々子ちゃんの頭を撫でた。
「お兄ちゃんありがとう」
「あの、余り2人の世界を作らないでくれると歩美は嬉しいかな」
「美優はとっても寂しいなぁ」
2人の顔は笑顔だけど、笑ってない。
そんな感じがした。
次に何に乗るのか三人が揉めていた。
「美優はジェットコースターがいい」
「歩美はお化け屋敷がいいな」
「奈々子は…」
「「奈々子ちゃんの意見は却下です、さっきいい思いしたんだから今回は飛ばしです」」
「ちょっと酷いと思いませんか お兄ちゃん」
「うん、時間は沢山あるんだから、全部回れるからさぁ、順番だけの差じゃない?」
「それなら、回る順番をお兄ちゃんが決めて下さい」
「うん、美優ちゃんグットアイデアだよ、それなら歩美は文句ないよ」
「それが公平だと思います」
「僕が決めて良いの? じゃぁお化け屋敷で」
「さすが、お兄ちゃん、歩美と趣味が合うなんて、流石だよ」
「「たまたまです」」
実は今日の遊園地で一番の楽しみはお化け屋敷だった。
もしかしたら、化け物じゃなく、美少女に見える人形もあるんじゃないか?
ひそかに、期待していた。
甘かった。
殆どが、ましな化け物だった。
だけど、現実社会でこれとは比べ物にならない者を見て生活している僕には、うん全然怖くない。
むしろ、この世界の人混みの方が数百倍怖い。
だから、僕は余裕で歩いていた。
だけど、三人は怖いのか僕の手にしがみつきながら歩いていた。
無理やり三人でしがみ付いているので、実に歩きにくい。
色々な化け物の人形を見ながら歩いていると、お化け屋敷のコースから外れた位置に1体の人形があった。
「ねぇ、あれ何で、あんな見ずらい所に人形があるんだろう」
「本当だね、確かにあそこじゃ見えないよね、、でもわざわざ見るほどの事ないんじゃない?」
だけど、僕は何故かその人形から目が離せなかった。
「お兄ちゃん、そんなに気になるなら中に入って見てきてもいいよ…ここの遊園地はお母さんのだから、万が一壊しても文句は言われないから大丈夫だよ」
「うん、じゃぁお言葉に甘えて見てくるね」
僕は柵を越えてその人形を見に行った。
1メートル位のすごく可愛い人形だった。
元の世界で言うなら、フランス人形と美少女フィギュアを合わせたような人形だった。
もし、この人形が実物の人間なら…凄い美少女だ。
僕はこの人形が欲しくてたまらなくなった。
「あのさぁ、美優ちゃんこの人形が気にいっちゃんたんだけど譲って貰えないかな」
「お兄ちゃん、その人形が気に入ったの? 多分お母さんに言えば貰えると思うけど…美優にも見せてくれる」
「…本当にその人形がお兄ちゃん欲しいの?」
この人形、、凄く気持ち悪い。
目の大きさもおかしいし、これ程気持ち悪い人形は無いと思う。
この人形に比べたら、化け物と言われる私の方が遙かに可愛い…と思う。
「それが気になっていた人形…歩美にも見せて」
これ程気持ち悪い人形見た事無いよ…こんなの子供が見たら、引きつけおこすよ。
「奈々子も見たいです」
うわぁこれは無い、、凄く不気味な人形…見なければ良かった。
「ねぇ、お兄ちゃん、本当にそれが欲しいの?」
「うん」
「じゃぁ、美優がそれ、お母さんから買ってあげるよ….じゃぁお母さんに電話するね」
「もしもし、お母さん、黒木君がお化け屋敷にあった人形が気に入って、欲しいらしいんだけど譲ってくれない?」
「それなら、無料でいいわよ」
「あの、美優が買ってプレゼントしたいから、幾らか言って」
「無料じゃなきゃ譲ってあげないわ…私がプレゼントするんだから」
「お母さんのケチ」
「もしかして、美優ちゃん断られたの?」
「違うんです…あの、無料で良いそうです」
「そうなの? お礼を言いたいから電話変わってもらっても良い?」
「はい」
美優は嫌そうに電話を渡した。
「すいません、無理言って、本当に気に入ったものですから」
「良いのよ、そこに在るものは全部私のだから、欲しいなら何でもあげるわよ? 何だったらネズミ-の着ぐるみだってあげるわよ」
「これだけで大丈夫です。」
「そう、遠慮しなくて良いのに、欲しい物があったら何でも言ってね」
「そんな悪いですよ」
「悪くないわ、、本当に言ってね」
この世界の女は常に男に貢いでいる。
デート、食事、ドライブ、男と遊ぶためには貢ぐしかないのだ。
例えば、男を食事に誘うなら、高級レストランに連れて行き、貴金属、もしくはブランド位のプレゼントは当たり前、場合によってはお金で
50万位渡すのが一般的だ。
「美優ちゃん、今抜け駆けしてお兄ちゃんに貢ごうとしたよね?」
「そうですよ、抜け駆けは厳禁ですよ? 美優様」
「ゴメン謝るよ…だから、奈々子ちゃん…敬語は辞めて…真面目にへこむから」
「うん、反省したなら言わないよ」
「うん、歩美も許してあげる」
「お兄ちゃん、人形は帰りに持って帰るとして、次は何に乗ろうか?」
「そうだね、じゃぁ美優ちゃんが乗りたがっていたジェットコースターに乗ろうか?」
「うん」
僕たちは今、コーヒーカップに乗っている。
そう、乗れなかったんだ、、ジェットコースター、よく考えたら三人とも妹キャラ、その中で歩美ちゃんと美優ちゃんは…俗にいうロリだそう身長制限に見事に引っかった。
コーヒーカップから降りた。
「そろそろお昼だね、お腹すかない?」
「そうだね、歩美はお腹がすいたかな、美優ちゃんと奈々子ちゃんはどう」
「美優も少しお腹すいた」
「私もお腹がすきました」
「じゃぁ何か食べに行こうか?」
ここネズミーランドはお弁当の持ち込み禁止だ。
だから今日は作って来なかった。
「お兄ちゃん、お弁当は?」
「此処ってインターネットで見たら持ち込み禁止って書いてあったよ」
「忘れていました、お母さんに言って持ち込み可にして貰えばよかった。」
お弁当を持ち込めなかったから、レストランに向かった。
ご飯の美味しさよりもその雰囲気が良かった。
テーブルに座って食べるのでいつものあーんは無し。
美優ちゃんは始終落ち込んでいた。
「あぁぁ お母さんに何で私は頼まなかったのでしょうか?」
「仕方ないよ、美優ちゃん、そこまでは考えつかないよ」
「そうだね、歩美もそう思う」
確かに隣にはあーんは出来るけど、それだと二人が可哀想だ。
だから、僕は昔バカップルがやってて羨ましいと思った事を実行する事にした。
僕はウェイトレスさんにストローを4本頼んだ。
そのストローをトロピカルドリンクに刺した。
「さぁ、皆んな飲もうよ」
「「「….」」」
あれっ失敗しちゃったのかな。
「お兄ちゃん、これどうやって飲むのストローが4本刺さっているけど」
そうか、これの意味が解らないんだ。
「これは一緒に飲むんだよ、皆んなほら加えて…」
「うそ、、そんな風に飲んで良いの、奈々子…こんなの知らない」
「えっお兄ちゃんと一緒に飲むんだ…これ…ある意味キスと同じだよね、だって歩美と同じ物を同時に飲むんだから」
「こんなの本でも読んだこと無い」
うん、笑顔になってくれて良かった。
しかし、肝心の食事はしなくなっちゃったな。
さっきからストローから口をはなすのは僕だけなんだけど、しかも減るのが嫌なのか全然ジュースが減らない。
幾らなんでも必死過ぎる。
仕方ない…僕は一旦、口に入ったジュースをそのまま戻した。
「嘘、今、お兄ちゃんの唾液が入ったジュースが戻ったよね…飲まなきゃ」
「じゅーっ、このジュースは奈々子が飲むんだよ」
「ずっずー、急いで飲まないと」
怖い、怖すぎる、なんで、そんな必死にジュースを飲むんだろう?
煽ったのは僕だけど…あっという間にジュースは無くなった。
黒木は知らなかった。
この世界で男性の唾は物凄い価値がある事を。
怖い事に、この世界の男の全てに価値がある。
社会問題になって潰れてしまったが、以前はそういう物を販売しているお店があった。
唾や汗ですら、価値があり美少年ともなれば、唾1CC 汗1CC が10万円以上で取引される。
そういう理由から、男の全てに売れない物が無いと言われていた。
だが、そのせいで、男性を襲って無理やり汗を拭く変質者や、男性の服の盗難が相次ぎ今では、公には無くなった。
食事が終わり、その後は何となく乗り物に乗るより、食べ歩きが中心になった。
全員が、未成年なので貴子が気を利かして、ナイトパレードを夕方から行うように手配されていた。
物凄く豪華なパレードだがなんだか物悲しく感じる。
このパレードが終わると今日は彼女達とはお別れ。
「贅沢になったのかな、この後独りになるのが寂しく感じる」
以前では考えられない事だ。
「どうしたのお兄ちゃん?」
「いや、この花火が終わったらお別れだと思うと少し寂しくてね」
「だったら、歩美と結婚したら良いよ…そうすれば朝から晩まで一緒だよ」
「それを言うなら、私と結婚すればお姉ちゃんも一緒だからもっと楽しいよ」
「そんな事を言うなら、美優と一緒なら家族が全部手に入ります…一番美味しいと思います」
「そうだね、何時かはそうなれたら、、うん幸せだね」
こうして、楽しい妹デーは終わりを告げた。
人形
私はナンシーちゃん、呪いの人形をしているの。
だけど、皆んなが意地悪するから仕返ししているだけなのだから悪くないと思う。
正直、他の人形が羨ましいわ。
可愛い子供に抱っこされたり、頭を撫でて貰ったり、そんな事私には無かった。
私は、ある有名な人形作家が作った人形なのだけど、失敗作なのか私を手に取る人皆んなが「醜い」「化け物だ」そう言って貶す。
私だって好きで醜くなった訳ではない。
私を作った人形作家が悪いんだ。
私を作った人形作家は女性の醜い部分を表現する作品として私を作った。
醜い部分、全部を表現した私は醜い。
しかも、ご丁寧に昔に居たとされる悪神をモチーフにしたそうだ。
うん、そんな人形売れる訳ないよ。
結局、売れ残り続けた私は激安セールとして売りに出された。
15万円の売値が1000円まで下がったころ、ようやく買い手がついた。
だが、この買ってくれた女性は悪魔だった。
悪魔と言っても本当の悪魔じゃないよ?
私を憂さ晴らしにしただけ。
機嫌が悪ければ私を怒鳴りつけ投げつけた。
私の唯一の取り得の綺麗なドレスははぎ取られて他の人形に着せられた。
私は裸のままいつも踏まれたり、投げ飛ばされたり…うん、人形じゃ無かったら殺している。
動けないのを良い事に落書きをされたり、手足をもがれたりもした。
ただ、この人は修復も出来るのか壊した私を治してまた壊すんだ。
私が幾ら人形で痛くはないとは言え気分は良くない。
私はこの女を呪った。
だけど、ただの人形に呪う力はなかった。
散々、私を弄んだ女は私を自分の男にプレゼントした。
これで幸せに成れるのかな、そう思った私が馬鹿だった。
この男は美少女フィギュアのコレクターだった。
私は…この男の美少女フィギュアの敵役にされた。
その為、手足を切断されたり、くっつけたりされた。
ジオラマと言うのかな、他の人形の女の子に見下ろされるようなポーズをさせられた。
凄くみじめだった。
私はこの男を呪った。
すると火事が起きた。
残念な事にこの男を殺すような火事ではなくただのボヤだった。
だけど、この男の大事な他の人形が燃えていた。
…いい気味だ。
綺麗な顔の人形が私より醜い顔に溶けた
….本当にいい気味だ。
だけど、私は他の人形と一緒に捨てられた。
ご丁寧に無事だったのに、火で溶かされて…
此奴いわく
「大事な人形が燃えたのに、一番醜い私が燃えなかったのがムカつく」
だそうだ。
この時から、私は呪いの人形になったんだと思う。
溶かされた私の体は元通りにいつの間にか復元した。
私はこの男の仕打ちが頭に来たので再度、この男の家を訪れた。
男は困惑して取り乱した。
そして、私をゴミとして捨てた。
凄くムカついた。
だから、私はまた、そいつの家に訪れた。
今度は外に埋められた。
更にムカついた。
今度もそいつの家にいった。
次は何故かお寺に持っていかれた。
その寺の坊主は何かを唱えながら、私を火にくべた。
だが、私の体はまたしても復活した。
そして、再度そいつの所へいった。
そいつは
「助けてくれ」と叫びながら取り乱して転んだ。
打ち所が悪かったのだろうか?
頭から血が出ていた、、恐らく死んだんだと思う。
だけど、私みたいに焼かれたり、切断されて無いんだから幸せだよね?
それに私はただ、貴方の前に現れただけなんだから死んだのは貴方の自業自得だよ。
次に私を焼いた坊主の寺を訪れた。
何もしてない私を焼いたんだから…恨みを込めて訪れた。
その度に、何回も火にくべられてたけど、しつこく付きまとったら、最後には気がふれたようだった。
「人形が…人形が」とうわごとのように喚いていた。
人を焼いたくせに良いご身分だ。
私はただ付きまとっただけ、それ以上何もしてないし、何の能力もない。
それなのに勝手に気がふれた…私は何も関係ない。
そして、私は一番最初の女の家に訪れた。
この女には赤ん坊が出来ていた。
だから、私はこの赤ん坊の傍に常にいた。
最初、この女は私をゴミ箱に突っ込んだ。
だが、私はゴミ箱から抜け出して再度ベビーベットに潜り込んだ。
何回もしつこく行っていると、この女が喚きだした。
そして、
「私が貴方にした事は悪かったと思う…たしかに切られたり、投げられたら呪うよね…だけど、それは私のした事だから、赤ちゃんは関係ないでしょう? これから私は死ぬから…この子には付きまとわないで…もし付きまとったら…幽霊になってあんたを殺してやる」
私は何も言ってないのに、、勝手に自殺した。
私は別に死んで欲しかった訳ではない。
ただ、何で私を虐めたのかその理由が聞きたかっただけだ。
その後も子供に拾われたり、したが、同じ様に私を虐める。
子供は残酷だ…私を花火で焼いたり…爆竹で爆発させて遊んだ。
自分は散々私を弄んだくせに…ただ訪問しただけの私を見て、勝手に泣き言をいう。
何回か訪れたけどただ、泣き喚くだけ…また死なれても困るのでもう行くのはやめよう。
だが、その後も私は何故か拾われて同じような思いをし続けた。
そして、嫌われ続けた私は本当の意味で 呪いの人形になった。
だが、こんな事を繰り返してもむなしいだけだ。
私は…もう疲れた、そんな時にお化け屋敷をみつけた。
ここなら静かに眠れるだろう。
他にも私程ではないが醜い人形も多い。
ここがいい。
静かに眠っている私に男が近づいてきた。
もう放って置いて欲しかった。
だが、この男は私を持ち出した。
また、私の呪われた日々の始まりか…どうせこの男も私を嫌って虐めるんだ。
静かに眠っていたのに起こしやがって…呪ってやるからね。
そして私はこの男の家にいる。
ついてそうそうこの男は私の服を脱がした。そしてその服をゴミ箱に捨てた。
せっかく、他の人形から奪って手に入れたのにまた裸にするなんて酷い、絶対に呪ってやる。
「せっかく可愛いのにボロボロだね」
何をいっているのかしら?聞きなれない言葉だわ。
「ようし、お風呂で洗おう…人形の髪ってリンスで洗えば良いんだっけ」
この男は何をしようとしているのかしら、水に入れられる虐めは初めてね。
「手足は…外れるんだな」
やっぱりバラバラにされた…虐めるんだ。
「何も解らないからボディーシャンプーで洗えば良いか」
何かな、この泡みたいなやつ、まさか私を溶かそうとしているのかしら?
体がおかしい。
「うん、後はお湯で流して」
おかしいな、これ何だか気持ちいいわね
「綺麗に拭いて」
これ、もしかして虐めているんじゃ無いんじゃないかな。
「ドライヤーの冷風で乾かそう」
うん、これ気持ちいいわね。
「よし、綺麗になった、うんやっぱりこの人形…綺麗だな」
嘘、私を見て綺麗っていったの…じゃぁさっきのは聞き間違いじゃないの。
「服は無いから、仕方ない今日は僕の寝間着で我慢してね、明日何か服を買ってくるから」
これでも充分だよ? 私に服をくれた人なんか居なかったんだからさぁ
あれっ 今まで見て無かったけど、この人、凄い美形なんじゃないかな。
「しかし、この人形、見れば見るほど美人だ…多分もうこんなの手に入らない…大切にしなきゃ」
私は貴方にとって美人なの?
本当に大切にしてくれるの?
「ふぅ、手入れしていたら遅くなっちゃったな…お休み」
うん、お休み。
流石に一緒には寝てくれないかぁー…残念。
しかし、この寝顔、、可愛いな…
毛布はいじゃ駄目だよ…風邪ひいちゃうよ。
私は、動けない体でどうにか毛布を掴んだ、そしてそのまま落ちた。
うん、これでちゃんと毛布が掛かっている。
呪いの人形なんて言われているけど、今の私は自由に動く事なんかできない。
もしかして、恨みが薄れたからかな。
上には上がれない、このままいるしかないな。
私は倒れたままで窓をみた。
お月様が凄く綺麗だった。
恋する人形
彼は落ちている私を見つけると優しく元の場所に戻した。
凄く優しい。
彼は朝食を食べると出て行ってしまった。
もし、私が喋れるのなら色々話せるのに…残念。
これから、彼が居ない寂しい時間を過ごさなきゃならない。
以前は、人間が居ない方が嬉しかった。
だって、人間は私に酷い事しかしないからね。
だけど、彼が居なくなると何でこんなに不安になるのかな…解らない。
私にとって凄く長い時間がたった時、彼は帰ってきた。
手には紙袋を持っている。
私は期待を込めて紙袋を見ていた。
期待の通り、紙袋の中身は洋服だった。
凄く可愛い服、ピンクでキラキラした、うんアイドルみたい。
彼は私の服を脱がすと下着をつけてくれた。
ちょっと恥ずかしいけど、嬉しい。
下着なんて身に着けたのはどの位ぶりだろうか、うん最初の時だけだ。
次に靴下、そしてあのキラキラした洋服を着せてくれた。
うん、凄く嬉しいな。
「しかし、この人形、こうして手入れして衣装を着せたら…うん凄く可愛くなった」
そんなに言われると…照れるよ。
黒木は前世では生きていくのが精一杯だった。
秋葉原の漫画喫茶で生活している時に高級フィギュアを見て欲しくなったことがある。
だが、そのお財布に優しくない金額に諦めた。
こっちに来て金銭に余裕が出来たが、何処にも可愛いフィギュアは売ってない。
黒木から見たら…怪人に見える人形しかなかった。
ポスターはアニメもアイドルもただの化け物の絵でしかない。
そんな黒木にとってこの人形は唯一の綺麗な女の子の人形だ。
大切に思うのも無理はないだろう。
洋服は一着だけでなかった。
可愛い物から大人っぽい物まで沢山あった。
なんだかファッションモデルにでもなったみたい。
今迄、服を着ている人形を見て羨ましかったけど…こんなに沢山の服を持っている人形なんて見た事がないよ。
うん、凄く嬉しい。
呪いの人形だって…私だって、女の子の人形なんだ…大切にされたら嬉しいに決まっている。
今迄の不幸が嘘みたい。
「名前とかつけてあげた方が良いのかな? だけど、どんな名前が似合いそうかな?」
私の名前はナンシーだけど、好きな名前を付けて良いよ?
可愛い名前つけてね?
「そうだ、君は僕の好きだったアニメのヒロインそっくりだから…ゼロにしよう」
ゼロかぁー好きだった名前ならいいや、うん今日から私はゼロだ。
私ね、多分貴方の事が凄く大好き。
人間だったら沢山おしゃべりできるのにな…残念、…いつか喋れるようになれるのかな。
人形だから無理だわね。
だから、せめて祈る事にするね。
貴方がいつまでも幸せでありますようにって。
私が呪ったら不幸が起きたなら、幸せを願ったら幸せに成れるかも知れないでしょう。
だから、いつも、いつも、貴方の幸せを祈っている。
だって、私、こんなに幸せにして貰ったんだから。
翔がゼロを見ると微笑んでるように見えた。
「まさかね…」
今日もゼロは幸せそうに、翔を見つめている。
翔の幸せを祈りながら、
人形にはそれしか出来ないから。
そんなゼロを翔は嬉しそうに眺めていた。
母に感謝する日
もう私は駄目かも知れない。
気が付くと、凄い事になっていた。
沢山のカツラに洋服、、そして家具まである。
もっと小さい人形ならともかく、私の大きさは1メートル位はある。
その人形に家具は流石に無いと思う。
うん、こんなに大切にされている人形は、絶対に他にはないよ。
感謝の気持ちが伝えられないのが辛い。
だから、私は今日も翔の幸せを精一杯祈る。
それだけしか出来る事はないから。
僕は気になった事があったので、朝からインターネットをしていた。
何を調べているのかと言うとイベントについてだ。
この世界に来てから結構経つのに個人的なイベントが少なすぎる。
誕生日、バレンタイン、クリスマス、何も聞いた事が無い。
だから、この世界にそういったイベントがあるのか、無いのか調べてみた。
本当ですか?……殆どのイベントが無かった
誕生日は、男の場合は祝うが女の場合は祝わない。
嫌な言い方だが、貴重な男が生れれば祝う、女はハズレだから祝わない。
一番酷い場合だとお腹の子が女だったら中絶までしてしまう女がいるらしい。
うん、祝わないよね。
バレンタインは、、男女比がこれじゃ実現しないか。
クリスマスは一応あるけど、家族で豪華な食事をするだけ。
正月は…うん、普通にあった。
つまり、男女のイベントはほぼ無かった。
勿論、妹デーも無かった。
だけど、これはこれからも行っていこうと思う。
だって楽しいから…
結局、僕はこの日学校を休んでしまった。
まずは、母の日から考えようと思う。
姉の日や恋人の日を考えるより、実際に前の世界にはあったものだから簡単だ。
それに、僕は小さい頃に両親を失ったから、親と過ごした記憶が僅かしかない。
だけど、貧乏ながら僕を大切にしてくれた記憶はある。
本当の両親は死んでしまった。
だから、その分の親孝行をしたいのだ。
勿論、相手は貴子さんと小百合さん。
他の親にはしないのか、そう言うかもしれないけど…化け物にしか見えないから無理だ。
だけど、贈り物位はした方が良いのかな?…うん、逢わないで良いんだから贈り物位はしよう。
色々考えて
白百合さんのお母さん、東条さんのお母さん、歩美ちゃんのお母さんには高級チョコを送っておいた。
簡単に、いつも娘さんにはお世話になっています。 そんなメッセージを添えて。
白百合さんのお母さんには送りたくなかったが…白百合さんの立場を考えて送っておいた。
さて、これからが本命だ。
この世界に来てから出会った、本当のお母さんの様な人へのプレゼントだ。
まず僕は、宝石商に来ている。
正直、お金で買えるものなら彼女達は何でも買えるだろう。
だから、一点もので彼女達に似合う物を選ぼうと思う。
貴子さんは赤い宝石が似合いそうだ、ゴージャスだから…ルビーの手作りの物を選んだ。
小百合さんは青い宝石が似合いそうだ、うん、あの貴族っぽい雰囲気だからサファイアにした。
両方共、300万円したが、うん大したことない。
お金に麻痺していると思うけど、あれ程の収入を弾んでくれた人にケチりたくは無かった。
「あの、その宝石…もしかして女性へのプレゼントですか? 」
「はい、だからラッピングして下さい」
普通に会話しただけなのに、店じゅうの注目を集めてしまう。
この世界では男は滅多にプレゼントなんかしない。
だから羨ましそうな目で僕を見ていた。
その後に花屋さんに行って、カーネーションに似た花束を買った。
これで準備はOK。
食事は、食材を用意してむこうで手作りの方が良いだろう。
さぁ後は約束するだけだ。
「もしもし、貴子さん、今日お時間とれますか?」
「黒木君…何かお話があるのかしら前にも言った通り、例え総理大臣との会合もキャンセルするから大丈夫よ」
「それなら、これからお伺いさせて頂きます。あとすいません、小百合さんも呼んで貰えますか?」
「なんだ、私1人じゃないのね、呼んでおくわよ」
「有難うございます」
僕はそのまま北條邸に向かった。
メイドさん達に厨房を借りて料理を作る。
チキンにケーキ、僕にしては高級な食事だ、北條家の食事には及ばないけど…
まぁそこは愛情という事で勘弁して貰おう。
園崎さん達も羨ましそうに見ている。
うん、主役は2人だけど、食事は皆んなの分もあるよ。
今日は白金さんは休みらしい、だから古木さんと園崎さんに配膳は手伝って貰った。
先に、玲奈さんと美優ちゃんを呼んできてもらう。
「黒木くん、これはもしかして黒木君の手作りなの」
「お兄ちゃんの手作り…久しぶりだぁ…」
「だけど、まだ食べないでね、今日の主役は貴子さんと小百合さんだから」
「えーそれじゃぁこれ、お母さんの為の料理なの…美優の為じゃないんだ」
「それでも手作りには違いないよ…うん」
「ごめんね、だけど、貴子さんにも小百合さんにもお世話になりっぱなしだから恩返ししたくてね」
「「そ、そうなの」」
暫くして、園崎さんと古木さんが二人を連れてきてくれた。
「これは、何、黒木君の手作りですよね、どうかしたの? ん、何か、頼み事?」
「そんな事しなくても、私達に出来る事なら何でもしますのに…」
この世界で男の手助けをするのは女の甲斐性だ。
ましてそれが美少年のお願いなら、大概の女なら喜んできくだろう。
「今日は違います、いつも二人にお世話になっているので…」
あれ、どうしよう?
勢いで行動しちゃったけど、この世界に母の日は無いんだった。
どう、説明しようか。
「あの、僕は…両親が居ません…だから親孝行をしたくても相手が居ません」
「そうでしたね、確か、黒木君は、その保護施設にいるのでしたね」
「そうでした、里香が言ってましたね」
「はい、だから、その親孝行の真似事をさせて頂きたいんです」
「「…..」」
2人は頭が固まってしまった。
父親に感謝する子供がいても、母親に感謝する子供はいない。
私の所も小百合の所も子供とは仲良い方だけど、こんな事をされた記憶はない。
「「あの私達は一体何をすれば良いのでしょうか?」」
「これは僕の親孝行です、ただ楽しんでくれれば良いだけです」
「「そ、そうですのね」」
まずは、これを受け取って下さい。
「この花束は私に?」
「綺麗な花束…ありがとう黒木君」
男から花束を貰える女性はどの位この世界にいるのか?
恐らく、50人に1人位しかいない、人によっては死ぬまで一度も貰わない女性もいる。
「あっ、花束、お母さんだけずるい、美優にはないの」
「私も…貰えたらうれしいんだが」
「今日は黒木君の親孝行の催しだから仕方ないでしょう? 私たちが主役なんだから、大体、実の娘の貴方達は、私を労わってくれた事があったかしらね」
「そうですわよ、今日の主人公は私と貴子なのだから仕方ないわね…大体、美優ちゃんは妹デーとか言ってこの間、遊んだんじゃなくて?」
「うぐっ」
「その話も聞いてなんいんだが…」
「玲奈さんには今度何か埋め合わせしますから…すいません」
「わかった、期待して待っている」
次に僕は宝石を取り出した。
ただ、そのまま渡すのよりつけてあげた方が喜ぶだろう。
僕は用意した宝石を二人につけてあげた。
「黒木君…このこのこのネックレス…まさか」
「これ、これ…プレゼントなの…なの」
「はい、いつも二人にはお世話になっているから、プレゼントです。いつも沢山良くしてくれるから、せめてものお返しです」
「お兄ちゃん幾らなんでもおかしすぎるよ、何でお母さんにそんな物プレゼントするの」
「どうして、そんなプレゼントをするの、実の息子や娘でもしないのに」
自分の意見をはっきり言った方が良さそうだ。
「逆に2人はなんで、してあげないの?」
「お兄ちゃん、普通は母親にプレゼントなんてしないよ」
「そうだよ」
「多分2人は当たり前すぎて解らないんだよ、母親の大切さが…」
「だけど、この子たちの言う通り、母親にそんなに感謝している子はいないわよ」
「貴子さん、僕の母親はもうこの世に居ません、小さい頃の事だから記憶も薄っすらですが、だけど凄く優しかった記憶はあります」
そりゃ男の子なんだから、どんな母親でも優しいと思うわ。
「優しいお母さんだったのね」
「はい、正直言って、父親と違って母親って凄く大変だと思うんですよ、 痛い思いして子供を産んで、その後も一生懸命に育ててくれて、困った事に子供がなれば、体を張って守ってあげて…本来なら一番感謝しなくてはいけない…そんな存在だと僕は思うんです」
貴子も小百合も人数の違いはあるが、子育ての経験がある。
確かに大変だった。
「確かに子育ては大変だったわね、里香は小さい頃はお転婆だったから大変だったわ」
「私は白金に任せていたけど、それでも美優が夜泣きした時には良くあやしたわね」
「僕にはその感謝を伝える相手がいません、だから…僕に母親のように優しくしてくれる二人に感謝したいのです」
「その…私は子供が三人も居るけど…そんなに感謝された事がないわ…だからどう答えれば良いのか解らないけど…ありがとう」
「私だって同じですわよ、里香だってこんな事してくれませんもの…本当にありがとうございます…だけど、私、男性から宝石なんて貰った事はありませんわ…そうだ、いっそうの事私くしを妻になさいませんか? そうしたら寂しい思いをしなくて良くなりますわ」
「小百合、何をいっているのかな、だったら私が立候補するわよ」
「あのさぁ、お母さんも小百合おばさんも何を言っているの? お兄ちゃん困っているじゃない?歳を考えた方がいいんじゃないかな?」
「そう、そう、黒木君が大人になったババアじゃん、黒木君が可哀想だよ」
「誰がおばさんですか? 美優ちゃん…お姉さんでしょう?」
「だってお母さんと同い年だから…お.ば.さ.んだよ」
「全く、貴方達は黒木君を見習いませんか、、子育て間違えたかしらね」
「何か、今日の黒木君見たら本当にそう思いますね…冗談よ美優ちゃん…そんな顔しないで」
嘘だ、もしお兄ちゃんがOKしたらそのまま結婚に持ち込んだはずだ。
「そうですよね、小百合様、美優も冗談だよ」
「私も冗談だからな、母さん本気にするなよ」
「そうよね、冗談よね」
落ち着いたから僕はそのまま母の日を続行した。
2人は凄く満足したようだった。
美優ちゃん、玲奈さん、園崎さん、古木さんは不服そうだけど仕方ない。
その分の埋め合わせは何か考えよう
恋人の日
「黒木くん、奈々子や歩美ちゃん達とデートしたらしいですね、更にチョコレートを母に贈りましたよね」
「黒木様、お母さまにネックレスをプレゼントしましたわね」
「黒木君、母がチョコレートのお礼を言っておいてくれってさぁ」
「あっ歩美のお母さんもありがとうって」
「「「「所で私達には何もないんですか」」」
僕は正直困ってしまった。
何故なら、妹デーは誘われたから乗っただけだし、母の日は前の世界にある行事だ。
そう考えると同じ歳の者で行う行事って何だろう?
本当に困った。
今現在、デートやプレゼントをしていないのは
メイドさん達は別にして白百合さん、金剛さん、東条さん、玲奈さんの4人だ。
特に、この中で白百合さんと金剛さんは最初に僕を絶望から救ってくれた人だ。
どうしようかな?
幾ら考えても名案の浮かばない僕は、課題を先延ばしにする事にした。
「そうだね、本当なら一番最初にお礼をしなくちゃいけなかったのに…とりあえず、白百合さんと金剛さん、東条さんは次の日曜日、空けておいてくれる?」
「何かしてくれますの?」
「デートだよね、うん空けておくけど、どこ行くの?」
「そうだな、何してくれるのかな?」
「サプライズだから内緒です」
「あの、歩美はー」
「歩美ちゃんはもう妹デーとか言って楽しんだぱすですわ」
「そうだね、流石に今回は遠慮して欲しいな」
「二回連続は不公平だ」
「黒木君は、、そんな意地悪は言わないよね?」
「うーん、流石にずるいと思うから、今回は駄目だよ、その代わりお土産を買ってくるから」
「そんなー」
「仕方ないよ、、うん」
「今回は諦めるんですわ」
「仕方ないかな、、悲しいけどお土産を楽しみにしているよ」
さて、これで次の日曜日まで時間は稼げた。
どうしょうか?
とりあえず、玲奈さんには連絡をして同じく日曜日を空けておいて貰おう。
幾ら考えても良い記念日は考えつかなかった。
そのうち誕生日は個々に祝っていくとして、本当にどうしようか?
考えても仕方ない。
だから、僕は恋人の日を作る事にした。
まずは貸し切りに出来そうな施設を考えないといけない。
今回の対象の中に玲奈さんがいる。
彼女は基本引き籠りだからそうした方が親切だろう。
ネットで調べたら、北條タワーと言う物があった。
うん、名前から言ってだれの持ち物か解る。
貴子さんのだ、しかも此処はゲームセンターやレストランも入っている。
しかも、貸し切り料金も意外と安く1日50万円で貸し切れる。
早速、電話をした。
「黒木君、この間は本当にありがとう! お願いがあるんでしょう?何でも言って」
「実は、北條タワーを借りたいんですが、お金はしっかり払いますんで貸して貰えませんか?」
「あぁ、あそこか、貸すのは良いけど何に使うのかしら?」
僕は自分のプランを話した。
「そういえば玲奈に今度埋め合わせするって言っていたわね…だけど、あそこは結構古いし、ネズミ-ランドに比べると差があるから…良かったら北條水族館にした方が良いんじゃない? 勿論、無料で良いわよ」
「良いんですか?」
「黒木君なら特別ね? 横で玲奈が睨んでいるから代わるわね」
「黒木君、待っていたよ、約束していた事だよね?」
「はい、今週の日曜日にしようと思うんですが玲奈さんの予定はどうですか?」
「勿論、空いているから安心して」
「それじゃ、北條水族館に朝10時集合で宜しくお願い致します」
「うん、解った、うちからは私だけで良いんだよな」
「美優ちゃんは妹デーをしたし、貴子さんは前回お祝いしたから今回は玲奈さんだけで大丈夫です、他には白百合さん、金剛さん、東条さんも招待しています」
「そうだよな、うん仕方ない、、美優も歩美ちゃんや奈々子が一緒だったんだから」
「ははははは、そうですね」
これで、下準備は整った…後はプレゼントかな。
困ったな…どうしようか?
この際だから…指輪、、あれっサイズが解らない。
仕方ない…同じ様にネックレスにしよう。
そしてまた僕は宝石商にいる。
周りの目が少し怖い。
「あの人…また宝石を買いに来ているわ…いいなぁあんな人からプレゼント貰えるなんて」
お姉さん、店員だよね?
お客に聞こえるようにそんな事言うのはおかしいんじゃないかな。
結局僕は、悩んだ末、7個の同じデザインのネックレスを注文した。
小さいけど良質のダイヤを使った物。
一つ辺り120万円…まだ学生だからあまり目立たない物が良いだろう。
今回は外のデートだからお花は用意していない。
これでどうにか準備は整った。
後はせっかくなのでサプライズを用意すれば完了だ。
日にちはまだある、うんゆっくり考えよう
僕はサプライズで悩んでいる。
自分で、ハードルを高くしてしまった。
なかなか良い事が思いつかない。
北條水族館の売りはイルカショーとアシカショーだ。
その他の設備はレストランと売店がある位。
どうしようか?
何か良いイベントは無いだろうか?
結局良い案が浮かばなかった僕は、自分が思いついた案をそのまま使う事にした。
僕は日曜日6時に到着してサプライズの用意をした。
この水族館の売りのパノラマ水槽の前にご馳走を用意した。
その中央には大きなケーキを用意した。
これで準備OK。
あとは彼女達を待つばかりだ。
約束の時間の10分前に彼女達はきた。
時間の10分前は実は僕からお願いした。
そうしないと平気で2時間前から来たりしそうだから。
だから、時間ぎりぎりに来て、もしどんなに早く来ても10分前にしてとお願いした。
「黒木くん、お招きありがとう」
「黒木様、お招き頂きありがとうですわ」
「黒木君、ありがとう」
「黒木君 どうも」
「こちらこそ、来てくれてありがとう、今日は思いっきり楽しもう」
「「「「うん」」」」
「だけど、凄いですわね、水族館の貸し切りなんて」
「確かに凄いと思うが金剛でもできるだろう?」
「出来る出来ないという事なら出来ますわね、ただ、他の施設とは違い貸切る金額が物凄く高いのですわ」
「そうなんだ、私は庶民だから解らないけど、そんなに違う物なの?」
「そうですわね、普通の水族館なら夜間3時間位で180万でしたわ…ですが今日は日曜日そして一日貸し切りと考えたら…この計算は合わないですわ、ましてここは北條水族館、大体2000万は越える金額になると思いますわ」
「凄いな、その金額」
「だけど、これもうちの母さんの物だから無料だけど」
「ですが、日曜日に貸し切りという事はその分の売り上げが確実になくなってますわよ」
「だけど、お金と黒木君への愛情なら、だれでも黒木君の愛情を取るだろう?」
「そうですわね」
僕たちは水族館を見て回った。
意外な事に皆んなは水族館に来たことは無いようだった。
よくよく考えたら、僕は皆んなの日常をよく知らない。
これから知って行けば良いか。
そして時間が来たのでアシカショーを見た。
それから、お昼になって一緒に食事をした。
お弁当は作ってきてないけど、いつものようにあーんして食べた。
ジュースの件はもう知られていたようで、同じくストローを人数分刺されていた。
色々な魚をみて15時になった。
それから、イルカショーを皆んなで見た。
皆んなで一番前で見たからイルカがジャンプするたびに水に濡れたけどビニールでガードしたから問題が無い。
そして17時…ここからが僕のサプライズだ。
パノラマ水槽の前にはケーキやご馳走が置いてある。
何をイメージしたかと言えば結婚式だ。
この世界には驚いた事に結婚式という概念はない。
そういう物自体が存在してなかった。
まぁ、この世界の横柄な男じゃこういった事は嫌うだろうから無いんだろうな。
「凄いごちそうだね、黒木くんありがとう」
「白百合さん、これはまだサプライズじゃないよ?」
「黒木様、そうなのですか? この料理がサプライズでは無いのですか?」
「うん、とりあえず皆んな並んでくれるかな」
うん、並んだね。
「白百合さん」
「なっなにかな」
黒木くんが真剣な表情になった。
凄くかっこいい。
「僕は白百合さんに会えて凄く幸せだよ、生涯、白百合さんを愛し続ける事を誓います」
「えっえっえっ…嘘、、今なんて言ったの?」
「愛し続けるって言ったんだけど、恥ずかしいからもう一回は無理」
白百合さんの首にネックレスを掛けてあげた。
正直いって恥ずかしい。
だから、勢いで金剛さんにむかった。
「金剛さん」
「ふぁい」
赤い顔して噛んだ。凄く可愛いい。
「僕は、頑張る金剛さんが大好きです、生涯愛し続ける事を誓います」
「黒木様…そんな、本当に生涯…その、有難うございます」
同じ様にネックレスを掛けてあげた。
「東条さん」
「くくく黒木君…何だ」
この人でも、どもるんだな。
「東条さん、僕はリリしい東条さんが大好きです…生涯愛し続ける事を誓います」
「黒木君…なら私は、自分の剣に誓って、君を永遠に愛するって誓おう」
これは、返り討ちにあったようだ。
同じく、ネックレスを掛けてあげた。
「玲奈さん」
「私も貰えるのかな、私はその皆んな程付き合いがないんだけど…いいのか」
「勿論です…玲奈さん、戦乙女のような貴方が大好きです…生涯愛し続けます」
「戦乙女、、何それ?」
「僕から見た玲奈さんのイメージです」
「そんな風に見てくれたのか? 母が女神、妹が天使、私は戦乙女か…だったら私は北條の苗字に君への愛を誓おう」
ネックレスを掛けてあげた。
この世界には結婚式という概念はない。
ただ、書類をだして終わりだそうだ。
まだ、僕は学生だし結婚は流石に早いだろう。
だけど、僕にとって大事な人だから…
絶対に嫌いになんかならない人達だから…
気持ちを形にしたかった。
「わっわ私、、凄く幸せだよ…こんな事言って貰えるなんて…思った事なかったから」
僕なんかの為に泣きながら笑顔の白百合さんが可愛い。
「私くし、今日と言う日は絶対に忘れません…ありがとうございますわ…黒木様」
金剛さん程の美女が泣いて喜んでくれる。
「私は剣道以外取り得は無いが…今は剣以上に黒木君が好きだ…ありがとう」
普段凛々しい東条さんが照れたような顔をした。
「君は不思議だな…何故か黒木君と話していると自分が絶世の美女になった気がするよ、ありがとう」
あまり感情を現わさない玲奈さんが笑ってくれた。
ただ、気持ちを伝えただけのサプライズ。
だけど、本当に嬉しいのは、一番幸せなのは、僕だよ。
家を購入した
妹デーに比べて明らかに差があるので、僕は同じような告白を 歩美ちゃん、美優ちゃん、奈々子ちゃんにする事にした。
歩美ちゃんには申し訳ないが北條邸にまで来てもらった。
告白は勿論、
「妹みたいな君を一生愛する事を誓います」だ。
そして同じ様にネックレスを掛けてあげた。
歩美ちゃんと美優ちゃんは正直言って性格が良く似ている。
だから、感謝の気持ちも似ている、2人はまとめてなのに奈々子ちゃんだけ別だと又問題が起きるかもしれない。
だから、三人纏めさせて貰った。
「これって歩美へのプロポーズだよね?」
「美優は勿論受けるよ」
「結婚って事で良いんですよね」
「そうとも言えるけど…ちょっと違うよ、勿論、将来的にはそうするつもりだけど、今は兄妹や恋人の時間を楽しみたいんだ…だから…暫く待って…ただ、もう僕は皆んなとずっと一緒のつもりだから…皆んなが僕を嫌いにならない限り…そうなると思う」
「だったら、もう決まりだね、だって歩美はお兄ちゃんを嫌いにならないもの」
「それは美優も一緒だよ、これは…婚約になるのかな?」
「奈々子も同じだよ、だけど、三人一緒より1人に言って欲しかったけど」
「ははは、そうだねゴメン」
僕は笑って誤魔化すしか無かった。
この世界ではプロポーズ等する男はいない。
そんな世界でこんな事をしたらどうなるだろうか?
常に男性不足のこの世界で、もしそんな事をしたら受けない筈がない。
もう、彼女達の中では黒木との結婚は確定した物と考えている。
だって自分たちは何があろうと黒木を愛する事を辞める訳がないのだから。
ライトノベルの主人公は凄いと思う。
何もしないで沢山の女性と楽しく過ごしている。
僕はと言うと何かする度に調整するのが大変だ。
そろそろ人生について考えても良い頃だと思う。
姿は別にして僕の本当の年齢は24歳だ。
そろそろ真剣に考えるのも良いだろう。
僕は次の日に家を出て不動産屋へと向かった。
今、現在彼女達とデートするなら、北條邸か学校、貸し切った施設だ。
だけど、僕が家を持てば気軽に呼ぶことが出来る。
人生を真剣に考える第一歩は家を購入する事からスタートしようと思う。
とりあえず、どんな物件があるか見ようと一番近くの不動産屋に行ってみた。
「家をお探しですか?」
眼鏡を掛けたお姉さんが対応してくれた。
「あの、失礼ですが…男性ですよね…何故…家を」
この世界の男性は家族がいる場合は家族が保護している。
不幸な事で一人になったら、保護施設が保護してくれる。
結婚したら女性が養う。
そう、住む所は全部女性が用意するから、家について一切考える必要がないのだ。
「いえ、そろそろ自立をしようと思いまして」
「そうですか、それでしたらこちらのアンケートカードにご記入下さい」
「はい、これで良いですか」
「黒木 翔様…凄くお勧めの物件があります…少しお待ちください」
「はい」
「こちらでございます」
新築物件、18LDK 北條邸横。
家具、家電付(購入後、最新家電を無料でお取り付けします)
お風呂は温泉(地下1200メートルからくみ上げ)
太陽光発電つき
掃除や困りごとは優秀なメイド3人が訪問して解決します。
価格は3万円
(応談可能、無料でもOK)
但し 黒木翔様に限ります。
うん、こんな事をするのは貴子さんだ。
貴子は黒木に女神と呼ばれた時から2人の娘と共に様々な加護を与えていた。
例えば、ハンバーガーショップで黒木がハンバーガーを頼むとしよう。
通常とは違い、黒木のハンバーガーだけがA5ランクの牛肉を使った物で出される。
これは黒木に天使と呼ばれた美優が気を良くして、「天使なら加護を与えないと」言い出して、幾つものハンバーガーショップを買い占めて全てのお店に黒木専門のパテを置いているからだ。
それを聞いた貴子が同じ様に北條の力を使ってあちこちに手を回した。
この家もその一つだ。 つまり黒木には、北條と言う名の権力とお金の加護が宿っている、そう言っても良いのかも知れない。
これを断る訳にはいかないよな。
「これでお願いします」
店員は凄い笑顔になった。
実は、黒木と契約を取り付けた会社には謝礼として1億、その担当には2千万のボーナスが北條から支払われる。そういう話をとりつけてある。だからこそ、何処の不動産屋も、常に黒木翔という名前を気にしながら営業している。
「直ぐに、契約書を用意しますから暫くお待ちください」
更に言うと、24時間最優先で登記も受け付けるように圧力が掛かっている。
結局、黒木は1時間もしないで登記簿謄本を受け取った。
今日はもう遅い、明日になったら家を見に行こう。
翌日、僕は購入した家を見に来た。
この家は、今までに何回も前を通った事があった。
家の門にカードキーを刺すと門が自動的開いた。
庭も結構大きい。
そして、大きなドアの横にカードキーを刺すと自動で扉が開いた。
なかは凄い事になっていた。
これは家と言うより屋敷だ…しかも家具は全部据え付けてあり、どう見ても高級品にしか見えない。
家電も最新家電が入っていた。
そして、テレビにメモが書いてあった。
【家電と言えば金剛、、金剛の家電は世界一ですわ】
そう書いてある。
そうだった、金剛家は国内有数の家電会社だった。
部屋はどの部屋も物凄く大きかった。
トイレの大きさまでもが6畳以上あるし、お風呂なんて湯船だけでも普通の家のリビングよりも大きい。
凄いとしか言えない。
そして、謎のボタンがある。
ボタンの名前を見ると、メイドボタンと書いてある。
このボタンを押すとメイドさんが来てくれるんだな、押さないけど。
せっかくだから、もうここに引っ越してこようかな。
僕は男性保護施設に戻ると退所手続きをした。
驚く事に
一日2万円のお金の支給。
女性とデートする時に5万円支給。
女性と結婚した場合は祝い金として500万支給。
は出所後も有効だった。
一日2万円の支給は纏めて月単位で60万支給される。
デートの支給金は此処にきて申告すれば貰える。
結婚した時のお金は自動的に戸籍に入れば支給されるらしい。
荷物は殆ど無い。
ゼロと日常品だけ、正直いってタクシーで事足りる。
僕は管理人さんにお礼をいって施設を後にした。
新しい家に着くとベットの近くにゼロを飾って衣類を整理すると手持ちぶささになった。
正直落ち着かない。
凄く大きな家に1人、うん本当に落ち着かない。
僕って貧乏性だから。
さてどうしようか?
「一緒に暮らして下さい」
そう言えば皆んなは一緒に暮らしてくれると思う。
だけど、家族と一緒に暮らしている人も居る。
多分、この世界は家族より男だからこっちに来ると思う。
だけど、奈々子ちゃんのように破たんしているのならともかく、幸せな親子の状態を壊したくはない。
どうしようかな?
何かルールを決めて来てもらう方法を考える…そんなとこかな。
とりあえず、今日はメイドさんと食事でもしよう。
僕は、三人が全員来ても良い様に食事を作った。
よし、ボタンを押すぞ。
ボタンを押すと凄い事に3分もしないで三人が現れた。
「「「お呼びでしょうか、、そのご主人様」」」
やっぱり、このボタンはそういうボタンだった。
そして今日は、白金さん、園崎さん、古木さんと食事をした。
僕の作った食事楽しそうに食べてくれるから良いか。
そうだ、この人たちにも何か贈り物しなくちゃな。
この世界に来て僕は寂しがりやになったのかも知れない。
前の世界では1人が当たり前だったのに…
今では1人が寂しい。
楽しい食事が終わり、三人には帰って貰った。
余り永く居て貰ったら、泊っていってと言い出しかねない。
そして、そう願えば確実に泊っていってくれる。
だけど、それは彼女達の仕事の邪魔になる。
僕はこの世界に来て久々の寂しさを感じた。
僕は今日学校に行く前に北條邸に顔を出した。
そして、貴子さんに会いお礼を伝えた。
「家の件、どうも有難うございました」
「遅いわよ黒木君、なかなか買わないからてっきり、そのまま保護施設で過ごすのかと思っていたわ」
「本当は、もう暫くは、そうするつもりでした」
「だけど、1人1人と向き合ったら考えが早まった、そんな所かしら?」
「そうです、正直、貴子さんにはお世話になりっぱなしで、到底1人前の男とは言えません」
「1人前の男?」
黒木君は何を言っているのかな。
黒木君が1人前で無いなら誰が1前の男なのだろうか?
女に頼り、全てを貰いながら何もくれない…それが男だ。
100尽くしてようやく1返してくれる…それが男だ。
黒木君のように1あげたら2や3返してくれる…そんな男は他にはいない。
今回のようにもし、家をあげたって…多分、お礼の一言で終わらせるだろう。
正直言って、黒木君がくれた宝石、あれのお返しにすらなっていない。
男が貴金属店でプレゼントを選んでくれる。
お礼をして貰える。
感謝の言葉を言ってくれる。
そんな日常は…どうやっても手に入らない。
令和の妖怪、、化け物と言われている私には絶対に手に入らない物だ。
「黒木君が1人前で無いなら…この世界に1人前の男なんて居ないと思いますよ」
「貴子さんにそう言って貰えると嬉しいな…そうだ、これ…受け取って下さい」
「これは…鍵ですか…まさか合鍵?」
「はい、大きな家に1人だと寂しいので、何時でも遊びに来て下さい」
「何時行っても良いの?」
「勿論、あと何処か一部屋選んで頂いてその部屋を自由にして貰って大丈夫ですよ」
「嘘…黒木君の家に自分の部屋を持てるの?」
「そう、ありがとう…そうだ、どうせ私だけでなく皆んなもなんでしょう?」
「はい」
「そう呼んでくるわ」
貴子は急に廊下へ出て走っていった。
あれっどうしてメイドの誰かを呼ばなかったんだろう。
はぁはぁはぁ…息が苦しい。
あれは、流石に不味い。
この間の親孝行もそうだけど、、今日のはそれ以上だ。
あの宝石をくれた時も…体が震えていたけど。
今日はあと少しで倒れそうになった。
普通に…男が合鍵なんて渡すかな?
おかしい、おかしすぎる。
黒木君は簡単に私に渡してきたけど…正直言ってこれには価値が付けられない。
北條家の総帥の地位と財産、黒木君から合鍵を貰って一緒に過ごせる人生。
恐らくどちらか一つ手に入るなら…多くの女は合鍵を選ぶだろう。
感謝の言葉も貰った。
一緒に暮らせる場所の合鍵も貰った。
そして彼の人生の中で母親という家族としての居場所も貰った。
彼の事だ、私と小百合を同等に扱うから、私の籍に入る事はないだろう。
なら、きっと結婚になるはずだ…
そう、私はあれ程の美少年から全てを貰ってしまったのだ。
そう考えたら、泣きそうになった、手が足が震えだした。
正直、国と国との仲裁に入った時なんか比べ物にならない位緊張した。
だから、私はそれが悟られないように部屋を飛び出した。
彼の前では女神のような私でいたいから。
「あれっお母さんいきなりどうしたの?直接呼びに来るなんて珍しいね」
「黒木君がきていますよ、私の部屋に」
結局、貴子は北條邸にいる関係者全員を呼びにいった。
「あれっお兄ちゃん 急にどうしたの?お母さんが面白い顔しながら呼びに来たけど」
「うん、隣に越してきたんで、そのご挨拶と、皆んなにこれを渡しにね」
「これ…もしかして合鍵…ですか…嘘、これは夢?」
「夢じゃないよ、美優ちゃん、君は僕の妹も兼ねる、彼女なんでしょう? だったら合鍵位持っていてもおかしくないでしょう? 部屋も一室あげるから自分の物にして良いよ」
「部屋もくれるの?それって通い妻?もしくは同棲ですよね」
「そう…だね」
「はい、はい もう美優は充分話しただろう? 次は私の番だよ」
「玲奈さんにも、はいこれ」
「うん、ありがとう」
やばいぞ、これ、、にやけが止まらない。
「あの、玲奈さんにもちゃんと一部屋ありますから自由に使って下さないね」
「本当…だったら引っ越そうかな?」
「本気ですか? 」
「まぁ、私は基本引き籠りだから、何処の部屋でも同じだよ、、黒木君が傍にいる分、そこの方が良いかも知れない」
「そうですか」
「はい、玲奈さん、次が控えているから終わりです、 お兄ちゃん勿論、奈々子にもあるよね」
「勿論あるよ…はい」
「ありがとうお兄ちゃん」
「ごめんね、奈々子ちゃん」
「うん、何でお兄ちゃんが謝るの?」
「よく考えたら、奈々子ちゃんが困っているタイミングで家を買えば良かったと思って」
「そんな事無いよ…ちゃんと住む所も仕事も探してくれたし…そう言えばお部屋もくれるんだよね」
「勿論」
「だったら、すぐ隣だから奈々子は引っ越して通いにしようかな?」
「本当?」
「お兄ちゃんが良いならそうするよ」
「あの…奈々子様…すいません代わって下さい」
「どうしたの…白金…」
「あの…黒木様…私達には流石に無いですよね?」
「勿論、あるよ三人分…」
「それは私の分もあるという事ですか?」
「えっえ、ちゃんと園崎さんの分も古木さんの分もあるよ…部屋もね」
「それは、ちゃんとメイドとして雇ってくれるという事で良いんですよね」
「勿論、そうだよ…というかこの家メイドつきって書いてあるし」
「元からそのつもりでしょう?」
「そうですね、ですが住み込みってつもりでは無かったんですが…有難うございます」
「そうだったの?」
「はい、だけど取り消しは利きませんよ?」
「勿論、取り消す気は無いから安心して」
「「「はい、宜しくお願い致しますね、ご主人様」」」
「東吾くん、何で隠れているのかな?」
「翔くん、いやちょっとね」
「勿論、東吾くんにもあるよ、ハイこれ、あと東吾くんの部屋は僕の隣が良いかな?」
不味い、正直、翔くんの家に部屋が貰えて合鍵まで貰えるのは嬉しい。
だけどあのメンバーに白百合達が加わるなら…百鬼夜行…妖怪大行進じゃないか?
幾ら翔くんがいても…嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…怖くて行けない。
「翔くん、俺はいいよ…そこにいるのは、翔くんの未来の家族…幾ら俺が親友でもそこまで邪魔はできない」
「そう、あっ、だけどこれからは隣だからちょくちょく遊べるね」
「そうだね」
うん、待てよ?彼奴らが翔くんの家に行けば、うちから居なくなる。
もう怖がらないで済むかもしれない。
場合によってはメイドを雇う事が出来るかもしれない。
化け物じゃない、普通のメイドを、うん良かった。
「じゃぁ僕はこれから学校に行くね」
「あっ奈々子も行かなきゃ」
「あっ翔くん、俺も行くよ」
昼休み、いつもの食事の前に僕は話を切り出した。
「あの、ちょっと話をして良いかな?」
「どうしたの黒木くん、あらたまって」
「黒木様、どうかされたのですか?」
「何か相談?」
「お兄ちゃんどうかした?」
「実は、最近家を買ってさ」
「家を買われたのですか? という事は保護施設を出られたという事ですわね?」
「うん」
「じゃぁ黒木くん、もしかして独り暮らしなの」
「黒木君…1人暮らしなのか、大変でも無いか」
「お兄ちゃん、今度歩美、遊びに行っていい?」
「うん、というか、皆んな目を瞑って手を出してくれる?」
「はい、目を開けてい良いよ」
「黒木くん、この鍵ってまさか」
「そうだよ、白百合さん合鍵…ついでに一部屋ちゃんとあげるから何時でも遊びにきて良いよ」
「本当? だったら奈々子が居なくなってから家に居づらいから引っ越そうかな?」
「えっ居づらかったの?」
「うん、だけど黒木くん保護施設だから相談しにくくて」
「だったら何時からでも住んで良いよ」
「流石第一彼女待遇が違いますわね…部屋なんて羨ましいですわ」
「歩美には…無いよね」
「皆んなの部屋もあるよ?」
「黒木君、私のもあるのか?」
「勿論、あるよ…あっこれ小百合さんの分の鍵…勿論部屋もあるから伝えておいて」
「母の分まであるんですの! あれっという事は5部屋+黒木君の部屋と考えたら、最低6部屋ありますわね、、結構大きい家ですわね」
「うん一応、18LDKだから、、」
「それって豪邸だよ黒木くん」
「お兄ちゃん、お金持ちだったんだ」
「おかしいですわね、、黒木様は保護施設に居たのに…」
3万円で買ったとは言いにくいな。
「うん、声優の仕事でお金が入ったから」
「もしかしてゲームのか」
「そうだよ東条さん」
「確かに、あのゲーム売れたらしいから…うん納得」
「あれは儲かりましたわ…母が凄く機嫌がよかったですわね」
「じゃあ、今日は放課後、早速遊びにきてくれる?」
「「「「行く」」」」
寂しくない
放課後、僕は白百合さん達と一緒に家に向かっている。
普通に歩いて帰ろうと思ったけど、、金剛さんがタクシーを呼んでいた。
リムジンは小百合さんが使っているらしい。
家に着くとすぐに白金さん達、三人のメイドさんが出迎えてくれた。
「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」
凄い、秋葉原のパチモンメイドとは違う。
それしか言えない。
「黒木くん、なんでメイドさんがいるのかな?」
「黒木様、この方達は北條のメイドさん達ですわね…雇われたのですか?」
「うん、成り行きで…でも北條家と兼任だよ」
「それでも、メイドさんがいるなんて凄いねお兄ちゃん」
「メイドさんより、この屋敷だ、凄く大きくないか?」
「うん、僕もそう思う」
「それではご主人様、お荷物をお持ちします」
「あっ園崎さん、ずるい」
「早い者勝ちですよ、古木さん」
「ではご主人様こちらへ」
そのまま家に入ると、、あれっ何で皆んな居るのかな。
「あっ黒木君お帰りなさい」
「貴子さん、もう遊びに来られたのですか?」
「引っ越しですよ…前のベットは入りそうも無いので買い換えました」
「えーと、、大丈夫なのですか?」
「執務はあくまで北條邸で行います、裏庭から行き来出来るようにしてあるので大丈夫ですよ」
「それなら、良いのですが」
「お兄ちゃん、お帰り」
「えっ 美優ちゃんも引っ越し?」
「うん、美優の場合は基本、部屋からでないしPCやWIFI環境があれば投資は出来るからお兄ちゃんの傍の分、此処の方が良いから」
「そう、ありがとう」
「ありがとう? 何でお兄ちゃんがありがとうっていうのかな? ありがとうは美優の方なのに」
「私も引っ越してきたよ、良いよね?」
「玲奈さんもですか?」
「駄目だった?」
「そんな事は無いです」
「そう、それなら良いや、私も美優と同じだから、基本何処でも良いんだ」
「私は基本の仕事が貴子様や美優様、玲奈さまと遊ぶことなんで、こっちの方が良いし、、お兄ちゃんもいますから…」
「奈々子ちゃんも…そうだね、その方が便利そう」
「私達、メイド三人は、お世話する人が此処に集まっていますので此処で寝起きする事にしました」
「白金さん達も居てくれるんだ?」
「「「はい」」」
「黒木くん…これはどういう事かな?」
「いやね…その皆んなに此処に住んでもらおうと思って…」
「まぁ…黒木くんじゃ仕方ないか」
「あれっ、里香遅かったじゃない」
「お母さま? まさかお母さまも此処に住まわれるのですか?」
「私の場合は出来るだけですね…仕事もあるから…だけど、此処に一番いる事が多くなりそうね、、息子と娘が住んでいるのだから」
「確かに、その方が便利ですわね」
「あっだけど、もうお兄ちゃんの部屋の近くは埋まっているんじゃないかな?」
「あっ、そうだな」
「あら、大丈夫ですよ、隣の部屋は空いてますよ」
「じゃぁ歩美がそこに」
「何をいっているんですの? そこは白百合さんに決まってますわ」
「あの、金剛さん、じゃんけんとかで無くて良いの?」
「白百合さん…私は第二彼女ですわ…そして貴方は第一彼女…そこは貴方の部屋ですわ」
「ありがとう、金剛さん」
「私は黒木様だけでなく、貴方も好きなのですわよ」
「うん、私も」
僕は何を寂しがっていたのだろう。
こんなにも沢山の人に大切にして貰えているのに。
もう1人じゃないんだ、、そんな簡単な事も忘れるなんて….
究極美少女現る
私の名前は南条麗華。
世間では、美しすぎる美少女と言われている。
美が二つあるのは間違いじゃないわ。
美少女を超えた美少女って事なの。
私くらい美しいと男女比なんて関係ないの。
ようく考えてみて、どんなに女が多くてもその中で一番なら関係ないと思わない。
つまり完璧美少女の私には関係ないの。
他の女の子は男に沢山貢ぐけど、私位になるとご飯奢るくらいで大体の男は付き合ってくれるわ。
しかも2回に一度は割り勘にして貰えるのよ。
本当に美少女すぎてごめんなさい。
ちなみにどれくらい凄いかというと国民的な美少女コンテストで5年連続優勝中なのよ。
多分私より綺麗な美少女は居ないわ。
私には美少女仲間がいるの。
その仲間の一人が湯浅萌子とかいう、そこそこ可愛い子。
学園ではクイーンとか呼ばれているけど大したことないわ。
私に比べたらね…まぁ普通に美少女ではあるのだけど…
私たちは美少年の情報を共有するなかなのに…いきなりもう情報は要らないっていうのよ。
おかしいわよね…だから調べたの…
そうしたら、黒木翔様に行き着いたの。
正直驚いたわ、だって私と釣り合う位に綺麗な美少年なんだもの。
どうやら萌子は振られたみたいね。
貴方位の美少女じゃ無理よ。
私みたいな究極美少女じゃなきゃ無理よ。
黒木様、今から麗華が行きますから待っていて下さいね。
黒木様の住所は調べたわ。
凄いわね、こんな豪邸に住んでいるなんて、流石、この南条麗華が認めただけの事はあるわ。
さてと、私はその先の路地で待ち伏せでもしようかしら。
なんか不気味なメイドがこっちを睨んでいるから、まぁあんなに不細工なら私が羨ましくて仕方ないと思うけど….
声を掛けるのかって…掛けないわ。
だって、私は究極の美少女だもの。
そんなことしなくても、男なら直ぐに声を掛けてくるわ。
私はただ、彼の視界に入ればいいの、それだけで彼はメロメロになるんだから。
そこ等辺の美少女じゃないのよ、美しすぎる美少女なのだから。
ほら、早速、黒木様がきたわ…さぁ私の虜になりなさい。
ほら、この私から…見つめてあげるわ…ほらね、凍り付いた様に動けなくなったでしょう。
皆んなと同じ反応。
当たり前か、世界一の美少女が見つめているんだもん、、釘付けになるわよね。
この視線が欲しくて沢山の男が、割り勘で良いから一緒に食事してって来るの。
だけど、黒木様なら割り勘なんてしないで奢ってあげるわ…貴方は特別。
この世で唯一私と釣り合う男だもん。
あらっ目を反らしちゃった。
案外、初心なのね。
近くのブスなんか見ちゃって、どうしたの?
そうか、私程の美少女に見つめられた事が無いから動揺しているのね。
仕方ないわね…今日はこの位でいいわ。
もう、黒木様は私の虜…時間は沢山あるんだし…また今度でいいわ。
見つめただけで、こんなに喜ぶなんて、私は黒木様なら、手だって繋いであげるし、ハグだってしてあげる。望むならそれ以上の…女が言う事じゃないわね。
あれっ、私は男にこんな感情を抱いた事はないわ…なんで私がハグ…なんて考えているの?
その先って…
あっ…もしかして…好きになっちゃったのかな…
「凄い、南条麗華だ…実物初めてみた…あぁあ歩美もあんな風に美人さんに生れたかったよ」
「流石に麗華ですわね、凛としてお綺麗ですわ」
「流石に、美しすぎる美少女…綺麗だ」
怖い怖い怖い怖い…怖すぎる。
見た瞬間から、体が生きるのを拒絶したくなる。
顔を見た瞬間に、今迄生きてきて楽しかった事が全て無くなったような喪失感が起きた。
楽しかった思い出なんて一瞬で忘れてそれを何倍も上回る苦痛が押し寄せる。
多分、これが物理的に無理って事なんだと思う。
さっきから吐き気と頭痛、悪寒と震えが止まらない。
「流石の黒木くんも麗華には夢中になるのかな」
違う…恐怖で硬直しているんだ。
そうだ、白百合さん。
僕は、白百合さんの肩を掴むと白百合さんを見つめた。
嘘、辞めて…あんなに綺麗な麗華と私を比べないで…辞めて。
「うん、白百合さんはすごく可愛いいね」
あれっもしかして黒木くんの中じゃ私の方が上なのかな…まさかね。
「あの、黒木くん、嬉しいけどあんまり見つめられると照れちゃううよ」
「ごめんね、白百合さんもう暫くこのままで居させて…お願い」
「うん、良いよ」
「歩美の前で二人の世界を作らないで欲しいかな」
「しかし、南条麗華は凄くお綺麗ですわね、、私くしもああいう姿で生れたかったですわ」
何を言っているの金剛さん。
あれ…本物の化け物だよ。
映画でもテレビでもあれ以上の化け物見た事ない。
夢に入る縞々服の殺人鬼や湖によく出る怪物よりも怖いよあれ。
本気で…
「なんで、そんな事、言うの金剛さん、僕は今のままの金剛さんが好きだよ…だから今のままでいて」
「そそそそうなんですの、なら私は何時までも今のままでいますわよ…この醜い顔も黒木様に愛されるなら嬉しいですわね」
「金剛さんは綺麗だよ…凄くね」
「黒木様、、里香は里香は…幸せです」
「今度は金剛さんと世界作っている…」
ようやく居なくなってくれた。
おぇゲロゲロゲロゲロ、…僕は吐いた。
あれ、意識も遠くなっていく…嘘…僕はもう駄目かも知れない。
「うん、知っている天井だ」
「黒木様、大丈夫ですか、、体調が悪かったのなら言ってくださればよいのに」
「もう大丈夫だよ、心配かけてごめんね」
「良かった、目を覚ましたんだ」
東条さんの制服、ゲロまみれだ。
それでもおぶってきてくれたんだ。
「東条さん、ごめんね、制服汚しちゃって」
「気にしなくていいよ…役得もあったから」
「東条さん、それはセクハラになると思う」
「歩美もそう思うな、、でも背が高いと羨ましいな、歩美も背が高かったらお兄ちゃんをおんぶできたのに」
おんぶをするという事は男の尻が触れる、さらに背中に男の胸を感じられる。
例え、ゲロまみれでもこの世界では役得だ。
所で、さっきこっちを見てきた女性誰。
皆んな知っているようだったけど…
「さっきいた女性だけど一体誰」
「知らないのですか、黒木くん」
「じゃぁ歩美が教えてあげる」
良かった、ああいうのが沢山いる訳じゃないんだ。
あれが山ほどいたら、僕は家から出ない、引きこもりになる。
多分、あれが東吾くんにとっての貴子さんたちの姿なのかも知れない。
うん、馬鹿にして悪かった。
本当に良かった…世界一の美少女ね…うんだからあれなんだ。
最近は学校の女子もどうにか見れるようになれてきた。
恋愛対象には絶対にならないけど…
ハロウィンだと思えば…友情位は育めるかも知れない。
だけど、あれは…恐ろしい。
多分、長く一緒に居たら、、死にたくなる。
だけど、もう会う事も無いだろう。
世界一の美少女が僕に構う事は無いと思うから。
だが、黒木は知らない。
真の恐怖はこれから始まるという事を。
真実の愛とは
僕は今迄で最大のピンチを迎えている。
それは、必ずと言っていい程、1日1回以上…恐怖の化け物に会うからだ。
そして、その化け物は他の人から見ると、世界一の美少女に見えるのだ。
南条麗華…最低最悪の化け物に出くわす。
僕に何か構わなくても良いんじゃないかな…世界一何でしょう…アメリカかヨーロッパに行ってくれないかな?
日本から居なくならないかな。
僕は朝起きるとまず、ゼロに手を合わせる。
この世界の神様は…僕から見たら醜いまるで南条麗華のように…
だから、もし存在したら
「世界一の美少女と友達になれるチャンスを貰えて幸せでしょうに」
とか言いそうだ。
そして、僕にとっての生神様の貴子さんに手を合わせる。
そして、それから四人と一緒に登校だ。
「「「「おはよう黒木くん(君)(様)」」」」
「おはよう」
その後、東吾くんと合流する。
東吾くんは最初、この登校には参加していなかった。
だが、南条麗華が待ち伏せしているのを知ると現金な物で合流するようになった。
此処までが僕の楽しい時間…ここからが…恐怖に何時出会うか解らない時間。
家を出て学校までの一本道…必ず彼奴は顔をだす。
今日は電柱の裏に居た。
別に何かしてくるわけではない、だから文句も言えない。
ただ、穏やかに…僕の世界を凍り付かすような恐ろしい笑顔で微笑むだけだ。
頼むから、僕の視界から消えてくれないか。
本当にそう思う。
「翔くん、ほらあそこ南条麗華が君を見て微笑んでいるよ」
「東吾くん、僕にはもう好きな人が居るから、、彼女を見ても何とも思わないよ」
「翔くん、君は沢山の人と付き合っているんだ、南条さんを加えても良いんじゃないか」
「東吾くん、こそ、南条さんが好きなんじゃないか」
僕にとって、究極の化け物なんだから、東吾くんにとっては究極の美少女なんだろうな。
「な、南条さんを嫌いな男なんてこの世に居ないだろう? 彼女は世界で一番綺麗な人だ」
ここに居るよ…世界で一番…南条さんを嫌いな人間が。
「だったら、東吾くんが付き合えば良いんだよ」
「出来るなら、している」
「そう、だったら僕が橋渡しするよ」
「ちょっと、翔くん何をするんだい」
僕は東吾くんの手を引くとそのまま南条麗華の方に向かう。
これから僕は人として最低の事をする。
だけど…本当に怖いんだ…だから先に謝っておく…ゴメン。
「南条さんだよね?」
気持ち悪い笑顔が更に気持ち悪くなる。
多分、喜んでいるのかも知れない。
「そうですよ」
「僕の友達の東吾くんが君の事を好きなんだって…だから付き合ってくれるかな」
「あの、私の好きなのは…黒木君なんだよ…」
心が痛い…酷い事しているのは解っているよ。
前の世界の僕は人に拒絶されっぱなしだったから…君がせめて人間に見えるなら友達にはなれたかも。
だけど、僕の目には君は化け物にしか見えないんだ。
「僕にはもう将来を誓った彼女が居るんだ…だから、南条さんの入り込む隙は無いんだ…ごめんね」
最低だよ僕は、自分が何回も言われて心が傷ついた事を君に言うんだ、、恨んでくれてい良いよ。
そして、もう二度と僕の前に現れないでくれ。
「そうですか…その将来を誓った彼女と言うのは、その周りの醜い人達ですか?」
「君にはそう見えるかもね…僕には彼女達こそが美しく見えるんだ」
本当にそう見えるんだよ…僕には。
「嘘ですね…男なら絶対に私みたいな美少女を好きになるに決まってます」
「そんな事ない…僕は彼女達を愛しています」
「嘘です、そんなにブサイクで醜い女…好きになる人いる訳ないじゃないですか」
良かった。君が心まで美少女じゃなくて、もし君が心まで美少女だったら、僕は罪悪感に苛まされただろう。
君が自分の外見に自信を持ち、他人を貶す性格で良かった。
君は前世で僕を傷つけた人間…この世界では東吾くんや白百合さん達を傷つけるような人間。
つまり、敵だ。
「ここに居ます。僕にとっては白百合さん達は君なんか敵わない、いや君よりも何百倍も綺麗で可愛い人達だから…君は綺麗で可愛いんでしょう? だったら彼氏持ちの僕なんかじゃなく、君を好きになってくれる人と付き合えばい良いんじゃないの?」
「黒木さん程…カッコよくて素敵な人なんて居ないじゃないですか」
「あのさぁ…何でそんな事言うのかな、君を愛してくれた人に失礼じゃないかな」
「何で…そんな事…好きでも無い人に好かれても嬉しくない…迷惑なんですよ」
「僕はそういう人は好きになれません、はっきり言います…僕は愛するより愛されたいんです」
「黒木さん程の人なら…誰だって愛します、それこそ私だって」
「じゃぁ、僕の顔が、君がさっき拒んだ東吾くんの顔だったら愛してくれたのですか?」
「….」
「もし、僕が事故でこの顔を失ったら…嫌いになるんじゃないですか」
「それは黒木さんだって同じじゃないですか?」
「そうかも知れませんね…だけど、彼女達ならそれでも傍にいてくれると思いますよ」
こんな不細工な女なら、男なら傷物でも離れないに決まっている。
「そうですか…なら黒木さんはその不細工な女たちが好きなんですよね…だったらキス位できますよね」
これは黒木さんじゃ無くても出来ないわ。男が人前でキスなんてしない。
同じ曲面で私がして欲しいって言ってもしてくれる男は少ない。
世界一の美少女の私でも難しい事をこんな不細工な女にする人がいるわけないわ。
「ごめんね白百合さん」
僕は白百合さんの唇にキスをした。
「チュッ」
「これで良い?」
嘘、あの醜い女にキスなんて、、
「黒木様、白百合さんだけなんてズルいですわ」
「歩美もして欲しいかな」
「私にはないのか」
僕は全員にキスをした。
「男、男がキスをするなんて…」
「これで解ってくれたかな」
「あの、聞いていいですか?」
「何を聞きたいの?」
「何で、そんなに彼女達に優しく出来るのですか?」
女にこんなに優しい男は他には見た事がない。
自分ならまだしもこんな化け物みたいな女なのに。
「彼女達は僕に全てをくれるから、だから僕は彼女達に全てをあげるんです」
「だったら、私が全てを捧げるなら、黒木さんも全てを捧げてくれるんですか」
「貴方には無理ですね」
「そんな事ありません」
「だったら、その美しさを捨てれますか? 世界一綺麗だと言われるその美貌を捨てられますか?」
「…」
「だから、貴方には僕たちのよう恋愛は無理なんです」
「解りましたわ…今の私は悔しいけど、中身まで美少女でないようです…何時か又、貴方の言う本当の愛を手に入れた時に又来ます…それじゃ失礼します」
怖かった。
本当に怖かった。
これで、多分大丈夫だよね。
あれっ最後に又来るって….終わって無いのか?
【彼女達の気持ち】
「私くしは自己嫌悪になりましたわ」
「そうだよね」
「うん、歩美も同じかな」
「私もだ」
「本当にそうだよね、あんなに愛して貰っていたのに黒木くんの事を疑ってしまったんだもの」
「仕方ないと思いますわ、白百合さん、相手はあの南条麗華なんですから、、好きにならない黒木様が凄いだけですわ」
「歩美もそう思うよ、最初に目を合わせた時、お兄ちゃん気絶した位なんだから、恋に落ちたと思っても仕方ないよ」
「そうだよ仕方ないさ」
「だけど、南条麗華に言った言葉…嬉しさで思わず泣きそうになったよ」
「うん、歩美驚いたよ、もう南条麗華を見ても何とも思わないよとか絶対に普通の男は言えないよね」
「そうだな、南条を加えると言う東吾の話も一蹴だもんな、東吾は後で…まぁ今回は良いか」
「歩美は感動が止まらなかったよ…だって、あんなに好きだとか愛しているなんて言われた事ないもん」
「それは私だって一緒だよ、、いきなりキスだよ、、あんな情熱的な事絶対に他の人はしてくれない」
「本当に黒木様って人は…私くしたちを愛してくれていますわね…だって全てを捧げている…なんて言われたら…だれだって嬉しいに決まってますわ」
「あの、そこで考えて貰いたいの?」
「何をかな?」
お弁当は手作りで用意
宝石を貰って一生傍にいるって告白
合鍵
部屋
その全てを黒木くんが用意。
「あのさぁ…これってどう考えても言っていた通り、全てを捧げられていないかな」
「歩美も…今考えて見たんだけど、これってもう結婚以上だよね」
「本当にそう思うな…よく考えたら…ヒモみたいだな」
「そうですわね、私達尽くしてもらってばかりで何もしてませんわ…気持ちで良いなら…もう全て捧げていますけど」
「そうだな」
「だから、私達も何かサプライズしない?」
「サプライズ…良いですわね…それで何をしますの」
「思いつかない…」
「並大抵の物じゃ無理ですわ…必要な物はご自身で用意するか、もしくは貴子さまがあげてしまってますもの」
「北條家の三人はある意味、何でもあげれるから比べちゃだめだよ」
結局、何も思いつかず、黒木に欲しい物が無いか聞く事にした。
結果、黒木が欲しがったのはお願い券だった。
券1枚で一つお願いを聞いて貰える…そういう良く子供が親にあげる券。
彼女達は後で考えてみた。
よく考えたら、黒木くんに頼まれたら、断る事は無い。
そう考えたら何もあげていない…
麗華の会
私、南条麗華は昨日失恋をした。
正直、振られるなんて思っていなかった。
だって、私は美しすぎる美少女だから。
彼が言っていた、全てを捧げる愛…そんな物、経験したことなど無い。
大体、そんな事する男など居ない…そう思っていたけど、世の中に1人だけは居たんだ。
そんな、物語の様な男が…なんて思わない。
彼奴は偽善者だ。
私が同類だから解る。
自分を美しく見せる為に、カッコよく見せる為にやっているんだ。
だったら化けの皮を剥いでやる。
美少女を舐めないで欲しい。
だから、私は…麗華の会に招集をかけた。
麗華の会
それは南条麗華を頭に美少女たちで構成された組織だ。
自他共に認める美少女集団だ。
男女比が偏った世界? 私達には関係ない…そういえる程の猛者だ。
ちなみに湯浅萌子も天上心美も一応会員ではあるが…上位メンバーではなく下位メンバーだ。
つまり中位にすら上がれない…ここの美少女の層は厚く、どんなに頑張っても彼女達では中位にも上がれないだろう。
今回、招集をかけたのは3人。
序列2位、 ホワイトロリータの異名も持つ 絵夢。
全ての男性の妹を呼称する彼女は…その属性を持つ男性であればだれでも好きになるだろう。
本当の年齢は会員でも解らないが…その見た目は小学生にしか見えない。
彼女が公園を歩くと…あれ程プライドの高い男がミニスカートに夢中になる。
お金を出さない男が何故か彼女にはソフトクリームを買ってあげるらしい。
そして何故か、その後口元から目が離せなくなるらしい。
そして絵夢のフアンは完全に固定、最強美少女の麗華ですら彼女のフアンを横取りする事は出来ない。
彼女を麗華が選んだのは…確実に彼女は黒木の好みだからだ。
彼が引き連れている女に 西城歩美がいる。
そして彼女にお兄ちゃんと呼ばせている。
そう彼奴は妹属性に弱い…その頂点にいる絵夢だったら簡単に籠城するだろう。
序列3位 薔薇姫の異名を持つ 麗子
麗華と同じ麗と言う文字が名前に入る事から2人併せて麗麗と呼ぶ男性もいる。
よく、男性の間では麗麗は話題にあがり、麗華派か麗子派の話しが頻繁にされる。
麗子とは何者か、一言で言うならお嬢様。
麗華が美しすぎる美少女なら、彼女は完全無欠のお嬢様…そう呼ばれる。
旧華族の血を引き、社交界レビューを果たし、薔薇姫と呼ばれる彼女は、凄い事にお見合いの話が沢山くる。庶民には決して届かない高嶺の花….それが彼女だ。
彼女を麗華が選んだのは…確実に彼女は黒木の好みだからだ。
彼が引き連れている女に 金剛里香がいる。
そう彼奴はお嬢様属性に弱い…その頂点にいる麗子だったら簡単に籠城するだろう。
そして、3人目は天上心美だ。
此奴には余り期待はしていない。
だが、東条楓が居る以上、彼は剣道少女が多分好きなんだろう。
そして、此奴は美少女剣士だ。
残念ながら、剣道なんて酔狂な物をやっている少女は彼女しかメンバーに居ない。
この3人で作戦に挑んでもらう。
「皆んな、態々来て頂いてすいません。今回はちょっとしたお願いがあります」
「聞いているよ、麗華お姉ちゃん、、振られちゃったんだってね可哀想に、、」
「麗華ともあろう方が振られるなんて、きっとその方は目がお悪いのですわね」
「……」心美は序列が低いので口を挟まず聞いていた。
「そこで、お願いがあります。、私を振った、黒木翔にハニートラップを仕掛けて欲しいのです」
「翔お兄ちゃんか…うん美形だね、、絵夢のお兄ちゃんにしちゃっても文句ないよね?」
「これはなかなかですわね…口説くのは構いませんが…悪いけどこんな美形、手に入れたら手放しませんわよ…それでい良いなら受けますわ」
此奴ら、これが嫌なんだ。
形上は私を立てているけど、、実際は自分の方が上だと思っている。
だけど、此奴らじゃなければ、、黒木には歯が立たないだろう。
「わかりました…所で心美さんはどうなの?」
「私は麗華様の思いのままに動きます」
「そう、貴方可愛いわね…今回、貴方が成果を上げたら序列30位にしてあげるわ…上位メンバーになれるのよ」
「あああ有難き幸せ」
従順な奴は無能…こんな物で簡単に釣れる。
「では、頼みましたよ」
こうして麗華の会、最強メンバーが黒木達に襲い掛かる。
まだ、その脅威を黒木達は知らない。
小さな挑戦者
今日、僕は珍しく1人で帰っている。
いつもの様に待ち合わせて帰ろうと思ったのだが、今日は忙しいらしい。
公園の前を通ると後ろ姿が可愛い女の子が突き飛ばされて転んでいた。
あれは悪質なナンパ方法だ、歩美ちゃんが以前やられていた奴だ。
僕は様子を見ていた。
あそこで、男性が顔をみて好みなら、そのまま告白に入るのだろう。
あれっ可笑しいな…顔も確かめずに立ち去った。
という事は…ナンパで無く…暴力?
あんな小さい子に…男を追いかけるか?
いや、それよりも女の子だ、、、起き上がって来ない。
怪我しているのかな…やばい、助けなきゃ。
「大丈夫ですか?」
「痛いよー、大丈夫じゃないかも?」
やっぱり近くで見るとかなり小柄だ。
どう見ても小学生にしか見えない。
僕は手を貸す事にした。
「はい」
僕は彼女に手を貸して起こしてあげた。
「ありがとう、お兄ちゃん」
気持ち悪い。怖い怖い怖い怖い
ここまで悪寒が走るのは南条麗華の時位だ。
こんな醜悪な化け物に触っていたくは無い。
だけど、小さな子供が怪我しているのも事実だ。
僕の中で良心と恐怖が戦う。
勝ったのは良心だった。
「だけど、本当に大丈夫?、大丈夫でも無いか、、足怪我しているね、、立てる?」
「えっ、、ごめんなさい、立てないみたいです」
うっ、仕方ないか。
血が出ている足に持っていたタオルを巻いてあげる。
そして僕は彼女に背中を貸す事にした。
何故、おんぶにしたかと言うと顔が見えないからだ。
脳内変換
これは歩美ちゃんみたいな女の子 歩美ちゃん、歩美ちゃん
美優ちゃん、美優ちゃん、奈々子ちゃん
僕は少しでも早く大通りに行こうと走った。
彼女と少しでも早く別れたい…だから、躓いてしまった。
「大丈夫なの、お兄ちゃん」
正直、足が痛い、、だけど、それ処じゃない。
「だい大丈夫だよ」
「でも足痛そうだよ?」
「気にしないで」
僕は足の痛いのを気にしないで彼女をおぶった。
外見はともかく、良い子なんだな。
僕からここまで醜く見えるんだから、凄く可愛い子なんだろう。
僕は足が痛いのを我慢して大通りまで歩いた。
そしてタクシーを呼んだ。
「えーと」
「私は 絵夢です、お兄ちゃん」
「じゃぁ 絵夢ちゃんどうする、病院と家とどっちが良い?」
「じゃあ 病院でお願いします」
「それじゃ、運転手さん病院まで」
僕は1万円札2枚を取り出した。
「じゃぁ絵夢ちゃん、これで病院代を払うんだよ」
「待って、お兄ちゃんは?」
「ごめんね、これから予定があるから、、じゃあね」
本当にごめんね、僕は薄情だと思う。
だけど、僕は耐えられないんだ。
彼女を見送った後、、僕は盛大に吐いた。
自分ながらよく頑張ったと思う。
だけど、彼女には罪はない、まして子供が怪我しているんだ人間として助けないのはおかしい。
黒木は、震える体と頭痛を我慢して足を引き摺りながら、タクシーを呼んだ。
その黒木の姿を小さな二つの目が見つめていた。
そして、これから更なる恐怖が黒木を襲う、その事をまだ黒木は知らない。
【絵夢サイド】
私は黒木翔を見張っている。
彼の周りはいつも不細工な女で固まっている。
そのままストレートにいっても邪魔されるだけだ、
だから、ひたすら見張っていた。
運よく、見張り続けて3日間ようやく黒木翔が一人になる瞬間に立ち会えた。
私は、一緒に見張って貰っていた、お兄ちゃんの1人に彼に見えるように突き飛ばして貰った。
はっきりいうよ、女の魅力はロリに尽きる。
だって、男は大きな胸やお尻が嫌いなんだからね。
しかも、どんな男でも妹には優しい。
麗華が男と割り勘にする事が出来るのを自慢しているけど、、私は奢って貰っているからね。
最も、上限300円位だけど…だけど他に奢って貰っている女なんかいないんだから間違いなく勝ち組だよ。
しかし、痛いなぁあの馬鹿、突き飛ばせっていっても限度があるよ。
本当に使えないな。
あっ近づいてきた。
「大丈夫ですか?」
うん、凄く美形だね。
ここまでカッコよい人は見た事がない。
「痛いよー、大丈夫じゃないかも?」
甘えた声を出した。
ほら、もう彼は私に夢中だ。
これ程の男性が手に入るなら他の男は要らないかな。
「はい」
ほらね手を貸してくれる。
皆んなロリには優しいいんだよ。
最も、本当の私は24歳、だけど何故か歳をとらないんだよ。
不思議な事に…女からは馬鹿にされるけど…男には受けがいいから充分。
「ありがとう、お兄ちゃん」
とびっきりの笑顔をあげるわ…たまらないでしょう?
ついでに立ち上がる時にパンツも見せてあげる…ここまでサービスなんて滅多にしないわ。
流石に硬直しちゃった?
そりゃそうか、いつも貴方の傍にいるパチモンじゃなく、本物美形幼女が居るんだからそうなるよね。
やはり、ロリは正義だ。
「だけど、本当に大丈夫?、大丈夫でも無いか、足怪我しているね、、立てる?」
「えっ…ごめんなさい、立てないみたいです」
この人、凄く優しいな。
嘘っ…足にタオルを巻いてくれるの。
えっ、背中をむけてきたよ。
まさか、これはおんぶしてくれるっていうの?
私、これからおんぶされちゃうの?
本当におんぶしてくれた。
この黒木、いやお兄ちゃん優しいな。
さっきからブツブツ言っているけど…本当にこのお兄ちゃん優しい。
流石におんぶまでしてくれる男はいないな。
そんなに急いだら危ないよ…ほら転んだ。
「大丈夫なの、お兄ちゃん」
足、挫いたよね、凄く腫れて痛そうだよ?
正直私に身長と体力があったら逆におんぶしてあげなきゃいけない位だ。
「だい大丈夫だよ」
無理して笑っているよね、何でそんなに優しいの。
「でも足痛そうだよ?」
ほら、顔も青いし冷や汗まで書いているじゃない。
「気にしないで」
本当に…素敵な人だな。
足だって痛いのに、さっきから引きずっているよ。
凄いね…こんな事されたら…他の男なんて見えなくなるよ。
絵夢には30人近いお兄ちゃんがいるけど…多分こんな事しない。
あんな怪我した足で本当に大通りまで絵夢をおぶって、うん、、本当に凄い。
この人の事を皆んな外見で見てたけど、、この人の本当の凄さはこの内面だと思うよ。
さっきから青い顔して、辛いんでしょう?
足、痛いんでしょう?
なんで、なんで、そこまで見知らぬ女の子に出来るの?
黒木さんは一生懸命タクシーを探してくれている。
尊敬しかない
この人は麗華や私とは違うパチモンじゃないよ。
大した怪我でもないのに心配かけて、本当に悪い事したな。
ようやくタクシーが見つかった。
黒木さんが名前を聞いてきた。
「私は 絵夢です、お兄ちゃん」
元気に答えた。
「じゃぁ 絵夢ちゃんどうする、病院と家とどっちが良い?」
正直、病院に行く程じゃ無いんだけどな、、ごめんね。
「じゃあ 病院でお願いします」
私には帰る家は無い…だから病院になる。
「それじゃ、運転手さん病院まで」
「じゃぁ絵夢ちゃん、これで病院代を払うんだよ」
何で、何で、何で、何で、、黒木さんがお金渡すの….
しかも2万円も…こんな金額…男が女にくれる金額じゃないよ。
「待って、お兄ちゃんは?」
「ごめんね、これから予定があるから…じゃあね」
予定なんか無いよね…多分体が限界なんだ。
無理しちゃって…本当に。
私はタクシーに乗って角を曲がるとタクシーを降りた。
案の序、黒木さんはタクシーを探していた。
うん、無理しちゃって…
私は外見はロリかも知れないが実年齢は24歳なんだ。
無理して頑張る男の子は大好きだよ。
こんな人は他には居ないな…
これはもう、麗華会なんて構っていられない…本当に好きになっちゃったから。
「もう、他のお兄ちゃんはいらないな…だって本当に好きなお兄ちゃんが出来たから、、逃がさないわよ黒木さん」
優しが自分を追い詰めてしまった事を黒木は知らない。
絵夢、麗華会からの決別
「黒木様、一体どうしたのですか?」
「白金さん…ごめん」
それだけ言うと僕は意識を手放した。
私は園崎に指示を出すと黒木様をベットへ運ばせた。
一番の役得だが、譲らなければいけないのが辛い所だ。
古木には念のため風呂を沸かすようにお願いした。
そして私はタクシーの運転手に車を汚してしまったお詫びにお金を渡した。
「いいんですよ、美少年のゲロですから…寧ろご褒美です」
うん、確かにそう思うが、それとこれは違う。
「園崎さん、黒木様の容態はどうだ」
「見た感じでは足を挫いたみたいです、、その他は問題無さそうです、一応処置は済ませておきました、足の事を考えるとお風呂はやめた方が良いと思います。 気が付いたら念の為、北條邸の施設で検査してみます」
「流石は園崎さん、医者の資格を持っているだけありますね」
「実務経験は少ないですけどね」
僕は目を覚ました。
「黒木君、大丈夫ですか?」
真っ先に貴子さんの顔が飛び込んできた。
その眼には涙が浮かんでいた。
良いな、こういうの前の世界では心配なんてされた事はなかった。
周りを見ると心配そうな顔でこっちを見てくる。
「何があったのですか、黒木様」
僕は、今日の出来事を話した。
流石に、少女が醜く見えて気持ち悪かった事は内緒にして。
「流石は黒木くんだね、少女とは言え女を助けるなんて」
「普通に小さい子が怪我していれば助けるでしょう?」
「そうだよね、お兄ちゃんならそうするね、歩美の時もそうだったし」
他の皆んなは遠い目をしている。
この世界の男は、、そんな事はしない。
精々が、救急車を呼ぶ位だ。
少なくとも、手当をしておんぶ迄してタクシーを呼ぶ、そんな事をする男はいないだろう。
ドラマや映画のなか以外は…
去年上映された映画のシーンで「僕の彼女を助けて下さい」そう男が叫ぶ映画があった。
その映画のヒロインになりたい…そう思う女性がどれ程いたか…その数分後に死んでしまうのに。
「「「「黒木さん(様)(君)なら仕方ないか」」」
「あれっ僕おかしな事を言ったかな」
「麗華の会を抜けるって…何を言い出すの絵夢…本気なの」
「本気ですよ…麗華お姉ちゃん…もうこのキャラ必要ないか…麗華さん」
「何でまた急に、せっかく序列2位まで上がってきたのに…」
「私、真実の愛を見つけちゃいましたから…もう偽者のお兄ちゃんやイミテーションじゃ満足できないのよ」
「黒木翔の事ね?」
「そうよ、多分、麗華さまは目が腐っているんじゃないかな、、イミテーションばかり見ていたから、、あの人こそが、本当の男よ、まるで小説から飛び出して来たような方」
「確かに良い男だけど、彼が貴方を選ぶとは限らないんじゃない?」
「選んでくれなくても良いのよ…私が彼を選んで好きになっただけだから…こういう気持ち麗華さんには解らないでしょうね?」
「そう、なら勝手にしなさい…」
絵夢には私だけが知っている重大な弱点がある。
ここを出て行くなら破滅させてあげるわ。
麗華は怪しく微笑んだ。
【絵夢の受難】
絵夢は実は住む所がない。
全ての男性の妹を自負する彼女にとってはお兄ちゃんの所へ転がり込めば良い。
この世界の男性は性欲が少ない為に安心して泊まる事が出来る。
今日泊まるお兄ちゃんを物色していた。
真実の愛とは言うけど生活を考えるとそういう訳にいかない。
あっお兄ちゃんめっけ。
「お兄ちゃん、絵夢」
「おい、絵夢が見つかったぞ」
私は、、お兄ちゃんその1に殴られた。
そして、車で拉致られた。
気が付くと私は裸で縛られて寝転がされていた。
見た感じ工場のようだ。
周りには私がお兄ちゃんと呼んでいた男が沢山いた。
「絵夢、どうやら気が付いたようだな」
「なんでこんな事するするのお兄ちゃん」
「お兄ちゃん? ふざけんなよ、お前本当は24歳なんだよな」
いきなり顔を踏みつけられた。
「純情な俺たちを騙して子供の振りしやがって」
「痛い、辞めてよ お願い、 ぎゃぁー、ぐっ」
いきなり、顔を蹴り上げられた。歯も何本も抜けたかも知れない。
「汚ねえな、靴が汚れちゃったよ」
「汚れるといけないから、俺ビニール持ってきたよ」
「いいね」
皆んながビニールの袋を手と足に巻き付けた。
「汚い毛を股につけて、何がお兄ちゃんだよ薄汚いメスがよ」
私の顔を殴りつけてきた。
痛い、痛い、痛い、多分鼻の骨が折れたと思う。
「ごめんなさい、謝ります、謝るから、辞めて、もう辞めて」
「うるせいよ、鼻が曲がって気持ち悪い顔、、もう、その顔じゃどんな男も騙せないな」
「痛いの、ね本当に痛いの…許して下さい」
「本当煩いよ此奴…半分取れ掛かっているから、いっそう採っちゃわない、此奴の鼻」
「や、辞めて、ね、辞めて…」
「もう一発、蹴って見るか…やった、鼻がもげたぞ、、」
「わ、私の…私の鼻が…」
私の鼻が…落ちている…
「俺たちは悪い事しているんじゃない…お前みたいな汚い女に二度と男が騙されないようにしているだけだ」
「な、何でここまでされなきゃいけないの? 精々泊めてもらったり、安いお菓子を貰っていただけでしょう…なんで」
「お前はそれに感謝しないで、俺たちを馬鹿にしてたんだよな、、麗華さん達が教えてくれたぞ」
「だからって、此処までする必要ないでしょう」
「その眼…凄くムカつくな…自分が悪い癖に、そんな目で見やがって…ッ許せねぇ」
私の目の前に男は棒を持ってくると、男は片目にその棒を突っ込んだ。
「わうわうえあ、、痛い、痛い、痛い、いたいー」
「うわ、この棒抜いたら、目がついているよ…きもい」
あははははは、私、鼻が無くなっている、目も片方無くなっちゃった。
しかも、あんだけ蹴られたから、顔の形も変わっちゃったんじゃないかな。
顎も割れているかも知れないし、頭からも血が出ているし。
どうせ殺されるんなら…
「キモイのはお前達じゃない、本当馬鹿みたい、大人の女が怖いから子供の女に逃げているだけの最低男じゃん、現実社会で妹に相手にされないゴミでしょう? 本当クズだわ」
言いたい事は言った。
「貴様、よくも、麗華会が性格が悪いから破門した、そう言われるだけの事はあるな」
「人を騙した女が良く言えるな」
もう言い返す力もない、だから意識がなくなるまで、睨みつけてやる。
そして殴られ、蹴られ、私は気を失った。
「やばいよ、これ…下手したら死ぬぞ」
「強制、性処理所行になりたくない…俺は知らない」
「俺も、知らない」
「俺は見ていただけだ」
「とりあえず、逃げるぞ、ここにこれ以上居たらヤバイ」
「俺たちは此処に居なかった、いいな、皆んなでゲームをしていた」
男たち、元お兄ちゃんはそこから逃げるようにして離れていった。
どの位たったのか、私は目を覚ました。
鼻も無いし、目も片方潰れている、顔は触ってみたけど原型もないや。
耳も片方ちぎれている。
多分、私…化け物だ。
手は…片方まがっているし、足は、うん、どうにか動くかな。
体中死ぬほど痛いけど…何とか動く。
痛さって不思議だね…度を超すと余り痛まなくなるんだ。
服は近くに落ちている…あんなに綺麗だったのにボロ布だね。
多分、私…もうじき死ぬんだと思う。
だけど、死ぬなら、こんな所で死ぬのは嫌だな…
黒木さん…死ぬ前にもう一度会いたいよ。
ホワイトロリータ、、そう言われた美貌はもうどこにも無い、ただの化け物みたいな顔。
それでも、絵夢は近くのボロ布のような服を纏って歩いていく。
運が良く、この場所は黒木の家から近かった。
痛い体に鞭を打って、曲がった足の痛みに耐えながら絵夢は歩いた。
普通なら20分も掛からない距離を2時間近く掛けて。
かってのホワイトロリータと言われた彼女なら何人もの人が手を貸してくれただろう。
だが、醜い彼女に手を貸す者はいなかった。
ぶつかった人は忌々しそうに睨みつけるだけだ。
そして、ようやく黒木の家の傍まできた。
「此処で良いか、、此処なら黒木君が帰ってきたら見える」
絵夢は黒木の家の近くの垣根に座り込んだ。
「私が死ぬまでに帰って来ないかな…」
下校途中、黒木は垣根から視線を感じた。
「白百合さん達はちょっと待ってて…」
綺麗な少女が瀕死の重傷で死に掛けていた。
黒木はその少女をお姫様抱っこすると、走り出した。
「白百合さん、直ぐに家に連絡して、そして救急車を呼んで貰って」
嘘、今度は、お姫様抱っこ?
ははは、やっぱり黒木さんは本物だわね。
こんな化け物みたいな私にお姫様抱っこなんて。
これで、いつ死んでも….
死にたくない…こんな幸せがあるなら死にたくない。
なんで死んじゃうの、死にたくないよ。
「園崎さん…どうして」
「その子は私が看ますから、安心して下さい」
「園崎さん…」
「時間がありません、北條の家の方に運んで下さい」
この人が言うんだ、それが多分一番なんだと思う。
「解りました…」
僕は少女を運んだ。
この少女に一体何があったんだ。
こんなに可愛い子の目をくり抜いたり、鼻をもいだり、、人間のする事じゃない。
凄い、流石は北條と言うしかない。
家の中に病院があるなんて…
「だけど、貴子さん医者はどうするんですか」
「問題無いわよ、園崎は優秀な医者だから」
園崎仁美は優秀な医者だった。
医者になれば男に触れるし、出会いのチャンスがある。
そう思い頑張ったが、醜い彼女にそのチャンスは無かった。
幾ら頑張っても、幾ら技術を身に着けてもそのチャンスは訪れなかった。
そんな折、醜い事から旨く主治医の見つからなかった北條家からスカウトを受けてメイド兼主治医となった。
「園崎さんって、凄い人だったんですね、メイドなのに医者だなんて」
その声は、手術室の園崎にも聞こえていた。
応援してくれている。
ならば医者として最善を尽くす。
この手術は…多分普通だったら出来ない。
だけど、必ず成功させる。
片手、はもう絶望的だ…
顔は、、目はもう無理だ、鼻や耳は人口骨で再建するとして…
元の様な美しい顔にはもう戻せないだろう。
だけど、この子の人生を考えて…今再建可能な一番良い顔を目指す。
それでも、物井凄く醜い顔だが…
足は、もうこの子の人生は杖無しでは生きられないだろうな。
命はどうにか取り留めたけど…それ以上は私でも無理だ。
長い手術の時間が終わった。
どうにか命は助かったけど…この子の未来は決して明るくない。
「黒木様…ちょっと良いですか?」
「園崎さん、その彼女の容態は」
「命は取り留めましたが…方輪は免れないでしょう」
「そう、ですか」
「手は片方無い、杖無しではもう歩けない、、顔だって正直いって醜い姿です。」
「そうですか…」
「それで、黒木様は彼女をどうしたいですか?」
「どうしたいとは…」
「手当が終わったら、出て行って貰うか、それともその後の人生を面倒見るかです」
「それなら、決まっています。こんな子供を放り出すなんて出来ません。彼女と話し合って彼女にとっての最善の道を探します」
「流石は黒木様…良い男ですね…だけど、彼女は…成人ですよ…多分」
「えっ…」
「それでも面倒を見ますか?」
「それでも僕は彼女が生きる手助けがしたいです」
「流石、黒木君…貴方が彼女を助けるなら…私も彼女の手助けをします」
「貴子様…有難うございます」
貴子の助ける、その意味を黒木は生涯知る事は無い。
これから起きる事も…
「黒木君…あの子は貴方の家族になるのかしら?」
「流石にあんな怪我迄していますし、彼女が望むならここで暮らして貰いたいと思います」
「そう、優しいのね」
「僕は、そんなに優しい訳じゃありません、貴子さんや他の方に比べたら…全然です」
私達が優しいのは、貴方が私達に対して優しいからですよ。
私達は多分、貴方以外には、皆んな優しくなんてないんです。
女神って異教徒にとっては悪魔より怖い存在なんです…うふふ。
「おい、大丈夫か…目は覚ましたな」
「ここは何処ですか?」
「北條家の医療室だ…」
「そうですか、北條家の中ですか…私はこれからどうなるのですか?」
「それは君次第だ…君を助けた黒木様は、君の面倒を生涯見たい…そう言っていた」
「方輪で、こんなに醜くなった私をですか?」
「あぁ…しかもかなり怒っていた…さて、君はどうする?」
「正直、その提案は嬉しいんですが、こんな私が…黒木さんの傍にいても良いんでしょうか?」
「さぁ、私には何ともいえないな…直接本人に聞いたらどうかな」
「正直言って怖いです」
「怖がることは無いよ…何しろさっきまで君の看病をしていた位だからね…さてともう黒木様が来るから、、後は2人で話すと良いよ」
「園崎さん、彼女の容態はどうでしょうか?」
「黒木様、もう目を覚ましましたよ、お話しも大丈夫ですよ」
「所で、中には別の方も居るんですか?」
「なんでです? 私しかいませんでしたよ」
「いえ、女医さんのこえが聞こえてきたので」
「あぁ、あれですか、それは私です、どうしても白衣着ちゃうと医者モードになってしまうんです」
「そうですか…でも医者モードの園崎さん…凛々しい声ですね」
「そう…ですか…それじゃ私は失礼しますね」
「大丈夫、目が覚めたって聞いたけど、、」
「ありがとうございます…2度も助けて頂いて」
「2度?」
「はい、一度目は転んでいた所をおぶってタクシーを呼んで頂きました」
あの時の女の子が彼女…別人じゃないか。
「そうか、あの時の彼女だったんだね…気が付かなかった」
「そうですよね、今の私は..醜いですからね」
今の君は凄く可愛いんだけど、片目は無いけど…まるで、そう僕の部屋にあるゼロみたいに
「そんな事は無いよ…僕には君は凄く可愛い人に思えるけど」
見えると言っちゃ駄目なんだ、気を付けないと..
「嘘です…こんな化け物みたいな私…綺麗な訳ないじゃないですか?」
「外見はそうなのかもね? だけど今の君は凄く優しく見えるけど違うの」
そうなのかな、確かに過去の自分を反省しているけど…
「そうですか、多分黒木さんの思っているほどやさしい女じゃないと思います」
「だったら、これから変われば良いと思う…それでこれからどうする?」
「正直言ってどうして良いのか解りません…行く所もありません、かと言って甘えるのはおかしすぎます」
「なら、うちで暮らせば良いよ」
「それは迷惑だし、甘える行為だと思います」
「別に甘えても良いんじゃない? 迷惑なんて、どんどん掛ければ良いさ」
「どうして、どうしてそんな事を言えるの?」
「僕が寂しがりやだからかな、、」
「寂しがりや?」
「そう、寂しがりやだから、1人が怖い、寂しがりやだから仲間が欲しい…そして寂しがり屋だから家族が欲しい…僕はね皆んなに甘えて生きているの」
「黒木さんが甘えん坊?」
「そう、甘えたいから、好かれたいから、優しくする、優しくされたいから、優しくする、それだけだよ僕は」
そうか、そんな事も解らなかったんだ。これが真実の愛なんだろうな。
やっぱり、私も麗華もパチモンだ…
「じゃぁ私は甘えても良いのかな、お兄ちゃん」
「思いっきり甘えて良いよ、そのうち僕も甘えさせて貰うから…絵夢お姉ちゃん」
「おおおお姉ちゃん?」
「だって絵夢さん、すごく可愛いけど…年上でしょう?」
「たたたたた確かにそうですね…そうかお姉ちゃんか…初めて言われたよ」
「だけど、お姉ちゃんはなんで大人なのに子供に見えるの?」
「これは生まれつきみたいで、お母さんもそうなんだよ、お母さんなんて80歳になって死ぬ間際でも中学生くらいにしか見えなかったんだ」
「そうなんだ、凄いね」
「まあね、こんなになる前はホワイトロリータ…全ての男の妹…なんて呼ばれていたから」
「凄いね、じゃぁ絵夢さんは、妹扱いされるのとお姉ちゃん扱いされるのはどっちが良い」
凄く優しいね、この二択じゃもう私がここに居るのが確定しているじゃない。
こんな方輪な私だけど、精一杯にこの人に喜んでもらえるように頑張ろう。
「じゃぁ、お姉ちゃんが良いかな、宜しくね…黒木えーと…何て呼べば良いのかな」
「じゃぁ、黒木ちゃんで」
「じゃぁ、宜しくね、黒木ちゃん」
「これで、彼女は黒木君の身内ね…なら私達が助ける人だわね」
「そうね、貴子さん…私も手を貸した方が良いかしら」
「気持ちだけ貰っておくわ、小百合さん、今回は北條家だけでやるわ」
「貴子が女神ね…こんだけ怖いのに」
「あらっ邪神だって女神ですよ…それに黒木君が好きなライトノベルでも勇者には優しいけど、敵には容赦しないじゃない…魔族なんてゴミ扱いしているわよ」
「なら、敵はゴブリン…可哀想に…もう運命が決まっているじゃない」
「決まってないわよ…どれだけ地獄に落とそうか…まだ決めてないもん」
「ねぇ、貴子…まさか本当に怒っている」
「怒っているわよ、当たり前じゃない」
「あの子の為ではないよね…」
「どちらかと言えば、黒木君の為かな」
「そう」
「そう、だけど随分急ぐのね」
「だって、私が急がないと娘たちが先に動くから」
「そうね、うちの馬鹿娘も切れていたからね」
「まだ、あの子達に殺しや拷問まではさせたくないからね」
彼らが軽はずみに起こした行動が、悪魔より怖い人間を怒らせた。
その事をまだ彼らは知らない。
数日天下 怒らせてはいけない者
ようやく、生意気な絵夢が処分できたわ。
本当に目障りでしたわね、あのチビ女。
だって麗華も私もそれなりの家柄なのに…あのチビは家すら持ってないんだから。
それなのに序列2位なんて麗華会にとってよくありませんわ。
麗華会、薔薇娘三人なんて呼ぶ人もいますが、本当の薔薇は私と麗華だけ…
薔薇なんて名乗って良いのはせいぜい社交界にレビューしている人だけですわ。
だけど、あのチビ…麗華の会を抜けてくれて助かりましたわ。
麗華の会には鉄の掟がありますの。
それは、仲間を貶める行為の禁止。
仲間同士が揉めた場合は話し合いで決めなくてはならない。
しかも、あのチビ、口が達者だから言いくるめられてしまう。
忌々しい。
麗華が会員に絵夢の破門を告げて、今迄謎だった…年齢を公表しましたわ。
麗華はそれを男に流して居場所をなくして終わらせようとしました。
確かに、24歳じゃもう妹と見ない、泊る所もなくなるかもしれませんわね。
だけど、甘いですわ…あのチビだったら、それでも良いなんて男が出るかもしれませんわ。
だから、私は怒っている男たちに金を掴ませましたの…
あのチビを壊すようにお願いして….怒りって一度火が付くとなかなか消えない物ですわね。
証拠の写メを送って貰ったけど…あの顔じゃもう終わりね…もう妹じゃなく全男の恐怖だわ。
あはははは…愉快ですわ。
これが、お金の力よ。
実行した男たちは私のファンに取り込もうかしらね。
これで、私が序列ナンバー2だわ。
「ねぁ総理ちゃん…私これからやんちゃするけど宜しくね」
「いい加減、北條様、私の名前位憶えてくれないかな」
「だって、気に食わないと変えちゃうから…覚えるのもね」
「はぁ、解った、、だけど何をするのか、、」
「人身売買とかかな…」
「あの、やめて頂く事は出来ないのですか?」
「無理ね」
「ばれたら、どうする?」
「もみ消したら良いじゃない?」
「簡単に言わないでくれるかな…結構大変なんだよ」
「だったら、次の総理の椅子に座るのは貴方じゃなくなるかもね」
「解りました…全部もみ消す…それでい良いんですよね?」
「多分、大丈夫よ、彼女達はしっぽなんて出さないから…ただの保険ね」
「それだと助かる」
「だって、失敗したら、他の国に移れば良いだけだからね…困るのは国の方よ」
「本気じゃないでしょうね?」
「さぁ…今は本気ではないわね」
「白金ちゃん、園崎ちゃん、古木ちゃん、黒木君を悲しませた人が居るわ、そして身内の敵がいるのどうしようかしら?」
「「「勿論適切に処置します」」」
総理大臣である麻生は思った。
幾らこの国で出世しても北條には敵わない。
恐らく、あの家の人間、メイドよりも総理の椅子なんて軽いだろう。
令和の妖怪は今迄怒った事は無い。
怒らせたら終わりだけど、怒らない。
だから、安心だ…だが、今回怒らせた馬鹿がいる。
彼らの未来は国だって守ってあげれない。
その人間が自分で無かったことに総理は心底安心した。
【男たちの終わり】
「思ったより少ないね」
「園崎さん、それでも8人居るのですが」
「絵夢のフアンクラブだっけそんなに少なかったの」
「いえ、全部で30人位はいましたが、仕返しに反対した者は除外して良いだろう?」
「そうね、古木さん、でもあの子、意外に人望があったのね」
「そうだな、22人のうち半分は、楽しい思い出を貰ったからそれで良いって感じ、残り半分は嘘は頭に来たけど仕返しするつもりはないし、そこまで酷い事したくは無い…そんな感じだった」
「そう、それじゃ処刑するのは8人だけなのね」
「で、園崎さんどうするの?」
「そうね、私がするのは、手足を切断して、声帯を切断して喋れなくするだけだわ、その先は白金様がやるわ」
「そう、やるんだ…でもそれなら私が殺してあげた方があいつ等、幸せだったのかな?」
「そうね、だけど、殺さなかったのは貴方が最後の慈悲を与えたくなかったのよね、古木さん」
「確かにそうだな」
「貴方程凄い暗殺者は世界にそうは居ないからね、、気が付いたら死んでいる、死ぬのが確定なら幸せな死に方ね」
「そうかもね…」
さぁ、地獄の始まりよ。
さてと
「なぁ、これは冗談だよな、俺は男なんだ、こんな事して許される訳がない」
「うん、だからここは海上なんだ、そうここなら国の法律は通用しない」
嘘だけど、こう言った方が恐怖が増すだろう。
まずは声帯を切って声が出ない様にする。
「ほら、煩いから喋れない様に加工してやったぞ、舌をかむといけないから切っちゃった」
「ううーうー」
これで何も言えない唸るだけだな。
さぁこれからは手足の切断だ、はいっとダルマの出来上がり。
「なぁ、辞めてくれよ、俺はただ蹴っただけなんだ」
「どうしようかな?」
「そうだ、あんたの夫になってやるよ…こんなチャンス二度とはない」
「その顔で…笑えるわ」
「お前みたいなブサイクが夫を貰えるんだ…俺だって充分だろう?」
「昔なら、その言葉交渉材料になったかもね…でも今じゃ無理だわ」
はい、同じ様にダルマになったと。
2人目が済んだ時、他の男はもう何を言っても無駄だと思ったのか、何も言わなくなった。
ダルマが8体完成したころ彼らの売り払い先が決まった。
「流石、白金さん、それは無いわ」
「園崎さん、彼らはどうする事になったのです」
「南国の小国に売るそうですよ、あそこ、世界で一番、男女比が偏っているから」
「確か、1対100でしたっけ?」
「そう、それで色々交渉して一番残酷な扱いをする相手に売る事にしたんだって」
「何するの?そこで」
「うん、公衆便所に繋いで自由に抱けるようにするそうよ」
「強制性処理場だって一日2人、相手が選べるよね」
「それじゃつまらないから、制限なく壊れるまで女が自由に抱けるそういう場所に譲ったらしいわ、、あの国とのパイプは太くなるし、まさに一石二鳥ね、、相手国の大統領は究極のボランティアだって言っていたらしいわ」
「あの国には男性保護法がないからな」
「えぇ、まさに精液便所ね…どこぞの漫画みたいな」
「この事はもちろん、黒木様には内緒ですよ」
「当たり前じゃん、あんな天使みたいな黒木様に汚い事なんか見せたくないよ私も」
何故、北條の屋敷にメイドが三人しか居ないのか、その三人がいれば基本事足りるからだ。
殺人も交渉も医療も…
だから三人しか居ないのだ
【麗子のチャンス】
私は今、裸で樽の中にいる。
少し前までは完全無欠のお嬢様と呼ばれていた。
誰もが私を羨んでいた。
お金に男、欲しい物は何でも手に入った。
ほんの数日前までは本当に楽しい人生だったのに、あの日を境に全ては変わってしまった。
私が麗華会の序列2位になって有頂天になっていたころ、すでに崩壊は始まっていた。
「お母さま、私とうとう序列2位になりましたわ」
「流石、麗子ね、麗華会は麗華さんが作ったのだから麗華さんが1位は当たり前、実質貴方が1番ね」
「そうだな、流石は麗子だ父も鼻が高いぞ…そうだ、近いうちにパーティーをしよう」
そう、私の家には父親がいる。
父親が居る家なんて、なかなかないわ。
これも全てお母さまが美しくお金持ちだからだわ。
だが、この幸せは数日後に壊されてしまった。
悪魔の女の手先、白金薫がやってきた。
「うちの麗子にお見合いですか?何の冗談ですか?」
「いえ、北條貴子様の肝入りのお話しですので冗談ではありません。あと、お見合いではなく婚姻です」
「何の冗談だ、可愛い麗子の婚姻だなんて、そんな事父親として許さん」
「そうですか、では結構です….今後、北條としてすべての取引を終了させて頂きます、それでは」
聞いた事があった、北條家のジェノサイド指令。
北條としてのすべての取引終了、これには文字通り以上の恐怖がある。
この国いや、世界の大半は北條と繋がりがある。
取引終了されたら、どんな会社も潰れるしかない。
だが、このジェノサイド指令はそれだけで済まない。
会社が潰れたら働かなくてはならない、ではその就職先は…北條と繋がりがある。
そう、働く事も出来ないのだ。
だが、資産があったらどうか…無理だ…どんなにお金を積もうと何も売ってもらえない。
米、一袋に100万だしても売って貰えない。
つまり、事実上の死刑宣告と同じだ。
「待ってくれ、娘は何か、北條家に対してしたのか?」
「そうですわね、貴子さまが身内に思っている方に大怪我をさせましたわ」
「償いはする、だから、白金様からも口添えして頂けないでしょうか?」
「一介のメイドには無理ですよ」
「そこを何とか…」
この世の中に、北條に意見が言える存在はこの白金を含むメイド三人しか居ない。
「無理ですわね…それに口添えするにも手土産が必要ですよ」
「手土産…なんでも用意する…言ってくれ」
「お嬢様の目一つ、片手、片足、、それに顔を硫酸で焼くのは必衰ですね、それに貴方達、夫婦の片腕ずつで如何ですか? それならこの白金がどうにかして差し上げますけど」
「貴様、ふざけているのか、幾らなんでもおかし過ぎるだろう?」
「でもお宅のお嬢様は、そんな事しましたわ…絵夢さんに」
「絵夢…」
「そう、絵夢さんに男をたきつけて、しましたわよね」
「私は…知らない」
「そう、北條が嘘をついたと言うのね、なら取引終了で」
「待ってくれ、、麗子、何をしたのか話してくれないか」
「白金様、確かに麗子は友人に酷い事をしたが、北條とは関係ない話じゃないか?」
「その絵夢さんは今、北條にて保護する立場の人ですが、何か」
「他の条件に変えられないか? そうだ、うちの自動車部門を無償で譲渡するどうだ」
「失った物と同等以上じゃないと話にならないと思いますよ…そんな物貴子さまにしたら鼻くそ以下ですよ」
「世界的な車会社なんだぞ…」
「ですが…」
「そうだな、その通りだ」
「仕方ない、嫁に出しても死ぬ事もあるまい、寧ろ方輪にされるよりはましか、その婚姻受けよう」
「それが賢明かと」
「それで相手の方はどなたですかな?」
「サルバトーレ四世、国王です、写真はこちらです」
その話を聞いた時両親は凍り付いた。
逆に麗子は写真をみて喜んだ。
その写真は黒木とは比べられないがそこそこの美少年だった。
そして相手は一国の国王、完全に玉の輿だ。
「私、受けます…二条家の為に」
「麗子、もう良い、勘当してあげるから自由に暮らしなさい」
「そうよ、二条家はもう良い…平民になって静かに暮らしなさい…白金様、この当家その物と私達で許してくれないだろうか」
まずい、釣り合っちゃったな、これじゃ許すしかない失態だ。
「いいえ、お母さま、お父様、私は二条家の為に嫁ぎます…それで良いのですよね白金様」
「はい、では今からお嬢様をお預かりさせて頂きます」
その後、泣きながら二条夫婦は何度も北條家に出向いたが追い返された。
取引は終了した後だったから。
サルバトーレ四世は確かに美少年で国王だが、性的異常者だった。
既に30人以上の妻が殺されている。
妻が死ぬ姿に興奮する性癖の持ち主で、愛する者には拷問をする癖がある。
妻を樽に入れて運んで欲しいというのは彼の注文だ。
勿論、その間、風呂も入れないし、糞や小便も垂れ流し、その状態で嫁いできた相手を家臣のまえで笑いものにする。
その後は、ひたすら拷問しながら、子作りする。
これにより強い子が授かるとこの国の王家では信じられている。
本来は子作りが旨く行けば、女王になれるのだが、サルバトーレ四世はそれを許さない。
子供が出来たらもう女が抱けなくなるからだ。
だから、彼はひっそりとピルを相手に飲ませて妊娠しないようにする。
そして妻殺しを楽しんでいる、そう彼に嫁いだら、死しかない。
これは世界的に有名な話だった。
だから二条麗子には拷問の上死しかもう無い。
彼女は自分で最後の生きるチャンス、両親が全てと引き換えに可能にしたチャンスを捨てたのだ。
【南条麗華の苦悩】
南条麗華は焦っていた。
自分の片腕ともいえる二条麗子がよりによってサルバトーレ四世に嫁いだからだ。
麗華の会の皆んなは玉の輿だとか、流石、麗子様ついに女王とか騒いでいるが…違う。
事実上の処刑だ。
あの男の変態性は有名だ、恐らく半年もしないうちに麗子は死ぬだろう。
それも、女としての全ての尊厳を失って。
彼女の魅力ならあるいは…そう考えたいがそれは無理だ、あの変態は美しければ美しい程、壊したいのだから。
あの麗子が私に報告が無い。
つまりは自分の意思ではない…何者かがあの麗子を陥れた、それしか考えられない。
そして、行方不明になった絵夢だ、彼奴からお兄ちゃん達を奪えば泣きついてくる、そう思ったのだが消息が一切解らない。
これは恐らく、麗子が何かした可能性がある、麗子が序列2位を欲しがっていたから…
いずれにしても、麗子が攫われるように結婚してしまったから何も解らない。
だが、あの2人の共通点は、この麗子の会以外はありえない。
、
他のメンバーも絵夢が消えたから動揺している。
今の私の出来る事は二条家にいって詳しい事を聞いてくる事それしか出来ない
とりあえず私は二条家にむかった。
二条家に行った。
麗子の両親はあんな事があったのに会ってくれた。
「麗華ちゃん、悪い事言わないから貴方だけでも逃げて」
「もう娘は、多分死ぬだろう…だから貴方だけでも助かる道を探しなさい」
「何があったのですか?」
「貴方は麗華の会のトップなのに何も知らないのか?」
「貴方、いいわ、麗子におこった事を教えてあげる、麗子は序列2位にあがりたい為に序列2位の絵夢って女の子に男性を使って暴力を加えたらしいの」
「そうなんですか?」 まぁ麗子ならやりそうわね。
「ところが、その絵夢って子は普通の子じゃなくて…北條という大きな後ろ盾を持っていたのよ」
「北條ですか?」 絵夢ってそんな切り札を持っていたのね。
「えぇ…それで、その絵夢って子の怪我が方輪になるような怪我で…その償いがサルバトーレ四世との結婚なのよ」
「それって事実上の死刑…」
「そうね…合法的な死刑ね」
「あの、そこまでの事を麗子はしたのですか」
「実際は解らない…だけど、麗子が頼んだ男の子は、目をえぐったり、鼻をもいだりしたしたそうよ、これは私達も探偵を雇って調べたから嘘じゃない、信じられないけど」
「麗子はそんな事しません、多分ちょっとした仕返しを頼んだら、男が暴走しただけだと思います」
「私も、そう思うわ…だけど、指示を出したのは麗子幾ら言っても無駄だわ」
「北條じゃ、聞く耳を持ってくれないんですか?」
「もう、無理ね、だから、貴方は早く逃げなさい…麗子と同じ様になる前に」
どうしようか、私は今回の事件には関係ない筈だ。
絵夢は勝手に出て行った。
確かに、年齢を教えたのは私だけど、決してあんな事になるなんて思わなかった。
精々が、泊る場所が無くなる。
その位しか考えていなかった。
悪用したのは麗華、実行犯は男たち、私は関係ないはずだ。
その考えは甘かった。
「初めまして、南条麗華さん、私は北條貴子様のメイドをしております、白金と申します」
「北條家の全権メイド…何かようかしら」
怖い、怖すぎる。此奴に多分今の私の運命は握られている。
「今、北條の方で、絵夢さんを保護しています」
「それがどうかしたのですか? 私には関係の無い事です」
「そうとは言えませんわよ、貴方が情報を漏らした結果、その情報を使って麗子さんが男をたきつけた」
「私は…」
「そこまで考えていなかった、そうでしょうね」
「そうです」
「ですが、貴方が情報を流さなければ、麗子さんは男をたきつけることは出来なかった、そう考えたら、全ての現況は貴方という事になる」
「幾らなんでもそれだけで私のせいになるの」
「いえ、それだけじゃ無いですよ、、貴方が麗華の会の責任者でしょう? その片腕が行った事が貴方に責任が無い訳ないでしょう」
「それで、私はどうすれば良いのでしょうか?」
「そうですね、東吾様と結婚というのは如何かしら、逆玉ですわよ」
「北條東吾との結婚? それを選ぶ位なら自殺します」
「そう、だったら、どういう幕引きになさいますか、、」
「そうね、北條の言いなりになるのも癪ですね、私は腐っても南条麗華、、世界一の美少女です…自分の幕の引き方は自分できめます」
「そう、聞いてしまった以上はもう後戻りできませんよ? 貴方にはそこまでの責任を求めていないのですが…それで良いのですね」
「ちょっと待って…私には、取引終了、ジェノサイド指令は降りて無いの?」
「ジェノサイド指令?そんな事は知りませんが…取引終了予定はありませんよ、ただ口が軽いのは責任者としてどうかと思いますが」
「本当に、本当」
「本当にして欲しいのですか?」
「いえ、違います…それでどうすれば許して貰えるのですか?」
「東吾様との結婚ん」
「それ以外でお願いします」
「そうですね、貴方には麗華の会がありますよね、、そうだ、貴方は人望があるから、責任もって東吾様の結婚相手や交際相手を探す…それで如何ですか?」
それなら良いかも知れない。
誰かを東吾とお見合いさせてくっつければ良いだけだ。
しかも、旨く行けば北條家に絶大な恩が売れるだろう。
麗華の会には美しいのに貧乏でお金に困っている人も居る。
序列の上の者には逆らえない、そういうルールだ。
私はその頂点の麗華、この取引に失敗は無い。
「その話、謹んでお受けいたします…ただ追加報酬が欲しく思います」
「追加報酬?、貴方は思った以上に欲張りですね…良いでしょう。旨く成功した暁には現金で100億円用意しましょう、税金抜きで…その代わり期間を設けさせて頂きます、期間は2か月…出来なかったら麗華の会の解散で如何ですか?」
「いいい100億円でしゅか」
「その位で噛まないでくれませんか? 北條に嫁ぐ相手を探すのです100億円位安いわ、それで良いのね」
「はい、白金様その代わり、成功報酬必ずお願い致します」
実は南条麗華はお嬢様ではあるが、お金は無い。
旧家ではあるがもう没落している。
今迄、お金担当は麗子だったがもう居ない…他にもお金持ちのお嬢様はいるが、それに頼ると、序列を上げなくてはいけない、そうすると他から文句が出る。
麗華は今、板挟みだった。
本当に馬鹿ね、この子ね、北條の嫡男の価値は100億円なんかじゃないわ、、お金で釣れるなら、もうどうにかしてますよ?
10兆のお金を用意しても断られる男それが北條東吾…様。
正直、東吾様のお相手を探すのは…神でも無理なのに。
もし、用意出来たら100億どころか、国すら貰えますよ?
「よく来たわね、美瑠、実はお願いがあるのよ」
「麗華様のお願いをこの美瑠が断る訳ありませんわ」
「そう、だったらお見合いをお願いしたいのよ」
「お見合い?凄いご褒美ですね、ありがとうございます麗華様..お相手はだれですか?」
「北條家の東吾様ですよ」
「麗華様…酷い…幾ら私が貧乏だからって退会します…じゃ」
「あの…」
「よく来たわね..瑠浮」
「お見合いなら断ります..あと退会します」
「あっ」
結局、麗華の会に居ると、無理やり北條東吾とお見合いをさせられる。
そういう噂が流れて…皆んな退会していった。
2か月待たずして…麗華の会は無くなってしまった。
お風呂パラダイス
「それで、白金、南条麗華はどうなったのかしら?」
「そこまでする気は無かったのですが、何故か東吾様の結婚相手を探す話になりまして…達成報酬100億円渡す話しになりました」
「それ、絶対に達成できないですね」
「だから、無理強いする気も余り無かったのですが…話が進んで、出来なかったら麗華の会の解散という話になりました」
「白金さん…それは私も酷いと思います、何故止めてあげなかったのですか?」
「それは自滅していくのが面白いからですよ園崎さん」
「相変わらずの趣味だね」
「えっえ..だけど本当に無理強いして無かったんだけど…」
「それも、そうね実年齢を晒しただけだから、厳重注意で充分だわ」
「それなのに、白金ちゃん…鬼だわ」
「なっ、面白いから良いじゃないですか?」
トントン
「失礼いたします」
「あれっ黒木様…どうかされたのですか?」
「あのっ皆さんをお風呂に誘いにきました」
「「「「えっ」」」」
「あの黒木君…今なんて言いました」
「黒木様、聞き間違いですよね…白金にはお風呂のお誘いに聞こえましたよ」
「本気で誘っていらっしゃるんですか?..冗談ですよね」
「ごめん、鼻血が…何を言っているんです」
「じゃぁ、僕先に入って待っているから…出来るだけ早くきてね」
結局4人は、おどおどしながらお風呂に来るまで15分位掛かった。
「遅いよ、、早く服脱いで入ってきて」
「あはははは、もしかして私欲求不満ななななのかな…黒木君にお風呂に誘われる幻覚が見えている」
「貴子さま…白金にも見えます…ですが、さっきから鼻血が…」
「園崎はそんな失態を犯しません、しっかりバスタオルを巻いてますよ」
「私は、、準備OKですよえへへへへ」
「結構、恥ずかしいんで早く入ってきてください」
「「「「「解りました(わ)」」」」
これは夢なのでしょうか? 黒木君にお風呂に誘われるなんて。
私達も誘われていますから夢じゃないですよ?
もう、死んでも良いかもしれない。
「じゃぁ、皆んな湯船につかって…」
嘘、黒木君、上半身、裸…なっなっ
「じゃぁ、貴子さんから、背中流すから出てきて」
「あっあっあの、しぇなかでしゅか」
「はい、流すからそこの椅子に座って…」
「ひゃぃ」
これは絶対に夢だ見ちゃいけない夢…現実の訳がない。
黒木君が私の背中にお湯を掛けてくれた。
「貴子さん、ごめんなさい」
「?…どうしたの…黒木君」
「僕が、絵夢さんを保護したから、凄く迷惑かけたでしょう?」
「別に何もしてませんよ?」
「言いたくないなら何も聞きません…だけど、皆んなここ暫く僕が見つめると困ったような顔をしてました…だから勝手に感謝します」
それより、ちょっと待って、そんな背中…優しく洗われたら…駄目、駄目、壊れちゃう、私壊れちゃううから…
「はい、終わったよ…前は流石に…無理だから自分で洗って下さい」
目の前に半裸の黒木きゅんが…
「風邪引いちゃううよ…湯船で暖まらないと…」
「ひゃぁあい」
気づかれちゃったのかな。
本当に凄いわ、私の感情迄読み取るなんて。
もう、本当の家族以上なんじゃないかな。
うちの娘たちでも私の顔色なんて読み取れませんのに。
「はい、次は、白金さん…座って」
「はい」
優しくお湯を掛けられた。
目の前に、黒木様の胸が、胸が、、
「はい、じゃぁ石鹸付けて背中洗うね…」
「うん、く、らめー背中がゾクゾクして…本当に駄目だよ、黒木様」
「あはははは、白金さん、面白い」
「だけど、本当にごめんね、、多分、僕、白金さんに嫌な仕事をさせたんだよね?」
私もまだまだ未熟ですね。 こんな簡単に見破られるなんて。
だけど、それが解るという事は、、日頃から私を見ていてくれる事ですよね。
本当に優しい、貴方の笑顔の為なら、喜んでどんな事でもしますよ。
「私は、貴方のメイドですよ…ご主人様の為なら何でもする、それがメイドですわ」
「はいっ出来た、湯船で温まって下さいね」
「はい」
「それじゃ、園崎さん」
「はい、おおおおお願いします」
「くくくくすぐったいですわ、、黒木様っつつ」
「そう、じゃぁ少し緩くしますね」
「あっあっあっ、あん駄目です…駄目」
「園崎さんもごめんなさい」
「良いんですよ…黒木様、黒木様を助けるのはメイドの仕事なんですから、何時でも頼って下さい」
凄いな、私の顔色なんて解る物なのかな
今迄、見破られた事なんて無いのに
だけど、それっていつも見てくれているって事なのかな
「はい、終わったよ、良く温まってね、最後でごめんね、古木さん」
「あにゅね、はい」
「何言っているか解らないよ、座って、座って」
「ふぁい」
「古木さんもごめんね」
「良いんだよ、気にしなくて」
「そう…だけどありがとう」
「きゃっ黒木様、、駄目、駄目駄目、そこは許して…」
「はい、もう終わったよ」
「それじゃ、どうもありがとう…僕は恥ずかしいから先にあがりますね。」
「参りましたね…白金、まさか気づかれたのですかね」
「気づいてはないでしょう…だけど、私達の表情から、何かあったか察したみたいですよ」
「それっていつも見てくれているって事ですわよ」
「参ったな、プロの暗殺者の私が顔色を読まれるなんて、、」
「だけど、貴子さま…鼻血出しながら言われても威厳無いですよ」
「あのサービスじゃ仕方ないでしょう、お風呂よお風呂、あんな事どんな男がしてくれるっていうの、ねぇねぇ、あんな事されたら、何だってしたくなるじゃない、あんなお礼なんて…代わりに何を上げたらよいか見当もつきません」
「そんな事言われたら私だって一緒です、もう黒木様に言われたら…上場企業の100や1000喜んで潰しちゃいます」
「それは私も一緒ですよ…油田でも何でも欲しがるならだまし取って捧げちゃいます」
「あれは、凄い、あれをしてくれるなら、直ぐに独裁者だろうが何だろうが…殺してきちゃうよ」
知らないうちに黒木は世界の中心になりつつあった。
僕の小さなお姉ちゃん
「絵夢お姉ちゃん、ちょっと良い?」
お姉ちゃん? そうか私の事だ、、まだ慣れないな。
「えっと黒木ちゃん、何かな」
お兄ちゃん以外で呼んだこと無いから照れるな。
「絵夢お姉ちゃんとしっかりと話してないから、一度話そうと思って」
「そう言えば、まだ話した事無かったね…うん良いよ」
「えーと、絵夢お姉ちゃん、苗字とか無いの」
「うん、実はないんだよ」
「無いの?」
「うん、それ処か戸籍も住民票もないかな」
「それって大変じゃないの?」
「大変だね…うん」
「他人事みたいに、だけど何でないの?」
「解らない、お父さんは知らないし、お母さんと旅を続けていたからかな」
「そう言えば、絵夢お姉ちゃんは24歳なんだよね」
「そうだよ…10歳位にしか見えないけど、、」
「聞きづらいけど、お母さんが死んだのは何歳の時?」
「確か、10歳の時かな?」
あれっ絵夢お姉ちゃんが10歳の時に死んだお母さんが80歳だったら、絵夢お姉ちゃんを生んだのは70歳という計算になるよね。
「それって絵夢お姉ちゃんを生んだのが70歳という事?」
「うん、そうだね」
この世界は男女比が大きく傾いている、70歳の老女に手を出す男がいるかな。
「お母さん70歳でも中学生にしか見えなかったから…姉妹に思われていたかな」
「あの、もしかして絵夢お姉ちゃんってエルフとか?」
「何を言っているのか解らないけど、人間だよ…ただ特異体質だってお母さんが言っていた」
「そうなんだ、まぁ良いか絵夢お姉ちゃんは絵夢お姉ちゃんだから」
「そうだね、うん」
「ところで黒木ちゃん、お話が終わったなら 遊ぼう」
「うん、何して遊ぼうか」
「鬼ゴッコ」
「そうだね、じゃぁ最初は僕が鬼で良いや」
「じゃぁ逃げるね、、わーい」
僕はこうして年下にしか見えない不思議なお姉ちゃんと遊んだ。
東吾と麗華
私の名前は南条麗華。
少し前まで美しすぎる美少女って呼ばれていました。
ですが、今、私は…ホームレスになっています。
麗華の会という会も持っていたけど…
北條東吾との婚約を会員に勧めていたらいつの間にか瓦解してしまった。
気が付いたら会員が一人も居ないのよ…うふふ。
100億円どころか今の私は無一文ね。
しかも、北條を怒らせたのが解ると両親や親族は私を捨てたわ。
「南条の家にお前は要らない」ですって。
散々麗華の会があった頃はやれ誇りに思うだ、何だ言っていたくせに。
親子は他人の始まり。
まさにそうね。
学費も払えないから学校には行ってないし、仕方ないからゴミ箱漁って生きている。
アルバイトはしないのかって?
北條から嫌われた私には無理ね…空き缶すら拾っても買ってくれないのだから。
男だったら体を売ればお金になるのに女だから、どんなに綺麗でも売り物にならないもの。
そりゃそうだ、男はお金を貰って、仕方なくSEXの相手をするんだから、幾ら美少女でも売り物にならない。
二条家の前を通った時に「強く生きるんだよ」とお金をくれたけど、この家も北條に嫌われているから私の援助なんて出来ない。
それでも、たまにゴミ箱の上にお弁当を置いて置いてくれる…唯一の味方かな。
「もう、何日、ご飯食べてないか解らないや、公園に水を飲みに行こう」
電柱に貼り紙がしてある。
「北條家…メイド募集…当家のお坊ちゃま東吾様のお世話をお願い致します。 給料は面談時に話し合い、最低50万は保証します。 住み込みOK、賄い3食でます。」
「北條家のメイド…しかも東吾つき…誰も申し込まないでしょうね」
「私も、落ちた物ね…死ねなくて…ホームレスして…辛いから 北條家、転落人生じゃない、いいわ、最後まで、もがいてやる…」
私は、北條家へと足を進めた。
北條家のインターホンを鳴らした。
おかしいな、いつもなら直ぐに出てくるブサイク3人メイドが出て来ない。
代わりに北條東吾が出て来た。
何で此奴がでてくるのよ。
「何かようか」
気持ち悪い、正直吐き気がする。
だがここは我慢だ。
「あの、貼り紙を見て、メイドの応募にきました」
「うん、メイドか? 本当に…じゃぁすぐ面接しよう」
きもいけど仕方ない。
「はい、お願いします」
綺麗な応接間に通された、なのに何故か汚い
「じゃぁ履歴書だして」
「ありません」
「あの、面接受けに来たんだよね?」
「はい」
「何でないの? 」
「その、お金が無くて、買えませんでした」
こんなこと言うの本当に恥ずかしい、だけど本当の事だ仕方ない。
「仕方ないね、じゃぁ名前は?」
「南条麗華…です」
「南条…えっ南条麗華…本物」
「ええ本物です…笑うといいわ、どうせ、どうせ私なんか雇ってくれないのでしょうから…じゃぁ」
「いいよ、身元も解るから…採用」
「採用してくれるの?…オエ、ゲボドパ」
私は胃になにも無いのに盛大に吐いた。
メイドになった私の初仕事は自分のゲロ掃除という不名誉な仕事から始まった。
「また、吐かれても困るから、最初に吐かないコツを教えるよ」
「はい」
「こっち向くな…また吐くぞ…いいか、吐かないコツは顔を見ない事だ…そうだな、やや下の目線、喉から下を見るようにする事だ、場合によっては足元を見るようにする事だな」
「東吾様 …なんでそんなコツを知っているのですか?」
「あのさぁ、驚くかも知れないけど、北條家の中では俺が一番まともだ」
「他の方は? 」
「多分、こっちには来ないと思うけど…僕から見ても化け物だ」
「化け物…まさか?」
「うちのメイドは見た事があるか?」
「1人は…ああいう人こそが化け物だと思いますが」
「あれを1化け物と計算したら、1万化け物位差がある…まぁ極力、顔を見ない事だ」
「そうですか、所で、私は何をしたら宜しいのでしょうか? 正直、メイドなんて初めてですから」
「料理はできるか?」
「少しは…」
「なら、掃除と料理、洗濯をしてくれれば良いぞ」
「それだけで?」
「あぁ、それだけで良い…後は出来る事をすれば良い」
「解りました」
「それじゃ…俺の顔を見るのが辛そうだから、俺は部屋に帰る、流石に、そんな状態じゃ…女性として不憫だから…風呂に入って、今日は休め…明日までに服を用意してやる」
「はい」
あれ、此奴…顔以外は案外良い人じゃないかな…
これで顔がせめてまともなら、、良いのに…
私がお風呂に入っていると音がした。
何をしているのかのぞいてみた。
女の服を漁っている、やっぱり変態だ。
男の癖に、女の服や下着を見るなんて…逆ならまだしも…
あれっ、彼奴定規を持っている、ただの変態じゃ無いのかも知れない。
何を計っているんだ、彼奴、まさか胸の寸法とか計っているのかな?
別に被害はないから放って置くか。
東吾は採寸した紙を持って、黒木の家へ向かった。
そこは、東吾にとって…恐怖の館だ。
「あの、翔くん、母さんはいるかな?」
「貴子さん? いるよ、東吾くんは親友だから声なんか掛けずに入っても良いんだよ」
「異性がいるのにそうはいかない…それじゃ上がらせてもらうよ」
「母さん、玲奈姉さんに美優も居るのか、ちょっと良いですか」
「東吾、お久しぶりね…元気にしてた?」
「なんだお兄いちゃんか」
「東吾…何かよう」
凄く機嫌の良い母さんに機嫌の悪そうな姉妹…どうしたんだろう。
「先日、話していたメイドなんですけど」
「そうね、決まらないわよね」
「それが決まったので報告にきました」
「そっそう、決まったのね…良かったじゃない」
「はい…住み込み希望なのでどの部屋使わせたら良いのかと思いまして」
「どこでも好きにしていいわ、母はこれからこっちにいる事が多いと思うから好きな空き部屋使って」
「ありがとうございます、後、服とかも持って無さそうなんですが…」
「いいわ、50万位あげとけば良いんじゃないかしら…もしかして今日の服も無いのかしら」
「ええっ」
「じゃぁ白金にメイド服でも作らせるから…寸法を聞いてきて」
「これです」
「用意良いわね、きょうの所は私の服、あっ白いクローゼットの方は駄目よ、黒い方なら好きにして良いわ」
「ありがとう母さん」
「それで、採用したメイドの名前は、なんていう人なの?」
「南条麗華さん…すごく綺麗な人です」
「そう、南条さん、有名な方ね」
「はい」
今度、話を聞いて見ようかしら?
何を考えて居るのかじっくり聞かなきゃね。
結局、あのあと、東吾様の「今日は疲れているだろうから、休んで良い」
と言う言葉に甘えて休ませて貰った。
久々の布団が凄く心地よい。
お風呂に入って、暖かい所で眠れる、久々に幸せを感じる、うん、幸せだ。
少し前までは当たり前だった事が、違う、当たり前じゃない、この布団、重さを感じない。
この敷布団凄く沈み込む…こんな布団初めてだ。
まるで雲の上で寝ているみたい、うん…
気がついたら朝になっていた。
あれっ私寝ちゃったのか…しかし凄く目覚めが良いな。
しかし、この部屋改めて見ると凄いなぁ…多分三十畳位あるんじゃないかな?
応接セットもあるし、トイレにシャワールームもある…決して使用人の部屋じゃないよこれ。
応接セットに、何故カップ麺?
手紙? 何が書いてあるのかな?
南条さんへ
今日は、色々準備が必要だと思うからお休みにして頂いて結構です。
とりあえず、出かけるのにも服は必要だと思うので母の服を置いておきました。
それを着て下さい。
とりあえず、女性なので服や下着をはじめ、必要な物が沢山あると思います。
男の俺には何が必要なのか解りませんので、
支度金として50万置いておくので使って下さい。
北條家の身分証明も用意しましたのでお持ち下さい。
追伸、俺は飯が作れない、だから朝食はカップ麺を食ってくれ
東吾
あの人は何を考えているのかな、私は使用人でメイドなのに…
多分、私の知り合った男の中で、一番やさしい人。
なのに、体が、目が全てを拒絶してしまう。
恋愛?無理だ、だけど、女に50万そんな男は他には居ない。
なんで、美形に生まれて来なかったのかな、贅沢は言わない、せめて普通のキモメンに生れて来なかったのかなそうしたら私は、確実に好きになったと思う。
だけど、目があったら吐き気がするんじゃ、恋愛は無理だ…
さてと、久々の買い物だ…今日は目一杯楽しもう。
「さてとまずは服から買おうかな」
「すいませんが、麗華さんにはお売りできません」
そうか、こんな時の為にこれか、東吾って気配りできるんだ。
凄いな。
「そうですか?」
「すみません、北條に嫌われた者には何も売れませんわ」
「私に物を売らないと、貴方やこの店が北條に嫌われますよ」
「何を冗談を…貴方程、嫌われて」
「はい、これ…」
「これって、北條家の身分証明書」
「これ出しても譲って貰えなかったって帰ったら言うわよ」
「すいません、本当にすいません、どうか報告はやめて下さい」
凄い、土下座する人間、初めてみたわね。
「別に、怒ってないですよ、そうね、同じ事が起こると面倒くさいから、私が北條家と和解した、、その事を広めて下さい、それでどうですか?」
「解りました、直ぐに広めますので許して下さい」
麗華は知らない…この身分証明書はこの世に5枚しか無かった。
その5枚の所有者は、白金、園崎、古木の三人のメイドと白百合奈々子…そして最後の1枚がこれだ。
北條ゆかりの者の証明。
これさえ出せば、総理とも面会は出来るし、皇族の園遊会に記帳なくしては入れる。
又、お金だって無制限に貸してくれる。
究極の保証カードだ。
買い物すればするほど心の中に引っかかりが出来る。
つい数日前にはゴミ箱を漁っていた。
そこから、救い出してくれたのは…多分世界で一番醜い男。
だけど、世界一の美少女と呼ばれた私でも女だから…誰も助けてくれなかった。
案外、お似合いなのかも、落ち着きなさい、それは間違いだから…
さてと、服も日常品も買ったし料理の本でも買って帰るかな…
まだ、何も作れないから、ほか弁でも2個かってかえるか…あれっ…2個、.なんで
さてと、食堂にメモして、ホカ弁を置いて
食え 麗華より
これで良いか…あれっ手紙が置いてある。
南条さんへ
母の行きつけのフランス料理店から鴨料理をケータリングして貰いました。
冷蔵庫にありますので良かったら、食べて下さい
東吾
忘れていた、彼奴はお金持ちだった…
せっかく弁当買って来たのに…無駄になっちゃったじゃない。
だけど、不細工とは言え、男が此処まで女にするかな…
これじゃまるで、私が男で東吾が女みたいじゃない…
あれで、外見が真面だったらな…
落ち着きなさい、私…今、何を言おうとしたの?
まさか、外見が真面だったら…ないわね。
だけど、麗華は仮は返す…女なのよ…
絶対に…借りは返すんだから…
俺は今…驚きを隠せない。
ついに、俺の元にもメイドが来たんだ…しかもとびっきりの美少女だ。
最近、俺は1人で過ごしている。
母も姉妹も翔くんにべったりだ…それは良い…逆に怖い思いしないで助かる。
三人のメイドも翔くんの家に行った…これも目には凄く優しい。
だけど…俺の世話は誰がするんだ、まぁ金はあるから良いんだけど…
だけど、俺って、友達は翔くんしか居ないじゃないか、あそこが化け物屋敷になったら、うん元のボッチだ。
白金は「メイドの募集を掛けたから大丈夫」って言ったけど…大丈夫じゃ無いだろう。
仕えるのが北條家…しかも俺付きなんて来ないよね。
白金…「来ますよ」なんて言っているくせに、顔が笑っているんだよ解っている…
期待なんかしてない…これから俺は1人でも強く生きていくんだ。
1人で俺がたそがれていると、インターホンが鳴った。
ちぇ 彼奴らが居ないから俺がでるのか。
「何かようか」
どうせ何かの営業だろう、親切にする必要はない。
「あの、貼り紙を見て、メイドの応募にきました」
嘘、来てくれたんだ、、凄く綺麗で可愛い。
鼻が曲がりそうな程臭いけど、、
「うん、メイド…本当に…じゃぁすぐ面接しよう」
もう採用で良いんだが、形上は面接しないとな。
「はい、お願いします」
何処かで見た顔だな、、しかし見れば見るほど綺麗だ…芸能人かな?
「じゃぁ履歴書だして」
「ありません」
何で履歴書無いんだ 俺をからかっているのか?
「あの、面接受けに来たんだよね?」
何を考えているのか、おかしいだろう。
「はい」
「何でないの? 」
「その、お金が無くて、買えませんでした」
履歴書や写真も買えない位貧乏なの? じゃぁ仕方ないな。
「仕方ないね、じゃぁ名前は?」
「南条麗華…です」
「南条、えっ南条麗華、本物」
汚くてまさかと思ったけど南条さんだ、なんで、これは夢じゃないかな。
まさか覚めたりしないよな。
「ええ本物です、笑うといいわ、どうせ、どうせ私なんか雇ってくれないのでしょうから…じゃぁ」
「いいよ、身元も解るから…採用」
断る訳ない、絶対に断らない。
「採用してくれるの?…オエ、ゲボドパ」
俺を見たんだな…吐くのも仕方ないな。
吐かないコツを教えなきゃ…多分そんなに長くは居てくれないと思うけど…
嬉しいな…翔くん以外でこんなに話したのは初めてだ。
家事について聞いた…料理が出来るらしい。
だったら、いつかは彼女の手作り料理が食べれるのかな…
本当はただ彼女がこの屋敷に居てくれるだけで良いんだ…
だけど、そういう訳に行かないか…
だったら、掃除、洗濯、食事、それだけ頼もう、別にさぼってもいいぞ。
世界一の美少女が、こんなに汚い恰好をしているなんて、何かあったに違いない。
しかも顔色も悪くやつれている…俺をみたせいでもあるが。
今日は風呂にでも入って貰って…休んで貰おう。
あっ少し笑ってくれた…やっぱり、麗華は綺麗だ。
本当は良くないかも知れないけど。
彼女が風呂に入っている間に服が気になったから見てみた。
何日も来ていたんだろうな、ボロボロだ。
新しい服が必要だよな、これじゃかわいそうだ。
とりあえず、寸法を計ろう、多分母さんに近い体型かな。
母さんは要らない服が沢山あるかことわってから貰おう。
あと、メイド服も必要だ。
仕方ない、これか、僕は勇者になる。
怖いけど行くしかない、翔くんの家へ…
相談は無事終わった。
何かあるといけないからと母さんが身分証明書を作ってくれた。
心配性だな母さんは….
さて…しっかり寝ているな、俺が翔くん位の美形なら添い寝するんだが。
不細工の俺じゃ気持ち悪がられるだけだ…
母さんから借りた服を置いて、お金を置いて、手紙も書いた。
俺が翔くんみたいに料理が出来たら、お弁当も置いとくんだが、俺は家事が一切出来ないからカップ麺で我慢して貰おう。
俺みたいなブサイクと顔を合わせたら、せっかくの休みが台無しだ、俺は部屋に戻るよ。
後は夕食に、鴨料理を頼もう母が食べるような高級料理店だから旨いと思う。
喜んでくれるかな。
南条さんが帰ってきた。
鴨料理を美味しそうに食べている。
うん、本当に良かった。
あれっ、テーブルに何か置いてある…手紙もある。
食え 麗華より
嘘、、初めて女からプレゼント貰っちゃったよ…だけど、弁当じゃ食べなくちゃ。
「本当に旨いな…これ」
何で、このお弁当食べると涙が出てくるのかな…おかしいな…
有難う、南条さん…多分君は此処には長く居てくれないと思う。
僕みたいなブサイクな男に好かれても嬉しくないかもしれないけど…
君が此処を出て行っても、君を守ってくれる男が現れるまで..
僕が守るよ…
ありがとう
「なんで、お前はバケツを持っているんだ?」
「いや、これがあれば吐いても安心だから」
「ところで、この真っ黒な物体はなんだ?」
「パンを焼いたんだけど…少しこげちゃって」
「そうか」
「あっ…スープは自信あるよ?」
「これはインスタントだよな?」
「そうとも、いいますね?」
「料理は得意じゃ無かったのか?」
「少しはできるよ…インスタントのカレーとかハンバーグは得意よ」
「そうか、ありがとな」
いきおいで出してしまったけど、あのパンは炭みたいよね…本当に食べるの?
ブサイクとはいえ男が…
「あの、それ出したけど、食べない方が良いよ」
「お前が作ったんだろう…食べる」
何で、何で、そんな嬉しそうに食べる訳…他の男なら床に叩きつけるでしょうに。
幾ら..私が作ったからって…
ようし、決めたわ…
私は此奴に慣れるように頑張ろう。
まずは、どうにか顔が見れるように…なってやる。
私は、決意を込めて東吾様の顔を見た。
オエッコポ..ゲハ…
うん、バケツを持っていて良かった…うん。
「南条さん、何で吐いているんだ、無理して俺を見る事無いのにコツは教えただろう」
「これは、私の意地ですから放って置いて下さい」
「そうか、無理はするなよ」
「今日、ちょっと午後外出してきて良いですか?」
「別に構わないが、何処に行くんだ」
「お隣に行って、奥様やお姉さま、妹様にご挨拶と先輩方にご挨拶してこようと思いまして」
「そうか、頑張れよ」
あそこは怖くて俺はいけないからな。
「はい」
「その後は、今日は休んで良いぞ」
あそこから帰ってきたら仕事にならないだろうしな。
「それじゃ有難くその後は休ませて頂きます」
昼食は抜いた、酔い止めの薬も飲んだ、バケツも持った、準備OK
さぁ…頑張れ…私
「あらっ麗華さん、お久しぶりですね」
「白金さん、その節は、力不足で申し訳ございませんでした」
「いえ、こちらこそ、ごめんなさい無理難題吹っ掛けて、ごめん」
「いえ…大口叩いて出来なかった私の本当の力不足です」
「そう、そう言って貰えると助かるわ、それで今日は何の御用?」
「東吾様つきのメイドになったので、北條家の皆さまにご挨拶と、先輩へのご挨拶、その後お時間があれば黒木様にお会いできればと」
「最初の話は解るけど、最後のは何かしら? まだ黒木様に未練があるのかしら…ねぇ麗華さん」
「いえ、違いますよ、ただお詫びが言いたいのと聞きたい事があるのです」
「そう、それは同席でも良いのかしら、」
「はい、、白金さんなら、構いません」
「そう、それじゃ奥様からご挨拶いくわよ」
「貴子様…新しく入ったメイドの南条を連れてきました」
あちゃぁ…あの子か、ちょっと罪悪感があるわね。
「何で、バケツを持っているのかしら?」
「最初位はちゃんと顔をみて、ご挨拶をしようと思いまして、ウエ、ゴボゲハ」
「何気に失礼ね、貴方、顔を見なければ良いだけなのに?」
「すみません、だけど、相手の目をみて話しをしたかったんです、メイドの分際ですみません」
「正直、失礼だけど、その気持ち、嫌いじゃないわよ、同じ事、娘たちにもするつもりでしょう」
「はい」
「そう、頑張りなさい」
「はい」
どう見ても悪い子じゃないわね、しかも東吾のメイドをしてくれるなんて…
悪い事したわ、白金が…
「私を含め、他のメイドも母屋にはあまり行かないから東吾の事は任せましたよ」
「はい、任されました」
「本当に良い子ね、さぁ娘たちにもあってきて」
「はい、ウェ」
「良いから、早く」
「私が玲奈だ、宜しくな、所で何? そのゲロが入ったバケツ」
「最初位は顔を見て挨拶をしようと思いまして」
「成程ね、吐いた時のバケツか、だけど、私達との接し方は東吾からきいたんじゃない」
「それでも、私は顔を見て挨拶がしたかったのです、うぷぷぷげっ」
「そう、面白いね、君は、うん、頑張んなよ、まぁ東吾は任せたよ」
黒木君の仲間以外では顔を見て話をしてくれる人は居なかったな。
ゲロは吐きながら話すなんて、面白いな。
「美優に挨拶、そう、だけどそのバケツはなにかな」
「その、すいません、おえぇぇぇぇ」
「ああ、吐くからバケツなのね、見なくて良いよ、白金たちだって見ないんだから」
「それでも、私は顔を見たいんです」
「顔は真っ青、体は震えているのに、頑張り屋さんは美優は好きだな、頑張ってね南条さん」
「私が、古木で、こっちが園崎だよ」
「南条麗華と申します、宜しくお願い致します」
「宜しくね、白金さんが酷い事したよね、ごめんね」
「虐められたら私に言ってね、私が間に入るからね」
「ちょっと、2人とも、私が悪役ですか?ねね、私酷い事してないよね」
「酷い事されましたが、大丈夫です」
「ちょっと、南条さん」
「あはははは、白金さんでも取り乱すんですね、怒ってませんよ、白金さんの困った顔を見れたのでおあいこで良いです」
この子凄いわ、麗華の会が作れたわけ解かるわ、黒木様とは比べられないけど…華がある。
そして、貴子様たちとも向き合おうとする行動、私達でも顔を合わすのは難しい…
自分から、それをする何て凄いわ。
「反省したわ、ごめんなさい」
「本当に、おあいこですから」
「そういう事にします」
「園崎さん、そう言えばメイド服は出来ていますか?」
「出来ています」
「じゃぁ、これ制服です、早速着替えて下さい」
「これ、凄く綺麗な服ですね」
「綺麗なだけじゃないですよ、、特殊繊維で作ってあるから、ナイフも刺さらないし、拳銃の弾位なら貫通しません」
「冗談ですよね」
「本当よ、ほら」
「古木さん…それ」
「ねっ軍用ナイフでも切れないでしょう」
「凄い…この服」
「それだけじゃなんですよ…この服その物が…カードも兼ねていて、殆どのお店で何でも買えます、支払いは全部北條にきます…かと言って無駄使いはしないでね」
「園崎さん、、それって」
「この服を着れるのがボーナスみたいな物よ欲しい物は何でも、それこそ家でも何でも買える」
「しかも、これを着た時には北條の使い扱いだから…前に渡した身分証明書証以上、国連の会議中に入って言って、大統領を殴っても、笑って許されるわ」
「それは流石に冗談ですよね?」
「冗談ですよ、真に受けないで下さい…それが可能なのは白金さんのだけですよ…南条さんや私達のは国内限定でしかつかえませんよ…精々が総理大臣に何かを頼める位です」
北條って、凄い、メイドでも政治家以上じゃない…
笑うしかないよ…これ。
「怪物王子…お願いします」
「怪物王子? 僕の事?」
「貴方を除いて怪物王子なんて呼べる人は居ません」
「あの、いきなり押しかけて怪物王子は無いでしょう? 南条さん、まずは挨拶からしないと」
「すみません、白金さん」
「あの、南条さん、うえっ…どうしてメイドの恰好しているのですか?」
「はいっ今日から東吾様つきのメイドになったのでそのご挨拶をしに来ました」
「そう頑張って…では僕はこれで」
「教えて下さい、黒木様、どうすれば、気持ち悪い人達を見ても平然と居られるのですか?どうすれば醜い者を愛する事が出来るのですか、教えて下さい」
「そ、それは解らない」
「解らないのですか」
「そう、気が付いたら、好きになっていましたから、答えにならなくてごめん」
「そう、ですか、好きになったからですか…すいません変な事聞いて」
「絵夢、ごめんなさい、謝って許される事じゃないけど」
「別に良いよ、どうせ年齢をばらしただけでしょう…後は麗子の仕業よね」
「それでも」
「良いわよ…私は見た目は子供だけど、大人なの、歳をバラされた位で怒らないわ」
「そう、それでもごめんなさい」
「まぁ、あの麗華がホームレスをしたんだからもう良いよ、今、私幸せだから」
こんなに傷だらけなのに強いわね。
「そう、流石はホワイトロリータね」
此処に来てみて解かったわ…外見なんてその人の価値の一部なんだって
さぁ、明日からも頑張ろう…
お風呂、その後に
「貴子さん、こういう事だったのね? だから自分達だけでやるなんて言ったのかしら?」
「何の事かしら小百合さん」
「昨日、黒木さんとお風呂はいりましたよね?」
「えぇ…それはもう天国のような時間でしたわ」
「それは、例の事へのお礼ですよね、私最初手伝うって言いましたよね?」
「そうね」
「手伝っていたら、お仲間に入れて貰えましたよね?」
「そうだと思うわ」
「じゃぁ、私が入れなかったのは貴子さんが手伝わせてくれなかったからですよね?」
「そうだね、だけど、汚れ仕事は小百合には似合わないから、、」
「私だって、企業のトップなのよ今迄汚い事は多少はしてきたわ」
「今回は、多少じゃないんだよ…だから仲間に入れなかった」
「そうなのね、じゃぁ仕方ないわ…気を使ってくれたの」
「まぁね、小百合は友達だから…」
「友情の為、そう言うなら仕方ありませんわ、貴方が内容を言わないという事は凄く残虐な事なのでしょうから、でも、友情と愛情は別よ? 私もあの子の母親役何だから、次からは気を回さなくてよいわ」
「解かった、次に何かやる時は必ず声を掛けるよ」
「そう、解ったわ」
「黒木くん、何で私を差し置いて 貴子さん達とお風呂に入るのかな?」
僕はまたピンチを迎えている。いつもは輝く湖のような目をした白百合さんが、濁った眼をして聞いてきた。
「あの、それはお礼で…つい…」
「黒木様は、お礼でつい女性とお風呂に入られるのですか?」
氷のような冷たい目をした金剛さんに睨まれた。
「ただ、背中を流してあげただけだよ、やましい事はしてない」
「お兄ちゃんは背中を流してあげたんだ、へぇ」
いつも愛くるしい歩美ちゃんがまるで能面のような顔をしている。
「うん、そうだよ」
「黒木君、不潔だな、不潔な黒木君は」
何で東条さんは刀をもっているのかな…
絵夢お姉ちゃんが歩いている…仕方ないプライドは捨てよう。
「絵夢お姉ちゃん…助けて」
絵夢お姉ちゃんは僕と白百合さんを見回して…
「ごめん、黒木ちゃん、私には無理」
そう言って立ち去るのかと思ったら、何故か白百合さんの近くの椅子に座った。
良いなライトノベルの主人公は思いのままに行動出来て、現実はちょっと行動を起こすとこれだ。
仕方ない、自分で自分の首を絞める事になるかも知れない…
幸いな事にうちのお風呂は大きい。
「解かった、そんなに一緒にお風呂に入りたいのなら…今度から皆んなで一緒に入ろう」
「「「「「えっ」」」」
「黒木くん、それ本気なのかな、もう一切取り消しはきかないかなにゃ」
白百合さん、噛んだ、、。
「黒木様様様、は本気で言え、聞きません、今更嘘なんて聞きません」
「お兄ちゃんとお風呂、お風呂と」
「お姉ちゃんも勿論OKだよね」
「うん、良いよ…皆んな大切な人だから」
だけど、これだけの美人の体を見て耐えられるか、自分が寧ろ心配だ。
あれっ東条さんが静かだな。
立ったまま気絶している…
ただの混浴の話なのに…
黒木は知らない、この世界では一緒にお風呂に入るなんて行為は殆どない。
もし、普通の男性に、混浴のお願いをしたら、まず断られる。
その位この世界の男は何もしない。
美少女の努力とゲロ
「白金…南条さんをどう思いますか」
「まだまだですが、あの努力はまぶしい物がありますね」
「あのまま光の中で生きていくのが好ましいと私は思います」
「園崎さんが褒めるのは珍しいですね」
「だって、古木さん、貴子さまが嫌いじゃないと言われましたからね」
「白金さん…それ本当?」
「ええ」
「確かに言いましたわよ、東吾や私の為に一生懸命なんですもの、正直、私の頭の中じゃ 大統領より上よ、じゃなければ、北條特製のメイド服なんてあげないわ」
「そりゃそうか」
「ところで、彼女の年棒は幾ら位になさいますか?」
「流石に、貴方達みたいに億単位じゃ無くて年棒で6千万で良いんじゃない」
「最もお金なんて私使った事ないですよ?」
「そうね、あくまで一般向けの数字でしか無いけどね」
「北條家のメイドは何でも無料だから溜まっていくだけだしね」
「今日もバケツを持っているのか」
「ええっ東吾様は気持ち悪いので、いつ吐いても良い様に」
「僕や家族との付き合い方は教えたはずだが…」
「それでも私は、東吾様を見ていたいのです、おえっ」
「吐くなら辞めれば良いのに…どうせ俺はキモイんだろう」
「ええ、今迄見た男性の中で一番醜くてキモイですね」
だけど、それだけじゃなく世界で一番優しくて、暖かいんですけどね。
「はっきり言うな…だけど、ありがとう」
「はい」
少し、慣れたのかな、、、今のはキモク無い、、
「じゃぁ、俺はまた部屋に帰るから何かあったら呼んでくれ」
さぁ、私は読書だ。
読書と言っても、料理の本、、ミジンコでも出来る家庭料理だ。
少しでもおいしい物を食べさせてあげたい。
流石に毎日レトルトじゃ申し訳ないしね。
料理本片手に作ってみたが、うん、凄くまずい…どうやら私ってミジンコ以下だったようだ。
困った時の先輩だ。
隣の家に行けば門の所に誰かいるだろう。
「園崎さん」
「どうしたの南条さん、何かお困りごと?」
「料理を教えて下さい」
「料理、私も出来ないわ」
「あの、先輩、メイドですよね?」
「そうよ」
と、言っても裏メイドなんで裏工作専門なんだけどね。
「何で出来ないんですか?」
「逆に何で料理の技術が必要なの?」
「メイドですよね」
「だって北條付きのメイドだよ、自分で作る位なら有名なシェフを調べて作らせる方が良いじゃない」
「そうですね、でも私料理を覚えたいんです」
「それなら、白百合さんに教わって見たら、彼女、物凄く料理が得意だから」
「是非、紹介して下さい」
「料理を教えてくれって、えっ南条麗華さん、世界一の美少女、何で」
「それは昔の事よ…流れ流され、今は東吾様つきのメイド、ただの麗華」
なんか変なノリの人だな、昔のオーラが無くなってる。
「そうですか、確かにメイドなら料理は必衰ですよね、私に任せて下さい」
「ありがとうございます」
「その代わり、ファッションとかおしゃれについて教えて貰えませんか?」
「そっちなら、得意だから幾らでも聞いて」
「じゃぁギブ&テイクで行こう」
「じゃぁ最初の1時間は私が教えて、後半1時間を麗華さんが教えるって言うのでどうかな?」
「はい、お願いします」
「それじゃ、教えるけど、麗華さん、何が出来るの」
「何も出来ません」
「何も…出来ないんだ」
究極の美少女って言われても女だから結婚したら家事をしなくちゃいけないのに…案外ポンコツ?
「どうしたの? 固まって」
「いや、何でもないよ、それじゃ今日はご飯の炊き方を教えるから…そこからおにぎりでも作ろうか? あとお味噌汁のつくり方を教えるね」
「はい、白百合先生」
「先生」
案外、飲み込みはいいね、歪だけどおにぎりもお味噌汁も出来た。
うん、上等、上等。
「どうにか出来たね」
「でも、白百合さんのと比べたら、歪だけど」
「キャリアの差だよ、毎日してれば直ぐに上手になるよ」
「ありがとう」
「今度は私の番だね、白百合さんはどんな感じになりたい?」
「私は、黒木くんにもっと好かれるようになりたいです」
「ストレートだね、だけど、それじゃ解らないよ?」
「そうですよね、、だったら昔の麗華さんみたいな感じになりたいです」
「ようし、それなら簡単、今日は私がメイクするから、それを黒木様に見せると良いよ、何回か試して黒木様の気に入った奴があったらそれに固定しよう」
「お願いします」
「どうかな」
「凄く可愛い、凄いですね」
「これでも昔はファッションリーダーだからね」
「ありがとうございます」
「じゃぁ 今日はこれで失礼するよ、このおにぎり東吾様に食べさせたいから」
もしかして、南条さん東吾さんの事好きなのかな?
「それじゃ、次回は何時にしますか?」
「連絡先交換しない」
「そうですね、その方が電話でも聞けて良いかも」
「「じゃぁこれ連絡先です」」
「今日の夕飯はおにぎりとお味噌汁か」
「簡単な物ですいません」
これ、此奴の手作りだよな。
歪だけど、一生懸命作ったんだろうな。
「ありがとう、おいしいよ…本当に美味しい」
「どうしたんですか?」
「いや、何でもない、、あれっ南条さん、今日は吐かないんだ」
「あれっ本当だ、ウエげろろろろ」
意識したら気持ち悪くなった。
「あーっごめん、今日はバケツ持っていなかったんだな…スマン」
「すいません、後で掃除しておきます」
ゲロの匂いのする中、東吾は食事を続けた。
醜い、自分の為に作ってくれたおにぎり、その味を噛みしめていた。
目を反らせば良いのに幾ら言っても自分を真正面から見る南条…
そうしてやるのが…俺の役目だ。
少し気持ち悪いが…
「あれっあそこにいるのは麗華じゃないかしら?」
「ええ、お母さま、麗華姉さまですわね」
「貴方、まだこんな所に居たの、、この街から出て行ったと思ったのに」
「私が何処に居ようと関係ないじゃないですか?」
「目ざわりなのよ、たいした技量も無いのに麗華の会なんか作るから、北條家から目を付けられるのよ、本当に馬鹿な子ね」
「そうそう、美しすぎる美少女だっけ…大して美人でもないのに粋がって本当に馬鹿なお姉さま」
「言いたいのはそれだけですか? 仕事があるので失礼します」
「なにそれ、親に言う言葉ですか…あっそうね勘当したから親子ではないのよね…」
「はい、赤の他人なので放っておいてください」
「お金が無いと、心までやさぐれちゃってやーね」
「では、失礼しますね」
「ちょっと待ってお姉ちゃん、じゃなくて麗華さん、貴方のせいで北條に睨まれて生活が大変なんだけどどうしてくれるの?」
「そうよ、どうしてくれるの、責任を取りなさいよ」
「北條家は何もしてないと思いますよ」
「何で、そんな事が貴方に解るのよ」
「とりあえず、麗華土下座しなよ」
「それは致しかねます」
「北條家に言いがかり付けるのは辞めてくれないかな」
「北條、東吾」
「なんで、お前たちが俺を呼びつけできるんだ、本気で潰してやろうか?」
「東吾様、すいません」
「聞いていたけど、うちがあんた達に目を付けたって? 本当に目を付けたなら、お前たちはこの世に居ないよ?…それに何で、お前達のような虫けらを態々見なければいけない訳?」
「すいません、本当にそんな気じゃ無かったんです」
「いや、嘘はいけないよ、ちゃんと聞いたから」
「言っていません」
「そう、俺が嘘をついたって言うんだ…仕方ない、北條家としてすべての付き合いを」
「それだけ、それだけは辞めて下さい」
「土下座でも何でもしますから、それだけは辞めて下さい」
「そう、だったら俺じゃ無くて麗華に謝るんだな」
「何で、麗華になんか」
「なぁ、麗華が着ている服はうちの白金達と同じ服だ、その意味が解らないのか?」
「お母さん、それって」
「麗華、麗華様、私は悪気は本当に無かったのよ、寧ろあなたの出世を誇りに思うわ、これからは又親子として」
「すいません、貴方からは勘当されているし、さっきも赤の他人と言われましたから、私の縁者とは思いません」
「お母さん、こんな奴放っていこうよ」
「ねぇ、美香、口の利き方を覚えなさい、昔姉だったから今回は何もしないけど、その一言で貴方の人生は終わるのよ」
「お母さん」
「黙りなさい美香、良いから謝るのよ良いわね」
「謝らなくて良いよ 母さん、美香、それじゃね」
「麗華許してくれるの?これからは私も反省してちゃんと母親らしくするわ」
此奴らは本当にゴミだ…麗華の会があった時だって2人して散々良い思いもしたろうに、崩れてきたら私を捨てたんだから。
「母さん」
「なあに麗華」
「貴方達を家族だと思うのは今が最後だから、次にあったら生意気な奴としか思わない。だからこの街から消えてくれない? それであなた達には何も起こらない」
「そんな、家族に対してこの街から出ていけって言うの、実の親や妹に」
「では、実の子供や姉に貴方達は何をしたの? 貴方には産んでくれた恩がある、だから1回我慢してあげる、出ていけって言うのは最後の恩情、このままじゃ多分あんた達に何かしてしまう、だから、取引停止を言う前に消えて欲しいのよ」
「麗華様、温情を掛けてくれてありがとうございます。明日にでもこの街から出て行きます」
「お母さん、何で、お姉さま、美香、この街に居たいの」
「駄目ね、貴方は私の妹じゃない、さっさと消えなさい」
「お姉さま」
「お姉さまじゃないわ、麗華様、貴方とは他人なんだから」
「それじゃ、早く消えなさい」
「お母さま、どうしてお姉さまに、この街にもう居れないの?」
「直ぐに出て行くわ、まさか麗華が 北條家のメイドになるなんて思わなかったわ」
「それ、そんなに凄いの、よく貼り紙が貼ってあったじゃない」
「違うのよ、メイド服を纏える北條家のメイドが凄いの、あぁ何で私は勘当なんてしたんだろう」
「たかがメイドじゃない」
「じゃぁ美香、この国で北條様を抜いて一番偉い人は誰」
「皇族? 総理大臣かな」
「そんな人、今の麗華なら簡単に首に出来る」
「…謝ろう、そうしたら」
「無理ね…だから良い…早くこの街から出て行かないといけないの」
「…」
「あれで良かったのか、家族だろう?」
「良いんですよ、あの人たちにとって私は金ずるなだけだから」
「そうか」
「最近まで気が付かなかったんだけどね」
「そうか」
「それより東吾様は良かったんですか?」
「何が」
「本当は東吾様はあんな事いう人じゃないでしょう」
「そうだな、北條の名前はある意味暴力だから使わないな」
「だったら…なんで」
「お前の為だから、南条さんの為だからだ」
「そうですか、そんなに私が大切ですか?」
「あぁ、俺にとっては唯一の女性だからな」
それって好きって意味だよね。
東吾って顔以外は完璧じゃない。
うん、昔の私ならこの良さが解らなかったんだろうな。
「そうですか…それじゃこれから東吾様ではなく、東吾って呼んでも良いですか?」
「何でだ」
「私も貴方が好きだからですよ」
私は、東吾さま、いや東吾にキスをした。
「有難う…で良いのかな…つまり付き合ってくれるという事か?」
「そういう事ですよ…ちなみにあれは私のファーストキスです…男には…うえぇぇぇぇげろろろろ」
私のファーストキスは、、ゲロの味がした。
多分、東吾様も同じかもしれない、口を付けた時にはもうこみ上げていたから。
「ありがとう、顔はどうする事も出来ないが、他は麗華に相応しくなるように頑張る」
何を言っているんだろう? 貴方は顔だけ除けば、最高の王子様だよ。
大好きな人…だけど、吐き気と震えが止まらない…どうしよう。
こうしてゲロまみれの恋が始まった。
「今日はバケツは持って無いようだが、何で防毒マスクをしているんだ」
「防毒マスクじゃなくてゲロマスクです」
「何だ、それは?」
「よく見て下さい、これをつけて吐いたら…腰につけているボトルに吐いた物が入ります」
「そんな物、良く売っていたな」
「特注ですよ、北條の名前を出して医療メーカーに作って貰いました」
「俺としては顔半分隠れるのがちょっとな」
「仕方ないじゃないですか、こうでもしないといつ吐くか ゴボ、わからないんですから、しかもこれ声も籠らないすぐれものなんですよ」
「仕方ないか…だけど屋敷に居る時はバケツの方にしてくれ」
「東吾って変態? 私がゲロを吐く姿を見て興奮するとか?」
「違うぞ、ただ俺はお前の顔が」
「冗談ですよ、ちゃんとわかって ゲロロオェ ますから」
「確かに便利そうだな」
「ええっ、それでは行きましょう」
麗華は東吾の手を取った。
「どこに行くんだ?」
「おぇぇぇぇゲッ 貴子様に ウプ 挨拶ですよ、、貴子様や姉妹 ウプに 東吾は忘れがちですが、ゲロ お坊ちゃまなんですから」
「そうか、そうだな…苦しいなら…手を放しても良いんだぞ?」
「気持ち悪いけど、嬉しいから平気です」
「そ、そうか」
隣の家に東吾を引っ張っていった。
東吾の顔は…うん嫌そうだな。
考えて見れば、隣はそれなりの化け物が多い…私は北條家の貴子様を含み3人以外なら大丈夫だけど、
東吾は駄目なのかも知れない。
「一応、バケツを持ってきたよ」
「要らない、コツは覚えているから」
今日の門番は園崎さんだ。
「園崎さん…貴子さんに今、お会いできますか?」
「本当はお忙しい方ですが、貴方相手なら、黒木様と一緒でなければ会ってくれますよ…所で…そのマスクは何ですか、、毒物処理でもするんですか?」
「その、東吾様や貴子様を見ると吐いてしまうので…工夫してみました」
「そこまでして、本当に頭が下がるわ…成程、吐いた物は腰のボトルに入るのか」
「はい、声も籠らないし、匂いもしない優れ物です」
「そこで、今日は何の御用?」
「はい、東吾様とお付き合いする事になりましたのでご報告です」
「はい?…聞き間違い、かな」
「聞き間違いじゃないですよ」
「おい、園崎、、俺が居るのに酷いな」
「あっ 東吾さ…うっごく」
久々だから耐久が落ちたかな、まずい直視してしまった。
「そういう事だから、取り次いでくれないか」
「はい、ただ今」
「貴子さまあああああああああああああああああ」
「どうしたの?園崎さん、貴方が驚いた顔初めてみたけど、何があったの?」
「東吾様が、お坊ちゃまが」
「東吾がどうしたの?…まさか殺されたの?」
「違います…東吾様に彼女が出来ました」
「嘘よね、今日は4/1じゃないですし」
「母さん」
「あれっ、東吾どうしました、母は夢を見ていたのですが、南条さんそのマスクは何ですか? そうですか、此処に幻惑剤か何かが蔓延していて」
「貴子様、、落ち着いて深呼吸」
すーはーすーはー
「落ち着きましたか 貴子さま」
「ええ、もう大丈夫よ、園崎さん」
「東吾、その相手というのは、まさか南条さん?」
「はい、母さん」
「南条さん、、本当に東吾と付き合うの? 一時の気の迷いで人生を棒にふっちゃ駄目よ、もし脅されているなら私に言って」
「違います、貴子様、あああたしが好きになって告白したんです」
「貴方からですか、吐き気がするほど気持ち悪いのに?」
「はい、気持ち悪いです、だけど大好きなんです うぷ」
「それで、そのマスクは、何ですか?」
「その、東吾様が好きなんですが、見ると吐くので作りました」
「へぇー良く出来ているわね、、吐いたら、横のボトルに入るのね、消臭機能と声が通るような機能がついているのね」
「はい」
「私は、貴方達の恋を祝福しますよ、南条さん、いえ、いつかは家族になるのだから、麗華と呼ばせていただくわ」
「はい、えーと 貴子様」
「もう、お母さまでも良いのよ?」
「お母様、」
「はい、よくできました、貴方は本当に頑固で意思が強くて…立派ですね、この子を宜しくね」
「はい」
「玲奈や美優の所に行くんでしょう?」
「はい」
「面白いから此処に呼ぶわ、園崎さん、皆んなを呼んできてくれる、白金さんと古木さんも」
「はい、ただ今」
「お呼びですか貴子さま」
「もしかして東吾様と南条さんが何かやっちゃったのかな」
「母さん、何か用」
「美優になにかよう?」
「驚くわよ、何と、東吾に彼女が出来ました」
「「「「「「えー」」」」」
「嘘だよね、美優の聞き間違いだよね」
「母さん、今日は4/1じゃないぞ」
「貴子様、、洗脳はよくありません、この白金が責任を持って返してきます」
「そうですよ、人間として最低ですよ」
「あんた達、私をそんな風に見てたの? だけど、違うわ、何と告白をされたんだって」
「可哀想な東吾様、多分勘違い」
「うん、お兄ちゃんの勘違いかな」
「違うぞ」
「じゃぁ 相手はだれ?」
「そこにいる麗華だ」
「うそだー世界一の美少女が相手をするわけ無いんじゃん、東吾、おかしくなったのか」
「ち違います、私から告白しました、うぷ、ゴボゲゲゲげ」
「「「「そう、それじゃお幸せに」」」
「なんかあっさりしているな」
「そんな物だよ、お兄ちゃん」
「そうか」
私は、絵夢にも報告をしにきた。
「そんなに思い詰めなくても良いのに」
「違うよ、本当に好きになったの」
「麗華って完璧美少女だけど、目だけは腐ってたのか、そうか」
「何を言い出すのかな」
「いいや、こっちの事、おめでとう」
「ありがとう」
「で、麗子ちゃん、どうする? 私は許してあげたいんだけど」
「そうよね、二条家の人には良くして貰ったから、今度、貴子様に頼んでみるよ」
「そうしてあげて」
「東吾、お待たせ」
「あぁ」
「どうしたの?」
「そのマスクもう一個作って貰えないかな?」
「どうして?」
「いや、麗華が顔を見て話すと母さんも姉妹たちも嬉しそうだったから、俺も頑張ろうと思ってな」
「そう?」
「それじゃ帰ろう」
「その手は私と手を繋ぎたいのかな?」
「わざわざ聞く事ないだろう」
「はい、じゃぁ帰ろうか、、ウゲッゲロロ」
2人は仲良く手を繋いで家へと帰っていった。
美少女 メガネっ子になる
「白金さん、そう言えば奈々子ちゃんの身元保証はどうなっていたっけ」
「メイドでは無いので、北條のカードタイプの身分証明書を出しています」
「絵夢さんの身分証明も必要ですよ」
「あの子の場合は不思議な事に戸籍も無いのよ…しかも歳をとっても若いままでいられる何て聞いた事もないわ」
「そうですね」
「まぁ良いわ、絵夢さんにも身分証明書兼ねたカードを発行してあげて、適当な戸籍も作ってあげて…住民票は此処で良いわ、とりあえず二人には困らない程度のお金…月に200万円上限でお小遣いもだして」
「解りました」
「ところで、白金さん…100億円、どうするの?」
「100億円って何でしょうか?」
「やっぱり忘れていたのね、麗華さんも忘れていたけど…あなた、東吾の結婚相手や交際相手を見つけたら100億円払う約束したじゃない」
「あっ…そう言えば、しました」
「約束の2か月、まだ経っていないから、麗華さんに払うべきだわね」
「あの、そのお金はどうしましょう…私が出すべきですか?」
「流石の貴方でも痛い金額だから、私が出すわ、その位のお金 0.1秒で増えているから全然痛くないし、凄く気分が良いから、面白いから給料と一緒に振り込んでおくわよ、だけど、白金さんは何か南条さんにするべきだわ」
「それなら、考えていますよ、、園崎さんと一緒に協力して、北條の力を使ったグッズをですね」
「それ、私の名前も連ねておいてね」
「貴子様…は別のプレゼントが良いと思います」
「仲間外れ…酷い」
「違います、南条さんがもっと喜ぶ物があります」
「解っているわ、二条家よね」
「はい」
「もう、麗子は他国に売り飛ばしたから、家にまでは、何もする気は無いんだけど…」
「ですが、周りの者はそうは思っていません」
「それなら、書面でふれを出してあげて…もう二条家とは和解が済みだと」
「はい…その様に手配させて頂きます」
「これは何ですか?」
「プレゼントよ、凄く頑張っているし、東吾様とお付き合いになったお祝いも兼ねて」
「有難うございます、白金さん」
「それ、私以外にも、貴子さんと園崎さんも関わっているから、今度お礼を言っておいてね」
「はい、開けて良いですか?」
「どうぞ」
「眼鏡ですか? 私目は悪くないですよ?」
「白金特製…視力調整眼鏡です」
「視力調整眼鏡?」
「そう、これは良く見えるようにするのではなく、見えにくくする眼鏡です」
「それは何の役に立つのですか」
「つまり、東吾様や貴子様を見る時に、視力を落とせば、マスクは必要なくなるのではないですか?」
「そうですね、目から鱗です」
「横の調整で最低視力0.03まで視力を下げる事が出来ます。目に負担が掛かるので長い時間は無理ですが、短時間なら効果的です…」
「凄いですね、これ」
「有難うございます、白金さん」
「良いんですよ」
「あと、二条家の件はどうなりましたでしょうか?」
「麗子さんがサルバトーレ四世に嫁いだから、もう和解が終わっているのですが…知らない方の為に書面で触書を出すように貴子様に言われました」
「有難うございます、二条家には色々お世話になっておりましたので」
「良いのよ、これ位、貴方はもう仲間なんだから…ただ、麗子さんはもう正式に妻になってしまったので…諦めてね」
「そこまでは無理は言えません..有難うございます」
人と仲良くするのに外見は関係ない。
そう考えるようになったら、ここは本当に凄いな…皆んなが優しい。
だが、麗華は忘れている。
ここの皆んなは仲間には優しいのだ…敵には恐怖しかない事を。
「東吾、これどうかな?」
「眼鏡、うん似合っているよ、今日はバケツもマスクも無くて大丈夫なのか?」
「この眼鏡があるからね…ちょっと触って良い」
「別に良いけど、大丈夫か」
「じゃぁ恥ずかしいから後ろから抱き着くね」
「本当に? 俺は嬉しいけど…気持ち悪くなったら辞めるんだぞ」
「うん、大丈夫だね、これで思いっきりイチャつけます」
「本当…だけど、凄いねそれ…俺も1個欲しいな、そうすれば、隣にも自由に行ける」
「そうですね」
この眼鏡によって2人の距離は急速に縮まっていった。
if 悲劇没にしたエンディング (本編とは関係ないので 東吾のフアンは読まない方が良いです)
「変な夢を見たな…」
僕は頭が可笑しくなってしまったのか?
あの東吾が僕の親友なんて、何の冗談かな。
僕の全てを奪った人間なのに。
彼奴が来るまでは、僕は少なくとも人間として生活していた。
仲良し四人組の子とただ毎日過ごしていただけだ。
僕には勿体ない位綺麗で、可愛い女の子。
だけど、誰1人…元から僕には手が届かない高嶺の花。
白百合さんは確かに僕の幼馴染で仲は良いよ…だけど、小学校からいつも僕は恋の話を聞かされるだけで、付き合った事は一度もない。
金剛さんだってそうだ、、うちの親父の会社の社長令嬢だから付き合いがあって仲が良いだけだ。
僕だって身分違いは解るから、ただ話すだけの相手だ。
東条さんと仲の良いのは仕方ないだろう…だって同じ剣道部の仲間なんだから。
歩美ちゃんだってそうだ…母親どうし仲が良いから昔から付き合いがあるだけだ.
誰1人僕の彼女じゃ無いんだ。
なぁ、それなのになんで東吾、お前は僕を目の敵にするんだ。
あの子たちが僕を庇ったのが気に食わないのか?
そりゃ、顔見知りだから恋人でなくても庇う事位あるだろうよ。
今じゃもう、全部お前の取り巻きじゃないか?
どうせ手の早いお前の事だ…全員肉体関係位あるだろう?
もう僕は関係ないじゃないか。
わざわざ、白百合さんとしている所に僕を呼び出すかね。
そして
「気持ち悪いから見るな」
なんて言わすかね。
お前が僕を虐めの的にしたから、僕の机は落書きだらけだ。
死ねが何個かいてあるか解らない。
椅子は教室にいつも無い。
お前に好かれたいからな、東条さんは僕を気絶するほど竹刀で殴るんだ。
しかも退部届も受け取ってくれない。
叩かれすぎて、視力が片目は殆ど無いんだ。
歩美は歩美でお前に好かれたいから、この間なんか階段から僕を突き飛ばしたよ。
おかげで、片足皹が入って、今も痛いんだ。
金剛家にはお前の親父が圧力をかけたから、おれの親父は首になり今は無職だ。
まぁ、白百合さんはかなり庇ってくれたけど…お前が犯して物にしてからは僕とは口も利かないな。
俺はカッコよくも無いし金も無い…お前になんて勝てる物は何もない。
なのに、お前はなんで僕に構うんだ。
北條東吾…お前は僕から全てを奪った。
だから、僕はお前から…その美しさだけは奪う事にするよ。
お前の仲間に科学準備室に閉じ込められた時に、硫酸をパクッておいたんだ。
お前の権力があだになったな。
お前が持ち出した可能性も考えて…だれも追及していなかったぞ。
良かったよ。
「東吾くん」
「うるせーな、またお前か…白百合と取り込み中なのが解らないのか? 見せるのは1回だけだ」
「出て行って黒木くん…お願い」
「うん、解った…」
僕は硫酸を二人に振りかけた。
東吾には頭から振りかけたから、頭蓋骨が見えてきた。
醜く死ぬだろう。
喚いているが、無視だ。
白百合さんは顔の半分に掛かったけど…死にはしないだろう。
「黒木…貴様」
最後にそれを言うと、東吾は死んだ。
「黒木くん……」
息も絶え絶えに白百合さんが話し出す。
「私は、貴方が好きだから…守りたかったから..嫌いな奴に抱かれていたのに…なんで」
「うそだ」
「嘘じゃない、こんに事…された…それでも好きだよ」
「白百合さん…ゴメン..ごめんなさい」
僕はカーテンをはがすと、白百合さんを包んで、水場で顔を洗い…そのまま走って病院へ連れて行った。
命に別状は無い。
ただ、顔の半分は完全に崩れていて修復は難しいらしい。
僕は、このまま警察に捕まる…と思ったら捕まらなかった。
白百合さんが、僕を庇って、東吾との最中にビンが落ちてきて硫酸を被ったと証言したからだ。
不思議な事にビンに指紋は残っていたけど、白百合さんを助ける為にどけたと解釈されたようだ。
「ビンに触った」と証言したのが良かったみたいだ。
僕は、通りかかった時に、白百合を見つけて助けた人…そういう事になった。
結局、北條東吾については深く調べられなかった。
多分、悪い事を沢山していたので北條財閥の看板に傷がつくのを恐れたのだろう。
僕は今日も病院を訪れる。
白百合さんは醜くなったけど、好きな気持ちは変わらない。
僕は白百合さんに告白した。
「ねぇ、白百合さん…大好きだよ」
「やっと、言ってくれたね、私も大好きだけど」
「顔の事なら気にしないで…僕だってカッコよくないし…どんなに醜くなっても関係ない」
「だけど、、私 化け物だよ」
「それをしたのは僕だ…ごめんね」
「いいの…好きでいてくれるなら…何でもいい」
「僕の瞳は腐っているから…白百合さんが世界で一番綺麗に見えるんだ」
「本当…ありがとう」
僕にとっては醜くなった白百合さんの笑顔が世界で一番綺麗に見えた。
この白百合さんを僕はもう二度と離さない。
そう心に決めた
(FIN)
これも幻のエンディング、アップして2時間もしないで消した物です。
if 別の世界の黒木くんと白百合さん
目が覚めた。
豪邸ではない。
ここは、そうだまだ両親が居た時に住んでいた昔の家だ。
やはり、あれは夢だったのか…
僕は階段を降りて下に降りた。
母が朝食を用意している。
いつも食べていた、みそ汁と納豆とご飯、と卵。
僕はいつもの様に急いで食べる…時間は8時15分急いで登校。
友達は殆ど居ないから…一人で走って登校。
教室には遅刻ギリギリで滑り込んだ。
後ろの窓から2番目の席…そこが僕の席。
ここの席から…僕は白百合さんの後ろ姿を見る。
可笑しいな…全校一綺麗で可愛いい、白百合さんは僕の憧れなのだけど..何でこんなに苦しいのかな。
あれは夢だ…彼女が僕の恋人な訳がない。
だから、僕はただ眺めているだけで満足している。
授業が終わる。
いつもの様に白百合さんを眺めている。
また、かっこ良い奴が告白している。
そして撃沈している。
今日は野球部のキャプテンか…
僕みたいなモブは相手に何かして貰えないのが解っている…なのに..どうして苦しいのかな。
不思議な夢を見た。
白百合さんと僕が美味しそうにお弁当を食べている。
しかも、あーんと仲良く食べている。
考えれば考えるほど苦しくなる。
もういいや、楽になろう..僕は今日…告白する。
夢の中の白百合さんが喜んでくれたお弁当を作る。
さぁ勝負だ。
「白百合さん、ちょっと良い」
「黒木くん..どうしたのかな」
白百合さんを僕は屋上に呼び出した。
「白百合さん…僕と付き合って下さい」
「ごめんなさい…黒木くん..私好きな人がいるのごめんなさい」
「そう..ごめんね..迷惑かけて」
「ううん…こっちこそ」
現実は辛いな…
「そうだ…白百合さん..いつも学食でしょう、良かったらこれ食べて」
僕は、無理やりお弁当を渡して走っていった。
夢の様にいかないな…夢だとお弁当を白百合さんは「おいしいよ」って食べてくれたのに…
教室に帰った。
周りの目が、何やってんだ…そう言う目だ。
怖くて白百合さんの方が見れない…
私は恋をしている。
夢の中の私は凄く醜くだれも愛してくれない。
それなのに、たった一人の男の子は私を愛してくれた。
いつも顔を見たいのに見れない。
仲良く、お弁当を食べていた。
実際にはこの世の中に居ない人。
だけど、この夢を見た日から私はもう誰も好きには成れなくなってしまった。
学園一の北條東吾…憧れた時はあるけど、夢の中の彼にあってからはもう気にもならなくなった。
北條君がほかの誰かと話しているのを偶然聞いた。
内容はなぜ私を口説かないのかという事だった。
北條君は言っていた。不思議な事に彼女は好みなんだが、口説こうと思うと「白百合さんは渡さないよ」そう聞こえてくるんだそうだ。
それ、夢の中の彼が言っていた事だ。
昼休み、私は黒木君が押し付けたお弁当を手にしていた。
はっきり言って憂鬱だ…何で私が振った男の弁当を食べなきゃいけないんだろう。
だけど、これ男なのに私の為に作ったんだろうな…男のくせにお弁当…仕方ない今日だけは食べてあげよう…
可笑しいな..このハンバーグ..おいしいよ…何で涙が出てくるの?
この卵焼き..食べた事がある..何処で…夢の中で。
そうだ、夢の中のお弁当は私が作っていたんじゃない…彼が作っていたんだ。
黒木翔くん…私の一番大切な人…思い出した。
私は食べかけのお弁当を閉まった…私の一番大切な人を傷つけてしまった。
黒木くん…黒木くんは何処に…いた。
「黒木くん…世界で一番大好きです..付き合って下さい」
「僕も、白百合さんが大好きです。付き合って下さい」
あの時の言葉だ…私の顔は涙でグチャグチャだ…黒木くんも一緒。
「「とりあえず。また弁友からはじめようか」」
ねぇ黒木くん...白百合京子は何処に行っても黒木くんの恋人だよ
…もう、金剛さんや西城さんに触れさせないからね…
「白百合さん..どうしたの?」
「何でもないよ..翔くん」
クラスの喧騒はやかましい位騒がしくなった。
白百合さんの焼きもち
僕は東吾くんを見ていた。
正直、気持ち悪い。
だって美しい王子様みたいな美少年と化け物みたいな女が二人でイチャついているんだ。
恐怖しか感じないよ。
だけど、東吾くんをみて初めて自分という物が解かった。
あれは、他から見た僕の姿だ。
あの麗華が、東吾くんの恋人か…嫌だな…Wデートとか言ったら…断ろう。
正直、麗華を見た時は化け物の中の化け物に見えた。
よく見るとこの距離でも..充分醜くくて怖い。
「黒木くん…何を羨ましそうに見ているのかな?」
やっぱり、黒木くんも美女の方が良いんだ…そりゃ天下の麗華さんだもんね。
「別にみてないよ」
「嘘…食い入るように見ていたじゃない? 麗華さん」
「違うよ…僕が見ていたのは東吾くんだよ」
「本当にそうかな?」
嘘だよ..絶対に麗華さんを見ていたよ。
「いやぁさ…東吾くんとは友達だからさ、そのうちWデートとかしなくちゃいけないのかな?とか、あの人とも仲良くしなくちゃいけないのかな?って考えていたんだ」
「そうか? そうだよね」
「あっ…もしかして白百合さん焼きもち焼いた?」
「焼くに決まっているじゃないですか…黒木くんは本当にかっこ良いんですから」
「そう…だったら凄く嬉しいな」
「何でですか?…」
「だって焼きもち焼くって事はそれだけ僕を好きだって事でしょう? 凄く嬉しいよ」
「あの…あまり焼きもち焼かせないで下さいね…お手柔らかにお願いします」
「だけど、焼きもち焼いて怒っている白百合さんが可愛いから…またするかも知れない」
「まったくもう、黒木くんは….仕方ないですね」
薔薇姫 麗子のチャンス
私の名前は二条麗子、少し前までは 薔薇姫と呼ばれていた。
だが、馬鹿な事をした為に、今は樽に詰められている。
これが婚姻の為の出迎えなんて悪い冗談だ。
樽に裸で入れられて糞尿垂れ流し…暗いし臭いし…何も見えない。
両親があそこまで反対してくれたのが解る。
こんな事する位だ、真面に結婚する気など無い筈だ。
何度死のうと思ったか解らないが、だけど、私が死ぬと二条家の責任問題になるかも知れない。
そう考えたらそんな事は出来ない。
このまま海外の変態国王に贈られて、いたぶられて、辱めを受け殺されるのだろう。
そして、糞尿が樽の中で固まり体にこびりついた頃…樽は開けられた。
私は水は与えられたが食料は与えられていない。
体は干からびた老婆の様ね。
匂いもきっとホームレス以上に臭いはずだわ。
周りから嘲笑が聞こえてくる。
私を馬鹿にする声だ
「これはこれは…何と汚いメスだろうか?」
此奴が結婚相手か…あれっ今死ぬのなら..実家に責任が行かないだろう?
衰弱した体で体がふらつくのは当たり前だ、運が良いな…下はコンクリートだ。
私はタイミングを計る…勢いをつけた様に見えないように、それで後頭部を確実に打ち付けるように転んだ。
ぐしゃ、頭蓋骨が確実に砕けた…これで確実に死ねるだろう。
私は薔薇姫、どれ程落ちようと、自分の心だけは渡さない。
抱きたいのなら…この汚い死体を抱くが良いわよ。
先に逝くわね麗華さん、多分、貴方も私のように酷い目に逢っているんでしょうね…ごめんなさい。
私は絵夢とは違う、惨めになんか生きない、誇りを持って死んでいくわ…
死んでいく彼女は知らない絵夢や麗華が幸せに生きている事を….
お風呂パラダイス 絵夢無双
お風呂か…憂鬱だ。
いや、一緒に入れること自体は凄く嬉しいけど…僕の理性は持つのだろうか?
この世界の女性は肉食しかいない。
例えば、白百合さんだ。
可憐で優しく…まさしく汚れなんてありません。
そう見えるけど…実際には違うだろう。
妹キャラの歩美ちゃんだって、美優ちゃんだって性欲はある。
男女比が偏っていて男性を手に入れる事が全てのような世界だから仕方ない。
つまり、僕が手を出せばそのまま拒まれない処かウエルカムで出来てしまう。
確かに夢の様な話だけど..まだ、僕は恋愛をしていたいんだ。
仕方ない…約束したんだやるしかない。
「白百合さん」
「なにかな、黒木くん」
「今日、約束したお風呂一緒に入るから他の皆んなにも伝えておいてね」
あっフリーズしている。
僕も恥ずかしいから、伝えるだけ伝えて逃げるように去った。
「えっっっっー」
白百合さんの声が聞こえて来た。
恥ずかしいので先にお風呂に入って体を洗い待っていた。
貴子さん達の時は、感情的に行ってしまったが…
今回はしっかりと男用の水着を着こんでいる。
うん、これで大丈夫だ。
皆んなの足跡が聞こえてきた。
白百合さんや金剛さんが入ってきた。
嘘、真っ裸..何で..
「皆んな、せめて前位隠してくれない」
「黒木くん、私は男じゃなくて女の子だよ、下だけ隠せば充分じゃない」
「そうですわよ、黒木様、お風呂にバスタオルを巻いて入るのはマナー違反ですわ」
「そうそう、だから大きなタオルなんて巻かないのが普通だよお兄ちゃん」
そうか、あの時の貴子さん達はバスタオルを巻いていた…大人だから気を使ってくれていたんだな。
白百合さんや金剛さんはまだ、下だけとはタオルを巻いてくれているから良いけど…
他の人たちはそれすら無い…本当の裸なんだよ!
タオルを巻いて入るのがマナー違反なら..水着もマナー違反だよな。
「ちょっと待ってて」
僕は脱衣所に戻って水着を脱いで腰にタオルを巻いた。
「お待たせ」
「「「「「「「ななななななっ」」」」」」」」
「タオルを巻くのは違反なんでしょう?仕方ないじゃない」
僕は、この世界の男じゃない、混浴位は経験はある。
お婆ちゃんと子供しか居なかったけどね。
「じゃぁ、白百合さんからだね背中流してあげるね」
「ちょ…黒木くん..胸、胸…」
もう吹っ切れたから知らないよ。
「胸がどうかしたのかな? 可笑しな白百合さん」
「はぁはぁはぁ..うんぐ黒木くん..私..」
「どうしたの?」
「だっ大丈夫..あぁっ」
「はい、終わり..後は温まってから…」
「ごめんね..黒木くん..のぼせたみたいだから」
出て行ってしまった。
足がおぼつかないみたいだ。
「はい、次は金剛さんだよ..座って座って..他の皆んなは湯船で温まっていてよ..風邪ひくよ」
こちらから目を離さない状態で無言で湯船に入っていった。
ちょっと怖い。
「金剛さんは凄く肌がきれいだよね?」
僕は金剛さんの背中を撫でた。
「くく黒木様..それは、それは」
「それは..どうしたのかな?良く解らないよ」
「はぁはぁはぁ..駄目.駄目なのですわ..うぐ、うん.あん」
「はい、終わったよ..じゃぁ湯船に」
「わわくしも、のぼせてしまいましたわ」
物凄く噛んでいるね。
金剛さんは股間に手をあてながら走る様にして出ていった。
「じゃぁつぎは歩美ちゃんだね」
「おおおお兄ちゃん..お手柔らかにお願いします」
「何言ってるのか解らないけど?ただ、背中を流しているだけだから」
「ふぁぁ、お兄ちゃん..そこお兄ちゃん気持ちいいよ」
「そう?..じゃぁ今度はこの辺りかな?」
「駄目..駄目なのぉ..歩美..そこは」
「はい、終わったよ」
「うん、んぐ..はぁ..」
歩美ちゃんはひょこひょこ歩きながら出て行ってしまった。
「次は東条さん」
「ふゆぁい」
何を言っているか解らないや。
「はい、座って、座って」
「黒木君..ちょっと待って..ちょっと待っててばにぇ..」
噛んだ…面白いな、こんな顔、普段見せないのに。
「何を待つのかな? ただ、背中流すだけなのに..」
「だから、ちょっと..あたあたし..駄目..可笑しくなっちゃううのん」
「大丈夫だよ..東条さん、もう終わったから」
「そ、しょうか」
また噛んだ。
東条さんは走ってお風呂からでていった。
「じゃぁ次は玲奈さん」
「はいっ」
「じゃあ背中流すね」
「お願いしまう、黒木君」
今、噛んだ、ね
「どうですか? 気持ち良いですか?」
「うん、凄く気持ちいいでしゅね..黒木君ありゅがとう」
多分、玲奈さんは普通に話しているつもりなんだよな。
「さぁ終わったよ」
「しょう、しょうなんだ、ありぎゃとう気持ちよかった」
玲奈さんは何故か手を振って去っていった。
颯爽としているけど…鼻血で全部台無しだ。
「それじゃぁ美優ちゃん」
「やっと美優の順番かぁ…お兄ちゃん宜しくね」
「うん」
「お兄ひゃん..お兄ひゃん駄目になっちゃう..美優駄目に..」
「終わったよ」
恥ずかしそうに顔を隠して出て行った。
「はい、次は奈々子ちゃんだね」
私は負けません..ええ負けませんよ。
「あの、奈々子は..奈々子は..もう、はぁはぁはぁ、、だめー」
「はい終わったよ」
「お兄ちゃん..あっりがとうね」
やっぱり出て行ってしまった。
だけど、背中を流すだけでこれだったら…本当に行為する時にはどうなるんだろう?
最も、タオルを使わず、手で直接、洗っていたんだけどね…
私は、私はホワイトロリータ、絶対にまけません..ええ。
「さぁ次は絵夢お姉ちゃんだよ」
「ねぇ、黒木ちゃん..黒木ちゃんはお姉ちゃんと妹どっちが好みかしら?」
「絵夢お姉ちゃんならどっちでも好きだよ」
何をいうの..顔が赤くなるわよ..だけど、これで私の勝ちだ、妹になって良いなら絶対に負けない。
「そう、だったら今だけ黒木ちゃんの妹になるね..お兄ちゃん」
「そう..なんで?」
「じゃぁ、お兄ちゃん洗って」
「うん、うん..あっあっ」
これ、確かに気持ちいいな..初めて、だけど負けない。
「お兄ちゃん..絵夢ね旨く頭が洗えないの洗ってくれるかな?」
用意したシャンプーハットを装着と..
「しょうがないな絵夢ちゃんは」
凄く優しく洗ってくれるのね..本当に気持ちいいわ。
「ありがとう、お兄ちゃん…じゃぁ前も洗って」
「まっ前..前は自分で洗って」
「仕方ないなお兄ちゃんは..うんしょっと自分で洗おうっと」
「じゃぁ..お兄ちゃん今度は絵夢が洗ってあげるね..座って」
「ちょっと絵夢ちゃん..そこ駄目..駄目だって」
「お兄ちゃん..絵夢は背中洗ってあげているだけだよ?おかしなお兄ちゃん」
「本当に駄目..駄目なんだから」
「お兄ちゃん…女の子みたい..きゃはは..可愛い」
「本当に駄目..立てなくなるの」
「大丈夫だよお兄ちゃん..終わったから..さぁ体が冷えちゃうといけないから湯船に入ろう」
朦朧としているお兄ちゃんをそのまま手を引いて湯船につかった。
さてと..お兄ちゃんを体育座りさせて…その間に入り込めば..うん、後ろから抱っこしてもらった状態に。
「絵夢ちゃん..これは、これは不味いって」
当たっている..当たっているよ。
「お兄ちゃん? 何で?普通兄妹ならこうやって入るよ?」
確かにそうだけど..アニメや漫画で見たけど..駄目だ..本当に鼻血が出て来た。
「ごめん..お兄ちゃんのぼせたから上がるね」
ふぅこれで一歩リードね。
私はホワイトロリータ.ロリの頂点を極めた女よ..
妹やロリで戦うなら…誰にも負けない。
最終話 ありがとう
その後も僕は..自分にとって人間に見える人を探し続けた。
だが..幾ら探しても見つからなかった。
勿論、世界中探せば見つかるのかも知れない..だけど、ネットに写っている写真をくまなく見ても居ない。
希望を込めて..自分の彼女達に、自分に似ている人をデート中に指さして貰った事もあった。
だが…見えた相手は..同じ髪型、同じスタイルの化け物にしか見えなかった。
この世界で僕にとって人間に見えるのは、僕の周りの僅かな人達だけだ..
だが、その僅かな人は皆んな僕を愛してくれている…幸せだ。
元の世界ではすべての人が人間に見える..だけど、僕を見てくれる人は誰も居なかった。
そう考えればこの世界の人は…化け物に見える人も含んで..皆んなが僕に優しい。
どちらが幸せか考えてみたら…今の方が幸せに決まっている。
結局..僕はこの世界で大切な人達と小さな世界を作って楽しく生きていく。
彼女達や東吾くん以外は化け物に見えるけど…その化け物はとても優しい化け物だ。
最近では化け物も…怖くなくなった..東吾くんの彼女の南条麗華を見ていたら..慣れた。
そして、東吾くんと仲良くしている麗華を見ていたら..あれはあれで良いのだと頭で理解できた。
僕は、この不思議な世界でこれからも生きていく。
僕の瞳は腐っているのかも知れない、だけど..愛くるしく僕の傍にいる彼女達を見る度に思うんだ。
「この目で良かった」と…だって彼女達は性格も全て良い娘達だから…
そんな娘と出会わせてくれたこの目に感謝だ。
ありがとう..。
あとがき
この作品は…私の初期の作品なのですが…一番評価が解れる作品だと思います。
何しろ、この作品「HJネット小説大賞2018」一次選考通過者と作品【全303作品】に選ばれまして残念ながら2次で落ちましたが…
他のサイトでは週間1位、日間1位、月間1位と好調で感想も600位頂いていました。
そして出版の話もありましたが…途中で消える、何とも不可思議な作品でした。
未だに凄く好きな方が多いのに…何故かポイントが入らない…
今回、読みにくかったので綺麗に加筆修正を入れてみました..
自分でも評価がしづらい作品でしたが…最後まで読んで頂いた方本当にありがとうございます。
本当にありがとうございました。
石のやっさん