チートも無い.実力も無い..ただ有るのは..腐った目と美貌だけ..勇者がハーレム? 僕だってハーレムあるよ!

異世界転移は突然に
僕の名前は、黒木翼。
名前はかっこ良さそうだけど、、実際は違う。
ブサイクとまで言わないけど、決してクラスの中心になれるような人物ではない。
だけど、損な性格なんだ…悪い事や不正は見逃せない…
僕はクラスで虐められている子を助けようとした。
だが、それが間違いだったようだ、、
虐めの中心にはこの学園のカースト上位者が沢山居た。

天上東吾
日本を代表する企業の一人息子、甘いマスクと女性に優しい事から王子様と呼ばれている。
但し、僕には悪魔としか思えない。

吉祥院 麗華
この学園の理事長の娘、天上東吾の彼女、典型的なお嬢様キャラ、見た目は優しく綺麗。
但し、僕には悪魔としか思えない。

この2人が気の弱い同級生、細井君を虐めていた。
それが気に食わない僕は注意した。
結果、クラスの人気者二人はその矛先を僕に向けてきた。
この2人はクラスでも学園でも人気者だったので…今では学園中から虐められる存在と僕はなった。

僕はこいつ等が嫌いだ。
けっして泣き寝入りはしない、表向きはそのまま虐められているが、何時か復讐してやろう、そう思っている。

そんなある日の事、いつもの様に僕が虐められていると、床が光った。
光りは大きくなるとクラス全部を包み込み輝きを増した。

そして僕は気を失った。

チートは貰えなかったけど
目を覚ますと僕は白い世界に居た。
「おや目を覚ましたようですね、、貴方で最後になります」

「ここは何処ですか?」

「世界の間です」

「世界の間? それはいったい」

「貴方のクラスの人々は異世界ルーテンに召喚されました」

「それってもしかして、ライトノベルとかで書かれている、異世界転移ですか?」

「最近は話が早くて助かります」

「それで、僕たちは、召喚先で何をすれば良いのですか?」

「その世界に魔王が復活したので、その対応ですね…詳しくは向こうで聞いて下さい」

「解りました…行かないという選択は出来ないのですか?」

彼奴らが丸々異世界に行ってくれるなら、こっちで楽しく暮らせるかもしれない。

「それは無理ですね、此処まで来てしまいましたから、戻れません」

「ですが、ただの高校生が行った所で何も出来ないと思いますが」

「そうですね…だから本来、女神の私がチートをあげるんだけど…貴方の分がありません」

「どういう事ですか?」

「その、一つ余っていたのでおかしいなとは思ったのですが、貴方のクラスはこれで全員だと皆さんが言うので、その余った一つは砕いて、皆んなに祝福として与えてしまいました」

「ちょっと待って下さい、それでは僕は何の能力も持たずに行くのですか?」

「翻訳とアイテム収納はありますよ」

「それって全員の特典ですよね」

「そうですね…だけど、皆さんに相当嫌われていたんでしょうね? 居ないと言われて…離れた所に隠されていたんですから…一緒に魔王の討伐なんて出来ないんじゃないですか?」

「確かに、あいつ等と共闘なんて出来ないと思います」

「それじゃ、こうしましょう、貴方は戦わなくて良い様に致します、そして、チートはあげれないけど、
貴方の持っている能力を一つ変えてあげます」

「一つだけですか?」

「はい、但し、あくまで貴方の能力を変えるのですから、増えた分、他の能力は減ります」

色々考えて僕は

「では、女性限定で美醜逆転して下さい」

「それは美女がブサイクに見えて、ブサイクが美女に見えるようにして欲しい…そういう事ですか?」

「はい」

「亜人もいますから、メスという事で良いですか? それなら可能ですが」

「それで大丈夫です、お願いします」

「貴方の容姿も変えた方が良いかもしれませんね、周りと仲が悪いのであれば別人に成りすます方が良いと思いますが」

「そうしてくれると助かります」

「それなら、私のコレクションから一つ容姿を渡しましょう」

「コレクション?」

「これです」

「あの、女神様これって、女性用のダッチ…」

「失礼ですね、これは失敗作です」

「失敗作?」

「一人で居るのは寂しいので伴侶を作ろうとしたのですが、心まで作る事が出来なかったので…まぁ貴方から言わせたら…人形みたいな物ですか?」

「女神様って面食い?」

「誰だって醜い者よりは美しい者が良いに決まってます」

「そうですか、良く東吾に惚れませんでしたね」

「あの程度で美形なんて笑止ですね、私から見たら貴方と大差ありません…それに何やら心がどす黒いので好みではありません」

「確かに、ここにある物と比べたら、東吾なんて大したことありませんね」

「そりゃそうよ、私が作ろうとしたのは女神の私に釣り合う神だもの、歴史的な美少年がモデルだからそりゃ違うわ」

「女神様って人間で言う喪女…」

「失礼な…そんなこと言うならあげないわよ」

「すみません…許して下さい」

「じゃぁ、さっさと選んで」

どれもこれも、凄く美形で迷ってしまうが…その中でも一際綺麗な金髪の物があった。

「これにします」

「これで良いのね…って 傾国の王子セレス.スタンピートじゃない、、歴史上最高の美男子…凄いの選んだわね」

「そんなに凄いのですか」

「あの中でも間違いなく1番ね、、早速、貴方の魂を入れてみるわ」

「はい」

「セレス.スタンピートが動いている」

「そりゃぁ動きます」

「セレス様が微笑んでくれている」

「あの、女神様…」

「すいません、私とした事が見惚れてしまいました」

「そうですか」

「それで、お願いがあります、1日私とデートして下さい」

「はい?」

この女神様はここにずうっと一人なのかななら一日位良いか?

「召喚に問題がないなら」

「時間を止めるから問題はありません」

それから一日、僕は女神様と過ごした。
そうは言っても此処には何も無いのでただ話をしていただけ。
それでも楽しそうに彼女は笑った。

「楽しかったわ…黒木さん…だけどその容姿なら似合わないからいっそうの事セレスを名乗っちゃいなさい」

「問題になりませんか?」

「大昔の人物だし、少し私の方でより綺麗になるように手を加えたから問題ないわ」

「それなら使わせて頂きます」

「それじゃ、ありがとう美しい女神様…あの名前を教えて下さい」

「美しいなんて初めて言われたわ…私は女神マインよ、気が向いたら教会で手でも合わせてね、、旨く時が合えば神託が下せるかもしれないから」

「本当にありがとう」

「こっちこそ…さぁ行きなさいセレス」

「はい」

前の子達には醜いと言われたから認識障害を掛けたのだけど、、
まさか、あんな物を望むなんてね…
確かにあの目なら…私は美しく映るわね。
生れてから数億年の中で私を美しいと言ったのはあの子だけ。
人は等しく我が子だけど…自分に懐く子に優しいのは母として当たり前。
あの子には、特別な加護をあげましょう、そして見守る様にしましょう。

なにより、動くセレス.スタンピートが見れますからね。

だけど、タダでさえ男女比が1対3なのに、あんな美形でいって大丈夫かしら?

綺麗な王女は僕の物
僕は目を覚ました。
だが、周りを見回すと他の生徒は倒れたままだった。
僕が一番最初に目を覚ますと、説明が面倒だ…だから聞き耳を立ててそのままにしていよう。
会話がはじまった。
さぁ、起きるか。

「うーん、ここは何処だ」

「あの大丈夫でしょうか?」

「あぁ大丈夫です…貴方は一体?」

なんだ、この気持ち会悪い女は、、吐き気がする。
ここまで気持ち悪い女は正直見た事が無い。

「私は吉祥院 麗華と申します…えーと貴方は」

これがあの麗華?
まるで化け物だ…気持ち悪い、吐き気がする。
という事は、僕の願いはちゃんと叶っている。
ならば、僕の名前はセレスだ。

「私ですか? 私はセレスと言います」

「そうなのですか、凄く素敵な名前ですね、あちらで王女様が説明をしていますよ」

「解りました」

「ようこそ、勇者の皆さん、私はこの国セントハイムの第二王女マリアンと申します、後ろに居るのが姉のマリア、その横に座っているのが国王ハインリッヒ六世です」

「正直、何が何だか解りませんが、貴方達が偉い人だという事は解りました」

「その王女様や王様が俺たちに何の用があるって言うんだ」

「口を慎め、小僧」

「なんだ、このおっさん」

「貴様、王族に対する何たる狼藉、牢に放り込んでやる」

「ヒッ」

「良い良い、何も知らぬのじゃ許してやれ」

「ハッ!」

「すみません、教えて下さい、俺たちに何の用があるのですか? そして何で俺たちは何で此処に居るのでしょうか?」

「その事については私からご説明させて頂きます」

「宜しくお願い致します」

「実は最近、魔族の活動が活発になってきました、今までは人を襲わなかった魔物までもが人を襲うようになり、各国に多大な被害が及ぶようになりました、原因を調査した所遙か昔に勇者が封印した魔王の復活の兆しがある事がわかりました」

「成程、それが女神が俺たちに力を与えた理由なのですね」

「はい、魔王に対抗するために昔使われたと言う勇者召喚の魔法でお呼びさせて頂きました、
この魔法で呼ばれた者はここに来る前に魔族と戦う為の力を女神様から与えられているはずです」

「確かに、凄い力を貰った、なぁ、皆んな、女神が力をくれたのはこの為だ、、俺はこの国を救う為に戦おうと思う」

「東吾がやるなら俺も戦うぞ」

「私も戦うわ」

「その為の能力がこの前もらった能力なんだな」

「皆んなありがとう、マリアン王女様、俺たちはこの世界を救う為戦います」

「ありがとう皆さん…おやそちらの方はどうしたのですか?」

「お話は聞きましたが…私は女神様に会っておりません」

そういう事にした方が無難だ…多分調べれば勇者じゃなく、巻き込まれた。
そう解るようにしてくれている筈だ。

「そうですか、見た所、貴方は…それなりに身分のありそうな方に見えます…巻き込んでしまったのはこちらの落ち度、私の従者をしませんか?」

わわ私はこれ程美しい、男性を見た事がありません。
絶対に手元に置いて、自分の物にしなくては、私と結婚して王族になれると解れば喜ぶでしょう。
なにより私は、姉上と違って美しいですからね。

「美しい姫さまに仕えたい、そういう気持ちもありますが、見ていた所、貴方様は勇者様達を率いる立場のようです」

怖い、怖い…この王女、化け物にしか見えない。
麗華も恐ろしかったけど、この姫には負ける…正直寒気と吐き気が止まらない。

「はい、私はそのような立場にあります」

「私は、余り戦いは得意で無いので、あちらの姫様に仕えさせて頂けませんか?」

「えっ豚姫…いえ、あの姉に仕えたいのですか?」

嘘だ、豚姫だよ、醜くて第一王女なのに婚約者が決まらないのに、何で、、美姫と言われる私じゃ無くてあれが良いの。

「私では不服ですか?」

仕方ない、嘘をつくしか無いのか?

「すいません、耳を貸してくれませんか?」

(私は美しい方の傍だと緊張して仕事になりません、だから姫様とは少し離れた場所で働きたいのです)

「そう、ですか? ならば仕方ありませんね。慣れるまでは姉に仕えて…慣れてきたら私に…その様にしましょう」

そうですか、私が美しすぎて…緊張してしまうのですね…仕方ありません。今はこの城に居て貰うのが優先…それで手を打ちます。(マリアンの心の声)

「ありがとうございます」

気持ち悪い、吐き気がする、だが、東吾が僕を睨んでいる…僕から見てこの醜さ…東吾にとっては麗華を超える…凄い美人なんだろう。

僕は第一王女の方に向かおうとした。

「おい、お前」

「解っているさ、あのように美しい姫は、君の様に美麗な勇者にこそ相応しい…頑張れよ」

あんな化け物…君にお似合いだ…うん。

「セレス君だっけ、君とは良い友達になれそうだな」

「そうだね、僕はこれから仕える姫様に挨拶に行かないといけないからすまないな」

「引き止めてすまなかったね」

さて、目の保養、目の保養と。

「ハインリッヒ陛下、マリア様初めまして、今マリアン姫様に許可を得ましたが、マリア様に仕えさせて頂いても大丈夫でしょうか?」

「先程のマリアンとの話は聞かせて貰った、話が本当なら巻き込んでしまって済まなかった、だが、話が本当かどうか、勇者たちと一緒に選定の儀を受けて貰う…良いか」

「勿論でございます…賢王様」

「賢王?」

「私には凄く偉大な王に見えたので…私の国で言う、賢い王様という意味の言葉を使わせて頂きました、無礼だったでしょうか?」

これはお世辞だ、男は僕にとって美醜逆転していない…タダの王様にしか見えない。

「いや、初めて聞く話で驚いただけだ…賢王…うん確かに余に相応しい言葉だ」

「それで、私が仕える マリア様とお話しをさせて頂いて良いでしょうか?」

「構わないが…本当にマリアンではなくマリアで良いのか?」

「はい、マリア様が良いです」

「そうか、もし選定の儀で問題が無かったら、謝罪と感謝を伝えよう…とりあえずはマリアと話すが良い」

良かった…勇者たちは男も女もマリアンの傍を離れない。
あのまま、全員がマリアンに仕えるだろう。
幾ら醜く生まれ、勇者の心を掴めないからと今回の話はマリアンに任せたが、正直不憫だ。
此奴が、間者で無いなら、父としても王としても感謝しよう。

「マリア様…初めましてセレスと申します、まだ確定ではないですが、仕えさせて頂く事になるかも知れません…宜しくお願い致します」

物凄く綺麗だ。まるで、乙女ゲームの主人公かそのライバルみたいに綺麗だな。
可愛らしさの中に冷たさもある。こんな美少女なら赤いドレスでも青いドレスでも似合う。
つまり、1人で悪役令嬢の綺麗さとヒロインの可愛さを持っている。
こんな綺麗な人、女神様しか見た事が無い。

「セレス様、セレス様は本当に私に仕えて下さいますか?」

私は豚姫と陰口を叩かれている…そんな私にこんな綺麗な方が…信じられません。
しかもあの妹の侍従を断ってまで…しかもその姿はまるで、伝説のセレス.スタンピートの様に綺麗。

「勿論ですよ、美しい姫様」

「嘘つき…なんで、この私が美しいなんて言うのですか…そんなに私を馬鹿にしたいのですか?」

豚姫の私が美しいなんて、やっぱりこの人も私を馬鹿にしたいだけなんだ…妹と同じ様に。
可愛いい、可愛いと言いながら、裏では馬鹿にして、影では豚とか豚姫と馬鹿にするんでしょう。

まずった…僕から綺麗に見えるという事は…不細工だって事だ。
かなり、馬鹿にされてきたんだろうな…人が信じられなくなる位に。
どうしよう。

「僕は、嘘なんて言いません…なんで、貴方を美しいと言ったのが嘘になるんですか?」

「わわわわ私は、豚姫って呼ばれて…皆んなの嫌われ者です…父以外だれも愛してなんてくれません」

「まだ、僕は…逢ったばかりで貴方がどんな人か知れません、だから愛しているって言えば嘘になります」

「やっぱり、そうじゃない」

「違います、僕は少なくとも貴方と仲良くなりたいと思っています」

「嘘です、そうやって私を利用して、裏で馬鹿にするんでしょう」

何か地雷を踏んだのか。

「おい、貴様は私の娘…王族を馬鹿にして騙そうとしているのか…場合によっては牢に入ってもらうぞ」

「王様、いや賢王様、僕が無実を証明するには無礼を働かなければ証明できません、もし、無実だったらその無礼を許して頂けますか」

「何をするのか解らないが潔白を証明したなら、多少の無礼は許そう」

「マリア様失礼します」

何、マリアンではなくマリアに抱き着いただと、豚姫だぞ、我が娘ながら第一王女なのに見合い一つ出来ない、余に似たブサイクだ。

「離して下さい、そんな事で私は騙されません、もし馬鹿にしたのが違っても同情でしょう、、同情はもっと嫌です」

ここまで傷ついているのか、、仕方ない、、牢屋覚悟でするしかないか。

「姫様」

「無礼者、私の手をとって何をしようとしているのですか…幾ら私が豚姫だからって無礼にも程があります」

「衛兵、此奴を」

「えっ、胸…そんな…男性の胸…セレス様は何を」

そんな男性が自分の胸を触らせるなんて…そんな破廉恥な事を、、
駄目だ、私は王族、このまま快楽に負けてはいけない

「ほら、僕の心臓、ドキドキしているでしょう?」

「あの、この手を放して頂けませんか?」

「嫌です、僕はマリア様の事を考えるとこの通りドキドキするんです、聞こえますか僕の心臓の音」

「確かにドクンドクンしています」

「嫌いな人間に触れて、顔が赤くなったり、心がときめいたりしますか」

「しません…ね」

「だったら、僕は…貴方に嘘は言ってない…そう思ってはくれないのですか」

嘘、顔が赤い…ブサイクな私にこんな美少年が抱き着いて…胸を触らせている。
顔も近くて、今にもくっつきそう、、
今迄、男は元より女でも抱き着かれた事は無かった。
こんな風に抱きしめてくれた人は父しか居ない。
こんな事は絶対に好きでなくてはしない。

「解りました…だけど…放して下さい…その…鼻血が出てきました…」

「すいません」

「良いですよ…嘘では無いのが解りましたから…本気でいってくれたのですね、 何しろ、私と話していたセレス様が…動揺して僕って言っていましたからね」

「恥ずかしい限りです」

「はっ恥ずかしいのはこっちです…いきなり抱き着かれて胸を触らせられて抱きしめられて…私に理性がなかったらキスしてます…私は貴方の想像と違ってモテないのです…気を付けて下さい」

「解りました」

「セレス殿、物凄く無礼な行動だと思う…マリアンに同じ事をしたなら凄い問題になる、婚約者候補もいるからな…だが、正直言って、マリアは婚約者も居ない…更に言うなら本当に男性からはモテないのだ、君に聞きたい…君のいた世界では、そのマリアは綺麗なのか?」

「はい、とびっきりの美人です」

「ならば、仕えるのではなく友人として付き合ってくれぬか…それなりの身分と収入を保証しよう」

「身分と収入は最低限で良いです…友情や愛情にお金は要りません、貰ってしまったら、私は嘘つきになってしまう…要らないと言えないのがかっこ悪いですが」

「それは、知らない土地に呼び出されたのだ仕方ないだろう?…セレス殿は…本当に気高いのだな、娘の事、頼んだぞ」

「ははっ」

「あの、セレス様ごめんなさい、嘘つき呼ばわりして」

「いえっ 良いですよ、、綺麗なマリア様に抱きつけて役得です」

「….」

マリアは顔が赤くなりしゃべれ無くなった。

僕のハーレムの始まり
その後にすぐに選定の儀が始まる。
僕とマリア様の様子は他の者には見られていない。
マリアン様の説明の後にすぐに部屋を移動したようだ。

マリア様は寂しそうな眼をしていたが、僕は侍従に連れられ別部屋に行った。
流石、お城、、教会にしかこの部屋は見えない。

既に勇者組は選定の儀が終わっていた。

そして僕も選定の儀を受ける事になった。

僕はマリア姫に仕える為なのか王であるハインリッヒ6世も立ち合っていた。

僕の選定結果は

セレス
LV 1
HP 600
MP 750
クラス 女神の騎士 巻き込まれた者
ジョブ 姫騎士 (人造神)
スキル:翻訳.アイテム収納、(意思疎通)(自動鑑定(種族))

女神マインより( )の中は貴方にしか見えていません。
簡単に送り出したけどそのままでは死んでしまうのと問題があるので
追加しておいたよ。
意思疎通=自分が美しいと感じた者と意思疎通が出来る
自動鑑定=見た者の種族が解る

「うむ、本当に勇者ではなく巻き込まれた者のようだな…だが女神の騎士は凄いな、幻のクラスじゃないか…ステータスも勇者の中の下位の者よりは上…しかも既に ジョブに姫騎士がある…素直に詫びよう…巻き込んで済まなかった…そして娘の事を頼む」

「畏まりました」

ハインリッヒ6世はそのまま立ち去った。

暫くその場に居ると天上東吾が話しかけてきた。

「セレス君は選定の儀はどうだった?」

此奴、こんな優しい顔もするのか。

「多分、勇者の君たちとは比べられないと思う」

「そりゃそうだよな、良かったら見るか?」

「良いのか」

「ああ良いぞ」

天上東吾
LV 1
HP 1800
MP 680
クラス 勇者 異世界人
ジョブ 無し
スキル:翻訳.アイテム収納、光魔法レベル1 聖魔法レベル1

「やっぱり凄いな」

「そういうセレス君はどんな感じ」

見せない訳にはいかないよな。

セレス
LV 1
HP 600
MP 750
クラス 女神の騎士 巻き込まれた者
ジョブ 姫騎士 
スキル:翻訳.アイテム収納、

「確かに俺に比べたら低いけど、俺たち勇者の中でもこれより低い奴もいたぞ…まぁまぁじゃないかな」

「そうか、勇者と同じくらいなら安心だな」

「そう思うぞ…従者なら戦わないのだろうからさ」

「ありがとう」

「どういたしまして」

天上東吾…思ったより良いやつだな…なんで彼奴が僕を虐めていたんだ…気になる。
まぁ、それは何時かでよいだろう。
僕は勇者でない…戦う事もないだろう…勇者並みの力があるなら…安心だ。

「マリア様、無事、選定の儀が終わりました」

「お疲れ様…父から聞きました、間者の疑いも全く無し、しかもクラスは、、伝説の女神の騎士…更にジョブ迄発動して…姫騎士…言う事なしです…ありがとう…そしてごめんなさい」

「どうしたのですか?」

「私に仕えて…ジョブが姫騎士という事は…貴方は本当に…私に仕えて下さったという事です…それなのに疑ってばかりで…本当にすいませんでした」

「別に気にしていませんよ」

「あと、すみません、貴方には伝説の女神の騎士というクラスも発動しました…貴族や妹が勇者並みに戦えるのではないか…そういう話がでてしまいまして…勇者の女性から3名選んでパーティを組んで下さい」

「その3名は誰ですか?」

「それは、東吾様と話し合って選んでください。先程、見た所打ち解けたようですし」

「そうですか…でも私は戦うスキルが無いですよ」

「そこは大丈夫です、騎士のクラスとジョブを持っているのですぐに剣術スキルが身につくはずです」

「それなら、安心です」

「では、お疲れの所すみませんが、東吾様と話し合いをしてきてください」

「セレス君…よく来たな…話は聞いた…君も戦わなくちゃならないいだろう…大変だな…で誰を選ぶ」

「その前に、詳しい状況を教えてくれないかな…詳しい事情を知らないんだ」

「そうか、じゃぁこちらの情報を教えるよ…まず、驚く事にこの世界は男女比が偏っているらしくて男は貴重らしいいんだ」

「そうなの?」

「そうだ、それで俺のクラスメイト…まぁ仲間みたいな物なんだが、その中の男は貴族の娘達で優秀な者とパーティを組むらしい…」

「成程…では男は全部他のパーティになるから選べない…そういう事ですか」

「まぁな」

「それで、東吾くんはどうするの?」

「俺は勇者の中で1番優秀だからリーダーになった。パーティも主力だから女の勇者15名と貴族の娘10名のパーティーだ」

「それ、パーティと言うのかな? ギルドとかクラウンじゃないかな」

「そうだろうな? それで王様に頼まれてな、セレス君に勇者15名の中から3名引き渡す事になったんだ…それで誰が欲しい、、正直渡したくない奴もいるからその場合は断るが、まずは誰が良いか言ってくれ…」

「それじゃ、吉祥院 麗華さん」

麗華はいそいそとこちらに来ようとした。

「麗華は駄目だ、駄目」

「ごめん東吾くん、冗談だよ、君たちの雰囲気を見ていたら…どう言う関係か解るから」

「セレス君も酷いな」

「いや、羨ましかったから、いたずらしただけだよ…今度はちゃんと選ぶから…えーとこの三人が良いんだけど大丈夫」

「あのさぁ…セレス君…本当にその三人で良いのか? さっきのは流石に駄目だけど…もっと他の奴でもい良いんだぞ」

最初に断ったから遠慮したんだな…一番不細工な奴らを選んで…。

「この三人が良いや…連れてっても良いかな」

「良いぞ…本当に君とは…親友になれそうだ…気を使わせて…悪いな」

「じゃあ、僕はこの三人と親睦を深めるとするよ…それじゃ」

僕はお城の食堂に来ている。
ジュースは作るのが大変なそうなのでレモン水とソーセージの様なつまみを貰った。

「初めまして、僕の名前はセレスになります、宜しくね」

「私の名前は三浦真理です、宜しくお願いします」
「私は湯浅翔子です」
「私は丸井幸子です」

うん、知っているよこの間までは同級生だからね。

「そう、ごめんね、東吾くんのパーティから引き抜いちゃって」

「気にしなくて良いです…私はセレス様の様な方とパーティが組めてラッキーです」

この目で見ると三浦真理ってこんなに綺麗なのか、この目に感謝だ。
チビで小太りで胸だけが取り柄のブスが…凄い美少女に見える。
当たり前かこの子こそがクラスで1番のブス…いや全校で1番のブスだったから。
顔がこけしに似ていて目元がきついから呪いのこけし人形と言われた彼女が大和撫子にしか見えない。
やっぱり、黒髪、黒目の女性は仲間に欲しい。

「私の方こそありがとう、真理さんの様な綺麗な方とパーティが組めて幸せです。綺麗な黒い髪に黒い瞳、凄く綺麗ですね」

「そうですか、私、髪だけは自信があるんです」

「髪だけじゃないですよ、貴方の全てが綺麗にしか見えないのですが」

「本当?」

どうしよう、どうしよう、どうしよう、、もしかして私がヒロインなのかな。
たまにあるよね、女性向けのライトノベルで少女が異世界に行ってモテまくる話があった。
もしかしてあれなのかな…

「本当に綺麗ですよ」

「あの、真理ちゃん、、いい加減にして欲しいですわ、、次は私くしの番ですわよ」

「ごめんなさい、待たせちゃって」

「全然気にしなくて良いですわ、、、セレス様」

この子は成金の翔子だ。
お金持ちの娘だけど凄いブスで誰も相手にしない子だった。
それなのに貴族の様な話し方をするから、ギャグマンガのお嬢様というあだ名があった。
父親共々街の嫌われ者で本当に家柄の良い人に相手にして貰えない…そんな境遇だったと思う。
そばかすばかりで肌も汚く到底、綺麗には見えなかった。
だけど、凄いなこの目。
まるで貴族の令嬢にしか見えない…それも何処かの少女漫画の世界から来たような…美少女。

「あの、翔子さんはもしかして貴族だったりしますか?」

「私くしですか? 私くしの家は実業家で裕福でしたが貴族ではありませんわ」

「そうですか、まるで何処かの令嬢にしか見えませんでしたのですみません」

「謝る事はありませんわ…褒められて謝られたら私くし困ってしまいます」

「翔子さん…もう良いでしょう…今度は私の番です」

「すいません」

「うん大丈夫、だよ、だけどセレス様…凄くイケメンだよね、逆に聞きたいけど、もしかして王子様?」

「それがね、実は記憶が所々消えていて解らないんだ…多分召喚に巻き込まれたせいかな」

そうか、こう来たか。
この子はネズミににた感じの女の子だった。
可愛らしいキャラのネズミではなく、リアルなネズミ。
背は低くて可愛いのに顔が全て台無しという感じ。
実際に残念ロリというあだ名があった。
後ろ姿が可愛いからロリコンの変質者にスカートをめくられ、誘拐されそうになったが、顔を見るなり置いて逃げた。そういう噂もある。

それが、、この目で見ると、理想の妹にしか見えない。
この子がもし、子役としてデビューでもしたら、全てのヒロインの座はこの子になるだろう。
凄く可愛い。

「セレス様、、可哀想に」

「ありがとう、幸子ちゃん」

「幸子ちゃん?」

本当はしっているんだけど、知らない振りの方が良いよね。

「かなり、私より年下だと思うんだけど、、違うのかな」

「幸子は多分…確かにそう見えるかも知れないけどそんなに年下じゃないと思うよ…だって2人と同い年だもん」

「そうだったんだ…ごめんね勘違いして…だけど、本当に可愛いね、幸子ちゃんみたいな妹がいたら、毎日が楽しそうだね」

「私が…可愛いの?」

「うん、凄く可愛い」

「あっありがとう」

優しい人 固まる思い
「それでこのパーティなんだけど、余り危険な事はするのはよそうよ」

「それで良いのですか…不味い事になりませんか」

「私は勇者では無いから、大丈夫だと思う、それに勿論レベル上げもするし頑張るよ、だけどこの世の中を救うとか考えずに、君たちが危ない目に合わない…それを優先したい」

「それではセレス様のお立場が不味くなりますわ」

「そんな物どうでも良いよ…君たちが無事ならね」

「あのさ、なんでそんなに優しくしてくれるのかな…幸子にそんな優しい言葉かけてくれた人なんて居ないよ…なにかあるんでしょう?」

「あるよ」

「やっぱり、今なら怒らないから言って」

こんな綺麗な人が自分達みたいなブサイクに媚びる筈がない。
例えば、おとりとかに使ったりしたいから優しい振りをしているだけなんだと思う。

「正直に言うと下心」

「「「下心」」」

「うん、国が違うからかな、世界が違うからかな…君たちは凄く綺麗に見えるんだ」

「さっき、幸子の事可愛いって言ってたけど…本当なの?」

「うん、正直言って、頭も撫でたいのを必死で我慢していたよ…お兄ちゃんって呼んでくれたら嬉しいけど…歳が近いんじゃ駄目だよね」

「それ…本気なの…撫でても構いませんよ…はい…セレスお兄ちゃん」

「じゃぁ撫でさせてもらうね」

セレスは幸子の頭を優しく撫でた。

うわっこんな優しく頭なんて撫でてもらった事なんて無いよ。
しかも、こんなに凄く綺麗な人に…あれ、涙が出て来た。

「ごめん、そんなに嫌だった」

「違うよ…嬉しくてつい泣いちゃっただけだから気にしないで、これからも撫でてくれる…そのお兄ちゃん」

「幸子ちゃんが良いなら」

「あの、私くし、私くしにしたい事とかさせてみたい事はありませんの」

「そうですね、翔子さんなら…手を出して下さい」

翔子はおずおずと手を出した。
セレスは片膝をつくと手を取り、その甲にキスをした。

「キス…嘘」

これは不味いのですわ…夢にまで見た令嬢としての扱いなのですわ。
こういう場合はどう返せば良いのでしょう?
小説や漫画にこの続きは…書いて無いのですわね。

「流石に嫌だった、ごめんね、翔子さんは令嬢みたいに見えるから、こういうの慣れているのかと思って」

「わた私くしは社交界にデビューしてないので慣れていませんの…ですがセレス様だったら…私くしの好きな所にキスして構いませんわ」

「駄目だよ 翔子さん、そんな事いったら…口にしてしまうから自分は大切にしないと」

「くくく口、、別に構い」

「はい、はい、祥子さんはもう良いでしょう…次は私の番です、私にはして欲しい事とか無いんですか?」

「あの、髪を触らせて下さい」

「はい、、どどどうぞ」

「ありがとう、、やっぱり凄いね、、黒くて綺麗だと思ったけど、、触ってみたら凄くしっとりしている」

「わわ私髪だけは自信があるんです」

「髪だけじゃ無いよ…吸い込まれそうな綺麗な瞳…つい見惚れてしまう…あっゴメン」

「良いんですよ…セレス様になら何時触られても、見つめられても嫌じゃありません」

寧ろ、これはご褒美です。

「ごめんなさい、つい調子に乗って、女性の大切な物を触りまくってしまって」

「「「大丈夫です 寧ろ嬉しかったですから」」」

「そう言って貰えると助かるよ、それで話の続きだけど」

「そうですわね」

「私が先に外に出て行動してみようと思うんだ」

「セレスお兄ちゃんだけで」

「そう」

「危ないよ、セレス様」

「うん、だけど、君たちみたいな綺麗で可愛い人を危ない目に合わせたくないんだ」

「「「綺麗で可愛い」」」

そんな優しい目で見られたら、何もいえなくなっちゃう。
何て心地が良いのでしょうか…体が嬉しくて震えが止まらないですわ。
お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん…大好き。

「だから、三日間~1週間、私が外で行動してみるよ…冒険者とかに登録できるならしてみるし、危なくない場所で弱いモンスターと戦ってみる、、そして充分君たちが危なくない環境でレベル上げ出来そうな場所が見つかったら、、一緒に頑張ろう そんな感じでどうかな?」

「そんな…セレス様ばかりにご負担が」

「構わないよ、何度も言うけど君たちが危ない思いをする方がよっぽど辛いから」

「「「セレス様」」」

「あのさぁ…私達凄く幸せじゃない?」

「そう思いますわね、さっき迄と違って今では女神に感謝ですわ」

「そうだよね、幸子…信じられないよ」

「多分、東吾の所に居たら、私とか、おとりに使われて使い潰しにされていたんだと思う」

「そうですわ、あの人は外見と違い、、醜い物には冷たい人ですからね…実際に1人足りないのに東吾さんが無視しているから…誰も騒いでいません、 私達も一緒ですわ」

「幸子もそう思うよ、正直あの女神殺してやりたい位だったけど…今は感謝だよ…だってあんな綺麗なお兄ちゃんと仲良くなれそうなんだもの」

「セレス様…凄く優しいよね」

「セレス様はステータスすら聞きませんでしたわ…多分、知りたいはずです…だけど、今日は戦いの話を辞めて、私達の精神面のフォローをしていたんだと思いますわよ」

「そうなのかな」

「だって、あの方、私達が怖いと思っているのを察してか、始終優しく話して下さいましたわ」

「幸子、決めたよ、頑張ってセレス様の為に強くなるって」

「私くしは頭だけは良いので、図書館とかで魔法について頑張りますわ」

「私は、根性だけなら誰にも負けないから、強くなる、絶対にセレス様を傷つけさせない様に」

セレスはハーレムばかりでなく、真のパーティを作ってしまった事にまだ気が付いてなかった。

冒険者ギルドへ
僕は彼女達と話が終わり、今後の大まかな予定が決まると再びマリア様の所に訪れた。
「失礼致します」

「セレス殿ですか、話し合いの方はどうなりましたか?」

うん、これが正しい話し方だよね、さっきまで混乱していたのか王族なのに、僕に様つけてたし、、

「はい、三人頂きまして、無事パーティが組めました」

「そうですか、それで今後の方針は決まりましたか?」

「彼女達三人は暫くここで訓練等をして暮らして貰います」

「そう、それで貴方はどうなさるのですか?」

「それでお聞きしたかったのです、この世界が私の知っているような世界なのかどうか、、」

「そうですね、、確かに知らない所からきたのですから擦り合わせが必要ですね」

マリア様から聞く限り、、まるで僕たちの世界のゲームの様な世界だった。
冒険者ギルドもあれば、モンスターもいる。
モンスターを狩れば経験値が入り、素材を売ればお金になる。
うん、概ね一緒だ。
これなら、装備を揃えれば、、直ぐにでも出れるだろう。

「決まりました、私は明日にでも王都の冒険者ギルドで登録して活動しようと思います」

「お一人でですか?」

「ええ、女性には危ない真似はさせられません、女性を守るのは男の甲斐性です」

この人は何を言っているんでしょうか?
普通は男を守るのが女の義務です。
それなのに男が女を守るなんて…勇者で無ければさせません。
もしかしたら、女性を守ろうと言う心が、女神の騎士という幻のクラスや姫騎士というジョブが発現した原因なのかも知れません。
ならば、王女としてこの気持ちを応援するのが私の仕事です。

「そうですか、貴方の思いのままに行動して下さい、私は出来る限りのバックアップをさせて頂きます」

「有難うございます」

私はセレスに出来るだけの事をしようと思ったが、良い装備は勇者用に殆ど持っていかれた後だった。
流石に我が妹だ手回しが良い。
仕方ない、自分で装備を用意して貰うようにお金を用意する事にしよう。

「セレス殿、 金貨50枚を与えます、これで装備を整え頑張って下さい」

「解りました、頑張ります」

僕は、今冒険者ギルドに向かっている。
僕の顔は、セレス、スタンピートそっくりな美少年の筈だから、顔を半分隠しながら。
町並みはヨーロッパの中世の様にレンガ作りの建物ばかりで大体が2階建てだ。
おおよその場所と特徴を聞いていたので問題なく着く事が出来た。
東吾から聞いた通り、街並みのギルドも女の方が多い。
案外、女性はブサイクの方が多いのに驚かされる。
つまり、本当は美しい女の方が多いという事だ。

ギルドに着きギルドの大きな扉を開いて中に入った。
絡まれるようなテンプレは起きない。
僕からみて不細工に見える女の受付と男の受付は凄く混んでいる。
男の受付は沢山の女が並んでいる。
その女を見ると、、綺麗な女性と不細工な女性が並んでいる。
不細工な女の受付は沢山の男が並んでいる。

そして、僕は一際人気の無いだれも並んでいない受付に向かった。

「冒険者ギルドへようこそ! 本日はご依頼ですか?それとも登録でしょうか?」

うん、凄く可愛い。
多分、獣人なんだろう、頭の上の耳がピコピコしている。

「登録をお願いします。」

「登録には銅貨1枚掛かりますが宜しいでしょうか?」

僕は銀貨1枚とマリア様から頂いた手紙を渡した。
ギルドで出すように言われた手紙だ。

銅貨9枚が帰ってきた。

「王家の身分保証書、凄いですね!所でご説明は必要ですか?」

「何も解らないので細かくお願い致します」

「畏まりました」

説明内容は、
冒険者の階級は 上からオリハルコン級、ミスリル級、金級、銀級、銅級、鉄級、石級にわかれている。
そして、案外上に行くのは難しく、銀級まで上がれば一流と言われていて、この街には金級以上の冒険者は居ない。

殆どが、最高で銅級までだそうだ。

級を上げる方法は依頼をこなすか、大きな功績を上げるしか方法はない。

銀級以上になるとテストがあるそうだ。

ギルドは冒険者同士の揉め事には関わらない。

もし、揉めてしまったら自分で解決する事。

素材の買取はお金だけでなくポイントも付くので率先してやる方法が良いらしい。

死んでしまった。冒険者のプレートを見つけて持ってくれば、そのプレートに応じたお金が貰える。

そんな感じだ。

「後は大丈夫?」

「はい」

「それでは、冒険者証が出来たから渡します。はい、初めてだから石級からスタートです」

「あの、ステータスを調べたり、名前を書いたりしないんですか?」

「セレス様の場合は省略です、普通はチェックするのですが、王家の身分保証書に全部書いてあります、

ただ、冒険者になるのなら、大きな犯罪さえして無ければ問題無いのですが、セレス様の場合はクラスやジョブが特殊なのでその口止めが書いてありました」

確かに幻のクラスと言っていたっけ。

「ありがとうございます、それで本当に素人なので、冒険者として必要な物と、簡単な依頼を教えて頂けますか?」

「そうですね、慣れる為には ゴブリンの討伐、薬草の採集辺りは如何ですか? 常時依頼なので掲示板から依頼書を持ってこなくても良いですし、失敗しても罰則もありません」

「そうですか、それではそちらから挑戦してみます」

「装備や図鑑は隣りで売っているので、そちらで初心者に適した物を買うと良いと思いますよ」

「はい、所で初心者に向いた、、良い場所はありますか?」

「そうですね、街を出て真っすぐ行った森辺りから試してみては如何ですか? あの辺りは余り良い場所では無いけど、強いモンスターも出てきませんから」

「有難うございます」

「はい、頑張って下さい」

しかし、あの人顔を隠していたけど、男だよね。
良く私みたいな獣人の受付にきたわね。
しかも獣人の中でも一番醜いネズミの獣人なのに。
顔を半分隠していたけど…私と同じ醜い顔か怪我でもしているのかな?
次来たら優しくしてあげようかな。

「すいません、初心者なんですが、最初に何を揃えたら良いか教えてくれませんか?」

「そうかい、初心者かい…そうだな、最初なら無理する必要は無い、その辺りにある安い剣かナイフ、革製の中古防具、植物図鑑、布袋辺りからで良いと思うよ」

うん、綺麗なおばちゃんだ、見た感じ歳をとったアイドルかグラビアアイドルみたいに見える。

「使うのは剣で余り長くない物、布袋は持っているので要らない、後はお任せでお願いしても良いですか」

「初めてじゃ仕方ないか? 今回は特別に選んであげるけど、本来は冒険者にとって防具や武器は命を預ける物だ、早く見る目を養って自分で選べるようになりなよ」

「はい」

「じゃぁ、剣は鉄の剣で良いか、予算にもよるがこれ位の物ならオーク位までならもつ」

「有難うございます」

「防具は皮の鎧で体に会う物がよいな、、、ちょっと体を触らせて貰うよ、、、えっ胸が無い、、男」

「男ですが」

「いや、男の冒険者は少ないからね、顔を隠しているから訳ありかな、まぁ聞かないよ」

「ありがとうございます」

「初心者なら中古で充分だね、、これなんてどうだい」

「じゃぁそれにします」

「あとは植物図鑑と解体用のナイフ、、最初はそれだけで充分さ」

「それ全部で幾らになりますか?」

「本来なら銀貨8枚という所だが、、男だから5枚で良い」

「それじゃ宜しくお願い致します」

防具の身に着け方を教わり、森に向かった

……今日僕は初めての冒険をする。

ロリっ子パラダイス
受付の女の子に教わった森に着いた。
今日は初めてだから、体験だけで良い。
自分1人で来たのには訳がある。
女の子の前で恥を書きたくないからだ。
僕の見た目は、伝説の美少年セレス.スタンピートだ。
みっともない姿は余り見せたくない。

ライトノベルの主人公なら鑑定で楽勝なんだが、その能力は僕には無い。
多分勇者の誰かが持っているかも知れないが僕には無い。
だから地道に図鑑と見比べながら探すしかないのだ、しかもこの図鑑、元の世界と違って写真じゃ無くて絵だから今一合っているのか自信が持てない。

暫く薬草探しに没頭していると、可愛らしい幼女が居た。
凄くみすぼらしくてボロボロの服を着ている。
しかも靴も履いてないし、下着もつけていないから目のやり場に困る。
もしかして、道に迷ったのかな?
親が居ないのかな?
気になったので声を掛けた。

「こんな所でどうしたの大丈夫?」

彼女の横に急に文字が見えた、、種族:ゴブリン 

そうか、この為にマイン様が僕に二つの力を追加してくれたんだ。
自動鑑定(種族)が無かったらつんでいた。

「人間、人間が私になにかよう、、殺すの」

これが、多分 意思疎通の能力か頭の中にまるでテレパシーの様に彼女の声が聞こえる。

「いや、可愛らしい子供が居るから見惚れていただけだよ」

「貴方は、頭が可笑しいのかな? 私はゴブリンだよ」

「ゴブリンかも知れないけど…凄く可愛く見えるけど」

「あのさぁ、貴方はゴブリンを見るの初めて? しかもメスのゴブリンがどんな存在か知らないの」

「知らない」

「メスのゴブリンはね」

彼女が話始めた。

聞くと物凄く悲しい話だった。
ただでさえ醜いゴブリン、その醜いゴブリンのオスにすら相手にされない程醜いのが彼女達だった。

確かに、ライトノベルや漫画でもゴブリンは人間の女を苗床にしていた。
そう言えば、同族に女がいる筈なのに、相手にしている描写が全くない。

「自分達だって充分醜いのに、私達みたいな醜い女は相手にしたくないんだってさぁ酷いでしょう、醜いゴブリンのオスでさえ抱きたがらない、それが私達なんだよ、、そんな私を綺麗、、ねぇ、、何の冗談? 人間」

「あのさぁ、私から見て君は充分可愛いと思うよ」

「そういう嘘は辞めて、殺すなら一思いに殺して、私の耳が欲しいんでしょう」

確かにゴブリンの討伐報酬は耳だ、、だけど、僕には出来ないよ。
だってだって、、凄く可愛いんだもの…天使の様な可愛い女の子、しかも小学校の低学年位の女の子の耳なんて切り落としたらトラウマになるよ。

「要らないよ、僕は君が本当に可愛いと思ったから話しかけただけだ…だけど聞いても良い」

「可愛いの…嘘でも嬉しい、聞きたい事があるなら何でも聞いて」

「あのさぁ、僕は女の子のゴブリンは襲われない限り絶対に殺したりしない…君に誓うよ…僕がオスのゴブリンを殺したらどう思う?」

「そうね、どうも思わないわ、だって、オスのゴブリンはメスのゴブリンは基本嫌いだから」

「そうなの」

「だって、人間の女を攫って苗床にして、私達は醜いからって相手してくれない、、同じ群れに居たらその手伝いをしなきゃいけない、、何でメスの私達が…自分を相手してくれないオスの女を調達する手伝いをしなくちゃいけないのか解らないよね」

それって人間に直すと自分を愛してくれない男の為にレイプを手伝うようなものだな…納得。

「だから、殆どのメスゴブリンはオスのゴブリンが嫌いだから、オスなら殺してもなんとも思わないわ」

「良かった」

「それでこれからどうするの?」

「うん、私は薬草を探しにきたからこれから薬草探しかな」

「あのさ、その草探すのを手伝ったら、もっとお話してくれる」

「良いけど…良いの」

「うん」

この子笑うと本当に天使だな。
だけど、目に毒だ…だって下着もつけてないし、屈んで薬草を取っているからお尻が丸見え。
見ない様に横に行ったら、布の隙間から小さな胸が見える。
僕はロリコンじゃない、ロリコンじゃない…うん大丈夫だ。

僕とは違い、凄い勢いで薬草を見つけてくる。
しかも、森に慣れているせいか何処に生えているのか詳しい。
あっという間に薬草の山が出来た。
多分、普通に考えて一人で盗れる量じゃ無いだろう。

「もう、大丈夫だよ、手伝ってくれてありがとう」

「じゃぁ、お話しして」

「お話も良いけど、遊ばない」

「遊びってなあに?」

きょとんとしている。
本当に可愛いな…。

「鬼ごっこって遊びしよう」

簡単に説明してただひたすら追いかけっこをしていた。
こんな単純な遊びなのに彼女は凄く喜んではしゃいでいた。
楽しい時間は直ぐに過ぎていく…日が暮れ始めた。

「ごめんね、そろそろ帰らないと」

「また、お話したり、遊んでくれる?」

「勿論、そう言えば名前を聞いて無かったね」

「名前、ゴブリンだから名前はないよ」

「じゃぁ、てんこって名前で呼んで良い?」

「私の名前…てんこ…ありがとう素敵な名前を付けてくれて…その人間の名前は」

「私はセレスって言うんだ」

「セレス…また今度あそんでねバイバイ」

「うん、バイバイ」

振り返るとてんこはずうっと手を振っていた。

僕も振り返ると大きく手を振った。

初収入のお裾分け
結局、僕はてんこと別れて直ぐに冒険者ギルドへ戻ってきた。
相変わらず、獣人のお姉さんの所はすいていた。
僕を見つけるとお姉さんが話かけてきた。

「どうだった、冒険者として初日は?」

「まぁまぁです。薬草を取って来たので買取をお願いできますか?」

「薬草? 何処にあるの?」

「今出しますね」

「そういえば、アイテム収納持ちだったね…何その量、本当にセレス一人で採ったの?」

てんこの事は言えないよな、、

「そうです、運よく沢山生えている所を見つけまして」

「それでも、凄いよ、この量は一パーティ分はあるよ、いま査定するね…うん質も良いね」

「ありがとうございます」

「初めてだから少し色を付けたよ、銀貨2枚…はい」

「銀貨2枚か…有難うございます」

帰り道に、見た事無い砂糖菓子を見つけた。4つ買った
安物で申し訳ないが、マリア様には首飾り、三人には髪飾りを買った。
この世界に来て初めての収入、だからこの世界で仲間になった彼女達に何か贈り物をしたかったんだ。
さぁ、お城に帰ろう。

門番のお姉さんに挨拶だ。
残念な事に、普通の人に見える。
だから、彼女は美しくも、不細工でも無い普通の人なんだろう。

「セレス様、どうしたのですか? その様な姿でちゃんと支度金を貰ったのでしょう?」

何で、姫騎士のセレス様が、冒険者、それも下級の冒険者の恰好をしているんだ。

「あははは、確かに貰ったけど、どうせなら下から頑張ってみようと思います」

「そうですか?」

「はい、お金も新しく仲間になった勇者の三人に少し渡して姫様に返そうと思います」

「セレス様は他の方と違って気高いのですね」

「他の方?」

「何でもありません」

「そうですか、ちなみに、門番さんで賃金は幾ら位貰っていますか」

「私か、私は月に大体金貨1枚ですね、一応高給取りなんですよ、これでも」

確かに初心者用の装備とはいえ銀貨8枚で購入できるのだから、収入は良いのかも知れない。

「参考になりました、ありがとう」

「どう致しまして」

「しかし、セレス様は勇者様達と違うな」

「セレス殿、その恰好は何ですか? ちゃんと支度金を渡したはずです」

「確かにマリア様から頂きました、だけど多すぎるのでお返しします」

マリア様に金貨40枚を返した。

「これを何故返すのですか? これは貴方に差し上げた物です、まさかここを出て行こうと言うのですか?」

「悲しい事を言わないで下さい、私は貴方の騎士ですよ」

「ならば、なんでですか?」

「このお城の門番の月の賃金が金貨1枚と聞きました」

「それが何か?」

「今の私は残念ながら、それ以下の実力しかないでしょう、ならばその金額は過分です」

「ですが、それでは十分な装備が準備出来ないでしょう」

「私はこの世界を下から見て行きたいのです」

「下からですか…随分と大変な道を行くのですね?」

「正直言うと、全部要らないと言えばかっこ良いのですが、仲間の三人は女性ですので金貨3枚ずつ、自分に金貨1枚頂かせて貰いました」

「もう1度いいますが、それでは充分な装備が用意できないのでは?」

「それは冒険者として頑張って揃えていきます」

「お気持ちは変わらないのですね」

「はい」

「解りました、金貨は父である王にお返ししておきます、私の騎士は随分と気高いのですね」

「ただ、頑固なだけです」

「その頑固さが素敵です」

「そうですか? そうだ、マリア様、これを良かったら貰ってください」

「何ですか、これは?」

「今日は初日なので薬草の採取をしました、初めてお金を手にしたのでマリア様に何か差し上げたかったものですから、王族には到底似合わない露店のネックレスと砂糖菓子ですが貰って下さい」

薄汚れた皮の鎧に錆びた剣、そんな身なりをして朝から今迄泥だらけになって、、
そうして得た収入で貴方が買ってくれた物、、
私には国宝の宝石よりも価値がありますよ…私の為にその様な事をしてくれた方は居ないのですから。

「どうですか、セレス殿似合いますか?」

「姫様はどんなお姿でもお綺麗です」

「姫様ですか」

「慣れて無いものですいません」

「良いのです、貴方の好きなように呼んでください」

カッコいい、、凛々しい何て方なのでしょうか。
セレス様は絶対に高貴な方にちがいありません。
彼に相応しい姫になるのは凄く大変な事なのかも知れません。
人から貰うのを良しとせず、逆に自分が手にした物は他人に譲る。
これは上に立つ者にとっては必要な事です。
また、簡単には出来る事ではありません。
その様な所作を自然に身に着け
王族である私が…緊張して話してしまう、、本当に何者なのでしょうか?
本物のセレス.スタンピート様、、な訳ありませんね。

「あのセレス様、この金貨はなんでしょうか?」

「うん、最初姫様から金貨50枚貰ったんだけど、どう考えても可笑しすぎるから40枚返したんだ、これは残り、1人3枚ずつとって」

「ちょっと待って下さい、私くし達が3枚ずつとってしまったらセレス様の分は1枚しか無いですわ」

「うん、それで充分、冒険者に登録して初期の装備を整えるなら充分だよ」

「セレスお兄ちゃん、幸子達は勇者だから装備は貰えるみたいなんだ、だからその金貨はお兄ちゃんが使って、本当はその為のお金でしょう」

「まぁね」

「だったらセレス様がそのお金を使って下さい、そしてもっと綺麗な装備を揃えて下さい」

「私には要らない物だよ、欲しい物は自分の力で手に入れたいんだ」

「それなら私達も」

「それは駄目、女の子なんだから男と違ってお金が必要な事もあるかも知れない、、だから受け取って」

「そこまで言うなら、貰って置きますわ」

「ちょっと、翔子さん」

「貰って置いてセレス様の為に使うのは私の自由ですわ」

「そういう考えもあるのね」

「幸子もそうしようと」

「どうかしたの?」

「「「何でも ありません (わ)」」」

「そう? なら良いや、所でこれ買って来たんだけど良かったら貰って」

「この髪飾りはどうされたのですか?」

「今日は初日だから薬草採取の依頼を受けたんだ、それで収入が入ったから買って来た」

「お兄ちゃん、どうして」

「この世界で初めて手に入れた収入だから君たちに何か買ってあげたくてね、ただ収入も多くないから露店の安物だけど」

「本当に嬉しいですわ、、私くし余り殿方からプレゼントなんて頂かないものですから」

「翔子さんは余りではなく、だれからもじゃ」

「煩いですわよ真理子さん」

「ごめんなさい、つい声に出ていたね」

「まったくもお」

「セレスお兄ちゃんありがとう、幸子に似合うかな」

「うん、すごく可愛い、似合うよ」

「私はどうですの?」

「私は?」

「似あっているよ、2人とも」

こんな安物で喜んでくれるなんて、今度はもっと良い物を買ってこよう。
そう僕は思った。
だって、もの凄く可愛い笑顔で笑ってくれるのだから。

教会と集落
冒険者生活2日目。
僕は教会を探しにきている。
マイン様と手を合わせる、そういう約束をしたのを思いだしたから。
教会を見つけてマインにお祈りをしようと思ったら驚く事に女神像の顔の部分が無かった。
気になった僕は近くにいた、昔は凄く綺麗だったんだろうなと思えるシスターに聞いてみた。

「あの女神様のお顔が無いのですが」

「女神マイン様は醜いので神像を作る場合、顔を作らないと言うのが昔からの習わしなのです」

「そうなのですか?」

「はい、また美しい方には意地悪をするので、美しい方は拝んではいけない、そういう教えもあります」

「この世界は一神教では無いのですか?」

「他にも幾つかの教えはありますが、この国では一神教ですね。」

「教えて下さりありがとうございますでも、私は女神マイン様が好きなのですいません、拝ませて下さい」

「それは勿論構いません、どうぞ」

僕は、神像に手を合わせた…だがタイミングが合わなかったのか神託は降りなかった。

「ありがとうございました」

「貴方に女神マインのご加護がありますように…」

さてと、今日こそは狩りをしなくては、ゴブリンやオーク等の討伐は常時依頼だった。
また依頼にないものでも素材は買い取って貰えるから、てんこへのお土産に干し肉でも買ってから森へ向かおう。

てんこはと、居た。
意思疎通は凄い、何となくだけど相手が居そうな場所が解る。
最も、カーナビやGPSの様にピタっと解るのではなく何となく、あの辺りに居そうだな位だけど。

「おーい、てんこ」

「あっ、人間じゃなくてセレス」

てんこは走ってきた。
必死に走る姿が可愛い。
残念ながら僕には妹は居ないけど居たとしたらこんな感じなのかも知れない。

「こんにちは」

「こんにちはセレス、今日はどうしたの?」

「この間のお礼に干し肉買って来たんだ、良かったら食べて」

「こんなに沢山、、ありがとう、今日も薬草探し? また手伝おうか?」

「今日は狩に挑戦しにきたから、1人で頑張るよ?」

「その狩る相手はゴブリンでも良いの?」

「女の子のゴブリンじゃなくオスのゴブリンならね」

「じゃぁ、私の集落にこない? 実はそう遠くない場所にオスのゴブリンの集落があるから迷惑しているんだ、そこなら確実に沢山居るから」

僕はてんこについてゴブリンの集落を訪れた。

見た感じは小さな村みたいだった。
小さな建物が3つ位あり、入口に2人やりの様な物を持って立っている。

「あの、この間話した、ゴブリン好きな男つれて来たんだけど」

「えっ、許可もなく連れてきちゃったの? 待って直ぐにレイラ様に聞いてくるから?」

2人の幼女のうちの一人が走って奥にいった。
この2人もてんこに負けず劣らず可愛い。

この子達に比べたらジュニアアイドルですら見劣りするかも知れない。

「貴方が、てんこが言っていたセレス?」

「そうだと思います?」

「ゴブリンのメスが好きだって本当なの?」

そうか、可愛いと僕が思ったからもう意思の疎通ができるのか。
だけど、昨日と違って随分スムーズだな。
なんでだろう、昨日と違って普通に話せている。

「好きってのは解らないけど、可愛らしく思うのは本当だよ」

「本当?」

この目の可愛らしく見える基準が解らない。
この子は てんこと同じゴブリンなんだけど、、てんことはまた違った美幼女だ。
うーん、顔の造形の違いはなんなんだろう?
てっきり、同じゴブリンだから、似たような顔になるとは限らないのかな。

「ところで、さっきから何で頭撫でているの? まぁ嬉しいからいいんだけどさ」

「ごめん、つい可愛かったから、、」

「別に良いよ、メスのゴブリンが本当に好きなのが解かったからさ」

手が頭に来た時、思わずやりで刺そうと思ったけどしないで良かったよ。
まさか撫でられる何て思わなかったな。

「むぅ、セレス、私にも」

てんこが頭をぐりぐり押し付けてきた。
僕は空いているもう片方の手で頭を撫でた。

これ前の世界だと警察に連絡されかねないな、、幼女の頭を撫でまわす不審者。
まぁここには警察いないけどさ、、

「そう言えば、てんこに名前を付けたんでしょう? 私にもつけてくれる?」

「良いの?」

「うん、私達ゴブリンにとって名前があるのは名誉だから、つけてくれるとうれしい」

「じゃあ、ようで良いかな?」

てんこと違って見た目が少し外人みたいに見えるから洋風と言う意味でよう、、センスがないな。

「私は よううん有難う」

喜んでくれたみたいだから良いか。

「中に連れて来て貰って良いってさぁ」

僕は幼女三人に連れられて僕は中に入った。

三つの建物の中央の建物に彼女達と一緒に入った。

「よくいらしましたねセレス、私はこの部落の長レイラと申します、もしかしてゴブリンは大丈夫でもホブゴブリンは駄目でしたか?」

見た瞬間、直ぐに可愛いと思ったからか、直ぐに意思疎通が働いたのかスムーズだ。
だが、今迄とは比べ物にならない位、目に困る。
正直、てんこやようは幼女、子供だから良い。
レイラさんは中学生~高校生位に見える。
つまり、、本来の僕と同い年位。
そんな女の子が、下着みたいなボロキレしか纏ってない状態で目の前にいる。
しかも、凄い美少女が、、こんな綺麗な子、某ユニットアイドルにも居ない。
こんな子が前の世界で居たら、、稼いだお金をつぎ込んでCD何枚買うか解らない。

「違います、その物凄くお綺麗なので驚いているだけです」

「私が綺麗なのですか? 本当に? 確かにホブゴブリンはゴブリンより人間に近いですがそれでも醜いって言われてます」

「そんな事ありません、レイラさんは凄く綺麗ですよ」

「あの、物凄く言いづらいんですが、私って交尾の対象になりますか?」

「交尾?、交尾って…肉体関係」

まずい、こんな綺麗で可愛い子にそんな事言われたら…ヤバイ下半身が

「勿論、ありますが、今はその話は辞めておきませんか」

「あるんですね? 凄く嬉しいです、あっ真剣な話の最中に不謹慎でしたね」

「いえ、別に構いません」

「所で、オスゴブリンの討伐の事を先程てんこから聞きました、確かに同種族ですが自由に狩って下さって構いません、ただ同族というだけで何も感情がありませんのでただ、もしメスのゴブリンが居たら助けて下さると喜ばしいのですが」

「解りました、では私はこれから討伐に向かいます」

「数が沢山いるので気をつけて下さい、近くまでてんこに送らせます」

「ありがとうございます」

オスゴブリンの集落は洞窟にあった。
見張りに2人のゴブリンが立っている。
うん、ちゃんとゴブリンに見える、モンスターだ。
あれなら、多分殺せる。

「じゃぁ、てんこちゃん、危ないから帰って」

「てんこちゃん?」

「あぁ可愛い女の子につけるんだ」

「そうなんだ、嬉しいな、、じゃあセレスちゃん頑張って」

こんど、ちゃんの使い方を教えなきゃ。
しかし、意思疎通の力凄いな、今じゃまるで普通に会話しているみたいだ。
この力にもレベルとかあったりするのかな。

てんこも見えなくなった。
さぁ、、狩りの時間だ。

まずは門番として立っているゴブリン2体を倒した。
思ったより簡単だった。
多分、前の世界の子供と同じ位だ、これなら簡単に倒せる。

そのまま中に入る、すぐそこに2匹居たから切り伏せた。
討伐証明の左耳は忘れずに切り取っていく。

勇者並みの力がある。確かにそのようだ、。
ゴブリンとはいえこんなに簡単に倒せる。

途中、6対のゴブリンに囲まれた時は焦ったけどたいしたことは無い。
途中何回か体が熱くなった。
多分、レベルが上がったのだろう…

更に奥に行くと、大きなゴブリンが現れた。
此奴らはレイラと同じホブゴブリンだ。
自動鑑定で種族は解る。
だが、どれだけ強いのかは僕の自動鑑定では解らない。
僕のは種族限定だから仕方ない。

剣を何回か受けられたが、相手ではなかった。
レベルが上がったおかげだろう。
最初にこいつ等にあたったら危なかったかも知れない。

途中で苗床になっていた人間の女を見つけた。
4人の女が裸で転がれっていた。
僕から見たら、凄くブサイクだ、、
話かけて見た。
返事はくるものの真面には喋れない。
立つ事も出来なさそうだ、、彼女達の事は後で考えよう。
精子臭いし、糞尿も垂れ流し幾ら不細工な女でも可哀想だ。

途中、ゴブリンの女の子にあった。
相手は恐怖におののいて居たが、
レイラに助けるように言われたと伝えた。
安心した顔になった。

「レイラが村で待っているよ、酷い事されなかった?」

「雑用は無理やりさせられたけど、大丈夫です」

「レイラの集落は解る?」

「レイラ様はホブゴブリンですよね、それは解るけど、集落をつくられたのですか?」

「はい、集落の場所が解らないなら後で案内するから入口で待っていて下さい」

「あの、レイラ様はメスゴブリンを助けて欲しいってお願いされたのですか?」

「詳しい話は後だけど、そんな感じかな?」

「じゃぁ他のメスゴブリン皆んなと入口で待っています、、その人間、、ありがとう」

「うん、それじゃ後で」

正直いって僕は酷い人間だと思う。
可愛い彼女達には優しくて、同族の人間を放置している。
だけど、可愛い彼女達と不細工で糞尿と精子だらけになった彼女達…
あれっ…何かがしっくりこない。
まぁ良い、今は討伐を優先しよう。

更に奥にいく…一際大きな扉があった。

その奥には玉座の様な石があり、ゴブリンとは思えない程の大きな生物がいた。

種族、ゴブリンキング

初めての強敵かも知れない、存在を見て僕は走り出した。

虐めてくれてありがとう、おかげで生き残れた
強い、、今迄とは全部違う。
剣においてもまるで修行でもしたかのように凄い。
僕の素人に毛の生えた剣じゃ歯が立たない。
しかも、その一撃は凄い力で打ち付けてくるから、すでに僕の剣には罅が入っている、折れるのは時間の問題だ。
距離をとれば、火の魔法が飛んでくる。
摘んだ。
しかも、此奴は頭が良い。
僕が逃げられない様に入口の方に回り込んだ。
こんな所で僕は死んでしまうのか、、、

死なねーよ。
此処からが本番だ。

東吾や麗華をぶち殺す為に磨いた技、お前に使ってやるよ。

僕は罅の入った剣を投げ捨てた。
そして解体用のナイフを抜く。

異世界転移前、僕は虐められていた。
その虐めた相手は東吾と麗華。
いつか殺してやろう、そう思って磨いた技だ。
ただただ、目を潰してやろう、そう思ってひたすら布団をついた。
目から貫通するように脳まで押し込めば死ぬのだ。
彼奴らを殺して自殺しようそう思って身に着けたたった一つの技。

それをお前に使ってやる。

人生をやり直すチャンスは異世界転移で貰った。
こっちに来て東吾や麗華に対する憎しみも薄らいでしまった。
許すかと言われれば解らない。
だけど、もう殺そうという気は起こらない。

だから八つ当たりだ。
お前は関係ない…だが死ね。

思いっきり地面をける、剣を選ぶのか魔法を使うのかどっちだ。
魔法、良かった魔法ならかわせる、剣なら腕を1本捨てなくてはならない。
さぁあと少しだ目にナイフが刺さった。そのまま奥までねじ込めば終わりだ。

凄い勢いでゴブリンキングが暴れ始めた。
そして暴れまわるとついに絶命した。

今迄以上に体が熱くなった、少し痛い位だ。
多分、かなりのレベルが上がったのだろう。

結局今回の討伐は
ゴブリン 33
ホブゴブリン 8
ゴブリンキング 1
で終わった。

ゴブリンは使える素材は無い。
討伐部位をアイテム収納に入れた。
他は一応ガラクタの様な錆びた剣や防具も収納に入れて終わり。
壊れた女性は後で連れて帰ろう。

助けたゴブリンの幼女たちは入口で待っていた。
そのまま一緒に歩いたけど、緊張しているのか余り話してくれない。

暫く歩くと、女の子のゴブリンの集落についた。

一緒にきたゴブリンの幼女たちはそのまま他のゴブリンと一緒に奥に行った。
別れ際にニコリと笑ってくれて手を振ってくれた…本当に可愛いな。
嫌われてない、、本当に良かった。

心配していたてんこが集落の入り口から走ってきた。

「セレス、大丈夫」

「凄く強かったけど、どうにかね」

「良かった」

泣きそうな顔、心配してくれていたんだな。

「心配させてごめんね」

「うん、だけど、それ程心配して無かったよ」

「何で?」

「セレス、強そうだもん」

「そう?」

「凄いですねたった一日で潰しちゃったんですか?」

「どうにか、ですがゴブリンキングには驚きました」

「キングが居たんですか? すいませんてっきりホブゴブリンまでしか居ないと思っていました」

「レイラさんが悪い訳じゃないから気にしないで下さい」

「本当にすみません、そして有難うございます」

「そうだ、これ使えます」

僕は収納からガラクタの様な剣や防具を出した。

「貰って良いんですか? 有難うございます、ですがこれはお持ちになった方が良いですよ」

「このボロボロの剣ですか?」

「この剣はゴブリンキングの剣です、見た目は汚いですが凄く丈夫です」

「じゃぁ丁度剣を壊してしまったので剣だけ貰っていきます、あとすいません、何か運搬に使えそうな物を貸して頂けませんか?」

「それじゃ、大八車をお貸しします、そのまま返さなくても良いですよ」

「あと、助けた人達は」

「少し栄養が足りないから暫く養生させようと思うの、その後の事は本人たちに決めさせるわ」

「ありがとうございます」

そのまま大八車に壊れた彼女達を縛り付けて運んだ。
彼女達はもう壊れているからか何も喋らなかった。
周りから見たら大八車に女を載せて運ぶ実にシュールだ。

門番に流石に止められたが、僕が王族付きだと知らせが通っていたからか顔を見るとそのまま通してくれた。

僕が通ると遠巻きに沢山の女が見ている。

「今通った方、凄く綺麗」

「あれ程の美少年この街に居たかしら」

何か声が聞こえてきたけど気にしない。
そのまま冒険者ギルドへ向かった。

冒険者ギルドに入ると入口が大きい事を良い事にそのまま入った。
非常識な事をしたからだろうか、周りの人が僕に注目している。

何時もは人気のある不細工な受付嬢がこちらに来ようとしたが、目の前の冒険者に止められた。
結局、いつもの獣人の受付嬢が僕の対応をしてくれた。

「どうかされたのですか? その女性は何でしょうか?」

「ゴブリンの巣を潰した時に女性が居たので保護してきました」

「そういう事なのですね…えっ潰した? 単独でですか?」

「はいっ」

これはまずい、この美貌だけでも大変なのに実力迄あると知れたらパニックになる。

「そうですか、詳しい事はギルドマスターと共に聞きます、女性の方はギルドで一旦預かります、まずは話を聞かせて頂きます」

そのまま僕はギルドマスター室へと連れていかれた。

「私がギルドマスターのキャリーだ、詳しい事を聞かせてくれないか」

綺麗なお姉さんだ、前の世界だと美しすぎるボディビルダーとか言われそうな感じだ。

「はい、薬草を採集中にゴブリンの巣を見つけました、そして討伐した折に女性を4人見つけましたので保護して参りました」

「ゴブリンの巣を単独で討伐、どの位の巣だったのだ」

「ゴブリン 33 ホブゴブリン 8 ゴブリンキング 1 でした」

「そうなのか? 証拠はあるのかな」

「はい、討伐部位ならここに」

「本当にゴブリンキングの頭だ、それに言った数の討伐証明もある、そこで話がある良いかな」

「はい」

「まずゴブリンだが最大で何匹相手に出来た?」

「最大で6体くらいですかね」

「6体ね」

「次にホブゴブリンだがどの位相手出来た?」

「3体でしたがその気になれば4体でもいけたと思います」

「ゴブリンキングは単独討伐か」

「はい」

「まずゴブリンの討伐だが確かにゴブリンは小物だ、単体なら石級でも倒せるし鉄級ならなんなく倒せる、だが複数となると話が変わる、銅級が相手しても4体が精々だ、君の言う6体同時に相手となると最低でも銀級クラスになる」

「そうですか?」

「そうだ、だが稀にだがスーパールーキーと言ってそれをやり遂げる、期待の新人が居る」

「じゃぁ前例はあったんですね」

「ここまではな、だがホブゴブリン3体はただ事じゃない」

「ホブゴブリン1体辺りが銀級冒険者1人に相当する、それを同時に3体、金級冒険者でも難しい、確実にそれを成し遂げるならミスリル級が相当だろう」

「へぇ」

「そしてゴブリンキングの単独討伐、これはミスリル級でも出来ない、本来はミスリル級の冒険者が仲間を募り討伐するものだ、、単独となればオリハルコン級クラス、最もオリハルコン級は全世界に5人しか居なく実力はまちまちだ」

「そうなんですね」

「だから、君には無条件でマスター権限で金級冒険者に上げる。残念だがマスター権限ではそれが精一杯だ、そして、王宮にミスリル級の推薦をしてみようと思う、、、どうかな?」

「ありがとうございます」

「金級 冒険者はこのギルドでは君以外に1人しか居ない、、頑張れよ」

「はい」

「これが今回の報酬になります」

キングゴブリン 金貨20枚
ホブゴブリン金貨1枚×8=金貨8枚
ゴブリン 銅貨5枚×33=金貨1枚銀貨6枚銅貨5枚

合計金貨29枚銀貨6枚銅貨5枚

「僕は報酬金額を確認するとアイテム収納に放り込んだ」

「あのぉ、差し出がましい事ですが一言良いですか?」

「なんでしょうか」

「もっと自分を大切にして下さい」

「どうかしたのですか?」

「意地悪を言う訳じゃないですが、今回生きて帰れたのは運が良かっただけです」

「どうしてでしょうか?」 ケチを付けられた気がした。

「今回は、巣そのものは大きかったが、バランスがおかしかった、本来のゴブリンの巣より数段落ちたものだったその事を肝に置いて下さい、それでも凄いんですがね」

この人はケチをつけたんじゃなくて心配してくれたんだ。

「そうだったのですか、詳しく教えて下さい」

「はい、普通であればあの規模の巣であれば、ゴブリンキングの下にゴブリンナイトやゴブリンアーチャー、ゴブリンメイジがいる筈です」

「そんなのが居るのですか」

「通常なら最低でもあの規模の巣ならそれぞれが1体づつはいる筈なのですが今回は居なかったようですね」

「はい戦っていません」

「あいつらは本当に狡猾です、例えばゴブリンナイトと戦っている時にゴブリンアーチャーに射られたら、ゴブリンメイジにファイヤーボールを撃たれたら、単独では大怪我を負うかも知れません」

「ありがとう、本当に危なかった教えてくれてありがとう」

「受付として当然の事です、所であの女性はどうしますか?」

「どうすれば良いのでしょうか?」

「そうですね、4人ともギルドに捜索願が出ていませんでした。ですから4人は貴方の物です。奴隷として売っても構わないし、登録して自分の奴隷にしても構いません」

「あの、教会とかで保護して貰う事は出来ないのですか?」

「できますが、それだとセレス様にはお金が一切入りませんよ?」

「じゃぁそれで構いません」

「セレス様はお優しいのですね、その様に手続きしておきます、それではこれで最後ですが有難うございました」

「最後、何で?」

「はい、金級冒険者になられましたので専属の受付がつきますので」

「専属の受付、それってどういう事?」

「もう並ぶことも無く、優先してアドバイスや受付ができます、私の所じゃなくても並ぶ事はありません」

「あの、その専属受付はお姉さんじゃ駄目なんですか?」

「駄目ではありませんが私で良いのですか?」

「はい、だって説明を受けたのは私はお姉さんだけですよ」

「解りました、それでは私で登録しますね、私の名前はラットです宜しくお願い致します」

「はい、ラットさんお願い致します」

「それじゃあ、最初のお手伝いです、奥の部屋に行きましょう」

「何で?」

「良いですから」

奥に一緒にいった。

「さぁここからお帰り下さい」

「何でですか?」

「あの、顔を隠し忘れていますよ、そんな美貌であんなに目立ってしまっては取り囲まれてしまいます」

「配慮ありがとうございます」

「それじゃ、またお待ちしております、セレス様」

戦い、その後に
冒険者ギルドを後にした。
もう多分顔を隠しても無駄だろう。
だから、顔を隠すのを辞めた。

さてと今日は何を買って帰ろうか?

「あの、お兄さん良かったら飲みに行かない? 奢るよ」
「その恰好冒険者だよね? 欠員が出たんだけどうちのパーティに入らない」

ただ、街を歩くだけですぐに声が掛かってくる。
流石伝説の美少年セレス.スタンピート…凄いな。

お洒落な菓子屋に入って見たがクリームを使った菓子は無かった。
ショートケーキはもう食べれないのか…寂しいな。
店員さんにお勧めを聞いた所、
「ベリーパイがお勧めですよ」と言うのでそれを5つお願いした。

「ありがとうございます、一つおまけしておきますね」

これでお土産は良いかな?
さぁお城に帰ろう。
今日は疲れた、明日は休もうかな許可が出たら皆んなと王都を回るのも良いかも知れないな。

門番のお姉さんが僕を見た途端顔色が変わった。

「何があったのですか? 装備がボロボロですが…」

「今日は討伐中心に頑張りました」

笑顔で答えた。
確かに装備がボロボロだ、ゴブリンキングと戦った時に何回も攻撃を受けたから。

「そうですか、余り無理をせずに体に気をつけて下さい」

今日は本当に疲れた。

「マリア様、今日の報告に参りました」

「セレス殿、お待ちしておりました、中にどうぞ」

通常なら王族の部屋に等入る事は出来無い。
だが、セレスは侍従扱い、しかも姫騎士を持っているので自由に入る事が出来る。
最も、豚姫のあだ名を持つマリアの部屋に好んで入りたい、、そんな者はいないが。

「はい、姫様」

「今日は姫様なのですね、マリア様と呼ぶ時とどう違うのですか?」

「本当はいけないのですが、マリア様の中に二つのお顔があるような感じに思えるのです」

「そうなのですか?」

「はい、凄く気高い王女に見える時と天真爛漫で可愛らしい女の子に見える時があります。それで気を付けなければいけないのですが、姫様とお呼びする時とマリア様とお呼びする時があるのだと思います」

はぁこれ絶対に女殺しだわ….豚姫と呼ばれた私がこんな事言われれて嬉しくない筈が無いじゃない。
しかも、姫騎士なんだから…私に忠誠心があってお世辞じゃないのは確実だし。

「解りました、どちらでも問題はありませんので、好きな方でお呼びになって構いません」

「ありがとうございます!姫様」

「所で今日は何をなさっていたの?」

「はい、本日は討伐をしておりました」

「それで、汚れているのね」

「はい、少し頑張りましたので…おかげでギルドのランクも少し上がりそうです」

「そう頑張っているのね…何かお力になれる事ありますか?」

「実は、今度、お休みを頂けたらと思うのですが?」

「お休みですか? 別に構いませんがどうなさるのですか?」

「パーティを組んだ者と王都に出かけたいと思います」

「別に構いませんが…私もご一緒しても宜しいですか?」

「構いませんが…姫様が外出して大丈夫なんですか?」

「解りませんが、聞いて見ます、私も出来る事ならご一緒したいので」

「許可が出るなら勿論ご一緒しましょう」

体中が傷だらけです。
きっとかなり無理しているんでしょうね。

「楽しみですわね」

「あっ忘れる所でした、これお土産ですベリーパイです、良かったら食べて下さい」

「お土産ですか?」

「はい」

「余りきを使わなくて良いのですよ? 召喚に巻き込まれて、むしろセレス殿は被害者なのですから」

「気にしないで下さい…私は笑顔が見たいから買ってきているだけですから」

笑顔が見たいのですね。
ですが、私は笑顔が醜いと子供の時に言われてから笑っていません。
だから、笑顔が作れないのです。
凄く嬉しくて楽しいのに。

「なら私も頑張らないといけませんね」

「今日は討伐依頼を受けて見たんだ、詳しく話すからこれでも摘まみながら話さない」

「これパイですか?」

「本当はクリームのお菓子を買いたかったんだけど無くてね」

「この世界にはクリームは無いのですか、残念ですわ」

「でも、作り方は解るから、今度チャレンジしてみるよ」

「あれっ セレス様の世界にもケーキとかあったんだ」

「同じかどうか解からないけどクリーム菓子ならあったよ」

「だけど、お兄ちゃん作れるって凄いね幸子は作れないよ」

「私くしも作れませんわ」

「私は、作り方は知っていますけど下手です」

「ケーキの話はその位にして今日の状況について話すね」

「「「はい」」」

「今日はゴブリンの討伐をしてみたんだけど、正直普通のゴブリンは簡単に倒せた」

「確かにゴブリンは簡単に倒せると本に書いてありましたわ」

「ただ、ここからが実際の話なんだけど1体であれば簡単なゴブリンでも4体になるとベテラン冒険者でも難しいみたいなんだ」

「そうなのですか?」

「うん、それでね約束の1週間、あっお休みを1日貰おうと思うから8日間、みっちり私がレベルあげしてその後、引率して君たちのレベル上げをしたいんだけど良い」

「あの、それで本当に良いんでしょうか?」

「凄く幸子楽している気がするんだけど」

「私くしもですわ」

「正直言うと、多分勇者だから君たち三人でもゴブリンは狩れると思う…だけど万が一でも負けるのが怖いんだ」

「何故ですの?」

「女性には言いにくいけど、今日女性を4人保護したんだけど…そのね」

「確かにそれは言いにくい事ですわね」

「うん、だから君たちがあんな目に遭ったらと考えたら怖いんだ…だから絶対に大丈夫、そう私が思えるまであと1週間時間をくれるかな?」

「私はいいですわ」

「「私達もいいよ」」

「ごめんね、我儘言って」

それって我ががままじゃないでしょうに、私達の安全を考えての提案ですわね。
しかも、セレス様は気が付いてないかも知れませんが、凄く大切にして頂いているのが解りますわ。
今日だってあの凛々しいお姿に傷を作ってまで戦っていたんでしょうに…
この方は一体どこまで…私くしに優しいのでしょうか?
前の世界なら確実にお父様に紹介していますわ。

それ我儘とは言わないと思うな、どう考えても私達にメリットしかないじゃない。
こっちに来て本当に良かったと思うな。
あっちに居たらきっと囮やくとか過酷な事やらされていそうだもの。
しかも、こんな凄い美少年が私に優しいんだもの…嬉しくて仕方ないよ。

最初は冗談かと思ったけど、本当の家族のように接してくれる。
今じゃ本当にお兄ちゃんとしか思えない。
だけど、血が繋がっては居ないから…恋愛は別だよね。
まずは妹ポジションを確保して…そこから頑張れば良いかな。

「それは我儘ではないですわ」

「私もそう思うな」

「お兄ちゃんが妹を心配してくれるそれと同じだと思うよ」

「そう言ってくれると助かる、そうだ今日姫様に一日休日を貰えるように頼んだから良かったら王都見学にいかない? 案内するよ」

「「「絶対に行きます (わ)」」」

王家の人々
今日は休もうと思ったが…よく考えたら、王都の見学で休みを取るから、冒険者の仕事をする事にした。

だが…

「セレス殿、王がお呼びです」

「解りました、今行きます」

僕は衛士について謁見の間へと行った。

謁見の間では 国王ハインリッヒ六世 、マリアン姫、マリア姫が待っていた。

僕を見た、マリアン姫とマリア姫は顔に朱が刺した。

「セレス殿良く来られた」

僕は片膝をつこうとしたが…

「良い良い、今日は公式の場では無いし、セレス殿はマリアの姫騎士そのままで良い」

その言葉を聞くとマリアン姫は面白く無さそうに目を伏せた。

「有難うございます…所で今日はどういったご用命でしょうか?」

「ウム、セレス殿、冒険者証を見せてくれぬか?」

「こちらで宜しいでしょうか?」

僕は両手を添えて冒険者証を渡した。

「これはやはり金だ」

「お父様間違いは無いのですね」

「セレス殿これは一体どういう事なのですか?」

「はい、先日ゴブリンキングを討伐した際に頂きました」

「セレス殿は確か単独で行動していた筈ですが…キング種は多数の群れの長のハズ」

「はい、群れごと討伐しました」

「成るほどのう…報告の通りじゃ、この国始まって以来の登録から最短記録の金級冒険者じゃな…ミスリル級の推薦も頷けるものよ…勿論、儂から許可を降ろした…次にギルドに行った時に新しい冒険者証を受け取るが良いぞ」

「有難うございます」

「いや、礼などするで無い、強さも信頼もセレス殿は自分で勝ち取っているのだからな」

「そう言えば、セレス殿のレベルはどの程度なのですか?」

「マリアン様、実はレベルの計り方が解らないので自分でも解らないのです」

「それは不憫な、今すぐ水晶を用意致しますので計測してみましょう」

「良いのですか?」

「貴方は…姫騎士なのですから計りたい時に言って下されば何時でも計れます…お姉さまは教えて下さらなかったの?」

「まだ二日目なので計る必要が無いと思っておりました」

「おや準備が整ったようです、早速計測してみましょう」

セレス
LV 18
HP 4200(11400)
MP 5250(14250)
クラス 女神の聖騎士 
ジョブ 姫騎士 (人造神)
スキル:翻訳.アイテム収納、(完全意思疎通)(自動鑑定(種族)) 聖魔法レベル1 光魔法レベル1    女神の加護

「凄いなんてものじゃないわ…勇者以上…女神の聖騎士なんて..存在聞いた事がありません」

「うむ、儂も聞いた事ない、だが騎士の上に聖が付くのだ女神の騎士の上位職と考えて良いのかもしれない….今度教会に相談してみよう」

「セレス…貴方は何でこんな無理をしているのですか? 二日間でレベル18…しかも一日目は薬草の採集…という事は一日でレベル18迄上がったという事ですよね」

「その通りです」

「何故、そんな無茶をするのですか?…ねぇ…なんで?」

「これは僕の考えですが…勇者とはある意味…常識外れの存在です…恐らく本格的に実力がつき始めたらあっという間に私なんて抜いていくでしょう、一緒に居るあの三人も…私が彼女達を引っ張れるのは今だけ、それも僅かな期間だと思います、だからせめてその期間だけは彼女達を守ってあげたい…
マリア様に仕える者として最初だけでも恥ずかしい思いをさせたく無い…それだけなんです..大した事じゃないですよ」

「セレス殿…マリアと話し中だが良いか?」

「はい」

「王とはどう思う?」

「解りません…」

「王は勇者よりも姫騎士よりも弱い..だが、この国で1番権力もあるし..偉い」

「それが…」

「つまり、適宜適所じゃよ、勇者に出来なくて女神の聖騎士に出来る事もあるじゃろ? 気に病む必要は無い…それに今の君は…この国でも有数な実力者…世界でも数少ないミスリル級の冒険者…そんな君が卑下したら…他の冒険者に失礼だろう」

「そうですね…解りました」

「儂の娘の1人は預けた…少なくとも儂は信頼しておるよ」

「王様…ありがとうございます…信頼に答えるように精進いたします」

「うむ…頑張るのじゃぞ」

「マリア様にも心配掛けて申し訳ございませんでした」

「貴方は私の姫騎士です、困った事や悩みは1人で抱えずに相談して下さい」

「お姉さまに相談しにくい事は私くしに相談頂いても構いませんわ」

「ありがとうございます」

閑話 吉祥院麗華
私の名前は吉祥院 麗華。
自分で言うのも何だけど結構美人でお嬢様だ。
だが、こちらの世界に来てからは私の価値はがた落ちだ。
この世界、男女比が1対3だから少々の美女じゃ男が動じない。
どうして、こんな世界に送り込まれたのかしら?
逆なら良いけど….最悪だ。
天上東吾は…正直言って駄目ね。
あの男は日常でこそ一流の男。
ここ異世界では決して一流にはなれないわ。
前の世界では大きな企業の御曹司で投資にたけていたけど…この世界にはパソコンすら無い…さらに言うなら電気すらない…この世界では全く価値がないわ。
他の女の子はまだそれに気が付かずに色目を使っているけど…東吾は貴方達を命がけで守るかしら?
正直なんで彼奴が勇者の中で一番強いのか解らないわ。
未だに実践が怖くて、騎士と模擬戦ばかりしている。
模擬戦では技術は学べるけど、相手を殺さないからレベルが上がらないのよ?
だから、貴方も私達もレベルは1のまま。
ここの騎士達が勝てないから私達を呼んだのよ?
その騎士に勝てない勇者になんの価値があるのかしら?
正直とっとと実践を積みたいのだけど?

それに比べてあのセレス様の素晴らしい事。
あの人は生きる為に真剣なんですよ。
だから、豚姫を選んだ。
第一王女と第二王女どちらが将来の権力者になるか解り切った事。
見栄えだけで選んでどうするんですかね…男なら解るけど..女は上司が美人って意味あるの?
しかも、絶対にあの第一王女優しいわよ?
第二王女は私に近いわ…多分将来使え無い者は切り捨てられる。

しかも、選んだ三人は確かに不細工だけど有能なのよ。

湯浅翔子は実業家の娘…確かに嫌われ者だけど、親子共々嫌われ者でも一代で財を成した男の娘。それがこの世界でどれだけ通用するか解らないけどもし通用するなら恐ろしい物があるわ…商会位立ち上げてしまうかも知れない、そして本の虫と言われる彼女ならPCの無いこの世界では博識のある人間になる。

三浦真理は何も無い人間…だからこそ怖い、何も無い人間に光を与えたらどうなると思う? 光をくれた人間の為なら何でもするのよ? しかも彼女はブサイクで嫌われていたけど、どんな部活も自分から辞めた事がない…凄い根性の持ち主だわ…貴方相手に他の女勇者は手加減するから気が付かないと思うけど…多分勇者の中で1番強いかも知れない…それは全てをセレス様に捧げているから…

丸井幸子は残酷な人間…これは案外知られて無いけど…誘拐した犯人が逃げたのは顔が醜い事もあるけど、彼女が反撃したからなの…むやみやたら噛みついて相手の耳や頬肉の一部は千切れていたそうよ。

それをどこまで見抜いたか解らない…だけど、恐らくその力の一部は見抜いていたはずよ。

正直いって私は泥船に乗りたくない。

例え勇者でなくても、あっちの方が絶対優秀だわ。

最初に私を指名したでしょう?
あれも多分、顔見知りだからじゃなくて、私の有能さを見抜いたんだと思うわ。
あの時のチャンスを活かせなかったのが残念だけど。

この二日間見ていただけでも解るわ。
空耳立てて聞いてたけど、1日目は植物採集、2日目は討伐をしていたわ。
しかも一人で…もう既に彼の中では仲間を伸ばす狩場探しがスタートしているんでしょうね。
そして、仲間の為に稼いだお金を惜しみなく使ってプレゼント…本当にあっぱれしか言えない。
もう彼女達は彼の為に死ぬ気でがんばるんじゃないかしら。
正直羨ましいわ…貰ったお金じゃ無くてあれ程の男が稼いだお金で買ってくれるんだもの。
私だってそんな事されたら…少しは気持ちが動くわよ…

次に移れるチャンスがあったら見逃さないわ。

麗華の勘違いは続く

東吾、その後悔
「セレス君、ちょっと良いかな」

天上東吾に話しかけられた…よく見ると顔色が余り良くない。

「別に良いけど..どうしたの?」

「いや、ちょっと話がしたくてさ、ここじゃなんだから俺の部屋で話さないか?」

「悪いね引き留めて、今メイドにお茶を入れさせるから寛いでいて」

此奴、専属メイドまで居るのか?
この部屋も凄い豪華な家具で彩られている。
僕の待遇は勇者達と変わらない筈だ…何だこれ。

「凄いね、この部屋まるで貴族みたいだ…調度品もすごくセンスが良い」

こう言えば、良く自慢する東吾の事、自分から話してくるだろう…

「解るか…流石セレス君だ、王女様に無理やり頼んで用意して貰ったんだ」

此奴、金持ちの息子で我儘だったよな…こんな部屋が確かに好きそうだ。

「凄いね、このソファ一つ見ても…座り心地が全然違う」

「そうだろうね、拘ったからね」

「所で、今日はこの部屋の話? 確かに凄いと思うけど」

「違う..」

「東吾様、お茶をご用意しました」

「遅い…客を待たせてしまったではないか…これだから、ここのメイドは..」

「すみません」

「もういい、さっさと下がれ」

「はい、本当に申し訳..」

「下がれと言っている」

「畏まりました」

メイドは悲しそうな顔で退出した。
正直、見ていて楽しい物ではない…幾らあのメイドが僕から見て不細工でも。

「すまなかったねセレス君、見苦しい所を見せて…所でセレス君凄い活躍をしているそうだね」

「うん、確かに頑張っているね」

「正直、肩身が狭い、勇者として召喚された俺がまだ訓練中なのに…少しで良い自重してくれないか?」

「自重? しないよ…」

「おい、お前、俺の立場も考えろよ..ここ暫く居心地が悪いんだよ…麗華も嫌な目で俺を見やがる…全部お前のせいだ」

「そんな事?…だけど、自重なんてしないよ?…僕はもうじき終わる人間だからね」

「終わるだと…お前は何を言っているんだ」

「ちゃんと説明した方がいかな?」

「あぁ、何だかお前、ごめんセレス…説明してくれるか?」

何だよ、その悲しそうな目はちょっと嫌味を言っただけだろう?

「まず、東吾君に今のステータスを見せるよ」

「あぁ」

セレス
LV 18
HP 4200(11400)
MP 5250(14250)
クラス 女神の聖騎士 
ジョブ 姫騎士 
スキル:翻訳.アイテム収納、 聖魔法レベル1 光魔法レベル1  女神の加護

「やっぱり凄いじゃないか…自慢をしたいのか?」

「あのさぁ、もう一度、東吾君のステータス見せてくれる」

東吾は何も言わずステータスを見せた。

天上東吾
LV 1
HP 1890
MP 720
クラス 勇者 異世界人
ジョブ 無し
スキル:翻訳.アイテム収納、光魔法レベル1 聖魔法レベル1 剣技レベル1

「見てどう思った」

「羨ましいに決まっているだろうが..馬鹿にしやがって」

「そう? 私なら君が羨ましくてしょうがないけど」

「何故だ…君に比べたらゴミじゃないか?」

「あのさぁ東吾君、私はレベル18だよ…君はレベル1だ」

「だからどうした」

「それなのに、たったこれしか差が無いんだ」

「…..」

「解らないかな、これ程頑張ってもHPは君の倍ちょっと、MPは流石に多いけど スキルだって君が最初から持っていた物がようやく身に着いた」

「確かに、そう言われればそうだ」

「恐らく、君が本格的に強くなりだしたら私なんか直ぐに追い抜いていく、そして君から貰い受けた少女三人にも、直ぐに追い抜かれていく…勇者じゃ無いんだから」

「そうだな」

「だから、最初位、花を持たせてくれないかな?」

「セレス君、君は君で大変なんだな…悪かった、確かに俺たちは勇者だ君の言う通りなのだろう…」

「いいさ…東吾くんに羨ましく思われたなら、それは自慢になる」

「何だよそれ?」

「いや東吾くんが魔王を討伐して王様にでもなった時にさ、酒場で「私はあの勇者様より強くて羨ましがれた時があったんだ」と飲んだくれて自慢してやるさ」

「ぷっはははは、確かに羨ましがってしまったから嘘じゃねぇもんな…俺が王になったらセレス君が、そのネタで自慢しても不敬罪にしないように言うよ…仕方ないからさ」

「じゃぁ、今から礼を言っとくよ、有難うございます、未来の国王様」

「あははは、おかしい、流石に礼なんて言うなよ…ありがとうな」

はぁ…自己嫌悪だ、俺はまたセレス君に借りを作ってしまった。
最初は王女の時だ、彼奴は綺麗なマリアン王女を俺に譲りやがった。
誰が見ても、あの豚とマリアンだったらマリアンが良いに決まっている。
沢山の奴がマリアン王女に群がるなか、彼奴は豚王女の方を選んだ。
あれは、恐らく俺の事を考えてだろう。
マリアンが本当に欲しかったのは勇者の俺たち以上に彼奴だったと思う。
何しろ従者にして手元に置きたがっていたからな。
だが、彼奴は…それを断った…しかもそれだけではなく俺に譲りやがった。

「解っているさ、あのように美しい姫は、君の様に美麗な勇者にこそ相応しい…頑張れよ」

美しい姫…彼奴だって不細工より美しい姫に仕えたかっただろう。
だけど、多分勇者の俺を気遣って諦めたんだろうな。
今、思い出せばあの時凄く寂しそうだったな。
もし、彼奴がマリアンを選んだら…彼奴姫騎士だから相思相愛でマリアンと付き合うそういう未来があった筈だ…彼奴の未来も潰してしまったのか俺は…

彼奴に勇者三人を受け渡す時はどうだった…
最初に彼奴が指名したのは…吉祥院麗華だった。
そりゃ欲しいだろうな…俺の仲間では一番綺麗だ。
後で、考えて見れば…ここは俺が譲る場所だった。
確かに、麗華は俺の元カノだけど…それ程深く付き合ってない。
お互いがマスコット替わりにしていただけだ。
俺には、綺麗なマリアン王女がいる…そう考えたら此奴は要らなかった。
しかも。王女以外にも貴族の娘10名…これが皆んな麗華並みの美女だった。
そう考えたら、譲るべきだったんだ。
だって彼奴には貸しがあったんだから…
麗華が駄目なら、次は要ちゃんあたり指名するかなそう思っていた。
そうしたら彼奴はよりによって俺の仲間から不細工から数えてベスト3を全部選んだ。
良心が痛んだ…そこまで遠慮する事は無いのに..なんで此奴はそこまで遠慮するんだ…

俺は綺麗な王女と会話して綺麗な貴族の娘10人と過ごす事が多くなった。
毎日楽しく過ごし…訓練をしている。
綺麗な貴族の娘に囲まれ生活してみると..元の同級生は要らない。
美しさ、優しさ、総てにおいて比べ物にならないからな。
まぁ、戦力としては必要ではあるから手放せないが。

そんなある日彼奴を見てしまった。
不細工三人娘と安物の装備に身を包んでいる彼奴を…
また良心が痛んだ…
凄く痛々しい…
俺がまるで天国で過ごしているのに…あそこは魔界か地獄だ。
今からでも、麗華と要ちゃん…彼奴に渡そうかな..不憫すぎる。

今思えば、だからなのだろうな、彼奴は単独で冒険していた。
解るよ…あんな不細工達の中で生活していたら…俺なら自殺もんだ。
俺は勇者のリーダーでお金は湯水のように使える…だから王からお金を貰って彼奴にやろう。
金貨100枚でも渡して「これで綺麗な奴隷でも買って仲間にしなよ」
その位してやるべきかも知れない。

だが違った。
彼奴は1人で凄い手柄を立てた。
これを狙っていやがったんだ…俺の周りは彼奴を褒めるやつばかりだ…忌々しい、まるで黒木翼…みたいだ….だが違った…俺は自分が嫌になった…
そうだよな、少し位は手柄もたてたいよな。
俺は勇者だった…確かに言う通りだ、レベルが18なのにレベル1の俺のHPの倍ちょっと、言う通りだ。
普通に考えて俺がレベルが少し上がれば追いつくし簡単に追い越すだろう。
そう考えたら、此奴が俺たちに勝てるのは今のうち…その通りだ。
彼奴の中では俺は勇者として手柄を立てて王になる、そう考えているみたいだ。

親友…そう呼んでも構わないな。

だがこの時、東吾は気が付いていなかった、見落としていた…セレスに自分がチートで貰った光魔法が宿っていた事を…

男勇者の苗床人生?
「お父様、先程14名の男勇者達から勇者資格剥奪届けが出されました」

「まぁそうじゃろうな…仕方ない受理しとくように」

「はい、その様にします」

「しかし、これで彼らは苗床人生しか無い事に気が付いていないのだろうな」

「良いんじゃないんですか? ハイゼ伯爵の所にいた広川様..いえもう勇者じゃないから広川を見た時に「ハーレム来た」とか喜んでいましたから…」

「まぁ、貴族に勇者の力を持った血が入るのは良い事じゃ…だが」

「王であるお父様が気に病む話ではありませんわ」

「うむ、そうだな…だが、勇者としての光り輝く未来が家畜の人生に変わってしまったかと思うと王ではなく男として不憫でならぬ」

「女の私には理解できません」

「そうじゃろな」

時は少し遡る….
セレスが選定の儀を行っていた頃の話。

勇者を国と貴族で元々の約束通り別けていた。
まず一番成績の優秀な者は国が引き取る事に決まっていた。
その次に…女勇者15名これは一派一絡げで国が面倒みる。
これも元々決まっていた。

魔王を倒すのに優秀な者が必要、当たり前の事だ。
その為にはまず一番優秀な者をその任につけなくてはならない。
容姿の良い天上東吾がそれに選ばれた時に貴族たちは落胆したが元々の約束で決まっていた事だから仕方ない。

その次の女勇者…これは貴族たちにとってどうでも良い…蝶よ花よと育てている息子の相手にさせるなんて笑止千万…是非、魔王を倒す捨て駒にでもなって死んでくれ…そう願うばかりの存在だ。

実質、男勇者1人と女勇者15名で魔王を戦って貰おう…それが殆どの貴族の考えだ。
勿論、金銭的な援助やバックアップは別にする。

では東吾を除く残り14名の男勇者はどうしたいのか?
ここに全てと言って良い程の貴族は集中する。
結論から言うと婿にして更に種馬にしたいのである。

この世界の男は性格的に歪んでいる者が多く…そして女性を馬鹿にしているか嫌っている者が多い。
庶民の男ですら…貴族令嬢のプロポーズを平気で断る…そんな世界。
庶民の男で不細工であっても需要があるのか、働いていてもほぼ仕事はしないですむ。
冒険者の例だと何もしないでついていくだけで報酬の7割は持っていく…それでも居てくれるだけで女冒険者は喜ぶのだ…ちなみに冒険者を含み働いている男は不細工な男が多い。
庶民の男でそこそこ綺麗だったら…確実に玉の輿に乗れる。

では貴族の男だったら…殆どが引き籠りだ。
まず、母親が異常な程、他の女を嫌う…実際に母親による婚約者の殺害事件は年に数回は必ず起きている。
そして父親も同性の男である、息子を可愛がるのでたちが悪い。
その結果屋敷から出さずに生活する事になり…めでたく引き籠りの完成だ。
横柄で人を人と見ない人間…それでも需要はあるのだ。

参考までに、王族であるマリアンの婚約者候補たちだが、一応国王が将来勇者と結婚させたい意向を実家に伝えた所…怒るどころか逆に喜ばれた。美姫であるマリアンですら…これなのだ。

ちなみにマリアの婚約相手を広く募集した所、貴族は勿論、庶民までだれも手を上げなかった。
その中にはスラムの住民も含まれる。
仕方なく、王は捕らえた犯罪者の中でマリアの心を射止めたなら無罪放免にする。
その様な話を内々にしたのだが…だれも挑戦しなかった。
しかも、中には無理やり結婚させられる可能性を考えてか牢の中で自殺した者もいた。
王族に成れる…それですら無理だったのである。

だから、男が貴重だと勇者たちが知る前に….何も知らない14名は貴族の娘たちを対面させた。
実はこの貴族の娘たちは…強くもなんともない…どの貴族の令嬢も美しいだけの女だ。
何故、そんな女ばかりを貴族が集めたか?
それは、多すぎると困るので各家から1名のみ参加という条件があるのと、初対面の一発勝負なら外見だけで勝負が決まる…そう考えたからだ。
だから上は侯爵、下は男爵まで美女を出してきた。
ちなみに、男爵以下には参加資格は認められておらず、公爵家が参加しないのは容姿の綺麗な娘が居ないとういう理由からだ

殆ど、我々で言う所の合コンに近い感じで種馬獲得を隠したパーティ選別が始まった。

綺麗な令嬢がハイエナの様に本性を隠して襲い掛かる。

「初めまして勇者様、綺麗な黒髪ですね…私剣技には自信があります、身も心も全て捧げます…だからパーティの末席で構わないので仲間にして下さい」

「私は回復魔法が得意です、是非お仲間にして下さい..仲間にしてくれるなら私を自由にして貰っても構いません」

彼女達は決して剣も魔法も出来ない…全部嘘だ。
だが、最後に言っている身も心も捧げますは本当だ。

そして、この集団合コンならぬパーティ選別の儀で少ない者で3名…多い者で10名近くのパーティを組んだ。

ここも実は巧妙なのだ…例えば1人の令嬢をパーティに加えたとする。

「ありがとうございます…勇者様、必ずや私の剣が貴方を守ります…ですがパーティには火力も必要です…もし宜しければメイジも仲間に加えるべきです…あっあそこに灼熱のレディスがいます…まだ何処にも入っていない..チャンスです声を掛けてきて宜しいでしょうか?」

勿論、凄いメイジではないただ、初級の火魔法が使えるだけの令嬢だ。

「レディス…貴方程の方がまだパーティが決まらないの?」

「私は主を選ぶのだよ」

「まだ、決まって無いなら、私の勇者様に会って貰えないですか」

「会うだけなら」

「ほう、こちらの勇者様がそうか…初めましてレディスです…流石、疾風が選んだ相手、、私が仕えるのにふさわしい」

「疾風って…」

「知らなかったのですか…そこの剣士、疾風のライヤですよ」

彼女は疾風どころか、そよ風以下…現状ゴブリンにも勝てない。

こんな風に仲の良い貴族の令嬢同士が保険を掛けて、自分が失敗した時の為に同盟を組んでいた。

かくして、何も知らない男勇者は勝手に仲間を増やされていく…実際に戦えない性欲まみれの令嬢を抱えながら…自分では美しくて強い仲間を手にしたと言う幻想を見ながら。

男勇者の苗床人生?
貴族の屋敷に、男勇者は移される。
その屋敷はパーティの貴族の中でも位の高い者の屋敷が選ばれる。
他の令嬢も同じパーティメンバーはこの屋敷で過ごす。
実は、この前の時点で、貴族の上下関係で正妻や側室が決まっている。
中には、主家と従家で囲い込みをしている場合もある。

そこでは前の世界では考えられない程の歓迎を受ける。

我々の世界で言うなら、何も知らない美少女を家に呼んで複数の男性で囲んでいる状態に近い。
違いは紳士的かどうかの差だけだ。

メイドから令嬢迄が際どい服装で虎視眈々と狙っている。
勿論、部屋の鍵は誰も掛けていない。
ここで、殆どの者は落とされる。
そのまま夜這いをかけてしまう者。
意思が多少は固く廊下をウロチョロしている者…全て食われてしまう。
「勇者様なら…」
なんて甘い声で誘ってくるが…実はこの世界の処女は前の世界の童貞位価値はない。
この世界では処女は捨てる…童貞が捧げるなのだ…

そして、その後は当主から

「うちの娘を傷物にしたな…責任を取ってくれるか?」

これで終わってしまう。
異世界でここを出て行ったら行く先は無いのだ。

この時点で婚約まで結ばされてしまう。
そして、婚約をしたが最後、側室迄決まってしまう事が多い。

その後は、勇者の肩書をどうにかして無くしたい貴族の策略が始まる。

一番多いのは、最初からオークを狩りに行く方法だ。

ゴブリンを飛び越してオークと戦わされる。

パーティのメンバーで男勇者は、行っている積りだが、実は違う。

離れた所で、貴族の持つ騎士団がしっかりと警護している。

そして、令嬢たちの装備は見栄えは悪いがかなり上等な物。

逆に勇者の装備は…見栄えは良いが粗悪な物。

結果…勇者が足を引っ張り…惨敗。

その際に勇者が怪我をする事は確定、必ず大怪我するまで戦わされる。

心を折る為に。

場合によっては令嬢の1人位は怪我をさせて、更に勇者を追い込む。

全てが終わって屋敷に帰り…令嬢たちは全員が泣く…瞼が腫れる位泣く。

その後で泣きはらした姿で現れる。

「私は、貴方無しでは生きていけない…貴方はこのままでは死んでしまう…だから…勇者を辞めて下さい…例え..私がどうなろうと…王家に指一つ触れさせないから…」

怪我をして自信を無くした男勇者はこの誘いは断れない、自分の身を案じてくれる彼女達の姿に救いを感じてしまう。

それで男勇者が感動している所に…当主が現れる。

「娘が此処まで愛しているのだ…当家の名前に掛けて、勇者を辞退できるようにしよう…その後は娘達と幸せに暮らせば良い」

更に感動して、その提案を飲んでしまう。

優しい提案に思えるが実はここからが地獄なのだ。

勇者を辞退した後は…苗床の様にただただ、肉体関係を重ねるだけになる。
例え、最初が3人だったとしても…従家の貴族の娘も加わり…側室が増えていく。
そして…朝から夜まで何回もの肉体関係を続けなければならない。

一族に固有の魔法やチートが欲しい為、容赦なく肉体関係が続く。

ただ、相手が美しい..それだけが唯一の救い…恐ろしく怖い美人局みたいなものだ。

だが、チートや固有魔法はまず…伝わらない…実際の所は元勇者と結婚した、そのステータスが欲しいだけなのかも知れない…
14名の男勇者は今日もハーレムを楽しんでいるだろう…苗床扱いされているとも知らずに…そしてその楽しみがいつか苦痛になろうと引き返せない…そんな事も知らずに

初めてのデートとセレス
今日は王都見学だ。
三人を連れてあちこち見ようと思う。
残念ながらマリア様はこれなかった。
普通に考えたら、王女が自由に出歩けるわけが無い。
悲しそうな顔をしていたから、帰りにお土産でも買って帰ろう。
一番最初に、冒険者ギルドに連れて来た。
その理由は僕のミスリル級の冒険者証の受け取りと彼女達の冒険者登録の為だ。

「あぁ麗しの姫騎士様がきたー」

「凄いわ…最短記録にミスリル冒険者…それにあの美貌…私とパーティ組んで貰えないかな」

「貴方みたいな、銅級が組んで貰える訳ないでしょう」

僕は、聞こえない振りをして三人を引っ張り受付へ向かった。

「凄いですわね…流石セレス様人気者なのですわ」

「流石、お兄ちゃん」

「最短、記録…凄い」

「凄くも何とも無いよ…多分2週間後には君たちの方が強くなっていると思うから」

「そんなわけないじゃないですか?」

「セレス様も冗談をいうのですわね」

「お兄ちゃん…」

何で? 今お兄ちゃん寂しそうな顔をした?

「ラットさん、こんにちは」

「セレス様、お待ちしておりました…こちらが、ミスリル級の冒険者証です…私初めて見ました」

「ありがとう、ラットさん…この三人の冒険者登録をしてくれる? 王城からの紹介状があるけど…騒ぎに成らない様に奥の部屋で行って貰えると助かる」

「セレス様はこのギルドに二人と居ないミスリル級の冒険者です、その位の融通利かせて頂きますよ」

「ありがとう」

「では皆さん、一緒に来てください」

「三人が勇者様ですか?」

「そう…だから騒ぎに成らないようにね…僕は外で待っているからお願いしますね」

「解りました…立ち会わないで良いんですか? パーティ申請は?」

「そうだね…パーティは三人で組んでおいてよ」

「解りました」

「…登録は終わった」

「「「はい」」」

「それじゃ、今日は思いっきり楽しもうか?」

「「「はい」」」

「それじゃどこから回ろうか?」

やっぱり三人共女の子だ。
まず最初に服屋さんを見に行った。
前の世界のように綺麗な服は無かったけど、三人は凄く夢中になって見ている。
可愛いな。
僕は前の世界でデートなんかした事無かった…
見ているだけで楽しい…

「良かったら1着ずつ買ってあげるよ」

「良いんですの?」

「ありがとう」

「お兄ちゃんありがとう…」

本当に楽しい…三人が代わる代わる服を着替えて見せてくれる…うん、僕だけのファッションショーだ。

こんな楽しい思いをさせてくれるなら…服なんて安い物だ。

次は…アクセサリー、うん女の子の定番だ。

ここでも夢中になって見ている。

ネックレスや指輪に夢中になっていた。

僕は彼女達にお揃いのネックレスを買ってあげた。

その時に、赤い宝石の付いた指輪があったのでマリア様ように買った。

「ありがとうございます」

「しかし、何でこんなに買ってくれますの?」

「お兄ちゃん…お金大丈夫?」

「この間、臨時収入があったからね..どんと任せて」

何か胸騒ぎがしますわ…

「さぁ…今度は美味しい物でも食べようか?」

私の気のせいですわね…

うん、お兄ちゃん元気そうだ…

「さぁ…何が食べたい..何でも奢っちゃうからね」

僕たちは思う存分遊んだ。

彼女達の笑顔を見ると楽しくて仕方ない。

僕は多分、彼女達を好きになり始めているんだと思う。

だからこそ…いいや。

「今日はありがとう…皆んなと居ると凄く楽しい…明日もこんな日が続くとよいね」

「ずうっと続きますよ…仲間ですから」

「そうですわ…セレス様、何時までも一緒ですわよ」

「お兄ちゃん..幸子は何時までも一緒にいるよ」

「有難う..本当にありがとう…じゃぁ帰ろうか?」

「こちらこそありがとうなのですわ」

「私もありがとう…男の人とのデートしたの初めて…とっても楽しかったです」

「幸子、男の人からプレゼント貰ったの初めて…ありがとうね」

「さぁ帰ろうか?」

「「「はい」」」

セレスは彼女達の前を歩いた。

涙を見せたくないから。

姫様へのお願い
セレスは城に帰ると…マリアの部屋に訪れた。

「セレス殿、今帰ったのですね…王都は楽しかったですか…ご一緒出来なかったのが残念です」

「とっても…楽しかったです、次は必ずご一緒しましょう」

「そうですね…次は5人で出かけましょう」

「…」

「セレスどうしたのですか?..気分が悪いのですか?」

どうしたのかしら…何だか凄く悲しそうです。

「そんな事はありませんよ…そうだ、今日お土産を買ってきました…受け取って下さい」

「綺麗な指輪ですね…赤くて綺麗です…有難うございます」

「どう致しまして」

「姫様…実はお願いがありまして..」

「私は貴方の姫ですよ…貴方が望むなら何でも叶えて差し上げます」

「有難うございます…それでは」

「何故…それが必要なのですか?」

「内緒ですよ」

「そうですか..ならば聞きません…貴方の事だから何か考えがあるのでしょうから」

「有難うございます…そして、その後にも一つお願いがあります」

「お願いですか…私に出来る事なら…それも今は内緒ですか?」

「はい…聞かないで頂けると助かります」

「時期が来たら話して頂けるんですよね?」

「はい」

「解りました…今は何も聞きません」

「所で、姫様…私の国では指輪を送るのには意味があるのですよ」

「まぁ…どんな意味があるのですか」

「大切な人…好きな異性に送る物なんです」

「えっ…セレス…それはどういう意味ですか?」

「恥ずかしいので2回は言いません…それじゃ私は失礼しますね」

「ちょっと待ちなさい…セレス」

「今日は..待てません」

「もう…仕方の無い人ですね、まったく…」

この人が傍にいると…私は姫になれます。
今迄…豚姫と呼ばれ馬鹿にされて居たのが嘘のよう…
そんな…セレスが私を頼ったのです…聞くに決まっているじゃないですか…
あれっ…私、殿でなく…セレスって呼んでいる…まずい…気を付けなきゃ。

そのお願いが悲しい願いである事をこの時、マリアは知らなかった。

女神の神託
僕は再度教会を訪れた。

「熱心なのは良いですが、貴方の様な美しい方が祈るといたずらされるかも知れません」

「大丈夫ですよ…私はマイン様が好きですから」

「そうですか」

「はい」

僕はマイン様に祈った。
今日は日が良いのか神託が降りてきた。

「久しぶりですね、セレス活躍は私も見させて頂いておりますよ」

「有難うございます」

「それで、何か聞きたい事がるのじゃないかしら?」

「はい、私のステータスについて教えて下さい」

「ステータス? 何かあったの?みて見るわね」

セレス
LV 18
HP 4200(11400)
MP 5250(14250)
クラス 女神の聖騎士 
ジョブ 姫騎士 (人造神)
スキル:翻訳.アイテム収納、(完全意思疎通)(自動鑑定(種族)) 聖魔法レベル1 光魔法レベル1    女神の加護

「成程…教えてあげる…何でも聞いて」

「まずは 女神の聖騎士について教えて下さい」

「それは、女神の騎士の上位クラスですね、レベルを上げたのと私への信仰が高くなったので変わったのでしょう」

「その能力的にはどうなのでしょうか?」

「この世界ではレアなクラスですね…一般の者よりは遙かに強いですよ」

「勇者と比べたら…どうでしょうか?」

「比べるまでもありません」

「強いのですか?」

「いいえ..残念ながら下です、最初の段階は余り変わらないですが抜かれるのは時間の問題でしょうね」

「ですが、何か…ありませんか」

「無いですね…女神の聖騎士だから…聖戦でも始まり、もし、私がそちらに顕現でもしたら能力は跳ね上がり勇者を超えるでしょう…ですが、それは出来ないのです」

「何故ですか?」

「女神は世界に干渉してはいけないというルールがあります…勇者召喚…それがギリギリの干渉なのです…もし他の神が責めに来たら話は別ですが…魔王位の相手ではとても顕現なんて出来ません」

「そうですか…ですが、私には何故か( )の中に凄いHP MPが見えるのですが」

「それは使えない能力です…(  )の中に人造神があるでしょう…貴方の体は私が作った物…だからその体の本来の力です…ですが、それは使えません、貴方は人間なのですから…ただ、貴方の体が神に近いのは事実です…何回か転生を繰り返した時にその努力が認められれば…その力は本物になります、ですが…それは転生を最低数回繰り返した後…今の貴方の人生には関係の無い事ですね」

「そうですか…残念です…そう言えば 聖魔法や光魔法が身につきましたが、これはチートとは違うのですか」

「微妙ですね…確かに貴重な魔法ではありますが…この世界でも賢者や神父の中には使える者がいます…東吾がチートなのはレベル1で持っている事です」

「今から努力すれば…」

「無理ですね…貴方がレベル10に成る頃には東吾はレベル50にはなっているでしょう?」

「そうですか…やはり僕の力じゃ勇者と肩を並べる事は無理なのですね」

「申し訳ございません…私が気が付かなったばかりに」

「もう済んだ事です」

「今の私には何もしてあげれません…ただ見守るだけです」

「気にしてませんよマイン様」

「有難うございます…そして本当にごめんなさい」

マイン様の神託が切れた。

仕方ない、僕は僕で出来る事を頑張ろう。

とりあえず、今日の午後は…オークを狩りにいこうか…

偽聖剣 デュラン 冒険の下準備
冒険者ギルドを訪れた。

「あれが、麗しの姫騎士…セレス様..強いだけでなく美しいわ」

「まさに孤高の存在…私とパーティー組んでくれないかな」

騒がしいが、無視してラットさんの受付にいく。

「こんにちはラットさん」

「セレス様、こんにちは…今日は一体どの様なご用件ですか?」

「えーと…まず、麗しの姫騎士って何でしょう? 最近よく聞くのですが?」

「あっ、あれはですね、セレス様の二つ名です」

「二つ名?」

「はい、腕の良い冒険者には自然とつけられる物で、セレス様は美しいので、その様な名前がついたのだと思います」

「そうですか、少し恥ずかしいですが…それなら仕方ありませんね」

「あと、この手紙をお城に届けて下さい」

「銅貨5枚ほど掛かりますが宜しいですか?…ですが自分でお渡しに成らないのはどうしてですか?」

「ちょっと言いにくい内容なので..」

「解りました…他にご用件はありませんか?」

「討伐依頼で難易度が高い物とかあったら…教えて下さい」

「そうですね…今一番難易度が高い物は..地竜ですかね..ですが、これは誰も出来ないので塩漬けです」

「あの、ラットさん…それは正式に依頼を受けないと戦ってはいけませんか?」

「別に大丈夫ですが、正式に依頼を受ければ…依頼の達成料が貰えます…ポイントと素材の買取金額は変わりませんので、貰える金額が少なくて良いなら…正式に受けなくても構いません、受けなければ、未達成のペナルティが無いので..受けずに討伐というのも一つの手ですね」

「他は?」

「あとは未確認ですが、ワイバーンを見たという報告があります…それ以外はオークとオーガ位です」

「そういですか…なら、オークとオーガの依頼を受けようと思います、帰って来るのが6日間先でも大丈夫ですか?」

「問題ありません…どちらも常時依頼に近い物ですので…その代わりどちらも5体以上という条件が付いてますが宜しいですか?」

「つまり、この依頼を受けたら期間は設けないけど5体倒すまで他の依頼は受けられないという事ですか?」

「そうです、本来は2つ同時もまずいのですが…ミスリル級の冒険者であるセレス様なら大丈夫です」

「ありがとう」

「ご武運を」

「さてとまずは…武器と防具を新調しなきゃな」

「よく来たな、今日は顔を隠していないんだな…麗しの姫騎士」

「普通にセレスで呼んで下さい…実は出来るだけ良い剣が欲しいんです」

「良い剣か…解かった、最高傑作を持ってこよう」

「この剣は…何ですか?」

「セレス様だから見せるんだ…偽の聖剣デュランだ」

「偽の聖剣?」

「あぁ昔に聖剣に魅せられた鍛冶屋がいてな、自分で聖剣を作りたくて研鑚を重ねて近い物を作った…それがこの偽聖剣だ」

「凄い、腕前だったんですね」

「あぁ、だがこの偽聖剣を作った為に、教会から不敬罪に問われて処刑されてしまった」

「ただ、剣を打っただけでですか」

「まぁな、だが教会からしたら、聖剣の偽物を作った不届きものとしか思えなかったんだろうな…何せ此奴は聖剣デュランダルそっくりだ…聖なる力が宿ってこそいないが…光魔法や聖魔法とも相性が良い…まさに偽聖剣だ」

「正直欲しくて仕方ありません…幾らするんですか?」

「そうだな…セレス様になら無料でくれてやるよ?」

「何でですか?…本当は高額なんじゃないんですか?」

「まぁな…ただ、この剣は世の中でセレス様しか多分使えないし、売れない」

「どうして?」

「偽の聖剣だ、持っているだけで教会から何を言われるか解らない..王家だって良い顔はしないだろう」

「そうですね」

「だが、セレス様が使うなら、誰も文句は言わない…何せ、女神の騎士なんだから、教会だって文句は言えないだろう…王家だって姫騎士が持つなら不問にするさ」

「なるほど」

「このまま、倉庫に眠らせるのも忍びないからな…プレゼントだ」

「ありがとうございます」

「その代わり、しっかりと装備で儲けさせて貰うよ」

「はい」

結局僕は、その後、ミスリルの軽鎧を購入して金貨7枚を請求されたが気持ち1枚足して8枚払った。

ポーションや薬草を購入し冒険の下準備を終えた。

セレスの手紙
マリア姫様

私は己の未熟さに気が付きました。

このままでは勇者三人を導く者として十分な指導が出来ません。

その為、6日間修行をして参ります。

短い間ですが、城に帰らない事お許し下さい。

                                    姫騎士 セレス

手紙を見たマリアはその手紙の内容をそのまま王に伝えた。

「この責任感…勇者達にも見習って貰いたい物だな」

「必死に学ぼうとしている者は、セレス殿に預けた三人だけ…あとは東吾殿が最低限の訓練をこなしているだけです」

「そうじゃな…未だに騎士にすら勝てる者が居ない…最悪、三人の指導次第ではセレス殿にも指導をお願いしなければならないのかの」

「お父様…それは出来る事なら辞めて頂けませんか?」

「マリア、貴方は何を言っているの?幾ら貴方の姫騎士とは言え、それは王であるお父様が決める事ですわ」

「良い、理由を申せ」

「はい、お父様…セレス様は今で精一杯なのだと思います」

「儂から見ればまだ余裕がある様に見えるが、違うのかね」

「はい、セレス様は自分が勇者でない事を自覚しています、そして力が及ばない事をご自分で努力して埋めているのです、当人は自覚がなく笑っていますが…恐らくはもう…限界が近いかと思います」

「そうか、言われて見れば勇者ですら無いのに..獅子奮迅の活躍じゃな..言われる通りなのかも知れん…暫く様子を見るか…だが、ミスリル級の冒険者…指導には向いている…儂はそう思うが…」

「そうですわ、マリア、そんなに気になるなら今回の修行から帰ったら騎士団長や宮廷魔術師長と模擬戦をして見れば良いと思います…その様子を見て方針を決めたら如何でしょう」

「ならば、どちらにしてもセレス殿が帰ってきてからじゃな」

オーク..もはやお前はただの豚に過ぎない
さぁ準備は出来た。
これからは狩りの時間だ。
僕は残念ながら勇者ではない。
地道な努力しか方法はない。
だから、地竜なんかと一気に戦ったりは出来ない。
戦う相手はまずは、オークだ。
これも恐らくはメスは美女に見える筈だ..だから、オスしか狩る事は出来ないだろう。
ゴブリン達が住む森から進んで行けば、割と直ぐに遭遇するはずだ…何しろ毎日のように被害者が出ているらしいから幾らでも居るのだろう。
暫く歩いていくと…グラマラスな綺麗なお姉さんが居た。
こんな森に1人でいるのは可笑しい…何だかのモンスターの筈だ。
前の二の前は踏まない。
やはり、種族が表示された。
種族名、オーク。
そうか、確かにオークは豚に似ている。
だからグラマラスなのか?
正直言って見た目は、胸が大きく、お尻が大きい。
巨乳のグラビアアイドルのような感じだ。
これはヤバイ…てんこやようは幼女、レイラさんは中高生位…まだ理性が頑張れる。
だが…オークは大人、しかもゴブリン達と違い…トップレスだ。
つまり、目の前に上半身裸のグラビアアイドルがいる。
ただ、見てても仕方ない…話かけよう。

「えーと…そこの綺麗なお嬢さん」

「綺麗なお嬢さんって..あたしの事?…えっ人間」

「そう、人間ですよ?」

「人間がどうして、あたしと話せるの?」

「まぁ..ちょっとした技能です」

「そう、それで何か用かしら?」

「ちょっと教えて欲しいのですが…オークって男女の仲はどうなんですか?」

「悪いわね、だってオスのオークは人間の女性やエルフばかり相手にして、同族のオークは相手にしない、まぁ私達が見てもエルフや人間の男の方が綺麗だから仕方ないと思うけど」

「そうか…じゃぁ、メスのオークは絶対に傷つけないけど…オスのオークは殺すという行為はお姉さんからしたらどうなの?」

「そうね、同種族が死ぬ姿を見るのは忍びないけど余り気にはならないかな?」

「なら、良かった」

「そう…貴方はオークを狩りにきたのね」

「うん…だけど、君を見たらメスのオークは殺せないよ…すごい美人だもの」

「変わった人間…メスのオークが美人だなんて…でもそれは余り言わない方が良いよ」

「どうして?」

「私はまだ子供だから問題無いけど…そんな事大人のメスオークに言ったら…直ぐに連れていかれて犯されちゃうからね」

「えっ君は子供なの?」

「そうよ….まだ6歳なんだから」

6歳…どう見ても20歳前後にしか見えないお姉さんが6歳

「ごめんね…てっきり大人だと思った」

「良いわ…種族が違うから解らないのかも知れないし…」

「ありがとう」

「メスのオークを狩らないなら問題はないわ…この先はメスのオークの集落だから行かない方が良いわよ」

「そうだね」

グラビアアイドルかと思ったら…ビッチなお姉さんだったか…だけど、殺せないから行かない方が良いな。

「オスのオークだったら谷の傍の洞窟に居るから好きなだけ狩れば良いわよ」

「そう、ありがとう」

「じゃぁ、私はいくわね…ありがとう綺麗なお兄さん」

「こちらこそ、ありがとう」

谷に向かった。
豚の化け物が居る..うん、これがオークだ、これなら殺せる。
とりあえず、ゴブリンキングの剣から始めるか。

まずは思いっきり剣を振る。
剣の違いだろうか..あっさり首が飛んだ。
首を拾い討伐証明の鼻を切り落としアイテム収納にしまった。

2~3のオークに囲まれるも簡単に倒せた。
そりゃそうだ一撃で簡単に死んでいくんだから…簡単だ。
思ったより簡単だ…多分レベルが上がった事と武器が良いからだろう。
途中で武装したオークに出会ったがあっさり倒せた。
鎧の上から叩きつけても鎧がひしゃげて殺せる。
多分此奴がオークナイトなのかも知れないが普通のオークと何だ変わらない。
弓を射って来る奴も居たが…当たると痛い物のの刺さったりしない。
レベルが上がるって凄いな…また体が熱くなってきた…多分レベルが上がっているんだろう。
魔法を使う奴がいた…多分これがオークメイジだ。
だけど、何か呪文を唱える前に簡単に殺せるし、ファイヤボールみたいな物が飛んできても簡単に躱せる。
暫く進んで行くと二つの部屋が左右にあった。
右の部屋に入ると…人間の女性が居た…僕の目から見たら…全員が不細工という事は本当は美人なんだろう。

「どなたか知りませんが、助けてくれてありがとうございました」

「あの、街まで連れてってくれませんか? 着いたらお礼をしますので」

「貴方…凄く綺麗」

とりあえず、皆んな元気そうだ。

全員が歩けるのを確認して、僕は食料と水を分けてあげた。
少し痛いが仕方ない。

「すいません、私はこの後も討伐を続けなければいけません…すいませんが皆さん、自力でお帰り下さい」

「私達では街まで帰れません」

「大丈夫です…ここに来るまでにかなりのモンスターを倒しましたから…街までは比較的安全に帰れるはずです」

「ですが…」

「私はこの後..オークキングを討伐しなくてはいけません..もし私が負けたら皆さん、また元の生活に戻ってしまいすよ…良いんですか」

「解りました…その頑張って下さい..私達は自力で頑張りますから」

「解りました」

さぁ…オークキング勝負だ…僕は奥の扉を蹴り開けた

オーガもエルフも狩れなかったけど…盗賊は皆殺しに出来ます。
オークキングとの戦いは…あっさりと倒せてしまった。
本当に、僕は勇者よりそんなに劣るのだろうか?
未だに、魔法も使わずにここまで倒せる…また今度マイン様に相談だ。
帰り際に女性が居た反対側の扉からガラクタをアイテム収納に放り込む。
案外、ゴブリンキングの剣みたいな貴重品もあるかも知れない。
結局、倒した数は
オークキング 1
オークナイト 3
オークアーチャー 4
オークメイジ 2
オーク 24

個人的には無双している様な気がするんだが…違うのか?

森で野営をする。
オークは肉が売れそうない気がするので丸ごとアイテム収納に放り込む。
これだけのオークが簡単に入る、アイテム収納…考えて見たら充分チートなのかもしれない。
オーク1体を解体して食料にした。
勿論、僕は解体なんて満足に出来ないので腕1本切り落としてその半分をただ、焼いて食べた。
うん、豚肉みたいで美味しい。

さぁ次はオーガだ。
だが、此処で予定が狂ってしまった。
オーガのメスはまるで、美しすぎる筋肉ビルダーみたいな感じの美女なのだが…男女仲が良く家族で暮らしていた。
「綺麗なお姉さん…少し話良いですか?」

「何だ、人間か何か用か?」

「いや…オーガって男女の仲はどうなのですか?」

「人間と同じだ…普通に家族で暮らしている」

困った..仲睦まじく暮らしている。
つまり、下手に男のオーガを殺せば綺麗なお姉さんに恨まれる..詰んだ。

仕方なく、僕は交渉する事にした。

「すいません..実は私は、オーガの討伐来たのですが…優しそうな貴方を見たら.出来そうもありません」

「そう..それで?」

「仲間の角を1対 5人分譲って貰えませんか?」

「仕方ないわね…変な人間..集落で聞いてみるわ」

集落に着いていく…うん、ゴブリンやオークと違って仲良く家族で暮らしている。
彼女に通訳をして貰い..角が欲しいと交渉して貰った。
その際にオークとガラクタを交渉に使ったら…オーク10体分で角5人分と交換して貰えた。
角は悪い事をして集落を追い出された者の物だそうだ。
僕は、襲ってこない限りオーガを襲わない約束をして集落を去った。
オーガも襲われない限り、襲わない約束をしてくれたが…この集落限定なので意味はないかも知れない。

詰んだ…オーガを狩って強くなる予定が狂った。
このまま地竜じゃ絶対に無理だ。

何か狩れる、魔物は他に居ないのか?
探し回った。
いた…何だ、あの醜い生物と一緒にいるイケメンは…耳が長い、男の方をしっかりと見る。
うん…解かった。
此奴らエルフだ。

完全に失敗だ。

美醜逆転の能力を貰うなら、男女一緒にすれば良かった。
よく、「リア充爆発しろ」なんて言っていたが…幾らイケメンが気に食わないとは言えエルフはほぼ人間だ。
普通に人間の街にも来るし交流もある。
殺せないなこれは。
だけど…エルフについては気を付けないといけないな。
何しろ、メスのエルフはどんな魔物よりも醜く見える。
間違えて殺さないように注意しないといけない。
暫く、見つめているとイケメンと不気味な化け物が近づいてきた。

「人間が何のようだ」

「いや、エルフの男って凄く綺麗だなと思って見惚れていました」

「そうか..人間の男はエルフの女に良く手をだすので警戒していたんだが」

「そうですか? その女性は貴方に凄くお似合いですよ…僕は同族の女性しか興味が無いのでご安心下さい」

気持ち悪い…見てると吐き気がするような女、愛せるわけが無い。
此奴と結婚する位なら、一生童貞でも良い、ゾンビと比べても気持ち悪い。
都市伝説の口裂け女とエルフなら..口裂け女を選ぶよ。

「そうか、なら良いんだ」

「本当にそうかな?」

化け物が僕を下から覗き込んできた。
ポーズだけは可愛いが…見た瞬間に吐き気が起きた。

「顔色が悪いけど大丈夫か?」

「大丈夫です…見た所、冒険者かハンターみたいに見えますが、この辺りでオーガ以外に狩れる獲物はいますか?」

「そうだな..オーク…あとは盗賊が洞窟を根城にしている位かな」

「盗賊? それは冒険者が狩ってしまって大丈夫ですか?」

「手配書にある奴だから大丈夫だ..実は俺は冒険者なんだが…銅級では荷が重くてね、同族も何人も攫われているから、ギルドに依頼を出そうと思っていたんだ」

「そう、なら案内してくれないか? 私がやってみるよ」

「君は、何級なんだ?」

「ミスリル級だ」

冒険者証を見せた。

「大変失礼した、ならばお願いできるかな、無事終わったら村からも何か出して貰うように頼むから」

「別に要らないよ」

いやぁ、男のエルフは良いけど…化け物とは一緒に居たくない。

「危ないから、君は帰って」

「そうだね、邪魔だよね」

可愛かったら居て欲しいけど、気持ち悪いんだごめんね。

ここで僕は人殺しの経験を積もう。

イケメンエルフの後についていき洞窟についた。

「お前何の用だ」

見張りの男が声を掛けてきた。
よく見ると腰の剣を抜いている。

僕はゆっくりとゴブリンキングの剣を構えて切り伏せた。

イケメンエルフには洞窟の外で待っているように伝えた。

人間はもしかしたら経験値が高いのかも知れない。
直ぐに体が熱くなった。

他の盗賊が直ぐに駆けつけてきた。
僕は、直ぐに切り殺した。

うげっゲロゲロ…吐いた..だが後戻りは出来ない。

次々に切り伏せていく..うげぇぇぇ。

化け物を切る分には何とも思わないが…人間を切ると気持ち悪くなる。

正に人を斬っているのだから当たり前だ。

これを乗り越える事が出来れば…僕は平気で人が殺せる人間に成れるだろう。

ゲロを吐きながら..垂れ流しで殺しまくる…なかなか慣れない。

悪人とはいえ…自分で殺すと罪悪感がある。

この世界では人の命は軽いのだろう…油断をしたら此奴らのようになるのは自分だ。

自分が死ぬだけなら良いが…その甘さで守るべき人が犯されるかもしれない..殺されるかも知れない。

ゴブリンの洞窟やオークの洞窟で見たろう..苗床になった女性を..

此奴らも種族は僕と同じ人間だけど…同じ事をしているような奴かも知れない。

吐きながら殺しまくった…気が付いたらもう誰も盗賊は居なくなっていた。

その後は…部屋をしらみつぶしに探していった。

「助けて下さい」

「ここから出して下さい」

8人の醜い化け物が裸で言ってくる。
エルフの女だ。
扉の鍵を壊し「仲間が入口でまっているよ」それだけ伝え次に向かった。
熱い視線で見つめて来るが気持ち悪い。

横穴等に隠れている奴も見つけ次第殺した。

多分、僕がもし、てんこやレイラを殺したら..考えただけでも涙が出てくる。
殺す事も出来ないかも知れない。
だが、同じ人間なのに盗賊には余りそういった感情が今はもう芽生えなかった。
僕の目から見たら、醜いエルフの女とはいえ監禁して犯していたし..
人を殺して財産を奪っているような奴らだ..
前の世界でも充分悪人だし…死刑だろう。

結局、僕は洞窟に居た盗賊を皆殺しにした。
そして、賞金を貰う為に必要な首を斬り落とし、
必要な物と一緒に全てアイテム収納に入れた。

人の首を跳ねてももう吐き気が起きない…充分慣れたのか。

入口まで戻ると…イケメンエルフが裸に布を撒いたエルフの女と共に居た。

「彼女達を助けてくれてありがとう…さぁ村まで一緒に来てくれ、礼がしたい」

「「ありがとうございました」」
顔を赤くして言われたけど…気持ち悪いな..化け物に見えるから。

村に行くと…感謝されて宴を開くというが…イケメン達はともかく化け物が気持ち悪いので遠慮しておく。

族長の物凄く醜い化け物が「照屋さんなんですね?」と言ってきたので..頷いた。

「それではお礼だけもさせて下さい」

「解りました」

何をくれるのだろうか?

「貴方には、エルフとの結婚権を差し上げます」

そんな物要らない

「….」

「これは、人間なら皆んな欲しがるものですよね..通常は滅多に許可は降ろしません」

要らないとは言えない状況なので、黙ってうなずいて、立ち去った。

「本当にシャイなんですね」

全員が見送ってくれていた…見送りが見えなくなるまでどうにか我慢したが、その後盛大に吐いた。

頭の整理
僕は自分の行動について考えて見た。

ゴブリン
メス=美幼女
オス=モンスター
オスは狩れるけど..メスは可愛いので狩れない

オーク
メス=グラビアアイドル
オス=モンスター
オスは狩れるけど..メスは美しいので狩れない

オーガ
メス=美しすぎるボディビルダー
オス=モンスター
本来ならオスは狩れるはずだけど家族の様に生活しているので狩れない。

エルフ
女=この世の物とは思えない不細工な化け物
男=超絶イケメン
本来なら女は狩れるけど..イケメンの人間に見える男と一緒だから狩れない。
それ以前に…エルフは人間と同じ扱いだから狩っちゃ駄目だろう。

今回の僕の予定は可能なら地竜を狩る事だ。
ゴブリン、オークと順調に経験を積んできたがオーガが家族で過ごしている話を聞き、その姿を見た瞬間に狩れなくなった。
頭の中で泣きはらすメスのオーガの姿が目に浮かび狩れなかった。

そこでどうしても、オーガの経験値を何かで補う必要があった。
エルフの女はこの世の物とは思えない程醜かった。
だが…男は普通に人間、それもイケメンに見えた。
結局は片方が人間に見えると狩れない。

美醜逆転する力を貰った時に女性限定にしたのが仇となった。

この先、この世界で暮らしていくなら、人を殺す必要があるだろう…だから、此処で、盗賊の討伐をしたのも良い経験だろう。

ゴブリンの命だって人間の命だって同じ命だ。
狩る側が自由に選んで良い筈だ…反省するのはもう辞めよう。
この世界を生きる為に悪人は殺す、必要な事だった…それだけだ。

敗北と苦い思い
さぁ、次はいよいよ地竜だ。
ワイバーンとどちらにするか考えたが、空を飛ぶワイバーンを相手にするより地竜の方がまだ楽だろう。

正直勝てるか解らない。
様子を見て勝てそうも無ければ逃げれば良い。

依頼書は剥がしてこなかったがしっかりと見たのでおおよその居場所は解る。
近くまで行けば竜と名がつく生物だ解るだろう。
山の岩肌にそいつは居た。
大きさは10メートル位はあるだろうか..今までの奴らとは全然違う。
竜と言うよりは恐竜?
トリケラトプスとかサイが近いかも知れない。
だが、どうするよこれ…今までと違う…

とりあえず、デュランを使ってみるか…それで通用しないならここで冒険は終わり。
城に帰ろう。

僕は気づかれない様に後ろ側に回ってデュランを抜いた。
デュランは抜いた途端にキラキラ光りだした。

「不味い..これじゃ目立って..もう気がつかれた」

「バモオオオオ…」大きな叫び声と共にそいつは襲い掛かってきた。

ヤバイ..こんな巨体でこんなに早いのか、此奴は。

逃げ切るのは難しいな、やるしか無い。

デュランを構えながら走り出した。

だが、走る方向に向かって地竜は炎を吐いた。

魔法の炎がおもちゃに見える程の炎…何とかかわしたが..

なんだこれ躱した先の木が燃えている..こんなの食らったら死んじまう。

少しでも良い、ダメージを与えたい、地竜の顔先に斬りつけた。

ま、まるでダメージが通らない…斬るどころか痣ひとつついて無い。

だが、この攻撃が此奴を怒らせた、凄い勢いでこちらに迫ってくる。

何とか、此奴の突進は交わしたが、僅かに掠った。

ミスリルの装備は大丈夫だが…痛い。

まるでハンマーで殴られたみたいだ。

もし、ケチってミスリルの装備を買っていなければ…最低でも骨折、最悪死んでいたかも知れない。

ヤバイ、また突進をしてくる…

「デュラン…助けてくれ」

そう叫んだ、輝きが増した気がする。

馬鹿の一つ覚えみたいに、その剣を地竜の目に突き立てた。

流石の竜種も目は弱点なのか、硬かったがそのまま刺さった。

そのまま、体の魔力を流すつもりで更に押し込む。

だが、苦痛から地竜は叫びながら暴れ始めた。

結果、デュランは抜けて持っていた僕事岩肌に叩きつけられた。

ミスリルの軽鎧が音を立てて罅が入った。

凄い衝撃が走った…その後、体中に痛みが走る。

終わった…もう動けない。

やるだけやった…

少しでも強くなる為に、同族も殺した。

それでも、此奴には歯が立たないのか…

僕は静かに目を瞑った…

だが、何時まで経っても痛みは襲ってこない、セレスが目を開けると..

居なくなっていた。

そうか…逃げたんだ。

運が良かった。

もし、彼奴が戦いを選んでいたら…僕は燃やされるか、噛みつかれるか、押しつぶされて死んでいただろう。

だが、彼奴は野生だった。

この世界では解らないけど…野生の動物は怪我を負うのを嫌う。

目を怪我した彼奴は逃げたんだ。

だが、これは運が良かっただけだ..彼奴が逃げなければ死んでいた。

手を汚してまで上げたレベルもこの程度か…情けなくなるな。

仕方ない、地竜に勝つには、相当の時間を掛けて鍛えないと無理だ。

生き残れた事に感謝して、今は街に帰ろう。

女神の鎧
僕は1人とぼとぼと街に帰ってきた。
周りが騒いでいるが気にならない。

「麗しの姫騎士が..怪我しているぞ」

「あのミスリルの軽鎧…罅が入っている、ミスリルに罅を入れる化け物がいるのか?」

「あの、セレスさん大丈夫ですか?」

「気にしないで下さい..」

「教会に行かれないんですか?」

「平気ですから…」

同情なんて聞きたくない。
このまま歩いていたら沢山集まって来るかも知れない。
だから、冒険者ギルドへ走った。

「ラットさん…依頼の達成と素材の買取、あと盗賊を討伐したので賞金をお願いします」

「流石、セレス様…凄いですね…運も良いですね、これ程沢山の宝物も貯め込んで居たなんて、全部買取で良いですか?」

「はい…お願いします」

「流石、セレス様…今度はオークの群れの討伐にオークキングの討伐…オーガは最低数ですが..凄いですね、更に盗賊団まで壊滅させるなんて..依頼がでて無いのが残念ですが…価値のある物も結構あるみたいですよ」

「そうですか…」

「凄いですね…金貨70枚です..多分、このギルドの最高記録じゃないですか」

これ程の手柄なのに、何だか元気がないですね。

「そうですか」

流石、ギルドの受付嬢だ余計な事を言わないでちゃんとしっかり対応をしてくれる。
僕はお金を貰うとそのまま、ギルドを後にした。周りが何か言っているが聞こえない。

しっかりしなきゃ駄目だ。

防具と武器の店に向かった。

「すいません、ミスリルの軽鎧を駄目にしちゃいました」

「ミスリルの装備を駄目にした? 何と戦ってきたんだ?」

「地竜..」

「地竜…見せてみろ..完全に罅が入っているな..こりゃ駄目だ」

「すいません…」

「謝る必要はないさ、防具は体を守る物さ…だがミスリルを買っていって正解だったな、他の物だったら死んでいた」

「それで、地竜に戦いを挑んだ感想はどうだった」

「歯が立たなかった」

「だろうな…相手は一番下とはいえ竜種、人間なら勝てなくて当たり前だ」

人間ならそうだろうな..だけど勇者なら多分違うんだろうな。

「そうですね」

「何だ..その死んだような目は? お前はミスリル級の冒険者、麗しの姫騎士だろう?」

「そう呼ばれていますね」

「なぁ…それでセレス様はどうすんだ、もうあきらめるのか」

「諦めない..今は無理でも実力をつけてもう一度、このデュランと一緒に挑戦してみます」

「デュランとね」

「はい..ですが驚きました」

「どうした?」

「まさか..デュランを抜いたら光りだすなんて」

「光ったのか..まさかデュランも主人を選ぶ剣だったのか..抜いてくれるか?」

「はい」

デュランが光り輝きだした。

「その輝き、正に聖剣と同じだデュランがセレス殿を主人と選ばれたようだ」

「そうですか…此奴は私を選んでくれたんだな」

「そうだな、所で防具..どうすんだ、ミスリルを超える防具は普通には売ってないぞ」

「何かありませんか?」

「同じミスリルにするか…力の宿った装備にするかしかないな…それ以外はダンジョンとかで幻の装備を手に入れるとか」

「仕方ない、ミスリルの軽鎧を購入します」

「いや、その前にうちの倉庫みて見るか? 何かあるかも知れないし」

「良いんですか?」

「あぁ…ガラクタしか無いかもしれないけどね」

僕は、一緒に倉庫へいった。
オークの倉庫何かは比べ物にならない程広い。

色々見せて貰ったが、良い物は無さそうだ。
あれっ、あそこにある綺麗な鎧はなんだ…絶対に凄そうな気がするんだが。

近くに寄って手に取ってみた。

不思議な事に優しい光を発している。
僕が綺麗と認めたからだろうか?
鎧の横に文字が見えた。

女神の鎧(不破壊)

これ絶対に凄い鎧だよな。

「あのこの鎧は幾ら位するのですか?」

「えっ、この鎧本当に買うの?」

確かに、何か不思議な力は宿っているけど…あれどう見ても醜い顔の女が彫られた呪いのアイテムじゃないのかな?

「はい、これが欲しいのですが」

「そう…、なら悪いんだけど金貨5枚で良いかな…本当はそんな価値無いと思うんだけど、ダンジョンで出た物だから、高く買わなくちゃいけなくてな」

「金貨5枚、喜んで買いますよ…他にはこれに似たアイテムあったりしますか?」

「不細工な女が刻まれているアイテム?…他には無いと思う」

「そうですか」

僕も現金な物だ…希望が見えた途端に気分が変わるなんてな。

女神の鎧の真実
せっかく手に入れたので女神の鎧を身に着けた。
これ凄いな…殆ど重さを感じない。
しかも力も漲ってきたような気がする。

お城に戻る前に教会に行った。

「相変わらず熱心ですね、此処までマイン様に祈りを込める美形は居ませんでしたよ」

僕はまだ3回しか来てないと思うんだけど…

「そうですか?..私は女神マイン様が好きですから」

「そうですか…だから女神の聖騎士の力が宿ったのですね?」

「そうだと思います」

「しかし、セレス様は凄いですね…よくそんな醜い..すいません、マイン様の姿を象ったような鎧着れますね」

「そうですか..」

僕はマイン様に手を合わせた。

また、神託が降りてきた。

「おまたせ、セレス…やはり、貴方とは縁があるのですね..その鎧を手に入れるなんて」

なんか、軽いな..女神と言うより女の子と話しているみたいだ。

「あの..これ凄い物なんじゃないですか?」

「凄いですよ…その鎧は絶対に壊れないし..重さも殆どありません」

「流石は、女神の鎧ですね」

「それはこの世界に一つの物…先の大戦で、私の為に邪神と戦ってくれた聖騎士の為に作り与えた物です」

「それじゃ、これを着てれば勇者みたいに魔王と戦えますか?」

「無理ですね…」

「何でですか…邪神とも戦える力があるんですよね」

「私がその世界に顕現すれば、その鎧を着た、貴方は、大地を砕き、光のスピードでも動けるかも知れません」

「顕現をしないから…意味はないですね」

「はい..理解が早くて助かります」

「それでも、重さが無くて、壊れないなら最強の装備じゃないんですか?」

「そうですね、例えば、竜種が炎を吐いたとします、鎧はびくともしませんが…中の人はやけどして死にます」

「何故ですか?」

「はい、フライパンの中の目玉焼きと同じです」

「ですが、壊れないなら直接攻撃には強いんでは?」

「勿論、壊れませんが中の人は怪我します」

「なんでですか? 可笑しいでしょう?」

「丈夫な車と同じです…シートベルトしてないと車が丈夫でも大怪我しますよね」

駄目じゃん…この装備。

「あっ、だけどミスリルよりは丈夫で魔法耐性はあるから金貨5枚なら買いですよ」

見てたのか…

「そうですよね」

「はい…セレスが死んでもその鎧は壊れないから、もう鎧を買う必要は無くなりました」

「そうですね…他には女神様の装備とか武器はありますか?」

「ありませんね..私は道具を作るのは不得手でして…私が作った物はこの世でそれだけです」

「でも、この世界とかはマイン様が作ったのでは無いのですか?」

「違いますね…私はただ管理を任されているだけです」

「そう、なんですか?」

「そうなんですよ…女神の私が言うのもなんですが、セレスは気負い過ぎです、貴方は勇者じゃないんだから..戦いなんかしないで、この世界を楽しんだら如何ですか?」

「そうですね、僕は勇者じゃないんだから..そうですよね」

可笑しいな、何故胸が痛いんだ。

「そうですよ..もう少しリラックスして下さい」

「マイン様、有難うございました」

僕は教会を後にした。

御前試合 前篇
結局僕は予定より1日早くお城に帰ってきた。

「セレス殿お帰りなさい」

マリア様が迎えにきた。
本当に嬉しいな..門の近くに王族がいる事なんて本来は無い。
多分、僕を気にして見に来てくれていたんだろうな。

「マリア様、ただ今」

うん、此処が僕の帰る所だ。

「さぁ、セレス、水晶を見ましょう、今回どれ程強くなったか見てみたいです」

「はい、私も知りたいです」

セレス
LV 36
HP 8400(22800)
MP 10500(28500)
クラス 女神の聖騎士 
ジョブ 姫騎士 (人造神)
スキル:翻訳.アイテム収納、(完全意思疎通)(自動鑑定(種族.物)) 聖魔法レベル2 光魔法レベル2   女神の加護

最近、僕に対する呼び方がコロコロ変わる。
殿だったり、そのままだったり。
うん、愛情の裏返しなのかな。

「流石、セレス、凄いですね..恐らく、今現在王国最強だと思います」

だけど、それでも勇者にすぐ抜かされていくだけの存在なんだけどね…

「そんな事はないですよ」

「実は、妹の提案でセレス殿と騎士団長、宮廷魔術師長と戦わせたいという話があるのですが..」

「あの、その2人はどの位強いのですか?」

「騎士団長は王国最強と言われています。一人で騎士10人に勝てる実力の持ち主です、宮廷魔術師長はあらゆる魔法を使います、その実力はオーガですら簡単に葬るという事です」

「あの、姫様その2人なら地竜の相手は出来ますか?」

「地竜ですか、そんなの個人で相手など出来る訳ないですよ、それこそ3個師団位は最低でも繰り出さないと、1人で倒せるなら…それこそ、勇者か英雄です」

そうか…勇者なら出来るんだ。

「そうですか、なら条件付きで受けても良いですよ」

「条件付きですか?」

「はい」

僕の付けた条件は

王族のみしかその戦いを観戦しない事。
2人一緒に相手をする事。
武器の取り扱いは相手に任せる。

その三点。

「2人同時にですか? 大丈夫なんですか?」

「頑張ります」

結局、直ぐに見たいというハインリッヒ六世とマリアンの要望でそのまま行われる事になった。
条件はこちらの要望通りで、武器や防具は自分の物を使って良いという条件だ…都合が良すぎる。

「俺が騎士団長のアルトマンだ」

「私くしが宮廷魔術師長のマドレーヌです」

「ご丁寧に、私がマリア様の姫騎士をしております、セレスと申します」

「貴公が…噂は聞いているが2人同時とは自惚れにも程があるぞ」

「ここまで侮られたのは初めてですわね」

うーん、騎士団長の方は筋肉の塊のような人だ..レスラーのような感じ。
魔術師長の方は..うん、美人だ…ちょっと年上だけど…女優って感じだ。

「侮ってなんていません」

「ならば良い」

「こちらも本気で行きますから」

さてと…あれっ何でこんなに遅いんだ。
魔法の詠唱よりも、相手が剣を抜くよりも早く僕は動けた。
デュランが引き抜くとキラキラ光る。
そのまま、一線…簡単に騎士団長は吹っ飛んだ。
勿論、殺してしまってはいけないみねうちだ。
そして魔術師長の前でデュランを寸止めした。

「ヒィ..」

「負けを認めて下さいませんか…綺麗な貴方を傷つけたくありません」

「認めます」

「騎士団長は…気絶している」

「勝者…姫騎士セレス」

高々とハインリッヒ六世の声が上がった。

御前試合 後篇
「この試合は引き分けです」

「セレス殿、何故じゃどう見てもお主の勝ちにしか見えんぞ」

「私からもその様に見えましたわ、正に瞬殺です」

「私にもそう見えましたよ、セレス」

「負けた俺が言うんだ..貴公の勝ちだ」

「そうですよ..魔法の詠唱も間に合わずに負けたのですから」

「使っている装備に差があり過ぎます」

「装備だと、それを言うなら俺は騎士団長だ、勇者を除いたらこの国で最高の装備を使っているはずだ」

「私くしだって同じだわ」

「ですが、私の剣を見て下さい」

僕はデュランを抜いて見せた。

「その剣がどうかしたのかの」

「偽の聖剣デュランです」

「知っていますわ..あの聖剣を模して造られた剣ですね」

「はい、この剣は正にそれです、しかも私が主になったのでその一端の力が目覚めた」

僕はこの剣を堂々と使えるようにする為に今回の試合を受けた。

「模造の聖剣にその力が宿ったと申すのか?」

「はい、この通り」

デュランを抜く、キラキラと光り輝く。

「それは正に聖なる光、ではセレス殿も魔王と戦えますね」

「それが、あくまで偽物…聖なる力と言っても本物の何百分の1…マイン様の言うには魔王と何て戦えないそうです」

「それは残念じゃな..なら、それを使っても卑怯ではないのではないか?」

「ええ、ですが、それでもミスリルの剣よりも上のような気がします」

「そうか、武器の差か..うむ、セレス殿がそう言うなら引き分けで良かろう…本来、その剣は聖剣を模した物だから使うのは好ましくないが、女神の聖騎士のセレス殿が使い、剣が主として認めた、 使う事を認めよう」

「ありがとうございます」

これで正式にこの剣を使う事が出来る。

だが、誰も…鎧については触れなかった。
セレスにとっては美しい女神の装備も他の人から見たら、醜い不細工な女の顔を模した装備にしか見えない。
触れないであげるのが優しさ…そう考え触れなかった。

「しかし、剣の差を考えても貴公の剣の腕は一流だ」

「そうですよ…詠唱より早く動けたのは事実です」

「ですが、紙一重でしたよ…思った程の差は無いです」

この人たちは努力でここまでなったんだ、僕みたいに力を与えられた訳じゃない。
何の加護も無い、この人たちはそれこそ何年も鍛え上げた筈だ。
簡単に倒してしまったけど、その重みは僕なんか比べ物にならない努力をしたはずだ。
たった数日、努力しただけで倒されたこの人達の絶望は僕以上の筈だ…
それなのに、笑って僕の実力を評価してくれる。
僕は、人間としてはこの人たちの足元にも及ばないだろう。

「そうか、そう言ってくれると面子が立つ」

「私くしも助かるわ」

勇者には成れない…ならこういう人間に僕はなりたい。
本気でそう思った。

冒険の下準備とゴブリン
さあ下準備は済んだ。
これからは三人の預かった勇者を育てないと…

「待たせてごめんね、ようやく下準備が済んだから明日からでもレベル上げに行こう」

「ようやくいけるのですね、有難うございます」

「私も訓練だけじゃ物足りなくなってきました」

「幸子は余り生き物を殺すのは好きじゃないけど頑張ります」

「じゃぁ、今夜は、食事を少なめににしてゆっくり休んでね…明日からはハードだよ」

「「「そうします」」」

「所で、明日からはどのような感じで行動しますの?」

「うん、君たち次第だけど…3泊4日位で行軍しようと思う」

「泊りがけで行くんですか?」

「そうだね、君たちは勇者だから、近いうちに旅立つと思うんだ、だから今から慣れておいた方が良いよ」

「そうですよね、幸子頑張るよ」

「その行きですよ、明日はまず買い出しから行きましょう」

「「「解りました」」」

次の日の朝、僕が起きて食堂に向かうと既に三人は待っていた。

「早いね皆んな」

「はい、緊張して早起きしてしまいました」

「私もですわ」

「幸子も」

「そう、だけど今日は必要な物を揃えて、簡単に狩れるゴブリンを狩る予定だから、緊張は要らないよ」

「「「はい」」」

三人を引き連れ街に行った。
ゴブリンは常時依頼だからギルドには行かない。

「さぁ、ここで3泊4日の冒険に必要な物を買ってきて」

「セレス様は一緒に買われないのですの?」

「うん、僕は必要な物は一式持っているからね..これから先、必要な物は自分で用意しなくちゃいけないからこれはその練習も兼ねているんだ」

「そうか、そうですよね」

「解かった」

「それじゃ、此処で待っているからね」

「「「はい」」」

女の子の買い物は長いな..1時間も見れば充分だと思ったけどもう1時間30分だ。
ようやく帰って来たな。

「準備は整った?」

「「「はい」」」

「それじゃ行こうか」

「あの持ち物のチェックはしないんですの?」

「それも兼ねての練習だよ」

「そうか..そうだよね」

「さぁ行くよ」

僕はてんこ達の居る方と逆の方角に向かう。
以前ギルドで聞いた前回とは違う狩場に向かった。

少なくとも自分の仲良くなった相手は狩られたくないからだ。

森に着いた。

「さぁゴブリンを探そう」

「居たよ..セレス様」

「ちょっと待って真理さん、僕が行くから」

「はい」

僕は美幼女に近づくと小さな声で話かけた。

「こんにちはお嬢さん」

「お嬢さんって私?」

「うん、やっぱり可愛い」

「変な人間だね」

「あのさぁこの辺りに君たちの集落はあるの?」

「あるけど、人間には教えられないよ」

「大体で良いから教えて、行かない様にするから」

「何で?」

「僕は、レイラをはじめゴブリンの友達がいるから、メスゴブリンは倒したくないんだ」

「そう、レイラ様、知ってるんだ…山の方に居るよ」

「じゃぁそこにはいかない様にするよ、逆にオスのゴブリンの居る所が解ったら教えて、オスのゴブリンは狩っても良いよね」

「うん、オスのゴブリンは嫌いだから良いよ…森の奥に居るからやっちゃって」

「解かった..ありがとうね」

「うん..ばいばい」

「どうしたのですか..ゴブリンと何かしていたようですが?」

「実はあのゴブリンはメスのゴブリンなんだ…メスのゴブリンは悪い事しないから極力狩りたくないんだよね」

「そうなのですか?」

「言いにくいけど、人間の女性を襲って子供作るのはオスのゴブリンでしょう? メスは襲われたりしない限り襲ってこない…絶対とは言わないけど余り悪い事しないんだよ」

「ですが、どうやって見分けるのですか?」

「多分、君たちには無理かな、だから君たちだけで冒険する時は気にしないで殺すしかないと思う…だけど強くなったらで良い…向こうから襲ってこない魔物は見逃してあげてね」

「幸子は元から殺すのが嫌いだから..そうするよ」

「私くしも悪い事しない者は殺したくありません」

「私も…ですが、何でセレス様は見分けがつくのですか?」

本当の事は言えないな…

「それは、女神の聖騎士のスキルのせいかな、このスキルのせいか女の魔物は殺したくなくなるんだ」

「そうなんですの?」

嘘だけどね

「多分、女神様が女性を殺すのを嫌がるんじゃないでしょうか?」

「そうか…そうかもね」

「幸子もそう思う」

「それじゃ行こうか?」

僕は、美幼女から教わった通り、森の奥に向かった。

彼女達のゴブリン討伐
森の中のゴブリンの集落を見つけた。
僕が攻略した洞窟よりも簡単だと思う。

近くまで行って茂みに隠れる。

「さぁ、あそこがゴブリンの集落だ」

僕の目にもゴブリンにしか見えない…安心だ。

「それで、私達はどうすれば良いんですの?」

「三人で突っ込んでいって狩って貰う」

「作戦とかは無いんですか?」

「無いよ、だってゴブリンは普通の人でも倒せる相手だから…恐らく簡単に倒せるよ..危なくなったら助けるけど、絶対そんな事起きないから大丈夫」

「幸子、生き物を殺すのは…」

「そうだね、だけど、こう考えたらどうかな? これから殺すのは連続婦女暴行監禁を行っている悪人だってね…だから自分が殺さないと、この先沢山の女性が殺されるって」

「解りました」

僕は黙って彼女達三人の後をついていく。

まず、最初に翔子がゴブリンの見張りの首を切った。

装備の差があるとは言え最初の僕の時とは違って鮮やかだ。

駆けつけてきたゴブリンを今度は真理が剣で薙ぎ払う。

ゴブリンの命が簡単に刈り取られる。

一番、心配していた…幸子だが同じように切り刻んでいた。

ゴブリンは最早、彼女達にとってただの経験値だろう。

討伐証明の耳は僕が切り取っていこう。

さぁ、ホブゴブリンが出て来た。

僕は此奴は一撃では倒せなかった。

うん、やっぱり、勇者は凄い、簡単に祥子が切り伏せた。

ゴブリンナイトも、ゴブリンメイジも彼女達は物ともせずに倒していった。

片っ端から、藁で出来た家に押し入り殺しまくっている。

気にする必要はなかったな…人の事を言えないが..結構残虐に見える。

だけど、さっきから一言も言葉を発せずに殺している。

案外、精神的には一杯一杯なのかも知れない。

奥の大きな建物についた。

入ると、左右と奥の扉がある。

左右、どちらかは苗床かも知れない。

下手に見て動揺させてはいけない。

そのまま、奥に突っ込んだ。

居た…ゴブリンキングだ。

僕がこの世界に来て最初に恐怖を感じた相手…しかも此奴は彼奴より2周りは大きい。

だが、祥子は剣を持ち斬り掛かった。

ゴブリンキングの腕が飛んだ。

痛さで暴れまくるゴブリンキングに幸子は首を斬りに掛かった、それは防がれたものの、その横を真理がすり抜ける。

結果…ゴブリンキングの首が宙を舞った。

勇者は凄いなという感動と…自分が勇者で無い寂しさ..僕の気持ちは複雑だった。

ゴブリン討伐、その後に
「流石、勇者だね、凄い」

「セレス様有難うございます」

「有難うございますですわ」

「有難う」

「これから、君たちに物凄く嫌な物を見せないといけないんだけど覚悟しておいてね」

「「「えっ」」」

僕は右側の扉を開けた。

うん、ガラクタばかりだけど宝部屋だ。

「なんだ、驚かせないで下さい、ガラクタがあるだけじゃないですか?」

「緊張しましたわ」

「幸子も」

「最初は、ご褒美の方だったね…とりあえず、ガラクタに見えるけど結構価値のある物がある場合もあるから、アイテム収納に突っ込んどいて」

「じゃぁとりあえず、幸子の中に入れて置くね」

「あと、このゴブリンの耳は討伐証明になるから、これも入れて置いてね」

「えっ」

顔が曇ったな、女の子に化け物の耳はきつかったかな。

「これも、大切な収入源だから大切ににしまってね」

「わか…りました」

「次は、本当に覚悟しておいてね」

「「「はい」」」

むせる精液の匂い、彼女達が顔を顰める。
男の僕が気持ち悪いんだ女性の彼女達の気持ち悪さはすさまじい物があるだろう。
見た所、生きた女性は居ない。
つまり…死体がある。

「セレス様…これは一体なんなの..うぇぇぇっぇぇぇ」

「死んでいますわ…しかも..うぷっ」

犯されて…とは言いにくいよな。

「見ての通りだよ…今回は生きている人が居なかったね」

「冷静なんですね」

冷静に見えているのなら良い。
本当はかなり頭に来ているけど…
逆に真理が他の子と違い、冷静なのが凄いと思う。

「君たちは勇者だ..これから先も今日以上に悲惨な物を見ると思う」

「「「はい…」」」

「慣れろとは言わないけど…冷静さを失わない様にしてね」

彼女達は何も言わなかった。

死体は4体あった。
彼女達は4体の死体を外に持ち出すと、井戸水で洗っていた。
そして、村の外に運び出すと埋めた。
女として此処に置きっぱなしにしたくなかったのだろう。

三人が手を合わせたので、僕も同じく手を合わせた。

「さぁ、行くよ」

僕たちは歩き出した。

その日の夜の野営…

用意しておいたオークの肉を焼いて食事の準備をした。
彼女達は…初めて生き物を殺したショックと、人の死体をみたショックでまともに食事をとれなかった。
肉を選んだのはワザとだ。
この先、勇者の彼女達はこれよりも悲惨な状況を目にするだろう…そして、そんな中でも食事をしなくてはいけない。
多分、その時僕は傍に居ない。
だから、少しでもそのきつい状況に早く慣れさせたかった。

僕はテントを張ると三人に眠る様に伝えた。

「あの、見張りとか交代しますわ」

「幸子も」

「私も交代します」

「今日は初日だから良いよ..疲れただろう」

彼女達は何か言いたそうだったが、無理やり寝かせた。

僕は火の番をしながら考え事をしていた。
最近、僕は眠れない事が多い..だから見張りをするのに丁度良い。

ここに居るのはセレス.スタンピートでは無い。
君たちのようなチートが貰えなかった、ただの高校生、黒木翼なんだ。
多分、君たちは直ぐに僕なんかより強くなるだろう…
その時、僕は… 今は考えるのはよそうか。

オーク討伐と勇者の力
「ねぇちょっと良い?」

「どうかなさいましたの?」

「あのさぁ、セレス様何か元気なくないかな?」

「幸子もそう思った…何だか悲しそうに見えた」

「何でだろう?」

「それは解りませんが…何か私達を見る目に悲しさが滲み出ているそう感じましたわ」

「幸子は…何だか焦っているようなそんな感じがしたかな」

「そう思うよ、何だかもうじきお別れが来るようなそんな感じがしない?」

「私くしもじつはそう思ってましたの」

「えっ祥子ちゃんもなの…実は幸子もそう思っていた」

「真理さんはどう思います?」

「私も、何となくそんな感じがします」

「ですが、幾ら考えても仕方ありませんわ…今は明日に備えてしっかりと眠るべきですわ」

「そうね、そうしないと見張りをして頂いているセレス様に悪いと思う」

「そうだよね…寝よ寝よ」

「おはよう皆んな」

「おはようございますセレス様」

「おはよう、セレスお兄ちゃん」

「おはよう、セレス様」

「今日は、オークを狩ろうと思う…だけど、何処に居るか解らないから探索からだね」

「探索ですか」

「そう、探す所からスタートしようと思う…まずは朝ごはんからだ」

僕はアイテム収納からあらかじめ用意しておいた朝食を取り出した。

簡単な食事を4人ですますと…今日の冒険に出かけた。

「それじゃ...探索から始めようか?」

「だったら、幸子のスキルが使えるかも?…アラウンドマップ」

「それ、どんなスキルなの?」

「幸子のスキルはね、周りの状況が全部解っちゃうの」

勇者って凄いな、ただ強くなるだけじゃなく…こんなスキル迄あるのか…
これが多分、マイン様が与えたチートだよな。
悔しさをグッと堪えた。

「凄いね…幸子ちゃん」

「どうしたの? セレス様..元気が無いみたいだけど?」

「そんな事無いよ…凄いなぁと思って」

「ありがとう」

「じゃぁ..頑張って」

「まだ、レベルが低いから種族迄は解らないけど…あっちの洞窟の方にゴブリン以外の何かがいるみたい?」

「そうなんだ…とりあえず、行ってみようか」

凄いな、ドンピシャだ…オークが居る。

「凄いな幸子ちゃん」

「えへへ、私のスキル探索だけは自信があるんだ」

「そうですわね、私くしも真理さんも探索むきのスキルじゃないですわね」

2人はどんなスキルを持っているんだろう。

「それじゃ、昨日と同じ様にやってみて、今日は討伐証明の耳の切り取りもするように、あともしスキルが使えるなら積極的に使ってみて」

「「「解りました (わ)」」」

凄いな、幸子を先頭にして警戒しないで進んで行く、アラウンドマップだっけ凄く便利そうだな。
早速、オークに遭遇したけど…全然敵になっていない。
戦闘の幸子の一振りで簡単に倒していっているよ。
かれこれ10体は相手にしているのにまだ、真理も祥子も一体とも戦っていない。

オークナイトやオークメイジが出てきてようやく、真理や翔子が剣を振るうが、それでも剣の一振りで倒している…凄いな勇者。

オークアーチャーの弓も簡単に躱すし..もう既に僕より強いかも知れない。

さぁ、オークキングだ…此奴も僕が倒した奴より一回り以上大きい。

「スキルを使っても良いのですわね…アクセル」

アクセルって加速の事か?

「それじゃ、私も…剛力」

剛力? 力が強くなるのか?

「いきますわ..ハーッ」

凄い、目で追うのが精一杯だ一瞬でオークキングの腕を切り落とした。

「ブモオォォォ」

「今度は私の番」

オークキングの攻撃を簡単に受けながら、もう片方の腕に握った剣で一閃…胴を真っ二つに切り離した。

凄いな、あんなに簡単に..多分もう僕より強いな。

「凄いね、皆んな..さぁ気が進まないけど」

「ええ、解っていますわ」

右の扉を開けた。

ガラクタが沢山あったので、また同じ様にアイテム収納に入れさせた。

次は左の扉だ。

前と同じ様に精液のむせかえる様な匂いがする。
彼女達は二回目なのか前の時ほど驚かなかった。
もしかして、勇者は精神的な補正まであるのか?
そう思わせるように。

今回は…居た。
人数は5人。
衣服は引きちぎられて全員が裸だった。
一瞬見ただけだが全ての女性が痣だらけだった。
前とは違って全員生きていたが…目が死んでいる。

男の僕に世話を焼かれるより彼女達の方が適任だろう。

「悪いけど…頼んでよいか?」

「男性より私達の方が適任ですわ..任せて下さい」

彼女達を引き連れ、近くの川に行った。
真理たちは彼女達を洗っていたが..彼女達は喋らない。
多分…もう頭が狂っているのかもしれない。

結局、真理たちと話し合い…彼女達を保護して一旦街まで帰る事にした。

セレスの気持ちと彼女達の気持ち
街に帰って来た。
今、彼女達と一緒にギルドに来ている。
彼女達は今、素材を渡して討伐証明部位を提出している。

「凄いですね、当ギルドでは歴代2位の金貨68枚です」

あれっ何で低いんだ?

「あの、僕の時より査定が厳しめになっていませんか?」

「あっセレス様…実はセレス様の時にはゴブリンキングもオークキングも何年も採られていなかったので高額でした…ですが、今回はセレス様の素材が手に入った後ですので少し低くなっています」

「そうでしたか..ありがとうございます」

「それで、今回はその、彼女達はどうしますか?」

「今回は、私はただの保護者なので、彼女達に聞いて下さい」

「あの、前にセレス様はどの様になさったのですか?」

「セレス様ですか? セレス様は教会の保護を選ばれました」

「それなら同じで良いですわね」

「幸子もそう思う」

「それでは教会に保護して頂きます、あと今回の鉱石で金級に上がりました…おめでとうございます」

「金級昇進おめでとう…今日は王都で過ごそうか? あと、食事は豪華な物にしよう奢るよ」

「いえ、食事は私達に奢らせて下さい」

「そうですわ…セレス様は自分の取り分もご辞退されているのですからそれ位はさせて下さい」

「そうだよ」

「それじゃ…お言葉に甘えようかな」

「此処が良いと思いますわ」

「うわぁ豪華そうだね」

「だけど、たまには良いと思います」

三人が決めたお店に入った。

「うわぁ凄いよこれ...豪華」

「そうですわね…前の世界のフルコース以上かも知れませんわ」

「うん、驚いたね」

「私もビックリしたよ..」

物凄い量の料理が運ばれて来た。
見た瞬間からその豪華さが解かった。
四人で料理にかぶりついていく。
僕は途中で彼女達の顔を見た。
幸せそうに食べているな。

「どうかなさいましたのセレス様」

「いや、皆んな美味しそうに食べているなと思ってさぁ」

「だってこの料理凄く美味しいんだもん」

「そうそう」

「そうだね、だけど私は料理より、君たちと一緒に食事を出来るのが嬉しいな」

「そうなの?」

「そうなのですか?」

「幸子も嬉しいよ」

僕は前の世界でいじめに逢っていた…だから家族以外で一緒に食事をした者は居ない。
しかも相手が美少女で笑顔なら最高だろう。

「こんな美少女に囲まれて嬉しくない訳がないでしょう?」

「そ..そうなんだ」

「ありがとうございますわ」

「幸子もありがとう」

楽しく食事をしているのに…邪魔が入った。

「ちょっと待って奢ってあげるからそんなブスと食事なんてしないで私達と食事しない」

「そうだよ…そんなにイケメンなんだからもっと綺麗な人と付き合わなきゃ…私とかさ」

見た瞬間から気持ち悪い。

耳が長い化け物女が近づいてきた。

「すいません、エルフの女性に手をだすと…エルフの男性に嫌われるからお断りします」

「えっ..私達エルフじゃないよ? ダークエルフだから大丈夫..ダークエルフの男は別にその位じゃ人間を嫌ったりしないから」

「そうですか…教えてくれてありがとうございます..ですが、今日は遠慮ください…私はマリア様付きの姫騎士で、この娘たちを引率する立場な物ですから」

「そ、貴方がミスリル級の冒険者…麗しの姫騎士なんだ…凄いね、今日はまだ仕事中か..解かった、また今度誘うよ..邪魔して悪かったね」

冒険者の依頼中は邪魔しない。
そのマナーに救われたな。
だが、ダークエルフたちのせいで真理たちがしょげてしまった。

「さぁ..食事しようか」

「ごめんなさい..」

「何で幸子ちゃんは謝るのかな」

「だって、私達がブサイクだから..あんなこと言われて」

「何でそう思うのかな?」

「セレス様はお気を使ってくれますが…私くしは..」

せっかく楽しく食事をしていたのに…エルフのせいで台無しだ。
お前ら化け物みたいに気持ち悪いんだ..思わず言いたくなった。
相変わらず、耳長の化け物はこっちを見て笑っている。
吐き気がする程気持ち悪い。

仕方ない..雰囲気が悪くなったから出ようか?

「皆んな..もう出ようか」

真理が代表してお金を払ったが金貨1枚もした。
ふざけるなよ…高級店なら、マナーを徹底させろよな..店でナンパなんてさせるなよ。
思わず思ってしまった。
僕が睨んでいるとお店の店員が理解したのか謝り始めた。

「すいませんお客様…その不愉快な思いさせまして」

「別に良いですよ…ただ、次来るかどうかは解りませんけど」

「本当にすいません」

普通の店なら仕方ない…だけど高級店ならそれなりの配慮が必要だと思う。
少なくとも前の世界の高級店なら店でナンパ等許さないだろう。

「別に良いですよ..謝らなくても」

僕は店を後にした。

三人が元気がない…仕方ないな。

「今日は王都に泊まろうと思う、さぁ行こう」

僕は、元気のない彼女達の前を歩いて高級そうなホテルに入った。

まだ、元気がないな。

「すいません、ここ4人で泊れる部屋ありませんか?」

「スイートクラスなら4人でも充分泊まれますよ」

「じゃぁ..そこにします」

「金貨2枚になります」

「えっ..あのセレス様、私達と同じ部屋に泊まるんですか?」

「あの..セレス様..私くしとご一緒で良いのでしょうか?」

「あの、お兄ちゃん」

「役得、役得」

僕は金貨を払って先に部屋に入っていった。
黒木翼なら…たぶん彼女達から変態呼ばわりされるんだろうな….
だが、セレスだから問題ない。
その証拠に彼女たちは真っ赤になりながらもついてきた。

「流石にスイートだねお風呂もついている…先にシャワーを浴びて来るね」

不味いのですわ…冒険だと思ったから可愛らしい下着なんて身に着けてないのですわ…この世界のオムツみたいな下着なのですわよ…

私…汗くさいんじゃないかな..この世界に制汗剤とか無いし..あっお風呂に入れば大丈夫かな。

お兄ちゃんとまさか…経験しちゃうのかな…

「お先に..大きなお風呂だから..三人いっぺんに入れるよ」

「「「そう」」」

「お待たせしましわ」

「お待たせしました」

「お待たせーお兄ちゃん」

「さぁ一緒に寝ようか」

「「「はっ..はい」」」

「ねぇ真理さん」

「はい..(とうとうきたのかな..でも二人の前なんてそんな)」

「君は私にの目から見たら美少女にしか見えないんだ…その黒髪に綺麗な瞳、透き通るような肌..百人の人が君をブサイクだって言っても私には綺麗な人にしか見えない…それじゃ駄目なのかな?」

「だ..駄目じゃありません..そそれで良いです..皆んなに不細工だと言われてもセレス様お一人に綺麗だと思って頂けるなら..それだけで充分です」

「翔子さん」

「なななななんですの…セレス様」

「君を見た時にまるで美術館の絵画の中から抜け出して来たような美少女に見えたんだ、誰がなんて言おうとも君みたいに綺麗に見える女性は居ないよ」

流石に少女漫画のキャラクターに見えるとは言えないからね。

「本当にそう思ってくれますの?信じてしまいますわよ」

「嘘は言わないよ…本当にそう思っている」

「あああありがとうございます」

「ちょっと…祥子ちゃん横代わってよ…幸子もセレスお兄ちゃんと話したい」

「えへへお兄ちゃん」

「幸子ちゃんは本当に可愛く思えるよ…もしこんな妹が居たら、きっと私はシスコンになっちゃうかな」

「本当に?ほんとにそう思う」

「うん..本当にね」

「ありがとう..お兄ちゃん」

「そこで聞いて欲しい事があるんだ…もう君たちは充分に強くなった、1日早いけど明日で訓練は終わり…そして、お城に帰って最終試験をクリアしたらもう卒業だ」

「卒業..それってどういう事ですの?」
「もしかして、お別れってことですか?」
「お兄ちゃん..何で」

「違うよ、三人で組んで自由に行動して良いって事だよ…私はお城にいる事が多いから何時でも会えるよ」

「だけど、セレス様はもうご一緒してはくれないのですか?」

「それは無理かな..」

「何で…幸子、セレスお兄ちゃんと一緒が良い」

「無理なんだ..君たちは勇者じゃないか…私はかなり頑張ったんだけど、君たち程強くは成れなかった」

「力なんて関係ありませんわ..私達が強いのであれば..セレス様を守って戦えば良いのです」

「そうです、私がセレス様を守る」

「幸子もお兄ちゃんを守ります…だから一緒に居て」

「それはね…私が嫌なんだ..好きな人も守れない..好きな人のお荷物になるなんて自分が許せなくなる…だからごめん…」

「「「あっ」」」

(いま、セレス様が私達の事を好きって言いましたわよね)
(間違いなくきいたよ)
(幸子も)

(ここで意地を張って嫌われたら不味いのですわ)
(好きなら何時も一緒でなくてもよいんじゃないかな? お城を拠点として頑張って毎日帰ってくれば会える訳だし)
(幸子も、そう思うよ…確かに女の子に抜かされたら男の子は嫌だもんね…)

(そうですわよね…自信を無くさせて嫌われるよりは..距離を置いて愛される方が得策ですわ)
(そうだよね..外で私達が頑張って..城で出迎えてもらうのも嬉しいかも)
(幸子的には..可能なら魔王を倒して..求婚すれば..カッコいいかもとか思っちゃう)
((それ良いです(わ)ね))

「セレス様、解りましたわ..とりあえず明日の訓練の後の試験頑張りますわ」

「私も頑張ります」

「幸子も」

「ありがとう、とりあえず明日は頑張ろう」

だが、セレスと同じベットで寝ているせいで三人は一睡も出来なかった。
それは、実はセレスも同じだった。

人を殺す意味
彼女達より先に起きてギルドにて…盗賊の討伐の依頼を受けて来た。

ラットさんにお願いして相手の強さよりも確実に出会える相手を選んだ。

情報により居場所はすぐに解った。

洞窟の様な場所に、相手は十二人程居たが…弱かった簡単に殺せる位に..

そして、彼女達を三人残して皆殺しにした。

三人については…縛りあげて逃げられない様にした。

しかし、全てが女の盗賊には驚いたが、よくよく考えればこの世界は男女比が大幅に女に偏っている。

こっちの方が当たり前だ。

僕から見たら…案外可愛いので良心が痛むが致し方ない。

そして、討伐の証として首を斬り落としアイテム収納に放り込んだ」

「おはよう!」

「「「おはようございます セレスさん(様)(お兄ちゃん)」」」

「今日は、朝食は軽めに食べよう」

「何故ですか?」

「今日は君たちに人間を殺して貰うから」

「それは冗談ですわね?」

「ごめん…冗談じゃないよ」

「お兄ちゃん…本当に殺さないといけないの?」

「君たちはこの先に旅に出るだろう…その時に盗賊に出会ったら..どうするの?」

「強いんだから倒せば良いんじゃない」

「だけど..その時に倒した盗賊が、仲間を引き連れ戻ってきたら、してその人数が倒せない位人数だったら、死ぬのは君たちだよ、ここは思ったよりも命が軽い…どうする?」

「幸子はそれでも殺したくないんだけど…」

「そう、それなら…別に良いよ、訓練はこれでおしまい」

「良いのですか?」

「出来ないなら仕方ないさ、だけど、私はこの先君たちには関わらない」

「何でですの?…それとこれとは…話が違いますわ」

「これは自己保身だよ…もし、これから先、人間を殺させなかった為に君たちが死んだら…捕らわれて犯される様な事があったら…私は死ぬほど後悔する、だから…」

卑怯な言い方なのは解っている、だけど君たちが心配なのは本当だよ。

「仕方ないよね..ここはそう言う世界だもんね、ごめんなさいセレス様」

「そうですわね、勇者なのですから、いつかは直面する事ですわ…解りました」

「そうだよね…仕方が無い事だよね」

「本当にごめんね…私に力があれば、君たちにこんな事させないで済んだのに..」

「気にしても仕方ありませんわよ、さぁとっと済ませましょう」

彼女達と一緒に盗賊の居た洞窟に入る。

彼女達は既に顔は真っ青だった。

そりゃそうだ、此処には首の無い死体が転がっているんだから。

それでも、彼女達はついて来てくれた。

幸子も祥子も吐いていたが、真理だけは顔色は悪い物の戻していない。

案外、耐性があるのかも知れない。

「さぁ着いたよ…三人転がっているでしょう? 猿轡はしておいたし、身動きも取れない….さぁ誰からやる?」

「わわわ…私くしが..」

「翔子さん、無理しないで良いよ、私からやるよ」

「真理さん」

「真理さんは覚悟が決まったようだね…簡単に殺しちゃ駄目だよ…2~3回足とか手..顔でも何処でも良いから斬りつけて…それから殺してね」

「簡単に殺してはいけないのですか?」

「これは訓練だから、相手は動かないけど、実際には相手は動くんだから..相手の足や手を切り落とした場合もある、その時ショックで動けなくなると困る..その練習だから」

「納得しました」

真理は足を切り落とし、その後に片腕を切り落とした、そして最後に首を斬り落とした。

「大した事ありませんでした…」

だが、顔は青い、僕の様に吐かないだけ凄いと思う。

「次は幸子にやらせて…ごめんね祥子ちゃん、私が多分一番..出来ないから」

「良いですわ..幸子さん」

幸子は何回も戸惑いながらも足や手を刺した。

そして最後に首を跳ねた…だが一連の動作はゴブリンやオークの様に素早い動きではない。

多分、相手はも凄い苦痛の上で死んだと思う。

「何とかやったよお兄ちゃん」

顔には脂汗が出ている、そして…盛大に戻した。

「最後は私くしですわね」

祥子は、華麗な動きで手足を切断すると、そのまま首を跳ねた。

多分、彼女は前の2人を見て理解したんだ..殺すなら一瞬で殺してあげた方が良いという事を。

「ご苦労さん..さぁ最後の仕事だよ、その首をアイテム収納に入れてね」

三人は黙って首をアイテム収納に突っ込んだ。

顔を青くしている彼女達に何を言ってあげれば良いのか解らない。

そして、そのまま、ギルドに行って首を換金した。

金貨に10枚程になり…そのお金は真理に三人で分けるように言って渡した。
もしかしたら、彼女達もミスリル級の推薦があるのではと思ったがそれは無かった。

「しかし、凄いですね..セレス様や真理様たちは..確実に金貨が貰えるクラスの仕事をこなせるんですから」

三人は何も言わない。

「ごめん、ラットさん、彼女達は初めて人を殺したから..元気なくて」

「そうだったのですか?…余計なアドバイスですが、貴方達が盗賊を殺してくれたから、この先死ぬ命が救われた..盗賊を殺したとは思わないで..沢山の命を救ったんだ、そう思っては如何でしょうか?」

「そうですね..頭では理解できるのですが..心が..その、旨く言えません」

「私くしも同じなんですの理解は出来るのですが..どうしてもショックを受けてしまいまして」

「幸子も同じ…」

「そう言う時にはですね…セレス様に抱いて貰えば良いのですよ」

「ちょっとラットさん..それは」

「素敵な殿方に抱かれれば、そんな事すぐ忘れますって」

「だ抱かれるのですか?..ですが..私くしまだ、そこまでの関係ではありませんの」

「わわわ私も同じです」

「幸子も」

「あの、ラットさん、私はまだ…」

「皆んな、何を考えているんですか?(笑い) 私はただ、ハグでもすれば気分が変わるかなと思っただけですけど…」

「ラットさんの意地悪」

「酷いのですわ」

「幸子はハグだと思ってました」

「あー、幸子だけ良い子になろうとしてズルい」

「幸子、子供だから解らないよ」

「こんな時だけ、子供のふりしますのね」

流石はギルドの受付嬢だ..一瞬で明るい雰囲気にしてくれた。

「ラットさん、有難う」

「いえ、これも受付の仕事ですから」

結局、僕は三人をハグした。

ラットさんも寂しそうだったので同じにハグした。

「ギルドの受付嬢で良かった」なんて言っていたが、他の受付嬢が凄い顔で睨んでいる。

知らないよ。

現金な物で急に三人はその後明るくなった。

案外、精神は強いのかも知れない。

こうして、彼女達の訓練は終わりを告げた。

マリアとセレス
「セレスようやく帰ってきたのね」

マリア様の笑顔が可愛い。

この笑顔を見る度に美醜逆転して見えるようにして良かったと心から思える。

最近では、セレス殿、セレス卿…そしてセレスと呼び方がコロコロ変わる。

少しは距離が近づいたのかな。

「それでは、セレス様..失礼しますわね」

最大のライバルはマリア王女ですわね。

「訓練有難うございました…セレス様」

姫騎士って…ずるいよね、姫様の騎士って意味だもん。

「お兄ちゃん、また明日」

やはり、セレスお兄ちゃんの一番はマリア王女なのかな。

「はい、またね」

「「「マリア様も、失礼します」」」

「はい」

私、姫なんですけど「も」なんですね?
まぁ仕方ないと思いますが…

「さぁ、セレス、私の部屋で報告をお願いしますね」

未婚の王族の部屋に入って良いのだろうか?
姫騎士だから許されるのかな。

セレスは勘違いしている。
彼女はマリアンと違い婚約者もまともに作れない姫だという事を忘れていた。

今回の成果についてマリア様に伝えた。

マリア様は「凄い、凄い」と褒めてくれたけど…

それで、マリア様以前にお願いした事をお願いします。

「彼女達のレベルや強さを私がセレスと比べる事ね」

「はい」

別に構いませんが、何故セレスは彼女達の事を知ろうと思わないのですか?

「羨ましいからです」

僕だって、本当は勇者だったんだ..本当は同じ位強くなれるのに…盗まれてしまったんだ。

「羨ましいのですか?」

「はい…どんなに努力しても届かない能力..そして何処までも強くなっていくその可能性..羨ましくて仕方ありません」

本当は、僕にも貰えた物..恨む気持ちは余り無い..だけど、どうしても目にすると羨ましい。

「そうなのね..セレスは私と同じだわ」

「姫様とですか…」

「そう、私は妹が羨ましい..美しい容姿に、あの能力、活発さ…羨ましくてしょうがないわ」

「ですが..私には姫様の方が..ずうっと綺麗に見えますよ」

「そう言ってくれるのは多分、この世界でセレスだけだわ…勇者が羨ましいセレス、妹が羨ましい私…同じだと思わない」

「そうかも知れませんね」

そうだ..もし、僕が勇者だったらこの人の事もこんな風に思えなかったかも知れない。

「でもね、セレス、私は勇者を率いる立場の妹より、凄く幸せなの…それはねセレスが居るから」

「私がですか?」

「そうよ..だって貴方はこの世界で唯一本当に私を大事にしてくれる人…そしてこの世の中で唯一の私に本気で仕えてくれる騎士..それに、これは今は内緒ですが..貴方は私の全てなの」

「有難うございます…マリア様」

「どういたしましてセレス…そう言えばもう一つの望みって何かしら? 何でも聞きますよ」

「はい…彼女達と宮廷魔術師長、騎士団長と戦って貰います…そして彼女達が勝ったら三人を僕の手から離して独立させて欲しいのです」

「セレス…貴方..」

「強いですよ彼女達..多分私よりも」

「そうなのですね…ですが、それは貴方が鍛えてあげたものでしょう? 強さは絆には関係ないと思いますわ」

「それでも、私は男です..女性を守る立場で、女性に守られる立場には成りたく無いのです」

「あの..セレスに前から聞きたかったのですが…セレスの国では男が女性を守る物なのですか?」

「はい」

「だからなのですね…セレスや騎士団長、勇者は別にしてこの世界では女が男を守るのが普通なのですよ」

「そうなんですか?」

あれっ一緒に居たのが真理達だからすっかり頭から抜けていたな。

「だから..貴方程強い男は..それこそ、東吾様位..いえまだ東吾様は訓練中の身なので..騎士団長に勝った貴方が多分、王国最強の男ですわ」

「あれっ、他の男勇者は違うのですか」

「男のセレスには話せませんが…リタイヤしました」

「そうですか…聞かない方が良いのでしょうね」

「私からは言いにくいので..同性の方から聞いて下さい」

「解りました」

「それで、セレスは、あの三人と離れたら..どうするのですか? 姫騎士なんですから..その、私ずうっと一緒に居てくれるだけでも良いですのよ?」

「そうでうね..それは凄く嬉しいですが..暫く考えて自分に出来る事をして行こうと思います」

「それでこそ、私のセレスです」

「有難うございます、姫様、少し気分が楽になりました」

「どういたしまして」

抜かれる男
マリア様から三人の能力について報告があった。
もう既に僕より強くなっているそうだ..
やっぱり、勇者って凄いな、解ってはいたけどさ..

廊下を歩いていると久々に東吾に会った。

「久しぶりだな…凄い活躍じゃないか、こっちはまだ訓練中だと言うのに、あの三人鍛え上げたんだってな」

見るからに機嫌が悪い。
僕が鍛えた結果、三人に出し抜かれたんだ..機嫌も悪くなるだろう。

「まぁね…これが私に出来る精一杯だからね」

「精一杯?」

「君たち勇者は良いな…こっちが死ぬ気になって鍛え上げたのに、ちょっと手ほどきをして鍛えたら..抜かれてしまう..東吾君も直ぐだよ…きっと3日間も実戦をこなしたら…もう私なんて簡単に超えてしまうよ..」

「そ、そうか..」

「あぁ..もう真理さん達にも抜かれてしまったよ、東吾君は勇者の中で1番だから、もっと簡単に私を越えていくだろうね…頑張って」

「あぁ…何かすまない」

「良いんだ…それじゃ私はいくよ」

「そうか」

僕はそのまま、マリア様を迎えにいった。

今日は彼女達の試験だ。

騎士団長のアルトマンと宮廷魔術師長のマドレーヌさんと戦って貰う。

マリア様と一緒に訓練場についた。

会場にはハインリッヒ六世もマリアンヌも既にいた。

「マリアから話は聞いた、儂も勇者がどの位強くなったか気になる見させて貰うよ」

「私くしも訓練の成果見させて頂きます、得る物があれば今後の勇者育成に活かさせて頂きます」

僕は真理達に声を掛けた。

「皆んなリラックスして…君達なら余裕で勝てるからね」

「「「はい」」」

「セレス殿酷いですわ」

「すみません、マドレーヌさん、アルトマンさん…三人とももう既に僕より強いんです」

「マジか?」

「はい」

結果は三人それぞれが、一対二で圧勝…当たり前だね。

「自信無くした..王国最強の俺が手を出せなかった」

「こっちも同じ..詠唱すらさせて貰えない」

「所で、セレス殿…何で魔法を誰も使わないんだ」

魔法..そうだ、僕も知らないし..教えていない。

「私は、魔法を知らないので、実戦で戦えるように鍛えました」

「魔法も知らないで..ここまで強く、信じられないですわ..あの宜しければ私と一緒に勇者の育成をしませんか?」

「いえ、お断りします」

「何故じゃ? 三人をここまで鍛え上げたのじゃ…適任だと思うがのう」

「これは…私の我儘です、騎士として人に抜かれ続けるのが辛いのです…申し訳ございません」

「確かに、それは辛い事かも知れんの..解かった..して今後はどうするのじゃ?」

「暫くお時間を頂き、この国に対して何が出来るのかじっくり考えたいと思います」

「そうか…まぁセレス殿の事だ..任せるとしよう…それで三人の扱いなんじゃが..」

「もう、彼女達は一人前です、彼女達にお任せします」

「だ、そうじゃ君たちはどうしたい?」

「私達は、暫くの間はお城を拠点としまして三人パーティで行動しようと思います」

「そうか..それも良いだろう」

「「「有難うございます」」」

「良い..これからも励むように」

これから、僕はどうしよう?

多分、彼女達に何かしてあげれる事はない..この世界でどうやって生きていくのか?

考えなければいけないな。

奴隷の購入
彼女達はもう充分強くなった…次に会う時はもう僕なんか手も足も出無くなるだろう。

東吾達、他の勇者には勝てるだろうが..討伐を3日間も経験したら真理達と同じに僕より強くなるだろう。

1人で居ると、良く勇者の女の子や東吾が話しかけてくる。

姿は違って見えても前のクラスの仲間だ..案外嬉しいものだな…

裏切られたけど、最近では憎しみよりも懐かしさが込み上げてくる。

城に居ても何も見つかる訳はない…街に行こう。

街を歩くと相変わらずうるさいな…

「あれは…セレス様、相変わらず美しいわね」

「麗しの姫騎士..良いなあ、私とパーティ組んでくれないかな」

最近は聞こえるように言って来る。

街を歩いていて気になる事があった。

それは奴隷がいる事だ..首輪をしている人間や亜人が居る..

だったら…どこかに奴隷を販売しているお店がある筈だ..

とりあえず…奴隷商を探そう…探す事1時間..見つけた。

「これは、これは麗しの姫騎士様..今日はどういったご用件でしょうか?」

「奴隷を見たいのだけど良いかな?」

「そうだな..醜い女奴隷をみて見たい」

「はぁ…美しい女奴隷で無く醜い女奴隷ですか?」

余り、吹っ掛けられると困るな…

「うん、ちょっと訳ありでね」

これ位のスタンスで良いかな。

「解りました..それでは廃棄奴隷の中から病気持ちで無い者をお見せしましょう」

「廃棄奴隷とは何ですか?」

「廃棄奴隷とは売り物にならない奴隷です..訳ありみたいな者だと思って下さい」

「本当に廃棄してしまうんですか?」

「病気持ちはそうですが..健康な者は廃棄しませんよ..まぁ鉱山とかに売りますが」

「そうですか..少し安心した」

「お優しいのですね..」

綺麗な部屋の僕にとって醜い女奴隷とイケメン奴隷の部屋を通り過ぎて..薄汚い部屋に入った。

臭いし汚い…そして薄暗い。

見た瞬間…目を奪われた..ここまでの美少女たちは見た事が無い。

1人の少女は背が低い子、だけどこの子がもし前の世界に居たら芸能人にスカウトされると思う。
多分、アイドル何て直ぐになれると思う。幸子やてんこの上位互換だ。

2人目の女の子は..生徒会の会長タイプだ..吉祥院 麗華の上位バージョン..この子が前の世界で僕の学校に居たら絶対に麗華は悔しがるだろう。

3人目の女の子は..ボーイッシュな感じだ..前の世界だとスポーツ少女って感じかな。

「セレス様..今いる廃棄奴隷で健康な者はこれだけです..他は病気ですので」

一瞬、そっちもみて見たいと思ったが…病気について僕はまだ知らない。

可愛い子の死ぬ姿なんて見たくない..だから我慢した。

もし、病気がこの世界で簡単に治るようなら..考えよう。

「あの、この娘達とお話ししても良いかな?」

「勿論、構いません..お前らお客様から許可を得たぞ、お客様が前に立ったら話をしろ」

「可愛いお嬢さん…少し話をして良いかな」

少女は周りをキョロキョロ見回している。

「もしかして..私の事なのかな?」

「君以外にはいませんよ..お嬢さん」

「あの..そういう言葉は、お客様みたいな綺麗な人にならともかく私みたいに醜い者に..」

この娘可愛いな..あたふたしている..僕に此処まで可愛く見えるんだ..不遇な人生だったに違いないな。

「そう? 私には..まぁ辞めときますね」

よく考えたら購入前に褒めたら..値段を釣り上げられるかも知れない。

「あの..お客さん..私を買ってくれるんですか?..もし買ってくれるなら何でもします。買って下さい!」

顔を赤くして凄い勢いでアピールしてきた。

「質問しても良い?」

「何でも聞いて!」

さっきまでと違って元気そうだ。

「君は何が出来る?」

「前の仕事は..実家が農家だったので..多分何も出来ません」

元気がなくなった。

「あの..私と来るなら冒険者をしなくちゃいけないんだけど頑張れる?」

「もし、購入してくれるなら..死ぬ気で頑張るよ! 」

「歳は幾つ?」

「えーと12歳」

「そうなんだね….えーと主人..この娘幾ら?」

「廃棄奴隷ですから銀貨5枚です、それで奴隷紋の方もコミです」

「奴隷紋?」

「首輪だと壊れたらおしまいですが..奴隷紋は奴隷商じゃなければ絶対に外せません」

多分、服従させる物だな。

「解かった、まずこの娘は購入する」

「ありがとう..えーと」

「私の名前はセレスだよ」

「ありがとうセレス様」

凄く明るいな..うん良かった。

「君の名前は?」

「それはご主人様が付けて下さい」

「セレス様、奴隷は昔の名前を捨てて、新しい主人に名前を貰うのが一般的です」

「そうだったのか..なら暫く待って」

「はい」

彼女を購入したせいか残りの2人は顔が暗い。

2人目の前に行った。

「綺麗なお嬢さん..すこし話をしても良いですか?」

「私くしは奴隷ですよ…そんなお嬢様なんて呼ばないで下さい」

「そうですか? だけど..多分貴族か商家の娘だったんじゃないですか?」

麗華や翔子の上位バージョンに見えるのだからそうじゃないかな?

「確かに…私くしは貴族の出でしたが貧乏貴族でしたし..没落しましたからただの女ですわ」

目が悲しそうだ..答えたく無かったんだろうな..

「あの..だったら貴族やマナーについて詳しい?」

「少しは..それに貴族と言っても父は騎士爵でしたから..冒険者になるなら剣術が少しできます」

「そうなんだ」

「それで私くしは購入して頂けるのでしょうか?」

この娘も可愛いい..目が潤んでいる。

「その娘はも銀貨5枚です」

先に言われてしまった。

「勿論、購入します」

「有難うございますお客様」

「有難うございます..セレス様..本当にありがとうございます!..一生仕えさせて頂きますわ!」

うわぁ..凄いなこれ、前の学校で麗華が笑うと..麗華スマイルとか言っていたけど..比じゃないなこれ。

こっち迄顔が赤くなっちゃう。

よし..次で最後だ。

三人目の女の子の前に来た。

「あのお客さん..もしかしてまだ買って貰えるの?」

「購入する気はあるよ」

「そうなんだ..なら買ってくれない? 奴隷になる前は冒険者だったから..冒険者をするなら役にたてるよ?」

「そうか!じゃぁ購入するかな」

「同じく..銀貨5枚です」

「そう解かった」

「次は..綺麗な者を見ますか?」

「今回は良いや..それじゃ金貨1枚と銀貨5枚ね」

「ありがとうございます…それじゃ奴隷紋を結びますのでセレス様の血を少し頂けますか?」

僕は痛いのを我慢して指を傷つけた。

それじゃ..奴隷紋を結ばせて頂きます。

彼女達の胸の少し上に小さな紋章が浮かび上がった。

これで完了です。

これで、彼女達は貴方に逆らえません..逆らえば物凄い苦痛が体を襲います。

そして、貴方が死ねば彼女達も死にます。

怖いな..奴隷紋。

「ご主人様…お名前をお願いしますわ」

「そうだな..君の名前は里香だ」

「変わったお名前ですわね」

「私は召喚者だからね」

「勇者様..」

「違う巻き込まれただけだから」

「そうでしたか失礼しました」

「ご主人様..私もお願いします」

「じゃぁ、君の名前は歩美だ」

「変わった名前だけど..私は歩美..うんありがとう」

「私はどんな名前を付けてくれるのかな?」

「そうだね..君の名前は楓」

「そう..やっぱら変わった名前だね」

そりゃ前の世界の スマホ小説「僕の瞳は腐っている」のヒロイン達の名前だからね..

あんなマイナーな小説、彼奴らは読んでないから安心だろう。

さてと、衝動で買ってしまったけど…まぁいいやお金はあるし

さてと…これから、彼女達と買い物にいかなくちゃな…

奴隷たちの1日
奴隷商を後にした僕は服屋に向かった。

流石にボロ布のような服じゃ可哀想だ。

彼女達は..奴隷に慣れているのか..この恰好と裸足で歩いていても気にならないようだ。

服屋についた。

「さぁ、服を買おうか?..正直私は女性の服にうっといから..必要な物を5着前後、下着とか必要な物も買って」

彼女達はきょとんとしている。

「どうしたの?」

驚いた表情で三人は見ている。

「あの、それは私たちの服を買ってくれるという事ですか?」

「そうだよ..そうだ、里香は服とか詳しそうだから二人について一緒に見てあげて」

服なんて購入するのはどの位ぶりかな..まさか買って貰える日が来るなんて思わなかったわ

「あの..本当に良いんですか?..」

「良いに決まっているよ..好きなの選んでね!」

「ありがとうございます!」

うん、この笑顔が見れるなら安い物だ。

「私も良いの?」

「勿論だよ」

三人は遠慮して安い物ばかり選ぼうとしていた。

「あの里香、予算は三人で金貨1枚使い切るように購入して」

今迄、不遇だったんだ..その位使ってあげても良いだろう?

「あのご主人様..そんな金額…奴隷には不釣り合いですわ」

「里香…気にしないで、私は君たちを奴隷とは思っていない..友達や家族そう思っている..だから気にしないで欲しい」

「あああああの..ご主人様、その金額は、奴隷ではなく平民でも使いませんわ..私くしが貴族の時に使っていた金額よりも多いですわ」

驚いた顔で三人がこちらを見つめてくる。

「何でですか? 何でそんな扱いをしてくれるのですか?」

泣きそうな顔で歩美が聞いてくる。

「そうだな..さっき言った通りだよ..私は転生者だからね、この世界では1人ボッチだ…だから居場所や友人、家族が欲しいんだよ…それだけだ」

「それって家族みたいに扱ってくれるという事で良いんだよな?」

楓が笑顔で聞いてきた。

「うん、そのつもりで良いよ」

「そう、ありがとう」

結局、彼女達は銀貨5枚しか使わなかった。

料金を支払い大通りを歩く、彼女達は多分碌な物を食べていないんだろうな..察しが付く。

だから僕はレストランに入った。

また、此処でも彼女達はキョロキョロしている。

「あの…ご主人様..私達は..」

歩美が心配そうに聞いてくる。

「座って、座って…ほら早く」

「あっ..はい..座らせて頂きますわ」

「私も座らせて頂きます」

三人共オドオドしている。

多分、このままだと、碌なもの食べないかも知れないな..だから勝手に頼んじゃおう。

「あの..すいません..この店のお勧め4つと、同じくアルコールじゃないお勧めの飲み物4つお願いします」

「あいよ..お勧め4つにジュース4つね…あれっその娘達、奴隷かい随分良い扱いをするんだね…」

少し、変な顔をしている。

「はい..私には家族が居ないので..お金で家族を買ったようなものですから..」

「はぁ..まぁ良いや金を払ってくれるなら客だ..それがここのルールだからね..あいよ」

確かに..よく見ると、客を待っている奴隷が外に居た..そして、その中にはこちらを羨ましそうに見ている者も居る。

僕は心の中で謝る..彼女達は他の人の物..だから、何かしてあげる事は出来ない。

待っていると料理が届いた。

「さぁ…食べようか?」

「「「はいっ」」」

「あの..ご主人様ありがとうございます..里香は里香はこんな美味しい物..もう何年も食べていません」

美味しそうに上品に食べている、流石元貴族だ。

「歩美は初めて食べました..いつも野菜しか食べていなかったので..」

そうか..そうだよな..

「私は冒険者だったけど…こんな美味しい物は滅多に食べなかったな..流石ミスリル級だな」

「えっどうして解ったの?」

「だって..さっきから聞こえてきてるよ..麗しの姫騎士という2つ名とミスリル級ってね」

「確かに聞こえてきているね..」

「ご主人様は冒険者…それもミスリル級ですの?」

「本職は..姫騎士なんだけどね…」

「姫騎士ですか?…王宮勤めなのでね…流石はご主人様ですわ」

「王宮勤め…凄いです」

「冒険者でミスリル級..そして王宮勤め..凄い」

「さぁ..ご飯を食べよう..冷めちゃうよ」

「「「はい」」」

「さてと..今日の所は ホテルに泊まろうか?」

「「「解りました」」」

僕は彼女達と一緒にホテルまで行った。

とりあえず3泊分のお金を払い部屋を確保。

彼女達に金貨1枚づつを渡す。

「それじゃ、また明日」

「えっご主人様はどちらに行かれるのですか?」

「私は王宮騎士なのでお城に帰らないといけない..だからまた明日」

「明日はご主人様はきてくれるの」

「勿論」

「ご主人様…また明日」

「また..明日」

「はぁ..あのセレス様は何を考えているのでしょうか?こんなの考えられませんわよ!」

「そうだよね、いきなり私みたいな醜い女を買って、綺麗な洋服にご馳走、このホテルも高いんじゃないかな..奴隷の前より絶対に凄い生活だよ..」

「そりゃそうだ..こんなホテルなんて銀級冒険者だって無理だな..しかもこの部屋はその中でも一番良い部屋だよ..ほらお風呂もトイレもある」

「貴族だって躊躇する部屋ですわよ..正直、没落前より…この1日は幸せですわ」

「しかも…生活費に金貨1枚..豪遊したって1日じゃなくならないよ…」

「歩美の村じゃ金貨なんて見た事無いよ? これ1枚で1年暮らせるかも?」

「田舎ならそうかも知れませんわ…貴族だって貧乏貴族だったら..そうそう使いませんわよ」

「とりあえず..美味しい物でも食べて今日はゆっくりしますか?」

「「そうしましょう」」

彼女達の1日はこうして過ぎていった。

公爵家の次女 レイス
王城の方が寂しいのでもう一人貴族キャラを作りました。

【本文】
今日一日あった事を、僕はまだマリア様に話していない。

「セレス..今日は外に出掛けていたみたいですが何をしていたのですか?」

何か..奴隷を購入したとは言いづらいなぁ…

「はい、街を散策しながら、これから何をしようか考えていました..ヒントは掴めた気がした」

「そうですか…良かったですわね! 実は今日、貴方に会いたいと私の友人が訪ねて来たのですけど..お会いして頂けますか?」

余り..会わせたくも無いのですが…

「良いですよ!」

《ここだけの話、結構きつい性悪しているので気をつけてね》

「解りました..気を付けます」

「貴方が、姫様の騎士なの? へぇー 私の名前はレイス.ルブランド.キャミエール 由緒ある公爵家の次女よ!」

あぁ..凄い..背が低くて小さいけど..ここまでの綺麗で可愛らしい人は、姫様以外に見た事が無い。

前の世界のアイドルだって敵わない…正に小説や漫画から飛び出たような女の子だ。

「貴方..なに私を見つめているのかしら? 幾ら私が醜いからって騎士になんて馬鹿にされる謂れはないわよ..この..いい加減にしなさい!」

僕は慌てて片膝をついた。

「初めまして、キャミエール様..私はマリア様つきの騎士をしています、セレスと申します。挨拶が遅れたのは貴方に見惚れていただけで..悪気はありません..お許し下さい」

レイスは急に顔が赤くなり..泣き出した。

「貴方も私の事を馬鹿にするのね..どんなに頑張っても顔が醜いからって..馬鹿にして..馬鹿にして.馬鹿にすれば良いじゃない!」

顔にビンタが飛んだが..レベルが上がっているから痛くない。

理由は解らない..だけど泣いているんだから..良いや我慢しよう。

「貴方には解らないでしょう? 私..醜いから人の何倍も努力しているの! 由緒あるキャミエール家の娘なのに毎日、毎日馬鹿にされて..ヒック..あんたも馬鹿にするのね! 騎士の癖に..騎士の癖に!」

何を言っているか解らない..そうか? 僕から此処まで美しく見えるという事は..そうだよな!

「キャミエール様…私は本当に貴方に見惚れていたのです..嘘ではありません!」

レイスはますます怒りが増したように見える。

「嘘はやめなさいよ!…ゴブリン令嬢と言われる、私に、貴方みたいな方が見惚れるわけ無いじゃない!」

僕には、可愛さと綺麗さを身に着けた少女にしか見えない…背は低いけど、この世界でしか見えれないピンクの髪..胸は小さいけど..まるで綺麗な人形の様に見える顔立ち…コスプレイヤーが成りたくてもなれない本物、そうとしか見えない。

「幾ら、言われても曲げられません!貴方の魅力に目を奪われたのは本当です! 対応が遅れた事は謝ります…ですが、気持ちまでは疑われたくありません!」

これは曲げられない…

「嘘、嘘、嘘、嘘….馬鹿にして、良いわよ馬鹿にするだけ馬鹿にしなさいよ! 貴方は許さない!許さないんだからー」

どうしよう..仕方ないのかな..どうせ許して貰えないなら…不敬罪の方が良いか..

「キャミエール様..ごめんなさい!」

「へっ」

僕はレイスの後ろに回り込むとそのまま抱きしめた。

「なななななっ何をしているのかしら…この馬鹿騎士は!」

顔が真っ赤だ..だけど怒りだけじゃない気がする。

「これが不敬罪なのは解ります…だけど、どうせ罰されるなら..そちらが良いです、私にはこういう方法でしか無実を証明出来ませんから」

「本当なの?」

「何がですか?」

「わわわわたしに見惚れていたって事よ?」

物凄く可愛いな..あとが怖いけど..

「本当ですよ! 違う世界から来たせいか..凄くキャミエール様は愛らしく見えます!」

怒っているのか嬉しいのか解らない、そんな顔でレイスは見つめてくる。

「嘘だったら、殺すからね! いいわ、離して勿論、不敬罪にも問わないわよ!」

「解りました」

僕はレイスから手を離した。

「私も悪かったわ、男の貴方に手を上げて…いきなりビンタして…お詫びに好きな事1度していいわよ、ビンタしても構わないわ!」

レイスは歯を食いしばって目を瞑っている…ビンタをされる、そう思っているようだ。
相手は貴族だ…口は不味いよな..僕は、考えて額にキスをした。

「嘘…キスされた、私キスされた」

顔が茹蛸のように真っ赤だ。

「すみません..キャミエール様」

「へっ? べべべべ別に怒ってないわよ! 女性にとって男性からのキスはご褒美みたいなものだから…だけど..本当にそれで良かったの?」

「はい..綺麗で可愛いいキャミエール様にキス出来たので…充分です」

「そっそうなんだ!嘘じゃないようね..だったら、だったらねもう一か所だけキスしても良いわよ? 特別なんだからね!」

僕は今度は黙って僕は頬っぺたにキスをした。

「わわわあたし、本当に貴方にとって美少女に見えるんだ! 」

「はい」

「どんな風に見えるのかしら? 教えてくれる?」

私、この人にどの様に見えているの..知りたいわね!

「背が小さくて12歳位でしょうか? まるで物語の中の美少女が当然目の前に現れた様に見えています」

「そそそそそそうなんだ!..セレス..貴方に言いたいことがあるの!」

あれっ何故か急にまた怖くなってきた。

「あの、私はなにか」

「セ、レ、ス一言言っておくわね、わた私は16歳なんだからー子供扱いしないで..いいわね!」

「解りました..絶対にしません」

「そう、なら良いわ..だけど、貴方にとって私は美少女なのよね..だったら一層の事..」

「あのレイスにセレス、私を無視して楽しそうですわね?」

マリア様がまるで能面のような顔で立っていた。

「レイス..貴方もセレスを気に入ったようですわね?」

「この私を美少女なんて言ってくれた人は他にはいませんので..姫様なら解るはずです」

「そうね…解るわよ!」

「それならば..」

「その話は今度、公爵を交えて話しましょう? 今日は終わり..今日はこの後は楽しい雑談をしましょう、ねぇ」

「はい、姫様」

結局、明け方近くまで僕は解放されなかった。

奴隷たちの家..僕の居場所
私は夜中に目が覚めた。

横を見ると、里香さんも楓さんも寝つけないようだ…

「貴方も寝つけないんですの?」

「えぇ..ここ暫く石の床で寝ていたせいか、この布団フカフカすぎて..」

「確かにそうですわね..私くしもベットなんて久しぶりだから少し寝付けませんわ」

「元貴族の里香さんでもそうなんだ..農家の私が眠れないのは仕方ないのかな?」

「いや..何処でも眠れる…元冒険者の私だって上等すぎるから眠れないよ..これ上等すぎるな」

「しかし、セレス様は私達に何をさせたいんだろうか?」

「解りませんわよ..男だてらに女を侍らせたいなら..もっと綺麗な女を買うと思いますわよ」

「私もそう思うよ..言いにくいけど、私も含んで…五体満足なのに買い手がつかないで廃棄奴隷に落とされるほどの不細工だもんね」

「歩美さん..そうですわね」

「何されたって良いんじゃないか? 私達..1人銀貨5枚の価値しか無いんだよ? それなのに高級な食事に高級な服に、高級なホテル..信じられないよ..これ」

「確かにそうですわね..考えても仕方ありませんわ」

「そうだね、明日詳しく聞くしかないよね?」

「じゃあ..寝ますか」

「おはよう!」

「「「おはようございます! セレス様」」」

「昨日はよく眠れましたか?」

「えぇ、おかげさまで久しぶりにゆっくり眠らさせて頂きましたわ」

「それは良かった、それで今日は、家を買いに行こうと思うんだ」

「家をお買いになるんですか?..それにお伴すれば良いんですの?」

「そうだよ、私はこの世界の常識や相場が良く解らないから教えて貰えると助かる」

「そうですか、解りましたわ..まずは家を購入するのであれば、ギルドを訪ねると良いと思いますわ」

「ギルドで買えるんだ..知りませんでした」

「他にも購入方法はありますが..セレス様は冒険者でしかも、ミスリル級、良い家を斡旋してくれると思います」

「そうですよ、せっかくのミスリル級..利用しなくちゃ損だよ!」

「それじゃ、ギルドに行きますか…」

「セレス様、今日は素材の買取ですか?」

ギルドに入るとすぐに僕の担当のラットさんが話しかけてきた。

「いや、今日は家を買おうと思いまして」

「えっ..セレス様は王宮騎士ですよね? 家が必要なんですか?」

「まぁ色々ありまして..出来れば広い家を幾つか斡旋して貰えないでしょうか?」

「広い家ですか..幾つかありますが、どの様な家が良いのでしょうか?」

「部屋数が多い物が理想です」

「そうですね..大きい物で安い物だと..今は1件ありますよ、部屋が12個あって離れもあります」

「ですが..それは高額なのではありませんか?」

「それなりにはしますが..金貨15枚ですね…王都で仕事をしていた商会が拠点を王都から移すので早急に手放したいそうです..みて見ますか?」

「お願いして良いですか?」

「はい..それじゃカギを借りてきますね!」

早速、家を見に行こうとしたんだが..煩い。

「何、あの醜い集団、何で麗しの姫騎士、セレス様と一緒に居るのよ..」

「どうすれば、あの麗しの姫騎士と仲良くなれるのか..あんな醜い女でも仲良くなっているのに..」

「あの醜い女..ムカつくわ..あんな傍に居るなんて..死ねば良いのに」

《僕の目には、お前らの方が醜くく見えるんだけどね..無視だ、無視》

「さぁ着きましたよ…これが売り出されている家です」

「なかなか立派ですね?」

「はい、貴族様の家とは比べられませんが商会主の家でしたから立派です」

「それが何で安いんですか?」

「はい、貴族や商人が本当に望むのは小さくても王都の中心に近い場所です、ここは外れですので」

「成程、ですが何でこんな所に建てられたのでしょうか?」

「息子様の静養の為みたいですね..詳しくは解りませんが..」

「皆んな、早速入ってみようか」

「「「はい」」」

《あのさぁ..これってもしかしたら》

《まさか..違いますわ》

「凄く綺麗ですね..お風呂もトイレもありますし..気に入りました、購入させて頂きます」

「はい、それじゃギルドで購入手続きをさせて頂きます」

一旦、ギルドに戻って手続きをした。

これで正式にあの家は僕の物になった、しかも置いてあった家具は全部使って良いそうだ。

ついでにギルドで彼女達の登録をしようとしたが…奴隷は出来なかった。

「ですが、大丈夫ですよ! セレス様のパーティという事でなら登録できますし..所有者がセレス様なので下手な冒険者より扱いは良い筈です」

「そうですか..それならそれでお願いします」

さぁ..これで手続きは終わった。

「皆んな、これから必要な物を買いに行くよ!」

「必要な物ってなんですの?」

「家を買ったんだから..皆んなは今日からあそこで生活して貰うよ!ちゃんと1人一部屋あげるから生活に必要な物を買いに行くよ!」

「あの..もしかして私達の為に購入して下さったんですか?」

「そうだよ!」

「あの..私の部屋もあるのですか?」

「あるに決まっているじゃない..そんな意地悪しないよ?」

「あの..なんでそこまでしてくれるの?」

「前に言った通り..1人だからかな、だからお金で家族を買った..それだけだよ」

「あのさぁ..家族ってどういう者なのかな? セレス様にとって.さぁ」

《多分、私の思っている家族とはちがうだろうな?》

「大切な者かな」

「そう..なら良いや..解かった..だけど、もう私には本当の家族よりも貴方の方が大切だよ! 多分後の2人もね..きっと」

「そんな訳ないでしょう?」

《そんな訳はないだろう..僕ですら家族の事を今でも思い出すんだから》

「あの..セレス様..私くしは家が没落した時に二束三文で売られました..貴族でいた時にもこの醜い顔のせいで政略結婚にも使えない…そう言われましたわ..セレス様がくれたこの二日間は..多分一番幸せな時間でしたわ」

「それは私も一緒です、私なんて貧乏な農家に生れて口減らしで売られましたから..しかも顔が醜いからあのまま居たら鉱山送りですよ..家でもこき使われていたし..肉なんてこないだ初めて食べました」

「あっ..私はこの2人程じゃないよ..孤児だったけど教会で暮らしていたからさぁ..まぁその後は自由気ままに暮らしてたさ..まぁ仲間に騙されて売られちゃったけどね..どっちみち、こんなに大切にされた事はないよ?」

「そういう訳で、本当にセレス様が家族が欲しい..それが望みなら…もうセレス様は家族以上ですので叶っていますわ..」

《まいった..不意打ちだ》

「そうなんだ..ありがとう」

僕はそれしか言えなくなった..油断すると涙が出てきそうになる。

ここに僕が居ても良いんだよ..そう言われた気がした。

「さぁまた街に戻ろう..僕らの家に必要な物を買いに」

「「「はい」」」

本来は不幸の塊である彼女達奴隷を、冒険者たちは羨ましいそうに見ていた。

キャミエール公爵
昨日からレイスの様子がおかしい..

窓から外を見ながらニヘラ~つ薄気味悪く笑っている。

これは、物凄く嬉しい事があったはずだ…

だが、母としてこれは注意しなくてはいけない。

「レイス、何か嬉しい事があったのですか?..締りの無い顔をしてだらしない!」

「お母さま! 何でもありません!」

「何でもありません?…何も無いのに貴方はそのような顔をしていたのですか? いいから何があったか言って見なさい!」

「お母さま!..本当に何でもありません」

《本当に顔にすぐ出る娘ね》

「そうですか! ならば仕方ありませんね..素直に話すまで外出は一切させませんよ..」

「お母さま..それはあんまりです」

「そう..嫌なら、素直に話す事ですね!」

レイスは昨日あった事を話した。

《これは不味い…多分この娘の勘違いだ》

以前にも同じような事があった…

レイスが学園の中等部に入る際に..従者を募集した。

通常、公爵家の娘の従者には下位の貴族の子息がなる事が多い。

だから..レイスの従者も下位の貴族に打診をしたのだが..誰からも良い返事が貰えなかった。

仕方なく、騎士の中で一代限りの騎士爵しか持たない家に、もしレイスの従者に息子がなるのなら..永代にしてやる。 そう持ち掛けてようやく、レイスの従者が決まった。

レイスの従者になった男の名前はウェィブという名の平凡な人間だったが..レイスに対する扱いが酷かった。

だが、人と付き合いの少ないレイスは勘違いした。

自分と親密に付き合ってくれている..そう勘違いした。

「本当にあの馬鹿従者..仕方ないわね..ご主人様の私をレイスと呼び捨てにするのよ!」

「あの馬鹿従者..本当に仕方ないわね、騎士を目指しているのに剣も持っていないのよ!..仕方ないから買ってあげたわ..ご主人様の義務だもんね!」

「本当にあの馬鹿従者..ご主人様がいるのに..メイドに鼻を伸ばして」

聞いているこちらが、見てわかる程にデレデレだった。

レイスは腐っても公爵家の人間だ..騎士爵の人間であれば..例え醜くても受け入れるだろう!

そう思っていた。

だが…ウエィブが好きになっていたのはレイスつきのメイドのスリープだった。

両家で婚約の話まで進めていたのが解るとウェィブとスリープは駆け落ち同然に逃げ出した。

私は追手をかけようとしたが..

「いいわ..馬鹿従者の事は放って置いて..」

そう、言って部屋に閉じこもって出て来なくなった。

1週間して出て来た時には、ただでさえ醜い顔が、泣きはらして目が腫れていた。

私はこの娘を見ると切なくなる。

凄い努力家で、中等部で成績は主席だった。

それなのに..ただ醜いという事だけで、本来は主席が行う送辞もさせて貰えなかった。

あの娘が私は不憫でしょうがない。

今回の事は..あの子娘が傷つく前に片づけないといけない。

ただただそう思った。

カリーヌとの決闘…そして
「おはようございます、マリア様」

「おはようございます、セレス..今日はマリア様なのですね?」

「はい」

「そう..所で、今日もまた街に出るのですか?」

「はい..その予定ですが」

「すみません…街に出る前に会って貰いたい方がいます」

「それは構いませんが..どなたですか?」

「カリーヌ.ルブランド.キャミエール 公爵です」

「もしかして、レイス様のお父様ですか?」

「違います..お母さまです」

「あの、女性が公爵様なのですか?」

「あぁ..王がお父様だから勘違いなさっていたのですね…この世界では王や貴族はほとんどが女性です、男性の方が少ないのですよ..」

《よく考えたら、この世界は男女比1対3だもんな…すっかり忘れていた》

「そうですか..勘違いしていました、教えて頂き有難うございました」

「良いのですよ..貴方は異世界から来たのですから解らなくて当たり前です、気にしないで下さい」

「はい!」

(王宮の別室)

姫様は部屋の前まではついて来てくれたが、案内したらそのまま立ち去った。

「すいません、セレス殿..私はカリーヌ殿が苦手なので..すいません」

仕方なく、僕はノックしてドアを開けた。

《正直いってマナーを知らない..適当にやるしかない》

「マリア様付きの姫騎士、セレスです」

「こちらに来なさい」

「はい」

「すみません…私は召喚者なので、作法とかが解りません、手違いがあったらお許し下さい」

「そんな事はどうでも良いのです! 貴方にとってレイスはどの様な者なのでしょうか? その辺りの事ををじっくり話して頂けますか?」

《正直言って..凄く怖い、地竜と向かい合った時よりも遙かにプレッシャーが掛かってくる》

「無礼を承知で言わせて貰うと、凄く可愛らしくて綺麗な方だと思います、それ以上はまだ1回会っただけなので解りません!」

「ほぅ..我が娘をそこまで馬鹿にするのですか?! ならば決闘を申し込みます! 修練場で待ってます!..準備をして直ぐに来なさい!」

カリーヌ《言うに事欠いて..あの娘が可愛らしくて綺麗! そうやって誑かしたのですね》

《何故だ..なんで怒らせてしまったんだ》

言うだけ言って先に行ってしまった。

仕方ない..僕も向かおう。

「どうしたんだセレス殿!」

「アルトマンさん、実は決闘を申し込まれまして困っています」

「セレス殿に決闘? 無謀な事を..一緒に行って断ってやろうか?」

「有難うございます、お願い致します」

…….

「済まないセレス殿…これは無理だ」

「おや、アルトマン良い所に来ました、これから決闘をするのだけれど、立会人が居なくて、お願いしますね!」

「はい」

「アルトマンさん?」

アルトマン《すまぬ..セレス殿、あの方は私の師匠でな..申し訳ない》

「何をしているのです..セレス殿、さっさと用意をなさい」

「あの..すいません…何か怒らせたのなら謝りますから許して頂けませんか?」

「問答無用です」

「はぁ..仕方ない、ルールは」

「決闘にルールはありません! さぁ掛かってきなさい!」

仕方ない..僕はデュランを抜いた。

《強い..地竜なんて本当に比べ物にならない位のプレッシャーだ》

「さぁ行きますよ!」

僕は、これ以上ない程のスピードで突っ込んだ..だが、その先には既にカリーヌの剣があった。

直ぐにステップを後ろに踏んで後退した。

《隙が全く無い》

「それだけですか? 女神の騎士の力とはその程度なのですね..所詮は勇者のなり損ないですか?」

《煩い!煩い!煩い! 人の気も知らないで!》

「ならば、女神の騎士の意地に掛けても負けられません!」

僕の気持に答えるようにデュランが光り輝く..今迄で最速のスピードで切り掛かった。

「それは真面には受けれませんね..ファイヤーブレード」

炎が剣を包み込む…その剣とデュランが交差する..そして弾かれたのはデュランだった。

そして、そのままカリーヌの剣が僕に直撃した..女神の鎧なのに凄い衝撃が走った。

そして、そのまま僕は気を失った…遠くから、マリア様の声が聞こえた気がした。

…….

……………

「カリーヌ殿、貴方は一体何をしているのです! 私の騎士に対して剣を納めなさい!」

「マリア姫様、お言葉ですがこれは正式の決闘です、邪魔はしないで下さい!」

「一体、セレスが何をしたと言うのです!..セレスの主は私です、私に解るように教えなさい!」

「セレス殿は私の娘、レイスを愚弄したのです! 許せません!」

「どの様に..愚弄したと言うのです…教えて下さい!」

…………….

……….

「カリーヌ殿、それは勘違いです!」

「勘違い?..どういう事でしょうか?」

「セレスは異世界人です!」

 「勇者の召喚に巻き込まれたそうですね..それは御気の毒だとは思いますが…それとこれとは話が別です」

「ですがセレスにはこの世界の人物が違って見えています..勇者達は概ね、この世界の美的感覚は同じなのですが…セレスは少し違うようです」

「どういう事ですか?」

「その、私からは言いにくいのですが、不細工の中の一部の人間が綺麗に見えるらしいのです」

「それは、美醜が逆転しているのでしょうか?」

「そうでもないようです..綺麗な方でもそのまま綺麗に見える人も居るみたいなので、そうと言い切れません…ですが、私やレイスは、とびきりの美人に見えるのだそうです」

「にわかに信じられません!」

「ですが、妹の誘いを断って私に仕えている事が証拠になりませんか」

「あの美姫と名高いマリアン様の誘いを断ってマリア様をお選びになられたのですね..なら信頼の置ける話です」

「何気にカリーヌ殿は失礼ですね!」

「申し訳ございません、姫様..出来たら、セレス殿が娘に何を言ったか教えて頂けますでしょか?」

「解りました、ご説明します」

私はレイスとセレスの経緯について事細かに説明をした。

「これの何処に…セレスの不手際があるのですか? ご説明願えますか?」

「あの…姫様、それでは、本当にセレス殿には…レイスがこれ以上ない位の、美少女に見えている..そういう事ですか?」

「それは私もなんですけどね..」

「それでは、私は濡れ衣を着せて..決闘をしてしまった..」

「そういう事です!」

「はぁ..すいません、セレス殿が気が付いたら..謝る事とします」

「そうですね..そうした方が、私も良いと思いますよ..レイスに嫌われたくはないでしょう!」

………..

…..

「セレス殿…本当に申し訳ございませんでした!」

「あの、キャミエール様..何がなんだか解りませんが別に構いませんよ..その代わり一つ教えて頂けませんか?」

「あのキャミエール様はレベルは幾つ位ですか?」

「私は..レベル25だな」

「レベル25ですか? 私より低い..どうすればレベルに関係なく..そんなに強く成れるのですか?」

「それは技術によるものだ、過去に勇者が反乱を起こした時に対抗するために生れた技術が..ある」

「それなら..何故、それを魔王に使わないのですか?」

「この技術は..人にしか通用しなくてな..迷惑を掛けたから、此処まで話したがこれは王家と当家しか知らない話だ..他言は無用で頼む」

「解りました」

「所で、セレス殿、貴殿の口から聞きたい…レイスいや、我が娘は貴方から見てどの様に見えているのだ…」

「そうですね…綺麗さの中に可愛さもあって..現実に存在しないような美しい方です」

《あの、ゴブリン姫とまで言われた娘が…そこまで綺麗に見えるのか?..》

「それは、おとぎ話の中のお姫様位に綺麗に見える…そう思って良いのかな」

「それ以上です..前の世界も含んで、神や女神も含んでここまで綺麗に見えた人は3人しか居ません」

《うわぁ..娘がおかしくなる筈だ..こんな美少年に此処までいわれたら..誰だっておかしくなるな》

「なぁ..それなら..レイスと結婚を前提に付き合ってみないか?」

「それは、まだ出来ません…」

「何故だ..君にはレイスは美少女に見えるのだろう?」

「その通りです、私には勿体ない位に美しい人です」

「なら、問題は無いだろう? あれは優秀だからセレス殿にも贅沢をさせてくれると思う」

「私は、この国に召喚されてまだ何も成していません、この世界では解りませんが…私の居た世界では男が女性を養うのが当たり前なのです」

「へぇーそうなのか? それは正に女にとって天国じゃないか?」

「そうですか?…だから、私はこの世界で、頑張って自分で生きれる位の自信が欲しいのです、その自信が私についたら…真剣に考えさせて頂きます」

「そうか、それは自分に自信がついたらレイスと結婚をしてくれる、そう考えても良いのかな?」

「そうですが..側室ならです」

「ほう..公爵家のレイスを差し置いて正妻にしたい人物が居ると?..誰だそれは..外見以外ならうちのレイスに問題は無い筈ですが?」

「その..私は姫騎士ですよ?」

「あっ!」

「カリーヌ殿、わ . た . し . の姫騎士のセレスとの縁談を勝手に進めないで頂けますか?」

「そうでした..ならば、側室、姫様が正室なら、側室で充分です..それなら良いでしょう?」

「解りました…それなら問題ありません..レイスは親友ですからね」

…………………

………..

「あの、私の意見は無視ですか…まぁ二人とも綺麗だから良いんですけど..」

光明二つ
「ごめんなさい!」

僕は彼女達に謝った。

昨日、キャミエール公爵と決闘をした為に、家に顔を出す約束をすっぽかしてしまった。

「気にする必要はありませんわ..ただ何があったのですか?」

「そうです、私達は奴隷なのですから?」

「そうそう、逆ならともかく、ご主人様が奴隷に謝る必要はないさ」

《あぁ、スマホが無いのがこんなに不便だなんて思わなかったな…》

僕は昨日あった事をそのまま話した。

「あの..キャミエール公爵と言うとカリーヌ様の事ですか?」

「そうだけど…」

「良くご無事でしたわね..あの天災のカリーヌ相手に…」

「そんなに有名なの?」

「天災のカリーヌと言えば..冒険者でも有名だよ….盗賊団を洞窟ごと生き埋めにしたとか、今の騎士団長が修行の時に何回も骨を折られたとか..生きる伝説と言われているよ!」

「そうですわ…貴族の間では、キャミエール家はその昔には勇者を討伐した家としても有名ですわね!」

「あの、魔王でなく、勇者を討伐したの?」

「はい、殆どの勇者様は勤勉で真面目な方が多いのですが、昔、クロカワという勇者が魔王討伐後に謀反を起こしたのですわ」

「その時に勇者を討伐したのがキャミエール家だよ! 勇者クロカワと一対一で決闘して勝ったんだ..凄いよね!」

《そうか…勇者とは言えど、本当に勝つ方法はあるんだな..今度調べてみようかな?》

「それで、ご主人様は、カリーヌ様に勝たれたのですか?」

《余り、言いたくないけどなぁ..》

「全然駄目…一撃で負けたよ!」

「あちゃぁー流石の麗しにの姫騎士でも無理だったかー」

「楓..ご主人様に無礼ですよ?」

「そうだね..ご主人様..ごめんね!」

「負けたのは本当だから仕方ないよ」

「戦っただけ、凄いと思うよ..私は詳しくは知らないけど…今の王国最強より強いんですよね?」

「それは無いと思いますわよ..昔ならいざ知らず、今はアルトマン様が最強の筈ですわ」

「それは無いよ..アルトマンなら勝てるけど…カリーヌ様には勝てませんから…全然強さが違う!」

「あの、ご主人様はアルトマン様に勝てるの? あの男傑に?」

「男傑?」

《女傑の男版みたいなものかな?》

「アルトマン様は、男でありながら、剣を極めました。 そして男傑と呼ばれているのですわ..まぁ女性なら一度は憧れる方ですわね」

「そうなんだ、アルトマンさんモテるんだね…羨ましいな!」

「私くしは..その..王国最強より..麗しの姫騎士の方が好きですわ!」

「そう..里香さん、ありがとう!」

「どういたしまして!」

「あの..私も好きです..麗しの姫騎士」

「私もな..だけど、ご主人様凄いね! アルトマン様には勝てるんだね!」

「「あっ」」

「勇者よりも弱いけど転移者だからね! 今日はゆっくりするけど..明日からは冒険者の仕事をするよ!」

「そうだよな…それで何から始める?」

「そうだね、最初は、薬草採取とゴブリンの討伐辺りかな?」

「それは、初心者用の依頼だよね?」

「そうだよ、楓はともかく、里香も歩美も初心者だから..その辺りからで良いんじゃないかな?」

「あの..それは、使い潰すんじゃなくて、一人前に育ててくれるという事?」

「そのつもりだけど?」

「まぁ..セレス様ならそう言われますわね」

「所で、この世界の病気ってどうなのかな?」

「病気? ですか?」

「いや、この間、廃棄奴隷で病気の人が居たでしょう? 治せるのかなって思ってさぁ!」

「多分、美味しい物を食べさせてしっかり休養をとらせれば治ると思うよ!」

「そう、なのか?」

「そうですわね..危ない伝染病なら、処分されている筈ですわ..少なくとも、治らない人間は買取しないと思いますので..確実に治せる筈です..ただ、収支が合わないから、放置されているだけだと思いますわ」

「私もそう思う..私の村だと、高価な薬草を使うくらいなら..そのまま死なせたりします」

「冒険者でも同じだな..片腕が無いとか..使い物にならない奴が売られるけど..病気とかで死ぬとかじゃない..危険な病気なら、絶対に奴隷商は買い取らないな..不潔かも知れないけど..」

「そう、なんだ..」

《どうにか、出来そうだ…なら明日にでも奴隷商に行ってみようか!》

「ごめん、訓練は明後日からに変更..明日もゆっくり休んでて」

「本当に、宜しんですの?」

「うん、そうだ..夕方には顔を出すから..美味しい物を食べようか?」

「ご主人様、良いね、それお酒も良い?」

「別に構わないよ」

「やった!」

「有難うございます」

その後、雑談を暫くして…僕は城へ帰って行った。

廃棄奴隷の受け入れ準備
さてと、せっかく昼間時間を作ったんだ、奴隷商に行こう。

「おや、セレス、今日も出掛けるのですか?」

「はい、姫様!」

「そう、行ってらっしゃい!」

「行ってきます」

……………………..

……….

「これは、麗しの姫騎士様、今日も奴隷の購入でしょうか?」

「..すいませんが、また廃棄奴隷を見せて貰えますか?」

「ですが..もう、病気持ちの者しかいませんが、宜しいのですか?」

「構いません!」

見た瞬間..僕は後悔した..何で僕は最初に此処に来た時に…手を差し伸べなかったのだろうか?

正に薄幸の美少女たちが苦しんでいる。

《全部で5人居るけど..これは全部買うしかないな》

「また..話させて頂いても良いですか?」

「勿論、構いませんが..セレス様も物好きですね…使い物になるまでお金が掛かる..病気持ちを購入するなんて..」

《逆に考えれば..お金さえ使えば..治療できるんだな》

「まぁね…早速良いかな?」

「どうぞ」

《ここまでボロボロの娘達に、何て声を掛ければ良いんだろう?》

「こんにちは皆さん…私はセレスと申します!」

「セレス様ですか…ゴフ.ゴフ」

「貴族の方が..何か御用でしょうか?..ゲフ、ゴホ」

「無理して話さなくて良いですよ! 私は皆さんを購入しようと思っています..安らげる場所と、きちんとした治療を保証します…その代わり治ったら、私と一緒に過ごして頂けますか?..もし過ごしても良い..そう思って頂ける方は手を挙げて下さい」

五人、全員が手を挙げた。

「解りました…全員購入致します!」

「セレス様..本気ですか?..こいつ等、全員怪我か..病気持ちですよ?」」

「勿論です! その代わり..サービスして下さい!」

奴隷商《前と違って..今回のは本当の廃棄奴隷だ..普通は買わないだろう! しかも、治療したら赤字になるから死んでいくだけの存在だ..》

「そうですな..1人銀貨1枚、全員で銀貨5枚で如何でしょうか?」

「解りました、購入させて頂きます!..とりあえず、お金を払って置きますね、歩くのも辛そうなので、準備してからもう一度迎いにきます」

「畏まりました」

…………………

……….

屋敷にはベットの予備はあるから、毛布や敷物を用意すれば良いだろう。

後は、酒場で、胃に優しく体に良い物を作って貰って..

ギルドで治療について相談だ。

「ご主人様どうしたのですか?」

「歩美、悪いんだけど、ちょっと手伝って貰って良いかな?」

「何を手伝えば良いんでしょうか?」

「今日から、また5人増えるからベットとかの用意お願いして良い?」

「はい、解りました」

「体の調子の悪い娘達だから…そうだね5人で1部屋で良いや、準備しておいてくれる! 里香と楓もお願い!」

「「はい!」」

「それで、ご主人様はどうされるのですか?」

「私は、治療関係の相談と、介護してくれる人の手配をしてくる」

「ご主人様..その介護は私じゃ駄目でしょうか?」

「えっ歩美がやるの? 大丈夫?」

「私の場合は、貧乏農家出身ですから、冒険者か介護かなら介護の方が得意です!..雇う位なら私にお任せ下さい!」

「そうか、お願いしようかな?…それじゃ頼んだよ!」

「はい、お任せ下さい!」

《歩美って、案外頼りになるんだな》

「うん、任せた、じゃぁ行ってくるね!」

…………………..

………

「ラットさん、また相談に乗って貰って良いですか?」

「私はセレス様専属ですから、なんなりとご相談下さい!」

「それでは、甘えさせて頂いて、治療の得意な者を雇いたいのでご紹介いただけないでしょうか?」

「それでしたら、大丈夫ですよ!…どれ位の腕が必要ですか?」

「実は、廃棄奴隷を購入したので、その治療をお願いしたいのです!」

「廃棄奴隷ですか? それなら2か月も治療すれば治ると思いますよ? 少し余裕を持って3か月位のスパンで雇えば良いと思います」

《案外、簡単に治るんだな…この世界の人間は丈夫なのかも知れない》

「私はその辺りは疎いので、それでお願い致します」

「今、空いている治療が出来る人は..エレナさんですね…」

「何か問題でもあるんですか?」

「その、腕は確かなのですが..容姿が良く無くて..」

「ラットさん、私が過去に容姿を気にした事がありますか? その方をご紹介して頂けますか?」

「解りました、明日にでも家の方にお伺いするように伝えておきます」

「可能なら、今日からでもお願いしたいのですが」

「それでしたら、子供の冒険者にお使いとして依頼をしましょうか? 銅貨の2枚も出せば喜んで探して連れてきてくれますよ」

「じゃぁ、お願いします、あとエレナさんへの報酬はどの位払えば良いのでしょうか?」

「そうですね、交渉はセレス様次第ですが、最大月に金貨1枚位見れば良いと思います」

《案外安いんだな..》

「教えて頂き有難うございました」

「いえ、良いんですよ! ですが、そろそろ依頼も受けて下さいね?」

「うん、解った、今度、この前の娘たちのレベル上げをしますから期待して下さい」

「はい、お待ちしております」

…………………..

…………..

酒場で、通常の料理と体に良さそうな料理をお願いした..チップをはずんで届けて貰う事にした。

途中、辻馬車が居たので、奴隷商まで一緒に行って貰い、彼女達を載せて貰った。

続く

治療師 エレナ
屋敷に戻ってくると..小さな少女が、前の世界の魔法使いのような恰好をした少女を連れてきていた。

僕は先に小さな少女の方に話しかけた。

「ありがとう..依頼を受けてくれて、また達成おめでとう..サインするよ」

「ありがとう..セレス様」

「あと、これお駄賃、後で美味しい物でも食べてね!」

「セレス様..これ銀貨だよ? 依頼料は銅貨2だし後でギルドから貰うんだよ!」

「銀貨はお駄賃だよ..緊急依頼を受けて貰った感謝だから…遠慮しないで良いよ!」

「ありがとう..セレス様」

《この娘、別に可愛いわけで無いけど、これはこれで良いな、前の世界の近所の子供みたいで..あれっこの娘武器もって無いぞ」

「あのさぁ..武器は持って無いの?」

「うん、これからお金貯めて買うんだよ!」

「そう、じゃぁちょっと待ってて」

アイテム袋を漁ってみる…比較的真面な物だと鉄で出来た小刀があった。

「余り良い物じゃないけど..これ良かったら使ってみて」

「くれるの!..それ鉄製だよねー..本当に良いの?」

「うん…それじゃ、私は忙しいからこれで..」

「ありがとうセレス様」

…………………..

…………

「待たせてスイマセン、エレナさん」

《青髪に眼鏡..異世界特有の背が低い美少女だ..魔女っ娘のコスプレイヤーの目指す本物がここに居る》

「流石は、麗しの姫騎士殿..随分と優しいのですね!」

「私は別に優しい訳じゃないよ..ただ、自分の周りの者には笑顔でいて貰いたいだけです」

「そうですか…」

「さぁ、中に入って、入って」

「「「お帰りなさい、ご主人様」」」

「5人はどう..様子は?」

「ご主人様が連れ帰ってきた後、部屋に案内しました、とりあえずかなり汚かったので温かいお風呂に入って貰って、今は安静に寝て貰っています」

「そう、なら、そのままで良いよ..それで、こちらがエレナさん、これから彼女達の治療をして貰う予定の人」

「「「そうですか、初めまして」」」

「それじゃ、あちらで契約について話しましょうか?」

「ハイ…」

………………….

…………

「それで、報酬なのですが、月に金貨1枚で良いですか?」

「…..」

「えーと、足りなかったですか?」

「あの…それは雇っていただける..そういう事ですか?」

「勿論ですが何故聞くのです」

「いえ、今迄の殆どの方は..その、私を見ただけで断るので..」

「そうですか..私には普通に綺麗に見えるから安心して下さい..私、異世界人ですから少し、好みが違います」

「そうですか..それなら、住み込みで食事つき…治療に必要な物はそちら持ちで月銀貨5枚で如何でしょうか?」

「本当にそれで良いのですか? 少なすぎませんか?」

「私..実は、顔が醜いので良い扱いを受けた事はありません..住む所にも今は困っています..だから、私に居場所を作って貰えるなら..それで良いんです」

《あっ..これじゃ3か月だけとか言えなくなったな…》

「解りました..月銀貨5枚で契約させて頂きます..他にも頑張り次第でボーナスを出します..頑張って下さい!」

「ありがとうございます!」

さぁこれで暫く様子を見よう..やりたい事のした準備は出来た。

後で、ミーティングをして今後の方針を決めよう…..

ミーティング
その日の夕方、僕は皆んなを集めてミーティングをした。

「これからの予定として、里香と楓には冒険者をして貰おうと思う..それで大丈夫かな?」

「勿論、構いませんわ」

「私も構わないよ」

「そう、だったら明日から一緒に依頼を受けよう…そして、銀貨6枚分稼いだら、どうするか決めて良いよ?」

「えっ、それでは奴隷から解放する..そういう事ですか?」

「そういう事だよ..その後は此処にいても良いし、自分達でやれると思ったら出て行っても構わない」

「だけど、それじゃセレス様は儲からないんじゃないか?」

「別に儲けようと思ってないから気にしないで良いよ」

「私くしは…そのまま奴隷でよいですわ」

「里香..それは凄く嬉しいけど、それは銀貨6枚稼いでから言ってね」

「解りましたわ」

「それと歩美は生活費は無料で、月に銀貨1枚支給する形にするね…だから半年後には奴隷を開放するよ..その時に、どうするか決めて」

「私も開放しなくても良いです!」

「それはその時が来たら決めて..但し奴隷からは解放は絶対にするから、そこからは自分の意思できめてね」

「解りました..ただ私は奴隷の解放は望みません..そして出来るならずっとこのままでいたいです」

「そう..それじゃ、その時になっても気持ちが変わらなければ考えるよ」

さてと次はエレナさんだ

「エレナさんについては、暫くは約束した金額で雇うよ..最低3か月はお願いします、その後はエレナさんに任せるよ」

「任せるって..どういう事でしょか?」

「例えば、何かやりたい事があれば支援するし、無いならずうっとここに居てくれても大丈夫..自由にして良いという事だよ…但し、彼女達の事があるから、3か月は居てくれると助かる」

「そういう事ですか? ありがとうございます!」

「そして、君たちだけど、とりあえずは怪我や、病気の治療に専念してね、そこに居るエレナさんが治療してくれるし、介護は歩美がしてくれる…そして、治ったら、同じ様に働いて貰って銀貨6枚で解放するよ..頑張って」

「あの、それでは..凄く申し訳ないと思うのですが..ゲヘゴホ..」

「良いんだよ…気にしないで」

「それで、私達は名前はどうすれば良いのでしょうか?」

「そうだね..里香たちの時には、勢いでつけてしまったけど..私は異世界人だから、名前を付けるのは旨くなさそうだ..だから、元の名前で良いよ?」

「そうですか?..では」

「自己紹介も今は要らないよ..治ってから聞くから」

「……….」

《この娘達も皆んな可愛いからね..未練が残るから、あまり親しくしないようにしないと…此処を出る選択を彼女達が選んだ時に..治してやったからと引き留めたくない…僕は最近解かったけど…寂しがりやだからな..》

「それじゃ、エレナさん、歩美、頼んだよ、里香と楓は明日から宜しくね…私は、これから王城へ帰るから..暫くしたら、食事が届くと思うから..皆んなで楽しんでね..じゃぁ」

「ご主人様は食べないのですの?」

「最初、食べる予定だったけど..時間が余りないからね…気にせず皆んなで楽しんでね!」

「解りましたわ」

「任されました、セレス殿」

僕は、皆んなの笑顔を後に僕は王城へと帰っていった。

食事
「あのさぁ、さっきのご主人様の話どう思った?」

「楓さん、やはり、ご主人様は自分の価値について解られてないのですわ」

「うん、そう思うよ! だって、あれ程綺麗な男性と一生居られるチャンス、女なら見逃す筈はないのに」

「そうですわね..かなりキツイ事を命じられても、あの美貌を持つ方になら、喜んで頑張りますわ..ですが、この環境…まるで天国ですわね..実際にまだ、働いても居ないんですよ..信じられませんわ」

「歩美なんて、今までで一番幸せだよ..美味しい物食べられて、綺麗な服きさせて貰えて」

「そりゃ、そうだろう..奴隷なのにギルドに行った時は、冒険者皆んなが羨ましそうに見ていたからね」

「奴隷からの解放は?」

「無いね..この幸せ逃す程馬鹿じゃ無いよ?」

「私もですわ」

「私も同じ」

「多分、あの治療師のエレナさんだって、後からきた5人も同じだと思うな」

「そりゃ、そうですわ..私達を好きになってくれる殿方なんて他にはいませんわ」

「あれっ本当に可愛いよね..薄着を着ていたら恥ずかしそうな顔をしてたし」

「本当にそうですわ..私が薄着を着ていたら、親でさえ気持ち悪がっていたのに..」

「歩美も同じかな?..可愛いよねあれ」

「ご主人様は良く..自分の事を忘れがちだよね? 麗しのなんて呼ばれているのに本当に無頓着だよね?」

「そりゃ、そうですわ…あの美姫と名高いマリアン姫が気を寄せているのに、気が付かずにマリア様に仕えてしまう人ですから..」

「それ、凄いよな..この国の男なら一度は夢見るようなマリアン様に仕える夢のような話を、自分から断るなんて」

「本当に..不思議な人ですわね」

「本当に…」

「皆んな食事が届いたから、私、準備するね」

「じゃぁ、歩いてこれるようなら..5人も呼んでくるよ」

「マジか..これ」

「まるで、貴族の食事ですわね」

彼女達の驚きはまだまだ続きそうだ。

閑話:この世で1番醜い女
この世で一番醜い化け物…それが私だ。

私の名前はコーネリア、昔はこの世界でも指折りの美少女だった。

だが、ある日を境に私は変わってしまった。

私は小さな村の領主の娘に生れた。

我が家は特に貧しくもないが裕福でも無い..ごくごく普通の子爵家だった。

だが、一つだけ他と違う事があった…それは私が美しい事だった。

決して、自惚れでは無い..何しろ私の美しさを一目見ようと王都から馬車で人が来るくらいだった。

大貴族の息子や大きな商家の息子までが私に見惚れ求婚してきた位だ。

そんな中で、私の家族は、第一王子との婚約をとりつけた。

王子にした理由の多くは、他の誰と結婚しても問題が起きるだろうという懸念からだ。

また、第一王子は婚約者がいたが、うちに話を持ってくる前に廃棄していた。

これではしがない子爵家に断る事は出来ない。

そのまま婚約の運びになった。

この時に王子が不穏な一言を言ってしまった。

「コーネリア、貴方は女神より美しい…」

今の女神のマイン様は寛大な方だが…この時代の女神のアフロディアは心が狭くそして美しさに自信を持つ方だった。

その言葉を聞いたのか女神は顕現されて..すぐに王子を殺した。

そして、私には….

「人の分際で、女神と肩を並べよう等とは無礼にも程がある…この世で一番醜い存在に姿を変えてやろう…」

《私が言ったんじゃない..それに肩を並べるんじゃなくて 貴方以上と言っていたのよ》

そして、私は世にも醜い姿形に変えられてしまった。

鏡を見た瞬間に自分の醜さで体が石化するのではないか..それ程に醜かった。

実際には石になる訳では無く、私の顔を見た者は心臓が止まり一瞬で死んでいった。

そう、私以外の全ての者が、人間であろうと、獣であろうと、魔族であろうと私をみた瞬間に死んでいくのだ…

まさしく、この世で1番醜い化け物…それが私だ..しかも、あの女神は私が未来永劫苦しむ様に不老不死にしていった。

この体は勇者の聖剣を持ってもしても殺せない..私の血は聖剣をも溶かす。

魔王の魔法ですら殺せない..私の顔を見れば..魔王であっても死ぬ。

魔王ですら死を与えられない…勇者ですら救えない化け物..それが私だ..

未来永劫、この醜い姿でこの世界をさまよい続ける存在..それが死の女王 コーネリアだ。

別れと出会い
勇者達がいよいよ外に出る日が決まった。

だから、僕は夜に城をでて森へ走った。

「てんこちゃん..夜遅くにごめん!」

「どうしたの、セレス..そんなに慌てて」

「てんこちゃん..悪い、直ぐにレイラさんに会わせてくれ!」

「わかった!」

「どうしたのですか!セレスちゃん..こんな夜に..もしかして私と交尾したくなった?」

「違います..近いうちに勇者が討伐演習に出ます..そうするとここは近いから不味い、すぐに逃げて!」

「逃げるって..何処に逃げれば良いの?」

「人のいる場所から..出来るだけ遠くだから..あっちの方向に出来るだけずうっと遠くまで逃げて!」

「そう解かったわ…だけど、あそこには死の森があるの..そこには世にも恐ろしい化け物が居るのよ..難しいわ..」

「解かった..その森を抜けるまでどの位掛かるの?」

「時間は大した事ないわ..時間にして1時間半位かな?」

《今から出てそれ位なら..明け方前にお城に帰れる》

「解かった..だったら、直ぐに準備して」

「守ってくれるの?..なら、直ぐに準備する..」

「僕は、この後にオークとオーガにも逃げるように言ってくるつもりだけど..一緒で大丈夫かな」

「こういう時には争わないから大丈夫だよ!」

………………………..

……………..

「オークの村に来た..」

《オークのメスは僕にとってグラビアアイドルに見えてしまうから不味いな..》

「オークの皆さん..」

「人間だ..苗床になりにきたのかな?」

《やばい、オークで仲良くなった娘の名前を聞いていなかった》

「オークの皆さん、暫くしたらこの辺りに勇者がきます..だから、出来るだけ遠くに逃げて下さい!」

「待て、人間..それが本当だとして、何故、お前は此処にそれを伝えに来たんだ!」

「それは…私はメスのオークが好きだからです」

「人間でオークが好き?..そんな者が居る訳ないだろう?」

「待って、お母さん…その人のいう事は本当よ..」

「ピーコ..お前は何を言っているんだ?」

「私は、そこのお兄さんと友達になったの..そのお兄さんがオークを好きって言うのは本当よ?」

「そうなのか?..だが信じられない..そうだ、私にキス出来るか?」

《正直恥ずかしい..だって、この人セレブなグラビアアイドルにしか見えないんだもの》

「良いですよ..ちゅっ…これで良いですか?」

「頬っぺたか..残念..でも解かった信じるよ..だけど、逃げたくても死の森があるのよ、どうするの?」

「ゴブリン達と話したのだけど..その森から出られるまで、僕が守るから..逃げて」

「なら、解った..直ぐに皆んなに話して逃げるようにする..準備が済んだら..ゴブリンの集落までいくよ」

「お願いします…」

……………………………

………….

「オーガの村の皆さん!」

「人間が何の用だ!」

《良かった、最初に会えたのが女性で..僕はオスとは喋れないから》

「もうじき、勇者がこの辺りで討伐演習をします..だから、僕と一緒に逃げませんか?」

「そうか、人間..お前は義理堅いのだな..解かった、ありがとう」

「それじゃ..」

「我々は逃げないよ..勝てるかどうかは別にして強者との戦いは我々の望む所だから..」

「ですが…相手は勇者ですよ」

「あぁ..多分勝てないだろうな..だが強者と戦ってこそのオーガーなのだ逃げないよ!」

「そうですか..ならば弱い子供だけでも..」

「お前は良い人間なんだな..だが、それも断る..さぁもういけ..お前が声を掛けてくれた事は忘れない」

「そうですか…さようなら」

《オーガって誇り高いんだな..まるで勇者だ》

エルフは人間と仲が良いから問題は無いだろう..さぁ脱出だ。

……………………………….

………….

「皆んな、揃ったね..行くよ!」

「「「「「「おー」」」」」

ゴブリン達とオーク達を連れて、死の森に入った。

この森…凄く怖いのかも知れない..入った時から、体が震える。

さっきから、何者かに見られている気がする。

だが、此処を突破しなければ、彼女達に幸せはない..村が無くなった彼女達は悲惨だろう..

せめて、この森を出るまでは守ってあげたい。

「不味いかも知れないセレスちゃん..あれに気が付かれたかも知れない」

《確かに何者かがついてくる》

「大丈夫ですよ..レイラさん、私が守ってあげるから」

「そう…ありがとう」

「なぁ..人間..なんでそこまでしてくれるんだ? 幾らゴブリンやオークが好きだって言っても..命がけになんてならないだろう?」

《だって..君たちは僕のアイドルだから..とは言えないな..半分だけ本当の事を言おう》

「正直に言うと私は少し変わり種でね..ゴブリンのオスやオークのオスが人間の女が綺麗に見えるように私には君たちが凄く可愛かったり、綺麗に見えるんだ..あっ..君たちのオスとは違って性的な意味では無いよ?」

「そうだったんだ…だったらゴブリンの集落で暮らせば良いのに…セレスちゃんなら皆んな大歓迎だよ」

「待って…それならオークの集落に来ればよいわ..酒池肉林のめくりめくる毎日が送れるわ」

《思わず..ハーレムをイメージしてしまった..》

「ごめん、凄く嬉しいけど、私には役目があるから…本当にごめんね!」

「「そう..残念」」

結局、死の森は突破出来た。

「護衛をしてくれてありがとう..もう会えないかも知れないけど..私達は貴方を忘れない」

「さようなら、セレス…」

「さようなら、レイラさん、てんこちゃん」

《せっかく仲良くなったのに..お別れか…寂しいな》

「私達、オークも貴方を忘れないわ..もし、今度会ったら..このお礼はさせて貰う」

「別に気にしないで良いよ..それじゃあねー」

《グラビアアイドルのお姉さん達ともお別れか..》

「じゃぁ..さようなら皆んな..元気で暮らせよー」

「うん..セレスも元気でね」

皆んなが見えなくなるまで何回も振り返ってくれた..これでもう本当のお別れだ、もう会う事もないかも知れない..ついて行きたかった..そんな気持ちは僕にもある..だけど、僕にはまだやらなくてはならない事がある..だからついて行けない。

とりあえず、先に片づけなくてはいけない事がある。

「見逃してくれてありがとう..もし、私を襲いたいなら構いませんよ…死にたくないから死んではあげれないけど…」

《あれっ..何故か最初の殺気が無いな》

「セレスと言うのだね..私は貴方の行動を見ていました..醜いゴブリンやオークのメスに優しい、その行動..今日は見逃してあげるから帰りなさい」

「見逃してくれた事、感謝します、えーと」

「私の名前はコーネリア..死を与える者..」

「そう、コーネリアですか..綺麗な名前ですね?」

「貴方は私が怖くないのですか?」

「怖くない…そう言えば嘘になります..だけど、こうして話をする分には何故か怖さより楽しさが込み上げてきます」

「そうですか?」

《だけど、私の姿を見たら、貴方も多分死んでしまうのでしょうね?》

「はいっ..とっても澄んだ、綺麗な声..聴いてて心地よくなります」

《そう言えば、奪われたのは姿形だけ..声はそのままだったのね..何で気が付かなかったのかしら》

「そうね、私、声だけは自信があるんです」

《そういえば、この声も昔はカナリアのようだと言われていたわね》

「本当に綺麗な声ですね」

「はい」

「それでは、私はそろそろ帰らなければなりません、見逃してくれて有難うございました..綺麗な声のお姉さん!」

「そう、もう少しお話しをしたかったけど…残念ね」

「貴方さえ良ければ..また話に来ますよ」

「そう..期待しないで待っているわ..」

奴隷達との冒険..そして報酬
凄く眠い..だけど、今日は、里香と楓と一緒に冒険者の仕事をする約束をしている。

だから、寝ている訳にはいかない。

「おはようございます!セレス…何だか眠そうですね」

「姫様、おはようございます..相変わらずお綺麗ですね..今日も街に出掛けなければいけないので失礼します」

《あれっマリア様が固まっている…そうか、寝不足気味なのでつい口走ってしまった》

「すいません、姫様….つい..失礼いたしました!」

「いえ、いいいのです!ただ、私は妹と違い、その様な言葉、言われる事が余り無いので..驚いただけです!」

「それじゃぁ姫様..行ってきます!」

「はい、あっ..レイスが会いたがっていたので、今度お時間を作って下さい!」

「解りました」

………………………

…………

僕は、自分の所有する館へ向かった。

館の前では、既に里香と楓が待っていた。

今日の仕事はゴブリンを狙う..そして、可能であれば僕がゴブリンキングを倒す。

多分、そこまですれば…彼女達にも経験値が入り…一人前の冒険者になれる筈だ。

「今日は、武器と防具を購入して、それからゴブリンを狩りに行く予定だ」

「ゴブリンですか? ゴブリン位なら、私くしでも倒した事はありますわ」

「私も、冒険者をしていたから..ゴブリン位なら何とかなります」

「そう..所で楓は冒険者のランクは..何級だったの?」

「銅級です!」

「そう、それじゃ余り無理をしないで、ゆっくりと行こうか?」

「「はい」」

待ちに行き彼女達の装備を整え、森へと出かけた。

……………………………..

……………..

「あの、セレス様、これはゴブリンの巣なのではないですか?」

「そうだよ..さぁ入ろうか?」

「お言葉ですが..私くしが倒したのは野原でしかも4対4で戦ったので、巣に飛び込んだ訳じゃありません」

「私もそうです、薬草の採集中や護衛の時に見晴らしの良い場所で戦っただけです」

「そうなんだ..じゃぁ今回は付いてくるだけで良いよ..はぐれない様に気をつけてね」

「「解りました」」

そして、今回は..僕が先頭に立ち..簡単にゴブリンの巣を純滅した。

勿論、その中にはゴブリンナイト、ゴブリンアーチャー、ゴブリンメイジ…そしてゴブリンキングも居た。

「流石、ご主人様ですわ..たった1人でゴブリンの巣を純滅させるなんて」

「流石、ミスリル級..凄いとしか言えない」

討伐証明の耳を一緒に刈り取った…そして、その後はガラクタにしか見えない宝を手にした。

そして…もう一つの部屋を開けると…今回は..死体しか無かった。

里香は見た瞬間目を伏せたが、楓は元冒険者、人の死には慣れているのだろうか?

普通に見ていた。

「ご主人様..これは可愛そうだ埋めてやろうよ..」

「解かった..埋めよう」

《普通に考えたら、おぶって行くのは危ないよな..今度、あいつ等にも教えてあげないと…》

死体を埋め終わると、今日の仕事は終わりだ…ギルドへ向かう。

……………………………

………………

「セレス様、今日は素材の買取ですか?」

「はい、すいません、ここ暫く仕事をしてなくて..今日は久々の買取です」

「はい..期待していますよ! 早速、査定しますので、素材を出して頂けますか?」

「はい、お願い致します」

「相変わらず..凄いですね..ゴブリンキングにゴブリンナイト…凄い量ですね..査定をしますので暫くお待ちください」

「お願いします」

《今回は小さな巣だから、実入りは少ないだろうな》

「査定が終わりました..金額は全部で金貨36枚です..」

「思ったより多いですね!」

「ゴブリンキングは大体金貨20枚の価値はあります…ナイトやメイジは金貨1枚の価値はつきます」

「ゴブリンキングはやっぱり破格値なのですね!」

「それでもキングと名前が付く物では安いです..ですが、通常は巣を壊滅しないと手に入らないので弱いパーティーなら20人位でやるんですよ..そうしたら一人当たり金貨2枚にもならないし..その為のポーションなんか考えたら…少ない人数で成すからこそ..セレス様が儲かっているだけです」

《そうか、確かに昔の僕(転移前の)なら1日に銀貨1枚くらいしか稼げないよな》

「有難うございます..所で彼女達のレベルを見る方法はありますか?」

「1人、銀貨5枚になりますが宜しいでしょうか?」

「それじゃ、2人ともいっておいで…」

「ご主人様宜しいのですか?」

「良いにきまっているじゃん..楓も気にせず行っておいで」

……………………………

……………..

「「いってきました(わ)」

「そう、スキルとかは言わなくて良いから..レベルだけ教えて」

「私くしは凄い事にレベルが7になっていましたわ」

「私はレベル9になっていました」

「それって、凄いの?」

《正直言って…自分と勇者しか知らないので低くしか感じない》

「私が説明しても良いでしょうか?」

「お願いします…」

「通常の冒険者ですと、レベル6あれば一人前です..普通に家族を持って生活ができます、こんな短期間でレベルを上げたいなら…有名な冒険者にお金を渡してレベリングをして貰うしかありません…それでも通常なら1週間はかかるでしょう」

「そうですか..安心しました」

…………………………………

………………..

「はい、これが今回の報酬だよ、金貨10枚ずつね」

「あの…ご主人様」

「あっ 館の維持や他の子の治療や歩美やセレナの給料を払わないといけないから金貨5枚分多く取らせて貰ったよ..悪いね」

「違いますわ!セレス様..私達は奴隷ですのよ? 本来ならお金なんて貰いませんわ..しかも金貨なんておかしいですわよ」

「そうだよ..しかも何もしないでついて行くだけで金貨10枚..金貨1枚だって貰えないよ?」

「あのさぁ..何度も言わせないで..私は君たちを家族としてしか扱わない..だからそれは正当な報酬だよ..それに、奴隷を辞めたければ..それでもう買い戻せるし..これからは自由だよ..」

「セレス様はそれで良いんですの?」

「正直言うと..傍には居て欲しい..だけど、それ以上に幸せになって欲しいんだ」

「それなら、このまま奴隷でいいですわ..ねっ楓!」

「そうだね!..セレス様の傍が一番私達は幸せに暮らせるからね..解放とか言わないで欲しいな!」

「ありがとう!」

……………………………………….

………………

「ただいま」

「「お帰りなさい」」

「エレナさん…どう皆んなの状態は?」

「そうだね..殆どがただの衰弱みたいだね..このまま安静にして美味しい物を食べさせて抵抗を付けさせれば多分..治るよ..ポーションも最低限で良いかも知れないね」

「それじゃ、先に報酬を渡しておくね」

「あの、セレス様..何で金貨4枚なのかな? 多いよ!」

「うん、これは月金貨1枚で3か月分、金貨1枚は当面の経費だよ..足りなくなったら言ってね?」

「月..銀貨5枚で良いなだけど..有難く貰っておくよ」

「歩美には..金貨2枚、これは2か月分の給料だよ」

「奴隷なのにききききき金貨ですか!」

「気にしないで、あと金貨2枚預けておくから..当面の生活費と彼女達が何か欲しがったら買ってあげてね」

「私は奴隷ですよ? 金貨なんて村長さんでも持って居ませんでした..本当に良いのでしょうか?」

「うん、それで、何時でも自分を買い戻せるね? 奴隷を辞めたくなったら言って? 何時でも解放してあげるから..」

「私は..セレス様にとって不要なのでしょうか?」

「必要な人だよ…だけど、縛り付けるつもりはないよ..歩美が幸せになれるように考えて行動すれば良いんだよ」

「なら、奴隷のままで良いです..ここに居るのが私の幸せですから」

「そう、ありがとう! それじゃあ私はそろそろ行くね!」

「セレス様…お茶位飲んでいかれたら如何でしょうか?」

「ごめんね、急ぐから!」

…………………………………….

……………

そして、僕は約束を守るために 死の森へと向かった。

コーネリア
僕は約束を守るために死の森にきた。

こんな所に1人でいるんだ…何か訳があるのかな?

僕だったら、こんな所に1人で居るなんて耐えられない..

だから..凄く彼女が気になった

「コーネリアさん..居る?」

「セレス…本当に来てくれたんだ..ありがとう」

「うん、約束したからね..来る時に、木苺のパイを買ってきたんだけど..どうすれば渡せる?」

「私は、事情があって..姿を見せられないから、茂みの方に放ってくれる?」

「はい、放るよ..」

僕は茂みに向かってパイを投げた。

「お土産だね..ありがとう..ここ暫くは人間らしい食べ物を食べていなかったからね..凄く嬉しいよ!」

「そう、良かった..さぁ、食べながら話そうか? と言っても女性と旨く話せる自信は無いんだけどね!」

「そう? そんなにかっこ良いのに? 凄く女の子にモテそうだけど?」

「少しは、モテるかも知れないけど…それ程でもないよ?」

「そうかな? 怪しいな…沢山の女の子に囲まれていそうだよ?」

「そうだね..否定はしないよ..だけど、それを言うなら貴方だって凄く綺麗な声をしているから、男性は放って置かないでしょう?」

「昔はね..今の私は..ただの化け物だよ? もう二度とは誰からも愛される事はない..死の化け物」

《化け物..だったら..僕には綺麗な人にしか見えない筈だ..見たいな》

「コーネリアさん..私は異世界人なんだ..美的感覚が、この世界の人とはかなり違う..」

「異世界人..勇者様だったのか..セレスは..私を討伐にきたのかな?」

「違います..私は勇者では無く 女神の聖騎士..残念ながら勇者の召喚に巻き込まれただけですね」

「そうなんだ! 良かった..セレスとは戦いたくないからね…」

「この先、勇者と戦う事になるのですか?」

「正直、解らないかな? だけど、以前に勇者が攻めにきた事があったから、魔王を倒した後ならあるかも知れないかも?」

「大丈夫なのですか?」

「多分、私は死なない呪いが掛けられているから..死ぬかどうかという意味なら大丈夫だよ..本当は死にたいんだけどね?」

「何でですか?」

「孤独の中で生きてきて疲れたからね…」

「それだったら、私ときませんか?」

「私の姿を見た者は恐怖で死ぬんだよ? 嬉しいけど無理だよ」

「もしかしたらだけど..私なら大丈夫かも知れません!」

「何故?..」

「それは、私が居た世界と、この世界では美的感覚が違うみたいなんです…私にはゴブリンやオークが美しく見える…驚きました?」

「そうか..だからオークやゴブリンと仲良くしていたんだ..」

「最も、女性だけですが..」

「あのさぁ..だったらエルフはどう見えるの?」

「物凄い、化け物ですね!」

「そう、なんだ! だったら私が綺麗に見える可能性もあるかも…だけど、もし失敗して死んだらどうするの?」

「その時は、その時ですよ? 死んでも文句言わないから..貴方を見ても良いですか?」

《見たら死ぬほどの醜さ..僕の目にはどう映るのかな..》

「そこまで、言うなら、遠くから私を見て…距離を置けば死ぬことは無いから..精々が気持ち悪くなる程度ですむからね」

コーネリア《これでもう来てはくれないな》

僕は遠くからコーデリアさんを見た..遠目から見ても解かる..これ以上の美しい人は絶対に居ない..もし異世界転移の時に会って..私が美の女神です、そう言われても信じてしまう..そして、何よりも見ているだけで..凄く幸せに思えてしまう。

「コーネリアさん..私には美しい姿にしかやっぱり見えない..近づいても良い?」

「セレス..無理してない? 傍に寄ったら死んだりしない?」

「多分大丈夫だと思う..私には綺麗な姿にしか見えない」

コーネリアさんに近づいてみる..近づく度に気持ちが高まる。

好きだ、そういう気持ちがどんどん高まる..まるで魅了の魔法でも掛けられた様に心臓がドキドキしだす。

彼女に触れる距離まで近づいたら..まるで回復の呪文に掛かったように..体から疲れが抜けていった。

「嘘嘘嘘..私を見て死なないなんて..気分とか悪くない? 大丈夫なの?」

「逆かな..コーネリアさんの傍に居るとまるで回復の呪文にでも掛かったように元気になるよ..」

「そう、なんだ..良かったょ…それで、私はセレスから見て..どうかな?」

「そうだね、世界一の美人さん..そんな感じ?」

「そう、この顔がセレスには美人に見えるんだね..なら、それで良いかな…ちょっと複雑だけど」

「それでコーネリアさん、どうしますか?」

初恋
結局、コーネリアさんは僕の所に来てくれる事になった。

僕としては直ぐにでも連れ帰りたかったが…よく考えてみると下準備しないとならない事に気が付いた。

「コーネリアさん、1週間位待って貰って良い? 色々準備したいから」

「別に良いよ? 確かに私の場合は特殊だから、準備が必要だものね..」

「ごめんね」

「そんな謝らないで..私と一緒に暮らしてくれる..それだけで嬉しいからさ」

(コーネリア)

死の女王と呼ばれるようになって数百年…だれも助けてくれなかった。

女神に呪いを掛けられてからは人生が全て変わってしまった。

婚約者の王子は殺され、自分を生涯愛すると言ってくれた他の男たちもこの姿に変わった途端に私を捨てた。

生涯愛する? 全てを捧げる? なら簡単じゃない..目を潰せばそれだけで良かったんじゃないかな? それだけで私は生涯その人の傍にいる。

それだけで、今の私なら生涯を伴に過ごすよ。

捨てられるのは仕方ない..大貴族の息子や大きな商家の息子なのだから…だけど追手迄かける必要は無い筈だ。

私は殺したくなかった…だけど、ただ見ただけで死んでしまう..何もしないのに…

そして、私は呪いで死ねない..だから私を殺しにきた者は皆んな死んでしまう。

私は殺す気は全く無かった..だけど私を見た者は皆んな死んでしまう。

この森には数万もの死体が眠っている。

魔王軍の幹部で力試しをしようとして死んだ者。

勇者で私を討伐しに来て死んだ者。

これからも此処にいれば、沢山の人が死ぬことになるだろう..

だけど….私には行き場がなかった…ここから他に行くと死人が何人でるか解らない

数百年たってようやく救いが来た。

しかも、凄い美形だ..女神より美しいと言われた時の私と並んでも…彼の方に目がいくだろう..

「不思議な人だ」

彼の目に私はどう映っているのだろうか?

凄く、気になる…私にとって彼は…多分全てだ。

きっと今迄私は愛した事も愛された事も無かったのかも知れない。

多分、これが、私の初恋なのかも知れない。

下準備
次の日、僕は屋敷を訪れた。

屋敷の中の一番奥の部屋をコーネリアさん専用の部屋にした。

そして、街に出てギルドを通して大工を紹介して貰った。

コーネリアさんはここに連れてきても部屋から出る事は出来ない。

だから、快適に過ごしてもらうには、お風呂とトイレは必要だ。

大工によると、完成まで1週間掛かるそうだ。

コーネリアさんを連れて来るには馬車が必要だ、これは大丈夫だ。

僕が用意すれば良いし、僕が乗っていれば荷物もあらためられることは無い。

後は、服や生活に必要な物を買いそろえれば良い。

それだけだ….

僕はコーネリアさんに文化的な生活を送って貰いたい。

コーネリアさんの生活は、まるで原始人だ。

服だってボロボロだった。 なぜ破れていないのかは解らないけど古い物だろう。

外を一緒に歩けないけど..せめて美味しい物を食べて…暖かいベッドで寝て、綺麗な服をきて貰いたい。

その他の事は女神様に相談するしか無いだろうな…

…………………

………..

「相変わらず熱心ですねセレス様は、今日もお祈りですか?」

「はい」

「流石は、女神の聖騎士に成られる方は信仰の深さが違いますね..我々聖職者も見習わなければ」

「有難うございます..これは寄進です」

「いつも有難うございます」

「さてと」

僕はいつもの様に手を合わせて祈った。

《女神マイン様..ご相談があるのです..助言をしてくれませんか?》

《何か困った時だけ…まるで都合の良い女みたいな扱いですね…セレス》

《そんな事は..》

《ふふ..冗談です..ただあまり来ないから寂しかっただけです、 貴方の相談はコーネリアの事でしょう?》

《そうです!》

《まず、あの呪いは私でも解けないわ..前の女神が物凄い力で掛けた物だから》

《そうですか..ですが、何か弱めるような方法はありませんか?》

《セレス、弱める? 貴方はどうしたいのですか?》

《例えば、仮面とかをつければ、人を見ても死なないとか..何か方法はありませんか?》

《それは無理ですね..コーネリアに見つめられれば、魔王や勇者ですら死にます..死なない筈の女神の私ですら、手傷を負うかもしれません…正直、貴方の目が通用した事じたいがイレギュラーです》

《本来は通じなかったのですか?》

《そうですね..悔しいですが、女神アフロディアは私より力がありました、そのアフロディアが渾身の力で掛けた呪いです、それに対して貴方の目は私が貴方の本来の能力を改変したもの..本来は敵うはずが無いのですが..不思議ですね》

《危なかったのですか?》

《何で石にならないんでしょうね? 私の方も調べてみますが期待しないで下さい》

《解りました》

結局、女神様でも手掛かりが無かった..こうなったら時間を掛けて探すしか無いだろう。

コーネリアさんのお迎え
僕は最後まで悩んだが、館の者全員にコーネリアの事を話す事にした。

「死の女王..コーネリアですか?..ご主人様、流石に冗談ですよね?」

「歩美..受け入れてあげたいんだけど..駄目かな?」

「本当なんですね..正直怖いですが、ご主人様が決めて良いと思います!」

「何で」

「ご主人様が間違った事をする筈がありません」

「ありがとう」

…………………………..

……………..

「死の女王、コーネリアですか? ご主人様が良ければ問題無いですわ」

「えっ..良いの?」

「はい..私のご主人様が受け入れるのですから私は黙って従うまでです…それは当たり前ですが..伝説通りなら私個人としても、余りに可哀想すぎますから…」

「そう、ありがとう!里香」

…………………………..

………………

「えっ..死の女王こコーネリア! 凄いね..あんな魔王より強いって言われる人を仲間にしちゃうんだ..」

「それじゃ..良いの?」

「それは、ここのリーダーである、セレス様が決める事だよ..私は問題ないよ」

「そう、ありがとう」

結局、皆んなが受け入れてくれたので買い物は皆んなに任せる事にした。

女性にとって必要な物は..僕にはあまり解らない..それに知っていたとしてもこの世界での入手方法が解らないかも知れない。

それから一週間..室内の改装が完成した。

今日の夜、僕はコーネリアさんを迎えに行く。

馬車は用意したし、女神の鎧も着込んだ..これで僕を止める人間は居ないだろう。

「コーネリアさん、迎えに来ましたよ」

「セレス..本当に迎えに来てくれたんだ..信じていたけど..本当に..寂しかった」

コーネリアさんが僕に飛びつくように抱きついてきた。

「僕もですよ、コーネリアさん!」

コーネリアさんに乗って貰い、馬車を走らせる。

念の為、コーネリアさんに木箱に入って貰っていたが..何事も無く屋敷へとついた。

屋敷では打ち合わせで全員に部屋から出ない様にお願いをしておいた。

コーネリアさんを部屋に案内した。

コーネリアさんは部屋に入るなりキョロキョロしだした。

「凄い綺麗な部屋..本当に良いの?」

「どうぞ! この部屋はコーネリアさんの為に用意した物だからね、自由に使って!」

「ありがとう、セレス…何から何までありがとう!」

《ただ、お礼を言われただけで、心臓がドキドキする..不味いな、まるで惚れ薬でも飲んだみたいだ》

「どうしたしまして..あと、この屋敷には同居人が居るから..部屋から出ないでね?」

「解っているわ..その為にトイレやお風呂がついているんでしょう?」

「はははは、そうだね」

《何故だろう..ドキドキが止まらない..これは女神様に相談しないと》

「そうだ、扉越しだけど、皆んなを呼んでくるから、自己紹介しない? 過ごし方とかはお互いに話し合って決めて」

「そうだね! 直接会えないのは悲しいけど..近くに人がいて、話し相手になってくれる..それは凄く嬉しいよ」

「そう..じゃぁ呼んでくるね」

……………………..

………..

「初めまして、コーネリアと申します、皆さま宜しくお願いします」

「宜しく」

「こちらこそ宜しくお願いしますわ」

「宜しくお願いします!」

僕は、コーネリアに居場所を作って上げれた事が嬉しかった。

仲間になれた事、笑顔にしてあげれた事が嬉しかった。

だが、彼女を動かした事が後に大きな問題を引き起こす事になるとはこの時に僕は思わなかった。

マリア…一人の寂しさ
最近、セレスの様子がおかしい…

気になるので調べさせたら、奴隷を購入して屋敷に囲っている事が解った。

《嘘つき..やっぱり綺麗な女が好きなんじゃない》

そう思い悲しくなったが…調べて見ると違う事が解かった。

セレスが購入したのはどの方も廃棄奴隷だ..

病気に掛かって売り物にならない奴隷や、醜くて買い手がつかない奴隷を買い取り..生きる為の手段を学ばしている..そんな感じだった。

勇者は魔王を倒す事で国に貢献する。

ならば、自分は..何ができるのか..そう考え、行動しているのでしょう..

本来なら弱者救済は国がやる事です。

ですが、「国がやらないなら、私がやる」

案外そんな事を考えていそうですね。

貴方がやっている事は立派です。

正しい行いをしています…だけど..だけど..貴方は私の姫騎士なのですよ。

妹と違い、何も持たない私が唯一自慢できる者..そして、心から私を大切にしてくれる人なのです。

我儘は言いません…少しで良いのです、私に構って下さい。

最近ではレイスも毎日の様にここに来ます…貴方目当てなのは見え見えです。

《はぁ…今迄は1人が辛い…そんな事は無かったのに..最近は1人が寂しくて仕方ありません》

「ねぇセレス、もう少しで良いから私の傍に居て下さい」

言えたら凄く楽なのに..言えません。

そんな性格ですね。

姫様レイスと…..
「セレス、今日は暇かしら?」

《正直、昨日の今日だから..コーネリアさんの為に館に行きたいが..》

「姫様今日は用事がありまして」

「そうですか…」

マリア様の目に涙が浮かんできた。

《仕方ない》

「なので、衛兵を一人伝令としてお貸しください..行けなくなったと伝えなければ行けないので」

「はい、それ位お安い御用です..誰かいますか?」

うん、途端に笑顔になったな。

「姫様、所で何か御用ですか?」

「えーとですね..」

《まずい、引き留める事ばかり考えていて、どうするか決めていなかったわ…》

「もしかして、何か気晴らしでもしたい..そういう事ですか?」

「はい、そうです…最近閉じこもりきりだから気がめいってしまって」

「そうですね..でしたらお庭でも散歩しますか? それとも紅茶でも入れて貰ってお話しでもしましょうか?」

「そうですね、散歩も魅力的ですが、セレスのお話が聞きたいわ」

「そうですね…」

僕は、コーネリアさんやゴブリン達の事を除いて、ここ暫くあった事を話した。

「凄いですね..正に弱者救済の為に働いているのですね」

《本当は美少女たちだから助けているとは言えないな》

「まだ、何もしていませんよ」

「そうでしょうか? セレスは自分のしている事をいつも過小評価しすぎです」

「ですが..まだ、何も成してないので」

「行う事が、一番大切なのです、誰も買い手がつかない廃棄奴隷を引き取って、病気の治療をしたり生き方を教える、なかなか出来る事ではありませんよ..凄い事です..」

「そうですか、だけど姫様に褒められると照れてしまいますね」

「余り、そうは見えませんが..」

マリア姫様が顔を覗き込んできた。

「近いです、姫様」

「私が近づくのは嫌ですか?」

目が涙目になっている…

「姫様はお忘れですか..私にとっては物凄くお綺麗な方にしか見えません、嫌ではありませんが….恥ずかしくなってしまいます」

「そうですか..嫌で無いなら..隣に座らせて頂きますね」

「はい」

ノックの音がした。

「マリア様、失礼します、レイス.ルブランド.キャミエール様がお越しです」

「そう、待たしておいて」

「いえ、それが既に私の後ろにおいでです」

「そう、それじゃ入って貰って」

「姫様、今日もお時間が取れましたので顔を出させて頂きました」

「レイス、ありがとう、今日も顔が見れて嬉しいわ」

マリア《本当はセレス目当てなのが見え見えです..よりによってせっかく二人の時間を過ごしている時に来るなんて》

「今日は、セレスも居ますのね..セレス、貴方は姫騎士なのですから、極力姫様のお傍にいなさい」

レイス《そうすれば、姫様に会いにくれば、会えるんだから》

「解りました、気をつけます」

「すいません、姫様、少しセレスとお話しさせて頂いて構いませんか?」

「ええ構いませんわ」

マリア《嫌と言えない状況でよく言うわね》

「セレス、街で聞いたわよ、貴方、廃棄奴隷を治療したり、仕事を教えたりして自立支援しているんですってね?」

《そういう訳では無いんだけどな..言えないよな》

「まだ、始めたばかりで..お恥ずかしい限りですが」

「それでねセレス、お母さまがね、その行動を支援したいそうよだからね、今度キャミエール家に顔を出しなさい..い良いわね?」

「はい、今度お伺いさせて頂きます」

「そう、楽しみにしているわ..所で今日はセレスは何か予定が入っているの?」

「いえ、別に…姫様と過ごす..それだけですね」

「そう、あの、姫様、ご一緒させて頂いて宜しいでしょうか?」

マリア《嫌と言いにくいのが解ってて..》

「別に構いませんよ、レイス」

私が横に座っているからレイスは必然的にセレスと私の前に座る。

セレスとレイスが見つめ合うみたいに見えるのが少し腹がたちます..こうなるなら、そのまま前で話していれば良かった。

「そういえば、セレス…お母さまから聞いたんだけど..将来私を側室にしてくれるって本当?」

「その話はですね..生きれる位の自信がついたら..そういうお話で」

「へぇ…そうなんだ、だったら簡単じゃない! 自立支援が旨くいけば、それはちゃんとした実績になるわね..そうしたら..側室にしてくれるのよね!」

「それだけでは…現状は多分赤字ですから」

「セレス..もう少し自分に自信を持ちなさい! 貴方は姫騎士、王族に仕えているのよ..それだけで充分に生きていける..そして冒険者としての実績も一流の上、屋敷迄自力で買ったわよね? これで自信が無いなんて言ったら…何処の誰が自信を持てるのかしら?」

「そうですね…ですが、王族や公爵家の令嬢を貰うなんて実績..それこそ魔王でも倒さなければ無理なんじゃないですか」

「それはね…えーと大丈夫だと思うわセレス」

「二人ともなんだか楽しそうですわね..私もちゃんと会話に加えてください」

「「あっ」」

結局、今日はずうっと三人で話していた。

今日は遅いから、レイスは泊って行くそうだ。

流石に、夜まで一緒に過ごすのは不味いので僕は2人に別れを告げて自分の部屋に帰っていった。

レイスの気持ち
「はぁ~ありえない」

私、レイス.ルブランド.キャミエールは今本当に悩んでいる。

私は、正直言って物凄くブサイクなのよ..ゴブリン令嬢なんて言われている。

外見が悪いなら、「せめて勉強位は頑張ろう!」って努力したわ..首席にもなったのに..誰も評価してくれない。

どんなに頑張っても、誰も私なんて見てくれない..それが私。

公爵家に産まれて..普通どれだけ器量が悪くても縁談は幾らでも来る..それが当たり前なのに..私には来ない。

名門キャミエール家の娘、結婚すればどれ程の後ろ盾になるのか解らない..貴族なら普通は喉から手が出るほど欲しい物…なのに私には婚約はおろか男友達すらいない。

裕福な平民にまで探す相手を落として持参金を付けても相手が見つからない位のブサイクな女..それが私。

それなのに、それなのに、彼奴は、彼奴は..私に目を奪われるって言うのよ!

あれ程綺麗で比類ない位の美少年が、私を相手に顔を赤くするの! あり得ないわ!

今日だってそう..勇気を出してミニスカートをはいて、ニーソックスっていうのを履いて見たの。

そしたら、そしたら..私の前に座った、セレスは目のやり場に困っていたわ。

もう、本当に可愛くて仕方ないわ..本当に、姫様が居なかったらきっと抱き着いていたわね!

これをセレス以外にやったら「気持ち悪い」と確実に言われるわね..

何しろ、うちのメイドですら笑いをこらえていたんだから!

《あんたの為に頑張って着たんだからね》

そう言いたいわ、まぁその分のご褒美は貰ったようなもんだから良いんだけど…

私が、美少女に見えると言うのも度が過ぎると厄介ね。

だって、セレスは、まだ私と釣り合わないと思っているんだから..本当に困るわよ!

姫様付きの騎士で、冒険者としてはミスリル級…しかも大きい屋敷迄持って居るんだからね..

もう充分でしょう? しかも、最近では廃棄奴隷を引き取って自立支援や怪我や病気の治療をしている。

神なのか? 神を目指しているのか? そう突っ込みたくなるわ。

私の単位が1レイスだとするともう20レイス位の価値はあるわ…そう、私だったら多分20回位結婚出来る価値はあるわ..

本当に、壊れた安物の花瓶に屋敷よりも高い価値を付けるんだから…困ってしまうわね。

最近ではあのお母さまが…レイスは最後の最後で「大物を捕まえたわね」って上機嫌だわ。

この間なんか、メイドにおこずかいで金貨迄あげていたんだからね…ありえないわ。

《待つしかないのかな..》

正直、抱きしめられて凄く嬉しかった…もっともっと抱きしめて貰いたい..

キスして貰って嬉しかった…出来るなら口にして貰いたい…

それ以上の事だって何時して貰っても構わないわ..ううん、して貰いたい。

私って贅沢になっちゃったのかな..側室にして貰える、そういう約束までして貰ったのに…

もっと、もっと構って貰いたい….

《はぁ~仕方ない、セレスが満足するまで結局待つしかないわね》

とりあえずはキャミエール家でセレスへの支援をする話をしたから、会う機会は増えるわね…

暫くはそれで我慢するしかないのかな?

はぁ~、本当にため息ばかりでちゃうわ…

スラム
今日は早朝から城を出ている。

館に顔を出すのは勿論だが、その前に確かめたい事があった。

だから久しぶりに森に向かった。

やっぱり…オーガは滅ぼされていた。

住んでいた簡素な家に入ると至る所に血の跡がある。

僕にとってオーガの女性は美しすぎるボディビルダーのお姉さんに見えるし、話せる。

だが、勇者達にとってはただのオーガだ..仕方ない事だ。

頭で納得は出来る…だけど、心は納得しないと思う。

暫くは勇者達と合わない方が良いだろう…

彼らはオーガの誇りに掛けて戦って死んだ..その気高さを胸に刻み..せめて祈ろう..そんな事しか僕には出来ないのだから…

これから先、僕はこういう光景を見続けないといけないのかな….

悲しい気持ちで、館に来た。

「ご主人様、ご存知ですか?」

「どうかしたの?里香」

「昨日、キャミエール公爵様がきましたわ…何でもこの館の支援をしてくれるそうですわ」

《そういえば、昨日レイス様が言っていたな…》

「そう言えば、昨日聞いた気がする」

「それでこれを置いて行きましたの!」

「これ、何?」

「小切手帳ですわね..余程信頼されていないと..こんな物渡されませんわよ! これを使って物を買えば請求は全部キャミエール家にいきますわね」

《これは流石に..不味い、お守り替わりに持っていて極力使わないようにしよう》

「そう言えば、昨日はこれなくてごめんね!」

「仕方ないですわ! ご主人様は姫騎士なのですから」

「そういって貰えると助かるよ」

「そいう言えばご主人様..暫くは討伐は無理みたいだ」

「もしかして、勇者が遠征を行っているせいかな?」

「そうみたいだよ..良い狩場は暫く独占されるみたいだから…冒険者は皆んな困っっているよ」

「まぁ、仕方ないか…だったら暫くは、お金を気にしなくて良いから街の依頼でもこなすかな?」

「もしかして、ドブ攫いとか?」

「そう」

「駄目だよ、ご主人様はミスリル級なんだから…それにそんな仕事を受けちゃったら..スラムの子供達の仕事まで奪ってしまう事になるよ」

《そうか…スラムか..そこも気になるな..》

その後、僕はコーネリアさんと会話をして、エレナさんと歩美と軽く会話をして治療中の子達に声を掛け、屋敷を後にした。

そして、スラム街に僕は居る。

見た瞬間..頭が痛くなった。

よく考えたら、男女比が女側に偏った世界だ..男の子であれば直ぐに引き取りてがいるのだろう..女のの子しかいない..

女の子だって器量が良ければ引き取り手がいるのだろう..

そこにいたのは..僕の目から見たら綺麗な美少女たちだった。

見てしまったからには放っておけない…

《とりあえず、炊き出しでもしてみようか?》

そう考え、僕はその場を後にした。

スラムに配給…
炊き出し..どうしようか? 

とりあえず市場に来た。

何をあげれば良いのかな..最初スープやシチューを考えたけど..この世界には紙皿や紙コップは無い。

だから、器が必要だ..だけどあの分なら食器すら持って無い子もいる気がする。

だから、手掴みで食べれる、パンのような物が良いのかも知れない。

とりあえず、今日はパンだけで我慢して貰おう…

僕はパン屋を3件周り..残っていたパンを全部買い占めた。

全てアイテム収納に放り込んで、再びスラム街へと来た。

さっき見た時より人数が増えている…何て切り出そうかな….

だが、考える必要は無かった。

「あっ、姫騎士のセレス様だ..何か用なのかな?」

「凄く綺麗だよね!」

これなら…多分大丈夫だろう、笑顔で手を振ってみた。

手が千切れるんじゃないか? そう思える程激しく手を振り返してくれる。

「皆んなー、少しお話をしたいんだけど良いかな?」

「私、私に言っているのかな..うん、そうだよ!」

「あんたに言っている訳ないじゃない…私に言っているんだよ?」

不味い、喧嘩になりそうだ。

「違うよ、皆んな、皆んなに話があるんだ..ちなみにここを仕切っている人とか居るの?」

「それなら、リンダお姉ちゃんかな?」

「リンダお姉ちゃん?」

「うん、リンダお姉ちゃんは凄く優しいんだよ! 悪い大人からも助けてくれたんだ」

「そう、リンダさんは何処に居るのかな?」

「ほら、あそこに居るのがリンダお姉ちゃんだよ…」

「ありがとう…後でパンを配るから友達と来てね!」

「パンをくれるの..うん、それじゃまた来るね!」

……………………………..

…………..

「貴方が、リンダさん?」

《見た目で言うなら前の世界で言う所の秋葉系アイドルだ》

「うん、私に何かよ…えっセレス様..何で、何でこんな所にいらっしゃるんです..これは夢なの?」

「夢でも何でもないよ..スラムの方に視察をしに来たんだ..それで食料を少しだけど配給したいんだけど良いかな?」

「えっ..食料を皆んなにくれるの..大歓迎だよ..ありがとう!」

《この子も笑うとすごく可愛いな…絶対に助けなきゃ!》

「所でさぁ..此処には全部で何人位いるのかな?」

「大体だけど…30人位かな…」

「大人は居ないの?」

「居たけど..私達で叩き出した..だって、子供に暴力を振るって上前跳ねるようなクズだったから」

「そうか..偉いな君は…早速だけど、食料の配給を始めたいんだけど..皆んなを集めてくれる!」

「じゃぁひとっ走り行って来る..」

……………………………

………..

「皆んな、セレス様が、皆んなの為にパンを買ってきてくれたんだってこれから配るから順番に並んで!」

リンダとセレスで配ろうとしているのだが、何故かリンダの方には誰も並んでいない。

「おい、これは酷くないか? ねぇ、私貴方達のリーダーだよね?」

「「「「だけど..セレス様から貰った方が..美味しそうだもん」」」」

「そりゃそうか..私だってそうするな..解かった、私がセレス様に手渡すから、セレス様が渡してくれますか?」

「うん、解ったそうしよう!」

「セレス様、ありがとう! このパンは食べないで大切にするね」

「そんなこと言わないでちゃんと食べてよ..また持ってくるからさぁ」

「またくれるの? だったら食べる..」

「うん、ちゃんと食べてね」

「あの、セレス様..握手して貰っても良いですか?」

「うん、良いよ..はいどうぞ」

「うわぁ..セレス様に握手して貰った、もうこの手は洗えないよ」

「汚い手になっちゃったら..握手しないよ! また今度あった時も握手してあげるからちゃんと手を洗ってね」

「うん..明日ちゃんと洗う..」

結局、パンをあげると同時に、握手をねだられたり、頭を撫でてと言われ、言われるままにしてあげた。

まるでアイドルにでもなった気分だ..その相手が子供とは言え可愛い子であれば嬉しさも倍増だ。

何しろ、僕の目から見たら..可愛くない子なんて一人も居ない..全員が美少女か美幼女だ。

そして、パンを配り終わり、皆んなが食べ終わった後なのに..誰も此処から離れようとしない。

「あのさぁ..リンダさん、何で此処には子供ばかりしか居ないの?」

「私からしたら、スラムには子供しか居ないのが..当たり前なんだけど! だって働く事が出来る大人なら、働きに出るでしょう、それこそ冒険者にでもなれば食べるのに困らないし..働かないで子供に寄生して生きようとしたクズが以前は少し居たけど..皆んなで協力して叩き出した..ここに居る子の殆どは親に捨てられた子供達なんだ…小さい頃に捨てられたから、民としての身分証明書がない..だから、真面な仕事に就けない..そしてそれを知っているから足元を見られて低賃金でしか雇って貰えない..それが私達なんだよ..」

「そうか…」

《奴隷を救ったからって良い気になっていたな..此処にも同じ様に苦しんでいる子が居たんじゃないか》

「うん、だけど、仕方ないんだ..民としての身分証明書が無いんだからさ..」

《これは姫様に相談してみよう…今は自分で出来る範囲の事を頑張ろう》

「皆んな、ちょっと聞いて欲しい…僕は君たちに暖かい家とちゃんと働ける仕事を用意しようと思う..もし用意出来たら..住んでくれるかな?」

「それ..本当なの..嘘じゃないの?」

「嘘はつかないよ、約束する」

「セレス様、口から出まかせなら辞めて欲しい..それは私達にとって本当に欲しい物なんだ..セレス様が幾ら偉くっても..民の身分証明書は..多分、貰えないと思う」

「リンダ、実際の所は、解らないだけど..必ず何とかする…だから信じて欲しい」

「そう、だったら..信じるよ..少なくとも、そんな事を言ってくれた人は居なかったからさぁ..だけど、何でセレス様がそこまで私達の事を気にしてくれる訳?」

「そうだな..君達みたいな可愛い子が苦労しているのが見ていられないからかな!」

「嘘だよ、私達が可愛い訳ないよ? 実の親からも醜いって言われて捨てられたんだからさぁ」

《僕から見たら、皆んな可愛くしか見えない、リンダだって前の世界なら普通にアイドルユニットに入れる位に可愛い》

「僕は別の世界から来たのは知っているよね?」

「勇者召喚に巻き込まれたんだよね?」

「だから、この世界の人と少し可愛いとか綺麗の基準が違う」

「どういう事?」

「だから、君達全員が美少女に見える..」

「それ、本当なの?」

「本当」

「だったらさぁ、だったらさ..私達が抱き着いても嫌じゃないのかな?」

「それは寧ろ、嫌じゃ無くて嬉しいかな?」

それを聞いた途端、周り中の女の子が押しかけて来た。

抱き着かれたり、キスされたりして揉みくちゃにされた。

そして、こんなご褒美を貰ったからには絶対に幸せにしなくてはいけない..そう決意した。

思考錯誤…暗中模索中
マリア様に相談してみた。

「セレスお気持ちは解ります..スラムの土地は一応王家の土地なので自由にして構いません、ですが、民の証明証の発行はセレスの頼みでも聞けません…」

マリア様の顔が曇っている。

「どうしてでしょうか?」

「この国は魔族の影響も少なく裕福です..ですが滅んだ国も幾つかあり、流民も沢山います、スラムの人間に民の証明書を簡単に発行した事が解ったら、流民が流れ込んでくる可能もあります」

「そうですか..それではスラムの土地だけでも使わせてくれませんか?」

「解りました..私の名前で許可しましょう」

さぁどうしようか?

住む所の確保は出来たも同然だ、暫くは窮屈だけど屋敷の離れに住んで貰って、スラムの土地に住む建物を作れば良い..モデルは前世でいう所のワンルームアパートだ。

仕事については今度、ギルドに相談してみよう…

今は保留だ…

マリア様に迷惑を掛けない方法で何とかクリア出来ないか考えないとな…

何だか、色々な事に手を出しすぎている気がする..一つ一つ解決して行くしかないか..

だが、思いもつかない解決策がある事にこの時僕は気がついていなかった。

スラム 解決の糸口
これで、土地は手に入った。

後はどうしようか? 真剣に考えたけど思い浮かばない..民の証明証、身分証明書をどうしようか?

ギルドに相談する前にキャミエール家に行く事にした。

流石に資金が少なくなってきたし、魔物を狩ってお金にしようにも、勇者が遠征中だから近隣に美味しい魔物が居ない。

うん、援助してくれると言ってくれるなら素直にお願いしよう。

…………………………………..

………………….

いきなり行ったにも変わらず時間を作ってくれた..凄く有難い。

「セレス、お待ちしていましたよ?支援についてのお話についてですね」

「はい、キャミエール公爵様」

「もっと気を楽にして下さい..将来は息子になるのですから、暫くしたらレイスも来ますよ」

「そうですか、久しぶりから楽しみです」

「そう、楽しみなのですね..だったら支援の話を先に詰めちゃいましょう..どういった支援が必要なのでしょうか?」

「はい、実は…」

僕はスラムの件についてキャミエール公爵に相談した。

「ならば、建物についてはキャミエールの方で建てましょう..民の証明証の発行は私の方でどうにかするのならば、いったんキャミエール領で受け入れてその後で発行という方法も取れますが…辞めておいた方が良いでしょう」

「何故ですか?」

「法律的には問題は無いですが..これを行うと真似する人間が出てくるかも知れないし、その時に悪徳貴族が仲介と称してお金をとったり、悪さをするかも知れないからです」

「確かにそうですね」

「ええっ、また、貴族や王族にえこ贔屓されていると思われて街に溶け込めないかも知れません」

「何か知恵を貸して頂けないでしょうか?」

そこにドアを開けてレイスが入ってきた。

「レイス、はしたない..ちゃんと挨拶してから入りなさい..今日のセレス殿はお客様ですよ!」

「ごめんなさいお母さま..それよりセレス..様、そんな話なら凄く簡単な話だわ」

「良い案がありますか?」

「簡単よ…貴方の奴隷にすれば良いのよ!」

「何で、いきなり奴隷の話になるの」

「だけど、考えて見て..貴方は姫騎士でマリア様に仕えているわ! つまり、後ろ盾には姫様が居るのよ..それを知っている人は絶対に酷い事しないわよ? 下手な平民よりよっぽど安全だわ」

「確かにそうかも知れないけど..奴隷は」

「いつまでも奴隷にしておく必要もないわよ! 暫く様子を見て解放すれば良いの..解放された奴隷には、普通に民の証明証を発行できる..これなら誰も文句の言いようもないわよ」

「ありがとう、レイス、これで納得してくれるかどうか解らないけど話してみるよ!」

「いいのよ..あなあな貴方は将来の旦那なんだから! それより折角来たんだから今日は泊っていきなさい..いいわね」

《嫌とは言えないよな…》

「そうだねキャミエール公爵さえ大丈夫であれば私は構いませんが..」

「勿論、問題はありません。今日はささやかな宴でも用意しましょう」

この日セレスは寝不足になる程眠らせて貰えなかった。

閑話:勇者達?
「お前らいい加減にしろよ!」

最近、俺はイライラを募らせている。

「あっ東吾くん..だけど私は悪くないわよ!貴族の娘だからってえばっているライラがいけないんだもん」

「何で私くしが悪い事になるのですか? 私達は、勇者様が円滑に戦えるようにサポートしているだけですわ」

「じゃぁ、何で東吾くんが怪我した時には直ぐにヒーリングを掛けるのに、私達には薬草なのよ」

「それは、東吾様は勇者様たちの要..平勇者の貴方達とは違います!」

「平勇者..それが本音なのね!」

此奴らは本当に我が強くて困る。

元の世界から一緒に来たクラスの女…こちらでサポートをしてくれる貴族の娘との間でいざこざが多くて困る。

元の世界なら女は麗華が纏めてくれていたのだが..こっちに来てからはそれをしようとしない。

その理由は解っている..セレスだ..麗華はセレスの方に行きたいからから此処で中心人物になるのを避けているんだ..

最近ではセレスの方に行った、三浦たちを羨ましがっている。

しかも、最初に、レベルを上げてから何を言うでもなく自由にやらせて貰える…それが麗華の理想に近かったらしい。

ともかく、今、俺のチームはバラバラだ。

確かに個々のレベルは上がっていった。

もう、俺の仲間でセレスより弱い奴は居ないだろう。

だが、肝心の力を合わせる事を誰もしない。

確かに、オーガですら簡単に狩る力はついた。

だが、このままで魔族と戦えるのだろうか?

答えは..無理だ..

勇者として丁重に持て成されている俺たちは魔族を倒し、最終的には魔王を倒さなければいけない。

逆にそれが出来ないとなれば、恐らく待遇は変わるし、場合によっては追い出される。

それなのにこいつ等は足を引っ張りやがって…

最近、俺は此奴らと一緒に居るのが苦痛でしか無い…

ハーレム..何で俺は…夢を見ていたのだろうか? 

今の俺には決して楽しいとは思えないな。

スラム ?
再び、僕はスラムに来た。

今日は手土産にサンドイッチを作ってきた。

正確には、指示して作って貰っただけど…相変わらずここは本当に酷い。

「セレス様、この間はパン有難う!」

ただ、普通に売っているパン、街に居る普通の人なら簡単に買えるパン、それをあげただけなのに..こんなに喜んでくれる。 これで頑張らないなら..駄目人間だ。

「どういたしまして! 今日はね、もっと美味しい物を持ってきたんだ! 皆んな呼んできてくれるかな?」

「えっ、美味しい物! 解かった、皆んな呼んでくる!」

わらわらと沢山の美少女と美幼女が集まってくる、その中にリンダも居た。

「リンダ、今日も配給を持ってきたんだ、配るのを手伝ってくれるかな? あと、終わった後に皆んなに話があるんだ、その纏め役をお願いして良いかな?」

「勿論! どうせ、セレス様の事だから良い話に違いないんだろう?」

「それは聞いてから判断して」

「解かったわ」

そして、前回の様に配り始めた。

「これ凄い、お肉と野菜が挟まっている…本当に食べてい良いの?」

「当たり前じゃない!君たちに食べて貰いたくて持ってきたんだからね」

「本当! ありがとうセレス様…あの、今日も頭撫でて貰っても良い..」

「私で良いなら、はい」

「ありがとう、セレス様、私、私」

「ちょっと、貰ったならすぐにどいてくれる! 皆んな待っているんだからさ」

「ごめん」

「これ、本当に旨そうだな、こんなの初めてだ、ありがとうセレス様…私は握手して欲しいんだけど良い?」

「勿論、良いよ..はい」

「私、この手絶対に洗わない..」

「はははは、ちゃんと洗ってよ! じゃないと次は握手してあげないよ!」

「そうだな..明日になったら洗うよ」

「ちょっと、皆んな待っているのよ! 早くして」

「あっ ごめん」

「良いから早くどいて…セレス様、本当にありがとうございます、心から感謝」

「はいはい、令嬢なんてスラムに居ませんよ..ばれるような嘘は辞めて、どいて下さいね」

全員に配り終わりお腹を満たした後、話を聞いて貰う事にした。

「リンダこの間の事で話があるんだけど良いかな?」

「皆んな、セレス様が話があるんだって、聞いて」

「「「はーい」」」

「まず、この前話した、皆んなが住む家なんだけど、作る事が決まったから安心して」

「本当なのそれ..」

「うん、昨日、キャミエール公爵とも話したから大丈夫だよ」

「本当? ちゃんと屋根のある所に住めるんだ..ありがとうセレス様」

「もう、寒い思いしないんで良いんだ..嬉しいな」

《ああ言いづらいな、民の証明書が貰えないから奴隷になってくれなんて》

「それでね、リンダや皆んなに謝らなければならないんだけど、民の証明書の方はどうにもならなかった」

「そうか、仕方ないよ、ありがとうここまで頑張ってくれただけで嬉しいよ」

「そうだよ、セレス様、お家には住めるんでしょう..ありがとう」

「お家、楽しみだな」

《本当に言いづらいな…》

「そこで、提案なんだけど..本当に言いづらいんだけど、私の奴隷にならない?」

「セレス様…奴隷って….本当に奴隷にしてくれるの? ..ありがとう!」

「皆んな、セレス様が奴隷にしてくれるって」

「「「「本当? ありがとう、セレス様」」」

「えっ…何で喜んでいるの! まだ、説明して無いのに!」

「いや、だって私達は奴隷にすらなれないからスラムに居るんだよ?」

詳しい話をリンダから聞いた。

この世界では奴隷に対しては最低限の衣食住の保証があるらしい。

そういえば、購入した時に聞いたような気もする。

奴隷になったとしたら…寝る所は家畜小屋かも知れないけど、屋根付きの場所で寝られる。

不味いご飯だが一日2食の食事は貰える。

ボロボロの服でも貰う事が出来る。

その生活と今の生活を比べると遙かに幸せなのだそうだ。

「あのさぁーだったら何で奴隷にならなかったの?」

「正直に言うと買って貰えなかったんだよ、実際に私は奴隷商に自分を売り込んだんだけど、鉱山でも無理と断られたよ」

「なんで?」

「まぁ、醜いから、外見を気にする相手はまず買わないし、私も含んで皆んなガキだから力仕事には向かない…銀貨を出せば真面な奴隷が買えるんだから、こんな不細工なガキなんて買わないよ」

《僕の目から綺麗で可愛いという事は..そういう事だよな》

「リンダ、私から見たら君は凄く綺麗で可愛い子にしか見えないから、不細工って言うの厳禁ね」

「なんでですか…私は本当に不細工で..」

「私は異世界人だから、人の見え方が違う、それに皆んなの事を考えて頑張っていたリンダは人としても素晴らしいと思う」

「そっそうかな! そんな事言われた事ないから照れちゃうよ..」

「セレス様、リンダとばかり話してないで私達ともお話しをしてよ」

「それで、奴隷になった後だけど..」

「鉱山でも何でも任せて、出来る仕事なら一生懸命頑張るから」

「「「私達も頑張るから」」」

「いや、そんな事しないよ! 奴隷の登録をした後にギルドでも僕の奴隷として登録をして貰う..その後は冒険者として頑張ってくれれば良いよ!」

「あの、やっぱり討伐とかしなくちゃ駄目ですよね?」

「うん、しなくて良いよ? 好きな仕事を自由にすれば良いよ、報酬も君たちにちゃんと入る様にするからね…あっ、だけど家賃と食事代として幾らかは納めて貰う事になるよ…まぁ3割位を考えているんだけど」

「あの、それは本当ですか? 何か物凄く私達が得した感じだと思うんだけど…」

この条件が破格値だという事にセレスは気が付いていなかった。
収入の三割で食事と住む所の確保が出来るという事は、この世界では考えられない程幸せな事なのだ。
普通の冒険者は、住む所の確保に奔走する。
一人前の冒険者でも宿屋暮らしをしている者も少なくは無い。
そして怪我等で働けなくなればお金が払えず、直ぐに住む所が無くなるし食事にもありつけなくなる。
まして彼女達のような稼げない者は1日働いても銅貨しか稼げない。
その三割で全てが確保できる..現状を考えればそれは夢のような話だった。

「私がそれで良いって言っているんだから、それで良いんだよ」

まだ、家は出来ていない..話だけの詐欺かも知れない..それでも彼女達は嬉しかった。

何故なら、自分達に優しい言葉をかけてくれる、手を差し伸べてくれる人間は居なかった。

それがまして、セレス程の美少年なら嬉しくない訳はない。

奴隷になったスラムの子
僕は今、33人を引き連れて、奴隷商に向かっている。

周りからは白い目を向けられているけど気にはしない。

彼女達も白い眼には慣れているのか気にせず付いてくる。

「セレス様が…何でブサイクな子供を連れているのかしら?」

「あれはスラムの子達じゃない、何でセレス様が引き連れているの? まさか犯罪でもしたのかしら?」

「しかし、麗しの姫騎士が、不細工で醜い子供を引き連れて、何かシュールね」

「正に美男とゴブリン…そんな感じかしら?」

《僕には、君達の方がもっと醜く見えるけどね》

奴隷商に着いた。

「これは、これは麗しの姫騎士様..今日はどういったご用件でしょうか?」

「今日は奴隷紋を刻んで貰いに来ました」

「まさか、この人数全員ですか?」

「はい」

「早速、やらせて頂きます…金貨3枚と銀貨3枚になりますが宜しいでしょうか?」

「お願い致します」

前と同じ様に血が必要だ、人数が多いので何回も指を斬りつけた、痛いけど彼女達の事を思えば気にはならない。

次々に奴隷紋が刻まれていく、これで彼女達の所有者は僕となった。

「また、廃棄奴隷が入ったら教えて下さい…見させて頂きます」

「その際は声を掛けさせて頂きます」

「宜しくお願い致します」

僕たちは奴隷商を後にした、そしてその足で冒険者ギルドへ向かった。

ギルドの門を開けて中へ入る。

冒険者達が嫌な目で見て来るが気にしない。

「スラムのガキが何の用かしら?」

陰口を叩く者もいる。

「ラットさん、この子達も僕のパーティ登録お願いします」

僕はミスリル級なので待たないで済む分楽だ。

「全員ですか?…凄い人数ですね、全員登録するんですか?」

「はい、お願い致します」

流石に33人の登録には時間が掛かる。

その間、彼女達は居心地が悪そうに端に固まっている。

僕はラットさんと今後の方針について話した。

1. 彼女達が稼いだお金から3割を僕の口座に入れて貰い、残りはその本人に払う。

2. 彼女達の実力の見極めをラットさんにして貰う。

3. 彼女達が僕の奴隷である証明書

この三点を決めた。

この三割は家賃と食事代にまわす。

実力の見極めは、僕のパーティだと僕がミスリル級なので何でも受けれてしまう、だから彼女達に出来るかどうか見極めて貰う事が必要だからだ。

「さぁ、皆んな登録が無事に終わったから今日は美味しいものでも食べに行こうか?」

「「「本当?」」」

「うん、さぁ行こうか!」

よくよく考えたら、流石にこのままの服装だと不味い、僕は先に古着屋に向かった。

「「「あれ、セレス様、ご飯は?」」」

「先に服を買ってあげるよ..好きな服を選んで」

「ちょっと、スラムの子に何をさせているんですか、困ります」

「ちゃんと、お金なら払います、駄目でしょうか?」

「ですが、スラムの子に触られては困ります..うちはちゃんとしたお客様のお店ですから」

《せっかく、喜んでいたのにしゅんとしてしまった..》

だから、店主には気の毒だが意地悪をする事にした。

「そうですか、私は姫騎士をしています、その私の連れが購入できないのなら、ここは貴族ご用達、それも高位貴族専門店なのですね…良く解りました、姫様にもキャミエール公爵様にも伝えさせて頂きます」

「そんな、そんな事はありません..そうなら、そうと」

《過信したな、街中の人が僕の事を知っていたから、誰もが僕を知っている、そう思っていた》

「こちらも、言い過ぎました、彼女達は私の奴隷です、どうか服を譲ってくれませんか?」

軽く、頭を下げた。

「すいませんでした、どうぞ見て行って下さい」

「皆んな…親切なおばさんが服を見て良いって、好きなの選んで買ってあげるから」

《王族や貴族を敵に回すのはこの世界では死ぬほど怖い筈だ…頭にきて言ってしまったけど、フォローしないと、汚い手で商品を触られたくない、この店主の言い分は本来は間違ってないのだから》

皆んなには着替えて貰って古い服の処分もお願いした。

迷惑料も含んで金貨1枚を払った。

お金を貰った店主はホクホク顔で「有難うございました」って言っていた、現金な人だ。

「また来ます」

僕たちは笑顔で立ち去った、これで彼女の恐怖も無くなっただろう。

表通りに出て、以前に里香たちと来たレストランへ来た。

ここを以前利用した時にオーナーが「金を払ってくれるなら客だ..それがここのルールだ」そう言っていた。

だから、何か言われる事も無いだろう。

「おや、セレス様かい?又随分変わった子達をつれて来たね?」

「はい、名前を憶えて頂けたのですね…有難うございます、ここなら気楽に食事が出来るから安心して連れてきました」

「そうだここは金を払ってくれるなら客だ..それがここのルールだからね…沢山食べてお金使っていってくれ」

「ははは、じゃぁ、美味しそうな物を片っ端からお願いします、アルコールは抜きでジュースでお願いします」

「太っ腹だね…じゃぁ2時間位は貸し切りにしようか? その方が気楽に楽しめるだろう?」

「お願いします…あっ、そこで食べている二組の食事代もこっちで持ちますから」

「良いのかい?」

「はい」

《さっきまでこっちを睨んでいたけど…奢りと解ると急に優しい顔になったな…現金だな》

「「奢って頂いて有難うございます」」

「ご迷惑賃代わりです、他にも好きな物があったら注文して下さいね!」

………………..

………..

「さぁ、皆んな、無くなったら注文するから好きなだけ食べてね」

「あの、セレス様本当に良いの?」

「良いに決まっているじゃん! ほら、リンダも好きな物を好きなだけ食べてね」

「うん!」

「うわぁー凄く大きいお肉だ…頂きます!」

「このスープ、沢山お野菜が入っているよ..こんなの初めて」

「ピザって暖かいとこんなに美味しんだね..美味しいよ…これ」

「美味しよ、美味しいよ、美味しいよ」

確かにご馳走だけど、泣く程の物じゃないと思う….

この様子を見ているだけで、今迄この子達がどれ程辛い人生を送っていたかが解る。

幸せそうに食事をしている彼女らに、「家が出来るまでスラムに帰って」とは言えないし、言いたくない。

雑魚寝になってしまうけど、館に連れ帰るしかないな…

そうしよう…..

僕は彼女達を連れ帰る意思を固めた。

館にて
やはり、僕は感情的に行動をしてしまう。

反省しなければならないな。

まだ用意も出来てないのにスラムの子を奴隷にしてしまった。

ここまでしてしまって、「それじゃあ、家が出来るまで、そのままの生活を送ってね」なんて言えない。

周りに迷惑を掛けるのを承知で、屋敷に連れ帰った。

確かに離れはあるけど、それでも手狭な気がする。

「あの、歩美に里香、楓、申し訳ないけど暫く彼女達を置いてくれないかな?」

「何を言っておられるのですか!ここはセレス様の家なのですから好きにして良いのですわよ」

「そうだよ、ここの家はご主人様の家だから、自由にして良いんだよ」

「そうだよ、だけど急だね…食事はどうしようかな? ご主人様、食材を追加購入して良いですか?」

「勿論だよ…後、、コーネリアの部屋には近づけさせないでね」

「解りました」

残りの部屋は6部屋ある、5~6人で一部屋か暫くは狭いけど我慢して貰おう。

「あのリンダ、ここは私の家なんだけど建物が出来るまで暫くは狭い部屋で我慢してくれないか? 一部屋辺り5~6人になると思う、ごめんね」

「あのさぁ、セレス様、この部屋は大きいから6人で使っても下手な宿の共同部屋よりは大きいよ?それに外で寝ていた私達に我慢? 充分だって、ありがとう!」

「「「「うわぁー今日から此処に住んで良いの? セレス様ありがとう!」」」

「ねぇ! セレス様気にしなくて良かったでしょう?」

「そうだね、よく考えたらベットも毛布も無いな、毛布は直ぐに買って来るけど、ベットは暫く待ってね」

「だから、大丈夫だって、私もこの子達も毛布すら無い生活を送っていたんだから」

《こんなに狭い部屋なのに、毛布一枚なのにこんなに感謝されるなんて、自分に勇者の資格が無いなんて落ち込んでいた自分が恥ずかしくなる、この子達に比べたらどれ程幸せなのだろうか、王宮で寝泊まりして美味しい物を食べてそんな生活をしているのに、本当に僕は馬鹿だな、どれ程、恵まれているか気が付かなったよ、本当にマイン様に感謝しなくちゃ》

「そう言って貰えると助かるよ」

僕は、楓と里香を連れて毛布を買いに行った。

やっぱり、想像通りベットはオーダー製だから33個となると急ぎでも5日間かかるそうだ。

お願いをして館に帰った。

その後にコーネリアと少し話をした。

扉越しだけど、歩美や里香、楓と話せるのが嬉しいらしい。

ただ、直接話したり、触れるのは僕だけなので会えなくて寂しがっていたけど、理由を話したら「そういう事なら我慢するわ」と納得してくれた。

出来るだけ早く、時間を作ってあげたい、本当にそう思った。

僕は姫騎士なので今日も城へ帰らなければならない。

最近、マリア様やレイスと過ごす時間も少ないから、帰りに何かお土産でも買って行こう。

「それじゃ、皆んな、私は城に帰らなければならないから今日は帰るね」

「明日は来れますか?」

「大丈夫だよ、リンダ、時間の約束は出来ないけどちゃんと顔を出すから」

「そう、皆んな心細そそうだから、来てくれると嬉しいよ…勿論、私もね」

「わ私も寂しいですわ」

「うん、私もだよ」

「必ず来るから安心して」

「皆んなセレス様が帰るってさ」

「「「「セレス様、バイバイ」」」

うん、この笑顔が見れるなら幾らでも頑張ろう、そう心から思った。

セレスホーム 完成
本当のチートはお金と権力かも知れない、そう素直に僕は思った。

僅か3日間で、スラム街に館は立っていた。

そして、自慢げにレイスが僕を案内している。

「この世界って3日間でこんな大きな建物が作れるんだ…」

「セレス、何を言っているの! 作れないわよ!」

「だって目の前にあるよ」

「キャミエールが凄いのよ!」

レイスは誇らしげに無い胸を張る。

「そうなんだ、ちなみにどうすればこんなに短い間で作れるの?」

「そうね、魔法を使える者50人集めて、加工させて、部品によっては瞬間錬金をして、熟練の大工60人に作らせただけよ!」

「そうだね…キャミエールって凄いね!」

館の正式な受け渡しは、キャミエール公爵がするそうだが書類だけなので直ぐにでも使って構わないらしい。

本当にありがたい。

「そうだ、レイス、少しだけ此処で待っていてくれるかな?」

暫くは休んで貰うように伝えて置いたから、屋敷にスラムの子供達はいる筈だ。

「そう、それじゃ私は、この館の中でも見てるからいいわ!」

僕は館に帰るとスラムの子達に声を掛けた。

「リンダ、皆んなが住む家が完成したんだ、今から見に行こう!」

「もう、完成したの?まだ数日しか経って無いのに…本当?」

「うん、先に私は戻っているから、後から皆んなを連れて来てくれる!」

「解かったわ…後から皆んなと行くね!」

…………………….

…………..

「レイス、お待たせ!」

「ちょっと、何をしていたの? 随分時間が掛かったじゃない!」

「ちょっとね、あっ来た」

「来たって、誰が来たというのよ! 本当にもう!」

「リンダ、こっち、こっち」

「へぇーあの娘を呼びに行ったの! どんな関係なのかしら?..ねぇ」

「うん、リンダはスラムの子のリーダーだよ」

「そそそそそ、そうなんだ、別に何か疑っている訳じゃないわよ、本当に!」

「この家に本当に住めるの? セレスありがとう! 夢みたい」

「リンダ、それはここに居る、レイスに言ってあげて、僕の話を聞いて公爵様にお願いしてくれたのはレイスだから!」

僕は、レイスの背中を押して前に出した。

「レイス様、有難うございます! 本当に有難うございます!」

「レイスのお姉ちゃんありがとう! 」

「お姉ちゃん、お家をありがとう..」

「お家があってご飯があって…ありがとう、レイスのお姉ちゃん、セレスのお兄ちゃん」

皆んなが心からのお礼をレイスに言って行く。

「ほら、レイスも固まってないで言葉位返してあげなよ」

「こここ公爵家の人間として当たり前の事しかしてないからお礼は要らないわ! 寧ろ何かしてあげるのが遅くなって悪かったわ…ごめんね」

「それでも、ありがとう、レイス様」

「さぁ、皆んな、部屋は1人一部屋ちゃんとあるけど、入口に一番近い部屋以外は早い者勝ちだよ..さぁー用意ーどん」

「うわぁ、急がなきゃ..二階の方が良いもん」

「私は、絶対にお風呂の近くが良いもん」

リンダを除く全員が走っていった。

「リンダは悪いけどここの責任者も兼ねるから入口に一番近い部屋に決めさせて貰うよ」

「解りました」

「さぁ、リンダも部屋を見てきなよ、お風呂もトイレもあるし、凄く綺麗だよ」

「はい、その前に、レイス様 セレス様、本当にありがとうございます…ちゃんとした家に住めるなんて思いませんでした..この御恩は一生忘れません…本当にありがとう!」

「もう、お礼は良いから、早く家を見に行きなさい..凄く良く出来ているんだから!」

「はい、有難うございます!」

これで、必要な物を一式用意したら一段落だな、食堂がるから、誰か調理人を雇うか用意して後は彼女達に冒険者の指導をしてくれる人を用意すれば…これでどうにかした事になるのかな。

「ねぇ、セレス…私ねセレスがどうして頑張るのか解る気がするわ!」

「そう?」

「誰かに感謝されるって気持ち良いのね! 今迄は知らなかったわ…子供たちの笑顔を見た瞬間、そう思ったのよ」

「そうだね、私には勇者のように世界を救う力は無い…だけど、近くに居る人だけは守りたい、そう思ったんだ..それだけだけどね」

「そうなんだ!」

《どう考えても、セレスの方が気高いのに何故勇者じゃないんだろう?》

「その守りたい人の中にはレイスも入っているんだけどね!」

「ななななな何をいっているのかしら?…婚約者なのだから当たり前でしょう!」

「そうだけど、口に出して言いたかったんだよ! 今回は凄く助かったから、助けてくれてありがとうレイス」

「当たり前じゃない! 貴方は将来夫になるんだから!」

レイスの顔赤くなった。

この後、気分を良くしたレイスは全員を引き連れて、貴族しか入れないレストランを借り切った。

最初オーナーは文句言っていたが、キャミエールの名前を出した途端に手のひらを返して丁寧になった。

ある意味、キャミエールって勇者以上にチートなんじゃないかな?

僕はそう思った。

三人の勇者 再び
僕がつくった物でも無いのに、セレスホームと呼ばれるのは気が引ける。

だけど、それをキャミエール公爵に言ったら、「セレス殿が発案したのだからそのままで良いですよ」と言われた。

彼女達から徴収した金額3割のうち、1割を公爵に納める事を約束した。

「彼女達が優秀な冒険者になっていけば、長い意味で良い税収になる」そう公爵は喜んでくれたが暫くは赤字だろう…本当に優しい人だ。

後は、ここで冒険者として指導してくれるような人を探したい。

楓や里香にお願いしても良いのだが、そうすると館の方が手薄になる。

そんなに強く無くても良いから信頼できる人が欲しい…そう考えていたら、勿体ない位の人から声が掛かった。

「セレス様、新しく館を作ったんでしょう? そこって私達でも住める?」

「えっ真理さん、どうしたの?」

「お久しぶりです、セレス様、私達は王都を中心に冒険者をしていたんですよ? すれ違いばかりで中々会えなかったですが」

「そうなんだ、もしかして王城に住んでいたりするの?」

「たまに戻ってくる程度ですが」

真理《まぁセレス様に会いに戻ってくるような物ですが》

「そうだったんだ」

「はい!」

「真理ばかりズルいですわよ?」

「本当そうだよ」

「翔子さんに幸子ちゃんも、だけど凄いね、何処から見てももう一人前の冒険者だね」

「うん、セレス様が色々教えてくれたからだよ」

「そんな事無いよ、もう僕なんかじゃ敵わない位強いんじゃないかな?」

「そうかも…だけど、セレス様の方が幸子は凄いと思うよ?」

「そんな事無いよ!」

「そんな事ありますわ、セレス様…奴隷をお救いになって、今度はスラムを救うなんて、その方が凄い事ですわ」

「ありがとう!」

「それでね、セレス様…もしかしたら、その子達に冒険者の仕事を教えてあげるような人を探しているのかな? と思って..」

「確かにそういう人が居たらと思うけど、真理さん達だと勿体なさすぎます、今は冒険者ランクはどの位なのかな」

「えーと、色々あって実は金級で止まっています」

「そうか、だけど良いの? 住んで貰って、たまに一緒に彼女達と仕事をして貰ったりしたら凄く嬉しいけど」

「勿論ですわ、セレス様、他の2人はともかく祥子は恩に報いる為に必ずセレス様の元に行きますわ」

「ズルい、祥子ちゃん、私だって同じだよセレスお兄ちゃん!」

「あのさぁ、元々この話は私が聞いて二人に話したんだよね? なのに何それ?」

「それじゃあ、お願いして良いかな…正直助かるよ…三人ともありがとう!」

「その代わり、今度はちゃんとセレス様のパーティに入れて下さいね!」

「そうですわよ、水臭いですわそれにセレス様の奴隷に指導したり、一緒に行動するなら必要な事ですわ」

「そうだよ、まさか断ったりしないよね?」

此処まできて断ったりしない、僕になんて関わらなければ勇者としてチヤホヤされる筈だ。

そうじゃなくても、凄腕の冒険者として凄く幸せな生活を送れるだろう。

それなのに、僕の手助けをしてくれる凄く有難い。

「皆んな有難う! 本当に有難う! 私とパーティーを組んで下さい!」

「「「はい、喜んで!」」」

こうして、勇者三人娘とまたパーティを組むことになった。

勇者3人、奴隷2人、スラムから奴隷になった子33人…合計38人の大所帯になった。

この世界は今日も僕に優しい。

マイン様に心からの感謝を込めて祈った。

女勇者三人の裏側
「あのさぁ…私達なんでモテないんだろう? 勇者だよね!」

「真理ちゃんいきなり何を言い出すのか! 不細工だからに決まっているじゃん!」

「そうですわ、何解り切った事を言うのでしょう、言うだけ虚しさが増しますわ」

「だけど、冒険者としても金級で更に勇者なんだよ? これでモテないならもう結婚出来ないんじゃないかな?」

「そうだね、パーティ募集でも女ばかりで男の冒険者は1人もこなかったしね…報酬だって均等にするって言うのに来ないんだもの…絶望しか無いのかも」

「そうですわね…お金は幾らでも稼げるようになりましたけど…本当に虚しいですわ」

彼女達は気が付いていなかった。 

この世界は男女比が3対1である事を。

その為、前の世界であれば、不細工な男が三人居るパーティで女の子の冒険者を入れたがって居るような物だ。

そして、上級の冒険者が自分達と同じお金を払うなんて破格の条件を出した場合は、夜の奉仕も含まれるのが当然の世界だ。

これが、彼女達が見目麗しければ加入する男も居るかも知れない。

だが、彼女達は物凄く醜い…相手になどする筈もない。

そして、彼女達は一部の冒険者から恥知らずというレッテルを貼られてしまっていた。

その噂に尾ひれがついて、手籠めにする男をパーティに入れたがっている冒険者という噂が流れていた。

金級冒険者と同じ金額で格下の冒険者を雇うなんて破格の条件を出した事が噂に信憑性を持たせた。

多分、彼女達と一緒にパーティを組む男の冒険者は居ないだろう。

「セレス様と一緒の時が懐かしいな」

「そうですわね、本当に夢の様な一時でしたわ」

「幸子だってそうだよ…あんなに大切にして貰ったのなんて今迄無かったもの」

「だけど、セレス様は勘違いしているよね? 絶対に私達の事を美少女だと思っているよね」

「そうですわね…いっそ転移するならセレス様が居た国に転移したかったですわ」

「そうしたら、幸子もスーパー美少女扱いされたのかな?」

「されたかもね、だけどそんなもしもの話をしても仕方ないじゃん」

「だけどさ…」

「あのぉ…聞きたいのですが、皆さんはセレス様の事はもう良いのですの?」

「「そんな事無い(ですわ)」」

「だったら、元の鞘に納まるように考えるのが一番ですわ」

その後、彼女達はセレスがボランティアの様な仕事をしている事を知った。

そして虎視眈々とチャンスを狙っていた。

自分達が一番高く売れるタイミングを待っていた。

そんな彼女達が、冒険者を必要としているタイミングを逃す筈が無かった。

吉祥院麗華がこの話を聞き、悔しがるのは後の話だ….

館と勇者
僕は真理さん達三人を連れてギルドに来ている。

「ラットさん、すいませんパーティ申請をお願いします!」

「あっ! セレス様…もしかして真理様達とパーティーを組むのですか?」

「はい、最近、スラムの子を引き取ったので色々指導を兼ねて仲間になって貰おうと思いまして」

「凄いですよね、最早これはパーティと言うには余りに大所帯ですね!」

「暫くしたら本格的に活動しますので宜しくお願い致します」

「はい、期待しています」

「やはり、ラットさんは仕事が早くて助かりますわ」

「本当にそうだよねー」

「さてと、登録も済んだから行こうか?」

「いよいよ、セレス様が作られた、セレスホームに行かれるのですか?」

「先に、私の館に案内するよ! これからは頻繁に交流をする事になると思うからさぁ」

「そうですの! それは楽しみですわ」

「翔子さん、そんなに凄い物でも無いよ!…ただ皆んなには現状を知って貰いたいんだよ! これからは本当の意味で仲間になるんだから、色々相談もしたいしね」

まず、僕は彼女達を館に連れて行った。

「此処が、僕の館だよ、此処には冒険者が2名と介護してくれている者が1名、あと治療師と病気や怪我で動けない人がいるよ」

「そうなんですか?」

「紹介するから中に入ろう!」

「セレス様、その方達はどなたでしょうか?」

「里香、この人たちは勇者の三人だよ、今度パーティを組んだから紹介しにきたんだ!」

「流石はセレス様ですわ、勇者様達とパーティを組むなんて!」

「ほかの皆んなも呼んできてくれる?」

「はい、呼んできますわ」

「あのセレス様、何で日本の名前なのですか?」

《ヤバイ、ごまかさないと》

「東吾くんと話した時に日本の名前ってカッコよいなと思って付けたんだよ、どうかな?」

「確かに、日本的な良い名前だと幸子は思うよ」

「ありがとう」

コーネリアさんだけは伝染病に掛かっているからと嘘をついて、それぞれ自己紹介をした。

三人の勇者にはスラムの子の指導と共に、里香と楓の指導も頼んだ。

あと、治療に必要な素材を集めて貰うのも頼んだ。

正直頼りっぱなしで申し訳ない、そう思うんだけど、

「任せて下さいセレス様」

「水臭いですわ、セレス様」

「幸子に出来る事なら何でも言ってよ手伝うからさ」

と言ってくれる。

最近、何でも抱え込んでいるような気がしていた。

考えも無しにすぐに首を突っ込んでいた。

正直アップアップだったと思う。

この三人が手を貸してくれるのは凄く有難い。

結局僕は、権力が必要な事は姫様に頼って、お金が必要な事はキャミエール公爵とレイスに頼って、そして今度はこの三人に頼っている。

何かしたくても何も出来ない…..それが僕だ。

結局、僕は…皆んなに甘えている、それだけの人間なのかも知れない。

だけど、誰かに僕が甘える事によって救える人が居るなら、これからも僕は甘え続けようと思う。

「皆んな何時もありがとう! 大好きだよ!」

口からつい出てしまった。

「「「「えっ」」」」

1人じゃ無いんだ、そう思ったらついでてしまった。

「あの、今セレス様はなんて言ってくれたのですか、大好きって聞こえた気がしますが?」

「今、行ったよね! 幸子に大好きって!」

「真理にいったんだよ」

「勇者の皆さま、違いますわ…「皆んな」って言ったんですよ! 此処にいる全員にですわ」

「「「「もう一度、はっきりと是非」」」」

「恥ずかしいから、言わないよ!、それじゃ、これから私は勇者達とセレスホームに行くから、後を宜しくね!」

「セレス様、もう行かれるのですか?」

「ごめんね」

「セレス様は忙しいのですわ、沢山の仕事をしているのですから無理を言ってはいけませんわよ」

「本当にごめん、今度ちゃんと時間を作るからね」

「解りましたわ、楽しみにしています」

「うん、楽しみにしててね」

僕は三人の勇者と館を後にした。

頭の整理 
三人の勇者、真理、祥子、幸子は2人が引率、1人がホームに待機して貰うようにお願いした。

引率の2人には、リンダ達スラムの子達に冒険者の仕事を教えて貰う。

街の仕事、薬草の採取から始まり、ゴブリンの討伐~オークの討伐まで出来るようにする。

この世界ではベテランでもオークの討伐に失敗する事もある事から、一対一でオークが倒せるようになればまぁ卒業で良いんじゃないかな? そう思う。

そこまでいったら、奴隷から解放しても1人で生きて行ける。

解放奴隷扱いなので、民の証明書も簡単に発行して貰えると思う。

もし、発行して貰えないようなら、キャミエール公爵領にでも行って貰えば良いかも知れない。

キャミエール公爵もレイスも良い人達だから悪いようにはしないだろう。

ここまでの体制を作れれば一安心だ。

後は、廃棄奴隷のうち、病気になっている者たちの状態だな…明日にでもお見舞いに行ってみようかな?

コーネリアに姫様にレイス…やらなければ成らない事は山ほどある。

さぁ、今日も頑張ろう。

スラムの子の冒険者デビュー (街編)
無事にスラムの子達もセレスホームに移り住んだ。

その後、調理が出来る奴隷を二人買った。

勿論、「出来るだけ不細工な娘」と条件をつけて。

うん、なかなか素朴な感じの可愛い子が見つかった。

この子達には、セレスホームの清掃と食事の用意をして貰う。

仕事の内容を伝えたら「それだけなのですか? 本当に?」そう言っていた。

他に条件としてお小遣いとして月に銀貨1枚あげる事と1年間経ったら、継続したいかどうか決めて良いし、希望があれば奴隷から解放もする約束をした。

「それは、奴隷では無く正規の雇用と何も変わらないのですが…本当に良いのでしょうか?」

「私が良いと言っているんだから良いんだよ…じゃぁ任せた、私は気を配るのが苦手だから必要な物があったら何でも言ってね」

「はい、所で名前を頂けないでしょうか? まだ、名前も頂いてませんが」

「そうだね、じゃぁメメとリリで良いかな?」

「私がメメですね」

「私がリリね」

「うん、それじゃ頑張ってね、これで必要な物を買ってきて」

「銀貨…こんなに」

「皆んな育ちざかりだから、美味しものを沢山用意してあげて..今度こそじゃぁね」

《ご主人様って凄く忙しい人なんだな》

そして今日はいよいよスラムの子達のデビュー戦だ。

今日の引率は、勇者幸子だ。

本来は2人引率なのだが、今日は街の中の依頼しか受けないので幸子1人。

街の仕事に関しては、スラムの子は不当な扱いとは言え経験がある。

ある意味プロだ。

ただ、元スラムの子だと不当な扱いを受けるといけないのでギルドで目を光らせるだけだ。

初日なので僕も幸子と一緒にギルドの飲食スペースで様子を見る事にするつもりだ。

「さぁ、皆んな、今日からお仕事を始めるよ! セレス様の為に頑張ろう!」

「「「おー」」」

「ラットさん、街から出ないで出来る仕事で子供で大丈夫な仕事をお願いします!」

「解りました」

ラットさんは凄い勢いで依頼書をはがしに行っている。

人数がこんなに居るんだ結構大変そうだ。

「この位でしょうか? ドブ攫いに買い物に、子守りです。雑草取りや犬の散歩もあります」

「皆んなー注目!…この中でドブ攫いが得意な子は居るかな?」

「はい」

「私、何回かある」

「じゃぁ、お願いね!」

依頼書を渡してラットさんの方に行かせた。

「買い物してみたい人はいる?」

「私、野菜の目利きできる!」

「あたしは、お肉の新鮮さ解るよ!」

「じゃぁ任せたよ!」

幸子はまるで手慣れたように仕事の割り振りをしていった。

凄いな、30分も掛からないで仕事が行き渡ったよ。

「じゃあ、皆んなお仕事頑張ってね!」

「「「「はーい」」」」

「幸子ちゃん、凄いね」

「うん、私背が低いせいか、あの子達と打ち解けるのが早かったんだ、最初、皆んな同い年位に思っていたみたい」

「確かに、幸子ちゃんは背が低いし、永遠の妹とか言っても通用しそうだよね!」

「もう、お兄ちゃんはまたそんな事いって」

幸子が頭を突き出してきた、うん、頭を撫でて欲しんだな…こんな美少女の頭なら幾らでも撫でていられる。

「いつ、触ってもサラサラしてて触り心地が良いね」

「うん、私前にも言ったかも知れないけど、髪には自信あるんだ」

…………….

………

スラムの子達は優秀だった。

常日頃からやりなれた仕事だ、確かに街の中の仕事だけなら誰にも負けないくらい優秀なのかも知れない。

依頼達成のハンコを貰ってきたのでラットさんの受付に並ぶ。

報酬の2割が僕の口座に、一割がキャミエールの口座に振り込まれて残り7割が彼女達の取り分だ。

全員が報酬を貰うと笑顔になっていた。

「こんなに貰って良いの?」

「同じ仕事なのに倍近くあるの..凄い」

「これだけあれば、果物が買えるよ」

「パイだって食べられる」

「ほらっお兄ちゃん」

「えっ…そうか、皆んな、そのお金は皆んなの物だから気にせず使って、特に今日はお仕事初日だから

美味しい物を買ったり、食べたりすると良いよ! 門限迄には帰って来てね..じゃあ解散」

解散って言ったのに、皆んな動かない。

「やっぱりね、ほらお兄ちゃん、今日一日位は彼女達につき合ってあげたら…勿論、私も行くよ」

「そうだね! じゃぁ皆んなで街に行こうか!」

「「「「うん」」」」

彼女達は手にした僅かなお金でお菓子や果物を買った。

そして、僕や幸子にも分けてくれた。

彼女達が手にした銅貨じゃ碌な物は買えない、それでも僕や幸子の分もお金を出して買ってくれた。

このお菓子は、貴族や王族が食べているケーキより価値がある。

だって、彼女達が汗水垂らして稼いだお金で買ってくれた物なのだから…..

廃棄奴隷の復帰
廃棄奴隷のうち、病気や怪我をしていた五人の治療が終わっていた。

エレナさんはなかなか優秀な治療師だったようだ、予定より早く彼女達を治してくれた。

「あの、セレス様、私はもしかしてお払い箱ですか?」

最初はその予定だったが、結局は言い出せないままここまで来てしまった。

それにボーナスを弾むと言いながらボーナスをここまで出してなかった。

どんだけブラックな事していたのかな?

自分が恥ずかしくなる。

だから、僕は笑顔で答える事にする。

「そんな事しませんよ! そうですね、そのまま此処で専属医になって下さい!」

「専属医ですか? それはどんな仕事でしょうか?」

「私は此処以外にもセレスホームという施設を持っています、そこの子が怪我した時や病気した時に手早く処置して頂けるようにここに居て欲しいのです」

「それは何時迄でしょうか?」

「セレナさんさえ良ければ終身雇用でも構いません!」

「終身雇用? それって死ぬまで此処に居て良いって事ですか? もしかしてお嫁さんにしてくれるとかでしょうか? 勿論…最後のは冗談です..スイマセン..」

「お嫁さんは、別にして 死ぬまで此処に居て良いって言うのは本当ですよ! まぁ正しくはセレナさんが居たい、そう思ってくれている間はずうっと居て欲しいそれだけですが」

「ありがとうございます! ありがとうございます! 本当にありがとう!」

「いえ、そんなにお礼を言われる事はありませんよ、こちらとしては優秀な治療師を抱える事で何時でも治療が受けられる、これ程助かる事はありません」

「精一杯頑張りますので、これからも宜しくお願いします」

「勿論です、あと、これは約束していたボーナスです、私は忙しく全てお任せにしてしまいますが、これからも宜しくお願い致します」

「はい..金貨が3枚も..良いんですか?」

「勿論です」

「セレス様、せっかくですから、お預かりしていた子に会っていって下さい…それに、お名前もお願いします」

「そうですね、まだ彼女達には名前もつけていませんでしたね」

「セレス様だぁ」

「セレス様いつ見てもカッコ良いね」

「あの、セレス様、病気治してくれてありがとう!」

「あたし、死ぬかと思っていました、もう駄目だと思っていました…ありがとう!」

うん、良かった、本当に良かった。

「皆んなには、これからはセレスホームっていう施設に移って貰うよ、暫くは休んで貰って落ち着いたら他の子に混じって冒険者のお仕事をして貰おうと思っています、他に何かしたい仕事があるなら応援もしますから言って下さいね、とりあえずは最初は冒険者をやって貰おうと思うけど」

「「「「「わかりました」」」」」

「あのぉ、セレス様お名前をお願い出来ませんか?」

「そうだね、君の名前はヒトミでどうかな?」

「ありがとうセレス様」

「君の名前はフタミ!」

「セレス様ありがとう!」

「君の名前はミミ!」

「ありがとう セレス様」

「君の名前はヨノ!」

「ありがとう!」

「君の名前はイツキだよ!」

「ありがとう」

「それじゃ、頑張ってね」

「「「「「はい」」」」」

セレスはまたここでも、自分が気が付かないうちに新しい事をしていた。
怪我した時や病気の時にはこの世界の人間は治療師に頼る。
だが、お金の無い者は苦痛や病気に耐えて我慢するしかない。
何時でも無料で掛かれる治療師がいるなんて破格値の待遇だ。
だが、この事にまだ彼自身も気が付いて居なかった。

新たな問題…さらっと解決
本日も何とか更新しましたが、夜遅いので後日誤字脱字のチェックをします。

【本文】
スラムの子達の冒険者生活が始まり数日後、僕はラットさんに呼び出された。

呼ばれたので行くと、何とギルドマスターまで揃っていた。

「あの、セレス様…少し困った事になりました」

「どうかしたのですか?」

「簡単な仕事をセレス様の奴隷がしてしまうので、子供の冒険者の仕事が無くなりクレームが出てしまっています」

「だけど、依頼は先に受けた物が優先…それがギルドのルールでしょう?」

「そうですが、依頼者がセレス様の奴隷を指名するので、他の子が介入できなくなっています」

「それも、ルール上仕方ないんじゃないですか? ですが、何でうちの子達ばかりに依頼が来るんですか?」

「それは、セレス様の奴隷が優秀だからです」

「優秀?」

「ここからは私が話そう」

「はい」

「簡単に言うと嫌な顔一つしないで笑顔で仕事をする。しかも丁寧..だから、セレス殿の奴隷に仕事をして貰いたい…そういう依頼が増えている、掃除をすれば済み済みまで綺麗にする、買い物をすれば値引き交渉をして安く買いものをしてくる、ドブ掃除は自分の顔が真っ黒になっても掃除する..そこまでするから、街の依頼はセレスホームの子に..もう巷ではそう言われているんだ」

「だけど、彼女達はスラムで暮らしていたんだ、その位のささやかな幸せ位はあっても良いんじゃないかな!」

「私だって解る..苦労してきた人間がようやくささやかな幸せを掴んだ…しかも努力でな..だが、それじゃ他の子はどうなる? 中には親に捨てられて冒険者で生活している子もいるんだぞ」

「解りました!」

「そうか、じゃぁ自重してくれるんだな!」

「しません!」

「何だと!」

「親が居ないならセレスホームで迎え入れます!」

「「えっ」」

「ラットさん、親が居なくて、子供で生活に困っている冒険者を集めて下さい、全部うちが引き取ります」

「解りました…具体的にはどの様にしますか?」

「そうですね、近いうちに、此処ギルドで面接をしましょう! そして希望する全員を私のパーティに入れます」

「それは、親が居なくて12歳以下の子供の冒険者は全部という事ですか?」

「当人が望むならですが、どの位になりそうですか?」

「多分、20人位になると思いますが…」

「なぁ、セレス殿…お前無理してないか? 女ならともかく男が何でそこまで頑張るんだよ!」

「まぁ…笑顔が見たいからですかね」

「そうか、セレス殿が何故、女神に好かれているのか解る気がするな…ならば、その面接には私も立ち合い手伝わせて貰おう」

「有難うございます」

王城にて、

僕が王城に戻ると姫様が待っていた。

「セレス殿、次のセレスホームの代金は王家の方で出させて頂きます」

「どうしたのですか? 姫様!」

「実は、セレスホームが余りに評判になって、キャミエール家の王都での人気が鰻登りなんです! 貴方が私の騎士なので…私の面目は保たれているのですが..マリアンや王は街の評判が気になって居るようなので..是非お願いします」

「解りました、実は新たに冒険者で親の居ない子を引き取る約束をしてしまったので助かります」

「そうですか? 良かった…それじゃ早速、とり掛かりましょう!」

「ありがとうございます、姫様!」

「良いのですよ、セレス、貴方は私だけの騎士なのですからね…キャミエールが3日間で完成させたのなら王家は1日で完成させましょう!」

「そんな無茶な!」

「無駄な面子を気にするのが王族や貴族なのです」

「はい…ですが無理をして無いですか?」

「これは、お父様、マリアン、私と三人がかりですからどんな無茶も通ります」

「有難うございます…マリア様」

「貴方は本当に不思議な人ですね…人の事ばっかり考えて無茶ばかり」

「そうですか?」

「ええ、他にも私を姫と呼んだり、マリア様と呼んだり、そして、まるで猫みたいに一か所に落ち着いていない」

「そうかも知れませんね」

「ねぇ、セレス、もうずうっと一緒に居てとは言いません」

「はい」

「だけど、何があっても最後は私の元に帰ってくる…そう約束してくれませんか?」

「最後なんて言わないで下さい..殆ど毎日帰って来ているのに」

「そうですね…なんだかセレスが遠くに行ってしまう…そんな気がして..不安なんです」

「行きませんよ、遠くになんてずうっとマリア様の傍にいますよ」

「ありがとう、セレス、まずは紅茶につき合って下さい」

「はい、姫様」

セレスはその夜眠るまでマリアと会話を楽しんだ。

魔王と魔族
我は魔王だ。

今迄の魔王とは違う、勇者達との戦いに終止符を打つ、最強の魔王だ。

勇者や人間を滅ぼす為に、我々魔族はワザと負け続けてきた。

邪神様が戦いに出ないなら女神は戦いに出ない、その決まりがある。

又、極端に戦力に差が出ないように女神は我々魔族の魔王を倒せるだけの戦力しか送れない。

女神はまるで計ったように魔王を倒せるが、魔族を根絶やしにならない程度の勇者を送り込んできた。

魔族が勇者に勝ち、人間を滅ぼすにはこの女神の計算を狂わせなければならない。

だから我々は考えたのだ、魔族の戦力の6割で戦ってきた。

あとの4割は温存してその戦力を眠らせて隠してきた。

そして、魔王は必ず毎回生き残らせた。

魔王を名乗って殺されたのは魔族の幹部で一番強い者が変わって殺された。

弱い者では見破られる可能性もあるので仕方の無い犠牲だ。

それにより、その世代の魔王を生き残らせてきた。

その、数は7回。

つまり、今の魔族には私を含み8人の魔王がいる。

そして、戦力は眠らせて、貯め続けた戦力が28割と考えるなら、本来の魔王軍の約3.8倍の戦力がある。

魔王1人と魔王軍を倒すのに勇者達が拮抗するなら、この戦力なら充分すぎる筈だ。

「さぁ勇者の時代はこれから終わるのだ…人の歴史もこれで終わる…これからは魔族の時代だ」

魔王は高らかに笑う。

セレスハウス2号完成
セレスホームの2号は本当に一日で完成した。

しかも、王様、マリア様やマリアンヌ様が肝いりで作った物だから、キャミエール家が作った物より更に大きく2倍近くある。

しかも、細かく話してないのに、病気持ちの親を持つような子にまで対応している、家族部屋まである。

正直言ってしまうと、普通の冒険者が借りている宿やアパートよりずうっと良い。

《王家の本気ってここまで凄いんだ….僕は唖然とした》

セレスホーム2号が出来たので、僕は早速ギルドに向かっていた。

「ラットさん、ギルドマスターを呼んで頂けますか?」

「もしかしてセレスホームの事ですか?」

「はい、もう完成しましたので子供達を集めて頂ければと思います」

「まだ、2日しか経っていないのに…本当にセレス様には驚かされます」

ラットさんが報告をしに行くとギルマスは直ぐに来た。

「一日だと! 本当にセレス殿には驚かされる…面接は何時行おうか?」

「住む所に困っているのでしょう? だったら今すぐにでも行った方が良くないですか?」

「そうだな…おい、リアナ、解っているだろう? 早速、皆んなを呼んできてくれ」

「その子は?」

「この子はリアナだ、住む所が無くてな、セレスホームの話を聞いて入りたくて仕方なくて、ずっとギルドに貼りついていたんだ、ほら外にも何人かいるだろう」

「そう、なんだ…リアナ、お願いしますね、そうだ、これは正式な依頼だよね、外の3人もきて」

僕はリアナを含む4人に銅貨5枚ずつ渡した。

「セレス様…これは何?」

「依頼料だよ、私より君たちの方が冒険者仲間には詳しいでしょう? だから、セレスホームに入らなければいけない子達を連れてきて」

「解かったわ…だけど良いの? これから私達もお世話になるのに!」

「うん、受け取って、君達はこれからは私の仲間になるんだから…先に言って置くね、ようこそセレスホームに」

「「「「ありがとうセレス様」」」」」

ギルマス《あれで天然だからたちが悪いよな、生活に困っている子達に住む所や生活の基盤を与えて、尚且つ報酬まで与える…そしてあの美貌だろう、当人は気が付かないだろうが、リアナ達顔が真っ赤になっていたぞ》

ラット《セレス様ですからね…考えても仕方ありませんよ》

ギルマス《当人は気が付いていないんだろうな…この街の子供の冒険者の大半が、自分のパーティーメンバーになってしまった事に》

ラット《ええ..でも子供達を救う為に純粋な行動ですから、何か言うのは間違いです》

ギルマス《解っているさ…他の人間が同じ事するなら私も調査位するさ》

ラット《ええ》

セレスはこうして、当人も知らないうちに街の中の簡単な冒険者の仕事をほぼ独占してしまった。

セレスハウス2号の受け入れ
リアナ達は依頼として受けたので走り回りながら親の居ない子供の冒険者を集めてきた。

彼女達は思ったよりも優秀だった。

しっかりと親の居ない子供の冒険者だけを集めてきたし、他の要望で親が病気や怪我で働けない家の子もピックアップしてきた。

この世界の子供は元の世界の子供とちがって優秀な事に凄く驚いた。

少なくとも、僕がこの子達の年齢の時にはこんな事は出来なかったと思う。

「リアナ、ありがとう!」

「そんなお礼何て…ただ依頼をこなしただけです」

「そんなリアナ達にプレゼント、先にセレスハウスに行って好きな部屋を選んで良いよ! ただ、大きい部屋は親と一緒の子の部屋だから他を選んでね」

「良いの? ありがとう、皆んな行くよ」

「「「セレス様、ありがとう!」」」

「カギを貸してあげるから先に行っててね、他の人の面接が終わったら私も行くから」

「「「「はーい」」」」

面接は滞りなく終わった。

しっかりと、リアナ達が選んで連れてきてくれたから、実際は顔合わせとギルマスの確認だけだった。

実質、ただの確認だけで終わった。

面接が終わると皆んながソワソワしだした。

そりゃそうだ、今迄住む所に困っていた子達だ、自分の部屋が手に入るのが嬉しいのだろう。

「先に行っている子達がいるから、行って構わないよ? 後で私も行くからね、部屋は早い者勝ちだよー、よーいドン」

「「「「「「はーい」」」」」」

蜘蛛の子を散らすように出て行った。

ギルマス「ありがとうセレス殿、ギルドを代表してお礼を言わせて貰う」

ラット「私からもお礼を言わせて貰います、ありがとう、本当にありがとう」

「私が遣りたい事をただしているだけですから、お礼何て言わないで下さい」

ギルマス《あいも変わらず天然だよな…どれだけの事をしたのか解らないんだから》

ラット《ええ、この国から恵まれない子を殆ど無くしてしまったのに気が付いていないんですからね》

ギルマス「まぁ、なんだ、セレス殿は偉い…それで良いじゃないか?」

「はい、そう言えばラットさんは何処に住んでいるんですか?」

ラット「私ですか? 宿屋を借りて住んでいますが?」

「だったら、セレスハウス2号に住みませんか? 子供達だけじゃ少し心元ないので」

ラット「そうですね、私はセレス様専属の受付ですから、その方が良いかも知れませんね! でも良いんですか?」

「はい、ラットさんには子供のケアもお願いしたいので、家賃はタダで良いですよ! ついでに食費もサービスしちゃいます」

ラット「本当に良いんですか!」

「はい」

ギルマス「ちょっと待って、それなら私も…」

「駄目ですね」

ラット「駄目ですよ、ギルドマスターが住んだら、肩入れしたと思われます」

ギルマス「そそそ、そうだな…仕方ない諦めるとしよう」

ラット「諦めて下さいね」

「それじゃ僕はセレスハウス2号に行こうと思います」

ラット「私も行きます、その部屋とか見たいので」

「そうですね行きましょうか!」

ギルマス「それじゃ、私も視察させて頂こう」

「はい」

これで、子供達はどうにかなったのかな?

だけど、まだまだ困っている人はこの国に沢山いるだろう?

僕は勇者じゃない、世界何か救えない。

だったら、せめて身近な人だけでも救いたいと思う。

世界平和は勇者に任せた。

だから僕は….皆んなが明るく過ごせるように…そういう世界を作っていこうと思う。

それ位しか僕には出来ないのだから。

辺境伯の憂鬱 続苗床勇者
(辺境伯 リットン領にて)

「一体何が起こっているんだ」

リットン辺境伯は報告を聞いて青ざめていた。

別に隣国が攻めて来たわけではない、嫌むしろその方がまだ良かった。

「隣国が滅びただと!」

「はっ、隣国の首都迄出向いた訳ではありませんが国境沿いの軍が全て居なくなり、斥候を向かわせた所、国に向かう途中で皆殺しにされていたと報告を受けました」

「馬鹿なあそこにこちらに目を光らせる為に4万の軍勢が居たはずだが」

「斥候の話では、見渡す位の死体があったと、そしてそこから行けるだけいって見た所…」

「人の死体しか無かった、そういう事か」

「はっ、今現在、そのまま隣国の王都まで向かわせております。詳しい報告はその後に」

「解かった、下がってよいぞ」

リットン辺境伯は溜息をついた。

《困った事になったな》

隣国を滅ぼす位の戦力ともなれば、恐らく魔族位しか思い浮かばない。

あの国は勇者を召喚しない、その代わりに強力な魔道兵器に包まれた魔道騎士が存在する。

その力は一騎当千と言われている。

《それが僅か数日で滅んだだと》

魔族の脅威を改めて思い知らされた。

《身の振り方について考えなければならないな》

隣国が滅んだのだ、恐らく数日中に此処にも攻め込んでくるだろう。

戦って滅びるのか、それとも無様にも逃げるのか選択をしなくてはならない。

続 苗床勇者 幸せな永遠の眠り
僕の名前は 和樹。

元は日本人で今は貴族の見習いをしている。

最初僕は勇者として戦う為にリットン辺境伯に引き取られたが、僕にはその資質が無かったらしい。

一回目の狩でオークに負けてしまった。

その後は、なしくずしでそのまま辺境伯の娘の婿になった。

オーク如きに遅れを取る様な無様な勇者の僕に周りは優しかった。

こんなハズレの勇者を掴んだのに、リットン辺境伯は優しく僕をライヤの婿に迎えてくれた。

ライヤも本当に優しく、役立たずの僕の為に泣いてくれ、僕が死んでしまうから勇者を辞めて欲しいと嘆願してくれた。

異世界の漫画や小説なら放り出されてしまう場面だろう。

そして、こんな役立たずの僕の為に 疾風と言われる剣技の持ち主ライヤも灼熱と呼ばれるほどの魔術師レディスも戦うのを辞めて傍に居てくれた。

彼女達の未来を潰してしまった、それなのに何も言わずに優しく微笑んでくれた。

僕が心細い時にはいつも抱きしめてくれた。

そして体さえも使って僕を慰めてくれた。

だから、僕は勇者に成れないならせめてこの領地を豊かにしたい、そう考えリットン辺境伯の仕事の手伝いを始めた。

幸い、僕はクラスでは頭は良い方だったので、書類の手伝いや計算など出来たので重宝がられた。

恐らく僕はここで….甘かった。

ここは異世界だ…そして魔王や魔物が居る場所だ。

今、リットン辺境伯領は魔物に取り囲まれている。

リットン辺境伯の指揮のもと、
騎士団や魔法兵団は元より領民までもが戦っている。

残念ながら勝てないだろう。

何しろ見渡す場所全てに魔族がいる。

何倍もの数で囲まれている。

悲鳴しか聞こえてこない。

《もう充分生きた》
《普通じゃ考えらえない位愛された》

これはここに来なければ無かった事だ。

《ここに来なければ地味な僕は童貞のままだったろう》

「ライヤ、レディス…僕は臆病だけど、君達の死ぬ姿は見たくない」

《だから》

「いくよ」

《この屋敷にいる人たちは君達以外も僕にとっては愛す人たちだから》

「僕が戦う事で、死ぬことで君たちが1分でも1秒でも永く生きれるならそれで良い」

《勝てる? 勝てる訳ない…ただの意地だ。》

和樹は剣を取り屋敷を出て行く、1人でも多くの魔物を倒す為に。

和樹は戦った。

勇者としての素質があったのかも知れない。

魔族二人を切り捨てた。

碌に修行もしなかったのにオークにさえ遅れをとった和樹が魔族を倒せたのは僥倖と言えるかも知れない。

だが、そこまでだった。

十人を超える魔族や魔物に囲まれた。

《もう死ぬのかな》

もう和樹は戦う力は残ってない。

後は死ぬだけだ。

《終わりだな》

「私の剣は貴方を守る為にあります」

「ライヤ?」

「私の灼熱の炎は貴方の敵を焼き尽くすでしょう」

「レディス? 何で」

「何回体を重ねたと思っているんですか! 死ぬなら一緒です。実力はともかく私の剣は貴方を守るためにある..その言葉に嘘はありませんよ」

「私の炎は貴方の敵を焼き尽くす為にある…その言葉に嘘はない」

「ありがとう」

「「こちらこそ」」

リットン辺境伯の領地はこうして滅びた。

あっさりとすべての人間が殺されてしまった。

だが、その中に不思議な事に笑顔で笑っている男女三人の死体があった。

全てに満足したようにお互いがお互いを庇い合うように折り重なりながら手を握り…

閑話: ある者の過去
私は…美しい者が憎らしい。

私は子供の頃、蝶よ花よと育てられた。

私に仕える者は皆、私を称えてくれていた。

だが、不思議な事に私は1度もこの洞窟から出た事が無い。

私は母親に一度外に出たいと願った事があった。

そんな私に母は、

「駄目ですよ、ネルみたいに可愛い子が外を歩いたら攫わてしまうわ、だから駄目」

そう言われて一切外に出させてくれなかった。

《そうか、私は可愛いのか…なら仕方ないのね》

仕方なく納得した。

だが、こんな暗闇の中に居るのは正直つらい…だけど母が結界を貼っていて出る事が出来ない。

そこまでして私を外に出したくないらしい。

そこまで私は可愛いのか?

仕方なく、仕えている女に聞いて見た。

「ねぇ、私ってそんなに可愛いのかしら?」

「私は、貴方程綺麗な女神は見た事がありません」

「えっ、私は綺麗なの、そして女神って何?」

詳しく、聞いて見た。

《そうか、私は女神だったのか、それじゃ仕方ない》

「私が女神だから、ここから出られないの?」

「正確には未来の女神様です。」

「そうなの? いつか私は女神になるのね?」

「はい、女神様になれば自由になれる筈です..それまで我慢して下さい」

「そう、だけど私は退屈なのよ、此処には何も無いんですもの!」

「それなら、今度絵本を読んで差し上げます。」

「絵本って何?」

「えーと、楽しい物語を絵と共に描いた物です」

「そう楽しみにしている」

私は沢山の絵本をねだって読んで貰った。

その中でも女神と勇者や王子の話がお気に入りだった。

だって、私は女神ですもの、いつか私の前にも美しい勇者や王子が現れて結ばれる。

楽しい未来しかない。

だったら、この生活も我慢できる。

最近の私は、絵本にあきて唄を好きになった。

私に仕える者が口ずさんでいたので何か聞いたら唄だと知った。

面白そうなので教えて欲しいと頼むと教えてくれた。

仕える者の話だと私の唄は歌姫のように綺麗な歌声なんだそうだ。

「歌姫って何?」

ある時、私が夜に眠れずに唄を口ずさんでいると、外から声が聞こえて来た。

《誰だろう?》

「そこに誰かいるの?」

「こんな所から綺麗な唄声が聞こえて来たから気になってきたんだ」

「そうなの?」

「うん、所で君はなんでこんな所にいるの?」

「解らない、だけど私は此処に居なくちゃいけないんだって」

「ちょっとだけ外に出てみない?」

「出たくても結界があるから無理ね」

「そうなんだ、この結界…やっぱり中には入れないか」

「そうね」

「ねぇ、君の名前は何て言うの?」

「私の名前はネルよ」

「そうなんだ、僕の名前はアイン、宜しくね、明日も此処に来て良い」

「ええ、良いわよ、だけどお母さまや仕えている者には見つからないようにしてね」

「解かった..明日もくるね」

「待っているわ」

それから、毎日アインは周りが寝静まる頃に私の元におとづれてきた。

今迄と違って毎日が楽しくなった。

凄く楽しい。

「ねぇ、ネル、君はどんな人なのかな? 声は凄く可愛いけど…」

「私は良く解らない、だけど周りは私程、綺麗な女性はいないっていうけど」

「やっぱり…僕頑張ってお金を貯めて、この結界を破る魔道具を用意するよ…暫く会えないけど迎えに来たらお嫁さんになってくれるかい?」

「うん、わたしアインのお嫁さんになる」

「じゃぁ、暫く会えないけど..頑張るよ」

「頑張ってねアイン」

それから又私は寂しい生活が続いた、だけどアインとの楽しい生活を夢みてたから以前の様な悲しさは無かった。

半年くらいしてようやくアインは来てくれた。

「ネル 寂しい思いをさせてごめんね、待たせたね…結界封じの魔道具が思ったより高くてお金がなかなか溜まらなかったんだ」

「ううん、アインがきてくれると信じていたから、寂しくなかったよ」

《お母さま、皆んなごめんね、だけどこんな暗い場所に閉じ込められた生活は嫌なの..私はケインと一緒に幸せになります》

結界が溶けてアインが見えた。

《ああなんて可愛らしいのかしら、王子様のような華やかさは無いけど凄く可愛らしい》

「アイン」

《あれっ、なんでアインが固まっているの…そう私に逢えて緊張しているの困った人、すぐに一緒に逃げなくちゃいけないのに》

「化け物…」

「アイン..化け物って」

「寄るな化け物…くるな」

アインが遠ざかっていく、私を恐怖の目で見て怖がりながら….

《私っていったい…..アイン逃げないで》

「アイン、逃げないで」

「殺さないで、ひぃー」

私は、アインを追い掛けるのを辞めた。

私の横を黒い影が通り過ぎた…アインの首が地面に落ちた。

「私の可愛いリリ、こんな所にいちゃ駄目ですよ帰りましょう?」

「あの、私、化け物なの?女神じゃないの?」

「そんな事ありません、貴方は私達の希望の女神 邪神リリ様です、あの者がただの人間だっただけです」

「じゃぁ王子様がいつか現れるかな? 良い子にしていたら迎えに来てくれるかな?」

「はい、だから良い子にしているんですよ」

「うん」

それから月日が流れた。

………王子様が迎えに来るなんて嘘だった。

母だと思っていた者も、周りの者も魔族だった。

女神は女神でも私は邪神、人に愛される訳が無い。

それでも私は…幼い頃の夢が忘れられない。

叶わぬと思いながらも….今も….

滅ぶ世界
セントハイムには次々と勇者の派遣を望む近隣諸国の使者が来ていた。

だが、セントハイムはその要望に応える事は出来なかった。

自国のリットン辺境伯領が滅ばされ、その生き残りから聞いた情報だと、どう考えても規模が違い過ぎる。

少なくとも、今迄は幾つもの国に同時に攻撃を掛けたりすることは無かった。

又、セントハイムの国境の守護を担う、リットン辺境伯は魔族相手に簡単に負けてしまうような者ではない。

そんな弱い者には国境近くの領地等与えはしない。

しかも、リットン辺境伯の領地に魔族が踏み込むには隣国を経由しなければ入れない。

そう考えるなら、隣国を滅ぼしてから踏み込んできた、そう考えるのが妥当だろう。

隣国からの使者が来ていないのだ、隣国を短時間で滅ぼして、攻め込んできたのだろう。

そうとしか考えられない。

なら、まだ、未熟な勇者等出した所で負けるだけだ。

そして、恐らくはセントハイムに匹敵する隣国が滅ぼされたのだ、助けを求める使者達の国はもう滅んでいるかも知れない。

セントハイムの国王ハインリッヒ六世は考える。

《もう人の世は終わりだな…最悪、この国に居る人類が最後の人類かもしれぬ》

「マリアンヌはおるか?」

「ここにおります!」

「もうこの国、いやこの世界は終わりじゃ、お前はどうしたい?」

「どうしたいとは?」

「例え、勇者を率いてお前が戦いを挑んだ所で負けは決まっておる、そして逃げるにしてももう逃げ場はこの世界の何処にもない…最後位は自由にして良いのだ」

「解りました、私は…勇者達に相談して身の振り方を決めます」

「マリアはどうしておる」

「現状報告をセレス殿達に伝えにいっております。その後の身の振り方は自分で決めるでしょう?」

「自由にして良いと伝えてくれ」

「解りました、あの、父王様はどうするのですか?」

「儂は、この国の王じゃこの国と運命を共にする、だが、最後に教皇と話をして女神様に意見を仰ぐつもりじゃ」

「この状態ですから、なんらかの神託が降りるかも知れません、もし何か解りましたら教えて下さい」

「うむ」

この世界の悪夢が始まる。

そして、その悪夢は勇者や女神であっても救いはない。

女神マインの憂鬱
「そんな馬鹿な、何でこんな事になっているのよ」

その日、女神マインは焦っていた。

どう考えてもおかしい、これ程の魔族が居るはずがない。

そして、複数の魔王が存在などするはずがない。

だが、実際にはいる。

ここに及んで初めて女神マインは真実が解った。

魔族は力を蓄えていた、死んだのは魔王ではなく別の人物だった。

完全に騙されていた。

だが、これは明らかに汚い手ではあるが「ズルでも無いし反則でもない」

ルールの中の盲点を巧みに利用しただけだ。

だから、自分が手を出すわけにはいかない。

例え人類がその結果滅んでしまっても神のルールに則っている以上手は出せない。

自分が手を出せば邪神も手を出してくるだろう

《セレスごめんなさい》

マインは自分のふがいなさを責めて一人の少年の事を思い浮かべていた。

セレス 突撃
セレスは今、小高い丘の上にいる。

魔族が攻めて来た、その噂を聞いたから。

そして、既にほぼ負けが決まった、その情報を掴んだからだ。

魔族は醜い…それが当たり前のこの世界の認識である。

だが、セレスの「腐った目」には美女軍団にしか見えない。

その為、恐怖は他の者に比べると薄い。

美女や美少女、それに混じった醜い魔物が徒党を組んで城壁の外にいる。

恐らく命令が下れば、すぐに城壁は崩されて流れこんでくるだろう。

セレスは考えている。

《この国には好きになった者が多すぎた》

黒木で居たころであれば逃げ出していただろう。

だけど、この国には自分を慕ってくれる者や愛してくれる者が多くいる。

《やはり、僕は勇者の資格は最初から無かったんだな》

僕がここに居るのは勇気からではない。

怖いからだ、大切な人や仲間の死が見たくないから。

それを見るくらいなら死んだ方がましだ。

だから…最初に死ぬのは自分で良い。

他の誰が死ぬのを見るのも嫌だ….

だからここに居る。

誰よりも早く魔族と戦うために、そして誰よりも早く死ぬために。

セレスはそれを臆病と考えていたが…それこそが自己犠牲…それに気が付いていない。

気が付くとセレスは城壁を飛び下り、魔族へと向かっていった。

戦えないし戦いたくない。
セレスは魔族相手に向き合ったものの、この戦いは膠着していた。

セレスから見た魔物や魔族の殆どは美少女や美女にしか見えない。

幾ら相手が敵だと解っていてもどうしても心が割り切れない。

魔族側からしても、絶世の美少年相手には本気で攻撃が出来ない。

まるでお互いが手加減をしたような小競り合いが続いていた。

《どうしたら良いんだ、どうしても視覚が相手を斬るのを拒んでしまう》

敵だと認識してもアイドル以上の美女、美少女軍団、心が鈍るのは仕方ないだろう。

魔族や魔物にしても戸惑っている。

目を引くような美少年、これが自分達を殺しに来るのなら戦えただろう…だが明らかに手加減をしてくれている。

その証拠に…斬り込んでこないし、防御しかしていない。

そうこうしているうちに、セレスが敵を美しいとみなしたためにスキル、意思疎通が起動した。

「人間、何で我々を殺しに来ない」

「何故手加減をしている、時間稼ぎか…」

魔族の吠え声が、まるで美少女の声…アニメのヒロインの声に聞こえてくる。

《ヤバイ》

だが、魔族側には….セレスの声が響いてくる。

「こんな綺麗な人殺せないよな…」

「何で、美少女が襲ってくるんだよ…」

魔族側が最初は男を使った巧妙な罠なのか?

そう思っていた。

《だけど、おかしい、これ程の美少年を囮にするだろうか?》

嫌、絶対にしない、こんな美少年を囮にする位なら、死ぬ気で自分なら特攻する。

「なぁ、人間の少年、私がどのように見える?」

セレスと向き合っていた魔族の一人が言い出した。

「凄くお綺麗な、騎士にしか見えませんが…ですが..敵だから」

「ちょっと待て、それは本当にそう思って言っているのか? 嘘じゃ無いだろうな?」

「嘘は言っていません、ですが敵である以上僕は貴方を…」

「待って、いや待ってくれ! 私も、お前とは戦いたくないから、なぁその剣を引いて少し話さないか?」

「ですが、他の方は違うのでないですか?」

セレスの周りの魔族や魔物がその獲物を下げた。

「なぁ、皆んなも武器を下げただろう?」

「解りました」

セレスも剣を下げた。

「「あっやっぱりセレスちゃんだ」」 

そんな声が何処からか聞こえてきた。

魔王カーミラとの取引き
「本当に僕が君にとって美少女なんだね…だったらさ世界の1/16をあげるから僕の物にならない?」

「あの、魔王様…普通そこは世界の半分をあげるからって言う所じゃないんですか?」

「魔王様? セレスも固いな。僕の事はカミーラ、そう呼んで貰いたいな!」

「はい、カミーラ様」

何が起きたかと言うと….

先程の戦いはあの後、直ぐに休戦した。

僕に声を掛けてきたのは、てんことレイラさんだった。

魔族の隊長と話しが始まると、てんことレイラさんは僕の性格について一生懸命話始めた。

気が付くとそこに、オークのお姉さんやオーガの女性が加わり、僕が騙しているのではなく、本当に魔物や魔族を好んでいるのが解って貰えた。

そして、剣も取り上げられずに、この場を指揮している魔王の下に連れてこられた。

僕は、自分御仲間だけでも助けたい。

薄情かも知れないがもう人間の世界は終わりだ。

見知らぬ人の命なんて僕は知らない。

だけど自分にとって大切な人、自分にとって大切な者達だけでも救いたかった。

その交渉が出来るかも知れない…最後のチャンスだ。

そして….冒頭に到る。

「カーミラ様…うん良い響きだね! だけど様も要らないよ? カーミラ、もしくはゴブリン達の様にカーミラちゃんって呼んでね」

「解りました…カーミラちゃん」

「うん、少し固いけどよいや…あのね、この世界には魔王が全部で8人居るんだよ! 世界を征服した後は世界を8人で分けるからから僕の取り分は1/8なんだ…だから世界の1/2は上げられない..だけど、僕の取り分の半分の1/16ならあげるよ…それだけあれば、多分今生きている人間の全てを救えるんじゃないかな? 少なくとも君が守りたい人全ては守れるよ…どう?」

《良かった…これで皆んなが守れる》

「解りました、僕はカーミラの物になります…だから世界の1/16を僕に下さい。その代わりその1/16には必ず、セントハイムを入れて下さい」

「解ったよ…約束するよ」

「ありがとうございます、カーミラ」

「うん! お安い御用、お安い御用…未来の花婿さんの為ならね」

こうしてセレスはカーミラの物になった。

残った、大切な者達を守るために。

女神マインと邪神リリ
セレスが魔王カーミラの物になった頃、女神マインと邪神ネルが天界で揉めていた。

そしておかしな事に文句を言っているのは女神マインではなく邪神ネルだった。

「女神マイン、よくも、よくもやってくれたわね!」

「私達は敵なのよ? お互いのテリトリーに行き来するのは重大な違反行為、それに今回イカさまをしたのは貴方じゃなくて? いったい私が何をしたと言うのかしら? リリ!」

「よくもまぁ抜け抜けと、これよ、これ!」

セレス
ジョブ (人造神)

「セレスがどうかしたのですか?」

「どうかしたのじゃないわ…私が真剣に世界について考えているなか…貴方、自分の男を作っていたわね、、、このネクロフィリア、死体愛好者」

「気が付いたのね」

「気が付くわよ! 魔物を愛する美しい少年が居ると思ってみて見たら、セレス、スタンピートが居るんだから、神ですら創造出来ないという美少年が居るんだもの驚くわよ」

「それで、どうしたのかしら? 何か問題でも?」

「貴方、邪神でなく女神なのに可笑しいわ! 死んだ美少年の死体をコレクションしているなんて」

「別に、天界のルールでは違反じゃ無くて問題無いわ」

「確かに、でもやり方が汚いんじゃなくて! わざと何もしないで彼に善行を積ませようとしたでしょう?」

「そんな事していませんわ」

「なら、何で本来の勇者ではなく彼にばかり啓示を与えたのかしら…あんだけ頑張って自己犠牲をしている人物ですから…次の転生では、恐らく下級神になるでしょうね!」

「それが何か?」

「そうしたら、彼を造ったのは私だ…とでも主張して、自分の物にするのでしょう?」

「当たり前じゃない…むしろしない理由がないでしょう!」

「ほらね、結局貴方は、自分の男が欲しい為に一つの世界を犠牲にしたのよ」

「ええ否定しませんわ! だってここにずっと一人で居るのは寂しいんだもの、この寂しさから逃れるなら1回位の勝利は邪神の貴方に譲るわ…でも本当の勝者は私! 貴方はこれからもずうっと一人なのに….私には暫く待てば隣に愛しいセレスが同じ神としていてくれるんだもの…」

「そうね…」

「そう、そしてきっとセレスは貴方を恨むでしょう? だって邪神なんだもの、仕方ないわね」

「あぁ…確かにそうね」
《このままじゃ済まさない》

そして邪神リリは立ち去った。

停戦宣言と国王
魔族よりセントハイムに使者が来た。

いよいよ最後の時が来たのか、セントハイムの王ハインリッヒ六世は思っていた。

多分、この後開戦の宣告を受け本格的な攻撃が始まるのだろう。

相手は魔族だ、降伏も話し合いも無駄だろう。

だが、使者は使者だしっかりと無礼を働かないで王の元へと案内された。

「使者殿、この度はいかなる要件でここセントハイムに来られたのじゃ」

「魔王である、カーミラ様からの宣言を届けに来た、最初に伝えて置く我々魔族はここセントハイムを攻撃するつもりはない」

「本当なのか、それは!」

「うむ、セレス殿に感謝するのだな、あの方が自分の身と引き換えにここの統治権を貰ったのだ」

「それは一体どういう事じゃ…セレス殿がどうかしたのか」

「同じ事を言わせるな…自分の身と引き換えにこの国と残りの人間の助命を頼んだのだ、魔王であるカーミラ様はそれを受け入れた…それだけの事だ」

「それはセレス殿が自分の身と引き換えにこの国の助命をお願いした…そういう事で宜しいのですかの?」

「うむ、その通りだ、魔族はここセントハイム周辺をセレス.スタンピートの物として人間側が攻撃を仕掛けない限り不可侵とする。以上だ」

「使者殿、解り申した」

セントハイムの王ハインリッヒ六世は、それを受け入れるしか無かった。

戦っても皆殺しにされるだけだ、むしろたった1人の犠牲で国が助かるのだ国王として選ぶ道は決まっている。

「結局、何でもかんでも彼に押し付けてしまった、マリアには何て詫びれば良いのか解らぬ」

この国が助かったという安堵感と共に一人の人間に全てを押し付けてしまったという罪悪感が押し寄せてきた。

セレス軍団と死の女王
「そんな、セレスが…そんな」

マリアはは父であるハインリッヒ六世から話を聞くと目の前が真っ暗になった。

セレス一人でこの国が助かるのだ、王女として選ぶ道は解る。

だが、そんな事は納得できなかった。

「王女としては、1人の犠牲でこの国が助かったのだから喜ばなくてはいけないのでしょうね…ですが私にはそれは出来ません」

ハインリッヒ六世とて同じだ。

彼がこの国の為にどれ程尽くしてくれていたかは解る。

戦って勝てるなら直ぐにでも軍を送ろう…だが絶対に勝てぬ死地に騎士団や勇者を送る事は出来ない。

「ならば、マリアよどうするのだ!」

「私一人ではなく、セレスを慕う者全員でこれからの事について考えようと思います…まずはこの王冠をお返し致します」

「それは王族を辞めるという事かの!」

「はい、勿論軽はずみな事は致しません、セレスを慕う者を集めて魔族の元に様子を見に行きます…その扱いによっては…」

「解かった、マリア、その冠は預かる…だが今直ぐに王族を辞める事は認めはしない、あくまで預かるだけだ」

「解りました」

マリアは勇者でありセレスの仲間の真理、翔子、幸子を連れてセレスハウスへ向かった。

勿論、キャミエール公爵とレイスには手紙を送った。

道中、マリアは三人に事と次第を話した。

「そうなんだ…そうなんだ…だったら、幸子は…魔族を皆殺しにしてくる」

「何を考えているのですの? 貴方1人が行った所で返り討ちですわよ!」

「そう、翔子ちゃんは冷たいんだね…何もしない何て」

「そんな事言ってませんわ…私くしだって魔族何て皆殺しにしたい…だけど」

「そう、戦う力が無い…」

「真理さん!」

「どんな手を使った所で魔王1人倒せないでしょうね…冷静になって幸子」

「そうだね..ごめん」

「だからこそ、これからセレスハウスに向かうのです. 少なくともあそこには私達以外のセレスを慕う者や愛する者がいます。そしてキャミエール公爵、レイスにも手紙を書いたから合流してくるはずです、まずは皆んなでこれからの事を考えましょう」

「「「はい、マリア様」」」

「セレス様がそんな事になっているなんて」

「解りました、セレス様が助かるなら私の命は要りません、存分につかって下さい」

「歩美たちは奴隷だから、命その物がセレス様の物、セレス様なくしては生きて行く意味がありません」

結局、セレスハウスの者達は思った以上に攻撃的だった。

恐らく、マリア達が止めなければすぐにでも魔族に向かって行きかねない。

そして、そこにキャミエール公爵とレイスが合流する。

「結局は、セレスの為に死ねるかどうかだけじゃない…私はセレスの為なら喜んで死ぬわよ!」

「レイス..気持ちはわかるが、その後この国はどうなる?…セレス殿が守ろうとしたこの国が滅ぼされる…それで良いのか!」

「それは」

「貴方たちは何もしないで良いわ…私が魔族たちを皆殺しにしてくる…だから貴方達は暫く目を瞑っていなさい」

その時、閉ざされたドアから声が聞こえた。

「何をいっているの?馬鹿な事言わないで」レイスが怒鳴るように言う。

「うふふふふふふふ、出来ないと思う? 私は死の女王コーネリア、私を見た者は魔王だろうと勇者だろうと死ぬのよ!、今からこのドアからでるわ…だから目を決してあけてはいけません」

「本当にコーネリアなの?」

「そうよ、あの忌まわしい女神に初めて感謝したい気持ちになったわ..さぁ目を瞑りなさい」

そして、死の女王はそのまま扉を開けて飛び出していった。

死の女王は周りの人間が石になるのを構わず…魔族の元へ向かっていった。

全ては無に帰り 邪神は笑う (最終回)
邪神リリはは自分より上位の神に会いに来ていた。

「私は卑怯な事をしてしまいました…だからその責任を取りたいと思います」

「何を言っているのだ邪神リリ、魔王の事なら許容内ではないか、あの世界は魔族側、つまり貴方の勝ちだ」

「その勝ち方に納得がいかないのです。あれは余りに卑怯すぎます」

「確かに卑怯ではあるが、あの位はやる者もいる、だが邪神リリは納得がいかないのだな」

「はい、だから、あの勝利を取り消して欲しいのです」

「それで良いのか?」

「はい」

「と、いう事は、勇者召喚された時まで時間は引き戻すとして、それでも八人の魔王が居るハンデはどうする事も出来ない…それはどうするのだ、同じ様になると思うのだが」

「それは…この戦いは無効にしたいと思います…そう、魔族側も人間側も勝ち負けが無いようにしたい、そう思います」

「まぁ、この戦いは君の勝ちだ…自由にするが良い…問題がないだろう」

そして、時間は巻き戻される。

「あれ、僕は..」

「セレス、目を覚ましましたね」

「僕は魔王カーミラ様に仕えていたはず…」

「そうです、ですが、私が貴方がこの世界に召喚された直後に巻き戻しました」

「そんな事が出来るのですか? 貴方はいったい? もしかしてマイン様以外の女神様?」

「そう、私は邪神リリ、魔族側の女神です」

「その邪神様が何故? せっかくの魔族側の勝利を捨てるのですか?」

「私は貴方の行動を見ていました…そして新たな可能性を見出したのです」

「可能性?」

「そう、魔族と人間が楽しく手を取り生きて行く世界…それこそが本当に良い世界なのではないか? 貴方を見てそう思ったのです」

「本当ですか?」

「はい、ゴブリンや魔族に呪われた死の女王、果ては魔王とまで仲良くなった貴方の姿を見て思いました、そして私は貴方にその様な世界を作って貰いたい、そう思ったのです」

「…..」

「だから、私は魔族の勝利を捨ててまで上位神に頼んで時間を巻き戻したのです…それは本来なら邪神や女神とてやってはいけない事です」

「それではリリ様が…」

「良いのです…私がそんな世界を見てみたいそう思っただけですから」

「そうですか…ありがとうございます」

「そこでセレス、貴方には前の世界での経験と記憶を持った状態でやり直して貰います。恐らく貴方が目を覚ました時は召喚された時と同じ状態からのスタートになります。 魔族と人間の懸け橋になって下さい…頼みますよ」

「はい」

「最後に私からも加護を与えます、私の加護は女神にも人間にも見えないようにします。女神と邪神の加護を持つのです…その力は勇者や魔王を超える力となるでしょう…さぁお行きなさい。」

「はい」

………..

僕は目を覚ました。
だが、周りを見回すと他の生徒は倒れたままだった。
前と同じ様に会話がはじまった。
さぁ、起きるか。

「あの大丈夫でしょうか?」

「あぁ大丈夫です…貴方は一体?」

麗華が話しかけてきた。

ここから又新しい僕の冒険が始まる

                         FIN

「くふふふふふふふ マインどう? 悔しいでしょう?」

「これで振り出しに戻ったわよ? いえ私の勝ちかしらね! だって貴方は魔族を倒す為に勇者達を送り、そして彼を女神の騎士にした。 だけど、彼は…醜い者が綺麗に見えるのよ…そう、人間と魔族や魔物、どちらの方が美しくみえるのかしら? 勿論、魔王や魔族たちにもこの事は伝えるわよ! そして魔族を倒そうとするマイン貴方と、魔族と人間が楽しく過ごせる世界を作って欲しいという私…どちらがよりよい神に見えるのかしら…」

「これで、次の転生の後は…セレスは私の物…寂しい思いをするのは貴方よマイン…私、貴方と違って加護の出し惜しみはしないからね…彼には彼の愛する者達と一緒に国でも作って貰おうかしら? 充分今世を楽しんで貰ってから、ここに来て貰おう..うん、それが良いわ」

「楽しみに待っているわ…セレス」

「セレスは リリの物….」