今の僕は….
僕の名前は北上士郎。 (キタガミ シロウ)
今現在の僕は、一部のオタクの友達からは、変な意味で尊敬されている。
だが、クラス、それも学園の殆どの人間からはキモチ悪がられている。
特に、女子からは物凄く嫌われていて悲しい話..最近では名前で呼んで貰えたことは無い!
その理由は、オタク..それも、美少女物が好きで、その中でもギャルゲーが好きだからだ。
そりゃ、女の子に嫌われて当たり前だ、ほぼ殆どの休み時間をギャルゲーや美少女の話しかしていないんだからさぁ..自分でも解るよ!
だけど、これは半分仕方ないと諦めている。
だって、僕のあだ名は、ギャルゲーキングなんだから…そう、オタク仲間から言われる位にギャルゲーの天才なんだ。
だから、このクラスのオタクだけでなく…学園中のギャルゲー好きのオタクが僕の元に攻略方法やヒントを聞きに来る。
昔はギャルゲーを良く買ったが…今は買う事は殆どない。
何故なら、新しいギャルゲーが販売されると、必ず誰かが僕に貸しに来るからだ。
僕はギャルゲーの殆どを1晩で攻略できてしまう。
その為、この学園のギャルゲー好きの間では、誰かが新作が出ると必ず僕に貸す、そういうルールが出来上がっている。
そして、次の日は返して…その後は、攻略法を皆んなが聞きに来る。
そういう状況だ。
休み時間の多くはギャルゲー好きに占領されているので…普通の友人は出来ない。
だが、僕は…本当はオタクでは無い…なれる者なら..リア充になりたい!
自分が、攻略したゲームの主人公のようになりたい!
もうじき..中学の三年間が終わる、高校に行ったら..新しい生活が送りたい!
そして…出来るなら彼女が欲しい!
切実にそう思う!
家庭でもギャルゲーのように生きる 決意!
以前に僕は考えた事ある。
それは「どきどきメモリアル学園」というギャルゲーをした時の事だ。
この作品は古い作品なので主人公の日程を1時間単位で入力して行動するゲームだった。
だけど、ヒロインの攻略が凄く難しく、簡単なヒロインの攻略でも甲子園で優勝しなければならなかった。
勿論、メインヒロインの、「古橋 志保ちゃん」を攻略する難易度は高く、正にパーフェクト超人にならなければ無理だった。
僕の作戦は簡単だ、このギャルゲーの古橋志保を攻略した時に近い生活を送ってみる事だ。
勿論、そんな事で完璧な、リア充に成れるなんて思わない!
だけど、頑張れば「キモイ」からは脱出出来るかも知れない!
とりあえず…目指せ「キモイ」脱出だ!
幸いうちの学園はストレートに高校に行ける、だから、受験の必要が無い。
今は中三の1月、2月に期末テストはあるけど、進学に関係ないから無視して大丈夫だ。
中学のような悲しい生活を送らない為に..楽しい高校生活を送る為に頑張ろう!
明日から、その下地作りをして行こう。
その為にはこれからはギャルゲーの攻略は断るしかない。
その為の手段はもう用意した。
今日は、寝る前の一時間を、魅力のアップに使った。
やり方は良く解らない、そこまではゲームに無かった..鏡を見ながら買って来た雑誌のモデルと自分を見比べて一日が終わる。
次の日、僕は朝5時に起きた。
ドキめもでは朝5時からスケジュールがスタートして1時間単位で予定が組める。
まず、最初の一時間は勉強に充てて見た..今日の授業の予習をしてみた。
一時間じゃぁ..大したことは出来ないな。
次の一時間は運動の時間にあてた..ただジャージに着替えて軽くジョギングをして公園に行って柔軟をして帰って来た…実際は家に帰ってからシャワーを浴びるので40分位の運動にした。
家に帰るともう母さんが食事を用意してくれていた。
「あれっ士郎どうしたの? 急に運動なんかしちゃって?」
さぁ、ギャルゲーの始まりだ..母さんは攻略キャラでは無いけど..練習だ。
僕は、ギャルゲーのつもりで答えた。
「もうオタクは辞めようと思ってさ..少しは真面な息子になるよ!」
考えたけど、母さんの攻略なんて無い..悪い回答ではないと思いたい!!
「そう、少しは考えるようになったのね..頑張りなさいね!ちゃんと続くようならご褒美あげるから!」
悪くなさそうだ。
「ご褒美はいらないよ…今迄が駄目だっただけだから..有難う母さん!」
「士郎、熱でもあるの?」
「そんな事ないよ?」
「そう…」
母《士郎がおかしい..何かあったのかな? まぁ三日坊主にならなければ良いんだけど》
「母さん..いつも美味しいご飯ありがとう..この卵焼き..美味しいよ」
母《珍しい事もあるのね..まぁ褒められて悪い気はしないけど》
「そう、ありがとうね!」
「お母さん…キモ兄..おはよう」
相変わらず、妹の歩美はテンションが低い..朝が苦手だから仕方ない。
此奴には物凄く嫌われている..此奴は僕と違って、ややリア充だから..
さぁギャルゲー脳発動だ。
「おはよう歩美!天使のような笑顔だね!」
やはり、不味かったか? 僕は好感度0では無く-1000位だからな..
「…キモイ、キモイ、キモイ..あんたは物凄くキモイ笑顔だわ!」
凄く怒った顔で怒鳴る様に言われた。
仕方ない…好感度が-1000位なんだから。
「ごめんね..これからは少しずつだけど..変わろうと思うから..」
「そう..」
僕は、食器を流しに片づけた、昨日までの僕ならしない。
「それじゃ、母さん歩美行ってきます!」
「あの母さん、キモ兄何かあったの?」
歩美《キモ兄がおかしい..今日は頭にフケがなかったし歯も白かった、少し真面だった..》
「さぁ、解らないわね..だけど、何かやる気みたいよ?」
母《三日坊主にならなければ良いんだけど..》
「そう..だけど多分続かないわね、キモ兄じゃね!」
歩美《あの、キモさは筋金入りだから..多分無理ね》
「そうね..だけど、真面になろうとした、それだけでも今迄と違うんじゃない?」
「はぁ..少しでもキモさが無くなるなら良いんだけどね..」
ボッチになる..更なる最下層へ
今日から僕は変わるんだ!
さぁ..頭の中をギャルゲーに切り替えるんだ..どうしよう!..体が震える….
登校中..最初のクラスメイトが居た..ギャルゲーの主人公はどうしていた..ちゃんと挨拶していただろう!
「おはよう!」
僕は笑顔で挨拶した..
「おはよう!….ゲッ キモ士郎!..挨拶して損した」
僕 《まぁこんなもんだよな…》
「はは..キモ士郎は酷いな..まぁしょうがないや..じゃぁね!」
女生徒 《キモ士郎が挨拶..何なのよ》
「おはよう!」
「ゲッ..キモ士郎が何で私に挨拶する訳…キモイんだけど」
「ごめんね..でも挨拶位は良いでしょう?」
「したいなら..勝手にすれば..はいおはよう..これで良い?」
「うん..ありがとう」
僕 《まぁ..人気最底辺だから仕方ないな..今迄の自分が悪いんだ》
その後も、少しでも顔見知りの女の子に挨拶をしてみたが…概ね同じような感じだった。
流石にマイナススタート..我ながら涙が出てくる。
「おはよう!ギャルゲーキング..攻略して欲しいギャルゲーがあんだけどお願いして良い?」
「ごめん..もうギャルゲーの攻略は辞めたんだ..」
「なんでさ?」
「ほら、この眼鏡! ゲームのやりすぎで眼精疲労により視力が低下してしまって..もうゲームは出来ないんだよ!」
僕《我ながら..苦しいいい訳だな..》
「そうか…確かにゲームし続けたら目には悪いよな..毎日連続じゃ目も悪くなるか..仕方ないな」
「悪いな!」
こうして僕はギャルゲーキングの名前を返上した。
次の時間に、僕が目を悪くしたことは学校中に広まった。
「何か悪かったね」
とか皆んな、優しく言ってくれた。
だけど…よく考えたら僕はギャルゲーを通した友達しか居なかったじゃん。
という事は…ボッチ確定?..そうだボッチだ!
やばいやばいやばい…更に底辺に落ちたのか!
だが..仕方ない..上にあがる為に必要な事だ。
そして、僕は..ボッチになった。
努力 1日目 自分のなりたい自分になる為に
僕のボッチ生活が始まった。
とりあえず、マイナスの評価をプラスに変えなければ、ギャルゲーの主人公になれない。
頭をギャルゲー脳に切り替える。
重そうなプリントを持っている女の子がいる。
案外、現実社会にもギャルゲーと同じシュチェーションはある。
「重そうだね、持ってあげるよ!」
僕 《これ位なら嫌な顔はされないだろう!》
「ありがとう..げっキモ士郎かよ..」
「僕なんかに持って貰っても嬉しくないと思うけど..重いよりはよいでしょう?」
僕 《これ位でもあんまり良い反応されないのか..元が元だからな..仕方ない》
「そうだね、ゴメン..その持ってくれてあんがとね」
僕 《うん、一応は感謝された》
「どういたしまして!」
………………..
……..
もう、ギャルゲー仲間は話しかけてこないのでぼーっとしていた。
そうか、今日の日直は二神さんか?
背が低いから、上の部分を消すのが大変そうだな…
僕は、もう一つの黒板消しを持つと上の部分を消し始めた。
「あのさ..何でキモ士郎が黒板消している訳?」
僕 《えーと、こういう場合のギャルゲー対応はと…》
「消すのが大変そうだから、手伝っただけだよ..余計な迷惑だったらごめんね!」
「そう、なら良いや..ありがとうね」
「うん、どうしまして!」
………………………
……………..
さてと、次は何をしようかな?
とりあえず、授業は真剣に聞こう。
「おや、北上、真剣に授業を聞いている様じゃないか? だったら次の訳はお前にやって貰おうかな?」
「はい、彼は、彼女を愛しています。そして何処にデートへ誘おうか一生懸命考えた」
「うん、正解だな..良く予習をしてきたな..この調子で頑張れ」
「はい..有難うございます!」
教師 《ほう、あの北上が頑張るなんてな、三日坊主に終わらなければ良いんだけど》
案外、授業中真面目にしているのって辛いな..初日のせいかヘトヘトだ..部活には入っていないから、さぁ..帰ろう。
結局、今日は、二つしかイベントは起きなかったな。
「母さんただいまー」
「お帰りなさい、士郎」
「歩美も帰って来ていたんだね! ただいま!」
「おかえり…」
僕 《ちゃんと挨拶すれば嫌々でも挨拶はしてくれたんだな》
「うん、ありがとう…」
それだけ言うと僕は恥ずかしさから部屋に帰った。
余り、遅い時間に出歩くと家族に心配を掛けるから..今から運動の時間1時間だ。
「じゃぁ行ってきます!」
「あれ、士郎何処に行くの?」
「最近、運動不足だから少しジョギングをしてくる..じゃぁ行ってくるね、母さん!」
僕 《母さんで練習だ…笑顔を少しでもよく見せたい》
「なぁに! にやにやして」
僕 《駄目だこりゃ》
「何でもありません!行ってきます!」
近くの公園まで走りながら来た。
さぁてと、運動だ。
腕立て伏せ、1234~10と、これしか出来ないのか?
腹筋 1234~15 これしかできないな…
鉄棒で懸垂…5回か…仕方ない。
さぁ..帰ろうかな…
あれっ..小さい女の子が泣いている。
「どうしたの、お嬢ちゃん?」
「えーとねぇ..お母さんが居なくなっちゃったの..」
「住所か、電話番号解る?」
「うん、お母さんの電話..解るよ!」
「じゃぁ教えてくれるかな?」
「解かったー」
「090-3……と」
「はい、どなたでしょうか? 」
「今、公園何ですが..お嬢さんが、そのお母さんが居ないって悲しそうにしていますよ?」
「あらっいけない! 直ぐにいきますから、そのまま娘と一緒に居てくれますか?」
「解りました!」
「お母さん、直ぐにくるって! だから一緒に待ってようね?」
「うん、解ったぁ..」
…………..
……..
「すみません、すぐ戻る筈がすっかり話し込んでしまって…」
「いえいえ、全然気にしないで下さい」
「それじゃ..僕は行きますね..良かったね、お母さん戻って来て」
「うん..お兄ちゃん、これ上げる」
「ありがとう」
運動時間は予定の1時間を過ぎて2時間…
「只今、母さん、歩美」
「お帰りなさい」
「はいはい、お帰りなさい」
僕 《 やっぱり、挨拶だけは歩美もしてくれるのか..》
「随分、頑張るのね!」
「少しは、このお腹引っ込めないとね!」
「そう無理せず頑張りなさい」
「うん、頑張るよ!」
さぁ、シャワーを浴びて2時間勉強だ…テレビもアニメも漫画も我慢だ。
「士郎、ご飯が出来たわよー」
「今、行きますー」
母 《あの子がしっかり挨拶するようになるなんてね..少しは変わろうとしているのね》
下に降りると、歩美はもうご飯を食べ始めていた。
今日のおかずはハンバーグだ..僕の大好物だ。
「うわぁ..ハンバーグだ母さんありがとう! いただきます!」
「キモ兄..どうしたの? 可笑しいよ」
「いや、今迄が酷かったから、少しは変わろうと思ってさぁ」
「気持ち悪いよ..でもキモ兄だから仕方ないか」
士郎 《今迄がマイナスだからな、こんな物かな..だけど一番身近な家族からの評価も貰えないならこの考えその物が無理だ》
「まぁ、僕なりに頑張るから..暫くは大目に見てね」
それだけ伝えると僕は食事を食べた。
「このハンバーグ美味しいね..母さん」
「そう…いつもと同じなんだけど..お世辞でも嬉しいわ」
僕 《母さんは優しいな…》
「そう…精々頑張んなさい..キモ兄」
そう言うと歩美は部屋に戻ってしまった。
さぁ…1時間、魅力のアップをして..今日は終わりだ。
思ったより疲れるな..これ、だけど..頑張らないと..
自分を変える為に..何より自分のなりたい自分になる為に…
休みの日..真剣さの修行!
数日頑張ったが…余り成果がでて来ない…相変わらず、僕の呼び名はキモ士郎だ。
どうするか考えた僕は…ホストを見に行く事にした。
その理由は、秋葉原でギャルゲーを見に行った時に女性の同人誌の主人公がホストだったからだ。
ギャルゲーで言う、魅力を上げるには必要な事だ。
とは言え…未成年の僕は店になんて入れない..だから、街頭でキャッチをしているホストを観察する事にした。
《凄いな、断られても笑顔で女の子を追い掛けている…僕に必要な事だ》
「おい、お前! 何でさっきから俺たちを見ているんだ!」
《不味い、不機嫌そうにこっちに来た…正直に話すべきだ》
「貴方達のようにモテる様になりたいので、勉強させて貰ってます」
《これでどうだろうか?》
「そうか…それなら、別に良いか..それじゃ、少し修行させてやろうか?」
《どうするべきか..よく考え僕は修行させて貰う事にした》
「お願いします」
「もっと大きい声で!」
「お願いします!」
「はい…それじゃあ、このビラ配ってきてね」
《これで本当に修行になるのか…》
「はい..行ってきます!」
貰ったビラは300枚、女性限定に配る。
僕は未成年だから、キャッチは出来ない、聞いて貰えたら..傍でビラを配っているホストに代わる。
「綺麗なお姉さん..良かったら..ちょっと話を聞いてくれない!」
「何..あんた..ホストなの?」
「違います..」
「そう、別に興味ないわ」
《近くにいるホストの真似をしてみたが..駄目だ..ならばギャルゲー作戦だ..ギャルゲーにはナンパをするギャルゲーもあるのだ》
「そこの凄く綺麗な女神のような人..俺の話を聞いてくれませんか?」
《あれっ無視だ..だが、ここで諦めたらいけない》
「来てくれなくても構わない..だけど、今日見た中で一番綺麗な貴方にどうしてもこのチラシを受け取って貰いたいんだ!」
彼女の足が止まった。
「ほら、寄こしなさい..行くかどうか解らないけど..貰うだけ貰っていくから」
「有難うございます」
そして、彼女は立ち去っていった。
《あっ..これは失敗だ..ホストに代わって貰う事が出来なかった》
結局、300枚のビラを配っていくなか、ホストに代わって貰えたのは2人だけだった。
その2人もホストに代わって貰ったが、旨くいかなくそのまま立ち去った。
「どうだった、ビラ配りをしてみて」
「思ったより大変でした」
「だろう..だけど、自分が変わったのが解るかな?」
「正直解りません!」
「あのさぁ..凄く変わったんだよ..最初の方はただ、嫌々ビラを配っていたよな」
「確かに..そうです」
「だが、途中からは、どうやったら足を止めて貰えるか? どうしたら女性の関心を引けるか考えながら渡していただろう?」
「その通りです」
「それが必要なんだよ! 一人一人と真剣に向き合い、その人の関心を自分に向ける…まぁそれが修行だな」
《凄い..確かに僕は..女の子に対して..何処か真剣じゃなかったかも知れない》
「そうですね、確かに僕は女性に真剣じゃ無かったのかも知れません!」
「そこの差だ! 俺たちは女を店に連れていかなければ..おまんまの食い上げな訳..真剣さの差だ!..またビラまきしたければ..ここに来な..巻かせてやるから」
「有難うございます!」
ホストは手のひらをひらひらしていた。
ホスト《無料ビラまき アザッす…な訳ないだろう!》
「また、まきに来たら、めっけもんだな」
………………
……
さぁ明日からの学校生活..頑張ろう!
修行の成果 登校篇
今日も朝の走り込みと簡単な運動から一日がスタートする。
今日で1週間だ、
意外な事に僕は体力がある事が解かった。
と言っても、腕立てが20回、腹筋が20回出来るようになっただけだけど..元を考えれば大きな成果だ。
そして、帰ってきたら軽くシャワーを浴びてから勉強をする。
何故か、運動をしてからの勉強の方が捗る事も解かった。
さぁ、いつものノルマはかたずけた..これからは昨日の成果を試す時だ。
《真剣、真剣になれ..俺》
「おはよう母さん..いつも綺麗だね! 歩美も相変わらず可愛いね!」
《昨日はこれ以上に凄い事を言っていたんだ大丈夫だろう?》
「兄貴は相変わらずキモイね..おはよう..」
「馬鹿な事言ってないで早くご飯を食べなさい!」
《あれれ..駄目か..まぁ元が悪すぎたから仕方ないか..》
「おはよう!」
「おはよう..またキモ士郎か..」
「キモ士郎か..はちょっと酷いかな、だけどいつも思うんだけど、髪の毛綺麗だね」
「そう..まぁ髪は私のって..キモ士郎の癖に気安くすんなよ」
「ごめんね..ははは」
《これ位で良い筈だ..ビラだって貰って貰えるまで..無視されたり、嫌なこと言われたりした..同じだ》
…………………………..
………………
「おはよう!」
「おはよう! キモ士郎は懲りずにまたあたしに挨拶する訳?」
「うん、君みたいな美少女に挨拶返して貰えるなら..喜んでするよ?」
「頭、おかしくなった? まぁ良いや..有難がってくれるなら、挨拶位は返してやるよ!」
「そう…ありがとうね」
《これは少しは好感度が上がったかな…》
……………………..
……….
「おはよう!」
「あれ、士郎くん、私、挨拶される様な仲だったかな?」
「いや、今迄が僕は暗かったでしょう? これからは少しは心を入れ替えてクラスメイト位には挨拶しようと思って」
「そう、なんだ..まぁいいや..はい、おはよう!」
《これはどっちか解らないな》
昨日までと違って、本当に元気よく男女問わず挨拶が出来た。
二言位だけど…女子とも話せた….修行の成果は凄いな..またビラ巻きに行こうかな。
ガールズトーク 士郎からキモイが無くなった日
「あのさぁ..ちょっと皆んな良いかな?」
「どうしたの…」
「あのキモ..じゃなかった士郎くんの事なんだけど..キモつけるの辞めない?」
「どうして..士郎はギャルゲー好きでキモイじゃない?」
「だけどさぁ..あんなに褒めてくれるんだよ? それなのに、キモイなんて言ってたら周りからイジメに見えるよ」
「確かにそう思うな…ただ挨拶返すだけで喜んでくれるのに..わざわざ嫌がらせ言うのは可笑しいかも知れないね..」
「私はもう辞めるつもり..だって私が黒板で消せない所..消してくれたから..」
「もしかして二神、士郎の事が好きになってたりして..」
「そんなんじゃ無いけど..男子の中じゃましな方じゃない?」
「確かに挨拶もしっかりするし、良く褒めてくれるよね!」
「確かにたどたどしいし、ワザとらしいけど..他の男子は、そんな事すらしない奴が多いじゃない?」
「そう考えたら..キモ士郎って悪い奴じゃないんじゃないかな?」
「少なくとも..クラスで一番酷い男子じゃないよね?」
「正直、私の評価なら…クラスで真ん中位ではあると思うのだけど」
「まぁ..そう考えたら..酷い奴でも無いんだから..わざわざキモイなんていう必要は無いな」
「そうそう、とりあえず..キモイは辞めてあげようよ」
「そうするか..」
士郎の努力は案外思ったより早く成果が出て来た..
女子の女の子のほぼ全てに優しくした結果..彼は..嫌われ者から脱出した。
最後の修行
そして今日も僕はビラ配りをしている。
また来てしまった。
だって、この真剣さの修行が一番効果を感じたから。
「士郎、よく来たな..さぁ今日はこのビラ500枚渡すから頑張れよ! 今日は5人をホストの前に連れていく事…それを目標にしようか? 頑張れよ!」
「はい、皆川さん」
そう、僕はこのホストの人から名前を教えて貰えた。
何か、仲間になった気がして嬉しい。
「そこの綺麗なお姉さん! 僕と少しだけお話ししてくれませんか?」
「いやだ、私貴方よりずうっと年上よ? ナンパならもう少し若い子にしなさい!」
「いえ、ナンパでなくてビラ配りです..僕は居ないけど、良かったら遊びに行ってね」
「そう、ビラは貰っていくわね..だけど君が居ないなら行っても仕方ないかな?」
………………………………….
…………..
「綺麗なお嬢様..少しだけ俺に時間をくれませんか?」
「お嬢さん? 私の事?」
「そうですよお嬢さん..他の何処に綺麗な人が居るんですか?」
「そう、嬉しいな、そう言われると..で、何の営業なのかしら?」
「ばれました? はいこれ受け取って下さい」
「貴方、そこのお店にいるの?」
「残念ながら未成年なので居ません」
「そう、残念」
皆川《彼奴..本当に化けてないか?》
ホストその1《才能がありますね..面接受けたらうちに受かるかも?..》
皆川《未成年なのが残念だ》
ホストその2《今日で終わりなんでしょう?》
皆川《さっきオーナーから注意が入ったからな》
ホストその1《それで、それを取りに行ったんですか皆川さん》
皆川 《まぁな》
………………………………
……….
今日の僕の成果は500枚配って、皆川さんを呼べたのは6人..その中の2人はお店にお試しでいく約束がとれたそうだ…うん、成功だ。
「士郎、話があるんだが良いかな?」
「何でしょうか皆川さん」
「今日でお前は卒業だ…これは卒業証書だ受け取れ!」
「時計ですか..これダグホラマー 物凄く高いんじゃないですか」
皆川《まぁ世間ではそうだな..だがホストじゃそんな安物つけられない..貢いで貰ったけど微妙な物だな》
「確かに20万位はするな、だけどお前は頑張った..まぁ俺たちとは比べ物にはならないけどもう、モテない..そんな人間じゃないだろう! だからお前は卒業だ、ビラ配りはもうしなくて良い」
皆川《オーナーから注意を受けたからな..ビラ配りでも未成年にやらせるなって》
ホストその1《自動ビラ配りマシーンにせっかく出来そうだったのに》
「卒業ですか?」
「おう、卒業だ…一人前だ..だから、その時計をお前にやる..ここに居る皆んなが金出して買ったもんだ..金を貢がせるホストが逆に貢いだんだ..スゲー価値があるぞ」
ホストその2《あれ、この前貢いでもらったけど安物だから付けられないといった時計でしょう》
皆川《まぁな、だけど質屋に売れば金にはなるんだぞ..まぁはした金で面倒くさいが》
「ありがとうございます..僕、これを身に着けてより一層頑張ります!本当に有難うございます!」
僕は思わず..涙が出てしまった。
「最後にもう一つ餞別だ、ほれ」
「このリストは何ですか?」
「お前は女にモテたいんだろう? だったら恋人や、女友達位作らなきゃなぁ…そこにいる女口説いてみろよ..中にはグラビアアイドルや芸能人もいる…俺からの餞別だ..そこにいるのは普通じゃお前じゃ出会えない位の女ばかりだ..餞別にくれてやる..俺からの紹介と言えば会うだけは会ってくれると思うぞ..まぁ頑張れ!」
ホストその2《あれは、クズ客リストじゃないですか? もう金を搾り取れない客たちのリストですよね》
皆川《そうだ、だけど可哀想だからババアと不細工なのは除いた奴だ、1人でも彼奴が口説いてくれてうちの店のホストに付きまとわなくなれば御の字だな》
ホストその1《皆川くん、半端ねぇ..ビラ配りマシーンから、今度はクズ客処理マシーンかよ》
皆川《おい、俺は少なくとも、彼奴の願いには手を貸してやっているよ? 中坊の童貞野郎が芸能人と友達になれる切符をやったんだ..やだね腐った大人は》
ホストその3《それは皆川くんもでしょう?》
皆川《違いないな》
「本当にありがとうじゃいます」
僕は泣いてしまって旨く喋れない。
「泣くな、泣くな…それじゃ俺たちは仕事があるからいくぞ..将来お前がこの道に来たかったらうちの店に来いよ..じゃぁな」
「はい」
僕の手には、時計とリストがある。
これは、僕の努力を認めてくれた人がくれた物…これから僕はこれを手に頑張ろう。
元 アイドルとの出会い
《マジか..このリスト、からかっているんじゃない無いよな..何でグラビアアイドルや芸能人、それから会社の社長まで..テレビや雑誌でしか見た事がない人ばかりじゃないか..この中の人って..正直..ギャルゲーのヒロインを越えているんだけど..》
さっきから僕は..スマホと睨めっこをしている。
少し、自信がついたからって..いきなりアイドルと話す事なんて..
はぁ、ふぅ..なかなか決意がつかない。
失敗して元々だ、頑張ろう…
僕はその中の1人、ユウカに電話してみる事にした。
ユウカは厳密に言うとアイドルでは無い…元アイドルだ。
清純派で売っていたのだが、タバコと飲酒が週刊誌に載り引退した人だ。
正直言って、僕もフアンだった時期もある..当時の僕から見た彼女は綺麗なお姉さんだった。
正直言って、手の震えが止まらない…ゲームや小説の冒険者で言うなら、スライムやゴブリンに善戦できるレベルの人間がいきなり魔王の前に立ったような物だ。
結局僕は、30分悩んだ末に電話を掛けた。
「もし、もし、ユウカさんですか?」
「はぁ! あんた誰? もしかしてホストの誰か! お金ならもう無いわよ!だから店にも行けない!」
「すいません、僕はホストじゃなく皆川さんから紹介を受けた士郎と申します」
「はぁ..士郎、士郎ね、皆川が言っていた少年ね..貢がなくても良いホストだよね!」
《皆川さん、何て言う紹介なんだ.》
「多分、そうだと思います..」
「そう、だったらどうしようか? 話しているのもなんだし..うちに来る?」
「いきなり、ユウカさんの家に行くんですか? 良いんですか?」
「あたし、これでも芸能人だから、外で会うとスクープされちゃうからさ…外とかで会えないんだよ…来たいなら今から来ればいいよ…住所は…」
「直ぐに行きます..超特急で」
「うん、楽しみに待っているよ..じゃぁまた後で」
僕は自分の服の中でかっこよく見えそうな物をチョイスした。
コンビニで美味しそうな物をチョイスした。
一応、花屋で花も買った。
こんな所かな…
憧れのアイドル、ユウカにこれから会うんだ..緊張が高鳴る。
教えて貰った家は高級マンションだった。
エントランスでインターホンを鳴らすと、テレビでよく聞いた綺麗なあの声だ。
「士郎くん、よく来たね..今開けるからね」
自動で扉が開いた。
その先のエレベーターに乗って23階がユウカさんの部屋だった。
再びインターホンを鳴らすとドアが開いた。
「よく来たね士郎くん」
中から出て来たの目のやり場に困るセクシーな服をきた..太ったおばさんだった。
ユウカとの会話
《さぁどうしようか!》
「どうしたの急に黙り込んで…」
「女性の部屋なんかに来たの初めてで緊張しちゃって」
「そうなんだ..とりあえあず座りなよ..未成年なんだよね..コーラでも入れてあげるね」
「有難うございます!」
「士郎くん..なかなか礼儀正しいね」
「はい」
「緊張しているねリラックス、リラックス..こんなおばさん相手に緊張しても仕方ないでしょう?」
「そんな事ないですよ、ユウカさんには僕の世代の男子は皆んな憧れていましたからリラックスなんて難しいですよ?」
「ほんと? 嬉しい事いうわね…何を見てたのかな?」
《不味いな、セクシー系の写真集しか知らない》
「言いづらいけど…今日は晴れ です」
「あれかぁ..結構際どい水着来ていた奴ね..士郎くんも結構スケベだね..」
「否定はしませんが…小学生だったのでどうやって買おうか悩みました」
「あれは、際どいけど18禁じゃないから普通に買えば良かったのに」
「そう、なんですよね..今になって思えば普通に買えば良かっただけですね」
「それで、その本は今も持っているの?」
「はい」
「じゃぁ、今度遊びに来る時に持ってきなよサインしてあげるから」
「はい、必ず持ってきます!」
「さてと、初対面なんだけど..どうしようか?」
「そうだ、今日はお招きいただき有難うございました..これ受け取って下さい」
「花束..嬉しいねここ暫く受け取っていなかったからね..」
「あと、コンビニで少しですがお菓子を買ってきたんですが、一緒に食べませんか?」
「気を使わせちゃったみたいだね..悪いね」
その後、僕とユウカさんはテレビをみたり、トランプをしたりして過ごした。
たまにユウリさんを見ると、ドキッとする事がある…太ってしまっても歳をとって見えても、アイドルっていうのは凄い、そう思える。
「どうしたの?」
「アイドルって凄いですね…驚いています、たまに目が離せなくなるほど見つめていたくなる時があります」
「そう..士郎がそう言うなら、まだ私も捨てたもんじゃ無いんだろうな..だけど、過去の栄光だよ」
「それでも..です」
「ねぇ..士郎、私の起こした事件についてどう思う?」
「もしかして、タバコとかですか?」
「そう」
「別に何とも思いません!」
「マジで..どうして」
「余り良くないけど、タバコやお酒位、隠れてやった経験は僕だってあります、運が悪かったその位しか思いませんね」
「そうか、同年代で考えたらその程度の事だったんだ..」
「まぁ..ユウカさんがやっていたと聞くと驚きでしたが、不良だとやっている人も多いし、僕の友達でもタバコ吸っているのを見つかって親父に殴られた人もいますよ!」
「そうだよね..」
「それに、ユウカさんはもう成人しているんだから..20才過ぎたら自由にして良いんじゃないですか」
「そうだ、そうだ..士郎は解っているね..うん」
僕はユウカさんに抱きつかれた。
今は太ったおばさんだけど、それでも元アイドルに抱きしめられた、そう思うと嬉しい。
「これ、昔だったらスキャンダルじゃないですか?」
「だね…どう嬉しい?」
「嬉しいです..」
「そう..だったら又遊びに来てくれる?」
「ユウカさんが良いなら」
「じゃぁ..待っているからね…」
………………………………
…………….
(ユウカ)
《年甲斐も無く、楽しく話しちゃったけど..もう来ないだろうね..アイドルに会えると思ってきたら、太ったおばさんなんだからさぁ…優しそうな子だったな..ホストにとって私はただのお金の関係..私を口説くような男は肉体関係目当て..どちらも、お金が無くなってデブになった私にはもう無縁の物..もう友達と言える人も居ない..芸能人になんてならなくて..普通に青春を過ごしたら..ああいう友達も出来たのかな..》
「寂しいな、寂しい…寂しいよ..1人は嫌だ..」
変わりつつある日常
今日も何時もの日課の運動と勉強を済ました。
「おはよう母さん相変わらず綺麗だね! 髪の毛切ったんだね、凄く似合うよ」
「そう、ふふふ、そう言ってくれるのは士郎位なもんだわ..」
「そうかな、職場の男性が放っておかないんじゃない? 充分二十台後半で通用するよ?」
「そうかな? それじゃ母さんもまだ捨てたもんじゃないかもね」
「そうだよ、僕が実の息子じゃ無かったら放っておかないのに」
「何を言ってんだか..とっとご飯を食べなさい、遅刻するわよ」
「おはよう歩美..相変わらず可愛いな..妹なのが残念だね」
「そう、妹じゃなかったら口も聞かないから..妹で良かったんじゃない」
「そうか、うん、じゃぁ妹に生まれてきてくれてありがとうね、歩美」
「兄貴..なんだか軽くなったね」
《今回は此処までだな》
「そうかな、少しは真面になろうと頑張ったんだけど、残念..まだ道のりは遠いね..」
「そう..頑張って..間違った方には進まないでね」
「解かった」
《うーん、母さんとの関係は修復できたような気がする..だけど歩美は難しいな》
…………………….
………………
「おはよう、白鳥さん!今日も綺麗だね!」
「あっ士郎くん、おはよう! 士郎くんは相変わらずだねぇ..でもありがとうね!」
「おはよう、三上さん、もしかして髪型変えた?」
「おはよう、士郎くん、よく気が付いたね髪型は変えていないけど、昨日少し切ったんだ..似あっているかな?」
「うん、凄く似合っているよ..彼氏の角田くんが羨ましいね」
「はははっ残念、もう私は角田くんとラブラブなのさ」
「うん、似合いの2人だね..じゃぁね」
「うん、じゃあね」
「神谷さん、おはよう! 何だか眠そうだね!」
「おはよう! 士郎くん、昨日はちょっと遅くまで勉強していたから.」
「そう、勉強も大事だと思うけど..余り無理しないでね?」
「う、うん、体に気を付けるよ..そのありがとうね..」
「どういたしまして」
………………………
…………
「おい、士郎、この時の美津子の気持ちについて答えてくれるか?」
「はい、 美津子は彼に失望したんだと思います」
「うむ、正解だ..最近は頑張っているな..先生期待しているぞ」
「有難うございます」
教師《何があったんだ、まるで別人じゃないか》
………………
…….
「じゃあね、西野さん、また明日」
「あっ士郎くん、また明日」
「木下さんもじゃあね」
「じゃあね士郎くん」
《あれっ、帰りの挨拶って..余り気の利いた言葉ってないな..また勉強しなきゃ》
そして、僕はユウカさんのマンションに向かった。
ユウカさんとの会話は凄く勉強になる。
だって…家族を除いて会話できる唯一の相手だし..
確かに、昔と違って太ったおばさんになっていたけど..それでも、たまに昔の片鱗なのか..ドキッとするほど綺麗に見える時があるんだ..
僕の最終目標は..かってのユウカさんみたいに輝ける人間になる事だから。
ユウカの気持ち
「ユウカさん、遊びに来ました」
私の予想を裏切り、士郎は次の日にも遊びに来た。
正直、こういう友達は居た事が無い。
私の周りの男は、お金と性欲しかないような男しか居なかった。
アイドルの時は、本当に肉食獣の中に放り込まれた子羊のように感じたし…
お酒やタバコが原因でアイドルを辞めた後は、最初はAVの勧誘..1億だすからってしつこく来た。
馬鹿じゃ無いの?
本当にそう思う…だって私の所の事務所は取り分が多いから..一応億単位のお金は持ってるし..生活には困らない。
ホスト遊びをしたら..お金お金お金だ…「お金はもう無い」そういったら手に平を返したように寄り付かなくなった。
お金を使わなくなった途端、ユウカ様がユウカになり、おばさん扱いするようになった。
こんな遊びは本当につまらない…お金はあるし、元々アウトドア派じゃない私は外に行かなくても別に困らないし、それで良い..引き籠ろう..そう考えていた。
正直、お金はまだある..一生遊べる位の額はね…
お金があれば 密林と天があれば生活に困らない。
そんな時に、皆川から士郎くんを紹介された。
まだ、たった一日話しただけだけど..凄く楽しかった。
最初は、あれはアイドルだったユウカへの憧れから来たのだろう、そう思った。
そして、今の私を見たんだからもう来ないだろう..そう思った..なのに今日もインターホンが鳴った。
もし、私がアイドルにならないで普通に学生していたら..ああいう友達が出来たのかも知れない。
可笑しいな..今迄、こんなに誰かに会うのを楽しみにした事無いや。
こんなデブおばさんに会ったって面白くないだろうに、それでも来てくれるんだ..嬉しい..本当に嬉しい
だから、今できる精一杯の笑顔を作る..また来て欲しいから..
「士郎くん、いま空けるね..」
私は、彼を今日も招き入れた。
遊びにいく理由
「そう言えば士郎くんは何で、うちに遊びに来ているの?」
「理由ですか?」
「そう、だってお金目当てでも無いし..まさかこんなデブおばさんの体目当てでも無いでしょう?」
「最初は紹介されたからだけど、居心地が良いからですかね?」
「居心地が良いの…此処が?」
《正直って、私って掃除とか出来ないから、余り綺麗でも無いと思うけど》
「はい、正直に言うと僕は女性とは、家族以外には挨拶位しか殆どした事がありません」
「へぇーそうなんだ..私とは普通に喋れるのにね」
「はい、少しづつ変わろうと思っているんですが、難しくて..ここまで喋れる相手はユウカさん位しかいません」
「そう..そうかー..まぁ私は、士郎くんが来てくれるのが嬉しいから何時でも話し相手位なるよ!」
「有難うございます」
「だけど、そうだ、変わりたいんだよね..だったら私が手を貸そうか?」
「手を貸すって?」
「こう見えても私は元芸能人だよ…士郎くん、外見だけでも変えて見ない? 案外、外見に気持ちって引きずられるよ..まぁ、今の私が言うのも可笑しいけどね」
「そうなんですか..じゃぁお願いしようかな」
「うん、お願いされた」
母陥落…母さんの気持ち!
最近、私は胸がときめいている。
その相手が、困った事に息子だ。
最近の息子ときたら、事あるごとに私に「綺麗だね」と言ってくれる。
最初は無理して言っているのかと思ったら、最近は本気で言ってくれているのが解る。
娘の歩美はまだ、気が付いていないけど、士郎はすっかり変わってしまった。
私と主人は幼馴染からの恋愛結婚だった。
死別して今は居ない…だけど、私にとっては今でも最愛の人だ。
主人はサラリーマンをしていたが、会社を辞めて投資家になった。
主人は病気で死ぬ前まで私達の事を心配して、投資をしていた。
主人は頑張って、莫大とは言えないが充分なお金を残してくれた。
仕事は気分転換にしているけど働かなくても正直生活には困らない。
主人がなくなってからは子供が私の全てになった。
特に士郎は私と主人の子だ、将来は主人の様になるのかな…淡い期待を込めて育てた。
だが、ゲームに嵌り、暗い性格の人間に育っていった。
正直言って、私は士郎が大嫌いだった。
主人の面影があるのに努力もしないで太っていきゲームに嵌り性格も暗い。
主人の面影を持っているだけに余計に腹が立つ…正直憎しみすら覚えた時期もある。
自分の息子が私の大好きな人を汚す….自分の子供なのに嫌いになった。
だが、最近の士郎はどうだろうか?
朝、早くから起きて勉強や運動をしている。
学校が終わると何処かに出掛けているが、その後には又運動や勉強をしている。
鏡に向かって笑顔の練習したり、読む本もゲーム本やアニメでなく、ファッション誌などだ。
そして、その成果は親の欲目からかもしれないが着実に出て来た。
運動をしたせいか、ぽっちゃりしていた体は普通並みに痩せた。
顔のぜい肉も無くなり、その顔は亡くなった次郎さん(私の主人)そっくりだ…
私の愛した最愛の人と同じ顔で「綺麗だね」そう言われる..それが嬉しくて仕方ない。
母親より正直言って女の面が出てしまう。
私の作るご飯を「美味しい」って言ってくれるから…レシピを増やした。
「綺麗だね」そう言われるから年甲斐も無く最近では少し早く起きて化粧をしている。
「綺麗だね」そう言われたいから美容院にもこまめに行くようになった。
髪の毛を切ったら気が付いてくれて褒められた…相手は息子そう頭は解っていても嬉しくて仕方ない。
「そうだよ、僕が実の息子じゃ無かったら放っておかないのに」
そう言われた時には正直時が止まったように感じてしまった。
士郎は気が付かなかったようだが..多分私の顔は赤くなっていたと….思う。
私はこの子が将来彼女を連れてくるのが怖い..笑顔でいられるだろうか? 意地悪しないでいられるだろうか?
だって、私の目の前にいる士郎は..私の愛した次郎さんの若き日の姿その物なんだから
ユウカの士郎 改造計画?
士郎くんに約束をしてしまった。
士郎くんは自分を変えたがっていた、つい調子に乗って「手を貸そうか?」 そう言ってしまった。
昔の私ならともかく、いまの私はもうファッションリーダーでは無い。
お洒落で綺麗なユウカで無いのだ….どうしようか?
多分、流行もここ暫くでずいぶん変わっただろう..昔の伝手でカリスマ美容師やスタイリストに丸投げすれば良いんだろうけど…それでは私が手を貸した事にならない。
「手を貸す」と言った以上は..私がアドバイスをしたい..うん、もう一度勉強をしよう。
私は久々にスマホで電話を掛けた..そういえば士郎くんとしかここ暫くは話して無いな..
「久しぶり、惠」
「あれっユウカじゃない? どうしたの?もしかしたら、復帰でもするの?」
「もう、復帰は無いな..芸能界に私の居場所は無いからね..心境が変わったから、また髪を切って貰っても良い?」
「何言っているのよ…貴方は今でも親友で大事なお客様よ..何時でもきなよ」
「そう、有難う…ついでに今度男の子の髪型について教えてくれるかな?」
「男の子? ホストとか変な奴に嵌っているんじゃないでしょうね?」
「違う、違う…まぁ弟みたいな物かな?」
「怪しいな..解かったわ、それも私に任せないさい」
「うん、お願い」
これで髪型はどうにかなるわね。
……………………………
………….
「お久ぁ裕子」
「あれっユウカどうしたの?」
「あのさぁ..唐突で悪いんだけど、男の子の服装について教えてくれないかな?」
「また、ホストに貢いでいるの? だったらスーツで良いんじゃない? 聞く事ないでしょう」
「そう言うんじゃ無いの..ちょっと気になる弟みたいな子が居るのよ..手を貸してくれない?」
「悪い男に引っかかったんじゃ無ければ良いわ…昔のよしみで手伝ってあげる」
「ありがとう」
士郎くんがカッコよくなったら….このままの私じゃ駄目だよなぁー
最後にユウカは久々にエステの予約をとった。
閑話:三上さんの葛藤
私の名前は三上冴子、まぁ普通の中学生だよ。
他の中学生とちょっと違う事は..彼氏がいる事かな。
彼氏の名前は角田ヒロト、そんなにイケメンじゃ無くごくごく普通の男の子だ。
幼馴染で子供の頃から一緒に居たからそのまま付き合う事になった。
小さい頃から一緒だったから人前で手を繋ぐのも、ハグするのも気にならない、だから学校ではラブラブだと言われている。
家が隣で小さい頃はお昼寝も一緒にしていたし、お風呂も一緒に入れられた事もあるからそうなるって。
だが、最近怖い事に私の心の中にほんの少しだけど…住み着き始めた人が居る。
それが、北上士郎くんだ。
私は最初、士郎くんが大嫌いだった。
だって、根暗な男子で集まってギャルゲーの話ばかりしているんだもん..好きになる要素なんて全く無い。
だけど、士郎くんは最近凄く変わった…最近の士郎くんには….本当に困ってしまう。
だってさ、逢う度に「綺麗だね」…とかさぁ…「可愛いね!」とかさ私が欲しい言葉を次々にかけてくるんだもん。
本当にヒロトの大馬鹿とは大違いだ、しかもその言葉には一切下心が無いのが解るから、たちが悪い。
その言葉を聞くたびに、今迄に無かった心地よさを感じてしまう。
この前だってそうだ、髪の毛を切ったのに、ヒロトもそうだけど..だれも気が付いてくれなかった。
それなのに士郎くんときたら、「おはよう、三上さん、もしかして髪型変えた?」だって。
士郎くんとはそんなに親しい間柄じゃ無いけど..私が欲しい言葉は、正にこれだ。
しかも、その後に 「髪型が似合っている」って言ってくれて..「彼氏の角田くんが羨ましいね」だって。
思わず一瞬《だったら、別れるから付き合ってくれる?》そう出そうになったよ。
まぁ、気の迷いなんだけどさ…
士郎くんは、その後に「似合いの2人だね」なんていって去って行ったからそれで終わりの話だけどさ..
最近、ヒロトにときめきないんだよ….手を握っても、ハグしても弟みたいにしか思えないんだ..
もしかして…いや気の迷いだな..うん、だって士郎くんは皆んなに優しいんだから..
だけど、気が付くと目で追ってしまうのはなぜだろう?
見ていると顔が赤くなるのはなぜだろう?
何故、士郎くんが嫌いだったのかな? あんなに優しいのに..
あれっ….ナイナイナイナイよ私が好きになっているなんて。
閑話:二神加奈子…笑顔
私の名前は二神加奈子..まぁクラスのマスコット的存在だと思ってくれれば良いよ!
最近、気持ちの上で困った事が起きた..それは、気になりだした男の子が出来た事。
いや、好きとかそう言うんじゃないけどさ..気が付くと目で追ってしまっているんだよ..何故か。
理由は解っている..彼がとても優しいから..
私は真長が140?と凄く背が低い、そのせいで高い所に手が届かないんだ..
日直になった時とかはもう大変、黒板の上の方を消す為にはピョンピョン飛び跳ねなければならない。
それを見て「ウサギみたいで可愛いね!」何て言いながら見ている..消している本人は辛いんだよ!
下手に跳ねると、スカートもめくれるから気を付けながら跳ねないといけないし..本当に背が低いのは辛いの…
だけど、そんな苦労している姿を女子も男子もただ見ているだけ..そして何かにつけては「可愛い」を連発するだけなんだ…
《可愛いという位なら助けて》 それが本音だよ!
だけどさ..いつもの様に苦労しながら黒板を消していると..横で背が届かない所を消してくれている人が居た…これって普通なら運命の出会いだよね…だけど、消していたのは士郎くんだった。
この時の私は凄く彼が嫌いだったからさ、がっかりしたのもあって、思わず「あのさ..何でキモ士郎が黒板消している訳?」とか凄く酷い事を言っちゃった… よく考えれば駄目だよね..少なくとも親切でしてくれていた事なのに…最低だよ。
そんな事を言ったら普通は怒る筈なのに..
「消すのが大変そうだから、手伝っただけだよ..余計な迷惑だったらごめんね!」
本当は違う…謝らなければならないのは私なのに、親切にしてくれた人に謝らせちゃった…最低だよ。
「そう、なら良いや..ありがとうね」なんて本当に私って馬鹿…なんで素直にお礼が言えないんだろう?
こんな最低のお礼しか言えない私に「うん、どうしまして!」って笑顔で答えてくれたんだ…神対応だよね….
彼は元はオタクでギャルゲー好きな人間..私が嫌いなタイプだ…その嫌いなタイプの人間だった筈の士郎くんが…最近やけに気になる。
士郎くんは会う度に、「今日も可愛いね」とか言うんだけど..他の人と違ってからかいが一切入って無いのが解るから凄く聞いていて心地良い…
私が困っていると助けてくれるのも嬉しい….
そして今日も彼は私を助けてくれる。
「二神さん、もしかしてこの本が取りたいの?」
「違うよ、その本の隣の赤い本」
「はい、二神さん!」
「いつもありがとうね士郎くん!」
「どういたしまして二神さん!」
こんなに優しくしてくれるんだもん…お礼を言うだけで喜んでくれるんだもん..
可愛らしく、笑顔でお礼を言おう..彼の笑顔に負けないくらいに..
ユウカの士郎 改造計画?
私は士郎くんに電話をした。
「士郎くん、元気! 早速だけど今度の日曜日は暇かな?」
「ええ暇ですよ!最もユウカさんからのお誘いなら暇じゃなくても暇にします」
《本当に可愛い事を言ってくれるわね》
「そう、だったら朝10時に私の家に来てくれる…デートしよう!」
「デートですか…楽しみです」
「そう..うふふ、嘘よ、一緒に出掛けるのは本当だけど、ほらこの前に士郎くんに、手を貸すって約束したじゃない? だから、早速手を貸そうと思うのよ」
「そうだったんですか?ちょっと残念ですが、それはそれで楽しみです..所で当日は何をするんですか?」
「それは内緒…楽しみにしててね」
「ハイ!」
約束を取り付けてしまった。
そう言えば、誰かと出かけるのって久しぶりだな…
あれっ、私って誰かを誘った事ってあったっけ…記憶にない。
一応、否定したけど、2人で出かけるなら、これはデートだ。
デート何てどの位ぶりだろうか?
士郎くんはどんな格好で来るのかな?
今から、楽しみだ….こんな気持ちはどの位ぶりだろうか..
誰かと一緒に出掛けるのが何時から苦痛になったんだろう..
解らないけど…今は凄く楽しいから良いや..うん。
ユウカの士郎 改造計画?
今日も何時もの様に軽いトレーニングから始まる。
最初はヒイヒイ言っていたのが嘘かの様に今では軽快に走る事もできる。
腕立てや腹筋も楽に100は出来るようになった。
最近ではプラスして鉄棒を使った懸垂も20行っている。
そして、家に帰りシャワーを浴びて、軽く予習をする。
しかし、ゲームの中の主人公はモテる訳だ…こんな生活を毎日送っているんだから。
部屋から下に降りると、母さんがもう食事の支度を済ましていた。
自分を変えようとして頑張ってみたから解かった..母さんのありがたさを。
昔の僕は、夜遅くまでギャルゲーや漫画、深夜アニメを満喫して、朝もギリギリまで寝ていた。
そんな生活を送っている僕に母さんは、ちゃんと朝ご飯や夕飯を作ってくれて、洗濯や掃除まで全部してくれていた。
僕は目的を持って、自分を変える為に今は早起きしている..これはあくまで自分の為だ。
だけど、母さんは自分の為じゃない、僕や歩美の為に早起きして頑張ってくれている。
それがどれ程の事か..最近になって解ってきたんだ。
最初の頃は、この言葉を言った時はあくまで、自分の為だったんだ。
だけど、今は心の底から感謝を込めて言えるんだ。
「おはよう! 母さん!」
「おはよう士郎!日曜なのに早起きね、今日の朝食はハンバーグを焼いてみたのよ! 最近鍛えているみたいだからスタミナも付けないとね」
「母さんのハンバーグは絶品だから食べるのが楽しみだな…ありがとうね母さん!」
「士郎は最近、随分明るくなったわね..母さんも嬉しいわ」
「そうかな…自分では自覚が無いんだけどね….心配を掛けていたのかな? ごめんね母さん!」
「フフフ、別に謝る事じゃないわよ..スープとか冷めちゃうわよ?」
「うん..頂きます」
母さんは頬杖をつきながら、僕を見ている。
「どう、美味しい?」
「うん、凄く美味しいよ」
「そう、良かったわ」
昔の僕は本当に馬鹿だったんだな..ちょっと頑張るだけでこんなにも、楽しい朝が迎えられたのに…自分から手放して…
そう言えば、小学校までは歩美ともちゃんと仲良く出来ていたな…今はまだ歩美は冷たいけど仕方ない。
自分が悪かったんだ….これから、兄として頑張る..それしかないな。
歩美が起きてきた、だから僕は精一杯の笑顔で挨拶をした。
「歩美、おはよう! 今日も可愛いね!」
「お母さんおはよう、兄貴もおはよう」
ちゃんと、挨拶はしてくれるようになった。
少しは進歩したのかな?
今日はユウカさんとの約束の日だ。
デートかと言えば微妙だけど、家族以外の女性と出かけるのは初めてだ。
とりあえずは、銀行から貯めていたお小遣いも降ろして来たし、服も一応は綺麗な清潔感のある物を選んだ、まぁ、ユウカさんみたいなお洒落な人とは比べ物にならないけど
「士郎、今日もお出かけ..最近良く出かけるわね」
「うん、もう引き籠りは辞めたんだ..やっぱり体を動かしてお日様に当たらないとね」
「そうね、だったら今度母さんの買い物にも付き合ってくれない?」
「うん、良いよ、いつもお世話になっているから荷物持ち位させて貰うよ」
「そう、母さん楽しみにしているわ」
「うん、じゃぁ行ってきます!」
「いってらっしゃい!」
ユウカさんと約束した10分前にマンション到着した。
マンションに入ろうとすると声を掛けられた。
「士郎くん、こっち、こっち!」
赤いポルシェの横にユウカさんが居る..うん、ユウカさんと言えばこの赤いポルシェだ。
このポルシェはユウカさんのオリジナル品だ、普通のポルシェと違い塗装は何とフェラーリと同じ塗装にになっている。
確かテレビで、「ポルシェは好きだけど、フェラーリの赤が好きだから特別に塗装した..そう言っていた」
「近くで見ると凄い車ですね..流石に拘っただけあって..普通の赤いポルシェと違いますね」
「流石ね、士郎くん、このポルシェは態々ドイツからイタリアに持ち込んで塗装したのよ..そんな事より早く乗って」
「はい」
僕は緊張しながら、ポルシェに乗り込んだ..正直、こんな高級車には乗りなれていない、少し緊張する。
………………………….
…………..
「所でユウカさん、今日は何処に行くんですか?」
「今日これから行くのは美容院とブティックよ..これから変わろうと思うのなら重要でしょう?」
「そうですね..本当なら一番最初に気が付くべきでしたね..有難うございます」
「今日一日で、士郎くんをカッコよくしちゃうから楽しみにしててね」
《まぁ、カリスマ美容師と私の専属だったコーディネーターにお願いしてあるから大丈夫よね》
「有難うございます、ユウカさん! 僕、楽しみです!」
………………………………
………..
「さぁ、士郎くんついたわよ」
「此処ですか?..流石はユウカさんが使っている美容院..凄いですね!」
「お店もお洒落だけど..担当も凄いわよ..フフフ、見てのお楽しみっと」
「嘘、木崎恵さん..本物ですか?」
「本物に決まっているじゃない…ねえ恵?」
「うん、私は本物の木崎恵さぁーさぁーどんな髪型にして欲しい?」
「そうですね…正直言って、余り詳しくないのでお任せで良いですか?」
「そう、お任せね..だったら腕によりをかけて、かっこよくしてあげないとね」
惠《この子、案外素材は良いかも知れない..ちょっと髪型を変えるだけで映えるわ..》
「お願いします!」
………………………………
…………
「ユウカ、こんな感じでどうかな?」
「流石は、惠、凄いわね..カリスマだけあるわね..」
「おやぁ~ ユウカ、随分と丸くなったわね..昔なら一言二言ダメ出しが入りそうなのに」
「そそそそ、そんな事しないわよ」
「そうよね、年下の彼氏の前じゃ..ユウカ様も乙女になるのね!」
「惠..いい加減に..」
「あの、惠さん..金額は幾らですか?」
「そうね、通常なら1.2万円だけど、今回はサービスで良いわ。まぁカットモデル見たいなもんだと思って..だけど、次からはちゃんと貰うよ」
「有難うございます」
………………………………
……………..
「さぁ、髪型はばっちり決まったから、次は服装ね」
「本当に何から何までスイマセン」
「良いのよ、乗り掛かった船だから….」
「へぇーその子がユウカのお気に入りなのね」
「まったく、裕子も恵と同じ事を言うのね…全く」
「どんな風になりたいの?」
「お任せで良いですか…解らないので..」
「うん、そうだね、任された..」
その後、僕は2人の着せ替え人形にされた。
「こんな沢山の服を選ばれても買うお金はありませんよ」
「それ? 全部あげるからお金のことは気にしなくて良いよ」
「でも、こんなに高い服ただで貰っちゃ…」
「それ、サンプルだから気にしないで..殆ど製品と同じだけど..縫製が弱いから気をつけてね」
「有難うございました」
「これで、私の方の予定していたサプライズは終わり…ここからは士郎くんがエスコートして」
「解りました」
さぁ…これからどうしようか?
ユウカさんとの一日
色々考えた結果、僕は、キングダムホストへユウカさんを誘った。
僕の頭の中には女の子を誘う場所と行ったら、カラオケとゲームセンター位しか思いつかない。
案外、ギャルゲーって出掛ける描写って、カラオケ、ゲームセンター、公園、海、山、喫茶店位しか無かった。
ここは都会だから海や山は行けないし、公園やゲームセンター等目立ち場所は駄目だろう。
CDも出した事のあるユウカさんをカラオケに誘うのも可笑しい気がする。
そう考えたら、お礼を兼ねて食事に誘うのがベストだと思った。
キングダムホストはファミレスのチェーン店だけど、高級なイメージが強い。
ここなら、辛うじて及第点な気がした。
「へーなるほどね…士郎くんはこの店を選んだんだ..どうして?」
僕は自分が考えていた事を話した。
「女の子が何を望むか考えて行動する、それが出来るのがモテる男性だと思う…そういう意味では合格点ね」
目の前に座って見ると解る。
この人は僕なんかが本来はこうして付き合えるような人じゃないんだと、ただの太ったおばさんに見えても、たまに凄く綺麗に見える時がある。
その理由が何故かは僕には解らない。
だけど、何人人が居ようが、彼女だけしか見えなくなる。
そして、そのしぐさや動作を目で追ってしまう。
「どうしたの? 急に黙り込んで」
「いや、ユウカさんに見惚れていました」
「見惚れていた? 年上のおばさんに?」
「不思議ですね、たまに物凄く引き込まれるんですよ、何故か他の人が見れなくなる位に」
「そう、それがまだ私にあるんだ、ははは、捨てたもんじゃないね」
「何かコツがあるんですか?」
「コツと言うより、これがアイドルになれる切符みたいなもんかな、とりあえずご飯にしようか?」
「どうぞ、好きな物を食べて下さい!」
「あらっ奢ってくれるの?」
「はい、今日は色々お世話になったので、そのお礼です」
「そう、それじゃ遠慮なく、すいませーん、スペシャルロイヤルステーキセットとドリンクバーをお願いいします、士郎くんは」
「それじゃ、僕も同じ物を」
《半端ないな、これこの店で一番高いメニューじゃないかな》
「士郎くん、この場合の正解は他のメニューを頼む事だよ? そうすれば旨く行けばシェアして食べれるし、仲良くなりやすい..覚えておくと良いかも」
「そうなんですね…確かに男同士でも一口くれとかやりますよ、そうかーそうですね」
「素直だね」
「ユウカさんは何を飲みますか?」
「よく気が付いたね、それじゃ私は、カモミールティーを貰おうかな?」
「はい、それじゃ取りに行ってきます」
「そう言えば、さっき言っていたアイドルになれる切符って何ですか?」
「あぁ、それね、実はそれは私にも解らないんだ、だけど、スカウト何かが良く言うんだけどトップアイドルになれる人は、何処にいてもその人が輝いて見えるんだって」
「凄いですね」
「うん、本当かどうかは解らないけど、何人いても同じような行動してもその人だけを追ってしまうそれがアイドルなんだってさ」
「それは解る様な気がします」
「どうして?」
「実際に目の前に居るからですよ…ユウカさんのしぐさや行動から目が離せなくなる時がたまにあるし、妙に引き込まれる時が結構あるんですよ」
「そう、嬉しい事を言ってくれるわね! それじゃ、まだ私にアイドルの片鱗が残っているのかしら?」
「僕の中では充分にアイドルですよ!」
「そう、まぁそれがお世辞なのは解るけど…ありがとうね」
「いえ、決してそんな事は無いですよ」
「そう、有難うね」
その後、ユウカさんに来るまで家の近くまで車で送って貰った。
「士郎くん、私もねこれから変わろうと思うのよ、お互い頑張りましょう」
「はい」
僕の楽しい一日はこうして終わった。
家族
「ただいまー」
「士郎、お帰りなさい、どうしたの? その髪型」
「うん、今迄が無頓着だったから変えて見たんだけど、どうかな?」
「似合っているわね、母さん士郎が男前に見えてびっくりしたわ!」
「そう、ありがとう!」
母《我が子ながら、本当に美形だわね!次郎さんの子だもん不細工な訳はない…こうして髪型まで今風にすると、次郎さん以上な気がするわ》
「しかし、どうしたの? その髪型は!」
「うん、母さんや歩美の家族として、少しは気を使わなくちゃいけないと反省して、これからは少しはお洒落をしようと思ってさ」
「そう、母さんも嬉しいわ、頑張ってね!」
母《最近のこの子には本当に驚かされるわね、今迄の事が嘘みたいに変わったわ正に自慢の息子だわ》
「あれっ兄貴帰って来てたの?」
「うん、ただ今、歩美!」
「へぇーなかなか似合っているね..まぁ少しは見栄えよくなったかな?」
「そう、有難うね!」
「じゃぁ、私は勉強があるから」
(歩美 サイド)
私は部屋に帰ってきたが勉強が捗らない。
兄貴の変わりようが気になったから。
ヤバイヤバイヤバイ、あれがつい最近までギャルゲーオタクだった兄貴なの?
中身を知っているから私はときめかないけど、外見だけ見れば、芸能人とかににも居そうなタイプじゃない?
あれで、中身が本当にちゃんとしてれば問題が無いんだけどね…流石に中身までは変わらないよね。
また期待して、オタクに逆戻りしたらショックだから期待なんかしないでおこう。
だけど、今の兄貴は割と嫌いじゃないな…元からこれなら私だって..もう少し真面に扱うよ。
だけど、これ無理しているよね..いつまで続くかな!
歩美はまだ知らない、士郎が自分を変える為にどれだけ努力をしたのかを…
自分が変わった事に士郎は気が付かなかった。
今日も何時もの様に軽いトレーニングを済まして、予習をする。
最近は、夜もしっかり勉強して、運動しているせいかぐっすり眠れて目覚めも良い。
時間には目覚ましを掛けなくても起きれるようになった。
我ながら随分変わったもんだと思う。
夜に鏡を相手にやっていた表情のつくり方や笑顔のつくり方も少しは旨くなった気がする。
いつも、美味しい朝食を作ってくれる母さんにとびっきりの笑顔で挨拶をする。
「おはよう!母さん、今日も綺麗だね!」
《少し、家族に対しては照れるけど、喜んでくれているのが解るから、これからも続けよう》
「そう、士郎もかなりの男前よ!」
「そう、ありがとうね! 母さん」
今では顔を赤くしないで返せるようになった。
「歩美もおはよう! 眠そうだね、体に気をつけてね!」
「おはよう、母さん、兄貴…寝不足は試験前だけだから気にしないで…」
《今日は一言喋ってくれるんだ》
「解かった、体に気を付けて頑張ってね」
「…….」
《今日は此処までだな》
僕は母さんに感謝して朝食を平らげた、食器を洗ってカバンを持って玄関に向かった。
昔の僕は食器を下げる事もしなかった、今考えれば本当に駄目な奴だったんだな。
「行ってきます!」
「いってらっしゃ、士郎!」
「おはよう!二神さん! 相変わらず可愛いね!」
「おはよう!士郎くん…あれっ 髪型変えたんだね!」
「うん、どう? 似合うかな?」
「うん、凄く似合っているよ、一瞬、士郎くんが加奈子の」
二神《あれっ、今私何を言いそうになったのかな? まさか、まさか王子様に見えたとか言いそうだったのかな?》
「うん? どうしたの」
「あははは、何でもない、何でもないんだよ!」
二神《よく考えて見たら、士郎くんに私良く助けられていた。それに何時も私を褒めてくれる。それで本当はこんなにカッコ良かったら、まるでナイトか王子様じゃない》
「そう? 初めて見たけど、二神さんの焦っている顔も可愛いね!」
「そう..ありがとう..」
「どういたしまして」
「おはよう! 三上さんに角田くん! 今日は2人一緒に登校..良いな羨ましい!」
「士郎は最近テンション高いよな!」
「そうだね、人生楽しまなきゃ損だからね! 僕も頑張って角田くんみたいなリア充になりたいからね」
「俺がリア充? 違う、違う、本当のリア充なら、三上なんかと付き合わないで、麗華さん、そこまで高望みしなくても、せめて加奈子ちゃん位を連れているさ!」
「そんな、贅沢だよ、それは惚気かな! それにそんな事を言っていると横の三上さんが怖いよ?」
「……」
「あれっ、三上さんどうしたの? さっきから黙り込んで」
「あのさぁ、士郎くんだよね?」
「そうだけど」
「違う人に思える位変わったね…驚いたー」
「そうかな、自分では気が付かないけど、そんなに変わった?」
「うん、髪型が変わったのもあるけど、凄く、カッコよくなったよ、うん、本当に」
三上《不味い、まさか士郎、いや士郎くんが此処までカッコ良いとは思わなかった、前髪で目が見えなかったから解らなかったけど、かなり美形な方に入るんじゃないかな、うん、優しくて、気に掛けてくれる、美形な男の子、ヒロトがジャガイモに見えてきた》
「そうか、ありがとうね! 三上さん、それじゃ僕にもそのうち三上さんみたいな素敵な彼女が出来るかもね!」
「ははは、士郎、どうせ彼女を作るなら、こんなのじゃ無くもっと可愛い子の方が良いぞ!」
「そう、それでも僕は角田くんが羨ましいけどね!」
「ヒーロートー、こんなので悪かったわね、私だって…」
三上《今、何を言い掛けた? 私だって士郎くんの方が良い、そう言い掛けたんだ、不味い、まさか私本気で、違う、違う気の迷いだって…だけど、見れば見るほど美形にしか見えない》
「私だって何だよ?」
「私だって、貴方より、サッカー部の赤木くんの方が良いわ」
「そりゃ、漫画のキャラクターと比べりゃ当たり前だろう」
「そうね、さぁ行こうか、さぁ、さぁ、じゃあね!士郎くんまたね!」
「まだ急ぐ必要無いだろう!」
「白鳥さん、相変わらず美人だね、おはよう!」
「…….」
「どうしたの白鳥さん?」
「しし、士郎くんが化けた!」
「うん、少しイメージチェンジをしてみたんだけど、可笑しいかな?」
「可笑しくないよ? 凄くカッコよくなったと思うよ…本当に!」
「そう、有難う、冗談でも白鳥さんみたいな美人さんに褒められると凄く嬉しいよ!」
「そう? 私に褒められると嬉しいんだ、髪の毛触らせて貰って良い?」
「別に良いけど…何か照れちゃうね」
白鳥《うわぁ、凄くさらさらしている、何これ、見れば見るほど別人じゃない! この至近距離で見たら、「シャインズジュニアです」って言われても信じちゃうよ、正直好みだ》
「あの、そろそろ良いかな?」
「あっゴメンね!」
「全然、白鳥さんが触りたいなら何時でもどうぞ」
白鳥《正に、神対応だー》
「じゃぁ、また触りたくなったらお願いするね」
「神谷さん、おはよう! 昨日も遅くまで勉強していたの?」
「おはよう、士郎くんって誰!」
「いやだなー髪型は違うけど、士郎だよ!」
「あっ、本当だ士郎くんだ、その髪型凄く似合っているよ!」
「そう、ありがとう」
神谷《まるで別人じゃない、さっきからアクビをしたいんだけど、この士郎くんの前じゃしたくないな》
「それじゃ、士郎くんちょっと私急ぐから後でね」
髪型を変えただけでこんなに違うんだな。
これは、ユウカさんと惠さんに感謝しないと。
今迄嫌われていた僕にちゃんと普通に対応してくれるんだから凄いと思う。
士郎は恋愛はおろか、女の子と真面に話したことは無い。
だからギャルゲーを参考に判断する。
もう本当は、好意はかなり持たれているのに本人は気が付かない。
実際の女の子はギャルゲーの主人公みたいに八方美人じゃない。
笑ったり、喜んで話してくれる、それは好意のある相手にしかしない。
その事にまだ気が付いていなかった。
三上冴子 心の整理
「ヒロト…ごめんなさい別れて頂戴!」
「どうしたんだよ急に、冴子どうしたんだ…冗談だろ!」
「最近になって気がついたんだ…私達、多分愛し合って無いって」
「何で、何で、そんな事言うんだよ、なぁ」
「よく考えてみてよ! ヒロトの好みは私じゃないわ! 麗華さんの様に綺麗な人か、加奈子ちゃんの様に可愛い子でしょう!」
「だけど、俺はお前の事が好きなんだ」
「それが、勘違いなのよ…私も、貴方もね、お互の好きな異性は別のタイプ、だけど手が届かないから近くに居た人間で我慢している、そういう状態なの!」
「俺は違うぞ!」
「本当!」
「本当だ! 俺はお前が好きなんだ」
「本当に?」
「本当だ!」
「だったら、これは破って捨てて良いわね?」
「それ、何?」
「加奈子が実はヒロトの事が好きらしいいんだ、それでね無理元で良いから一度チャンスをくれって預かった連絡先…破って捨てて良いよね」
「ちょっと待ってくれ、加奈子ちゃんが俺の事を好きだって本当なのか?」
《これは、嘘だ…だけど勘違いする要素はある》
「本当だよ、だから、結構ヒロトの方を見ていたと思うんだけど…断って良いよね! ヒロトは私の事が好きなんだから!」
《まぁ、本当は又馬鹿やっている…そういう目で良く見てるだけだけどね》
「待ってくれ、加奈子ちゃんの告白を聞いてから…あっ」
「そう気が付いた? 私達は恋人じゃない、恐らく、私も貴方ももっと良い相手がいたら乗り換えたい...心の底でそう思っている…相手が居なくて仕方ないからお互いが幼馴染で妥協していた、それだけなんだよ..今朝言っていたじゃない…麗華さんや加奈子ちゃんが良いって、それが素直な気持ちなんだと思うよ!」
「お前はどうなんだよ!」
「好きな人はまだ居ないよ! だけど、ヒロトが恋人という意味で好きではない事は解った…私も同じ、きっとこの先、ヒロトよりカッコ良い人を見つけたら多分気持ちは変わると思う..多分、私のヒロトへの感情は恋愛では無く、何でも話せる親友なんだと思う…幼馴染で親友、それを勘違いしていただけ、お互い解りあっているから気楽で居られる…それだけなんじゃないかな?」
「そう言われてしまえば、そうなのかも知れないな、確かに、俺にも思い当たる節はある」
「そうでしょうね! あんだけ手を握ったりハグしたりしているのにお互いに、そこから先に進めないんだから、キスする気も無いし…ヒロト程のドスケベならそれ以上普通にしたがるでしょう?」
「俺は紳士なんだ!」
「嘘はいけないわよ! 部屋にエロDVDもあるし、男くさい事もあったわ!」
「お前なぁ…」
「ねっ、お互いに求め合う事が無い、それが証拠よ!..だから別れて元の幼馴染に戻る、それが良いと思うわ」
「そうだな、確かに冴子の言う通りだ…今からは幼馴染で親友、それで良いか?」
「ええ、それが正しい判断だわ…という事でこれからはベタベタも禁止ね…じゃぁ」
「えっ 連絡先は」
私は、アッカンベーをして走り去った。
もう、自分の気持ちには気が付いていた。
ヒロトも本気で私を好きで無いのにも気が付いていた。
それでもこうもあからさまだと、腹が立つ。
まぁ、私もヒロトを責められる立場では無いのは解る…
好きな人は居なくても気になる人は居るのだから…
だけど、心の中で、「そんなの要らないよ、俺が好きなのはお前だから」そう言って破り捨ててくれるかな、そういう思いもあった。
それをしなかったんだから、やっぱり私の考えは正しかったのだろう。
女の子の恋愛は一方的に失うものが多い、キスにしてもその先にしても。
だから、「乗り換えたい」そんな気持ちがある相手には捧げられない。
あっ、そう言えば加奈子の話は嘘だって言い忘れていたな、まぁ良いか?
しかし、ヒロトが一番好きなのは生徒会長の麗華さんで、加奈子は二番だったハズ..っていう事は、私って…うん、別れて正解だ。
その後、アホのヒロトは加奈子にアタックして見事に振られた。
「ヒロト君みたいに優しく無くて、頭の悪い人は好きじゃ無いです」
うん、こっちを見て涙目になっている。
からかってやろう…幼馴染として
「あれっ ごめんヒロト…嘘だって言い忘れていた!」
「冴子、貴様、ふざけんなよ..」
異性は感じない、恋ではない、だけど、親友ではあるのだから…
妹の友達と
学校の帰り道で歩美とその友達を見かけた。
昔の僕なら、回れ右して逃げて行っただろう。
だけど、それじゃ何時までたっても同じだ、心の中で「逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ」を連呼する。
えい、勇気出せ僕…まるで不審者みたいな動きで歩美の肩を叩いた。
「歩美、今帰りなの? 横に居るのは友達?」
「兄貴、あっお兄ちゃん! お兄ちゃんも今帰り?」
《完璧に猫被っているな…流石だ》
顔が笑っていない…言葉は優しい言葉だけど、気のせいか般若が見える。
「そう、今から帰るとこ、何処かに寄って行くなら母さんに言っておこうか?」
「そうしてくれる? それじゃねお兄ちゃん」
「「ちょっと待って、歩美ちゃん! 紹介してよ!」」
《ここは僕から自己紹介した方が良いよね?》
「初めまして、僕は歩美の兄の士郎と申します。妹の歩美とこれからも仲良くして下さいね!」
「私は木下美優です、宜しくお願い致します、お兄さん」
「あたしは、相原麻衣です、宜しく!」
「2人とも凄く可愛いらしいし、良い名前だね、それじゃ歩美、母さんに伝えておくから楽しんできてね、じゃぁ」
立ち去ろうとする僕の手を麻衣ちゃんが掴んだ。
「どうしたの?」
「あの、これから私達、カラオケに行こうと思っているんですけど、お兄さんもどうですか?」
「えっと僕は」
《不味い、不味い、歩美が明らかに不機嫌な顔でこっちを見ている》
「僕は、ちょっと用事があるから」
「少しだけでい良いんです、行きましょうよね? 歩美からも頼んでよ!」
「じゃぁ…お兄ちゃん、カラオケに行こう」
《渋々です…そう顔が言っている》
「じゃぁ、少しだけつきあちゃおうかな?」
「「有難う、お兄さん」」
(歩美)
不味い所で出会っちゃったな、まさかこの2人と一緒の時に会っちゃうなんて。
せめて他の子の時なら良かったのに、2人とも可愛いけど棘がありすぎなんだよ。
美優ちゃんは白薔薇なんて呼ばれているし、麻衣ちゃんは黒薔薇なんて呼ばれている。
美優ちゃんは大人しそうなお嬢様みたいな感じで可愛いけどちょっと腹黒い。
麻衣ちゃんはスポーティな感じでサバサバして見えるけど同じく腹黒い。
この2人に共通している点は、男性に対してやたらと理想が高くて平気で人を傷つける事だ。
美優ちゃんに告白した、イケメンの生徒会長に「私と釣り合うですって、何処が釣り合うのですか?」と言って振っていた。
その後も凄い罵詈雑言を浴びせる物だから、生徒会長は泣きはじめ、去ろうとしたら「逃げるのですか!」と引き留められて罵詈雑言が続く、最後には、あの凛々しさが売りの生徒会長が泣きながら走って逃げていった。 正直、可哀想で見てられなかった。
「あの程度で私と釣り合うなんて馬鹿にしていると思わない歩美さん」と言われた時にはつい言葉に詰まったよ。
麻衣ちゃんは麻衣ちゃんで野球部のキャプテンが地元のチームにも所属していて、地区大会で優勝した時に告白したけど「たかが、地区大会優勝位で私に告白? 安すぎない私?受けるんだけど」とか言いながら「せめて、全国大会で優勝なら解るけどね」なんて言っていた。 「じゃぁ僕が全国大会で優勝したら付き合ってくれますか?」と食い下がったら「そしたら、告白位は聞いてあげても良いよ! それでも断ると思うけどね」だって。
勿論、野球部のキャプテンは泣きながら去って行った。
そしてその事で精神的に病んだせいか県大会は一回戦で負けた。
そしたら「やっぱり、あの程度の男なのよ」だって。
二人とも外見とは違い凄くきつい性格をしている。
私達、女子は、男子が白薔薇、黒薔薇と言うのに対して白鬼、黒鬼と呼んでいる。
それでも彼女達がモテるのを考えると、男子ってドMなのか? そう考えてしまう。
はっきり言って兄貴は良い意味で変わった。
だけど、この二人のせいで又引き籠りにならないか…本当に不安で仕方ない。
さてと、歩美に恥をかかさないようにしないといけないな、まずは部屋に入ったらドリンクのオーダーだ。
ここは僕に勝手に決めさせて貰う、ノンアルコールのカクテルが良いだろう。
すこしアレンジして。
同じにしないで、それぞれの特徴に会うようにしよう。
「あれっドリンクのオーダーお兄さんが入れてくれたの?」
「うん、だから気にしないで好きな歌を選んでよ!」
《さっそくやらかしたじゃない、馬鹿兄貴、普通は何が飲みたいか聞くでしょう》
「何がくるのか楽しみだね、美優」
「本当、何が来るのかな麻衣」
《余計な事するから、もう戦闘モードじゃない》
「来たみたいだな、はい、これが美優ちゃんで、これが麻衣ちゃん、これが歩美ね」
「お兄さん、これ何! アルコールじゃないの?」
「違うよ、美優ちゃんのはノンアルコールカクテルで、サイダー主体のだよ、美優ちゃんて透明感があるイメージだから合わせて見たんだけど…駄目だったかな?」
ユウカさんと話しているみたいに、明るく笑顔で目を見ながら話そう。
「駄目じゃ無いよ…だけど、これメニューに無いんじゃない?」
「うん、だから特別に作って貰ったんだ…美優ちゃんに似合う感じでね、ここは驕りだから気にしないでね!」
「ありがとう、お兄さん」
美優《これの何処がオタクなのかな、凄くカッコよく無い?後でじっくり歩美ちゃんに聞かないとね》
「それであたしのは黒いんだね」
「うん、麻衣ちゃんは健康的でスポーティなイメージだから、コーラを主体のカクテルにして貰ったんだ、駄目かな」
「駄目じゃ無いよ…寧ろ有難う、お兄さんは本当に大人だね、同級生じゃここまで気が回らないよ」
「どうだろう? だけど可愛い子達に囲まれたら普通の男の子はこれ位してくれるんじゃないかな?」
「そ、そうだよね、うん」
麻衣《この人…凄く大人っぽいな、他の人と全然違うよ…》
「じゃぁせっかくだから乾杯でもしようか?」
「「「「かんぱーい」」」」
「誰から歌う?」
「お兄さんの歌が聞きたい!」
「お兄さんが最初に歌って…お願い」
歩美《不味い、お兄ちゃんは歌が凄く下手だ》
良かった。本当に良かった。
僕は歌の練習もしていた。
ユウカさんにもホストの人にもせめて6曲得意な歌を作れって言われていたから。
そして、真剣な恋の歌や盛り上がる曲が5曲、他に受け狙いが1曲必要、そう言われていた。
「仕方ないな、余り旨くないけど笑わないでね」
僕はシャインズの歌で「君だけを」をチョイスした。
歌はまだそれ程旨くない、だからアレンジした振り付けで、相手の目を見ながら歌う。
「君だけが好きなんだ」
その思いを込めて、彼女達を見つめながら歌う、美優ちゃんの目をのぞき込む様に、麻衣ちゃんの瞳をのぞき込む様に、歩美の目をのぞき込む様に、歌に気持ちを込めて歌う…これしか歌い方を知らないから。
美優《ねぇ、麻衣これってプロポーズなのかな、聞けば聞く程、私が好きなんだって聞こえてくるの》
麻衣《何をいっているんだ、これはどう考えても私に対しての告白じゃないか》
美優《違うでしょう! だってお兄さんは私を見つめながら歌っているんだから》
麻衣《見つめているのは、私だよ》
「あの….お兄ちゃんの歌終わったよ、次はだれが歌うの、居ないなら私が行こうかな」
「あっ、私が歌う」
「ズルい、麻衣」
麻衣ちゃんが歌いだした。
曲は「恋する少し前」というアイドルの歌だ。
この子凄いな、僕の目を見ながらのぞき込む様に歌っている。
僕が人から教えられた事が素で出来るんだな、流石、歩美の友達だ。
僕も負けられない、僕は麻衣ちゃんの目を見つめながら、麻衣ちゃんの歌に合わせて軽くダンスをしてみた。
これも、ホストの人から聞いた話が元だ。
うん、麻衣ちゃんの顔が少しだけ赤くなった。
良かった…悪い印象は無いだろう。
「麻衣だけズルい..それじゃ、お兄さん、美優とデュエットして下さい」
「えっ..良いけど、その曲歌った事が無いから…下手糞だけどそれで良いなら良いよ」
下手糞なりに自分なりに振り付けを考え歌ってみた。勿論、目は美優ちゃんから外さない。
「あははは、ごめんね、やっぱり旨く歌えなかったね…そろそろ、邪魔しちゃいけないから僕は退散するね、ここの会計は僕が払って置くから、目一杯楽しんでね!」
《良かった、ユウカさんとの出掛ける為に用意したお金がまだサイフに入っていた》
「えっお兄さんもう行っちゃうんですか?」
「うん、用事があるからごめんね!」
「また、今度、遊んで下さいね、麻衣楽しみにしてますから」
「うん、君達みたいに可愛い子なら大歓迎だよ…こっちこそ宜しくね、今日は楽しかった..じゃぁね」
「「はい」」
士郎がカラオケボックスを去った後、彼女達は歌も歌わずに話をしていた。
その標的になっているのは歩美だった。
「で、ブラコンの歩美ちゃん、これはどういう事なのかな…解るように教えてくれるかな?」
「私はブラコンじゃ無いよ?」
「ブラコンでしょう? お兄ちゃんを取られたくないから…オタクでキモイなんで言ってたんでしょう? あんな美形のお兄さんなのにさぁ…正直、麻衣のドストライクなんだけど」
「そうそう、あんな、シャインズでも通用しそうな位、美形のお兄さんがキモイ訳ないよね? 美優の好み歩美ちゃん知っているよね…どうして紹介してくれなかったの?」
「そうなんだ、麻衣ちゃんも美優ちゃんも、うちのお兄ちゃん、好みなんだ」
「当たり前じゃない、あんなにカッコよいのに気が利いて、凄く大人で..美優はきっと士郎さまに会う為に生れてきたんだ」
「違うよ、士郎さまの相手は麻衣だよ、そうに決まっている」
《不味いなーやりすぎだよ馬鹿兄貴、身の安全の為に兄貴を売っちゃえ》
「あのさぁ、だったらお詫びに一つ情報を上げるよ…お兄ちゃんは彼女が居ない、そして絶賛募集中だよ」
「「マジで」」
「そう、そうなの、歩美、美優お姉ちゃんって呼んでも良いよ、そうだ、甘い物好きだったよね! クレープでも後で奢ってあげるね」
「美優ちゃん、魂胆見え見え、美優ちゃんより私の方が良いよね? この後バーガーショップでお兄さんの事、聞かせてよ、勿論奢るから」
結局、歩美は2人に付きまとわれて夜の7時まで開放して貰えなかった。
《しかし、本当に変わったな…兄貴を辞めて、昔みたいにお兄ちゃんって呼んでみようかな?》
木下美優の場合
今日、物凄くカッコ良い人に会った。
私の友達の歩美ちゃんのお兄さん、士郎さんだ。
正直、最初に見た瞬間から、良いなこの人、位は思っていたよ…だけど、中身まで良いなんて思わなかった。
私の事を女子は白鬼なんて呼ぶけど、実際はそこまで酷い考えなんてしてない。
確かに生徒会長を振ったよ?
確かに頭も良いし、イケメンだけど、性格が悪い奴なんて付き合いたいと思わないじゃん!
しかも、告白がさ「君位じゃないと僕と釣り合わないから、付き合ってくれ!」なんて本当に馬鹿だと思う。
普通は容姿や性格を褒めたりするんじゃないのかな?
大体、私のどこが好きなのかも解らないじゃない?
所詮、外見しか見てないんだろうなというのがすぐに解るよ!
だから、何処が好きなのか? その事をトコトン聞いたら泣き出した。
これじゃ、私の事を好きになった理由も、何処が釣り合っているのかも解らない。
これで、本当に私と付き合いたいの?
そう思う位酷かった。
幾らイケメンでもこれじゃぁね。
私の理想は、そんなに凄いもんじゃない….ただ、楽しい時間を過ごせる相手、それだけだ。
その点、士郎さんは本当にカッコよいと思う。
だって、飲み物を指定しなくても、私に合わせた物をオーダーしてくれた。
凄いよね、普通に「何を飲みたい」でも良いけど、イメージから私に似合った飲み物をオーダーするなんてね…..
そうか、私のこの人のイメージは透明感なんだ、遠巻きに褒めてくれているんだな…その位は解る。
しかも、話す時も歌う時も私の目を見て話してくれる。
私の欲しかった物は正にこれだ、だって他の男子は目を直ぐに反らすから、気持ちなんて伝わってこない。
目を見て真剣に話を聞いてくれて、心地よい時間を過ごさせてくれる。
これだけで充分なんだけどね…まぁ、そこにシャインズ並みの美貌が加われば文句なんてつけようがないけど。
うん、これはもう狙うしかないな…だって、士郎さん以上に素敵だなんて思える人は他には居ない。
幸い歩美ちゃんは親友だから味方になってくれるだろう、麻衣は邪魔だけど恋愛に友情は関係ない。
正々堂々勝てば良いだけだ。
相原麻衣の場合
今日、私は恋に落ちたかも知れない。
まさか、カッコ良いとよく言われる私に、可愛らしいなんて言われるとは思わなかった。
しかも、その人が本当にカッコ良いんだ、驚いた本当に。
私の事を黒鬼なんていう人も居るけど…自分では鬼なんかじゃない…そう思っている。
野球部のキャプテンを振ったのが元でついたんだと思うけど…さぁ、私おかしな振り方して無いんだよね。
だって、野球部っていつも遅くまで練習しているんだよ?
付き合ったとして何時遊ぶのって感じだよね?
選抜チームに居るなら、地区大会で優勝したなら、次は県大会でしょう?
遊んでいる時間なんて無いじゃん?
何を勘違いしたのか「全国大会で優勝したら付き合ってくれますか?」だって、馬鹿じゃ無いの?
普通だったら、付き合う前に友達になって、遊んだりして仲良くなってから「それじゃぁ付き合う?」そうなるのが普通だと思う。
お互いに何も知らないのに付き合うなんて、所詮は外見でしか判断してない証拠じゃん..断るしかないじゃんこれ。
私は悪くないよ?
だけど、私のこの考えは…違ったのかも知れない!
だって、そんな手順なんか、本当に好きになったら関係ない、そう思う程の相手に出会ったから。
歩美ちゃんのお兄さんの士郎さんだ。
あれは、本当にずるいと思う。
だって、いきなり可愛いって言われたし、私のイメージを的確に掴むし..あんなに真剣な目で…いや、あれは歌なんだ、そう解っているけど..引き込まれちゃうよ。
あんなカッコよい人に彼女が居ないなんて信じられない…だけど私にとってはラッキーだ。
幸い、歩美ちゃんとは仲良しだ、美優が邪魔だけど…恋愛と友情は別、そう言うじゃない?
美優には悪いけど士郎さんは譲れないな…
取り戻した妹の笑顔、動く女の子達
最近は毎日が楽しくて仕方が無い。
人間って凄く現金だと思う。
今迄は朝起きるのが辛かったけど、運動が苦にならなくなったり、勉強も解るようになってくると苦にならない。
今迄と違って、女の子と話す事ができるようになった。
それだけなのに大違いだ。
ただ、無視されない、悪口を言われない、挨拶したら挨拶を返してくれる、二三言だけだけど会話ができる。
これだけで、こんなに世界が変わるなんて思わなかった。
そして、今日も何時もの様に朝の日課の、軽い運動と勉強を済ませた。
そしていつもの様に母さんに感謝をししっかりと挨拶をする。
「おはよう母さん! 今日は和食なんだね!」
「昨日、サバが安かったのよ、それに士郎もたまには和食も食べたいでしょう?」
「確かにここ暫くは洋食が多かったから、和食が少し懐かしいね、しかもこのサバ脂がのってて凄く美味しそう!」
「そう言ってくれると思ったわ!」
最近の母さんは先に食事を済ましている事が多い。
そして、僕が食べ始めるとお茶を飲みながら、時に頬杖をついて僕との会話を楽しんでいるようだ。
暫くすると歩美が降りてくる。
歩美は何でも出来る良く出来た妹だけど、唯一の欠点が朝が弱い事だ。
最も、それに気が付いたのは最近の事だ、何故なら以前の僕は夜遅くまでギャルゲーをしていたから歩美より起きるのが更に遅かった。
「おはよう!歩美今日もとっても可愛いね!」
腹は括っている、今迄が悪すぎた..どんなに嫌われていてもしっかり気持ちを込めて挨拶をする。
そう決めた。
「おはよう!お兄ちゃん! お兄ちゃん昨日はありがとうね! お母さんもおはよう!」
「……..」
《あれっ! 僕の聞き間違いかな…今、お兄ちゃんって》
思わず、顔が赤くなる!
「お兄ちゃんはなに、顔を赤くしているのかな? 私だってお兄ちゃんがちゃんとしていてくれるなら、ちゃんとお話し位するよ? 」
歩美《二人に言われるまで気が付かなかったけど…確かに今のお兄ちゃんはかっこ良いな..うん》
「歩美、ありがとうね! これからもお兄ちゃんと呼んで貰えるように頑張るよ!」
「そう、頑張ってねお兄ちゃん…流石にご飯食べようよ、ねぇ」
「そうだね..うん」
「すかっり、元の仲良し兄妹に戻ったのね…良かったわね士郎」
「うん、本当にそう思うよ」
しかし、これだけで終わらなかった。
何時もは歩美は僕と一緒に登校はしない。
一緒に居るのは、家から僅かな距離なのに必ず時間をずらして登校していた。
「すぐ、そこまでだけど一緒に行こうよ!」
「うん!」
いきなり登校の誘いを受けた。
「じゃぁお兄ちゃん、ここでお別れだね、行ってらっしゃい!」
「行ってきます! 歩美も行ってらっしゃい!」
「うん、行って来るよお兄ちゃん!」
これは昔の2人のやり取りだ。
勇気を出して良かった。
無くしてしまっていた、家族の笑顔が取り戻せただけでも頑張ったかいがあった。
そう言い切れる。
少なくとも以前のままの僕だったら母さんも歩美も笑ってはくれなかっただろう?
これだけでも成功だ。
「おはよう! 二神さん、いつ見ても可愛いね!」
二神《今日は負けないよ》
「おはよう! 士郎くん! 士郎くんは今日もカッコよいね!」
二神《ふふっ士郎くん顔が赤くなっているよ..案外自分が言われると照れちゃうでしょう》
「ありがとう!二神さん、そんなこと言われたことが無いから照れちゃうよ!」
「そうかな、それは置いて置いて、私は士郎くんって下の名前で呼んでいるよね?」
「確かにそうだけど、それがどうかしたの?」
「うん、だから今度から士郎くんも加奈子ちゃんって呼んでね…それじゃ先に行くね」
二神《これで少しは意識してくれるかな?》
「うん、解ったよ加奈子ちゃん!」
二神《うわっいきなりなんだ、これじゃ顔が赤くなっちゃうよ…先に歩いていて良かった》
私は、返事も出来ないでそのまま早歩きで歩いていった。
「おはよう三上さん、あれっ今日はヒロトは一緒じゃないの?」
「おはよう!士郎くん 幼馴染だからって何時も一緒に居る訳じゃないわよ?」
「そうなんだ、だけど二人って公認カップルじゃない?」
「皆んなが勝手に言っているだけだよ!」
「あれっ、だけど前にラブラブなのさって言って無かった?」
「あれは虫よけに言っていただけだよ? 私は絶賛フリーなのです!」
「そう、なんだ…何だかごめんね!」
「別に良いけどさぁ…そう言えば士郎くん、前にヒロトとからかった時にヒロトが羨ましいとか言っていたよね? なんだったら私とつき合ってみる? あの時のヒロト以上にラブラブ対応を保証するよ?」
「えーと」
僕《これ冗談だよな? 僕なんか好きになってくれる訳が無いし》
「冗談だよ! だけど、私の事は冴子ちゃんって呼んでね! 別に深い意味は無いけどさぁ、士郎くんって私は下の名前を呼んでいるのに可笑しいからさ!」
「解かった、冴子ちゃん」
「…..」
三上《これは効くな、効いた、不味い顔が赤くなっちゃう》
「どうしたの」
三上《また、真顔で近いよ》
「あっゴメン…わたし、日直だった先に行くね!」
「うん、それじゃ後でね」
「おはよう!白鳥さん今日も美人だね!」
白鳥《この間は不意をつかれたけど..今日は驚かないわよ》
「おはよう、士郎くん! 今日もハンサムさんだね! この間みたいに又髪を触っても良い?」
「はい、どうぞ、白鳥さん!」
「ありがとう!」
白鳥《このさらさら感が本当に堪らないわ..この間も触らせて貰ったけど..思わず髪フェチになりそう》
「そろそろ良いかな?」
「そうね、ありがとう!」
白鳥《 士郎くんを彼氏にすれば膝枕でもしてあの髪を思う存分触れるのかな? それも良いな…あの手触りもそうだけど、あの恥ずかしそうな顔も最高だよ…私って士郎くんモフリスト?》
「あの、白鳥さんどうしたの?」
「何でもない!何でもないんだよ士郎くん」
白鳥さんも走っていっちゃった。
「おはよう!神谷さん、今日は眠そうじゃ無いんだね?」
「おはよう! 士郎くん私だっていつも眠そうにしている訳じゃ無いよ?」
「そりゃ、そうだよね!…眠そうな神谷さんも綺麗だけど、シャキッとしている神谷さんは3割増し位綺麗だね」
「そそそ、そうかな!」
「うん!」
神谷《ヤバイな、だったら深夜遅くまでゲームやるの辞めようかな…》
「そうか、じゃぁ少し夜更かしは控えようかな?」
「絶対にその方が良いよ!」
「士郎くん、ありがとうね..じゃぁ私は先に行くわ」
こんなに周りは変わっているのに当の士郎はようやく普通になれた、その位しか思っていなかった。
まさか…
「ねぇ歩美ちゃん、今日歩美ちゃんの家に遊びに行っても良い?」
美優《歩美ちゃんの家に行けばお兄さんに会えるかも知れない》
「あっ美優ちゃんズルい!美優ちゃんが行くなら麻衣も行く!」
麻衣《抜け駆けは許しません、ええ絶対》
「ズルいって何? ただ私は歩美ちゃんの家に遊びに行こうと思っただけだよ」
「そう、だったら、私も行って良いよね?」
「勿論だよ! (チェッ)」
麻衣《今、舌打ちしたよね..まぁ良いんだけどね》
「あの、まだ私は来て良いとか言ってないんだけど…」
「歩美、断ったりしないよね! 親友だもんね!」
「そうだよ、美優ちゃん、歩美ちゃんが断るわけ無いじゃん! ねぇそうでしょう?」
歩美《あれっ可笑しいな、この二人凄く綺麗で可愛かったはずなのに、何時もと感じが違うよ、思わず引く位….絶対にお兄ちゃん目当てだよね》
「そっそうだね、じゃあ遊びに来る?」
「「うん」」
歩美《お兄ちゃんごめん…断れなかった》
「歩美ちゃん、お兄さんは何時帰って来るのかな?」
「お兄ちゃんは中学生だから何時も後1時間位したら一旦帰ってくると思う..」
「そうなんだ、楽しみだね美優ちゃん」
「そうだね麻衣ちゃん」
歩美《こんな時だけ仲が良いんだから》
「あっお帰り、お兄ちゃん」
「「お邪魔しています、お兄さん」」
「美優ちゃん、麻衣ちゃん来てたんだ、楽しんでいってね」
「えーお兄さんは?」
「僕はこれから出かける予定なんだけど」
「そんな、少しで良いから居て下さいよ! ほら歩美からも頼んで」
「お兄ちゃん、ちょっとだけで良いから、お願い」
「仕方ないな、ちょっとだけだよ! 」
《せっかくだから、何かおもてなししようかな》
「ありがとう、お兄ちゃん」
「じゃぁ、着替えてくるね」
「「はい」」
折角遊びに来てくれたんだ、何か作ってあげようかな..そう言えばホットケーキ粉があったっけ。
さてと、ホットケーキを焼いて、紅茶でも入れていけば喜んでくれるかな。
僕は手早くホットケーキを焼いてメイプルシロップをふんだんに掛けた。
そこにバターを落としてはい、完成と。
紅茶もしっかりと茶葉からいれる。
うん、これは昔、歩美が喜んでくれた物だ、即席で作るには上出来だろう。
さてと、
「ホットケーキを焼いたから持ってきたよ!」
「えっ、それってお兄さんの手作りなの?」
「そうだよ、麻衣ちゃん、口にあうかどうか解らないけどね!まぁ食べてみて!」
「お兄さんの手作りか..良いな歩美は、うん美味しそうだね!」
「さぁ、冷めないうちにどうぞ!」
「「「いただきます」」」
「これ、美味しい、ふっくらしてて口が蕩けそう」
「本当にしっとりしていて美味しい! お母さんのとは大違い」
「良かった満足して貰えて」
「お兄ちゃん、これ、昔に作ってくれた奴だよね!」
「まぁね、歩美の大好物を思い出して作ってみたんだ…好きだろう?」
「うん」
美優《あの笑顔、絶対にブラコンだよね?》
麻衣《あれで違うって言い張るんだから…兄妹だからライバルにはならないから良いんじゃない》
美優 《そうだね》
それから、暫く話しをしたりゲームをして時間を過ごした。
今日はユウカさんの所に顔を出したかったんだけど、キャンセルした。
久しぶりに妹とのコミュニケーションだ優先させて貰おう。
妹と不仲だった事を知っていたユウカさんは
「良かったじゃない、せっかく仲直り出来たんだから私の事は気にしないで」
だって、うん、本当に大人だな。
しかし、2人ともよく僕に触ってくるな。
「あのさぁ…僕だけ名前で呼ぶのもなんだから、士郎さんって呼んでくれる?」
「「どうしてですか?」」
僕《今日言われたんだよな..私が下の名前で呼んでいるんだから、士郎くんも下の名前で呼んでって》
「親しい人には名前で呼んで欲しいからね!」
「「はい..その士郎さん」」
二人とも顔が赤くなって本当に可愛いな。
「あのっ お兄ちゃん、私もそうした方が良い?」
「歩美は、そのままで良いんじゃないかな..もうずうっとそうじゃない」
「そうか、そうだよね..うん」
歩美《しかし、お兄ちゃんはかっこよくなったけど相変わらず、朴念仁だよね、この二人こんなに解かり易いのに》
「さてと、結構遅くなってきたから帰った方が良いんじゃないかな?」
「まだ、大丈夫です!」
「私も大丈夫です!」
「そう、だけど、女の子なんだから余り遅くなると危ないよ! もう暗いから送っていくよ」
「えっ、士郎さんが送ってくれるの?」
「勿論」
「だったら、もう遅いし麻衣は送って貰おうかな!」
「それじゃ、美優もお願いします!」
「それじゃ、歩美二人を送っていってくるね」
「行ってらっしゃいお兄ちゃん」
「行ってきます」
何故か、2人に腕を組まれた状態で色々話しながら歩いた。
美優ちゃんの家は近くなので先に送っていった。
その際に、家が遠い麻衣ちゃんを美優ちゃんが羨ましがっていた。
女の子に懐かれるのは凄く嬉しい、しかも二人とも対照的な美少女なら尚更だ。
麻衣ちゃんを送り届けると、両手が自由になった..少し寂しい気がする。
此処まで懐かれると相手が子供とは言え嬉しい。
妹が増えたみたいで凄く嬉しい。
「彼女にはしないの?」 そんな声が聞こえた気がした。
うん、しないよ….二人は凄く可愛くて綺麗だけど、妹と同じ小学生なんだから。
手なんかだしたら、また妹から白い目で見られるのは必至だもの。
それに僕だって常識位は弁えているよ!
これからの事 思考中
ここまで、自分が思った以上に速く成果が出ている気がする。
家族との中は無事修復が終わり、昔のように楽しい時間を過ごせるようになった。
ユウカさんという僕には勿体ない位の年上の友達も出来た。
クラスの女子達からも嫌われ者から脱出出来たような気がする。
此処まできたんだ、もし出来るなら、同年代の女の子の友達が欲しい。
朝、挨拶する位じゃまだ友達とは言えない気がする。
これからは、学校に居る時間も、もっと有効活用してちゃんと話していこう。
恋人、そこまでは高望みしない….だけど、友達位は欲しい。
休みの日に一緒に出掛けたりするような女友達が欲しい。
贅沢なのは解る…だけど、少し位上を目指しても良いだろう。
士郎はギャルゲーをしていたので、またもや勘違いしていた。
確かにギャルゲーのヒロインは恋人でも無いのによくデートをしているが、現実社会では、彼氏以外と一対一でデートする女の子は少ない。
彼氏じゃなくても一対一でデートする相手は好感度の高い相手だ。
その事にまだ気が付いていない。
また会う日までお別れ!
「ねぇ士郎くん、デートしようデート!」
それは一本の電話から始まった。
この電話の相手はユウカさんだった。
「えっデートですか?」
「そう、もう結構士郎くんはカッコ良くなったからさ、テスト! 明日、私をエスコートしてね!…じゃぁ」
電話は切られてしまった。
正直言って、僕はまだあまり変わっていない気がする。
だけど、ユウカさんが誘ってくれたならやるしか無い!
しかも、テストと言われたら、最高のデートを演出しよう..頑張らなくちゃ
朝9時にユウカさんを迎えに行く。
「随分、早いのね!」
もうここから多分採点が始まっているのだろう…
「うん、ユウカさんに会いたくて早めにきちゃった、丁度近くでモーニングブッフェをしているから食べに行かない?」
「そうね、まだ朝食前だから食べに行こうか? 車は出した方が良い?」
「そうだねお願い出来る?」
「勿論!」
僕は残念ながらまだ未成年で車の免許を持っていない、昨日から悩んだ末にここは甘える事にした。
「ここで良いのね!」
「うん、モーニングメニューでもメニューが豊富で美味しいらしいよ、さぁ入ろうか」
僕は、ユウカさんの手を取ってエスコートした。
「凄いね、最初の頃とは大違い」
僕は目を見ながら答えた。
「そりゃ、ユウカさんが相手だからかな? だけど、本当は結構緊張してます」
ユウカさんは笑いながら
「そりゃそうだよ! そこまで完璧に出来たら、自分なんか換える必要も無いでしょう!」
「そうですね」
お店に入り店員さんと話す。
席の指定をする、普通なら窓際の席を選ぶのが定石、だけどユウカさんは有名人、そう考えたら目立ちにくく、中央のテーブルにあるブッフェに近い場所が良いと思う、その席を指定した。
「畏まりました、どうぞ」
そのまま店員さんについて行き席に着く、勿論ユウカさんは奥の席に座って貰う。
「ドリンクを持ってきますね」
自分の分はウーロン茶、ユウカさんの分はレモンティーをセレクト。
ユウカさんは何時もレモンティーを好んで飲んでいた、これでいい筈だ。
「ユウカさん、良かったら先に料理を選びに行って下さい」
「そうね、その前に教えてくれる!」
「どうぞ、何でも聞いて下さい」
「席は何でこの席を選んだの?」
「そうですね、定石なら窓際の席が一番良いんだと思いましたが、ユウカさんは有名人なので目立たない席を選びました」
「そう、解ってて選んだのね! それなら問題無いわ」
ユウカ《この子の中では私ってまだ、ユウカ様なんだわ、多分他の人は気が付かない位変わっているのに》
「はい」
「それじゃ、早速料理を取りに言って来るわね」
その後、料理を食べながら色々な話をした。
目を見つめながら、表情に気を付けながら会話を楽しんだ。
「美味しい朝食をありがとう、それで次は何処に行くの?」
「この場所へお願いします!」
「この場所ね! この場所は私も行った事は無いわ..流石士郎くんね!」
僕は新しく開発された海の近くの場所を指定した。
この場所にはテレビ局を始め、変わった商業施設や遊べる海岸、小さな遊園地もある。
「へぇー不思議な建物ね、駄菓子屋さんに餃子専門店に給食をモチーフにした食堂もあるのね!」
「ですが、ここの目的はこっちです!」
「お祭り広場…へぇーこんなのあるんだ」
「たまには童心に帰ってこういうのも良いんじゃないですか?」
「そうね、面白そう!」
射的をしたり、輪投げを楽しんだ。
その中でもユウカさんはスマートボールに嵌っていた。
球が揃えばキャラメルが貰えるだけなのに…
僕は横で昔のゲームで遊んでいた。
「こういう、古いゲームもたまには面白いわね!」
ユウカさんは沢山のキャラメルを近くの取れなかった子にあげていた。
こういう、さり気ない仕草が彼女の魅力だろうな…そう思った。
「此処でのデートはこれだけじゃ無いんですよ…次はお化け屋敷です!」
「お化け屋敷? そんなの迄此処にあるの?」
「面白いでしょう?」
お化け屋敷に入った、僕としてはそこそこ怖いのにユウカさんははしゃいで居た。
「出口で500円払うとお化け屋敷での写真が貰えるんです」
「へーそうなんだ」
ユウカ《よく、考えているわね》
僕はお金を払い写真を受け取りユウカさんに渡した。
「あれっ、士郎くん何で目を瞑っているのかな? もしかして怖かった?」
「全然!」
「本当かな?」
冷やかされた。
それから、僕は昼食の場所にエスコートした。
「今度は何処に案内してくれるのかしら?」
「お腹がすいてきませんか? 昼食の予定です」
「そうね、確かにお腹がすいてきたわね」
僕はあらかじめ予約しておいたお店にエスコートした・
「回転鍋? 何これ?」
「鍋がくるくる回っているんですよ!」
「へぇーそうなんだ!って騙したわね士郎くん! 回転寿司のお鍋版か珍しいね」
「多分、此処にしか無いような気がします!」
このお店は各個人の前に鍋がある、そして回転寿司の様に具材が回って来るので好きな具材を取り鍋を完成させて食べる、そういうお店だ。
「本当に良く探すわね! 凄いわこれ」
結局、ユウカさんは面白いのか片っ端から具材を取っていた。
そして、少ししか食べないので僕が無理をして全部食べた。
少し、気持ち悪い。
「さぁ次は何処に連れて行ってくれるのかな?」
その後、僕はビーチに案内した、このビーチは人工的に作った物で泳ぐ事は許されないが、裸足で水につかったりして浜辺の気分を味わえる。
「なかなかドラマチックな場所ね!」
結構、楽しんで貰えたような気がする。
「ちょっと買い物してくるから待ってて」
そう、言い残してユウカさんは行ってしまった。
何かついて行ってはいけない雰囲気なのでそのまま待っていた。
30分後ユウカさんは戻ってきた。
「さぁ 次は何処に連れていってくれるのかな?」
「はい、観覧車です」
「そう、だったら都合が良いわ」
「何でしょうか?」
「うん、何でもないわよ!」
この観覧車は凄く大型で一周するのに約30分掛かる。
ユウカさんをエスコートして乗り込む。
「士郎くん話があるの!」
ユウカさんが真剣な顔をした。
「士郎くん、貴方は素晴らしい男の子よ、絶対に将来一流の男の子になるわ」
「ユウカさんにそう言って貰えると照れちゃいますね」
「うん、絶対に一流になるわ、私が保証してあげる…士郎くんを見て思ったの…今の私は何なのかってね」
「どうしたんですか? 急に」
「いえね、士郎くんを見ていたら、私ももう一度カムバックしよう…そう思うようになったのよ!」
「そう、なんですか、ユウカさんなら絶対できますよ!」
「それでね、今度は私が頑張る番、士郎くんが頑張ってカッコよくなったように、今度は私が頑張るわ」
「そうですか! そしたら僕は応援します」
「ありがとう! だけど、私の入っていた事務所は恋愛が禁止なの…だからこれでおしまい..最も、今の士郎くんは考えられない位カッコ良くなっちゃったから関係ないかな」
「そうですか…今迄有難うございました…ユウカさんに教わった事も過ごした日々も僕は一生忘れません」
「何しょげているのかな? これをあげるから、これからも頑張りなさい!」
「これなんですか?」
「読んで見て」
「世界で一番大好きな士郎へユウカ」そう書いてある。
「これは?」
「士郎くん、いや、士郎、もっと、もっと頑張って一流の男を目指しなさい、そして自分が納得する位の男になれたらもう一度私に会いに来なさい…その時までに私は必ずトップアイドルに返り咲くわ…士郎に負けない位にね…その時には本当の恋愛をしましょうね!」
「解りました」
ユウカさんが首に手を回してキスをしてきた。
僕のファーストキスは、ほんのりと甘い大人の味だった。
「これは何時かの先払い、流石の士郎もキスの仕方までは解らなかったのね」
ユウカさんはペロっと舌をだしてアッカンベーをすると僕を置いて走って行ってしまった。
こうして、僕は一つ大人になった。
ガールズトーク ?
「今日バーガーショップに寄ってから帰らない?」
「二神が誘うなんて珍しいね、良いね寄って行こう」
気が付くと、二神、三上、白鳥、神谷の4人で行く事になった。
「話したいことは解るよ、士郎くんの事でしょう?」
「そうなんだけどさぁ…又彼変わったよね! ただ、カッコ良いだけじゃ無くて、こう旨く言えないけど儚げと言うか、悲し気というか…あぁ何て言えば良いんだろう! 解らないや」
「言いたいことは解るよ! またカッコ良さに磨きが掛かったよね、寂しげな笑顔には私も魅了されるから解る!」
「今迄が優しい明るい男の子だったのに、そこに絶妙な感じで暗さが入って来たよね? 何処までカッコよくなるのかな?」
「解るわけ無いじゃん、だけど相当な事があったんじゃないかな? 変わりすぎだよね?」
「本当にね、所で二神ちゃん、今日は何か用があったんじゃないの?」
「いやさ、もうすぐ卒業じゃん」
「それがどうかしたの?」
「いや、誰か告白したりするのかなーなんて」
「うーん、難しいかな、だけどうちってエスカレーター式だから皆んなこのまま高校に行くでしょう?だったら急がなくても良いかなって」
「というか、釣り合うのかな? 正直かっこよくなりすぎじゃない? 今の士郎くんの隣にいるプレッシャーに耐えられる自信は無いな!」
「それじゃ、リタイアかな?」
「いや、完全にリタイヤじゃ無いよ? 万が一士郎くんから告白を受けたら勿論OKするから」
「そう言えば、二神も三上もズルいよね? ちゃっかりと下の名前で呼んで貰らう約束してさ」
「勇気出すか出さないかの差でしょう?加奈子ちゃんって呼んでって言うの結構勇気が必要だったんだよ!」
「そうだよ、私だって冴子ちゃんって呼んでって言うのは凄い勇気が必要だったんだからね!」
「そうだよね、冴子ちゃんそこからジャブを打って玉砕したんだよね?」
「煩いな…まぁそうだけどさぁ」
「だけど、そう考えたら白鳥さんは何時も士郎くんの髪を触っているよね!」
「うん、あのサラサラ感とモフモフ感は堪らないよ」
「いいいな、それ」
「結局、今すぐ行動を起こす、そういう人は居ない訳ね?」
「そうだね!」
「それじゃ、たまにこういう感じで集まって話さない?」
「良いね、それ、そうしようか?」
「じゃぁ、今日はハンバーガーを平らげて解散ね!」
気が付くと1時間近く彼女達は士郎について話していた。
士郎…ようやく気が付く
そして、僕はまたホストの人達を見にここにきている。
時間はまだ早いから此処に、皆川さん達は居ない。
だから、ベンチに座りただ、ぼーっとしていた。
ユウカさんが僕の傍に居なくなった事が思いのほかショックだったみたいだ。
今思えば、家族以外で僕に優しくしてくれたのは彼女だけだった。
クラスや家族に嫌われて僕は変わろうと決意してもがいていた。
その僕に手を差し伸べてくれたのが彼女だった。
彼女が年上でも、太ったおばさんでも気にはならなかった。
だって、一緒に居るだけで、楽しい時間が過ごせたから。
女性の部屋に入るのも、女性とあんなに長い時間過ごしたのも、家族を除けばユウカさんだけだ。
そして、初めてのキスも彼女だ。
元アイドルが僕の下まで降りて来てくれたんだ…今度は羽ばたいて僕が彼女の所まで行くのが筋だろう。
ユウカさんの事だ、きっと直ぐにまた返り咲くだろう!
その時の自分がこのままで良いのか? 良い訳が無いだろう! 一流の男になってもう一度会うって約束したじゃないか!
《そうだよね、もっと、もっと自分を磨かないと…ユウカさんに認められる位に》
「あれっお前、まさか士郎か?」
「皆川さん、お久しぶりです!」
《此奴、本当に化けやがった…何があったんだ、才能はある、確かにそうは思った、だがまだ僅かな時間しか経ってないのに》
「士郎、久しぶりに会ったんだ飯でも奢ってやるからついて来い!」
「ありがとうございます!」
皆川さんは近くのファーストフードに連れて行ってくれた。
「で、何があったんだ!」
僕は、自分とユウカさんとの事を話した。
「お前、ユウカからいったんだ! スゲーな」
《案外、これが此奴の凄さかも知れないな、全く物怖じしないで最初からあのユウカ様に行く何てな、しかもあのホストの選り好みが凄い彼奴に気に入られていたんだ》
「だって、貰ったリストの中では一番の有名人だし、ダメ元で挑戦してみたんですよ!」
「そうか!そうか、やる気の在る事は良い事だ!」
《だから、此奴変わったんだな、前と違って垢ぬけていやがる、もう既にホストと並べてみても引けをとらないな、案外、このまま化けていったら、うちのナンバー1、凍夜を超える人材に成るかもな》
「どうかしたんですか?急に黙り込んで、もしかしたら僕怒らせちゃいました」
「いや、違う、士郎、お前さ自分が随分変わった事にまだ気が付いて無いのか?」
「何か変わりましたか?」
「かぁー、やっぱり天然か…天然なんだな、そこまで凍夜と同じとはな…あっ」
「どうかしましたか?」
「そうだ、士郎、久々に修行してみようか? 修行!」
「ビラ配りですか?」
「違う、あそこに結構可愛い女子高生が居るよね、あの子達と仲良くなって帰って来る、それだけだ」
「それだけですか?」
「そう、それだけ…まぁ、どれだけ成長したか俺も見たくなったからさ、チャレンジしてみようよ!」
《彼奴は、世の中を知らないな、あの女子高生たちはこの辺りじゃ有名なカリスマ女子高生なんだぞ、それはもう毎日のようにナンパされているけど全部轟沈している…まぁ本職の俺らは未成年には手を出さないから関りは無いけどな..》
「じゃぁ行ってきます!」
「綺麗なお姉さん、横の席に座っても良いですか?」
「はぁー何を言っているの? 他にも沢山席があるじゃん! 何で此処に座ろうとする訳?」
「いや、だってせっかく、飲み食いするなら綺麗な人の傍の方が良いでしょう! 見ているだけで目の保養になるし…」
「ナンパはお断りなんですけど!」
「ナンパなんてしませんよ…僕中坊だし..ただ一緒に楽しい時間を過ごせたらなと思っただけです」
「それって、ナンパでしょう? 何が違うのねぇ」
「まぁ良いじゃない、ナンパじゃ無いんでしょう! という事はここに居る時だけで連絡先の交換もしない、それで良いのよね?」
「はい」
「まぁ、それなら別に良いけど…まぁ弟みたいな歳みたいだし良いか? だけど、君は綺麗なお姉さんと過ごして楽しい時間を過ごせるかも知れないけど、私達に何のメリットがあるのかしら?」
僕はテーブルをチラッと見た。
そして一旦立ち去った。
「麗子ちゃん酷いな、あの子可哀想に行っちゃったじゃない」
「あの位で去っちゃう位なら声なんか掛けなければ良いのにさぁ」
「麗子ちゃんは本当にきついよね、だからそんなに可愛いのに彼氏が出来ないんだよ」
「煩いな、私は妥協をしたくないだけ、私の理想の相手が居たらすぐにでもラブラブになるよ!」
「あの子は全然駄目だったの? 留美から見たら、結構イケメン君だったからお話し位したかったな…」
「そうだよね、結構整っていたよね? 絵美から見てもそう見えたけど」
「あのぉ…メリット持ってきました」
僕は、ナゲットと大量のポテトと飲み物4つを買って来た。
「「「えっ」」」
「はい、これメリットですよ…さっきから手持ちぶささだったでしょう? 摘まむ物と飲み物を買ってきました」
「はい、今回は麗子ちゃんの負けね…しっかりとメリット持ってきちゃった…流石にこれで断ったら可哀想でしょう」
「はぁー何で、あんな事言っちゃったんだろう? 確かにこれじゃ断れないわね良いよ座りなよ!」
「ありがとう!」
さて、何を話せば良いんだろうか?
「へぇー皆んなで高校生でも遊べるクラブのイベント企画をしているんだ、凄いね!」
「士郎くん、それ目当てで近づいてきた訳じゃないんだね…てっきりパーティー券が欲しいのかと思ったよ」
「まだ中学生だから行きたくても行けないですよ! それに皆んな留美さんや麗子さんみたいに綺麗な人ばかりなんでしょう? 僕なんか行っても浮くだけですよ!」
「何で、そこで絵美の名前が抜けている訳? 差別を感じるな..酷い」
「だって、絵美さんは綺麗と言うより可愛いでしょう? 別に故意に抜いた訳じゃ無いんですけど、ごめんね」
「そうか、絵美は可愛いんだね、だったら許しちゃう..で、士郎くんは可愛い子と綺麗な子どっちが好み?」
「あまり、揶揄わないで下さいね…両方いけます」
「じゃぁ彼女にするなら、どっち?」
一瞬、ユウカさんの顔が浮かんだ。
「そうですね、外見は関係ないかな? 多分好きにならないと解らない気がします、ただ思うんですが、一緒に居るのが当たり前のような人、まるで空気のように傍に居るのが当たり前で、その人が居るだけで毎日が楽しくて仕方ない、そして、自分を高めてくれる、そんな人が理想です…だからどっちか選べません」
麗子《なんて顔をするのかな..思わず見入ってしまいそう》
留美《さっきまでもカッコいい子だなと思っていたけど..急に寂しそうな顔して、これは何なのかな》
絵美《年下なのに、何て顔をするのか..大人の人と話している感じがする》
「あのっ さっきから僕ばかりが話している気がします、今度は皆さんが話して下さい!」
「そうだね! 士郎くんは何を聞きたい!」
「皆さんの理想のタイプの男性はどんな感じですか?」
留美《不味い、一瞬頭の中で、それは君だよ!そう出そうになった》
「えーと年下なのに大人っぽいタイプかな..(ばれないよね)」
「そうなんだ、年下が好きなんですね?中学生でも大丈夫でしょうか?」
留美《聞かないでよ!》 「多分いけると…思う」
留美はじいっと絵美を見つめていた..早く助け船をだせ、そう訴えるように。
「絵美も年下が好みかな、士郎くんはかなり良い線いっているよ!」
「そうなんですか? 冗談でも嬉しいです、ありがとうございます!」
絵美《満更冗談でも無いんだけどな..》
「それで、麗子さんは?」
「えっ、私? そうね…困ったわね、士郎くんと一緒、好きにならないと解らないと思う」
「そうだよね、今日は話してくれてありがとう! 友人と約束があるから、これで僕は行くね!」
「そうなんだ、残念…そうだ連絡先交換しない?」
「えっ! 良いの?」
「勿論だよ! 滅多に教えないんだから他の人に教えたりしないでね!」
「絶対しないよ!」
「「「それじゃ、はい!」」」
「ありがとう、じゃあね」
外で皆川さんは待っていた。
「お前、凄いな!」
「えっ、普通に仲良くなって話していただけですよ?」
「あの子達は、カリスマ高校生って呼ばれてて、お前位の歳なら皆んなが仲良くなりたい子だぞ」
「それって、どういう事ですか?」
「お前って半端ない位モテているってことさ!」
「まさかーそれは無いですよ!」
「お前、本当に無自覚なんだな…仕方ない、これやるよ!」
「これは名刺ですか?」
「そうだ、よく見ろ!」
「えっ、ラブリードリーム本店…あのカリスマホストが居るお店で、美形芸能人でも面接で落ちたという、あのお店ですよね…皆川さん達ってあのお店の人だったんですか、凄いですね」
「裏見ろ、裏!」
「採用内定保証?」
「お前が、将来この道で生きたくなったら来い、無条件で採用だ」
「本気ですか?」
「あぁ、本気だ、ちなみに俺が自分からスカウトしたのは凍夜だけだからな? お前の言うカリスマホストのな、これで自覚したか?」
「少し、自信が付きました!」
「少しか? まぁ良いや…せっかくリストあげたんだから他の女とも仲良くしてみろよ..」
「前に貰ったリストですか?」
「あぁ」
「はい頑張ります!」
「最後に一つアドバイスだ、女に貢ぐ男が100人居たとすれば、逆に女から貢いで貰える男は1人しか居ない…まだ、学生のお前にそこまで言わないが、女から求められる男になれ…ユウカが言っている一流の男は知らんが、それが俺が知っている一流の男だ」
「有難うございます…僕、必ず、皆川さんみたいな一流の男になってみせます!」
「おう、頑張れよ..じゃぁ俺はそろそろ出勤準備しなくちゃならないから行くな」
皆川《俺は一流じゃない、オーナーと仲が良いから責任者になっているだけだ…しかし、此奴みたいなのが人たらしになるんだろうな? つい構ってしまう》
「有難うございます」
「お前は…まぁ良いや、また悩みがあったらこの辺りに来いよ? 暇だったら相手してやるからさ」
「はい」
士郎はようやく、自分が変わって来た事に気が付いた。
そして、真剣にユウカの言葉の一流の男について考え始めた。
妹達と
最近は家に帰ると妹の友達の美優ちゃんと麻衣ちゃんがいつもいる。
その為、余り気が抜けない、せっかく取り戻した歩美の笑顔を失いたくない、だから出来るだけカッコ良いお兄ちゃんでいないといけない。
「「「お帰りなさいお兄ちゃん(士郎さん)」」」
「ただいま、いつも歩美をありがとうね!」
「「はい、任せて下さい士郎さん」」
「それじゃぁ、一旦着替えてくるね」
「「はーい」」
さてと、今日は何を作ってあげようかな。
最近、家に帰るとかなりの確率で彼女達がいる。
未だに一流の男という物が解らないけど、今時の男性は料理位は出来た方が良いと思う。
テレビを見てもやっあぱりイケメンが料理していると様になっている。
昨日、ネットで簡単に作れるチョコムースのつくり方があった。
これにクッキーをつけて出してあげて、飲み物はグリーンスムージーをつけてあげれば良いかな。
「おまたせ、今日もこれ作ってみたんだけど、良かったら食べてね」
歩美「これ、お兄ちゃんが作ったの?」
士郎「まぁ、せっかく友達が来ているんだから、簡単な物だけど作ってみたんだ…あり合わせだから本当に簡単な物だけど」
最近のお兄ちゃんは変わりすぎだと思う。
今迄、料理やお菓子を作るなんて余りなかったのに、この前のホットケーキはまだしも、最近は色々な物を作ってくれる。
そして、ここからが更にズルい。
麻衣「これも士郎さんの手作りですか?」
士郎「うん、本当に簡単なものだけどね!」
美優「そんなこと無いですよ! いつも美味しいお菓子有難うございます!」
麻衣「あれ、士郎さんは飲み物だけですか?」
士郎「うん、食べるより作る方が楽しいから、三人が笑顔で食べてくれる..それが僕のごちそうだから」
昔のキモイ兄貴が言ったら蹴りを入れるよ!…だけど、最近のお兄ちゃんは本当にカッコ良い。
妹の私まで顔が赤くなってしまう。
その証拠に、男なんて関係ないとばかりに、外ではハンバーガとか頬張っているのに、2人とも少量づつ上品に食べている。
私? 私もこのお兄ちゃんの前ではどうしてもそういう食べ方になってしまうよ。
「じゃぁ僕はこれで…」
ここで引き留めるのが私の役割だ、美優も麻衣も「引き留めてね」目がそう語っている。
歩美「お兄ちゃん、良かったら今日も少しお話しない?」
士郎「そう? じゃぁ少しだけお邪魔しようかな?」
さて、何を話そうかな? 相手が小学生だからまだ気楽に話せるけど、正直僕は引き出しが少ない。
まして、美優ちゃんも麻衣ちゃんも歩美の友達だ嫌われる訳にはいかない。
美優「士郎さん、このムース凄く美味しい! お菓子作り好きなんですか?」
士郎「好きか嫌いかと言えば好きかな? でも何時も美優ちゃんや麻衣ちゃんが美味しそうに食べてくれるのを見ているのがもっと好きなんだと思う」
美優「そそそ、そうですか?」
士郎「うん、見ているだけで幸せな気分になるよ」
美優「…..あありがとうございます」
士郎「何でお礼何ていうのかな? お礼を言いたいのは僕の方なのに!」
美優「あは…そうですね…そうだ、美味しいお菓子のお礼ですよ!お礼です」
士郎「そう、ありがとう」
ほら、あの美優ちゃんが顔が赤くなって変な喋り方している。
麻衣「むー士郎さん、美優とばかり話してないで私とも話して下さいよ!」
士郎「うん、良いよ何を話そうか?」
麻衣「お兄さんの趣味は何ですか?」
僕の趣味? 困った、少し前ならギャルゲーだけど…今は..
士郎「実はまだ、これと言って無いんだよね」
麻衣「無いんですか?」
士郎「うん、正直いってこれがやりたいという物が見つからないんだ、だから色々挑戦中」
麻衣「そうなんですか? お菓子作りももしかしてその中の一つなんでしょうか?」
士郎「うん、今は何でも良いから挑戦して、やりたい事とか好きな事を探し中..だから趣味未満かな」
麻衣「そうですか…やりたい事見つかると良いですね!」
士郎「うん、でも最近一つだけ、楽しい事が見つかったんだ!」
麻衣「何ですか、それは!」
士郎「うん、歩美を含んで君たちの笑顔を見る事かな? それがしいて言えば一番楽しい事かな!」
麻衣「そそそそうですか!」
ほら、麻衣ちゃんも可笑しくなってきた。
「余り邪魔しちゃいけないから僕はこれでいくね」
「「あっ」」
流石に私でもこれ以上お兄ちゃんは引き留められないよ。
美優「相変わらず、士郎さんってカッコいいなー歩美ちゃんは良いよねいつも一緒に居られて!」
麻衣「うん、本当に他の男の子と違うよね、それにどうしてか解らないけど、前にあった時より哀愁が漂うというのかな、旨く言えないけど、凄くカッコ良くなったよね!」
美優「それじゃ、私の気のせいじゃ無かったのかな、前よりもカッコ良いって実は私も思っていたの、そういえば歩美ちゃん、何か知らない?」
歩美「解らないよ、だけど、確かに少し前から雰囲気がかわったけど」
美優「なんだ、歩美ちゃんも知らないんだ..残念」
その後、2人はお兄ちゃんについてずうっと話していた。
余りに遅くなったので今日もお兄ちゃんが家まで送っていった。
確かに二人は親友だけど…流石に毎日押しかけられるのはどうかと思う。
だけど、今のお兄ちゃんなら仕方ないかな。
一流の男って何だろう?
一流の男って何だろう?
正直、漠然として思いつかない!
正直考えれば考えるほど解らない。
皆川さん達に聞いて見たけど…
「お店のナンバー1、せめてナンバー3位まで入ればまぁ一流を名乗って良いんじゃないかな? そう思いませんか皆川さん」
「秀はそう思うのか? だが、本当に一流って言うなら、新宿でナンバー1、赤坂や銀座でナンバー1、その位のレベルじゃないか!」
「そうすね」
《確かに、ホストの一流ならそうなのかも知れない..だけどちょっと違う気がする》
麗子さん達なら何か解るかな?
あれから麗子さん達と連絡を取り合っていた。
「あれっどうしたの士郎くん、君から連絡なんて珍しいね」
「いや、聞きたい事がありまして」
「なに、なに、何を教えて欲しいの? 私で良ければ相談に乗るわよ?」
《一流の男って何ですか?とは聞けないよな..どうしようかな!》
「あの麗子さんにとってカッコ良い男性ってどんな男性でしょうか?」
「どうしたの一体」
《やだ、どうしたのかな? 頭の中に士郎くんが浮かぶわ》
「いえ、最近考えるんですよ…どういう男がかっこ良いのかなって、それを目指したいんですが解らなくなって」
「そうね、正直それは私には解らないわ…だけど、芸能人でも何でも良いから、自分がああなりたい、そう思う人物の真似から始めたら良いんじゃない?」
「ああなりたいと思う人ですか?」
「そうよ、私の場合は最初のスタートは憧れの先輩がいて、ああいう風になりたいな! そこがスタートだから」
「そう、なんですか?」
「そうよ、留美は、芸能人のユウカのようになりたいって所がスタート、絵美はアイドルのアーミンみたいになりたい、そんな所ね…だから士郎くんも誰でも良いから、ああいう人になりたい、そういう人を探して見ると良いかもしれないわよ?」
「そうですね、有難うございました」
「お役に立てたのであれば良かったわ! 所で今度また会わない? 新しいイベントを企画しているんだけど男の子の意見が聞きたいのよ?」
「僕でお役に立てるなら喜んで」
「そう、ありがとう、じゃぁ約束したわよ!」
「はい」
《そうか、目標になる人物か? まずはそこからだな》
変わった未来 (最終話)
時間が経ち、僕は高校生となった。
今迄の経験で僕が学んだ事は「自分が変われば世界が変わる」という事だ。
未だに僕は「一流の男」については解らない。
どこまで頑張れば一流と名乗れるのだろうか?
正直解らない。
あれから、貰ったアドレスに連絡を取ってみたが、話してみて素晴らしいと思える女性には会えなかった。
確かに肩書だけは素晴らしい人達だったが、ユウカさんの様に心から尊敬できる女性には出会えなかった。
僕の周りは本当に変わった。
中学時代のクラスの皆んなは優しいし、新しく知り合った女の子達とも旨く過ごしている。
ユウカさんはダイエットに成功して今では昔の様に「ユウカ様」としてトップアイドルとして活躍している。
自分でも少しは良い男になった….そう思ったが、テレビの中のユウカさんを見た瞬間に一流とは程遠いのが解かった。
「ギャルゲーの主人公のようになる」
そこから始めた事でここまで変わるとは思っていなかった。
そして、僕はいつかユウカさんに会わなければならない。
そういう約束だから。
その時に彼女をがっかりさせないように、頑張らなくてはいけない。
一流の男…今の僕には解らない、だけど、そこにいつかたどり着く。
それが…ユウカさんの僕の望みだから。
【後書き】
今迄応援してくれた方。
中途半端な終わり方をして申し訳ございません。
有難うございました。(この作品はかなり前に書いた作品の再度アップです)