女神との恋愛を手に入れたら地獄が待っていた。
僕の名前はヨージ。
剣と魔法の世界ルージナを救った勇者だ。
僕は神(残念ながら男)に召喚され、世界を救う事が出来たらどんな願いでも聞いて貰える。
そんな約束をした。
そして僕は約束を果たしてここに居る。
「ヨージ君久しぶりだね!」
「本当に永かった…」
「そうだね…さぁ約束だ願いを言いな..僕がどんな願いでも叶えてあげるよ….王になりたいのかな? それとも無限のお金? 不老長寿?何が願い!」
「僕の願いは女神アテナとの結婚です」
「ちょっと待った…それが君の願いなのか? 流石に私の権限を越えるから..待って」
「解りました」
《流石に無理だよな…だけど、転移前の小説を読んでも漫画を読んでも…あれ程綺麗な女性は居ないと思う…無理元だ》
暫く時間が経った。
「ヨージ君…早速、ゼウスと話しをしたんだけど…面白いから良いそうだよ!」
「そう、なのですか?」
「だけど、ゼウスが言っていたけど…凄い勇者だなって」
「そうですか?」
「ただ、流石に女神の心を弄る訳にはいかないから、アテナと君を子供に転生させて双子にするって」
「兄妹で結婚って出来ないんじゃないですか?」
「あちらの神の事は詳しくは知らないけど…近親婚はOKなんだってさぁ…それでね双子に産まれて、婚約者という形にするらしいよ」
「そうですか?」
「だけど、約束できるのはそこまで…そこからは君が切り開くしかない…それで良いかな…それ以上は相手が女神だから、無理みたいだ」
《そうだよな…アテナにゼウス…良くここまで交渉してくれた》
「ありがとうございます…神様」
「うん…じゃぁ転生させるから…頑張ってね…心配だから勇者の能力はそのまま残してあげる…頑張って生き延びてね」
「えっ何で!」
《大丈夫なのかな…ゼウスが、凄く勇気があるなって言ってた…しかも勇者の力は可愛そうだから持たせてあげるように言っていた…どんな女神何だろう》
「オンギャオンギャ(無事転生できたみたいだ)」
横を振りむく、赤ちゃんだから良くは解らないけど凄く神々しい赤ちゃんが寝ていた。
《多分、彼女がアテナだ》
彼女と目があった。
凄く可愛い顔なのだが…何故か不敵な笑顔に見えた。
その瞬間…僕の顔の近くに蜘蛛が現れた。
この種類の蜘蛛は知っている….毒蜘蛛だ。
《不味い、不味い、不味い…赤ん坊だったら、刺されて死んでしまう》
僕は手を動かした。
赤ちゃんだけど、体は動いた。
うん、勇者としての力はあるのかも知れない。だけど、赤ちゃんなのだから思うように動かない。
この蜘蛛の毒は触っても火傷のような激痛が走る…僕は枕を頭の下から抜き取ると…それで押しつぶした。
これで、安心して眠れる…そのまま僕は眠りについた。
3歳になった。
3歳になるまで、僕は何度も死に掛けた。
階段から落ちたり、崖から落ちたり、僕のミルクに毒が入っていたりした。
多分、これはアテナが遣った事だ。
良く考えたら、アニメや小説では彼女は物凄く綺麗な少女で書いてあったが、よく考えたら主神にすら戦争を挑む女神だった。
そして、彼女は処女神だ..男嫌いだ…それが子供にされ婚約者なんて押し付けられたら…うん、殺す気にもなるだろう。
《何故、僕は、その事を忘れてしまっていたんだろうか》
「兄さま、兄さま、剣のお稽古をしましょう!」
《えっまた来た》
「アテナ、今日は僕は本を読みたいんだけど」
「兄さま、アテナは強い男の子が好きなのです…だから剣のお稽古をしましょう!」
僕のいう事はまず聞いて貰えない。
「解ったよ、アテナ剣の稽古するよ」
アテナは木刀のうちの1本を僕に渡した。
僕は流水の構えで構える…そして体にブーストの魔法を密かにかけた。
大人気ないって?
それはこれからの展開を見てから言ってよ!
アテナは素早い動きで突っ込んできた。
流水の構えは勇者であった僕が考えた攻防一体の剣だ。
しかもブーストまでかけているのに、一撃をかわすのが精一杯だ。
そして、そこからアテナは横からはらってくる。
これが来ると解っていても躱せない。
体が子供のせいもあるが….それは相手も一緒だ。
そして、僕の左手に直撃する。
ミシッ…僕の左手の骨が完全に折れた。
だが、僕は構えを崩さない。
《腕が物凄く痛い…体に引きずられるのか涙が出て来た》
「兄さまは軟弱なのですね…アテナは弱いお兄さまは嫌いです」
そのまま、僕に振り向かないで去っていった。
僕はこっそりと回復の呪文を使い腕を治した。
体が子供だから使える回数や威力は弱いものの勇者の力が使えるのが嬉しい。
多分、普通の男の子だったら、数十回は死んでいる…冗談じゃ無くて本気で。
良く考えたら、勇者と軍神…どちらが強いか解りきっている。
魔王を倒した僕。
主神級相手に戦っていた彼女。
絶対に彼女だ。
8歳になった。
ハッキリいう、此処には癒しが無い。
父も母も貴族で家には殆ど居ない。
家に居るのは、アテナと執事とメイド数人だ。
アテナは凄い…流石は女神だ、まるで中心人物のように家で振舞っている。
そして、僕はその輪から外れている。
僕だって元勇者だ普通にカリスマはあると思う。
だが、ここに居るとかすれる。
いつも一人ボッチで居る気がする。
だから、僕は1人で村に行った。
ここはのどかな田舎だし、僕はこれでも勇者だから怖い物は無い…アテナを除いて。
「リリア…おはよう!」
「あっヨージ様、おはようございます!」
うん、心が癒される…良いなこれ…
暫く、話をした。
心が癒された。
だが、それは、アテナに知られた。
「お兄さま、浮気はいけないと思うの…叩き直してあげますわ」
今日は真剣だった。
不味い、本気で怒っている。
剣を渡され、裏庭に連れていかれた。
顔が笑っていない…ヤバイ…魔王より数倍恐ろしい。
今できる最大のブーストを掛ける…そして最強の鳳凰の構えをとる。
これなら、少しは持つだろう…
「それじゃ、行きますわよお兄さま」
えっ…見切れない。
僕の腕が宙に舞っている。
剣を持っている方で斬りつける、勿論、相手は女の子みねうちだ…
あっさり躱され足が斬られた。
片手、片足になった…物凄く痛い。
「ちょっと待ってアテナ..」
「待ちません…お兄さま」
そして、もう片方の足も切り落とされ宙にまっていた。
「今日はこれで許してあげます..次に浮気をしたらこんな物じゃ済ませませんよ!」
残った腕でリカバリーの魔法をかける、手足をくっつけて何とか回復した。
手を一本残してくれたのはアテナの優しさなのかも知れない。
だけど、気が付いてしまった。
《浮気はゆるしません》
アテナが僕にやきもちをやいてくれたんだ。
手足は切り落とされたけど…少し報われた気がした。
次の日、村に行ったら…村の子が真っ青な顔して逃げ出した。
うん、アテナがきっと何かしたのだろう。
12歳になった。
お父様とお母さまが凄く悩んでいた。
二人が家に居る事も珍しいが悩んでいる事も珍しい。
「お父様、どうかしたのですか?」
話を聞くとブラックドラゴンが近くに現れたらしい。
そして、その討伐を頼まれたのだそうだ。
「これから、人を集めて打たなければいけないのだが…正直何人犠牲がでるかわからんのだ..死ぬかも知れない命令を出すのが辛くてな」
「貴方、だけど、これは誰かがやらなければいけない事なのですから」
「そうだな」
「それなら、お兄さまに倒して貰えば良いのですわ」
「「アテナ」」
「私の婚約者のヨージお兄さまならドラゴン位簡単に討伐できますわ」
「アテナ」
「出来ますよね? お兄さま!」
《出来る..それしか言えないな》
「ドラゴン位ならね」
「それでこそお兄さまです」
アテナのカリスマの影響なんだろうか…普通騎士団をはじめ、数百人~数千人で戦うドラゴンに子供一人で戦いに行かせるなんて。
可笑しいだろう。
此処には聖剣も無いのに…しかもアテナと来たら、お父様からミスリルの剣を借りようとしたら、
「私のお兄さまなら、これで充分ですわ」と笑いながら….鉄の剣を渡された。
アテナが「私の」って言っていた。
少しは好きになって貰えたのかな。
僕はブーストを掛けて更にスピーディの魔法を掛けた。
そのままドラゴンに突っ込んでいく。
「人間が、我に戦いを挑むなど笑止…」
聞く耳持たない..ドラゴンなら前世で何匹も倒した。
「ドラゴンスラッシュ」
あっさり、首を斬り落とした。
多分、今の僕は前世より強い…それはアテナと毎日の様に戦ったから..それでもまだアテナには届かない。
村に戻り、ドラゴンを運んでもらった。
ここで両親は正気になった。
「何で俺はドラゴンの討伐をヨージに頼んだんだ..」
「貴方、ですがヨージは立派に倒してきましたわよ…一人で」
「当たり前ですわ..お兄様は勇者なのですから」
《何でばらすんだよ》
「そうか、ヨージはアテナの大好きなお兄様だからか」
「そうね、アテナの大好きな婚約者なら、その位できるわよね」
《嘘だ..そんな事、アテナが…》
「意地悪…部屋に帰ります…なにお兄さまにやけてますの..気持ち悪いですわ」
《そうか、アテナも僕の事を..》
その日の夜、アテナは僕の部屋にきた。
「お兄さま、いえヨージ…少し話を聞いてくれる?」
「うん、どうしたんだい?」
「あのね、今日お父様やお母さまにばらされちゃったから….いうんだけど私ヨージの事が多分好きなんだと思うの」
「本当、アテナ…嬉しいよ」
「待って、まだ続きがあるのよ、ちゃんと最後まで聞いて、お願い」
「解かった、ちゃんと聞くよ」
「あのね、私は、軍神アテナなのは知っているわよね?ヨージが結婚を望んだんだから」
「知っているよ」
「それから、私は知の神でもあるのよ、それも知っている?」
「うん」《ヤバイ知らなかった》
「だから、どんな人間も私より馬鹿で、私より弱いのよ…それでも傍にいてくれるの? 劣等感とか感じない?」
「まぁ、感じないと言えば嘘になるけど…それもアテナの魅力だよ」
「そう、なら良いわ…全部知った上で私が良いのね?」
「うん」
「なら、良いわ…人間なのに、正直アレース並みに強くなったわヨージは、婚約者として認めてあげる」
「本当に!ありがとうアテナ!」
「まだ、話は終わってないわ…ちゃんと聞いてね」
「解かった」
「あのね、私は女神なの…」
「知っているよ!」
「永遠に死なない存在なのよ…神が結婚するという事は人間みたいに死という別れは無いわ、たった百年でなく、永遠に未来永劫一緒に居る事を誓うのよ…永遠に私を愛する事を誓えるかしら」
「誓うよ」
「私の本当のお父様のように浮気したら..多分私、お母さま以上に怖くなるよ? 相手の女に呪いを掛けて化け物にしたり殺したりするかも知れない…そして多分、貴方には死よりもつらい事をすると思う…それでも誓える?」
《正直、物凄く怖い》
「誓える」
「そう、解ったわ婚約を受け入れるわ..負けたわ..はいこれ食べて」
「これは何?」
「ネクタルの実よ…アテナの伴侶が人間で良いわけ無いでしょう? それを食べたら貴方も神になるわ、覚悟があるなら食べて」
僕はネクタルを食べた。
「ありがとう、ユージ」
アテナにキスをされた。
僕の恋はようやく実った。
ドラゴンを倒した、僕は「ドラゴンキラー」の称号を貰った。
アテナは隣でクスクス笑っている。
「どうしたのかな急に笑い出して」
「だって、ユージは神族の仲間になったのよ…しかもゼウスの義理の息子で、勇者..今更だわね」
「言われてみれば..そうだね」
いつも彼女は傍に居てくれた。
今迄と違い、凄く優しい…これも正式に婚約者として認められたからだろう。
そして16歳になった。
この世界では16歳で成人だ。
僕はアテナと結婚式を上げた。
将来は、父の後を継いで侯爵になる。
そして手ごろな時期にオリンポスに移り住み、アテナの補佐をしながら生活をする
そんな所だろう。
とりあえず、僕らは結婚した事をオリンポスに新婚旅行を兼ねて伝えにいく。
オリンポスに行くと差別される事無く凄く歓迎された。
彼女の親の女神ヘラは凄く優しく直ぐに祝福してくれた。
何故か父親のゼウスは「本当によいんじゃな」としつこい位聞いてきた。
結局は僕の彼女を愛しているという気持ちに打たれて許してくれた。
だが、ここで何故か色々な男の神から「勇者だな」そう言われた。
宴が開かれ..途中から女神と神に分かれて二次会だそうだ。
「今日は朝まで飲むぞ」そう言われた。
ここには、僕の願いを叶えてくれた神も合流してきた。
アポロンが僕に話し掛けてきた。
「しかし、君は凄いな..男の幸せを捨ててまでアテナを選ぶなんて」
「勇者じゃよ…儂にはまねはできない」
「アポロン様にゼウス様..何を言っているのですか?」
「ゼウスで良いぞ、息子になるのだからな」
「僕もアポロンでよいよ」
「僕がアテナと結婚するとなぜ、男の幸せを捨てる事になるんですか?」
「あのさぁ…君は死ぬ前の前世も勇者時代も…童貞だよな」
「そうですが…」
「可哀想に…これからも童貞だ」
「何で…あっまさか」
「そう、処女神なんだよ..アテナはね」
「多分、浮気はアテナの性格じゃ許さないだろうね!」
「そうだね、そして、アテナも君も死なないからね…」
「未来永劫、処女と童貞」
「「「永遠の童貞に乾杯」」」
嘘だろう…..
「もしかして神様、知っていたのか」
「えっ、アテナと言えば処女神…当たり前じゃん」
周りの神は笑っている。
お前ら全部知っていたな….
僕は未来永劫….童貞で居る事が確定した。
僕の地獄はここから始まるのかも知れない。