1話 リア充?
「ねぇ理人、一体誰を選ぶの?」
「僕だよね?」
「ううん、私に決まっているじゃん」
「絶対、私よ…」
俺の名は『理人』いわゆる勇者だ。
俺を取り合って三人の女の子が揉めている。
1人目は聖女マリア、金髪の癒し系の女の子。
2人目は賢者ミラノ、黒髪の可愛らしい僕っ子
3人目は剣聖レイラ、ボーイッシュな凛々しい女の子だ。
三人とも驚くほどの美少女だ。
多分、元の世界なら芸能人ですら歯が立たない究極の美少女に違いない。
そして国に帰れば、王女であるマリンが待っている。
『普通に考えたら完全リア充』
そう思うだろう?
だが、俺の場合は少し違う…
まぁそれは置いておいて…
この世界はスマホゲームの世界『恋と剣の王国』の世界だ。
俺は会社員で事故で死にこの世界に転移してきた。
何故ここに来たのかは解らない。
だが、間違いなくトラックに敷かれた筈だが、気がついたらこのゲームの主人公 理人になっていた。
そして今現在、俺たちは辛い戦いの末魔王を倒し城へ戻る最中だ。
『憂鬱だ』
此処からがエンディングになる。
俺は4人のヒロインのうち誰かを選ばないとならない。
そして、その一人を選びこのゲームは終わる。
裏技で4人全部選ぶと言うハーレムエンドもあるが…
それは選ばない。
いや、俺は4人とも選びたくはない。
この世界に転移してきてから…俺はセリフを何度も聞いていた。
4人との結婚を回避するために…
そして俺は一縷の望みをそれに賭けている。
「理人どうかしたの?」
「いや何でもない?」
俺を気遣う三人に申し訳ないが…これは仕方ないんだ。
そうこうしているうちに城にたどり着いた。
2話 欲しかった者は
俺は約束した。
魔王を倒したら好きな褒美をくれると…
その時に念を押した…『本当に何でも好きな物をくれるのか』と。
そうしたら、王は勿論、その上の教皇までもが「思うままに何でも差し上げます」そう言う約束をした。
これに俺は賭けるしかない。
◆◆◆
教皇を含む世界各国の要人が居る中、式は進み、俺が欲しい物を望む時がきた。
クリフ王が静粛な雰囲気で言う。
「さぁ勇者理人よ約束通り、欲しい物をなんでも与えよう言ってみるが良い」
「はっ、では王妃様で!」
俺が望んだのは王女との婚約でも地位でもない『王妃』だ。
真っ青な顔でマリン王女が言ってきた。
その目には涙が浮かんでいる。
「私では…ないのですか? 緊張して言い間違えたのですよね」
「王妃様で…」
「理人なんでー――っなんで僕じゃないのー-っ可笑しいよ」
人目を気にせず泣き叫ぶ賢者ミラノ。
「そんな可笑しいよ…理人は私が好きな筈よ…なんで」
ブツブツと呪うように言葉を発するマリア。
剣聖のレイラは歯を食いしばっていて悔しそうだ。
心が少し痛むが仕方が無い。
進行を止めてしまったクリフ王に代わり教皇であるロマーニが俺に話かけてくる。
「理人殿、貴方は王妃マリアーヌを…望むと言うのですか? それは母とかそういう者でなく婚姻相手という意味ででしょうか?」
「はい」
「そうですか…本来ならそれは教会は推奨できません、他人の妻を望むのは姦淫につながりますからな…ですが貴方は『勇者』です、この世界が女神をそれを許します。これよりクリフ王とマリアーヌの婚姻を無効にし…正式に二人の結婚を認めます、教皇ロマーニの名に置いて…」
これを聞いた瞬間に4人は気絶してしまった。
「待ってくれ、教皇様、これはいかに勇者でも王妃を望む等、無体すぎます」
「確かに…ですが私もあなたも王命まで使い『魔王を倒したなら欲しい物を何でも与える』そう約束をした、理人殿が約束を果たした以上拒めないであろうが」
「しかし…私の面子が…」
「もし違えるなら破門しか…」
「解りました…」
顔を真っ赤にしたマリアーヌが凄く可愛い。
俺にとっては30歳の王妃マリアーヌこそが理想の女性であった。
マリアーヌの手を取り、その他の褒賞と共に俺は城を後にした。
3話 実は
確かに三人は可愛いし美人だ。
マリン王女も可愛い。
だけど、本当の俺は42歳なんだ…なんでゲームの世界は14歳とかで結婚するんだ!
俺は前の世界で結婚していたし、なんなら娘迄いた。
若くして結婚したから…三人も王女も娘以下の年齢なんだよ。
更に言うなら娘はお父さん好きだったから12歳まで一緒に風呂に入っていた…
そんな俺が14歳の子と恋愛なんて出来ない…俺はロリコンじゃないし、夢で『おとうさんロリコンなの』って娘が出てきた。
無理だ。
俺なりに努力はしたんだ。
だけど…娘より下の彼女たちとの恋愛は無理だった。
胸を押し付けられようが、抱き着かれようが『娘』としか思えなかった。
前の世界の記憶が邪魔をするんだ仕方ないだろう。
幾ら年下好きの俺でも10代は無理だ。
だが寿命が短いこの世界20代ですら行き遅れで未婚者で綺麗な女性はまずいない。
全ての概念を完全無視して俺にとって最高の美女が30歳の王妃マリアーヌだった。
ちゃんと相手の事も考えた…
夫婦仲が良いなら俺もこんな事はしない。
王とマリアーヌは政略結婚、そこに愛は無い。
しかもマリアーヌの国は魔族に負けて無くなったから立場は弱く、王も側室とばかり過ごしている。
何時も寂しく1人で居るマリアーヌに俺は心惹かれた。
マリンも側室の子であってマリアーヌの子でない。
『要らないのなら俺が貰っても良いだろう』
本当にそう思った。
俺にとっては最高の美女なんだから…
◆◆◆
「あの理人様、本当にわたくしで良かったのですか? 私の年齢は理人様の倍ですが…」
「俺は貴方に恋をした、そこに年齢は関係ない、貴方以上に愛する女性はいない」
俺の本当の年齢は40歳すぎ、この位落ち着いてないと一緒に居て疲れる。
「まさか、この齢になって、諦めていましたのに恋愛が出来るなんて思いませんでしたわ、不束者ですが宜しくお願いします」
その後、王都を離れ、聖都にいき二人で仲良く暮らした。
うん、凄く幸せだ。
『心は』中年勇者…さぁ勇者褒美をとらす! 欲しい物をなんでも言うが良い! 「はい、では王妃様で」 完
あとがき
本当の意味での新作はまだ少し先になります。
最近スランプ気味なので、感想欄から頂いたので、少し慣らしで短編を書いてみました。
「ギャルゲーの母親」のリクエストを貰って書こうと思ったのですが…上手く書けずこんな作品に。
空き時間の2時間で書いたので描写もかなり甘いと思います。
将来、これを叩き台にスランプが終わりましたら長編も書くかも知れません。
最後まで読んで頂きありがとうございました。