チートスレイヤー誕生篇 我ながら情けない
また今回の戦いもこちらの負けか。
「魔王様申し訳ございません、私が不甲斐ないばかりに」
「もう良い」
四天王すら、敵わない相手が、ある時から人間側に現れた。
それにより一進一退だった戦いは大きく人間側に傾いた。
『転移者』+『チート』その組み合わせの前には我が魔王軍は歯が立たなかった。
今迄はお互いの均衡が取れていて5対5だった勢力図が今では2対8まで勢力図は傾いた。
悲しい話ではあるが、2が魔王、俺側の勢力だ。
本当に腹立たしくて仕方ない。
◆◆◆
沢山の犠牲をだして、ようやく『転移者』を捕らえ吐かせた所、彼等は異世界に
来る前は『普通の人間』だったそうだ。
だが、この世界に来た時に『チート』という名の元に新たな『ジョブ』と『スキル』を貰ったのだそうだ。
【回想】
「その前は本当に普通の人間だったのか?」
「そうだよ、俺は高校生、あっ!こっちで言う所の17歳の、う~んアカデミーに通う生徒みたいなもんだ」
「ただの学生だった? そういう事か?」
「そういう事だな」
「それが何故、あんな強大な力が使えたのだ」
「あれはな、女神様からチートを貰ったからだ」
「チートとは何だ」
「何だ!そんな事も知らないのか?」
話しを聞いた所…それは物凄く歪で卑怯な物だと言う事が解かった。
異世界の人間に、ただ女神が『破格値』の能力を与えて戦士としてこの世界で戦わせる。
そんな仕組みだった。
話しを聞いていて、俺は不愉快になった。
「そうか、貴重な情報を貰ったから、解き放つ事も出来るが、それがお前の希望なのだな?」
「ああっ、男のロマンだ、それで良い」
「そうか」
この異世界人が望んだのは『サキュバスに精を奪われて死ぬ』事だった。
何故、そんな事を望んだのか聞いたら「最後に最高の快感を味わって死にたい」という事だった。
「お前は死ぬのが怖くないのか?」
「苦痛は嫌だけど、死んでも元の世界に戻るだけだからな」
これは余りにも酷すぎる。
つまり、異世界人は死んでも元の世界に帰るだけなのだ。
ならば、死ぬのを恐れないのも頷ける。
「約束だ、この男をサキュバス族に引き渡せ」
「はっ」
「魔王さん、もうこの世界に居なくなるから教えてやるけど『異世界人』は山程いるんだ、多分もう勝てないぞ」
「そうか」
話しを聞いて凄く腹が立ち、そして情けなくなった。
自分の命の保証をされ、尚且つ何の努力もしないで能力を与えられた存在。
そんな物と我々は戦っていたのか…
転移者でなく、この世界の強き戦士と戦っていた時は『相手に敬意さえ感じた』
人間という非力な存在が己を極限まで鍛え戦い、挑んでくる。
そこには重みがある。
だが、今の『あいつ等』はただの子供じゃ無いか?
命の重みも知らぬ、ただのガキだった。
だがそんな『異世界転移者』に我々は勝てずに、此処まで来てしまった。
本当に我ながら情けない。
そんな気持ちで一杯だった。
チートレイヤー誕生篇 困る創造神
このままでは、やがて『異世界転移者』がこの城まで攻めてくるのは時間の問題だ。
そうなれば、もう魔族は滅ぶしかない。
だが、そうなっては恐らく人間側や善神側も困る筈だ。
なのに『異世界転移者』なんて禁じ手を使ってくる。
これは魔王対勇者の話では無い。
その上神々の問題だ。
『他の世界の人間を呼ぶ』『勇者や魔王並みの力を与える』こんな事をたかが人間が出来ると思わない。
故に俺は悪魔神官に命令して邪神様の神託を受ける儀式をした。
「ひさしいな魔王ルストラ―よ!」
「邪神様、今魔王軍は…」
俺は「聖魔戦争」の状態について邪神様に話し、その元凶の『異世界転移者』について説明した。
「それが誠なら由々しき事態だ、俺も女神ワイズもこの世界の神だ『他の世界の存在』を持ち込む事等出来ない『死んだら向こうの世界に返す』なんて事は契約が無ければ、出来ぬであろうから、神同士の密約があるに違いない。だが異なった二つの世界に繋がりを持たせる等、主神級でなくては出来ぬ」
「邪神様にはお心当たりは御座いますか?」
「恐らく、その話が本当なら創造神が絡んでいる筈だ、だが悔しいが『創造神』が絡むなら何も出来ぬ」
「何故でございますか」
「俺は女神ワイズと神格は同格、地位的にも能力的にも『創造神』は遙かに上だ」
「それではどうすれば良いのでしょうか?」
「今は解らぬ、創造神にとりあえず事情はきいてみる事にする」
◆◆◆
神界にて
俺事邪神イビルは魔王の報告を受けて、創造神に会いに来た。
「邪神よ、儂を訪ねてくるなど久しいな、何かようがあるのか?」
「創造神、クリエ様、実は報告したい事が御座います」
俺は今現在、俺達の世界で起こった事についてクリエ様に話した。
「ほう、その様な事が起きておるのか? だが、与えた能力は奪う事は出来ぬ」
「それでは魔王が負け、魔族が滅んでしまいます」
「戦いの結果、弱き者が滅びるのも世の常だと思うが、弱いお前達が悪いのだ」
「『自分達の世界の者』に滅ぼされるのであればそうだと思いますが、異世界から呼び出した挙句、強い能力を与えた者に負けるのはいささか平等に欠けると思うのですが、いかがな物でしょうか? そんな不平等な戦いは無いと思います。 他から連れてくると言う事は、少なくとも女神ワイズ1神には出来ないはず。もし、女神ワイズが1神で万が一それを行ったと言うなら『他の世界からの略奪行為』で罰される筈ですが」
何だか創造神クリエの顔が曇った気がした。
これはどう考えても、1枚噛んでいるに違いない。
「その件は確かに儂が関わっておる。 異世界の神から交流、移民相談を受けて、その際に女神ワイズと相談をし決まった事だ。 異世界人はこの世界では真面に生きれぬ程弱い、故に『職業(ジョブ)』と『能力(スキル)』を与える、そう言った話であった、そして異世界人を受け入れたいと望む者の元で生活をさせた」
これは、本音で言っているのだろうか?
誤魔化しでは無いか?
「ですが、クリエ様、今ではその為の召喚を『勇者召喚』と呼び、連れて来られた異世界人は誰もが『勇者並み』の力を有している、その真実は如何なさいますか? 勇者並みに強い人間を量産されては魔族は勝てません、女神が勇者や四職(勇者、賢者、剣聖、聖女)と肩を並べる者を自由に呼べるのであれば、此方も魔王クラスを自由に呼べなくては勝負にもならないと思いますが」
クリエ様の顔が、少し青くなった気がした。
絶対神である創造神の表情が変わる等、余り見たことが無い。
「まず、ワイズは自由に等呼ぶ事は出来ぬ『相手に対してこの世界の者が訴え、それに相手が応じた時のみだ』そんなに人数が多いとは思えない、それにそんなに強力なジョブは与えて無い筈だ」
「それは俺には信じられません」
「儂の言葉が信じられぬのか? ならばこの目で見てやろう、だがお前が間違っていたら、責任はとって貰うぞ」
「構いません」
◆◆◆
儂事、創造神クリエは…真実を知って困っていた。
精々が交流移民だから、数人、多くても10人位だと思っていたが、そんな数では無かった。
与えられたジョブやスキルも、上級職(聖騎士)なんて物じゃ無く、とんでもない破格の物だった。
だが、これはワイズも悪いが『異世界人』も悪い。
交渉力がこの世界の者より優れていた。
さも『大した能力では無い』そういう言い回しでとんでもない能力を手に入れたり、『行く、行かない』の交渉で高い能力を手に入れていた。
本来なら、その辺りの交渉は『先方の神』が行う筈なのだが、全てスルーされ、ワイズに丸投げされていた。
ワイズも最初こそしっかりと反論していた物の、彼等の活躍で自分が有利に立てると解ると積極的により良いジョブにスキルを与えている。
これでは邪神イビルの怒りも解る。
動物で言うなら、狼同士が戦っている戦いに一方だけ虎や獅子を味方につける事が出来る。
そういう事だ。
これは明らかに平等では無い。
だが、神という者には厳しい制約がある。
その中には『与えた能力を取り上げられない』そういうルールがある。
そして『幾ら格下の神であっても直接の干渉は許されない』その二つは絶対だ。
更に今回の場合は『別世界の神の干渉がある』これはこの世界の全てを司る、自分であっても干渉が出来ない。
相手は自分の管轄で無く他の神の庇護下にある存在だからだ。
だが確実に『邪神イビル』の言い分が正しいと解かった以上はどうにかしなくてはならない。
邪神側にも何かを与え納得させる必要がある。
このまま、もし勝敗があっけなくついた場合は…その後、他の邪神から物言いが入り、最悪、善神VS悪神の全面戦争すらあり得る。
本当に困った、邪神イビルが納得する条件を考えなければならない。
チートレイヤー誕生篇 もう関わるな!
結局、儂自身でどうにか納める為にはこんな条件しか考えらなかった。
1 1度に限り、儂を無視して異世界の神悪魔と交流する事を許す
2 どんなスキルや武器やスキルも二つまで儂の意思を無視して作成可能
3 但し制限として、そのスキル能力は『異世界転移者』にのみ通用する物とする
正直言えばこれでは不公平だとは思う。
だが儂に出来るのはこれが精一杯の譲歩だ。
確かにその後に起きた事を考えれば、こんな物じゃ足りない。
だが、今回の発端を考えれば
1 異世界の神との交流から移民の話が起きた、そう考えたら異世界の神との交流を認めるのは正しいと言える、但しワイズ側は一度なのだから同じ様に一度のみに制限。
2 女神ワイズに与えた能力は『スキルを与える』『ジョブを与える』能力だ。異世界から呼ぶと言うのは、先方の神の元に作られた物、そこに儂は関与していない?の権利を使って欲しければ自分で交渉するしかない。
3 もし、邪神が先方の悪魔や神と手を組んで『世界を滅ぼそう様な事』例えば、向こうの世界の『邪神その物を召喚』等を考えたら目も当たられない、世界の人間が滅んでしまう。 その為、今回の件は『異世界転移者』限定にしなければならない。
正直言ってしまえば、ワイズの時は『確実な相談』からスタートしたのだから不公平極まりない。
だが、儂には此処までの事しか出来ない。
これで納得して貰うしかない。
◆◆◆
「これで俺に納得しろというのか?」
俺は相手が創造神クリエである事に構わず怒鳴っていた。
『間違っていたら責任をとらせる』そこ迄言っていたのに、こんな落としどころは可笑しい。
「お前の怒りは解る、だが、儂もこの世界もこれ以上の責任の取り方は出来ないのだ」
どう考えても不公平では無いか?
「可笑しい、今現在、魔族と人間の勢力図は2対8に迄なってしまった、本来ならそれでも足りないが原因になった『異世界転移者』は皆殺し、そして向こう数年の間は勇者を含み四職の存在を無くす、これですら足りないと思うが」
「それは出来ぬ『異世界転移者』は他の世界から来た者だ、それを召喚した側が殺してしまっては責任問題となる。さらに一旦与えてしまったジョブやスキルは取り上げたりする事は出来ぬ、更にこの世界に魔王が居る以上は四職はシステム的に生まれるのだ..済まない」
そんな事で許せる物では無い。
今現在、2対8、最早勝負は半分決まってしまっている。
さっき言った条件を飲んで貰っても、5対5まで持っていけるまで相当な時間が掛かる。
それすら飲めないと言うのか。
だが、確かに『創造神』といえど、これ以上は出来ないのも本音だろう。
その証拠に、今、創造神クリエは俺の前に跪いている。
誰よりも偉くこの世界の頂点である創造神が頭を下げているのだ、これしか多分出来ないのだろう。
「解りましたよ、仕方ありません、ただもう俺やワイズの世界に関わるのは止めて下さい!」
「約束しよう」
「解りました、それで良い」
「それで邪神イビル、これからどうするのだ?」
「関わらない貴方が知る必要はありません、ただ例え私が、魔王が魔族が滅びようとも『異世界転移者』にはこの世の地獄を見せます」
「イビル」
「関わらない貴方には関係ない筈です。 殺してしまおうが、地獄に落とそうが構わない、それが関わらないという事でしょう?」
「イビル、何をすると言うのだ」
「関わらない、貴方に知る必要は無い筈です」
「イビル、イビル、イビルーーーッ」
俺は創造神クリエに背を向けて自分の世界に帰っていった。
チートレイヤー誕生篇 チートスレイヤー完成
俺は自分達の世界に帰り、創造神クリエとの話しをそのまま魔王ルストラ―に伝えた。
「その様な事があったのですか?」
「ああ、実に腹立たしい」
「ですが、それ以上の譲歩は得る事は無理でしょうな」
「そうなのだ、だから我々は創造神クリエの言う条件の中で逆転の一手を手に入れなければならぬのだ」
「確かに」
「そうだ、この条件を利用してこの絶望的な状況を覆さなければならぬ。」
1 1度に限り、儂を無視して異世界の神悪魔と交流する事を許す
2 どんなスキルや武器やスキルも二つまで儂の意思を無視して作成可能
3 但し制限として、そのスキル能力は『異世界転移者』にのみ通用する物とする
「かなり厳しい条件としか思えませんが」
「だがやるしかない、済まぬな」
「イビル様が悪い訳じゃありません」
◆◆◆
「異世界に存在する神、悪魔よ、我の名は魔王ルストラ―、我が願いに言葉を傾け顕現されたし」
これは本当に賭けだ。
邪神イビル様から話を聞いたが、本当に不公平だ。
女神ワイズ側は最初から『交流予定』の神が存在した。
だが、此方は1から呼び出さないとならない。
しかも1度だけ。
これは凄く酷い条件だ。
呼び出した神や悪魔が強力で無ければ意味が無い。
もし、此方の訴えを聞いて神や悪魔が現れても、弱い神や悪魔ではそれで終わりだ。
強力な存在を呼ぶ必要があるが、そんなピンポイントに呼び出す事は出来ない。
次に呼び出した存在が友好的でなければただの喧嘩別れになる、最悪は敵になる可能性もある。
最後に、如何に強い存在でも、スキルや武器を作れる様な存在で無ければ無意味だ。
此処まででも、難しいのに、更に『異世界転移者』に対抗する手段が無ければ意味が無い。
つまり、かなり低い確率でしか願いは叶わない。
『難しい』
だが、これが、我々の最後の望みの綱なのだ。
一心不乱に願い続ける。
悪魔神官ではなく、魔王である自らが魔力を込め、祭壇の前の魔法陣の中でひたすら祈った。
どの位祈り続けただろうか?
「呼んだ?」
首のない竜の様な物に乗り、肩に鳥を乗せた少女が俺の前に現れた。
※アガレスは姿を変えられる、ワニに跨り肩に鳥を乗せている、そこからの姿。
「貴方様は異世界の神でしょうか? それとも」
「私は悪魔、アガレス、お前の祈りを聞き、此処に来た」
悪魔が現れてしまった。
見た感じは美しい少女にしか見えない。
許可された交流は1度だけ、最早彼女に全てを賭けるしかなかった。
俺は自分の現状を彼女に話した。
「異世界転移者に対抗する力が欲しい、そういう事で良いのかしら?」
「何かございますか?」
「私の力を使えば対処できますね! ただ、その対価は今回は要らないわね」
「本当に対価は要らないのですか?」
「うふふふ、その『異世界転移者』はどうやら私の世界から召喚されているみたいだわ、だから、そちらに人間が行ってしまった分の空きがあるから、それで楽しめそうね、手を貸す条件は、能力を奪った人間の『名前』をこちらに伝える事、それだけで良いわ、あっ出来たらすぐには殺さないでね」
「解りました、宜しくお願い致します」
「それでは、これから貴方達に『異世界転移者』に対抗する武器を授けましょう、暫く一人にして下さい」
「解りました」
果たして、彼女に対抗手段が作れるのだろうか?
さっきの話では『異世界転移者』は彼女の世界から来たと言うが。
彼女は3日3晩部屋に立てこもり、一振りの剣を作った。
「出来たわ」
黒光りする綺麗な剣を彼女はそう言い差し出してきた。
「この剣は?」
「頼まれていた『異世界転移者』を倒す剣、チートスレイヤーです」
「チートスレイヤー?」
「この剣の能力は3つ、その能力は…」
聞くとそれこそが我々が求めていた物だった。
その能力とは…
1 『異世界転移者』の時間を巻き戻し、元の世界の姿能力に戻す。
2 『異世界転移者』は剣の所持者から逃亡できない。
3 『異世界転移者』が戻る時間をずらし、元の時間でなく、死んだ場合は元の時間+2年後に戻る。
※悪魔アガレスが農耕神時代に時間を司る神だった話と逃亡者を連れ戻す悪魔という設定を拡大解釈しました。
「素晴らしい、ですが3の能力は何か理由があるのでしょうか?」
「うふふふ、それは私が楽しむ為の物ですね、これから頑張って下さい」
「あの、本当に我々は、貴方に対して『異世界転移者』の情報を流すだけで良いのでしょうか?」
「クフフ、構いません、では、あっそうそう、その剣は、膨大な魔力が必要ですから、魔王である貴方が使うのが良いでしょう? あと、此処に敵が攻めてくるのなら玉座には偽の魔王を置いて、貴方は戦いに出た方が良い」
「確かにそうですね」
「私は『時を司る悪魔』ついでに貴方に若さを差し上げましょう」
悪魔アガレスがそう言うと俺の姿が見る見る若がえった。
俺がお礼を言うと、アガレスは何処かに消えていった。
◆◆◆
魔王の玉座には傀儡を座らせた。
そして俺は黒い鎧を纏い『黒騎士 ウイング』を名乗りチートスレイヤーを携え戦いに出る事にした。
VS 剣聖 ジェイク
俺は最初の獲物を『剣聖ジェイク』に決めた。
何故、剣聖ジェイクに決めたのか?
それは、此奴がいつも単独行動をとっているからだ。
その為、チートスレイヤーの最初の相手に相応しい。
そう思える相手だ。
◆◆◆
剣聖ジェイク。
元勇者パーティーの1人。
勇者と一緒に召喚されてきた異世界人で銀髪の長髪に、緑と黒のオッドアイの背が高い美少年。
剣を持たせれば、何でも斬ってしまう、凄まじい剣客家。
クズかクズじゃないか?
そういう事で言うなら『此奴はクズ』ではない。
弱き人を助け魔族と戦う、なかなかの人物だ。
ただ、これは『同族』であればだ。
我々魔族からしたら『最悪の相手』だ。
殺された魔族は千ではきかないだろう。
簡単にクビを跳ねられ、火を放ち魔族の村を焼く。
そして此奴が良く言うセリフが「これは戦争なのだから仕方ない」だ。
そう言いながら赤子でも何でも殺す。
『禍根はたたねばならない』そんな事もいう。
言っている事は解らなくもない。
戦争なのだから、そう考えれば正しい。
これが、もし己を本当に鍛え上げた人間がやった行動なら、理解は出来る。
非人道的だが正しいと認めよう。
お前が殺した魔族にも恋人がいた者もいる。
子供をお前から庇い背中から子供と一緒に刺殺された魔族の母親も居た。
笑いながら村に火を放った事もあったな。
お前なら見逃しても問題はなかった筈だ。
『簡単に命を奪う』戦争だから仕方ない。
勝者の特権だ。
だが、過剰な力を無償で貰って、死んでも元の世界で楽しい生活が送れる。
そんなズルした奴が行って良い行動じゃない。
お前は、命のやり取りをしない癖に他者の命を奪う。
決して武人ではない。
だから、お前の本性をさらけ出してやる。
◆◆◆
俺は、剣聖ジェイクを探した。
探すのは簡単だった。
此奴は、戦場に取り巻きを連れ出てくる。
この中で強いのはジェイクのみ、後の人間は大したものではない。
ジェイクの自慢を聞くだけに存在するただの雑魚だ。
俺はジェイクが現れたという戦場の情報を聞き、急いで向かった。
「黒騎士ウイング様、あそこです」
「あれが、剣聖ジェイクです」
村について俺は驚愕した。
沢山の魔族が倒され、死んでいた。
その中央にジェイクは立っていた。
「ほう、また魔族が来たか? 誰を連れてきても無駄だよ、殺してあげる」
「剣聖ジェイク、此処は只の村だ、普通に農耕をして生活しているだけだった、何故殺した」
「お前は馬鹿なのか? 僕の居た国にはゴキブリという害虫がいてね、嫌悪感を何故か抱くから理由もなく殺すのさ」
「虫? その虫は喋るのか? 意思疎通が出来て、害のない者もお前は殺すのか」
「あはははははっ何を言うんだい、人間を殺したら問題になるが魔族なら殺せば殺す程人の社会じゃ褒められるんだぜ、殺して金と地位が手に入るんだ、やらない理由は無いだろうが?」
「そうか、ならばお前も殺されても文句はないな」
「やれるものならやってみれば」
「死よりも辛い苦痛を与えてやろう」
「御託は良い…死ねーーっ」
「時間よーーー止まれ」
「何だ、これは体が動かない..汚いぞ」
チートスレイヤーを使い時間を止めた。
此処からがチートスレイヤーの本領発揮だ。
「時間よ、戻れ、戻れ、そしてかの者を真実の姿に戻すのだ」
ジェイクの周りに光が集まり渦を巻く、それが高速で回り始める。
「何をする気だ、僕はそんな物じゃ死なない」
「殺しはしない、安心するが良い」
後は待つだけだ。
「ジェイク様を助けろ」
「今こそ、恩を返す時だ」
雑魚が煩い。
殺したら楽しみが無くなるから殺さない。
ただ、手足をへし折り、立てなくした。
「そこで見ているが良い、なぁにジェイクは殺しはしない」
光の渦が収まり、中から出て来たのは…
なんだ此奴は、この様な男が、あの『剣聖 ジェイク』だと言うのか。
頭は汚らしくボサボサ、多分何日も洗っていないのだろう。
細い目にオークの様に潰れた鼻、吹き出物が出来ていて不衛生極まりない顔。
鼻毛も伸び放題。
そして、手足が物凄く細く逆にお腹はこれでもかと太っていた。
ボロボロのシャツに、汚らしいズボン。
そして臭い、まるで何かを腐らせた臭いがする。
「けけけ、剣聖様が化け物にされた」
「こんな醜悪な人間見たことが無い」
「ううっ気持ち悪い」
俺が思った事を先に剣聖の取り巻きが言っている。
これが、剣聖ジェイクの『異世界転移前の姿』か。
「僕に何をした、殺してやるーーーっ えっ」
なんだ此奴、剣すら真面に持てないのか…
「簡単な事だ、お前のチート能力を奪って、本来の姿に戻しただけだ」
「嘘だ、これは夢だ、こんなの僕じゃない」
剣も持てない、俺を見て体を震わせている…情けない姿だ。
「何だ此奴、そーら」
俺は軽く元ジェイクだった男にビンタした。
パチン、と音を立てた後、ジェイクだった男は蹲った。
「止めて~止めて下さい、僕を虐めないで、嫌だ~」
こんな事で泣くのか?
子供以下だ。
「お前は、命乞いする魔族や魔物を許した事はあるのか? 無いよな!」
「許して下さい、勘弁して下さい…なっ何でもしますから」
「ほう、何でもするのだな…ならば俺の前に膝磨づいて俺の靴を舐めろ」
「はいっ」
本当に犬の様にかがんで舌を出して舐めやがった。
俺はそのままこの男を蹴飛ばした。
「ぴぎゃぁぁぁぁぁ」
こんな奴は武人じゃない。
只のゴミだ。
「鑑定」
俺がこの男を鑑定した結果がこれだ。
鈴木 誠 (すずき まこと)
年齢 17歳
HP8
MP0
引き籠り、陰キャラ、いじめられっ子、不登校
趣味:アニメ
なんだ此奴。
約束だから、此奴の情報を念でアガレスに送ってみた。
頭の中に『了解』と伝わってきたからこれで良いのだろう。
「助けて下さい、もう魔族を襲いません、もう何もしませんから」
「ああっ、お前みたいな奴、殺す価値は無いから助けてやる、それでどう助かりたい」
「助けてくれるの…ありがとう」
見てるだけで気持ち悪い。
「ああ、4つから好きな物を選べ」
1 このまま見逃す
2 この世界で死ぬまで引き籠る
3 苦痛も無く一瞬で殺される
4 サキュバスに囲まれ衰弱死
「此処から選べばよいの…ならば僕は2番を選ぶ」
「そうか解った、連れていけ」
「ひぃーっ僕に触るな、助けて」
「だから、お前の要望を聞いて助けてやるんだ暴れるな」
「わっ解ったよ」
「お前等の英雄、剣聖は魔族の元で『死ぬまで引き籠る人生』を選んだ、今後はお前達を助けない…あまりにも可哀想だから、お前達もこのまま見逃してやろう、ふはははははっ、惨めだな」
「け剣聖様、戦って下さい」
「私達は死んでも構わない、幾ら醜くなっても我らの忠誠はかわりません」
「剣聖様、せめて、尊厳を持って共に戦い死にましょう」
その声は…鈴木誠には届かなった。
「僕は、僕は怖いんだ..死にたくない」
そんな誠の声を聞き、その場にいた者は死を覚悟した以上に落胆した。
◆◆◆
「此処は」
俺は魔王城の地下に誠を連れて来た。
牢屋だがとても大きく、後ろはそのまま行き止まりの洞窟に繋がっている。
「魔王城の地下にある『生きられる牢獄だ』」
「まさか、僕を此処に閉じ込めるのか? いやだ、いやだぁぁぁぁぁーーっ助けて、お願いだから」
「だったら死ぬか?」
ナイフを突きつけた。
「ああっああああーーーっ、入る、入るから殺さないで」
「此処はな、生きるという意味では良い場所なんだぞ、この洞窟にはトカゲや虫が沢山居て、食べる事が出来る、そして栄養価は高い、地下水もご覧の通りそこら中に水たまりがあるから豊富、好きなだけ引き籠れる、お前にとっては天国だろう」
「嫌だ、虫やトカゲなんか食べれない…た助けて、そうだ他の選択に」
「駄目だ、お前はもう選んでしまった、そこで好きなだけ生きて、そして嫌になったら死ね」
「あぁぁぁぁぁぁぁーーーっ」
元、剣聖だった男の叫びがこだました。
鈴木誠の運命
彼奴の言った事は本当だった。
血なまぐさくて不味いがトカゲは食べられた。
虫も苦くて不味いが食べられる。
空腹を満たす事が出来、水もある。
確かに此れなら死なないのかも知れない。
だが、それ以上は何もない。
ただ暗いだけで何もない。
死にたい、そう思い始めた。
そうだ、僕は死んだら元の世界に…嫌だ、あの世界に戻るのは嫌だ。
◆◆◆
これが鈴木誠って人間のデーターね。
悪魔アガレスは考えていた。
確かに『異世界転移者』を倒せば、あの世界の問題は解決する。
だが、その罪はどうだろうか?
異世界で散々犯罪を犯した者に罰を与えなくて良い物だろうか?
神が関わっているから不問にでもするつもりかしらね。
だけど~ この世界から送り出した者が1000位の命を奪ったのよね。
ならば、此の世界も同じくらいの命を失うべきだわ。
まぁ1000は難しいけど少しはね…くふふふふ
さてと、此の世界に今は『本物の鈴木誠』は居ないのよね。
なら、その間は『自由』に出来るわ。
私は『悪魔側の人間』の魂に会いにいった。
沢山の魂が浮遊しているわね。
君に決めた。
『通称R、生前に家族を除き36名殺した殺人鬼、SEXするよりもおいしい物を食べるよりも「殺人」を愛したという伝説の殺人鬼』
「俺はいったい、どうして」
「まだ、転生の順番はまだだけど、2年位現世で遊んでこない」
「遊ぶ、俺にとっての遊びは『殺し』だが良いのか?」
「うん、大丈夫、殺して、殺して、殺しまくって良いわ、但し2年経ったら強制的に此処に戻るわ」
「それで罪はどうなる?」
「貴方には加算されない、それに悪魔側に魂があるのに今更気にする事かな?」
「それでは断る理由は無いな」
私は、鈴木誠の魂が異世界に旅立って直ぐの時間にRの魂を送りこんだ。
◆◆◆
「誠、此処にご飯おいて置くわね」
「ありがとう母さん」
これが俺が2年間過ごす体か、ぶよぶよしてて醜いな。
まぁ、転生待ちの俺が殺人し放題を味わえるのだから、文句は言えないな。
《扉の前から『誠の母親』の声が聞こえた気がするわ》
「誠、いまお母さんって」
「母さん、少ししたら下に行くよ、ご飯は台所で食べるよ」
しかし、何だこれ教科書は破れているし、学生服も所々穴が空いている。
日記には、毎日が辛いと書いてある。
まぁいいや、罪をこいつが背負ってくれるんだ、少しは此奴の役にたってやろうか。
「嘘、誠が部屋から出てくるなんて」
「今日から学校に行くよ」
「誠、無理しなくて良いのよ」
「大丈夫だよ 母さん」
俺は台所に行くと、こっそりとナイフと包丁を胸元にしまった。
◆◆◆
教室についた。
俺の机はと…なんだ、花が置いてあるし落書きだらけだ。
「なんだ、誠学校にきたのか、てっきり死んだと思っていたんだが」
ああっ、素晴らしい、殺したい奴が沢山いる。
そう言えば、誠って奴、異世界で『剣聖』とかやっていたんだっけ。
「そうそう、死んじゃえば良いよ、楽になれるよ?」
「ゴミは死んじゃえ」
「あははははっ、転校すれば良いのに」
我慢、我慢と。
「そう、死んじゃえば楽になるんだ」
「そうだ、死ねば楽になるよ、鈴木くん、早く死んじゃえ」
「うわぁ、裕子酷い」
「じゃぁ典子は鈴木に生きていて貰いたいの」
「ううん、死んで欲しい」
俺は後ろの扉の所に行った、気づかれないように扉の下につっかえ棒をした。
「何処に行くんだ鈴木よー、今日の昼休みからサンドバックな」
「来るからお前が悪いんだ」
そうこうしているうちに、教師が教室についた。
俺は一応確認の意味も込めて、教師に聞いてみた。
「先生、皆が僕に死ねっていうんですが」
「なんだ、鈴木来ていたのか、来なければ良いんだ、悔しければやりかえせ、出来ないお前が悪いんだ」
「解りました」
誰を殺そうか考えた。
俺は殺す時に一応はロジックを組む。
殺される理由が無い人間は殺さない。
まぁ、俺の中でだから凄く偏りはある。
前の人生でも家族は俺を庇ってくれたから『殺さなかった』
今回も『良さそうな母親』だから母親は殺さない。
此奴らはギルティ―、殺して良い奴だ。
さぁパーティーの始まりだ。
「先生」
「しつこいぞ、鈴木」
「僕これから、やり返す事にしますね」
確か此奴、剣聖なんだよな、悪魔が言っていたな。
「鈴木、何を言っているんだ、早く席に…おいっおおおおっやめろ」
「剣聖を怒らせちゃ終わりだよ」
目の前の『俺の知らない女の子』にナイフを突き刺した。
多分これで死んでいる。
「嫌ぁぁぁぁぁぁーーーーっ」
「人殺し」
「嫌だなぁ、君達は僕を殺そうとしたじゃない? 死ねば楽になれるって言ったよね?
全員、楽にしてあげるよ、せんせ公認だからね」
教室に悲鳴がこだました。
教師1名に生徒28名が殺されたニュースがその日の夜に流れた。
◆◆◆
俺は鈴木誠として逃げ続けている。
期間が2年と限られているからこれはこれで楽しい。
家が欲しければ、奪って住み続ければ良い。
警官だろうが、何だろうが捕まえに来たら殺す。
最早滅茶苦茶だな。
人生が2年だからこそ出来る事だ。
ちなみに俺を捕まえようとした奴は別だが、それ以外は俺の倫理観で殺している。
家を奪う時は明らかに奪って良い奴から選ぶ。
反社会集団の家を狙うし、新宿や渋谷にたむろしている半グレを殺して住み着く。
案外これが良い。
元から半分犯罪者だから、上手く周りから孤立している。
多分、200人弱は殺したか、そろそろ時間なのか?
体が消え始めた。
まぁ『殺したいだけ殺したのだから悔いはないわ』
◆◆◆
もう此処にいるのも限界だ。
僕はようやく死ぬ決意が固まった。
此処は暗闇で何もない。
ただ、食べて生きているだけ。
この状況が『死ぬより辛い』事に気が付いた。
だから、僕は死ぬ事にした。
幸い、硬いゴツゴツした岩がある。
尖った部分に上手くぶつければ死ねるだろう。
勢いをつけ打ち付けた。
上手くいったようだ。
凄い激痛が走り僕は意識を手放した。
目を覚ますと僕は何処かの路地裏で目を覚ました。
此処が何処か解らない。
サイフの中にはお金が沢山入っていた。
取り敢えず、家に帰ろう。
家に帰ってきた。
家に凄い落書きがある。
殺人鬼、死ね、息子をかえせ、娘をかえせ。
可笑しいな、虐められていたのは僕だけど。
家には鍵が掛かってだれも居ない。
「鈴木誠だな、連続殺人容疑で逮捕する」
意味が解らない、なんで僕が逮捕されなければいけないんだ。
◆◆◆
これで良い筈よね。
異世界で魔族とは言え千人以上殺したんだもん。
こっちでも殺人者で終わらないと可笑しいわ。
こっちの神のせいで異世界で千人以上が此奴のせいで死んだんだから。
その分、こっちの世界でも死人が出なくちゃ不公平だわ。
【新章スタート】 異世界転移者 保護法
何が起きたんだ。
俺は魔王城から出て人間の住む街まできた。
その方が『異世界転移者』について詳しく調べられるからだ。
「ウィング様、本当に何がおきているんでしょうか?」
今話しているのはメイドのマリア。
俺がこれからの異世界転移者を狩る旅で困らない様に側近がつけてくれた。
最も、ただのメイドじゃない『魔族メイド』と言えば良いのか?
ある程度戦闘もできる。
俺とマリアが驚いているのは…この街の人間が『剣聖ジェイク』の悲劇を喜んでいる。
そういう事だ。
「マリアよ、剣聖ジェイクは『弱気人を助け魔族を倒す』そういう人物でクズでは無い、そう聞いたのだが?」
「私が調査した訳ではありませんが…そう聞きましたわ」
だが、目の前の街では、明かに『剣聖ジェイク』の死を喜んでいる。
何が起きているのか本当に解らない。
「私が調べてきます」
そう言うとマリアは街中に入っていった。
俺は噴水の近くのベンチに腰を落とすと俺はマリアの帰りを待った。
「ウィング様~ハァハァぜぃぜぃ」
「理由が解ったか?」
「はい」
俺はマリアから詳しい話を聞いた。
「異世界転移者保護法?」
「はい」
どうやら人間の世界には『異世界転移者保護法』と言うのがあるとの事だ。
元は『勇者保護法』という法律だったが、沢山の転移者がこの世界に来るようになり名前が変わり、その範囲が広がった。
簡単に言うなら…異世界から転移してきた者は『女神が選んだ者』だから偉い。
そういう事だ。
その為、此の世界でやりたい放題だが、誰も文句は言えない。
異世界転移者はそればかりじゃなく、自身の力も強いから文句が言えない。
そんな所だ。
実際に異世界移転者が誰かを殺しても罰金で済んで誰も罪に問わない。
そのお金さえも本人でなく『教会』が払う。
異世界転移者を嫌っている存在もその為多い。
この街は、剣聖ジェイクではなく他の『異世界転移者』に酷い目にあわされた事があった。
だからこそ『異世界転移者』が何者かに酷い目にあわされたのを喜んでいる。
そういう事だった。
「その異世界転移者は何をやっていたんだ?」
「なんでも、幼い女の子を『ウサギ』と称して遊び半分に殺していたそうです」
「何故、そんな事を?」
「完全な逆恨みでしょう『僕の事を見下した目で見るな―っ』と叫んでの凶行だそうです」
異世界転移者は頭が可笑しいのか?
「それで、この騒ぎか」
「なんでも、その女の子は花屋の看板娘だったらしく、皆さん同情的だったのでこうなっているみたいです」
それで、この状態なのか?
◆◆◆
「旦那、良かったら、うちで飯食っていかないか? 今日はあの憎い『異世界転移者』が無様な姿を晒した日だサービスするよ」
「今日は残りのパンは無料で良い持ってドロボー」
「しかし、醜い姿だったよな? あれがもしかしたら『異世界転移者』の本当の本当の姿なのか? あれが本当の姿なら『銀嶺の勇者』や『ホワイトエンジェル』とかも不細工だったりして」
「まさか、違うでしょう? あの綺麗な顔立ちがそうだったら…俺凄く悲しいぞ」
「まぁ、横柄な奴らの1人が悲惨な目に逢ったと言う事でいいんじゃねーか?」
「そうだな…」
「異世界転移者も全部の人間に好かれている訳では無い。そういう事か」
「話しで聞くと性格が相当可笑しい人物も多いみたいですね」
「何で女神は、そんなヤバイ人間受け入れたのだろうか?」
「これは、あくまで噂ですが、前の世界で酷い目にあっていた人間の方が悔しさから強いジョブや能力が手に入る…そういう話がありました」
これはあくまで噂だ。
本当の所は解らないな。
「あと、凄く面白い話も聞きました」
「面白い話?」
「はい」
「どういう話だ」
「どうやら『異世界転移者保護法』によればウィング様なら『異世界転移者』は殺し放題みたいです」
「それは可笑しいだろう『保護法』なのだから」
「それがですね」
なんでも『異世界転移者』には自由に決闘を申し込んで良いらしい。
勿論、恨みがあれば殺しても構わない。
恋人や妻や宝を取り戻したければ『決闘』を申し込んでよい、そういう事だ。
だが、これには裏がある。
『異世界転移者は強くてこの世界の人間じゃ勝てない』
だから、これはチャンスではなく…本当の所は『異世界転移者に有利な話だ』
罪に問う事は出来ても…罪に問えない。
馬鹿馬鹿しい話だ。
「これは使えそうだな」
俺は、マリアと一緒に今後の事を考えながら、次の獲物について考えていた。
『銀嶺の勇者』『銀嶺の聖女』
情報から考えると『異世界転移者』にはクズと本当に敵ながら素晴らしい者と二通りいるようだ。
この間殺したジェイクはどちらかと言えば『素晴らしい者』だった。
だが、『クズ』が意外に多い為、弱い人間の中に『異世界転移者』を嫌う者も多くいる。
「それでウイング様、やはり倒すのはクズですよね!」
「それは違うぞ、俺達が倒すのは『素晴らしい者』だ」
「何故ですか?」
マリアは魔族だが、種族は堕天使だ。金髪で長い髪に青い目の綺麗な美人。
見方をかえれば『天使』にも見える。
その為か魔族特有のドス黒さが無い。
「俺たちは魔族だぞ!人間に有利に動いてどうするんだ! 良いかクズは人間に迷惑を掛けて害悪を巻き散らす素晴らしい存在だ。だからこそ人間が『素晴らしいという異世界人』を優先して倒す…クズだらけの異世界人に蹂躙される人間、実に素晴らしいじゃないか?」
「ウイング様…酷いですよ」
なんで俺が哀れみの顔を向けられなければならんのだ。
頭が可笑しいのはどう考えてもマリアだ。
『素晴らしい異世界人』は人間の為に戦い魔族を殺す。
確かに人間なら素晴らしい事だ。
だが殺されている魔族からしたら、最悪の人物だろうが。
その事をマリアに伝えると..
「あはははっ確かにそうでした。それで次に殺す相手は決まりましたか?」
やはり堕天使、堕天したとはいえ元が天使だからか偶に人間よりになるな。
正直言えば迷っている。
思いつく、メジャーな異世界転移者だけでも
『銀嶺の勇者』『銀嶺の聖女』『勇者 天城翼』『勇者 マモル』『勇者 アベル』『勇者クロード』『剣の申し子アール』『魔導士メール』『聖ヒーラー クエラ』『女神の騎士 松浦京之介』『勇者 天上勇気』『残酷な貴公子 セロ』『残酷勇者アムダ』『真の勇者セレス』『女勇者カヤ』『剣聖 ソード』『聖女 リリ』『聖女リリア』『必中の射手 ルディ』『白銀の勇者 ハク』
これだけ思い浮かぶ。
前線に出なかった俺でも、ざっと20名思い浮かぶ。
そう考えたらこの世界に居る異世界転移者は100を超えるかもしれない。
地道に倒していくしかないな。
その中で俺は誰から倒そうか。
マリアの情報では、この街から近い場所に『銀嶺の勇者』に『銀嶺の聖女』が居る。
【銀嶺の勇者】は長い銀髪にやや赤みが掛かった目をした美少年。
背が低く、可愛らしいという意味で凄く女性人気がある。
そんな少年が短剣を携えて戦う時、正に疾風と言う位風の様に舞う。
そのスピードは実力のない者は追う事も出来ない。
それじゃスピードだけなのか?
いや違う。その華奢な体からは考えられない位力もあり、オーガの一撃もナイフで受けられる。
バランスが良い強敵だ。
【銀嶺の聖女】は正に銀嶺の勇者に瓜二つだ。
大きな違いは女だという事だ。
そして二人はパーティを組んでいるが一緒に行動はしない。
銀嶺の聖女は前線には出ないで銀嶺の勇者が戦っている間は近くの村や街で辻治療をしている。
一説によると二人は姉弟とも言われているが定かではない。
また、他の異世界人と違い頑なに前の世界の名前を言わない。
何か事情があるのかも知れない。
二人とも『本当に素晴らしい異世界人』だ。
銀嶺の勇者は、困っている人が居れば報酬等取らずに駆けつけ助ける。
銀嶺の聖女は、困っている人が居れば無償に近い金額で治療をする。
正に人類の救世主なのかも知れない。
だが、我々にとっては最悪だ。
決めた。
「次に倒すのは『銀嶺の聖女』そして、その次は『銀嶺の勇者』を倒す」
俺はマリアにそう伝えた。
※上記に記載した敵キャラは全部、私の小説に出て来た登場人物です。
能力や容姿は変える可能性はあります。
VS 銀嶺の聖女
銀嶺の勇者と銀嶺の聖女。
どちらから先に狙うか。
よく考えた末俺は次のターゲットを『銀嶺の聖女』にする事にした。
聖なる魔法を使い沢山の人を救って来た聖女。
『異世界転移者』のうち本物の勇者や聖女は1人。
だが転移者はカッコ良いからとかそう言った理由で勝手に名乗っている。
だが、その能力は『勇者や聖女』と極端な差はない。
故に勝手に名乗っても誰も文句は言わない。
銀嶺の聖女も恐らくは本物ではない。
だが、病人や怪我人を信じられない程格安の金額で治し。
『死んでなければ殆どの者を治せる』その実力は自分からでなく皆が『聖女』と呼んだ。
此奴を倒すのは簡単だ。
『聖女』その中には他のメンバーと共に戦いに出る存在も居る。
だが、銀嶺の聖女は戦いに出ない。
つまりは『治療専門』
戦闘力を持たない異世界転移者等怖くはない。
◆◆◆
その日、俺は宿屋に忍び込んだ。
マリアは置いて来た。
彼奴は堕天使だが、稀に『天使』の顔が見える事がある。
今回の相手は『聖職者』
連れて来ない方が良いだろう。
一応は気がつかれない様に忍び込んだが…別に見つかっても構わない。
見つかったら殺せば良い、それだけだ。
部屋をあけて忍び込んだ。
「誰ですか貴方は? 私が銀嶺の聖女と知ってですか?」
「知っている…」
「ハァ~そうですか? 貴方、私が聖女で可愛いからって舐めているわね、一般人よりは遙かに強いのよ…ホーリー」
ヤバイ、思ったより強いのかも知れない。
まぁ、俺ならガチで戦っても勝てる。
だが…それじゃ面白くない。
俺はチートスレイヤーを抜いた。
「時間よーーー止まれ」
これで俺の勝利は確定だ。
相手は意識はあるが、全ての時間が止まった様に動けない。
此の時間軸で動けるのは俺だけだ。
「嘘、体が動かない、それに何故魔法も出ないのよ」
当たり前だ、チートスレイヤーを使い時間を止めたのだからな。
此処からがチートスレイヤーの本領発揮だ。
「時間よ、戻れ、戻れ、そしてかの者を真実の姿に戻すのだ」
銀嶺の聖女の周りに光が集まり渦を巻く、それが高速で回り始める。
「何をする気なの?何これ嫌、光が、光がぁ何で巻き付いて来るの? 私に何をする気なの~」
此奴、煩いな。
「今は殺しはしない、安心するが良い」
後は待つだけだ。
「誰か、誰か助けて~」
チートスレイヤーによってつくられた結界の空間に誰も居ない。
ジェイクの時の様に仲間も居ないし、宿屋の部屋の中だ大きな声が聞こえなければ誰も入って来ない。
そしてチートスレイヤーの作りだした結界の中の声は外には一切洩れない。
光の渦が収まり、中から出て来たのは…
なんだ此奴も、この様な醜い女が、あの『銀嶺の聖女』だと言うのか。
髪は灰色でこんがらがったロン毛、フケが溜まっている。
恐らく手入れはおろか何日も洗っていないのか脂ぎった感じもする。
細い目に高い鼻、吹き出物も沢山出来ていて不衛生極まりない顔。
彫は深いが、病的な感じは美人ではなく、そう、物語の老婆の魔女の造形に近い。
そして、手足が物凄く細く痩せているが、スレンダーと言うよりは栄養失調に見える。
服はロングTシャツにその下は下着。
だが、服は黄ばんでいる。
そして臭い、まるでオークの様な体臭がする。
これが、銀嶺の聖女の『異世界転移前の姿』か。
正直言えば、凄く醜い。
老婆の様だ。
「それがお前の姿か…醜いな」
「私が醜い…この銀嶺の」
そこ迄言いかけて、銀嶺の聖女は自分の手と体を見た。
「嘘、これは、これはーーーーっ夢よ!こんなに私が醜い訳無いわーーーっ、女神様から凄く綺麗な容姿を貰ったのに…何よこれーーーっ」
しかし、女神はジェイクといい、態々醜い人間を選んで転移させているのか?
「簡単な事だ、お前のチート能力を奪って、本来の姿に戻しただけだ」
「嘘よ、あははははははっ、私こんな姿なんてしてないわ…嘘よーーっ」
「しかし、凄く醜いな、それじゃゴブリンだって苗床にしたいと思わぬほどキモチ悪いな」
俺は恨みから銀嶺の聖女の胸倉を掴んで軽くビンタした。
「止めて、止めてよーーっ」
鼻から鼻血をだして、更に醜さがました。
「止めて~止めて下さい、私をお願いだから殺さないで…助けて下さい。」
異世界転移者の癖に『助けて』だと。
魔族の敵の治療をしているお前が悪いのだ。
「お前は、沢山の人間を治療し続けていたな!魔族にとって迷惑な存在だ」
「許して下さい、勘弁して下さい…もう人を助けたりなんてしないし、助けてくれるなら何でもします」
「ほう、何でもするのだな…ならば俺の前に膝磨づいて俺の靴を舐めろ」
「はいっ」
ジェイクと言い、此奴といい本当に犬の様にかがんで舌を出して舐めやがった。
プライドも無いのかこいつ等。
俺はそのままこの銀嶺の聖女を蹴飛ばした。
「ぴぎゃぁぁぁぁぁ」
こんな奴は只のゴミだ。
「鑑定」
俺が銀嶺の聖女を鑑定した結果がこれだ。
峰村 和美(みねむら かずみ )
年齢 17歳
HP8
MP0
引き籠り、陰キャラ、いじめられっ子、不登校、虐待児童 BL好き
趣味:ライトノベル読書
約束だから、前回と同じ様に此奴の情報を念でアガレスに送ってみた。
頭の中に『了解』と伝わってきたから今回もこれで良いのだろう。
「助けて下さい、もう治療なんてしません、もう何もしませんから」
「ああっ、お前みたいな不細工女、殺す価値は無いから助けてやる、それでどう助かりたい」
「助けてくれるのですか…ありがとう」
見ているだけで気持ち悪い。相手にしたくないわ此奴。
「ああ、4つから好きな物を選べ」
1 このまま見逃す
2 この世界で死ぬまで引き籠る
3 苦痛も無く一瞬で殺される
4 インキュバスに囲まれ衰弱死
「此処から選べばよいのね…ならば私は4番を選ぶわ」
◆◆◆
「此処は何処ですか?」
俺はインキュバスの巣に和美を連れて来た。
「お前が望んだ、インキュバスの巣穴だ」
「凄いわ、流石インキュバス…美少年ばかりじゃない」
なんで異世界転移者ってサキュバスやインキュバスが好きなんだ。
精を吸われて死んでいくのに。
銀嶺の聖女は3日間の行為を繰り返し精を吸い尽くされて死んだ。
殆ど全裸に近い姿で死んだ彼女は恍惚の表情を浮かべ…凄く幸せそうだった。
峰村 和美の運命。
魔族の男は約束を守ってくれた。
元の姿に戻されたけど…良いわ。
かなりきつい事言われたけど…問題はない。
だって私、死んでも元の世界に帰るだけだし、碌な生活じゃ無かったけど。
また引き籠っていればいいのよ。
お父さんもお母さんも暴れたら、それで終わり。
それ以上何も言って来ない。
家の場合は『学校も虐めがあった』と認めているから虐待児童だから、不登校も問題無い。
弟の一馬が居ないのが不安だけど…そのうち帰ってくる。
両親はお金があるから、2人で一緒に引き籠っていれば良いわ。
◆◆◆
これが峰村和美って人間のデーターね。
今度はどうしようかな?
此奴、ムカつく事に『殆ど』誰も殺して居ないのよね。
沢山の人を助けた。
これはどうすれば良いのかしらね。
魔族側に直して考えたら『悪人を沢山助けた』そういう事よね。
ならば、此の世界でも同じ事をさせれば良いのかしら。
少し困るわね。
此の世界に今は『本物の峰村和美』は居ないわ。
約2年間『自由』に出来るわ。
私は『悪魔側の人間』の魂に会いにいった。
沢山の魂が浮遊しているけど…適した魂は居ないかしら。
困ったわ、日本じゃ悪人を治療したって医者なら罪にならないじゃない。
本当に困ったわ。
仕方ないから…似た様な感じの中から選ぶしかないわ。
君に決めた。
『通称X、元は医学生で解剖が好き、中学の時に解剖がしたいからと当時の親友の解剖をし殺した。その後、危ない人間専門の闇医者をしながら、偶に裏社会の人間から人間を貰って解剖を楽しんでいる。臓器移植などもお手の物』
まぁ、ゴブリン位は殺しているから、同じよね…あははは多分。
「私は何故この場に居るの」
「まだ、転生の順番はまだだけど、2年位現世で遊んでこない」
「遊ぶ? それは私に解剖するチャンスをくれるって事? 2年間別の人間になってやりたい放題出来るの?」
「年間、貴方に体を与えるから好きにして良いわ。」
「2年なのね…解ったわお願いするわ」
私は、峰村和美の魂が異世界に旅立って直ぐの時間にXの魂を送りこんだ。
◆◆◆
なにこれが私の体。
醜いし筋力もないわね。
だけど2年間の自由が貰えたんだから仕方ないわね。
「和美…あなたどうしたの?」
この人が私のお母さんと言う事か。
「どうしたのって?」
「だって貴方、引き籠っていたじゃない、部屋から出てくるなんて久々」
なんだ、此の体の主は引き籠りだったのね。
だから、こんな体なのね。
「あははははっ、お母さんもう大丈夫だよ、私これからちゃんと学校に行くから」
「そう、解ったわ、だけど無理だと思ったら早退してきて良いからね」
「解かったよ」
どうせ引き籠りなんだから、学校は明日からで良いわね。
今日はサボって…行くところがあるわ。
「何だ、お前! お前みたいな暗いガキが来る場所じゃないぞ!」
「Xさんの紹介よ! 闇医者欲しくない? 趣味も実力もほぼ同じ事が出来るわ」
「証拠はあるのか? お前どう見ても高校生くらいだよな…」
私はXしか知らない組織の秘密について話した。
「どうかしら?」
「確かにXと親しいのだな…だが腕は、確かなのか?」
「それは見て貰うしかないわね」
此処はXの時に仲が良かった臓器密売組織だ。
無かったら困る所だったが、まだ場所も顔ぶれも同じだった。
良かったわ。
代わっていたらお手上げだった。
「解かった、だがな臓器は大切な商品だ、そう簡単に触らせられないな、あとお前何者だ、場合によってはお前が商品になるぞ」
そうだわね、流石にX本人とは言えないわね。
「Xの解剖を手伝っていたのよ、だけどXがあんな事になって伝手が無いから仕方なく直接コンタクトをとった、腕はXも褒めていたわ」
「そうか、それなら試しにヤクザの組員でエンコ落とした奴がいるから繋げてみるか?」
「やらせて貰います」
私は丁寧に指を繋いだ。
「凄いな、制服着ているから高校生なんだろう、まるで医者みたいだ、いや下手な医者より腕は上だな」
「まぁねXからほとんどの事は学んだわ」
「そうかい、これは今回の報酬だ」
5万円かぁ~ まぁXじゃないから足元見られるのは仕方ないな。
「有難うございます」
私はオペや解剖が出来れば満足だから良いけどね。
今日はこれで帰った。
◆◆◆
今日は母さんにしっかりと挨拶をして高校に出掛けた。
あはははっ下駄箱からして酷いな。
上履きはゴミだらけで落書きだらけ。
こんなのは履けない。
その上履きを用務員さんに見せてスリッパを貸して貰った。
「なに、彼奴きたの?」
「引き籠ったまま来ないと思ったのに..」
「本当にキモイ」
うん、私もそう思うわ。
だけど…皆可愛い臓器だもん許しちゃうよ。
あはははははっ多分解剖したらピンクの綺麗な臓器なんだろうなぁ~
あの目玉もキラキラして綺麗だ。
机の上のゴミをぶちまけるて椅子の上のゴミを払うと…うぇ、まだ机の中がゴミだらけだ。
それもぶちまけて座った。
「ちょっと和美さん…そのゴミ」
「誰かがね、勝手に私の所に置いたの…だから捨てた」
「ゴミ女の机だからゴミを捨てただけじゃない…掃除しろバーカ」
馬鹿は此奴よね。
机は落書きだらけで上履きも同じ。
証拠がある。
幾ら教師が黙っていても…訴えられたら対応するんじゃないかな。
私はスマホで写真をとった。
そしてさっき私をバカにした女の傍にいった。
「何だ、お前」
おもむろに私はそいつの髪を掴み机に叩きつけた。
「痛いーーーーっぎゃぁぁぁぁぁぁーーーーっ」
うん、痛いのは解かる。
だって鼻から叩きつけたんだからさぁ。
多分、鼻の骨が折れている。
「ないすゆんだーーっ」
「今迄散々、虐めてくれたからささやかな仕返し…鼻の骨折れているね?」
「ちょっと止めなさいよ」
「あのさぁ…私1年間がまんしたんだけど、止めなかったから私も止めない」
「先生呼んでくる」
「そんな事したら、次はお前の顔を潰すよ? 私の机見てみな、先生が貴方を守ると思う? 過去の虐めの証拠を出せば、きっと先生黙ると思うよ? まぁ言っても良いけどさぁ…先生に怒られたら..あんたが此奴の代わりになるよ」
「嫌だぁ~いやーーわぁぁぁぁぁぁーーっ、いやいよー…」
さてと…
「此奴、勝手に転んでけがしたんだよね違うかな?」
「あうたがやったんだ」
「違うでしょう? 転んだんだよね~皆も見たよね」
誰かは解らないけど、鼻が折れて骨が見えている。
此処は女子高。
こういう暴力に巻き込まれたくない奴が多い筈。
「あのさぁ…私今迄の『虐め』の証拠沢山持っているよ? もし今回の件がバレたら、全部話して仕返ししただけって説明するし…更に報復もするよ? 推薦とか無くなくなったり、大会に出られないとかあるかもね…どうする」
「ああっ森川さんが勝手に転んだの私見たよ?」
「勝手に転んでなんで人のせいにするのかな?」
「おまやいら」
「そういう事ね..」
これで、もう私に絡んでくる奴は居ないわね。
『そうだ、森川さん、流石にその鼻は可哀想だし、医者に行かれても困るから、知り合いの医者を紹介してあげる…ここよ…もう気が済んだからお金も私が出すよ』
そう小さく耳打ちしてメモを渡した。
森川は鼻が痛いのかホームルームを前に早退した。
◆◆◆
「眠らせてあります」
「そう、流石ね」
勿論、此処は表向きは病院だが、裏では臓器の密売をしている組織の傘下だ。
組織の信頼を得る為に『持ち込んだ』
「この人間は私の持ち込みだから、私が解体しても良いよね」
「勿論、どれだけの腕か見せて貰う、まぁ指と臓器は違うからな」
角膜、腎臓、心臓等売れる臓器を取り出し、専門の容器、機械で過冷却して保存していく。
私はこういう処置が本当に速くて自信がある。
「こんな物ね、どう?」
「驚いた、まさにXみたいだ、よし、本採用だ」
「宜しく」
ちなみに、残った使い物にならない部分はウナギの養殖場に持っていきエサにする。
◆◆◆
もう、何人殺して解体したか解らない。
思う存分解体した。
うんうん満足。
そろそろ二年がたつかな。
私は徐々に意識を失っていった。
◆◆◆
「此処は何処?」
見た感じ病院見たいだけど…
そうよね、私インキュバスとアハハうふふして死んだ筈よ。
あの死に方は..うん死ぬなら最高よ…えへへ、やだ股間が疼いちゃうわ。
「先生、お願いします」
えっ、先生…嘘、私死んでなかったの?
「そうか、任して…パーフェクトヒール」
この呪文は死んでなければ助かる究極のヒール。
「おふざけは良いから、早く臓器の摘出しろ」
えっ、何それ…
「そんなのは出来ません」
その後、峰村 和美をみた物は居ない。
※ウナギは都市伝説から引用、医療の話も知らないので適当です。
つっこみはお許し下さい。
お知らせ
『チートスレイヤー ~異世界転移者を葬る黒き剣~』を書いていた時に読んで下さる方が余り居ませんでした。
ですが、いざ話を終わらせてしまった後になって、感想欄から沢山の長編化、続きを読みたいという話を頂いて、続編を書き始めましたが…
折角書いたのに、肝心のリクエストを頂いた方は殆ど読んで頂けていなかったようです。
その為、この話は次のお話しで終わりとさせて頂きます。
有難うございました。
人間に応援されて(完)
チートスレイヤーの力で『本当の姿を晒された異世界転移者』の評判は地に落ちた。
「勇者グリード様って老人だったみたいよ…それが凄くショボいのよ」
「50歳だったんでしょう? よく14歳の女の子に手が出せた物ね」
「リーナ王女は寝込んじゃって引き籠ったって」
「解かるよ、美少年だと思って、体まで許した相手が王様より年上のお爺ちゃんなんだから」
「本当に可哀想だよね」
「魔導士のルイ様はオーク見たいな人だったよ」
「女神って馬鹿なんじゃ無いの」
結局、異世界転移者の姿が晒されていった結果。
だれもが彼等を敬わなくなった。
特に女性は恨み骨髄で石を投げる様になる。
そして…女神を信仰する者は無くなった。
「行くかマリア」
「はい」
「「「「「頑張って下さいソード様」」」」」
何故か俺は人間から応援され異世界転移者を狩っている。
召喚が止まった今…1年もしないで全員狩り尽くせるだろう。
完