アドマンタイタイから来た男 

エゼンは引き籠り
やる事が無い..

やりたい事はもう全てやってしまった。

欲しい物も既にない。

長い年月を掛けて何でも出来るようになってしまった..。

何でも出来るようになると、正直なにもやる気が起きない..

それでもここアドマンタイタイの序列では564番。

上には上がいるが僕も含んで殆どが引き籠りだ。

自分の世界を作って閉じこもっている。

もうどの位ここに居るのかな?

お金も女も何でも何時でも手にいれる事が出来る…そうなった時からやりたい事が無くなった。

無限に生きれるという事も本当に考え物だな…死ぬ事と生きる事が同価値になってしまう。

今この時に死んでしまってもそれで良いやと思ってしまう。

年齢が2億9千歳の僕でさえこれなんだ、言い伝えでは50憶歳以上で太陽がある前から生きているという評議員の方達なんてさぞや退屈なんだろうと思う。

どの位こんな生活を送っているのかな?

少なくとも数百年はこの真っ暗な空間で眠っている。

だって世界がつまらないんだ…仕方ないだろう?

ドン、ドンと扉を叩く音が聞こえる..仕方ないでようかな?

「何かようかい?」

「エゼン相変わらず、何もない世界に居るんだね…流石にこれは無いわぁ」

「君は活動的だね..僕と同じ位何でも出来るのに外の世界で靴磨きしているなんてさ」

「幾ら何でも出来るからって引き籠っていると可笑しくなるよ!少しは外の空気を吸わないと駄目だよ!」

「それなら大丈夫だよ…ここの空気は最高に綺麗な空気にしているから..」

「そういう事じゃないんだけどな..まぁいいや少し一緒に出掛けないかな..」

「まぁ、物凄く暇だから別に良いよ..」

ちなみに、今話している相手はリオ君、見た目は11歳位の美少年だ。

だが、実際の年齢は2億歳は優に超えている。

リオ君と共に近くの居酒屋に来ている。

焼き鳥20本と超炭酸ジュースを頼んだ。

「何か話があるのかな?」

「別にないけど、友人を食事に誘っちゃいけないのかな?」

「そんな事ないさ..」

「まったく、たまには人と喋らないといざという時喋れなくなるよ? あと常識も解らなくなるよ?」

正直、リオ君に言われたくない…何しろ、自分の友達のお姉ちゃんが貴族に手籠めにされそうになった(未遂)だけで、その国の貴族全員をネズミにかえてしまったのだから。

「リオ君も余り常識を知らなそうだけど..」

「知らないよ? だから僕は常識を知る為に靴磨きを外の世界でしているんだよ!」

被害は甚大だと思うけどあえて言わない。

「そうか、リオ君は偉いな..」

「まぁエゼンも少しは外に出た方が良いよ..余り籠っていると自殺したくなるからね」

「まぁ、考えるよ..」

二人して居酒屋を出た。

お金は勿論払っていない…ここアドマンタイタイではお金なんて払う必要はない..基本何でも無料だ。

奴隷でも貴金属でも当人が拘って無い、手放したくない物以外は無料が原則。

アドマンタイタイのメイジ同士なら、他国の国宝級な物ですら無料で譲って貰える。

それが当たり前なのだ。

何しろ働いているのは趣味で行っていて遊びの一種で..ただの自慢だからだ。

もう、僕はそんなのには飽きている..だから、何も無ければ寝ている..

はぁ..もう死んでも良いかも知れないな..毎日が退屈過ぎる…

異世界勇者達は帰還しました。

授業が終わり俺たち三人は何時もの様にだべっていた。

ごくごく普通のアニメやライトノベルの話やクラスの誰が可愛いとかいう普通の会話だ。

だが、この日は何時もと違っていた。

最近読んだライトノベルの話をしていると突然床が光り始めた。

「何だ、これは..これはもしかして異世界召喚って奴じゃないか?」

「そうに違いないわよ..」

「勇者..僕たちが勇者になれるんだ..これで」

その光った床から大きな魔法陣が広がり俺たち3人は気を失った。

そして目を覚ますと..

「ようこそ、勇者の皆さん、私はこの国アレフの第一王女マリアーヌと申します、後ろに座っているのが国王ハインリッヒ十二世です」

《やったぞ、これは多分、勇者召喚だ》

《そうだね、間違いなさそうだ》

《交渉は私に任せて、少しでもよい待遇を勝ち取ってみせるわ》

《任せたよ》

「その王女様や王様が私たちに何の用があるっていうのかしら!」

騎士の一人が抜剣をして怒鳴る。

「口を慎め、小娘!」

だが、彼女は止まらない。

「無理やり連れて来られていきなり切れられてもね…」

痺れを切らした騎士が近づいてきた。

「貴様、王族に対する何たる狼藉、牢に放り込んでやる」

「良い良い、何も知らぬのじゃ許してやれ」

「ハッ!」

騎士は一れいをすると後ろに下がった。

《このままでは埒が明かない、僕が代わるしかなさそうだ》

「僕が変わるよ」

「その方が良さそうね!」

「すみません、教えて下さい、僕たちに何の用があるのですか? そして何で俺たちは此処に居るのでしょうか?」

「その事については私からご説明させて頂きます」

「宜しくお願い致します」

「実は最近、魔族の活動が活発になってきました、今までは人を襲わなかった魔物までもが人を襲うようになり、各国に多大な被害が及ぶようになりました、原因を調査した所遙か昔に勇者が封印した魔王の復活の兆しがある事がわかりました」

「成程、それが僕たちを召喚した理由なのですね」

「はい、魔王に対抗するために昔使われたと言う勇者召喚の魔法でお呼びさせて頂きました、この魔法で呼ばれた者はここに来る前に魔族と戦う為の力を身に着けているはずです」

「事情は解かりましたですが、我々は今迄、平和な世界で生きていました、その権利を貴方達は奪うのですか?」

「元の世界に戻して貰えないでしょうか? 戦うなんてそんな事をしたくはありません」

「まさか、無理やり呼び出して戦えなんて言われると思いませんでした」

「それは出来ません、我々には、送還呪文が伝わってないのです」

「そんな、酷すぎませんか?」

《せっかく召喚されたんだ、吹っ掛けないとな》

《あのお姫様可愛いよな..ハーレムメンバーにしたいな》

《ちゃんと交渉してよ..私は美少年が欲しいわ》

「無責任にも程があります、それでどう責任をとるのですか?」

「本当にすいません、我々には貴方達に頼るしか方法が無いのです、ですがもし、魔王と戦ってくれるなら何でもさせて頂きます」

「もう帰る事は出来ない..仕方ない、僕たちはこの国の為に戦うしかないんですね!」

「すいません」

「だったら、その責任として…」

その時、端っこにいたボロ雑巾を纏ったような男が起きた。

「何だ、異世界召喚か..嫌なら返してやるよ」

男が軽く手を振ると魔法陣が発動した。

「これで帰れるぞ..良かったな!」

「ちょっと待ってくれ、俺は勇者になってハーレムを..」

「私だって聖女になって美少年をはべら..」

「僕は賢者..」

光は彼らを包み込み…そして彼らは消え去った。

(再び、教室)

「嘘だ、返されちゃったよ..ここ教室だよ」

「あんたが吹っ掛けるからいけないんじゃない? せっかく聖女になれるチャンスだったのに返して、私の逆ハー返してよ」

「あああああああ、僕の最大のチャンスを潰しやがって、お前ら絶交だ!」

「はぁ? こっちの方こそ絶交だわ、顔も見たくない」

「お前ら、俺の前に顔出すな、正直殺したくなるからな..」

こうして彼らは勇者になれるチャンスを失った。

ペテン師なのか美少年なのか? 揺れ動く心

「よかったな…何事も無く全て丸く納まって…」

「良くありません、どうしてくれるんですか! 沢山の犠牲を払って、女神様にお祈りをしてようやく、ようやく勇者達を呼び出したのに…何で返してしまうんですか?」

「だって、彼らは帰して欲しいと言っていたし…雰囲気的に帰してあげたいけど帰せない…そんな話じゃ無かった? それなら帰せる者が帰してあげれば良いだけじゃないかな?」

「いえ、違います…確かに呼び出した事で彼らは怒っていましたが…私達には魔王と戦ってくれる勇者が必要なんです…だから縋るより仕方なかったの…それなのに帰してしまうなんて…何人ものメイジが犠牲になって…最後の希望だったのに…もう人類は終わりです、貴方のせいで人間の世界は終わってしまうのです!」

魔王とか魔族ってそんなに怖い物だったっけ?

可笑しいな、アドマンタイタイの魔法使いなら序列の低い900番台だって皆殺しに1時間も掛からないと思う。

メイジが犠牲になるなんて可笑しすぎる…不老不死にならないとメイジになれないのに犠牲になるなんてありえない。

「あのさぁ..魔王なんて真面なメイジが居たら1人で充分じゃないかな? 何で国で対処しないといけないんだい..」

「貴方は頭が可笑しいのですか? 魔王ですよ! メイジや騎士なんて1万人単位で戦っても負けてしまうのに…その前に貴方は誰ですか?」

「はぁ..僕ですか? エゼン…ギルバート.エゼンですが…」

「何で、此処にいるのですか?」

「いや、そっちが呼び出したんじゃないですか…せっかく寝ていたのに…まぁ暇だから良いんですが…」

「それでは、さっきの勇者召喚に巻き込まれ、呼び出された、そういう訳ですか?」

「多分、それです…」

「もしかして、貴方は凄腕のメイジだったりしますか? 見た目にはそうは見えないのですが…賢者だったりしますか?」

ボロ雑巾のような服をきているし、見た目は浮浪者…だけど賢者の中には世捨て人のような人も居るっていうし…案外それかもしれないわ。

「ただのメイジですが…国の序列で言うなら564番」

「その程度の人間が偉そうな事を言ったのですか? 落ちこぼれじゃないですか?」

「落ちこぼれでは無いつもりです…一応は一人前のメイジを名乗っても良いと言われています..それに昔は字だってあったんです..」

「どんな呼ばれ方をしていたのですか? さぞかし凄い字なんでしょうね…」

所詮はただのメイジ..たかが知れている、聞くだけ聞きましょう。

「一応は有名ですよ…負けっぱなしのエゼンって言えば..」

「もう良いです…負けっぱなし、そんなメイジが魔王なんて1人で倒せる、そんな偉そうな事を言ったのですか?」

「事実を言っただけです…」

「そうですか? なら魔王を倒す事が出来たら何でも好きな物を好きなだけ差し上げましょう…出来なかったら処刑します…簡単に倒せるならそれで良いですよね!」

「欲しい物が無いからな..メンドクサイし」

「おや、逃げるのですか?」

「仕方ない….メンドクサイですがやりますよ…魔王を倒してきたら、そうですね貴方を頂くとしますか..」

この位の報酬なら怒らないだろうな…アドマンタイタイのメイジの報酬なら美女1万人でも良いなんて事はざらにあったし..

騎士の一人が抜剣をして怒鳴る。

「口を慎め、!貴様、王族に対する何たる狼藉、牢に放り込んでやる」

「良い、エゼンとやら、それで良いのだな? 魔王を倒したらそこのマリアーヌをやろう、だが出来なかったら命を差し出す…それで良いのだな!」

なんだかなこんな破格値なのに..

「まぁ約束してしまったから良いですよ…」

「王族との約束じゃ…一切反故には出来んよ…」

「大丈夫ですよ…たかが魔王ですよ..」

「ほう、たかが魔王..していつまでに討伐してくるのじゃ..」

「一日もあれば充分..」

「よくぞ申した..ならば今夜は城に泊まるが良い..」

「解りました」

「あのペテン師、腸が煮えくり返るわ、決して逃がさん..勇者を送還した償いに死んで貰う」

あれ、可笑しい..よく考えたら勇者召喚にはこの国の優秀なメイジ80人がつきっきりで、その半分が廃人になった。

送還を一人で? 案外凄いのかも知れないわ..

「あの父王様!」

「どうかしたか! マリアーヌよ」

「あのメイジ、エゼンの事ですが..」

「あの無礼者か…必ず処刑するから安心しなさい…明日までの命じゃな、可哀想だから最後の晩餐をくれてやったわ」

気が付いて無いのかしら? 案外凄いメイジかも知れないのに…まぁ魔王に勝てるとは思えませんが..

マリアーヌは何となく、気がかりになりエゼンの部屋の前まで来た。

《明日一日で魔王を倒すなんて言っていたけど…ここから魔王領まで6か月は掛かる筈..どう考えても無理だわ》

明かりがついているわね…

(エゼン)

しかし、我ながらみすぼらしいな、ずうっと引き籠っていたからな…

人前に出るなら…服位は替えた方が良いだろう…白銀のローブで良いか?

しかし、何だか見下したような顔をしていたけど、メイジがいるのに可笑しくないか?

メイジにとって姿形なんて自由自在だろうに、子供から大人、男、女何でもなれる。

それこそ動物にだって..1度見た相手の姿になるなんて簡単だ…例えば、歴史的美少年のセレナ.トリスタンにだってこんな風に、簡単になれる。

正直言うなら、2億9千歳も生きていると昔の自分がどんな姿かも忘れた。

まぁ、今の姿が気に入っているから、服だけ変えれば良いか…

(マリアーヌ)

凛々しい、凛々しすぎますわ..流れるようなプラチナブロンドに..鋭い切れ長の目…

まるですべての女性の理想の憧れ..そうとしか言えないわ…

嘘..あの姿こそが本当の姿だというの!みすぼらしいあの姿は仮の姿なのね..

姿を偽っているのは何か事情があるのかも知れない…案外、昔居たという女神の聖騎士なのかも知れないわ…

マリーアーヌは勘違いをした。

だが、それは仕方ない事だ…エゼンが姿を変えたセレナ.トリスタンは女神すら魅了したという伝説の美少年なのだから。

魔王討伐と退屈からの解放(序章 終わり)
次の日、様子を見にエゼンの部屋にメイドが訪れると..居なかった。

「大変です..エゼン様が居なくなりました」

その知らせを聞きマリアーヌが部屋に来たがやはり居ない。

「うむ、やはり口先だけの男であったか..」

「待って下さい、父王様..エゼン様は逃げたりしません..」

「ほう、王女よ何故、あの者の肩を持つのじゃ..」

「エゼン様は約束しました..約束を守らないような方じゃありません」

「そうかの..儂には、ただのペテン師にしか見えなかったが…まぁ良い約束は今日一日ある..明日の朝までに戻らぬ時は指名手配じゃ」

《必ず戻ってきますよね..エゼン様》

その頃、エゼンは…

魔王城に居た。

「お前が魔王で間違いないか?」

「ふっ、魔王城に忍び込むとは、だれかおらぬか、曲者だ..」

「お前の部下ならもう魔族じゃ無くなったぞ..ここに居る魔族はお前だけだ..」

「可笑しいぞ、此処に来るまでには四天王の一人、強欲のアモウを倒さなければならない筈だが..まさか倒したのか?」

「まぁね」

「ならば、儂も本気を出すとしよう、歓迎しよう勇者よ…」

「そんなの良いから…レナ二ミズネ」

「何だ、これは、我の魔力が..体が..」

暫くすると、魔王だった者はただのネズミになっていた。

《ふぅ、リオ君の魔法、案外便利だな…今度あったらお礼を言わないとね》

「さぁ、帰るか…」

「お前はエゼン、一体どこから入ってきたのじゃ..」

「魔法を使って帰ってきただけですが…」

「嘘、言うでない…1人で転移魔法など出来るメイジはおるわけ無いわ」

《転移魔法が出来ないメイジなんてアドマンタイタイには1人も居ないんだけどな..》

「どうでも良いですが..魔王を退治してきたのですが..」

騒ぎを聞きつけ、騎士やマリアーヌが入ってきた。

「エゼン様、今迄どこに居たのですか…」

「約束通り、魔王を倒して来たのですが..」

「本当ですか? 流石、エゼン様…魔王を倒した証はございますか」

「はい、ここに」

「ネズミですか?これがどうかしたのですか?」

「元、魔王だった者です..」

「貴様、こんなネズミが魔王だというのか..王よこの者を斬る許しを..」

「許す」

王に許しを得た騎士数人が斬りかかってきた。

「仕方ないな…レナ二ミズネ」

騎士達全員がネズミに変わった。

「これは、どういう事なのじゃ..」

「だから説明位ききなよ..魔王をネズミに変えて持ってきたんだが..」

「そうか、そのネズミが魔王だと申すか…証拠はあるのかの..」

「本当にメンドクサイ…レドモニウオマ」

今迄ネズミだった者が魔王に戻った。

「此処は何処だ、人間よよくもネズミに変えてくれたな、もう不覚はとらん皆殺しにしてくれるわ」

「ま、魔王、お前は此処に魔王を引き入れたたのか..」

「はぁ…証拠を出せといったり、メンドクサイ..レナ二ミズネ」

魔王が何かするより前に再びネズミになった。

「これで良いでしょう? ネズミは渡します..それでは約束通り、そちらのマリーアーヌを頂いていきます。」

「待って下されメイジ殿…いやエゼン殿、どうか、どうか、他の物に変えて下さらぬか?」

「お父様、それはあんまりだと思います…命まで掛けた約束なのですから守らないと行けません、私は、エゼン様と共に..」

「お願いだエゼン殿..」

「まぁ良いでしょう..但しこの国には今後アドマンタイタイのメイジは一切関わりませんが宜しいですね..その条件なら別の物にしましょう」

「解りました…その条件は飲まさせて頂く..それで何に変えて下さる..」

「そうですね、それではマリアーヌ殿の髪の毛一房でどうでしょうか?」

「マリアーヌの髪だな..それ位は致し方ない..受け入れよう」

「待って下さい! それではあんまりです! 私が、私が参ります」

「いえ大丈夫ですよ..髪の一束も頂ければマリアーヌを偲ぶには充分ですから..」

「解り申した、髪で良いんじゃな..」

王は気分が変わらないうちにマリアーヌの髪を切るように命じた。

結局マリアーヌは渋々髪を王に渡した。

「それでは、私はこれで去るとしよう..それではもう会う事も無いでしょう」

光と共にエゼンは消え去った。

「あっ、エゼン様…」

(エゼンの部屋)

《ふぅ..帰ってきた..暇だから貰った髪でも使うか?》

エゼンはマリアーヌから貰った髪を1本、培養液につけた。

残りの髪はケースに入れてしまった。

よく見ると他にも沢山のケースに入った髪がある。

培養液に浸かった髪が見る見る間に人間になりやがてその姿がマリアーヌになった。

「嫌だ、私なんで裸になっているの?」

あらかじめ近くに服を置いて置いた。

「混乱していると思うけど、君はマリアーヌの髪から作ったクローンなんだ」

「私がクローン? ですが、私、生まれた時からの記憶が全部あります」

その為に髪の毛から作ったんだ..姿形が同じだけなら素材なんか用意しなくても簡単だけど、記憶だけは依り代がないとね…

「そうなのですね…私は本物では無いのですね…それで私はこれからどうすれば良いのでしょうか?」

「一緒に居てくれるだけで良いよ? 欲しい物があったら何でも言ってね、服でも宝石でもなんでも用意してあげるから」

「本当ですか? 有難うございます..」

アドマンタイタイのメイジ、エゼン、彼が一番欲しい物は「退屈な時間」を潰してくれる存在だ。

彼に掛かればどんな美女だって一瞬で作れる…だが、そんなエゼンが材料が無いと作れない物..それは記憶だ。

依り代を無くして人間を作れば、それはエゼンに忠実なしもべに過ぎない、それと一緒に過ごしてもただ、退屈なだけだ。

我儘をいい、時には反発して、自分の自由にならない、そんな存在こそが彼が望む数少ない物。

こうして、エゼンは、マリアーヌのクローンが死ぬまでの間、退屈という地獄から解放されるのであった。

説明:アドマンタイタイとは
アドマンタイタイとは

1000人程のメイジだけの国。

この国の国民になる最低条件が不老不死である事。

その意味は、不老不死であればどれ程才能が無くてもいつかは全ての魔法を覚える事が出来るという理由から。

ランク700位~上には基本出来ない事はないと言われている。

空気から食事を作る事も宝石すら作れる。

死人も当たり前のように蘇らせらられる。

人間すら簡単に作ってしまう。

その為、この国の国民は同じ国民に限り無料で提供している。

何でも出来るからこそ、幾つかの国では神のように思われている。

滅多に国から出る事は無いが、出た事が解れば、世界中の国から誘いが来る。

但し、困るのが報酬…何でも自分で作れるために頼みごとに見合う報酬が出せない。

ちなみに主人公が望む報酬は..女性が多い。

それは主人公は女ですら錬成出来てしまうが「性格は自分に従順な物か自分の好みにしか作れない」その為、反抗したり自分の意見を言える相手こそが望む物だからだ

最もアドマンタイタイを知る国なら王女だろうが妃だろうが平気で差し出す。

アドマンタイタイのメイジと縁を結べるのなら安い物だからだ..対価が「何でも叶えて貰える」だからだ

但し、不老不死以外。 これにはプライドがあり、自分だけの力で手に入れた者が国民として受け入れると言う決まりがある為。

主人公の年齢は2億9千歳

アドマンタイタイのメイジで新人を除けば2万歳以下のものは居ない。

だが、そんな主人公ですら子供扱いする人間もいる。

外に出ない引き籠りのメイジには自分の価値を解らない可笑しな人物も多い。

第二章 何でもしますから助けて下さい
「誰か助けて..」

冒険者ギルドで少女が片っ端から声を掛けているがだれも応じようとはしない。

普通に考えれば、ギルドに依頼を出せばそれで良い筈だ…だが、少女は出さない。

正確には出さないのではなく出せないのだ。

それは難易度によって出す金額は決まっている。

少女の村の近くにワイバーンが住み着いた。

ワイバーンの討伐ともなれば、対応できる冒険者は上位の者が数名必要になる。

それなのに彼女が..いや彼女の村が用意出来たのは僅かに銀貨8枚だ。

これじゃ、正直誰も受ける筈が無い。

それどころか、彼女が奴隷になって身売りしてその金額を全額渡しても足りない。

だが、貧乏な村には銀貨8枚だって出せるギリギリの金額なのだ。

これが相手がゴブリンやオークなら、彼女に同情して受ける者や彼女の体目当てで受ける者が出るかも知れない。

だが、ワイバーンを狩れる者なら、お金も女にも困らない..ゆえに誰も受けない。

「誰か、誰か 私の村を助けて下さい…お願いします..助けてくれるなら何でもします..お願いです」

今日も彼女の悲痛な声が冒険者ギルドに響く。

本来なら、こんな事したらつまみ出される…だが、ギルドも冒険者も同情的だから…無視している。

それがギリギリの同情なのだ。

宿屋にも泊まらず..薄汚れた服を着て朝から夕方まで此処にきている。

そして…夜は..娼婦として街に立つ、それが彼女の毎日だった。

お金を減らさない為に…

希望すら見えない地獄の中に彼女はいる。

「こうしているうちにも村が滅ぶかも知れない…私の家族の様な犠牲が出るかもしれない..」

その頃のエゼンはまた引き籠っていた。

数年前までマリアーヌのクローンと過ごしていたのだが、マリアーヌのクローンが死にたいと言い出した。

「何で! そんな事言わないでくれるかな?」

「ですが、退屈なのです..」

「欲しい物があるなら何でもあげるよ..宝石でもドレスでも、国宝級な物でも..」

「欲しい物が何も無いのです…」

辺り一面にはまるで子供のオモチャの様に国宝級の宝石や装飾品が転がっている。

「そうだ、どこか行きたい所は無いかな? 何処でも連れて行くよ」

彼女はフルフルと首を振る。

「そうだ、男性が欲しいなら、どんな王子でも作ってあげるよ..」

「それももう要りません」

「ならば、何が欲しいの? 何でもあげるから..」

「死以外に欲しい物はありません…お願いです死なせて下さい」

「そう、解った…今迄ありがとう..」

「ありがとう、エゼン様」

エゼンが呪文を唱えるとマリアーヌのクローンは崩れていった。

それと同時に部屋にあった宝石や貴金属、装飾品も消えて元の暗い部屋に戻った。

この300年は楽しかったな…

エゼンにとってマリアーヌのクローンと過ごした時間は凄く楽しかった。

我儘を全部叶えた。

自分に従順でなく、我儘を言う存在が居る…それが楽しい。

体は確かに自分が作った物だが、その心は元のマリアーヌの物、ゆえに自分の思い通りにならない。

自分が好まない事をして、予想もつかない考えを言い出す…それが面白い。

全知全能に近い、自分が思い通りにならない者…それが退屈を紛らわす。

最初に彼女が望んだのはお城だった。

だから、エゼンは 元のお城とは比べ物にならない豪華な城を作った。

そして次に望んだのはドレスや宝石だった。

勿論、それも与えた。

次に彼女は2人が寂しいと言ったので城下町と人を作った。

貴族に平民何でも作り彼女にかしずかせた。

理想の殿方が欲しいと言い出したからそれも与えた。

エゼンは実に100年もの間、彼女が欲しがった物を何でも与えた。

だが、100年を過ぎた頃から、彼女は何も欲しがらなくなった。

そして200年を過ぎた時には今迄与えた物が要らないと言い出した。

彼女が要らない物を置いていても仕方ないので処分した。

そして、300年…彼女は死にたい…そう言いだした。

やっぱり、こうなるのか…

エゼンは知っていた…欲しい物を全て手に入れた人間が最後に望むのは..死だ。

自分もそうなのだ…

欲しい物が簡単に手に入る世界…その世界で本当に暮らしたら…欲しい物が無くなるのだ。

そして、最後には…自分が要らなくなる..だが、僕はそれでもまだ見ぬ何かがある、そう思い生きている。

そう思わなくなれば…死にたくなるから。

ドンドンとドアが鳴った。

多分リオ君だな…

「エゼン..また暗い世界に閉じこもってさ..駄目だよ、本当にせっかく国を作ったのにさ..もう捨てちゃったのかい?」

「あれはマリアーヌのクローンが望んだ世界だからね…彼女が居なくなったら要らないさ..」

「随分、気に入っていたようだね、まぁ楽しそうな世界だったね…そんなに気に入ったのなら又一体作れば良いじゃん」

「同じだよ、また300年たったらお別れさぁ」

「そうかい…じゃぁどうするんだい?」

「暫く、ぼおっとしているさ」

「そう言えば、この間、冒険者ギルドで面白い子見たんだ」

「どんな子?」

「助けてくれるなら何でもするってさ! どうする? エゼンがやらないなら僕がやるけど…何でもする女の子…エゼンが欲しいんじゃないかな?」

「それが本当なら良いね…絶対に自分から死なない..その条件飲んでくれるかな?」

「飲むんじゃないかな? まぁ守れるかどうかは別にしてさ」

「そうか、だったら行ってみるかな?」

また少女の悲痛な声が響く。

「誰か、助けて下さい! 助けてくれるなら何でもします!」

このギルドの冒険者じゃ無理だ..万が一上級冒険者が居てもこんな金額じゃ受けては貰えない。

だが、この日は違っていた。

「本当に何でもするのかい?」

「魔法使い様…本当です..助けてくれるならこの身でも何でも捧げます」

「そう、だったら助けてあげるから…君が死ぬまで僕の傍に居てくれるかい」

「それがお望みなら…」

《どんな不細工な相手でも、例えそれが地獄の様な日々でも耐えるつもりだった…助けてくれるなら…娼婦にまで落ちたんだ何でも出来る..そう思った》

《だけど、別の意味で心臓がはじけそうになる》

《どうしてかって? だって、だって..凄い美少年なんだもん…》

エゼンは今回は時間があったのでセレナトリスタン(絶世の美少年)をベースに黒髪、黒目の姿で此処に来た。

「そう? だったら助けてあげるよ…その代り、その願いを叶えたら…死ぬまで僕の傍に居て貰うよ..良いよね?」

「はい喜んで、私で良いならずうっと傍にいます」

《良いのかな? これっ結婚の申し込みだよね…違うのかな? 夢じゃないよね?》

女冒険者は羨ましそうに見ていた。

男の冒険者は胡散臭そうに…

「それじゃ行こうか?」

「何処に?」

「トカゲ退治に..」

「あの、トカゲじゃ無くてワイバーンなのですが…」

「じゃぁそれ退治しに行こうか?」

トビトカゲじゃない..ワイバーンです!
「それで、本当にワイバーンを退治してくれるのですか?」

「約束だからな…ただ、弱い者いじめは余り好きでないんだが..」

「何をいっているんですか? ワイバーンは強いですよ!」

「まぁ、良いや…とりあえず、僕の世界に行こうか?」

可笑しな事に、さっき迄塀だった場所にドアが現れた。

「あの、本当に退治してくれるんですよね?」

「退治じゃなくて駆除みたいな物だけどね..」

「そうですか? ワイバーンをどうにかしてくれるならどっちでも良いです」

「そう言えば名前も聞いてなかったな…僕はエゼンって言うんだ」

「私はアミと言います、エゼン様…」

アミは覚悟をしていた。

ワイバーンを倒す代償が自分なのだから….

「さぁ、入って..」

「はい..」

《まぁ良いか? 娼婦までしているし、減るもんじゃないし..》

だが、入った先は..ただ、真っ暗なだけだった。

「エゼン様、これは一体..」

「いいから、いいから、とりあえず、ドアをいったん閉めて」

「はい」

「今度は、故郷の村を思いながらドアを開けて」

アミは言われるままにドアを開けた。

「嘘! 何で! 何で…ここ、私の村ですよ?」

「そうだよ、君の思った所とドアが繋がるようにしただけだよ…」

「魔法使いってそんな事も出来るんですか? 凄いですね!」

普通のメイジじゃ出来ない..だがアドマンタイタイのメイジなら誰でも瞬間移動位出来る。

「さてと、問題のトビトカゲだけどどの辺りに居るのかわかる?」

「あの山の上に巣がある筈です」

「それじゃぁ、此処で待っていてくれるかな? 行ってくるから」

「あの、何の準備もしないで山にはいるんですか?」

どうみても、手ぶらで買い物をしてくるみたいな感じにしか見えない。

「トビトカゲを狩るだけならこれで充分でしょう!」

「ワイバーンです!」

結局、アミはエゼンを信じられずについていく事にした。

エゼンにしてはたかがトカゲを退治するだけだから別に断らなかった。

「はぁはぁ….ぜいぜぇ」

「大変そうだね!」

「エゼン様は良いですね! 歩かずに飛んでいるんですから!」

エゼンはふよふよと浮かんでいた。

「だったら飛んじゃおうか?」

「えっ」

エゼンはアミに魔法を掛けるとそのまま一緒に山まで飛んでいった。

「ええええええええっ」

アミの絶叫がこだました。

「ほらついたぞ…その崖の上が巣なんだろう?」

「はぁはぁ..そうですが..こんな近くまで来て大丈夫なんですか?」

《エゼン様って…可笑しい、常識が無さすぎる、こんなに美形なのに…》

「たかが、トビトカゲ、楽勝、楽勝」

「だから、トカゲじゃ無いんです! ワイバーンなんです!」

アミは空を見た。

「嘘、一匹じゃなかったなんて…そんな..」

「なんだ10匹じゃないか? それじゃいくか..」

アミは顔が青くなる、10匹のワイバーンなんて、冒険者じゃ無理。

伝説の召喚勇者だってレベルが上がる前じゃ相手にならない。

「辞めて…死んじゃうよ..」

大げさだな、たかがトビトカゲ10匹…

エゼンは手を前に突き出して呪文を唱えた。

「レナ二シワ」

飛んでいた全てのワイバーンは見る見る体が小さくなると鳥になった。

「ななななななな..何をしたの?」

「流石に殺すのは可哀想だから鳥に変えた、正確には鷲に」

「あの、それって…」

「可哀想だろう…その位の力を残してあげなくちゃ..仮にもトビトカゲだったんだから」

「ワイバーンですって、だけど、本当に全部、鷲に変えたの?」

《この人..エゼン様って本当に何者なんだろう》

「近くにもう反応がないから大丈夫だ」

「そうですか、有難うございました」

「さてと、それじゃ行こうか?」

「約束のお金です..それと..」

「お金は要らない..約束では 死ぬまでアミが僕の傍に居る..それだけの筈だよ」

「解りました..ですが、ワイバーンを倒してくれたので村に行きませんか? 多分お祝いをする筈です」

「そう、だけど、それは良いや..そうだ、ここで待っているから楽しんでくれば良いよ」

「そんな、それじゃ、エデン様がお金が要らないならこのお金だけ村に返してきます…少しだけ待っていて下さい」

《そう言えば、あの報酬額、お金が無さそうな村だな..》

エゼンは懐から袋を出した。

その袋には金が沢山入っていた。

エゼンにとっては空気から金を錬成する事等簡単だ、だから当人は価値を感じていない。

「だったら、これも持っていってあげると良い」

エゼンは金の入った袋を渡した。

「この袋は何ですか?」

「村についてから開けて、村にとって必要な物が入っているから、村の誰かに渡すまで開けないように..」

「解りました」

アミは、村に着くとワイバーンが倒された事を父親である村長に話した。

「アミ、よくやってくれた…良く、その金額で受けてくれる冒険者が居たな..」

「それが、お金ではありません..報奨金は私です」

「そうか、済まないな…」

何となく解かっていた。

あんなお金でワイバーン討伐などして貰える訳が無い…そんな簡単に倒せるなら領主がやってくれる。

自分の娘は器量が良い..もしかしたら..娘自身が報酬なら受ける人が居るんじゃないか..そういう邪な考えもあった。

それだってワイバーンを倒して貰えるなら安い物だ..しかも複数。

正直、破格値としか思えない…村の女全部..そう言われても仕方ないレベルの相手だ。

「それと、これ」

「どうしたんだ..」

「そのお金は要らないそうなので…」

「そうか..正直助かる..お前ばかり..すまんな」

「いいんですよ..お父様..あとこれも..」

「それは何だね!」

《やけに重い袋だな》

「そのご主人様、エゼン様が渡すようにと..」

中を開けてみたら金が沢山詰まっていた。

「これは凄いな…アミ、しっかり尽くすんだぞ」

中に入っていた金は村が領主に出す税金10年分以上の金が入っていた。

「解りました..」

アミとしては何だかお金で買われたようで寂しかった。

《しかし、私..何をされちゃうのかな? この金額、エルフの奴隷を購入する金額より高額だよ》

「くれぐれも、しっかり尽くすんだぞ! 粗相しないようにな..そして余裕があったら村に仕送ってくれないか?」

優しく、思慮深い父親の顔がなんだか別人のように思えた。

「解った…」

それだけ伝えるとアミはエゼンの元へ引き返した。

簡単な終わり(半分ダイジェスト)
結局、アミも200年も持たなかった。

最初は物凄く楽しんでいたが、何もかも与え続けていたら..直ぐに飽きが来たらしい。

前の時の間違いを犯さないように、アミにはアドマンタイタイで生活出来るように首輪を与えた。

この首輪はエゼンのゆかりの物という事で普通に生活出来る。

そして、アドマンタイタイの住民は基本何でも無料だ。

王侯貴族ですら食べられないご馳走。

いつまでも若いままでいられる薬。

国宝級の宝物…全て無料だ。

自由に生活して何でも手に入る生活は…退屈しかない。

そして、アミもやっぱり200年位しか駄目だった。

「よく200年つき合って貰えたね」

「持ったほうかもね」

「ああっ不老不死や何でもできる世界で、生き続けるのって案外つらいからね」

「ああっ」

「これからも続く退屈な世界に..乾杯でもしようか」

「そうだね」

彼らの退屈な生活は続いていく。

勇者から寝取った中古品と楽しく暮らす (リオくん外伝)
【あらすじ】
主人公の彼は勇者やそのハーレムメンバーに手柄をとられて、更に殺され掛けるが..話は何故か変な方に..

復讐は考えて無いのに、何故か復讐になってしまい..女の子も..正直書いていて訳解らない。

――なんだいつものパターンだな

「おい、セレス、悪いが魔王を倒したのは俺という事にしてくれないか?」

勇者 天城が言い出したが、別に構わないと思っている。

「そうですね..大変申し訳ないですがセレスさんが倒したと言うより勇者 天城が倒した方が外聞が良いのです!」

聖女で第三王女のマインが言い出した。

本当に別に構わないんだが..

「そうだな、騎士としては可笑しいと思うが今後を考えてその方が良いだろう? 私からも頼む!」

聖騎士で伯爵家の次女マリーナが言い出した。

別にいいんだが..

「そうよね、賢者で醜い貴方が倒したってより勇者が倒したっていう方が私も良いと思うの」

幼馴染で魔法使いのマリベルも言い出した。

「別に構わないよ! その代わり君たちの髪を一房づつ貰えないかな?」

「嫌よ、髪は女の命です、卑劣な取引ですね」

「賢者のくせに卑怯なのだなお主は..」

「幼馴染として忠告してあげる..気持ち悪いわ..

「男として気持ちは解らなくもないが、諦めてくれ…」

「そうですか、別にそこ迄欲しい物ではないから良いですよ..」

僕は小さな村に生まれた…そして小さい時からマリベルと過ごしていた。

僕は生まれながらの賢者だったが、マリベルは違う、ただの村娘だった。

「魔法が使えるなんて良いわ、羨ましい」

そう言っていたのと、この村に子供は2人しか居ないから、少し魔法を教えてあげた。

そうしたら、結構才能があったらしく立派な魔法使いになった。

まぁこれもどうでも良い話。

僕は、戦うのは嫌いだけど、王様に頼まれてこの旅に同行していた。

幼馴染のマリベル、、マインとマリーナにも王様と一緒に頼まれて仕方なく同行した..

まぁ、一応、マリベルの母さんテリベルには小さい頃世話になったので半分マリベルのボディガードみたいな物だ。

「解かってくれて有難い、その代わり全てが終わった時にはその恩に報いるとしよう」

「別に要りませんよ..良い思い出でしたからね..」

「そうか..」

しかし、この国大丈夫なのかな?

魔王相手に勝ち目が無くて逃げ出す勇者パーティ..

「駄目です、天城、獄炎魔法が通用しません..」

「私の剣技がまるで歯が立たない何て..傷一つつかない..」

「くっ 俺の聖剣すら効かないのか..」

「もう回復魔法も、ホーリーベールの維持も出来ません」

「駄目だ撤退だ..」

ここで倒さなければ、近隣の村がやばいぞ..仕方ない。

「光り輝く賢者の石よかの魔物(魔物)を滅ぼせ..シャイニングスパーク」

一瞬で魔物は滅んだ。

「私からも何時か報奨を取らしますわ..これでも王家に人間ですからね」

「困った時は訪ねてきたまえ、我がギルバート家が必ずや助けよう」

「私も、そうね力になるわ」

「別に構わないよ..もう」

「悪いな..すまない」

ここから王都迄9日間掛る、何も起きなければい良いんだけどな..

しかし、勇者も良くやるよ..3人相手にギシギシギシギシ..飽きないのかね。

そして、4日目の野宿の日..何かあるとすればこの辺りだと思った。

ここは森だし人はまず通らない..此処を過ぎたら後は人目がある場所ばかりだ。

「悪いけどお前には死んで貰う」

「僕は何か悪い事をしたのか? 手柄は譲る約束はしたよね..何で殺されなければいけないんだ..」

「済まない、お前が信じられない..」

「僕の事を弟のようだ..そう言わなかった?」

「確かにお前は良い奴だ..だがいつ裏切るか解らない..だから殺す」

「そうか..皆も同じなのか?」

「私と勇者様の人生の為に死んでください!」

「貴殿には恨みは無いが..未来の為に禍根は絶たなければならない..すまないな」

「私の未来の為に死んで..」

僕を殺す必要はないよな..ムカついたから少し意地悪をしてやろうかな..

「そうか、僕が死んだら皆んなはどうなるの?」

「私は勇者の第三婦人になるのよ..」

「良かったね、マリベル夢が叶って..僕は一つ失恋したかな..」

「はぁ、元から貴方何か相手にしてないわ..」

「解かっているよ…」

「マイン様が第一婦人ですか..勇者が羨ましい、貴方みたいな人に愛されるなんて」

「お世辞は良いわ、王女との恋愛なんて貴方には手なんて届かない、羨ましがるのは自由ですが」

「魔王を倒せば..そう思い戦いました..それでも手は届きませんでしたか?」

「はい、貴方には私は魅力を一切感じません、手柄は認めますがそれだけです」

「マリーナ、貴方の剣技は美しかった..やっぱり勇者が羨ましい」

「私は騎士だお前のように魔法で戦う者に興味は無い..」

「やはり、魔王を倒しても貴方の横で杖を振る事も許されませんか?」

「ああ」

「勇者 天城 貴方が羨ましい、僕が何百年も掛かって手に入れられない物を3つも手にしているのだから」

「勇者だからな仕方ないだろう…それじゃ俺たちの為に死んでくれるか?」

「良いよ..でも 勇者天城…これをあげるから一つお願いを聞いてくれないか?」

「この汚い杖でか?」

「お前も見たろう? その杖には僕の魔力が込められている、もう一度だけなら同じ事が出来る」

「魔王が殺せるって事か?」

「ああっあのクラスの魔物を倒せる」

「なら、いいぜ..言って見な!」

「僕の夢は叶わなかった..死ぬとき位は好きだった美女3人に殺されたい..駄目かな?」

「…..」

「さっき言ったろう? 皆んなも力になるって この願いを聞いたら嘘はつかなかった事になるよ? マリーナ騎士は嘘はつかない違うかな」

「なぁ、その願い位叶えてあげないか? 私は家名に誓った嘘はつきたくない」

「仕方ないですわ..貴方は貴族、私は王族、最後の約束位は守りますか..良いですよ..」

「私の魔法で楽に死なせてあげる..」

《掛かった》

「勇者、天城はあっちに行って下さい..あんたみたいなイケメンを見ながら死にたくない」

「はははっそうかい..いいぜ、死ぬまでの間はそいつらは貸し切りだ…それが俺の選別だ、杖が無いなら逃げれないだろうな..俺はテントで眠っているさ..終わったら起こしてくれ」

「解りましたわ」

勇者 天城はテントに帰っていった。

「さぁ、これで宜しいですわね..それでは..」

「待って下さい!」

「命請いですか? みっともないよ!」

「潔くしたらどうだ? 最後位は」

「この姿で死ぬのは嫌だ..僕は、本当の姿に戻ってこの旅が終わったらプロポーズするつもりだったんだ..だから元の姿に戻らせてくれないか?」

「あんた、馬鹿なの..貴方のその姿が本当の姿..小さい頃から一緒の私に嘘つく訳?」

「そのような嘘を..まぁ良いですわ..見てあげませんか?」

「そうだ、どうせ殺すんだ見てやろう..だが何か事情があるのか?」

「僕は生まれ変わりだ..もう一度ジョゼットとしたような恋がしたかった」

「ジョゼット…聴いた事があります」

「何処で聞いたんだっけ?」

「良いぜ、戻れば良い..待ってやるさ」

「ありがとう..」

セレナの姿が光輝く..そしてその姿は..誰もが驚くような美少年だった。

「僕の名前はセレス.スコット…永遠の愛を探していたんだ」

《嘘、これがあのセレス..セレス.スコット..傾国の美少年じゃない..まさか生まれ変わりでしたの》

《ああああっ知っている、あの悲哀の美少年じゃないか? 幼き日の私はあのような人に仕えたい、そうお慕いした王子》

《綺麗..それしか言えない》

「だけど、また恋は叶いませんでしたね..大好きな貴方達が他の男に抱かれるのを見るのが辛かった..だけど.」

「ちょっと待って、セレス、セレス様、死のうとなんてしないで下さい..ね、そうだ、私と結婚しましょう! 手柄も正直に話せば大丈夫ですよ..駄目なら駆け落ちしても構いません..」

「そうだよ..私の剣を貴方に捧げます..死ぬまで忠誠を誓います..だから妻にしてくれ…それが夢だったんだろう? なぁ」

「ゆゆゆ勇者殺してくるわ..今なら簡単に殺せる、そうすれば良いだけよ」

「良いんです、もう貴方達は勇者の物..好きな人の手を汚させたく無いから自分で死にます..もし哀れみがあるなら髪を一房頂けますか? そうしたら次の人生でまた会えると思います..その時はもう一度僕にチャンス下さいね? さようなら..」

「待って、セレス様 待って..私は貴方を心からお慕いします、勇者によって汚されてしまいましたが、この心も体も全て貴方に捧げますだから..」

「私もそうだ..ちょっと待ってくれ..忠義を示せというなら片腕を切り落としてもよい..だから死なないでくれ」

「ねねっ村に帰って一緒に暮らそう..そこが嫌なら旅をしてさ..私が居て、貴方が居て、それが何時もの光景でしょう?」

ザッシュ..僕は自分の首にナイフをたて轢いた..血が凄い勢いで噴出した。

「嘘、いや嫌、嫌..ヒーリング、ヒーリング、何で、何で私のヒーリングが効かないの!」

「おい、ちゃんとやっているのか?」

「どいて、この血止め草を使って血を止めて、傷口を焼けば..嘘、なんで止まらないの」

「あはははっ嬉しいな、僕が好きになった優しい目だ..今だけは僕だけの物..死ぬかいがあったかな?」

「だったら死なないでよ..全て捧げますから、何時だって優しくしますよ..死なないでよ国なんて要らない、王女じゃなくて良い、貴方がいればそれでいい..」

「死んだら一緒に居られないだろう..なぁおい、死ぬなよなぁ..なぁ」

「私を置いて死なないで..」

セレスは静かに息を引き取った。

「何でこうなちゃったのかな? セレスは小さい時から傍に居てくれて..ただの村娘の私に魔法を教えてくれたのに..

何時も笑顔で優しくしてくれて..戦いなんて嫌いな人だったのに..一緒に来てくれて、何時も守ってくれて..それなのに..魔王の時だって

皆んなの為に逃げないで戦って..何で他の人を好きになったのか解らない..死んでから解るなんて、貴方が何より一番大切だった」

「私も同じだわ..王女だ聖女だ、そんな事関係なく1人の女の子として接してくれたわ..何時も守ってくれて、ドラゴンに焼かれて醜くなった時も徹夜で看病してくれて..魔法を何日も掛け続けてくれて、元に戻った時には自分の事以上に喜んでくれた..あの人だけは本当の私を好きになってくれていた..今考えればあの時から、私の前にあの人がいて助けてくれていた」

「私は騎士なのに守られてばかりいたな..騎士である私を守ろうとした人間なんてお前だけだったな」

「貴方はセレナだったのね..傾国の美少年..貴方が欲しかったのは愛だけ..私が貴方の愛に答えていたら..多分、私も貴方も幸せだった.だって貴方の愛は永遠なんですもの..」

「永遠の愛か..手に入らない宝剣みたいな物だ..」

「ズルいよ、もっと早く告白してくれれば良かったのに、そうしたらこんな所に来なかった..二人でいられたら村人で良かったのに」

「勇者を殺してくるわ…」

「待ってくれなんでだ」

「だって、私の体が汚れたのは彼奴のせいだもの、こんな体でいけないわよ」

「そうね、彼奴が居なければこんな事にならなかったわ..セレナ様を殺すように言ったのも私の体を汚したのも彼奴..」

「そうだな、じゃぁ殺そう」

「まってくれ、何があったんだ?」

「「「…..」」」

勇者の悲鳴がこだました。

「さぁセレス様、これからマインがそちらに参ります、次こそは妻にして下さいね」

「私も..次の世界では必ず私が貴方を守ります..だから待っててください」

「今度こそ逃がさないわ、幸せになろうね」

三人は自分の髪を切り落とし、そのままセレスと同じ様に首にナイフを当て死んだ。

その手はセレスの手を掴んで。幸せそうに

「セレス様..私は..王女でいるよりもセレス様の妻でいる方が幸せですわ、他には何も要らない」

「セレス様の愛が頂けるなら貴族何て騎士なんて未練がないさ」

「セレス、セレス…ずるいよ、小さい頃からちゃんと告白してくれたらよかったのに、ここまで来るまで何年もかかったじゃない!」

しかし、驚いた..僕は報酬として髪が欲しかったから死んだ振りしたのに..まさか三人が死んでいるなんて思わなかった。

案外愛されて..いや違うな「傾国の美少年セレナ」の姿だから..こうなのだろう?

何しろセレナと言えば歴史的美少年、女神にすら愛されたという伝説があるからな..

僕? 違うよ..

はっきり言うと僕はアドマンタイタイという、メイジの国の魔術師でリオっていうの!

この国のメイジにとって恋愛なんて価値がないんだ..だって髪の1本もあればホルムニクスが作り放題。

記憶だってある程度複製できるし、恋愛感情だって植え付けられる。

姿形だって思いのままなんだから意味無いよ..

もうどの位生きたか解らない、1億5千年位は生きているかも知れない..それでもアドマンタイタイでは普通位の齢。

偶に人生に疲れると子供になって人生をやり直したりする。

今回は、捨て子としてふらついていたら村人に拾われたわけ..

そんでもっていつの間にか 魔王退治だって..

だけど、本当の魔王なんて此処にはいないんだ..だって本物の魔王は、まおちゃんって言うんだけどアドマンタイタイに居るから。

齢はまだ2千才…アドマンタイタイだと幼女だね..扱いは。

ほんでもって女神も居ない..女神のふりして遊んでいるのはアクネ..これも2万歳位の子供。

よく遊びで勇者召喚ゴッコをしていて、女神役。

だから、倒した魔王は本物じゃなく、アクネが作った肉体型ゴーレム..

今回は子供になったついでに..この遊びに参加したわけ。

僕は、他の人が持って無いホルムクロスが作りたくて、髪を集めていたついでにね。

それでね、彼女達がどうして死んだのか隠していた記録水晶でみたら..結構壮絶だった..

外見が綺麗なら、あの時のセレナだった僕を愛してくれたみたいなんだわ..だからご褒美..

僕の持っている一つの世界に傷を治して、生き返らせて、そのまま持っていったんだ。

あとは

「此処は何処、僕は死んだ筈じゃ..」

「セレス様..あれっ何で私は生きているのでしょうか?」

「確かに死んだ筈なのに」

「死んでない..セレスも死んでない…」

「これは奇跡ですわ..」

「奇跡でも何でも良いよ」

何て小芝居をした。

ちなみにこの世界には三人と僕しか居ない。

ホルムニクスは作る過程で服従が入るから、ある意味面白くない。

偶には天然物の方が面白いかも知れない..だって今回みたいに予測不能な事をするからさ..

まぁ、勇者の中古品なのは…まぁ良いか..

これで暫く退屈しないで済むからね…