異世界で僕が学んだ事。

彼女を救う為に
いつも僕は虐められている。

暴力を振るわれたり、水を掛けられるのは日常茶飯事。

物やお金も良く無くなるし..見つかったとしても壊されている。

原因は、僕の片足が不自由だった事が原因だ。

世の中は凄く理不尽だと思う、僕は片足が不自由で親も片親しかいない。

貧乏とまでは言えないけど、働いて僕を養ってくれる母さんには、虐めの相談なんかして心配は掛けられない。

だから我慢するしかない。

僕だけが我慢すれば良い。

殴られても良い、悪口だって我慢する..物だけは勘弁して欲しい。

只でさえお金が無いんだ、母さんに「買って」というのは本当に辛い。

だが、、そんな僕にも一つだけついている事がある。

それは僕にも味方がいる事だ。

クラス委員の本条美香さん。

正義感の強い彼女は虐めにあっている僕を助けてくれていた。

だが、その結果が、本当の意味での地獄を招いていた。

僕はボコられた状態で、手錠を掛けられて床に転がっている。

そして、本条さんには黒田が覆い被さっている。

本条さんは手足を3人掛かりで押さえられて身動きできない。

「こんな奴庇うからこんな事になるんだよ..クラスの女もお前の事嫌いだからだれも助けにこねーよ」

「いや、いや、やめて、お願いだから..いやー」

「やだね! 俺がお前にこんなクズ庇うの辞めろって言っても、正義面して辞めなかったろう? 同じだ」

黒田は本条さんのブラウスに手を掛け破った。

「いやあああああああっ」

絶望しかなかった、この後、彼女は犯される、そして僕はそれを見続けなくてはならない。

だが、この時、時間が止まった。

本当に時間が止まるのを初めて経験した。

もしかして、打ち所が悪くて、僕は死んでしまうのだろうか?

「違いますよ、間守(はざま まもる)さん!」

何が起きたのか僕には解らない..本当に何が起きたんだ

「私が時間を止めました」

「貴方が?」

「はい、私の名前はノートリア、異世界では女神と呼ばれています」

「女神様! お願いです、本条さんを助けて下さい、僕はどうなっても構いません!」

「それは出来ません!」

「何故ですか? 女神様なんでしょう…お願いします、お願いしますから..」

「心優しき少年、だがその世界は私の世界ではありません、だから手は出せません」

「そんな、それじゃ…」

「安心しなさい少年…貴方の心に打たれて私が来ました」

「だけど、助けてはくれないんですよね!」

「はい、だけど、少年、異世界の転移に欠員がありました」

「何を言っているんですか! 異世界に行けば僕は助かるかもしれないけど本条さんは..そうだ、本条さんを異世界に連れて行って下さい..彼女は正義感が強いですから、勇者にだってなれます」

「無理です、欲しているのは男の1名です」

「そんな、それじゃ本条さんは」

「大丈夫です、貴方を異世界に転移して最長で10年で此処に戻してあげましょう..この時間に」

「本当でしょうか?」

「はい、その際には、その手錠を外して戻しましょう」

「それじゃ」

「10年待たずしても死んでしまったら、そこで終わり、この場所、この時間に戻します。 異世界は過酷です、魔物もいますし魔王もいる」

「そんな世界なのですか、特典や能力は?」

「残念ながらあげれません..勇者では無いのですから..ですがそんな過酷な世界で頑張れば強くなれると思いませんか? 冒険者や騎士にも頑張ればなれますよ? 如何ですか? 更に一つだけ加護の無い物を持ち帰らせてあげましょう..」

冒険者なら、この状況を打破できるかも知れない。

「解りました、お願いします」

「それでは、翻訳の加護だけは与えます..他には何も与えられませんが強く生きるのです」

「チャンスくれて有難うございます..女神様」

「貴方の人生に幸のあらん事を..」

【女神サイド】

強い勇者を作る為には複数のスキルを与えなければいけません。
今回は1人の勇者に2つのスキルを与えた為、「スキル無し」が必要でした。
他の女神は良く失敗しますが..困っている人間や死に掛けの人間に声を掛ければ良いのです..
そういう人間なら、藁を掴むつもりで受け入れてくれます。
「加護やスキルなんて要らない」そんな者も居るのです。

本来は神は救う者..だれかの欲望を満たす者ではありません..
「加護なし」でも救われる者が居る..その事を他の女神も考えるべきです。

「此処は何処だ?」

ポケットの中に手紙が入っていた。

(そこはルーテイシア、私の治める世界です、安全な街、メルトに転移させました)

僕が読むと手紙は崩れ落ちた。

僕の着ている服は、ゲームで言うと只の旅人の服みたいだ、しかもボロボロ。

他にはお金も、武器も何も持っていなかった。

(どうすんだ、これ、勝手にナイフや最低限のお金位持っていると思っていたけど本当に「何も無い」)

「お前は誰だ?」

僕より少し年上の少年が声を掛けて来た。

「俺は、マモル..途方にくれている」

「俺はトムだ、お前行く所も金もないだろう? 行く所が無いなら来い」

他に行くあてが無いからついて行くしかない。

トムの後について行くとドンドン汚い場所に変わっていった。

スラムだな…

その中でも一番汚い場所に小屋があり..そこには子供が2人程いた。

「トム? そいつ誰だ」

「新入りだ、マモルと言うらしい」

「そうか?俺の名前はオルトだ宜しくな?」

「私の名前はミーシャ、宜しくね!」

「宜しくお願いします」

全員が汚い、多分風呂に何日も入っていないんだろうな..

「マモル、お前随分と言葉が丁寧だが貴族の息子だったりするのか?」

どう説明しようか?

「昔は貴族では無いが裕福だった..だけど親父が死んでお袋が1人で育ててくれていたが、すぐに貧窮してな..それでこの足だ..迷惑も掛けれないから飛び出した」

「だから言葉が丁寧なのか..まぁ良いや、1人なのは変わらないからな、それでどうするんだ?」

本条さんの事が頭によぎる。

「強くなりたいんだ..だから冒険者になりたい」

「冒険者? 無理だな..保証人もお金もない孤児がなりたいなら、冒険者の下働きからしか無いが、競争率がたけーぞ」

「そうなのか?」

「ああっ体はきついが、住む所に困らない..飯にもありつける、スキルとかマモルはあるか?」

「無いよ」

「それじゃ、無理だ…マモルは強くなれれば良いのか?」

「うん」

「それなら、盗賊ギルドに入れば良い」

「盗賊ギルド?」

「俺たち、みたいな孤児はそこしか入れる所は無い..お金は要らないし、メンバーの推薦があればすぐに入れる」

「だけど、僕は仲間がいないから推薦は貰えない」

「居るだろうが? 俺にメルトにミーシャだ」

「良いのか?」

「良いよな!」

「俺は構わないぞ」

「ミーシャも良いよ」

「だそうだが?」

「それじゃ、お願いします!」

「ああ、宜しくな新入り、明日は登録に一緒にいこう」

「ありがとうございます」

「なぁ、マモル、それじゃ舐められるから、僕は辞めて俺にしろ、言葉も乱雑にしろいいな?」

「ああっ解ったよトム」

「それで良い..それじゃもう寝るぞ」

「トム、飯は?」

「お前、本当に良い所の出なんだな..普通は朝と夕方に食べておしまいだろう!」

「そうか、済まないな」

「まぁ良いさ、初めてなんだろうからさ…だが此処には何も無いから我慢して寝ちまえ」

「ああ、そうする」

「俺はボスだから真ん中で寝る、マモルはオルトかミーシャの好きな方にしがみ付いて寝るんだ」

確かにトムを挟んで川の字で寝ている。

毛布も無いから、こうして寒さ対策をしているのだろう。

男に抱き着くのは嫌なのでミーシャに抱き着いた。

「にひひっ、やっぱり女の子の方が良いよね..私はこれで背中が寒く無いから嬉しいし」

「女は得だな、俺は寒いままだ」

「マモル、遠慮しないで思いっきり抱きしめて良いんだ..変な事は駄目だが胸にしがみついたり、体を密着しても良いんだ..まぁあっちの方の処理は隠れてしろ」

「流石に女の子にそれは」

「やっぱり、マモルは良い所の出なんだな? 孤児はそうやって寄り添う者なんだ、そうしないと風邪ひくぞ」

「そうだよ? 私が可愛いからって遠慮されたら背中が寒いから、抱きしめて良いよ? あそこが押し付けられる位は仕方ないで済ますからね」

遠慮したらいけない、そういう気がしたので俺はミーシャにしがみ付いた。

初めて抱きしめた女の子の匂いは..浮浪者よりも臭かった..

チェリー卒業
「おはよう、マモル昨日は眠れたか?」

「あまり眠れなかったな..」

「そうか?..まぁ直ぐにどこでも眠れるようになるって!」

「そうか!」

「ほら、朝飯だ食いな」

「果物か..美味しそうだな」

「ああっ、お前が腹を空かせていそうだから、盗って来たんだぞ、食え」

「盗んだのか?」

「当たり前だろう? 金なんてないんだからな! 今日は特別だ明日からは自分で盗るんだ」

「解った..しかし二人はまだ寝ているんだな?」

「当たり前じゃないか? 盗賊予備軍なんだからな..昼間から働く訳ないだろう?」

「そりゃそうか!」

「マモル、お前はもう少し常識を覚えた方が良いぞ」

この世界の事は何も解らない、常識位は身につけないとヤバイな。

「確かに俺は常識知らずだ..おいおいで良いから教えてくれ」

「解った、俺はボスだからな任せろ..少し二人が起きるまで話でもするか?」

「ああっ」

「マモルは人を殺した事はあるか?」

「ない」

「そうか? だからあんな事言っていたんだな?」

「何の事だ?」

「強くなりたい…そう言っていただろう?」

「言っていたな…」

「俺たち盗賊は強くなりたいなんて考えない..なぁ強くなってどうするんだ?」

「守りたい人間が居るし、復讐したい奴がいる」

「それで、何で強くなる必要があるんだ?」

「戦ったら負けるからだろう?」

「本当にガキなんだな! 戦う必要は無いだろうが、食べ物に毒を盛れば良い..寝ている間に油を掛けて火をつければ良い? 睡眠薬を飲まして寝ている間にナイフを胸に突き立てる..それだけで充分だろう? それとも正々堂々決闘して勝たなくちゃいけない理由はあるのか?」

「ない」

「もしかしてお前はチェリーか?」

「女と経験があるかどうか?話す必要はあるのか」

「確かにそれもチェリーと言うらしいが違う! 人を殺したかどうかだ?」

「無いな、平和な村に居たから」

異世界からきたとは言えないからこんなもんだろう。

「そうか? ならチェリーを卒業したら、少しは自信が付くかも知れないな」

「なぁ、皆んなは.そのチェリーじゃないのか?」

「ああ、俺たちは全員卒業している」

「ミーシャも?」

「当たり前だ」

そうか、人を殺す、そんな経験を積めば、確かに強くなれるな。

「そうか..俺はそういう経験をしなくちゃいけないんだな..」

「そうだ、ちなみに俺もオルトも女なら経験はあるぜ? マモルは無いのか?」

たしかに俺と同い年位だ、こういう世界なら当たり前か..

「無いな..女には縁のない生活を送っていたからな..」

「そうか、マモルはミーシャと違うから金でも手に入ったら娼婦でも買うと良い」

「ミーシャ? ミーシャはそういった経験は何で出来ないんだ?」

「お前、混じり物見るのは、はじめてなのか? マモルから見てミーシャはどう見えるんだ?」

「少し臭いけど、可愛い女の子に見えるが違うのか?」

「あのな…ミーシャが本当に可愛い女の子なら、娼館で働くはずだろう? 盗賊よりはましだぞ」

「娼婦にならない、意地とか誇りがあるんじゃないのか?」

「違うぞ..娼館でも断られる、貧民や乞食でもミーシャを抱こうなんて思わない、奴隷にすらしたくない..それが混じり物なんだ」

「混じり物って何だ?」

「そんな事も知らないのか?化け物と人間との間の子供の事だ..ミーシャの父親は解らない..だがあの体臭は間違いなくそうだ、普通は金貨を詰まれても抱かない」

「確かに臭いけど可愛いだろう?」

「お前、責任取れないなら、そういう事余りいうなよ?」

「何でだ?」

「あいつ、本気になるからな!」

「解った」

あの匂いは混じり物だからか? 臭いけど凄く可愛いんだが..まぁ俺は10年で居なくなるから責任はとれないな。

「もう起きていたんだ? マモル、おはよう!にひひっ 昨夜はお愉しみでしたね」

「女の子なのに…そういう事言うんだな」

「男の子に抱き着かれるなんて久しぶりだからね..からかってみました」

普通に可愛いよな..

「馬鹿か、マモルはノーマルだよな..おはよう..今日からは俺の方でも良いぞ..」

オルトは話をぼかしているが、成程、よく見るとミーシャは普通の人間とは違う所がある。

八重歯に見えるが良く見れば牙だ、目の色は金色で耳も少し尖っている。

明るい所で見ると肌も少し青みがかっている。

確かに人間じゃ無いんだろうな?..だが俺から見たら、ハロウィンで仮装している女の子にしか見えない。

「いや、男より女の方が良いからミーシャで良いや」

「えっ、私で良いの?..へぇー変わっているねマモルは..だったらサービス..」

「女の子はそんなこと言わない」

僕はミーシャの頭を叩いた..

「酷い、ボス、オルト、新入りがミーシャの頭を叩いた」

だが、本当に文句を言っているのではなく笑っているように見えた。

「マモル..お前..」

「気をつけろマモル」

二人して何でそんな目で見るんだ..

「にひひ、マモル、ミーシャは心が広いから怒らないよ! 優しいからね」

「マモル、後で話がある..」

「俺もな..」

「それじゃ、盗賊ギルドへ行くぞ」

4人で盗賊ギルドにむかう、近くになるにつれ更にガラが悪くなっていく。

さっき迄が浮浪者のたまり場だとすれば此処は犯罪者のたまり場、そんな気がする。

「あまりキョロキョロすんなよみっとも無い」

「慣れて無くて」

「目は合わせるなよ..それが一番トラブルに会わないコツだ」

「そうだよ..下を向いて歩いてれば今日は良いよ..ミーシャの足を見て歩けば問題無いからね」

《どぶネズミが来たな..》

《あいつ、どぶネズミの仲間になるのか?》

《真面に食えて無いだろう、あのパーティー》

「おや? どぶねずみ達じゃないか! 今日はなんだ?」

「登録と、パーティーメンバーの申請だ」

「そうか? お前文字は書けるか?」

「試しに書いてみても良いか..かなり田舎から来たんだ」

「そうか?」

翻訳の加護のせいか、文字も読めるし書ける。

「へぇー大したもんだ..文字も俺より綺麗だな」

「それなら良かった..これで良いんですか?」

「ああ、大丈夫だ」

「凄いな、マモルは文字が読めるし書けるんだな」

「まぁね」

「やっぱりお前良い所の出なんだな..」

「凄いね、マモル」

かいてある内容はこうだ。

1.ギルドからの依頼を受け、達成するとお金が貰える。

2.失敗して死んでもギルドは責任はとらない

3.仲間同士基本争わない

4.大きな仕事を受けた場合は報酬の3割をギルドに出す事で保証が受けられる

5.盗品の買取も行っている

6.ギルドに上納金を月に銅貨2枚払う事。

そんな感じだ、やっぱり冒険者とは違う。

ちなみに「どぶネズミ」はトムのパーティーの名前だった。

「マモルはこれでギルドの仲間だ、歓迎するぜ」

「これで正式な仲間だパーティへようこそ..マモル」

「頑張れよ新入り」

「いっひひひ、これで本当の仲間だねマモル..頑張ろうね」

「マモル、これからは普通にしてて良いぜ、もうだれもお前を襲ってこないからな!」

「どうしてだ? ボス」

「ボス?」

「正式にパーティに入ったんだから、けじめだ」

「そうか? 簡単に言うともう、お前は盗賊ギルドに入ったから、仲間なんださっきと違うという事だよ」

「そういう物なのか?」

「仲間には優しいのが此処だからな」

盗賊ギルドとは言うが、大きな仕事は無い。

いや、実際にはあるが、塩漬けになっているか、一部の上級者が受けるだけだ。

殆どの者は小さな犯罪をしながら生きている。

かっぱらいに恐喝等だ、盗賊ギルドに入っていれば仲間が邪魔する事は無い..気まぐれで助けてくれる事もある。

つまり、助け合いの組織としての意味の方が大きい。

そして、俺は主に「盗み」をして生活している。

そんな、大した事はしてない、食い物や日常品を盗みながら、僅かな上納金を納めて生きている。

「どぶネズミ」とは良く言った物だ..大きな仕事をしないでこうやって生活している..

「マモルは強くなりたいんだよな..今日依頼を受けておいた..後でギルドへ顔を出してくれ」

「解った」

結局俺は、周りに舐められないように俺は無口キャラになった。

そしてギルドに顔をだした。

「よく来たな、マモル、今日の仕事は殺しだ」

「俺、経験が無いんですが..」

「聞いているよ、トムからな..だからこれはお前がチェリーを卒業する為に頼まれていた事だ..既に捕獲してある人間を殺すだけだ」

「それは」

「縛ってある人間を殺す事..だれでも出来る..だから銅貨5枚だけの仕事だ」

「解った」

俺はその日、三人の人間を殺した。

20代の男女と子供の三人..縛ってあり猿轡しているから何も喋らない…ただ、憎しみを込めた目の2人と悲しい目の1人。

ただただめった刺しした。

血が飛び散り動かなくなるまで刺して刺して刺して..

返り血を浴びて、吐いて、吐いて..目の前の人間がグチャグチャになって..

流石にもう死んでいるだろう…

「マモル..終わったか? 何だこれ..うぷっ何て殺し方しやがる..まぁ良い確かめる必要もなく死んでいるな」

「….」

「ほらよ、1人銅貨5枚で3人で15枚、銀貨1枚に銅貨5枚だ」

「…」

「初めてでこれじゃ無理もないか..とっと帰りな」

俺はどうやって帰ったか記憶にない..気が付くと「どぶネズミ」の小屋に帰ってきていた。

「よう、マモル大丈夫か?」

「…」

「初めて人を殺したんだ、普通はこんなもんだな、俺もオルトも..同じ感じだったな」

「いひひっミーシャは違ったよ」

「…娼館に行く気力や酒を飲みに行く気力もないか..仕方ないなミーシャ今日はそのまま一緒にねてやれよ」

「私じゃ..駄目だろう..うん」

「いや、マモルはどうやら随分遠くから来たみたいだ、マモルは混じり物も知らない」

「本当に?..そうか可笑しいと思ったんだよね..私を女の子扱いするからさぁ」

「おい..幾らなんでも、こんな時に、したりするなよな..ミーシャ」

「うん、自分からはしないよ? だけどマモルから求めてきたら..良いんだよね?」

「おい..まぁ良いか?」

「おい、良いのか?マモルが可哀想だろうが!」

「オルト..今日は飲みに行こうか?」

「少しは落ち着いたのかな?」

ミーシャの顔が物凄く近い..

しかも、月明りで見たミーシャは服を着てなかった、そして俺はミーシャの胸に顔を埋めて泣いていたみたいだ。

「ごめん、ミーシャ」

「良いよ、マモル..私みたいな混じり物で役に立てるならさぁ」

「何だか恥ずかしいな..」

「初めて、人を殺すと皆んなそうなるよ…だから殆どの奴は娼館に行くか、仲間と一晩中酒を飲むんだ…普通の事だよ」

「ミーシャはどうだった?」

「私は混じり物だからさぁ..半分魔物だからかな..何とも思わなかったよ..あはは、余り参考にならなくてごめん」

「ミーシャは魔物じゃないよ…人間だよ」

「世間はそうは思ってくれないけどね」

「だって、凄く優しいから」

「そう思ってくれるんだね..なら私を好きにしても良いよ..」

「あの、それは…責任取れないから」

「大丈夫だよ…混じり物の私は..あははっ人間ですら無いんだ、半分魔物だからさ、だから妊娠もしないから責任なんて無いよ」

「あの、ミーシャはそれで良いのか?」

「うん、私何か..あははっ何でもないよ」

結局、その日俺は流されて、そのままファーストキスからもう一つのチェリーも卒業した。

初めてのキスの味は生ごみのような味で、初めての経験はゴミ捨て場のような匂いに包まれていた。

その分を差し引いてもミーシャは凄く可愛いと俺は思った。

処刑人

「おはようマモル」

「おはようミーシャ」

「元気がでたようだね! いひひっ、うん」

「ミーシャのおかげだよ」

「マモルが元気になったんならよいんだ..うん」

《あれ確実にやっているな》

《マモル食われちゃったのか..》

「二人で話している所悪いがちょっとマモルを借りて行くぞ!」

「トム…」

「まぁ悪い事にはならない、ミーシャ安心しろ、ただルールだけは説明しなくちゃならない」

「それじゃ、俺も」

「なぁ、マモル、そのやっちまったのか?」

「ああっ、済まない誘惑に負けた」

「一応、説明しておくが本来は、ボスである俺や、他のメンバー、この場合はオルトの許可なくして男女の仲になる事は許されない」

「俺はどうすれば良いんだ..追放とかパーティーを抜けなくちゃいけないのか」

「いや、今回は問題ない、ミーシャは混じり物だ、俺もオルトも女としては見ていないし、ミーシャを女としては好きでは無い」

「俺からしても良く抱いた、そう思える位だな」

「それじゃ..」

「何も問題が無い、だがなマモル、覚えて置け! 俺もオルトも好きで無いから問題が無かったんだ..ミーシャがどちらかの女だったら、けじめをつけなくちゃならなかったんだ..」

「すまない」

「まぁな寧ろ、俺は半分たきつけていたから問題は無い..だがもし彼奴が俺の女だったら、殺し合うか、けじめで腕一本だな」

「そこ迄の事だったんだな..オルト、常識が俺は本当に無いな..」

「確かに危ういな..解らない事とかは今度から、俺かオルト..いやミーシャに聞け、解ったな」

「ありがとう」

「それで、ちゃんと責任はとれよ..」

「それが、俺は責任が取れないかも知れない」

「おい、それは聞き捨てならねぇ..彼奴は仲間でもあるんだぜ..」

「話しだいじゃけじめが必要だな」

俺は10年後に帰らなければならない事を「女神」を除いて誤魔化すように話した。

「ぶあはははははっ、傑作だな、あのよ..お前本当に良い所の坊ちゃんだったんだな..そう思わないかオルト!」

「本当に此奴は..あはははははは..結婚でもする気か..ぷぷぷっ可笑しい..本当に..あははははっ傑作…」

「俺はおかしな事を言ったのか?」

「あのよ..ここはスラムなんだ、そんな責任なんて余程じゃなきゃ取らねぇよ」

「そんな責任なんてとらせたら、オルトなんか殺されるぞ」

「どういう事だ?」

「やっちまったからには付き合えってだけだ」

「….何だそれ?」

「本当にメンドクサイな..此処まで常識が違うとはな..」

「はぁ、俺が説明してやるよ、だだ、一回はちゃんと付き合え、それだけだ、付き合って反りが合わなければ別れても仕方ない、当たり前だろう?」

ようは、やっちまったんだから、ちゃんと交際しろ..それだけか..

「解ったよ」

「だが、忘れるな! これはミーシャが混じり物だから、これで済んだんだ、俺かオルトの女だったら、只で済まなかった、それは覚えておけよ..暗黙のルールだ」

「解った」

「それでよ..此処からは、別の話だ..ミーシャには言うなよ…」

「解った」

「よくあの臭いミーシャを抱けたな..そのなんだ..生ごみの様な匂いがしただろう?」

「それは風呂にも入ってないんだから仕方ないだろう? お互い様だ..」

「マモル..気が付かないのか?..今の俺臭いか?」

オルトは俺を抱き寄せた。

「やめろ、オルト、俺はそう言う気はないぞ」

「違う! 匂いだ匂い..」

「余り臭くないな..」

「だろう? トムの匂いも嗅いでみろ」

「臭くない….何でだ?」

「風呂なんか流石に入らないが水浴び位はするぞ」

「川で体を洗ったり、井戸水で体を拭く位はするからな」

「だったら、何であんなに臭かったんだ..」

「あれはミーシャの体臭だよ、あの臭いはなミーシャが水浴びをしたって消えないんだ」

「オークやゴブリンの汗が臭いのと同じでミーシャが臭いんだよ」

「それでな、お前ら付き合いだしたのなら、今日からはオルトと俺 お前とミーシャに別れて寝よう」

「ボス、川の字で寝るのはボスの特権じゃないのか?」

「トムで良いよ..そんな事したらミーシャが凍えて死んじまうだろう? だからそう言うしか無かった..彼奴は彼奴なりに遠慮するからな」

トムにしてもオルトにしても優しいな..しかも面倒見も良い。

「そうか..だけど、トムとオルトってそう言う仲なのか?..ホモ?」

「お前、殺すぞ..俺はノーマルだ」

「俺もお前みたいな変態じゃない..」

「俺が変態? 何故だ..普通だろう」

「なぁ..常識を教えてやる..混じり物とやれた時点で、誰もがお前を変態と呼ぶと思うぞ、まじ常識だからな?」

「嘘だろう?」

「真実だ、諦めろ..」

ミーシャに聞けない事を二人は教えてくれた。

ミーシャのお母さんはエルフだったらしい、「らしい」と言うのはトム達は噂しか知らないからだ。

恐らく、何かの魔物の巣で苗床にされていたのだろう..保護された時にはミーシャを孕んでいた。

だが、街の人は最初はそうは思わなかった。

普通に苗床にされていたなら、巣ごと討伐された時に冒険者が持って帰る事でしか生還出来ない。

だけど、ミーシャの母親は頭は可笑しかったが..一人で街に入ってきた。

その事から魔物ではなく、盗賊にでも犯されて頭が可笑しくなった、そう思われていたそうだ。

だが、生まれてきたのは「混ざり物」ミーシャだった。

ミーシャを生んで、頭が可笑しいながら育てていたそうだが..ミーシャが小さい頃死んでしまったらしい..

その後ミーシャは、かっぱらい等で生活をたてて生きていたそうだ、そこをトムに拾われ今に至る。

「トム、マジで天使だな..」

「違うぞ、俺はお前やミーシャやオルトから巻き上げて生きているんだ」

「はいはい、そういう事にしときますよ! トムはこう言う話が嫌いだからこれで終わりだ」

「それじゃトム、俺は今日は何をすれば良いんだ?」

トムは俺が足が悪いのを気に掛けて、走らないで良い場所を任せる。

その分、走って逃げるような危ない仕事を三人にさせているようで申し訳ない。

「今日はギルドからマモルに呼び出しが来ているからそっちに行ってくれ」

「了解」

「私もマモルについて行って良いかな!」

「駄目だ、ミーシャ、お前迄抜けたら、飯にありつけなくなる」

「仕方ないな..マモル 行ってらっしゃい」

「よく来たなマモル、お前、処刑人になって見ないか?」

「処刑人?」

「足が悪いから盗賊は難しいだろう? まぁトムは面倒見が良いから良いが、彼奴らが居なかったら1人で生きていけないだろう?」

確かに、俺は彼奴らの足枷になっているな。

「確かに、それで処刑人ですが、何で俺なんですか?」

「この間のお前の殺し方を見た、盗賊ギルドで殺す人間は裏切者や敵対する者が多い、より残酷にする事で抑制力になる」

「それで俺ですか?」

「ああっ、凄く惨たらしかったと聞く..だからどうだ? 処刑人は固定収入だ、だから生活しやすくなるぞ」

「ボスに聞いてからで良いですか?」

「ああ考えてくれ」

皆んなに相談した。

「俺は反対はしない、決めるのはマモルだ..確かに良い話しだが続けられるかだな」

「トム、マモルは強くなりたい、そう言っていたんだ、処刑人ならその早道じゃないか?」

「マモルがしたいようにすれば良いよ? 精神的に辛くなったらミーシャが慰めるさ..いひひっ」

「マモルの好きにして良い…それで決まりだ」

「なら、俺はどぶネズミのマモルとして受ける事にするよ..3対7でどうだ」

「おい、3割も入れる事は無いぞ」

「いや、どぶネズミに入れるのは7割だ」

「それは入れ過ぎだ」

「なぁトム、俺が行き場が無い時に仲間に入れてくれたのはお前だ、右も左も知らない俺に常識を教えてくれたのはオルトだ、そして初めて人を殺して泣いている俺を抱きしめてくれたのはミーシャだ..少しは恩を返させてくれ!」

「解った、受け入れよう..ただ、それならお前はもう盗みには参加しなくて良い..パーティに金を入れてくれるんだ当たり前だろう?」

「そうだな、1人だけ倍の仕事をするのは不公平だ」

「いや、俺もそれは」

「駄目だよ、このパーティーの稼ぎ頭は恐らくマモルになる..そうしてくれないといひひっ、私達の立つ瀬がないよ」

「解った」

こうして俺はギルド専属の処刑人となった。

楽しい日々
処刑人の仕事は大きく2つに分かれていた。

1.残酷に殺す。

 これは裏切者や粛清の意味を込めて楽に殺してはいけない。
 ギルドの敵はこうなるのだという見せしめの為に

2.一瞬で楽に殺す

  これは、自白した者や、やむない事情からギルドを裏切った者の殺し方。
  ある意味、温情のある殺し方だ

この二つを使い分けなくてはならない。

前の処刑人だったジム爺さんから俺はこれらの作業を教わった。

教わったと言ってもたった1日だ。

最も、ジム爺さんが殺した人数はたった2人、それに対して俺は6人。

その理由は「残酷に殺す」は簡単だったが「楽に殺す」がなかなか出来なかった。

「これは慣れんとな、喉を掻っ切ったり、首筋にナイフを当てて一気に切るんじゃ..躊躇えば躊躇う程相手は苦しむ..あとはそのうち慣れる」

それがジム爺さんの言葉だ。

ジム爺さんはもう引退する、そして後釜に俺が入った。

引退した後どうするか聞いたが

「それはマナー違反じゃよ…まぁ良い、爺は殺すのに疲れたから、少しは真面な余生を送らせて貰うだけじゃ」

それだけ言って立ち去った。

ギルドマスタ―から

「これでお前が正式な処刑人だ、まぁ壊れないように頑張んな!」

「ああっ頑張るよ!」

初めて殺した時と違い、話せる位の余裕はあった。

吐きもしなかった。

精神的に少し滅入ったそれだけだ。

「帰ったな、どうだ仕事の方は?」

「初日だから半分、引継ぎみたいな物だったな、まぁ6人位殺してコツが掴めたよ」

「そうか? 何だか疲れてそうだな」

「まぁ、初日だからな」

「俺はトムと一緒に飲みに行ってくる…明日の朝まで帰ってこないからな」

「まぁそう言う訳だ」

何だか気を使わせてしまって悪いな…

「じゃぁな、慣れて来たらお前も一杯やろう」

二人はそそくさと出て行った。

「ミーシャは行かなくて良いのか?」

行く気はないだろうが聞いてみた。

「私は混じり物だから、店には入れないよ? それに男を癒すのも女の仕事だからね…いひひっ、ほら」

そのまま、ミーシャに覆いかぶさった。

慣れは怖い、生ゴミのような臭いも、腐った臭いのするキスももう慣れた。

ただただ、体を重ねた。

処刑人の仕事は無い時もある。

ただ、その場合はギルド待機だ。

ある意味サラリーマンに近い。

いちいち数えるのも面倒な位殺した。

もう、俺の中では何人殺したか解らなくなった。

「お前もようやく、本当の意味で仲間になったな!」

「なんだ、それギルマス…」

「昔は何かこう、キラキラして嫌な奴だったが、今はもう腐ったような目をしている」

「そうか..それは良かった」

「ほう、怒らないんだな!」

「俺の親友も女も全部盗賊だ、仲間になれたようで悪く無い」

「そうか、そうか、流石はターナルのマモルだな..」

「ターナル?」

「お前、ターナルを知らないのか?」

「知らないな..田舎に居たんだ」

「田舎の方がいそうだが、小さな動物だが..結構勇ましくてゴブリンやオークにも噛みついていくんだ」

「凄いな」

「ああっそして、物凄く臭い..どうだマモルにピッタリの字だろう?」

「何と言って良いか解らないな..」

「字があるって言うのは優れた奴の証だぞ..お前達の仲間じゃトムが「どぶネズミ」の字だ。そのままパーティーの名前にしてしまったが..」

「どぶネズミは普通嫌がるだろう?」

「まぁな..だが字があるという事は認められたっていう意味でもあるんだぜ」

「そうか? なら、俺は処刑人 ターナルとでも名乗れば良いのか?」

「名乗れるぜ」

処刑人の収入が良かったのと、足手まといの俺が盗みから外れる事で「どぶねずみ」の懐は随分温かくなった。

といっても木の掘っ立て小屋から、レンガ作りのボロ屋に引っ越しただけだ。

レンガ作りのスラム街の部屋..風が吹き込まないし、部屋数も4つあるし、内井戸もある。

まぁ、それだけが取り柄と言えた。

一部屋は台所件 全員の部屋、 一部屋は俺とミーシャの部屋、一部屋はトムとオルトの部屋だ。

他一つは倉庫だ。

少し、金回りが良くなったせいか、トムとオルトは夜遊びするようになった。

「好きだな、トムもオルトも」

「そりゃあな、禁欲していたからな」

「禁欲?」

「ミーシャの臭いが俺たちにもついてたせいか飲み屋は許してくれたが娼館は出入り禁止だったんだ」

「そんなに臭いかな?」

「部屋が別れてみたら..よくわかった」

「ほう」

「それで、部屋がわかれた事を説明してようやく解禁になったから..悪いな」

「その分の埋め合わせはする」

「まぁ良いよ..楽しんできてくれ」

そして、俺はと言うと..盗品広場に来ている。

盗品広場と言っても、普通の蚤の市に近い。

俺の目当ては..貴金属、と言っても買えるのは安物だが。

「よう! 処刑人ターナルじゃねぇか! 何か探しものか?」

「ああっ、赤い色のネックレスかブローチ無いかな?」

「ああっプレゼントだな..いいぜ、お前なら安くしてやる、これでどうだ?」

「へぇー…良いなこのペンダント、うんいい..幾らだ」

「銀貨1枚で良いぜ」

「安いな」

「馬鹿言うな、これはギルドの仲間相場だ、そして、俺はお前を気に入っている他の奴なら銀貨8枚は貰うぞ」

「そうか、恩にきる」

(仲間か良いな..)

「おばちゃん、串焼き6本とエール2杯をくれ」

「あいよ、なんだターナルか..相変わらず臭いね..ほら2本サービスで8本あげるよ..あとエール2杯だね」

「ありがとう、おばちゃん」

ミーシャは混じり物だから、外食をしたがらない、「ミーシャは行けない」と言っているが盗賊ギルドに入っているから行こうと思えば行ける。

だけど、それが迷惑になると解かっているからミーシャは必要最低限しか人とは関わらない。

俺たちを除いて。

だから、俺は食べ物を持ち帰る事にした。

「ただいま、ミーシャ!」

「お帰り、マモル..少しは仕事に慣れたか?」

「ああっまあな..ギルドマスターからも腐った目をしてきたなと言われる位にな?」

「そうか..でも慣れたらもう私は要らなくなるね..」

「そんな事無いぞ? お前は俺の女だろう?」

「マモルは良いのか? 混じり物だよ私」

確かに異形と言えばそうなのかも知れないが..臭い以外は、コスプレしているみたいで可愛く見える。

「俺は凄い田舎からきたからな、混じり物自体知らなかった..俺には普通の女の子としか思えない」

「そうか、マモルにとっては私は女の子で良いんだね」

「ああっしかも..トムにもオルトにも、もう俺の女と言う事になっているしな」

「いひひっ、そうかミーシャはマモルの女なんだね..そうか、そうか..うん女か!」

「そうだ、これ買ってきたんだ」

「なにこれ? ペンダント! くれるの?」

「ああっ..ミーシャに似合いそうだからな」

「そうか、ありがとうマモル..えへへ似合うかな」

「ああっ凄く似あっているよ」

「そうか似合っているんだ..」

「どうした?」

「何でもないよ..あのさぁマモルは10年位したら居なくなるんだよね?」

「悪いな..これは多分変えられないと思う」

「そうか…だったら5年で良いんだ、ミーシャの男のままでいてくれないかな? 駄目か」

「そんな期間で良いのか? 俺は10年一緒に居るつもりなんだが」

「そうか..あはははは10年..10年ね..うんありがとう..」

「何だ? まぁ良いや..串焼きとエールも買ってきたから食って飲もうぜ!」

「うん、今日はトムとオルトは帰ってくるのかな?」

「また午前様らしいぞ」

「だったら、朝までやれるよね? 今日はミーシャ頑張っちゃうよ」

「あははは..お手柔らかに」

やっている事は人殺しだ。

仲間は盗人..

恋人は臭い..

だけど、毎日が楽しい、これは本当の仲間が居るからだと思う。

こんな楽しい日々がずうっと続けば良い..俺はそう思った。

お別れ

「ミーシャが、5年位一緒に居て欲しいって言ってたんだが、常識的に5年って何かあるのか」

「そうか、マモルは知らないんだな..」

「何かあるのか?」

「いや..」

「トムは言いにくいだろう、俺から言うよ..マモル、それが恐らくミーシャの寿命だ」

「そんな訳ないだろう、ミーシャはどう見ても若いだろう」

「マモル、良く聞け..ミーシャは15歳位だあくまで大体だが.」

「ならこれからじゃないか? 病気って事はないだろう?」

「元気だな、だがミーシャは混ざり物だ..」

「それがどうかしたのか?」

「良いか、混ざり物で20歳まで生きた奴は殆ど居ない..」

「…どういう事だ」

「俺は口が悪い..許せ、化け物と人間のハーフなんだ、運が悪ければ生まれてすぐに死ぬことも多い、無事に生きれても短命なんだよ」

「そうか..」

「気にするなって言ってもお前は気にするだろうな..だけどよ、恋人がいた混ざり物なんてミーシャ以外聞いた事も無い」

「だから」

「ミーシャは何時も幸せそうに笑っているだろう!」

「そうだな」

「時間は短いかも知れないが、明日明後日死ぬわけじゃない、盗賊なんて明日死ぬかも知れない仕事だ、毎日を楽しく過ごせば良いんだよ」

「トムにしてもオルトにしても大人だな」

「お前が子供なんだよ」

彼奴、長く生きられないなんて..知らなかったな

俺は悲しい顔しちゃ駄目だ..

彼奴が楽しんで生きれるようにしてやる、それしか出来ないんだから。

だが、最悪の日は..もっと早く訪れた。

楽しい日々は簡単に壊れる事がある..そんな事も俺はまだ気が付いていなかった。

その日ミーシャはトムとオルトと一緒に買い物に出ていた。

生まれて初めてプレゼントを貰った、だからお返しがしたかった。

だが、男が喜びそうな物なんてミーシャには解らない。

それに店によってはミーシャが入るのを嫌がるお店もあった。

だから二人にお願いしてついてきて貰った。

「しかし、銀貨5枚とは随分奮発するんだな」

「私はさぁ..二人と違って遊ばないし、酒も飲まないから余裕があるんだよ..それにせっかく男が出来たんだから、少し位貢ぎたいんだ」

「あのよ、ミーシャ、貢ぐなんて言葉使うと、マモルは真面目だから嫌がるぞ! プレゼント、そう言った方が良いぞ」

「そういう物なんだ..」

「まぁ、彼奴は真面目だからな、そういう所は固いだろうから」

「まぁどっちでも良いんだけど..私は自分のお金でマモルにお返しがしたいんだ」

「解った、解った..それじゃ見に行こうか?」

前から三人の男女が歩いてきた。

服装を誤魔化しているが、どう見ても盗賊やスラムの人間ではない。

「ちょっと、そこの貴方そのペンダントを見せて頂戴」

「これは私んだ見せる筋合いはないよ!」

「それは家から盗まれた物かも知れないのよ…良いから見せなさい!」

「いやだ、これはミーシャの物だ、触らせない」

間にトムが入った。

「お嬢さん、あんたがどんな人か知らないが、これは市場で此奴の彼氏が此奴に買ってやったもんだ、元が盗品でももう関係ない!」

これは当たり前の事だ。

買ってしまった後なら元が盗品であっても関係ない、所有権は新しい人間に移る。

それは常識だ、まして此処は盗品市場だ、もしその商品が欲しいなら新しい持ち主から買い戻すのが当たり前だ。

「売られてしまったら仕方ない」そういう暗黙の了解があった。

誰が聞いてもトムが正しいというだろう..だが..

「語るに落ちたな、それは盗んだ物と言う事だな」

「誰も盗んだなんで言ってない..お前は馬鹿なのか? 最初に市場で買ったと言っただろう?」

「盗品じゃないなら見せられるだろう?」

「だから、もしこれが盗品だとしても買ったらもうおしまいなんだ..」

トムが話をしている最中に、男は剣を抜きトムを斬った。

トムだって「どぶネズミ」という字がある人間だ一般人に斬れるわけが無い。

「貴様、よくもボスを」

オルトは男に斬りかかると見せかけて、連れの女を斬りつけた。

狙いは目..そしてその思惑は的中する。

「きゃあああっあああああああ! 目が私の目が..」

相手が怯んだ隙に走り出そうとする..

「逃げるぞミーシャ..」

「トムが、トムが..」

「良いから、今は逃げるんだ」

「解った」

「何処に逃げようっていうんだ、盗人野郎..よくもフローラを傷つけてくれたな..」

「先に斬りつけてきたのは、そっちでしょう..トムは何も悪い事してないのに..」

「だから、なんだ、フローラは王族だぞ、お前ら貧民とは違うんだ!」

「そう? だから何だ? 王族だからってここでのルールは絶対だ..王様でも守っているんだぜ」

「そうだよ、可笑しいよ」

「な、何を貴様ら..たかが貧民の癖に勇者である俺に逆らうのか? もう良い面倒だ、風よこいつ等を切り裂け」

「いけません、タケル様..」

「それは不味いです..」

痛みを押さえながら、フローラともう一人の女が止めに入ったがタケルは止まらなかった。

男が剣を一振りすると、オルトもミーシャも紙のように切り裂かれた。

「お前、絶対にゆるさねぇ..地獄に行ってもよ..絶対に殺してやんよ…」

「私達は何もしてない..それなのになんで、なんで、(マモル..ごめんね..)」

「不味いです、タケル様、幾らスラムでも魔法を行使してはいけません」

「だが、レイラ、此奴らが..」

「言っている事は向こうの方が正しいです..それに此処は…仕方ありません、ルビーの回収をして逃げましょう」

「この女、ネックレスから手を離さないぞ..くそ、死んでまで..えっ只のガラス玉じゃないか..」

「どうするんですか? せめてこれが「炎のルビー」ならまだしも、これじゃどう考えてもこっちが…ああっもう」

「見てたぞ、お前ら、お前は勇者タケルだな、第二王女のフローラに聖女のレイラ.」

「此処のルールは、そいつらが言ったように絶対だ..どうするんだ..」

「人殺し..何が勇者だ」

「俺たちが殺してやる..」

不味い、話が大きく成れば問題になる。

まして、勇者を嫌っている貴族もいる、下手すればフローラ様の失態になる。

第一王女や第三王女に話がいけば、必ず大事にする。

「待って下さい..罪は認めます..衛兵を呼んで下さい、自首します」

「おい、俺は勇者だぞ..こんなゴミを殺したって問題は無い筈だ..」

(良いから黙って下さい..盗賊ギルドを敵にまわしたら、優秀な斥候が手に入りません、さらに情報も貰えなくなります)

「罪は償います..こちらも王女の両目が潰されました..自首するチャンスを下さい」

そうこうしている間に、衛兵隊が駆けつけて、勇者やフローラ、レイラを連れていった。

俺は何時も処刑が終わり部屋から出るとギルマスが居た。

何かの注意事項か?

だが、何時もと違い顔が強張っている。

「どうかしたんですか? 顔が怖いですよ..」

この位の冗談は言える位の中にはなっていた。

「良いか、良く聞け..どぶネズミが全員殺された」

「冗談..」

「こんな事冗談で言えるか..本当だ..」

急に目の前が暗くなった..何を聞いたのか解らない..

ミーシャとは朝まで抱き合っていた…

トムとオルトは朝帰りして、女の自慢話を聞いた。

それなのに、それなのに..死んだなんて信じられるか!

「嘘だろう」

「本当だ」

「そうか? だったら誰が殺したんだよ、そいつらは必ず殺す、残酷に殺す」

「それが出来ない…相手は勇者達だ」

「勇者だろうが何だろうが盗賊ギルドの縄張りで起きたんだろうが..殺して良い筈だ」

「自首したんだ..衛兵相手に自首した..だからもう俺たちは手が出せない」

「そうかよ..だけど、自首したんなら裁いてはくれるんだろうな..」

「ああ..」

多分、真面に裁かれる訳は無い..だったら俺がやるしかない..

家に帰ってきた。

昨日までは此処にミーシャが居た。

もう少しすればトムとオルトが帰ってくる..

その場所に、布で覆われた死体がある..

多分、盗賊ギルドの仲間が気を利かせてここ迄持ってきてくれたんだろう。

周りには花が沢山置いてあった。

布をはぎ取った…そこには変わり果てた姿のミーシャが居た。

トムも、オルトも居た。

俺は初めてあった時のように川の字で寝た。

暖かくない、冷たいだけだった..

明け方になり寒くて起きた..

俺はいたたまれなくなり外に出た。

気が付くと、初めて過ごしたボロ小屋の前にいた..

俺は、一心不乱に穴を掘った..

「お前何しているんだ? なっターナルか..そうか」

「….」

「ほらよ、穴ほるならこれ使え..」

シャベルをくれた。

「ありがとう..」

「しゃーねぇーな俺も手伝ってやるよ」

「俺も良いかな?」

「私も手伝うわ」

沢山の人が手伝ってくれたから、穴は簡単に掘り上がった。

そして、掘り終わった後に後ろを見ると三人が居た。

「俺たちで連れてきてやったぞ」

「悪いな..」

皆んなが手伝ってくれて埋め終わった。

「なぁ..ターナル」

「ありがとうな、俺泣くわ..わぁぁぁぁぁあぁぁっぁぁあっぁ、うわあああああああああああああっん..あああああああああっ!」

悲しさが止まらなくなった..

泣いても泣いても涙が止まらない。

周りの人間も泣いてくれていた..

全員が居なくなっても俺は涙が止まらなかった。

忘れていた裁き
相手は王族の為、衛兵では判断がつかなかった。

その為、三人は直ぐに王城に連れられていった。

輸送中の衛兵は気が気でなかった、こんな鎖など勇者であるタケルなら簡単に引き裂ける。

恐らく、聖女が止めなければ勇者は必ず、そうするだろう..

ビクビクしながらの連行だった。

王は連絡を事前に受けて困っていた。

魔王や魔族への対抗手段の勇者..手放す訳にはいかない。

よりによって、一番、権力から遠い場所にある、盗賊ギルド。

ここは、王の権力がききづらい。

これが、冒険者ギルドなら、仕事や素材の買取をしている。

ある意味上客だから、圧力が掛けられる。

騎士や貴族なら自分の命令に渋々かも知れないが確実に従う。

商人ならその権利、市民なら生活を握っているからどうにでもなる。

だが、盗賊ギルドは、その圧力がきかない。

彼奴らは「国が何も保護していない」その状態なのに必要な情報や、斥候の仕事に欠かせない人材を握っている。

つまり国に対して「貸しはあるが借りは無い」そういう人間だ。

これが、裏なら金だけで済んだ。

あっちに非があるならいい訳が出来る。

聞けば聞く程、頭が痛い。

どう考えても、こちらが悪い。

しかも、最初に殺したのは当事者でなく、仲介人だ。

「仲裁に入った者を殺した」 もう何も言い訳ができない。

「お父様聞きましたわよ? フローラがやらかしたそうですわね!」

「マリアーヌにマリアか..」

「あの子には勇者を率いる等、荷が重かったのです」

「だから、私は常識をお教え終わるまで外出は控えた方が良いとお伝えしたのに..」

「マリアの苦言を無視して、お忍びで出かけた事がこの結果です」

「もう、起きてしまった事だ..お前等の意見を聞きたい」

第一王女のマリアーヌと第三王女のマリアは実は仲が良い。

この国に王子はいない。

マリアーヌが女王になった時には、マリアは副女王の地位を与えられ共に国を治めて行く。

後ろ盾も含み全てで話が終わっている。

フローラに勇者を任せたのも、魔王討伐が終わったら勇者を侯爵にし、そのまま妻として与え、侯爵である勇者の妻に落とそうと考えていた。

「お姉さまはもう目が見えない..なら政略結婚や勇者に与える事もできません、盗賊ギルドに引き渡したら如何でしょうか?」

「王族の一生と貧民2人なら充分ですわ、悲しいですがそれが一番かと」

引き渡したら最後、恐らく怒りから「娼婦」にされる事もあり得る。

彼奴らにとって姫を貰う価値が無い。

もしかしたら、血の粛清にひっかかり、かの有名な「処刑人」により残酷に公開処刑されるかも知れない。

流石にそれは忍びない。

王であるカミアール6世は世間一般的には賢王と言われている。

「慈悲深く民想い」そうも呼ばれていた。

結局、王が出した決断は、

1.フローラをギロチンで処刑しその首を届ける。

2.勇者は本来魔王を倒した後は公爵を与える約束をしていたが侯爵にし領地も王都から離れた場所にする

3.聖女は勇者と旅立つまでの間、教会にて治療師として無料奉仕

4.殺された者1人につき金貨10枚 合計20枚をパーティーに払う。

だった。

だが、これは王族のしたたかさも含まれている。

1.については、両目を失った王女に等、価値は無い処分しても痛くない

 (これについてはマリアーヌとマリアが押した)

2.については元から侯爵の予定であったがそれを知る者は王族しか居ないからバレない。
 更に勇者みたいな戦力とカリスマのある人物を近くに置く等危うい..だから遠くの領地に送る言い訳に出来る。良い事づくめだ。

3.別に 聖女に実戦を積ませるつもりで教会で治療をさせるつもりだったから問題ない

4.金貨20枚など痛くは無い。

懐を痛めずに..最大限の謝罪を伝えられて、尚且つ自分が依怙贔屓などしない王なのだと国民に伝わる。

最大の方法だった。

だが、衛兵が伝えなかった事が..この後大きな問題につながる。

もし、「あと金貨10枚出していれば」この後ある男に付け込まれなかったかも知れない。

もし「金貨10枚出していれば」盗賊ギルドは彼を押さえられたかも知れない。

足りなかったのだ。

俺は盗賊ギルドに呼び出された。

「裁きが終わって、お前への償いの品が届いた..俺から説明する」

~この度は王である儂の娘が迷惑を掛けた~

「そうか、要はこの王女の首と金貨20枚でトムとオルトを殺した事を許せ、そういう事だな」

「ああっ、王女が処刑されたんだ、ここまでの判決は過去には無い、お前の気はおさまらないだろうが..」

「良いよ、この王女の首と金貨でトムとオルトを殺された事を許せ..そういう事なんだろう?」

「良いのか? 受け入れたらもう復讐は無しだ..蹴っても良いんだぜ!」

「それじゃ、ギルマスも困るだろう..受け入れる」

「そうか、済まないな..ここにサインしてくれ」

「解った」

「本当に済まなかった」

「何でギルマスが謝るんだ、こんな良い条件で纏めてくれて」

「おい、どういう事だ!」

「復讐の為の準備金まで用意出来て、復讐を諦めないで良いんだ..」

「サインしただろう! もうそれは出来ない、復讐したいなら契約なんてするんじゃねぇよ!」

「いや、だから、トムとオルトの復讐はしない..(同じだがな)それしか契約書に書かれていない」

「だったら..あっ」

「そうだ、俺の女ミーシャの分が入ってねぇよ! 入っていたらサインなんてしない!」

「…入ってねぇな..」

「つまり、これにサインして、お金を貰っても復讐は辞めなくて良い…そうだろう?」

ミーシャは混じり物だから、衛兵の奴が人数に加えなかったのか..馬鹿な事したもんだ。

ちゃんと加えていたら、止められたのに。

普通は混じり物なんか数には加えねぇよな…だが、此奴が女にしていた事は盗賊ギルドや貧民街の人間なら皆が知っている。

つまり、盗賊ギルド的には正当な復讐だ。

俺は金貨20枚とフローラの首を受取りギルドを後にした。

広場に台を設置してフローラの首を置いた。

その周りに囲いを作り、石を置いた。

この首は俺の物だ、何をしようと勝手だ。

俺は「大罪王女の成れの果て…ご自由に石をお投げ下さい」そう書いた高札を書いた。

このまま腐っていく首..王族や貴族に恨みのある者は石を投げるだろう..

腐って醜い姿をさらせ..

俺は近くでそれを眺めていた。

暫くすると俺は盗賊ギルドに依頼を出しにいった。

ギルマスは何も言わなかった。

そして、その足で貧民街でも最低の場所に「ある者達を探しにいった」

聖女は汚され落ちぶれる
俺はフローラの首の近くで寝ていた。

首はまだ原型をとどめていたが沢山の石をぶつけられあちこち穴が空いていた。

腐るのは時間の問題だろう。

そうなる前に来るのを待っていた。

盗賊ギルドで聞いた話では「慈愛に満ちた人間」そう聞いた。

そして、このフローラの親友だとも聞いた。

そいつは悪いのか?

悪く無い可能性が高い..止めようとしていた、そう聞いた。

だがな、お前は間違えたんだ…止めるのが遅すぎたんだ。

あの三人の中でお前だけが常識人だったんだ

もし、お前が

「間違っている」

その一言を言っていれば、何も起きなかったかも知れないんだぜ..

(やっぱりきた、俺の勝ちだ)

「何をしているんだ? 聖女レイラ様?」

「此処までする事は無いじゃないですか? フローラ様は死んで貴方には金貨20枚が払われた筈です」

「そうだな、だがあの時に何人死んだ?」

「えっ..3人..3人なのに..20枚…」

「解ったか?俺の大事な女の分は何も無かった..何もな!」

「だからって、死んだ人間に此処までする必要は無い筈です、貴方には人の心という物が無いのですか!」

「お前らにも無いだろう? 王女は死んだから責任はとったのかも知れない..だがお前も勇者も生きている..平等というなら死んでくれ!」

「私は生きて償います、その代わり..」

「お前はもう終わっているんだよ! 犯罪者が」

「犯罪者、私が..ふざけないで下さい」

「良いか良く聞け、トムもオルトもミーシャも何も盗んで無かったんだ、それなのに間違って殺された」

「それは私達の過ちです..認めます」

「お前は何を持っているんだ?」

「貴方が、弄んだフローラ様の首です..これから私が葬ってあげるのです..」

「それはな、俺が正式に王様から謝罪として受け取った物だよ..書類もあるんだぜ..それを持ち去ろうとしたんなら、盗みだな」

「そんな」

「なぁ、聖女様、盗んでもいない、トムもオルトもミーシャも疑いだけでお前らは殺したんだ..本当に盗みを働いたお前は殺されても文句は言わないよな?」

「まだ、盗んでないわ..」

「こんなに証人が居るのに?」

周りには沢山の人間が居た..

「俺たちが見届け人だ、確かに盗みを働いた所を見たぞ」

「その首は間違いなく、マモルの物、言い逃れは出来ない」

「嵌めたのね..良いわ衛兵を呼びなさい」

「呼ぶかどうかはこっちに権利がある..今回は呼ばない」

「そう、私を殺すのかしら、そんな事したら世界が大変な事になるわよ!」

「そんなのどうでも良いんだよ..殺しはしない..お前はな」

「そう、なら良いわ..ちなみに犯したら聖女の能力が無くなるから世界が困るわ..精々が暴力しか出来ないでしょうね」

「どうでも良いんだ..俺には…それ」

「嫌いやぁああああああっ」

俺はレイラの服をひん剥いた。

「犯せなくても、幾らでも辱める事は出来る」

最後の一線は越えて来ないそう思っているんだろうな

「そう、それが貴方の狙いな訳ね..良いわ..やれば良い..いつか後悔させてやる」

「連れていってくれるかな」

「嘘よ、嘘、そんな事したら私の能力が無くなるわ..世界が」

「俺たちには関係ない..精々楽しませてくれや」

「聖女か、これは死ぬ前に随分と楽しませそうだな」

「これでお金迄くれるんだぜ..マモルはよ良い奴だ」

「いあやああああああああああああああああああっ」

男10人に犯させた。

女神ノートリアは処女神だ、聖女は処女で無ければその能力は失われる。

結婚するまで清い体でいて、婚姻の時には次の聖女に能力を引き継ぐ。

引き継がないで処女を散らしたから恐らくこの世界にもう聖女は現れないかも知れない。

「これで..終わりよ、勇者を助ける聖女はもう現れないわ..あははははっ、貴方のせいで世界はより魔族に有利になるの…貴方は人類の敵だわ」

「悪いがまだ終わりじゃ無いんだよ」

「嘘よね..嫌、私はもう終わっているわ..もう何も出来ない普通の女なのよ、それに私は何もしてないじゃない..寧ろ止めたのよ! 許してよ..聖女で無くなったし、私はもう惨めな生活しかない..良いでしょう..ねぇ、また犯すの..嫌ぁ」

「犯しはしない..もうお前なんて誰も抱きたいと思わない」

「嘘嘘..いやあああああああああ、痛いいやああああああ」

次に用意していたのは「刺青師」だ、大きく背中と額に「性病女抱くと死ぬ」そう彫った。

「もう終わりなの..何を彫ったのよ..」

「ああもう終わりだ、お前から何かしてこない限り、俺からはもう何もしない」

「そう、貴方なんかに関わらないわ..」

「お前は、確かに何もしなかった、これで良い..ただ言わせて貰えば、「止める力があるのに止めなかったからこうなった」それだけだ」

「そうね…」

「ほらよ、欲しかったんだろう…やるよ」

「フローラ..?」

「俺は仲間を葬る事は出来た..だからこれは返してやる..葬ってやれば良い」

「そう…いくわ」

「あと、選別にこれをやる..葬った後に見ると良い」

「そう…」

トボトボとレイラは出て行った。

大事そうにフローラの首を抱えて。

もう、レイラは長くない、レイラを犯した男は重度の性病患者でもう幾ばくも生きれない人間だ。
この世界の神は処女神、だから性的な事を嫌う。
その為、性病の治療技術は元の俺の世界はおろか、中世より遅れている。
性病の治療は教会に頼むしか無いが、此処まで複数の性病を移されたら教会でも間違いなく治せない筈だ。

それ以前に聖女の能力を失ったレイラが教会に性病の治療になんか恥ずかしくて行けないはずだ。

これでミーシャと同じだ、皆んなから嫌われて、触られる事も拒まれる。

そして長くは生きれない。

ミーシャの人生を味わってみろ..

そんな状況でも善人で居続けられて人を救うなら、俺はお前を聖女と認めてやるよ。

レイラはフローラの首を見晴らしの良い場所に埋めた。

(あんな、男がくれた物だ碌でも無い物なんでしょうね)

レイラは包みを開いてみた。

(嘘? 手鏡..嘘、嘘、嘘..)

「嘘よ..嘘..嘘..こんなの嫌ぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁー」

元聖女の泣き叫ぶ声が丘に響き渡った。

異世界で学んだ事。
盗賊ギルドでも勇者タケルの情報はあまり手に入らなかった。

逆に昔の勇者の話は幾つか入ってきた。

今入ってきた情報は

1. 正面切った戦いではまず勝てない。

  これは過去の勇者がドラゴンを倒した、魔王を倒した、その事からわかる。
  実際に盗賊ギルドの当時のエースが戦いを挑んだが瞬殺されたらしい。
  その殺されたエースは騎士団長位なら簡単に殺せると言われていた。

2.その反面内側からの攻撃には弱いかも知れない。

  これは過去の勇者の中に病気に掛かった者が居た。
  そういう話からきた話。

3.勇者の能力は常に未知数

   召喚された勇者の力はその都度違っていた。
   火を使う魔法にたけた物から、剣術に優れた者まで毎回違う。
   共通して言えるのは、この世界の人間では持ちえない素晴らしいスキルを持っている。
   それだけだけしか解らない。
   ちなみに、この世界の人間でもスキル持ちはいるが、似たようなスキルでも威力が全然違うらしい。

4.絶対無敵 そういう訳では無い

   あくまで強大な敵、魔王やドラゴンと戦う時は回復役の聖女や、遠距離魔法の得意な魔導士を連れていた。
   回復役が必要な事から絶対に無敵では無いという憶測。

5.聖剣を持っている。

   これは代々の勇者が持っていた物。

それに加えて、勇者タケルのスキルは「風関係なのではないか」しか解らない。

今の勇者はまだ、お城から出ていない。

考えて見れば、俺の召喚も勇者絡みだとしたらまだ修行の期間の筈だ。

そして、もしかしたら10年後に俺の様に元の世界に帰るのかも知れない。

そう考えたら、殺しても向こうに帰るだけ..それじゃ意味が無い。

つまり、手詰まりだ。

しかも、今回の事件が元で勇者が旅立つのは「常識を身に着け、ある程度強くなってから」だそうだ。

「すまないな、どぶネズミ、こんな情報しか手に入らねぇ」

俺はターナルの字を「どぶネズミ」に変えて貰った。

本来は字なんかは勝手に変えられない…だが、俺が仲間を大切にしていた事と、「ドブねずみパーティの生き残り」の為認めて貰えた。

「まぁどっちも臭いから良いんじゃないか?」

そうギルマスは言うが..今の俺は臭くない、この臭いが薄れるにつきミーシャとの絆が無くなって行くような気がして寂しくて仕方ない。

時間が経てばたつほど、勇者は強くなり俺は変わらない..

一泡ふかせるにしても早いうちじゃなくてはならない。

勇者タケルの似顔絵を書いて貰った。

この憎しみを忘れないようにするために..

俺は処刑人をしながら、どうすれば殺せるか考えた。

目はどうだ、恐らく駄目だろう、歴代の勇者の中には龍のブレスに晒された者もいた。
龍ほど火力直撃なら解らないが、その余熱でも耐えた以上は目すら強いそう思った方が良い。

結局行きついた先

1.「喉」それも内側からならという条件付き

2.「肛門」

この二つが恐らく弱点になるだろう…

口からナイフを突っ込み喉を内側から裂く、恐らく此処は強化などされていない、加護何かない筈だ。

そうで無ければ、人間的に声やら何やらが可笑しくなる

肛門、うん絶対に鍛えられていないだろう..

あくまで憶測だ。

ここに至るまでの処刑の経緯は言いたくない。

だが、俺の処刑を見た者は「流石の俺でもあれは見たいと思わない」そう言わしめた。

「ギルマス、聖女の事で何かあったか?」

「聖女は行方不明らしいぜ、だがきっぱりと言っておいたぜ! 聖女が王が贖罪で下賜した物を盗みに来たから武力行使したとな..その後は知らんと言っておいた」

「大丈夫なのか?」

「さぁな? 表向きは文句は言えんだろうな、あの首はお前が貰った物で書類迄あるんだ..裏は解らんが」

「そのうち暗殺でもされるか?」

「あり得るが、此処にまで来れる暗殺者はまずいねーよ」

「そうか」

「まぁ、聖女の事がはっきり解れば、一生恨まれるぞ..世界中から」

「まぁ良いや」

「お前、死ぬ気か?」

「なぁ..トムとオルト…ミーシャは俺の凄く大切な仲間だったんだ..」

「そうだろうな」

「死なないで敵をとれるならそれが良い..此処は居心地が良い..」

「そうか」

「だが、死なないと勇者が殺せないなら、死んでも良い」

「そうか」

「ギルマス、そうかばっかりだな..俺が勇者を殺しちまったら世界が終わるんだろう」

「終わらねーよ..この国は無くなるかも知れないが、俺たちは盗賊だ、他の国に逃げれば良いそれだけだ」

「そこにも魔族が来たら?」

「そこからも逃げるな」

「大丈夫なのか?」

「ああ、多分、これは俺の推測だが、魔族も人間を皆殺しに出来ないんじゃないかと思うんだ、何しろ勇者が負けた時もあったが人間は滅んでいねぇ」

「そうだな」

「ああ、逆に魔王が滅んでも魔族は滅びねえ」

「言われて見ればそうだ」

「勇者が負けたり、居なくなっても、次の勇者が5年もすれば呼ばれる、魔王だって復活する」

「そうだな」

「まぁ5年間人間は地獄を見るが、俺たちには関係ねぇ..魔族から一番遠い場所に逃げるだけよ、それによ」

「まだ、何かあるのか?」

「魔族に情報を売れば良い金にもなるし、人間の女を売りさばいても金になるかもしれねぇしな」

「そんな事出来るのか?」

「俺の代では無いが過去にあったらしいぜ..ともかく、お前は気にしないで良いぜ..もし勇者を殺せたら皆んな喜ぶんじゃねえか?」

「そんな物か?」

「ああ、此処は身内には甘いからな」

結局、打開策は見つからなかった。

勇者はもう魔法騎士より強くなったらしい。

今しかチャンスは無い。

金貨10枚で「身がくれのマント」を買った。

これはある貴族の家宝だったが、お金を払ったら売って貰えた。

最も、「頼んだから、盗んできたのだろう」

これにナイフに小奇麗な服を買った。

残りは金貨5枚。

この金貨5枚はギルマスにある依頼をした。

依頼内容は墓掃除だ..

「ああっチビ達には良い仕事だ10年間は約束してやるぜ」

「じゃーな」

「どぶネズミ..帰って来いよ..」

「ああ、帰れたらな」

俺はそのまま城の近くに来ると「身がくれのマント」を使った。

これで俺の姿形は見えない。

勇者のいる部屋は、おおよその位置までは解る。

騎士やメイド色々な人に出会ったが誰も気が付かない。

あっさりと勇者の部屋の前にきた。

だが、流石は勇者タケル気が付いた。

「誰だ、貴様! 魔族か?」

「待ってくれ、僕は次郎..日本人だ」

(咄嗟に偽名を使う..これも伏線であり、俺の切り札だ)

「えっ、日本人なのか? 懐かしな、どうしたんだ?」

(やはり、この切り札は使えたな…ただ、同じ日本人、それだけで信じた)

「僕は、普通にこの世界に迷い込んだんだ、そうしたら勇者の名前がタケルって言うじゃないか?逢いたくてきたんだ、他にも日本人は居るの?」

「居ないな! 俺があった日本人は次郎だけだぞ」

(日本人ってだけで仲間意識..馬鹿だ此奴、日本人だって悪人は居るのに)

「そうか..日本に帰れる方法の手掛かりを知らないか?」

「俺は女神の召喚で此処に来たんだ次郎は違うのか?」

「違う、迷い込んだんだ」

「そうか? なら俺が魔王を倒すか死んだ時に女神に会えるから頼んでやろうか?」

「お願い出来るかな」

「ああっただどうなるかは..えっくはあああああっ..なあおするんだ」

喋っている口からナイフを突き立てた..そのまま押し込む

「うがえっぐほぐぼぐぼおぉおおおおおおおおおっ」

普通ならこれで死ぬ筈だ..

だが、勇者のせいかタケルは死なない..いきなり殴りつけてきた。

可笑しい、余り効いてない..仮にも勇者が殴りつけてきたのに、そんなに痛くない。

マモルは気が付いていなかった。

この世界の異世界人にはレベルがある、そしてそれは人を殺しても上がる。

毎日の様に人を殺していた「処刑人」のマモルはかなりのレベルになっていた。

逆にタケルはまだ戦っていない..つまりマモルの方が遙かにレベルが上だった。

ナイフを押し込み続けてとうとうナイフは内側から突き破り喉から顔を出した。

だが、タケルは右手をマモルに触れた..ただ、触れただけ、その瞬間にマモルは炎に包まれた。

女神からスキルを貰えた者、貰えなかった者の差が此処ででた。

「勇者タケル様、これはいったい..急いで治療師を呼んで来い、曲者に勇者様が襲われた..」

「はい只今..すぐに」

(届かなかったか..多分、勇者は助かる..俺は..駄目だな)

世界が暗転した。

「どうやら、死んだようですね!」

「女神なのか?」

「そうですよ..何ですか? その目は前に会った時はあんなにキラキラしていたのに今の貴方はまるで腐ったドブのような目をしていますね」

「勇者はどうなりますか?」

「聞きたいのですか? 恐らく、勇者タケルは貴方のせいで魔王はおろか、魔族の幹部に負けるでしょうね..満足ですか?」

「ああ、満足だ」

「聖女を汚して能力を奪い、勇者は詠唱が出来なくされて大きな魔法は使えない..これから何万という人間が死ぬでしょう..貴方のせいです」

「だが、人間が滅ぶわけでは無いのだろう?」

「ええっそうですね..ただ数年間は人間にとって辛い歴史となるでしょう?」

「なぁ女神様..俺はただ3人の人間を救いたかっただけだ..もし、勇者がその3人に手を出さなければ俺はただ薄汚く処刑人として生きていた」

「そうですか..」

「もし、貴方があの瞬間に現れて3人を生き返らせてくれたら、俺は感謝したと思う」

「そうですか..だが私にはそんな事をする事は出来ません」

「解りました..それで勇者であるタケルは何時こちらに帰ってきますか?」

「それを聞いてどうするのですか?..まだ何かするつもりですか!」

「やり過ぎたから謝りたい、そう思っています..流石にここまではする気が無かった」

「謝罪をするのですね..多分彼は貴方を許さないでしょう..一生憎まれていきなさい..天上タケル、貴方の隣町に住んでいます」

「許しては貰えないと思いますが謝りに行きます..それで何時彼は戻るのですか?」

「彼にはスキルを与えているので1か月貴方と時間軸がずれて戻る筈ですよ..贖罪の人生を送りなさい」

「はい」

(案外チョロいな..)

世界は再び暗転する。

本条さんには黒田が覆い被さっている。

本条さんは手足を3人掛かりで押さえられて身動きできない。

「こんな奴庇うからこんな事になるんだよ..クラスの女もお前の事嫌いだからだれも助けにこねーよ」

「いや、いや、やめて、お願いだから..いやー」

「やだね! 俺がお前にこんなクズ庇うの辞めろって言っても、正義面して辞めなかったろう? 同じだ」

黒田は本条さんのブラウスに手を掛け破った。

「いやあああああああっ」

俺は黒田を突き飛ばすと本条さんに当身を食らわした。

本条さんは気絶している。

「お前、何してくれているんだ!」

「黒田さん、本条気絶しているよチャンスだ..これなら暴れられない、簡単に脱がせる」

「マモル、お前のせいでやりやすくなったわ..お前何で手錠が外れているんだ? おい、俺が終わったら、やらしてやるから先に此奴をもう一度ボコって転がして置け」

「めんどくせーな」

「仕方ねぇ 手間かけさせるなよ」

俺は何を持ってきたんだ…タケルの似顔絵かよ、あの女神絶対に根に持っているよな。

二人の間をすり抜け、黒田に近づく。

「手前、いい度胸だな、殺して..えっ..痛てええええええええええ目が目が見えねえええええええええええっ」

「黒田さぁ、殺すなんて言う奴は馬鹿だよ..本当に殺したいなら言葉に出さずにやれば良いんだ」

「おい、あれ黒田さん..目が潰れてないか?」

「そんな事無いだろう..そんな事喧嘩でやる奴はいないよ」

「目が見えるようになったら殺す、お前は絶対殺す..ぎゃあああああああっ」

「だから?」

俺は耳を千切って二人に放り投げた。

「何だこれ..嘘だろう、これ耳だ」

「冗談は辞めろよな..うわっ」

「あのよー黒田お前の目はもう見えないよ! えぐり取ったんだからさぁ、もうお前どうやっても俺には勝てないよ、目がねーんだもん」

「嘘だ..嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」

「現実は辛いな」

「もう片方もいっておこうか?」

「痛い、何でだよ、何でこんな酷い事するんだよ..此処までする必要はねぇだろう..ボコって終わりで良いじゃねぇか?」

俺は黒田の耳を千切った、案外耳は簡単に千切れる。

「うわああああっ、もう辞めてくえ、やめてくえ..」

「何で? お前が俺が辞めてくれって言って、辞めてくれた事はあったかな? 平田はどう思う!」

「俺は..やり過ぎだと思う..やめてやれ..」

「そう、平田は俺の敵なんだな、だったら良いや..お前も」

「やややややめろよ.な、俺はそんなに酷い事しなかった…あああああっ痛い、痛いよ..嘘だろう目が目が見えねー、酷い俺は黒田の命令を聞いていただけなんだ」

同じ様に両目を抉った。

「逃げようとしても無駄じゃないかな、城田くんよぉ…自分達で逃げれないようにドアをワイヤーでがんじがらめにしてちゃな」

「嫌だ嫌だ嫌だくるな、くるなって..そうだ、金を払うなぁそれで良くないか?」

「金だけか?」

「そうだ、バイク、バイクならどうだほぼ新車だぞ! なぁそれで良いだろうなぁ」

「あのさぁ、さっきの話しだけど誰が一番悪いと思う?」

「黒田だ、黒田が悪い..ああ全部黒田がわるい..」

「次に悪いのは?」

「平田だ、平田が悪い」

「いいねぇ..合格、だったら俺の代わりに二人に制裁してくれないかな?どうだ」

「解った..それで見逃してくれるんだな」

「ああ良いぜ」

「痛い痛い、医者に連れていってくれ頼むなな」

「いてぇよ、いてええ..俺が悪かった」

「黒田、平田、俺はお前らが気にくわなかったんだ..おらぁー」

「お前裏切るのか..」

「やめろ、やめてくれ痛いんだよー」

おーおー、凄い勢いで蹴りやがるの..こんな物か..

「助しゅけて、助しゅけて、殺しゃないでくれ、頼むおお願いだ、お願いしまふ、命だけうわ助しゅけて」

「オエは、黒田にいうわれて、やっていただけや..」

「解った、これで助けてやる..ただ、これは俺は関係ない、お前達が先に誰が本条さんと犯るか争って怪我をした、それで良いよな?」

「解ったようお」

「おでも解った」

「それなら良い、これで手打ちだ、ただ、もし少しでも俺の事を話したら、黒田、お前の姉ちゃんがもっとひどい目に遭うぜ、平田は弟だ、解ったな」

「「解りました…」」

俺は救急車を呼んだ、本条さんも多分トラウマが少し残るかも知れないが、大丈夫だろう。

黒田も平田も俺を恐れてか俺の言ったとおりに話した。

本条さんとの話もピッタリ合うからそれで話は終わった。

しかし、レイプ未遂犯で盲目..もう人生は終わったな..

城田には、そのまま黒田の後釜に座らせた、そして「俺を虐めるのは辞めるように」言わせた。

自由に使える傀儡だ。

そのまま城田に「天上タケル」について探させた。

俺はこの世界から消えていた事が無い..タイムラグが全く無い。

それに対してタケルは数日前から行方不明になっていた。

この辺の事は解らない。

多分女神の話なら3週間位後に帰ってくる。

タケルは両親と妹と暮らしている。

城田の情報では妹を溺愛していたそうだ。

俺は天上タケルの家族を皆殺しにした。

此奴らは俺に何かした訳では無い..だから自殺に見せかけて苦しまないように殺した。

タケルはきっと泣き叫ぶだろうな。

俺の中に彼奴らとの思いでや「処刑人」の技術は残っているが、力は元のままだ。

つまり、帰ってきた天上タケルはただの人だ簡単に殺せる…俺は家族を失い傷心のタケルを自殺に見せかけて殺した。

普通の人間のタケルはあっさりと殺せた。

俺の様に技術を身に着けていたら、そう警戒したがそんな事は無かった。

俺はもう正義ぶるつもりはない。

目を瞑ると

「本当にガキなんだな! 戦う必要は無いだろうが、食べ物に毒を盛れば良い..寝ている間に油を掛けて火をつければ良い? 睡眠薬を飲まして寝ている間にナイフを胸に突き立てる..それだけで充分だろう? それとも正々堂々決闘して勝たなくちゃいけない理由はあるのか?」

あの日のトムの言葉を思い出す。

俺は三人の様に生きる事に真剣じゃ無かった。

真剣じゃないから黒田すら怖がった。

仲間の為に命も張れないから、仲間が出来なかった。

勝つために手段なんて選ぶ必要は無い..それを3人が教えてくれた。

トム.オルト.ミーシャにはもうあえない。

だが、俺はどぶネズミを忘れない。

「どぶネズミ」と「盗賊ギルド」こそが俺に真剣に生きる事の大切さを教えてくれたのだから

FIN

エピローグ

聖女レイラは1か月後自殺をした。

恥を忍んで田舎の教会に行った結果、「梅毒」に「淋病」などおびただしい性病が解った。

「もう治療の方法はありません、しかし聖女ともあろうものが随分ふしだらな事をした物ですね」

それがその教会の神父の言葉だった。

その目にはもう、聖女だった彼女への尊敬の念は感じられなかった。

ただ汚い様な者を見る侮蔑の目だった。

男からは、淫乱な女を見るような目で見られ、女からは侮蔑の目を向けられる。

その生活に彼女は耐えられなかった。

王は、聖女が抜けた穴を埋めるために、特級治療師を複数集めなければならない事になった。

特級治療師の一人は自国に居た為簡単に呼べたが、他の者は各国に散らばっていた。

情報を集める為に盗賊ギルドを頼ったが..

「聖女レイラが王自らが贖罪の意味で下賜した物を盗もうとした事に対する責任をとるまでは動かない」

と言われる事になる、教会からは

「貴重な聖女のスキルが盗賊ギルドによって失われた、その事について王はどうお考えか?」

と言われ、板挟みになる。

その対応に追われるなか、勇者が傷物にされた。

結果、「勇者召喚国、魔王討伐国」の立場を追われる事になる。

結局、魔族達に対抗するすべはなく3年後魔族の進行により国が滅んだ。

勇者タケルは治療により命は取り留め助かった物の喉が壊されていた。

そしてそれだけは幾ら治療しても治らなかった。

喉を潰されたタケルは、詠唱が出来ない為、大きな勇者特有の呪文が使えなかった。

一般の魔法騎士レベルで聖魔法騎士にすら届かないその実力では魔族とは到底戦えると思えなかった。

その結果、「勇者を破棄」ただの騎士として王都の警備を任せられた。

国が亡ぶまでの3年もの間に彼は一度も交戦する事無く雑務に追われた。

国が亡ぶ時に国外に逃げ出そうとしたがあっけなく魔族に捕まり殺された。

その際にはだれも、彼が勇者だったとは気が付かなかった。

日本に帰ってきたタケルは、家族が最愛の妹も含み自殺した事により親戚の家で引きとられる。

そして籠り状態になった。

ある日、親族がタケルの部屋を除くと、首をつって死んでいた。

魔族の進行が進むと「盗賊ギルドのメンバー」はさっさと他国に逃げ出した。

そこで裏で魔族とつながり、強くたくましく生きた。

そして、俺は、仲間の事を思い出しながら、

「本当の意味で強く生きよう」と思った。

生きる事は戦いだ、手を汚す事や仲間を守る事..生き方に覚悟を持てば何も怖くない。

空を見ながら懐かしい仲間を思い出しながら、薄汚く強く生きて行こうそう思った。

あとがき
この作品を書いたきっかけは、マフィア映画とアニメです。

異世界物の小説やアニメで最初によくやられてしまう、雑魚。

だけど、本当は命の価値が低い世界で生きている、たくましい人間だと思います。

「人を刺す覚悟」「女を攫おうとしている人間」 主人公たちはチートだから簡単に倒しますが、普通の人間なら脅威の筈です。

現実社会でもし、「ナイフを出して平気で刺し殺すような人間」がいたら充分怖い筈です。

お城でも、冒険者でも無く、そんな場所で生きる、主人公。

そこに、マフィアの話を少し織り交ぜてスパイスを利かしてみました。

全員に受け入れられる作品では無いと思いますが、他の方が余り書かない隙間のような作品をこれからも書いていこうと思います。

応援してくれた方本当に有難うございました。