悪徳聖女をしています!  ~愛する人や自分の命幾らで買いますか?何処まで犠牲が払えますか?~

愛しているなら差し出せる筈ですわ
私の名前はロザリア、聖女をしているわ。

昔は「慈愛の聖女」なんて呼ばれていたが、今は違うわ。

「強欲のロザリア」なんて呼ばれているわ…もっと酷いのになると「悪魔聖女」だって。

今日も私の治療院には患者がきている。

但し、私は患者を選ぶのよ! 

王族だろうが、スラムの人間だろうが差別は無いわ…私のいう事を聞くかどうか..それだけよ!

「お願いです、聖女様..夫を夫を助けて下さい」

「代金はあるのかしら?」

「ありません..ですが必ず払います」

「お金が無くても良いわ! そうね、貴方、性奴隷ととして自分を売りなさい..そうね、期限付きで良いわ、10年、10年性奴隷として売り飛ばしてそのお金をくれるなら良いわよ!」

「そんな、あんまりです..そんな私出来ません..」

「出来ない? あーそうですか? ならそうね..貴方の目綺麗ね..たしか、そうね、片目と腎臓1つ、それなら手を打つわ」

「そんな..体を傷つけるなんて嫌です..」

「そう..なら、貴方の夫は助けないわ、そのまま夫が死ぬのを黙って見ているのね..はいさようなら」

「そんな、そんな..」

「この女、摘まみだして」

「聖女の癖に..何で助けてくれないの?..可笑しいわ..可笑しいわよ代償をとる聖女何て..」

「教えてあげる! 貴方達が助けてくれなかったからよ..それに貴方は夫を愛していない..さっき言った代償、私なら直ぐに支払った..それで愛するあの人が助かるなら、安い物だった…その対価を払うと約束してもね..チャンスは上げた..だが断った..あんたは夫を愛していなかった」

「詭弁です」

「詭弁じゃないわ..命がたかが、性奴隷、臓器、それで買えるのよ? エリクラ―って薬は城より高いわ..それと同等品の私の力..大バーゲンだわ…それすら買わないなら、愛なんてない..とっとと帰りなさい」

「鬼、呪ってやるわ」

「私、聖女ですから…はい、さようなら」

(犠牲を払えない愛など価値は無い..彼女もあいつ等と同じ..死体の横で泣き喚いていれば良いわ)

【後書き】

聖女に何が起こったのか?
彼女に何が起こったか

私は元は貧乏貴族の令嬢だった。

魔王が復活して、世界が絶望に陥った時…成人の儀で勇者他、聖人が選ばれた。

「賢者」「剣聖」「聖女」その中の聖女に私は選ばれた。

冷静沈着な勇者 セイル

陽気な剣聖 カルダ

頭脳明晰な賢者 リタ

4人で力を併せながら、旅を続けて人々を助けた。

どうにか魔王を倒した物の、その時には剣聖は片腕を無くし、賢者は死んだ。

実際は、魔王を倒してハッピーエンドじゃなかった。

寧ろ、そこからが本当の戦いだった。

王を倒された魔族は、「魔王の敵討ち」を名目に、より一層結束した。

魔族との戦いは熾烈になっていく。

賢者を失い、剣聖が片腕になった、パーティ..それでも一番熾烈な戦場に放り込まれた。

戦争が終わり、魔族との間に停戦条約が結ばれた時には、剣聖は戦場で死に、勇者も私も、その当時の私では治せない位の怪我を負っていた。

勇者も私も魔族領で戦い続けた為..臓器が壊れ掛かっていた。

簡単に言うと、人間とは違う魔族の食べ物を食べ続けた為に臓器に異常をきたしていた。

帰ってきた私は直ぐに教会に「エリクラー(完全治療薬)」を貰いに行った。

聖女の地位は教会では絶対だった筈が..

「何時迄、聖女様のおつもりで居られるのですか? もう戦いは終わったのです..国宝級のエリクラーを貰える訳無いでしょう?」

「私や、勇者は貴方達に頼まれて戦いました、特に私は教会からの依頼の元、戦ったはずです、それがこの仕打ちですか? 見捨てるのですか?」

「はっきり、言うと「死んで欲しいのです」魔族と停戦を結んだ今、魔族から一番嫌われているのは貴方達です」

「その命令を下したのは、教皇様や王では無いですか!」

「そんな覚えはありません」

「そうですか..解りました」

動けない勇者の代わりに、王城に行ったが、門前払いだった。

「王は、勇者に魔王を倒した暁には、爵位や金品の支払いを約束したはずです」

「門番の私に言われても困る..その様な話は上の話し、私の仕事は此処を通さぬことだ」

「だったら此処を通しなさい、私は聖女です」

「その地位はもう使えないと聞いています、登城特権もなくなっています」

「そうですか? 恥知らず、私達が死んで女神に会う時には、貴方達が地獄に落ちるように進言します」

「なっ..そんな」

「それしか、私には使える力がありませんからね」

「解りました、話だけは伝えさせて頂きます..それでお許し下さい」

その後、手紙が届いた..

内容は、「何処にそのような証文があるのだ、約束などした覚えは無い」だった。

教会も王家も全部が私達を見捨てた。

自分達が助けた村の人も助けてはくれなかった。

薬が手に入らなくても、「腎臓」さえ手に入れば延命が出来た。

だから、誰かくれないか..そう考えた。

魔族から救い..涙ぐんでお礼を言っていた彼らなら..そう思ったが..無理だった。

「お気の毒だと思いますが..態々親から貰った体を傷などつけたくありません」

「ですが、私達が戦わなかったら、この村は滅んでいた筈です」

「それがどうかしましたか? 人を救うのは勇者や聖女様の仕事では?」

「そうですか..失礼します」

「あの病人がいるのですが..」

「教会に行けば良いのですよ」

「そのお金がありません」

「ならば死ねば良いのです..死んだ後地獄に落ちるように女神様にお祈りしますから..では」

「待て、それでもお前は聖女か?」

「暴力ですか? 私に勝てるつもりですか?」

「いえ..ですが..」

「貴方は結構強そうですね..身内が死に掛けているのですか?」

「妻と子供が死に掛けている..助けて欲しい」

「そうですね、貴方の死と引き換えなら、助けますよ」

「そんな、何で…俺が..」

「助けるために、貴方の臓器が必要なのです..残りの臓器が貰えるなら手を打ちます」

「聖女様は昔し、簡単に治していた筈です」

「此処に来た事で解りませんか?..教会も王家も私には薬すらくれません..貴方達以上に貧乏ですから..入れ替える臓器が無いと治せないんです」

「そんな..俺が死ねば助けてくれるのか..」

「約束します..すいませんね..方法がそれしか無くて..すぐに死ぬ訳で無いので..決意が固まったら、王都迄来てください..では」

「そそっそんな…それしか本当に無いのか?」

「はい、他の方も治療がして欲しいなら、若い人間一人で、2人の命を助けてあげます..では」

本気でやれば私の魔法だけで助けられる。

だが、私は甘かった。

私達が「命がけで無償で戦っても、誰も助けてくれない」ならこれからはしっかりと報酬を頂きます。

これは正直賭け..誰か1人でも来てくれればめっけものだ。

王都に帰ってきた。

これで臓器が手に入っても、まだ薬が足らない..買うお金もない。

だから、恥を忍んでローゼット伯爵の屋敷に訪れた。

この伯爵は、私を妾にしようとしていた。

だから、体を差し出せば助けて貰えるかも知れない..そういう算段があった。

「ここに来るとは落ちぶれた物だ聖女殿」

「すみません….おすがりするしか私には方法がありません」

「それは、私を受け入れる…そういう事で良いのだな」

「….はい」

「それでは、服を自分で脱ぎなさい」

従うしかない..それで薬を買うお金が貰えるなら。

裸になった、私に対して伯爵は何もしなかった..だけど..屋敷中の使用人を呼んだ。

「何をなさるのです」

まさか、全員に犯されるのか..違った。

「ははははっこれが聖女の成れの果てだ、幾ら気どって見せても娼婦と変わらぬわ..聖女の裸などそうは見れぬわ..最も病気持ちだから移るやも知れぬ..抱こうなどとは思うなよ..」

はははははははっははははは、あははははははははははははははっははははは、あははははははははははははははっははははは、あははははははははははははははっははははは、あははははははははははははははっははははは、あははははははははははははははっははははは、あははははははははははははははっははははは、あははははははは

嘲笑の笑いが聞こえて来た。

どの位笑いものになったのかわからない。

「勇者の中古品で薄汚い体とはいえ、楽しませてもらった駄賃だ」

床に金貨が放り投げられた。

私が拾うとすると..

「お礼は言わぬのか?」

「有難うございました…」

「元聖女様が這いつくばって拾っているぞ..犬の様だ..」

私は無視して金貨を拾って帰った。

娼婦以下なんだな..私..抱く価値もない..そういう事だ…

仕方ないよ..確かに若く無いし..病気で痩せこけているし..骸骨みたいだわ..あははは

私達は馬鹿だったんだ..

もし、勇者や私に知識があって「証文」を書かせていたら..違ったかも知れない。

更に言うなら、魔王さえ倒さなければ、勇者も私も価値があるからこんな惨めな思いをしなかっただろう..

家に帰ってきた。

「セイル只今..今日はお金が入ったから美味しい物でも食べようか?」

セイルに心配させたくない..だから笑顔で家に入った。

もう人生に疲れた..病気が治ったら..どこかでひっそり暮らそう..隣の国にでも行ってセイルと一緒に冒険者になるのも良いし、治療院をしても良い。

ちゃんとお金を貰える仕事をして生活しよう。

「セイル..?」

何で返事が無いの?

「セイル、セイル、セイル…」

セイルが死んじゃったよ..あはははっ..死んじゃった..

ねぇ..セイル..貴方はこんなゴミみたいな世界を救う為に戦ったの?

カルダ、リタ..あんた達も死ぬ必要なんて無かったよ? だって私達使い捨ての道具なんだもの..

村からは三人の若い男性と..女が三人に子供が三人来た。

勇者は死んでしまったから..本当は肝臓は一つでも良い..だから2人の男性は傷さえつけないで返しても良い

そもそも、必要な肝臓は1つで良くなった..そう考えたら犠牲は1人..しかも一つだから、その男性も生きる事は出来る。

だが、そんな事はしない..

「よく来られましたわね..覚悟はきまりましたか?」

「本当に妻や子供を助けてくれるんだな」

「約束しますよ? 私は貴方達みたいな恥知らずじゃありませんからね..」

「そうか、ならお願いする」

「解りました..最初にこの証文を3人には書いて貰います..残りの6人にはこの証文を」

「これは?」

「死ぬ事への同意書です..そちらの6人にはかぞくが殺される事に対して文句を言わないそういう同意書です」

「こんな物、書いた事がないです..」

「貴方達は恥知らずでしょう? 命を救った勇者や私を助けもしない..貴方達と口約束して文句を言われたら困りますからね..嫌なら良いんです、貴方達が死んでも私は困りませんから帰りなさい」

「「「書きます、書けば良いんでしょう?」」」

「「「「「「解りました….」」」」」」

6人の家族には眠り草で眠って貰った。

3人も同じ様に眠らせて..体をバラバラにしていった。

そして、そのパーツからまずは、自分用に腎臓を貰った。

そのまま自分に「部分パラライズ」の魔法を掛けて麻酔代わりにした。

自分の体を切り裂き、買ってきた薬で満たした..これで腎臓を取り出しても大丈夫だし、もし新しい腎臓が傷ついても修復される。

そのまま、腎臓を取り出して、新しい腎臓を入れる。

これでリカバリーの呪文を唱えれば…はい終わり..簡単だ。

ちなみに、エリクラ―なら飲むだけで..治る。

無いからこそ「薬」「臓器」「魔法」が必要だった。

「薬」も「臓器」も手に入ったからこそ完璧に治せた。

生きていた二人もバラバラにして臓器を取り出した。

(セイル、苦しかったよね..そうだセイルにも腎臓を上げなくちゃ)

私はセイルにも同じ様に手術した。

そして、その遺体を、異次元収納に入れた。

この異次元収納というスキルは本来はリタの物だった。

リタが死ぬ時にスキルをくれた。

(今、思えばこの中に収納されていた宝を王に差し出さなければ良かった..私は本当に馬鹿だった)

この中では時が止まる。

今は出来ない、だけど大昔には「死者蘇生」というスキルもあったと聞いたわ。

そのスキルを身に着けるか、もしもう一度女神から神託があったら聞いてみるのも良いと思う..

絶望している場合ではないわね…

バラバラにした臓器で使えそうな物はそのまま収納した。

残ったのは、脳みそだけ、骨だって使い道はあるから返さないよ..

さてと約束は約束..まずは6人の体を抵当に傷つける。

そして、傷を縫合して..リカバリー(小)を掛ける。

これで手術したように見える筈だ。

最後に「ヒーリング」を掛けたらはい終わり。

種明かしをすれば、「ヒーリング」だけで治せる。

もし、あの村の住民が「肝臓」を無料でわけてくれたら、私は全員にヒーリングを無料で掛けてあげた。

だが、勇者や私を見捨てた..だから、これは報いだ。

実際に教会に行っても、お金が足りなくて治療できなくてどうせ、死ぬんだから6人は。

そう考えたら、私にお願いしたから「自分達の命で家族が救えたのだから得したわね」

充分、「正当な報酬だわ」

6人の家族を起こした。

「あの、サムの遺体は..」

「ぜルは何処に..」

「主人は」

「お父さんは..」

私は黙って袋を渡した。

「これはいったい..?」

「脳みそが入ってるわ..」

「あの、他の部分はどうしたのですか?..」

「貴方達に使った..そして残りは貰ったわ」

「返して下さい..あの人の体を返して」

「あのさぁ..聖女だから人を助けるのが私の仕事だ..そう、村長が言っていたわ..他の人を救うのに必要だから返せません」

「そんな、酷い..返して」

「だったら、金貨1人辺り3枚頂戴..それで返すわ」

「そんな横暴です」

「何処がよ! 教会に行ったら幾らかかるのかしら? まぁ自己犠牲はしないで良いけど..恐らく金貨10枚位ね..しかも生きている人のパーツを使って治すなんてしないから、絶対にそこから安くならないわ」

本当は金貨1枚位の仕事…まぁ1年位娼館で勤めたらどうにかなるわ..だけど、どうせ教会に依頼なんて出来ないでしょう..貧乏村だからいけないわよね。

「それは..」

「出来ないでしょう? 金貨10枚はおろか3枚も払えない物ね、貴方達には、違う?」

「確かに払えません」

「私は薬が買えないから、完全に臓器が治せない..だからその分を生きている人から貰って補った、それしか方法が無かった。」

「なら、残った臓器をせめて骨だけでも返して」

「嫌よ..それじゃ治しただけで、私の報酬は無いじゃない?」

「聖女なら無料で、助けてくれても良いんじゃないですか…」

「前は無料で助けてあげたじゃない..貴重な薬をつかって、倒れる位に魔法を使って..セイル達と一緒に死に物狂いで救ったわよね!」

「「「「「「…….」」」」」」

「それなのに、誰も助けてくれなかったじゃない?….だけどね、私は助けてあげた、たしかに臓器は貰ったけど、貴方達に移植した後の死体を貰っただけ、どっちが優しいの? 少なくともお金が無ければ絶対に助けない教会や、私や勇者が死に掛けても、何もしてくれなかった貴方達、税金だけ貰って助けない役人より優しいと思わない?」

「「「「「「解ったわ…もう良いです」」」」」」

「訴えても無駄よ、ちゃんと証文があるからね….お礼は言わないの?」

「お礼なんか誰が言いますか…」

「そう、なら良いわ..疫病が流行ろうが、病人が出ても、もう助けないわ、それでどうするの?」

「あり…がとうございました」

「他の方は言わないのね..もう行くの辞めるわ」

「「「「「ありがとう..ございました」」」」」

「そう、とっと帰って..もう治療は終わったんだから」

悲しそうに脳みその入った袋を持って6人は帰っていった。

ねぇセイル、カルダ、リタ、私達は馬鹿だった。

だから、貴重な力を無料で使わされて..惨めになったのよ..

このつけは、何倍にもして返してあげる。

私は聖女..回復魔法なら私より旨く使える者は存在しないわ..

今迄は魔王討伐の為に..覚えなかった魔法も沢山ある。

全部極めてやるわ..

そして、私が必要になった時には..何百倍にして返してやる…覚えているがよい。

ロザリア治療院のスタート
これで、命は助かった。

だけど、お金もすぐに底をつくだろう。

実は売れば、物凄くお金になる物があるが今迄売らなかった物がある。

これは叩き売る事にした。

幾らの値が付くか見ものなのだが、売る相手がくるのはもう暫く先だろ。

それはそうと目先のお金が無い..

物が殆ど入っていない異次元収納を探して見たら4枚の紙が出てきた。

そのうちの1枚は「聖女支援の約束証明」だった。

一通り見直した。

碌なもんじゃないわね..全部国や王族、貴族の都合の良い物が書かているわ。

しかも、小さな文字で、「魔王討伐後は無効」と書いてある。

殆ど詐欺だわ。

だけど、無効にならない文章が二つだけあった。

「治療院を自由に作って良い」という権利と、「貴族や王族の治療に必要な物は自由に手に入れられ、そのお金は王家が負担する」

本当にゴミだわ.. 私達を使い潰す為の書類だ..だけど王と法皇のサインも入っている。

だけど、使えない事も無い..

私は、冒険者ギルドに来た。

ここで治療院をすれば「絶対にお金になる」だけど、それは普通は許されない。

普通はだ..

「ギルドマスターはいますか?」

「ロザリア様..ロザリア何の御用でしょうか?」

「横の空き地を借りて、治療院をしたいのだけど?」

「何を寝ぼけた事を言っているんですか? そこはいかなる治療師も治療院に出来ない、解り切っている事ですわ」

「聖女は別よ」

「はぁ..元聖女様..あなたの特権の多くはもう破棄されています」

「はい、これ読んで」

私は、書類を見せた。

「確かに、殆どの権利は無いわ..だけど、二つだけ残っているのよ..良いわ、王命と法皇のサインを無視できるほど偉いのね..王城に訴え出てくるわ」

「うっ..すみませんでした」

「もう遅いわ、決めたわ..流石に王命に背いたら、ただの市民の貴方は只じゃ済まないんじゃないのかしら?」

「ごめんなさい..本当に」

「だから、遅いの..貴方の対応は既に記録石にとったから..」

「何を揉めているんだ」

「ギルドマスター..助けて下さい、ロザリアが無理を言うんです」

「何だ..」

私は事情を話した。

「聖女支援か..確かに使えなくなると俺も聞いたが、たしかにこの2つは生きているな..しかたねぇ貸してやる一か月金貨3枚だ、それ以下にはしねぇ」

「解ったわ..後払いでお願いするわ」

「出来ねぇな」

随分吹っ掛けるし、酷い対応ね..なら良いわ。

「それなら、仕方ないわ..この子で払うわ!」

「はっミランダで? 何お前は言っているんだ?」

「罪状は王命及び法皇命、及び、聖女侮辱罪..皆んなから、元聖女とか言われてたから私も忘れていたけど..書類がある以上は私は「聖女」最も、殆ど権利は無いけどね…その子は、マスターも呼ばずに..王命と法皇命を無視した..殺しても許される筈よ? 違う」

「聖女..貴様ぬけぬけと..」

「マスターならご存知でしょう? 勇者や私がどんな思いをしたのか!冒険者が依頼を果たして報奨が払われなかったらどう思いますか? ましてパーティメンバーが全滅してまで果たしたクエストだったら..その子が踏みにじったのは、そんな中私の手に残った僅かな権利..それを踏みにじったのよ..私が悪いのかしら?」

「仕方ない..ミランダのミスに対して1年、横の空き地と小屋を貸してやる..無料で良い、それで良いか?」

あくまでもミスに対してのけじめ..買わないという選択をした、善人なのでしょうね。

「それで手を打つわ..ちゃんと証文も交わして貰うわ、その後は金貨3枚で月借りれるという事もね..」

「解った..その代り、この子との事は水に流してくれ」

「良いわ」

ロザリア治療院のスタートよ。

処分と56の瞳

治療院の金額は、どこの治療院や教会でも治せるものは破格値にした。

これは、教会や治療院への嫌がらせ。

冒険者は怪我をしてもギルド迄戻る人間は多い。

ここで安く商売をしていれば他に行くことは無いから貧窮していくはずだ。

しかし、この治療院にはこの上がある。

他の治療院で治せないものも私なら治せる。

これは…時価だ。

相手をみてふっかける。

嫌いな奴なら金貨1000枚でも吹っ掛けてやれば良い。

そんなわけで今は儲からない治療をしている。

「はい、終わったわ..銅貨3枚で良いわ」

銅貨3枚は、この子たちの1日の収入だ。

ちなみに、教会に行けば最低銀貨2枚位とられるから破格値だ。

「聖女様、本当に良いの?」

「ええっ良いのよ..気が咎めるなら、串焼きの2本も今度くれれば良いわ」

この子たちの本音は解らない…だけど、昔は勇者や私をキラキラした目で見ていた…だから良心的に接する事にした。

「結構深い怪我ね..この位なら銅貨5枚で良いわ」

「ありがとうございます」

こんな感じに、あくまで良心的にしている。

まだ「時価」のお客様は来ていない。

最初の「時価」のお客様はもう決めている。

そして、そろそろ来るはずだ。

「ローゼット伯爵家の者ですが、ロザリア様はいらっしゃいますでしょうか?」

「なんかようかしら?聖女のなれの果てに用はない筈だわ」

「ご主人様が来るように言っております」

私はさっと書類を見せた。

「それは..」

「そうなのよ、実質的な権利は無くなってしまったけど、聖女の地位はあるのよ..たかが伯爵が呼びつけて良い存在ではありません..なれの果てですけどね」

「そんな、お連れしないと私は、咎められてしまいます」

「貴方は、あの時私を笑った方ね..良いきみですわ…そのまま処刑されなさい…伯爵には使者が気に食わないから行かない..そう連絡するわ」

「やめて下さい..私には家族が居るんです、やめてください..」

「仕方ない、そうだわ、ここから伯爵の屋敷につくまで「私は馬鹿です」そういい続けなさい…裸でね!それなら行って差し上げます..如何?」

「そんな事は、出来ません」

「これは慈悲ですよ…貴方は男だわ..私は女..女の私にあそこ迄笑いものにしたのですよ?..これが最後の譲歩です」

「解りました」

「私は馬鹿です」「私は馬鹿です」「私は馬鹿です」「私は馬鹿です」「私は馬鹿です」

「全く、ローゼット伯爵には困ったもんですわ、こんな馬鹿な使いを寄こすなんて」

「そんな、私は、」

「他の言葉を発して良いって誰も言っていませんわ」

「私は馬鹿です」「私は馬鹿です」「私は馬鹿です」「私は馬鹿です」「私は馬鹿です」

(本当に馬鹿ね、自分の家の看板に泥を塗るような使用人、あの伯爵が許す筈ないのに..良くて首だわ)

着いたわ。

「あの当家の使いの者は…」

「馬鹿な使用人を寄こさないで頂戴、恥ずかしいったらありゃしない..貴方が責任者ならもう少し考えなさい」

「よくぞ来てくれたロザリア、娘を見てやってくれ」

「伯爵、これを見なさい」

「これがどうかしたのか?…」

「解りましたかしら..権力は無くても..地位だけは「聖女」なのです」

「申し訳ございません、聖女様」

「良いですよ、あのお金で助かったのは事実です..許しましょう。話は街のうわさで知っています、娘さんを見させて頂きます」

「ありがとうございます、慈悲に感謝します」

「伯爵様、最初に言って置きますが、許したのは貴方だけです..使用人の方は、全員目を潰しておいてくださいね」

「聖女様..それは、余りにも残酷すぎませんか…」

「理由はあります、私は何の力もない聖女です、ですが、立場は教皇様や王様と同じ貴人なのですよ..貴人を辱めた平民はどうなるのでしょうか? これが王女だったら貴方は進んで目位潰すのではないですか?」

「解りました、その場に居た、使用人28人の目をくりぬき後でお届けさせて頂きます」

「はい、それで水に流しましょう」

可哀そうだけど貴族にとって平民は道具..聖女の私の裸を見たのですから当たり前の事なのに..今思えばよく笑えましたわね。

「大丈夫ですか?」

「体がだるくて…顔も…」

知っているわ…毒蛾の鱗粉のアレルギーね…

「聖女様、教会の方に来て頂いて、見て貰っても一向に良くならないんだ、どうにかならぬか」

「これは魔熱ですね..放っておくと顔が崩れるわ」

「魔熱? まずいものなのか」

本当は毒蛾の鱗粉にあたっただけね..毒だから病気の薬や呪文じゃ治らない..紛らわしいのよ

「大丈夫、この辺りでは珍しいですが教会の特殊な薬ならすぐに治ります…良かった間に合って今なら完璧に治りますよ」

「それなら、頼む治してやってくれ」

「それじゃ、この書類にサインをお願いします」

「解った、確認させてくれ」

(この間の事を恨んで、八つ当たりでもされたらかなわないからな)

娘が病気になり治療に薬が必要。

聖女が薬を取りに行くから、渡してほしい。

その代金はローゼット家が支払う。

「問題でも?」

「ない、済まなかった」

「では教会に行って、夕方にもう一度こちらに来ます」

「聖女様…この間は済まなかった..この件が片付いたら謝罪しよう」

「もう、水に流します..それより目の方を」

「解った、直ぐにやる」

「それで終わりで良いですよ」

もう既に遅いでのです。

謝罪する位ならやらなければ良かったんです、それだけです。

教会に来た。

教皇様は巡礼に出掛けていて、更にここの司祭も連れて出ている。

何が言いたいのかと言うと「責任者が不在」という事、そして私は地位だけはある。

「何か御用でしょうか? ロザリアさん」

いきなり私は殴りつけた..聖女だから弱いと思われがちだが、馬鹿だと思わない?

たった4人で魔王軍と戦うのよ?

騎士なんかより何十倍も強いわよ

「何をしているんですか、聖騎士を呼びますよ」

「呼びなさい」

本当に呼んだわね..馬鹿みたい。

「ロザリア殿、確かに貴方は不遇だと思うが束縛させて頂く」

私は、「聖女支援の約束証明」を見せた。

「確かに、色々な特権は失ったけど..私は聖女ではあるの? お解かり? つまり、教皇様とほぼ同じ地位ではあるの..解るかな? 」

「これは..確かに地位は「聖女様」のままですね」

「そんな私に二度も無礼を働いた..どっちが悪いのかしら? 聖騎士ならお解かりじゃないかしら?」

「聖女への侮辱..拘束させて頂く」

「そんなのを放っておいて良いわ..今回は見逃してあげる..今度からは言葉づかいに気をつけなさい」

「すみません..」

「私は寛大だから許してあげる」

「ありがとうございます」

「もう面倒くさいから、貴方達が、薬品庫に案内しなさい」

「はっ」

「畏まりました」

ここが薬品庫、まぁ場所は知っているけど..今の私には鍵が無いから案内して貰うしかない。

(あったわ..あった..エリクラー..11本..この世界に現存するエリクラーは12本しかない、残り1本は王城にある、そして再現は出来ない、つまりこれが無くなれば、1回しか奇跡は起こらない)

私は、エリクラー11本を持ち出した。

書類は充分だ。

「貴族や王族の治療に必要な物は自由に手に入れられ、そのお金は王家が負担する」 自分達の治療を私にさせようとする為に残した特権があだになったわね。

これにローゼット家の手紙が加われば..「貴族の治療に持ち出した」私は言い逃れできる。

「これで良いわよね? 王と教皇のサイン入りの書類にローゼット家の手紙..問題は無いわね」

「問題はありません」

私は、まんまとエリクラーを持ち出した。

最も、文句を言っても 地位だけは聖女だから、強硬に持ち出すのも可能だけどね…

一旦家に帰ると10本のエリクラーを瓶から他の瓶に詰め替えて異次元収納に移した。

これで私はエリクラーを10本も手に入れた。

そして1本の瓶のエリクラーを11本の瓶にわけて水で薄めた。

「ローゼット伯爵、今戻りました」

「待ちかねました、聖女様、さぁ娘の治療の方をお願いします」

「ええっ..少しだけ辛いと思いますが、この瓶1本を飲み干して下さい..あとローゼット伯も1本飲み干して下さい」

「これをですか?」

「はい」

「私も飲むのか?」

「この病は移る可能性があります、予防の為に必要なのです」

「解りました..うんぐっ..凄い、もう楽になりました」

薄まっていてもエリクラーだからね..

「私は凄く体が楽になった気がする」

「他には大切な家族はおりますか? 薬は9本あります..予防の意味を込めて大切な方に飲ませておいた方が良いと思います」

「それなら、ここに集めよう」

結局、集められたのは家族と愛人だ..その人間が16人いた。

使用人は誰もいない。

「ちょっと人数が多いですが、あくまで予防なので分け合って飲めば大丈夫ですよ」

9本の水で薄めたエリクラーを16人で飲んだ。

「魔熱は恐ろしい病気」それは教会関係者の上層部なら皆んな知っている。

感染すると熱があがり、症状が進むと体が溶けてくる。

掛かったらまず助からない..治すのにはエリクラーが必要、それは教会で薬学を学んだものでは常識だ。

凄い勢いで感染が広がるから、広がる前に治療するのは当たり前。

だから、治療した。

書類は完璧..王都を救ったのだ..誰が聞いても問題はない。

「流石は聖女」そう言われる筈だわ

そして、あの症状なら、「魔熱」だと思うはず..その前の治療師も、疑っていたはずだわ。

だから、完璧。

だけど、知っている? ある種の、毒蛾の鱗粉が体内に入ると、そっくりな症状がでるのよ?

この事は知られていないわ..

せっせと毛虫を蒔いたかいがあったわね..呑気に薔薇なんか愛でているからこうなるのよ?

ローゼットが払うか、王家が払うか知らないけど..1本で王城並みに高いなんて薬の代金どうするのかな?

まぁ、絶対に王家は怒り狂うわね..

「聖女様、お土産でございます」

「これは?」

「金貨20枚と眼球56個でございます」

「そう、ありがとう…随分張り込んだわね?伯爵は」

「安心されたのか眠られました..ここしばらくお嬢様に付きっ切りでしたので」

「そう、お大事にと伝えて置いて…貴方は目を潰されなかったのね」

「私は見ておりませんから..恩人の苦しむ姿は見たくないので..席を外しました」

「恩人?」

「はい。昔、病に苦しむ母を治して貰ったことがございます」

「そう」

「はい、お助けできず、申し訳ございませんでした」

「助けたかいがあった」

「何を?」

「助けたかいがあった、そう言ったのよ..まぁ良いわ」

「はい、それじゃお送りさせて頂きます」

払えないお金

「エリクラ―を全部無くしたって..どういう事ですか?」

聖騎士ランドと修道女ルーは教皇様の前に居る。

何時もは優しい教皇の、目が笑ってない。

嵐が過ぎ去るまで、待つしかない。

「どういう事か説明して下さい」

出来るだけ、的確に、事情を説明した。

「そういう事ですか? 確かにその様な特権は聖女様には残してあります」

「それじゃ私達は..」

「まだ、許したわけではありません! せめて、何の病気に使ったか位聞いておきなさい」

「はい」

「あの、教皇様でも、聖女様と呼ばれるのですか?」

「お前達は何の為に、教会に居るのですか? 聖女様は女神様が直接選ばれスキルを与えた方ですよ、何か失礼な事でもしたのですか?」

聖騎士のランドは事の次第を伝えた。

「良いですか! 権力と信仰は違います..そうですね、かなり前に体が悪くなったために生前に教皇を引退して「名誉教皇」になった方が居ました」

「ヨハネス様の事ですよね」

「そうです..教皇を引退したからといって..雑に扱いますか? もう何の権力もありませんが、来れば尊敬の念を伝えませんか?」

「私は尊敬しています」

「そうです、なら聖女はどうなのですか? 勇者と共に世界を救った方です..権力は王族や貴族に奪われて実権はありませんが、尊敬の念を忘れてはいけません」

「ですが、聖女様や勇者様にエリクラーを渡さなかったと聞きましたが」

「流石に2本は差し上げられませんでしたが、私が居たら1本は差し上げましたよ…世界最大の功労者なのです」

「では..差し上げなかった司祭は間違っているのでしょうか?」

「それが微妙なのです..エリクラーは死んでいなければ、どんな物でも治します..奇跡の薬、そう渡せるもので無いのも事実です..最も彼の口の利き方は褒められたものではありませんが」

「そうですか?」

「そうですか?ではありません、話はそれましたが..世界を救うような功績でも1本与えられないエリクラーを、教会の持ち分全部? これは何に使われたのか..直接、ローゼット伯に聞くしかありません」

教皇自ら、ローゼット伯の元を訪れた。

「教皇様、お呼びいただければはせ参じました物を」

「聖女様がこちらで治療をされたと聞きましたが、何の治療をなさったのですか?」

「聖女様は 魔熱といってらっしゃいました」

「魔熱なのですか?」

「はい、気になったので、前に来た治療師にも確認しましたら、「やはり魔熱でしたか」と言っておりました」

「他には?」

「普通は治せない魔熱を治すなんて流石は聖女様だと言っていました..本当に感謝しかありません」

魔熱ですって、なら聖女様がエリクラーを使うのは正当性があります。

ですが、11本..この理由はなんでしょうか?

「それで11本も何に使ったのでしょうか?」

「1本は娘の治療に残りの10本は感染している可能性があるといけないから予防で飲ませて頂きました」

「そうですか」

「そう言えば支払はまだでしたな..お幾らでしょうか? 来られたのであればついでにお支払いさせて頂きます」

「ローゼット伯…お気の毒ですが、爵位から領地全部差し出しても足りません..貴方が払えない分は王から頂かないといけないのですが王家でも払えないでしょう」

「馬鹿な、たかが薬11本のお金だぞ」

「その薬ですが、エリクラーです…」

「エリクラー..あの?」

「はい」

「待ってくれ、私はそんな事は知らなかったのだ」

「書類を頂いております」

娘が病気になり治療に薬が必要。

聖女が薬を取りに行くから、渡してほしい。

その代金はローゼット家が支払う。

「それは、そうだ..聖女に嵌められたんだ..聖女が悪い」

「聖女様が、魔熱の治療にエリクラーを使うのは正しいのです..魔熱は危ない病ですからエリクラーを使っても止めなくてはなりません…そして治療はエリクラー無くして治せません」

「それなら..」

「問題は支払うという書類で持ち出した事なのです..これではローゼット伯に支払いをお願いするしかありません」

「ですが….」

「申し訳ございませんが、諦めて全部差し出して頂き、足りない分は王家に支払って頂くしかありませんね..まぁ王家でも払えない可能性が高いので分割にしていくしかないでしょうが」

その日の夜、ローゼット伯は家族を殺して、屋敷に火を放って焼身自殺をした。

貴族として生きてきた自分には他の生き方は出来ない。

王家から目をつけられ、今迄迫害してきた平民になるなんてことは..到底できなかった。

名門、ローゼット家はその300年の歴史を閉じた。

王の苦悩
教皇からの連絡を受けた王、クライスラー三世は頭を悩めていた。

エリクラ―11本の代金の弁済を求められていたからだ。

責任の元になったローゼット伯は既に死んでいない。

その日のうちに自殺してしまった。

召喚状を届けに行った使いの者が見た物は燃え盛るローゼットの屋敷だった。

「儂に迷惑を掛けおって、貴族の癖に責任も取らず、王も守らぬのか」

怒声がこだましていた。

エリクラ―は1本でも王城に匹敵する価値があると言われている。

しかも、これは置いてあるのが、教会の総本山がこの国にあるからというだけであって

この国だけの物ではない..強いて言うなら「本当に困った時に使う」と決めた世界の物だ。

弁償となると..下手すればこの国を手放さなければならなくなる。

共同分割という形で他の国でこの国を分け合う..何て事になりかねない。

忌々しい..

聖女に罪を着せようにも、今回の話は「魔熱」絡みだ。

この伝染病に掛かった者は 最初微熱だが、徐々に体が溶けていき腐る。

恐ろしい病気だ、これを治すには、普通に考えてエリクラ―しかない。

しかも、感染率は高く、あっと言う間に広まっていく。

これはこの国、いや世界の危機でもあった。

だから、今度の件は..「罪ではなく、手柄」なのだ。

しかも、こっちではなく、教皇に先に話しが伝わったからねつ造も出来ない。

既に詰んだとしか思えない。

そして、これから儂は教皇の元に行かなくてはならない。

どう考えても碌な事にはならないだろう。

邪神様はクリーンでした。
私は暫く治療院を休む事にした。

冒険者ギルドのマスターは困った顔になった。

「権限が無いのは解るが、どうにか続けてくれないか? 家賃は永久に無料で良いから」

「何言っているの! 親類に不幸があったから2週間程出かけてくるだけよ…帰ってくるわよ」

「そうなのか? 店じまいするって聞いてよ..良かった」

「だけど、家賃無料、ありがとうね、マスター」

「あっ!」

「嘘とは言わないわよね?」

「言っちまったんだ、仕方ねー」

「ありがとう」

その日の夜、私はお城に忍び込んだ。

二人の女を殺す為に..

言わせて貰えば、馬鹿みたいな事させられていたから、こんな事は簡単だ。

だって、たった4人で魔王相手に喧嘩売ってたのよ?

魔王城に正面から乗り込むのよ?

聖女が弱いって誰が決めたのかな?

4人の中で一番弱いだけで、3人が居ない今「人類最強」なのは多分、私だわ。

「久しぶりねワイズ!」

「ロザリア様、何で此処にいるの? 懐かしいわ、話は..」

馬鹿ね、宮廷魔術師長ともあろうものが、たかだかスリープで眠ってしまうなんて。

利子をつけて返して貰うわ。

宮廷魔術師長は本来なら、リタが付くはずだった。

それなのに、魔王討伐に駆り出されて..リタは死んだ。

その椅子は貴方みたいな三流魔法使いが座って良い地位じゃない。

利子は貴方自身で良いわ。

殺した死体を異次元収納に放り込んだ。

「お久しぶり、メダルナ」

「聖女様がこんな時間に..えっ」

良くこれで騎士団長が勤まりますね…まぁ女騎士としては一流なのかも知れないけどさ。

カルダなら躱して今頃、私は真っ二つだわ。

利子は貴方の体で良いわ..充分カルダの代わりに騎士団長として楽しんだでしょうからね..

この国も大変ね、エリクラ―が無くなって、騎士団長に宮廷魔術師長が失踪..まぁ知ったこっちゃないわ。

私は、今コダールという街に来ている。

コダールは魔族領と人間領の境にある街で停戦後に出来た交易都市だ。

お目当ての人物は..居た。

凄いわね..流石四天王という感じだわ。

お伴迄連れて..

「お久しぶりね、悪魔神官、ジャルダ」

「女、無礼だぞ、この方は..」

「良い、見知った顔だ、それに下手に手を出せばお前なんて殺されてしまうよ…久しいな 聖女ロザリア」

「聖女..」

「此処では話も落ち着いて出来ぬ..屋敷迄来るか?」

「いくわ」

「へぇー 凄い馬車ね」

「ロザリア..これでも儂は魔族四天王だぞ..この位は当然じゃ..それよりお主は..伴も居ないのか?」

「はい、居ませんよ! 人間は魔族より酷い人ばかりですので!」

「愚痴は聞かんよ」

「それより、私の事は恨んでないの?」

「恨まない..何故なら魔族は力が全て..強い敵には敬意すら払う..のうノリス」

「はい..戦争が終わった今..恨む必要もありません」

「そう、良かったわ」

「着いたぞ、此処が今の儂の屋敷じゃ..」

「羨ましいわ..凄い家ね..」

メイド迄いて、お茶が出てきた。

魔族の方が良いわね..

「それで、なんの用じゃ? 儂はそれなりに忙しいのじゃが..」

「あの譲って貰えないかな?」

「何をじゃ?」

「勇者 セイル 剣聖 カルダ 賢者 リタの魂」

此奴と戦った時に、此奴は過去の英霊を呼び出してきた。

その中には昔の勇者も含まれていた。

そう考えると、死後の魂は、嫌な話だが..女神でなく此奴が信仰する邪神が扱っているそんな気がする。

死んでしまえば..善人だろうが、悪人だろうが、邪神の世界に行く..そんな気がしてならない。

「難しい顔をしておるな..聖女、多分お前の思っている事は正しい」

やっぱり。

「ただ、それは伝えてはならない事だ..ヒントだけはやろう、虫も殺さぬ人間はおらぬ…そういう事じゃ」

たしかに人は他の命を奪っている..まぁ良いわ..解らない。

「考えても無駄ね、だけど、勇者といえど魂は、貴方達側にある、それは正しいのよね?」

「そうじゃ..正解」

「だったら譲ってくれない? 」

「それ程の魂じゃ、代償は余程の物じゃ無いと難しい..邪神様へのお供えだから相当な物が必要じゃ..」

「魔王の指輪..」

(やべーっやべー..たかが人間の魂の為に、魔族の秘宝、魔王の指輪がでちゃったよ..これで次の魔王は儂じゃな..300年後儂、魔王になれちゃうぞ)

「足りないか..これでどう? 聖剣エクロセイバー、しかも今なら聖女の封印付き」

(やっべー、やっべー..魔族の勝利確定..これが無いなら儂死なないよ..)

「充分じゃよ…これで引き受けぬ魔族はおらんよ..でも良いのか? 300年後儂が魔王になったら、再び戦争になる..そしてその時は…」

「人類は負ける、そういう事ね」

「そういう事じゃな..本当に良いのか? 命がけで守ったんじゃないのか?」

「良いのよ」

「そうか、なら儂は何も言わん」

屋敷の地下には神殿があった。

流石は悪魔神官だ。

「やっぱり魔族の方が恵まれているわね」

「そうかの..それじゃ始めるが、依り代はあるか?」

「勇者は死んだ時のまま死体がある、後の2人は、別人だけど用意したわ」

「用意が良いの! それで2人の姿はどうする? 元が良いか? それとも今の姿が良いか?」

「元が良いわ..でも凄いわね..そんな事もできるのね」

「まぁな、伊達に四天王とは言われておらん..お前達が戦った相手も昔の姿をしていたじゃろう?」

「そう言えばそうね」

悪魔神官が祭壇で祈ると、邪神が降臨した。

私は、聖女なのに女神の声を数回聞いた程度だ。

そう考えると邪神の方が太っ腹だ。

しかも、女神は困った時に助けてくれなかった。

邪神がこんな風に来てくれるなら..同じ様に女神が来てくれたら..だれも死ななかったかも知れない。

邪神を信仰してやろうかしら? 

あれ、邪神が手招きしている。

近づくと頭を小突かれた..

儀式は終わり、邪神はこの世を去った。

「これで終わりじゃ、触ってみぃ..生き返っておるわ..半時もすれば起きるじゃろう..」

「ありがとう..本当にありがとう」

もう一度会えるんだ..本当に..セイル..カルダ..リタ..

「だが良かったのか? 300年後、もう人間は勝てぬのじゃぞ」

「良いわ、300年後なんてもう死んでいるもの..」

「死んでないぞ..」

「えっ?」

「死ぬわけなかろう..邪神様が加護をくれたから上級魔族と一緒..殺されない限り死なんよ」

話を聞いてみた。

魔王の指輪に聖剣まで差し出したから..上機嫌で邪神が「邪神の加護」と体も特別な物にしてくれたらしい。

その体は..死なない体だった。

しかも上級魔族の体で加護迄あるから魔族や知能がある魔物からは尊敬されるらしい。

上級魔族って「看破」を使わないと見破れない..だから、勇者パーティー以外は見破れない。

つまり…絶対にバレない

「邪神ってこんなに優しいの? あなた悪魔神官なんて名前やめて、天使にしなさい」

「いや、天使はやめるのじゃ..嫌味になるぞ」

「そうね、天使なんてゴミだわ..そうだ、もう一度邪神様呼び出して!」

「邪神様を呼び出すなんてそうやって良い物じゃない..」

「お願い..」

「まぁ良い..本当は不味いんじゃが..感謝の気持ちが伝わるから..特別じゃ..」

再び、邪神..様が現れた。

今度はしっかりと言葉で伝える事にした。

「邪神様、本当に有難うございました..どれ程感謝しても..」

「よい、魔王の指輪に、聖剣..その行いに報いただけである..」

「それでは、私の気が収まりません..これらも奉納させて頂きます」

邪神がここまで誠意を見せてくれたんだ..私も誠意をみせる事にした。

賢者の杖(賢者の武器) ソウルキャリバー(剣聖の武器) 天上の鎧(勇者の鎧)ユジンの鎧(剣聖の鎧)魔風の衣(賢者の装備)

祝福の杖(聖女の装備) 水龍の羽衣(聖女の装備)

「これが、私の持っている 聖なる物..全部でございます」

不味い、怒らせちゃったのかな..体が熱い..しかも三人も黒い靄が掛かっている..失敗したのか..

暫くして目を覚ました。

三人も横に寝ている。

「大丈夫か?」

まずは謝ろう..邪神を怒らせたんだ..神官の彼も困るだろう..

「すみませんでした..邪神様を怒らせて..調子にのって..」

「何を言っておるのじゃ..邪神様は大喜びじゃ..」

「ですが..体に攻撃され」

「あれの事か? 加護を与えられ過ぎて倒れただけじゃよ..」

「加護?」

「見るか?これは、魔鏡..魔界にも10枚と無い加護が見れる鏡じゃ」

「えっ..これは」

邪神の加護、デモノプリンセス、暗黒魔法、闇魔法、邪神の信奉者

「すごいじゃろう? 他の三人も同じような加護がある筈じゃ」

「他は解るけど、デモノプリンセスって何?」

「四天王でお前達が倒したクライスローラーって居たじゃろう? 姿は人間じゃがミスリルですら斬れない魔族の種類じゃ」

「凄すぎるわ..これ」

「これだけじゃない..これもじゃ」

「それぞれの剣と杖じゃ..体はもうミスリルすら効かぬ体じゃから..武器だけじゃが」

どう見ても、聖なる武器に匹敵しそうな魔剣や魔杖だった。

「何とクリーンな」

「どうかしたのかのう..何で泣いておるんじゃ」

戦争が終わって、一番優しかったのは..魔族と邪神でした。

取り返した仲間

「俺は死んだ筈なのに..何で生きているんだ?」

「私も、死んだ筈なのに、しかも両手がちゃんとあるわ」

「魔王に殺された筈なのに、生きている、それよりも体が凄く軽い..何でかしら」

「皆んな無事で良かった..ちゃんと生き返ったんだね..嬉しいわ」

「ロザリア..悪魔神官ジャルダ..どいて斬る」

「待って..話を聞いて、ジャルダ様は命の恩人なのよ..それに剣も持たずに何を言っているのカルダ」

「あっ..」

「話しを聞いてくれ、俺もロザリアも酷い目に遭っていたんだ..死んだ後、何があったか知りたい」

これで大丈夫だわ..二人も私と同じ、セイルが好きだからちゃんと話を聞いてくれるわ。

私は、今迄逢った事、自分がした酷い事も含んで全部、正直に話した。

「ムカつく..本当に虫唾が走る..僕ちょっと王城に極大呪文ぶっ放してくる」

「片手になって迄戦ったのに、その仕打ち王家は皆殺しにしても良いんじゃないか?」

皆んなが怒り狂っていた。

多分、誰かが止めないと「本当にやる」そして二人ならそれが出来る。

「まぁロザリアが敵を討ってくれたようなもんだし良いんじゃないか?」

「300年後か、ある意味で本当の復讐みたいな物ね」

「だけど、他の勇者が召喚されるんじゃないかな? 僕はそう思うけど?」

「それだけど、邪神様とジャルダ様に聖なる武器は全部あげちゃったから、絶対に倒せるような存在にならないんじゃないかな?」

「流石、ロザリア、思いっきりが良いね..だけど、剣が無ければ、剣聖の私はタダの人だ」

「武器なら新しく貰ったわ」

魔聖剣 グラムカイザー

魔剣 ユーグラシム

魔杖 無限の漆黒

魔杖 癒しの黒杖

武器が欲しい、ただそう願っただけで、まるで主と認めたように..それぞれの武器が目の前に移動した。

「凄いな..この剣、聖剣より手になじむぞ」

「この剣なら、もう腕を失う事は無いだろう..素晴らしい剣だ」

「力が湧いてくる..僕に魔力を与えてくれるみたいだ」

「本当に凄いわね」

「ジャルダ..ありがとう心から礼を言う、俺はもう女神何か信仰しない..邪神様を信仰する、300年後に魔王として戦うなら、魔族に味方する約束だ」

「私の剣はもう人を守る剣ではない..次ぎ会う時、いや今から貴公の味方だ」

「そうだね、堅苦しいのは嫌いだけど..ジャルダが困ったら助けに来るよ」

「ありがとう、ジャルダ様」

「最大の敵が味方になってくれるのですね..何とも頼もしい..有難うございます」

「あっ!」

「どうしました?」

「僕らの能力は無くなっちゃうんじゃない?」

「それなら平気な筈です..神は与えた能力を奪う事は出来ません」

「本当に、聖女と違って、悪魔神官って何でも知っているのね」

「はい、邪神様は何でも教えてくれるので..」

「本当に素晴らしい神ね」

「そう思います」

その日、気を良くしたジャルダは食事まで用意してくれた。

今思えば、戦いばかりで碌な物を食べていなかった事が良く解った。

ジャルダの勧めで皆んなで泊まった。

用意されたベッドも凄くフカフカだった。

「ロザリア..苦労掛けたな」

「良いのよ、セイルの為だもの…」

「そうか..しかし、本当に落ちて見ないと解らないものだな」

「そうね..」

「もう、俺は魔族を前みたいに斬れない」

「それは私も同じ..それはそうと? 出て来たら?」

「邪魔しちゃ悪いかなと思って」

「今日くらいは僕も遠慮してあげようかと思ったんだ」

この子達もセイルの事を好きなくせに。

「私は、セイルが好き、自分の命よりもね」

「ロザリア、ずっこいよ」

「ほう、このチャンスに抜け駆けか..まぁ今日は文句は言わない」

「だけど、自分の命と同じ位、貴方達も好きなのよ..二度とは言わないけどね」

「何だ、ロザリアも僕と同じなんだね」

「なんだ、全員、同じだったんだな」

「4人で楽しく暮らせる…それ以上の幸せは私には無いのよ…セイルと二人きりよりもね」

次の日、ジャルダにお礼を言い、邪神様に祈りをして王都へ旅立った。

おしまい
王都に帰って来てからは皆んなが驚く…それが面白い。

死んだ筈の勇者パーティーが居るのだから、そりゃ驚くわ。

「おい…俺は夢を見ているのか? 勇者セイルが居るように見える」

「ギルマス..聖女を舐めちゃいけませんよ! ネクロミノスを読み解き蘇らせた….痛い」

いきなり、セイルに殴られた。

「聖女様、冗談はやめましょう..俺の名前はセル、勇者セイルの遠縁にあたる、ロザリア様に面白がられてパーティーに誘われました」

「私はカリダ..剣聖カルダの遠縁にあたります」

「僕はリダル、賢者の遠縁ですよ..」

「しかし、そっくりだ..本物の様だぞ」

「それは、ロザリア様が悪いんです、元々似ていたんですが..魔法でそっくりにされて..」

「それは酷いな」

(俺たちはロザリア様に恩があります..これで昔のように明るくなってくれるならと思って引き受けました)

(そうか、解った)

「酷いでしょう?」

「セル..本物の聖女とパーティーが組めるんですよ? カリダもリダルも光栄に思いなさい」

「「「はいはい」」」

「それで、お前達、パーティー名はどうすんだよ」

「「「勇者」」」

「凄い名前だな…本物が1人居るから良いか..まぁ良いや」

4人で冒険者になり、週に2日間、冒険者の仕事をして3日間 治療院を開く事にした。

気分が良いので、ローゼット家の使用人の目は返してあげる事にした。

案外、私はげんきんなのかも知れない。

立札を立てた..銀貨1枚で見えるようにして返す..そう書いて..無料では無いわよ?

まぁ、立札と言うのも一種の罰なのよ..誰かが教えてくれなくちゃ解らないわよね、目が見えないんだから…

結局、誰かが教えたのか1人除いて..全員が此処に来て治療を受けた。

1人は、ローゼット伯爵に文句を言い、無礼打ちされたそうだ..仕方ない事だわ。

久しぶりに4人で迷宮に潜ってみた。

結論から言うと駄目だった..討伐何てできない。

邪神の加護のせいか..魔物が全部、優しい..

ゴブリンはぺこりと頭を下げるし、オークは何だか解らないが肉をくれた。

セイルが途中で連れていかれたから様子を見に行ったら..苗床にされている女の子の元につれて行かれたようだ。

何となくだがオークがセイルに「使って良いよ」って言っている気がするのが頭に来たから三人でセイルを殴って連れ帰った。

オークが「大変だなお前も」そんな目でセイルを見ていた..

女の子を助けないのかって? 無理だよ..焼いた肉くれたし、宝箱の場所まで案内してくれるんだもん…しかも、要らない物らしく宝石や薬品もくれる..そんな相手から奪えるわけないわ。

探索と言うなら大成功だけど..もう討伐は行えないわ..多分。

折角の武器だけど使うチャンスが無い..盗賊の討伐の依頼が来るまでお預けだ。

国はエリクラ―の弁済で困っていた。

今の私達にとってエリクラ―なんて価値は無い..

死なない体なんだから私達には無用だけど..リタは興味津々だった。

現物があるので色々調べたら、あっさり解析できた。

賢者と聖女が居て現物があれば解析も簡単だ。

聖と魔、両方の力がなければ作れない、そういう仕組みだった。

道理で人間が作れない訳だわ。

簡単に作れそうだったので20本作った..さらに強力にした物1本を含んで..

可哀想だから、国王に売りに行った。

「国王様はお会いになりません」

「相変わらずね? なら良いわ! 伝言だけ伝えて、エリクラ―が手に入ったけど門前払いされたから教会に売りに行くってね」

ゆっくりと歩いて教会に向った。

「待って下さい、ロザリア様..はぁはぁ、ぜいぜい..王がお会いになるそうです」

「もう、遅いわ、会う必要は無いわ」

「そんな事言わないで下さい..私の首が飛びます」

「飛んでも痛くないわ」

「そうだよね、別に僕の友達じゃないし」

「私も同感だ」

「俺は可哀想だと思う..だが門前払いをしたのはそちらだ、王が自らくるなら話をしよう」

「そんな..」

「これが精一杯の譲歩だ、20分此処で待つ、それが過ぎたら教会に行く」

「解りました」

息せき切らして王が来た。

「まって下され、エリクラ―をお持ちと言う事は本当か?」

「ありますよ」

「だったら、それを売って下され」

「解りました」

「詳しい事は城で聞く..一緒にきて下され」

「さて、聖女殿、このエリクラ―は教会にあった物ではないか? 貴方は持ち出した事がある」

「エリクラ―は簡単には手に入りません、宮廷魔術師の私でも作れません」

次の宮廷魔術師? 何か才能なさそうね…

「騎士団で迷宮に潜っても手に入らなんだ..いかようにして手に入れたんだ」

代替の代替..三流以下なのね

「これは俺たちが迷宮で見つけた物だ」

うん、作れるなんて言えないからこう言うしかないわね。

「駆け出しの冒険者が手に入れられる物でないだろう」

聖女が居るのに..馬鹿じゃないかしら?

「それで、ロザリア殿、これがそれと違うとどう証明する」

「解ったわ、証明出来るなら、無礼は許して貰えるかしら」

また、いちゃもんつけて..良いわよ、それなら

「出来る物ならして見るが良い」

(ふんっ、教会から持ち出した物を薄めて持ってきたのであろう..見え見えじゃ)

「許可がでたようね..それじゃ..切断」

王の首が宙に舞った..

「王族殺し..貴様ら」

「まだまだだ、行くぜ…千斬り」

王の体がバラバラになった..

「あっあああああっ 王、王が..」

「まぁだだよ..僕の番..灼熱の炎で燃えろ..ファイヤー」

王は灰になった..

「貴様ら、王を殺してタダで済むと思うなよ..」

「待ちなさい..この状態でも、この超エリクラ―を掛けるとほらね..」

「儂は死んだはずではないか..」

「この超エリクラ―は、死んでも直ぐなら蘇生するのよ..教会の劣悪なエリクラ―と違うわ…最も超エリクラ―はこれ1本、後は普通のエリクラ―だけど」

「そんな貴重な物を..使ってしまったのか…ああああっ」

「さぁ、証明したわよ.、それにこれのあった場所はコダールでジャルダからお金出してかった情報の場所で手に入れたの? 文句ある」

「ない..なら1本金貨300枚で購入してやろう」

「無理、1本を貴方のせいで無駄にした..だから1本金貨10万枚、19本で金貨190万枚なら売るわ」

「馬鹿な、この城の宝物庫をひっくり返しても無いわ」

「そう、なら、この城の中の物全部で良いわ」

「そんな事出来んわ」

「それなら持ち帰るわ..もう騙されないわ、証文が無いからと、約束の報奨も渡さなかった.エリクラ―1本で王城と同価値、本来ならこの城19個分なのよ…此処まで負けて文句言うなら、他国か教会に売るわ..さようなら..」

「貴様ら..おいこいつ等を殺せ!」

「良いのかしら? 私もう体治っているのよ? たった4人で魔王に挑んだのよ..私一人でも皆殺しに出来るわ」

「聖女1人に何が出来るか..」

仕方ないわ..4人居るのに..馬鹿じゃないかしら?

「僕に任せて..デットリーデス..」

「なっ..集団死魔法..」

「流石は、今の宮廷魔術師..1人だけ生き残りましたか」

「なら、物理で首でも刎ねようか? 死ね」

「ねぇ..王様..もう貴方1人ね..」

「こんな事して許されるものか?」

「誰が私に文句言うの? こんな城の人間何時でも皆殺しに出来るのよ? 前もこうすれば良かったわ」

まぁ、あの時は出来なかったのが本音だ。

「それが聖女のする事か..まるで悪魔じゃ」

「何で私に聖女の行動を問うの? 貴方は勇者も賢者も剣聖も見捨てた..女神だって見捨てるわ」

「それは..仕方なかったんじゃ」

「まぁ..良いわ..許してあげるわ..今後は逆らわない事ね..まぁ私を倒したいなら、近隣から兵を集めて10万人は必要だと思うわ..それでも負けない自信はあるわよ」

「助けてくれ..もう逆らわない、約束する」

「リダル、誓約魔法を掛けて」

「解ったよ、コントラクター」

「なっ何をしたんじゃ..」

「誓約の魔法を掛けたのよ..これで貴方は約束通り逆らえない..逆らったら死ぬし、生まれ変わる事無く地獄の苦しみを味合う」

「嘘じゃ..そんな魔法は無い」

「それじゃ、ほら良いわ、殴ってみな..ほうーら」

私は王の手をとって私を殴らせた。

「うがやややややややややややっ」

「うふふ、ほらね、痛いでしょう..軽く殴っただけでそれなのよ..」

「そんな」

「それじゃ、戻すわ…リカバリーゾーン」

「私達は…死んだ筈では..」

「今回は、戻したけど、次はないわ..それじゃ金貨190万枚分貰っていくわ」

「お渡しいたします..ですが、本当にそんなお金は無いのですじゃ」

流石に無いか..それなら。

「うん、お金は宝物庫にあるだけ全部、宝も全部…後は権利と王家の直轄の領地を貰えば良いんじゃない? まぁそれでも足りないけど、それしかどうしようもないよ!」

「それはどういう事ですか」

「つまり爵位を与える権利から取り上げる権利、全ての決定権..それから持っている全部の領地を貰うという事ですね」

「それじゃ..儂は王では無くなるのではないか?」

「そうとも言うわね..だけど傀儡として王では居させてあげるわ」

「それで儂はどうすれば」

「よく考えて、金貨190万枚で買って、教会に1本色つけて返して12本、それでも7本余ります..これは誰のでしょう?」

「儂のだ」

「そう、それだけあれば遊んで暮らせるよ..王様なんて名前だけで良いんじゃない?」

「そうであった..うむ..実に儲かる話じゃ..申し出を受ける事にしよう」

(しかし、この体は凄いわね、今迄使えなかったような大掛かりな魔法が楽に使えるわ)

(僕も同じだよ)

「あのさぁロザリア、国が潰れるといけないから、エリクラ―を安く売る為に来たんだよな」

「国王が悪いのよ..殺そうとするんだから」

「あれは無いわ..あんなに安い価格を提示したのに」

「馬鹿だな..本当に」

ロザリアたちは沢山の権利を手に入れたが悪用する事はなかった。

誰にも、自分達が利用されないために手に入れたに過ぎなかった。

聖女が行う治療院は凄く繁盛した。

だが、特別な治療は凄く高額だった..

「金貨1000枚頂きますが宜しいでしょうか?」

「そんなお金払えません」

「なら、その腎臓で良いですよ..」

「それは出来ません..」

「なら死ねば良いのです」

だけど..よく考えて下さい。

城を売っても手に入らない..死の運命が金貨1000枚で治して貰えるのです。

お金が無いなら、臓器一つか二つで治して貰えるのです。

その治療の価値は..一部の者しか知りません。

本当は..凄く安いという事は200年先まで解りませんでした。

「流石に、歳をとらないから、同じ場所に居られないわね」

「仕方ないよ」

「俺は旅がすきだから構わないな」

「いっそうの事、魔族領に行かない?」

「もう暫くは人間の世界を楽しまない?」

「どうしてだ?」

「だって、あと100年ちょっとで滅ぼしちゃうんだから、もう見られないよ」

「そう言えば、そうだね」

「最後の人間界を楽しむか..良いね」

人類の滅亡まで..あと100年。

聖女たちは奇跡を起こし..気に入った人を助け続けた。

FIN

あとがき
最後まで読んで頂き有難うございます。

今回の話は「聖女」です。

前回は、勇者の過酷さについて書きましたが。

今回は、「利用できなくなった」「必要なくなった」あとの話を書きました。

案外、必要な時はチヤホヤしますが、要らなくなったら鬼のような仕打ちを受ける話は、歴史の話でも身近にもあります。

それを勇者パーティーにして書いたのがこの作品です。

自分の身に、家族の身にした時に、あれっ似たような経験したな、見たな、そう思う方もいる筈です。

これからも他の方が余り書かない「隙間作家」的な作品を書いていこうと思います。

有難うございました。