勇者お前だけは許さない。僕が考えた最大の復讐

幸せな日常
僕の名前はセレス.ヘンドリック。
侯爵家の次男に生れて充実した人生を謳歌している。
我が家は大昔に魔王と戦った英雄の血を引いているとされている。
初代は魔王と戦いそれを退けた褒美として伯爵の地位を貰った。
それを何代もの間の手柄をたてて功績を積んで侯爵までになった。
父や母は亡くなっているが、兄とは仲が良く諍いは無い。
兄セレナが侯爵家をついで、僕が片腕そんな感じだ。
兄は頭が良いが剣の腕は無い。逆に僕は剣の腕はあるけど頭が無い。
だから凄く相性が良いのだ。
だが、この兄は僕に対して凄く優しい。
本来の兄弟関係であればこのまま兄の片腕で終わる人生だったはずだが何と兄は僕に婚約者を探してきたのだ。
彼女の名前はマリア.パスカル。パスカル家の令嬢で美しく綺麗な女性だった。しかも魔法の腕は良く、ヒール系の魔法が得意だそうだ。そしてこのパスカル家も大昔に魔王と戦った際にヒーラーとして活躍した家だった。そしてこのパスカル家には跡取りが居ない。その為、僕がマリアと結婚したら、後継ぎになる事が確定している。
マリアとは何回も逢瀬を重ねて愛を育んでいった。
良く兄にはマリアとの事を冷やかされた物だった。
だが、冷やかされた時は僕も冷やかし返すのだ、兄も実は婚約している。
しかもその相手は第二王女だ。金髪が美しい聖女様に生き写しとされるリリア姫だ。

世界は平和とは言えないが安定していた。そして僕はそんな中で幸せに過ごしていた。
破滅の時が近づいてきている。そんな事も気が付かずに

すべての始まり 勇者召喚
魔王が復活した。
その知らせが魔王領を監視している偵察部隊から王城に入ってきた。
そして王宮での話し合いの結果、勇者召喚を行う事が決まった。
この世界にも英雄の血を引くものも居るが代を重ねる事に弱体化して弱くなっていた。
魔王を倒すには聖剣を使わなくてはならない。しかし使える者はいない。
その為、異世界から勇者を召喚しなければならなかった。
その召喚魔法の行使で呼ばれたのが勇者 天上勇気だった。
天上勇気は銀髪にオッドアイの美しい勇者だった。
彼は王から話しを聞くとすぐに魔王討伐を引き受けた。
勿論、勇者と言えども魔王討伐は1人では出来ない。
その為、国はパーティを組んだ。
主軸は勿論 勇者である天上勇気。
数多の魔法を行使する魔法使い 第一王女リリアーヌ。
聖女の生まれ変わりと名高い 兄の婚約者 第二王女リリア。
それと王族の世話とヒーリングに優れた女性数名、その一人に僕の婚約者マリアが選ばれた。
それに加えた騎士一個師団がこの遠征のメンバーだった。
僕は王都の守りを任された。血が薄くなったとはいえ英雄の血を引く者として王都を守らなければならない。
正直、マリアにはそんな危ない所にいって欲しく無い。だが国の一大事で、王族すら前線で戦う現状ではマリアを引き留める事は出来なかった。
マリアが勇者たちと国を出ていく前の日、最後の逢瀬でお互いに手紙を書く約束をした。
そして、暫く会えない事から、お互い初めて体を合わせ一つになり愛を確かめ合った。
そして再開を約束し別れた。
これが最後になると知らずに。

届かなくなったマリアの手紙
魔王討伐に勇者が旅だった後、僕の楽しみはマリアからの手紙だった。
僕の方は特にいつもと変わらない日常を書いていた。
だが、マリアの方は結構過酷だった。
手紙には勇者や王女の活躍が書かれ、自分はそんな方達や騎士の癒しの為に力を使っている事が誇りなのだと力強く書かれていた。
だが、3枚目の手紙からは様子が変わっていた。
ただ、日常について3行くらい書かれているだけだった。
僕は戦場なのだから手紙を書く時間もないのだろうと勝手に理解した。

4枚目の手紙も同じだっただが、よく見ると涙で滲んだあとがあった。
僕は心配になり、パスカル家を訪れた。
パスカル卿にはもう手紙すら届いてなく、僕以上に心配していた。

5枚目の手紙には別れ話しが書かれていた。
 僕は吃驚してパスカル家を訪れるとパスカル卿は塞ぎこんでいた。
 僕が何があったか尋ねると「何も言わずに娘と別れてくださらんか?」そう悲しそうに言われた。
理由は幾ら聞いても答えてくれなかった。
「僕は何があっても別れない。」そう答えるとパスカル卿は「そうか、何があっても別れないでくれるか? ありがとう」そう言い少しだけ和らいだ顔になった。

僕はマリアに何があったのか知りたかった。だが王都の守備を任されているので出ていく事は出来なかった。

6枚目の手紙には「私は汚い女だから一緒になれない。他の人を探して幸せになって」そう滲んだ字で書かれていた。
そしてその手紙を最後に手紙は届かなくなった。

僕が何通手紙を出そうが返事は帰って来なかった。
そして、勇者が魔王を倒した喜びの知らせと共にマリアは帰ってきた。

彼女が死んだ理由 最初の復讐
マリアが死んだと聞いて僕はパスカル家へと向かった。
「せめてマリアの死に顔がみたい」そう僕が伝えるとパスカル卿は「腐っている。マリアが可哀想だから見ないであげてくれ」そう言った。
本来はそんなおかしな話しは無い。マリアは伯爵令嬢だ、普通に遺体の輸送にはメイジがつくはずだ。そして凍らせて輸送するのがこの国の常識だった。
だが、パスカル卿に泣きながら「見ないであげて下さい」そう言われてしまえば見ることは出来ない。
僕はパスカル家の者で埋葬された後に、彼女の好きだった百合の花をそえてお別れをした。

だが、この葬儀の時がパスカル卿を見た最後だった。
その二日後パスカル卿とその一族は勇者を殺そうとして、失敗して処刑された。
僕は何があったのか気になり処刑人に金を握らせた。
処刑人の話ではパスカル卿の最後の言葉は
「あいつは勇者じゃない悪魔だ、この国なんて滅んでしまえ」だったそうだ。
その言葉は何処にも記載されていない。書類ではただ、錯乱した。そう書かれていた。
何かがおかしい。

更に最近兄の様子がおかしい。明るかった兄が塞ぎこんでいる。しかも僕を見ると涙を流し始めるのだ。
最近ではリリア様とも会っていないみたいだ。僕の事なんか気にしないで会えばよいのに、そう伝えたかった。

僕はマリアの死について知りたくなった。きっと彼女の事だから最後まで他人を守って死んだに違いない。、、幸いうちは侯爵家だ伝手もお金もある。 そして勇者パーティーに加わっていた。騎士だった男から話を聞く事が出来た。

「最初に言って置くが俺は一切加わっていない」だから恨まないでくれ。
そう前置きされた。
僕は黙ってうなずいた。
「彼女は慰み者、、、性処理させられていたんだ。」
僕は耳を疑った、そして何とか意識を持ち続けた。
話はこうだ、、、
最初、勇者は王女たちに手を出そうとした。
他の貴族の娘は勇者が怖く黙っていたが、それを阻んだのがマリアだった。
特に第二王女は僕の兄の婚約者だったこともあり良く間に入っていた。
勇者はそれを鬱陶しく感じ、いら立ちマリアに辛くあたっていた。
だが、マリアはそれでも阻み続けた。
そして業を煮やした勇者はとうとう実力行使にでた。
そしてその日が訪れた。
「だったら、お前が俺の相手をしろ」そうマリアに迫ったのだ。
勿論マリアは婚約者が居るから出来ないそう断ったのだが、勇者はここで討伐を持ち出した。
「お姫様も相手してくれず、お前まで俺の相手をしてくれないなら、魔王討伐を辞める」
そういやらしい顔でいった。
それを持ち出されたらマリアには勇者を拒むことは出来なくなった。自分が我慢しなければ、王女が穢され、国も救って貰えない。だから王女たちに手を出さない事を条件に受け入れた。
その日のうちにマリアは何回も犯された。
だが、マリアは心までは許さなかった。幾ら勇者が抱こうと人形のように声は一切出さなかった。
それが勇者は気に入らなかった。
だから、最初は心を傷つけた「中古品女」「ガラクタ女」と平気で人前でも罵る様になった。
そしてマリアを抱く時には声を出さないマリアにいら立ち、殴りながら、場合によっては刃物で傷つけながら犯した。それでもマリアは声を出さなかった。そして耐えきれない程の暴力で声をようやく出したらその声は「セレス ごめんね」だった。それが、勇者には許せなかった。いつしか勇者は彼女を裸同然で生活させるようになり、満足に食事すら与えなくなった。周りのものは彼女をさげすみ笑い。男はいやらしい目でマリアを見る様になった。その姿は性処理奴隷ですらまだまともに見える位みすぼらしい姿だった。
だが、マリアの悲劇はこれで終わらない。 これからが寧ろ本番だった。数々の冒険を繰り返して勇者と王女たちは何時しか恋仲になった。王女たちと男女の仲になった勇者にはマリアはもう要らなくなった。そして王女達には逆恨みされて、勇者と最初に寝たマリアに嫉妬された。彼女は自分を捨ててまで守ろうとした王女達に憎まれた。 そして最悪な事に勇者と王女達はマリアを騎士たちに性処理道具として貸し出した。勇者と王女はマリアを脅した。「逃げたら恋人や実家がどうなるか解らない」と「それが嫌なら騎士たちの相手をしろ」そう脅された。それからのマリアは悲惨だった。殆ど服は着せてもらえず一日中騎士の相手をさせられていた。ほぼ全員の騎士の相手を毎日させられ彼女は狂っていった。戦場の男にとって唯一自由に犯す事が許される女。それがマリアだった。毎日のように順番待ちまでされ絶え間なく犯さられる存在。貴族のお嬢様だったマリアが一日に30人近くに犯される。そこには一切の優しい言葉もない。穴という穴が毎日使われていた。それでもマリアは耐えた。
そして、勇者が魔王を打ち破った時、彼女の存在は邪魔になった。
その時には頭がおかしくなり「セレス セレス、、」それしか言わない壊れた女になっていた。
王女や勇者はこの事が発覚したら自分たちのの偉業に傷がつく。そう考えた。
そして、騎士たちに命じて綺麗に川で彼女を洗い着替えさせると殺した。
最後に、洗ったのは精子がついていたら魔獣に襲われたせいに出来ないからだ。
勇者と王女は廃棄を命じたが遺体を持って帰るとその家から金貨が貰える。だから騎士の一人が荷物に紛れこませて持ち帰った。それがマリアが腐っていた真相だった。
「以上だ」
「君は一切加わらなかったんだな?」
「神に誓って、、俺には家族がいるんだ」
「ならどうして助けてくれなかった?」
「王女や勇者が怖かったんだ」
「そうか、、、約束の金だ」
男は無言で立ち去った。

だが、、、僕は彼の後をつけ人気のない所でナイフを突き立てた。
「セレス様、、、何で?」
「お前が気に食わないから、それだけさ マリアは悪い事を何もしなくて殺されたんだよ?
何もしない君が殺されたっておかしくはないでしょう?」
セレスはナイフを更にえぐり込む。
「俺は、俺は本当に何もしてないんだ」
「あぁ、何もしていないんだろうね? だけどその場にいて助けてくれなかったんだよね?」
ナイフは更に深く刺さる。
「王家や勇者が、、、」
「あぁわかったよ。 王家や勇者が怖かったのは、だけど侯爵家は怖くないんだろう?」
「、、、、」
「うちだってさぁ侯爵なんだ。王女や勇者には手は出せないけど騎士の一生なら簡単に潰せるんだよ」
「悪かった。許して下さい。セレス卿」
「嫌だね、侯爵は怖くないんだろう?お前を殺した後、お前の妻も娘も性処理奴隷として売り払ってやるよ。 実家の親も皆殺しだ」
「な、何でもします。だから家族だけは許して下さい」
「じゃぁチャンスをやるよ。勇者や王女は殺せないだろうから、今回の騎士団の団長を含む騎士3人殺したら、お前の家族を見逃してやる。」
「できない」
「できないならそれで良いよ、さてどうしようか?まずは娘から売り払うか?」
「解りました。やります、いややらせて下さい」
「あぁ家族は押さえてあるから今すぐいけ」

その夜、騎士団の団長と副長が部下に襲われ殺された。だが、その部下も返り討ちにあい死んだ。不思議な事にその部下にはナイフを刺された跡があった。
しかも裕福そうに暮らしていたのに莫大な借金が見つかり、実家を含む家族全員が奴隷として売られる事になった。

約束は守ったよ。 
相変わらず兄は塞ぎこんでいる。
それが今は僕に味方している、侯爵家の財産も権力も許可なしに自由に使えるからね。
勇者や王女にはまだ手が出せない。
だが、それ以外は別だ。腐っても僕は侯爵家の人間なのだから。
だから、僕は簡単に殺す事が出来る、騎士たちから復讐する事に決めた。
マリアを犯し直接手を下したのだから殺されて当たり前の人間だ。
しかし、この前の騎士は滑稽だった。団長を含む3人を殺したら家族を助ける約束をしたら、すぐに殺しにいくし、だが死ぬきになれば出来るんだね。だって、平騎士が団長と副長を殺すんだからさ、最も他の騎士に殺されちゃったけど、、約束は3人。だから本当は1人足りないのだけどね、本人も1人に計算してあげた。騎士が3人死んだんだから約束は守るよ。だから、家族は全員殺さずに奴隷にして鉱山に送った。勿論、僕は優しいから性奴隷に女はしなかったよ、約束だから。だけど、犯罪奴隷が多い鉱山に騎士の家族が送られてどの位生きられるかな? 奥さんと娘は性奴隷として販売はしなかったけど銀貨2枚で二人纏めて売る代わりに、他の奴隷より下の存在として位置付ける約束で販売した。普通は金貨5枚以上で販売される女がこの金額なのだから喜んで鉱山側は買ったよ。500人近くいる男の中に女が2人、そしてそいつは自分より下の扱い、何が起こるのだろうか、知らないな。だが殺さない約束は守った。殺してないんだから良いはずだ。
さて、他の騎士はどうするかな?まだ27名も残っている。
ただ、殺すだけでは気がすまないな。

地獄の剣武会(開催前)
僕は国王に会う為に王城に登城した。
「久しいなセレス、兄のセレナはどうだ?」
国王は何も知らずに笑いかける。
「何があったのか解りませんが塞ぎこんでおります。」
(お前の娘の所業のせいでな)
「そうか、体を大切にするように伝えよ」
「はい」
今は勇者は居ないだが、第二王女は居た。
「私も心配しているそうお伝え頂けますか?」
僕は殺意が沸いたが何とか堪えて返事をした。
「はい、間違いなく伝えさせて頂きます」
(危ない一瞬殺したくなった。だが、今はそれは出来ない。僕がこうして王に遭えるのはまだ、兄が王女の婚約者だからだ、この地位を利用できなくなるのは痛い)
「それで、今日はいかなるようで来たのだ」
「兄が塞ぎこんでおりますので、剣武会を開かせて頂きたく、つきましてはコロシアムの使用を許可して頂けないかと」
「剣武会とは久しく開かれてないな」
「だからでございます。勇者様の活躍で平和になった事を示す為にも、、、又兄は剣はからきしですが見るのは好きでしたから」
「ははは、、前は建前で、本音は後ろだろう?」
(本音は騎士を殺したいからだよ)
「すみません」
「まぁ良い、相変わらず兄弟仲が良い。良い事じゃ許可しよう」
「ありがとうございます。」
「ただ、他の貴族からのやっかみがあるといけぬ、主催はそうだ儂にして責任者はお主という事でどうじゃ?まぁ国庫に4割も入れてくれれば良いじゃろう」
「ご配慮ありがとうございます。」
(相変わらず狸だな、まぁお金なんて要らないのだけど)
だが、その話が終わる前に勇者である、天上勇気が現れた。
(殺したい、殺したい、殺したい、僕は必死で我慢した)
「そんなに震えなくても良いよ、セレス卿」
「剣武会なら俺も出させてくれないか?」
「いや辞めて下さい」
「どうしてだ、おい」
「あっすいません、勇者様が出場したら潰れてしまう、そう思ったものですから」
「俺を出したくないのか、セレス卿」
(今は我慢だ)
「出したくないに決まってます。」
「お前、いい加減に、、」
「当たり前じゃないですか、勇者様が出たら皆んな棄権して大会が成立しません」
「そ、そうだな」
「そうですよ、魔王すら倒された勇者様に叶う人は居ません。トカゲの強者を決めるのにドラゴンが出てはいけません」
急に天上勇気は気分が良くなった。
「そうだな、確かにトカゲの大会にドラゴンが出てはいけないな。青くならなくても良いぞ、俺は出ないから」
(僕は震えているのか)
「ありがとうございます。ですが、、そうだ優勝者は勇者様と戦える栄誉を与えると言うのはどうでしょうか? そして善戦したら褒章を出すとか」
「それ、いいな。よく思いついたな。」
「はいっ 優勝すれば勇者様と直に戦える栄誉が貰えるとなれば皆やる気もでるでしょう?」
「なら、余からは地位を出そう。 平民が優勝したら騎士に取り立て、騎士が優勝したら副長の地位を、そして優勝した上で勇者に一太刀入れられたら団長に取り立てるというのはどうかな」
「よ、宜しいのですか?」
「良い」
「あっ」
「どうしたのだ、勇者様は聖剣、いや鉄の剣も使うのは無しですよ?」
「解っているって、俺は木剣でいいよ」
「そうですよ、それでも一瞬で終わると思います。」
「大丈夫だって、少しは遊んであげるから」
「ありがとうございます」

あぁぁぁっぁ開催が楽しみだ。この大会を利用して騎士に地獄を見せてやる。

地獄の剣武会(開催前 闇ギルド)
僕は闇ギルドを訪ねていた。
闇ギルドとは名前の通り、表のギルドでは受けない汚れ仕事専門のギルドだ。
そして意外な事にルールや約束は絶対に守る。
噂では拷問されようが殺されようが依頼については漏らすことは無いとされている。
保証や信頼はどんなギルドよりも高いのだ。
但し、裏切れば依頼人には死が訪れる。

「おや、セレス様、お貴族様がこんな所で、、どういった御用ですか?」
「ここに来るからには依頼しかないでしょう?」
「冒険者ギルドでは無くここへ? 依頼?」
「とぼけるのはいい加減にして貰いたい。貴様らが僕に起きた事を知らない訳ないだろう?」
闇ギルドにとって情報は命だ、普通に考えて知らない訳が無い。
「いたずらが過ぎました。依頼を聞きましょう?」
「その話しは僕の前ではするな、衝動で殺したくなる」
「解りました2度とは言いません。」
「今度僕が責任者で剣武大会を開くんだ。」
「知ってますよ。久々の剣武大会なので王都もその話しで持ち切りです」
「そこに闇ギルドのメンバーに出場して貰いたい」
「本気ですか?ここは闇ギルドだ、何かのお間違いではないですか」
「いや、そこで殺して貰いたい奴がいる」
「なる程、それならここの仕事だ。それで一体誰を殺せばいいんですか?」
「騎士27名、、、全員とは言わない、、1人でも多く」
「騎士27名、、それは盛大な話だな」
「組み合わせによっては戦わない者も居ますから全員とはいかないと思います。」
「本気なんだな。だが幾ら闇ギルドのメンバーでもルールにのっとって一対一じゃ分が悪い」
「そこは考えている、、、だが絶対に殺せとは言わない。殺せるなら殺してくれそれだけだ」
「そんなんで良いんですか」
「あぁただ、もし殺せたら騎士1人につきギルドへ金貨50枚、殺してくれた者に金貨50枚を支払う。どうだ」
「金貨50枚、本気ですか? 普通の相場の10倍、普通に数年贅沢して暮らせる金額ですよ。それで受けない連中は此処にはいない。しかも合法的に罪に問われず、勝ち目がなければ降参すれば死なない。旨すぎる位の話だ。これはこのギルドにとってもお祭りだ」
「他にもメリットはある。優勝者は騎士になれる」
「だが、みな脛に傷を持つ者です」
「僕がもみ消すから安心だな」
「騎士団の中の内通者、、、はは喉が出るほど欲しいな」
「じゃあ交渉成立で良いのかな」
「受ける、いや、受けさせて頂く。但し裏切ったら」
「命位なら何時でも払う。だから安心して欲しい、絶対に裏切らない」
「本気で言っているのかそれ」
「多分、僕はここの常連になる。これからも沢山依頼を出しに来ると思う」
「贔屓にしてくれるそういう事ですか?」
「まぁね、、、後ろ盾にも場合によってはなるよ。まぁ侯爵家とはいえ次男だから出来る事は限られるが」
「充分だ。」
二人は握手をし別れた。

僕は、闇ギルドに対し貸しを作る為に「魔王討伐による恩赦として闇ギルドメンバーの多くを放免させた」 腐っても侯爵家そんな事は造作もない。
その事に感謝をしたのか。闇ギルドのメンバーの殆どが大会への参戦を表明した。

僕は次の仕掛けの為、奴隷を買いに行く。

地獄の剣武会(開催前 奴隷購入)
僕は闇ギルドのマスターの紹介で奴隷商人の所に訪れていた。
普通に奴隷を購入するなら王都の大通りにある場所で買えば良い。良質な奴隷が購入できる。
だが、僕に必要なのは口の堅い信頼できる奴隷商人だ。
「本物のセレス様ですか?」
確かに王都以外の奴隷商人に話をしにくる貴族はまず居ない。
「何をもって本物というのかは知りませんが、僕はセレスで間違いないですよ。」
「貴族様がこんな所へ来るからには訳ありですか」
「えぇ口が堅いと聞いたもので」
「例え死んでもここであった事は話しません。間に闇ギルドが入っていますから絶対です。安心して下さい」
「実は金貨2枚で見目麗しい女性奴隷を譲って欲しいのです」
「金貨2枚ではまともな奴隷なんて買えませんよ、男ならともかく女なら。幾ら訳ありの当店でも足元を見すぎです。」
「違う、僕が欲しいのは見目麗しい廃棄奴隷が欲しいのだ」
「は廃棄奴隷ですか?あんなゴミを金貨を出してまで買うのですか?すぐに死んでしまうし、女なら全員が性病持ちですよ。」
「但し、条件はつけさせて貰う。頭がしっかりしていて精神に支障をきたしてなく、しかも見目麗しい女性。そして重度の性病持ちが好ましい」
「銅貨の価値もない廃棄奴隷を金貨で購入してくれるのですから願ったりですが、何人程必要ですか」
「最低20名、可能なら30名は欲しい所ですね」
「その人数なら、うちだけじゃ足りません。ただ伝手はあるのですぐにご用意致します。一刻ほどお待ち頂けますか?」
「ああ宜しく頼む」
「ではお部屋に案内しますから今暫くお待ちください」

「ご用意出来ました」
手入れされた綺麗な部屋にボロ布を纏った女が30人近くいた。
不潔で汚く浮浪者にしか見えない。体からはお風呂に入れて貰ってないのか糞尿の匂いがした。
食事事情も良くないのか皆痩せていた。
だが、よく見るとその顔立ちは一人として整ってない者は居なかった。
こうなる前は恐らく全員が美女、美少女だったのだろう。

僕は見た瞬間、涙が止まらなくなった。 僕のマリアもきっと、、、
奴隷商人は僕が泣き止むのを待っていた。
「一見問題なさそうですが、皆んなトリプルの性病持ちです。万が一でも抱いてしまったら、同じように死を待つ運命が待ってます。お気をつけ下さい。まぁやることやらなければ移る事はありません。ただ魔法薬でも治療ができないので本当に注意下さい」
「魔法薬でも治らない性病?」
(そういうものなのか?)
「治るなら治療して仕事させるでしょう。皆器量は良いんですから。治らないレベルの病気持ちならではの廃棄奴隷です。どんな秘薬でも、どれだけお金を掛けても絶対に治りません。」

「解った、全員貰っていく、、これで良いか?」
「金貨が10枚ほど多いですが」
「これで風呂に入れて綺麗な服に着替えさせてくれ」
「畏まりました。ですがそれでも多いと思われますが」
「後は顔つなぎ料と君への謝礼だ、綺麗になった者から馬車に乗せるように頼む」
「畏まりました」

金なんて腐るほどある。あいつ等が苦しんでくれるなら幾ら使っても構わない。

地獄の剣武会(開催前 奴隷への贖罪)
僕は奴隷たちを館に連れ帰った。
あんな所に閉じ込められいて更に馬車に乗ったのだ。
疲れているはずだ。
だからとりあえず一人一人に部屋を与えて休ませた。
侍従やメイドには変な顔をされたが僕がマリアを失い沈んでいる事を知っているからか特に何も言われなかった。
僕はコックを呼び出すと来客用の食事を彼女の人数分用意するよう頼んだ。
兄は相変わらず塞ぎこんで部屋から出てこないので丁度良い。
食事が出来たのでメイド達に彼女達をここに連れてくるように指示を出した。
そして彼女達以外、人払いをした。
「まず、食事をしようか?」
だが、彼女たちは座りもしなかった。
「とりあえず座ってよ」
ここまで話してようやく座ってくれた。
「さぁ、食事にしよう」
「あの、この食事は誰の物なのでしょうか?私たちの食事が見当たらないのですが?」
1人の少女が床を見てた。
「目の前にあるのが君たちの食事だよ」
「これを食べたら後でお叱りを受けるのでは無いですか?」
「いいから、目の前の食事は君たちのだ、何も言わずに平らげる事」
ようやく彼女達は手を付け始めた。
だが、彼女達は食事中に少し落ち着いたのポツリポツリと話し始めた。
「このスープとってもあったかい」
「あそこから出て来れるなんて思わなかった」
「こんな暖かい食事が死ぬ前に食べれるなんて思わなかったな」
「どうして、こんな優しくしてくれるのかな、、どうして」
聞いていて心が痛かった。
彼女たちは悪人じゃない。
元は解らないが、マリアと同じように辛い思いをした人達だ。
弱い立場で犠牲になった人達。
僕が本来利用して良い人達じゃない。
お金で買ったなんて思わない。
だけど、彼女達の協力がどうしても復讐に必要なんだ。
だから、僕は謝った。
彼女たちは意味も解らずこちらを見つめていた。
次に、僕はマリアや僕に何があったのか包み隠さず話した。
それが、辛い人生を歩んだ彼女達にお願いする礼儀だと思ったから。
僕が話し終わるころ一人の少女がぽつんと漏らした。
「セレナ様辛いんだね。でもね私はマリア様が羨ましいよ」
僕は怒鳴る様に答えてしまった。
「何がが羨ましいんだマリアはマリアはな「セレス様がいるから」」
言わせて貰えなかった。
「私達には誰もいないんだもの。どれ程悲惨な思いに遭っても怒ってくれる人は居なかった。多分これから死んでもただ終わるだけ、だれも悲しんでくれない。最初は体を売らされ娼婦になり、性処理奴隷として売られた、そして最後は廃棄奴隷、、ゴミ扱い、人生で一度も恋もしなかったし、誰からも愛されたりしなかった、、だからさぁ怒ってくれて復讐してくれるセレス様が居るマリア様が羨ましいんだよ」
「そうか」
僕は何も言えなくなってしまった。少なくとも僕やマリアには幸せな人生があった。糞勇者に壊されるまでは、、、だが彼女達にはそれすら無かったのだから。
「優しいねご主人様は」
「僕は優しくない、又君たちを地獄に送るのだから」
「優しくない人は泣かないよ」
「そんなこと無い」
「でもさぁ抱く事も出来ない女にこんな高級なドレスをくれてあんな豪華な食事をくれた人なんて居ないよ」
僕は涙が止まらなくなった。
「もう泣かないで良いよ」
「私達で良いなら自由にして良いよ」
沢山慰められるた。彼女たちはもうじき死んでしまうのに、僕なんか比べ物にならない地獄を味わってきたのに。
僕泣きやむと彼女達に約束した。
「貴方達の貴重な時間を3日間だけ僕に下さい。多分それは地獄の時間だと思う。だけど、それが過ぎたら残りの人生は貴方達が楽しく生きれるように、笑って生きれるようにする。だから、だから」
「それ以上言わなくて良いよ、、何を言っているんだいもう買っちゃって身も心もご主人様の物だろう」
「ねぁそれってプロポーズみたい、まぁ違うのは解っているんだけどね」
「私ってさぁ病気になる前は娼館のナンバー2だったんだから、男に抱かれる位なんでもないよ」
「そうそう、そこのナンバー1は私だけどね」
「泣きながら言うからさぁ、すぐに死ぬような事だと思ったよ。でもね、女としてそれでも良いかなって思っちゃった。嫌いな男に抱かれる位何ともないよ。3日間位問題ないさ」
「そうそう、ここにいるのは皆んな元は商売女なんだ。気にしないの」
彼女たちは健気に笑う。僕は余計に涙が止まらなくなった。
「辛気臭いのはもう終わり、、、でご主人様は私達に何を望むの」
「泣き虫なご主人様、泣いてないでお姉さんにいってごらん、何でもしてあげるからさ」
僕は計画の総てを話した。彼女たちは静かに聞いてくれた。そして手を貸してくれる事を約束してくれた。

最近、僕は神という者が解らなくなった。何故、天上勇気が勇者なのか、何故あんな性格の悪い者が王女なのか?少なくともマリアやここにいる彼女たちの方が優しく心は綺麗だ。「良い事をしていれば幸せになれる」そんなの総てて嘘だ。これが終わったら彼女達だけは幸せな余生が送れるように、死ぬ時まで何があっても面倒を見る。そう固く誓った。

地獄の剣武会(開催前 激励会)
僕はマリアに関わった騎士達27名を集めて激励会を開いた。
多分何人かの騎士は、自分が犯した罪がばれて無いか気にしているだろうな。
復讐でもされるのではないか、気が気でないだろう。
だが、僕は侯爵家の人間だ。侯爵家の直々の激励会の招待。
一介の騎士風情が断れるわけないだろう。
これは招待という名前を使った強制なのだ。
だが、安心して良い。ここでは殺さないよ。
僕は混み上げる殺気を懸命に押さえながら笑顔を作った。
「ようこそ、勇敢なる騎士の諸君、激励会への参加ありがとう」
最初、あの事件に関わった者たちが集められた事に騎士たちは警戒していた。
そりゃそうだろう。彼らにして見れば、婚約者を犯して殺した人間が集められたのだから。
僕は殺気を出すわけにいかない。ぐっと我慢して笑顔を作る。
騎士の一人が耐え切れなくなったのか、激励会の主旨を聞いてきた。
「セレス様この様な激励会、騎士には過分に思うのですが、何故お開きになられたのですか?」
(まだ、警戒が高いな)
「貴方達は魔王を倒した勇者の仲間だ。それなのに世間では勇者や王女は称えられても、貴方達は称えられない。僕は血が薄まっても英雄の一族だ。祖先が、魔王と戦った功績で爵位を頂き生活している。差がありすぎるだろう?僕じゃ爵位も上げられない、だけど、その偉業を形として一人の貴族として称えたいんだ。感謝したいんだ。可笑しい事でしょうか?」
(はははは、心が痛いだろう。、婚約者を犯されて殺された人間が自分たちを称えるのだからな。)
暗そうに下を見る奴が数人いた。ほっとしたような奴、口元を釣り上げた奴。だがこれで、警戒は薄まっただろう。
「我々はこの国に忠誠を誓った者そのような思いは「だからこそ思うんですよ。国に忠誠を誓い、己を犠牲にして戦った貴方達の待遇が前と同じであるなんて、あっちゃいけないんだ。あぁこれ聞いても絶対に国王にはいわないでね、、、」僕は道化を演じた。
(国への忠誠、、言わせるかよこの殺人者がよ)
「それで、この激励会ですか?」
「それだけじゃない。」
(おっ顔色が変わったな)
一気に警戒が強まったな。
「どうしたんです。怖い顔をされて、下心があった事は謝りますから許して下さい」
「下心ですか?」
「はい、もうご存知かも知れませんが、今度私が責任者となって剣武会を開くのです。そこに皆様に出場して頂きたいのです」
「そのお話しだったのですか?」
「そうです。そのお願いも含めての激励会です。」
「剣武会はかなりの規模だとお聞きしましたが?」
「久しぶりの剣武会です張り込みますよ。優勝者には金貨1000枚進呈する予定です」
「きき金貨1000枚ですか、死ぬまで贅沢しても使いきれない金額です、、、本当の事なのですか」
(お金なんて僕には要らないからね)
「本当ですよ我が侯爵家が出しますから、ご安心を」
「そうなのですか?」
「そればかりじゃありません。皆様の中で優勝した者には騎士団の副長の地位を差し上げます」
「それは口約束ではなく公式に決定されているのですか」
「勿論、王家にも約束をしております」
「「「「おおう」」」」
「そればかりじゃありません。優勝した者は勇者とのエキビジョンマッチをして貰います。そこで善戦すれば団長の地位が約束されます。」
「だだだだ団長になれるのですか?」
「はい、勿論、団長になれば一緒に騎士爵も貰えるように口沿いをしようと思っています。まぁ騎士爵はまだ確定ではありませんが」
「まるで我々の為の大会に思えますが、、」
「主役は貴方達、騎士団です。騎士の戦いやその素晴らしさを国民に知って貰いたい。その為の剣武会です。 ただ、私としては王に騎士の素晴らしさを進言したので皆様全員に出て貰いたいのです。 騎士は素晴らしい。そう言ったのに騎士が出て来なければ良い恥です。」
「そこまでセレス殿に期待されたら出ない訳にはいかないですな」
(こいつらには僕は間抜けに見えているんだろうな)
「出ては頂けますか?」
「セレス卿はここまでお膳立てしてくれたのだ、俺は出る。皆んなはどうだ」
「俺が出て団長になってお前らをこき使ってやる」
「お前がか?俺に一度も勝った事無いだろうが」
(完全に警戒を緩めたな)
「そうですか皆さん全員出場してくれるのですね? ならば支度金をお渡ししましょう」
「支度金、そんなのまで頂けるのですか」
「はいっ ただ私も貴族です。支度金を払ったのに出ない。それでは困りますので契約書を書かせて頂きます。」
「それは先に読ませて頂けるのですか?」
「勿論です」

セレス卿は支度金として金貨1枚を支払う。この金貨を貰った見返りとして剣武会には必ず出場するものとする。怪我以外の理由で万が一出られなくなった場合は金貨3枚にして返す。

「問題無いない。出さえすれば返さなくてよい。怪我したら出ないで良いというのも良心的だ、違約金は当然だな」
「私にとって困るのは出場されない、それだけなのです」
「これなら喜んでサインをしよう」
「お願いします」
僕は騎士達全員に契約書を渡し回収すると全員に金貨1枚ずつ手渡しした。
「さぁ、仕事の話はここまでです。これからは私の用意した美女達と最高の料理を思う存分堪能下さい。三日三晩返しませんよ」
「セレス卿、三日三晩は流石に仕事に支障をきたします」
「大丈夫。国王にはすでに許可を頂いています。三日三晩の歓迎は昔の英雄が魔王に勝った後に行った物です。同じ偉業を行った貴方達にも是非味わって欲しいのです。」
「流石にどんなご馳走も続けて食べたら飽きてしまいます」
「ご馳走だけじゃありません。 英雄色を好む。解っております。美女達との夜もお楽しみ下さい。その為の三日三晩です。 但し彼女たちは見ての通り街の女ではありません、本来は貴族のみの相手をする女です。手荒くは扱わないようにお願いします。」
「それは、本当ですか?」
(何だこいつら、途端に目つきが嫌らしくなったな。所詮はケダモノだ)
「はい、ですがくれぐれも本来は貴族専門の高級女性です。エスコートするようにベットへお誘い下さい。断る事はありません。奉仕は慣れていますから彼女達に任せて下さい。ケダモノの様に襲い掛かっては駄目ですよ」
(彼女達は僕の復讐に手をかしてくれた。本当は体を使う事だっていやなハズなんだ。少しでも負担を軽くしなくては)
「そっそんな女性をご用意頂いたのですか?」
「彼女達が身に着けているものを見れば解ると思います。」
「確かに街女とは全然違います、皆、凄くお綺麗です。」
(当たり前だドレスは貴族が纏うもの、宝石も本物なんだからな)
「流石、解ってらっしゃる、彼女たちの支援者には貴族も居るのです。拒むことはありませんので、貴族の様に食事をし会話を楽しみワインを飲みながらお誘い下さい。それがマナーです」
「わっ解りました」「解り申した」「しかしセレス卿は騎士の扱いがうまい、ちゃんと用意すればあのような」「おい」「あっ」
「何かあったのですか?」
(貴様が言おうとした事はわかる。マリアの事だな。お前は念入りに復讐してやるよ。)
「いえ、何でもありません」
「そうですか?緊張されているのですね 恥ずかしがる事はありません」
「はっはい」
「最後にお願いですが、彼女たちは高級な女です。娼婦という言葉は侮辱にあたります。その言葉は使わぬようにお願いします。またくれぐれも扱いは妻や恋人に接するようにお願いします」
「わかりました。気を付けます」
「さぁ食事も美女も支度が済んだ様ですよ。ここで会った事はご家族にも一切口外しません。思う存分お愉しみ下さい。」
「すいません侯爵、我々はその女性の誘い方に慣れていません。」
「簡単ですよ。部屋に行こう。それだけ伝えて彼女達に任せれば良いのです。」
「ありがとうございます」
(何だ、この色ボケ騎士団は、食事やワインに媚薬を入れる必要すらなかったな)
「僕が居ると羽目を外せないでしょう? 僕は本館に居ますから充分にお楽しみください」
「セレス様は良いのですか?」
「これは貴方達だけの為に開いたものです」
(見たくないだけだ、彼女達の汚れる姿を)
僕は彼女達に目配せをすると立ち去った。

地獄の剣武会(開催前 地獄へようこそ)
4日目の朝、僕は騎士達を見送る為に離れに戻った。
「セレス卿、今回はこのような催し感謝する」
「これで今回の剣武会が盛り上がるならお安い御用ですよ」
「貴族様のお相手をする女性とは素晴らしいですな。何回もお相手してくれてテクニックも抜群でした。娼館とは比べ物になりませんでした」
「それは良かったですね」
「年甲斐もなく求めてしまった」
「そうですか、それはそれは」
「ですが、皆さまこういう貴族の遊びはひっそりと楽しむものです。ここではただ最高のお酒と食事を堪能した。それだけです。それ以外は夢です。次は剣武会が終わった時に又夢は訪れるかも知れません。」
「あぁ確かに夢でしたな」
「そうです、ただの夢です。そして夢は語ってはいけません」
「確かにそうしなければ騎士としてまずい」
「セレス卿、まさに楽園とはこれの事。騎士には過分な贅沢有難うございました」
「最後に、夜の事は夢。絶対にそうしなくてはいけません。貴族専門の女性には貴族が気に入っている者もいます。要らぬ嫉妬を買われても騎士には良い事は何も無いでしょう」
「そのような方もいたのですか?」
「それは言わぬが花です」
「そうですな、我々は充分楽しんだ」
「では皆さま3か月後の剣武会でお待ちしてます」
これで騎士がこの事を誰かに言う事も無いだろう。

剣武会には何人が出場出来るのか楽しみだ。
女と遊んだ挙句に性病にかかり妻に性病を移して死んでいく、騎士としてこれ以上不名誉な死は無いだろう。
しかも任務に関わる死で無いから年金も出ない。残った妻は性病にかかり体を売る事も、それこそ性処理奴隷としても買い手はつかないだろう。更に剣武会に出場する事が出来なければ金貨3枚の借金を負う事になる。その借金は子供を売り飛ばして精算だ。まぁ子供に罪は無いから普通の奴隷として売って終わりにしてあげるよ。まぁ頑張って剣武会に出るんだね。そうしたらただ、闇ギルドの人間に殺されて終わりだ。頑張って出場の約束を守ったら子供だけは助けてあげようか。最も父親が死んで、性病持ちの母親の子が幸せになれるとは思わないけどね、僕は優しいからその子にだけは手を出さないであげるよ。
「地獄にようこそ」だ。

閑話:この世界の性病と教会について
この世界で崇拝されている神様は女神です。
その為、娼婦や体を売る職業は蔑まれがちです。
病院という設備はなく、この世界では病気や怪我をすると教会に行きます。
性病に関しては更に我々の世界の様にしっかりした治療はありません。
祭っているのが女神様なので教会では汚い者ととられ性病の治療は一切してくれません。
その為、基本的に性病に掛かってしまうと死が待っています。
貴族であれば高額なお金で治療薬を買い、治す事も出来ますが、精々が1種類初期の物に限ります。
複数の性病にかかってしまえばどんな事をしても助かりません。
エイズ並みに危険な物で、症状が我々の世界よりも重く、死が早い。そう考えて下さい。

(ご都合主義です。お許し下さい)

地獄の剣武会(開催前 さようなら)
僕は騎士達が帰った後に彼女達を呼んでもらった。
メイドは嫌そうな顔をしたが呼びには行ってくれた。
「皆んな本当にごめん、大丈夫だった」
「うん、何とか頑張ったよ!ご主人様が高級と釘を刺してくれたから無茶な事されなかった」
「だけど騎士って化け物だわ、何回出しても満足しないんだからさぁ」
「本当に、、、済まなかった」
「はっ何を言っているのかな?高級なドレス着て、高級な宝石つけて廃棄奴隷が高級娼婦扱いだよ。ねぇこれって全然苦痛じゃないよ、、、まぁ客は嫌な奴だけどさ 多分セレス様は娼館経営の才能があるんじゃないかな」
「それでも、僕は」
「何を悲しい顔をしているの、私たちが何人の男に抱かれていると思っているんだい」
「ごめん、、」
「あのさぁアンタはしっかりと人間として扱ってくれた。むしろこっちがありがとうだ。謝るのは筋違いさ」
「そうそう、殴られ蹴られ、ご飯も貰えず、床で寝かされ、毎日何人も相手にしていた生活に比べたら天国だよ、、、」
「ほら、また泣く。気にしないで本当に」
「でも私は死ぬまでSEXはいいかな」
「それは同じかもね」

僕は悲しい気持ちを押さえて結果を聞いた。彼女たちは頑張って誘惑してくれて何回も騎士の相手をしてくれたそうだ。全員の騎士が3日間の間に5回以上はしていたらしい。そんなにしたなら確実に全員に移っているだろう。マリアはその全員を相手にさせられていたんだ。そう考えると悲しくなるが今はそれは言う事ではない。残り少ないい日々を僕の為に使ってくれた彼女達には感謝しかない。
謝るのは間違いだ。そう思った。彼女達には感謝を言うべきなのだ。
「みんな、本当にありがとう」
「どうやら吹っ切れたね」
「これからは今までの人生で不幸だった分を僕が埋める。君たちが笑って逝ける様に頑張るからね」
「ご主人様、それプロポーズと勘違いされますよ」
「別に良いよ、僕が死ぬまでならそう思ってくれても構わない、、、まぁ死んだらマリアの所に行くけどね」
「ははは、何それ」
ねぇマリア、彼女たちは君と僕の復讐を手伝ってくれたんだ。君を想う僕の気持ちをほんの少しだけ分けてあげてもいいよね。彼女達が死ぬまでの間だけ本当にごめんね。

僕はその日のうちに彼女達を連れて湖畔にある屋敷へと向かった。
その屋敷はパスカル家が取り潰されたあと、売りに出された屋敷をセレスが買い取った物だった。
近くには湖以外にも森があり、そして何よりマリアが眠っている場所でもあった。
セレスにとっては正に特別な場所、そこにある屋敷を彼女達が余生を過ごす場所に選んだ。
腕の良い薬屋に作られたポーション、綺麗な宝石、腕利きの料理人による料理、献身的なメイド。セレスは貴族でも羨むような生活を彼女達に与え続けた。
だが、日に日に彼女達は元気がなくなっていった。当たり前だ、彼女たちはそういう者なのだから。
彼女達はセレスに会いたがった。だから剣武会の準備が忙しい傍ら時間を作っては彼女達の元を訪れた。
病状が出て顔が崩れてきた者や髪が抜け落ちてきた者も居たが気にせずセレスは訪れた。
残りの人生を幸せにする。そう約束したから。
そして一人一人と死にだした。
セレスはその度涙を流したが、彼女達は苦しいにも関わらず崩れた顔でも笑顔で死んでいった。
結局、最後の一人が亡くなるまでには一か月もかからなかった。
皆んなが死ぬ時にはセレスに礼を言って死んでいった。
「ねぇご主人様、私幸せだよ。だってこんな綺麗な場所で死んでいけるんだもん。」
「こんな貴族みたいな生活初めて、、、死ぬ間際に初めて幸せが来たんだね」
「病気になる前に会いたかったな、そうしたらセレス様の愛人位になれたのかな」
苦しいはずなのに、怖いはずなのに皆んなが笑顔で死んでいった。
そして最後の一人は
「ねぇご主人様聞いて?皆んなで決めていたんだけどさぁ、最後の一人がご主人様に伝えると決めていた言葉があるの。それはね、返しきれない程幸せにして貰ったから、私達全員で天国のマリア様を守ってあげる。だから安心してって」
「ありがとう、、、本当にありがとう」
「ほら、泣かないの、全部終わって天国にくるのをマリア様と待っているからね、、すぐに来たら追い返すから、、ちゃんと幸せに生きて」
「うん、、」
最後の一人を看取ってマリアの傍に埋葬した。花屋にあるだけ全部の百合の花を集めて捧げた。

(でもね、僕は天国には行けなんだよ。これから沢山殺すから地獄に行くと思う。だけど地獄に行っても君たちの事は忘れない。ありがとう)

もうこの世に生きていて欲しい人間なんていないな

さぁ復讐の再開だ。

地獄の剣武会(開催前 性病騎士団)
僕は、すぐに噂を流した。
騎士達が女をおもちゃの様に犯し遊んでいると。
噂の攪乱は闇ギルドに頼んだのだが思ったように広がらない。
噂はあくまで噂で、勇者と共に戦った騎士たちがそんな訳がない。そう民衆は考えていた。
その事は、城にまで広まっていったが騎士の潔白を疑う者はなかった。
だが、これは想定内。証拠も無いから噂は噂だ。
だから、次に僕は重ねて噂を流させた。
騎士達が全員でおもちゃのように犯し殺した女が不治の性病に犯された少女だった。
そういう噂だ。
「馬鹿だな、騎士様達はこの国の為に戦った方だそんなわけないだろうが」
「その前に、騎士様はモテるから女に不自由なんてしないだろう」
「そうだな、あの遠征に出ていた貴族の娘さんも軒並み射止めているんだろう」
「そんな事する必要ないよ」
誰もが信じなかった。
だがある日突然、騎士の一人が性病を発生させた。
その日、その騎士は体がだるく体調が悪いので妻に連れられて教会を訪れていた。
教会のシスターは最初ヒール等を掛けて様子を見ていたが、一向に良くならない。そして良く見たら湿疹の様な物が出来ていた。その為シスターは男性の聖職者に代わって貰い診察を進めた。
「性病です、教会では診察はできません」その様に冷たい言葉が帰ってきた。
念のため妻も調べたら、妻も性病だった。
二人は失意の内に帰宅した。騎士では魔法薬など買えるお金もなく、そのまま死んだ。

1人性病で死んだ騎士が出た事により噂の信憑性が増した。
そしてまた一人死んだ。今度も性病だった。
その事によりますます、信憑性がます。
そして民衆の中で騎士に疑問を持つ者が現れた。
騎士の権力を使って飲み代を踏み倒した者。
娼婦を脅して無料で抱いたもの。
そんな経験を味わった者だ。
より力のない人間程、騎士がもしかしたら、本当に性病持ちの少女を犯したのではないか?
そう思うようになった。
そしてまたしても1人騎士が妻を道連れに死んだ。そして死因はまたしても性病だった。
その頃から騎士たちは犯した少女に呪われたのだ。そう噂されるようになった。
そして今日も1人騎士が死んでいった。
だが、呪いよりも不名誉な名前で茶化すように呼ばれるようになった。
その名前は「性病騎士団」
酒場でもどこでもその様に陰口をで呼ぶようになる。
もうどこにも、彼らを勇者と共に戦った英雄と呼ぶものは居なくなった。
そして何より鍛えぬいた体は見る影もなく痩せ細り見る影もない。
こういった事は本来ならすぐに城に話が届き、次の騎士が選ばれるはずだ。
だが、自分たちも探られたら痛い腹を持つ、勇者や王女が黙殺したのだろうか?
自分たちの覇業を陥れたと思ったのか何も対応がなされなかった。

閑話:ある騎士の死
私は騎士団の団員だ。
勇者と共に魔王を打倒した事により、その未来は光輝く物になった。
魔王を倒すと言うのは尋常ではない。私たちは勇者や王女達と違って女神の加護は無い。
だから、本当の所は余り活躍の場はない。
騎士と言えばかっこ良いかも知れない。
平民の子にはなりたい職業ナンバー1だろう。
だが、実際は違う。
勇者が戦う時に邪魔にならない様に雑魚魔族を複数で倒すのが仕事だ。
団長クラスなら、少しは違うかも知れない。
だが団員なら複数人で勇者なら一瞬で殺せる魔物を長い時間を掛けて倒す程度の力しかない。
だから、勇者や王女には逆らえないのだ、、だから王女や勇者に嫌われた貴族の少女を命じられるままに犯した。
最初は躊躇した。可哀想だと思った。だが犯さないと確実に勇者や王女に嫌われる。
だから犯すしかない。そう心に言い訳をした。
だが、本当は違ったのだろう、美しい少女を自由にできる。本来なら触れる事も出来ない貴族の女を自由にできる。そんな心に酔ったのだろう。
そして、綺麗な少女をゴミの様に扱える、それすら楽しんでいた。
自分が勇者の仲間だと思い、選ばれた人間だと思いおかしくなっていた。
そしてその少女を殺す時も要らない物を壊す程度に殺してしまった。
もし、自分の妻が、娘があんな事をされたら私は必ず復讐する。
日常に戻り、家族と過ごすようになって初めて自分が犯した罪に気が付いた。
後に、セレス様に呼ばれた時は怖かった。何もかもが解っていて殺されるのではないか?
そう思った。他の仲間も気が気で無いのだろう。 自分たちは王族では無い、勇者でもない。
普通に侯爵家の人間を怒らせたら死ぬしかない。
だが、違ったセレス様は我々を労ってくれたのだ。騎士が評価されないのは可笑しい。そのように他の貴族と違い我々を高く評価してくれていたのだ。 それなのに、騎士を一番理解してくれた方の最愛の人を我々は犯し辱め殺してしまった。自分は何故あの時に彼女を逃がしてあげなかったのだろう? それ位は出来たはずだ。言い訳はしない、犯す事を楽しんだんだ。 
それなのに、この方は笑いながら自分たちに騎士なんかではめったにお目に掛かれないご馳走とお酒を用意してくれた。 仲間の何人かは影で笑っていたが、自分には良心の呵責しかなかった。 しかも、この方はそんな我々に、一般人では決して手に触れられない高級娼婦まであてがってくれた。 これには驚いた。だが、この人は解っているのだ、「英雄色を好む」我々騎士は性欲が高いのを知っていたのだ。 もし、勇者の遠征をセレス様が組んでいたら、恐らく娼婦等も用意されたのかも知れない。我々は野獣になどならなかっただろう。
この方は本当に我々の為に動いてくれている。王に働き掛けて剣武会まで開いてくれた。
一生遊んで暮らせるような莫大な賞金。優秀者には団長や副団長、騎士爵まで。
騎士なら夢見るような栄光だ。そしてセレス様はその一人はこの中から出るそう思ってくれていたのかも知れない。 そして、全員に剣武会に出て欲しいと言い金貨まで頂いた。 
だが、私は腐っていたのだ。せっかくくれた金貨を家族に使わず。剣や武具も買わずに娼婦に使った。
あの、高級娼婦の事が忘れられずに娼館に通った。それは騎士団の殆どの者がそうだった。 あの儚げなのに献身的な娼婦が忘れられなかった。だが、どこの娼館にいってもあんな凄いサービスはなかった。

だから、私たちは呪われてしまった。噂では性病に掛かった少女を犯した呪いと言われているが違う。
私達を呪い殺したい程、憎む少女など一人しか居ない。
マリアいやマリア様だ。マリア様の呪いは凄まじく一人一人と死んでいく。しかも皆んな性病でだ。
あの少女にした事を考えたら、ただ死ぬだけでは償いにならないだろう。これでもかと辱め苦痛の中で殺したのだから「セレス、セレス」と狂ったように泣いていた彼女を犯した。、、、、そして殺したんだ。
そして、その彼女が最後まで愛した。我々を理解してくれたお人よしのセレス様がくれたお金で娼婦まで買ったんだ。憎まれても呪われても仕方ない。仲間も皆んな諦めている。

マリア様、だけど聞いて欲しい。俺は変わろうとしたんだ。お人よしのセレス様にあってから少しは少しはまともな騎士になろうと思ったんだ。なのに、遅かったのか。俺は貴方を汚し犯し殺した。死ぬのは仕方ない。だが、なぜ妻まで呪うんだ。あれはただ、単に家事が好きな家庭的な女だ悪い事なんてしてないんだ。いつも一生懸命に明るく生きただけの女だ、、、だがもう助からないのは知っている。俺も妻ももう死ぬのだ。 俺は死ぬまで神に祈る。懺悔する、妻と娘と一緒に謝り続ける。 だから娘だけは助けてくれ。、、、、、、頼むから、、、

騎士は死ぬまで神に祈り、マリアに謝り続けた。
だが、その思いは叶わなかった。娘は金貨3枚の形に奴隷として売り飛ばされる。
娘は両親を生涯恨み続けるだろう。何故なら、自分はこれからマリアと同じ地獄を
歩むのだから。

閑話:神様も守ってくれない
私の名前はケイト、、多分もうじき死ぬから覚えなくても良い。
勇者パーティーと共に戦地に赴き、怪我した勇者様を直したヒーラー5人の中の一人。
だが、実際は違う。治療にあたったのは騎士達。勇者様の傷はリリア様が治してたから触りもしてない。
実際に活躍している3人とは違い、騎士は荷物持ち件雑魚相手。私たちは怪我した騎士の治療と王族を主に勇者から守るのが仕事だった。王族は婚姻前の性交渉をしてはいけない。そういう決まりがある。貴族であっても婚約者以外とはそういう関係になってはいけない。当たり前の事だ。第二王女は侯爵家のセレナ様と婚約しているから勿論他の男性とそういう関係には絶対なってはいけない。第一王女のリリアーナ様は恐らくは勇者様と結婚なさるだろう。だがあくまで王族だ手順を踏まなくてはいけない。その為、勇者様が王女に手を出さないように見張るのが私たちの仕事の一つだった。その為に貴族の家から集められたのだ。だが、私たちは怖かった。勇者様も含み殆ど全員が男なのだ。だから、その任務は一切せず、一人の仲間に任せてしまった。そうマリアに任せてしまったのだ。マリアは第二王女の婚約者の弟と婚約していた。だから、特に第二王女に勇者が近づくのを懸命に防いでいた。
だが、それが勇者を怒らせる原因となった。勇者は魔王討伐を盾に彼女を犯した。
もう、彼女は傷物だ、侯爵家との縁談は無くなるだろう。
最初犯された時に、彼女は声を一切出さなかった。
彼女は体は奪われても心は守ったのだ。
恐らくは、もう既に彼女は死ぬ覚悟を決めたと思う。だが、王族であり自分の義理の姉になるはずだった王女リリアの貞操を守る為に恥を忍んで続けたのだろう。恐らく彼女は今回の討伐が無事終わったら自殺するだろう。それだけは解った。」
そんな彼女が許せなかったのか勇者は言葉の暴力を使い辱め始めた。
それでも屈さないと裸同然で生活をさせ始めた。
それでも屈さないと、とうとう暴力を振るいながら犯し始めた。
それには彼女は耐え切れなく「セレス、セレス」と狂ったように泣き始めた。
それを聞いた勇者は余計に犯した。
余りに酷かったのでこっそりタオルを渡そうとしたら
「駄目だよ、関わったら私と同じ目に合うから」
そう儚く笑った。
彼女は私たちをも守っていたのだ。その汚された体で。
結局は私たちは職務を放棄した。そして王女達は勇者と体を重ねた。
これで、彼女ももう辱められることは無くなるだろう。そう思ったが、守っていた王女たちに妬まれ、裏切られて今度は騎士達の慰み者になった。 幸い、王女と肉体関係になった勇者は私達には手を出してこなかった。
だが、私たちは騎士も怖かった。だからこそ、実力のある騎士と恋人になった。これで一安心だ。勿論勇者や王女達の様に避妊薬を持っていなかった私達は妊娠をしていた。ただ、お腹が大きくなってなかったので勇者と共に凱旋後、騎士と結婚した。マリアみたいに伯爵家でもない私たちにとっては騎士は充分婚姻相手としてふさわしかった。更に魔王と戦った騎士とヒーラーの結婚は世間体も良かった。 騎士4人とヒーラー4人の結婚は小さくだが話題になり、その結婚式には国王様も来たほどだ。
そして、すべてを忘れ幸せになった。
セレス様に主人が呼び出された時は怖かったけど問題無くむしろ我が家にとっては良い事だった、、

だが、私達の幸せはある日を境に変わった。
突然、騎士が性病で死んだんだ。まぁ騎士だって遊ぶ者もいるだろう。そう考えていたが
だがまた一人死んだ。

そして、世間には性病少女の呪い。そういう噂がたった。
だが、知っている。呪っているのはそんな者じゃない。
マリア様だ。
騎士全員が犯したのはマリア様しかいない。
彼女は貴族の娘だ性病なんかであるはずがない。
もし、マリア様があの時性病にかかり移ったのだとしたらこんなに後で発病する筈がない。
呪いを恐れた私は嫌がる夫を無理やり引き連れ教会にいった。
「クロ、、、性病です」
二人とも性病だった。
おかしい、私は夫しか知らない。夫だって昔はともかく、マリア様の事件の後は私以外と体を重ねなくなった。
だから性病になる筈はないんだ。
呪いしか考えられない。
私はヒーラーだ病気ならともかく呪いならどうにかなるかも知れない。
懺悔をして心から悔いやめば許されるかも知れない。
「懺悔室を貸して下さい」
私達はシスターに懺悔をし自分たちの罪を語った。
全部聞いたシスターは
「あんた達は今すぐ死んだ方が良い。幾らなんでも酷すぎる。」
と軽蔑の眼で見つめてきた。
余りの怖さに忘れていた。ここに祭られているのは女神様だ、同じ女性として許す訳はない。

私達がまだ生きているのは私がヒーラーだからだ、恐らくヒールが使えなければすぐに死んでいただろう。
結局、あの事件に関わって生きているのは、勇者様と王女二人と私達8人だけだ。
女神には祈るのを辞めた。だって私達がこんな目に遭っているのに、勇者や王女は何もおきていない。
きっと女神が守っているからだ。私たちはきっと女神にとってゴミなんだ。

正直生きるのが辛い。性病騎士と夫は呼ばれ石を投げられる。 買い物も私達には譲って貰えない。関わって死にたくない、そう拒まれる。譲って貰えても足元見られて3倍の料金ならまだましな方だ。私達にはもう栄光なんてどこにもない。 ただ、私達には息子がいる。こんな親でも息子は可愛い。だから生きている。 最近一つだけ許されそうな方法が思いついた。それは剣武会に出る事だ。マリア様は死ぬ最後まで「セレス、セレス」と言っていた。だったら、そのセレス様の剣武会に夫が出れれば許してくれるかも知れない。

だから、ヒールを使いながら今日も生き延びる。

ねぇマリア様、私たちは許してくれなくても構わない。
私はこのまま死ぬわ。
夫は必ず剣武会にでてセレス様との約束を守らせるから。
だから、お願い息子だけは見逃してくれないかな?

この願いは意外な事に叶う事となる。
剣武会に出場を果たした騎士達四人の子供をセレスは放っておいた。
勝つことは出来ない。自分から死の階段に上る騎士達の儚げな姿にセレスは何かを感じたのかも知れない。だから、騎士が死んだ後もヒーラーが死んだあともセレスは関わらなかった。だが、それでも彼らの子供たちは幸せにはなれない。 恐らく性病にまみれて死んだ両親の子供など教会でも見てはくれない。
両親を恨みながらせいぜいがスラムの住民となるのが精一杯だろう。

地獄の剣武会
剣武会が始まった。
当初、出場を予定していた騎士の内23人が欠場。
その欠場者分は更に闇ギルドの者で補った。
冒険者には圧力をかけて極力出場をさせなかった。
しかも、4人だけは出場した騎士は最早人気などはなく、誰も応援なんてしなかった。
むしろ、性病騎士などと呼ばれれ罵声が飛び交う。
良くこれで大会に出たものだと思う。
だが、応援席で黙って見てみている家族を見た。その目には涙があった。
(成程な 家族の為かあそこで応援しているのはヒーラーだな)
最早、騎士としての栄光は無い。ここで罵声を浴びなぶり殺しにされるだけだ。
そして4人ともが死んだ。その中でも1人は無残にも子供のような少年に石で殴り殺された。
お金が無いから武器も買えない。だから石を武器に戦ったスラムの少年に負けたのだ。
ここまで、名声を落とし恥をかいた者に恩給等はでないだろう。
少なくとも彼らは約束を守った。
だから、家族はは放っておこう。それで良い。どうせ妻も直ぐに死ぬのだから。

有名な冒険者も出場してなく、騎士はオンボロ、唯一の面白みは活躍する平民がいた事しかなかった。
剣武会の興行は失敗して終わる。

結局、国王は面白くなさそうにして途中で席を立った。
勇者とのエキビジョンは中止となった。

剣武会の興行は失敗した。

少なくとも表向きは、、、、

地獄の剣武会(終了 収支報告)
剣武会が終わり国王とその収支の話をしに王城へ行った。
今回の剣武会は主催は国王、責任者は僕という事になっている。
「国王様、今回の剣武会は赤字です。」
「だろうな、騎士がまさかあそこまで嫌われているとは思っていなかったぞ」
「私もまさか、あのように恥さらしにまで落ちているとは思いませんでした。」
「元は違ったのか」
「少なくとも、私が騎士達に遭った時は、勇者と戦った勇猛な者として民衆に称えられていました。まさか、その後恥さらしな真似して性病になり性病騎士等ど呼ばれるようになるとは思いませんでした」
「儂は、聞いてはいたがまさか本当だとは思わなかったぞ」
「えぇですが、もう既に開催を広めた後などで引くに引けませんでした。今回は完全に私のミス、今回の赤字は当家で負担します」
「いや、騎士は国の物、儂の物とも言える。その者の不始末でセレス卿には迷惑をかけられん。国庫で負担しよう」
「いえ、この責は間違いなく私にあります。当家で負わせて頂きます。その代わりお願いがございます」
「どんな願いだろうか」
「騎士が今回大量に居なくなりました。その不足分をあの大会の上位者から選考すると言うのは如何でしょうか?」
「それは何かメリットはあるのか?」
「はい、今、民衆は騎士に対して不信感を募らせております。今回の上位者はそれに対して民衆に人気がある様に思われました。取り込むことは騎士の落ちた信頼の回復につながると思います。」
「ならば、上位者から選考する事にしよう。だが、それでセレス卿は何か利益はあるのか?」
「お金ではありませんが、私に対する民衆の支持とそれが元で騎士になれた者からの感謝が手に入ります」
「ちょっと待て、それならやはり赤字分は国庫から全部出す事にしよう。その代わり王の慈悲による騎士の選考という事にしないか?」
「王がそれで宜しいなら」
「良い」

お金なんて僕には要らない、だけど、出さないで良いならそれに越した事はない。
実際は思惑通りに騎士を殺せて闇ギルドの者を騎士として送りこめた。
僕的には思惑通り。黒字だ。

地獄の剣武会(終了 スラムの少年)
「セレス様これはあんまりだ」
闇ギルドに行くと開口一番ギルドマスターに言われた。
それはそうだ、闇ギルドとしては27人の騎士を殺してギルド側が金貨1350枚 ギルドの構成員で金貨1350枚のお祭りの様な仕事になる筈だった。だが騎士は4人しか出場しておらず、ギルドに金貨200枚、構成員に金貨200枚の仕事になってしまった。それでも破格値ではあるのだが。
「ちゃんと補填するから安心して、ほら」
「金貨1000枚、、くれるんですか」
「よく考えてそれ位が妥当だと判断した。勝ち抜き戦だから全部の騎士が闇ギルドの構成員にあたるとは限らんだろう」
「確かに、おいお前らセレス様が金貨800枚 詫び料にくれたぞ、半分の400枚を後で分けてやるからな、セレス様に感謝しろよ」
「「「おー」」」
「流石セレス卿 太っ腹だ」
「セレス様の為なら、どんな汚れ仕事でもやりますぜ」
流石に抜け目ないな、僕の見ている前で金貨200枚霞めとった。
「それからこれだ」
「何ですかこの手紙は」
「僕からの推薦状だ。剣武会の大会の上位者は騎士に慣れるように王に進言しておいた。僕の推薦状があれば、身元確かな者として過去を探られる事もないだろう」
「しかし、セレス様は何故、ここまで当ギルドに肩入れしてくれるのですか」
「さぁね気に入ったからかな」
「気に入ったからですか、、まぁそういう事にしておきましょう。だが、闇ギルドは良い事も悪い事も忘れない。そして必ず借りは返す。それだけは憶えておいてください。」
「わかった。あとこれは騎士を殺した報酬の金貨200枚。それともしこの場にいるなら個別の報酬は直接渡したいんだが」
「そうですか、それじゃ連れてきます」
3人の厳つい男と1人の少年だった。
3人の厳つい男には金貨50枚ずつ私感謝を述べてから渡し帰した。
残りの少年が気になり、その場に残した。
「まさか俺は金貨が貰えないのか、俺にはどうしてもそのお金が必要なんだ」
「いやそれは間違いなく渡すから安心してくれ。だが君は下手すれば死んでいた。それなのに出場した。その理由が知りたかった。」
「俺には好きな女の子がいるんだ。だが、そいつの親が貧乏で娼館に借金のかたに売っちまった。だから買い戻すのに金が必要なんだ。」
「そうか、その女は君にとって何なんだ、気に入った娼婦か何かか?」
「違う、俺はマリアンには指一本触れちゃいない。幼馴染なだけだ。だけど、そいつだけが俺を人として見てくれた。スラムに居る俺を家族のように扱ってくれたんだ。」
「そうか」
「そうだ」
「お前は、その子を娼館から買い戻した後はどうする。最も一生遊んで暮らせる金もあるが」
「考えていない、」
「なぁ 石ころ少年。お前は僕を楽しませてくれた。」
「金の為だ」
「だが、お前は金の為とはいえ僕の敵を討ってくれた。これをやる。」
「これは何だ」
「これは家の権利書だ。騎士が住んでいた小さなものだが王都にあるから立地がいい。女を迎いに行くのに家も無いじゃかっこもつくまい」
セレスは権利書を放り投げる。そして勝手にギルドマスターの机からペンを取ると手紙を書き始めた。
「これも持っていけ」
「これは、、、」
「騎士団への推薦状だ。但しお前は2回戦で負けたから見習いからだな」
「ギルドマスター こいつが娼館でお金をだまし取られないようにだれか弁と腕の立つ奴をつかせてやってくれ 金は僕がだす」
「わかりました」
「ほら、最後に金だ。」
「ちょっと待ってくれ、、セレス様、もしかして、今の話しは俺に金以外にも家をくれて、騎士にするという話しか、、」
「そうだ、見習いだがな、、金があってもスラム住いじゃまともな人生が歩めないだろう。金だって人権が無いからだまし取られても泣き寝入りしかない。だが、騎士になれば人権も手に入るし平民では地位は上の方だ。」
「なぜ、そこまでしてくれる、俺は貴方に何を返せばいいんだ」
「別に何もいらないよ」
「俺は石ころ少年じゃないクロスだ。いつかこの借りは返す。だから忘れないでくれ」
「あぁ、解った。 胸を張って迎えに行け。そして2度と手放すな」
「解った。セレス様 ありがとうな」

「セレス様、あんた随分優しいな」
「別に優しい訳じゃない、あいつは石で殴って苦しめて騎士を殺してくれたその礼だ」
セレスは、クロスとマリアンに自分とマリアを重ねた。
どんなに汚れていても僕はマリアに傍にいて欲しかった。だが僕はその命すら守れなかった。
クロスお前は立派だ。スラムにいるお前が石ころ一つで希望をつかみ取った。
好きな彼女の為に闇ギルドで働きながら、チャンスを見逃さず、死ぬ気で戦って未来を勝ち取ったんだ。
お前は間に合ったんだ。
頑張れよ。

「なぁセレス様、あんたでも笑う事があるんだな」
「いつも僕は笑っていると思うけど」
「そうか、まぁいいや」

クロス少年はマリアンを誇らしげに迎えに行く。
スラムに生れた少年は石ころ一つでその未来を勝ち取った。

これからの事、解らない疑問
この辺りで現状の把握をしようと思う。
騎士達とヒーラーは殺した。
残る復讐相手は
勇者、天上勇気
第一王女リリアーヌ
第二王女リリア
の三人だ。
後は国王が知っていて隠したなら国王もだが、話していた感じでは何も知らない可能性が高い。
ここからは自分より立場が上の者に復讐をしなくてはいけない。
今までと違い何か一つ間違えれば即、死につながる。

この中で今絶対に手を出せないのが勇者だ。
勇者には女神の加護がある。以前聞いた話では魔族の毒を受けても炎を受けても無事でいたらしい。
ならば、性病にすらならない可能性もある。
魔法の援護があったとしても実質一人で魔王すら倒したこいつを倒すには加護を無くすか、物量で押すしかない。だが魔族の大群とも戦えるこいつを倒すには何人必要か解らない。
実質、加護を失わせる。その方法を探すしかないだろう。

第一王女 リリアーヌ
殺せる可能性があるのはこいつが一番高い。
小さい頃から魔法の天才と名高い。だが、無数の魔法を使う相手に正面から戦うのは無謀だ。
ただ、殺すだけなら暗殺で出来るかも知れない。だが苦しませる事が出来ないなら復讐にならない。
更に王宮に住み、警護までついたこいつを殺すのは厄介だ。

第二王女リリア
こいつについては解らない。
小さい頃から聖女に似ていて、聖女の生まれ変わりとも言われている。
本当に聖女の生まれ変わりなら勇者と同じように加護があるかもしれない。
無ければただの上級ヒーラーだ。
それであれば殺す難易度は一番楽になる。
逆に加護があれば勇者並みに殺すのは難しいだろう。
どっちみち王宮のなかでは殺すのは難しい。

ただ、ここにきて一つ不思議な事がある。
兄と王女リリアの婚約が破棄されていない事だ。
魔王を倒した今こそが勇者の価値が一番高くなっているはずだ。
そして勇者と一緒に魔王を倒すのに力を貸したのが王女達だ。
だからこそ、勇者と王女の婚姻は美談になる。
例え、侯爵家との婚約を破棄した所で今なら問題は無いはずだ。
だが、未だに婚約破棄の話しはうちに来ていない。
時間が経てば経つほど話題性は無くなり感動は薄れて行く。
王家としては婚約破棄も結婚も早い方が良いはずだ。
このタイミングで何も行動がないのは不思議だ。

そして兄の行動だ。
婚約破棄が来てないのなら、何故塞ぎこんで部屋からでて来ないのだろうか?
てっきり僕は勇者と王女が出来ているから婚約破棄の話が内々に持ち上がっているのかと思っていた。
だが、どうだ、剣武会の話しを国王とした時はどうだった。普通に話していたではないか?
兄が引きこもった事を心配はしていたが、他は到って普通だった。
婚約破棄の話しを裏でしているなら、あそこまで普通に僕と話せるだろうか?
考えられるのは兄がマリアの事を知って落ち込んでいる。
その辺りだが、そうならば、兄の性格ならすぐに婚約破棄を言い出すだろう?
またきっと僕に詫びを入れるに違いない。

ここにきて、解らくなった。
それとも復讐で一杯になった僕の頭が正常に回ってないのだろうか?
とりあえず、今日はゆっくり休みこれからの事を考えよう。

セレナ 兄として
僕の名前はセレナヘンドリック。
セレスの兄でヘンドリック家の当主、、、そしてリリアの婚約者でもある。
只今、落ち込んで引きこもり中、、、という事にしている。
優しい弟はリリアが僕でなく勇者を好きになったから落ち込んでいる。そう思っているに違いない。

だが、それは違う僕が落ち込んでいるのは君の事だ。
セレスは気づいて無いと思っているかもしれないけど、僕はヘンドリック家の当主だ。
セレスが調べられる事は僕ならもっと簡単に調べる事が出来る。

王族や貴族にとっての結婚は政略の一つに過ぎない。
自分の家に利益があるなら、豚にだって愛をささやく。それが貴族だ。
君は僕とリリアがさぞ睦ましく付き合っていると思っていただろう。
実際は違う。愛など微塵もない。

だが、それでも僕はリリアを妻にしなければいけない。
貰ってやらないと国王は安心できないだろうからな。

僕がヘンドリックだから。
王家が光ならヘンドリックは闇だ。
この国の汚れた仕事の殆どはヘンドリックが行ってきた。
そして、権力も財力も光の何倍も闇の方が強い。
つまり、この国の本当の支配者は国王ではなく、僕なのさ。
今頃、王は困っているだろう。
そして恐怖で頭が一杯のはずだ。
折角、闇を取り込みこれから安泰の生活が送れるはずだった。なのに全部ぶち壊しだからな。
「僕が傷物は要らない。」そう言えばこの話しは無かった事になる。
そして恥をかかされた僕が王家のすげ替えをするかも知れない。

だが、それ以上に怖いのが、身内がセレスを傷つけた事だろう。
僕が弟を溺愛している事を知っていたからな。
そしてマリアは僕のお気に入りだと知っているからな。

本来なら王家の姉妹はリリアが僕、リリアーナをセレスが娶るはずだった。
だが、それに異を唱えたのが僕だ。

僕は生まれた時から闇だった。汚い仕事を父から教わりその総てを学んだ。
勿論、母も同じく裏の人間だった。

だが、弟には家族は一切そんな姿を見せなかった。
自分たちが闇の中で生きている。
だから、その分、セレスには光の中で生きて貰いたかったんだ。
だから、探した。貴族でありながら闇は知らず、清廉潔白な者を。
それがパスカル家だった。
正直、鼻持ちならない家だったが、その実は頑固で真面目。まぁ
悪く言えば、貴族に生まれたのに謀りごと一つ出来ない馬鹿だ。
だが、この家なら闇と関わらないでセレスは生きていける。
そして、運が良い事にその家にはマリアという娘がいた。
父親同様に、頑固で真面目な娘だ。これ程、セレスに相応しい娘は居ない。

すぐに婚約まで話しを進めた。パスカル家は馬鹿だから貴族の中で数少ないヘンドリックを知らない家だ。
だから、王家の顔覚えの良い貴族、そう思っていただろう。
そして、その息子二人は王族に気に入られている。しかも兄は王女の婚約者。
婚約を断るわけがない。

マリアと婚約させて良かった。
僕は本当にそう思った。
今まで以上に笑顔が多くなったセレス。
どうすればキスが出来るのか悩んでいたセレス。
その笑顔を見るたびに、どんな仕事の後でも癒されたんだ。
だから、そんな笑顔を作ったマリアにも感謝したんだ。

なのに、あのバカはそれを壊した。

そしてセレスから笑顔を奪った。

正直腸が煮えくり返っている。
その事に王は恐怖している。
「勇者を処刑するから許してくれないか」
「王女のどちらかを処刑するからゆるしてくれないか」
貴重な魔道具を使い。何度も打診がきた。最近では
「セレスを次期国王にする」
「勇者を処刑してリリアーナと結婚させる」
そんな話しもきている。
だが、僕は首を振らない。

そんな中セレスは復讐を始めた。
これは国王にとって逆に救いだ。
剣武会の主催を許した時に少しはほっとしただろう。
君が騎士を殺した時も本心では喜んでいたはずだ。
それで少しでもヘンドリックの怒りを沈められるなら安い話だ。
国王はこれからもきっと君の復讐を気が付かないふりするだろう。
そして、君には笑顔でいるだろう。

君が殺したかったなら、勇者だろうと、国王だろうと僕が殺してあげたんだ。
なぁセレス、、それなのに君は相談もしないで手を汚して光を失った。
僕は父や母になんと詫びれば良いのかな。
なぁセレス、全部終わったら元の様に笑ってくれるのか。
僕は君を見るのがつらいんだ。
君の笑顔がもう一度見られるなら、僕は何でもするよ。

セレス、君が今回使ったお金あるだろう。結構な金額を使っているつもりかもしれないが
あれはヘンドリックにとってはただのゴミみたいな金だ。

リリア…その正体
私の名前はリリア
この国の王女で聖女の生まれ変わりと言われている。
だが、実際は違う。
私こそが、生まれ変わりではなく、聖女いや女神なのだ。
この国に現れた聖女は全員が私であり、この世界に女神などは何処にもいない。
簡単に言えば、私は転生を繰り返している。

勇者召喚などと言われているが、あれは私の使い魔を呼ぶための魔法。
つまり、勇者とは私の忠実な使い魔にしかすぎない。
だが、この事は私以外誰も知らない。

勇者召喚は、召喚の為に多くのメイジが祈りを捧げて呼び出すとされているが、
実際は私一人の魔力で呼び出している。滑稽よね。

女神がその召喚の祈りに答えて勇者を使わすと言われているが、実際は私が何処かの異世界から無理やり連れてくるだけ女神など何処にもいないのだ。そんな事も知らず教会まで作っているんだからこの国は本当に馬鹿しかいないわね。
そして連れてきた者は勇者扱いされているが、実際は本人も知らないうちに私に対して忠実になる。

魔族や魔王の討伐をするのは、私の魔力の増強の為だけで本当はこの世界に魔族の討伐は必要ない。
基本的に魔族は魔族領から出ない。そして基本人間は襲わない。
放っておけば本当は無害なものなのにいつも人間から襲い掛かる。だからむこうも攻撃してくる。
多分、人間側が襲わなければその被害は熊に襲われるよりずっと少ないと思うわ。
転生を行うには膨大な魔力が必要だから、私はより大きな魔力がある者を殺して奪っているだけ。
それなのに民衆は有難がっている。ただ、自分の為に行っているのにね。
本当に馬鹿みたい。

私が、転生を行っていたのはもう一度会いたい人が居るから。
その人の名前はセレ。最初の英雄と言われた人。
その当時の私はまだ、召喚の魔法を身につけていなかった。
少しでも大きな魔力が欲しい私は遊びで英雄付与という魔法を思いついた。
魔族領には人間の森より強くて魔力にあふれる魔物がいる。
その魔力が欲しいと常に私は考えていた。
ある村に訪れた時に魔物に悩んでいると聞き、この英雄付与を試した。
この英雄付与とは普通の人間に力を与える方法だ。
この魔法に掛かると力やスピードは通常の人間の4倍になり、まさに超人となる。
私はその村の若者セレにこの魔法を使った。
魔法により超人的な力を身につけたセレと私は魔獣を狩り続けた。
いつからか私は聖女と呼ばれ、セレは英雄と呼ばれるようになった。
セレは笑顔の可愛いい少年で私の事をリリと呼び慕ってくれた。
今まで魔力を増やす事しか考えて無かった私に初めて別の感情が芽生えた。
名声が広まり有名になると遂に王城へと呼ばれるようになった。
そして、正式にセレは英雄となり、私は聖女となった。
そして、沢山の手柄をたて、ヘンドリックという家名を貰い貴族の仲間入りを果たした。
数々の冒険を繰り返してきた私はセレを本当に好きになり本当の意味で夫婦となった。
そして、私は一人の子供を産んだ。
だが、度重なる戦いでセレは疲弊していった。普通の人間の力を4倍にも上げるのだ無理が出ない筈はない。
だが、英雄という肩書と聖女という肩書を持つ私達を国は戦いから外してはくれなかった。
私達は国に忠誠を誓う代わりに子供の将来を国王へ頼んだ。
国王は息子の将来を約束した。
そして私たちは死ぬまで魔物と戦い、、、死んだ。
だが、死んだ筈の私は不思議な事に、息子の子供へと転生していたのだ。
国王は息子を約束通り、貴族にしてはいたが手柄をたてない息子を冷遇していた。
だから、私は息子に英雄付与の呪文をかけた。
息子は今までとは違い魔物を倒してみるみる出世をしていった。
私は14歳になると家を飛び出してセレを探していた。私が転生したのだからセレだって転生したかも知れない。
だが、どんなに探してもセレは何処にもいなかった。
ここまで探してもセレは見つからないのだ、どこか遠くに転生したかも知れない。だから私は次の転生に掛ける事にした。
そして、転生魔法を確立して、影響力を持てるように王族に転生する事にした。
だが、これは失敗だった。王女に転生した私は政略結婚に使われ、外には思うように出させてもらえそうもなかった。 英雄付与を使ってもその相手が活躍するだけで、外には出して貰えないだろう。 だから、勇者召喚を編み出した。そして、王も逆らえない女神という傀儡を建てた。そして私は聖女となり、使い魔の勇者と旅を共にした。
どの位の年月、セレを探したろうだがセレは見つからなかった。
そして今度の転生では、ヘンドリック家のセレナと婚約する事になった。
自分の子孫との婚約というのも変だが、どことなく、セレの面影と自分の面影のあるセレナは憎めなかった。だが、時代が過ぎ代を重ねたヘンドリックは謀略に紛れていた。セレナは面影こそあるものの、性格はセレとは違っていた。だが、政略結婚とはいえ結婚相手、何度か行き来するうちに、セレナには大切にしている弟がいる事を聞いた。
噂によると、太陽のように明るい子だそうだ。
私は興味を持ちセレナに弟を紹介して貰った。
見つけた、見つけた、見つけた、見つけたセレだ。
あのしぐさ、あの癖、私には解る。セレス、彼こそがセレの転生した姿だった。
だが、私はあきらめた。
彼の隣にはマリアがいた。そして幸せそうにしていたから、、、あきらめたんだ。

だが、この時代にも魔王は現れた。今のセレが手に入らないなら、次の転生に掛ければ良い。そう思っていた。セレも転生していたのだから又魔力を貯めて転生すれば良い、、、だが、私が油断していた時に勇者がマリアを犯してしまった。勇者は私の使い魔だ、私の心の中にマリアに対する嫉妬があったから実行したのだろう。マリアが私を庇ったと聞いたが筋違いだリリアーヌは別として私は寝ていない。ただ、使い魔だから一緒にいるだけだ。 そして私の醜い心が使い魔に伝わり彼女をボロボロにした。 そして醜い心はボロボロに犯してもセレスへの思いを語る彼女に対して更なる嫉妬を産んだ。結局は総てを壊して殺してしまった。

正直後悔はしている。彼女についてはどうでも良いけどね。
だが、そのせいでセレスは壊れてしまった。優しかった笑顔はもうない。だから、私はセレスを治さないといけない。
考えはある。
だが、その実行には協力者が必要だ。

闇夜の裏取引
リリアはセレスの留守を狙ってヘンドリック家を訪ねた。
「久しぶりね、セレナ」
「君はよく僕の前に顔を出せるね。正直殺したくて仕方ないんだ」
「良く、王女を前にそんな事が言えるものね」
「所詮は傀儡の王族だ、大事な弟を壊してくれたんだこれから、お前らがどうなるか考えるんだな」
「そこで話があるのよ」
「何をいまさら」
「旨く行けばセレスの手で勇者に復讐でき、ある程度心も落ち着くかも知れないわ」
「話を聞こうか」

「まず、私は本当に聖女の加護を持っているのよ。その聖女の能力に、女神の天秤という魔法があるのよ」
(まぁ嘘だけどね)
「そんな話しは聞いた事が無いが、それはどんな能力なんだ」
「勇者の能力をはく奪できるわ」
「どういう原理だ」
「この能力は王族や勇者等、現実社会で裁けない者を女神様に直接裁いてもらう魔法なのよ」
「勇者をさばけるのか」
「普通は無理ね、だけど、天上勇気はマリアを犯している、女神が一番嫌がる事をしたんだから裁けるわ」
「だが勇者は魔王を倒して世界を救った、、その位の罪は許されるだろう。普通は」
(だまされんよ)
「本当は嘘、流石に騙せないわね。本当はただ勇者の能力を奪うだけの魔法」
「それは本当なのか」
「もしそんな魔法があるならセレスの手で復讐が果たせそうだな」
「そうね」
「こんな話しをしてくれるという事はこちらについてくれるという事なのか?」
「そうよ」

「それが本当なら助かるよ。 僕が彼を殺すとなると、正攻法じゃできないから。ミスリルで手錠を作って、隙をみてはめて硫酸のプールに放り込む。そんな方法しか浮かばなくて困ってたんだ。」
「それは、それはでもそれじゃセレスは納得しないでしょうね」
「まぁね、、、」
「ちゃんと、貴方にも見せ場をあげるわ、弟に感謝されたいでしょう?ブラコンだから」
「確かにね、だけどリリアはどうやって仲間になる? 今のセレスにとってお前は殺したい奴の一人だ」
「簡単よ、私はマリアを助けようとした事にするわ。 お前が俺に抱かれないならマリアの地獄が続くって脅された。そう勇者に脅されたことにするわ。約束を守り抱かれたのに勇者が約束を守らなかった。しかも王族なのに傷物にされてしまったから、、、それを元に脅されて従わざる負えなかった。そうすればいい」
「お前が積極的にマリアを迫害したんだろう? 」
「だけど、知っている騎士は全部死んでいるわよね。真実は解らない。それに彼の性格なら間違いなく信じるわ、犯された挙句に将来の義理の妹を殺された勇者に恨みを持つのも当然でしょう」
「女って怖いね、、、で何でこちらの味方になるわけ」
「セレスが好きだからよ」
「婚約者の前でいうかな?傷つくよ」
「嘘ばっかり、貴方は私なんかに興味ないでしょう?」
「はははは、そうだね、」
「だから、これが旨くいったら婚約を解消してくれない? 私はセレスと結婚するわ」
「まぁ、君がセレスを好きなのは解っていたけどね」
「何故かしら?」
「薄気味悪い笑顔でセレスを見ていたからね、僕にはわかるよ」
「それなら早いわ」
「僕は今回の事で懲りたんだ、セレスはきっとまたいつか絶望してしまう。」
「だから?」
「リリアは性悪だ。これ以上ない位性格が悪い」
「言いたいい放題だわね」
「だってそうだろう?マリアをいたぶり殺してセレスを自分の者にするのだから」
「そうね」
「でもセレスを愛しているのだけは本物だと解る。リリアならセレスが絶望する前にそれを排除するだろう」
「そうよ、セレスが悲しむ位なら誰だって殺すわ」
「案外、セレスにお似合いかもね?」
「そう」

「それでどうするんだ?」
「まずは貴方が貴族の特権でヘンドリック家として勇者に決闘を挑めばいいわ。そうしたら勇者とリリアーヌで決闘に応じるでしょう。」
「そこからは、、茶番よ私がそちらに加わり勇者とリリアーヌを殺す」
「それで国王は?」
「喜ぶでしょうね。実際は」
「それで、僕との婚約解消とか問題は?」
「全部任せるそうよ」
「そう?、、ならば僕は君とセレスが会えるようにするよ。誤解を解いてね」
「そうよ、誤解を解いてね」
二人は握手をして不気味に笑った。

偽りの和解、偽りの同盟
「セレス、話がある」
引き籠っていた兄が真剣な表情で僕を呼んだ。
「久しぶりだね兄さん。どうかしたの?」
「なぁセレス、お前勇者を殺したいんだろう?」
「、、、、、」
「隠さなくて良い。僕はこれでもヘンドリック家の当主だ。お前が調べられる程度の事なら全部知っているさ」
「そう、、、だから兄さんは僕から逃げて引き籠っていたんだ、、、それで何、手でも貸す気になったの?」
(どうせ、臆病者のお前は手など貸さないだろう。精々引き籠って邪魔するなよ)
「まずは謝りたい。僕が知った時にはもう手遅れだった」
「そう、、、だから何、復讐を辞めろとでもいうのかな?」
「いや、ここまで来たら言わない。むしろ手伝ってやる。」
セレスは自分が考えていたのと違う兄の反応に驚いた。
「何を兄さんは手伝ってくれるのかな?」
「その話の前にリリアについて「あいつもきっちり殺さないとね。そうか兄さんなら簡単に会えるからリリアを殺してくれるのかな」」
「ちょっと待て、何故リリアが殺されないといけないのだ?」
(あんな女を庇うのは腹立たしいが仕方ない)
「何故って! 当たり前じゃないか!あいつもマリアを汚して殺した一人なんだ。殺さない理由なんてない」
「それは違う!お前は勘違いしている!リリアはマリアを庇ったんだ。リリアへの侮辱はやめろ」
(言っていて反吐が出るな)
「兄さん、幾ら婚約者が可愛いからって嘘はいわないで欲しい」
「嘘など言うもんか! リリアはなマリアの為に勇者に抱かれたんだ。傷物に自分からなったんだ」
「、、、、嘘だ」
「嘘なもんか、勇者はリリアにこういったんだ「お前が俺に抱かれるならこれ以上マリアを犯さないしいたぶらない」ってな。そしてリリアはそのままアイツに犯され傷物になった」
「、、、、続けて、、」
「なぁセレス。王族がその情事を解るように話すか、恥だし醜聞だぞ。自分の家臣に知れ渡るようなことすると思うか?」
「、、、、思わない」
「確かにアイツは約束は守ったよ。次が手に入ったからな、、、だが、姑息にも今度は人気取りの為に騎士にマリアを使わせた」
「だが、王女だ、、王女なら勇者に逆らう位「できなかったんだ、魔王の討伐を引き合いにだされてな」」
「、、、、」
「なぁ、セレス、心が壊れて死んだマリアは気の毒だ。だが、仲の良かったマリアを庇いきれずに、それでも毎日犯され、自分の醜聞が臣下に知れ渡るなか、死ぬ気で戦わなければいけない。それも地獄だと思わないか? それでもリリアは王族だからその義務の為に生きているんだ」
(あいつは、本当はゴミ以下だがな)
「、、、、」
「今だって陰で馬鹿にされながら生きているんだ。」
「、、、、悪かった、兄さん僕は間違った復讐をする所だった」
「解ってくれれば良いさ」
(どうにか説得できたな。我が弟ながら先が心配だこれで騙されるなんて)
「本当にごめんなさい」
「いいんだ、、、だから、僕たちもお前の復讐に手を貸させてくれないか?」
「僕たちも? そうかリリア姫も手伝ってくれるのか」
「あぁ、その代わり一つお願いがある」
「何だい兄さん。」
「この復讐が終わったらリリアを娶ってくれ」
「ふざけているの!僕が愛しているのはマリアだけだ。それにリリア姫は兄さんの婚約者じゃないか? 愛してないのか!」
「違う! 愛しているさ。だが僕はヘンドリックの当主だ。もし、僕の妻になったら一生リリアは傷物として笑いものとして過ごさなければならない。だが、お前は違うだろう。お前ならひっそりとした生活も送れる。だから、お前にリリアを託したいんだ」
「兄さん、、、、それでも」
「今はいい、、、だが復讐が無事終わったら、、考えてくれ」
「わかったよ兄さん、、考えるよ」
「あぁ」

「なぁセレス、実はリリアを呼んであるんだ。同席させても良いか」
「呼んでいるんですか?勿論かまわないよ。僕は謝らなきゃいけない。」
(何で、弟が謝るんだ、、、仕方ないか)
リリアは部屋に入った瞬間に謝り始めた。
「おお許し下さいセレス卿、、、わっわ私はマリアを守ってあげれませんでした。」
「僕こそごめんなさい、、、兄から聞かされるまで、その知らずに貴方を恨んでいました」
「いいんです、、、」
(この女、楽しんでいるな。大好きなセレスに手を握られていれば、そうなるか。愛だけは本物だからな)
「セレス、、その話は不毛だもう良いだろう。本題に入らせて貰う」
「すみません取り乱しました」
「まず最初にこれからヘンドリック家として、直接王に、勇者との決闘を申し込む」
「だけど、兄さん勇者は異常に強いよ。ただ殺されるだけになる」
「そこでリリアだ。リリア説明をしてくれるかい?」
「はい。恐らく、二人で決闘を挑めば、勇者側はリリアーヌと一緒に受けるはずです。あれは本当に勇者が好きですから」
「そうリリアーヌは敵なんだね」
「まずは勇者の攻撃をさけつつ、リリアーヌを殺して下さい。魔法を使う前に接近戦で殺してしまうのが良いかもしれません」
「勇者はどうするんですか?」
「そこで、私の出番です、私が勇者の加護を取り除きます。その方法は一度しか使えないのでその時にお見せします。加護を取り上げた普通の男をセレスが殺せば良いのです」

茶番の復讐劇が今始まる。

偽りの決闘…偽りの決着
王家に兄が正式に勇者との決闘を申し込んだ。
王家はあっさりとこの決闘を受理した。
リリア姫の話では自分の事を包み隠さず恥を忍んで話したそうだ。
その話を聞いた国王は怒り心頭ですぐに許可を卸したそうだ。
国王からは内々で「勇者を殺してくれ」と僕に通達があった。
そしてその中に「もし許して貰えるならリリアーヌを許して欲しい」そう書いてあった。
僕は一切許す気はないけどね。

そして3日後に決闘は行われる事になった。

「ふんっこの世界を救ってやったのに、たかが女一人の事で俺を殺すのか?恩知らずが」
(うるさい、うるさい、うるさい、うるさい 僕にとってマリアはこの世界よりも大切だったんだ)
僕は無視して剣を振り上げた。だが勇者はこれを簡単によけた。
兄の方はどうだろうか?
苦戦している。僕が勇者をけん制している間にリリアーヌを殺すはずだったのに魔法に苦しめられてなかなか接近戦に持ち込めないようだ。
「ははははっ勇者に勝てる訳ないだろう? 魔王も倒せないゴミなんだから」
「、、、、」
「おやだんまりかな、じゃあ別の話しをしようか? そうだ、あの女の話だ」
「黙れ、、」
僕は再び剣を振り上げ斬りつけるがあっさりとかわされる。そして僕をいたぶる様に空いている拳で殴りつけた。
「喋れるじゃないか?」
「うるさい」
「あの女傑作だったぜ、人形みたいに喋らなくてさ、最初は締りが良かったからそれでも使えたけど。何回もやったからガバガバになってもう抱いても面白くもなんともないんだ。 お前の事知っていたらその時には返してやっても良かったんだけどな、、知らないから騎士にくれてやるしか無かったんだぞ」
「うるさい黙れ」
「だったら黙らせてみせれば? そろそろ剣が折れそうだけど大丈夫か? 良く持つねその剣、聖剣相手にさ」
「聖剣、、、」
「おや、知らなかったのか、俺が使うんだ聖剣しかないだろう。聖剣クラソス。それが剣の名前だ」
(やばい、僕の剣はミスリルだ通常なら最高の一振りだが聖剣を相手にしているせいか刃こぼれがおきている)兄の方を見る。まだ倒すのに時間がかかりそうだ。
「よそ見している余裕はないぞ」
やはり勇者は僕をいたぶる気だ。だがその余裕にこそ、つけ込むすきがある。
「セレス、これを使え」兄の声が聞こえる。
兄が投げたのは指輪だった。
「それを剣を持っている方の手に嵌めろ。旨く行けば聖剣を壊せる」
僕は即座に指にはめ斬りつけた。勇者は聖剣で受け止めるが指輪と共に聖剣が砕け散った。
「兄さん、これは一体」
「魔王の指輪、、聖剣と対をなす魔王の宝 さぁ剣は無くなったぞやれセレス」

総て嘘だ。勇者の剣はただの装飾の良いリリアの作ったマジックソード。指輪もリリアが作った魔法の指輪。お互いに破壊の魔法が掛けてあり、近づくと破壊されるように仕組んであった。

「せッ聖剣が砕かれた。よくもやってくれたな。もう手加減はやめた。あの女と同じように殺してやるよ」
兄はようやくリリアーヌを殺して僕の方に駆けつけてくる。

あっさりリリアーヌを殺せたのには訳がある。リリアーヌが使っていた杖は国宝級の封魔の杖と呼ばれる杖だった。だが、リリアはこの決闘の前にそっくりな偽物の杖を用意してすり替えていた。如何に天才魔法使いと言えども杖を変えられては本来の能力の半分も出せない。

「兄さん、聖剣が無くても強いです」
「そりゃぁ解っている。こんな奴でも勇者だ」
(リリア何している。セレスが怪我する前にでてこいよ)

一方的に蹂躙される。勇者は素手でも化け物だった。

「もう許しません、勇者、天上勇気あなたの加護をはく奪します」
リリアは何やら天秤を前に突き出した。
勇者がそっちに向かおうとするが懸命に兄と僕とで防いだ。
「女神の天秤」リリアが叫んだ。
その途端に大きな女神が天秤を持ち現れる。そして勇者を捕まえ天秤にのせた。
「リリア姫、この魔法は?」
「聖女が使える究極魔法。自分の寿命の1/4と引き換えに直接女神に裁いて貰う古代魔法です」
(リリアもノリノリだな、セレスに良いカッコ見せようとして、、ただの幻術魔法なのに)
「そんな、寿命を削るなんて」
「良いのですよセレス卿、、さぁ女神の裁きが始まりますよ。静かに見ましょう」
(寿命を削ってセレスを助ける。さぁセレス私に惚れなさい)

女神の裁きが始まる。
天上勇気の悪行が数々読み上げられる
(なぁアイツあんなに悪い事してないだろう?)
(実際はマリアにした事だけよ。ただ、それじゃ無理があるでしょう?)
(確かにな)
天秤は勇者と反対側に大きく傾く。そしてこのまま話が終わり判決になると思う中女神はまだ読み続けた。
「だが、魔王を倒し世界を救った」
ここで、天秤は一気に勇者に傾いた。
「そ、そんな」リリアは顔が青ざめた。
僕も同じだ。
「そそんな、、、魔王を倒す事がそこまで評価されるなんて」
(僕も役者だな、、どうせリリアの演出だろう)
「そうか、仕方ないよ確かにアイツは世界は救ったんだから」
剣をとり勇者に向かう僕を二人が引き留めた。
(ここで、暴れられると計画が破たんするわ)
(解った、セレスは僕が止めておく)
「判決、勇者は無罪」

「待って下さい。その罪には聖女を犯した事は含まれているのですか?聖女の純潔はそんなに軽いのですか」
(ここまでやるかね、この女)
「それは含まれていない、、、判決 有罪、、よってすべての加護を取り上げる」
そこにはただ美しいだけの人間がいた。
だがここからがこの僕セレナの出番だ。
「嘘をついて貰っては困る。女神様、僕は騙されない。その男の美しい姿も女神様が与えた物だろう?取り上げてくれないか?」
「貴方には慈悲がないのですか? だが、理にはかなう。取り上げる」
そして総ての勇者の力を取り上げた女神は消えて行った。
(凄い茶番だな。一体この茶番劇にどれだけ力いれてんだよあの女)
そこには、異世界の変な服をきた、オークみたいな男が居た。
「さぁ、セレス終わりにしよう。その豚をたたき切れ」
「はい」
僕はその醜い男の首を切り落とした。

セレスの最後の一日(最終話)
総てが終わった。
復讐は総て終わらせた僕はもう空っぽだった。
国王は僕に詫びをいれて謝った。
何か欲しい物はないか、そう言われたから僕はパスカル家の復興をお願いした。
そして今後、セレスパスカルを名乗らせて欲しいと頼んだ。
国王はその事を了承してくれて、僕は晴れてセレス、パスカルとなった。
マリアと同じパスカルを名乗れるのは嬉しかった。

最近、僕の事を心配して兄が時間を作って遊びに来る。
おかしいな、少し前まで兄が引き籠っていたのに。僕はその時顔も出さなかった。
兄は僕なんかよりずっと優しい人だったんだ。

リリア姫は今は本当に大変な時だと思う。勇者と姉を殺して、尚且つ自分が傷物になった事まで告白したんだから。なのに彼女は暇を見ては僕の所に来る。一度、僕が兄の所に行かなくて良いのか聞いてしまった。
「王女とはいえ傷物だからね」と悲しそうに微笑んだ。
心の強い人なんだな。そしてこんな僕を気にしてくれるなんて優しい人なんだ。

僕は頭が空っぽのまま街に出かけた。

気が付くと闇ギルドにいた。
「旦那、どうしたんですか? また依頼ですか?」
「違うよ、お礼を言いに来たんだ」
「聞いてますよ、勇者殺し達成したんでしょう。」
「うん、何とかね。」
「おめでとうございます。」
「あっやっぱり依頼を出してよいかな」
「何でも受けますよ」
「弱い女を守ってやってくれ」
「弱い女ですか、、漠然としてますね」
「うん、弱い立場の女全部、、、騎士にも潜り込んでいるんだ簡単だろう」
「まぁ、、そりゃぁね」
「じゃぁ頼んだよ これは依頼金だ じゃぁな」

「これ、白金貨じゃないか、こんな貰えねえよ、、、誰かセレス様を探してきてくれ」

「よう石ころ少年元気か?」
「俺は石ころじゃねぇ、、、えっセレス卿」
「うん、30点、騎士がする挨拶じゃないぞ」
「はっ、セレス卿」
「うん、様になっているね。馬子にも衣裳だな」
「ひどいな」
「マリアン嬢は元気か?」
「おかげさまで元気です。今は妊娠しています」
「そうか、良かったな。だったら祝にこれをやるよ」
「この剣、、、ミスリルじゃないですか?」
「あぁ、勇者を切った剣だぞ」
「そんな高価なもの頂けません」
「僕にはもう要らないんだ。だからお前に受け取って貰いたいんだよ」
「駄目だもらえない」
「なぁクロス。騎士なら貰え。もし、マリアンが襲われて剣の差で負けたらどうする?だから騎士なら貰うんだ」
「そんなこと言われたら貰うしか無いじゃないですか? だけどよ俺はあんたに何も返せないんだ。もう一生返せない位の恩だらけなんだ」
「そうか、だったら、もし僕が死んだら百合の花を上げてくれ。後は出来るだけで良いから、マリアやマリアンみたいな弱い女の味方になってやってくれ」
「そんなんでいいのか、解った」

「よう」
「旦那、久しぶりですね、今日はどんな奴隷をお求めですか?」
「奴隷も買うけど、それよりお礼を言いにね」
「廃棄奴隷のですか」
「廃棄奴隷じゃない」
「、、、そうでしたね」
「うん、、、今日はね、ここにいる奴隷を全部買いにきたんだ」
「ぜぜぜ全部?」
「そう、白金貨1枚で足りるかな」
「足りるも何も半分も掛からないが、持ち合わせが足りなくてお釣りも出せないですよ」
「だったら、解放した彼女達に服と住みかと職業を斡旋してやってくれないか。」
「ねぇ、旦那、それって買って自分の物にしないで解放するという事ですかい?」
「そう、、頼んだよ」
「それを奴隷商人に頼むんですか?」
「信頼しているよ」
「仕方ない頼まれるよ」
「はははははは、お願いするよ」

セレスは挨拶が終わるとマリア達が眠る場所に来ていた。
僕は一心不乱に穴を掘った。爪が割れて血が出たけど気にはならなかった。
そしてようやくマリアの骨が見つかった。
「ねぇマリア、、僕ねもう空っぽなんだよ。復讐したらさぁ何か変わるかもしれないと思ったけど終わって見たら何も残らないの」
「女々しいって言われるかも知れないけど君が居ないと何も楽しくないんだ」
「僕ね、君ともっと、もっと話したかったんだ。」
「もっと、もっと一緒に居たかったんだ」
「多分、僕は沢山人を殺したから君と同じ所にはいけないと思う。だけど今だけはここに一緒にいさせてね」
「愛してるよ」
セレスは短刀を使い死んだ。

「今だけじゃ嫌だな。ずうっと一緒に居ようよ」
「マリアなのか」
「私が他の女に見える」
「見えない、、、でも何で」
「セレスの侍女たちがね教えてくれたのセレスはね天国に行けないからここで待ってってあげてって」
「侍女たちって」
「私達の事よ」
「そうか、、、ありがとう」
「言って置くけど、廃棄奴隷何て呼んだらご主人様でもぶん殴るからね?」
「呼ばないよ、だって君たちは僕にとって恩人だもの」
「私にとってもね、、、ねぇセレス彼女達も貴方と一緒に居たいそうよ」
「そう、、何だ」
「浮気者」
「浮気何てしてないよ」
「そうかな、ねぇマリア、彼女たちは君と僕の復讐を手伝ってくれたんだ。君を想う僕の気持ちをほんの少しだけ分けてあげてもいいよね。 そんな事いってなかったかな?」
「そうだったかな、、」
「しらばっくれても駄目、ちゃんと見てたし聞こえてたからね」
「ごめん」
「嘘よ。彼女達はみんな良い人だから気にならないわ これからは楽しくここで暮らしましょう」

それからね私からも言いたい事があるの
「セレス 愛している」

後日見つかったセレスの遺体は笑顔でまるで眠っているように穏やかだった。
セレナはそんなセレスをそのまま埋葬した。
その場所には毎日のように沢山の百合の花が添えられていた。
その百合の花を添える中に若い騎士と美しい妻がいた。

FIN

エピローグです。
「リリア貴様、僕をだましたのか?」
「来ると思ったわ、、騙してないわよ、、ただ失敗しただけよ」
「それで済むと思っているのか?」
「思わないわね、、、いいわ殺しなさい」
(セレの生まれ変わりが居ないこの世界には興味ないわ。次に行かせてもらう)
「そうか、いい度胸だな」
「私もね、セレスの居ないこの世界に様は無いの。だから本当に殺して貰って構わないわ、それで気が済むのなら」
(殺されないなら自殺するだけだしね)
セレナはリリアの首を跳ねた。
だが、リリアは知らない。セレの生まれ変わり、セレスはこの場所に留まった事を。
リリアがこれから何回転生して生まれ変わってももうセレスには会えない。
そこには、希望という名の絶望しかないだろう。

王家は最後の血筋リリアを失った。怒った国王はセレナの討伐を命じようとしたが、発令を出す前に殺されてしまった。不思議な事に騎士に囲まれていたのに何故か串刺しにされて死んでいたという。
そして今は温厚だった公爵家が王家をついだ。今までの王家とは違い、弱者に対する思いやりのある王として民衆の支持も厚い。

セレナはという1日の半分をセレスやマリアが眠っている場所の近くで過ごしていた。そしてある日突然その近くに教会を建てた。その中心には二人の男女の神がいて、その周りには複数の女神がいる独特のものだった。最初セレナが「セレスたちはここに居たんだ」と笑いながら叫んでいたが最近は落ち着いた。この教会の教義は弱者救済だった。特に娼婦や奴隷には優しかったという。

ヘンドリック家はというと今は大変な事になっている。行き成りクロスの家に来たセレナがまじまじとクロスとマリアンを見つめると「お前が明日からヘンドリックだ」そう言い帰って行った。なんの冗談かと思っていたが次の日に馬車が来て拉致されるように屋敷に連れていかれた。そして無理やり侯爵にされた。最初断ろうとと思ったが剣を貰った時の事を思い出す。「なぁクロス。騎士なら貰え。もし、マリアンが襲われて剣の差で負けたらどうする?だから騎士なら貰うんだ」そう言いながら無理やり剣を押し付けられた時のことを。人を守るには力が必要だ。その事をあの人は俺に教えてくれたんだ。
そしてクロスはヘンドリック家をついだ。 そして毎日なにがあろう沢山の百合を抱えてセレスの元を訪れる。 セレナはその姿を嬉しそうに見ていたらしい。

奴隷商人はある日突然、奴隷商人を辞めると闇ギルドのマスターと共に、奴隷反対運動を始めた。そしてそれはとんとん拍子に進み決議された。今すぐではないが10年以内にはこの国から奴隷はいなくなる。そこまでたどり着いた。 そして娼婦は国の管理に置かれる事になり性病検査や体調管理もしっかりされるようになる。今までのように過酷なものではなくなった。

作者より感謝を込めて 復興について
誤字、脱字が多いこの作品を最後まで読んで頂きありがとうございます。
この作品は昔しノートに書いてた話しを元に加筆修正した物です。
元々の作品はもっと内容の薄い物で、最後はやはりただ勇者を殺して終わるはずでした。
だが、色々な方が応援してくれたので熟考していくうちに一部内容が変わっていきます。
本来の私は此処まで良い文章の書ける人間ではありません。
ですが、ブックマークが増え、評価され、暖かい感想が頂けたおかげか自分でも驚く程にキャラが踊りだしました。ある意味凄く皆さんに勉強させて頂いた作品と言えます。 

誤字脱字については暇が出来たら治しますので、今暫くご猶予下さい。
本当にありがとうございました。

上までが前回の書いた物です。
この作品はフアンも多い反面、嫌いな方も沢山いました。

内容や誤字もそのままのままです。

加筆修正はしませんのであくまで復興版だとお考え下さい。