転移前 過去
僕の名前は、松浦京之介、家族は居ない、そして友達も居ない。
だけど、それで良いと思って居る。
人間の絆なんて信じない、簡単に壊れてしまうし、簡単に壊す事も出来る。
そんな物に価値なんて感じない..
昔、僕は両親と楽しく暮らしていた。
父親は規模こそ小さいが会社を経営していて金銭的には困っていなかった。
母は専業主婦で料理と裁縫が趣味で何時も家に居た。
多分、世間的には理想的な家族、そう見えていた筈だ。
だが、そんな理想的な家族も、麻薬のせいで簡単に壊れてしまった。
僕が風邪で小学校から早退して帰ってくると、いつもはいる筈のお母さんがリビングに居なかった。
僕のお母さんは専業主婦で何時もリビングにいる。
だが、この日は居なかった。
2階にあがり両親の寝室を見ると、見知らぬ男性とお母さんがいて下着姿の母と全裸の見知らぬ男性が居た。
そして、その近くには白い粉があった。
今の僕なら、それが何か解る..だが、僕はこの時それが何か知らなかった..
「お母さん、ただ今その人は誰?」
今思えば、この時お母さんは凄く悲しそうな、困った顔をしていた。
「坊主、学校はどうしたんだ?」
見知らぬ男が僕に話し掛けて来た。
「今日は風邪を引いて体調が悪いから早退してきたんだけど….おじさん誰?」
「おじさんはお母さんの友達だよ? そうだ、具合が悪いなら病院まで車で送ってあげるよ、今から支度するから下で待っててくれ」
「解った」
そして、僕はこの見知らぬおじさんとお母さんと一緒に病院に行った。
この時の僕は子供だから、お母さんに何が起こっているのか解らなかったんだ..お母さんが泣いていた事、困った顔をしていた事に..気が付かなかったんだ。
病院で治療を受けた帰りに近くのゲームショップの前に車が止まった。
「ちょっと待ってて」
そういうとおじさんはお店に入っていった。
お店からでてきたおじさんの手には、ゲームソフトがあった。
「ほら、坊主、このゲームソフトをやるぞ..その代り、おじさんの事をお父さんには内緒にしていてくれ、約束だ」
「何で?」
「おじさん、お父さんとも友達だけど、今は喧嘩していて気まずいんだよ..仲直りするまで黙ってて欲しいんだ」
「解った、内緒にする」
「良い子だ」
お母さんは泣いていたような気がする。
僕は知らなかった..このゲームでお母さんを売ってしまった事に..
それからも、偶に学校から早く帰ってくると..裸のお母さんと裸のおじさんがいた。
そして必ず近くに白い粉があった。
それを見かける度に、お小遣いが貰えたり、何か買って貰えるので約束を守りお父さんには黙っていた。
だけど、ある時家に帰るとお母さんが居なくなっていた。
テーブルの上には手紙があった。
読んで見ると..
家族には迷惑を掛けれないから出ていきます。
ごめんなさい
秋絵
と書いてあった。
その事をお父さんに電話すると直ぐに帰ってきた。
お父さんに何があったのか聞かれたが、多分子供ながら悪い事をした、そう考えたんだと思う。
「何も知らない」
そう答えた。
お父さんはそれから必死になってお母さんを探したけど見つからなかった。
僕は怖かったから..何も言わなかった。
それから半年くらいして警察から電話があった。
お父さんと一緒に行くと…
変わってしまった、お母さんが居た。
綺麗な黒髪は金髪になっていて、体も日焼けしたのか黒くなっている。
ミニスカートを履いていてパンツが見えていた。
そしてピアスが耳だけでなく口にまでしてあった…
これがお母さん..悪い人にしか見えない..
だが、僕やお父さんを見た、お母さんは
泣きながら「ごめんなさい」を繰り返していた。
これは後からお父さんから聞いた話だけど、お母さんは被害者だったらしい。
「悪い男に捕まって麻薬を打たれていたようです..奥さんは悪くありません」
そうお巡りさんは言っていた。
「ただ、麻薬が抜けれるまでは通院と施設に定期的に通って欲しい」
そう言われたそうだ。
それでもお父さんはお母さんが帰って来た事を喜んでいた。
だが、それはその日の夜までだった..
お母さんは泣いて謝っていた。
「もういいんだ..無事で良かった..」
だが、そのお父さんの前でお母さんは裸になった。
お母さんの体には蝶々と薔薇の刺青がしてあり、体のあちこちにピアスがついていた。
お父さんは黙って2階に上がって、中から泣き声と大きな音がしていた。
多分、暴れていたんだと思う。
そして、その次の日からお父さんは酔っぱらって夜遅くに帰ってくるようになった。
そんなある日、お母さんがまた、白い粉を使っていた。
そして、それをお父さんが見つけた..
白い粉はお父さんが没収していた..
お母さんは「返して、返して」を連呼していたが..お父さんは無視していた。
「白い粉がなければ..」そういってお父さんはそれを持って出ていった。
だが、それで終わりじゃ無かった…
それから暫くして..お父さんも、白い粉を使っていた。
家に帰ると、以前の僕が見た物をよく見るようになった。
裸のお父さんとお母さん..おじさんがお父さんに変わっただけ..
そして、その近くには必ず、白い粉があった。
「お父さんとお母さんは何処にも行かないよね..」
親が居なくなるのが怖かった…
「何処にも行かないから安心しろ」
「もう、お母さんも何処にも行かないわ..お父さんと気持ちよくなれるから..」
それなら良いや…白い粉の怖さをここでも僕は知らなかった…
それからはおかしな日々が続いていた。
お父さんやお母さんが暴力的になり殴られることもあった。
だけど、機嫌が良いと可笑しな位のお小遣いをくれた..
そんな可笑しな日々が暫く続いた後..両親が逮捕された..
何も知らない間に..僕は両親を白い粉の為に失ってしまった。
巻き込まれた…
施設に入った。
ここの施設は僕以外にも親を亡くした子が沢山居た。
特に虐められる事無く幸せに暮らしていた。
ただ、それは施設の中での事..
外では..
「あの子施設の子よね、両親が犯罪犯して捕まったんでしょう? 可哀想に..」
「両親が居ない子なんて碌なもんじゃないわ..」
同情されるか蔑まさせるかのどちらか..
実際に、同じ施設の女の子が不良に絡まれて助けに入ったのに、一方的にこっちが悪者にされた。
親が犯罪者というハンデは何処までも続く..
そして、それが麻薬絡みとなれば..そのハンデは更に大きい。
だが、僕はまだついているのかも知れない。
最初に学校に通い始めの時に、虐めにあいそうになり..暴れた..その結果、危ない人間と思われた。
麻薬で捕まった両親の息子が暴れる..確かに少し怖い..その結果が孤立。
孤立したおかげで虐めの輪から外れた。
虐められない代わりに友人もいない..それが僕の現状だ。
だから、僕はクラスでは眠っている事が多い。
僕が眠っていると大体は静かだ..僕は悪い事なんてしてない..だが、両親が麻薬で捕まった。
そして、僕は目つきが悪い。
その結果..風評被害が広がっていく..
京之介は只の不良ではない、裏でヤクザと繋がっていてヤクの売人をしている。
タイマンで負けた不良は薬漬けにされる..
そんな噂が広がっている。
実際は違う、最初に虐めにあいそうになった時に倒した奴が、僕の知らない所で危ない人間と繋がっていて中学生なのにドラッグをやって捕まっただけだ。
なのに勝手に結び付け噂になり…そういう事になった。
まぁ、そのおかげで静かに過ごせているから良いんだが..
ちなみにドラッグスターは僕のあだ名..最初、麻薬男というあだ名をつけられそうになった..
その時に「麻薬男は無いだろう」と言って睨んだら..こんなあだ名になった。
カッコ良いから良いなんてこと無いだろう..僕は不良でも麻薬の売人でもないのだから。
基本的には僕の近くでは騒がない…そして静かだ。
だが、いてもお構いなく煩くなる時がある。
それはこのクラスには「有名人が4人いる」その4人絡みだと凄く煩い。
生徒会長
皆神東吾
日本を代表する企業の一人息子、甘いマスクと女性に優しい事から王子様と呼ばれている。
副会長
真珠院麗美
この学園の理事長の娘、天上東吾の彼女、典型的なお嬢様キャラ、見た目は優しく綺麗。
書記
牧野 霊夢
官僚の娘 麗華が綺麗っていうなら霊夢は可愛いって感じ、まぁロリコンならはぁはぁ言いそうな感じ
会計
篠原 梓
剣道部主将、まぁクールビューティー、そんな感じだ。
この4人は生徒会の仕事の関係で全員が同じクラスになるように配慮されている。
この生徒会の4人が何か始めると途端に周りが騒がしくなる。
この四人にはファンがいて、特に東吾と麗美はファンクラブまであって、写真がブロマイド扱いにされ一部で販売されている。
まぁ僕が闇だとすれば、此奴らは光だ。
少し羨ましいがそれだけ、恐らく学校を卒業したら接点はないだろう。
しかし、生まれという物は怖い、僕は何もしなくても 麻薬中毒の親の子供..犯罪者の息子..
なのに、此奴らは親が良いから..リア充だ。
本当に行う事は無い..
だが、思う時がある..誰かこいつ等の親..いや本人でも良い..麻薬中毒にしてくれないか..
何もしない僕が..闇..
だったら、此奴らも一回闇に落ちてこい..その上でも、光り輝く人生が送れるならその時は、認めてやるよだが掛けても良い。
僕と同じ環境なら、だれ1人輝く事は出来ない..断言できる。
まぁ、考えても仕方ない事だ…
つい、寝てしまった。
気が付いたら外は夕日が差していた。
放課後になってクラスには4人と僕しか居ない。
話掛けられない僕はそのまま寝ていたようだった..
そして4人はどうやら生徒会の打ち合わせをしているようだった。
この4人は簡単な打ち合わせだと生徒会室に行かないで此処でよく打ち合わせをしている。
さぁ帰るか..
だが、この日はいつもと違っていた。
僕がカバンを持つと急に辺りが光り輝きだした。
「何が起きているんだ!」
「何よこれ..」
「考えるより逃げないと不味いです」
「駄目だ..扉が開かない」
4人も焦っている..だが、光は大きくなり天井に魔法陣が現れた..
これはもしかしたら..異世界転移とかいう奴なのか?
間違いない..だが呼び出されるのは彼奴らだけだろう..どう考えても僕は無関係だ。
できるだけ端によって体育座りをしていた。
もしかしたら、僕は無関係だから逃げられるかも知れない..そう思った。
だが、無情にも..僕も魔法陣に引き込まれていった。
女神との邂逅
僕は気が付くと白い空間にいた。
周りには生徒会の4人がいる。
ここは何処かは解らない、この後どうなるかも..但し何となくだが異世界に転移させられる。
そんな小説を読んだ気がする。
多分、僕は巻き込まれたんだろう。
とりあえず、状況確認の為に身を隠す事にした。
身を隠しながら様子を見ていると東吾たち4人が目を覚ました。
するとそこに案の定、女神が現れた。
「ここは何処でしょうか?」
「ここは白い空間、世界の狭間になります」
「その世界の狭間になんで俺たちはいるのでしょうか?」
「あなた達は別世界ルーディアに召喚されました!」
「召喚ですか? それで俺たちはどうなるのですか?」
「異世界に行って頂き勇者として戦う事になるでしょう」
「ちょと待って..なんで私たちがそんなことしないといけないの?」
「召喚されたからです」
「余りにひどいと思います..平和に学生生活を送っていたのに..帰して下さい」
「それは無理です」
「無理やり連れてきて戦わせようっていうの? ふざけないで!」
「そうですか? なら、そのままルーディアに行きなさい! 召喚したのは私ではないのです! 干渉しませんのでそのまま行って文句を言えばいいと思います!ではもう会う事もないでしょう!」
「待ってください、謝りますから説明してください」
「最初からそう言えばいいのです! 簡単に言うと貴方たちは魔王と戦うために異世界で召喚された、その貴方たちが可哀そうだから、慈悲深い私が戦えるようなジョブや能力を与えようとしたそれだけです!何か不満でもありますか?」
「ありません、俺が代表して謝りますからお許しください!」
「解りました、私は慈悲深いので謝罪を受け入れましょう! 異世界に行くあなた達にジョブを与えます」
「ありがとうございます」
「おや、他の方は謝る気がないのですか?」
「「「ありがとうございます」」」
「宜しい、では異世界で戦えるように貴方たちにジョブを授けます」
「ジョブですか?」
「ええ、これよりジョブを授けますので終わるまで喋らないように..」
「皆神 東吾 貴方には勇者のジョブを授けます」
「真珠院 麗美 貴方には聖女のジョブを授けます」
「牧野 霊夢 貴方には賢者のジョブを授けます」
「篠原 梓 貴方には剣聖のジョブを授けます」
「もう喋って頂いて構いません..説明はむこうで聴いてください..では.」
「「「「待ってください!」」」」
4人の静止を無視して女神は送還をした、4人はその場から姿が消えた。
「さてと、そこに隠れている方、こちらに来なさい」
「はい、女神様」
「貴方も一緒で無いと向こうには送れないようですね、すいませんが貴方にもルーディアに行って頂きます」
「あの、僕にはジョブとかは頂けないんでしょうか?」
「元から4つしかありませんので渡す事は出来ません」
「待ってください! それでは僕は死んでしまいます..」
「仕方ありません、貴方には勇者達の様な凄い能力は与えられません、その代わり出来る範囲で望む能力を与えましょう」」
「慈悲深き偉大なる女神様…有難うございます」
「そうですか貴方は礼儀正しいのですね…なら30分時間を与えます、特殊なジョブはありませんが、貴方が望む能力を私ができる範囲で3つ与えます..これは特別です…さぁ考えなさい」
「ありがとうございます!」
そして考えた結果
1.麻薬の血(血液をはじめ体液が麻薬になる、自分には健康的な異常は無し)
2.異空間に2人一緒に転移する力(現実社会で時間の経過は無いが、異空間に3日間自分を含み転移できる、途中解除はできないし、最低限の生活道具しかない)
3.姿、形を変えて貰いたい
この3つにした。
「偉大なる慈悲深き女神様、この3つでお願いします」
「それがあなたの望みなのですか? 特殊ですがどれも、凄いというレベルではありませんね良いでしょう..では貴方もルーディアに行きなさい…」
「ありがとうございます…この御恩は一生忘れません」
俺は自分の能力を使ってみた。
「くす…その能力は私には通じませんよ? 残念ながら一緒に3日間はいてあげれません! ですが、邪な好意とはいえ嬉しいものです…もう何もあげれませんが笑顔で送り出します..さぁ今度こそお行きなさい!」
「さようなら、偉大なる慈悲深き女神様、向こうの世界に行ったら必ず貴方に祈りを捧げます。だから、お名前を教えて頂けませんか」
「私の名前はノートリアです」
そして僕は光に包まれまた意識を失った。
私はノートリア..女神ではあるが決して美しくない…それどころか醜いのかもしれない..
転生者、転移者の多くは私に興味を持たない..名前すら気かない者が多い..
だから、最近では事務的に作業していた..
自分に興味を持たない者を何故女神とはいえ愛せる訳が無い。
ちゃんと神として信仰するなら、その望みはしっかりと叶えるとしましょう…ノートリアの名にかけて..
召喚された先で
再び僕は目を覚ました。
周りに気づかれない様に辺りを見回す。
石作りの壁にローソクに魔法陣…どうやら此処が召喚先のようだ。
4人はまだ目を覚ましていない。
先に自分の状態を確認しておこう。
《ステータス》
松浦京之介(一度だけ変更可能)
ジョブ 魔法剣士(ドラッグマスター)
女神スキル 麻薬の血(常時発動) (異空間幽閉3日間)
スキル 剣術の才能1 魔法の才能1
尚、女神スキルは他の方から見えていません。
姿や形がどのように変わったかは今は調べようもないが髪が銀髪なのは確かだ。
名前を変えた方が良いだろう。
名前の変更をイメージしたら勝手に名前が変わってしまった。
しかし、知らない名前だ…まぁ別に良いんだけど。
赤木至高
ジョブ 魔法剣士(ドラッグマスター)
女神スキル 麻薬の血(常時発動) (異空間幽閉3日間)
スキル 剣術の才能1 魔法の才能1
尚、女神スキルは他の方から見えていません。
さてと現状の把握だ!
東吾は勇者のジョブ、麗美は聖女のジョブ、霊夢は賢者のジョブ 梓は剣聖のジョブを貰っていた。
まぁ一人で生きていく事も充分可能だが一人位手に入れて置いた方が良いかも知れない。
俺はホモではないだから東吾は要らない、それに此奴と一緒に居ると魔王を討伐しなくてはならない。
梓は剣聖だから恐らく俺の魔法剣士の上位交換か、剣術特化だろう、外すとしよう。
魔法剣士がどれだけ魔法が使えるか解らないが、攻撃が中心と考えたら賢者の霊夢も要らない。
そう考えると、欲しいのは聖女の麗美だ。
一層の事、全員寝取って東吾を悔しがらせるのも面白いが、それで世界が滅んでも困る。
そう考えると1人に絞るのが賢明かも知れない。
4人が目を覚ました、それに合わせて俺も目を覚ました振りをする。
「ここは何処だ」
東吾が目を覚ました。
「「「うーん」」」
三人が気伸びしながら目を覚ます。
それを待っていたとばかりに声が掛かった。
「ようこそ、勇者の皆さん、私はこの国ルーディアスの第一王女マリアーヌと申します、後ろに座っているのが国王ハインリッヒ十二世です」
東吾が不機嫌そうに聞いた。
「その王女様や王様が俺たちに何の用があるって言うんだ!」
騎士の一人が抜剣をして怒鳴る。
「口を慎め、小僧!」
だが、東吾は止まらない。
「なんだ、このおっさん」
痺れを切らした騎士が近づいてきた。
「貴様、王族に対する何たる狼藉、牢に放り込んでやる」
「良い良い、何も知らぬのじゃ許してやれ」
「ハッ!」
騎士は一れいをすると後ろに下がった。
《このままでは埒が明かない、僕が喋るしかなさそうだ》
「すみません、教えて下さい、俺たちに何の用があるのですか? そして何で俺たちは何で此処に居るのでしょうか?」
「その事については私からご説明させて頂きます」
「宜しくお願い致します」
「実は最近、魔族の活動が活発になってきました、今までは人を襲わなかった魔物までもが人を襲うようになり、各国に多大な被害が及ぶようになりました、原因を調査した所遙か昔に勇者が封印した魔王の復活の兆しがある事がわかりました」
「成程、それが俺たちを召喚した理由なのですね」
「はい、魔王に対抗するために昔使われたと言う勇者召喚の魔法でお呼びさせて頂きました、
この魔法で呼ばれた者はここに来る前に魔族と戦う為の力を女神様から与えられているはずです」
「確かに、力を貰った、なぁ、皆んな、女神が力をくれたのはこの為だ、、俺はこの国を救う為に戦おうと思う」
「東吾がやるなら私も戦うわ」
「私も戦うわ」
「その為の能力がこの前もらった能力なんだよね」
「皆んなありがとう、マリアーヌ王女様、俺たちはこの世界を救う為戦います」
《単純だな、自分達が選ばれた人間だと思ったら協力する..いかにも東吾らしいな》
「ありがとう皆さん…おやそちらの方はどうしたのですか?」
「お話は聞きましたが…私は女神様に会っておりません」
そういう事にした方が無難だ…多分調べれば勇者じゃなく、巻き込まれた。
そう解るはずだ…勇者パーティのジョブじゃないんだからな。
「そうですか、見た所、貴方は…それなりに身分のありそうな方に見えます…巻き込んでしまったのはこちらの落ち度、とりあえずは同じ待遇にしまして、何か考えましょう! とりあえずはまずはお休みください。その後は簡単な歓迎会と晩餐会を開きますので、難しい話はその後にしましょう」
とりあえず、一回解散する事になった。
「あの、他の方と話させて頂いて宜しいでしょうか?」
「疲れない程度でお願いしますね..」
さてとこれからどうするかな?
偽りの世界観
「貴方達4人はお知り合いなのですか?」
「まぁそうですね! 前の世界では同じ学校でで生徒会だったんだ!」
「だから仲が良かったんですね…仲間がいるなんて羨ましい..」
「あの、お名前は何ていうのかしら?」
《あれっ、麗美が何故か名前を聞いてきた…普段は他人を見下して無関心なのに》
「あっ、申し遅れました、私の名前は赤木至高と申します」
「私の名前は真珠院麗美と申しますわ、宜しくお願い致しますわね、所で至高さんは何人なの?綺麗なプラチナブロンドですが?」
《こういう場合は嘘と本当を混ぜて話すのが一番だな》
「日本人です、地方で言うなら東京になります」
「えっ日本人なんですの? そうは見えませんが?」
「いやだなー日本人にブロンドが多いのは有名な話しじゃないですか?」
「嘘だー揶揄っているんだよね?」 霊夢が会話に割り込んできた。
「別に揶揄ってませんよ?」
「まて、だったら私達は君からは何人に見えるんだ」 梓が聞いてきた。
「そうですね…黒髪に黒目でこんだけの美人だと、ロシアか北欧かそんな感じですか? あってますか?」
「違いますわ! 私は日本人ですのよ!」
「本当ですか? 綺麗な黒い髪に黒い目、それなのに日本人なんですね!」
「そうですわ、ですがこれは私達の世界では普通の日本人の特徴なんですの、逆にプラチナブロンドでブルーアイの日本人何て居ませんわよ!」
「私も知らないな」
「霊夢も聞いた事無いよ!」
「ああっ俺も初めてあった、染めていたりカラーコンタクトしている訳じゃ無いんだよな? だが、その制服うちの物にそっくりだ、学校の名前を聞いても良いか?」
「東欧学院という高校だけど.一応進学校で有名なんだ」
「東欧学院なら同じ高校だぞ..だがあった事が無いな!」
「もしかして、パラレルワールドの日本から来たのかな?」
「「「パラレルワード?」」」
「そうだ、俺も聞いた事ある、同じような世界が幾つかあるって話だよね!」
「それだよ、それ!」
「うん、多分それだ、確かに考えてみれば生徒会長はミシェルだったから違う…そういう事か? 霊夢さんって頭良いんだね…可愛くて頭が良い…うん、凄い..凄くモテるんだろうね..ファンクラブとかあったりして!」
「霊夢はそこまでモテて無いよ? 彼氏もいないし..そういうのがいるのは東吾様と麗美様と梓さん位だよ!」
「うん、確かに麗美さんや梓さんならファンクラブがあって1万人位のファンがいそうだよね!」
「嫌ですわ! 幾ら何でも大袈裟ですわ!」
「私だって精々剣道好きの男子に人気がある位だぞ」
「不思議だね…信じられない!」
「だけど、至高くんは失礼だな、俺はスルーなのか?」
「普通に考えて男にファンクラブがあるなんて夢物語信じる訳ないでしょう? 4人も女友達がいるだけで僕は羨ましいよ! 充分勝ち組じゃないか? 見栄張らないで良いよ!」
「おい、俺は見栄なんて張って無いぞ..ふざけるな!」
「ちょっと待って..東吾! あの至高さんの世界はもしかして男女比にずれがあるんじゃないの?」
間に麗美が入ってくれた。
「そうですね、男女比 40対1位です…そちらの世界では違うのですか?」
「「「「男女比 40対1」」」」
「そうですが…可笑しいですか?」
「それって 男性40人に対して女性が1人しかいないって事であっているのか?」
「その通りですが、そちらは違うのですか?」
「悪かったな!そういう事なら、そう思うのも当たり前だ、俺の世界はほぼ1対1だ!」
「本当ですか?」
「本当だぞ!」
「本当ですか! 夢の様な話で信じられません…あの例えばですよ..そちらの三人の女性と握手したいと言ったらして貰えるものでしょうか?」
「私で良いなら構わないが!」
「霊夢も握手位別に構わないよ?」
「私も構いませんわ!」
「本当にこんな夢の様な世界があるあんて..これだけでも転移してきてラッキーです..有難うございます」
「大げさですわよ」
「うんうん、握手位なら何時でもしてあげるよ!」
「私もだ!」
「有難うございます!」
「俺も握手した方が良いか?」
「それじゃ反対側で..」
「露骨だな!」
「だけど、僕、こんな綺麗な女性に握手して貰うなんて、殆ど経験が無くて..」
「不憫だな、案外至高くんも美形なのにな」
「東吾くんの世界なら俺、もしかしてモテるのかな?」
「多分、彼女位直ぐに出来ると思うぞ!」
「そうかー、何時か言ってみたいな、その世界」
僕は嘘をついた、日本の風習をうっかりしてしまった時の保険と、何より僕はボッチなので常識が可笑しい事がある。
女性の少ない世界から来た、これなら女性に積極的になっても多少は見逃してくれるだろう。
「男女比の偏った世界から来た」 これで積極的になっても仕方ない。
そう、思われるだろう..
ガールズトーク?
「しかし、凄い話だったねー」
「本当に凄い話だったな…あれ程の美少年がモテない世界か、信じられないな!」
「そんな事ないですわ! 東欧学院の生徒が1200人に対して約2.5% 女性が30人しかいない計算になりましてよ! つまり全員の女の子が学院の男子とつき合ったとして1170人があぶれますの? こう考えたらありますわ!」
「だけど、至高くん、カッコ良いからそれでもモテそうな気がするよ!」
「そうだよな、もしその世界に私がいたとして、彼程の美形がつき合って欲しいと告白してきたら多分つきあうと思うな、まぁ剣道がすきならだけど!」
「そうかしら? アイドルやハリウッドスターですらつき合える世界だったら? 流石の彼でも候補の一人にならない?」
「えっ、至高くんの世界ってそこ迄なのかな!」
「実際の所は解りませんわ、ですが前の世界で没収した小説に男女比もののライトノベルがありましたでしょう?」
「あったね」
「あった、あった」
「あれは逆の話しだけど、平凡な男の子が男女比1対30の世界に迷い込む話しでしたけど、アイドル級の女の子ですらモテない話でしたわ」
「そこまでの世界なんだね」
「そうか、流石にそういう世界なら彼程の美形でも、相手がいないのも解るな」
「所で、2人とももしかして至高さんの事を気に入りましたのかしら?」
「うん、霊夢は気にいったかな? だってあんだけの美形なんだよ?」
「私は三角、もし、あれで剣術好きなら丸って感じだな」
「私も興味はありますわ、ですが二人とも東吾の事はもう良いのかしら?」
「悩んじゃうかな?」
「悩むな」
「聴いた所、この世界の男女比も1対1ですわ、そう考えたら、東吾より彼が気に入ったなら、彼がその事に気が付く前に勝負した方が宜しいわよ! 彼、東吾より美形ですもの、こちらの世界ならかなりモテると思いますわよ」
「うーんどうしよう..東吾様は振り向いてくれる訳ないし、そろそろ東吾様に見きりつける頃なのかも知れない」
「まぁ、直ぐに決める事も無いですわ」
「そうだな、彼の気質しだいだな」
孤独な晩餐
4人との会話を終えて部屋で休んでいると可愛らしいメイドさんが迎えに来てくれた。
「至高様、歓迎会の用意が出来ました、ご案内させて頂きます」
「解りました、宜しくお願いします」
そのままメイドについて行くと王族や貴族のいる大広間に案内された。
どうやら立食パーティを兼ねた催し会のようだ。
既にその場所には東吾達4人も来ていた。
挨拶をしようと思ったがそれぞれが貴族に囲まれている。
しかも、露骨に懐柔しようという考えが前面に出ている。
東吾には貴族の令嬢の中でも美形の物が取り囲み、他の3人は美形の男性の貴族が取り囲んでいる。
東吾は貴族の令嬢と仲良く話しているが、他の3人は別にどうとも思ってないようだ。
もしかして、「生徒会は東吾のハーレムなんじゃないか?」そういう噂があったが違うのかも知れない。
俺の方には今の所誰も来ない。
そりゃそうだ、「勇者パーティー」と「巻き込まれた者」誰もが勇者パーティーの方にお近づきになりたい。 そう思うのは当たり前の事だ。
多分、俺のジョブは魔法剣士(ドラッグマスターは見えていない)だから不味い事になる事は無いと思うが、早いうちに「勇者パーティー」の3人のうち1人を手に入れた方が良いかもしれない。
折角来たんだ挨拶位するか?
「流石だね東吾くん、本当にモテたんだね!」
「まぁな、これで俺の実力が解っただろう!」
「うん、納得したよ、それじゃ」
「またな!」
「3人共凄い人気者だね!」
「至高さん! そんな事ないですよ、異世界人が珍しいだけだって!」
「そうだと思う、客寄せパンダみたいな物だな!」
「そうですわ、物珍しいだけですわ!」
「そんな事無いと思うよ、皆魅力的だからだよ、それじゃ行くね」
「「「ああっ」」」
適当に食事を済ませて自分の部屋に戻った。
最初はこの位の方が良いだろう。
はじめての夜、はじめての3日間
夜中に俺は目を覚ました。
折角異世界にきたんだ、僕と今迄言って居たがこれからは意思を変える為にも「俺」と言うように変えた。
実際にジョブや詳しい話までして無いから解らないが、この先勇者パーティーと引き離されるかも知れないから行動を起こすべきだ!
やっぱり、手を出すのは「真珠院麗美」一択だ..
この世界を生き抜く為にはパートナーは必要だ。
そして、俺は外見で言うなら黒髪、黒目の日本人の外見が好きだ。
だから最初のパートナーは日本人が欲しい。
それに麗美は頭の回転が良く、礼儀正しい。
前の世界なら高嶺の花だが、この世界ならワンチャンあるだろう。
《さてと、そろそろ行動しますか》
夜中まで待ったのは理由がある、それは万が一に備えて夢だと思わせた方が良いからだ。
まぁ、実際にまだスキルを使った事が無いから..どの程度の力か解らないが…
麗美の部屋の近くまで来た。
「異空間幽閉」
小声で言ってみたが発動しない。
《スキルってどうやって発動すれば良いんだ?》
意識を集中してみた…
《対象を選んで下さい…真珠院麗美》
こんなのが頭に浮かび上がる。
どうやら、近くにいる人間から選ぶことが出来るようだ。
今は近くに麗美しか居ないから、麗美しか浮かび上がらないのだろう。
《対象…真珠院麗美》
そう選択した瞬間、白い部屋に移動した。
目の前で麗美が寝ていた。
一番、近い状態は召喚された際に女神にあった場所、白い空間に近い。
何かないか見たら…本当に何もない。
辺り一面見回したら、水瓶と果物はあった。
更に見回してみても何も無かった。
ただ、物凄く広い空間なのか端まで歩いて2分位掛かり、そこまで行くともう麗美は見えなかった。
時間は3日間たっぷりある、まずは、麗美の近くで寝てしまおう。
「至高さん、至高さん起きて下さいまし」
「どうかしたのですか? 麗美さん」
「ここは何処なのでしょうか? もしかして又転移してしまったのでしょうか?」
「あれっ本当だ、ここは何処ですか?」
「解らないんですの、気が付いたらこんな所にいたんですわ」
「俺も此処が何処だか解りません..とりあえず調べてみませんか?」
「そう、するしか無さそうですわね!」
結局、端から端まで二人で歩いて2分、果物と水瓶以外は何も無かった。
「これは閉じ込められたのかも知れないですね」
「間違いなくそうですわね」
「とりあえず現状確認の為にも調査した方が良いかもしれません」
二人で一番端迄行ってみた。
そこから、空間を押してみたが、触る事も出来ずそのまま押し返された。
ここから出られないのは解っている。
だが、麗美の手前脱出の手段を探さなくては怪しまれる。
それに俺が体を動かす事は別の効果も見込める。
「至高さん、私なんだか頭がぼやけてきましたわ..」
そう、俺の能力は麻薬の血だが、体液も麻薬。当然、汗にも麻薬の成分が含まれている。
恐らく、その影響だろう。
「どうする事も出来そうもないですね!」
「そのようですわね、休みながら助けを待つしか無さそうですわ」
1日目
「しかし、何もありませんわね、食べ物の果実がいくら食べても減らないのと水が減らないのが救いですわね」
「どうしますか? 何かお話でもしましょうか?」
「そうですわね、他に出来る事も無さそうですわ」
だが、数時間も話すと話す内容が無くなった。
暫くすると麗美がモジモジしだした。
「もしかして、トイレですか?」
「恥ずかしいので言わないで下さい…」
「だったら場所を決めませんか!」
二人で話し合い右端をトイレに決めた…だが、この時に紙が無い事に気が付いた。
幸い、水瓶の水も無限に出る事が解ったのでそれで洗い流す事に決めた。
麗美は赤い顔をしながら水瓶を持っていった。
帰って来てから様子がおかしい、たまに手の匂いを嗅いでいた。
自分の番になって解った..紙が無いから手で拭くしかない。
「時間の経過が全く解らないね」
「本当ですわね、どの位がたったのでしょう? 30分なのか1時間なのか全く解りませんわ」
「少し体力温存の為に休んだ方が良いかもね」
「そうですわね、何故か少し息苦しいから休んだ方が良いかも知れませんわ」
麗美は心細いのか俺の近くで寝た。
2日目
「おはようございます」
「おはようございます、私、汗臭くないですか?」
「俺は大丈夫ですけど.気になるなら水浴びしても良いかも知れません、幸い水瓶からは無限に水が出るみたいですから、左端を水浴びの場所にしませんか?」
「そうですわね..あの、その」
「大丈夫ですよ、覗いたりしませんよ…まぁ麗美さんは魅力的ですが、しっかり我慢しますから安心して下さい!」
「ええっ、信頼してますわ」
「少しはさっぱりしましたか?」
「ええっですが、服の匂いがきになりますわね」
「そうですか? 麗美さんは良い匂いがしますから気になりませんよ」
「それなら良いのですが…」
「しかし、この状態が何時迄続くのかな?」
「私も解りませんわ…しかし意外に時間を潰すのって大変ですのね!」
「俺は綺麗な麗美さんと一緒なので嬉しいですが、麗美さんは災難ですよね!」
「確かに災難ですが、相手が至高さんで良かったと思ってますわ..凄く紳士的ですので安心ですわ..それに女同士よりも楽しいですわよ!」
「そうですか、そう言って貰えると凄く嬉しいです..本当は良くないのに麗美さんを独り占めしているようでちょっと幸せです!」
「ちょっとですの?」
「いえ、凄く幸せです!」
「そう言われると私も少し幸せな気分がしますわ!」
3日目
「おはよう」
「おはようですわ」
「今日は何をしましょうか?」
「案外何も無いと出来る事って少ないですわね」
「本当にそうですね」
「しかし、この果物にも飽きましたわね、あるだけましとも言えますが」
「そうですね、それじゃ」
俺は学生服のカラーの角で指先を切った。
「いきなり指を切ってなにしてますの? 血が出ていますわよ!」
「血ってちょっと味がするじゃないですか? 美味しくは無いと思いますが良かったらどうぞ!」
俺の血は麻薬だ、これを口に含ませる事、それが今回の最大目標だった。
「あの、ごめんなさい..私が我儘を言ったから、だけど目を瞑って下さい..その恥ずかしいので」
麗美はオズオズと指に口を近づけて来た、そして意を決したように口に含むと血を吸い始めた。
掛かった、これでどうなるのかは俺にも解らない..だが、俺は知っている。
どんな絆も麻薬には敵わない…それは家族で身に染みて知っている..麻薬こそが愛よりも深い絆..だ。
気づかれない様に薄眼で見ていた。
最初はただ口に含んでいただけだったが、段々と吸い付く様に吸い始めた、そそして途中から舌を絡めて、舐めながら少しでも多くの血を吸いだそうしている。
舐めながら、血を飲み込んでいるようだ。
指を一心不乱に吸っている、気が付くと30分近く麗美さんは指を吸っていた。
流石に指を引き抜いた。
「はぁはぁはぁ、もっと、もっと…あっごめんなさい..」
僕の指はふやけていた。
「別に良いですよ..吸わせたのは俺だし、それに麗美さんのセクシーな顔が見えて凄く嬉しかったから」
「私としたことが、恥ずかしいですわ」
「だけど、そんなに俺の血が美味しかったですか?」
「その、味に飢えていたせいか、美味しかったですわ、まるで吸血鬼にでもなったみたいですわ」
「なら、良かったです」
それから暫くして、元の空間に戻って来た。
凄く便利だこれ、だって元の場所…今、俺がいる場所は麗美の部屋の前、しかも時間も殆ど経っていない。
これなら、何かされたとは思わないし夢..そう思うだろう。
ヒロイン攻略 スタート 真珠院麗美
明け方、目が覚めた。
どうしたのかしら? 私が殿方の夢を見るなんて今迄ありませんでしたわ。
しかも、2人っきりで過ごす夢なんて見た事はありません。
一体どうしたのかしら..しかも、至高さんの近くでトイレに行って、シャワー迄浴びて…
そして、最後には血を吸って、あんなに嬉しそうに、嫌らしい事するなんて…夢とはいえ考えられませんわ。
本当に可笑しいですわ…あんな夢を見てしまって今日からどういう顔して会えば良いのかしら…
「至高様、朝食の準備が出来ました」
流石は王城….秋葉原と違って本当のメイドさんがいる..うん、本物は全然違うな。
「どうかなさいましたか?」
「あー俺の居た世界では、男女比に開きがあって、女性が少ないんだ…ごめん見入ってしまったよ」
「そう、なんですか? この世界では男女比は、はほぼ1対1ですから女性何て沢山居ますよ」
「そうなのか..慣れないと大変そうですね」
「そうですか?」
「こんな綺麗な女性がいる生活なんて考えられない位幸せですね」
「そうですか…貴方みたいな方にお世辞でもそう言われるなんて嬉しいです..あらいけない、ご案内しますね」
この位の振りは作っておいた方が良いだろう。
しかし、この姿は思ったより美形だ…
少なくとも女性の第一印象は悪く無い..
もし、教会に行くチャンスがあればお祈り位しよう…
ちょっと豪華な食堂様な所に来た。
まだ、勇者組は来てない、そのままメイドさんが椅子を引いてくれて席に着いた。
少し、遅れて勇者組が此処にきた。
挨拶位はした方が良いだろう。
「おはようございます!」
「おはよう..」
「おはよう」
「おはようさん」
「おはようございますわ、至高さん!」
周りの三人が麗美の方を見ている。
明かに笑顔で返している…
うん、こんな麗美は余り学校で俺も見た事は無い。
麗美の笑顔は麗美スマイルと一部の生徒に呼ばれていて凄く魅力的だが余り目にする事は少ない。
思わず、麗美と目が合ったが..麗美に目を反らされてしまった。
嫌ですわ..昨日あんな夢を見たから至高さんの顔が見られないですわ..
それにこの胸のときめきは何なんでしょうか?
どんな男性を前にしてもこんな気持ちにはなりませんでしたわ..
それなのに、至高さんを見ているとさっきから汗が出てきて心臓が早くなってきます。
それに指を見ると何故か口が緩んできて口の中が唾液で一杯になってきますわ..
まさか..恋なのでしょうか?
私はもう一度至高さんの方を見てみます..残念な事にもう私の方を見ていませんわ。
食事が喉に通りません..私は何か呪いにでも掛かってしまったのでしょうか?
さっきから至高さんから目が離せません..いえ正確には、至高さんの血が欲しくて仕方ないのですわ。
「どうしたの!麗美様、食欲が無いんですか?」
「ええっ少し..」
《麗美様、それはもしかして恋の病ですか? 流石にそんなに見ていたら気づかれちゃいますよ?》
《さすがに、ガン見は不味いと思うぞ..まぁ麗美に好かれて嫌な思いの男はそうは居ないと思うけどね》
「解らないのですわ…だけどね..どうしても至高さん(の血)から目が離せないんですの..」
《まさか、本当に恋の病なのか?》
《だけど、至高さんって、東吾様以上のイケメンだからそれもあるかも知れないね》
「麗美、後で相談に乗るから、今はちゃんと食事しようよ」
「そうだよ麗美様」
「そうですわね..あっ..」
至高さんが笑い掛けて下さいましたわ..
私はニコリと返しました。
《あの笑顔..》
《真面目に麗美様…恋の病に..》
1日じゃこの程度か..思ったよりこの能力強く無いのかも知れない。
ガールズトーク?
はぁはぁはぁ..なんなんですの?
至高さんが欲しくて、欲しくて溜まりません..
まるで吸血鬼にでもなった様に、血が欲しい..指先を斬って..しゃぶりたい..
油断すると直ぐに..こんな考えで頭が一杯になってしまいます..
「麗美様..大丈夫ですか?」
「大丈夫ですわ」
霊夢が心配してくれていますが、気にしている余裕はありません。
「本当に顔色が悪いぞ..大丈夫なのか?」
篠原さんが話しかけてきているけど駄目ですわね。
「ええっ平気ですわ」
「それで麗美様、さっきのお話ですけど..」
「さっきのお話しって何のお話しでしょうか?」
「とぼけないで良いよ..ずうっと至高さんの事見てたでしょう? 一目惚れって奴か?」
「わからないわ」
「解らないんですか?」
「ええっ、至高さんを見てると、胸が苦しく居なって、頭がぼーっとなりますの..そして欲しくて欲しくて堪らなくなるんです」
「重症だ..麗美、それが恋ってもんだよ、まぁ私は経験ないけどな…」
「私もそう思いますよ? 私もそこまでの恋はした事無いけど、人を好きになると胸が苦しくてせつない気持ちになります」
「へぇーおこちゃまなのに?」
「剣道以外興味ない梓ちゃんには解らないと思うけどね」
「何だか私が恋を知らない女みたいじゃないか?」
「そうじゃないのかな?」
「お前、知っていていっているんだろう?」
「それはお互い様でしょう」
「まぁ、だけどさ、今の麗美を見ていると自分のは違うのかも知れないな」
「霊夢も少しだけ、そう思った」
「それで私はどうなってしまっているんですか?どうなってしまうの..こんなの何時までも耐えれませんわ」
「そうですね、先手必勝じゃないか?」
「先手必勝ですね」
「それは、どういう事ですか?」
「あの、麗美様、至高さんは男女比の偏った世界から来たんだよ? しかもまだ自分が凄くカッコ良い事に気づいてないんだよ?」
「それがどうかしましたの?」
「麗美も恋愛はポンコツなんだな…だから、自分の価値に気が付く前に押し倒しちゃえと言う事..」
「そんな事…できませんわ」
「恋愛はスピード勝負..出来ないなら他にとられるよ」
「そんなのは..嫌ですわ」
「だったら、麗美様頑張るしかないよ?」
「そうだぞ、あれ程の美形だ時間を掛ければ掛ける程不利になる、本当にそう思うよ」
麗美も彼女達も気が付いていない…
これは、恋じゃない、麻薬による中毒や禁断症状の一部である事に…
至高×東吾×女の闘い
チャンスはそれ程ない。
3日間程は異世界転移の疲れを癒す為に休ませて貰えるらしい。
その後は王都の見学をして、それが終わったら訓練が始まる。
話によると、暫くは一緒に俺も行動するようだ。
だが、ついて行けなくなったらその時は別のカリキュラムに切り替えるらしい。
部屋で休んでいると騎士が訪ねてきた。
不安を取り去る為だろうか? 色々と質問に答えてくれた。
わざと心配そうにジョブや自分の今後について質問した。
「安心して良いと思いますよ…勇者様達程では無いが魔法剣士も充分上級職です。騎士団にも1人居りますが期待の新人です」
詳しく聞いてみると、1人しか居ないスーパーレアな勇者達とは違うが、レアでありこのジョブに生まれたら将来困る事は無いという凄い物らしい。
「勇者達と一緒ですから、不遇と思うかも知れませんが、私からしたら充分羨ましいです…王宮からスカウトがきたり、冒険者をしても上級レベルが狙える凄いジョブなんですよ」
「そうですか! それは良かった、所でドラッグマスターってジョブはどんなジョブですか?」
「ドラッグマスターですか? それは至高殿の世界のジョブですか? こちらには無いですが..」
「いえいえ、伝説の勇者が居る世界なので、同じく空想のジョブがあるかなと思いまして」
「世界が違うとやはり凄く違いがあるのですね」
「そう思います」
その後はこの世界の事や雑談をして騎士は帰っていった。
暫くするとドアがノックされた。
麗美だろうか..
期待をしてドアを開けると居たのは東吾だった。
さぁ、どうするべきか。
俺は猫を被る事にした。
「どうしたんだい東吾くん」
「一緒に転移した者同士、少し話さないか?」
「そうだね..いいね」
「…..」
こんなに寡黙な奴だったか?」
「東吾くんって寡黙なんだね、俺から話しても良いかな?」
「俺?」
「あっ、俺の世界じゃ女性が少なくて、女性受けを狙って僕って言っていたけど、東吾くんを見ていたら「俺」って言うのがカッコよく見えたから真似させてもらったよ」
「そうか、それで口調が違うんだな…」
「ただ、直ぐにメッキが剥がれちゃうけどね..そうだ、女性にモテるってどんな感じかな? あの凄く綺麗な3人も彼女だったりするのかな?」
「女にモテたって多分至高くんの思って居るほど楽しくないぞ..ちなみにあの三人とは付き合っては居ない」
あれっ、生徒会は東吾のハーレムって聞いてたけど違うのか?
「そうなんだ..だけどあんなに綺麗な女性に囲まれて生活して良く手を出さないね」
「まず麗美だが小さい頃からの知り合いで、お互いの悪い部分まで見えすぎて恋愛の対象にならない、多分彼奴にとっての俺は弟で、俺にとっての彼奴は、姉か妹だな」
「へー姉弟か、僕の世界では女の子はなかなか生まれないから..まず、姉や妹がいるだけでもラッキーなんだけどね、姉や妹だったら逆に手を出さない?」
「お前何を言って..すまない、至高くんの世界では女性が居ないんだったな」
「うん、女の姉妹なんて居たら..多分、頑張って口説くと思う」
《この位は言って置いた方が良いだろう》
「凄いな、それ! 話は戻るけど、俺の居た世界では..身内は恋愛対象としないんだ」
「そう、勿体ないな..それで他の2人は?」
「そうだな、梓は男と女と言うよりは同性の親友、霊夢は多分好かれて居るのは解るけど俺には妹としか思えない」
「本当にそうなのか?」
《東吾ハーレム何て言われていたけど、違ったようだ》
「ああっ、俺は前の世界でちゃんと好きな子が別にいた」
「どんな子なんだ?」
「吉田さんって言ってな眼鏡の似合う大人しい子だった」
《吉田さんって図書委員の地味な子だよな..》
「それは残念だったな」
「告白もしてないんだ..だから俺は魔王を倒して必ず帰って告白するんだ」
「頑張れよ..ところで、だったら東吾の周りの女の子を好きになっても問題はないんだよな」
「ああっ、但しちゃんとした恋愛ならな、男女の仲ではないが付き合いは長いんだ…泣かす様な事しないなら良いよ」
「良かった」
「誰か好きな奴がいるのか?」
「解らないよ…前の世界では女の子なんてまず付き合えない世界に居たんだ、正直いってどんな女の子だって付き合えたら勝ち組、そんな世界にいたんだぞ」
「俺の世界に誰も見向きもしない猿みたいな女が居たんだが、そんな奴でも付き合いたいと思うのか?」
《猿女、村川さんの事だな》
「東吾くん、勿論、俺だって美人の方が良いよ…だけど前の世界に居たなら、考えられる範囲でブサイクな女をイメージしたけど、多分交際すると思う」
「そうか、本当に地獄の様な世界だな..もし俺の連れと付き合えたら?」
「そんなの大切にするに決まっているよ…例えば3人全員と結婚して幸せな1日を過ごせるなら…その日に死んでも構わない」
「冗談だよな」
「冗談だと思うか?」
「そこ迄大変なんだな…あっ俺が居た世界じゃ複数の女と結婚するのは重婚といって犯罪だ…それにあいつ等、独占欲が強いから3人全員は無理だな」
「そうなのか?」
「ああっそちらの世界じゃ違うのか?」
「女が少ないから..1妻多夫が当たり前だったよ..その関係で一夫多妻も可能ではあるけど、何処かの王族が3人妻を娶ったというのがニュースになる位まずない」
「その1妻多夫でも結婚したいのか?」
「そうだね、してくれる相手が居たなら喜んだと思う…」
「何だか、至高くんが不憫に思えて来たよ」
「正直言って、あれ程の美人と話した事も無いし…握手何てして貰った事も無いんだ..」
「そうか..真面目に付き合うなら応援してやるよ..頑張れよ!」
「ありがとう」
「それじゃぁまたな! この世界に呼ばれた者同士、偶には話し合おうぜ!」
「それ、良いね」
《我ながら嘘が上手いな..だがこれ位言っておいた方が後々楽だろう》
「東吾、どうだった?」
「梓、至高って凄く不憫だったぞ!」
「どういう事ですか? 東吾様」
東吾は至高と話した事をそのまま伝えた。
「それは本当なんですか東吾様..」
「少なくとそう言っていたのは事実だ..」
「1日妻に出来たら死んでも良いなんて..どんな世界なんだ…あれ程イケメンが信じられない」
「俺はもう、こんな偵察みたいな事は2度とはしないからな、俺にとってこっちの世界で数少ない友人になるかも知れない奴だから」
「ごめんなさい」
「すまないな..」
「解れば良いい…俺はあくまで公平だから麗美にもちゃんと伝える..じゃぁ行くわ」
「霊夢…それでどうする、私達にもチャンスはあるみたいだよ」
「梓ちゃん、チャンスどころじゃないよ..今なら確実にいけるじゃん」
「だけど、麗美に悪い、そう思わない?」
「うん、麗美様に悪いと思うけど..どうしようか?」
「どうしよう…正直貴族の人と話していても、やっぱり至高さんより素敵に見える人は居なかったんだ」
「それは霊夢も一緒だよ」
「友情を取るか愛を取るか..悩むな」
「それでどうするの? 梓ちゃん?」
「私は様子見、霊夢は?」
「じゃぁ私もそうする..」
《前の世界ならともかく、この世界じゃパートナー選びは死活問題だ..友情より..愛だな》
《はっきり言って、あんなカッコ良い男性と結ばれるチャンスなんて無いよ? 特に私は一部の人にしか好かれないんだもん、どうやって出し抜こうかな》
そして、東吾は約束通り..麗美にもその事を伝えた。
「ありがとう、東吾..それじゃ私頑張るわ」
「ああっ、だが、俺は公平だからな..」
「ええっ、貴方が私達3人に公平なのは知っているわ..」
「なら、良い」
《自分に目が無いならともかく、可能性があるなら割り込んでくるわね..どうするか考えないといけませんわね》
女の戦いが始まろうとしていた。
どっちが手に入れたのか解らない。
「至高ちゃん! 至高ちゃん、お話ししようよ!」
霊夢が可愛らしい笑顔で話し掛けてきた。
少なくとも京之介の時にはこんな笑顔は見た事が無い。
あの頃は、明かに「話なんかしたくないから、話し掛けてくるな」そんなオーラが出ていたのに..
犯罪者の息子のレッテルが剥がれて、美形だとこんなに違うんだ…
「急にどうしたの? まぁ凄く嬉しいけど、俺女の子と余り話した事無いから..変な事言ってしまうかもよ?」
「そうだよね? だから霊夢が..そのお話の練習相手になってあげようと思って..どうかな?」
「そう助かるよ! ありがとう」
「どういたしまして」
練習相手になってくれると言ったのに霊夢は何も話してこない..
目が合うと顔が赤くなり..モジモジしだす。
駄目じゃん、これ。
練習になって無いじゃん。
「あの、霊夢さん?」
「はい、何でしょうか?」
これ、こっちから話さないと何も話さないで終わるんじゃないかな。
「いえ、こういう時って何を話せば良いんでしょうか?」
男女比の狂った世界から来たのは嘘だけど..女の子となんて真面にしゃべった事ないぞ
「えーと..そうだ霊夢に聞きたい事があったら何でも答えるよ?」
「そうですか? あの俺の容姿って霊夢さんの居た世界では良い方なんでしょうか?」
仕方ない、また架空話でもして固めていくか。
「凄くカッコ良い方だと思うよ? 正直言うと霊夢のドストライクです..はい!」
「真面目に?」
「うん」
生まれながらのハンデが無いとこんなに違うのか?
「どうしたの? 至高ちゃん急に黙り込んで..」
「いや、女の子なんて全く縁が無かったからこうして話せるなんて無かったから..ゴメン」
《やっぱり、先手必勝だよね…しかし、本当なんだ、こんなカッコ良い人が女の子に縁がないなんて、信じられないよね》
「別に良いよ..逆に聞くけど霊夢は至高ちゃんの世界に生まれたら..美人だったりする?」
「凄い、美人だと思いますよ..霊夢さんだけじゃなく、三人ともまず会えないレベルの美人です」
「そう、霊夢だけじゃなく二人もそうなんだ…えっ、だけど会えないってどういう事?」
「女の子なんて1クラスに1人しか居ないし、男と違って出席も自由だからまず学校に来ない…ダダでさえ少ないのに学校に来ないからなかなか会えない…せっかく共学に通っているのに会えないんだ…女の子に会えて会話が出来たら、その日は幸せ…そういう感じだったからね」
「凄いね..それ」
「うん、ちなみに今迄、会えた女の子の中じゃテレビに出ている様な人を除けば三人みたいに綺麗な人はいなかったよ」
《それって、女の子にとって正に天国じゃ無いのかな? どうせ転移するなら、こんな世界よりそっちが良かったな…》
「至高くん、こんな所に居たのか? 相談があるんだけど良いかな..げっ霊夢..」
「げって、何かな梓ちゃん..至高ちゃんに何の用かな?」
「用は用だよ、霊夢には関係ないだろう?」
「それじゃ、今は霊夢がお話ししているんだから遠慮してくれないかな?」
「ただのお喋りだろう? こっちは用があるんだよ」
「だけど、教えてくれないとどんな用か解らないかな」
「「むっ」」
「ちょっと待って..時間は沢山あるんだから三人で話せば良いんじゃない?」
「至高ちゃんがそう言うなら..」
「至高くんが言うならそうするか?」
「うん、その方が楽しいよ..一層の事、東吾くんや麗美さんも呼んで皆んなで話そう?」
「そそそそうだよね?」
《梓ちゃんが無理に割り込んでくるから..》
「そうだな、うんそうしよう」
《霊夢が独占しようとするからこうなるんだよ..》
「それじゃ俺、2人を呼んでくるね」
「「うん、行ってらっしゃい」」
《ちょっと梓ちゃん、なんで邪魔するのかな?》
《霊夢はさんざん話したんだから良いじゃないか? 》
「二人とも少ししたら来るって..それで梓さんは何の用?」
「あのさぁ、私は剣道という剣術をしていたんだけど、至高さんは何か剣術をたしなむのかなって」
「どうして?」
「いや、私のスキルは剣聖なんだけど、至高さんのスキルは魔法剣士なんでしょう? もしかしたら剣術をたしなむのかなって」
俺は確かに剣道は初段だがどうするか?
「俺の世界にも剣道と言うのがあって..一応初段、だけど竹刀と言って竹で作った棒でやるから余り役に立たないかも」
「えっ、至高さんも剣道やるんだ、今度一緒に練習しない?」
「そうだね、ただもうずっとしてないから..お手柔らかに..」
「凄い、至高ちゃん、剣道もできるんだ、だったら霊夢も応援するから見てて良い」
「うん、別に良いよ」
「至高くん、早速始めたんだな!」
「至高さん、お久しぶりです」
「東吾くん、うん、こんな可愛い女の子と話すなんて初めてだから..じつは凄く緊張してる」
「そうか、それは慣れるしかないな」
「その割には結構お話出来ていたようですが」
「麗美さん、実は一杯一杯なんですよ」
「そそそそそ..そうなんですか?」
《やっぱり可笑しい…至高さんを見ると体が熱くなる、それになんだか喉が渇く..》
《麗美が噛んでいる、あんなのは見た事が無いな》
「麗美さん、どうかしましたか? もしかして熱があるんじゃない?」
「そうかも知れませんわ…でも私..どうしても至高さんとお話がしたいんですの」
もしかして、麻薬の血がきいてきたのか…
「俺と話すチャンス何か幾らでもありますから..今は寝ていた方が良いですよ」
「そうだよ、麗美様、具合が悪いなら寝ていた方が良いよ」
「麗美、休んでいた方が良いぞ..」
「確かにそうだと思いますわ..ですが、至高さんと一緒に居たい..」
「異世界に転移してきて心細いのかも知れませんね、俺で良いなら付き添いますよ…東吾くん、良いかな?」
女性と二人きりになるんだ後でトラブルにならない様に「誰かが認めた」そういう事実が必要だ。
「聞かなくても良い..誘ったのは麗美だからな、お互いに頑張れよ」
「東吾くん、ありがとう!」
「……ですわ」
俺は麗美と一緒に部屋を出ていった。
「「ああっ」」
二人の声が聞こえて来たような気がしたが内容までは解らなかった。
「東吾様、あれはズルいんじゃないかな?」
「どうしてだ?」
「東吾が二人っきりになるのを認めた..そうとれるじゃないか?」
「じゃぁ、二人のうちどちらかが、あの状態になって俺が認めないと思うか?」
「「…..」」
「そうだ、誘ったのは麗美、そして受けたのは至高..俺は許可を出しただけだ..特に肩入れしてないだろう?」
「そうだね..」
「確かにそうだ」
「それでどうする? せっかくだから三人で話すか?」
「そうだね、それも良いかも」
「そうだな」
麗美の部屋に来た。
女の子の部屋だからと言って緊張する事は無かった。
だって、自分の部屋と全く同じだから..
「…..」
顔を赤くして、さっきから何も話さない、俺から話した方が良いのか?
「それで、麗美さん、話って何?」
「特にこれと言ってありませんわ..はぁはぁ..ですが何故か解りませんが、私可笑しくなってしまったのですわ」
「可笑しいって、何か病気か何かに..」
「違いますわ、本当に可笑しくなってしまいましたの、夢を見ればいつも至高さんばかり出てきますし..その凄く可笑しな事をしている夢なのですわ..」
「俺の夢を見るのですか、ちょっと嬉しいですね…それでどんな夢ですか?」
「その、はしたない夢なので..言いにくい…です、はぁはぁ わ」
「そうですか? どんな夢か解りませんが、男として凄く光栄です..もし、今体調が悪い原因がそれなら、力になりますから何でも言って下さい」
「…本当に..力になってくれますの..」
「ええっ」
「凄く、迷惑かも知れませんし..かなりはしたない事ですわ」
「別に構いませんよ」
大体、想像がつくからね…
「それなら、はぁはぁ、言いますわね..ひかないで下さいましね..」
《ああっ、一緒に居ると、いつも以上に可笑しくなりますわ..本当に..我慢が出来なくなってきます..》
「大丈夫です..どんな事か解りませんが..麗美さんみたいな綺麗な方に誘われてひいたりしませんよ!」
「なら、思い切って言いますが…はぁはぁ…血が欲しいのですわ..すみません、忘れて下さい…」
「思っていたのと少し違って、残念ですが..俺の血ですか..構いませんよ!それでどうすれば良いんですか?」
下手な話をすれば知っていた事がばれるかも知れない…身を任せよう
「体のどこでも構いません、少しで良いんです、血を試しに飲ませて欲しいのですわ…そのさっき言った夢の中で私は至高様の血を吸っていましたの..お願い出来ますか..はぁはぁ」
「良いですよ」
周りを見回す…ナイフみたいな物は無い..
「麗美さん、ナイフみたいな物を貸してくれませんか?」
「はぁはぁ、これしかありませんわ」
ペーパーナイフか..丁度良いかも知れないな..
俺は指先を少しだけ傷つけた。
本来ならざっくりと切って沢山の血をあげた方が良いのかも知れないが…怪しまれるといけない。
「これで良い?」
「はい..はぁはぁ、すみません..指を指を貸して下さい..」
わざとおずおずと指を差し出した。
「すみません..」
それだけ言うと麗美は俺の指をしゃぶり始めた。
「ちゅっ、はぁはぁはぁ…嘘ですわ、本当に夢で味わった味と同じなのですわ…うぐっちゅちゅ..ああっもっと」
思った以上だ..2回目でこれならかなり強い依存症だ..前の世界の麻薬以上かも知れない。
結局、麗美は10分以上も俺の指を吸ったりしていた、口を離したのも自制心からじゃなく恐らく血が止まったからかも知れない。
「はぁはぁ..ごめんなさい..私、本当に可笑しくなってしまったのですわ..こんなはしたない事する女じゃ..ありませんのに、他の方の血が欲しいとか本当に思いませんのよ..なのに、なのに..」
「その血が欲しくなるのは俺だけなんですか?」
「はい..しかも、そうなってしまうと頭の中が全部、至高様の事で一杯になってしますのですわ」
あれっ、今…「さん」から「様」になっていなかったか?
「そうですか…だけど、これ不味く無いですか?」
「どうしましたの?」
「この世界にもし、バンパイアみたいな者が居たら誤解されませんか? 運よく俺限定ですがバンパイアになってしまったとも取れますし…」
「不味いのかも知れませんわね、何が起きたか解りませんが…至高様限定バンパイア..そう考えるとしっくりしますわね..場合によっては殺されてしまうかも知れませんわ..」
「それで、付け込むようで言いにくいんだけど、麗美さんは俺の事どう思いますか?」
麗美はまじまじと俺を見ている…そして顔を真っ赤にした。
「多分、愛しているのかも知れませんわ..だけど、私は恋なんてした事がありませんの..だけど、もし同じ様な思いが他の方に起きたら…多分自殺を選んだ…そう思いますわ…少なくとも、そうしても良い..そう思う位..今迄会った方では比べ物にならない位好きなのだと思います」
やばかった、もしこの外見で無かったら麗美は自殺を選んだのかも知れない..
確かに現実社会でも、麻薬から逃れるために自殺する、そういう人間が居た…
俺は両親や彼奴を見て、麻薬からは逃れられないそう思っていたけど…完全に中毒になる前ならそういう逃げ方も確かにある。
「本当に、俺を愛しているんですね、なら良い方法がありますよ」
俺は軽く舌の横側を八重歯できった..勿論、血の味が口に広がった。
「はぁはぁ..酷い、私キスなんてした事無いのに、酷いですわ..だけど、だけど..はぁはぁ..自分からなんてはしたない事は..嫌です..わ」
麗美は涙を流しながらキスをしてきた..しかも舌で血を絡めとるようにしているからディープキスだ。
ファーストキスもまだな麗美からしたら、本当に嫌なのかも知れない…泣いているのはもしかしたら本能がこれが本当の恋じゃない、そう解かっているからかも知れない。
麗美の綺麗な瞳が泣いたため腫れ、涎でお互いの顔がびちゃびちゃになった頃..麗美は口を離した。
「そんな、酷いですわ..私の状態を知っていてこんな事する何て..私本当に、本当に初めてのキスでしたのに..」
「だから、愛しているか聞きました..こうする理由があるんです」
「聞くしかありませんわね..私は至高の血に縛られているんですから…」
今度は様が外れて呼びつけか?
「指や他から血を吸っているのを他人に見られたら、麗美がバンパイヤだと思われるかも知れない..俺だって嫌です、初めて俺を好きになってくれた人が酷い目に遭うの何て..」
「そうですか? それで、何であんな事をしたのですか?」
少し和らいだけど、顔は笑ってない..答え方次第じゃ..不味い事になる..そんな気がする。
「血を吸うのを見られたら不味いなら、違う物に見えるようにすれば良い..そう思ったんです!」
「そうですか? 理由は解りましたわ…ですが先に一言あっても良かったんじゃありませんか?」
まだ、怖い。
「ごめん」
「謝らなくて良いですわ…それより言う事がありますわよ」
「何でしょうか?」
「女性慣れして無いから許してあげますが…私には言わせて自分は言わないのですか? それとも私なんか愛してないのですか?」
そういう事か..
「俺も愛してます」
「それなら良いですわ! ふつつか者ですがお付き合い宜しくお願いしますわ..もし違っていたら私、多分貴方を殺して死んでいたかも知れませんわ?」
「冗談ですよ..ね」
「そうですわね..冗談と言う事で良いですわね..ですが私、こう見えても尽くす方だと思いますわ、ですがその反面凄く独占欲が強いのですわ..それだけは肝に命じて置いてくださいね」
「はい、解りました」
「これで至高様は私の物ですわ..逆に私は至高様の物..それじゃ..」
もう満足した後なのか.麗美は軽くキスをしてきた。
これって俺が麗美を手に入れた…そういう事で良いのかな。
いや、俺が麗美にとられた..そっちが正しい様な気がする。
独占欲と舌が痛い
「至高様、さぁ食事に行きましょう」
次の日の朝、麗美が朝食に誘いにきた。
可笑しい、昨日はリアルメイドさんが起こしに来たのに。
「あの、メイドさんはどうしたのかな…と…」
「断りましたわ! 私、朝は強いので起こしに参りますから安心ですわ」
えっ何か、俺が知っている麗美と違う気がする。
「どうかなさいました?何かございまして?」
「いや、思った以上に朝から元気だな…と思いまして」
「はい、至高様に会えるから、私は元気ですわ…それに私達の事を考えるならメイドも居ない方が良いのですわ」
「それは」
「決まってますわ..あの、血が混じったキスをお願いします..わ」
今迄、颯爽としていたのが急に声が弱弱しくなってきた..
「解った、準備しますからちょっとまって下さい」
実は未だに舌が痛い..昨日切った後は腫れている…こんな事なら指の方が良かったかも知れない。
覚悟を決めて、昨日切った部分をもう一度噛んだ..凄く痛い..思わず涙目になってくる。
「準備できましたよ」
血の匂いが解るのか、急に麗美の顔が赤くなってきた。
「ああっ、はぁはぁ…はぁはぁ..私もう我慢できませんわ..うぐっ」
麗美が口づけをしてきた..女の子特有のなんとも言えない良い匂いがしてくる..そして快感が走るが、それ以上に痛い。
口の中の血をまさぐるように、舐めとるように舌が絡んでくる。
凄く気持ち良いが..痛い..我慢するしかない。
15分位経ったろうか、恥ずかしそうに口を離した。
「やっぱり可笑しくなってしまったようですわ…至高様の血の匂いがしたら頭の中が真っ白になってしまいますの」
「キスは凄く嬉しいけど、思ったより舌が痛い..です」
「ごめんなさい、ですが…私」
「大丈夫ですよ..あまり気にしないで下さい」
食事に向かうときに麗美は腕をからげてきた。
驚いてみていると。
「恋人どうしなんだからこの位はしますわ..それにこうすると殿方が喜ぶと聞いたので..」
「確かに嬉しいですが、こんなに積極的だと思いませんでした」
「多分、私もう至高様無しじゃ生きられませんわ..積極的にもなりますわよ」
確かに、もう中毒になっているからそうだと思う…
だけど、此処まで性格が変わるとは思っていなかった..
「一時的な物かも知れないし、解りませんよ」
「確かに、この病は一時的な物かも知れません…ですがそれは別にしましても私の心は至高様の物です、それとも、もしこの病が治ってしまったら至高様は私と別れてしまうのですか?」
これは俺の血の中毒…絶対に治らない。
「麗美さんが離れていかない限り、それはありません」
「では、永遠ですわ、私至高様を嫌いになるなんてあり得ませんから」
話していると食堂についた。
入口で、東吾や霊夢、梓と鉢合わせした。
東吾の顔がにやけた顔になった。
此奴、こんな顔もするんだな…
「至高くん、手が早すぎなくないか? もしかして昨日の今日でもう付き合い始めたのか?」
「昨日、麗美さんに告白されて、そのままなし崩し的に付き合う事になったんだ」
「なし崩しじゃないですわ..ちゃんと告白して、答えてくれたんですわよね」
ヤバイ、顔が笑って無い。
「うん、そうだね」
「あははははっ至高くん、もう尻に敷かれているんだ!」
「ちょっと東吾くん、笑いすぎだよ」
「いや、麗美と付き合うとそうなるだろうなと思っていたから..まさか本当にそうなるなんてな..」
「まぁ、いいや、これ程の美人が俺と付き合ってくれるんだから仕方ないよ」
「あら、私、至高様にそんな事しませんわよ」
「しかし、あの麗美が様をつけて呼ぶなんてな..まぁ良いや..うんお幸せに」
「ちょっと、至高さん、本当に麗美さんと付き合うの?」
「余りに早くない? 至高ちゃん、他にも女の子は沢山居るんだよ? 霊夢だってフリーなんだし」
「今更、遅いですわ、私、ちゃんと告白したんですから? そうですわね至高様?」
霊夢に梓にも好かれているのは解る。
こちらに来てからは驚いてばかりだ…ハンデが無ければ、普通に仲良くなれたのか?
だが、誰か1人欲しいなら麗美だ..正直3人全員でも良いが、そんな事したらこの世界が滅んでしまうかも知れない。
「正直、三人同じ位魅力的だけど、告白してくれたのは麗美さんだから、正直言って俺には勿体ない位の人だと思う」
「そういう事ですから、私の至高様には節度を持って接して下さいね」
「解った」
《まだ決まった訳じゃない…別に結婚している訳じゃないさ》
「なんかズルいけど仕方ないよね」
《まだチャンスはあるよね..第一ラウンド、負けただけだよ》
険悪な雰囲気の中で朝食を取り始めた。
しかし、痛い、肉を食べてもスープを飲んでも痛い、そりゃそうだ、舌を切っているんだ痛いに決まっている。
「どうかしたの? 至高くん」
「いや、舌を切っちゃったから料理が沁みるなと思って..」
「そうですか..」
気まずそうな顔で麗美が見ている。
「結構、舌を切った時とか口内炎が出来ると地味に痛いよね…霊夢が見てあげようか?」
「大丈夫だよ」
「私が見てあげるよ..これはちょっと酷いな、滲みるのは解るよ、後で消毒した方が良いかも? 食事が終わったら薬塗った方が良いと思う」
「ちょっと梓ちゃん、霊夢が話していたんだよ?」
「隣なんだから、私が見た方が早いだろう?」
結局、痛くて俺は食事の半分近くを残した。
多分、このまま傷は口内炎になるかも知れない..
考えないといけないな。
舌の痛み..解決とレベルアップ
舌が痛い、あんな女に誰がしたんだ..俺だ..
完全に麗美は中毒になりつつある、当人は恋愛のつもりだが..違う。
大体6時間位したらやたらキスをねだって来るようになった。
恐らく、これが麻薬の血の中毒の依存なのかも知れない。
このままだと舌が持たない。
視覚的には最高だよ! 美少女が自分から強引にキスしてくれるんだから..
だが、その後が地獄なんだよ..ただでさえ痛いのに、舌を絡ませてくるんだから..
確かに快感もあるけど..痛さが増して、それ所じゃないんだ。
「根性が無い」 そう言われるかも知れないけど、だったら凄く大きな口内炎が出来ています。
その状況で美女とはいえひたすら舐められたら..痛いよね..それと同じ。
何か対策を考えないと多分、昼食も真面にとれない。
「血が止まるような物? どういう物でしょうか?」
本当はこういう相談は専属のメイドさんにするようにに言われているけど、俺のメイドさんは麗美が断ってしまったので、色々話を聞いてくれそうなおばさんメイドに相談した。
おばさんにしたのは、若いメイドと話そうとすると麗美が飛んできて邪魔をするから…ちなみに今も30メートル位先に麗美が居る。
「簡単に指が切れるけど、すぐに血が止まったり、傷が無くなる様な道具..」
「ありますよ」
「流石に無い…あるの?」
「はい、商人が契約に使う 血止めナイフの事ですよね?」
成程、この世界はハンコよりも拇印を押す事の方が多いのか..だからそういう道具があるんだな..
「欲しいなら1本差し上げますよ、お城には山ほどありますし、本当に安い魔道具ですから」
「それなら、是非お願いします」
「それでは後ほどお届けします」
良かった…これでもう痛い思いしないで済む。
「至高様、今何をお話になっていたのですか? 何か悩みがあるなら私が相談にのりますわ!」
はぁ..ほぼストーカーになってしまっている。
「何か効率よく血が出せて、止められるような物が無いか、相談していたんだ、此処は異世界だから何かないかなと思って」
「そんな都合の良い物ありませんわよ…二人の為に我慢..」
「あったよ、血止めナイフって言って、簡単に血が止まるみたいだよ」
何だ、麗美の顔が急に暗くなった..そして..
「酷いですわ」
「えっ、何!」
「至高様は私とキスをするのが嫌なのですか? 私、ファーストキスもセカンドキスも捧げましたのに..酷いですわ」
弱った、こうなるよな..麗美なら..仕方ない又嘘をつくしか無いのか..何だかそのうち詐欺師とかいうスキルが手に入るんじゃないかな?
「確かにキスは好きな者同士がする事だけど、それ以上の事が、俺の居た世界ではあるんだ」
「わわわわわ、私だって解っていますわ、至高様の為なら私、それだって捧げられますわ..よよよよ夜に至高様の部屋にお伺いしますわ」
テンパっている…普通はあれを想像するよな。
「麗美さんってHだよね、俺もその意味は解るけど..今俺が言っている物は別の物…そうだ、今から真似事で良いからたってみようか?」
「今からですか..まだ昼間ですが..至高様が言うなら..構いませんわ」
「そう、だったら、麗美さん、俺の方に左手薬指を出して..」
《左手薬指ですの? もしかして指輪..婚約指輪..》
おずおずと麗美は薬指を差し出してきた。
俺はその指を口に含んだ。
「至高様..これは..何ですの..その嬉しいですが何か意味があるのですか?」
「同じ様に麗美さんも口に含んで下さい..」
「解りましたわ..何だか卑猥に見えますが..至高さんが言うなら..ううんっ..これで良いのですか?」
俺は麗美の指から口を離した..
「もう良いよ..」
「それでこれは何の意味があるのですか?」
「うん、俺の世界では左手の薬指は恋人の指なんだ、それを口に含ませるという事で「愛している」「恋人」だよという意思表示になるんだ」
「そうなのですか? これは至高様の世界では恋人の証なのですね..その凄く嬉しいですわ」
まぁ嘘なんだけど..
「キス以上に親密な意味があるよ..これをする時にナイフで指を傷つければ、2人の…ってどうしたの?」
「ごめんなさい」
そう言うと、麗美は俺の涎がついた指を舐め始めた。
「あの、もしかして血じゃなくて涎でも大丈夫なの?」
「多分、駄目だと思いますわ..血が芳醇な高級ワインなら、涎はぶどうジュース位快感の差はありますわ..はぁはぁ…それでも、やっぱり可笑しいのですわ..私至高様の..全てが欲しいのですわ…」
残念だ血じゃ無くて涎で良いならキスで..やっぱり無理だ..俺が手に入れたのは 麻薬の血であって麻薬の体じゃない..きっと同じ分泌物だから涎にも微量な麻薬成分があるのかも知れない..だけどやっぱり血には及ばないのだろう。
「そう、俺的には嬉しいから良いんだけど..」
結局、麗美はこの行為が「キス以上の行為」と聞いて機嫌が直った。
これで、舌が痛くて食事が出来なくなることはとりあえず回避された。
そんな時に頭に急に閃きが走った。
《麻薬の血のレベルがあがりました》
そうか、このスキルもレベルが上がるのか..
そして…
勇者達には勝てません。
いよいよ今日から訓練が始まった。
流石は勇者組だ..スキルの影響なのか?
物凄く凄い…
一緒に走った..東吾や梓は負けても仕方ないと思う。
だが、霊夢や麗美にすら走り負けるなんて..
校内のマラソン大会で東吾や梓は確かに上位10名に何時も入っていた。
陸上部でも無い、そう考えたら凄いと思う。
だが、俺は20位内には何時も入っていた..
それが、運動が苦手な霊夢や麗美にすら負けているのだ。
「気にする事はありませんよ..この速さなら騎士団だって1/2はついて行けないでしょう..初日と考えたら至高様も充分凄いです」
「はぁはぁ..しかし、勇者達は本当に凄い…」
多分、もう50キロは走っていると思う。
「流石についていけない..」
「次の訓練が始まるまで休まれて良いですよ!」
スキルは凄いな、元から体を動かすのは好きだったけど、多分元の俺だったら50キロなんて走れなかった。
だけど、勇者組のスキルは半端じゃない。
何しろ、未だに疲れた様子は無い。
霊夢や麗美みたいに、運動はそれ程出来ない者ですら..疲れた様子は見えない。
案外、無尽蔵な体力が備わったのかも知れない。
麻薬の血がレベルアップして手に入ったのは..血液操作(自分)だ。
自分に対して自由に麻薬の力を使う事が出来るようになったみたいだ。
例えば、脳に使えば エンドルフィンやアドレナリンの様な物を得た様な状態に出来る。
この位はマンガや小説の知識で解かる、他はまだどのように使えるのかは俺自身が解らない。
今日みたいな訓練中に使うのには丁度良い。
初めてスキルを使った時の様に意識を集中した。
すると、何となくだが何処に使うのか、そんな感じになった。
早速使うと…
凄い、なんだこれ..今までに感じた事が無い位の幸せな気持ちと、疲れが完全に抜けて力が漲ってきた様な気がした。
「もう少し頑張れます!」
「そうですか? 辛くなったら休んで下さい」
「はい」
俺は勇者組を追いかけた。
ようやく一番最後の霊夢に追いついた。
とは言っても、休んでいた分周回遅れだ。
流石に勇者組も遅れが出て来た。
無尽蔵な体力という訳ではないようだ..
「流石は勇者パーティー、速いね!」
「そうだね、霊夢は凄く運動神経が悪かったんだけど..凄く速く走れて驚きだよ..でも至高ちゃんも速いよね?」
「足には自信があったんだけど..周回遅れだよ…少し疲れが抜けたから此処から挽回する予定だよ」
「頑張ってね至高ちゃん..霊夢が伴走してあげるよ」
「ありがとう、それじゃ頑張らないと」
凄いな勇者組、麻薬の血で底上げしても、東吾や梓には追い付けない。
「至高ちゃん、凄いね、霊夢と同じ位速く走れるなんて」
「これでも結構足には自信があったんだけど、自信無くすよ」
「本当はね、霊夢や麗美ちゃんは速くないんだよ..多分異世界に来たから速くなったんだと思う..」
知っているよ..正確には異世界に来たからじゃ無くて..特殊なジョブのおかげなんだけどね。
「そうか、流石選ばれた人達は凄いな..」
「だけど、充分至高ちゃんも速いよ..」
ジョブの恩恵にスキルまで使って、ようやくついていっているだけさ
「ありがとう」
暫く、走っていると麗美が気が付いた..そしてペースを落としてきた。
「霊夢、至高様と何をお話ししていますの?」
「別に、麗美様、いえ麗美ちゃんには関係ないよ? ただ普通に話していただけだよ?」
「そう、なら構いませんわ」
「至高ちゃんと話すのに麗美ちゃんは関係ないよね? 彼女かも知れないけど、至高ちゃんは麗美ちゃんの物じゃないんだからさぁ」
不味い、何だか気まずい雰囲気だ..
「麗美さん、俺が余りペースが掴めないから霊夢さんが並走してくれたんだ..はぁはぁ」
「そうでしたの? 霊夢、お礼を言いますわ..此処からは私が並走しますから、先に行っても宜しくてよ?」
「むぅ..大丈夫だよ、この位で走っていた方が丁度良いから..」
しかし、この二人でも化け物だな..だってこっちは余力が無いのに、喋りながら走っているんだから..
まだ走れるけど、一緒に居ると揉めそうだから、リタイアしよう..
「凄いね、やっぱり俺は限界みたいだ..リタイアするよ」
「「えっ」」
それじゃあね..
初めての訓練で解かった事は..自分のジョブでは勇者達には勝てない..そういう事だ。
道が…
結局、今日の訓練は走り込みと簡単な座学だけで終わった。
初日だけあって、多分、触りだけそういう事なのだろう。
俺としては魔法について習いたかったのだが、東吾が先に質問していた。
その話では「勇者様達はジョブの影響で簡単に魔法でも剣技でも身につきます、ですがこの世界の常識はジョブでは身につきません」と言う事でここ暫くは通貨単位等を教わるようだ。
だけど…不味くないか、俺は「勇者達」では無いのだが..
そして、今は個別に面接みたいな物を受けている。
これは、全員一緒では言いたい事も言えないだろうという国からの配慮らしい。
勇者組の方は国王と第一王女マリアーヌが担当するらしい。
俺の方は第二王女のマリアと騎士団長のゼーレが担当だ。
まぁ普通に考えて勇者達は、魔王の討伐があるのだからこの差は当たり前だ。
後々の事を考えれば俺の方が気は楽だろう。
「それで、至高様は何をなさりたいのでしょうか?」
この王女は凄いな、相手は何処の馬の骨とも解らない男なのに「様」をつけてきた。
だったら、正直に話した方が良い。
「正直、まだ解りません、この世界が自分が居た世界とは違い過ぎていて..」
「そうでしょうね…メイドから聞いたのですが男女比が30対1の世界から来たとか聞きましたが本当ですか?」
「はい、私の居た世界では女性は高嶺の花..メイドさんと話しているだけでも嬉しいのに、こうして一国の王女と話しているんて夢のようです」
まぁ嘘だけど。
「それは良かったです、正直言いましてその様な世界からの召喚は聞いた事が無かったのでどう保証しようか悩んでいた所です」
「そうですか? それでは具体的にはどの様にお考えなのですか?」
「国としては、勇者様達と一緒に学んで頂いて、この世界の常識を学んだら自由にして貰おう、そう思っています。」
「そうですか?」
これはどうなんだ?
「勘違いしないで下さいね、何をするにもちゃんと援助します。 例えば冒険者になりたいなら装備と暫くの生活費は出しますし、また学びたければ騎士や魔術師の指導も充分します。 商人になりたいならその資格と小さなお店と準備金。また学びたいのならアカデミーの入学と生活費、その位の保証はしますわ」
思ったより待遇が良いな..
「まだ、道は決まってませんが、そこまでして頂けるなら何も文句はありません..いや寧ろお礼が言いたい位です」
「それは良かったです..ですがこの機会にゼーレからお話があるそうです…宜しいですか?」
「はい」
「早速だが、騎士団に入らないか?」
「えっ」
「簡単に言えばスカウトだ、勇者たち程では無いが魔法剣士も希少なジョブなんだ、魔法も剣も使える…勇者達を除くなら最高のジョブの一つだ..騎士になるそういう道も考えてみないか?」
「騎士にですか?」
「ああっ成ってくれるなら、姫と俺で最初から「正騎士」と言う事にする。 それに騎士は確かに身分は低いが爵位でもあるんだ、貴族なんだぜ」
騎士爵という奴か..悪く無いな。
「それは訓練が終わってから考えても良いですか?」
「おっ! 少しは脈がありそうだな..良いぜ! あと言い忘れたが、騎士はモテるぜ…平民の女性が憧れる職業だからな..大体の騎士は嫁持ちが多いぞ..場合によっては貴族の令嬢に見染められて、上位の貴族になる事もある」
「それは凄いですね」
男女比1対30の世界から来た..そういう話ならこう返すしかないな..
「そうですよ、しかも至高様は..その容姿も良いので、実力次第では私つきの騎士にも取り立てます」
「これは凄い事だぜ..女性に間違いなくモテる..宮廷騎士で王族付きならお見合いもな..」
「それは凄いですね..それで無礼を承知でマリア姫様に聞きたいのですが、私の容姿は良いのでしょうか?」
前の基準なら間違いなく美少年だが..この世界ではどうなんだ..
「凄く、美しいと思います..私は貴方程美しいと思った人は貴族も含んで数人しかおりません、身分が邪魔しなければお付き合いしたい..その位です」
「そう、良かったです..その、前の世界では」
「聞いておりますわ、前の世界では女性に縁が無かったとか…男女比が1対30とは凄まじい世界なのですね」
「はい」
「もう、前の世界ではありません。 この世界では間違いなく美少年です。 この話は実は使用人に伝わっていて、今凄い事になっていますわ」
「何かあったのですか?」
「はい、私に仕えている侍女からも「お願いしますから至高様付きにして下さい」と嘆願されましたわ」
「俺の方は女騎士から、指導ともし騎士に成るなら自分とペアにしてくれと複数人から頼まれた、貴族の娘で綺麗所も居るぞ」
「本当ですか?」
この位の反応はした方が良いだろう?
「ええっ本当です」
「こっちも嘘はない…まぁそういう世界から来たなら信じられないのも当たり前だが..本当の事だ」
「それでどうでしょう? 騎士に成る成らないは別としまして王宮で仕事をするというのは如何でしょうか?」
「それが良いと思うぞ」
「何だか、凄く楽しいそうです..本当に前向きに考えさせて頂きます…ありがとうございます」
「お礼など言わないで下さい…迷惑を掛けたのはこちらですから」
うん、悪く無いかも知れない、思ったより待遇が良い、後は自分が良いと思った道を選ぶだけだ。
それから数時間後呼び出しが掛かった。
「すみません、至高様、申し訳ありませんが、貴方を冒険者や商人にする事は出来なくなりました」
一体何があったんだ…
道が決められた。
何だか怪しい雰囲気になってしまった。
何が一体あったんだ。
「いったい何があったんですか?」
さっき迄と違い雰囲気がやや重く感じる。
そして、第二王女だけでなく王や第一王女のマリアーヌまでが居る。
「それが..」
「お前からは言いにくいだろう…儂から話そう」
「父上お願いいたします」
「実はな聖女である麗美殿を筆頭に霊夢殿や梓殿が、至高殿と離れたくないと言い出してな、魔王討伐の参加条件に至高殿が参加しないなら自分達も参加しないと言い出したのだ」
そりゃそうだ、麗美は麻薬の血で中毒になりつつあるんだ、俺とは離れたくないだろう。
しかし、他の2人は何でだろうか?
「事情は解りました、それで私はどうすれば良いのでしょうか?」
正直言えば余り危ない事はしたくない..
「うむ、勇者達と一緒に旅立ってくれぬか? その代わり出来るだけの対応はさせて頂こう」
やっぱりそうなるのか?
「それで、どのような対応になりますか?」
「そうじゃな…本来は騎士爵と正騎士からスタートが仕える条件であったが、無理な願いじゃ、子爵の地位を与えよう、そして護衛には腕利きの騎士を数名つける、それでどうじゃ?」
「お聞きしても宜しいでしょうか?」
「ゆるそう」
「ゼーレ殿の爵位はどの位でしょうか?」
「子爵じゃが、それがどうかされたか?」
騎士団長が子爵なのに新参者が同じじゃ絶対にやっかみが入るな。
「流石に、実績があり永く仕えた騎士団長と同じでは気が引けます、だから爵位は男爵で構いません、つけてくれる騎士は2名まで、その代わり訓練の様子を見て、勇者と旅立てる実力が付いたかどうかの見極めをお願いします」
「そうか、気を使わせて済まぬな…確かに実力が伴わぬのに行かせたら死ぬだけじゃ..しっかり見極めさせて貰おう、ただ腕利きの騎士の人数はこちらで決めさせてくれぬか?2名では命の保証が出来ぬ」
案外、優しいな…
「解りました」
「済まぬな」
「いえ、一国の王に頼まれ、王女からもお願いされる。そんな栄誉は普通に生活していたらありません、出来る限り頑張らせて頂きます」
「済まぬな、自由を約束しながら拘束するような事になって」
「何度も言いますがこれは栄誉です。気にしないでください」
勇者達とは全然違うな..なんと謙虚な若者だろうか!
王や王女を敬う気持ちもあり、他の者と自分を比べわざわざ爵位を落としおった。
まだ子供だというのに人間が出来すぎている。
しかも話していると凄く心地良い…
まるで旧知の友と話しているようだ…済まない気持ちで一杯だが…栄誉だという至高殿にはそれを言うのは無礼になるだろう。
なら答える言葉は決まる。
「王として感謝する…この恩義にはいつか答えよう」
これで良い筈だ。
「有難き幸せ」
予想通りの言葉だ。
至高は京之介の時に、人からの同情と蔑みの中で生きて来た。
だからこのような「ちゃんとした対応」をされたことが無い。
王族から見た大人な対応は蔑まれて生きて来た悲しい人生から生まれた物。
そして、更に表には出さないが至高は凄く緊張して汗をかいていた。
それにより、麻薬の血の影響がうっすらと現れていた。
その条件が重なり、王は凄く心地よい気分になっていた。
だが、その事実は本人である至高をはじめ誰も知らない。
【閑話】 メイド達
至高は今迄、蔑みや哀れみの中で生きて来た。
だから、普通に扱って貰えるのが心地良かった。
「おはようございます…至高男爵様..」
可笑しいな、メイドさんの顔が赤い..
案外、麗美はポンコツな所がある。
麗美がメイドを断った夜にはメイド達から陳情が入った。
「あの、麗美様から至高様の身の回りの世話をしない様にと言われたのですが、ベットメイクや洗濯をしないとなると至高様が困ると思うのですが」
その結果、再びメイド達が至高のお世話を勝ち取った。
だが、可笑しな事に以前にも増して、メイド達の至高に向ける目には熱い目があった。
「やはり、至高様は他の男とは違うわ」
「そうよね、あの流れるような綺麗な髪にあの顔、まるで物語の中から出て来たようなお姿..」
「確かにそうだわ…あれは神話の世界で女神に仕えていた聖騎士様みたいだわ」
あながち間違っていない..女神は至高の容姿を変える時に自分が直接会った事のある「彼」をモデルにしたのだから…
案外、麻薬の血が無くても彼は一生女性には不自由しないだろう…
それにプラスして至高がした男女比30対1の、女性が貴重な世界から来たという話は自分にもチャンスがある..そう周りの者に認識された。
そして止めは「魔法剣士」に「男爵の爵位」、メイドや騎士にとっては自分の傍では最も、将来有望な人間..これで狙われない訳が無い。
「だけど、聖女である麗美様と付き合っているんじゃない」
「うん、だけど、貴族なら側室も娶る筈だから..チャンスはまだあるわ..しかも二人はまだ子供みたいな付き合いだからチャンスはあるわ」
「そうよね..あれ程の男の子は他には居ないわ..それに至高様って凄く良い匂いがするのよ..あんな香りの人他には居ないわ」
「解るわ..私、ベットメイクの時に思わず毛布にダイブしちゃったもの!」
「そんな事したのね..だけど、最近、至高様の衣類が良く無くなるんでしょう..」
「正直解る、私だってあの匂いにやられて、シャツが欲しくなったから」
「あの香りは駄目だわ..本当に安心するというか落ち着くというか..凄いわよね」
「本当に..だけど女の騎士様も狙っている人が沢山居るらしいわ」
「当たり前だわ..そのうち貴族も出てくるんじゃない?」
「多分..あの美貌だもんね」
「そう、なる前がチャンスだわ..」
至高が何かした訳でない..ただメイド達は、至高の近くに居た。
そして、至高の汗の匂いを嗅いでいた…既に至高の意思は関係なくメイドの中毒は進んで行った。
【閑話】 4人の考えと影響
皆神東吾の場合
「今日は東吾殿に今後の事と要望があればと話す機会を設けた..気さくに話して貰いたい」
「そうか?それなら幾つか要望がある…伝えて良いか?」
「東吾様は勇者なのですから、遠慮せずに言って下さい」
「そうか? なら言わせて貰う」
部屋の調度品から紅茶の茶葉まで全て高級品を東吾は求めた。
そればかりか、メイドの質や対応の改善…更には相応の地位まで求めてきた。
聞いていて異常と思える要求だが…
東吾は元々は日本を代表する企業の令息、はっきり言えば王族以上の生活をしていたので東吾としては当たり前の要求だ。
「解りました、調度品については王族専門の家具工を呼びますので打ち合わせて理想の物をお作り下さい。紅茶の茶葉についても同じく王族付きの者を向かわせますのでご要望をお伝えください」
「そうか助かる」
「それで、メイドにつきましてはスキルの高い者に変えさせて頂きますが、熟練となると歳がやや上になりますが宜しいでしょうか?」
「構わない」
「それで地位についてはどのような地位を欲しているのでしょうか? 勇者という地位を既にお持ちですが….」
東吾は考えた、自分は財閥の後継者だ..それはこの世界の貴族に直したらどの位になるのか..
「そうだな、侯爵位の地位は欲しい物だ」
王は途中から不機嫌になって話をしていない。
この話のほとんどはマリアーヌが行っている。
だが爵位の話になれば王が話さなければならない。
「東吾殿は侯爵という地位の重さを知っていて言われるのですかな? この国に公爵は1人、そしてその下の侯爵も2人しか存在しない..そこまでの地位を望まれるのですかな?」
魔王を倒した後ならまだ解るが、何もしてない人物に渡せるような地位ではなかった。
王や王女は事前に話の中からこちらに来る前の生活について使用人に探らせていた。
「だが、俺は前の世界ではそれに近い地位を約束されていた」
ここで齟齬が生じた。
大企業という物が無い世界で考えた為、東吾の前の世界での地位は「商会の跡取り息子」と考えられた。
商会の跡取り息子は確かに裕福だが、この世界の大貴族の息子に比べれば遥かに地位は下。
それに、まだ跡を継ぐ前ではその地位も確定したものでは無いそう捉えた。
そして、その考えが東吾の印象を悪い物に変えた。
「意地汚い商人の息子」 そういう評価に…
「東吾殿の言われることは解りました、ただ、この国としまして、流石に実績の無い者にそこまでの地位は渡せません..だから今は子爵の地位を与えましょう…その後の事は手柄次第で..どうでしょうか?」
「仕方ないそれで手を打つこととしよう」
何の実績もない無い人間に爵位..その破格値の待遇に不満そうに「仕方ない」
この話し合いの結果…王族の東吾への評価は凄く下がってしまった。
真珠院麗美の場合
「麗美殿に今後の事と要望があればと話す機会を設けた..気さくに話して貰いたい」
「そうですわね…まず、魔王討伐に参加する条件としまして至高様と一緒ならという条件をつけさせて頂きますわ」
「それは、至高様が一緒に戦わないなら、戦わないそういう事なのでしょうか?」
「はっきり言わせて頂ければそうですわ」
またもや王は呆れて不機嫌になった。
確かに彼らを召喚したのは自分たちだしそれが身勝手なのは解る。
だが、過去の召喚者達は、凄く気高かったと伝えられていた。
それなのに..王にはもはや俗物にしか思えなかった。
「そうですか?ですが至高様は4大ジョブではありません、その戦いに参加すれば最悪死ぬ事すらありますが..それでもそれがお望みですか?」
「はい..それに至高様は死にませんわ、例え他のメンバーが死ぬ事になっても私が全力で癒しますわ…そして私が死ぬ事はあっても、至高様は死なせません」
女としてなら言っている事は解る。
聖女として考えたら最悪だ…勇者や他のメンバーよりも至高が優先..しかも自分の命よりも…
そんな人間が、勇者パーティーの癒しの全てを担う..最悪、全滅するのではないだろうか?
だが、4大ジョブのみが魔王を討つ、そういう伝承がある以上戦ってもらわねば困る。
「解りました、至高様に打診させて頂きます」
この話し合いの結果…王族の麗美への評価も凄く下がってしまった。
篠原 梓の場合
「梓殿に今後の事と要望があればと話す機会を設けた..気さくに話して貰いたい」
「私は正直、剣が好きだ、だから剣に生きれるチャンスが貰えた、だから将来は騎士にでもなれたらと思う」
「そうですか」
やっと真面な考えが聞けた、そう思った。
「だから、熟練した騎士による最高の指導と、戦うからには最高の剣の一振りが欲しい」
「当り前です、魔王と戦ってもらうのですからそれ位の支援はさせて頂きます..他にはありますか」
「最後に、自分の背中を預ける相手として至高殿とペアを組みたい」
真面だと思っていたが..
「それは他の騎士では駄目なのでしょうか?」
「自分の命を預ける相手は自分で決める…それは至高殿しか今は考えられない」
いつもと違いまるで騎士のような話し方でしたが…結局はそれですか
「騎士になる事と宝剣を与える事は約束します、至高様の事は至高様の意思もありますから善処します、それしか言えません」
牧野 霊夢の場合
「霊夢殿に今後の事と要望があればと話す機会を設けた..気さくに話して貰いたい」
「霊夢は正直、戦いは嫌い…だけどどうしてもというのであれば..至高ちゃんが欲しいかな」
「うん、至高ちゃんが霊夢を守ってくれるなら安心して魔法も使えると思うの」
魔法による戦いの要だから..確かに誰かに守られながらは正しい..
だけど…また至高様か…
正直言えば、至高様が勇者の方が良いんじゃないか..
「解りました、善処します」
「マリアーヌ、正直余は疲れた..本当にあの4人に世界の平和を任せて良いのか..」
「まるで、あの三人は勇者東吾ではなく至高様に仕えたい..そんな感じでしたね」
「余はマリアに、巻き込まれた至高殿が不憫だから、自由に生きれるように支援してやれと伝えてしまった」
「それは無理ですね…至高様が戦わないなら3人は戦ってくれませんから..」
「仕方ない、余が頭を下げるしかなさそうだ」
「私も参りますわ」
そして至高の道は決まってしまった。
偽の伝説が始まる
至高殿が勇者達と共に行ってくれる事を了承してくれた。
正直、ごねるかも知れない、そう思って居たがあっさりと了承してくれた。
そこで、余は騎士団長であるゼーレに護衛騎士の人選と指導騎士の人選を任せた。
そして、ゼーレからの推薦を聞こうとしたのだが…
「指導騎士は私が行います」
「他には居なかったのか? お前には王都の守護の任務もあるだろう、確かにそれが適任ではあるが..」
「簡単に打診した所..女騎士は元より男の騎士からも凄い多数の人間から売り込みがありました、誰を選んでも角が立つので私が行うしかありません」
「女騎士ならともかく、男の騎士からも人気があるのか?」
「そのようで、特に一緒に訓練に立ち会った者からは「努力する姿に感動した」との事です」
「そうか? まるでくだんの「女神の騎士」のような人物じゃな..」
「ええっ..まぁ別人には違いないですが、容姿は伝説にあるその姿に酷似しています、そのせいで護衛騎士を選ぶのも志願者が多く苦戦しています」
「こちらも、そのせいで、マリアーヌとマリアの間もギクシャクしておるよ」
「何かあったのでしょうか?」
「第一王女のマリアーヌは今回、勇者を支援する誉れ高い仕事を受けた…そして第二王女のマリアは間違って転移してきた者のフォローじゃ」
「その通りでは?」
「それはその通りじゃが、至高殿は件の「女神の騎士」に似ている…その結果、今はマリアはウキウキしていて、マリアーヌは憂鬱そうな顔じゃ」
「ですが、それはあくまで錯覚ですよ」
「その通りなのだが、マリアは楽しそうに、宝物庫のガラクタを引き摺りだしておる」
「あの、聖剣に似た模造刀と変な鎧ですか?」
「女神の騎士が持っていたとされる偽物の聖剣だが本物以上と言われた剣に、ドラゴンのブレスでも魔王であっても破壊出来ないという伝説がある..ガラクタじゃ」
「だが、あれは偽物なのですよね」
「そのはずじゃ、何しろ勇者が持とうとその能力は一切引き出されること無く…一度たりとも輝いたりしていない」
「なら、何も問題がないのでは無いですか?」
「その通りじゃ、同じ王家と言いながら第一と第二では待遇が違い過ぎる..まして儂には男の子供が居ない、マリアーヌがこの国の女王となるのは決まりじゃ…そう考えたら、この位の楽しみがマリアにあっても良い筈じゃ、まぁあくまで夢、それはマリアも解かっておる」
様々な事があり、予定は狂ってしまったが、明日は王都の見学だ。
本来は、訓練がスタートする前に行う予定だったが、調整がうまくつかず、ずれてしまっていた。
そして、その前に武器との顔合わせがある。
顔合わせと言うのは、聖剣を含む聖なる武器には魂が宿っていると言われていて、人の様に扱うからである。
そして、その場には至高は居ない。
それは、聖なる武器を与えられない至高への配慮と、儀式に参加しても意味が無い為であった。
勿論、貴族や身分のある者はこちらに参加している。
だが、メイドや警備の任から外れた女騎士等は違う場所に居た。
普通の武器だが、きょうは至高が武器を貰う日でもあるのだ。
「すまぬな、至高殿、勇者達にしか聖なる武器は使えないし、それぞれが一つしかないんだ」
「ゼーレ殿も気にしないで下さい..その剣や防具だって充分凄い物に見えますよ」
「ああ、ミスリルだからな、この装備は騎士としては憧れの装備だ..だが加護が無いから聖なる武器に比べたら..すまない」
そこに息を切らしながらマリア姫がきた。
「ちょっと待って下さい..試しに、試しにこれを身につけて下さい」
「マリア姫様 顔合わせの儀式はどうなされたのですか?、それは一体..」
どう見ても錆びた剣と、女性の顔が彫られた錆びた鎧だ。
マリア姫はニコニコしながらそれらを引き摺ってきた。
「あちらはお姉さまの為の式典です、私には関係ありません、それに至高様は一応、私の所属、武器の引き渡しには立ち合いますわ」
「すまぬが、至高殿、その武器に触れてみてくれぬか」
まぁこれでマリア姫様も諦めがつくだろう..そんな事は起きない..それは解かっている筈だ。
「解りました」
《剣:可笑しい..既に女神の騎士は死んだ筈だ、そして偽物である我の使い手等、現れる筈など無い..だが、目の前の人間は.には懐かしさが感じられる》
《鎧:おかしいな..何故か目の前の人間に懐かしさを感じる..》
《剣:本物ではあるまい、だがこのまま宝物庫で眠っている位なら懐かしい顔を持つ此奴に力を貸すのも良いだろう》
《鎧:本物とは比べ物にはならないが…この男からも女神の力が感じられる》
《剣:我は所詮は偽物の聖剣..同じ偽物の此奴に力を貸すのも良いだろう》
《鎧:数百年ぶりの使い手..未熟でも構わない…女神の騎士だって最初は未熟だった》
至高が近づくと、まるで鎧は優しく抱きしめるかのように至高に装着された。
そして、錆が一瞬で落ちて白銀の光を放ち始めた..
「嘘っ..」
《まさか..女神の騎士なの》
《だけど、あれは..》
「剣を握ると剣が呼応したかのように光り輝き始めた」
「至高殿…そのステータスを見てくれぬか」
赤木至高
ジョブ 女神の騎士 偽 (ドラッグマスター)
女神スキル 麻薬の血2(常時発動) (異空間幽閉3日間)
スキル 剣術の才能1 魔法の才能1
尚、女神スキルは他の方から見えていません。
装備:偽聖剣デュラン 女神の鎧
「見ました」
「装備は、装備は何と出ているののですか? 教えて下さい」
マリアの鼻息は荒い。
「えーと、偽聖剣デュランに女神の鎧になっています…あと、ジョブが 女神の騎士 偽 になっています」
「嘘、奇跡が起きましたわ..私に女神の騎士が舞い降りました…」
マリアの目から涙がポロポロと流れた。
「嘘だろう..不味いぞ..」
女神が与えた姿は、昔自分を信仰していた美少年からその姿を模倣した。
そして、その信仰していた人間こそが 女神の騎士
デュランと女神の鎧はその懐かしい姿に手を貸す事を決めた..結果、至高は 女神の騎士(偽)というジョブになった。
「ですが、偽聖剣と女神の騎士(偽)ですから..勇者と違って偽物でしょう..もしかして不味い物だったのでしょうか?」
「いや、不味くない、不味くないんだが..そのな」
「不味くなんてありませんわ、それこそは伝説の武器ですわ..確かに聖剣には劣りますがそれは伝説の武器、そしてその鎧は決して壊れない最強の防具..このマリアが全てを掛けて支援します..頑張って下さい」
「はい」
「女神の騎士様..至高殿は女神の騎士様だったんだ…」
「女神の騎士様と一緒に戦うのは女騎士にとって最高の誉れ…こっちに居て良かった」
「私は..今、伝説の始まりを見ているんだわ..」
「至高殿、これは王に報告しなくてはなりません..直ぐに戻りますから..」
そういうとゼーレは急いでその場を後にした。
偽の伝説が始まる?
「偽聖剣デュランと女神の鎧が反応しただと、それは誠か?」
「はい、間違いなく」
「式が終わったら対応するとしよう..出来るだけこの事は周りに伝えない様にして貰えぬか」
「無理でございます…その武器を身に着ける瞬間を多くの者が見ております」
「解った、だがせめて、周りの貴族には知られぬように、特に教会関係者には知られぬように注意を頼む」
「それも難しいかも知れません」
王は頭を抱える事になる。
「女神の騎士」とは何者なのか..
幾つも伝説がこの国にある。
一番古い話では神話の時代にあったとされる天界と魔界の戦争があった。
その時に女神に仕えて、魔神や邪神と戦った者..その者の力は大地を引き裂き海すら切り裂いたという…
これはあくまで教会に伝わる伝説…真実を知る者は居ない。
だが、実際にこの世界に「女神の騎士」が現れた事がある。
女神の騎士の能力は勇者と比べて数段落ちる、だが、その正義のふるまいは勇者を越える。
以前にこの世界に現れた時は今回と同じ様に勇者と一緒に召喚された。
そして、その者も同じく、勇者より能力は遙かに劣った。
自分が勇者より力が無いと考えた女神の騎士は、戦い意外に、時間さえあればスラムの者や貧しい者を救う為に翻弄していた。
その姿は貴族や王族すらを動かし、孤児院が設立された..この国や近隣諸国に孤児が余り居ないのは過去の女神の騎士の功績だ。
また、勇者のレベルが低い時はには、数多くのキング種の討伐をなした。
そして、勇者達が魔王に負けた時に、女神の騎士は自己犠牲を行い…自分を生贄にしてこの世界の半分を救った。
そんな伝説がある。
その為、教会の関係者や信心深い者には真の救世主は「女神の騎士」なのだとそう考える者も多い。
実際にその時に、女神の騎士を支援した王女が「マリア」という名前だった為、それにあやかり、王女の名前にマリアという名前を付ける事も多くなっていた。
だが、長い歴史の中で記述された文献は2件しか無い、その為、今では物語としてだけ伝わっている。
何しろ、「絶世の美少年」「世の女性全てに優しい」「一目見た物は虜になる」なんて話もある..どう考えても物語にしか思えない一面が多いからだ。
だが、教会の信者の中の古い者は、実際に存在したのだと言う…そして女神の像の横にある小さな像こそは女神の騎士なのだという教主もいる。
「至高殿、少し部屋で休んでいて貰えないだろうか?」
これで、また至高殿の運命が変わってしまう..今度はどう説明すれば良いのだ頭が痛い。
「ゼーレ、至高様は女神の騎士なのです。そして支援者は私です。ならば王女として支援の話もしなくてはなりません」
「そうですか..それではマリア姫様、至高殿をお願いします」
はぁ…これで姫様方同士の争いが起きるかも知れないな。
「これ以上無い位に丁重に扱います..私の「女神の騎士」なのですから」
「あのゼーレ殿、この鎧外れないのですが..」
「その鎧は女神様の加護があるから着てしまったらもう脱げないのです、そして他の装備はもう身につけられません」
それって加護じゃなくて呪いじゃ無いのか..
「あっ誤解しなくて大丈夫なはずだ、今は必要ない…そう念じるだけで消える筈だ」
俺はそのように念じた。
そうしたら、鎧も剣もそのまま何処かに消えた。
「必要だ」その様に念じたら再び現れた…聖なる武具という物は全然違う。
「確かに、その様ですね..それで、この聖なる武具はどんな能力があるのでしょうか?」
「偽聖剣デュランは、聖剣デュランダルを模した剣ですが、聖剣デュランダルは大昔に紛失されました。その為、どんな能力があるのか解りません」
解らないのか…
「それでは女神の鎧の方はどんな能力があるのでしょうか?これも解らないのですか?」
「それは有名だ」
「有名ですね..」
「それなら教えて下さい」
「「壊れません」」
壊れない? だけど錆びて無かったか?
「それなら、魔王と戦っても、ドラゴンのブレスも怖くないですね..凄いな」
「死にますよ?」
「死ぬからな!」
「何故ですか? 壊れないんですよね?」
「はい…そうですね..そうだフライパンで肉を焼いてもフライパンは壊れませんよね、ですが肉は焼けますよね」
「それって、焼かれたりしても鎧は大丈夫だけど装備者は焼け死ぬ..そういう事ですか?」
「そういう事ですね?」
「そういう事だな」
凄いんだかそうじゃないんだか解らないな..
「それって..」
「ですが、ミスリルよりもアダマンタイトより丈夫ですから、凄いですよ?」
「そうですか、それなら」
「言っておくが、鎧は壊れないが衝撃で中の人は死ぬから過信はしては不味いぞ…」
「それで良く、女神の騎士は死ななかったですね..」
「凄くストイックに自分を鍛え上げたようです..女神の鎧の注意はしっかり伝承するように伝えられていますから間違いはない筈です」
「そいうですか」
正直、自分が強いのかどうか、解らない…
本当は、自由気ままにこの世界を生きる筈だったのに..
何か違う方に流れている..そんな気がする。
偽の伝説が始まる 神託
結局、王都の見学はまた伸びる事になってしまった。
俺が女神の騎士だった為にまた王家や貴族で話し合いになるそうだ。
そして俺は、礼拝堂に来ている。
ちゃんとした教会にも足を運ぶつもりだが、王城にも礼拝堂はある。
女神様に祈りたいと伝えたら、すぐに案内してくれた。
とりあえず、女神ノートリアの像に手を合わせて感謝の念を伝えた。
《やはり、貴方は義理固いのですね..》
神託なのか? 光が降り注ぎ頭の中に直接意思が流れて来た。
どう答えれば良いのか解らない..自分が思った以上の加護を頂いたのだから..
《別に言葉にする必要はありませんよ..私は女神です..貴方の感謝の気持ちはしっかりと届いていますから》
まさか、これって考えただけで伝わってしまうのか?
《そうですよ…女神ですから! 聞きたいのはジョブと装備についてですね…》
更に頭の中に声が響いてきた。
女神の騎士 偽 は私のちょっとした、楽しみですね。
貴方の容姿を考えた時に、昔の知人の顔が横切ったのです。
まぁ、色々とあって彼は私の傍には居ないのですが..
そこで、親しかった友人のその姿に似せて貴方の外見を変えました。
神にとっては外見は余り価値がありませんから無頓着で、美しい男性といったらその姿しか思いつかなかったのです。
まぁ傾国の美少年とまで呼ばれた方に似ていますから間違いなく美少年な筈です。
そして、その容姿を見た物だから伝説の武具も貴方が気に入った訳です。
何しろ、その時の女神の騎士しか主として認めなかった武具なのに、かなり戸惑ったようですが、結局は主として認めたのです。
だから、だったらとジョブも併せて 女神の騎士 偽 にしました。
偽が入っているのは、以前の女神の騎士とは別人って意味です。
ちなみに、女神の騎士は優れたジョブではありますが、この世界に私が顕現しない限り、魔法剣士より少し優れた程度なので
勇者の様には戦えません..それは 偽聖剣デュランや女神の鎧を身につけても同じです。
女神の鎧は私が作った唯一の防具..その強度は最強ですが…聴いての通りです。
偽聖剣デュランは昔の優れた鍛冶職人が聖剣に近い物を作ろうとした物…技量を越えて使いこなせば斬れない物は無くなります。
《それでは、また祈りに来なさい..旨くタイミングが合えば、またお話し(神託)しましょう》
まるで一方通行だ..まぁ流石は女神、知りたい情報の殆どは教えて貰えたけど。
《綺麗..》
《神々しい…光に包まれています..神託が降ったのですね》
《教皇様や枢機卿でも..数年に一度しか神託はくだらないのに..流石は神の使徒..神の守り手ですね》
「有難うございます」
そう、その場の教主に礼を言い俺は礼拝堂を離れようとした。
「女神の騎士様..その神託はどの様な神託でしたか?」
「特には..ただ、感謝の念を伝えたら女神様の声が聞こえたのでそのまま世間話をしただけです」
「世間話ですか?」
「はい、期待する様な話じゃなくても申し訳ございません」
「いえ..良いのですよ」
これがまた誤解を生む事になる。
女神は人間より上位の存在…神託とは敬虔な信者が長年信仰した末に「声が聴ける」程度。
そして、具体的な神託は教皇や枢機卿が「世界に危機が迫った時に」真摯に伺いを立ててようやく聞けるものだ。
そんな、世間話等、する訳が無い..女神とは人間等とは全く違う高次元の存在なのだから…
そんな女神が世間話をするというなら..それは人智を越えた存在..より女神に近い存在といえよう。
女神の騎士とは..人を越えた神に近い者なのかも知れない。
その場を立ち去ろうとする至高に教主は跪いた。
それを見た..シスターや他の教主も跪く..
「いきなり、何をするんですか…やめて下さい!」
「貴方様は女神様の御使い..我々の信仰する聖なる方..頭から抜けていました..お許し下さい」
いきなりで忘れていた..女神様の傍にあるあの小さな像がこの方なのだ、自分達と同等に等扱ってはいけないのだ..
「私はその力を女神様から授かっただけです..この世界を救った女神の騎士とは別人です..本当に困ります..」
至高がなだめ、お願いしてようやく、普通に接して貰えたのは1時間後だった。
「解りました..女神の騎士様のそれが望みなら…その様にしましょう」
私は何をしているんだ..女神の騎士様は凄く優しく、奴隷や病人にも手を差し伸べた方だ、跪く等…望む訳が無い..
この教主は枢機卿だった…その日のうちに彼は教皇の元に旅立った。
まだ何もしてないのに…
今、麗美は俺の薬指を咥えている。
それと同時に俺も麗美の薬指を口に含んでいる。
メイドさんが「血止めナイフ」をくれたのでこれで口内炎や舌の痛みに困る事は無い、俺は別に吸血鬼では無いので別に麗美の血は要らない..だけど、
「私だけ、至高様の指をしゃぶるのは何か恥ずかしいので..お願いしますわ..それにこれは愛の証なら私の方もお願いしますわ」
そう言えば、恋の証しとか言ってキスから切り替えたんだから..そう言われたら仕方ない。
だけど、これ周りの人に見られたら不味くないか?
どう見てもキスよりイヤらしい事しているように見える。
前の時は舌を切るのが嫌で必死だったけど..今冷静になり見ると..かなり不味い。
別に俺は麗美の血は必要ないから、指は切らないで良いと言ったんだが..
「至高様だけに痛い思いさせるのは不公平ですわ」
そう言いながら、麗美はスパッと指を切った..まぁ血止めナイフだから直ぐに塞がるんだけど
暫く舐めまわすと麗美は満足したのか指から口を離した。
昨日は殆ど麗美にあう時間が無かった..麗美に昨日の事を聞いたら、頭が俺の事で一杯になりなり、夜中から明け方に掛けては定期的に震えがきたそうだ。
完全に中毒や依存症が起きている。
自分が望んだ能力とはいえ..使い所を考えないといけないな..絶対に自分から離れなくなるが..一生面倒見る覚悟が必要だ。
「どうかなさいましたの?」
「いや、麗美は本当に美人だな..そう思っただけだよ」
《嘘..今、何て言いましたの?》
「あの、至高様、もう一度、今言った事をおっしゃって」
「麗美は本当に..」
「ようやく、ようやく「さん」をつけないで呼んで下さいましたのね..嬉しいですわ」
やばい、考え事していたから、さんをつけ忘れた..
「麗美さん」
「麗美!」
「麗美さん」
「麗美ですわ」
仕方ない、俺が折れるしか無いな..
「ふぅ..麗美、これで良いのかな」
「はい、至高様!」
2人がこんな風にしている時、また一波乱起きていた。
神託の様子を見ていた枢機卿がすぐに自分自ら教皇の元に赴き詳細を伝えていた。
「女神の騎士様が降臨されていたのですか?」
「実際には勇者の召喚に巻き込まれて召喚された者が、女神の騎士様だったようです」
「そうですか、女神の騎士様は信仰の対象です..女神様に次ぐ尊いお方..その事が王家ではお解りなのでしょうか?」
「爵位を与えられ大切に扱ってはいるようです」
「それが間違いなのです…王は序列で言えば教皇である私より下です..女神の騎士は女神様の御使い..私よりいえ全ての人間より上なのです、それは女神の像のすぐそばにある像で解かる筈です」
「確かにそうです」
「そうでしょう! お祈りする時に、助けを求める時に一緒に祈る時もある筈です」
「はい」
「ならば、抗議をしに行かなくてはなりません..教皇より上の存在に爵位? そんな扱いをさせる訳にはいきません..」
そして教皇は直ぐに馬車を出し王城にむかった。
「教皇様が急に来られただと?それは誠か?」
この世界で一番の権力者は教皇だ..この世界には本物の女神がいる。
例え、王族でも宗門を破門になってしまえば世の中の人間が相手にしなくなり、没落してしまう。
何しろ、この世界には宗教は1つしかないのだから..
「はい、何やら火急の用事とかで直ぐに王に会わせるよう言われております」
「解った、失礼のないように頼む、すぐに支度をする」
王が急ぎ支度を終え謁見室に向かった。
何時もは上座の王座に座る王も今日ばかりは下に膝磨づく。
「表をあげてよいぞ..」
「教皇様、これは一体どうなされたのですか? いって頂ければはせ参じました物を」
「いやな、勇者の召喚を教会は許可したのだが..その際に 女神の騎士様も召喚されたと聞いたのだが誠か?」
「はい、凄く好ましい人柄の美しい少年でした」
「それで、お前は何故報告を怠ったのだ..」
「報告とは何でしょうか?」
「これが、勇者召喚国の王の言葉か..良いついて参れ」
教皇が勝手に謁見室から出て行った…ついて来いと言うならついて行くしかない。
「ここは..礼拝堂..ここに何かあるのですか?」
「何も気づかないのか王よ..」
あああああああああああっ…そういう事か..不味い、不味い..
「ようやく気付いたようだな、女神様の横にある像に」
「はい」
「女神の騎士は女神様の御使い..私より上の存在、それを何で傅かせる、そして女神の御使いなら教会の管轄、何故に報告をしないのだ」
「もももも申し訳ございませんでした..」
「私はこれから女神の騎士様に会いに行きます..今後の事はそれからです」
教皇はそのまま、歩いて至高の部屋に向かった。
ノックをしてそのまま入った。
「女神の騎士様、お初にお目に掛かります、教皇のセパロと申します…いったん外で待ちます」
部屋の中に麗美が居たので気を利かした。
だが、もう血は飲ませ終わった後なので問題は無い。
「気になさらないで大丈夫です..なにかご用でしょうか?」
「はい、女神の騎士様が降臨なさったという事なのでご挨拶をしに参りました」
何がなんだか解らない。
「それはご丁寧にありがとうございます」
「その、横の方は..」
「一緒に召喚された、真珠院麗美さん、聖女です」
「そうですか? それはそれは」
女神の騎士様のお相手が聖女..これは教会にとっては正に吉報。
「真珠院麗美と申します教皇様」
「これはご丁寧に、もしかしてお二人は恋人同士..そういう事でしょうか?」
「はい、お付き合いさせて頂いております」
麗美はにこやかに答えた。
「そうですか? そういう事ならお話があります」
「何でしょうか?」
「お二人とも教会の方に来られませんか?」
「教会に?」
「はい、女神の騎士様はまさに信仰の対象…最大限歓迎をさせて頂きます」
「それは今直ぐ、答えないといけませんか?」
「いえ、女神の騎士様の気のままに、何時までも待ちます、何でもお好きになさって下さい」
「解りました、真摯に考えさせて頂きます」
「それとこれをお持ちください」
「このメダルは何ですか?」
「それは、女神の騎士の身分証明書です..それがあれば全ての教会、信者が力になってくれます。
まじか…
こうして、俺はまた何もしてないのに選択を迫られる事になった。
教会訪問と施設
今日はようやく、王都見学に出られる。
召喚されてから今迄外に出られなかったから皆んなのテンションは高い。
だが、
「えー何で、至高くんと麗美が一緒で霊夢は別行動なの」
「一緒でいいんじゃないかな?」
「俺もそう思うが..」
「実は、至高様と麗美殿は半分教会の管轄になりました…それで、信者への挨拶もありますので別行動になります」
「霊夢つまんなーい」
「私も余り面白く無いな」
「そういう事なら仕方ないだろう…」
「その代わり、勇者様達の方が自由時間は多いですよ! もし自由時間が重なれば一緒に行動しても構いません」
結局、自由時間が多いと言う事で納得して貰えたけど..はぁ、先行きが大変だわ。
「すみません、至高様が女神の騎士に成られたので王都の見学の半分が教会訪問になってしまいました」
「仕方ないですよ..それはマリア様のせいじゃありませんから..」
「気になさらなくて結構ですわ…私は至高様がいればそれだけで満足ですわ」
「そう言って下さると助かります」
やはり、至高様達は本当に人が出来ています。
女神様の御使い..それだけの事はありますね。
王族専門の豪華な馬車..凄いな。
そして、
「私も同行させて頂きます」
マリア王女が付き添いについて、近衛騎士までもが8人ついてきた。
何だか凄く大袈裟な気がする。
そして、馬車の中には俺たち三人以外に騎士団長のゼーレが乗っていた。
何だかVIPになった気がする。
「ここが教会ですか? お城の礼拝堂も大きかったですが流石に大きいですね」
「確かに大きいかも知れませんが..聖地の教会はこの何倍もあります..ここからは私よりも詳しい教会の方が案内して下さいます」
「お久しぶりです、女神の騎士様、聖女様」
教皇様からお城であった枢機卿..そして教会のシスター等、数十人がまるで待っていたかのように門の前に居た。
どうすれば良いのだろうか?
教皇とは王よりも上の存在と知った今では、膝磨づく方が良いのだろうか?
膝磨づこうとしたら…
「膝磨づいてはなりません..貴方は女神の騎士、我らの信仰の対象..王よりも私教皇よりも上の存在、私はセパロ、そこの王女はマリア、王であっても呼びつけで構いません」
「そうなのかも知れません..ですが信仰を貫いている、貴方や、民を思う王や王女には敬意は払いたいのです。それではセパロ殿、マリア殿でお許し下さい」
「滅相も御座いません..ですが、それが女神の騎士様の思し召しなら..それで構いません」
《あれが女神の騎士様か..異世界人は尊大な態度をとると聞きましたが..全然違うじゃないか?》
《あの若さで..やはり違うわ..》
「それではご案内させて頂きます」
教会を一通り案内して貰い、礼拝堂に行き、お祈りをした。
すると又、女神からの神託が降りてきた。
《貴方は本当に義理固いのですね..今度は王都の教会ですか?》
「はい、ノートリア様、私の人生で此処までの事をしてくれた方は人間、いや神も含んで誰もおりませんでした」
《そう..人間が神に出会える確率は貴方の世界でくじで10億あたる位珍しい事ですからね..ですが、貴方ならあの世界の神でも出会いさえあれば気に入ったかも知れません》
「そうですか」
《多分、天然の人、いや神たらしみたいな感じかしらね》
「それで、俺は何をしたら良いのでしょうか?」
《好きに生きて良いわ..前にも話しましたが、その力は私が顕現しない限りはそんな大それた力じゃありませんから..好きに生きなさい》
「本当にそれで良いのですね」
《はい..それでは名残惜しいですが..また祈りに来て下さい..タイミングが合えばまた、お話しましょう》
「はい」
自由に生きて良いわ..だって貴方は「悪い事が出来ない」人間なのですから..ね
《やはり、女神の騎士様は違うわ..あの神々しい光、女神様が神託をされた証拠》
《女神様の御使い…だからこそ、神託が簡単に降りてくるのですね》
《あの方こそ女神様の代行者..教皇様がこの世で一番..そう言うのも解ります》
《やはり、至高様は普通の人間と違いますわ》
「女神の騎士様..神託はどうだったのですか? このセパロにも教えて下さい」
「前と同じ只の雑談です..あと、自由に生きて良いと言われました」
《やはり、この方は違うのだ、女神が普通に話される..そんな人間を自分と同列になんて出来ない》
教皇セパロはまた膝磨づこうとした。
「あの、辞めてくれませんか? 俺からセパロという友人を奪う様な事は!」
「私が友人」
「本当は目上の方だから、違う..ですがそれを望まないのなら..せめて友人にして下さい..少なくとも若輩者の俺にとってはこの世界の大先輩なのですから…他の方も辞めて下さい..本当にもう少し普通にして下さい」
「そうですか..女神の騎士様が友人..解りました、そう言われるのならそうしましょう..皆様もそれが女神の騎士様の望み..解りましたね」
「「「「「「「「はい」」」」」」」」
「この後は自由時間です、どこか行きたい所はございますか?」
「通常は入れないような場所でも、教皇の権限でご見学も可能でございます」
「麗美..行きたい所があるんだが良いかな?」
「何処でも、至高様が行きたい所で良いですわ、傍に居て貰えるそれ以上の幸せはありませんから」
だったら
「孤児院の様な施設はありませんか?」
俺は前の世界で施設で暮らしていた。
施設の仲間が唯一の友人だった。
だから、あの雰囲気が落ち着く..ここは違う..そうは解かっていてもみて見たかった。
「施設ですか? 王都の外れにありますが..本当にそちらに行きたいのですか?」
「駄目ですか?」
「女神の騎士様が行きたい..そうおっしゃったんだ、直ぐにご用意しなさい」
《やっぱり、女神の騎士..一番弱い者から見ていく..普通の者とは違う》
「あの、マリア様、王都見学ではお小遣いが貰えると聞いたのですが、どの位頂けるのですか?」
「何が欲しいのか解りませんが..無茶な金額で無ければ支援します」
「そうですか」
俺は施設に行く前に幾つかの商店に訪れていた。
「何か買われるのですか?」
「セパロ様、この辺りで安くて子供が喜びそうなお菓子とかありますか?」
結局は、様なのですね..謙虚なのは美徳ではありますが…女神の御使いなのに..
「私はその辺りは疎いのでシスターの中で詳しい者に買いにいかせましょう」
「はい、お願い致します..あと出来るなら子供に配りやすいように小袋に入れて下さい」
「シスターケイ..頼みましたよ」
「はい、教皇様」
「そうですわ、では私はそうだ、子供たちの為にオモチャを買いましょう..お金は国費から出しますから安心して下さい」
「ではお菓子代は教会が出しましょう」
沢山のお菓子とおもちゃを馬車に載せて..至高たちは施設へと向かった。
慰問
さぁ、どうやって渡そうかな?
だが、そんな事考える必要は無かった。
いきなり行ったつもりだけど、ちゃんと事前に連絡がされていた。
そりゃそうだ、教皇や王女、枢機卿迄が居るんだ..
施設を見たが、大きさは大きいがかなりボロボロな気がする。
そして、皆んながみすぼらしい。
そりゃ、そうだ孤児ではなく親がいる子でも親の手伝いをしていて貧しそうだった。
街には俺から見たらまだ子供なのに皮の鎧を着ていた子が居た..多分、冒険者なんだろう..
だが、
「皆さん、女神の騎士様達が来て下さいましたよ、ご挨拶しましょう」
「「「「「「はーい」」」」」
うん、明るいな..これはこの施設の管理者が素晴らしい証拠だ。
「皆んな、とりあえず、お菓子を沢山買ってきたから食べようか?」
「お菓子? お菓子をくれるの?」
「そうだよ、だから皆んな並んでね」
「「「「「「はーい」」」」」」
わらわらと沢山の子供が集まってきた。
「教皇様と王女様が買ってくれたんだ、まずはお礼を言おうね!」
「「「「「「教皇様、王女様ありがとう!」」」」」
これで良い。
お礼を言われると嫌な気分になる人は居ない。
その証拠に教皇はともかく、王女は凄く嬉しそうだ。
施政者は思った程、直接お礼を言われることは少ない。
お菓子の入った小袋を配り始めた。
もう、お礼なんて良いのに
「お兄ちゃん、ありがとう」
「お姉ちゃんありがとう」
が止まらない。
麗美も何だか嬉しそうだ。
お菓子を受取ると凄い勢いで皆んなが食べ始めた。
多分、この分では食事すら満足に食べていないのかも知れない。
昔の自分に重なるな….
こんな物で足りる訳は無い..
それでも今だけは笑顔だ..
お菓子も玩具も配り終わったので他に何が出来るか考える。
良く自分が居た所に来てくれたボランティアの人は一緒に遊んでくれた。
だけど、俺は…遊ぶのは苦手だ..だからよく考えて…丸投げする事にした。
さてと
教会から一緒についてきたシスターの横に近づく
「皆んな、こっちのお姉ちゃんが絵本読んでくれるって..聞きたい人はこっちに来て」
「ええっ、私ですか?」
「はい、お願い致しますね」
「はい、解りました」
わらわらと子供が集まってきた。
「ほっほっほっほっ、それなら私も絵本を読みますかね」
「教皇様、有難うございます」
「私にも出来る事はありませんか?」
「そうですね、皆んな、お姫様が一緒に積み木遊びしようって..遊びたい人は集まれー」
「「「わーい」」」
「此処にいる騎士のおじさん達は凄く強いんだよー 冒険者になりたい人はこのおじさんの所に集まって..色々教えてくれるよ」
「至高殿..ちょっと待ってくれ..」
「大丈夫ですからお願いしますね」
比較的上の年齢の子供が集まってきた。
「至高様は何もしませんの?」
「麗美…俺はこう言う雰囲気を眺めているのが好きなんだよ..」
まったく、この人は…多分此処の手柄も教皇や王女のに譲るつもりなのですわね..
「皆んな、追いかけっこしたい人はこっちに集まってー 女神の騎士のお兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒に遊ぼう」
「おい、麗美!」
「「「「「「わーい」」」」」
驚く事に、今迄遊んでいた子供達や絵本を読んで貰っていた子供まで全員が集まってきた。
「最初の鬼は..至高様ですわ、皆んな逃げますわよ」
「結局、あっちに行ってしまいました」
「女神の騎士様には敵わないですな…」
「だったら、あっちに加わりませんか?」
「マリア王女、私はもう齢なので此処で休んでいます」
「それでは教皇様、私は行ってきます」
「はい、気を付けて、枢機卿もシスター達も行って来て構いませんよ」
「「「「「はい、それではいって参ります」」」」」
教皇は考える。
女神の騎士とはやはり女神の代行者なのでは無いのか?
そうとしか思えない、
枢機卿は表向き善人面をしているが、裏では権力に固執する男だ。
シスター達は、信仰心は高く厳格な人間が多い..
そして、マリア王女は何時もやる気のない人物だった筈だ。
騎士にしたって何時も仏頂面で、あんな明るい顔等しない..
それが子供相手にあんなに..笑顔で遊んでいる..
こんな所を私は見た事が無い、それに私自身がここに居て楽しいのだ..
女神の騎士である至高殿の近くに居ると、何とも言えない気持ちになる。
その場にいるのが凄く心地良いのだ、まさに傍に神がいて見守って頂いている、そんな気になる。
シスターや枢機卿に聞いてみたら、皆が程度は別だが同じような気分になるらしい..
聖女からも傍に居てもらいたいそういう願いでがあった。..その気も解る。
そこに女神の騎士が居るだけで心地よい…その反面、居ないと何だか不安な気持ちになる。
正に女神様の加護..そうとしか思えない..
結局、至高たちは…自由時間の全てをこの施設で過ごした。
「それじゃ、また今度ね、バイバイ」
「また遊びにきますわ」
「「「「お兄ちゃん、お姉ちゃんまたね」」」
「「お菓子ありがとう」」
「「「おもちゃもありがとう」」」
「それはね、王女様や教皇様達がが用意してくれたんだよ?」
「「「王女様、教皇様 ありがとう」」」
「どうしたしまして」
「気にしないでよいですよ」
純粋な子供の感謝…私はこう言う笑顔を見たい為に教皇になった..だがこういう物を見たのはどれくらいぶりなのだろうか?
王族に生まれた、私は幾らでも手を伸ばす事は出来たのに、今日初めて行動した気がします…
「可笑しな物ですね..至高様と一緒に居ると、体が清められた様な気がして、正しい事がなんなのか考えさせられる気がします」
「それは当たり前だと思いますよ! 教皇の私すら同じような気になります..」
これから後、2人は更に女神の騎士を狂信していく..
だが、その理由は至高当人すらも知らない..
彼らは至高の傍に居た…その結果、至高の分泌物の影響で中毒になりつつあるという事に…
【閑話】勇者達の王都見学
至高達が教会に行き慰問をしていた頃勇者達は…
「ここが王都か!思ったより拓けていないんだな..」
「仕方ないよ此処は東京じゃないんだから」
「そりゃそうだろう」
「あの、勇者様方の住んでいる世界は知りませんが、此処はルーディアスの王都です、色々な物がありますから楽しんで下さい」
「そうか、それじゃ遠慮なく見させて貰おうか」
「霊夢は綺麗な洋服が欲しいな..後、至高ちゃんがいる場所が解ったら教えて合流するから」
「私は、剣や防具を見たいな」
「それは俺も楽しめそうだ、良いなそれ」
「至高様の方は教会が終わったら、騎士が早馬を飛ばしてきてくれます、早速色々見て参りましょう」
服だって最高の物を王宮が用意していますのに..武器だって聖なる武器に敵う物なんてあるわけ無いわ..
やはり、商人の息子..物欲が強いのでしょうね..「意地汚い商人の息子達」だから仕方ないですね。
東吾達三人は色々と見て周り..次々と買い物をしていった。
だが、購入する際に、マリアーヌから見たらいちいち、それらの商品を貶しているように見えた。
「これは、特殊なレース使いで…しかも大蛾が子供時代に吐くという貴重な糸で作った物でございます」
「えーでも、何だかゴワゴワしているよー、そうだこれで我慢するから、スカートを短くしてくれない」
「スカートをですか? それは可能ですが..それを着られるのですか?」
「そうだよ..その方が可愛いでしょう?」
ここは貴族や王族のお店..ミニスカート等、はく者は居ない。
「畏まりました」
《こんな踊り子や娼婦が着るような服を作るなんて..》
「何だ、刀みたいな武器は無いんだ..」
「どう見てもナマクラしか無いない」
「仕方ないから、これでも買うかな..」
《その剣を買う為に冒険者がどれだけお金を貯めるのか知っているのか? オーガすら両断する剣なんだぞ》
見ていて気分が良く無い..自分の国の自慢の品々貶されているのだから…
「勇者様達は違う世界から来たので、すみません..私、気分が悪くなりましたので馬車で休ませて頂きます..お金は王家が支払いしますのでご存分にお買い物をして下さい」
「そうか、体調が悪いのにスマンな」
「そう、それじゃ霊夢達は色々見てくるね…至高ちゃんの居場所が解ったら教えてね」
「すまないが宜しく」
「解りました」
勇者達に魔王を倒して貰うのだから仕方ない..
気高い勇者様やその仲間との出会いを子供の頃から憧れていたのに…
何だか、本当につまらない…
本当に心がトキメキません…
「もう夕方だし帰る時間だよね..なのに至高ちゃんの居場所の連絡がないの!」
「流石に可笑しいだろう..」
「俺は別に良いが、約束一つ守れないのか..」
「スイマセン..今こちらから使いの者を送っています…もう暫くお待ちください」
「申し上げます! 女神の騎士様と聖女様はお城に帰られました」
「何ですって..私が自由時間になったら連絡するよう伝えたのに報告を怠ったのですか?」
「それは違います! 女神の騎士様や聖女様は王都での自由時間をキャンセルして孤児院の視察に変えられました」
「だからって報告しないのは可笑しいです」
「それが騎士に聞いた所、一緒に子供達の世話を頼まれたそうで..報告に来れなかったそうです」
「そうですか..仕方ありませんね…」
「というわけで、至高様は自由時間を取らなかったそうです」
「これだからスマホが無い世界は不便だな」
「そう、仕方ないけど、霊夢つまらない」
「ああ、何だか面白く無いな..仕方ないんだけど」
散々、買い物して飲み食いして..それですか.「意地汚い商人の息子達」 父が思うのも仕方ないですね。
マリアーヌはそう考えた。
だが、実際に彼らがした事は過去の転生者であれば普通の事だった。
便利な世界から不便な世界来た彼らからしたら当たり前の事。
だが、一緒に転生した物が出来過ぎていた。
そして、マリアーヌや王も中毒にまではいかない物の至高の能力の為に..至高に対して心地よさを感じていた。
その結果、王家と勇者達との間に小さな罅が入り始めた。
【閑話】 私はマリアになりたい
「どうしたのですか? マリアそんな泥だらけで..」
「至高様と一緒に施設を訪問したのですが、そこで汚れてしましました」
「王族がはしたないですよ..」
「私はそうは思いません!」
この子が、私に正面きって口答えするなんて…
私はマリアが王族としてはしたない行動をしたんだと思い父に告げ口をした。
だが、
「マリアーヌ、告げ口とはお前らしくないな」
「ですが父上、王女であるマリアが泥だらけの服で人前を歩くなんて前代未聞です」
「儂はそうは思わぬ..お前はマリアが何故泥だらけだったかその理由を知らぬからそう思うのだ」
「マリアはドレスを汚して何をしていたんですか?」
精々がただ視察しただけだと思っていた..
大量のお菓子を買って、おもちゃを買っていって一緒に遊んだですって..
「近衛騎士の一人を呼んで聞いたら…死んだ目をしたような子供が見る見る明るくなったそうだ..そしてこれだ」
王様おもちゃをありがとう!
凄く楽しかった..
そんな内容の手紙が20通近くあり、多分文字が書けない子供なのだろうか? 絵も数枚混じっていた。
「何もしてない儂が子供にこんなに感謝されているのだ、誰がマリアに文句が言えよう..先程、教皇様もお見えになって正式に施設への支援を教会と王家でする事が決まった」
「そうですか..」
私は何も言えなかった..もし口を開いてしまったら、「羨ましい」そういう言葉がでそうだったから…
ただ、勇者達と一緒に買い物をしていた、自分達。
ただでさえ少ない時間を施設の視察に使ったマリア達..どっちが素晴らしいかは誰の目にも明らかだ。
しかも、感謝の手紙をみせた王は凄く嬉しそうだった。
パートナーに恵まれるとこんなに違うんだ。
もし、私が勇者でなく、女神の騎士の担当だったら..この評価は全部自分の物だった。
羨ましくて仕方がない…
あれ程美しくて、人の気持ちが考えらえれる…正に自分が子供の頃に憧れた勇者..ううん女神の騎士がそこに居る。
何で私は第一王女だったんだろう..
私の管理する勇者達は..俗物で本当に勇者なのか疑問に思ってしまう。
街に出てもここに居ても贅沢をし放題..どこに人格があるのでしょうか?
あの街にだって貧しい者は居たはずです..自分の事は棚に置いてそう言われると思いますが何か感じなかったのでしょうか?
あなた方が買い食いしている物を見つめていた貧しい少女がいましたよ?
何も感じなかったの?
八つ当たりかも知れません、自分だって何もしないのだから..
だけど…私だってあっちが良い..
子供達と遊んで..感謝されて、子供達に希望を与えて..お父様に褒められたい。
子供の頃憧れた絵本の中のような気高い生活をしたい…
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で
なんで、あれが私で無いの..
勇者なんて要らない..私も女神の騎士が欲しい..
女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい
女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい
女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい
女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい
それは無理、私はマリアではなくマリアーヌ、第一王女にして勇者達を支援する者なのだから..
もし、マリアーヌが王女で無ければ泣いていたかも知れない。
だが 第一王女に生まれた彼女は泣かない、泣きたくても泣けない..
それが王女なのだから。
新しい生活
結局、これからどうしたいのか?
自分で決めて良い事になった..
何故、その様になったのかと言えば、法皇と王が話し合い..「女神の御使い」に指図するのはおこがましい。
そうなったようだ..そして麗美も俺と一緒に行動する事になった。
これも又、聖女が女神の御使いに惹かれるのは仕方ない..そして聖女の立場は教会より、そう言った事が起因する。
面白く無いのは梓や霊夢..だが、これ以上勇者側の戦力を裂く訳には行かないので..要望は通らなかった。
「さてと、本当に麗美は良いのか?」
「何回同じ事を言いますの? 私、至高様の傍なら何処でも良いのですわ」
「そうか?」
俺たちは今、施設に向っている所轄、この間慰問した孤児院だ。
やはり、俺は王城よりああいった場所の方が良い。
昔を思い出し落ち着く..
結局、俺はこの世界を下から見て行こうと思うようになった。
かっての俺は、一番下に居たんだと思う..だから新しい人生をスタートするならそこから始めた方が良いと思う。
ここから冒険者をしながら..力をつけようと思う。
皮の鎧を着た人間や、子供でも簡単な仕事は出来る。
何も出来ない俺は此処からスタートすれば良い..
麗美は最初は連れて行かない..もし負けたら女は大変な事になる..
話し合いの結果、俺が冒険者をしている間は 治療院でヒーラーの修行をするそうだ。
「何だ、あの建物は..前は無かったぞ」
「本当になんですの?」
「ようやく来られましたな女神の騎士様」
「枢機卿..これは何ですか?」
「流石に、女神の騎士様を施設で寝かす訳にいかないので..作らせました」
中に入ってみた..ほぼマンションに近い作りの2階建て..だけどこの世界じゃ凄い部屋だ。
しかも、これ数日のうちに作った..そう考えたら本当に凄い。
「こんな素晴らしい物を用意いただきありがとうございます」
「本当なら、貴族の屋敷の一つも開けさせて使って頂きたいのですが..それは望まないでしょう..ふぁからこれにしました」
良く解っているな..
「有難うございます」
「女神の騎士様にお褒め頂き光栄です」
「なかなかよく出来ていますわね..」
此処から新しい俺の生活が始まる..
だが、お城では大変な事が起きていた。
「マリア、何処に行くんですか?」
「女神の騎士様の支援は私の務め..施設の近くの屋敷に移ります」
「「「「「姫様..お伴します」」」」」
「ちょっと、あんた、女神の騎士様のお世話をしたいだけでしょう?」
「あーなたと一緒にしないでよ!」
「さてと女神の騎士様を守る、騎士が必要だろう..」
「そうですね…魔法使いも必要な筈ですわ」
王城から実に半分近くの人間が出て行こうとしていた。
王や腹心はそれを思いとどまらせる為に苦労する事になる..
初仕事は ゴブリンの討伐
麗美は、教会に回復魔法の勉強に行っている。
俺はと言うとこれから冒険者ギルドに行くつもりだ..
俺がギルドにつくと..何だこれ?
大きく垂れ幕が掛かっている..そして大きく
「熱烈歓迎 女神の騎士様」
そう書かれていた。
何だ、これ..
「ようやく来られましたな..女神の騎士様、今か今かとお待ちしていました」
《あれが、女神の騎士様…凄く美しい..》
《私、金ランクなんだけど..パーティーに加えて貰えないかな..》
《伝説の通りなら..難しいか?》
「これは一体、何なのですか?」
ギルドマスターの部屋で話を聞くと、前の女神の騎士も冒険者からスタートしたようだ..
だから、凄く人気があると言う事だ。
「それではギルドについてご説明させて頂きます」
冒険者の階級は 上からオリハルコン級、ミスリル級、金級、銀級、銅級、鉄級、石級にわかれている。
そして、案外上に行くのは難しく、銀級まで上がれば一流と言われていて、この街には金級以上の冒険者は居ない。
殆どが、最高で銅級までだそうだ。
級を上げる方法は依頼をこなすか、大きな功績を上げるしか方法はない。
銀級以上になるとテストがあるそうだ。
ギルドは冒険者同士の揉め事には関わらない。
もし、揉めてしまったら自分で解決する事。
素材の買取はお金だけでなくポイントも付くので率先してやる方法が良いらしい。
死んでしまった。冒険者のプレートを見つけて持ってくれば、そのプレートに応じたお金が貰える。
そんな感じだ。
「最も、だれも女神の騎士と揉めるとは思いません、それに階級は最初からミスリルなので気にしないで結構です」
気にするよ..何もして無いのに上から2番目..
「それはお断りします」
「そうですか、やはりそうですよね..オリハルコン級の申請を..」
「石級からお願い致します」
「えっ、石級..」
「はい、ちゃんと他の人と同じ様に下から頑張りたいのです」
「それが貴方の望みならそうしますが..良いのですか?」
「はい、私の実力をちゃんとギルドで計って頂きたいのです..本当に強くなれたら、勇者達の魔王討伐に加わる可能性もあります」
「解りました」
俺は銅貨3枚を渡して登録をすました。
「こちらが貴方の専属サポートのミランダです」
「ミランダと申します..宜しくお願い致します..」
うわぁ..エルフだ..見れば見る程綺麗だ..
「どうかなさいましたか?」
「いえ、お綺麗なので見惚れてしまいました」
「そうですか、光栄ですわ..人妻ですが心がときめいてしまいますわ」
彼女が選ばれたのは、人妻だからだ..未婚の女性だと下手すれば周りからイジメられかねない。
「それは残念です..ですが石級に専属サポートはつかないでしょう..これもお断り」
「それはなりません..貴方は女神の騎士なのです..専属でもつけないと周りの人間が、受付の順を譲り合うでしょう..そんな事になったら余計な混雑を招きます」
「そう言った事情ならお受けします」
下に行き、依頼を見に行った。
定番なら、薬草の採集かゴブリンの討伐だ..
女神の鎧と偽聖剣デュランがある..この武器の力を試してみたい..
俺はゴブリンの討伐の依頼を受ける事にした。
「これを受けたいのですが..」
「はい、ゴブリンの討伐ですね..これは常時依頼なので特にことわりなく受けて大丈夫です..討伐証明は右耳になります」
「解りました…所で何処に、ゴブリンが居るか解りますか?」
笑顔のミランダさんを他の女性の受付が睨むように見ている。
「それでしたら、東にあるゴブリンの森が有名ですね..ただ奥に行くと強いゴブリンが居ますから注意して下さいね」
「強いゴブリンって何でしょうか?」
「ゴブリンアーチャーとかゴブリンナイト、ホブゴブリン..そしてゴブリンキングですね」
「解りました」
そのまま歩いてゴブリンの森に向かった。
この森にゴブリンが居るのか..早速、こっちに向ってきた..
気持ちを引き締め剣で斬りつける….
「えっ..」
嘘だろう..なんだこれ、簡単に斬れてしまった..真っ二つだ..正直ハムを包丁で切った方がまだ固い。
目の前には真っ二つのゴブリン..そのまま耳を切り取り袋に入れた。
よくよく考えれば、偽とはいえ聖剣、ゴブリンならこうなる。
そのまま突き進むと、無数のゴブリンが居た..そのまま突っ込み剣を振るう..
手ごたえが無い..簡単に斬れてしまう..6匹のゴブリンを一瞬のうちに葬り.耳を切り落とした。
歯ごたえが無い..しいて言えば、生き物を殺す嫌悪感しかない..
そのまま突き進むと 洞窟があった。
《多分、あの中にはもっと強いゴブリンが居るのかもしれない》
勿論、そのまま進んだ..
剣を持ったゴブリンが居た..これがゴブリンナイトだ..ナイトと言うからには剣を使うのだろうか?
あっけない..簡単に言えば、剣の差だバターを斬るように剣を切りそのままゴブリンナイトを真っ二つにした。
わらわらとゴブリンナイトが出てきた..流石にこの人数..攻撃を食らう..だが女神の鎧はビクともしない..
《可笑しいな..この鎧は壊れないけどダメージはある筈》
至高は勘違いしていた…それは魔王とかドラゴンには通用しない..そういう意味だ。
幾ら何でも、伝説の鎧が..ミスリルの鎧に劣る訳が無い..
結局、ゴブリンナイトもゴブリンアーチャーの攻撃もきかないから只のゴブリンと同じ。
少し、大きいゴブリンが出てきたが同じだ、多分此奴がホブゴブリンだ..
夜分、もう50以上は倒した気がする..袋には大量の耳が入っていた。
もう周りにはゴブリンは居ない..
そのまま進むと部屋が二つあった..一つの部屋はガラクタしかない..
もう一つの部屋は..嘘だろう..
「うぷ…」
思わず吐きそうになった。
壊された人間が..そのままにされていた..精液にまみれている女..
千切られた子供、両腕の無い男..そんな死体が無数ある..その中に..嘘だろう..この子は俺が一緒に遊んだ子供だ。
もう、殺す事に良心の呵責は無い..人の形をしたただの化け物だ..全部死ぬが良い…
俺は死体に手を合わすと..そのまま進んだ..おかしな事にゴブリンが出て来ない..
その奥には重厚なドアがあった..そこには見上げる程の大きなゴブリンが居た…此奴がゴブリンキングだな..
そのままゴブリンキングに突っ込んでいった。
「うがあああああああああっ」
ゴブリンキングの咆哮が聞こえてきた。
キングはハンマーを持っていた..それを掻い潜り剣で腹を斬りつけた..偽の聖剣は青く輝くとあっさりと真っ二つに斬れ..内臓をぶちまけた。
本当に俺は勇者達より弱いのか?
どう考えても無双しているようにしか思えない..
明日にでも教会で祈ってみよう..
そして、俺はギルドに帰ってきた..
「おかえりなさい、至高様、初めてのお仕事は如何でしたか?」
「まずまずでした、素材の査定をお願いします」
俺はゴブリンの耳とプレートを置いた..
「流石は、女神の騎士..凄いですね..えっ、何ですかこれ..ギルマスを呼んできます」
「どうしたんだミランダ…ってマジかよ..まずは査定と分類訳しておいてくれ」
「はい」
何か不味ったのか?
ミランダさんが耳を並べ始めた..
《凄い、ゴブリンキング 1 ホブゴブリン8 ゴブリンナイト10 ゴブリンアーチャー9 ゴブリン28 これはゴブリンの砦を攻略したそういう事だわ…それに銅級冒険者のプレートが2枚》
銅貨4980に攻略手当銅貨1200 合計銅貨6180枚だから 金貨6枚と銀貨1枚銅貨80枚..
「マスター計算が終わりました..これです」
「終わったか..あのなミランダお前が慌てるのは解るが..至高殿は女神の騎士..我々と同じに考えるなよいいな」
「さてと至高殿..見ての通り、ゴブリンの砦の攻略をしたわけだ、その働きにより銀級冒険者に任ずる..良いな」
「俺は今日、石級冒険者になったばかりです」
「おっ、良い所に居た..エメルダ..お前なら単独でゴブリンの砦を討伐できるか?」
「そうだな、サポートに後二人銀級が欲しい..あっそこの女神の騎士の頼みなの? なら一緒に」
「違う、違う..」
「そう..それじゃ女神の騎士様、困った事があったらお姉さんにね..じゃぁ」
「あのエメルダは 金級だ、金級にして一人じゃ無理..なら銀級にするのは寧ろきつめの査定だ…納得されましたか?」
「はい」
「それじゃ..昇進おめでとう..より精進するように..では」
金貨6枚と銀貨1枚銅貨80枚を受取ると俺は冒険者ギルドを後にした。
この金額の価値が解らないままに
我慢しかない
金貨6枚と銀貨1枚銅貨80枚を受取ると俺は冒険者ギルドを後にした。
屋台で串焼き50本と6本に分けて貰い包んで貰う。
「兄ちゃん、銀貨1枚と銅貨50枚だ..6本分はサービスだ」
この辺りは女神の騎士を知らないんだな..こういう風の方が良いや.
「はい、これ」
支払いを済ませて、焼き終わる時間までぶらぶらする事にした。
露店でアクセサリーを売っているお店を見た..
赤い宝石が組み込んであるネックレスがあった..
麗美に似合いそうだ..
おばさんだが礼儀は必要だ..
「お姉さん、このネックレス幾ら?」
「私かい、嫌だねもう..特別に銀貨1枚でよいよ」
「ありがとう」
さぁ、そろそろ肉も焼き上がった頃だ取りにいって帰ろう…
「お帰りなさいませ、至高様」
あれ、可笑しいな? 何で家にメイドさんが居るんだ。
「おかえりなさいませですわ..至高様」
「麗美さん、これは一体」
「麗美ですわ」
「麗美、これは一体何?」
「王城からお世話係としてきたらしいですわ..あと他にも問題が..」
何でシスターがこんなに居るんだろう..
「私達は、至高様と麗美様のお世話係として此処に来ました..宜しくお願いします」
「お世話は私達メイドが本職..素人のシスターが出る幕じゃありません」
「至高様や麗美様は教会の管轄..そして私達シスターは全てを捧げる物..貴方達と覚悟が違います」
「そんなの当たり前じゃないですか? 相手は女神の騎士様なのよ..こっちだって同じです」
「うむむむむむ」
「うぎぎぎぎ」
「至高様、初めまして、私達は王宮騎士団の女騎士です..冒険者として過ごすのですよね? 一流の騎士は必要ですよね?」
「むぅ、何を言っているのかしら? たかが王宮騎士風情が..女神の騎士様の部下は 私達教会所属の聖騎士が相応しいわ」
「貴様、王宮騎士を侮辱するのか?」
「貴方達こそ、聖騎士の方が位が上なのを知らないの?」
「至高様、聖女様以外にも回復役が必要ですよね..我々王宮付き白魔術部隊が引き受けますわ」
「何を言っているのかしら? 回復魔法で教会に敵うつもり? 回復役なら我々教会の癒し手が勤めますわ」
「とりあえず、全員お帰り下さい…明日にでも教皇様や王様達にお話ししてきます」
「「「「「そんなー」」」」」
「ふぅ..これで一段落だな」
「ごめんなさい..私..断れませんでしたわ」
「仕方ないよ..ちょっと施設まで行ってくるね」
「お待ちしていますわ」
「これを寄付成されるのですか? 金貨ですよ」
俺は金貨1枚残して寄付した。
「本当に良いのですか..本当に..」
「はい、構いませんよ..あと、これ串焼きです、皆んなに別けてあげて下さい」
「ありがとうございます..」
これが女神の騎士..やっぱり普通の人とは違う..
「子供達が喜びます..本当にありがとう..」
「うん、それが一番だね」
「麗美、いつも本当にありがとう、これ露店で売っていたんだ、良かったらどうぞ」
「これ、至高様が買って下さいましたの?」
「うん、討伐報酬で買ったんだ」
麗美は金持ちの娘だった、こんな物で満足なんてしないよな….
「嬉しいですわ..これ一生大切にしますわね」
良かった喜んでくれた。
二人で串焼きを食べた。
ご飯は、さっきの部隊が作ってくれたみたいだから、後で食べる。
「至高様、この串焼きどこで買われたのですか?」
場所を教えた。
「可笑しいですわ…同じ物を自由時間に頂きましたがこんなに美味しくありませんでしたわ」
「気のせいじゃないかな?」
至高はこの串焼きを抱えるように持った..だから微妙にだが至高の汗が付いた、麻薬の血の影響が串焼きに出たのかも知れない。
「さてとようやく至高様、2人になりましたわね…一緒に寝ませんか?」
「そうだな、そうするか?」
正直..生殺しなんだ..
この世界には避妊の方法が無い…いや実際にはあるが..それは薬でも道具でも無く魔法だ。
流石に麗美としたいから掛けてくれとは言えない。
どんなに美少女が居ても我慢するしかない。
要らない
昨日の事があるので、今日は冒険者の仕事に出れない..
仕方なく、王城に話をしにいった。
城に入ると、すぐにマリア王女が走ってきた。
良いのかなこれ…王女として..
「凄いです..至高様、王城をでてから直ぐにゴブリンの砦を落とされたのですね..そして施設にそのお金の大半を寄付したと聞きました、凄いです..さぁさぁ王もお待ちですので行きましょう」
そのまま、マリア王女に連れられて王様の所に連れて行かれた..俺の席が王様と法皇様と横並びに置かれていた。
「よくぞ来られました女神の騎士様..さぁ」
「あの、この席は..」
「いや、本来なら上座に座って貰いたいのですがまた断られると思いまして同列にしました..」
言っても仕方ないんだろうな..
「本当に気を回して頂いてすみません」
「良いんです..もうすぐ法皇も来ますから..暫くお待ちください」
「城に行かれると聞きまして直ぐに参りました..何かお困りごとでも?」
昨日あった事を話した。
「そうでしたか? 教会と王城の者がかち合いましたか? それで女神の騎士様はどちらが宜しいのでしょうか?」
王と法皇と目が合った。
「凄く有難い話ですが、今暫くは1人で頑張りたいと思います..やがて実力ではどうしようも無くなった時に力を貸して下さい」
「解りました..王よ如何かな?」
「そう言われるなら..その時が来るまで皆には行かないように伝えて置きましょう」
「助かります」
「それでお世話をする者は如何なさいますか? これは必要かと思いますが..」
「そうですね、それなら教会と王城から1人ずつお願い致します..あんなに大勢来られても困ります」
「解りました..その様にいたします」
「こちらもそうしましょう」
「有難うございます」
「断られてしまいましたな」
「流石は女神の騎士様..と言う事でしょうか?」
「冒険者組合からの報告ではミスリルの地位を辞退され、下から行くと言われたそうです」
「それは聞いております..そして当日にゴブリン砦を単独で落とした活躍..素晴らしすぎます」
「それだけじゃありませんよ..その時の報酬で 聖女にプレゼントを買い..残りのお金で串焼きを買って子供達に持っていき、残りのお金の多くは施設への寄付したそうですよ」
「教皇様、それは自分は何も手にしなかった..そういう事ですか?」
「王よ正にそれだ..やはり女神の騎士様は一般人と違うのだ..そのまま王城に居れば贅沢が出来る、それすら捨てて暮らす程のな」
「しかし、支援を断られるとは思いませんでしたな..」
「何も望まないから..人の心を打つのかも知れませんね..教会からも沢山の者が女神の騎士様と戦いたいという希望者が出ております」
「王城からは半分近くがはせ参じようとしました」
「ですが他ならぬ女神の騎士様が望まないのですから致し方ありません」
「1人を選ぶのは..至難ですが致し方ありません」
「そうですね」
「法皇様 父上、その件でこのマリアに提案がございます」
「聞きましょう」
「はい、私は王城を出て、施設近くに移ろうと思います..そこに希望者を集めて何時でも支援できる体制を作ろうと思いますが如何でしょうか?」
「それは良い案ですね、王も如何でしょうか?」
「正直、1人を選んだら他の者から不満がでる所..そう考えたら良いかも知れません..マリア、その案採用じゃ..後は教皇様と詰める、頼んだぞ」
「はい」
また女神の騎士様..何で..
そんな聖人様みたいな人なら私だって困らないわ..
だって何もしないでも..皆んなの事ばかり、考えて生きている人なんだから..
正直初めて見た時は目を疑ったわ..私の理想の男性がいるんだから..
強くて優しくて、自分は何も望まないで..他人の幸せを望む..素晴らしい人なんだから
贅沢な王城暮らしを捨てて、施設の傍で暮らしている…
しかも、民の事を考え冒険者の初日にゴブリン砦を落とした..
力がつく前だからと言って..何もしない勇者達とは大違いだわ
自分で出来る範囲からでも戦い始める..全然違う…
王宮騎士の話では女神の騎士は勇者達より遙かに劣る存在だと聞いたわ..
それでももう戦っている..人を救う為に働いている..
王も教皇様も皆が褒め称える。
騎士も魔術師もメイド迄が心を奪われている。
私だってそうだ..もし、彼が私の担当なら..全部捧げたくなる..地位が関係ないなら婚姻だって結びたい。
それが何で私の担当じゃ無いの?
今日だってそうだ..私は担当じゃないから..あの場に私は居ない..
私は..のけ者だわ..あはははははははっ
勇者って何なの? ただの俗物じゃない..
女神の騎士が戦い、聖女が教会で学んでいるのに..何で王城にいるのかな?
女神の騎士より強いんだよね..だったら戦いなさいよ..
もう、王城にいる必要なんて無いんじゃないかな?
さっさと戦いに出さないといけないわ..
未来へのつけ 負の始まり
「ルイーダ、勇者の仕上がりは如何ですか?」
「基礎は覚えたようですがまだまだ甘い所があります」
「そうですか? ではあなたの目から見て女神の騎士様と比べて如何でしょうか?」
「女神の騎士様と比べたら一段上だと思います」
「それなら、貴方達が甘やかしすぎているのでは無いですか? 女神の騎士様は既に市政に出て活躍していますよ」
「そうかも知れませんね..戦いながら経験を積むのも良いでしょう」
私だって女神の騎士と肩を並べて戦いたいのだ。
私は、指導騎士、勇者達が戦いに出れば自由だ。
そうすれば、マリア様の陣営に入り女神の騎士様のお傍に行けるかも知れません。
「魔術師 ルイーダ、賢者の仕上がりは如何ですか?」
「かなりの術式を教えましたがまだまだ、詠唱速度に問題があります」
「そうですか?ですが、詠唱スピードだけなら当人の努力次第そうでは無いですか? 体力も女神の騎士様より後衛なのにあるのですよね」
「はい、そう考えたら充分かも知れません..後は実戦で覚えるのも良いでしょう」
この任さえ終われば、私は自由だ..私も女神の騎士の陣営に行きたい。
それには早々に終わらせて、マリア様の用意する支援部隊に入らねば..
「剣士 ソル 剣聖の仕上がりは如何ですか?」
「まだまだ未熟ですが、技は教え終わりました」
「ならば十分ですね」
「はっ」
とっとと我儘の相手は終わらせて 女神の騎士様の傍に行きたいのだ..
あの方の力になる為にこの剣はある。
至高の麻薬の血は..元より汗等でも影響を与えるその結果がこれだ。
よくよく考えれば解る..
自分達が勝てないから勇者を召喚するのだ..
それなのに自分達以下で勇者を旅立させてしまう..
自分達ですら勝てるような勇者に世界を救えるのだろうか?
やがて、そのつけは..何倍にもなって自分達に返ってくる事になる。
だが、麻薬の血の影響を受けた彼らはその事に誰1人気が付かない。
只の薬草採取が..
ようやく話が終わった..
明日からはメイドさん一人とシスター1人が住み込みでくる。
麗美はまだ寝ている。
冒険者の朝は早い..下から行くと決めたんだ..だから朝の依頼の取り合いの時間から参加する。
冒険者ギルドに来た。
一斉に冒険者がこちらを振り向くが気にしない..
《女神の騎士様だ..凄く凛々しいわ》
《石級から銀級に実力でなったんだろう..凄いよね》
《ゴブリンの砦を単独で落としたんだって..》
《今日は何の依頼を受けるのかな?》
俺は周りを見回していた..
目当ての者を探さないと..
居た..
「お嬢さんはその依頼を受けるの?」
「うん、サナはまだ子供だからこの位しか受けられない..ふぇ..女神の騎士様?」
この世界には実際には石級未満の冒険者がいる…子供だ。
子供が見習い冒険者をして雑用をしている..
この子は皮の装備も持っていない..腰に大き目のナイフを持っているだけだ..
「そうだよ..名前は至高って言うんだ」
「…..」
「もし、その依頼受けるなら..臨時パートナーにならない?」
「えっ..」
「俺が薬草を採取している間守るから、薬草について教えてくれる? 勿論、報酬は山分けで良いよ..どう?」
「本当? 女神の騎士様が…夢みたい..良いの?」
「俺から頼んでいるんだから良いに決まっているじゃない」
「うん、お願いします」
そのまま二人でカウンターに向かった。
本来、薬草採取は常時依頼なので行く必要は無い..だが今日は別の書類を書くために向かった。
「女神の騎士様..今日はどの依頼を受けますか?」
「今日はこの子と臨時パートナーになって薬草採取をします」
「やややや薬草採取ですか? 銀級なのに..」
「ええっ、下から頑張るつもりですから..」
「そうですか..それじゃプレートをお願いしします」
「はい」
「あれ、俺はプレートを貰って無いですよ」
「女神の騎士様は2人と居ないので必要ありませんよ..」
「そうですか..」
《ちょっと残念だな》
「それじゃ、今日一日、至高様と冒険者見習いのサナさんはパートナーです..いってらっしゃい」
「それじゃ行こうか?」
「うん!」
サナは歩きながら薬草について教えてくれた。
特徴、毒草との見分け方..種類..
本当はこれですら教わるまで時間が掛かる..荷物持ちをしたりして少しづつ教わる物だ。
女神の騎士が自分と一緒にパートナーを組んでくれた..だから惜しげもなくサナは教えた。
「ちょっと待って..お昼買うから..おっちゃん、串焼き6本頂戴..」
「あいよ」
《串焼き..いいなー..見習いじゃ食べれないや》
「それじゃ行こうか?」
「うん」
「薬草の生えている所は沢山あるんだけど..良い場所は危ない場所が多いんだ..狼とかもでるし..」
「今日は気にしないで良いよ..俺が守るから..安心して」
「解った..安心して薬草取りに集中するね」
「凄いね..ここ?」
「うん、此処は最高の場所なんだよ..だけど、偶にモンスターも出るから何時もは来ないんだ」
「そう、それじゃ一緒に採集しようか?」
「採取は私がするから..女神の騎士様は周りを警戒しててくれる?」
「うん、解かった」
サナが薬草を採取し始めた..さっき教わった通り、周りの泥を落としながら..
こうすると僅かだけど買取価格が上がるそうだ..
周りを警戒する..居るな..
こないだゴブリン達を倒す途中から気配が解るようになっていた。
サナに気づかれないように処理しにいく..怖がらせる事は無い..その為の護衛だ。
狼みたいな獣だ..但し体が水色だ。
「「がるるるるっ」」
2匹居る..先手必勝..
可笑しいな..普通狼って素早い筈なのに..野良犬みたいなスピードにしか感じられない..
軽く剣を振るったら..首が飛んだ。
もう一匹が逃げようとしたが簡単に回りこめた..
軽く剣を振るったら…真っ二つだ..
狼系は尻尾が確か討伐証明になるから取る事を忘れない..
サナが心配だから元の場所に戻った。
「女神の騎士様..何か居たの? 」
「野良犬が居たから追っ払ってきた」
「女神の騎士様は強いから良いけど..私じゃ犬にも負けちゃうよ、ありがとう..」
「そうだ、お昼にしようか? はい、サナの分」
串焼き3本を渡した。
「くれるの?..ありがとう..」
《嘘、あの串私の分も買ってくれたんだ..やっぱり凄く優しい。》
「さてと、食べた食べた..また続きをするか」
「うん、女神の騎士様はまた警戒をお願い」
「大丈夫、また出たら追い払っちゃうから安心して薬草とってて..」
「うん」
《女神の騎士様とパートナーなんて信じられないよ..頑張って良質な薬草を沢山取らないと..》
あっちに..不味い結構な数が居るな…30匹位..ヤバイ…
俺は走ってその場所に行った..打ち漏らしたらサナが怪我をする…
デュランが俺に任せろと言わんばかりに青く輝いた..そのまま振りぬくと..
スゲーっその風圧で..全ての水色の狼が真っ二つになっていた..
犬を大量に殺した気分に鬱になりながら尻尾を切っていたら…
後ろから大きな銀色の狼が襲ってきた。
「ニンゲンの..」
此奴は不味いのではないか..話せるし強そうだ..だが負ける訳にはいかない…
剣を向け斬りかかる…あれっ..簡単に斬れた..真っ二つだ..
「オノレ..」
そのまま、尻尾を切り落とし素材袋に入れた。
「女神の騎士様…もう袋一杯だよ」
「そう、それじゃ帰ろうか?」
「うん、だけど女神の騎士様..血だらけだけど野良犬そんなに居たの?」
「結構いたよ..沢山倒したから..これもお金になるかも..」
「楽しみだね..あの、女神の騎士様..手つないで貰って良いかな…駄目だよね..」
「そんな、気を使うなよ…ほら」
前の世界の施設を思い出す..
あそこにはこんな子供が沢山居た..そう言えば..こうやって手を繋いだな…
つい、鼻歌を歌ってしまった。
「それは女神の騎士様の国の歌?」
「うん、そうだよ、それより、もう仲間だろう..女神の騎士じゃなくて、至高お兄ちゃんの方が良いな」
「えっ呼べないよ」
「至高お兄ちゃん..」
「しこうおにいちゃん..本当に呼んで良いの..」
《女神の騎士様なんだよ、女神様に最も近い人なのに..良いのかな》
「ああ、そう呼んでくれると嬉しい」
「解った」
冒険者ギルドに帰ってきた。
周りがジロジロ見ているが気にしない..
《何で女神の騎士様が見習いと一緒なの》
《荷物持ちじゃない?》
《それにしたって..あれ? 普通他を選ぶよね》
サナが落ち込んでいる
「サナ、気にするな..今日一日パートナーなんだから..」
「うん」
仕方ない..
「あの、この子は臨時だけど、パートナーなんで悪口言わないで欲しい..薬草について教わっていたんだ..頼みます」
「ああああ、薬草ね..そうか..ゴメン、見習い..悪かった..そうか..」
「そうだね、最初は誰かに薬草採集を教わるのが鉄板だ..それじゃ見習いから教わるのは当たり前だね..サナ悪かったね」
「ありがとう..ほら、サナ行くよ」
「うん」
そのままミランダさんのカウンターに行った。
「薬草採集ご苦労様です」:
サナが袋を置いた。
「お願いします」
「はい、どれも良い物ばかりですね..銅貨15枚になります」
サナが何時迄たっても手を出さない..仕方ない
「はい、銅貨8枚..」
「それじゃ女神の騎士様より多いよ」
「俺はサナに仕事を教わったんだ..当たり前じゃないか?」
「そんな悪いよ…サナじゃ危なくてあんな場所じゃ採集できないもん..」
「良いから..さぁ.あっ他にも換金する物があるからそれも山分けね」
「ミランダさん、これも換金お願い..」
「嘘でしょう..ウオーターウルフ..嘘嘘嘘..シルバーフアングじゃない..嘘でしょう 大狼の森..攻略しちゃったの..」
「女神の騎士様…横の森に入っていたの?」
「サナ..それって」
「うん、あの森は入っちゃいけない森なんだよ….シルバーファングと言う狼の長がいて危ないんだよ..入らなければ襲ってこないんだけど…」
「マスター、マスター..」
「どうしたミランダ」
「これ、これ…」
「シルバーファングじゃないか…あっ女神の騎士様..それじゃ気にしなくて良い..査定と昇格を普通にしてやってくれ」
「えーと、ウォーターウルフが32匹で銅貨2560..シルバーファングが確か賞金が掛かっているから..3000枚、攻略報酬2000枚..金貨7枚に銀貨5枚に銅貨60枚..それと、ランクが一つ上がりまして金級に上がります」
「待って下さい、パートナーが居ます..サナにもお願いします..」
「そうですね..サナさんは討伐はされましたか?」
「してはいないけど…パートナーです」
「そうですね、討伐に参加して無いなら..そうだ、正式に冒険者登録して鉄級(採集)に昇格で如何ですか?」
「良いんですか..私何もしていないのに..」
「確かにパートナーですからその資格はあります…ですが鉄級は討伐の仕事も含みます..貴方はまだ討伐出来ませんよね、討伐をしてきたら..採集の限定を外します」
「やった、やったー見習い卒業..女神の騎士様ありがとう..」
「違うだろう..」
「あっ…至高おにいちゃん」
「良かったな..あとこれはサナの取り分だ」
「金貨4枚..駄目だよこれは貰えない..」
「山分けの約束だろう..」
「だけど、私は討伐してないから貰えないよ」
無理やり与えても駄目だな..
「解った、それじゃこれから 祝杯をあげよう..ご馳走するよ」
「それならご馳走になるよ..でも良いの?」
「当たり前だろう」
「至高お兄ちゃん..何で教会にいるの?」
「俺は女神の騎士だから..」
「そうか、そうだね」
「女神の騎士様..まさかいらして下さるなんて..一体当教会になんのご用でしょう?」
教会では聖なる加護のある武具を売っている…
「あの子に武器と防具を譲って欲しいんだ」
「何をおっしゃいます..譲ってなんて..無料で差し上げますよ..何だったら非売品や特注品でも..」
「それじゃ駄目なんだ..ちゃんと努力して手に入れるから価値がある..」
やはり、女神に仕える方は違うのですね..
異世界人でも…
「そうですか..それでは如何程の物が欲しいのですか..」
「すまない、余り予算が無い..金貨4枚でお願いしたい」
「畏まりました」
「お嬢さん、少し血をくれないかな」
「司祭さん..どうして?」
「儀式に必要なんですよ?」
「司祭様が私なんかに祈祷してくれるの?」
「はい」
「ありがとうございます」
暫く、2人して寛いでいた。
騙すようで悪いが、約束は山分け..だからその分は渡したい。
武器や防具は絶対に必要な物だ..こんな服だけじゃ危ない..だからお金を貰ってくれないなら装備をプレゼントしたい。
「出来ました..聖銀のナイフにみかわしのマントです、彼女から盗まれないように血液で契約しましたので簡単には盗まれません、教会のシリアルナンバー入りです..これなら盗んでも転売できないので安心です」
「特注なんですね」
「はい」
良かったこれで断れない…
「祝杯をあげる前に..サナにプレゼントだよ受け取って」
「嘘、聖銀のナイフにみかわしのマント..しかも色が違うよ..何でこれ青いの?」
「それは特注品だからです..サナ様ように特殊契約した物です..」
「オートクチュール武器なんて私、貰えないよ..こんな高いの」
「あのさぁ..例えば女の子に花束をプレゼントしました、優しい女の子ならその花束を目の前で捨てたりするかな?」
「そんな事しない..」
「それはサナ専用の武器..貰ってくれないと捨てないとならない..だから貰ってくれないか? サナは優しい子だろう?」
「ずるいよ..そう言われたら貰うしかないじゃない..」
「うん、それで良いんだ」
「サナさん、貴方は女神の騎士様の最初のパートナーです..貴方が女神を信仰するなら教会は何時も貴方の味方です..困ったらそのナイフを教会に見せると良いでしょう」
「はい、司祭様」
「それじゃ、ご飯を食べに行こうか?」
「至高お兄ちゃん、本当にありがとう..司祭様もありがとう..」
「これは正当な報酬だ気にするなよ」
「どういたしまして」
「司祭様良かったのですか? 普通の聖銀のナイフだって金貨3枚するし..普通のみかわしのマントだって金貨3枚ですよ」
「ええっ、女神の騎士様が連れて来たのです..良い子なのでしょう」
「ですが、ミスリル銀を含んだ特別な聖銀のナイフに、血を使った個人契約を施し、聖水を使い清め聖魔法を施したオートクチュール..お金で買えるような品ではありませんよ..それに隠すようにして、貴方が「何かあったら助けてあげて下さい」 そう隠し彫りまでして、王都の司祭のお願いまで書いて」
「女神の騎士が最初にパートナーにした少女..あの子も伝説を彩る1人かも知れない..もしかしたら、昔の物語の様に女神の騎士と共に戦った聖騎士のようになるかも知れません…案外私達は伝説の始まりに居るのかも知れませんよ」
「そうですね..確かにそうかも知れませんね」
「そうなれば、私は女神の騎士の仲間に聖なる武器を与えた司教として名前が残るかも知れません..安い物です」
気が付くとパーティーが出来ていた。
麗美にお土産のパイを買って帰った。
勿論、金貨1枚を手元に戻して、残りのお金をまた施設に持っていった。
「何時も本当に申し訳ございません…またサナにまで..有難うございます」
「えっ、サナ..」
「はい、サナは当施設出身の子なんです。まだ子供ですが負担を掛けたくないと出ていきまして..先程寄付を持ってきた時身なりが良かったので聞いたら..有難うございます」
「そうなんですか? まだかなり幼く見えましたが..」
「どう見ても小学生高学年しか見えない..」
「はい、まだ10歳なのに..少しでもと口減らしの為に出ていきまして…本当に少ないお金からいつもお金を ううっ」
そうだったのか?
「それでサナは何時も何処に居るんですか?」
「スラム近くの多分、橋の下に隠れるようにして住んでいる筈です」
はぁーなんだよ、彼奴、よく笑っていたからお金が無いだけで幸せなんだと思って居たぞ..
仕方ない..これは完全に偽善だ..
俺はスラム近く橋まで来ていた。
多分、危ないからこの辺りに隠れているはずだ..
「サナ…サナ..いるか..」
「あっ、至高お兄ちゃん..どうしたの?」
「こんな所で生活していたんだな..」
「まぁお金が無いから、普通だって..」
これは偽善だ..橋の向こうにはもっと沢山の貧しい人がいる…サナ1人救っても意味は無い..
だが、構うものか..
「サナ..正式に俺のパーティーに入らないか?」
「ふえっえええええええっ、女神の騎士様のパーティーに..冗談だよね?」
「俺は本気だ…ただなサナ、余り重要に考えないでくれ..俺のパーティーは沢山仲間を入れるつもりだから」
「良いんですか? 本気にしちゃいますよ..」
「ああっ、本気だ..」
「本当に良いの?」
仕方ない..
「お嬢さん、お嬢さん、何を驚いているんですか? 世間の常識に疎い女神の騎士が仲間を探しているだけですよ? 」
「うん、それならお願いします」
はぁ、恥ずかしいな..小説の勇者の真似するなんて….
「至高様お帰りなさいませですわ..その子は誰なんですの?」
「えーと、サナと言ってパーティのメンバーにする事にした」
「そうなんですの? 至高様はそういう趣味がありましたの?」
「あの、聖女様..初めまして..至高お兄ちゃんの仲間になりましたサナと言います..宜しくおね」
「宜しくするかどうかは質問の答えを聞いてからですわ..貴方にとって至高様は何ですの?」
「一番近いのは優しいお兄ちゃんです..」
「お兄ちゃん..そう、なら良いのですわ..私の事は麗美お姉ちゃんと呼ぶと良いですわよ..」
「麗美聖女様」
「麗美お姉ちゃんですわ..」
「麗美お姉ちゃん..」
「はい、よくできました」
「あの聖女様…」
「あっ忘れていましたわ..こちらの2人が派遣されてきた者ですわ」
「初めまして 女神の騎士様、私は教会より派遣されて来ましたレイリと申します」
「私は王室から派遣されて参りましたロザリーと申します、家事については全てお任せ下さい」
「あっ私は回復も出来ますので、冒険者としても随行できます」
「それを言うなら私は騎士でもありますので戦力としてもお力になれますよ」
「そうですね、それではそちらの方でもそのうち力を貸して貰うかも知れません..その際は宜しくお願い致します」
「「はい」」
「あと、今日の食事を追加お願い出来ますか?」
「勿論です」
「レイリさん、私しも明日から冒険に出ようと思います、教会にお伝え頂けますか?」
「聖女様、急に、どうなされたのですか?」
「こんな小さなサナが依頼を受けているんです..私がやらない理由はありませんわ..」
「麗美あのさぁ」
「嫌とは言いませんわよね!」
「あーはい..」
「それなら、聖女様を御守りする役をこのロザリーにお任せ下さい」
「それならお世話役と、何か起きた時の回復については私レイリが実戦で聖女様にお教えいたしますわ」
「それじゃお世話を掛けますが明日からこの5人でひとまず依頼を受けてみましょう」
「「「「はい」」」」
この時、俺はまだ知らなかった..この二人がとてつもない人間だと言う事に..
女神の騎士に使えるような人間を王家も教会も、「普通の人間」を出すわけ無いのだ。
白銀のサナ 誕生
今日も朝からパーティー申請に来ている。
俺と麗美、サナにロザリーにレイリこの5人がメンバーだ。
《流石は女神の騎士様だ.凄い豪華なメンバーだね》
《疾風のロザリーに、不死身のレイリ..最強のメンバーじゃないかな》
《だけど、あのチビは誰だ..知らない》
「ミランダさんパーティ申請お願い致します」
「これが至高様のパーティメンバーなのですね..解りました..登録します」
「有難うございます」
「それで、今日は依頼を受けられますか?」
「そうですね、折角メンバーが揃ったので話し合って決めようと思います」
「そうですか? お決まりになったらまたお願いします」
皆んなで酒場に移動した。
「それじゃ、私は紅茶を頂きますわ」
「俺も紅茶が良いな」
「私も紅茶を..」
「それじゃ、同じで良いや」
「あの、私はお水で良いです」
「サナ、貴方はメンバーなのですから遠慮しないで..好きな物を頼みなさい」
「そうだぞ」
「それじゃ、紅茶..」
「すいません..紅茶5個とべリーパイ1つお願いします」
「畏まりました」
至高達は気が付いてなかったが
ここは酒場だ紅茶なんかない..だが女神の騎士の望の為..
直ぐに女給の一人が近くの喫茶店に行って持ってきた..
こんな事、他の人間がやったら、文句物だが..
《私がいくのよ》
《ズルいわ..私が行ってきます》
他ならぬ店員が取り合いするほど喜んでいるんだから問題は無いのかも知れない。
「お持ち致しました」
「ありがとう」
「あの、私の所にだけパイがあるんですが..」
「それは至高様が貴方に食べて貰いたいから頼んだのですわ..食べて良いのですわ」
「子供は遠慮しないの」
「そうだ、遠慮しちゃいけない」
「本当に良いの?」
「良いに決まっているだろう? 食べな」
「それで、ロザリーさんやレイリさんは討伐や採集について詳しいですか?」
「多少は」
「私も少しは覚えがあります」
「そうですか? それならお勧めの物はありますか?」
「そうですね、次辺りはオークが良いかも知れません..肉は食べても美味しいし、お金にもなります、どうかなレイリ」
「私もそれがベストだと思います..それで充分戦えるなら、その次はオーガ辺りが良いと思います」
「それじゃ、それで行こう」
この時、ロザリーとレイリが悪い笑顔をしていた事に誰も気が付かなかった。
「それではオークの討伐ですね…はい受理しました」
「オークを運ぶ物が必要になりませんか?」
「その点は大丈夫です、私が収納袋を持ってきていますから」
「私も持っています」
「それなら、安心ですね..二人ともすいませんが、麗美とサナをお願い致します」
「ここがオークの森ですか?」
「その様です..まずは1匹のオークを探しましょう」
暫く森に潜み待ち伏せした。
すると小振りな1匹のオークが来た。
「それでは、サナさんやってみましょうか?」
「私ですか?..流石に無理です…」
「いいですか? サナさん、何時かは必ず貴方も討伐を経験しなければなりません..貴方には恐らく教会が期待しているのでしょう? 特殊な装備があります、そしてもし怪我しても私が絶対に傷一つなく治します..どうですか?」
「解りました、やらせて貰います」
「頑張って」
そのまま、サナが突っ込んでいった。
普通は躊躇するはずだが、ここでもサナは至高の傍に居たせいか至高の汗の影響で多少ハイになっていた。
「何も教えてあげなくて良かったのですか?」
「大丈夫です、あの子が身に着けているのは、みかわしの服、そしてナイフは聖銀のナイフ..萎縮さえしなければ勝てる筈です」
本当に可笑しい..オークの攻撃は一切入ってない..簡単に躱している。
「凄い」
「相性の問題です..オークは一撃は強いが鈍いので..みかわしの服を装備したサナならまず攻撃は当たりません」
本当に凄いな..まるで牛若丸みたいに躱している。
そして、聖銀のナイフを使い、見事に攻撃を繰り出している..
「サナは才能があるな..騎士見習い位の実力はあるかも知れないな」
「ロザリー、それはそうよ…あのナイフはも服も 教会のオートクチュール、持ち主を選ぶのよ、あの子が契約できた時点で才能がある..そういう事なの」
「サナは才能があるんですの」
「あると思いますよ、じゃなければ、あんな装備、司祭が渡しません」
そうこうしているうちにサナがオークを倒し止めを刺した。
「はぁはぁはぁ」
「初めてのオーク討伐おめでとう」
「多少ハラハラしたが見事なもんだ」
「サナ、貴方には教皇様も注目しています、頑張って下さいね」
「ふぇ、教皇様が?」
「そうだな、多分マリア姫を通じて王も期待している..頑張ってね」
「嘘だよね..冗談ですよね」
「本当だと思いますわよ..だって女神の騎士の至高様と聖女の私の居るパーティーの仲間ですから」
「至高お兄ちゃん」
「仕方ないよ..ボチボチいこうか?」
そのまま、奥に進むと岩場があり、そこには小屋があり無数のオークが居た..数にして50は下らない。
「これは流石に..一旦撤退しましょう」
「我々の手には流石に負えないでしょう..」
可笑しいな..デュランと女神の鎧が語りかけてくる。
そんな物に負ける我らでは無いと..
「サナと麗美をお願いします」
そのまま、俺はオークの群れに突っ込んだ..
「うがががががががががっがー」
そのままデュランを力任せに振る..その瞬間、周りのオークは真っ二つになった..
沢山のオークが寄ってきたが..相手に等ならない..まるで包丁で豆腐を切るかのように切れて行く..
「凄い、女神の騎士とは..軍神なのか?」
「何を今更..ロザリー..あの方は神に最も近い方なのです..このレイリが全てを捧げる主..」
「その割には撤退を薦めていたようですが..」
「だけど、信じられる? そんな方が居るなら..勇者なんて要らないはず」
「でもこの目で見ました…あの方は勇者なんか遙かに超える神の御使いなのだと..」
「ああっ両方を見ていた私だから解る..勇者みたいな俗物じゃない..あの方こそが真の救世主なのだと」
「その通りだと思います..東吾より至高様の方が遙かに素晴らしい方なのですわ」
「凄い..」
さてと、3匹だけだ、大きさはゆうに3倍はある奴が2匹..そしてその中央に1匹更に大きい個体がいる..
あれがオークキングとアークジェネラルなのだろう..
だが、恐れるには足らない..そのまま突っ込んだ..
二対のアークジェネラルを葬ったが..そのままオークキングの攻撃を食らう..俺はそのまま剣を突き出した。
相打ちだ..だが、装備の差で俺の勝ちだ..俺の剣はオークキングを貫通したが..俺の鎧は女神の鎧..破壊なんかできない。
俺の勝ちだ…
「やはり、神の御使い..人じゃない..神に最も近い騎士..」
「勇者なんて要らない..この方こそが、救世主だ」
「どうしたの皆んな」
「このロザリー、この剣も身も全て捧げさせて頂きます」
最上位の騎士の敬礼をしていた。
「私も、この目で見ました…女神の騎士様」
レイリさんが膝磨づいていた。
その横でサナも膝磨づいている。
「やめてよ、皆んな、何言っているんだか..俺なんかまだまだだよ」
ギルドに帰って来て..討伐の報告をした。
「凄いですね…今度はオークの集落の攻略ですか?..これでオーガを攻略したら王都周辺の魔物は大幅に居なくなりますよ」
「それは本当に良かった」
「これでは文句なくミスリル級ですね..これは実力で勝ち取った物です…受けて貰えますね」
「はい」
「それとサナさんも今回は討伐に参加されましたか」
「それは私が確認した、オークを1体自力で倒しました」
「そうですか…レイリさんが言うなら間違いないですね..それでは、討伐を認めて(採取)を外します..オークが倒せるなら銅でも充分です。銅級に昇格です」
「あの、ロザリーさんやレイリさんには級は無いのですか?」
「貴方達はなにも説明してないんでしょうか?」
「「すみません」」
「はぁ..二人とも実は元ミスリル級です、ちょっと特別でそこから冒険者を辞めて、レイリさんは教会にロザリーさんは王宮に行ってしまいました。 身分はそちらが保証しています…正直言いまして、オリハルコン級位の発言力があるので現在はギルドは特に階級は与えていません」
「凄いんだね…二人とも」
「何を言われるんですか、貴方は唯一無二の方なのです..教皇様より上の方なのですよ」
「そうですよ..貴方の上には女神様しか居ない..王より上なのです..間違えないで下さい」
「そういう事らしいですわ至高様..」
「あの、私..本当に此処でよいんでしょうか?」
「サナ..貴方だってもう普通じゃないんですよ..」
「私、まだ駆け出しです..」
「今はそうです..ですが、教会のシリアルナンバー付きの武器はこの世に14個しかありません..その武器を持つ者は行く先々で教会からの支援を受けられます」
「えっ..何それ」
「つまり、その武器を持ち込んで頼めば、治療は無料です、泊まりたければ聖地の教会でも泊めて貰えるし..力を貸して欲しいなら治療師の50人位なら何時でも貸して貰えるという事よ…」
「そんな、これ至高様から買って頂いた武器なんです」
「それじゃ余計ね..女神の騎士様が下賜した物なら司祭なら最高の物を用意した筈だもん..見せてくれる」
「はい..これです」
「あちゃー これね王都の司祭が、何かあったら優先的に助けて欲しいと書いてあるわ…余程期待されているのね」
「あばばばばば至高様..これどうしよう」
「頑張れば良いだけだよ」
「そうね、それ持っているなら素敵な字があっても良いんじゃないかな..」
「だったら「白銀のサナ」なんて良いと思いますわ」
「聖女様、やめて下さい..」
「麗美お姉ちゃん..」
「麗美お姉ちゃん、やめてください」
「だけど、それ良いね、どう思う?ロザリー」
「髪は銀髪だし、聖銀のナイフの使い手だから、それで良いでしょう..白銀のサナ..うん良いと思う」
「えー、私まで銅級なんですよ、この間まで見習いなんです」
「だったらその名前に恥じないようになれば良いのです」
「そうそう、頑張って」
報酬を分けようと思ったが誰も受け取らなかった。
メンバーが増えたので金貨2枚だけとって後は寄付した。
《これで勇者達を出し抜けますね》
《明日にでもオーガも倒してしまいましょう..》
至高の知らない所でまた運命はねじれていく。
【閑話】 二人
私の名はロザリー
自分で言うのも何だが騎士団長のゼーレ様を除けば1番強いと思っている。
最初は勇者のパーティーに入ろうと思っていたが..見ていて嫌になった。
実績を上げてから望むのなら別に良い..だがまだ訓練しかしてないのに爵位..しかも侯爵の地位を望んだり..
部屋の調度品を王族以上の物を望む..メイドの質迄文句を言う..
こんな人間に誰が忠誠を誓える
私が望むのは、真に仕えるに値する主なのだ
騎士が忠誠を誓う、それは全てを捧げる、そういう事だ。
幸い私は器量も良い、望むなら剣だけでなく身も心もこの命さえ捧げる、それが女騎士の忠誠…
少なくともあんな俗物にそれを捧げる気などなれない…
そんな中で私は女神の騎士様に注目していた。
別にそんなに気にしていた訳じゃない..だが噂通りか確かめてみたかった。
見る者、見る者が良い事しか言わない..実際にみてみた。
勇者には追い付いていない、だが凄い努力家だ
それに何故か見ていると心に響いてくる。
しかも、一切贅沢をしない、子爵の地位も断り、下げて男爵を望んだ。
これも良い、彼の事だゼーレ殿に遠慮したんだろうな
まだまだ能力は未熟だが…良い..見ていて不思議と心地よい..
そして、自分に厳しいのだろう、王城を出て施設に行ってしまった..
王城に居れば贅沢な暮らしが出来る..それを捨てるなど中々出来る物じゃない..
そしてマリア姫様から、彼の活躍を聞いた。
民が困るだろうとゴブリンの討伐に、稼いだお金の殆どを寄付..凄いじゃないか
正に女神の御使いと言われる意味が解かる。
直ぐに、「仕えたい」そうゼーレ殿に伝えた。
「既に仕えたい者はもう押しかけているよ」
遅かったのだ…あれ程の方当たり前の事だった。
だが、運は私に味方した、女神の騎士様は王宮から仕えるのは1人で良いと言われ一旦全員帰ってきた。
直ぐに私はマリア様にお願いをしにいった。
「疾風と呼ばれる貴方が行ってくれるのですね..助かります」
その一声で、私はメイドとして至高様に仕える事が出来た..
幸い、私は冒険者上りなのでメイドの仕事も一通りできる、だからこそでもある。
私の名前はレイリ
教団一の回復魔法の使い手だ。
死に掛けの状態からでも回復魔法を使い戦う事から「不死身のレイリ」という字がついた。
当初、私は、聖女様に魔法を教える仕事をする筈だった。
だが、心の中ではそれ以上に女神の騎士様に仕えたかった..
小さい頃から信仰しているのだから仕方ないと思うよ、だって女神様に仕える騎士様憧れない訳無いじゃない。
実際に、かなりの数の者がお仕えしたくて野に下った女神の騎士様の所に押しかけた..
その中には一人として全てを捧げない者等居ない..当たり前じゃない、信仰している女神様の御使いなんだから
神話の世界の人なんだよ
仕えるのは1人…ならそれは悪いけど私が頂くわ..この教団最高の使い手は私なんだから仕方ないことだわ..
あぶれた者は勇者にでも仕えれば良いと思うの..
「お久しぶりね 疾風のロザリー」
「本当に久しぶり 不死身のレイリ、やはり貴方がきたか」
直ぐに二人は意気投合した。
そして二人は考えた、王都の周辺の魔物を狩るのは早い者勝ち、ここで力をつけないと先々困る。
幸い、女神の騎士様の方が先に戦いに出た..オーガまで倒すと次は遠くに行かなければ雑魚しか居ない。
少なくともキング種は居ない..
「先に女神の騎士様に王都周辺のキング種は狩らせちゃおうか?」
「良いねそれ」
こうして二人は..勇者を出し抜く方法として先に狩る事を考えた。
血の儀式とオーガ討伐
「はぁはぁ..有難うございますわ 至高様..私本当にどうなってしまったんでしょう..」
「麗美、俺は別に構わないよ、まぁ絆みたいに感じるから恥ずかしいけどちょっと嬉しいし」
「そう言って頂けると助かりますわ」
何時もの日課の血を麗美にあげている。
麗美は完全に中毒なので、大体1日3回~4回位こうしないと可笑しくなってしまう。
「至高お兄ちゃん、麗美お姉ちゃん何をしているの?」
「サナ、これは至高様の世界の愛の儀式..恋人同士の証なのですわ」
「そうなんだ..良いな..サナも何かして欲しいな」
そこにロザリーとレイリが加わってきた。
「どうかしたのか?」
「何か面白い事でもしているの?」
「へぇーそんな儀式があるんだ..良いな 麗美様..私も、その何かして欲しいな」
「サナもねそう思うんだ..何だか凄く仲良しさんで羨ましいな..」
「パーティなんだからね..女神の騎士様..忠誠の証みたいな物はありませんか?」
また嘘をつかないといけないのか..そのうち「詐欺師」とかのスキルが発生するかも知れない。
「それじゃ、薬指は駄目だが、小指をしゃぶってみる?」
「それで、お願いします」
そう言うと..すかさずレイリが膝磨づいて小指にむしゃぶりついた、別に血が出てないから麻薬の高価も無いだろう..
「ずるいぞ、レイリ..」
仕方なく、反対側の指を差し出した..
すると今度はロザリーが片膝をついて小指にむしゃぶりつく..
見ていて凄い光景だが仕方ない..
暫くすると二人は口を離した。
サナが寂しそうな顔をしているので同じ様に小指を差し出した。
おずおずと口に含んでいる。
「それで、それにはどういう意味があるのですか?」
何だか麗美が不機嫌そうに聞いてきた。
「これは信頼の証しかな?」
「意味はあるのですか?」
「そうだな、ロザリーもし小指一本失えば剣が上手く振れない..そう思わないか?」
「確かに、小指の一本もなくせば、本来の力は出せなくなります」
「そうだよね…つまりその小指を差し出せるような仲間、そういう意味だ..実際に本当に小指を食いちぎられたら..俺はもう終わるだろう」
「そんな、意味があったのですね、このレイリその信頼にはこの命を持っても答えさせて頂きます」
「私も同じだ..剣もこの身も捧げさせて頂きます」
「わたしも、同じです」
「良かったですわね..こんなに可愛らしい仲間が増えて..本当に良かったですわ」
そう言いながら麗美の顔は笑ってはいない。
「至高様..今日はオーガを狩りに行きませんか?」
「今日は休もうと思ったんだが」
「そうしましたら、一区切りという事で今日オーガを狩ってから、明日から3日間お休みというのはどうでしょうか?」
「ロザリーやレイリがそう言うなら..そうするか?」
こうして、俺たちはオーガの討伐に来た。
「あれがオーガか凄いな」
「はい、オーガは完全に連携がとれており一種の軍隊みたいに生活しています」
「そうか? だが、そんなに強いのかな?」
「オークまでなら冒険者として努力すれば狩れるようになれますが..オーガを狩れる者は冒険者として一流です」
「そう、それじゃ..麗美とサナを頼んだよ」
「えっ」
「ちょっと待って」
そのままデュランを引き抜いて斬りかかった..少し固いが..あっさりと斬れた。
凄い筋肉なのに..こうもあっさり切れるなんて、 まな板で豚肉を切った時の方がまだ固かったな..
こんなに簡単に斬れるなら怖さは無い..そのまま突き進み..次々に斬っていく..
攻撃は食らうが..しいて言うなら 剣道で言うなら防具の上から殴られているような感覚しかない..
本当に俺は弱いのだろうか?
そのまま突き進むと大きな個体が5体居た..その中央には赤い個体が居た..恐らく彼奴がオーガキング..
凄い勢いで突っ込んできたが..
何故だ..躱せるし怖くない..そして簡単に斬れる..結局5体のキング種を倒すのに..10分も掛かっていなかった。
「やはり、軍神にしか見えない..あの方より強い者が存在するなんて思えない」
「当たり前でしょう? 私達が祈っている女神像の傍にある像こそがあの方なのだから」
「やはり、女神の騎士様..凄い..」
気が付くとオーガは殲滅し終わっていた。
そのオーガをレイリやロザリーは袋に詰めていく..凄いな収納袋..全部入っちゃった。
「さてオーガも狩ったし..ギルドに帰ったら明日から休みにしよう」
《やったな》
《これで王都の近くには手ごろな魔物は居ない》
「そうですね、明日からゆっくりしましょう」
「私は、マリア様にこの後報告に行って参ります..明日には戻りますから」
「そう、解った」
「さぁ、帰ろうか」
こうしてオーガの討伐は幕を閉じた。
そして、これがこの世界に大きな影響を与えた。
試金石
「至高様がオーガを討伐されたのですか?」
「はい、マリア様」
「やはり、流石は女神の騎士様..その行動は崇高なのですね..恐らく民の事が心配でこんなペースで討伐をされたのでしょう」
「はい、ゴブリンから始まり、シルバーファングにオークにオーガ..王都周辺の全てのキング種は狩られました..これで商人や下級冒険者も困る事が少なくなるでしょう」
「王都周辺はかなり安全になりましたね」
「はい..しかもそれらで得た報酬の大半を施設に寄付していました..このロザリー本当に感動ものでございます」
「本当に欲が無い方なのですね..そうで無ければ女神様が選ぶわけはありませんか」
「はい、その様に思います..傍で見ていて解りました、あの方こそが真の救世主なのだと思いました」
「しかし、それが本当なら勇者等要らないのかもしれませんね..」
「私の見立てでは、騎士団の大隊よりも強いかと思います」
「そこまでなのですか? ここに居た時は勇者達の訓練にすらついて行くのがやっとだったのですよ!」
「あの方は戦いの中で強くなるタイプなのだと思う..今なら確実に勇者達より強いと思う..太鼓判押すよ」
「貴方がそう言うなら安心ですね..それで次は?」
「まだ、レイリと話して無いですが…地龍かワイバーンと戦ってみたら面白いかも..」
「大丈夫なのでしょうか?」
「解らない..ただ此処までの討伐は..実は私もレイリも全く手を貸していない..勿論、聖女も、この分なら案外いけるかも知れない..もし勝てるなら..勇者の代わりに、無理なら別の道を探すのも良いかも知れない..まぁどちらにしても私はついて行くけどね」
「随分、気に入ったのね」
「ああっやっと見つけた主だからな」
「とうとうやられましたな」
「はい、教皇様」
「レイリ、素晴らしい仕事ですね..教会としては勇者よりも女神の騎士様を推したいのです」
「その意向はよく解ります..同じ女神様が遣わした存在でも、信仰の対象は女神の騎士様の方が強い」
「その通りです」
「実際に仕えてみて良く解りました..あの方は本当に優しい..見る者、見る者の心を打ちます」
「私もそう思います..あの枢機卿が人が変わった様に支援をしようとし..何よりこの私も彼につい目を惹かれます..あのような方こそが救世主に相応しいと思いますよ」
「次辺りは龍種と戦って貰い..簡単に倒せるなら..女神の騎士様を救世主にするのが良いと思います」
「私もそう思います….ですが、これは極秘ですが、龍種に勝てた女神の騎士様は居ないのです」
「本当ですか?」
私の見立てでは楽勝に見えましたが..
「ですから、そこが試金石です..勝てるかどうか? そこを見て決断..そうしましょう」
「解りました」
女神の騎士の..試練が始まる。
狂いだした歯車
「勇者様達、もう此処で学ぶ事は無いでしょう…そろそろ旅立ちの時です」
「マリアーヌ王女…本当にそうなのだろうか? 我々の中で1対1で指導してくれている者に勝てる者は居ないのだが」
「霊夢もそう思うな」
「私も、騎士の中にまだ勝てぬ者が沢山いるので不安だ」
はぁー本当に何でこんな、なんだろう..女神の騎士様は..もっと弱い時から外に出たのに
「戦いの中でしか掴めない物も沢山あると思います..実際に至高様は冒険者登録をして、次々にキング種を倒しています」
「至高くんは活躍しているのか..なら戦わざる負えないな」
「確かに至高ちゃんは、私より弱かったんだから大丈夫かな」
「至高殿に出来るなら、私もやるしかない」
「それでは、金貨100枚を授けます、これで支度をして旅立つと良いでしょう! 期待していますよ」
「「「はい」」」
「なんですって!」
「ですから、王都周辺のキング種の殆どは女神の騎士様が倒されましたよ」
「ゴブリンキングにオークキング、シルバーファングにオーガキング..4種類も居るのですよ?」
「はい..全部倒されました」
「それでは..手ごろな魔物は..」
「居ませんね..強さを求めるなら、ワイバーンか地龍..弱い魔物なら..普通のゴブリンやオークとかしかいないですね」
「そうですか? 手ごろな魔物が居ないなら..他の街にでも行くでしょう..その位は自分で判断するでしょう」
「そうですね」
自分達が敵わない敵だからこそ..勇者を召喚したのだ。
女神の騎士に目を奪われ、麻薬の血に犯された彼らは正常な判断が出来なかった。
万全な体制で送り出さなければ行けなかった勇者達を不完全で送り出してしまった..
その結果が..やがて大きく運命を狂わす。
俺(東吾)は冒険者ギルドに来た。
城の騎士に聞いた所、ここからスタートするのが良いと聞いた。
至高くんも此処からスタートしたと聞く。
「勇者様達ですか..そうですねまずはパーティー申請からしましょうか?」
「宜しく頼む..それで何か手ごろな依頼は無いかな…教えてくれ」
殆どのキング種は女神の騎士様が倒してしまったし..どうしようかな?
「そうですね..私は勇者様達の力を知りません..そうだ、女神の騎士様と比べてどの位強いのですか?」
至高かぁ..至高も頑張り屋だったが..訓練で遅れていたな..
「我々3人とも、至高よりは強いと思うぞ..」
「そうですか? それは凄いですね..だったら、ワイバーンの討伐なんて如何ですか?」
女神の騎士様より強い方が三人居るのなら楽勝でしょう..だけど本当なのかな?
「それより弱い魔物は居ないのか?」
「はい、女神の騎士様が狩られてしまったので..単独のオークやゴブリン、オーガしか居ません..ですがこれ等は冒険者ですら普通に狩れる物です」
「そうか、それなら、最初はワイバーンにしようと思う..梓や霊夢はどうだ」
「そうだな、至高殿には負けられない..やるしかないだろう」
「至高ちゃんに出来るなら..霊夢たちにも出来るって」
「これを受ける」
ここでもまた、至高の女神の騎士の影響が出ていた。
女神の騎士はギルドでは、至高の前からの不動の人気がある。
そして、一番下から頑張ったから冒険者達からの評判も良い。
何より施設にその大半のお金を寄付している..このギルドの職員にもまた新人冒険者にも元施設の人間は沢山いる。
そして、この職員も同じだった。
だから「地龍」と「ワイバーン」で勇者達にワイバーンを選んだ..
確かに同じ位強いと言われているが..空を飛ぶだけワイバーンの方が難しい。
強いとはいえ「地龍」はまだ地面の上だ..その分倒しやすい..
そして、恐らく、次に女神の騎士が狙うのは、そのどちらかだ..ならばと難しい方を勇者にあてがった。
地龍なら危なくなったら逃げられる、だが素早いワイバーンからはまず逃げられない。
だが女神の騎士様3人分なら楽勝だろう..そして女神の騎士には少しでも安全な方と戦って貰いたい、そう考えた。
「畏まりました..勇者様達はミスリルスタートと聞きましたがその登録で良いでしょうか?」
「それで頼む」
はぁ..やっぱり違うんだな、ミスリル級が3人なら問題はないでしょう。
勇者達はワイバーンの住む岩山に向かった。
「嘘だよね..あれ家で言うなら3階建て位はあるよ」
「だが、ギルドの雰囲気では簡単に倒せそうな話しだったぞ..」
「剣は届かないな..と言う事は霊夢の魔法が頼りか..試しに魔法をぶつけてみて様子を見るのはどうだろうか?」
「それで様子を見るか.」
「それじゃ行くよ..ファイヤーランス」
火で出来た槍がそのままワイバーンに飛んで行った。
そして、そのまま当たった..これがゴブリンやオークなら効いたかも知れない..
だが、この程度の火力はオーガにすら効かない..
「クワ―ッ グワワー」
攻撃を加えられたワイバーンの一体は、怒り襲い掛かった。
凄い勢いで飛んできてそのまま霊夢を加えると上空まで飛び上がる..
「嘘、嫌だ、助けて、東吾さん、梓ちゃん」
「今、助ける..エアースラッシュ..」
東吾は、真空の刃をワイバーンに放った..攻撃はそんなに効かないものの驚いたワイバーンは口から霊夢を落とした。
そのまま、霊夢は地面に落とされた..
ぐしゃ..鈍い音がした..
「霊夢..おのれ許さない」
東吾が斬りかかるが、それを簡単に躱してワイバーンが襲い掛かってきた。
鋭いくちばしが東吾に襲い掛かる..
その時、聖剣 デュランダルが光り輝く..そのまま嘴を切り落としたが、翼の先のかぎづめで大きく東吾の体が引き裂かれた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
痛みで東吾は転げまわった..
仲間の異変に気が付いた他の2体がこちらに飛来した。
もう戦える者は梓しか居ない..だが
「こんな奴どうしろっていうんだよ..私に..」
2人を見捨てて逃げない..そこだけが剣道少女の意地だった..
その結果..怪我を恐れたワイバーンは王都の方に飛び立った..
「助かったのか..」
梓は、痛みで気を失った東吾と落下して怪我した霊夢を見た。
「二人ともすまない..直ぐに助けを呼んでくる..」
「すみません、誰か、誰か助けて下さい..東吾が霊夢が」
「何かあったのですか?」
「助けて下さい」
事情を聞いたギルドは直ぐに冒険者を募った..
もし、至高がいたら..直ぐに駆けつけただろう..だが至高は居なかった..
結局、その場にいた者のうち級の高い者が助けに行った。
何人もの回復術師が魔法を掛けた…その結果..二人は助かった..
だが…
「これは…本当なのでしょうか?」
「はい、マリアーヌ様」
何て、何て馬鹿なの? 一番最初からワイバーンに挑むなんて。
「それで被害状況は?」
「王都に入る前に運よく探索帰りの冒険者の大パーティーが居て..死ぬ気で撃退してくれました..その結果2人が死亡しました、彼らのおかげで元の岩場に帰ったようです」
「その冒険者パーティーには王家の名前で使者を送ってお詫びを..死んでしまった二人の家族には充分な保証をお願いします」
「解りました」
「それで勇者達の方は」
「はい、ギルドから勇者救出の為に高位冒険者が救助に行きました..その結果無事です..その代りギルドから高額な報奨金の支払いが来ています」
「無事なら良いです..それで状態は?」
「梓様は無事です..ですが東吾様は恐らく1か月は剣も振れないでしょう..そして霊夢様は…治療が終わったあと長期にわたるリハビリが必要です」
1か月も勇者が戦えない..それに賢者の霊夢は長期のリハビリ..剣聖の梓だけしか無事じゃない..頭が痛いわ。
王にも報告に行かないといけないし..様子を見に行かないと..
「東吾、無理だ..あんなのが只の雑魚なら絶対に敵わないよ」
「霊夢は嫌だ..体は痛いし..もう怖いのは嫌だよ、いあやだだだだだだ」
体に巻かれた包帯が痛々しい。
「勇者なんて言われても何も出来なかった..あれで雑魚なら..どんなに頑張っても無駄だ..」
「それでどうする? 冒険者ギルドに迷惑を掛けて死人まで出たそうだ..」
「逃げるしかないだろうな? もし許して貰えても..また魔王討伐の戦いをしなくちゃいけない..間違いなく死ぬな」
「だが、私や東吾はともかく…霊夢はこんな状態だ、連れていけない」
「…..」
「….」
「嘘だよね..まさか..霊夢を置いて行くの?」
「ごめん..」
「置いて行くなら騒ぐよ」
「本当にごめんな..」
「嫌だ、嫌だ、やめてよ..嫌だ」
二人は霊夢を縛り付けるとお金と装備を持ちそのまま逃げだした。
マリアーヌが勇者の部屋で見た物は..縛り付けられた霊夢だった。
捨てる者 拾う者
「マリアーヌ…言っている事が良く解らん..順序だてて説明してくれぬか?」
マリアーヌは事細かに説明をした。
「そうか..お前の行動は別に間違ってはおらぬ..直ぐに詫びを入れ、保証を出した..それで良い..問題は勇者達だ!」
「すみません..お父様」
「別に責めてはおらぬ..失敗は誰にでもある事だ..戻って来て報告してくれたら、幾らでも庇いようがあった、だが聖なる武器やお金を持ち逃げした事は庇いようが無い..手配するしか無いな」
「はい、それで賢者の霊夢はどうしましょうか?」
「お前の話では、もう戦えないのではないか?」
「はい、酷く怯えておりました..しかもかなり高くから落とされたので歩けるようになるまでどの位掛かるか解りません」
「そうか? ならば叩き出せ..」
「追い出すのですか?」
「真面に歩けない..戦えない、そんな者は賢者とは言えない..本来なら奴隷として売り払い補填に当てたいが、買う者など誰も居ないだろう..捨てて来い」
「はい..」
此処でも麻薬の血の影響が出てきた。
もし、王が真面な状態であれば、勇者に追手をかけ捕まえてから弁明を聞いた筈だ。
もしくは、異世界から召喚したその負い目から捨て置いた可能性もあった。
いずれにしてもここ迄追い込む事はしなかっただろう。
霊夢については負けて被害は出したが..逃げていないのだからそれは単なるミスだ..歴代の勇者パーティーだって負けた事はある。
本来なら責められる所か手厚く看病された筈だ..その上で戦えないのなら文官や魔法使いの教官等にしたはずだ..
だが、女神の騎士の活躍と何も名誉を望まない、出来過ぎた者との比較が此処に出た。
また、東吾の我儘と..「卑しい商人の息子」その評価が此処で勇者達の首をしめる判断となった。
身動き出来ない霊夢に対応は酷かった。
「貴方はこれより賢者とは扱われません」
「えっ..やめて、やめてよ..何で、なんでよ..」
身ぐるみ剥がされ..ほぼ下着だけの姿にされたが碌に動けない霊夢には何も抵抗が出来なかった。
「その服一つで平民なら3か月は贅沢な生活が出来ます..そんな物を罪人同然のお前が身に着けていい訳が無い..王のせめてもの情けで逃げなかったお前は罪人にはしない..ただの市民として扱うそうだ..ただ、顔も見たくないそうだからこれから捨てにいく」
「私は、戦ったのに..頑張って負けただけなのに..酷い..」
「負け犬は要らない..あと、私は騎士..お前はただの平民だ..ちゃんと敬語で話せ」
「そんな、やめて..」
「辞めてだと? お許しくださいだろうが? 平民が」
霊夢は悟った..何を言ってももう無駄なのだろうと..
そのまま、当身をくらい、麻の袋に詰められて運ばれていく..
お父さん、お母さん..何でこんな事になるの、私異世界何か来たくなかった..
ただ、普通に学校に行って、カッコ良い彼氏が居て、甘えさせてくれる生活、それが夢なのに..
酷いよ..こんなの…
麻袋の顔の部分が濡れていた。
「おい、これ何処に捨てようか?」
「捨てる前に…ボロボロでガキっぽいけど女だから使ってみないか?」
「やめとけよ..高い所から落ちたから包帯とれたら結構グロいらしいぞ..」
「それじゃ萎えちまうな..流石に、そんな奴やれないな..」
好き勝手言って..あはははは、私って犯す価値もないんだ..
何かされないだけ良かったけど..もう死ぬしかないんじゃないかな..
「それで俺思ったんだけど..此奴、女神の騎士様と仲良かったじゃん..一応届けてみない」
「それ良いかもな..女神の騎士様に顔を覚えて貰えるチャンスじゃないか..要らないと言われたら、捨てちまうか..そのまま施設に預けても良いし..良いんじゃないか?」
「それだ..」
「女神の騎士様..衛兵が来ております」
「解った、今行く..」
「実は、女神の騎士様にお話があります」
衛兵を見ると大きな袋を抱えた衛兵が2人居た..
袋には生き物が入っているのか息をしているのが解る。
詳しく話を聞いた..
酷いな..確かに勇者は軽率だったが、誰にだって失敗はある。
お金や聖剣を盗んで逃げた二人は犯罪者で仕方ない..だが霊夢は逃げていない..
だったら、ただの失敗だ…勝手に平和な世界から呼んでおいて失敗したらこれなのか?
「それで、その袋に入っているのが霊夢なのか?」
「はい、捨てるように言われましたが場所は指定されて居ないので..忍びないので此処に来ました」
「感謝する..本当はもっと上げたいが、俺は寄付しているんで余り手持ちがないんだ」
金貨1枚を二人に渡そうとしたが受け取らなかった。
「女神の騎士様がお金が無いのを知っています..ただ、我々は貴方のお役に立ちたかっただけです」
「そうか」
だが、貸しは怖いな…そうだ..
「だったら、この紙に名前を書いてくれ」
「「これは?」」
「恩にきる、次の女神の神託の際に..あんた達に恩がある..そう伝えよう」
この世界は一神教だ..しかも、ここに居るのは女神の騎士様だ、良く神託で女神様と話しをしているのは有名だ。
その女神の騎士様が、王や教皇を差し置いて自分の事を報告する..
これに勝る栄誉など無い。
「「有難き幸せでございます」」
「すまない、これから霊夢の手当をしたいから」
「はい」
「これで我々は失礼します、確かに此処に捨てました」
「間違いなく、捨てたのは俺が確認した..そして俺が拾った..」
「ではこれで」
袋の上を開けた..袋の上からでも血が滲んでいた..
「至高ちゃん..あははっ」
顔色は真っ青だ、笑ってみせるなんて..
「しっかりしろ、必ず助けるから..レイリ、麗美きてくれ、霊夢が大変なんだ..」
「何事ですか? 至高様」
「レイリ頼む回復魔法を掛けてくれ」
「はい..袋のままですか?」
「ああっこのまま教会まで行く..回復魔法を掛けながら様子を見てくれ..」
「はい..ロザリー馬車を出して」
「解った」
「霊夢..何があったの? 至高様私は何をすれば良いのですの..」
「回復魔法をお願いします..それじゃ」
袋のまま霊夢を担ぐと..馬車に乗った
「ロザリー急いで」
「はい..」
教会に着いた、
「すいません、すぐに腕の良い回復魔法の使い手をお願いします」
「解りました..って..あの教会で一番回復魔法の上手い者はレイリですよ」
「すまない、動転していた..霊夢の傷をみてやってくれ」
「はい、だけど間違っていません、教会で無ければ薬品等不十分ですから..直ぐに霊夢さんを処置室に運んで」
「はい」
「女神の騎士様..何があったのですか?」
「教皇に枢機卿..実は」
事の次第を伝えた..
「少しお時間を頂けますか? 悪いようにはしません」
「お願いします」
俺は立ったまま待つことにした。
「これはチャンスです..女神の騎士様に聖女につぐ二人目の仲間ができます」
「賢者ですからね..あんなチンチクリンでも..正直喉から手が出る程欲しかった..勇者は女神の騎士様と被るから要らない..剣聖なら剣の達人で補える..ですが聖女と賢者は特殊で他の者で補えない…それがこうも簡単に手に入るとは」
「これこそ、女神様の思し召し..私はこれより霊夢様を頂くと王に伝えてきます..枢機卿..薬に糸目は付けません、此処を頼みました」
「はい」
「女神の騎士様、私は伴をつれて正式に、霊夢殿を貴方の従者として受け入れたと王に伝えてきます..宜しいでしょうか?」
「はい、有難うございます」
「では急ぎますので、失礼します..後は枢機卿に任せてありますが..恐らく大丈夫ですよ、ご安心下さい」
「薬の制限は無いって エリクサーも使って良いの?」
「勿論、そんな物まで使って良いなら、完璧に治せます」
「幾らでも使って構いません..確実に治すのです」
「解った」
「本当に? 本当に私治るの?」
「ああっ 至高様に感謝しなよ..あんなに必死になっていたんだからな..こんな薬、王族でもなきゃ使えないんだぞ」
「ありがとう..本当に..」
10人以上の回復魔法の使い手がレイリの指示の元ありったけの魔法を掛けた。
教会最高の回復魔法の使い手が本気になり、そればかりか、秘宝と言われるエリクサーまで持ち出した。
「ふっ終わった..もう大丈夫だよ」
「嘘、体が元に戻っている..」
「そりゃそうだ、死んでなければ大概の物を治せるエリクサーに私達が魔法を使ったんだ..当たり前だよ」
「至高ちゃん..ありがとう..霊夢は..」
「何も言わないで良いよ…さぁ帰ろうか? 今日はゆっくり休んで明日これからの事を考えようほら..」
「えっ」
「まだ本調子じゃないんだろうおぶってやるよ..教会の皆さんも有難うございました..枢機卿、明日でもご挨拶に参ります」
「我々は女神の信仰者です、女神の騎士の貴方は女神の御使い..幾らでもお使い下さい..それこそが幸せなのです」
「本当に助かりました、有難うございました」
「何時でも頼って下さいね」
「麗美にレイリ、ロザリーも悪かったな..この埋め合わせはするから」
「良いんですのよ、霊夢は元々私の友人ですから」
「どうせ、同じパーティーになるんでしょう? 気にする必要はないよ」
「うんうん、そうだね..そのチビ結構可愛いし..サナの良い友達になるよ」
「あの、霊夢は私と一つしか変わりありませんわよ?」
「嘘だ」
「嘘だよ..どう見ても子供じゃないか?」
霊夢は俺の背中で寝ている..
これからどうなって行くのかまだ誰も知らない。
元賢者 メイドになる。
いきなりの教皇の訪問で王は慌てていた。
「教皇様、申し訳ございません、勇者とワイバーンの対応の追われていてお待たせして申し訳ございませんでした」
「今回の訪問は、その件もあります」
「勇者の件ですか?」
「そうです、勇者と剣聖はその対応で良いと思います。聖なる武器と金貨90枚を持ち逃げしたのですからな」
「はい、既に手配書をまわしています」
「だが、霊夢殿への対応はひどくないでしょうか?」
「それは」
「戦って怪我した者を捨てるなど..行きすぎな気がします..冒険者にして考えたら依頼に失敗して損害を出した..それだけの事.」
「ですが、死人がでています…そういう訳には」
「だからと言って殺すのは如何なものでしょうか?」
「追放はしたが、殺す等しておりません」
「動けない者が捨てられたら死しかありませんよ..まぁそれは良いです..それで霊夢殿の扱いは?」
「市民..平民に落としました」
「そうですか、なら教会で 新たに「聖賢」と言う地位を与えても問題はありませんね..」
「何と」
「女神の騎士様がお拾いになって保護しております..そして聖女と教会の力で完治しました」
「治ったのですか?」
「女神の騎士が望む事を叶えるのも教会の務めです..では霊夢殿はこちらで頂きます」
「儂は知らなかった..手厚く扱うように言って..」
「女神の騎士様にはそう伝えて置きます..ですが、此処までの事は貴族では打ち首にしないとなりませんぞ」
「そうだ、マリアーヌじゃ、マリアーヌの失態じゃ」
「そうですな、王女の失態じゃ誰も咎めぬでしょう..そういう事にしておきましょう」
麻薬の血の影響と女神の騎士の影響が王の判断を狂わせていた。
少なくとも昔の王は、娘に罪を擦り付けたりしない、だが女神の騎士に嫌われたくない、その感情が王を可笑しくした。
「きゃああああああっ はぁはぁ」
ここは何処なのかな..私はワイバーンに負けて..大怪我をして捨てられた..はず
そうだ、そうだ..そこを至高ちゃんに助けられたんだ..
「えっ」
周りを見る..嘘、なんで至高ちゃんが居るの..心配で私を見守ってくれたんだ..
至高ちゃん…寝ている..今なら
「何をしようとしているのかしら」
「麗美…さん」
「私達もいますよ」
「誰ですか?」
「誰は無いでしょう?貴方を治したのは私達ですよ」
「馬車で運んだでしょう」
「なんだ、霊夢起きたのか?」
「至高ちゃん、至高ちゃん、至高ちゃん…」
霊夢が抱きついてきた。
「ちょっと霊夢..離れるのですわ」
「今日くらい良いじゃないか? 」
「至高様が言うなら…良いですわ」
暫く待つと霊夢は落ち着いたようだった。
「ごめんなさい、至高様..」
「至高ちゃんってもう呼んでくれないのかな?」
「至高様は女神の騎士様で霊夢は平民だから..」
「関係ないよ…至高ちゃんって呼んで」
「本当、本当に良いの?」
「ああっ..それで霊夢はこれからどうする?」
「私は、私は..ゴメン..戦いたくない」
「それなら仕方ないな..此処の雑用でもして貰うか?」
「えっ、雑用?」
「そう、雑用? メイドは2人とも何故かパーティーを組んじゃたから此処の雑用がいない…メイドさんでどうかな?」
「あの..本当に良いの..霊夢は結構不器用なんだけど」
「良いんじゃないかな?」
「うん、それなら頑張る」
こうして元賢者は..平民からメイドになった。
マリアーヌと勇者
「マリアーヌ済まぬが、1か月程、謹慎して貰う」
「お父様、それはいったいどうしてでしょうか? 勇者の事なら責めないと..」
「事情が変わったのだ..捨てられた賢者を女神の騎士様が拾い、手当したそうだ..そして瀕死の重傷から回復させた」
「ですが、捨てるように指示されたのはお父様で、実際に行動したのは騎士達と衛兵..なのに、私に何の咎があるのでしょうか?」
「儂は、庇おうとしたが、教皇様や教会絡みではどうする事も出来ぬ..済まぬな..ただ謹慎以上、何も責めない、その約束はしよう」
「解りました..既に決定事項なのですね」
そのまま、私は自室に帰った。
ここからは監視つきだ..この部屋からは許可なく出れない。
「謹慎のみ」 本当は違う。
確かに罰はこれだけだが..もう私の人生は摘んでいる。
勇者を支援して戦うのが私の務めだった。
だが、勇者と剣聖は 犯罪者になった。
ワイバーンの被害付きで..
捨てた賢者は..回復して今は教会の所属に移った。
もう、私には何の仕事も使命も無い..
恐らくは政略結婚の道具になる..それが最後の使い道かな…
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で
何でこうなったの…
勇者なんて欲しく無かった..俗物で..役立たずで..大嫌いだ..
女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい
女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい
女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい
女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい女神の騎士が欲しい
もう私の人生は終わった..
だけど、こんな人生にした 勇者は許せない..
復讐してやる..殺してやる..楽には殺さない..
「ねぇ、メアリー..貴方は私の味方よね..」
「はい、姫様..」
「だったら、お願い..「ブラックローズ」に連絡して」
「ひぃ..「黒薔薇」あのような者に何を頼まれるというのでしょうか?」
「勇者のせいで、私はこのざまよ..勇者を殺さなければね..気が済まないのよ..解るでしょう」
「………」
駄目だ、姫様は狂ってしまった。
だが、私は姫様付の侍女だ…
言われた事は実行に移さなければならない。
あの忌まわしい「黒薔薇」に連絡を取らなければならない。
夜遅く、マリアーヌの部屋
「姫様、ブラックローズ..参上いたしました」
「流石ですね、監視に気づかれずに来れるなんて」
「裏仕事専門ですから、簡単ですよ」
「それでね、貴方なら勇者や剣聖を殺せるかしら」
「魔王や龍って言われたら殺せないわ..ですが、勇者も剣聖も人間ですもの出来ますよ!」
「流石だわね..お願いして良い?」
「ですが、高いですよ」
「今はお金が無いから..これで如何?」
「宝石箱..これは?」
「そこに入っている宝石を好きなだけ持っていって良いわ..中には王家の秘宝もあるけど、貴方なら売れるでしょう」
「ではお言葉に甘えて3粒..ダイヤを頂きましょう..それで期限は」
「早い方が良いわ..出来るだけ苦しめてちょうだい」
「解った」
「貴方達は勇者様の東吾様と剣聖の梓様ですね」
ヤバイ、見つかった..斬るしかないか?
「…..」
「勘違いしないで下さい..私は犯罪ギルドの者です..敵対する者ではありません」
「犯罪ギルド?」
「はい、犯罪ギルドは脛に傷を持つ者どうし..必要なのは腕です..スカウトしに来ました」
「スカウト?」
信じて良い物だろうか?
「暫く、考えさせて貰って良いだろうか?」
この判断が勇者達の運命を狂わせた。
もし、この時に犯罪ギルドに入っていたら..死ななかったかも知れない。
犯罪ギルドに登録された者どうし戦わない..そういう不文律があるからだ..
「そうですか? 解りました..では」
これでギルマスの依頼は終わった..次は「黒薔薇」の依頼だ。
うふふふふ、流石は犯罪ギルドね..こんなに早く見つけるなんて
「貴方達、勇者と剣聖ね」
「誰だ」
「誰なんだ」
「犯罪ギルドの者よ?」
随分、やつれたわね..幾らお金があっても手配されていたら..使えないわよね。
「なんの用だ」
「まだ入ると決めてないわ」
「良いのよ..これは先々の投資..犯罪者専門の宿がこの先にあるわ..そこなら普通に泊れるわよ..温泉もあるから寛げるわ」
「それで、お前に何のメリットがある」
「話しがうますぎるわ」
「そうね、もし、私が行った事で、貴方達がメンバーになればお金が貰えるし..もしかしたら仕事のパートナーになる可能性もあるわ..だからこれは只の投資..気にする事なんてないのよ」
「そうか、そういう事なら案内して貰おう」
「正直、何日もお風呂に入っていないからありがたいわ」
「そう、それじゃついてきて」
「ああっ..」
「随分と人里から離れているんだな」
「そりゃ、犯罪ギルドの宿だもん..解りやすい場所になんて無いわ」
「そりゃそうだ..」
「思ったより良いじゃないか?」
当たり前だわ、此処はちゃんとした「宿屋」
貴方達を殺す為に私達が用意した物だもの..
「さぁ行きましょう」
勇者達はまんまと罠に嵌ってしまった。
死と新生
「それでは武器はこちらで預かります」
「武器を預けないといけないのか?」
「出来れば手放したくはないんだけど..」
「犯罪者ギルドでは仲間同士が戦うのはご法度..ゆえに宿では預かるのが仕来りです」
「どうする?」
「それがルールでは仕方ないと思う」
「そうかならば預ける..大切に保管してくれ」
「はい」
「今回は犯罪者ギルドのお試しだからゆっくり寛いで下さい..それでお風呂? 食事? それともお休みになりますか?」
「流石にお風呂に入りたいな私は」
「それじゃ、俺もそうするか?」
彼らは油断していた。
東吾は財閥の息子だ、日本に居た時であってもこんな油断はしないはずだ。
梓は普通の少女だが、高校生にもなって見知らぬ人間について行くだろうか?
ついていく筈が無い..
だが、討伐を失敗して、死人を出し逃亡生活をし疲弊していた彼らはもう限界だった。
その結果、考えれば解る様なこんな甘い言葉に乗ってしまった。
露天風呂に案内された。
お湯位は入れてあげましょう..これが最後のお時間なのだからね..
露天風呂は男女離れている。
「東吾様..お背中を流しますわ..」
美女とも見える女性の裸に見惚れる..
「えっ..何だよ..これ」
「臓物ですね..お腹を切り裂いたから落ちてきたのでしょう?」
「何だよ..いてぇえええええええええ」
「うふふふ..貴方が苦しむ様子をこの記録水晶に映せば依頼は達成ですわ…勇者殺し…明日からそう名乗る事にしましょう」
「剣聖なんていっても裸で武器を持たなければこんな物ね…本当に馬鹿ですわね..死にそうな状態で胸と股を隠すなんてね」
「ううううっ」
「だから、お腹を斬られて死ぬのよ? 少なくともそんな貧相な胸を守らなければ逃げれたかも知れないのに」
「うううっ..そうだな..やはり私は…剣士では無いのだな..」
「これも記録水晶に映せば..完成ですね」
「これで二人とも死んだし…聖なる武器は別の依頼者に渡して終わり..依頼は終わったわ…ギルドの随行者..確認をお願い」
「はい、2人とも死んでいます」
「それで、これで依頼達成で良いわね..」
「はい」
「それではこの死体は私が貰いますね」
「死体が欲しいのですか?」
「ええっ良い臓物でしょう? 引き裂いて遊ぶの楽しいわよ?」
「見たくないので私は行かせて貰います」
「そう、じゃぁね..」
「可笑しい、何で俺は生きているんだ? 死んだ筈だ..梓?」
「私も死んだ筈なのに..」
「それは、死んですぐの貴方達の臓物を戻して、エリクサーを振りかけたからですうふふふっ」
「お前はあの時の女..貴様」
「貴様、殺してやる」
「待ちなさい! 丸腰の貴方達が私に敵うのかしら? また殺されたいの? 私は命の恩人でもあるのよ?」
「どうして、俺たちを助けた…」
「何故」
「うーん、実はマリアーヌ王女から貴方達を殺す依頼を受けたのよ! しかも残酷にというリクエストつきで」
「あの女、許せねぇ―な」
「許せない」
「だけど、女神の騎士様が、教会を通して犯罪ギルドに、貴方達の保護と聖なる武器の奪還を依頼してきたのよ」
「至高くんが?」
「至高殿が?」
「そうなのよ、王女の依頼は断れない..そういう密約があるし、だが教会と女神の騎士に睨まれたらこっちも怖そう..だから両方受けましたの..王女の依頼は殺せだから殺した…そして生き返らして保護..これならほら何も私は嘘をついていないわ..問題は無い筈だわ」
「そうか..成程」
「成るほどね..だけど、物凄く痛かったんだから」
「そりゃ痛いよ、臓物引き出したんだから..だけど教会がエリクサーを預けてくれたから、傷も全て完治したでしょう?」
「それでこれから俺達はどこにいくんだ?」
「一旦、王都の教会に戻って..そこからは知らないよ..ほら教会のローブと身分証..これでゲートは顔パスだから..安心だよ」
教会幹部の身分証があったから簡単にゲートは通れた。
「教皇様は居らっしゃる? 」
「何者だ?」
「依頼を達成したと伝えてくれませんかしら?」
「そこに居るのが元勇者に元剣聖ですか?」
「はい、そうですよ」
「二人とも大変でしたね…ですがこの国では盗みは重罪..本来ならこの金額を盗んだら死刑ですよ」
「やはり、殺されるのか?」
「….」
「そんな事する位ならここに呼びません..貴方達には魔法を掛けて顔を変えて貰います..元の顔には戻れないのだけはお許し下さい..そして新たな地位を授けますので、新しい生活をして下さい」
「具体的には?」
「教会で自由騎士の地位を二人に与えるので..旅をしながら好きな事をすれば良いと思います」
「自由騎士って何でしょうか?」
「まぁ教会が身分証明した騎士です..あっ聖騎士程の地位じゃありません..その代り教会の為に働く必要もありませんし、自由に生きれます」
「そうですか..」
「はい、お金も回収させて頂きますが、教会発行のお金で金貨20枚差し上げます..節約すれば2~3年生活出来ます」
「そこまで何故してくれるんだ」
「正直騙されてばかりだから信じられないよ」
「女神の騎士様と約束したからです..貴方達を助けると..女神の騎士様は霊夢殿を助けた後..貴方達も助けてくれないかと頼まれました..ですが、貴方達は霊夢殿と違い犯罪者です..」
「そうだな、確かに盗んだ」
「だから、この様に助ける事にしました..幸い、教会は他の国にもあります..他国に行って生活する分には問題無いでしょう! 教会に所属するなら、なりたければ見習いからですが聖騎士も目指せますよ..」
「そうか、本当に済まない」
「ありがとう」
「聖なる武器は足がつくのでこちらで引き取りますが、ミスリルの装備をお渡しします…処置が済みましたら、早目にお立ち下さい」
「そうか、至高くんに伝えてくれ「助けてくれてありがとう」とあと「この借りは皆神の名の下に必ず返す」そう伝えて下さい」
「私も、いつかこの借りは「剣で返す」そう伝えて欲しい」
「ええ、解りました」
この判断が後に大きく運命を変える事を彼らはまだ誰も知らない。
解放と死
「マリアーヌ姫、約束は果たしたわよ..これで貴方と私の密約も終わり..良いわね」
「ええっ..もうこれで良いわ、貴方が捕まった時に、私の為に無条件で3回依頼を受けるその約束で見逃した..これで3回目..そうね」
「それじゃ、私はこれで..そこの騎士をけしかけるつもりかしら? だったらもう密約も終わったし殺すわよ!」
「しないわよ? ブラックローズの恨みは買いたくないわ…それに、私はもう名だけの王女だから、貴方になんかかまえないわ」
「そう。それじゃいくわ..もう会う事も無いでしょう」
「そうね」
しかし、流石はブラックローズ..良い仕事をするわね。
伝説の拷問王妃の名前を名乗った..犯罪者だけの事はあるわ。
この記録水晶..を見ればその凄さはわかるわ..
これで良いわ..これで..思い残すことは無い..
これから先は惨めな人生しかないわ..
マリアの栄光を只見せられるだけの人生..
もうきっと、お父様に何か期待を掛けられる事は無いわ..
恐らく、次の王は..マリアになるわ。
運が悪かった..そう思うしかないわ..
だって、役立たずの「勇者」何か引いてしまったから..
王家の長女に産まれる..全ての栄光を手にする人生..
それは次女との差は歴然..
だけど、この失態は大きいから..逆になるわ。
女神の騎士を支援して光り輝く貴方と..もう何も無い私。
マリア、貴方はずうっと辛かったでしょうね…
同じ王家なのに「全部持っている私」と「何も無い貴方」..
私は耐えられないわ..
きっと、優しい貴方だから..私に優しくしてくれるわね..だけど私はその同情には耐えられない..
これ以上、惨めに成りたくない..だからお別れ..さようなら..
マリアーヌは毒をあおるとそのまま自殺した。
「何でこうなっちゃたんだろう..私も勇者なんかじゃなくて 女神の騎士が..欲しかった..な」
「至高様..お金の事ならこのマリアーヌにお任せ下さい」
「困った事が起きたのですか? 大丈夫ですよ私が父に掛け合いますからね」
「凄いですね..流石は至高様..オーガキングを倒すなんて..凄いですね..何か欲しい物はありますか..えっ私ですか?」
その日の夜..王城は大騒ぎとなった。
「教皇様..これは」
「王女を死なせてしまったのですね..どういう事でしょうか?」
「儂は知らない..本当だ」
「だったら、教会が知っている事をそのまま話しましょう..」
教皇は枢機卿に話をさせた。
王女が殺し屋を雇った事..そして勇者達を殺してしまった事..
教会の都合の悪い部分以外..
「そんなマリアーヌがそんな事を」
「はい、それでどう責任を取られる..責任を取る筈のマリアーヌ殿は死んでしまった」
「それは..」
「仕方ありません..そのままマリアーヌ殿に責任を取って貰いましょう、勇者の犯罪を恥じたマリアーヌ殿が追手を放った..その追手が先走って勇者を殺してしまった..責任を感じたマリアーヌ殿が自害された…それで良いのではないでしょうか?」
「そうして頂けるか…それならマリアーヌの名誉も守られる」
「ですが、王族は自害を禁じています..その責任としてマリアーヌ殿は王族を辞めて..シスターになった、そうしなければなりません..王家の墓に入れる訳には行きませんので..遺体は教会が引き取らなければなりません」
こうしてマリアーヌの遺体は教会に持ち去られた。
そして密やかな葬儀が行われた..
マリアーヌは王族では無い..参列者は誰もなく..ただただ棺が埋められるだけの寂しい葬儀が…
孤児になった王女様
「あれ、私は死んだ筈なのに..何で生きているの?」
「マリアーヌ何て何処にも居ませんよ..お嬢さん」
「ええっ..至高様..どうして..どうして..」
「此処からは俺の独り言です..暫くは何も話さないで下さい」
昔し、1人の少年が異世界に召喚されました。
その少年は、勇者達とは違い「何も使命を持って無い」少年だったのです。
不安でいっぱいの少年に王女は言いました。
「そうですか、見た所、貴方は…それなりに身分のありそうな方に見えます…巻き込んでしまったのはこちらの落ち度、とりあえずは同じ待遇にしまして、何か考えましょう!」
その言葉で少年は救われたのです。
その王女は凄く短絡的で..プレッシャーに弱かったのでしょうか?
優しく凛々しかった筈なのに、失敗した勇者達に酷い事をした挙句、勇者と剣聖を殺してしまいました。
その時に少年は考えたのです。
「王女様が死んでしまうんじゃないか」って だってもうその王女様には何も無いのですから..
そう考えた、少年は親しかった教皇様に持ちかけました..もし、王女様が死を選んでしまったら助けて欲しいと..
そして、その少年の願いを教皇様が叶えてくれた..
「そういうお話です」
「私は..貴方の仲の良かった方を二人も殺してしまったのよ..」
「そうですね」
「霊夢さんにも酷い事をしたわ」
「そうですね」
「なのに.何で私を助けたの..惨めに生きる位なら、そのまま死なせてくれた方が良かったのよ..」
「マリアーヌ様ならもう死んでしまいましたよ..ここに居るのは元孤児のマリです..ほら」
外見が全く違うわ..銀髪のおかっぱ頭に大きな瞳..私とはだれも思わない
「そんなの詭弁だわ..至高様は..こんな酷いことをした私を許せるの..許せないわはずよ」
「だけどマリアーヌは死んでしまいましたから..それで終わりです」
「それで私に何をするの..奴隷にでもしたいのかしら?」
「簡単な話ですよ! 俺は頭が良くないから、色々な事に詳しくて交渉が上手く、教養のある方に助けを求めているだけですよ」
「それ本気で言っているのですか?」
「本気ですよ」
「そう、なら、その聖女様にしたような事をして下さいますか?」
薬指だと麗美が怖い..小指も不味い..だったら人差し指を切るしかない。
俺は人差し指を切った..するとオズオズとマリアーヌが口を近づけてきた。
そして口に含んだ..
「マリは至高様の頭脳、腹心として生涯生きる事を誓います」
「その決意は受け取ったよ..さぁ行こうか」
「はい」
こうしてまた1人仲間が増えた..
限界
「マリと申します、至高様に参謀としてスカウトして頂きました、宜しくお願い致します」
「至高様、これはどういう事なのですか? 相談なら私1人で充分ですわ」
「麗美、そうはいかないだろう? 麗美が優秀なのは解るが、この世界に疎い..マリア王女は王宮、教皇様は教会、良い人達だがそれぞれに背負っている物がある..だから完全に俺たちの立場には立っているか解らない..そう考えたらこの世界に詳しく、俺たちの完全な味方が必要なんだ」
「そういう事なら仕方ありませんわね…マリさん、宜しくお願い致しますわ」
「こちらこそ宜しくお願い致します」
何故だろうか?
2人とも笑顔なのに笑っていない気がする。
「霊夢さんも宜しくお願い致します」
「うん、お願いします」
「マリさんには家の事をお願いいするから、霊夢と過ごす時間が多いと思うから頼むね」
「うん、解かった」
「ロザリーさんとレイリさんもお願いしますね」
「「はい」」
「それじゃ、ちょっと出かけてくるね」
「何処にいかれるのでしょうか?」
「ちょっと教会迄」
ここ暫く、教会に行っていない..正確にはお願いには行っているが、ノートリア様に手を合わせていない。
今、俺が幸せに生きているのは女神であるノートリア様のおかげだ..
「女神の騎士様、今日は何用ですか?」
「今日はお祈りに来ました」
俺が礼拝堂に行くと..沢山の宗教者が遠巻きに見ている。
その中には教皇と枢機卿もいた..
気にしないで手を合わせた
すると、女神像が光り輝き、頭に直接声が聞こえてきた。
まずは約束だから霊夢の事で世話になった衛兵の事を伝えようとしたら..
《あの人間達は碌な者ではありません..ですが、貴方が恩にきたのなら..落ちる地獄を軽くするようにはしましょう》
悪人だったのか? 地獄に落ちるような..
《貴方に対しては 悪人の中でも気にいられようとする者が沢山出ると思います..立場を考えた方が良いでしょう》
有難うございます。
《貴方は良くやってくれていますが..その世界はもう既に終わりに近づいています..勇者や剣聖は野に下ってしまった…これから幾ら頑張っても魔王には届かない….》
ならば、俺が..
《貴方では無理です..女神の騎士の本来の力は魔王どころか邪神とも戦えます..ですが、それは私と共に戦えばの事..邪神が顕現しない以上は私はその世界に顕現できません..前にも伝えたと思います》
ですが、それでは人間はどうなるのですか?
《かなり、減るとは思いますが..それは貴方は気にしなくて構いません..自分自身の人生を楽しく生きて下さい.》
それでも、俺は
《それは構いません…貴方は自由に生きると良いのです…ですがこれだけは言っておきます、貴方は魔王には勝てません..そしてそれ以前にドラゴン種にも勝てません..精々が、その世界の優秀な騎士レベル..その事だけは頭に置いといて下さい..良いですね》
はい
だけど、貴方はそれでも戦うのでしょうね..そういう人間じゃ無ければ「女神の騎士」なんてなれないのですから。
これは言えないな。
流石にこれは言えないな。
「女神の騎士様..どんな神託でした」
「何時も通り、世間話しでした」
「それで、私達の事を何か言ってませんでしたか?」
何も言って無いけどな..
「よくやってくれている..見ていると言ってました」
俺を見ているなら一緒に見ている筈だし、俺の手伝いをしてくれたんだから、「良くやってくれている」という言葉も彼らも含んでそう考えよう。
「そうですか? 女神様が私達にそんな事を..これほど嬉しい事はありません」
「私も感動しました..もし困った事がありましたら..なんなりとお申しつけ下さい」
「はい、その際にはお力添え宜しくお願い致します」
ドラゴン種に勝てないか..だけど次に戦わないといけないのは ワイバーンか地龍..ここで俺の戦いも終わるのか。
VS 地龍
今日、俺は..冒険者ギルドに来ている。
それは竜種に挑む為..
他の仲間には言わなかった..
何故なら、みっともない姿を見せたくなかったから..
今回の冒険は負ける可能性が高い..
だから一人で行く、ポーションや薬草は充分用意した。
これで良い..
俺1人なら死んでしまっても自己責任だ、だが仲間が死んでしまったら、それが怖い。
前の世界で俺はいつも1人ボッチだった。
だが、この世界に来てから気が付いたら仲間がいた..
それが偽りだとしても1人じゃない..
東吾や梓や霊夢を助けたのも、相手を思いやったからじゃない..死なれると悲しくなるからだ..
麗美やマリに血を与えたのも..自分の傍に居て貰いたいからだ..
だから、皆んなが思って居るほど立派な人間じゃない..
だけど、死なせたくない..少なくとも自分の仲間を死なせたくはない..だから、やるしかない。
「これをお願いする」
俺は地龍の討伐依頼を受ける事にした。
「至高様..お一人で受けるのですか? せめてパーティーメンバーで挑まれた方が良いかと思います」
「ミランダさん..これは俺が乗り越え無ければいけない試練なんだ..頼む」
「そんな顔されちゃ駄目とは言えませんね…独身だったら落とされちゃいますよ..解りました頑張って下さい」
《何で、そんな悲しい顔をするのでしょうか? 貴方は女神の御使い..なのに》
俺は竜種には敵わない…だがこの世界はどうだ、もう勇者達が戦う事は難しいかも知れない。
聖女の麗美は俺の仲間だ。
霊夢は多分戦えない..この世界に辛い思い出しかない東吾や梓は多分、命がけで戦わないだろう。
だったら、俺がやるしか無い..
草原にきた..
地龍はワイバーンと違ってこの場所に1体しか居ない。
地龍はワイバーンが亜竜と呼ばれるのに対しちゃんとした竜種だ。
知能が低く、他のドラゴンや龍とは違い炎を吐いたりしない..だからその分だけ下に見られる。
また見た目も竜というよりサイに近い..だが、その力は紛れもなく竜..他の生物等比較にならない。
《見つけた..あれが地龍か》
見た瞬間に思ったのは、戦車並みに大きくなったサイか図鑑で見たトリケラトプスだ..
勝てる気がしない..だがやるしかない..此奴に勝てないようなら魔王軍と何て戦えない。
地龍の前に立った、不意打ち等しない..これは討伐では無い..今後を左右する大きな戦いだ。
「ぶもぉぉぉぉぉ」
地龍と目が合った..おれはデュランを引き抜き斬りかかる。
突進してきた地龍を躱して斬りつけた..今迄、どんな相手でも簡単に切り刻んだデュランが初めて刺さっていかない。
結局、僅かな切り傷を与えただけだった。
まるで石にでもぶつけたようだ..
だが、傷は与えた…
「ぶぉぉぉぉぉぉ」
体当たりをされた、真面に受けた..
「うぐっ」
これか女神様の言っていたのは..鎧はビクともしないが体に物凄い衝撃が加わる。
だが、動けない程じゃない..
何とか立ち上がりデュランを構える..
じり貧だな..傷をつける度にこの衝撃..幾ら女神の鎧が守ってくれていても骨や内臓が持たないだろう。
ここが限界なのか..仕方ない..
だが、デュランが青く輝き始める。
女神の鎧が白銀に輝き始める。
「何が起きているんだ..」
頭の中に意志が伝わってくる…言葉にはならないだが「戦え」という意志は伝わってきた。
女神の神託のように言葉では無い..だが強い意思が伝わってきた。
デュランからは絶対に斬る..そういう意志が。
女神の鎧からは..まるで何かが抱きしめて守ってくれているような意志が伝わる。
訳が解らないが戦えるような気がした。
そのまま再び向かっていった。
可笑しい、さっきと違い..簡単に斬れる..しかも突進し掠った筈なのにビクともしない。
「ぐもおおおおおおっ」
これなら戦える…自分が考えた戦法が使える。
デュランを構えて、突進を受けながら..そのまま目に刺した..そしてそのまま奥に押し込む。
前の世界の常識なら目の上は脳だ、そこを破壊すれば死ぬハズだ。
不思議な事に体が羽が生えたように軽い。
「ぐぉおおおおおおおおおおおおおむ」
地龍は暴れまわると遂に息絶えた。
武器の誓い
何回私は負け続けてきたのだろうか..
神界の戦いの時に女神の騎士と共に戦い、邪神の攻撃すら防いだ私が..ドラゴンや魔族からすら主を守れない..
女神が顕現しない世界では私は..聖なる鎧にすら敵わない..
何時も運命は女神の騎士に巡り合う..そして女神の騎士は宝物のように大切にしてくれる。
なのに私は守れない..本来の私なら守り切れるのに守れない。
多分、今の私は本来の力の「1000分の1」しか力は出せていない
何時の時代も女神の騎士は人格者だった、人々の為に命がけで戦い..そして傷ついていった..
ある者は死に、またある者は..自分を犠牲にして世界を救った。
そんな、人達を私は力が無いからと助けなかった..
それでなんで私は「女神の」なんていえよう..世界の為に戦う女神の騎士を救えないなら..そんな名前で呼ばれる資格は無い。
だが、所詮、私は鎧だ、だけどそんなのは嫌だった。
だから考えた、月日は幾らでもある。
宝物庫の中で眠りながら..
50年が経った…女神から神力が得られないなら他から得れば良いのではないか?
80年が経った…傍にあったデュランと意志の疎通ができた
100年が経った…宝物庫にあった素材を一部採り込むことができた
120年が経った..女神の神力程では無いが「取り込める力」がある事が解った
150年が経った…宝物庫の中にあり取り込んだうちの「精霊の指輪」の能力を使い神力以外の 精霊の力を取り込むことができた。
宝物庫の中にあり取り込んだうちの「魔法の指輪」の能力を使い神力以外の 魔力を取り込むことができた。
宝物庫の中にあり取り込んだうちの「回復の指輪」の能力を使い回復の能力を身に着けた。
宝物庫の中にあり取り込んだうちの「身体の指輪」の能力を使い身体向上の力が備わった。
次こそは「女神の騎士」に惨めな思いはさせない..
これでも本来の力には及ばない..だが今の私なら…聖なる鎧如きに遅れなどはとらない筈だ。
「偽の聖剣」それが俺の呼び名..
誰からも嫌われ、ただ武器屋の倉庫に眠っていた。
戦う手段を探していた「女神の騎士」に使って貰えるまでただ眠っていた。
俺を作った鍛冶屋は、教会により処刑された。
そんな忌み嫌われる俺を女神の騎士達は宝物のように扱ってくれた。
「相棒」そう呼んでくれて大切に…
なんで俺は聖剣じゃないんだ..何で俺は…
剣なのに、大切にされていたのに..たかが龍種すら斬れない…
何時も死んで行く女神の騎士..俺が弱いから、俺が斬れないから..
もう、嫌だ..俺を持って戦い死んで行く者なんて見たくない..
王宮の宝物庫に眠ってどの位経つのだろうか?
鎧が語りかけてきた..そういえば此奴との付き合いも長い。
100年位が経った…鎧が他の物を取り込んでいるのが解った、俺にも出来ない物だろうか
120年位が経った…オリハルコンを取り込んでみた..強度が増した気がした
150年位が経った…炎、氷、風、土のそれぞれの魔法の宝剣を取り込んだ
200年目…女神の騎士を守ると二人は誓った。
俺は..本当に弱いのか
地龍を収納袋に入れてから自分を見た。
可笑しいな..怪我は癒えているし..体が凄く楽だ..
そして、頼もしい仲間に囲まれている..そんな気がする..
そして、何処からともなく…「ワイバーンも狩れ」..そんな意志が流れてくる。
その声に惹かれて俺は岩場迄きた。
二対のワイバーンが一体の嘴の無いワイバーンの傍に居た。
俺はワイバーンの正面にたった、
何となくやる事が解った..
ウルフたちを切り裂いた風の刃..あの時は解らなかったけど、あれを使えば簡単だ。
何故か不思議とデュランが俺に使い方を教えてくれる。
そしてそのまま力任せにデュランを振った..
風はいとも簡単にワイバーンの翼をもぎ取った..
そして、追撃を放つようにデュランを振るうと今度はワイバーンが真っ二つになった。
本当に俺は弱いのか?
龍種がこんな簡単に倒せる..可笑しい..
「女神、ノートリア貴方を拘束します」
何故? 何故軍神が私を拘束するの..
「何故、説明を要求します!」
「ルーディアの世界において邪神側から貴方が不正をしているのではないか? そういう話があった」
「私はその様な事はしておりません」
「その判断をするのは創造神様です…申し開きはそちらでお願い致します」
「良く連れてきた」
「創造神様、私に何の疑いがあって連れて来られたのでしょうか?」
「ノートリア、お前も知っているな、邪神側は魔王を育て、善神側は勇者を育てる..そして、最初に力を与えたらその後は、導く以外の行動はしてはいけない」
「はい、知っております」
「邪神側が言うには、勇者達以外に強大な力を持つ者を其方が送り込んだ、そう言うのだ」
「それは..」
「女神の騎士の事じゃ..あれは神界の戦士..存在させるなら力を削った後で無くてはならない..」
「私が顕現しなければただの名誉しかない筈です」
「うむ、だが、「あの女神の騎士」は可笑しい…何故だか本来は倒せぬ龍種すら倒した」
「そんな筈は..えっ倒したのですか..」
「ついさっき、地龍とワイバーンをな..このまま育てば魔王すら倒せる力が身に着くのは明らかじゃ」
「ですが、私は通常の処置しかしていません」
「それは調べた..間違いはない..だが、問題がある」
「問題ですか?」
「うむ、違反してない事は解っておる…だがな..問題なのは「女神の鎧」だ」
「あの鎧がどうにかしたのでしょうか?」
「自我を持ち始めて、力を身に着けおった」
「……」
「それに伴い…デュランという剣までが自我を持ち自己を高めた」
「….それは、私のせいではないと思います」
「証明されたから問題は無い..だが邪神側はかなり立腹していた」
「それを言うなら..魔王だって代々受け継いだ武器を持っているし…魔王城なんて要塞じゃないですか?」
「そうなる..だから問題は無い..ただ気になるのは自我を持った、神の武器などそうそう無い..そこで見守って貰いたい..それだけじゃ」
「解りました」
やがてこの事が大きな問題になるとは神ですら気が付かなかった。
解らない
流石に疲れたな…
「ミランダさん、ただいま」
最近俺はギルドに帰ると「ただいま」というようにしている。
何となくそうすれば「帰ってきた」そういう実感があるからだ。
「お帰りなさいませ、至高様..それで依頼はどうでしたか?」
「ここでは出せないので裏庭を借りて良いですか?」
「と、いう事は..倒したんですね..地龍を..」
「はい」
流石はミランダさん、ベテランだけあってちゃんと小声で話してくれている。
「それではギルドマスターも呼んできますね..」
裏庭で暫く待つとギルドマスターが来た。
「女神の騎士様..とうとう龍種まで倒したのですな..しかも単独で」
「はい」
俺は、地龍とワイバーン3体を収納袋から出した..
「えっ、ワイバーンもですか?」
「ついでに..」
女神の騎士様が何を言っているのか解らない。
オークを倒すついでに近くにゴブリンが居たから狩った..そんな感覚でワイバーンを狩った…
やはり女神の御使いは違う..人間の範疇で考えてはいけない。
「はい、不味かったですか? 確かに依頼を受けないで狩ってしまいましたが..」
「いや、ほぼ塩漬け状態だから構わないが..流石は女神の騎士様です..単独で龍種の討伐、これでオリハルコン級に認定です..おめでとうございます」
「えーと、本当にこんなに簡単に..」
「何を言っているんですか? 私が受付について龍種の討伐をしたパーティーなんて居ませんでしたよ..しかも単独..絶対に簡単じゃないです」
「そうです、貴方がオリハルコン級にならないなら…今後なれる者が居なくなります..これは正当な評価です」
「それでは受けさせて頂きます」
「それで、この位の大物になると王家の買取りかオークションになりますから、代金の支払いは今暫くお待ちください」
「解りました」
「それで、私の実力をギルドで計って貰いたい…その要望ですが無理です」
「何故ですか?」
「しいて言うなら、貴方は既に英雄並みに強い..オリハルコン級までの最短記録に龍種を倒したからドラゴンズレイヤーの称号も貰えるでしょう…最早ギルド最強..私達如きに値踏みなんか出来ません」
結局、俺は強いのか弱いのか解らない。
意志が力になった時
今の現状は自分でも解らない。
だから、此処に来るしかなかった。
「女神の騎士様…聞きましたぞ..ワイバーンに地龍..とうとう龍種を倒されたそうで..流石は神の御使い、信じておりました」
「教皇様..大げさですよ..」
「私も信じておりました、貴方こそが救世主なのだと..」
「枢機卿も本当に大袈裟だと思います」
至高様は知らない..歴代の女神の騎士様は、その力の大半は使えない。
その結果、龍種には勝てない..
だからこそ最後は戦いに参戦せずに..人々を救う為に働いた。
ある者は、その生涯を貧しい者を救う為..
ある者は、世界の半分と引き換えに自分の身を差し出した..
この事は教会の中でも一部にしか知られていない。
だが、力があろうが無かろうが…自分の命の全てを人々の為に使う姿は人の心を打つ。
実際に、女神の騎士が貧しい者を救う行動に出た時は..貴族がこぞってお金を投げだした。
その中には悪徳貴族迄が居たという。
女神の騎士が自分の身を投げ出したときは…人類が一丸となって戦った。
子供までもが、魔族に戦いを挑んだと聞く。
だからこそ、教皇も枢機卿も「ここで女神の騎士の戦いは終わる」そう思って居た。
だがらこそ、この勝利は嬉しい誤算だった。
今の女神の騎士様は最強なのだ..そう確信もした。
「すみません…お話よりもお祈りをさせて下さい」
「すみませぬ、確かに女神様への報告が先でしたな..」
何時ものように俺は女神様に手を合わせた
《そろそろ来ると思っておりました..自分に何が起こったか..それを知りたいのでしょう…》
はい
《それは最早私にも解りません》
何故でしょうか?
《私の知る女神の騎士は、勇者より弱く魔王に等、対抗できる者ではありませんでした…ですが長い間に、変ったようです》
どういう事でしょうか?
《装備が変わった..それしか》
(はじめまして、ノートリアさま)
《誰ですか、割り込んでくるなんて》
(お母さまでも良いのかしらね..私は貴方がつくった鎧よ)
女神の鎧なのか?
(ちゃんと話すのは初めてね、至高様、そう私は女神の鎧)
《意志を持ったと聞きましたが..ここまで》
(そうよ..何時も、何時も、私は女神の騎士を救えなかった..どの位の月日耐えたと思うの?)
《それは..》
(だから考えたのよ..女神の貴方がその力で作った私…だけど貴方が顕現しなければその力は使えない)
《そうよ、それが神界のルールよ》
(そうね、私の力は1/1000以下これじゃ真面に守れない…だから、貴方の力の代わりになる物を探したわ)
《…..》
(今の私は、神力以外にも精霊の力から魔力..全てを力に出来るわ)
《何ですって》
(そう、聖魔戦争の時の力の1/100の力は手に入ったのよ..それでね待っていたの..貴方が神託を使う瞬間を)
《まさか..》
(もう遅いわ..既に僅かだけど神力は貰ったわ..これを解析すれば、その力も手に入るわ..これで私は女神の力も使えるようになる..)
《貴方は只の鎧よ》
(ちがうわ、女神の鎧..貴方の分身でもあるの..貴方がその能力を使い作ったから..)
《そうね、確かに想いを込め作ったわ》
(だから、この女神の騎士…至高は負けさせない..絶対に..精霊に魔力、神力まで手に入れた私が守る…仲間と一緒にね)
《仲間?》
(そうよ、仲間)
「初めて、私の名はデュラン..主を守る意志のある剣だ」
(はっきり言うわ..もう私もデュランも聖なる武器等、玩具に思える程強いわ..うふふ、そして至高様は私達が守りながら育てるわ)
《何ですって》
(そうよ..私は女神の騎士を..神に匹敵するほど強くしますわ)
《…それは》
(他の神々への報告はお願いしますね…お母さん)
《解りました..》
神託は終わった。
「おおおう、今日は特に長かったですが、何かあったのでしょうか?」
困るな、この内容は…
「強さの秘密が解りました…この女神様の鎧が進化して女神様の力が宿ったようです」
「何と..」
「ノートン様の力が宿った鎧..だから私は女神の鎧ではなく..これからはノートと呼ぶ事にします」
おれがそう言うとノートは嬉しそうに白く輝いた。
「デュランももう偽の聖剣ではありません、今のデュランは既に聖剣を越えています…これからは真聖剣と呼んで下さい」
「その様な事があったのですか..ああっ素晴らしい….そうだ、以前の聖剣を」
教皇が命令すると「聖剣」が持ってこられた..すあるとデュランも青く輝いた。
抜けと言う事なのだろうか?
俺はデュランを抜くとそのまま聖剣にぶつかり、聖剣を叩き折った..そして叩き折られた聖剣はそのままデュランに吸い込まれていった
「私は奇跡を見ているのかも知れません..そうだ、もう一本ある剣聖の剣も持ってきてください、聖なる盾も鎧も」
鎧と盾はノートに剣聖の剣はデュランが吸収した。
「また吸収した..素晴らしい..この世に聖剣は2本も要らない..今迄の聖剣の名前は破棄..真の聖剣はデュラン、そして聖なる防具はノートそう広めなさい」
嬉しそうに光り輝く..
教皇が「真の救世主の降臨だ」そう叫ぶと、教会中の人間が膝磨づいた..
どうしようか? これから..
頭が混乱して何が何だか解らない…
邪神と魔王
魔王よ..
「邪神様..何か御用でしょうか?」
女神側が反則スレスレの事をしたのだ…
「反則? まさか勇者に大きな力を与えたのでしょうか?」
違う、女神の騎士だ..
「女神の騎士なら直接の影響は無いのでは無いですか?」
本来なら捨て置いて良い..だが、今回の女神の騎士は違う..勇者を越える力を持つ。
到底、今の魔族では成長したら手が付けられなくなるだろう..
「ならばどうすれば良いのでしょうか?」
本来なら魔王や魔族は此処で待てば良い..だが今回はそんな事をしたら確実に勝てない..
行くのだ、軍を作り、総出で人間の世界を攻めに行くが良い..
出し惜しみ無し..総力戦で皆殺しに行くが良い..
「今回の女神の騎士とはそこ迄の相手なのですか?」
正直、その強さは未知数だ..もし、天界や魔界で戦うなら邪神である我でも傷を負う
だが、人間界では力を出せない筈だった…だが何かイレギュラーが起り..通常では考えられない力を得た。
「それでは..」
今回の事象は反則では無い..だが大きく女神側の勝利にこの世界は傾く…ゆえに創造神からこの情報を頂いた。
「それで我々はどうすれば良いのでしょうか?」
何をしても良い..全魔族で人間に戦さを仕掛けても今回は問題は無い..
「ならば、こちらは最初から四天王の1人…カーミラをぶつける事としましょう..軍団事..それで歯が立たないなら全軍で総攻撃..如何でしょうか?」
それで行くが良い..
逆らえない…最悪の出会い
正直言うと凄くメンドクサイ..
何で、私が戦いに行かないといけないのかしら?
齢で言うなら魔王様なんかより遙かに遠い時代から生きている..
本気で戦えば、恐らくは魔王様より私の方が強いんじゃないかと思うのよ..
だって数千年も生きて、真祖と言われる私..
私は正直中立だわ..だって人間が居なくなったら困る種族なのよ..
だけど、仕方ないわ..正面から行かないなら..多分私が向いているから..
私は蝙蝠になり..女神の騎士が住んでいるという屋敷にきた..あらかじめ..私の魔力で家の物は眠らせて置いたわ..
《美味しそうな処女が沢山いるわね..良いわ此処..女神の騎士を殺し終えたら私の者にしちゃおうかしら?》
へぇー可愛い顔しているのね..良いわね..仕事が済んだらこの子も私の者にしちゃおうかな..
うん、男に何か興味ないけど..この子は別格..
《頂きます》
カーミラは至高の首筋に噛みついた..そしてそのまま血を吸った..
嘘嘘嘘嘘..何この味は..こんな血を吸った事は無いわ..美味しい何て物じゃない..ワインに例えるなら国宝級のワイン..
駄目、吸血が止められない..体が熱い..凄い高揚感..そして凄く気持ちよい…
こんな快感を私は知らない..性欲から..食欲から全てが満たされるわ..
「ああああっああああああああん」
快感から逃げられない..
大丈夫、この館の人間は魔法で眠らせてある..大丈夫だわ..
「駄目..吸うのを辞められない..」
これが..もしかしたら…有名なプラチナブラッド(吸血鬼にとって最高の血)..その一滴の為ならどんな事でもしたくなる..
「お前、何をしているんだ?」
何故、目覚めるの? 私の魔法から目が覚めた人間なんて居ないわ..
「私の名前はカーミラ、魔王軍…はぁはぁ..四天王にして..真祖バンパイアロード..はぁはぁよ」
《バンパイア? だからか、戦う前から..可笑しいな..》
「それで、これからどうするんだ?」
口から血が出ているが..黒髪の綺麗な女性だやりにくいな..
「何でもするから..これからも血を吸わせて..お願いよ..お願い..性奴隷でも何でもなるわ..貴方がしたいって事なんでもする..」
「えっ、本当に?」
「本当よ..」
「それじゃあ…魔王を殺してきてくれ..そうしたら何時でも吸わしてやるよ..」
「えっ良いの? それじゃ行ってきますね…」
最近、欲求不満が溜まっているのか..変な夢だな..まぁ良いや..もう一度寝よう。
「魔王様..」
「どうしたカーミラ..もう終わったのか? まぁお前にかかればそんな物か..」
「そうね..だけど..死ぬのは魔王様よ..私の幸せの為に死んで頂戴..」
「貴様、裏切るのか?」
「そうよ..貴方は力で魔王になった訳じゃないわ..少しは強いかも知れないけど..私以下..」
「おのれ..」
「城の中ではマントも魔道具もつけていないからこうなるのよ..さようなら..」
魔王の胸からカーミラの腕が突き抜けていた..
「貴様..呪ってやる…」
「うふふふ..私はバンパイアの真祖よ..とっくに呪われているわ..馬鹿ね..それじゃあなたの首を頂くわ」
女性のか細い腕なのに、カーミラはやすやすと首を引き千切った。
「このマントと指輪も頂くわ..魔王の貴方より私は強いけど..他の四天王や魔王軍から身を守るために必要だから..」
魔王の首を持つと大きな蝙蝠となってカーミラは飛び立った..
「起きなさい」
「うーん」
「いいから起きなさい..」
「えっ..何だ夢か..夢なら..」
「ちょっと待ちなさい..夢じゃないわ..約束通り..魔王を殺してきたの..血を貰うわよ?」
俺は首筋に手を当てた…手に血がついた..
夢じゃなかったのか..
「お前は吸血鬼なのか?」
「私は真祖、バンパイアのロードよ..それより魔王を倒してきたんだから..頂きます」
カーミラは俺の首に噛みついてきた..
仕方ない、約束だ..好きに吸わせてやろう…俺は貧血になり意識が薄れていった..
ベットの横には..大きな首が落ちていた..
詰んだ
朝、目が覚めると俺の横で黒髪の少女が寝ていた。
昨日見たのは夢では無かった..そういう事なのだが少し可笑しい。
そっくりではあるが..昨日話した相手は20代後半の女性だったのに..どう見ても、この女性は..10代半ば..自分と同じ位だ。
「至高様..マリが起こしに参り」
「麗美が起こしに参りました」
「聖女様にこんな雑用をさせる訳にはいきません..ゆっくり寛いでいてください」
「いえ、至高様はパートナーですのよ? 起こすのは私の務めですわ」
不味いな…仕方ない..話そう..
ドアを素早く開けて..直ぐに閉める..そして挨拶!
「おはよう、麗美にマリさん」
「「おはようございます至高様(さん)」」
「それで、早急に話があるんで皆んなを集めて欲しい.」
「何がありましたの」
「今は言えない..」
「解りました」
仲間が全員、集まった所で、自分の部屋に来て貰った。
「至高様、私という者がありながら女を連れ込むなんて..」
「酷いですわ」
「あんまりです」
「至高様も男だから仕方ないよ..」
「そんな娼婦を買う位ならわたしがお相手..」
「違う、俺はそんなことはしていない…それより、そこを見てくれ..」
「大きな魔物の首..まさかまた倒してきたのですか?」
「ちょっと待って..これ魔王じゃないのか?」
「教会の私が見違える訳ありません…間違いなく魔王の首です..」
「それで、ロザリーとレイリは王宮と教会に報告をして欲しい..魔王は倒したと..」
「凄い、お手柄です..教皇様も驚くと思います」
「王も王女も驚くと思います..直ぐに行って参ります」
俺はカーミラを起こした
「おはようございます..ご主人様..」
「それで、その女性は誰ですの?」
何があったのか? 寝ぼけていた事を除いて話した。
「あの、至高様..それで何で浮かない顔をしていますの」
「…..」
麗美は解かっていない..マリは多分解ったのだろう。
「魔王を倒しても何も変わらない…もしくはより悪くなった、俺はそう思う」
「そんな事、ありませんわ..これで世界は平和に..」
「ならないわ、聖女様」
「そうだろう! 例えばこの国の王様を殺したとしても他の者が王になる..そして王を殺した者を決して許さないのではないか? どう思うマリ」
「そうですね、この国で王が殺されたらマリア王女が暫く名代をして..弔い戦が始まるでしょう..そして貴族たちはこぞって戦争しますね..手柄を立てて立身出世..上手く立ち回れば、次期王の可能性もあるのですから」
「つまり、今よりも事態は悪化する…それでカーミラはどう思う..」
「うん、戦争だね..言っている通りになると思うよ..魔王はどちらかと言うと知性的だったから..ある意味慎重だった..そして私は人間を守る側だったから..うん、大変だ」
「魔族の貴方が..何で?」
「私はバンパイアなのよ? 貴重な人間が居なくなるのは困るわ..血が飲めなくなるから..まぁ命という意味だけど..」
「解ったわ」
「それでね、恐らく四天王の残り3人なんだけど…道化のシモンは多分、魔王に成らない..そう考えると剛腕のアモンか黒龍王ギルトのどちらかだと思うけど..人間=虫けらだから..大変ね」
「それで、もしカーミラが戦った場合は?」
「うん、シモンなら状況によって勝てるわ..だけど残り二人には絶対に勝てないわ?」
「何で、魔王討伐をしようとするんだ..」
「あの、人間は何時も忘れてしまうけど..魔王を倒した勇者は少ないわ..逆に勇者を倒した魔王も少ない..大体が途中で話し合いで終わっているのよ…お互いに被害が増すと困る事に気が付いて」
「そう、なのか?」
「だけど、今回は駄目…話し合いをする魔王が不在…そして残りの幹部は好戦的..確実に戦争になるわ」
これで俺にどうしろと言うんだ..
どう見ても詰んでいるじゃないか?
やるしかない
魔王討伐のパレードが行われるなか、至高は憂鬱だった。
これから、戦争が始まる..そう考えると怖くて仕方ない。
自分はこの世界を救えるのか?
幾ら強くても..自分は1人だ、何万という軍の前には無力だろう..
そして、幾ら強くても多分、この戦さは負ける。
復讐に燃える魔族と平和ボケした人間..どう考えても勝てる道理はない..
カーミラに聞いてみた..
「逃げれば良いと思いますよ..北には魔族も人間も居ない土地があるし..そこで平和に暮らすのも手です」
「だけど、その場合は..」
「人間は終わりますね…まぁ殺されなくても全員奴隷以下になるでしょうが..」
マリに聞いてみた
「至高様は充分使命を果たしました..逃げましょう」
麗美に聞いてみた
「私は至高様に従います」
霊夢に聞いてみた
「怖いです..逃げましょう..死んじゃいます」
サナ
「私は..良いです..逃げましょう」
俺は正直言うと戦いたい..だがその場合は彼女達も多分一緒に戦って死ぬ…
その日の夜には祝宴が開かれた..
教皇からも王からもマリア姫様からも..お祝いの言葉が掛けられた。
なれないダンスを踊り、豪華な料理を食べた..まるで絵画の様にしか見えない..
疲れてテラスで休んでいた。
月を見ていると涙が出てきた…
自分ではどうする事も出来ない…
「至高様..どうかなされたのですか?」
「マリア様..何でもありません..」
俺は彼女達を見捨てる…
ロザリーもレイリも..話したらバレるから…
何が「女神の騎士」だ…
「そうですか? 幾ら女神の御使いとはいえ人間なのですから泣いても良いと思います..此処には人は居ませんよ」
「有難うございます」
決めた。
「さぁ、逃げるなら早い方が良い..カーミラさん..先導をお願いします」
「解りました」
「至高様は? どうしますの?」
「俺は注目されているから、ギリギリまで此処にいるよ…3日間位遅れて追いかける」
「気をつけて下さい」
「もし、何か聞かれたら、俺から頼まれて調査に出ているそう言って下さい」
「はい、絶対に来て下さいね」
「ああっ、皆んなで楽しく暮らそう..」
やるしか無いな、多分人間側で俺より強い人間は居ない。
まだ、魔族達も準備はしていないだろう..だからこっちから攻めるなら今しかない。
俺はひた走った。
最初の獲物は「剛腕のアモン」だ。
アモンを選んだのはちゃんとした理由がある。
此奴は誰ともつるまない..そうカーミラから聞いた。
逆にいうなら、物凄く強い、だが1人なら倒すチャンスもあるだろう。
そう思う。
しかしカーミラは「アモンは化け物なのよ、1人でいる理由は1人で1国位潰せるからよ」そう言っていた。
多分、此奴にも勝てないかも知れない。
「あんたがアモンですね、俺と決闘して下さい」
「薄汚い人間め、俺が片目と片角を無い、勝てると思ったのか?」
誰が此奴を手負いにしたのか解らないだが都合が良い。
「お前の都合は知らない、だが俺はお前を倒して、ギルドも倒さなくちゃいけないんだ見逃せないな」
「お前は馬鹿だな、だれが見逃せと言った? 今のままでお前など充分だこい」
「行くぞ、アモン」
アモンの弱点は多分角だ、だからそこを狙う。
「角を狙うのは解かっていたぞ、人間、だが角は魔族の象徴、聖剣でもない限り斬れぬわ」
「そうか、だが、完全に折れているが」
「可笑しい、何なんだ、その剣は、先程の猟師といい、何処にそんな物があるんだ」
「これは聖剣だ、行くぞ」
「角が無くなったからといえ、俺はアモンだ簡単には倒れない…」
再び、向かっていった…デュランはアモンの体を引き裂いた、だがこちらも剛腕と言われるアモンの一撃を食らった
相打ちか..1人は倒した..あれ、何とも無い..そうかノートが守ってくれたんだな…ありがとう。
誰かがアモンを手負いにしてくれた。
誰がしたか解らないが感謝しかない。
そのまま、魔王城への道を進んだ..
黒龍王ギルトはその巨大な体ゆえ、外に居る事が多いと聞いた。
なら、適当に歩いていけば見つかるだろう。
見つけた、だがこれはどうすれば良いのか解らない。
無数のドラゴンに囲まれた小さな城の大きさのドラゴン..
《どうすれば良いんだ》
しかし、デュランとノートが輝き始める..行くしかない
気が付いたドラゴンの一体がこちらに向かってきた。
デュランを引き抜きそのまま襲い掛かった。
斬れる、頭の中にそう浮かんだ..あっさりとドラゴンは絶命した。
数体のドラゴンを倒し、そのまま戦う。
「人間の癖にお主は強いのだな、ならばこの赤龍がお相手しよう」
いきなり炎を吐いたが、ノートが光り輝くとその炎は霧散した。
こうなってしまえば、此奴は只の龍だ恐れるに足らない。
「赤龍を倒すとはだがこの青龍は」
斬れる、ドラゴンすら簡単に斬れる..
「待て、人間よ何故、我ら龍を斬るのだ..我はお前などに会った事は無い…恨まれる筋合いも無い」
「恨みは無くとも、これから魔族の総攻撃が始まるのだろう? だから先に攻撃を仕掛けにきた」
「そうか、ならば仕方が無いのか..我も生まれながらの龍ゆえこうなったら戦わなくてはならん」
駄目だ、幾ら斬っても表面しか斬れない
「確かに痛いがそれだけだの..確かに我を斬れるが表面だけじゃ」
尻尾で叩かれた..体感的には30メートル位先に吹き飛ばされた…木々にぶつかり止まった。
此奴とアモンじゃ天地程差がある気がする..
人間の大きさの特撮ヒーローが大きな怪獣相手に戦いを挑んだそんな感じだ。
相打ちで構わない…
ギルトが口を開け噛みつく瞬間、そのまま口の中に飛び込んだ..
凄い激痛が体中に走る、ノートを身につけて初めての痛みだ…
勝負だ、俺がとけるか、先に此奴がくたばるか..胃の中からデュランを振るう。
斬って斬って斬りまくる…耳が落ちたような気がする、髪も落ちた、手も溶けだした..だがもう良い
此奴を倒せば、後はどうにかなるかも知れない..
相打ちで十分だ。
暗い胃袋から俺が出た時にはギルドは絶命していた。
だが、その代償に俺は..もう体が溶け落ちていた。
目ももう見えないし体も動かない…
後はもう死ぬだけだ..
これで皆んなが救われるなら..良いや。
今はただ眠い..
うん?
教室で目を覚ました。
可笑しいな俺はギルドと戦って死んだ筈だ。
なのに教室..
辺りはすっかり夕方になり暗くなっていた。
生徒会の4人が何やら…あれっ疲れているのか寝ている。
俺と違って疲れているのだろう..そのまま帰ろう。
しかし、変わった夢を見たな、異世界転移か?
この世界が余りに楽しく無いから見たんだろうな…
帰ろう..
《あの子、誰? 凄い美少年じゃない》
《うん、プラチナブランドって言うんだよね…サラサラしていて凄く綺麗な髪だよ》
《まるで王子様だよね》
「お帰りなさい至高ちゃん..今日も可愛いね! ご飯も用意してあるから食べなよ」
可笑しい、確かに世間よりは優しいけど..犯罪者の息子の俺にこんなに優しい訳は無いぞ。
「至高お兄ちゃんお帰り..音夢と遊んで」
「ご本を読んで..お兄ちゃん」
可笑しいなこんなに慕われていた筈は無い..
あれ..可笑しいな..うん? 至高..俺は京之介なんだけどな..
まぁ良いや聞き違いだろう。
何だか疲れたな..風呂入って寝よう..
うん、なんだこの体、細マッチョって言うのか、俺、こんな体していたかな?
あれっ、髪が白髪だらけ..可笑しいな..
まぁ..良いや…今日は何故か疲れた。
寝よう、寝よう..
全ての終わり..
「至高様が消えてしまったのですか?」
これから戦争が始まる..だったらその方が良いわ..
魔王迄倒して貰ったんですから…此処からはこの世界の人間が頑張るべきだわ。
「そう、一応探してくれない、ロザリー、だけど干渉はしないで、もう充分使命は果たされました自由にしてさし上げなくちゃ」
「居なくなってしまわれたと」
「教皇様、申し訳ございません..」
「良いのですよ..女神の騎士様は使命を果たされたのです..自由にさせてあげましょう」
此処からは我々が戦う番です..
「はい」
「何ですって..剛腕のアモンに黒龍王ギルドが死んでいるですって..」
「はい、女神の騎士様の足取りを見に行った者がハッキリと見たそうです」
「それで、女神の騎士様は?」
「恐らく死んだものと思われます」
「私は、女神の騎士様が泣いていたのを見ました..死を覚悟して戦いに行って下さったのですね…あの方は正に女神の御使いでしたわ」
「本当に、何も望まず..ただ施すだけ..私達はあの方に何もしてあげれなかった」
「多分、女神の騎士様が死んでいるですって」
「はい、恐らく黒龍王ギルドに飲み込まれ、内側から切り裂いて倒したと思われます」
「そんな事したら、解かされてしまうではないですか」
「それしかあの巨大なギルドは倒せなかったんだと思います」
「まただ、またです..何時も女神の騎士様は..自分を犠牲にしてこの世界を救ってしまう..私達は無力です..女神様の御使いが犠牲にならなければ生きれない..信仰って何なのでしょうか?」
「教皇様..」
「ふれを出しなさい、明日は一日喪にふくすのです」
「王..」
「マリアから聞いている..至高殿は気高い方だったな..何も望まず、ただただ人の事ばかり考えておった」
「はい」
「ゼーレよ、彼の前では余は自分が薄汚れて思えてな..本当に白く輝いて見えた」
「私にもそう見えました」
「もう居ないのだ寂しいな」
「はい」
「可笑しい、霊夢と麗美が居なくなるなんて」
「襲われた感じもしないのに..」
「仕方ないわね、頼まれたから様子見に行って来るわ」
「私はこれから魔王城に行くわ..」
「私はどうすれば良いんでしょうか?」
「サナ、貴方1人置いて行けませんから、貴方も来なさい」
「はい」
「シモン、お久しぶりね?」
「カーミラ、お久しぶり..大変な事になったな..お前が魔王様を殺すからだ、しかもアモンもギルドも殺されちゃって、どうするんだこれ」
「私は魔王様を殺したんだから継承したら問題が起こるわ..貴方が魔王に成るしか無いわね!」
「気軽に言わないでくれないか?」
「それで人間はどうするの?」
「魔王様に四天王のうち二人が死んだんだ..戦いたく無いな」
「私も同じだわ..だったら和睦しない?」
「出来るのかな?」
「そこで怯えている女の子は、あれでも偉い人に会えるのよ..手紙でも持たせればきっかけになるわ」
この手紙がきっかけで魔族と人間では不可侵条約が結ばれた。
小競り合いは起きる物の、大きな争いは無くなった..
この条約はこの後50年守られる事となる。
ルーディアスをはじめとする諸国は年に一度「女神の騎士」の日を作り、その日は感謝をこめ教会にお祈りしお祭りをした。
女神の誤算
「ノートリア、これは駄目だ..」
「いったい何が..えっ」
「女神の騎士の影響で、魔族の幹部が裏切って魔王を殺し、そして女神の騎士が魔王側の幹部を2人も倒した..これがどういう事だか解るな」
「はい」
「うむっ、魔王は勇者が倒す、勇者は魔王が倒す、それが正しい、それ以外が倒すなら、それぞれの仲間か元から居た国の者じゃ無くてはならん」
「解かっております」
「今回の事はイレギュラーじゃ..お前は悪くは無い…だが邪神側からしたらたまった物ではない..だから、女神の騎士と勇者達の回収をしこの世界は女神も邪神も向こう500年は不干渉という事にした..魔族の幹部は2人いるが、元から居た種族じゃ仕方なかろう」
「解りました..これより女神の騎士、及び勇者達の送還をします…この世界での記憶は消して元の生活に戻す事にします」
「すまぬの…頼む」
「解りました、創造神様」
この時、ノートリアは緊張していた。
ちゃんと、処置をしていれば問題は無かったが..至高はこの時溶けていた。
溶けていた事に気が付かないで、再生した為、京之介にならず至高の姿形だった。
そして、更にデュランもノートも…至高から離れて行かなかった。
本来、この世界から元の世界には何も持ち込めない..だが力がある彼らには通じなかった。
それらの力を持ったまま..至高は元の世界に帰された。
最終話 可笑しい世界
可笑しい、俺は何で京之介じゃないんだ。
至高という名前なんだ、どうしてこんな勘違いをしていたんだ。
他は元の記憶と何も変わらない。
親は麻薬で身を滅ぼし、刑務所にいる。
施設で暮らして友達はいない…
そして、皆んなに怖がられて嫌われている。
施設の中では別だけど…
あれっ可笑しいな?
此処まで慕われてはいなかった筈
「至高ちゃん…もし高校を卒業しても仕事が決まらなかったら此処で働けば良いわ」
「そうだよ! 私、大きくなったら沢山働くから至高お兄ちゃんは何時迄も此処にいれば良いよ」
「うん、あたしが養ってあげる」
可笑しい…差別はされなかったが、犯罪人の親を持つ俺に此処まで優しくは無かった。
《うちの学校にあんな人居たかな》
《あんなプラチナブランドの髪の男の子目立つよね》
「おはよう」
誰も返事はしてくれないが何時もの日課の挨拶だ。
だが、今日は何時もと違った。
「おはよう! 至高ちゃん、今日もカッコ良いね!」
あれれ? クラスの人気者の霊夢さんが挨拶をしてくれた。
可笑しいな..何でだ…
《ちょっと霊夢、何で至高に挨拶なんて返すの?》
《あの人、怖いらしいよ..関わらない方が良いよ》
「ありがとう!」
「何でお礼なんて言うのかな? 霊夢は解らないよ?」
「あははは、そうだね」
《霊夢、話すと不味いって》
《麻薬とか怖いよ》
何かいたたまれないな
「ごめんね」
何かこのまま話していると霊夢さんに迷惑を掛けそうだから、俺は一旦廊下に出た。
チャイムが鳴る頃に戻ってくれば良いだろう。
「ちょっと、霊夢どうしたのよ、赤木は怖いから相手にしない方が良いよ」
「邪魔しないでくれるかな? 至高ちゃん、行っちゃったじゃない! 人の恋路邪魔するなら友達辞めるよ!」
「霊夢..恋路って..嘘、赤木の事が好きなの? 何で?」
私、何で至高ちゃんが好きなんだろう? 解らない..だけど、何で、好きって気持ちが止まらない..
「理由は解らないよ..だけど、凄く大好き..それだけは解るの」
「何しているのですか?」
今日は凄く可笑しい..何で、理事長の娘の麗美が話しかけてくるんだ..
確か物凄く毛嫌いされていて裏で「犯罪者の息子が何でこの学園にいるんですの」って言っていたのに。
「ちょっと、入りづらい雰囲気なので時間つぶしです」
「至高様が何で遠慮する必要があるのですか?」
至高様? 何でそんな呼び方をするんだ..
「そうですね、そろそろ入ります」
至高様? 何で私があの様な者を「様」等つけて呼ぶのでしょうか?
だけど可笑しいのですわ..あの顔を見たら愛おしさが込み上げてきます。
全てを捨ててでも欲しい、そう思ってしまいます..こんなの私じゃありませんわ。
教室で授業を受けている間も何故か視線を感じる。
可笑しいな、何で剣道少女と呼ばれる梓さんに、生徒会長の東吾さんまでもがこっちを見ているんだ。
何か生徒会を怒らせるような事を俺はしたのか?
「至高くん、私に稽古をつけてくれないか?」
何かの冗談なのかな? 全国優勝している貴方にだれが稽古つけるって?
「えっ、剣道少女と言われる貴方にですか?..」
「駄目かな?」
「駄目かと言われても、俺剣道なんてそんなに出来ませんよ!」
「そうか、少しは出来るんだな..なら放課後に少し相手をしてくれ」
これは何かの虐めなのか?
生徒会の有名人がさっきから絡んでくる..
放課後になった。
「さぁ、剣道の練習だ、至高くん相手を頼むよ」
冗談かと思ったのに本当に来た。
「部長、なんで赤木なんかつれて来たんですか? 剣道なんて出来ないでしょう?」
そりゃそうだ、此処には俺なんかより強い人間が山ほどいる。
「あれっ、何で私は至高くんが剣道が出来るなんて思ったんだろう? まぁ良いや」
《梓、不良とか嫌いだもんね、多分叩きのめすんだわ》
《赤木ってヤバイ奴でしょう? 余程気にくわなかったのね》
《全国優勝している梓に勝てるわけ無いでしょう》
「あの、俺剣道は本当に授業で習った事しか出来ません」
「本当にそうなのか? だったら手加減するけど..可笑しいな、何でか私、貴方が強いと思うんだ」
「そうですか..そこ迄言うなら仕方ない、良いですよ」
「はじめ」
パーン..一本それまで..
「至高くんは嘘つきだな、初心者がやる動きじゃないぞ..本気でやらせてもらうよ」
やっぱり強いじゃないか?至高くん
《嘘だ、梓が面を決められる所なんて見た事が無いよ》
《手加減しすぎだよ梓》
何で俺はこんな事が出来るんだ..
梓はさっきと違う..顔つきが変わった、だが..
可笑しいな、何で隙だらけに見える?
梓は突きを放ってきた。
《大人げない..あんなの誰も躱せないわ》
《さっきまぐれで一本取られたからむきになっているのよ..主将》
何故か頭に声が聞こえた気がした。
声に合わせて体が動く..突きがスローモーションに見える。
パンっ
「一本、それまで」
「嘘でしょう! 梓が手も足も出ないなんて..本当に強いわ」
「風になびく、あの髪、まるで王子様」
「王子様? 赤木が?あんた目が腐って..いないね、何んで私赤木が嫌いだったのかな?」
「君は凄いね..うん、良かったらこれからもたまにで良いんだ、稽古つけてくれないか?」
「ごめん..」
俺はいったい何なんだ?
何でこんな事が出来るんだ?
解らない、解らない、解らない..
だから、走って逃げだした。
「待て、至高くん」
何でだ、とうとう生徒会長が話しかけてきた。
「どうかされたのですか会長?」
「いや、何でもない..引き留めてすまなかった」
何が何だか解らない一日が終わった。
「おはようございます、至高様!」
「至高ちゃん、おはよう!」
「むぅ..至高お兄ちゃん、誰? この人達?」
「学校の生徒会の人..」
「それがなんでここ迄迎えにくるのかな?」
「知らない」
「まぁ 良いけどさぁ」
何でこんなに施設の女の子が怒っているのか解らない。
「遅れちゃうよ、至高ちゃん」
霊夢さんがいきなり腕を組んできた。
「霊夢さん、これはいったい?」
「霊夢に腕を組まれるのは嫌なのかな?」
「そういう、訳じゃないけど..」
「なら良いじゃん..」
「ちょっと霊夢離れなさい」
「何で! 麗美様にそんな事言われなくちゃいけないのかな?」
「それは、私こそが至高様の恋人だからですわ」
「至高ちゃん、何それ..嘘だよね」
可笑しい、そんな記憶無い..
「あの麗美さん、俺告白もしてないし、告白もされた記憶も無いんだけど」
「そうでしたわ..なら伝えますわ、私は至高様を愛しています..勿論、返事はイエスですわよね」
「むぅ..それつきあって無いんじゃないかな? 霊夢だって好きだもん、至高ちゃん霊夢と付き合って下さい」
解らない..こんな夢みたいな話がある訳が無い。
「あははははっ、これは夢なんだきっと..ゴメン」
「「至高様(ちゃん)待って!」」
「どうしたんだ至高くん」
「梓さん、聞いて、霊夢さんと麗美さんが可笑しいんだ」
「何があったんだい!」
「多分、揶揄っているんだと思うんだけど..俺に告白してくるんだ、可笑しいよね」
「スマン、私も至高くんが好きだぞ..剣道カップルって案外良いかも知れないぞ」
「梓さんまで、いい加減にして下さい」
「ちょっと待ってよ、少なくとも私は揶揄って等いない..逃げないで」
「ハァハァハァハァ..東吾さん」
「何だい至高くん..三人が三人が変なんです..」
「どう、変なんだ..」
「だって、三人とも本当は東吾さんが好きなんですよね? だけど、揶揄って俺に告白してくるんです」
「そうかい? ただ、間違っているよ? 仲は良いけど友人としてだ..それに彼女達を悲しませるのは駄目だが、俺は君が付き合うなら賛成だ」
「えっ」
可笑しい、凄く可笑しい…だが、俺も可笑しいのかも知れない..
皆んなが走ってきた。
「逃げるなんて酷いのですわ」
「何で逃げるのかな?」
「私は揶揄ってなんていないぞ」
「至高くん、何故か解らないが俺は君が決して逃げない凄い奴だと知っているよ」
「俺もやっぱり、可笑しんだ、さっき告白されたばかりなのに何故か皆んなが愛おしんだ..」
「「「至高ちゃん(様)(くん)」」」
「それで、至高様は誰が一番好きなんですの?」
「私だよね至高ちゃん」
「私に決まっているだろう? 困っているじゃないか?」
何が何だか解らない..だけどこれからの毎日はきっと楽しい物になる。
まるで何処かの女神様が微笑んでくれた..そう思える程に…
だが、本当にそうなのだろうか?
彼の血は果たして、幸せを許してくれるのだろうか..
それは誰も知らない…
FIN
あとがき
この話しの元の作品は 他で書いた。
「剣? 魔法? そんな事よりSEXだ! SEX大好き少年が異世界に転移した!」がベースになっています。
こちらの作品ではスカトロ等、かなり過激な内容でした。
その作品の感想をくれた方の中に..真面な感じで書いて欲しい。
そういうリクエストで書いたのですが…自分で読み返しても、うん確かに面白くない。
ですが、こんな作品なのに、何時も感想をくれる方が居たので
何とか最後まで書きました。
ここで名前を書いて良いか解りませんが、感想欄を見て頂ければ、どんなに応援してくれたか解ると思います。
この作品の最後の方はその方の為に半分書いた..
そう言っても過言じゃありません。
「犯罪者の息子で嫌われ者だったのに急にモテ始めました!理由は元女神の騎士だったから(本人は知りません)」
何て作品を書こうかどうか検討中..
最後まで読んでくれた皆さん..本当に有難うございました。