勇者に恋人を寝取られ追放されたが、別に良い! だってその子は俺のヒロインじゃないから…
パーティーリーダーであり勇者のジョブを持つリヒトが告げる。
「悪いが今日でクビだ」
「そうか、まぁ良いや」
リヒトとは幼なじみだ。
「今迄ずっと仲間で支え合いながらやっとここまで来た」俺がそう思っていると思っているのか?
そんな風に思っているのは、お前だけだぜ。
剣聖のケイト
聖女のソニア
魔法使いのリタ
五人揃ってSランクパーティー『ブラックウイング』そう呼ばれていた。
やや中二病な名前だがまぁリヒトは勇者だから可笑しくないな..
確かに最近の俺は取り残されていた。
ジョブの差で成長した四人に能力が追いついていないのは事実だな仕方ない。
だから、別にクビになっても良いと思っていた。
だってそうだろう? 腐ってもSランクパーティーのメンバーなんだぜ、俺も。
此処を出れば、幾らでも次がある。
こいつ等が凄いだけで他のSランクパーティーならまだ通用するし、Aランクまで落とせば恐らく引くてあまただ。
その位の価値はあるんだよ。
「ついて来れないのは分かっているだろケイン」
「そうだな、勇者として大きな舞台に立つんだろう…俺も一度で良い、そこに連れていって貰えないか?」
此奴の狙いは解っている、リタが欲しいんだろう? だから俺を追放したいんだろう? 別に気にしてないんだが?
「勇者とし大きく飛躍するには大きな手柄が必要なんだ。残念ながらお前とじゃ無理なんだ。なぁ分かってくれよ、パーティーを抜けてもお前が親友なのは変わりないからな。」
親友であるなら別に良いや。
「親友でいてくれるのか?」
「ああ、それは変わらない」
他の奴はどうなんだ。
俺は元恋人であるリタの目を見た。
彼女ももう昔の優しい目をして居ない。
「私もリヒトの意見に賛成だわ!貴方はもうこのパーティーについていけないじゃない。きっと近いうちに死ぬか大怪我をするわ..さっさと辞めた方が良い…これは貴方の事を思って言っているのよ」
「リタ…そうか…そうだよな」
まぁ、そう言うだろうな!
俺と目を合わせないんだからな。
ふと、リタの左手に目が行く。
薬指には見覚えのない指輪があった、これは多分リヒトが買い与えた物だろう。
俺の指輪はもうしていない…まぁ解っているけどね。
他の三人も同じ指輪をはめていた。
まぁそう言う事だ…
俺は親友に彼女を寝取られていた、そう言う事だ。
「リタ…婚約は解消で良いんだな」
「….」
「君の口から聴きたい」
「もう、貴方を愛していない」
そんな事は…もうとっくに気が付いていたさ…
「大人しく村に帰って田舎冒険者にでもなるか、別の弱いパーティーでも探すんだな」
「「この野郎!」とは言わないよ、お前は親友だ…」
こいつは俺とリタが婚約していると知っていて寝取ったんだな。
知っているよ…
親友だと思っていたのにな..
お前が欲しいって言うなら…リタも最初から要らなかった。
リヒトは勝ち誇った顔で俺を見ている。
思いっきり、俺をあざ笑っているんだな。
何をしても優秀で、顔も良くて、強くて、おまけに勇者に選ばれた。
そんなお前が、おれは自慢だったんだ。
リタは確かにおれの恋人だったが欲しいならあげたさ。
俺にはお前が一番だから。
欲しければくれてやったよ、お前の方が大事だ。
「さようなら、ケイン」
「情けない男だケイン!」
「貴方より!リヒトの方が素敵だわ」
三人の幼なじみが一斉に罵倒してくる…結構堪えるははこれ..まぁ良いか
あのリタまでもが俺を睨み付けていた。
「そんな目で見ないで、もう立ち去ってよ!」
「解ったよ…」
「余り酷い事言うなよ リタ。ケインだって俺の親友なんだからな」
「そうね。私も言い過ぎたわ。ごめんねケイン」
親友ならそれでいいや。
「リタ、もう恋人じゃない…それで良いんだな」
「ごめんなさい」
「良いよ、今度会った時は笑って話そうな…世話になったな。四人とも幸せに暮らせよ!」
「それじゃ、パーティから抜けてくれるんだな!」
「ああ、お前達は世界を救えばいいんじゃない。じゃぁな、俺は田舎に帰るわ」
さようならだ…
(3か月後)
「ただいま、ミランダさん!」
「どうしたんだ、ケイン…リヒトと一緒に冒険者していたんじゃないのかい?」
「あははっ追い出されちゃいました…あっ別に喧嘩した訳じゃ無いから大丈夫です!」
「リタちゃんは? あの子ケインにぞっこんだっただろう?」
「振られちゃいました…リヒトの方が良いそうです」
「そう、どう見てもケインの方が良い子なのに、あの子も見る目が無いね! まさかあんたから振ったんじゃないよね」
「違います…僕は振られたんです」
「それでミランダさん…リヒトと旅立つ時に言った約束覚えていますか?」
「覚えているよ…忘れる訳無いじゃない」
「リヒトは婚約して一人前、リタも僕以外の男性を選びました」
僕は旅立つ前に約束していた。
リヒトを必ず一人前にする事。
そして幼馴染のリタの気持ちを傷つけない事。
その二つをしっかりする事が出来たら…受け入れて貰える。
「ミランダさん、僕と結婚して下さい!」
「まったくしょうがない子だね…私もう31歳なんだよ!」
「ミランダさんは凄く綺麗です..それに..」
「解っているよ…ケインの初恋なんだよね」
「はい」
「こんなおばさん花嫁にして後悔しないの?」
ミランダさんはリヒトの母親だけど…凄く綺麗で20代前半にしか見えない。
早くに両親を亡くした僕に凄く優しかった。
最初は「あんなお母さんが居たら」そう思っていたんだけど…
歳をとるにつれ「理想の女性」にしか見えなくなった。
リタもケイトもソニアにも無い…凄く優しい包容力がある。
子供の頃からずっと好きだった。
「する訳無いでしょう..貴方の事をこんなに愛しているんだから」
「本当に仕方ないわね…約束したもんね…いいよ受け入れてあげる..結婚してあげるわ」
「ありがとう…一生幸せにします」
「当たり前でしょう」
こうして僕は初恋のミランダさんと結婚した。
リヒトに「お前の親父になった」そう言ったらどういう顔するだろうか?
今から楽しみだ。
勇者に恋人を寝取られ追放されたが、別に良い! だってその子は俺のヒロインじゃないから…その後?
気が付いたらもう朝なのね…
まさかこの歳になってこんなになるなんて…
思わなかったわ…
女の幸せって…初めて知ったわ。
結婚を申し込んでからは本当に早かったわ。
直ぐに村長さんに届けだしたら「それじゃ早い方がええ」という話になって、そのまま教会に。
あれよあれよという間に結婚式。
しかも、ほぼ全員が参加なんだから…訳が解らないわ。
余りの手際の良さに、神父さんに聴いたら。
「ケインの気持ちを知っていたから、なんとなくこうなるんじゃないかって準備していたのですよ!」
何それっ!
「それはどういう事ですか?」
「だって、ミランダ一筋のケイン君が、結婚申し込まない訳ないですからな」
一筋って、確かに子供の頃から「僕はミランダと結婚するんだ」なんて言っていたけどさぁ..
良くある子供が「お母さんが好き」と同じだと思っていたよ..だってあの頃はまだ、旦那がいたし..
「だけど、それって子供の頃の事だわ」
「そうですね、子供の戯言、普通ならそうでしょう…ケインは違うのです…ミランダ、貴方が旦那を失って悲しい時どうでした?」
あっ「大丈夫だよ、ミランダは僕が守るから…1人じゃないよ、リヒトだって居る..1人じゃない」
どうしよう、泣きながら私とリヒトを抱きしめていた…「守る」そういっていた。
「あの時からあの子変わりましたよ? あのおとなしい子が剣を教えてくれって、冒険者に師事したり、村のお手伝いも誰よりもしていましたよ」
「そうですね…」
「他の子がお菓子を買ったり、おもちゃを買っている時も買わなかったんですよケインは」
「そういえば、ケインが何か持っていた記憶ないですね」
「何か貰いませんでした?」
あっブローチ、ブローチとネックレス貰ったわ
「心辺りあるようですね…子供かも知れませんが、あの頃からずっとあの子は貴方が好きだったのですよ」
そうか…気が付かなかったな…
「大体、未亡人になった貴方に夜這いも誰もしないし、後添いの話も無かったでしょう…それはケインの気持ちを皆が知っていたからです」
「だけど、どうして…そこまでケインに」
「あの子は良い子です、村の人間なら誰しも多かれ少なかれ恩があります、この村には恩人の想い人に手を出す人間は居なかった、そう言う事ですね」
そこまで好きだったんだ…知らなかったな…だったらもっと早く想いに答えるべきだったわ..
「まさかいきなり式迄あげて貰えるなんて思わなかったよ」
「ううん、そうね」
夜がきちゃった。
正式に結婚したから、お相手しなくちゃ。
何で結婚なのかな…
私みたいなおばさん…正直夜這いでも良かったんじゃない?
未亡人何だから夜這いして良いんだから…
ううん、解っている、ケインはそういうのじゃなく、本当に私が好きなのよね!
大丈夫かな? がっかりしないかな?
「ケイン、お風呂湧いているから、先に入れば?」
「そうだね、うん」
ケインも緊張しているわね…
「ふぅ..良いお湯だった」
嘘、もう出てきちゃったの…
「あははっ今度は私がお風呂行ってくる…」
「うん、待っているよ」
「あはははっうん」
これから…あのケインとするのよね?
だいたい、あの子のオムツも私は交換してあげた事があるのよ..
昔から愛していたわよ…だけどそれは自分の子供と同じようによ?
はぁ…私31歳なんだよね..もう女としては終わっている年齢だよ?
それが15歳の男の子と結婚?
(注:この世界の成人は14歳から15歳、平均寿命が人族55歳位です)
アカネさんに顔向けできないわ。
ケインの母親のアカネさんが死ぬ時に「ケインをお願い」そう言われたのにな..
明日にでもお墓に謝りに行かなくちゃ…
それより…
今迄気にしなかったけど…
私の肌、昔は良く水をはじくのに弾かないわ..
胸だってハリが何となく無くなってきたし、気のせいか少し垂れてきた気がする。
お尻もなんか下がってきたきがするし、お腹も子供を産んだせいか少し弛んでいるきがする。
脇はこれから処理して…うわ下の毛も処理しなきゃ..
しかも、こんな事10年以上してないから..大丈夫かな?まさかカビてなんてないわよね?(笑)
昔の旦那は凄く淡泊だったから20分もしないで済ませていたわ。
絶対に、ケインが望んでいるのは違う気がする…
大体、もう10年以上「女」として生きてないから…困るわ。
まぁ、今の私に出来る事はしたわ…こんな体15歳の子に見せるのは恥ずかしいから布で隠して..
「ケイン、お待たせ..暗く」
「ミランダさん」
「ちょっと待って!」
恥ずかしいから、明かりを消さないと..これで良いわ..
なんなのかしら?
私の事をまるで宝物でも触る様に触ってくるわ..
頭の撫で方一つでも前の旦那とは違う…凄く気持ちい良い..
若いってこんなに違うのね…体は凄く鍛えられていて、うん流石に剣士なだけあって贅肉一つない。
手だって豆だらけだけど…優しいなこの触り方。
なんだか自分のだらしない体で相手するのが申し訳なくなる。
男の子の成長ってすごいわ…あんな小さな子供だったのに…こんなになるなんて。
前の旦那は淡泊でこういうのは直ぐに終わっちゃったし…私も性的な事は好きでない。
だけど、この子としていると…駄目だわ…体が可笑しくなる..抱きしめられる度に幸せを感じる。
性的な事が好きでない私がこの時間が終わって欲しくない…そう思えてきてしまう。
若い子って凄い、こんなに貪ってくるなんて…違うわ。
前の旦那や他の人が若い頃だってこんなんじゃない…無かった。
若い子が気持ち良いんじゃない…この子、ケインが気持ち良いんだ…そうか…
この子、本当に私が好きなんだわ…
だから、全てが優しいんだ…
これが、「愛のある行為」だとしたら今迄のは全部偽物だったのかも知れないわ。
こんなにしてくれるなら、私だって答えてあげたい..
こういう気持ちになるのね…
こんなに愛してくれていたなら…旦那が死んだ時…ううん、旦那とさっさと別れてケインの者になるべきだった。
息子と旅になんて行かさないで、結婚してあげるべきだった..
そうすればもっと早く幸せになれたのに…
家族なんて忘れちゃうわ…だってこんなに大切に…女として扱われた事は無い。
両親は大切にしてくれたけど…それ以上の愛を感じるわ…
家族の想いでが全部消されて…ケインになる….他は要らないわ。
「おはよう、ミランダさん」
「はい、おはよう…だけど結婚したんだから「さん」は余計だわ」
「そうですねミランダ」
「はい、良く出来ました」
幸せ感が止まらないわ…凄くういういしい..
この幸せがこれからずっと続くんだ..そう思ったら..
顔が緩んじゃう
「どうしたの?」
「何でもないわよ」
ほら凄くういういしい…
勇者に恋人を寝取られ追放されたが、別に良い! だってその子は俺のヒロインじゃないから…その後?完結編
ギシギシとベッドの音がする。
今、俺はケインのかっての恋人のリタとやり始めている。
ベッドの横にはケイトとソニアが順番待ちで正座をしている。
白い肌を露わにした三人を眺めながら悦にひたる。
いい気味だ、お前の恋人のリタはもうお前の..へぶっ
いきなり、リタに蹴られた、かなり痛い…まさか魅了が解けたのか?
不味い..
「何で愛してくれないの?」
解けてはない..
「ちゃんとこうして愛しているだろう?」
再び続けた…今度は顔を殴られた。
「だから、何でちゃんと愛してくれないのよ!私はこれ程までに愛しているのに..何でよリヒト、私はこんなに愛しているのに」
何が何だか解らない。
魅了は掛ったままだ…その証拠に逃げ出したり、攻撃したりして来ない。
「愛ってなんだよ、何で殴るんだよ!」
つい頭に来て顔を叩こうとした瞬間…ケイトに殴られた。
「リヒト、お前は何時から、そんな愛の無い男になった! リタが暴れるのは当たり前だろう?」
「何なんだ、お前ら一体!」
「ちゃんと、愛さなくちゃ駄目ですよ…リヒト」
「だから、ちゃんとこうして」
「良いですか? こういう行為は愛のキャッチボール、そう、あれ誰が教えてくれたんでしたっけ?まぁ良いですわ、そういう物です」
「大好きな人に汚い所なんて無い…あれっ誰が言っていたんだっけ」
「多分、リヒトが言っていたんだろう」
「そうですわね」
「そうだ」
「シャワーも浴びずにやりたいって言いだしたのはリヒトじゃない?」
「ああ、確かに」
「それで、リタさんはしっかりとご奉仕しましたわ」
「ああっ」
「それなのに…リヒトは何をしているんだ? 今度はしっかりとお前が奉仕する番だろう?」
「なっ何を?」
ケイトとソニアに押さえつけられた..
「今度は貴方がする番ですわ」
「やっやめろ、汚い、茶色い物がついているじゃないか? 紙迄..やめてくれ」
「シャワー浴びたいといった私達を無視して始めたのはリヒトでしてよ? 私また凄く愛してくれると思って興奮しました」
「前は良くしてくれたじゃないか?..私には汚い所なんてないんだ..そういって愛してくれたよな?」
「沢山した後に汚い私の口をさぁ…流石に私が「汚いから良いよ」っていったのに…僕の為に頑張ったんだからとちゃんとキスしてくれたじゃない?」
「嫌だ、やめろ..嫌だ」
バキ..ケイトに殴られた..かなり強く..口の中が斬れた
「おい、いい加減にしてくれ…お前は凄く優しい男だろう..失望させるなよ..」
「何で愛してくれないの?前はあんなに愛してくれ….たよね」
「そうですわ…前は」
「嫌だやめろー..」
辞めては貰えなかった..俺の口の中はまるで肥溜めを口に入れられたような味がする..鼻からは腐ったチーズをさらに酷くしたような臭いが取れない。
「何で泣いているの? こういうのが愛じゃない..ほら」
リタの口元から..俺の恥ずかしい毛がはみ出ている..そしてそのまま
「ほらキスしてあげるから泣き止みなよ」
「嫌だ、嫌..やめろ」
「何を言っているんだ..お前はキスが凄く好きだろう..悲しい事があったんだな..リタがキスで癒してくれるんだぞ」
リタのキスの味は物凄く生臭く..俺の味がした。
「何で逃げようとしたのかな? 可笑しいよ? 前は..あれっ あんなに愛し合ったじゃない…1人じゃなくて私達を..あれっ選んでくれたんだよね?」
「そうですわ…リヒトあれっ..じゃないケインを追い出してまで私達を選んでくれた..凄く嬉しかったんですよ?」
「私が男みたいな体で悩んでいたら、私のグローブを脱がして「この手が僕たちを守ってくれているんだ..好きだよこの手」といって指から一本一本宝物のように愛おしそうに舐めてくれたじゃないか?」
「あのさぁ..愛を築くのは時間が掛かる…そう思わない? ちゃんと昔のケイン…じゃないリヒトに戻ってよ..ねぇお願いだからさぁ」
「仕方ない、今日は私はこれで良いわ…その代り明日からはしっかりしてよ..」
「良いのか?リタ」
「私は恋人?..あれっまぁ良いや..ケイトとソニアにはしっかりしてあげてね…見ているから」
嫌だと言うのにやめてくれない…散々奉仕させられ、嫌がると無理やり押さえつけられる。俺の口の中はまるでゴミ箱の様だ。
そして、汗も流さずしていたから、体からは腐ったような臭いがしてきた。
「うえぁぁぁぁぁぁぇぇぇぇぇぇ」
流石に気持ち悪くなって吐いた..
こんなのはただの苦痛でしかない..
「何、吐いているの? リヒト可笑しいよ? 好きな人には汚い場所何か無い、って言っていたのに..」
「何があったんだ…あんなに蕩けるような事をしてくれたのに..」
「今のリヒトさんには愛が感じられません」
この日から俺の地獄が始まった。
オークに攫われた、苗床の様な生活だった。
こんな状態の彼女達に毎晩の様に求められ…「愛」が無いと罵られる。
それがとうとう、彼女達から「暴力」という形になり始めた。
「リヒト? 私が昔の様にちゃんと愛せるように戻してあげる」
「私も頑張りますよ? 安心して下さい」
「私も協力するぞ!」
そう言いながら、シャワーも浴びない汚い体に奉仕をして…
優しく無い…愛が無いと罵られ..暴力を振るわれる。
それでも、俺はこのパーティーを抜けられない…
五人揃ってSランクパーティー『ブラックウイング』
剣聖のケイト 聖女のソニア 魔法使いのリタ
ケインが居ない以上これ以上仲間を減らす訳にはいかない。
他にメンバーを集うにもリタは兎も角、剣聖や聖女なんて他に居るわけが無い。
まして、勇者の俺が大舞台で活躍するなら…捨てる訳にはいかない..
だが..
「勇者リヒトって鬼畜らしいよ?」
「三人も自分の女にして、優しくないんだって」
「ガセじゃないの?」
「違うって、ソニアさんやケイトさんが言っていたんだから」
「それじゃ間違いないじゃん」
「最低」
あの馬鹿女達が街で不満ばかり述べるから…ブラックウィングの女の評価は低い。
しかも…最近は依頼も拒否るようになりやがった。
「リヒト、今の貴方の為に働きたくないの…ごめんね」
「リタ、優しくいう必要は無いですわ…愛してくれない男の為に戦いたくないのです」
「同感だ…人の愛を逆手に取るなよ…幾ら私が愛しているからって愛してくれなくて、思いやりの欠片も無い男の為には戦いたくない」
「もう俺を愛してないのか?」
「愛している、だから貴方が愛してくれないのが辛い」
「同じよ..私の愛まで疑うんだ、最低」
「お前、自分がどれだけ愛されているのかも解らないんだな」
ケインという男は簡単に言えば「究極のお人よし」だった。
ミランダという心に決めた人が居るのに、絆されて幼馴染のリタと婚約してしまう位に。
勇者パーティーに居る人間は複数の人間と結婚出来る…それでも情に絆され意中の人が居るのに、流されて幼馴染と婚約する位のお人よしだった。
小さい頃に両親を失った彼は、「愛に飢えた」人間に育つ。
だからこそ、人の悲しさや寂しさに敏感になった。
更に、人に「必要」とされる事に喜びを見出す人間に育った。
村で、誰もが彼を評価したのは、「何でも手伝いそれを喜ぶ人間」だったからだ。
ただ遊んでいるだけの子供と、「重いでしょう」と荷車を押してくれる子供。
怪我して歩けない自分に、ただ見ている子供と、おんぶして運ぼうとする子供。
誰でも後者の子供を評価するだろう。
ある意味究極の寂しがりで愛に飢えた人物それがケインだった。
リタが毒虫にやられて顔が二目とみられなくなった時に、顔じゅうの毒を吸いだした事もある
「あはは、もうこんな顔じゃ女として終わりだよね?」
「治るから大丈夫だよ..今の姿でもリタは綺麗だ」
「でも..こんなんじゃ」
「もし、貰い手が居なかったら僕が貰ってあげるよ」
こんな事平気でいう人間だった..毒を吸いだした為に自分はその後唇が腫れて寝込んだのに。
ソニアが火トカゲの火にやられ火傷を負った時には、自分の装備を売って秘薬を買った。
焼け爛れ臭い膿だらけの顔のソニアを寝ないで包帯を変えて看病していた。
リヒトは見たくないからか、他に宿をとって飲み歩いていた。
「もう私、終わっちゃったのね..」
そう泣いていたソニアに口づけをした…
「終わる訳ないじゃん…思わずキスしたくなる位魅力的だよ」
「そんな訳無い」
「そう、要らないならソニアを頂戴」
「どうするの?」
「お嫁さんにしちゃうから」
「…」
ソニアは申し訳ない気持ちと、醜くても、魅力的といったケインの顔を忘れない。
ケイトに至っては流行り病に掛かった時に下の世話までしていた。
「見捨ててくれ」
名前を売り出す為に躍起になっていたリヒトは彼女を見捨てて、依頼を受けていた。
「見捨てないよ」
「あははっゲロ吐いて、下痢して動けないんだぞ私は..」
「汚くないよ…ケイトだもん」
そういって、オムツをかたずけてお尻迄拭いた。
「馬鹿、態々みせるなよ…変態」
その時にケイトは誓った…もし、ケインが同じ様になったら、下の世話までしてやろうと。
彼女達は解ってしまった…ケインは美少女だからじゃない…そんなの関係なく何でもしてくれるのだと。
だから、自分達も何でもしてあげよう、そう思う様になった。
リヒトは魅了のスキルでケインから彼女達を奪った。
もうケインへの気持ちは今は消えている。
だが、その愛し方は残っていた。
魅了を使っても、猫や犬をかわいいと思う様に..愛し方は今迄と同じ。
ただ、好きな対象が入れ替わってしまっただけだ。
好きな相手、ケインとリヒトが入れ替わってしまっただけだ…
だから、こそ、三人を選んでくれた時に嬉しさが増した。
心に決めた未亡人でなく…自分達を選んでくれた、その嬉しさからケインを追放しても何とも思わなかった。
これから素晴らしい日々が始まる。
そう思っていたから..
だが、違っていた。
あの凄く優しいリヒトが自分の体を汚い様な物を見る目でみた。
自分のオムツまで変えてくれた人間が…汚い毒や膿を吸いだしてくれた人間が…拒んだ。
ケインと三人の関係は「何でもしてくれるから、何でもする」そういう間だった。
それに彼女達は愛を感じていた。
それを壊そうとした相手が徐々に許せなくなっていった。
魅了のスキルの為に愛した人間が入れ替わってしまっている..それに気が付かない。
「何で、愛してくれないの..あんなに優しかったのに」
「私の事はもうどうでも良いのですか? 貴方は何時からクズになってしまったのですか?」
「なぁ頼むから、あの優しいリヒトに戻ってくれよ..」
「俺は..」
俺は何て事をしてしまったんだ..ケインが居るからこいつ等は優しい奴だったのか?
ケインはこんな最低な性処理をさせられていたのか..
本当は違う…お互いに絆があったのだ..
寂しがりやのケインは自分を好いてくれていた三人だから、喜んで答えていた。
彼女達は、何でもしてくれるケインが好きなだけ、それだけだ。
もし、リヒトがケインと同じ位の事が出来たなら、同じ様に愛してくれたはずだ。
だが、リヒトはそれに気が付かない。
それ所か彼女達が怖くなってきた、リヒトは依頼の時だけしか彼女達に会わなくなった。
「リヒトがいけないのよ…愛してくれないから」
会わないという行動が彼女達に最後の一線を越えさせた。
「うんぐむぐっ」
今、リヒトは猿轡を加えさせられ、ベッドに縛り付けられている。
「大丈夫だぞ、リヒト、手足が無くなっても、昔お前がしてくれた様にオムツの交換から全部してあげるからな」
「体も大丈夫ですわよ…貴方が膿を吸いだしてくれたように、私が貴方の汚れを舐めとってあげるわ」
「私もしてあげるね」
「うんぐ、むぐ(やめてくれ)」
「大丈夫、すぐ終わる」
剣聖のケイトがその剣術で四肢を切断した。
「ふんぐーっ」
「痛い? すぐ回復魔法をかけますね?」
「うぐううう(やめてくれ)」
切断した四肢を繋げないで回復魔法を掛けたら..もう繋ぐ事は出来ない。
「これでもう…リヒトは…あれれっ…私がリヒトを愛している..何で、何で..私の好きなのはケイン..結婚したいのは..リヒトじゃない..嘘」
四肢を切断された事で魅了の魔法が遂にきれた。
「やってくれましたね…魅了のスペルですか?」
「此奴、そんな事していたんだ…道理で愛が無いと思った」
「それで、どうしようか?」
「人を洗脳するスキルは使った時点で殺して良い事になっていますわ」
「それじゃ」
「「「殺しちゃいましょう!」」」
「うぐううううっ.(辞めてくれ)」
リヒトの首は三人によってギルドに届けられた。
三人の洗脳されていたという主張は直ぐに認められた、誰が見てもケインが好きだった彼女達がリヒトに鞍替えしてケインを追い出すとは思えなかったからだ。
勇者のジョブを持ち本来なら英雄に慣れたはずの男は罪人として生涯を閉じた。
「それで、どうする?」
「決まっているわ…ケインに謝りに行くしかないですわ」
「そうだよね」
「それしか無いだろう」
三人は田舎に帰り、ケインが結婚したことを知った。
失意のうちに立ち去ろうとしたところをミランダに見つかった。
「リタにソニアにケイトよね?」
流石に息子を殺した事は話しづらい..だが彼女達は素直に全てを話した。
「そう、辛かったでしょうね…本当に息子が酷い事をしたわね…ごめんなさい」
「あの、私達はリヒトを殺したんですよ!」
「殺されて当たり前だわ…同じ事されたら、私も殺します!」
「「「ごめんなさい」」」
「謝る必要は無いわ…こっちこそ、ごめんなさい」
「「「….」」」
「それで貴方達はどうしたいの?」
「私達は一目ケインを見たら出ていきます」
「もうケインの事は好きではないのかしら?」
「「「そんな事はありません」」」
「だったら、貴方達もケインと結婚しちゃいなさいな…2人生活だと寂しいし、娘みたいな仲間が3人位居た方が楽しいわ…あっケインが許してくれたらだけどね」
ケインが好きになる訳だ。
本当に懐が深いというかなんとも言えません。
私には同じ事は言えないな。
「「「宜しいのですか?」」」
「ええっ勿論」
「どうしたの皆して?」
「「「ケイン!」」」
一瞬悩んだケインだったが、ミランダの勧めで3人とも娶る事になった。
5人で協力して畑を耕しながら、地元のギルドで、冒険者を続けていこうとしたが…
「なにこれ?」
「リヒトはクズだった、それだけですね」
「本当に殺して正解だった」
ブラックウイングのリヒトが管理している口座には金貨が3000枚も入っていた。
これは5人が贅沢しても使いきれない金額だった。
彼らは趣味で仕事をしながら、濃厚な生活を送り続けた。
4人も妻を貰ったのがケインじゃなければ、やっかみもあったかも知れない。
だが、ケインは村人に愛されていた。
「彼奴なら良いや、凄く良い奴だからな、その位当たり前だな」
そう言われる位に。
聖女が治療し剣聖と剣士、魔法使いが守る村、逆に感謝される事になる。
5人は何時も幸せそうに笑っていた。