何が起こったのか解らないわ…
私達が勇者クロードと逢瀬をしていると、黒塗りの騎士が飛び込んできた。
「何事ですか、此処は勇者様の寝室ですよ、立ち去りなさい」
「聖女様、お可哀想に…その姿..うっ..ですが今お救いします」
私が…救われる? この男が何を言っているのか解らない。
エルザが剣に手を伸ばそうとしたが..剣があるのがエルザの手が無い方..体を捻る前に剣を他の騎士が取り上げた。
リタは先に拘束されて、取り押さえられている
「クロード逃げて」
そうリタが叫ぶと…クロードは窓を破り飛びだした。
全裸で..だが、外にも騎士が居てあっさりと取り押さえられた。
「何をするんだ、俺は勇者クロードだぞ…世界を救う男だ…勇者だ!」
叫んでいるのが聴こえてくる…
クロードが言っている事は本当だ、勇者相手に何故…
しかも、この黒い鎧は「黒騎士」かの有名な黒薔薇騎士団、王妃直属の荒事専門の騎士達だ。
だから、野党でも何でもなく、間違いなく王国の直轄だ。
「何が起きたのですか?王妃直属の貴方達が動くなんて」
「聖女様、失礼します…今の貴方達は正常な判断が出来ません..ゆえに拘束させて頂きます」
何が起きているのか解りませんが従うしかありません…
「ちゃんと僕にも説明してくれるんだろうね?」
リタも拘束された…
「もし、戯言だったら覚えていろよ!」
「はい、剣聖様」
エルザも拘束された…
騎士団の団長が話し始める…
「貴方達は魅了が掛けられている可能性があります」
「魅了だって? 剣聖の私にか? 無理に決まっているだろうが」
「僕、賢者だよ..一体誰が僕にそんな魔法が掛けられのかな? あははは可笑しい」
「あの、聖女に魅了は…通じませんよ」
「それでも通じる人間がいます…勇者です」
様をつけないなんて…本当なのかも知れない。
「クロードが? そんな事しないよ僕の事愛しているんだから…」
「私だって愛し合っている」
「何かの間違いじゃ無いですか?」
だが、騎士達からは哀れみの目で見られ…
そのまま、王城に連れていかれた。
陰謀? 誰か助けて…
そのまま、私達は牢屋へと繋がれた。
ただ、ここの牢屋は貴族用の牢屋。
入口が檻になって見えるている以外は宿の部屋と変わりない。
いや、下手すると調度品があるぶんこちらの方が上かも知れない。
トイレもちゃんとありある程度プライベートも確保されている。
向かい側の2つにはリタとエルザが居る。
「一体、クロード様が何をしたというのかしら? 濡れ衣に決まってますわ!」
勇者としての責務を頑張っているクロード様への仕打ち信じられませんわ。
「ようやく、魔王を倒して平穏を取り戻したばかりだと言うのに信じられない…あの忌まわしい黒騎士あとでぶっ飛ばしてやる」
エルザの言う通りだ…しかも逢瀬の時間にずかずかとデリカシーが無いわ。
本当に許せない。
「僕も、心当たりを考えたんだけど、思い浮かばないな..」
そりゃそうよ、勇者パーティーの私達が道を踏み外した行動をするわけが無いわ。
「誰かが濡れ衣を着せたんだろうな…敵も多いからな!」
「ありえますわね…敵も凄く多いですから! 枢機卿辺りの誰かがしたのかしら?」
「王家や法皇辺りも魔王討伐後風当たりが酷いですから、その辺りかも知れませんね」
勇者をしているクロード様は敵が多すぎます。
誰かが陰謀を企んでも可笑しくありません…
「口惜しい…昔ならこんな牢屋壊して出れたのに、全く」
「仕方ありませんわ、剣聖とはいえ、片手、片目ですし、筋力迄落ちては」
「クソッ」
「リタはどうにか出来ませんか?」
「僕は無理、ほら僕は…」
「本当にどうしちゃったのかしら…昔はあれ程多才に魔法を使っていたのに」
「魔力器官の損傷でしたっけ? 本当に忌々しい、これも何かの陰謀に違いありません」
「どう考えても可笑しいですわよ、勇者パーティーだけにこんな事が起きるなんて」
「うっ..頭が、頭が、割れるように痛い….痛い..痛い..痛い」
「どうしたんだい? エルザ? 僕は、嘘、嘘…世界が回る..立っていられない」
「二人とも大丈夫? 嘘でしょう! 何かの精神攻撃? くっ魔法障壁..杖が無い、杖が無いから..ああああああっ」
これは誰かの陰謀?…誰がこんな事を…まずい..クロードが危ない、助けないと..
助けに行かないと…誰かっ! 誰かっ…勇者様を、クロードを助けて…
勇者の死
時は少し遡る。
「俺が一体何をしたって言うんだ、世界を救った…俺に..」
今、クロードは鎖に繋がれ、騎士数人に押さえつけられている。
鎖は、この世界最強のオリハルコンを使い、更に教皇自らが清めたものだ。
「何か心当たりは無いか?」
「ある訳無いだろうが…くっ」
どれの事だ…腹立つ冒険者を切り捨てた事か?
宿屋の娘を犯したくて、逆らう両親を殺害した事か?
多すぎて解らない、だが、俺は勇者だ全て見逃してくれていた筈だ。
「自分からは言わぬのか…なら仕方ない…ナナル」
「はい、お父様」
「おおナナル姫…王も周りも可笑しいのだ助けてくれ、俺は悪い事は何もしていないんだ!」
「解りましたわ!いまナナルがクロード様の無実を晴らしますわ…ご安心下さい」
「ああっナナル…有難う」
ナナルとクロードは見つめ合っていた。
そうまるで恋人同士の様に…ただ暫くしてナナルの顔が曇りだす。
「お父様、黒です…クロード、貴方という人は顔も見たくない…死んだくらいじゃ償えない」
それだけ言うとナナルは引っ込んでしまった。
今迄みたいな恋する乙女の目で無く、侮蔑を含んだ目汚らわしい物を見る目で睨むように去って行った。
「どうしたんだ、ナナル姫!」
これは王族と一部の者しか知らないが、ナナルは審議眼の持ち主だった。
これは鑑定の様に何でもわかる訳でない…ただ、人間だけの特化型スキルだ。
ただし、これは人間に限っては全てが見抜ける…スキルは勿論、兇状まで全て。
ナナルが見抜いたのは
スキル…魅了
兇状…強姦、強盗、殺人
「ナナルは審議眼の持ち主だ…勇者クロード、儂は信じたくはなかったぞ…勇者ともあろうものが、魅了のスキルを使い、強姦や強盗、殺人まで犯していたとはな」
「確かに、俺は….やっていた罪は認めよう、だが魔王を倒して世界を救った、それに免じて無罪とは言わない罪を軽くして貰えないだろうか?」
「それは無理だ…もうその功績に対して爵位に莫大な金貨…すでに精算済みだ、それに洗脳系スキル持ちは「申告」の義務がある…それを怠った者はは死刑だ」
「そうだ、ルノアール公爵、強い騎士が欲しく無いか? 助けてくれたら生涯の忠誠を誓うぞ」
「お前の様なクズは我が家臣には要らぬ」
「ならば頼まない…勇者だ、勇者クロードが、今なら救っただけで家臣になるんだぞ…こんなチャンスはない誰か..誰か」
「見苦しい、直ぐに処刑せよ!」
普通なら、裁判をやりその後に刑が確定する。
だが、魅了等、洗脳系のスキル持ちは何時逃げられるか解らない。
その為、即処刑が原則だ。
その場で、ギロチンに掛けられる事が決まった。
楽に死ねるギロチンを選んだのが王のクロードに対する最後の慈悲だったのかも知れない。
「俺は勇者なんだーーっ世界を救ったんだーーっ」
クロードは最後まで見苦しく叫んだ。
その死に際には、何処にも勇者らしい潔さが無かった
そして、刃が滑り落ちて、クロードの首が樽の中に落ちた。
聖女クラリス…魅了が解けて
二人に比べて私は聖女だったせいか軽傷でした。
二人は牢屋の方を除くと失神して倒れています。
頭の中を整理していると…
嘘ですわ…これが私がしてきた事なの..嘘よ、嘘。
まるで娼婦の様にクロードに跨り快楽を貪るように腰を振っている…そんな記憶がある。
そればかりか、
「性処理便器」「お前は人じゃ無くただの性処理道具なんだ」そこまで馬鹿にされているのに懸想している。
嘘ですわ…私はこんな女じゃない。
こんな事絶対にしてない…
可笑しいよ..こんな事しないし…する訳無い。
私はクロードでは無く、ただの剣士だけど一緒に居たスルタンが好きだった。
まだ、恋じゃ無かったかも知れない、ただ好きという思いがあっただけ…
嘘..何で私やエルザやリタが、スルタンを殺しているの?
何で、そんな事する訳無いじゃない…
嘘でしょう、死にかけているスルタンの前で…私…
「クロードは勇者なのですよ? そして、私は聖女、剣士の貴方がしゃしゃり出るからこうなるのです」
エルザが何でスルタンを殺そうとしているの? リタも貴方達だってスルタンが好きだったはずだよ…
この女は誰?
私じゃない…私はこんな事はしていない。
だけど、その顔は私だ。
スルタンの横にいる女は誰? 思い出した…村人の女の子だ。
クロードが攫ってきて犯していた女の子だ。
それをスルタンが助けようとしてクロードに見つかり…それでも逃がそうとしたスルタンを殺した。
誰が?
私達が…
そうだ…スルタンが居ない、そう思っていたけど…私達が殺していた。
しかも、死体の横で、女の子を私達三人で押さえつけて…クロードに犯させていた。
全て終わった後、女の子はどうなったんだっけ….舌を噛んで死んだわ。
こんな事私がするわけが無い…
クロードみたいな人間好きになんてなるわけが無い…
何で花嫁が泣いているの?
理由は解る…私達が攫ってきたからだ…
「お前達さぁ、もうやり飽きたんだわ、だから悪いけど若い子を攫ってきてくれないか?」
そうクロードに言われて…そう攫ったんだ。
追ってきた新郎や家族は、エルザが切り殺した。
弟だけ残して…
「勇者に抱いて貰えるなんてついていますね…こんな弱い男選ぶからこうなるんですよ…さぁ自分から跨りなさい」
「おっと、死ぬなら終わってからが良いよ? ちゃんと満足させれば弟は助けてあげる…しないなら弟殺すからね」
私も、リタも最低だ。
「解りました」
死んだような目でこの子も腰を振っていた。
「これで、弟は助けてくれるのですよね…」
「だーめ、クロードが満足してないって…だから殺しちゃった…あんたも可哀想だから殺してあげる」
この時はエルザが切り殺したんだ…
ああああああああああああああああっっっ私がやったんだ…私は罪のない人にこんな事していたんだ…
「何で、何で、貴方は笑いながらそんな事が出来るの…そんな嫌いな男の為に」
あああああああっ
頭の中が切り替わる
「俺さぁお前の乳首が嫌いなんだよね…」
嘘でしょう…何で私..乳首を斬り落としているの..
「うわぁ本当に斬るなんて気持ち悪い…この胸見たくないわ」
なにこれ…
「そういえば、クラリスは俺の物になったんだよね?」
「はい、身も心もクロードの物ですわ」
「だったら証明してくれる?」
「どうすれば良いのですか?」
「このナイフで、クロード専用性処理便器って書いてよ、沢山」
「解りましたわ..」
何でそんな事して居るの?
お尻に、太腿、胸に…何でそんなクズの為にしているのよ…
「あはははっ、それじゃ聖女じゃ無くて性女じゃん、もうお前を抱く男なんていないよ?もう奴隷としても安くじゃないと売れないんじゃないかな?」
「私はクロード様に使って貰えれば満足です」
「そう」
「俺さぁ、お前のすました顔が嫌いなんだよ…」
「どうすれば良いのでしょうか?」
「自分で考えなよ」
何しているの私..何で自分で顔にナイフを斬りつけているの?
こんな状態なのに…何でこんな奴に逆らわないの…
可笑しいよ…
なんで、こんな状態で抱かれて喜んでいるの?
あはははっ、女の尊厳なんて全部奪われているじゃない…人前でも何処でも平気でクロードとしているし…
しかも私から無理やり誘っているわ…
「キスなんてするんじゃねーよ…そんな汚い口で..良いかお前は便器だ..俺がやりたい時に使えればよいんだ..お前からするな、ばっちいから」
「ごめんなさい」
これは悪夢よね…ううん真実じゃない..
私は顔を洗い鏡を見た…私の顔には大きな傷がついていた。
解ってしまった…今見た記憶は全部真実。
私はクロードに魅了で操られていた…
「あはははっナニコレ? 」私はどうすれば良いの?
剣聖エルザ…魅了が解けて
牢屋を見ると、クラリスが目腫らせて泣いていた。
リタはまだ起きていない。
泣いている理由が解る。
私達は最低の事をしていたんだ…
「クロードは勇者なんだ、尽くすのは当たり前だろう?」
「そんな、私には夫も子供もいるんです…許して下さい」
「そうか、ならいいや…お前が相手しないならそいつ等斬り捨てるからな..」
「そんな…解りました…お相手します」
泣きながらやるなよ…喜んでやれよ…クロードは勇者なんだよ..馬鹿女。
「これで良かったのですか! 満足ですか?…嘘…なんでよ」
「ああ、こいつ等、私が制止するのを無視して入ろうとするから斬り捨てた」
「うそ…嘘..貴方..トム…何で…殺すの..私相手しましたよ」
「邪魔しようとするからだ」
「恨んでやる…あんた達なんて勇者じゃないし…剣聖じゃない」
「無礼者」
私は女を切り捨てた…
これだけじゃない..考えるだけで罪もない人を30人は殺していた。
こんなの剣聖のやる事じゃない…盗賊のやる事だ。
だけど…なんでこんな最低の男を愛しているんだ…好きな訳無い..
私が好きなのは..スルタンだ。
なんでだ、可笑しいだろう? 何で私がスルタンを殺しているんだ。
しかも、その横で女を犯しているクロードの手伝いをしているんだ…それは私が一番嫌いな事だ。
頭が痛い…痛い…痛い…痛い
「なぁエルザ、お前俺を愛しているか?」
「愛しているに決まっているだろう? じゃなくちゃこうして体を重ねるわけないだろう?」
「俺が好きなら耐えられるよな?」
「何をするんだ..」
「このナイフでお前を切り刻む…愛しているなら耐えられるよな…」
「ああっ耐えてみせるよ」
「そう」
「ああああ痛い、痛い、痛い、痛い…あああああああっ」
「あんまりおもしろく無いな…」
「はぁはぁ..「専用性処理便所」..そうか、これで私はお前の物なんだな」
「まぁあくまで物だけどな…しかもこれは俺がした事でお前がした事じゃ無いだろう?」
「そうだな、ならばどうすれば、私が愛している事が証明できるんだ」
「剣聖の宝である目と腕をくれ…そうしたら愛していると信じてやるよ」
「それで良いんだな…」
私は躊躇なく…利き腕の右を斬り落とし右目を刺した。
「お前気持ち悪いよ…何でだよ、冗談も解らないのか? 頭可笑しいぞ」
「だって…クロードがくれって…」
「もういいや…きょうが覚めたから娼婦でも買ってくる…」
「待ってクロード…」
やはり、可笑しい…あそこで泣いているクラリスが居るからこそ…これが嘘でないのが解る。
鍛え上げた目や腕は..戦いじゃ無くあんな事で奪われた。
強きをくじき弱きをたすける….それが私の目標だった筈だ
一体…私は何をしていたんだろう?
賢者リタ…魅了が解けて
牢屋を見ると、クラリスが目腫らせて泣いていた。
エルザは残された手で壁を叩いている。
歯を食いしばって殴る姿は泣いてはいないが心が悲しみで溢れているように思えた。
僕は知っている。
僕たちは最低の事をしていた。
賢者の僕がついていながら、何も出来なかった。
2人が魅了に掛けられ、少しづつ精神に異常をきたしてきたのに気が付いた僕は解呪薬を飲ませた。
僕の知識にある魅了はこれで解決。
一度、解呪薬を飲んだ者には魅了は効かない。
僕はそう思っていたし、普通の魅了はそれでおしまい…だが勇者の魅了は質が悪かった。
その治療法では駄目だったんだ。
勇者の魅了は最低でも二重、もしかしたら三重掛けかも知れない。
恐らくは、勇者という職業は、人類の希望…だから嫌われないように元から好かれるようになっているのかも知れない。
その分のプラスの効力でひっくり返されてしまった。
正常に戻った二人を連れて逃げるつもりが、逆に二人に捕まり…気が付いたらクズの仲間になっていた。
クロードが攫ってきた村の女をスルタンが逃がそうとした。
それに怒ったクロードに加勢して…スルタンを殺した…
どちらが正しい事をしていたかは誰でも解る、スルタンだ。
その時はクロードが正しい、そう思えてしまっていたんだ…あのクズが僕に魅了を掛けていたからね。
たんたんと喋っているけどさぁ、僕は怒りで頭が沸騰している。
だけど、僕の役割は賢者だ…冷静に物事を考えるのが役目なんだ。
だからだよ…
自分だけでも逃げれば良かった。
自分だけで解決しないで…無理だった。
恐らく魔王を倒す前じゃ…訴えても国は動かない。
倒した後は英雄だから暫くは手を出せない…
今、だから国が動いたんだ。
こんなに直ぐ動くなんて…案外国王もクズかもね…
だけど、もう僕には…死しか償う方法はないと思う。
沢山の女の子が犯されていく手助けもしたし…それに逆らう人間は殺した。
僕は本当にクズなんだよ…だって、娘が犯されて悲しんでいる父親を焼き殺して。
恋人を助けるために泣きながら抱かれた女を、クロードを満足させなかったって…恋人と一緒に燃やした。
魅了されていたからと言っても…クズには変わらないよ。
それだけじゃない…
僕は恐らく、少し、魅了に耐性があるのか反抗を偶にしたから良く殴られていた。
クロードが何をしたいのか解らない。
二人もそうだけど、性処理だけじゃ無くて暴力のはけ口でもある。
体を切り裂いたり、顔を切ったり….彼奴の巧妙なのは、それを戦いの傷だと言い張る事なんだ。
僕も二人と同じ様に…ううん、2人以上に傷がある。
一番凄いのは顔、まだ魅了が浅かった頃、クロードが犯した女の子を逃がしたら…口を片方裂かれた。
クラリスが直ぐに魔法で治してくれたけど…傷が残った。
もしかしたら、クラリスも魅了に掛かっていたから、わざと傷が残る様にされた可能性もある。
「私はクズでーす…性処理しか出来ない馬鹿なクズでーす。賢者でごめんなさい」
これが人が居ない場所で僕が歩く時に言わされた言葉…これを言いながらマントだけ羽織った状態で裸で歩かされたんだ。
しかも、偶に誰かとすれ違うとマントをまくるんだ…あのクズ。
僕は2人と違い胸も小さいし、子供みたいな体型だから好みじゃないみたい…だから、性処理は少な目で暴力+虐めがメインだったと思う。
暇さえあれば殴られたし蹴られた。
場合によっては、小刀で傷つけられたり、虫を食べさせられたり…蔑みの道具だったのだと思う。
恐らく、クロードはコンプレックスの塊だったんだと思う…
だから、アカデミー出身の僕に此処まであたっていたんだ…
僕は泣かないし…怒らない…
知ってるもん…今クロードが死んだんだ..だから魅了が解けたんだ。
今更、今更…泣いても、怒っても仕方ないんだ…..
もう全ては終わった、悪夢も終わった。
そして、僕たちの命もこれから終わるかもしれない…
それだけだよ…
裁きと地獄の始まり
私達の裁判は僅か数分で終わった。
王自らが裁いたのだが…
「魅了で洗脳状態にあったから無罪じゃよ…流石にその姿を見たら違うとは言えん」
だが、その続きがある…
「但し、勇者であるクロードが罪に問われた、その功績は無かったものとする…そして王国から褒美と取らせたものは全部回収する」
「「「温情ある判決有難うございます」」」
一見、助かったと思われるかもしれないけど…これで詰んだわね。
成人してから今迄で、勇者絡み以外に私達が手にした物は無いわ…
釈放されたので外には出れた。
「リタ、エルザ…これからどうしようか…」
「そうね、まずは私達は寝床の確保からしないとね」
「そうだな、屋敷はクロードの物で取り上げられた」
「今後を考えて、一番安い宿に行きましょう」
いまの私達には、この来ている服と僅かなお金しかない。
今後を考えて…節約しなくてはならないわ。
「あん? 泊まりたいなら、金貨1枚だな!」
「そんな、法外な金額、何でだ! 可笑しいだろう?」
「あのよ、誰が親類の娘を殺した奴に宿かしたいと思うんだ? 魅了? 確かに気の毒だがよ、それでもお前達を見ると..あっちに行ってくれ」
そうか、あの女の子の一人が…
「済まなかった」
「あんたが悪いんじゃない…解ってはいる..だが見ていると殺したくなるんだ…すまない」
例え操られていたと解かっても生理的に受け付けない…当たり前だ。
結局、どこの宿も受け付けては貰えなかった。
「僕たち…酷い事していたから仕方ないよね」
「そうですわね…」
「それでどうするんだ?」
「ギルドに相談しかないな」
「あの申し訳なんですが、三人の資格証は失効しています…その為やり直すなら一番下のFからになります」
「それは、無いだろう? 此処での実績は独自の評価の筈だ」
「ですが、リーダーのクロードは犯罪を犯して死罪…その時点でパーティーは失効となります…そして、ギルドのルールの三禁止違反は追放扱いです、貴方達は操られていたから、温情で一から! 何か不服でもありますか?」
強盗(ぬすまず) 強姦 (おかさず)殺害(ころさず)全部やっていたんだ仕方ない。
「ありません…それでギルドに預けていたお金は?」
「国が没収しました」
「仕方ないね」
「そうだ、流石にギルドハウスは借りれますよね?」
「本来はそれもお断りするのですが、今日だけ認めます、3人で銅貨6枚です…あと身分証を返して下さい…発行しなおしますから」
「「「はい」」」
「あと、ギルドハウスは明日からは借りれませんからね…本来は新人のお金の無い冒険者の為の部屋です…貴方達はFになってもベテランですから」
「「「はい」」」
凄く惨めだな…あはははっこれでも聖女なんだ…
本当に僕も賢者…
ふふふFランクの剣聖…
ヒソヒソ…
「よくあれで生きていけるわね」
「本当、あそこ迄犯されて、顔も酷いけど体はもっと酷いんでしょう」
「昔は綺麗だったけど…あそこ迄酷くなっちゃな…場末の風俗だってあんな化け物居ないって」
「私だったら恥ずかしくて生きていけない…」
「それにあいつ等、魅了されたとはいえ強姦魔の仲間でしょう..」
「しかも殺し迄やって」
「簡単に言うと、性処理便器でぶっ壊れてて醜い..しかも殺人者..見たくも無いわ」
「確かにクズ以下…スラムにいけよ」
僕たち..最悪だね。
死刑にならないだけまだましそう思った方が良いかもね
仕方ないだろう…
ベッドと毛布しかないギルドハウスで一晩過ごした。
「さぁ、お金も無いし…今日から依頼でを受けないとね」
「そうそう」
「そうしないともう泊まる所も無いからな」
「その前に朝飯でも食わないか?」
「あんまりお金が無いから串焼きにしませんか?」
「串焼きなんて久しぶりだよ…僕」
「おじさん、串焼き3本」
「あいよ…金貨3枚」
「おい、幾らなんでも可笑しいだろう?」
「売値を決めるのは俺だ…魅了で覚えてないだろうが…剣聖さんよ、お前が俺の娘をクズに犯されたあと殺したんだぜ」
「そうか…すまない」
「お前達は悪くは無いんだろうが…殺したくなるあっちにいってくれ」
「申し訳ございませんでした」
「ごめんなさい」
「仕方ない、食事抜きで依頼でも受けに行こうか」
「それしか無いだろう」
「それしか無いんだろうね…」
「はい、はい、貴方達が受けられる依頼はゴブリンの討伐か薬草採集ね.」
「ちょっとそれ、常時依頼じゃないか」
「だって仕方ないと思いませんか? 性犯罪者の貴方達は嫌われているんです…しかもそんな醜い体で売り子も出来ないと思いませんか?」
「「「解った(わ)」」」
嘘だ、僕魔法の威力が1/5も出ない、そうか魅了のせいで精神力が落ちているんだ。
私..あんな、ふしだらな生活を送っていたから、ヒールしか出来ない…はははっイシュタ様は処女神..嫌われたのかな私。
私も駄目だ…片手に片目じゃ上手く戦えない。
結局、この日彼女達が手にしたのは…
ゴブリン3匹と薬草10個….
「仕方ない、もう帰るしかないわね」
「そうだな」
「だけど、何処にも泊まれないんじゃない…」
「今日は噴水の傍で寝るしかないんじゃない」
「まぁ森で寝るよりましだ」
「買取ですね…ハイ全部で銅貨2枚です」
「可笑しいだろうが..」
「あのーいい加減に馬鹿じゃないんだから…気が付いてくださいー私達も貴方達が大嫌いなんですよ…何時も査定に文句つけて、私の同僚のテルちゃんを強引に犯した奴の仲間なんて…見たくもない..魅了、確かに仕方ないですね…当人に悪気が無くても、友達を犯した奴の仲間なんて優しく出来ませんよ」
「ごめんなさい..僕が悪かった」
「私も謝るわ」
「もう来ない」
行く所の無い彼女達は治安の良い噴水の近くで寝ようとしたが…
「駄目ですよ、そんな所で寝てちゃ」
「あの、他にも寝ている人が居るのに…なんで私達だけ..」
「他がやっているから…自分達も良いなんて理屈は無いですよね..ほらとっと行って」
「「「行こう」」」
多分世界が全部私達の敵なんだ…
彼女達がスラムに行くまで3日間も掛からなかった。
スラムでも生活が出来ない
スラムに行っても彼女達は真面な生活が送れなかった。
ゴミ箱を漁ろうにも…縄張りがあり新人は漁れない…初日に勝手に漁って袋叩きにあいそうになった。
物乞いするにも誰からも嫌われていたから貰えない。
地獄は延々と続いていた…ただ一つ夜路上で寝ていても誰も文句言わない…それだけだ。
ある日の夜…
女が三人で寝ているから襲われた…
「いやーやめてお願い」
「僕やだよ..」
「貴様、恥をしれ」
裸にひん剥かれあわやと言う時に..
「うわーーっこれ酷すぎる..こんな気持ち悪い女やれねー」
「顔に袋かぶせれば出来ると思ったけど…これゴミじゃん..ブタじゃなくてゴミだ」
「しかも、こいつ等風呂に入って無いからくせーぞ..尻についているし、良く見たらシラミがたかってハエが飛んでいるじゃないか」
逆に男が逃げ出した。
「私、聖女なのに…ゴミだって」
「いいじゃん、やられなくて」
「だが、私達は…娼婦以下なんだな…売れもしないし、無料でも要らない、そういう事だ」
その日を境に「化け物」と呼ばれ、噂が広まり…彼女達を構う相手は居なくなった。
それは、もう街ではどう頑張っても生活が出来ない…そういう意味でもあった。
逃げ出した後…出会い
「結局、「この街には私達が生きる場所はない」そういう事なのね」
「仕方ないよ、僕たち魅了されていたとはいえ酷い事してたんだから」
「殺しに来ないだけ、あいつ等の方が私らよりましなのかも知れないな」
三人は結局街から逃げ出した。
その姿は、浮浪者の方がまだまし..歩かなければハエが止まる位汚い。
少なくとも、前は壊れていたが、元はさぞかし綺麗なんだろうな…そういう面影はあった。
だが、今の彼女達にはその面影すらない…
「流石に痒いから川で水浴びをしない?」
「そうだね..服も洗いたいな」
「どうせ、僕の裸なんて誰も見たいと思わないだろうしね」
道を歩いていると男性が一人で歩いてきた。
綺麗な男の子…
うん、凄い美形だね、僕の好み
今の私達じゃ惨めになるぞ行こう…
あれ、こっちに来るの..
あははは…多分あれは何か文句言うんだ
罵声だろう…
「あの、僕の勘違いじゃなければ、クラリスさんにリタさんにエルザさんじゃないですか?」
まずいですわ…もしかして私達の被害者じゃないですか
どうしようか…
だけど、嘘をつく訳にはいかないだろう?..魅了のせいとはいえやった事だ。
「ごめんなさい…私何かしていたんですか?」
「僕もごめん、ここ数年記憶がないんだよ」
「何をしたか解らないが謝罪させて貰うよ」
「なんで謝るんですか?」
「何でって私達、君に何かしたんじゃないの?」
「違うの」
「違うのか」
それじゃ無いなら、なんなのかしら..
解らないよ僕
私も解らないな…
「約束したじゃないですか?」
「約束? 私君みたいな男の子に初めてあったんだけど、リタは何か覚えある?」
「僕も覚えがないな、こんな綺麗な髪の子なら忘れたりしないけど、エルザは?」
「私も覚えはないな…だけど約束って何? まぁ今の私に出来る事ならやってあげても良いよ」
「本当ですか?」
「はい」
「うん」
「ああ良いぜ」
必要の無い存在、そういう扱いをされ続けていた彼女達からしたら、久々の「必要」とされる話だった。
それが凄く嬉しくて、彼女達はそう答えた。
「僕は未熟者です…ですが僕は貴方達を愛しています、結婚を前提に付き合ってくれませんか?」
「「「えっ」」」
クラリス達は何を言われたのか理解できなくなり…固まってしまった。
奴隷になった?何故?
「ちょっと待って、今結婚を前提に付き合って下さいって言ったの…何かの間違いよね」
「良いましたよ…間違ってません!」
「あのさぁ..どうしてそうなるの? 君は凄く、カッコ良いし…私はこんなだし..それに君は若いよね?」
「俺ですか15歳になりました」
「15歳! まだ成人したばかりじゃない? 僕たちもう26歳、結構なおばさんだよ…」
「そういう冗談は流石に関心しないな…こんなみてくれだからからかってやろう…そうなんだろう?」
「違いますよ..本当に、本当に好きなんです、心から慕っています..本当です」
いい加減、頭に来ましたよ…幾ら落ちぶれた私でもこれは無いですよ..
僕も…
こういう冗談は感心しない…何かの仕返しなのか
「そう、それじゃ…君はこの乞食以下の私が本当に好きなのね..良いわ、証明して、証明出来たら、結婚でも何でもしてあげる」
「それじゃ僕もそれで良いや」
「私も乗った…ただ、こういうのは私は好かないんだ、嘘だったらただじゃ置かない」
「….」
ほうら困っているじゃない…
「….解りました、その代わり、証明が終わるまでは喋らない…そういうルールでお願いしますね」
「ええっ解ったわ、2人も良いわね」
「うん」
「了解」
久々に人と関わった…だからか彼女達は少しハイになっていた。
嘘なのは確定だけど…なんか面白そう、そう思ってしまった。
これがもし、酷い悪戯でも、ビンタで済まそう…そう思う位に…
「奴隷商ね…そう騙したのね? だけど残念ね私達は奴隷商に、売れない位価値が無いわ」
「こういう事なんだ..」
「騙したのか? 最低だ」
「違うよ…約束! 黙ってて 売れないなら良いでしょう」
「お客様、本日はどういうご用向きで」
「相互奴隷紋をお願いします」
「「奴隷紋」」
「それは駄目だよ..駄目」
「お前達..この三人を押さえつけて」
屈強な男が彼女達を押さえつけた…
「ごめん、僕が悪かったからやめて」
「嘘奴隷にするの..いやだ」
「貴様卑怯だぞ..殺してやる」
「私は、前の勇者には嫌な思い出がありましてね、嫌がるなら面白い、どういう理屈か解らないが刻んでしまいましょう…代金は無料です」
彼女達は暴れたが簡単に押さえつけられ、奴隷紋が刻まれた。
そして少年にも…
「さぁ終わりましたよ..ははは悔しそうな顔..大方貴方は寿命が..あっこれは言わない方がよいですね」
「ありがとう」
「良いんですよ…さぁ、その三人つれてお行きなさい」
「はい」
勘違いなんだけど、得したから良いか?
裏の人通りの少ない場所に来た。
「そう、これが目的だったの…酷いわ…良い人だと思ったのに」
「最低だ、奴隷にしてどうするつもりだ、使い潰すのか」
「君は何て馬鹿な事したんだい? そんなに僕が好きなの? 良いよ解ったよお嫁さんになってあげるよ」
「あの、リタ話が可笑しいんだけど..」
「奴隷にされたんだぞ..どうしたんだ」
「その子がしたのは奴隷紋じゃないよ「相互奴隷紋」だよ」
「「相互奴隷紋」」
「そう、お互いがお互いの奴隷になる、どちらかと言えば奴隷じゃ無くて「裏切らない誓い」みたいな物だね」
「へーそうなの? 通常の奴隷紋と違うのね…」
「それがどうしたんだ」
「これにはもう一つ意味があるんだ、これは片方が死ぬともう片方が死ぬ」
「「えっどういう事(だ)」」
「つまり、そのこは15歳、私達は26歳…それなのに一緒に死ぬという事は寿命通りなら11歳もその子は損したんだよ…寿命まで賭けて言うならもう文句は言えないよ…なんで君が僕をこんなに好きなのか解らないけど…良いよ、お嫁さんになってあげるよ、不束者ですが宜しくね」
「あははっ…そう言う事なの、困っちゃうな凄く、だけど約束だから仕方ない、うん仕方ないお嫁さんか..うん」
「本当に良いのか? 約束だからな良いよ私も…」
「ありがとう..それじゃ結婚しに行こうか?」
「「「えっ」」」
「なんですか、また..えっ貴方はB級冒険者のセレスさんじゃないですか? この三人が何かしたんですか?」
「違いますよ、この三人とギルド婚します」
「えっ結婚するんですか? だけど重婚は出来ませんよ」
「彼女達は聖女と賢者、剣聖だから、複数婚は可能な筈です、これはジョブ特典なので今回の裁きとは関係ありません..まぁ本来は逆に1人のジョブに沢山の人と結婚する為の法律ですが逆も可能な筈です」
「法律は問題ありませんね…だけどセレスさん..何でこんなクズと?花嫁が欲しいなら、幾らでも相手がいるでしょう」
「あのおしゃべりを辞めてさっさと手続きして貰えませんか?」
「はい、知りませんよ…まったく はいどうぞ…」
「それから、彼女達とパーティーを組むので申請をお願いします」
「あのですね…セレスさんはずっとソロですよね? ルシアのギルドで沢山の方からパーティーを申し込まれても断っていたのに何故でしょうか?」
「それ関係あるの?」
「ありませんね…はいギルド証だして下さい」
「「「はい」」」
「さぁ終わったよ行こうか?」
「あの、何をしたの?流されてつい手続きしちゃったけど」
「僕も良く解らないな…」
「説明をお願いしたい」
「そうだね、それじゃゆっくり出来る場所で話をしようか?」
「そうしてくれる」
「うん、ちゃんと説明して」
「頼むよ」
慌ただしく手続きをして再び三人、いや四人はギルドを出て行った。
今夜は眠れない
僕はクリスタルハイアットホテルに来ている。
本当は表から入りたかったけど、彼女達が嫌がるので裏から入った。
「あの、ここ本当に入るの?」
「僕たちは安いホテルで断られるんだよ無理だよ」
「無理だと思うぞ」
「多分、大丈夫..すみません、4人で泊れる部屋空いてますか?」
「空いてますよ…ただ今だと金貨1枚の部屋になりますが宜しいですか?」
「はい」
「あのお連れ様の召し物が..」
「それで裏から入ったんですよ..チップ弾むから彼女達に吊る下げの服を買ってきて欲しいのです」
「どんな物をご用命ですか?」
「旅で着れそうな感じの物を3着位、下着も込で」
「後で部屋に採寸にお伺いします」
「さぁ行こう」
本当に入れちゃった…何で
場末の宿屋でも断られたのに
何でだろう?
「あのさぁ…私達場末の宿屋ですら断られたのよ? 此処は何で泊まれるの」
「多分、それは場末だからだよ…一流は案外相手みて態度を変えたりしないよ、ましてクリスタルハイアットホテルは敵国である帝国の皇帝すら泊めた実績があるんだ..だから大丈夫だと思ったんだ」
「そうなんだ一流なら王都でも僕たちで泊れたんだ…まぁお金が無いから無理だけどね」
「それより、順番にお風呂に入ってきたら? 川よりはいいよ!」
「あはは、あれ聞いていたんだ..そうだね凄く私達汚いから、そうさせて貰うね…そのあと説明してくれるのよね?」
「うん」
「解ったわ」
トントン
「すいません、採寸に来ました」
「ごめん、先に採寸しよう…」
「そうだね」
「うんうん」
「採寸か久しぶりだな」
「それでは採寸..うぷっさせて頂きます」
顔が嫌そうだったが頑張ってくれたのでチップを少し余分に渡した。
現金な物で、明るい顔で彼女は出て行った。
「それじゃ..」
「はい、お先に…」
順番に入ろうと思っていたけど….凄く大きいお風呂だから、三人で入った。
「はぁー見れば見る程絶望だわ、これ」
「僕もそう…何これ「クロード専用性処理便器」ってこれクラリス消せないかな」
「無理よ…消せるなら消しているわ」
「聖女で無理なら無理って事だよね」
「そうね」
「お前らはまだ良いじゃん! 私何か片手、片目だぞ..どうすんだよこれ」
「余りがっかりさせたく無いな」
「僕もそうだよ..」
「暗くするしかないんじゃないか?」
「それで我慢して貰うしかないよね」
「どうかな? もう臭くないかな?」
「僕、歯も磨いたけど、まだ黄ばんでいる気がする」
「仕方ないさ…流石に全部は無理だよ」
「おまたせ」
「はいパジャマ…」
「「「ありがとう」」」
「それで、説明してくれる?」
「そうだね、まず、僕の名前はセレスと申します…」
「それで、私達にどうしてこんなに優しいの?」
「むっ…それは自分で考えて、僕はクラリスやリタやエルザの事ばかり考えていたのに…覚えてないなんて酷いから」
「そう、解ったわ..ちゃんと思い出すよ」
「僕も」
「私も」
「それで、さっきは何をしたの?」
「相互奴隷紋はリタが説明したから良いよね」
「「「うん」」」
「まずはギルド婚と言うのはちゃんとした結婚だよ」
「あの結婚って教会であげるんじゃないの?」
「それもありだけど、ギルドで結婚するという方法があってギルドの方が死んだ時とか遺産の管理が楽なんだよ、例えば僕が死んだら僕の貯金は奥さんであるクラリスやリタやエルザの物になるし…行方不明になった時も連絡が速い..冒険者とかだとこっちを選ぶ人も多いよ」
「それじゃ、あれで結婚した事になるって事?」
「そういう事だよ」
「嘘、もう僕は花嫁さん…そう言う事なんだ」
「うん」
「私もそうなんだな」
「うん」
「花嫁さんか…何だか恥ずかしいわね」
「僕はジョブは魔法騎士だから、花嫁は本来は1人しか貰えない…だけど、勇者のジョブは沢山の花嫁を娶れるし、聖女や剣聖や賢者は1人に纏めて婚姻可能…ただ、これは本来勇者優遇処置だけど、他の人でも可能だから、利用して三人と結婚したんだ 、ただこれは他国だと難しいから急いでこの国で行ったんだ…まぁ結婚しちゃえば、取り消しは無いそういうルールらしいから」
「そうなんだ知らない事ばかりだね」
「魔法ばかりじゃだめだね」
「剣ばかりでもな..知らなかった」
「後は、僕とパーティ組めばBランクパーティーだから、良い仕事が受けられる..これは知っているでしょう」
「うん」
「あーあー疲れて寝ちゃった..本当は新婚初夜なのに..」
「好きって事は、これもするんだよね…だけどこの体に自信がないからホッとしているよ僕」
「私もだ」
「しかし、可愛い寝顔、髪なんてサラサラしていて凄い美形だよねセレスくんは」
「うん、綺麗と言われていた僕でも…役不足かも」
「どう考えても、こんな美少年知っていたら忘れないと思うんだが」
「26歳のおばさん、それだけでもハンデなのに…まったく何でそんなに私が好きなのよ15歳の綺麗な少年が…可笑しいよ」
「それ思い出さないといけなんだよね僕たち」
「こんなに好きなんだ、恋人だったのかな? まさか私達あのクソ野郎にスキルで寝とられたのかな」
「それは違うわよ、記憶はあるもの…もう忘れるけど、あの時好きだったのはスルタンよ」
「そうだよね」
「確かにそうだ」
「直ぐに思い出してあげたいな…だけど解らない」
「頑張って思い出してあげなくちゃね」
「頑張るしかないだろうな」
「うーん…クラリス…リタ…エルザ、好きだよ..結婚して..傍に居て..」
「私もセレスが大好きだよ」
「もう結婚しているのに..僕はもう君の花嫁だよ」
「結婚しているじゃないか好きだよ私も」
セレスが笑った気がした…
三人はせっかくのフカフカの布団で久々に眠ったのに…朝まで眠れなかった
眠れぬ間の考え事。
注意)この作品世界では人族の寿命は60才前後です。
「少し話さない?」
「良いよ、僕から切出そうと思っていた」
セレスが眠ってしまった後、三人は話す事にした。
少しでも早く、「思い出してあげる事」それが彼のしてくれた事への恩返しになる。
そう考えたから…
「あのさぁ…私どうしてもセレスの事が解らないのよ」
「僕も解らないんだ…こんな優しい人僕たちの周りに居た? 絶対居ないよね?」
「私もそう思う…居ると知っていたら、最初から頼った筈だよな」
幾ら考えても思い出せない。
「いきなり結婚を申し込む位、好きなんだから理由はある筈よね? しかもこんな、それこそゴミみたいな状態なのに」
「最初は僕たちを馬鹿にしてからかっているそう思っていたよ…自分の寿命まで削るんだから、絶対に嘘じゃ無いし、幾ら考えても解かんない!」
「大体、昔の私達なら兎も角、今の私達は厄介者なんだからわざわざ背負い込む馬鹿も居ないだろうしな」
「そもそも、私達が問題がなく成功者だとしても可笑しいのよ! 聖女だとしてもよ…綺麗だとしてもよ! 26歳なのよ…絶対、成人したての15歳の子と結婚したら、お金でなびかせたとか言われるんじゃないの…正直言って年齢的にも、「おばさん」とか「無理している」そういう年齢じゃないの?」
「そうだよね、僕はアカデミー出身だからね、同じようなパターンで「教え子に手を出した」教師が凄い言われ方していたの知っているよ」
「だけど、逆なんだよな…26歳、ほぼ無職の我々にセレスがお金を出して結婚、それが真実だからね」
「しかも、この子…凄い美形だよね? 別に私が好きで、親切にされて結婚までしてくれたから、贔屓目でそう見えている、そう言う訳じゃないよね?」
「うん、僕から見ても美形だと思う…僕のドストライク、しかもギルドでのあの受付の反応、かなりモテルと思う…パーティーメンバーとしても男の子としてもね」
「15歳でBランク、どう考えても優秀だろう? ジョブも魔法剣士、それだけでも優良物件だよ」
「確かに、そうだわね…だいたい15歳なら成人して直ぐじゃない? それでBランクなんて考えて見たら凄すぎるわ」
「勇者パーティーの僕たちでも15歳の時は多分、Bランクじゃ無かった気がする」
「まぁ勇者パーティーだからランクを気にしてないからうろ覚えだけど」
「だけどさぁ、何時私達を好きになったのかな?」
「少なくとも最近では無い筈だよ…僕たちは魅了で悪党の手先で恥知らず…あんな子に好かれる筈は無いよ..」
「そうだな…思い出してもおぞましい記憶だからな」
「今は15歳…そう考えたら、そう昔でも無い筈よね?」
「そうだよね、5年前だと10歳…その頃は…あれっもう僕は悪党の手先で、凄く破廉恥だった」
「そうだな…可笑しい」
「少なくともかなり長い時間…好きだった、それは間違いないよね」
「うん、それは間違いなさそう」
「ずうっと好きでいてくれた…理由は解らないけど、その結果が今の私達の救いに繋がっている」
結局、三人で幾ら考えても、セレスの事が思い出せなかった。
着替えと99点
「結局、眠れなかったね…」
「仕方ないよ…僕も同じだよあはははっ」
「私も…」
「おはよう…大丈夫? 目に隈が出来ているけど?」
「久しぶりのベッドだから寝苦して眠れなかっただけだから大丈夫よ」
「うん、僕も同じ」
「私も同じだな」
一晩中、セレスの事を考えていて眠れなかっただけだから…
「それなら良かった」
「それで今日はどうするのかな?」
「そうだね、ここでモーニングを食べてから…取り敢えずは隣町を目指そうよ、そこから、ルシアに行かない? 田舎だけど僕の家があるから、そこで暫くゆっくりしようよ」
「私達は行くところが無いからセレスの提案で良いよ、リタもエルザも良いよね?」
「僕も無いからね…旦那様について行くよ」
「旦那様か…そうだな、そう言えば花嫁なんだ私も、任せるよ」
「新しい服もあるし、古い服は処分しても良いよね!」
「セレス、恥ずかしいからそれ触らないで」
「大丈夫だよ…カゴを外に出しておくだけだからさぁ」
「うわぁ…一番上僕のじゃないか..見た、見たよね?」
「ごめん…」
凄い恥ずかしいよ…あんな臭くて汚い下着を見られる何て..僕もうお嫁にいけないよ..あっもういっているんだ..
「ううっ…仕方ないよ..うん」
「あのさぁ、リタは気にしすぎだよ!もう夫婦なんだから!これから先一緒に暮らすんだから…多分お互いもっと恥ずかしい所を見ると思うよ」
「うん、そうだよね…あははは気にしても仕方ないよね..うん」
「うわぁー久しぶり、新品の服なんて、ありがとうセイル」
「どう致しまして」
「うん、久しぶりだよ僕、綺麗な服着るのは、ありがとうセイル」
「あっゴメン…エルザ、今着替えさせてあげるよ…気が付かなくてごめん..」
「だだだ、大丈夫だ..うん、本当に平気だよ」
「気にしないで…良いよ?」
「本当に平気だから…そうだ、リタ手伝ってくれなぁ…」
ごめんね…僕、君を踏み台にするよ…
「そうだ、クラリス、ちょっと話があるんだけど良いかな? エルザごめん」
「ええ..良いわ」
二人して隣室に逃げるように行きやがった…くそ、私を踏み台にする気だな。
しかも、あの僅かに空いている扉…覗いているに違いない…
「もう結婚までしたんだから肌を晒しても問題ないでしょう?」
「そうだよな…うん解ったよ…だけど私はセイルに..まぁ良いやお願いする」
「うん」
「なぁ..私は片手も無いし、目だって一つ無いんだ」
「だから?」
「体だって、多分セレスが思っているより汚いんだよ…」
「だから何?」
「良いや、見てみれば良いよ…」
「うん、確かに酷い傷だね…」
「見られたくなかったんだ..これ」
「確かに減点だよ…」
「あははは、そうだな、こんな体」
「目も片手も無いから1点減点..」
「何だ、それ…?」
「うん、だーかーら僕はエルザが大好きなんだよ? 多分君が思っている何倍もね..傷があるから何? 目が片方無くて片手だから何?そんなの減点1しかないよ? だから99点..他は好きで好きで好きでしょうがないんだからね」
真顔でそんな事言うなよ…はっ恥ずかしくなるじゃないか..
「100点ではないんだな…」
「もう、僕の世界に100点はいません…僕の100点はこうなる前のクラリス、リタ、エルザだから、最高点は99点なんだ」
「そうか、私は最高なんだな…」
「そうだよ三人が同率1番…二番手は思いっきり下がって、女神イシュタス様で60点かな」
「おい」
美の女神より私は上なのか…セレスの中では..ふふっ
「三番手は、帝国の真珠ユリアーナ様で38点」
おい、その人は傾国の美女と言われているでじゃないか…世界一の美女が38点で私が99点か…ふふふっ
「セイルは本当に私が好きなんだな…何でそんなに好きなんだ?」
「言われても困るよ…好きだからとしか言えないよ…それに、それは僕の事を思い出してくれれば解ると思うから教えてあげない」
「そうなのか?」
「酷いな…本当に僕は、今迄三人の事を忘れた事は無かったのに…まぁ良いや、次の街に着くまでに解らなかったら教えてあげるよ…はい終わった」
「ありがとう..セイル、そうだ、本当にセイルは私の事が好きなんだよな?」
「うん」
「だったら、ほら! お礼にハグしてやるよ..きな」
「ありがとう…何だか凄く得した気分」
凄いな、セイルは若いけど凄く鍛えた体しているじゃないか?
よく此処まで鍛えたもんだな…それに良い匂いがする。
あれっ..
「おい、セイル顔が真っ赤だぞ..」
「あのさぁ大好きな人に抱きつかれたら誰でもそうなると思うんだけどな…エルザも真っ赤だよ」
「ああ、そうだな..」
面白くない…あそこ迄..イチャイチャするんて
「セイル、僕もセイルが大好きだから…抱きしめてあげるね」
「私も同じよ…うんセイルって良い匂いがするね」
「ああ、ありがとう…凄く嬉しい」
「そう、私、何かに抱きしめられて嬉しいんだ」
「僕でも、セイルを喜ばせる事ができるんだね」
「おい狡いぞ..あとから来てこれは」
「嬉しいに決まっているよ…好きな人と抱き合って嬉しくない訳ないでしょう」
「「「そうだね」」」
だけどね、セイル…本当に嬉しいのは私達だから….うん幸せ。
同じ道を笑顔で
ホテルでモーニングをルームサービスで頼んだ。
あの様子じゃ暫く食べていないだろうから、胃に優しい物という注文をつけて。
僕はやっぱり気が利かないのかも知れないと少し自己嫌悪に落ちた。
あの様子じゃ暫く、何も食べていなかったんじゃないか…
それなのに、会えたことに感動して..食事を忘れてしまった。
「ごめん、会えた事に感動して、食事を忘れていたね」
「うん、だけどそれは私達も同じだよ、セレスに会ってから驚きっぱなしで忘れていたわ」
「僕なんか死ぬ程お腹が空いていたのに…うん何でだろう? 気にならなかったな…」
「本当にな! この間まではお腹が鳴っていたのに、多分セレスと居ると楽しいからじゃないか?」
「そう言って貰えると助かるよ! さっきモーニングをルームサービスで頼んで置いたよ…そろそろ届くと思う」
「食事…お恥ずかしい話、真面な食事なんて、本当に久しぶりです…ありがとうセレス」
「僕も楽しみだな…有難うセレス」
「あはははっ思い出したらお腹が鳴りだした」
届いた朝食は、リゾットに果物に卵料理にスープ…うん理想的だ。
「最初は軽い物にしたよ? もし胃がもたれたりしなければ、お昼はちゃんとした物にするからね」
「「「ありがとう」」」
「リゾットかぁ、確かに今の私達には一番良いかもね」
「そうだね、確かに脂っこい物は受け付けないかも」
「私のは食べやすい様にフルーツがカットしてある…ありがとうセイル」
「こうしてもう一度皆でご飯が食べれるなんて..凄く嬉しいな…あの時も..」
「あの、私達、セイルとご飯食べた事があったの?」
「うん、あったよ…」
「そうだったんだ..何時だろう?」
「そうだったのか…そんなに私と食事をするのが嬉しいのか!」
「うん、当たり前でしょう、だって…今は内緒だよ」
「本当にセレスは内緒が多いよね? どうしてかな?」
「僕もそう思う…もう夫婦なんだから話してくれても良いんじゃない?」
「私もそう思うぞ」
「そうだね…結構長い話になるから、エルザにも言った通り、隣町で今夜でも話すよ!」
「それで、ようやく、セレスの事が解るのね…うん楽しみ」
「僕も、なんでこんな僕と結婚してくれたかも解るんだよね?」
「どういう経緯か解るのか…うん楽しみだ」
「それじゃ食べ終わったら、早速、出かけよう! 急げば夕方にはたどり着けるからね!」
「「「うん」」」
セレスがチェックアウトすると直ぐに王都から旅立った。
まだ、朝早いから街はまばらで人は居ない。
「これも多分セレスが気を使ってくれたんだよね」
「朝早いから人が居ないから、嫌な視線も無い…そうだね」
「たぶん、こういうのを「思いやり」っていうんだ…まぁ今迄は無縁だったな」
「どうしたんだ、クラリス複雑な顔をして」
「いや、私達、この間は此処を凄く悲しい気持ちで歩いていたわよね…あの時は景色を見る余裕なんて無かったわ」
「そうだね…余裕なんて僕たちは無かったよ」
「それがさぁ、今は、同じ道なのに全然違って見えるのよ…花は咲いて綺麗だし、気のせいか空気も美味しい」
「そりゃ、そうだよ! あの時は臭い服を着て、ホームレスみたいだったんだからさぁ」
「確かにそうだな」
「まぁ、そういう事じゃ、無いんだけどまぁ良いわ…そうだ、じゃんけんしようか?」
「じゃんけん? 随分唐突だね…まぁ良いけどさぁ」
「ああ良いけど?何かあるのか?」
「良いからさぁ…まぁ良いじゃない? 行くわよ、じゃんけん..ぽん」
「「じゃんけんぽん」」
「クラリス…これ何か理由があるの?」
「うふふ、まだ内緒よ、内緒!」
「お前迄、セレスと同じで内緒..」
「うふふっこれも今夜解るわ..」
「まぁ良いや…僕の楽しみが2つに増えたという事で良いのかな?」
「まぁ良い、夜まで待つとしよう」
「さぁ行こうか!」
「「「はい」」」
彼女達は絶望感で歩いていた道を今度は笑顔で歩いて行く。
これも魅了…
隣町のメルダを目指して歩いた。
クラリス達の会った時の状態や会話から考えるとかなり王都では迫害されていたのが解る。
会った時は本当に腐った魚の様な絶望した様な目をしていた。
だけど、「勇者パーティー」だけあって心が強いのかも知れない。
少しづつだけど、僕が大好きだった三人に戻っていくのが解る。
だけど…
「ごめんなさい…私錆びついちゃったみたい」
「僕も、何故だかファイヤーボールしか打てなくてしかもゴブリンも死なないなんて..あははは」
「やはり片目、片腕だと思う様にいかないな…」
街道沿いで魔物に襲われたせいで、折角の笑顔がまた曇りだした。
此処まで壊れているなんて知らなかった…だから任せたんだ。
僕はやはり..駄目駄目だ。
顔はなんとか笑っているけど多分心は泣いている、少なくとも僕にはそう見えた。
「余り、言いたくは無いけど仕方ないよ…魅了とか洗脳は心が壊される、だから、戦えただけでも立派だよ」
「だけど、私は聖女だったのよ…魔王相手ににも戦った…それなのに」
「僕は賢者だよ…強大な魔法で魔王すら追い込んだ」
「私だって剣を持てば、誰にも負ける気はしない…そうだったんだ」
「多分いつかは戦えるようになるよ…僕が手助けするよ! だけど、それでももし戦えるように成らなかったら別の事を頑張れば良いんだよ…普通の奥さんとしてね…大体普通の奥さんは冒険者でもない限り旦那に守られているんだから…」
「そうね…もう魔王も居ないし、聖女でいる必要はないわ、よく考えたらもう人妻なんだから「乙女」とか言うのも無理はあるもの」
「僕もそうだ…賢者じゃなくて良い筈だよね…奥さん、あはははっうん今度は魔法じゃ無くて料理でも覚えようかな」
「私もそうだな、出来る事から頑張るよ…だけど、それでセイルは良いの?」
「勿論、クラリス達が凄すぎたから頼りなく見えるかも知れないけど…僕だってB級だよ? D級位で1人前と言われていて子供がいる人もいるんだ、三人を養う位余裕だって」
「それで良いならよいわ…本当にごめんね…暫くは自分で出来る別の事から頑張るわ」
「うん、僕もそうするよ」
「私も悪いけど、そうするしか無いない」
「それで充分だよ! だって僕は三人と一緒に居られるだけで幸せなんだからさぁ!」
「「「うっ!」」」
「どうしたの?赤い顔して!」
「あのね..その、そんな事言われたら、赤く成らないわけ無いわよ」
「僕だってさぁ…そう思うよ…うん」
「男女なんて言われる私だって同じだ」
「そう…だけど本当の事だから…」
魅了のスキルより、セレスの笑顔の方が遙かに強力なんじゃないかな…
僕もそう思うな…
これ、魅了じゃないよな….
だけどさぁ…思わない?
僕も多分、同じ事を考えていると思う。
多分、同じだな…
こんな魅了なら嫌じゃない…
本当にそう思うわ。
リング
隣町のルダに来た。
「思ったより早く着いたわね」
「僕たち足だけは丈夫だね」
「足だけなのが残念だけどな」
「まだ時間はあるから、何か見たい物はない?」
「うーん、思いつかないわ」
「僕も無いかな?」
「私も無いな…」
「そう、それじゃ貴金属店に付き合ってくれないかな?」
「貴金属店?へえーセレス、そういう物に興味あるんだ」
「別に無いけど、今日限定ならあるよ!」
「まぁ暇だから良いんじゃないかな?」
「そうだな」
「じゃぁ、決まりだね!」
王都じゃない…それだけで意外にも周りの人間は気が付かない。
奴隷商が嫌味を込めて首筋の目立つ所に奴隷紋を刻んだ、それが更に良かった。
今の4人は、駆け出しのボンボンの冒険者が戦闘用の女奴隷を連れているように見える。
無罪になった彼女達が奴隷紋が刻まれているとは誰も思わないだろう。
「すみません、指輪を見せて下さい」
「指輪ですか? どういった用途の物をお望みですか?」
「普段使いに使える結婚指輪で同じデザインで4つある物はありますか?」
結婚指輪って何だと思います?
僕も解らないよ魔法以外は専門外だよ…エルザは?
剣しか知らない私がしるわけ無いだろう?
「4つ同じデザインのリングですか?…1セットだけ御座います」
僕は、そのリングを見せて貰った。
銀で出来ていて、飾りも殆ど無く横線が4本あるだけのリング。
普段からつけているならこういうリングが良いだろう。
「それで、これでお幾らでしょうか?」
「銀貨8枚です」
「お手頃なんですね」
「貴族の方が側室たちにと、作った物ですが本妻の方にバレて購入して貰えませんでした…その為、サービスしております」
「それじゃ、これを下さい」
「そのお連れ様とと言う事で宜しいのですか?」
「はい」
「それじゃ、寸法合わせしますので暫くお待ちください」
「あの、結婚指輪って…何でしょうか?」
お揃いの物を身に着ける、そう言う風習は、貴族や上位冒険者の間で流行っている。
特にギルド婚をした場合は多い。
お揃いの武器や、お揃いの腕輪をつける者も多いが、一番の人気は指輪だ。
小さくて邪魔にならないのと、娼婦の恋物語という物語に由来する。
娼婦の恋物語とは、若い騎士に惚れた娼婦が主人公で、莫大な借金に捕らわれ娼館を辞めれない彼女が、戦に赴く騎士に自分の分身として左手薬指を噛切って渡す、そういう物語だ。
薬指にお互いが付ける事で自分を捧げる…そういう意味をなす。
ちなみにこの物語の最後は、騎士は大きな手柄をたてその報奨金で彼女を身請けするハッピーエンドだ。
その話しを端折って彼女達に伝えた。
「セレス…本当にありがとう….私いま思えば異性の方に何か貰った事なんて無かったわ」
「僕も…小さい頃お父さんに本を買って貰った位しか無いよ…ありがとう」
「言われてみれば、私も無い…ありがとう」
「どう致しまして…と言うかこれは僕がやりたかった事だから、僕の方こそ有難う」
「いえ、これ、私の一生の宝物にしますね」
「僕も一生大切にするよ」
「私も大切にするぞ」
「僕にとってもこのリングは宝物だよ…うん」
「あの、感動の所申し訳ありませんが、お会計お願いして宜しいでしょうか?」
「あっスイマセン」
お会計を済ますと、そそくさとお店を後にした。
簡単に食事をして、その後は、表通りの宿屋に宿をとった。
「今日は二部屋とって頂けますか?」
クラリスに勧められて今回は二部屋とった。
結局、僕の事は三人に気が付いて貰えなかった。
だけど、昔の事だから忘れられていても仕方ない..ちょっと寂しいけどね。
セレスの過去…出会い
宿屋について一休みした。
だけど、三人ともソワソワしている。
結局は僕の事は思い出して貰えなかった。
話しが聞きたい…目がそう語っている。
「やっぱり、思い出して貰えなかったか…ちょっと残念…」
「セレス、ごめんなさい…どうしても思い出せなかったわ、だけど私、貴方みたいな素敵な人と出会っていたなら忘れないと思うのよ」
「僕もそうだよ? もしこんな親切な人に出会えていたなら絶対に忘れない筈なんだけどな」
「私もそうだ…私は物忘れしない方なんだがな、どうしても思い出せないんだ」
「そうだね、僕にとって三人は初恋で、命の恩人で、そう憧れの人だった、女神様以上の存在だったんだ」
「ははは、初恋? 私がそうなの!」
「そうだよ」
「確かに、聖女でしたからそれなりにモテていた記憶はありますが、邪な者ばかりでセレスのような方は居なかったと思います」
「憧れの人…僕がセレスの…あの僕…告白とかされたのかな? 本当に記憶がないよ」
「したし、返事も貰ったよ」
「本当に? うーん記憶にないよ..僕が君みたいな人に告白なんてされていたら、絶対に忘れない自信があるんだけどな」
「命の恩人で、女神様以上..そこまで思われた記憶は無いんだ…確かに誰かを助けた記憶は沢山あるけど、私は告白の記憶がない」
「ちゃんとしたし、返事も貰ったよ」
「二人は兎も角、言ってて悲しいが私は男受けしない、告白なんて事されたら覚えていると思うんだ…間違いじゃないのか?」
「間違いじゃないよ..」
「仕方ないかあの時の僕は子供だったし…僕は一度も10年間、三人の事を忘れた事は無いよ…」
セイルは私達との出会いを語り始めた。
「助けて下さい、村が襲われているんです…誰か助けて下さい」
「僕、お金はあるのかな? 此処は冒険者ギルドだから助けて貰うにはお金が要るんだよ?」
「これしか無いんです..」
「銀貨5枚…それで一体何から助けるの? ゴブリン位なら行ってくれる人もいると思うけど..」
「オーガ…です」
「オーガですか? それは無理ですよ、村を襲ったオーガって何体なのですか?」
「5体は居ると思います」
「オーガ5体ですか? オーガは狂暴で簡単には狩れません、D級冒険者数人での依頼です、1人ならそれこそB級の依頼です…最低でも金貨5枚いや10枚位出さなければ依頼は受けれません」
「そうですか? そうだ、今はこれしかありませんが…働いて、一生働いてお金は払いますから」
「お気の毒が無理です」
「だったら、僕を奴隷として売って下さい…それなら」
「お気の毒ですが、それでも無理ですよ、子供なんて売っても金貨1枚~2枚ですよ…諦めて下さい」
諦められるわけない。
僕を逃がす為に父さんが死んだ…他の村人たちも何時まで生きているか解らない。
母さんも…
「誰か、お願いします、何でもします..だからお願いです、助けて下さい」
「ごめんね…僕、私、E級の駆け出しだから…ゴブリンなら行ってやったんだけど」
「おじさん強そうだ…何でもします、助けて」
「ごめんな俺はD級なんだ1人でオーガは無理だ」
本来は直接冒険者に依頼をする事は違反だ…これを見逃す..それがこのギルドの善意だったのかも知れない。
「おい、坊主、今ここに居るのは、さっき声かけたD級の男が最上位だ…つまりオーガを狩れるような奴は此処には居ない…諦めな」
助けられる人は居ない…だから此処に居ても仕方ない。
憲兵所に行っても、騎士団に行っても門前払いだった。
「誰でも良い…助けて下さい..村を助けて下さい…何でもしますから…」
「本当になんでもするの?」
「はい、助けてくれるなら、何でもします…」
「そうか、そうか、それならお姉さんが達が助けてあげるよ!」
「助けてくれるの?」
「うん、うん僕たちに任せて…オーガ何て僕たちが、ちゃっちゃと倒してあげるよ」
「おう、オーガ何て私の剣に掛かれば肉塊だやっつけちゃうから安心しな!」
「ありがとう、ありがとうございます!」
「思ったより遠いんですね..」
これじゃ、もう間に合わないんじゃなかな。
「すみません」
「うん? 君が謝る事じゃ無いよ? 寧ろこれだけ遠い距離を良く歩いてきたね」
「頑張ったんだな、偉いぞ」
「ありがとう御座います」
急いで村に来たのに…村は全滅していた…
「嘘…僕は、僕は間に合わなかったんだ…うわぁぁぁぁぁん…お母さん」
「おい、こら危ないぞ…」
「お母さん…嘘だ、嘘だ…」
目の前に契られて上半身だけになった母さんが転がっていた。
「目を瞑りなさい..ほら」
「お母さん、お母さん、お母さんーーっ!」
「辛い事言うわよ?もうお母さんは居ない…この状態からじゃ幾ら私でも何も出来ない」
「お姉ちゃん…」
「そうだね、僕も何も出来ない」
「私もな」
「だけど、私は君の涙を見たくない…男の子でしょう? 今は泣き止んで」
「その代わり、僕たちがお母さんや村人の敵をとってあげる」
「それしか出来ない…だが、それで泣き止んで欲しい…それにまだ、敵の前だ..泣くなら後だ」
「ひくっひくっ…敵の前?」
「これだけの食糧があるのにオーガが去るなんてある訳ないわ」
「ほうら、あそこにも、ここにも居るね」
「ああ、凄いな30は居る…そして彼奴はオーガジェネラル..群れだな」
ガルルルルルッ…近くから唸り声がこだまする。
「あああああっ、ごめんなさい…こんな数のオーガ..お姉ちゃん達が死んじゃう」
「ふぅ…敵をとってやるそう言っただろう? 私の名前はエルザ、剣聖エルザだこんな奴直ぐに殺してやるよ..行くよ、クラリス少年を頼んだよ」
「はいはい任されましたよ」
凄い、あの化け物のようなオーガがまるで紙を斬るように真っ二つ…凄い。
「あーあっ何を恰好つけているのかな…全くもう、脳筋なんだから..泣き止んだね! 君は偉いよ..僕がやっつけちゃうから、僕の名はリタ、賢者リタ…それじゃ行くよ…賢者たる..僕の名で唱える…炎よ敵を全て焼き尽くせ…極大炎呪文インフェルノ」
あの、オーガが片っ端から焼き尽くされていく…凄い、これが魔王と戦う剣聖様、賢者様。
本来なら残酷な光景なのに僕の目にはその姿が、まるで戦女神みたいに見えたんだ。
「綺麗…」
「僕が? そうかぁ僕、綺麗なんだなら僕頑張っちゃうよ…凍てつく氷よ全てを凍てつかせろ..極大凍結呪文ヒャード」
あの、オーガがまるで玩具みたいだ…
「中二病まるだしね…まぁあの二人が要るんだから此処までは来ないわね..だけど念の為、ホーリーウオールと」
「ホーリーウオール?」
「あはは言って無かったわね、お姉ちゃんは聖女なのよ、聖女クラリス…それが私の名前よ、そう言えば少年の名前は?」
「すみません、名乗り忘れていて、セレス、セレスです!」
「そう、良い名前ね..あっもう終わっちゃったみたいよ…ほら..」
「オーガジェネラルがあんな簡単に」
これが世界を救う「聖女様」「賢者様」「剣聖様」に初めて出会った時の話。
この時の僕には本当に女神の様に見えたんだ。
セレスの過去…セレスのお嫁さん
「そうか! あの時の男の子がセレスだったんだ」
「ごめん…よく考えたらセレスって15歳だもんね…うん、少し前は考えてみれば子供だよね」
「あの時の少年…だけど随分と雰囲気が違うような気もするが」
「ようやく気が付いてくれたんだ…だったら約束も思い出してくれた?」
「約束?…えーと…何かしたかな?」
「クラリス、酷いよ…僕は思い出したよ、そうか、そうだよね! だから結婚してくれたんだ、ありがとうセイル!」
「おい…私も、そうかアレの事だな、本当にごめん、ようやく思い出したよ!」
「ありがとう…お姉ちゃん、敵を討ってくれて…」
「それで、どうしようか?」
「村は全滅、生き残りも居ない…流石に置いていけないよね?」
「私は連れていきたいが、クロードが許してくれないだろうな」
「本当に勇者の癖に老人や子供が嫌いなんだから、可笑しいわよ、彼奴」
「だけどリーダーだし、逆らえないよ…多分1か月もしないで戻ってくるよ」
「まぁな…まぁ彼奴の事だから、遊び惚けているだろうが、その位が妥当だろう」
「お姉ちゃん…僕なら大丈夫だよ、ほら教会に行けば多分孤児として…受け入れてくれるよ…気にしないで大丈夫だから」
「大丈夫じゃ無いでしょう? 私は聖女なんだから、任せて何か考えるからさぁ」
「クロードが帰ってくる迄の間は、一緒に居るとしても、そこからは無理だよ」
「1か月かぁ…最後は教会に預けるとしても何かしてあげたいな」
「セレスくんは将来成りたい物はある?」
「僕は…冒険者になりたい、お姉ちゃん達みたいに弱い人を助けられるようなカッコ良い人になりたい…」
「そう、僕はカッコ良いんだね…だったら僕が魔法を教えてあげるよ! 絶対に冒険者になるのなら役にたつよ」
「ならお姉ちゃんは回復魔法を教えてあげるね」
「だったら私は剣を教えてあげるよ」
「良いの?」
「「「うん、任せて」」」
そうだ、思い出した…家族が亡くなって死ぬ程辛い筈なのに無理して笑っていたから気になったのよね。
それが気になって、何かしてあげたくて、魔法の手ほどきをしてあげたんだ。
私は剣を教えてあげた。
「思い出してくれた?」
「うん、思い出した、私はセレスと昔会っていた…うん」
「僕は全部思い出したよ…あの時の約束、だから迎えにきてくれたんだね…ありがとう..」
「うん、確かに約束した…思い出した…そうか、セレスは本当に良い男になったんだな..」
「そこからの1か月が僕にとっての凄く幸せな時間だったんだ…毎日が楽しくて、直ぐに悲しい事なんて忘れちゃったよ」
「思い出したよ、うんあの1か月は、私も凄く楽しかったのは覚えているよ、まるで弟ができたみたいでさぁ」
「クラリス…まだ完全に思い出して無いんじゃないかな?弟は無いよ…」
「これは絶対、思い出して無いな…」
「どうしたの? 何かあったのかな…」
「あちゃ~やっぱり思い出して無いよ…」
「本当に忘れたのなら…クラリスが気の毒だ」
「えっ..私?」
「1か月で沢山の事を教わったよ! 簡単な魔法と剣が使えるようにしてくれたんだ…覚えているよね?」
そういえば、たった1か月でヒールを覚えたのには驚いたな。
うんうん、まさかファイヤーボールまで覚えるなんて思いもしなかった。
ゴブリン位は狩れるようになっていたな。
「だから、教会に行かないで直ぐに、冒険者になれたんだよ、「聖女」「賢者」「剣聖」のお墨付きだから特例で年齢制限なしで、しかも10歳までの5年間ギルドホームに住む権利まで貰えたんだ」
「それは私達のお陰じゃ無いよ? セレスが優秀だからだよ」
「うん、僕たちがしたのは「年齢制限無視して試験を受けさせてくれ」そういう手紙を書いただけだよ…受かったのはセレスの実力だよ」
「ゴブリンが狩れて、薬草の採集位は余裕でこなす能力があったから推薦した…全部セレスが自分で掴み取った物だよ」
「うん、だけど、「聖女」に「賢者」に「剣聖」の三人から指導を受けた子供なんて居ないんだから、僕は恵まれていたんだと思う…そんなに優しくてくれた人は両親しか居ない…だから、僕は三人に恋をしたんだ…本気でね」
「うん、ごめんなさい…私も今、全部思い出したよ」
「僕は、とっくに思い出していたけどね!」
「私は…あははよく考えたら、セレスからしか告白なんてされた事はなかったな」
「おおお…大きくなったらお嫁さんになって下さい!」
「ごめんね、セレスそれは出来ないよ…男の子として告白してきたんだから真剣に答えるよ! 私は聖女だから勇者のお嫁さんになるのが決まっているんだよ…ごめんね」
「僕も同じなんだ、賢者だからね…だけどセレスくんは綺麗だから直ぐに良い人に会えるよ」
「わわわ、私は凄く嬉しい、だけどこれは運命だから曲げられないんだ…ごめん」
「うん、解っているよ..だけど僕..こんなに好きになったの初めてで..女々しいと言われるかも知れないけど..」
「女々しいなんて思わないよ..」
「うん思わないよ」
「もう最後なんだから、何でも聞くから..最後まで言いな、男だろう」
「もし、勇者様と結婚しなかったら…僕のお嫁さんになって下さい!」
「そうね、うん…もし私がクロードと結婚しなかったら、セレスのお嫁さんになってあげるよ」
「僕も約束するよ…クロードなんかよりセレスの方が余程良い男だもん…」
「私も同じだ「剣聖」じゃ無かったらセレスのお嫁さんになりたい…本当にそう思う」
「それじゃ約束だよ…僕頑張るから、頑張ってカッコ良い大人になるから…その時に勇者のお嫁さんになって無かったら…僕のお嫁さんになって下さい!」
「うん、約束するよ…もしセレスが大人になって、その時に私がクロードと結婚して無かったら…セレスのお嫁さんになってあげる」
「僕も、約束するよ…本当は僕はその方が良いんだけどね」
「私も約束するよ」
思い出したわ…完全に…これから1人で生きていくセレスを少しでも元気づけたくてそう言っていた。
僕はクロードが嫌いだから、あの時本当に心が揺さぶられた気がした。
私の目を見て真剣に告白されたのは後にも先にもセレスだけだったな…
「僕は10年間一度も忘れた事は無かったよ…何時も気にしていたんだ…」
「あの、それなら…嫌な話も沢山聞いたんじゃないの?」
「最低な噂、沢山聞いたよね..」
「幾ら魅了されていても…」
「うん…凄く沢山聞いた! 気になって様子を見に行った時にキスをしているクラリスを見て涙が止まらなくなったよ…」
「何だかごめん…あの時は..」
「うん、大丈夫だよ…魅了のせいだって今はもう解っているし、だけど、あの時の僕はまだチャンスがあると思って嬉しいとも思っていたよ」
「何で? 多分、僕たちの噂って酷い物しかない無かったと思うよ」
「20歳過ぎても結婚してないから、まだチャンスがあるそう思っていたんだ!僕も酷い男だよね…」
「そんな事無いよ…10年も思っていてくれたなんて、本当にありがとう..私、こんなだけどセレスのお嫁さんになれて凄く嬉しいよ」
「僕もそう…10年も思い続けてくれてありがとう…大好きだよ」
「私も..うんセレスが大好きだ…腕も片方無いしポンコツだけど、剣と忠誠も捧げさせて貰う..」
「ありがとう…好きだって言って貰えて凄く嬉しい…本当にありがとう」
この日、本当の意味で4人は夫婦となった。
夜伽への道
今はセレスにはお願いしてもう一つの部屋に行って貰っている。
何を勘違いしたのか…
「そうだよね、偶には女の子同士で話したい事もあるよね」って
少し寂しそうにしていたけど…仕方ないよ…だってこれは流石に男の子の前では話せない話をしなくちゃならないんだから。
「はぁ~凄いよね、初恋から10年ずっと思い続けてくれていたんだよ? もう少し早く何とかなれば良かったのに」
「それは無理だわ…確かに20歳で娶ってくれなければ他に伴侶を探しても問題ないけど…結婚しない状態で、魅了で弄ばれていたんだから無理だわ」
「そうだろうな…しかし、本来なら勇者パーティーの結婚式を20歳までにあげない時点で国が文句言わないのも可笑しい、あの時点じゃまだ勇者の権力もしっかりあったという事だろうな」
「あのクズの事だから、下手すれば僕たちをセレスの前で犯してたかもしれないね…もう僕はクロードと呼ばない…これからはクズとしか呼ばないよ」
「あの、その前に言うけどさぁ…私達が20歳の時はまだセレスは9歳だよ…年齢的に問題があるわよ」
「そうかな? 僕はもし魅了が解けていたら、9歳のセレスについて行った可能性はあるよ?」
「やはり、リタはそのけがあったのね…良い、それは犯罪よ、犯罪…」
「お前、それは不味いだろう」
「二人とも不純すぎ…姉弟みたいに寄り添って暮らすのが何が悪いの?」
「ああ、そう言う事ね..うん」
「はははっそう言う事か」
「だけど、何時しか、強くて頭が良い姉に惹かれた弟は…姉を好きになりとうとう一線を越えてしまう…ロマンスだね」
「やっぱりそうじゃない…この変態ショタコン」
「本物だったのか…」
「そういう冗談は置いて置いて…これからは真剣な話をするわ」
「どうしたの急に真面目になって」
「何か相談があるのか?」
「新婚初夜…どうする?」
「それは、うんそうだね、話し合わないとね…」
「あーあー確かに考えないとな…」
「セレスも15歳なんだから、幾ら優しくて王子様みたいでも絶対に性欲はあると思うのよ…違うかな?」
「そりゃ、あるに決まっているよ…あのクズの様子を思い出せば解るよね」
「ああ…他の男もニヤニヤして見ていて気持ち悪かった…多分私達が「三職(聖女、賢者、剣聖)」でなければ他の男にも犯されていたかも知れないな」
「それでね、聞きたいんだけど…あの、その、この中で、その性処理が嫌いじゃない人居る…私は正直言うなら大嫌いよ」
「僕だって酷い事されていたんだから…好きじゃ無いよ…だけど相手がセレスなら我慢できると思う」
「私も同じだな…10年も好きで居てくれたんだ…相手位できるさ」
「あのさぁ…やっぱり可笑しいのよ私達…本当なら大好きな相手に抱かれるんだから普通は「嬉しい」が正解だわ…だけど散々弄ばれたから…ああいう行為その物が嫌いになっているのよ…違うかな?」
「確かに、10年も思ってくれていたセレスに..不誠実かも知れないね…だけど、今迄が酷かったから…この年齢なのに少し怖いんだ」
「私もそうだ…苦痛ばかりで良い思い出がない…仕方ないんじゃないか?」
「そうね、だからこそ、出来るだけ、そう言う気持ちが解らない様にする努力が必要だと思わない?」
「そうだね…うん、そうしなくちゃね…」
「確かに気をつけないとな…うん」
「次はこの体よ..ナイフで刻まれた卑猥な言葉に傷..酷い何て物じゃ無いわよ! スラムの娼婦の方がまだましで…スラムの人間でも犯したくない程酷いのよ…これでしなくちゃいけないの…」
「だけど、聖女のクラリスでも治せないんなら仕方ないじゃん…はっきり言ってしまえば、性処理奴隷としても売れない程酷いけど…穴は普通だから暗くして我慢して貰うしかない無いんじゃない」
「多分、セレスも覚悟はしていると思う..ほら私の着替えをした時に見えたと思うからな…だけど明るい所で見せる度胸は無いな」
「ねぇ…こんな汚い体でセレスの相手しなくちゃいけないのよ…嫌われないかな? 今から不安でしょうがないのよ…」
「それは僕も同じだけど…仕方ないよ…もしそれが元で嫌いになるなら….悲しいけど僕は出て行くしかない..」
「二人はまだいいさ…私は手と目が片方無いんだ…」
「幾ら頭で解っていても…直接見て見たら..はあると思うの…最悪の事も考えないといけないと思うわ」
「それは解っているよ…自分で見てもこの体気持ち悪いんだから…だけど覚悟をしないといけないね..あのクズ、死んでなかったら殺してやるのに」
「幾ら頭で理解しても生理的にと言う事か…確かに覚悟しないといけないな」
「あと、私達は…多分、あっちの方の常識が多分無いと思うの…これが多分一番問題だと思う」
「幾ら何でもそうれは無いと僕は思うよ…大丈夫だよ」
「私は常識のある方だと思うぞ..」
「本当にそう? だったらリタとエルザ…どういう風にするつもり?」
「恥ずかしいから言いにくいけど…服を脱がして、キスして、その後は舌で全身舐めてあげる..勿論、足の指の間から始まって、お尻の穴は勿論前も…あんなクズにやらされていたんだから、セレスの為なら…その位は僕は出来る…それが終わってから..僕が上に跨って..」
「はい、ストップ…エルザは」
「勿論、最初は、土下座してご奉仕させて下さいからだろう? その後は足にキスをして..」
「はい、ストップ…ちなみに私はキスをしてからズボンを脱がして…醜い体ですが、拙いですがご奉仕させて頂きます..そこからスタートよ」
「うん、それがどうかしたのかな?」
「普通じゃないのか?」
「違うわ! こんなのは世間で言う…変態がする事よ..大切な事だからもう一度言うわ!変態がすることなの?」
「違うよ…変態っていうのは…人前で排泄したり…虫食べたりする事だって…」
「私は変態ですって言いながらストリップして瓶使う奴とかだぞ」
「それは…凄い変態…まぁやらされていたけどさぁ…さっきのでも絶対に変態だからね…考えて、酒場で自分から下着脱いで跨っていた女なんて私達以外居たかしら?」
「居ないよ」
「居ないな」
「だから、これも自覚しないといけないのよ!」
「それで、結局クラリスは何が言いたいの? ストレートに言ってよ」
「うむ」
「纏めると、私達は「性処理が嫌い」なくせに「体はもうこれでもか壊れていて」「あっちの方の知識は凄い変態」そんな女なのよ」
「言われて見て良く解ったけど…仕方ないじゃん、どうしようも無いんだからさぁ」
「そうだよ」
「此処までは良いとして…それで誰からする?」
「するって何を..」
「リタも解っているんだろう…」
「そう、夜伽よ夜伽…この間のじゃんけんはこの為にしたのよ..リタが一抜け、二抜けはエルザだからその順で選べばいいわ」
「あのじゃんけんってこう言う意味だったんだ」
「いきなり、じゃんけんなんて言うから何かと思ったらこういう事か」
「僕から選んで良いんだよね? 流石に最初は無理…2番で」
「私も最初は嫌だから3番が良い」
「はぁ~そうすると私が1番ね…少ししたらシャワー浴びて準備して行ってくるわ」
「頑張ってね」
「頑張れ…それしか言えないな」
それから2時間後覚悟を決めたクラリスはセレスの部屋のドアをノックする。
クラリスの夜伽 ~結婚初夜~
シャワーを浴びていると思わず、溜息が出た。
相手はピチピチの15歳…それに比べて自分は26歳。
当然、年齢で言えば行かず後家と呼ばれても可笑しくない年齢。
これでも、昔は聖女と呼ばれていて、人気はあったのに、その面影はないわね。
何だか胸も若い頃から考えると垂れてきた気がする。
お腹だって太ってないけど、何だか緩んでいる気がするわ。
下半身は…あれ!あれだけやられていたのに…最後の方は使われていない…
「もうやり飽きた」そう言われていた気がする…大丈夫なのかな…これで
これだけだって、凄いハンデだ、だって相手は、成人したての若い男の子なんだから。
こんなおばさんの体だけでも、若い子の相手をするのは気が引けるのに…
私は顔に自分で傷つけた大きな傷がある。
乳首だって斬り落として無いし…体にはクロード専用性処理便器って無数にナイフで書いてある。
他にも自分で見ても凄いと思う傷が沢山ある…
どう考えても、結婚初夜の花嫁の体じゃ無いわ。
汚い体って言うのは正にこういうのを言うんだわ。
昔、奴隷を見たいと悪趣味なクロードに付いていった事があるけど…銀貨1枚で買える廃棄奴隷よりも酷いと思う。
流石のセレスでもこの体じゃ捨てられるかも知れない。
バスタオルを巻いても傷も文字も隠せないんだから…
馬鹿にされても良い…だけど、あの優しい顔を曇らせたくない…
最悪、嫌われて別れが来るかも知れない…
だけど…もう帰る道はない…ここで怖気づいても、もう帰る事は出来ない…
あはははっ…魔王と戦った時の方がまだ怖く無かったな…
トントン…これで後には引き返せない。
「あれっクラリス…凄い恰好だね…とりあえず中に入って」
部屋に直ぐに入れてくれた…しかも優しく肩を抱いて…これだけでもセレスの優しさが凄く解る。
「そうか、2部屋ってこういう意味だったんだ」
「うん、結婚したんだからこういう事も…そう思ったのよ…だけどこんな体じゃがっかりしたよね?」
「あの、クラリス….それって僕を受け入れてくれる? そう思って良いの?」
「うん、だって結婚までしてくれたし…10年も待ってくれたんだから…うん、セレスがしたいようにして良いよ…ただ無理だったら言ってね..あと暗くしてくれるかな」
「本当に、凄く嬉しいよ…それじゃ直ぐ暗くするね…」
嫌だ、暗くしても私の体の線も、傷も丸見えじゃない….
「クラリス…凄く綺麗だよ..」
「そういう事は言わないで良いよ…違うのは解っているからさぁ…」
「今も昔も僕にとって好きな人は三人しか居ないから…本当に好きにしていいの?」
「こんな体で、良いなら幾らでも良いよ…結婚までしているんだから…」
頭を撫でてくれるんだ…凄く優しい…私、頭何て何時撫でて貰ったかな…あはは子供の時に撫でられて以来だ。
セレスの手ゴツゴツしている…うん凄く頑張っていたんだね…毎日素振りをしていたんだ、偉い偉い。
可笑しいな…体を触られるのが凄く嫌だったのに、セレスが相手だと…嫌じゃない。
何でなのかな…そうか、まるで宝物の様に触ってくれるから…嫌じゃない…ううん気持ち良いんだ。
ゴツゴツした手だけど凄く優しくされているのが解る。
嫌じゃないどころか、こんな時間なら幾らでも続いて欲しい。
嘘…そんな事までするの…汚いよそこは…まして私は…
「セレス、そんな事までしないで良いよ..そこは」
「違うよ..これは僕がしたくて、しているんだから気にしないで…」
気にするよ、そんな汚い所を触ったり舐めたりしているんだからさぁ..
傷まで凄く優しく舐められて…
だけど、これは全然違う..これが本当の行為なのだとしたら、今迄のは何だったのかな…
可笑しいな、こういう事をするのが凄く嫌だったのに…自分からしたくなる。
そうか、セレスが私にしてくれくれるから、同じ様にしてあげたくなるんだ。
一方通行で無く、セレスがしてくれるから、私が返す。
私がするから、更にセレスが返してくれる..
全然違うわ..これ…
今迄辛かった事が、凄く楽しくて気持ち良く感じる。
というか…セレスその物が気持ちよい…
セレスがするから、それ以上の事を私がしたくなる。
私がそれ以上の事をするとセレスがそれ以上の事をしてくる。
お互いが結構負けず嫌いなのが解ってしまう…
「はぁはぁはぁはぁ」
「はぁはぁはぁはぁ」
息までもあって来る….
多分、もう今の私は、セレスじゃないともう無理だ…頭の中が全部セレスに染まっちゃったんだから..
うん、セレス以外何も要らない…本当にそう思ってしまう。
今私はセレスの腕の中にいる。
セレスの心臓の音がトクントクン聞こえてきて心地よい…腕枕なんて初めてだ…
「ごめんね、セレス、私こんな汚い体で…」
15歳の綺麗なシミ一つ無い綺麗な体を見て申し訳ない気持ちになる…
セレスが私を覗き込んでくるから、更に恥ずかしくなる…
「そんな事無いよ…僕にとっては凄く綺麗だよ..」
「嘘..」
そんな訳無いわ…これ程汚い体は無いわ…
「確かに傷だらけで怪我も酷いけど…それだけでしょう?」
「それだけ? こんな酷い体なのに…何でそんな事が言えるの…ねぇ…」
「大好きな人の体だからかな…」
「それは少し解るけど…私は酷すぎるわ」
「あのさぁ…ちょっと酷い話しても良い?」
ああっやっぱり、何かあるんだ..嫌われたくない..だけど聞くしかないよ…
「良いよ、何でも言って」
「クラリスは聖女で強かったから違うけど…冒険者なんて傷だらけが当たり前だよ?」
「本当? 気を使って言ってくれているんじゃないの」
「そんな事無いって…例えば、エースタウンのギルマスのミランダさんは片目が無いから眼帯しているよ」
「そうなんだ…」
「うん、ギルドで良く見ていれば、結構傷だらけの冒険者も多いよ…魔法使いやヒーラーは少ないけどそれでも少ないだけだよ…剣士なんて傷があって当たり前なんだから」
「本当に?」
「クルセーダーの女の子が居たけど…鎧の下には凄い傷が沢山あるんだって…だけどちゃんと彼氏がいてお金が溜まったら結婚するって言っていたよ」
よく考えて見たら…死に掛けの冒険者の回復を何回もしていたわ…確かに女の子も沢山いた。
女騎士には体が傷だらけの子も沢山居たわね。
そもそも、そんな人を何人も診て来たじゃない。
「傷はそうかも知れないけど..私のは違うわ」
「それも気にしないで良いと思う…冒険者って危ない仕事なんだ…弱いとゴブリンに攫われたり、オークに攫われて苗床だよ…僕も依頼で「恋人がゴブリンに攫われたから助けて下さい」という依頼を受けたんだ…命という意味なら助かったけど..あっちは手遅れだった…それでもそのまま仲良くパーティー組んでいたよ…」
「そういう事もあるのね」
「それに大体、冒険者なんて危ない仕事しているから、宵越しのお金は持たないなんて言って、娼館通いしている人も多い」
「確かに娼館に吸い込まれるように入っていく姿を見た事あるわ…だけど女は違うでしょう?」
「さっきのミランダさんは100人斬りを自負していたよ…「男って馬鹿だから抱かせてやると命がけで守るんだよ」とかいってた…まぁ実際に40歳まで現役で、ギルマスに迄なったんだから嘘じゃ無いと思う、それに女冒険者も男娼を買う人も多いし…実際に僕に「銀貨5枚あげるから相手しない?」という人もいたね」
「そうなんだ…少し気が楽になったわ」
「だからクラリスは気にしすぎ!クラリス達は強いから、そういう思いをしなかったそれだけの事だよ!」
「考えすぎなのかな…」
「冒険者をしてお互い知り合った、そう考えれば良いんじゃない?…クロードという名前のゴブリンに捕まったけど無事逃げ出した、それで良いんじゃないかな?」
「セレスがそれでいいなら、うん良いよ!」
「うん、好きな人が今傍に居てくれて、これからも一緒に居てくれる、それだけで僕は満足だよ」
「そう? だけど、セレス凄く上手だったけど…娼館とかに行ったのかな?」
「無いよ…今日が初めて…」
「初めてなの?本当に? その割には凄く手慣れているような気がしたけど!」
「好きな人が居るのに、娼館なんて行く訳ないじゃん…ただ僕は自分がしたい事をクラリスにしただけだよ」
「そうなんだ…と言うか初めてだったの?」
「うん、ただ、妄想の中では何回も…恥ずかしいから余り言いたくない」
「そうか、私が初めてだったんだ…」
「余り言わないで欲しい…男として、恥ずかしいんだから」
「うん、もう言わないよ…そうだセレスはもう少し頑張れるかな…」
「クラリス相手ならね…10年分の想いがあるからね…」
気が付いたらもう朝…楽しい時間って過ぎるのが速いわ…
「流石にもう寝ないと辛いよ..」
「うん、流石に寝ないと大変!だけどセレス腕枕して貰って良い?」
「良いよ」
好きな人との行為がこんなに楽しいなんて!本当に思わなかったわ。
消してやる…
「ふふふんふーん…おはよう!リタ、エルザ、素晴らしい朝ね!」
「クラリス、その分だと上手くいったようだけど…何でそんなにご機嫌なの?」
「いや、心配していたんだけど…大丈夫だったのか?」
「うん、大丈夫も何も…これでもかとって愛して貰えたわよ! はっきり言うけどクロードなんて勇者じゃ無くて、オークやゴブリンの仲間だったのよ…もしかしたらそれ以下ね…そりゃ、ゴミ以下の便器男に抱かれていたら辛いわね…うん…」
「あの…クラリス? 頭は大丈夫だよね?…もしかして壊れてない…平気だよね!」
「余りの悲しさに頭が可笑しくなった…違うよな!」
「違うわよ! 本当の愛に目覚めただけよ! もうセレスへの愛しさが止まらない…それだけよ! 多分、今の私ならどんな魅了も効かないわ…髪の毛からつま先まで…全部、セレスの愛が詰まっているから…きゃは!」
うわぁ「きゃは」だって…
地味に見てて痛いんだが..
「まぁ..幸せそうだから良いよ…」
「まぁ…元気そうだ…うん」
「私は到って元気ですよ! 少しシャワールーム独占するけど良い?」
「別に構わないけど?」
「私もさっき、浴びたから良いが…何するんだ?」
「内緒!」
「さてと…」
セレスは凄く優しい…傷の事も歳の事も気にしなかった…こんな私でも本当に愛してくれている。
どんなにセレスが許してくれても….
どんなに気にしないでくれても…
一つだけ、私が…私自身が許せない事がある。
それは「クロード専用性処理便器」これだけは許せないわ…
古傷となってしまったから…この部分を切り刻んでヒールを掛けても、文字まで戻ってしまう。
古傷まで全部治すなら、世界に16本しかない「エリクサイヤー」の秘薬でも使わなくちゃ治らないわ。
この文字を消すなら、上からナイフで削る…傷はそのまま..つまりナイフで何回も線を引くしか無い…
魅了された私が出来たなら…本当の愛に目覚めた私に出来ない筈は無いわ。
「すーはーすーはーはぁっ」
ナイフを軽く刺した…そしてそのまま何回も線を引く様にして切り刻む。
「うぐっ..うぐっ..こんな物…はぁはぁ大した事無いわ」
「はぁはぁはぁ…あと1つ…終わった..後は..刻むだけだわ」
削る様に切り刻んで消したクロードの文字の横にセレスの名前を刻んでいく…
「現金な者ね…セレスの名前だと思うと…あまり辛く感じないんだから…」
後はヒールを掛けないでこのまま我慢すれば…「クロード専用性処理便器」が「セレス専用性処理便器」に変わる…
これで良い..これでクズの名前が私から消えて…愛しいセレスの物に変わる…
「変なものね…セレスの名前に変わっただけで…辛く無くなるなんて..不思議だわ」
そういえば、この傷も..昨日..セレスが触ってくれたんだ…
そう考えるとこの汚い傷すら..思った程、嫌いじゃ無くなってくる….本当に不思議だわね
「クラリス…大丈夫..何やっているの? 血だらけじゃないか!」
「どうしたんだリタ、大きな声出して」
「クラリスが…ナイフで自分を斬っているんだよ..」
「何やっているんだ…あっ」
「そうよ、私はセレスの物だから大嫌いな彼奴の名前消していたのよ…これで私はセレスの者よ!」
「そうか..うん確かにクズの名前は無い方が良いね…僕もやる..うんクズの名前を僕から消してやる」
「そうだな、他の傷は兎も角、あの馬鹿の名前を体に残すのは不名誉だ、私も消そう…」
起きて来たセレスが見た物は…血のついた包帯に包まれた彼女達の姿だった。
ご機嫌クラリス
「おはよう! 随分早いね…どうしたの?大丈夫!」
三人が包帯を巻いていて何だか痛々しい…
「セレス、おはよう! うん、ちょっとね…だけど大丈夫だよ!うん」
「僕も少し痛いけど…大丈夫、気にしなくて良いよ」
「私もな…」
何となく何をしていたか解る…だが、それは触れない方が良いと思う。
「だけど、大丈夫? その状態だと休んだ方が良くない? もう一泊泊まって行こうか?」
「全然大丈夫だよ? 大体、魔王城に4人で突っ込むなんて馬鹿な事させれていたんだから平気だって..ねぇリタ、エルザ」
「うん、僕は大丈夫だよ?(どうしちゃったんだよ…クラリス)」
「ああ、私も大丈夫だ…(少し実は辛いんだが)」
「そう? あまり無理しないでね…まぁ次の街はそう遠く無いから休み、休み行こうか?」
「「「うん」」」
しかし、実際に歩きはじめると普通に歩いている。
結構な傷だと思うのだが…流石としか言えないな。
その中でもクラリスは凄い…颯爽と歩いている。
「何だか、体が軽いのよね…今日なら少しは真面に戦えそうな気がします!」
ねぇ…どうしちゃったのかな?クラリス 朝から何か可笑しいよ?
私だって知るか! だけどこれって昔のクラリスみたいじゃないか..
「そう、なら良かった…だけど無理はしないでね?」
「大丈夫だよ…セレス、これでも私は聖女なんだから!」
そうだよね…聖女なんだ彼女は…思わず昔を思い出して見惚れちゃったよ。
「そうだね…クラリスは僕の聖女様だもんね」
「うふふ、そうだよ私はセレスの聖女だよ!…当たり前でしょう?」
久々に見た、クラリスの笑顔は傷だらけなのに凄く綺麗だった。
完全に二人の世界を作っているよね? あれ…
やっぱり、1番を取るべきだったかもな…
だけど、今日のクラリスの様子を見ていると、辛く無かったのか「性処理」
あの分だと、そうなのかも知れないな…
今日は僕の番だけど、少し不安が薄れたよ…よく考えたら相手はセレスだもん怖い訳無いよね。
私もそう思うな…今日のクラリスは楽しそうだ。
街道沿いにキーリングラビットが2匹現れた。
「行きます…ホーリーボール」
光の聖球が現れ、飛んでいき、1匹を倒した..
「あれっ..あれれ!」
横からセレスが飛び出しもう1匹を切り伏せた。
「大丈夫?」
「うん…あはははっ失敗しちゃった!」
本当は無数の球が飛んでいく筈だったのに…
「ゆっくりやれば良いと思うよ…球が出るようになっただけ良いんじゃない?」
「うん、そうだね、私頑張ってみる…どうしたの? 変な顔して…」
「いや、確か僕も…クラリスに、「頑張るよって」昔に言ったの思い出してた」
「うん、言っていたね…今は逆だけど…今度は私が頑張るから宜しくね!」
「任せておいて」
「おーい、ちゃっちゃと歩かないと遅くなっちゃうよ?」
やっぱり、1番の方が良かったんじゃないかな? 失敗した…
「ほら行こう」
あんな二人の世界が作れるなら最後なんて選ぶんじゃなかった..はぁ
「行こうか?」
「行こう」
二人は軽く見つめると…二人の後を直ぐに追いかけた。
リタの夜伽….女の顔
宿についた。
流石に一流では無いけど…冒険者が使うには豪華な部屋を二部屋セレスが用意してくれた。
夕飯もルームサービスで部屋で食べるように手配してくれている。
これは多分、僕たちの事を考えての事だと思う、やっぱり優しいよね、セレスは。
三人と1人に別れて直ぐに僕はクラリスに話しかけた。
「あのさぁ…今日は僕が…その夜伽なんだけど…大丈夫かな..」
「そうですか?心配なら私が変わってあげましょうか?」
「いや、そう言うんじゃなくてさぁ..」
「残念ですわ…折角、セレスの初めての相手をしたのに..今日はお相手出来ない何て」
「ちょっと待って、セレスって昨日が初めてだったの?」
「はつ耳だぞ…それは」
聞き耳たてていたエルザが話に加わってきた。
「ええ、そうですよ…本当に…凄いでしょう? 此処まで愛してくれていたんだと思うと本当に感動よね」
「普通は12~13歳までに幼馴染とするか、お金を手にしたら娼館に行くなりするのが当たり前だと聞いたよ…遅くても15歳なら成人の儀の後に直ぐに済ますんじゃないの?」
「私もそう聞いたな」
「だけど、セレスは違ったみたいよ? 昨日までしなかったのは多分、私達への想いからじゃないかしら…うふふ、最初の女に成れるなんて幸せだわ」
「それで今朝からあのテンションな訳だ…何で僕は2番何て選んじゃったのかな? そうだよね…あんなに僕たちが好きなセレスが、他の人とする訳ないや….」
「全く、臆病だとチャンスを逃すんだな…」
「それでさぁ…やっぱり辛く無かった?大丈夫かな?」
「全然大丈夫だよ!全く違うから…好きな人とする行為と、クズとしている行為は全く違うのよ! 今の私にとってクロードはゴブリンと一緒よ、そりゃゴブリンに抱かれていたら楽しい訳ないわ…当たり前の事だわ」
「成程…少しだけ元気が出たよ…僕も頑張ってくるね」
だけど、クラリスと僕は違うんだよ。
クラリスも扱いは酷いけど、少なくとも最初は女として扱っていたよ…僕は違った。
何しろ最初から「生意気なクソガキ」からスタートだもん…虫を食べさせられたり、殴る蹴るがメイン…まぁ、性的な事は嫌がらせ。
どっちかと言えば…暴力の捌け口だったんだ…
自分でも解るよ…胸も小さし、背も低い…確かにガキに見える。
つまり、年齢、傷以前に女の魅力も無いんだよ僕は。
「はぁ…大丈夫なのかな?」
シャワーを浴びて準備しているけど…うん無いわこれ。
胸も小さければお尻も小さい…まるで男だよね、これ。
若ければ…まぁ特殊な趣味の人には受けそうだけど、セレスは絶対にそういう趣味は無いと思う。
そこから、この傷だらけ体…まぁ大嫌いな彼奴の名前は消したけど…酷いよね…
流石に「ゴミ女」って呼ばれていたのが解るよ…これは無いよね。
「すーはーすーはー…セレス..」
ドアを叩いた…もう後戻りは出来ないね。
「リタ…待ってたよ、うん!」
「ままま、待っていたの?」
「うん、流石に2回目だから解るよ? 今日も2部屋だし…リタかエルザが来るんだろうなって」
「そうか、うんそうだよね…それで、部屋暗くして貰って良いかな?」
「うん..ちょっと待って」
「ありがとう…」
「どうすれば良いのかな? セレスがして欲しい事があったら言ってくれる?」
「それじゃ胸に顔埋めて良い?」
「えーと良いけど..僕胸なんて全然無いよ?良いの」
「うん、構わない」
何でこれなんだろう? こういうのは絶対に胸の大きいクラリスかエルザの方が良いのに..
セレスが僕の小さな胸に顔を埋めてくる…セレスの息が掛かってくすぐったい。
「思い出さない?」
「うん、思い出した!泣いていた君を僕が一晩中こうして抱きしめていたんだよね」
「今思えば、僕はませていたのかも知れない…現金だよね…気が付いたら笑顔になっていたんだから」
「まぁこんな小さな胸でも約にたてたなら…良かったよ」
「リタ…震えているけど大丈夫?」
「僕はこう言うので実はちょっと怖いんだ…嫌な思い出しかないし…それに女らしくないからね」
「リタが女らしくない訳無いよ? だって僕には、お母さんみたいだったし、お姉ちゃんみたいだったし…リタ程女らしい人を僕は知らないよ」
「そう?..あははそうだね」
確かに言われてみれば、僕はセレスが泣いていたから母親の真似事していたよ…年下の男の子が居るのが嬉しかったからお姉ちゃんぽく振舞っていた、うん本当だ。
「初恋のリタ達が女っぽくない訳無いよ!」
「そうか、セレスにとっては僕は女の子なんだね?」
「当たり前だよ..」
「そう?…だったら僕は今日は、お母さんでもお姉ちゃんでもなく、セレスの女になっちゃうよ…」
「うん」
クラリスの言うう取りだね…相手がセレスだと思うと辛くないや…それ所か自分からしたくなっちゃう。
「どう、セレス..気持ち良い?」
「はぁはぁ..うん」
嘘、そこは汚いよ…そんな…
「セレスはそんな事はしないで良いんだよ…僕が全部してあげるからさぁ..」
「違うって、僕がしたいからしてるだけだよ…気にしないで…」
「はぁはぁ..そう、それなら..ううん、良いよ」
やっぱり全違う…僕の体は魅力ないって..よく考えて見たら、僕こんな事された事無いよ…
汚い所を平気で舐めさせたりしたくせに…僕は頭一つ撫でられた事は無かった…
これって多分キャッチボールなんだ…
僕がすると、セレスがそれ以上の事をしてくる…だから僕はそれ以上の事をしてあげたくなる。
全然別物じゃないか….
こんな凄い事されたら…嫌々じゃ無くて、本当に僕は淫乱になっちゃうよ…優しくしてくれるなら…何でもしてあげたくなっちゃう。
「はぁはぁはぁ…何でセレスは…そんなに…できるの…」
「だって…リタ達をお嫁さんにするのが僕の夢だったし、そのリタが相手だったら喜んで欲しいからなんでもしてあげたくなるよ」
そう言えば、僕はセレスのお嫁さんだった。
お嫁さんなんだから愛されていて当たり前だよね。
お嫁さんなんだから物扱いなんてされない….
なんだ、答え何なんて元から出ていたじゃ無いか…
クラリスが愛を連呼していたけど…「愛し愛されているから」怖がる必要なんてないんだ。
良く僕の事を「無表情なガキみたい」ってクロードは言っていたけど…愛してない奴にそんな優しい顔するわけ無いじゃないか?
昔、セレスを抱いていた時の僕は…今思えば「母親」の様に優しい顔だったと思う。
今の僕は恐らく、セレスを貪る「女」の顔になっていると思う。
だって、しっかりとセレスが返してくるから…体がほてって仕方ない。
多分、セレスを求めて腰が生き物の様に動く…腰だって信じだれない位にクネクネしちゃう…
体温が凄く上がって…息も苦しくなるし…胸も…股も凄く切なくなる。
こんなの初めて..
こんな状態の僕が「無表情なガキ」みたいな顔をしている訳は無い…
多分「女」それも「雌」みたいな顔をしていると思う..
「あははっセレス…もう明るくなっちゃったよ…どうする?」
「そうだね名残惜しいけど後1回したら寝ようか?」
「ふーん、後1回はするんだね!」
「ごめん…」
「良いよ、良いよ10年も待ってくれていたんだから…それに僕もしたいから…もう朝なんて来なければ良いんだよ」
こんな僕が「無表情」な訳ないよね?
クズにありがとう!
「うーん、何だか久しぶりに美味しい空気を吸った気がする」
「どうしたんだリタ? 朝からご機嫌じゃないか? やっぱり、セレスだと違ったのか?」
「違う、違う…全然違うよ! よく考えたら僕は…ショタだったのかも知れないよ? セレスが5歳の時から好きだった様な気がしてきた」
「おい、リタ可笑しいぞ…何だそれは?」
「ショタと言うのは冗談だけどさぁ! 今思えばあの時の僕は、セレスが可愛いから「母親」になろうとしてたり「姉」に成ろうとしていた気がするんだ」
「まぁ私が見ても、そう思うが…」
「よく考えたら僕が男の子にそんな事してあげようなんて思ったのは…あの時しか無いんだよ? そう考えたら形は兎も角、誰かを愛したのはセレスが最初だと思うんだ?」
「そうか、確かにそうかもな」
「セレスとして見たら、全然違うんだ…好きな人とすると全く違うよ! 体が蕩けそうになるし、うん本当に雌になっちゃうんだよ! 母親で姉で雌…どうなっちゃうんだろう僕! 愛おしさが止まらなくなっちゃった」
「それなら私も安心だ」
「今ならクラリスが言っていた事が解るよ…クロードはそうゴブリンだったんだよ! 彼奴絶対に勇者の皮を被ったゴブリンだよ…人間の僕がゴブリンなんかに抱かれていたって気持ち良く無いし、嫌な顔になるのは当たり前だよね? 多分彼奴、勇者じゃ無かったら彼女なんて出来ないし娼婦にも馬鹿にされる位下手糞で笑い物になっているんじゃないかな?」
「あの、リタその位で…」
ほら、クラリスが起きて来たけど、引いているぞ。
「そうよ、解ったでしょう? クロードが凄くクソで…そうゴブリンだったって事が…」
「うん、良く解ったよ…ゴブリンが人間様を抱くなって言うの、よくあんな貧相な体で僕の事馬鹿に出来たよね?」
「そうね、だけど、この話はそろそろ辞めましょう! セレスがそろそろ起きてくるわ」
「そうだね、幾ら何でもこれはセレスに聞かせられないな」
まぁ、セレスとする事が苦痛じゃないのが解ったから良いが…
2人とも性格が変わって無いか?
こんな二人は魅了前も後も見た事が無いな…少々可笑しいが。
良く笑うし、今の方がずっと良い。
「セレスおはよう、御座います」
「セレスおはよう、今日も凄くカッコいいよ!」
なんだあれっ…さっき迄と全然違うじゃないか?
「二人ともおはよう!」
「おはよう、セレス」
「おはよう、エルザ」
「今日は僕、頑張っちゃうよ! 何だか凄く体の調子が良いんだ…道中の魔物退治は任せて!」
「だったら守りは私ですね!」
只の街道を歩くだけなんだが…まぁ楽しそうだから良いか。
「どうしたんだい! エルザ、複雑そうな顔をして!」
「いや大した事じゃないんだ」
女って付き合う相手でこんなに変わるものなのか?
こんな表情、クロード相手には一度も見た事無いぞ…
所詮はクロードはクズだった…そう言う事だ。
2人を見ていれば、解る。
あのクロードが魅了なんて使わず誠実で尽くしても、多分クラリスもリタもこんな風にはならなかったと思う。
多分、堅物の聖女と気難しい賢者…その仮面を脱ぐことは一生無かった筈だ。
そう考えたら、少しだけあのクズが可哀想になった。
クズで良かったのかも知れない…もし彼奴が真面な勇者で性格が多少良かったとしても…多分セイルに会ったら、リタもクラリスもクロードを捨てた可能性は高い。
絶対とは言わないが、自分に置き換えて考えて「自分の考える限り最高の状態のクロード」と「セレス」を比べてみてらセレスを選ぶ自信がある。
最低のクズ野郎だからクロードに感謝なんてしない…
だけど一つだけ感謝するなら「クズだった事だ」
クロードがクズで無ければ私達は勇者を裏切った、最低の女の烙印が押されていただろう。
クロードお前が「クズだった」そこ一つだけは感謝してやろう!
「エルザ、そろそろ飯にしよう?」
「今いくよ」
ほら、こんな会話なのに、私すら笑顔だ。
エルザの夜伽…止まらない
「セレス、此処は僕に任せてね!」
「うん、任せたよ」
「ファイヤーボール」
連携がとれている。
使っているのはただの初級魔法。
だけど、確実に成果は出ている。
セレスがリタとクラリスを守り、その後ろに私がいる。
理想的な戦い方だ。
正直言えば能力は全く無い…初級冒険者レベルしか魔法は使えなくなっているが…
少し前とは全く違う。
初めて連携が取れ始めた時程度だが、確実に良くはなってきている。
そして、何よりも二人の顔が昔みたいに笑っている。
これなら、私も変れるような気がする。
今日は…とうとう私の番なんだ…
今迄と同じ様に部屋を二つ取って貰っている。
ただ、私の場合はリタとクラリスと違い大きなハンデがある。
それは片目、片手と言う事だ、右腕と右目が無い。
右手の肘から先が無いと行く言う事は誰かの世話にならなくちゃならいんだ…
「仕方ないな、ほら僕がシャワーに一緒に入ってあげるよ」
「私もお手伝い致します」
二人に体を洗って貰って準備が済んだ。
しかし、片目、方手はこんな時不便だ…一人でシャワーを浴びているとどうしても見落としが出来てしまう。
「えーとこの姿で行くのか?」
「流石に僕が一緒に行って手伝う訳にいかないからね…頑張って」
「頑張るしか無いよ」
「解った…行ってくる」
下着も身に付けずにバスタオル1枚、これで行くのはかなり恥ずかしい。
今考えれば、身に着けていても良かったんじゃないか?
確かに自分で脱げなくても、セレスに脱がして貰えば…ああそうか? それだとこの醜い体を見られてしまう。
やはり、バスタオル1枚これしか選択肢は無かったんだな….
だが、良いのかこれで、2人と違い鍛えていた私の体はゴツゴツしている。
仕方ないだろう…剣聖は完全戦闘職なんだから、そう言えば私はクズより背が高かった。
よくよく考えれば、私は女からも告白を受けた事があった…平気なのか? 本当に?
此処までくればもう行くしかない。
トントン
「セレス…」
緊張で声が出せなくなった。
「うん…セレス…来た」
「エルザ来てくれて嬉しいよ…どうかしたの?」
「いや、私はこんなだから..全く女として自信が無いんだ…暗くしてくれないか?」
「解った…少し話をしようか?」
「そうだな…その方が良いかも知れない」
流石に私じゃ無理なのか? 二人に輪を掛けて酷いし元から男みたいだから…
よく考えたら、私は26歳の女として行き遅れ、しかも体は男受けしない男みたいな体で傷だらけ…止めが片目片手の方輪もの。
最低の女じゃないか? それこそ廃棄奴隷でも鉱山送り確定の二束三文…はははっ流石のセレスでも…抱けないよな。
「いいよ…セレス無理なんだろう…」
「それは無いから、やっぱりそんな事考えていたんだ! 僕はエルザを見ていると抱きしめたくなる位好きだよ」
「そう…なのか? こんな体なのに…」
「うん!だって僕にとっては世界に3人しか居ない大切な人だからね」
「そう、なんだ…だったら話ってなに?」
「まず、傷や目や手は気にする必要は無いよ」
「いや、それは無いだろう? 此処まで酷いのは居ない…」
「二人にも話したけど!冒険者には普通に居るよ! 男でも女でもね!
「それはどういう事だ?」
「女の冒険者なんかでベテランはまず傷だらけは当たり前だよ! 片腕女ドラゴンっていう凄腕の人も居るし、集眼のシャイナという凄い剣士も居たね」
「そうなのか?」
「うん、シャイナさんは二児の母だし、旦那さんは死んじゃったけど結婚して二人で冒険者していたよ!」
「何で、そんな事知っているんだ?」
「冒険者駆け出しの時に依頼で子守り頼まれたから..」
「へーセレスが子守りね」
「うん、あやし方が上手いって指名も結構貰ったよ」
「意外だな」
「僕には三人も素敵な女性が居たからね…エルザもそうだよ?」
あはははっそうか、私もリタをショタなんて言えないな…あの時にもう惹かれていたのかも知れない。
「私もか?」
「エルザは不愛想で口数が少なかったけど、僕が泣き止むまで後ろから抱きしめてくれていたでしょう! 子供ながらあの時してくれた事が嬉しかったからね、子守りの時にしてあげていたんだ」
良く考えて見たら、あの時の私はしっかり女していたな、リタみたいに言われて見れば「母」や「姉」みたいにしていた記憶がある。
「随分頑張っていたんだな! 子守りかぁ…私は苦手だな、多分私に懐いた子供はセレスだけだよ」
「僕も嫌う子は結構居たよ! 男の子は駄目だった…女の子には何故かよく懐かれていたけど?」
セレスは子供の頃から美形だった、それは恐らく、その子達に愛されていた…そういう事じゃないのか?
案外子供ってませているからなぁ…
「そうか(案外天然なんだな)」
「それで話を戻すけど、エルザは強いから傷を負わなかっただけだよ! だから、傷の事は気にしないで良いんだ」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど…それでも」
「それじゃ、僕が片手、片目になったらエルザは僕の事を見捨てる?」
「そんな事絶対にしない!」
「それじゃ、同じじゃないかな…大体冒険者やっててパートナーが怪我したからって別れるとクズ呼ばわりが普通なんだよ?」
「そういう物なんだな」
そうか、未熟な時に騎士と一緒に合同訓練したけど、案外女騎士でも顔に傷があった子もいたよな
「だから僕たちは冒険者なんだから気にしないで良いんじゃない?」
「だけど、セレスは凄く綺麗に見えるんだが」
「僕はエルザ達を花嫁にするつもりだったからね…結構傷にも気を使っていたから」
「なんだかごめん」
「違うってほら」
「あっ」
「ほらね、さっきから心臓がドキドキしているんだ」
「そうか…ごめん…私気が付かないで」
セレスが胸を触ってきた。
「ゴツゴツしていて気持ち良くないだろう」
「そんな事無いよ…僕にとっては凄く懐かしい胸だよ..だけどちょっと良い?」
「おい、何で後ろ向かせるんだよ…」
やっぱり、この顔じゃ見たくないよな…
「うん、これで良い..どう?」
「どうって、後ろからしがみ付いて…あっそうだ」
「昔さぁ泣いている僕をこうして抱きしめてくれたじゃない? どう逆にされて嬉しくない?」
「嬉しいな」
「そうでしょう? あの時の僕は寂しかったから、だけど、今のエルザ以上に嬉しかったんだよ」
「そうだったんだ」
確かにセレスは抱きしめてあげたら泣き止んだな。
「大きくなったら今度は僕が抱きしめてあげたい、そう思っていたよ」
「そうか、おい、何で今度は前を向かせるんだ…ちょっと恥ずかしい」
「僕のお嫁さんになってくれてありがとう!」
「いまの状態でそれはズルいぞ…ああっ」
いつとれていたんだろう…バスタオルが巻かれていないじゃないか…
片手しか無いから隠したくても隠せない…胸か股片方しか隠せないし顔も満足に隠せない…片手って凄いハンデだ。
「エルザって背が高くて凄く綺麗」
「傷だらけの私に…はぁはぁ向って何言うんだ」
こんなのって知らないぞ..何だよこの触り方、全然違うじゃないか?
こんな優しい触り方…私は知らない…
手は凄くゴツゴツなんだな…しっかり素振りしていた証拠じゃないか…ようし
「ちゃんと素振りしていたんだな..うぐうううん偉いぞ」
私はセレスがしっかり、素振りをしていたのが嬉しくて指を口に含んだ。
「エルザ?」
「うぐっこれはだな…そうしっかり素振りしていたからそのご褒美だ..うん」
「そう、だったら」
同じ様にセレスが私の指を舐め始めた…
「流石、剣聖、凄い手だね」
「馬鹿っ!私は女なんだ…ゴツゴツした手は恥ずかしいんだよ」
「しょうかな~ 僕はこの手凄く好きだよ」
舐めながら話すなよ..あっ、だけどセレスはこのゴツゴツした手で頭を撫でてやると凄く喜んでいた…
何で私は大切な腕を斬ってしまったんだ…残っていればセレスに…違うセレスを撫でてあげれてたのに..
片手が無い分はそうだ、こうやって舐めてあげれば良いんだ。
「ちょっとエルザ、そんな所までしなくても良いよ…男でも恥ずかしい」
「そうかぁ~セレスに汚い所なんてないから気にしないで良いんだ…私がしたいからしているんだからな」
「そう? それじゃ良いよ…僕もするから..」
「駄目だ、そんな所..あっ」
酷いな、方手が無いから隠したり出来ないじゃか…さっきから顔や胸隠したい時に隠せない..凄く恥ずかしいのに…もう
だけど、これなんなんだ?
される事の全てが気持ちい良い…リタやクラリスが言っていたのが良く解る。
これは別物だ…セレスがしてくるから私もしたくなる…私はこういう事が苦手だ。
はっきり言ってしたいと思った事が無い…男に近いと思っていたのに..
「はぁはぁはぁ..」
「はぁはぁはぁ…」
セレスが相手だと自分からしたくなる…多分もう私の体でセレスの舌が触れて居ない場所は殆ど無い。
逆に私の舌でセレスの体で触れて居ない場所は無い….
これは駄目だ…病みつきになる..こういう事が嫌い…?
セレス相手なら違う..多分、明日からしたくてしたくて堪らなくなる…と思う。
誰が私が男っぽいって? さっきからセレスに跨って腰振っているのに…リタが言っていた雌になる。
その意味が解る…愛おしくて、せつなくて、すればするほど…更に欲しくなる。
魅了なんて比べ物にならない…多分魅了に掛かった状態の私だって、セレスにこんな事されたら解けちゃうんじゃなかな?
多分、今の私は…セレスで一杯になっている…魅了なんて絶対通用しない。
「気が付いたらもう朝だね」
「朝だけどどうした? まだいけるだろう?」
「そうだね」
「私は寝なくて大丈夫だから二人が起きるまで続けないか?」
「そうだね…頑張るよ」
結局二人が起きてくる迄、続けてしまって呆れられた。
「寝ないで続けていたの?」
「凄いね…だけど少し休まないと..」
仕方ないじゃないか? 止まらなくなっちゃったんだから。
これからどうしよう…
「セレス、今日は凄く風が気持ちいいな!」
エルザは凄く元気だ。
流石に寝ないでしていたせいか僕は眠くて仕方ない。
「そうだね…だけどエルザは眠く無いの?」
「全然大丈夫だよ! 寧ろ調子が良い位だ!」
剣聖のジョブの影響があるのか?
そう思う位に元気だ…流石の剣聖にもそんな能力は無いだろう。
「大丈夫ですか? セレス顔色が良く無いようですが…」
「うん、少し眠い位で大丈夫だよ」
「眠いならこの辺りで休んだ方が良いよ…何だったら僕が膝枕してあげる」
「膝枕なら私がしよう」
「いいえ、人に癒しを与えるのは聖女の仕事です私がしますわ」
「それじゃ…うん少し休ませて貰おうかな…膝枕は良いや…多分気になって眠れなくなっちゃうから!」
こうでも言わないと何だか揉めそうな気がした」
「可愛らしい寝顔」
「そりゃ僕のセレスだもん」
「お前の者じゃないだろう?」
「それで少し話をしませんか?」
「そうだね、話をした方が良いかもね」
「ああっ」
三人の顔が真剣な顔に変わる。
まるで魔王と戦う作戦を立てるかの様に顔つきが真剣になる。
「それで今日からの夜伽はどうしますか?」
「僕は出来るなら、全部僕が埋め尽くしたい…そう思う位だよ」
「それは私も同じだ…独占したいのは当たり前だろう?」
「結局は全員が、セレスの相手がしたいそう言う事なのね!」
「そりゃ当たり前だよね? 僕も二人もセレスを愛しているんだからさぁ」
「そう言う事だ…これは譲れないな」
「それなら一層の事、今日は1部屋にしてみませんか?」
「あの…それって、4人でしようと言う事なの?」
「流石に恥ずかしいぞ..」
「だけど、セレスは優しいから文句言わないけど、お金だって無限にある訳じゃ無いわ! それにこれから死ぬまで4人で暮らすんだから恥ずかしがっても仕方ないんじゃない?」
「そう考えたら、遅かれ早かれ..そう言う風になる可能性が高い…そう言う事?」
「確かに…どこかでそうなるかもな」
「それに、1回相手して貰ったら2日間も相手して貰えないなんて切ないと思わない」
「うん、自分の番を待つ2日間は確かに切ないね」
「ああ、私も同じだ」
「別に良いんじゃないかな? 今日の夜3人で押しかけてみて、難しかったら1人を選んで貰えば良いのよ」
「うん、そうだね賛成」
「それが良さそうだな」
「それじゃ今日は2部屋とって3人で押しかける、その様子次第では、なし崩し的に1部屋にしてこれから4人で、それで良いかな?」
「うーん、それがベストなんじゃないかな…僕もそう思うよ」
「やってみる価値はあるかもな」
「うーん良く寝た..あれっ皆は交代で休まなかったの?」
「うんちょっと眠れなくて」
「僕も」
「私も眠らなくて話していたんだ」
「それじゃ行こうか?」
「そうね行こう」
「僕も充分休んだしね」
「そうだな」
「どうしたの皆僕を見て!」
「何でもないわ」
「何でもないんだよ」
「何でもない」
三人は顔が少し赤くなった。
本能って怖い…獣に…
次の街に着いた。
また今日も同じ様に宿屋で二部屋とってくれて、セレスがルームサービスをとってくれている。
「次の街ではルームサービスを取らないで外食してみない?」
「そうですわね、確かに気が付いている雰囲気がありませんわ」
「うん、僕らの事は気が付いてみなかったような感じがする」
「そうだな、もしかしたら奴隷紋のお陰か!」
確かに僕のは目立たない様に胸に刻まれているけど、彼女達は首筋に刻まれている。
そう考えたら、これも別人に見られる原因なのかも知れない。
「そうだね、よく考えて見たら聖女や賢者、剣聖が奴隷になっている…そうは考えないよね」
「そうですね! 貴族の子供か裕福な商人の子の冒険者が戦闘用の女奴隷を連れている…そう見えるかも知れません」
「そうかな? 傷だらけの奴隷を連れているのに…そう見えるかな?」
「いや、中には親から奴隷を譲り受ける場合もあるからしいから、そう見えても可笑しくないだろう!」
「それじゃ、次の街では外食してみようか?」
「それは楽しそうですね」
「確かに外食はしてないから、今から楽しみだよ」
「いいな…冷たいエールも久々、飲んで見たい」
「それじゃ決定!」
食事も終わり、自分の部屋に戻ってきた。
今日も誰かくる…そう思うとドキドキする。
早目にシャワーを浴びて綺麗にしてからガウンを羽織った。
今日は誰が来てくれるのかな?
僕は再び三人に会うまで孤独だった。
いや、本当は誘ってくれた人も居たが、そんな寄り道をしている暇も無かった。
だから、こうして三人と一緒に居るのが楽しい。
幸せすぎて困ってしまう位だ。
だんだん僕は贅沢になってきているのが解る。
「傍に居てくれるだけで良い」が気が付いたら…これでもかって位甘えてしまっている。
大好きな人が自分の為に尽くしてくれる…これ以上嬉しい事は無い…本当にそう思う。
トントン
「「「セレス!」」」
「あっ! えーと何で今日は三人なの?」
「それが、話し合っていたら皆が、そのセレスと一緒に居たいと言う事になってね..」
「僕たちだけじゃ上手く決まらなくて…」
「とりあえず三人で行こうという話になったんだ…皆で過ごすのも良いし、セレスが誰か1人選んでくれても構わない」
僕が誰か1人を選べるわけ無いじゃないか..
「そう…よく考えたらそうだね、僕たちは冒険者だし、二部屋とるのも勿体ないから4人で一部屋、そういう過ごし方もありだね」
「うん、私もそう思うわ」
「僕もそう思うよ」
「私もそうだな」
「そうだね、それじゃ今日は4人で過ごしてみようか?」
「うん、それが良いわね」
「僕もそれが良いと思う、試しに4人で過ごしてみようよ」
「私も、そうだお試しだ、お試し」
こうして過ごすなら何か楽しめる物を用意しておくべきだったな。
話したい事は山ほどあるのに…いざ一緒にいると話せなくなる。
「あははっ…ちょっと緊張するね?」
「そうね、少し緊張するわね」
「僕もなんだか緊張してきた」
「案外ベッドで4人で居るのって確かに緊張するな」
「本当は僕が男だからこういう時はしっかりしなくちゃいけなんだけど…ごめん経験が少なくて」
「良いのよ!15歳だし、初めての相手は私なんだから仕方ないわ」
「あのさぁ..クラリスやたらと「初めて」って強調してない? 濃厚な時間なら多分僕の方が過ごしていると思うけど?」
「それは可笑しいだろう? 寝ないで朝までやり続けていた、私が一番濃厚な時間を過ごしていた筈だ」
思い出したら駄目だ体が反応しちゃうじゃないか!
「あれ、セレス顔が赤いわ…あっそう? そう言う事ね…うん」
「僕も気が付かないでごめん…確かに言い出しにくいよね」
「いや、セレスがそう言う気持ちなら迷う事はないな」
三人に押し倒された。
「あの、ごめん、三人相手だと正直どうして良いか解らない」
「大丈夫任せて! セレスが喜ぶように頑張るからね」
「うん、僕に任せて大丈夫だから…ね」
「私は私で、セレスが喜ぶようにするから、セレスは自分がしたいようにすれば良いんだよ!」
うわぁ…これ駄目だ。
只でさえ、好きという気持ちが抑えられないのに…好きな相手が三人も僕に覆いかぶさって来るんだから。
「どう、こういうのは? セレス好きなんじゃない?」
「それじゃ僕はこうしちゃおうかな?」
「それじゃ、私はこうだ」
代わる代わるキスをしてくるし…キスをしてない二人は触ってくるか僕の体の何処かを舐めている。
それに対して僕の体は1つしか無い。
だから、誰かの体を舐めながら残りの手で頭を撫でたり、体を触る位しか出来ない。
「セレスの触り方って凄く優しよね…うんっぷは…本当に愛おしくてキスしたくなっちゃうわ」
「本当に最高だよ..僕、凄く嬉しいから、ううんっ…どうしても乱れちゃうよ」
「本当にそうだ、セレス相手だと平気でこんな事が出来ちゃうんだから不思議だ」
「ねぇセレス私ね…セレスに愛されて凄く幸せよ…」
「僕も…凄く幸せ..だよ」
これは、凄すぎるわ、私がセレスにキスしようとしたら、先にエルザがキスしていたり…
私が舐めてあげようとしたらリタがしている。
だから、頭の中で二人がどういう事をしているか考えながら、愛し方を考えなくちゃならないわ。
しかも、キスしない状態になるとセレスがキスしたり、舐めてきたり吸ってきたりする。
二人に勝ちたい…少しでもセレスを感じたい。
そう考えたら…恥ずかしいなんて言ってられない。
リタが言っているけど…本当に乱れなくちゃ駄目だわ。
獣みたいに、本当に貪らないと…二人にセレスが持っていかれちゃう…
理性何て無くさないと…駄目…そうしないと…私がしたい事を全部二人にされて何も出来なくなっちゃう。
「セレス、セレス、セレス…僕…セレスが大好き…本当に大好き、会えなかった10年間が凄く勿体ない..それ位…」
「僕もリタが大好きだよ! 本当はずっと一緒にいたかった…子供じゃ無かったら…何時もそう思っていたんだ」
「ごめんね…あはははっ…セレスにこんなに想われていたなら、魔王なんて放っておけば良かったんだ…世界なんてどうなっても良かったんだ」
これ、凄い…三人と言うのはあのクズ相手でも無かったよ…セレスとの行為は全くの別物。
一緒の時はこれでもかと頑張ったつもりだけど、これは全く別の意味で凄い…
この間の時以上に頑張らないと直ぐに二人にセレスが取られちゃうんだ…考える暇なんてあっちゃ駄目。
頭で考える位なら本能のままに動かないと二人にやりたい事が取られちゃう…だから本当に獣のように雌みたいにならなくちゃならない。
こんなに僕が淫らになるなんて思わなかった。
セレス相手に人形みたいになんてなれないよ…賢者だから冷静に? そんな仮面直ぐに剥がされちゃう。
たぶん、この獣みたいに厭らしい顔をしている僕が本物の僕なんだ…
嬉しそうなセレスを見ていると…どんどん獣になっちゃうよ…
「セレス、セレス…私は駄目だ、愛おしさが止まらなくなるんだ…体が体が凄くお前を求めてしまう…好きだ、大好きだ」
「僕もエルザが好きだよ…僕だってエルザを求めて体が止まらなくなる」
「それじゃ同じだな…嬉しい」
これは凄く私は不利だ、片手がないから…だから油断なんて出来ない。
頭で考えていたら、先に二人にされてしまう。
二人にされて嬉しそうな顔をしているセレスを見ると心の中にに靄が広がる。
体裁何て構って居られない…そんなこと考えていたら、私がセレスにしてあげたい事の全部を二人にされてしまう。
誰が私が男みたいっていった…私はどう見ても女だし、雌じゃないか。
セレスを貪って、セレスを肌で感じて…セレスにされる事全てを喜ぶ…それだけの女だ。
理性なんて要らない…セレスを貪る獣にならないといけないからな。
はぁはぁ凄すぎる…こんなのは流石に考えた事が無かったよ…
これは凄い、大好きな人が全員で僕を貪るようにしてくるなんて…
僕だって男だから、色々な想像をした事はあるけど…こんなのは無い。
これは幸せ過ぎて…もうどうして良いか解らない。
三人が一緒だとどう返してあげて良いか解らない…
途中からようやくどうして良いか解ってきた。
皆と同じ様に頭で考えないで本能のままにする…それで良いんだ。
「もう朝だね…と言うか日が昇っているよ」
「これは凄すぎるわ、駄目体が止まらなくなるわ」
「僕も、まだ体が疼いちゃっているよ」
「私もさっきから..体がなぁ」
「もうお昼も回っているし、次の街に行くのに野宿が必要になるかも知れないから、もう一泊した方が良いね」
「そうね、そう思うわ」
「僕も賛成」
「私も」
受付に話をして、そのままもう一泊した…。
疲れているから休もうと思ったのに…本能って怖い。
そのまま夜まで続けて、疲れ果てて眠ったのは夜中だった。
彼女達は僕を幸せにする! だって彼女達は僕を愛してくれているから…(第一部 完)
ようやく、此処まできた。
この街で休んで、ここから歩いて1日行った所にルシアがあり、そこの外れに僕の家がある。
最後の街で様子を見ることにしたが、誰もが彼女達に気が付かなかった。
「案外、気が付かない物なのね」
「よく考えたらあのクズは魔王を倒した後は遊び歩いていたから大した活躍をしてなかったね」
「まぁ醜聞は良く晒していたがな…」
確かに悪い噂は僕も聞いていたが、精々が書面で張り出されていた。
王都なら兎も角、少し外れたら書面だけで、実際には見ていない。
「顔」は解らないのかも知れない。
しかもあのクズは魔王を倒してからは王都付近からでなかった。
彼女達は顔は傷だらけで26歳、僕は15歳…そう考えたら奴隷紋もあるから、戦闘用奴隷とその主に見えている可能性が高い。
「あの銀髪の冒険者…セレスさんじゃないの?」
「麗しの銀騎士…ソロだったよね?」
「そうか、戦闘用奴隷を選んだんだ、パーティーは組まなかったんだね、残念」
「あれ…結構歳くっていない?」
「セレスくんだよ? あれはパーティー用でしょう? そうじゃなくちゃ可笑しいよ」
「少なくとも思い人がおばさんな訳ないよ」
「セレスって有名なんですわね?」
「少なくとも僕たち以上にこの辺りじゃ知られているんじゃないのかな?」
「そうだな、さっきからセレスの話ばかりだ」
「理由があって僕はこの近辺でのみ活動していたからね」
「何か理由があるのかしら?」
「僕も知りたいな…教えてくれるかな?」
「私も聞きたい」
「説明しにくいから、明日には僕の家に着くからその時に話すよ」
「セレスの家か凄く楽しみ」
「僕も楽しみ」
「私もな」
4人で街を回った。
ただ、露店を見たり、服をみたりするだけだがそれが凄く楽しく感じる。
串焼きを買って食べて、露店ではアクセサリーを見た。
ガラス玉の入ったネックレスを気に入ったようなので4つお揃いで買った。
お酒でも飲もうとかと思ったら…僕も含み4人とも飲んだ事が無かった。
酒場で飲んで正体がバレた時の対処が出来ないと困るので…ワインを1瓶買って帰った。
4人ともお酒にはどうやら弱かったみたいで飲んだら眠くなり…そのまま一緒に寝てしまった。
朝起きて…凄い恰好の彼女達を見た時は..凄く嬉しかった。
こんなだらしない姿は多分僕しか見た事が無いだろう…
「それは恥ずかしいから忘れて」
「僕も忘れて」
「思い出しても恥ずかしくなる」
「だーめ、涎垂らして寝ている姿も、凄く可愛かったから忘れられないよ」
「全く、だけど可愛いなら良いわ」
「僕も仕方ないね見せちゃったんだから」
「仕方ないな、忘れて貰えないなら諦めるしかない」
「さぁ…そろそろ行こうか?」
「「「うん」」」
4人で楽しく歩きながら話した。
僕が此処を出た時は1人だった。
そして凄く心配だった。
ルシアの街から更に少し歩いた外れに僕の家はある。
「さぁ着いたよ! 暫くぶりだから少し埃っぽいけどね」
「これ、本当にセレスが…お屋敷じゃない?」
「セレス15歳だよね? なんでこんなお屋敷持っているの?」
「10年間頑張ったにしても、凄いな」
「詳しい事は中で話そうか?」
「「「うん」」」
カギを開け中に入った。
ルシアのギルドに管理を頼んでいたから、余り汚れていない。
「何から話そうか?」
「セレスに任せるよ」
「僕も」
「私も」
「それじゃ、払い下げって知っているかな?」
「払い下げ…何それ」
「僕も知らない」
「私も知らない」
「払い下げって言うのは高貴な身分の方が、何か理由があって婚期を逃した場合に身分の下の者に嫁ぐ事の隠語なんだ」
「そういう物があるのね! 初めて知ったわ」
「僕も初めてかな」
「それがどうかしたのか?」
「普通は王族や高位貴族で婚期を逃した貴人が格下の家に嫁ぐ事を言うんだけど…もし三人が勇者に嫁がない事があるとしたらこの払い下げになると思ったんだ」
「私達が…そうなの?」
「僕が払い下げ…当事者なんだ」
「私もか…」
「そうだよ! この払い下げって言うのが大変なんだ、当人同士が如何に好き合っていても、条件に見合わないとお見合いすら出来ない」
「凄く大変なのね!」
「条件があるんだね」
「大変な物なんだな」
「うん、まず、三人が払い下げになったとして、聖女、賢者、剣聖だから…恐らくは貴族達との取り合いになるのは必至、僕は孤児だから相当努力しないとお見合いにたどり着けない…これはあくまで予想だけど冒険者ならBランク位がギリギリお見合いできるライン、そして屋敷持ちじゃ無ければ選考で多分落とされる。」
「「「そんなに厳しいの(か)?」」」
「あの…三人は三職なんだよ当たり前じゃない? それに本来は払い下げは王族や貴族相手だから屋敷位は無いとね」
「だけど、それにしたって屋敷を買うのは難しいんじゃない」
「僕の為に頑張ってたのは解るけど10年だよ」
「これをどうやったら買えるんだ」
「うん、買えないから作ったんだ…依頼を受けて手に入ったお金は貯金とこの家作りにだけ使った」
「これ、セレスが作ったの…凄いわ」
「だけど、そんな事したら何も出来ないじゃないかな」
「暇さえあれば依頼と家作りだけ…そういう事か?」
「当たり前じゃない? 僕が恋した相手は三職なんだから、お姫様を貰う位の気持ちじゃなくちゃ手なんて出せない、聖女、賢者、剣聖、そんな大それた人を妻に持ちたい…そう願うなら人生全部掛けなくちゃね」
「セレス…凄い頑張ったんだ…」
「僕の為にそんなに頑張ってくれたんだね…凄く嬉しい」
「私の為にそこまでしてくれたなんて…ありがとう」
「うん、9歳の時から国の官報を睨めっこしてたよ」
「官報?..何で」
「何かあるのかな」
「官報なんて見た事無いな」
「ほら、僕が9歳になるって事は三人は20歳、勇者以外とも結婚出来るしいつ、払い下げになっても可笑しくないでしょう」
「そう言えばそうね20歳になれば他の方とも結婚は可能になるわね」
「僕も聞いた事があるよ…そうか、勇者以外とも結婚出来るけど、自由では無かったんだ」
「私も勘違いしていたな」
「うん、流石に成人しないと結婚出来ないから…15歳までずっと結婚しませんようにと祈っていたよ」
「あら、そう考えたら行き遅れたのはセレスのせいなのね…」
「きっと、女神様が僕の結婚の邪魔をしてたのかな?」
「多分、私は男受け悪いから…そんな事しなくても売れ残っていたかもな」
「そこ迄頑張っても、僕は魔法騎士だから1人としか結ばれないし…勿論申し込みも1人しかできない」
「「「あっ」」」
「だからね、三人とこうして結ばれるなんて、本当に奇跡なんだ..多分信じられない程低い可能性だと思う」
「うん、そうだね」
「魅了が解けたのが早くても駄目だった」
「勇者がクズで無かったら無理だった」
「だから、凄く嬉しくて仕方ないんだ…本当はずっと感動しっぱなし、最初に会った時は心臓が止まるかと思ったよ…」
「その割には冷静に話されて結婚まで早かった気がするけど」
「僕も凄く冷静だと思ったけど」
「私もとても15歳とは思えなかったぞ」
「本当は心臓バクバクで手にも凄い汗を書いていたよ」
「へーそうなんだ、全く気が付く無かったわ」
「僕も..最初は本当に15歳なのかなって疑っていた位だよ」
「そうは見えなかったな」
「だからね、これは僕が三人を幸せにする話じゃ無いんだ..10年来の初恋が実って三人の素敵な女性と結婚して幸せにして貰ったそう言う話」
「そうなんだ、私と結婚出来てセレスは幸せなんだね…うん良かった」
「そうか、セレスは僕と結婚出来て幸せなんだ..今日の夜は思いっきり頑張っちゃおうかな? 新婚なんだからね」
「私みたいな者を貰って幸せなんだな…うん凄く嬉しい」
「愛している、結婚してくれてありがとうーーっ」
「「「私(僕)も愛している(わ)、ありがとうーーっ」
4人は夜になるまで泣きながら抱きしめ合った…
(第一部…完)
少し置いて 第二部がスタートします。
【閑話:第二章が始まる前】 この世界はクズばかり!
どう考えても可笑しい。
頭のなかがモヤモヤする。
魅了など洗脳系スキルで操られていた場合は「無罪」これは当たり前だ。
まして彼女達は被害者だ。
傍から見て気が付かない物だろうか?
王都で暮らして王族の傍に居たのだ…気が付かなければどう考えてもボンクラだ。
人類の為に尽くしてきた彼女達が奇行に走ったら気が付かない筈がない。
まして、王宮には鑑定や真偽に強い者も沢山いる。
そういう者が居るからこそ、国は騙されない。
まぁ良い…相手が勇者だから、見逃さず負えなかった。
これだって許せないが…此処までを仕方なかったそう考えても可笑しいだろう。
彼女達は 聖女、剣聖、賢者だ、本来は莫大な財産があった筈だ。
その殆どがクズ(勇者)に取られていたらしい、屋敷をはじめその財産は勇者の物になっていた。
これも仕方ないとしよう…
問題はその後だ。
勇者が魅了を使っていた事が解り、処刑された。
魅了に掛かっていた者は無罪。
そう考えたなら、彼女達は勇者の被害者だから…本来は勇者が彼女達から搾取した物も返して貰える筈だ。
だが実際は違う。
返ってくる所か…彼女達がギルドへ預けていた僅かなお金迄国は差し押さえたらしい。
ギルドは彼女達のSランクすら破棄して最低のFランクに落とした。
たしかにパーティーは失効した、だが個人のランクまで奪うのは可笑しい。
三禁(ぬすまず、犯さず、殺さず)に触れるというが王自らがそれを無罪としたんだ…Sランクの個人ランクが無くなる訳無い。
王が無罪と言った物のお金を国が差し押さえるだろうか?
する訳がない。
彼女達の財産を僕は僅かと言ったが…結構なお金がある筈だ..彼女達の僅かは一般人なら遊んで暮らせる位の財産の筈だ。
また、貴重な素材もあるから、掠め取った、そう考えて良いだろう。
クズは勇者だけじゃない、国も、ギルドも全員が寄ってたかって彼女達の物を取り上げた。
そういう事だ…
一番楽しい時期を「魔王討伐」なんて事に費やして…
その後はおもちゃの様にされていた彼女達….
そんな彼女達から寄ってたかって全てを奪った。
王都の人間だってそうだ、魅了に掛かっていたのは知っていただろう?
その前に彼女達が戦ってくれなければ、王都は滅んでいても可笑しくない。
そんな恩も忘れている。
つまり、王都の人間はクズしか居ない。
だから、この分は取り返しても良い筈だ。
別に復讐とかは考えてないよ?
だけど、彼女達がやった事で得た利益の分、彼女達が失った物を取り返しても良い筈だ。
「セレス…どうしたの難しい顔して!」
「クラリス、何でもないんだよ…」
「何かあったなら僕に相談してよ」
「そうだね…だけど考え事していただけだよ!」
「そうか? 悩み事があるなら聞くぞ?」
「ありがとう」
何処までも優しく、お人よしな彼女達を騙したんだ。
僕は許せない。
第二章 復讐編 隠蔽(ステルス)
ルシアで暮らして2週間が過ぎた。
「おはようセレス」
「おはよう…セレス」
「よう起きたのか」
「皆おはよう…」
しかし、皆隙が無い、僕は前に見ただらしない涎を垂らした顔が見たいのに、僕より遅く寝て、早く起きるから見る事が出来ない。
「皆、起きるのが早いね…僕は三人の寝顔が見たいのに」
「幾ら夫婦でも悪趣味だよ…私の寝顔何か見ても面白くないでしょう」
「僕も余り見られたく無いよ…」
「前に見られて恥ずかしかったからな」
三人とも凄く元気になった。
最初とは随分違う…
だが、今だに魔法は昔ほど使えていない。
しいて言えば駆け出し冒険者レベルにようやく成れたレベルだ。
本来の彼女達は人類最強…恐らく勇者が死んだ今、そう名乗れる実力はある筈だ。
なのに…恐らく「魅了」で壊されてしまったから..この通りだ。
多分、こうなる事を国もギルドも知っていたのだろう。
それじゃなくちゃ、最大戦力を捨てるわけが無い。
考えれば考える程腹が立つ。
それに明るく見える彼女達も実はそんなに心の傷が癒えた訳じゃない。
夜になると夜泣きするんだ。
「セレス…ごめんね、こんな汚れた体で..ごめん」
「いや、嫌だよーーーっ僕はゴミじゃないんだ..もう違うんだよ..嫌だー」
「私は剣聖だ….クズじゃない..私は花嫁なんだ..違うんだ…そんな目で見ないでくれ」
何時も悪夢を見てうなされている。
「どうしたのセレス! 考え事?」
「何か悩んでいるんなら僕が聞くよ? こう見えても僕は賢者だからね?」
「年上だからな、人生経験なら少しは長い、相談してみろよ…」
彼女達はお人好しで何処までも優しい。
だから、ずうっと悩んでいた。
復讐について話して良い物かどうか?
「復讐したい」のは彼女達の気持ちじゃ無い。
彼女達を酷い目に合わせた人間に「復讐したいのは僕の気持ち」だ。
この復讐に彼女達を巻き込んで良いのかどうか悩むんだ。
結局、考えた末、僕は暫くは僕が自分だけでする事に決めた。
「いや、前にクラリスが言っていたじゃない? 4人で魔王城に突っ込んだって…どうやったのかなって」
「あははっ、そんな事を考えていたんだ、僕が教えてあげるよ…隠蔽(ステルス)の呪文を使ったんだよ!」
「隠蔽? 初めて聞いたよ?」
「そりゃそうだよ! 僕のオリジナルだもの、世界で使えるのは僕だけだからね! それと伝説の解錠、この二つを身に付けたら怪盗にだってなれちゃうね」
「そうか? そうだよね…そうじゃなきゃ魔王城なんて突っ込めないよね!」
「もしかして…セレスはステルス覚えたいの?」
「そんな世界で一人しか持ってない呪文覚えたいに決まっているよ」
「そうだね…セレスなら良いかな? そうだ今日は僕が料理当番なんだけど、体に良い特別料理を考えたんだ不味いんだけど、完食してくれたら教えてあげるよ!」
「….」
「…..」
「ううっ..解ったよ頑張って完食するよ!」
リタの言う不味いは多分、想像の上をいくに違いない。
「それじゃ、これから気持ちを込めて料理を作るから…食べ終わったら特訓開始だよ」
「ありがとう…リタ」
「うん」
魔法を教えるのが楽しみなのかな?
リタが何時もより増して笑顔だ….
「さてとちゃっちゃと料理をして…特訓、特訓と…」
「あのぉーリタ…本当に良かったのですか?」
「うん? 何が?」
「隠蔽の事よ? あれは世に出したら不味いと、貴方が自分の心にロックまで掛けて封印した物ですわ…解錠と一緒に」
「そうだね…だけど僕はセレスには出し惜しみは一切しないつもりだよ? それでもし、セイルが死んだりしたら嫌だからね!」
「どう言う事ですか?」
「絶対にエルザには内緒ね…多分、セイルは何かしようとしているよ!」
「まさか!セレスに限って、そんな!」
「僕の勘を見くびらないで…僕は賢者なんだよ! クズの勇者に脳筋の剣聖、頭お花畑の聖女と一緒に魔王を倒したね」
「私が、頭お花畑?」
「あはははっ..ごめん、それは置いといて、頭をクールに保って冷静に考える、それが賢者なんだ..」
「確かにそうですわね」
「セレスは凄く優しい、でもね僕たちが辛い表情をしたり、悲しい顔をした時に、苦虫を嚙み潰した様な顔をしているんだ」
「それは私も気が付いていましたわ」
「あれは絶対になにかやるよ!」
「なら止めないと」
「止められる? 僕たちの事を心から愛して、酷い事した人へ怒ってくれているのに?」
「ううっ無理ね!」
「そう、だから僕は気が付かない振りをするの…だけど、セレスが聴いてきたら、禁呪でも何でも教えてあげるつもり…極大呪文もね」
「そうね? 私もそうするわ」
「だって、僕が教えなかった為にセレスが死んだり、怪我したりしたら嫌だもん!」
「そうね…所で、この凄く臭い料理…何?」
「リタ特製、脳みそと心臓と精巣のスープ…」
「そんな物をセレスに食べさせるの?」
「うん」
何でそんな笑顔なのかな?
「さぁセレス、料理が出来たよ…全部食べてね」
流石のセレスも引いているわね。
「あの、クラリス…あれ何?」
「リタ特製スープですって…匂いだけで..きますわ」
生臭さと何かが腐ったような臭い..うぷっ、これを食べるのか?
流石に…
「これね! 凄く不味いの! だけどね! 体には凄く良くてね…僕が好きなら今日だけで良いからね、た.べ.て」
これじゃ食べない訳にいかないな…
吐き気に襲われながらもどうにか食べた。
途中、少し戻したら..掬って食べさせてくるリタが鬼に見えた。
「うん、うん、偉い、偉い!..はい凍菓子作って置いたからね口直しに食べると良いよ」
「ありがとう…所で、さっきの料理何? 凄く不味かった」
「勇者クロードの脳みそと心臓と精巣だったりして!」
「ぶふぁっ…冗談だよね?」
「うそ、うそ冗談、羊の物だよ…だけど賢者って頭が良くないといけないからって、こういうの良く食べさせられんだ…一度その辛さを味わって貰いたかっただけだよ!」
「1度でも辛いのに大変だったね」
「うん、凄く大変だったよ…あはは、こんな酷い物食べさせた僕を恨んでも良いよ?」
「大好きなリタを恨む訳ないじゃない?」
「そう、それなら良かったよ」
僕はね、君の為なら出し惜しみしないよ…
何かの副作用
食事が終わり暫く食休みを取ったのだが、何故か体が熱い。
「リタ…体が熱いんだけど」
「あの手のスープは精力増進もあるからかも知れないね…もし魔法の練習が終わっても辛かったら言って! 僕が相手してあげるから」
「ちょっとリタ! 独り占めはズルいですよ!」
「そうだぞ、私も…」
「だってセレス! よく考えたらセレスは若いもんね…修行が終わったら皆でしようか?」
「ごめん…はぁはぁ、リタ」
「良いって、僕がした事が原因だからさぁ」
「はぁはぁ、ありがとう」
「うん、それじゃ早速使ってみるね..ステルス」
「嘘、リタが見えなくなっちゃった…凄い」
「相変わらず、凄いですよね…本当に消えちゃうんだから!」
「ああ、気配すら無くなるんだからな」
「解除…どうだった?」
「リタが見えなくなったよ…凄い!」
「実はこの魔法の名前、隠蔽、ステルスもね実はペテンなんだよ!」
「どういう事?」
「簡単に言うと見えなくなるんじゃなくて、知覚されなくなるんだ!」
「どう違うの?」
「つまり、僕はセレスに実は見えているのに、セレスが勝手に居ないと判断している、そんな所かな」
「見えているけど、見えていない…」
「大丈夫、この話はアカデミーですら理解できない人ばかりだから、研究者達は一生懸命「消える」魔法の研究をしていたんだよ? ああっ僕もその研究者の一人だったんだけど、原色や色素を変えて景色に溶け込むんだって…まぁタコやカメロン(カメレオンに似た生物)みたいにね」
「それで完成したのがこの魔法?」
「違うよ…よく考えたらタコが変色してもカメロンが変色しても一瞬解らないだけで見破られて結局は捕食されてしまう事も多い…だからこれは根本的に研究しても無駄なんだと思う…そこで僕が考えたのは、全く違うアプローチで「居る事が解らなく」する方法を研究したんだ」
「居る事が解らない? そんな事できるの?」
「普通はそう考えるよね! だけど、昔はそういう方法が使える人が居たんだ…例えば狼に囲まれた状態で「私は此処に居ない」そう思い続けるていたら、狼が気が付かないで、その人間の周りをうろつくだけうろついて去っていった、そういう話が各地にあって、そこから生み出されたのがこの魔法」
「何だか凄い話だね…流石リタだね」
「そうだよ? 僕って天才だからね…まぁ、簡単に言うなら、見えているのに、認識しない、そこに居ないと考えられてしまう、そう言う事だね…だけど、僕は今は調子悪くて、自分だけで精いっぱい、しかも一瞬だけ…本来なら何日でもそのままで居られるのに」
「何日も…凄すぎるよ」
「ほら僕って天才だからね…それじゃ早速やってみようか? 詠唱を教えるから、後はそうだね、「僕は此処に居ない」そう考えて…」
「やっぱりセレスは凄いね? 前も思ったけど呑み込みが早い! まさか3時間で覚えるなんて思わなかったなぁ…しかも解錠の呪文なんて一発だし」
「そんな事ないよ…リタの教え方が良いからだよ!」
「それもあるよ…僕は天才だからね!」
「うん、本当にそう思うよ!」
「セレスは凄く可愛いね…どこかの脳筋と頭がお花畑とちがうね!」
「リタ、頭がお花畑って私の事かしら? この腹黒賢者」
「脳筋の方がまだ腹黒より良いだろうが?」
「あれっ僕は2人の事だなんて言ってないよ?」
「そうですか? だけどリタの友達なんて私達しかいないでしょう!」
「そうだな、お前はボッチだったからな」
「僕がボッチんな訳あるかーー沢山の…あれっ、兎も角セレスは信じちゃ駄目だからね!」
なんだか楽しそうだな。
気のせいかリタが昔に戻った気がする。
その分、腹黒さも戻ったようだが..
僕は今水風呂に入っている..だけど…駄目だ体が火照ってしょうがない。
しかも、下半身なんて立ちっぱなしだし、幾ら冷やしても小さくならない。
「リタ、あの料理凄く体に良いのは解ったけど…効きすぎだよ、これじゃ..」
「ごめん、僕は女だから体が火照った位だったけど、男の子だとこんなになるんだね! 直ぐに楽にしてあげるよ!」
「ちょっとリタずるいわよ」
「そうだぞ、私だって相手したい」
「それじゃ、僕が暫く相手しているから、直ぐに二人は水風呂で汗を流してきて…二人が出て来たら今度は僕が汗を流してくるから」
「「解った(わ)」」
若いって凄いや…あれは若い子には効きすぎたのか?
確かに滋養強壮に良いという話だし…セレス様にスペシャルにしたけど…
だけど、此処までなるものなのかな..
「リタ…」
「もうセレスったら仕方ないな…僕を自由にして良いよ」
「うん、ありがとう…ごめんね」
「はぁはぁはぁ…セレス、そんなに強くしちゃ…」
いつものセレスも良いけど…今日のセレスは..凄い。
一心不乱に僕を求めてくる、それでも触り方も凄く優しいし…だけど、優しさの中に荒らしさがあって凄いとしか言いようがない。
こんな事されていたら、冗談でなく馬鹿になる…
体が、体が..本当に可笑しくなる。
しかも、何回もいかされているのに…一向に止まらない…セレスだって何回もいっているのに…しぼまない。
途中からは刺されたまま腰が動き、セレスの口や両手が僕を求めてくる。
僕が何かしてあげようと思っても、先回りされてセレスからされてしまう。
いつものようなキャッチボールじゃない…一方的なセレスからの攻撃。
なのに嫌じゃない…求められる事の喜びで幸せになっちゃう。
気が付くと僕は口から涎を垂らしていた…口が半開きで閉じられない。
快感に体がついていかない..
「セしぇれすぅー もうっと..」
頭がピンク色で染まって…何でだろう? 幻覚でピンクと緑の像が見えた。
「何あれ..凄いっ…ゴクッ」
クラリスが先に上がってきた。
「セレしゅー選手こうたいだよ…続きはクラリスお願い…」
優しく僕からセレスは離れた…離れざまにキスをしてくれて…あはははっセレスって野獣になっても優しい。
僕はまたの間から白い液体がこぼれない様に注意しながら風呂場に向った。
「うんぐうぐ..はぁはぁセレス、セレス、セレス」
「クラリス..はぁはぁはぁ」
「そんな、そんなに強くされたら私は、私は…ああああああっ」
クラリスがキスをされならがら悶えていた…
あの分じゃ僕みたいな状態になるのも時間の問題だよ…
三人一緒も考えたけど…すぐに使い物にならなくなる。
だったら、交代で休み休み相手した方が良い。
「あのリタ..私大丈夫だろうか?」
「うん、気にしないで良いよ! 直ぐに汚されちゃうからね」
エルザが僕を見て驚いている。
「良いからすぐに行って…多分クラリスがそう持たないから」
「あああっいえるざぁ…交代、セレス..私少しやすむぅから..」
「ありがとう、クラリス」
クラリスはふらふらと倒れそうになりながら風呂場に向った。
「セレス..あああっ最初からそんな事を…しかもああああっ」
「明るい所だとエルザが良く見えるから…ね」
「は恥ずかしいから…そんな事しないで…しないでよいんだから…そうだ、私が、私がするからな」
「だーめ..そんな事したらエルザが見えなくなっちゃうから」
「ああああっ駄目だ…酷い、私じゃ隠せないじゃない…か..恥ずかしんだ」
「僕は気にしないよ…」
「ああああっもう良いよ、解ったよ…だけど…はぁはぁはぁ..あああっ」
「リタ…何をしたのよ…はぁはぁ、何あれ」
「うん、クラリスの言う通り、僕はセレスに確かに何かした」
「リタ、場合によってわ、貴方でも許しませんよ」
「ちょっとだけ僕を信じて…後で詳しく話すから」
「解りましたわ…それで一体何をしたのですか?」
「奪われっぱなしじゃ納得いかないから…一つだけ僕も持ち出してきたんだ…それをセレスにあげただけ」
「おいっーーーリタあああっりゅた変わって、変わって..あわたしももう持たない..」
「今日の所はセレスを堪能できるんだからクラリスも嬉しいんじゃない」
「まぁね…うん」
結局、セレスの性欲は留まる事を知らず…深夜まで続いた。
合計36回もセレスは性を吐き出し、それぞれが12回づつそれを受け止めた。。
ベッドは精子だらけになり、汗とまざりあって異臭を放っていた。
その中で4人は疲れ果てた様に眠っている…手を握りながら。
詰んだ世界 END ENDじゃないよ? 誤解しないでね…
「すいません、どうしてもという指名依頼が来まして2週間ほど出てきます!」
「指名依頼じゃ仕方ありませんね! 行ってらっしゃい!」
「ちょっと寂しいけど僕も我慢するよ」
「私もな寂しいな」
「本当は女性ばかりを置いて行くのは心配なのですが…すみません」
馬鹿ねこんな私達を襲う訳ないでしょう。
少しは綺麗になったからってスラムの人間ですら襲わなかった僕達なのに..
私を襲う訳ないだろうが…
「大丈夫だよ…気にしないで行って来て」
「うん平気だよ…頑張ってね僕は待っているからね」
「私もな…はははは今の私じゃ足手まといだからな」
「それじゃ行ってきます!」
「それでリタ、説明はしてくれるのよね?」
「うん? 何の事だクラリス? もしかしてこの間のセレスが可笑しくなった件か? まさか媚薬でも入れたのか?」
「そろそろ話して置いた方が良いかな? 王都での余りに酷い扱いに僕は腹が立っていたんだ」
「そうなの? だけど酷い事したんだから仕方ないじゃない?」
「そうだよ…」
「倫理的にはね…だけど僕たちは王が無罪にしたんだよ? 法的に無罪なら、なんでギルドのお金を国が差し押さえるのかな? 差し押さえる訳ないよね? つまり僕たちのお金をギルドが横領したんだよ? しかも裁判で無罪になったのなら三禁も関係ないからギルドランクはSのままの筈だよ!」
「そそうよね…うん確かにそうよ!」
「確かにそうだな…だがそれなら、何故あの時言わなかったんだ」
「言っても無駄だよ…ギルド全部がグルなんだし、あの状態で王宮に訴えても、王宮も僕たちの敵なんだから無理!」
「王宮が敵ですって…何でですか?」
「それは無いんじゃないか?」
「良い? 僕たちかなり性格が可笑しくなっていたんだよ? 普通直ぐに鑑定位する筈だよ! 最も、王宮は勇者より…まぁクロードと結託して僕たちを貶めていたか…勇者との間に何かあって見逃していたんだろうね」
「確かに、そう考えられるわね…」
「そう言う事か許せないな」
「まぁどっちみち、僕たちにはどうにか出来る問題じゃないしね…王都の市民まで嫌っているんだからどうしようもないさ」
「それは解ったけど…それと今回のセレスの件は何か関係があるの?」
「それが一番気になるな」
「余りに酷いから…僕は盗んだんだよ…」
「何をですか?」
「何か持ち出したのか!」
「クロードをさぁ」
「「クロード!」」
「正確にはクロードの脳みそと心臓と精巣かな?」
「それで何か出来るのですか!」
「何か起きるのか?」
「アカデミーでは昔、人工勇者を作ろうって考えた事があるんだ…ほら教会の方では愛し子だっけ」
「教会の方は聖女と勇者の間に子を作り…両方のジョブ持ちを作る計画でしたね…まぁ多少優秀な子が産まれるだけ、それだけでしたわ、今では外聞が良いから、聖女と勇者を結婚させて、その間の子を「愛し子」と呼ぶ、そんな感じで儀式に近いわ」
「アカデミーでは「勇者の精子を使い勇者を量産出来ないか」と考えていたんだけど失敗したんだ」
「それじゃ意味が無いんじゃないか?」
「うん、だけどね…僕気が付いちゃったんだ、複製は無理だけど、勇者のジョブやスキルをね、女神に返さずに掠め取っちゃう方法」
「「えっ」」
「まさか一か所じゃ無くて3か所に刻まれていて一か所でも無くすと勇者にならないなんて普通は解らないよね! しかも死んでからも数年体に宿っているなんて…道理で、次の勇者が現れるのに時間が掛かる訳だね」
「まさか、それって…」
「脳みそ、心臓、精巣の3か所に宿っているなんてね…あっこれは僕しか知らないから絶対に秘密にしてね」
「もしかして、セレスに食べさせたのって」
「そうだよ? クロードの脳みそと心臓と精巣、これで多分、セレスが勇者になると思う…」
「あの…それリタはどうやって、それ手に入れたの?」
「うん、勿論死体からだよ? クロードが英雄墓地に祭られたら大変だったと思うけど…罪人墓地だったから簡単だったよ! 夜中に掘り起こして後は解るでしょう」
「だから、偶に夜中に居なかったのね」
「私より、汚かったのはそう言う事か?」
「結構辛かったよ! 腐らないで維持するの…そして悩んだんだ僕…」
「やはり、何か副作用があるのね..何て事するのよ…セレスに何かあったら許さないわよ..リタでもね!」
「待て、落ち着けクラリス、話を聞こう!」
「あははっ、クラリス、僕がセレスに酷い事する訳ないよ! セレスは僕の命より大事だし二人は僕の命と同じ位に大事だからね…」
「それじゃ三人以外は」
「虫けら以下かな?」
「おおい、それじゃ一体何を悩んだんだ」
「セレス以降、もう勇者は現れない!…そして、聖女も剣聖も、賢者も僕たちが最後…あはははっ!」
「「どう言う事だ!(です!)」」
「恐らく女神であっても「勇者」のジョブや僕たち「三職」のジョブは作れない…これは仮説だけどね、死んでから恐らく天界にジョブが戻り使い回ししているんだと僕は思う、そうじゃ無ければ、負けたらすぐに次の勇者を寄こしてくれる筈だからね…だけどもう、セレスに無理やり入れちゃったから天界には帰らないね」
「ちょっと待って、それならセレスが死んだら天界にジョブは帰るはずよ!」
「その筈だ」
「帰らないよ! 本来は入らない器に入れたんだから出て行くと困るから固定しちゃったもん、セレスが死んだら一緒にジョブも無くなるね」
「固定しちゃったもんって…リタ」
「それって…」
「これは本当の仮設、僕にも解らないけど、もしかしたらジョブにも意思があるかも知れない…だったら、持ち主が死ぬと自分が消滅する…そう解れば消滅したくないから多分死ぬ気で守るかもね…その主をさぁ…それにセレスは魔法騎士のジョブもあるからWだよ..凄いよね」
「固定なんてそんな簡単に出来る物なの?」
「そんな話は聞いた事が無い」
「うん、やったじゃん..三人でいっしょにさぁ…」
「まさか、この間の行為が…それだったの?」
「だから、あんなに激しく」
「そう…「聖女」「剣聖」「賢者」の生命力まぁ性的な物で固定したんだよ…ちなみに「聖女」「剣聖」「賢者」のジョブも皆に固定して置いたよ」
「ちょっと待って、そんな事したら…私達が死んだ後には「勇者」「聖女」「剣聖」「賢者」は現れなくなるじゃない…」
「それは不味くないか…世界が」
「終わるね…これで世界は魔族の物…なーんてね、終わらないよ.. 優秀な聖騎士や魔導士が戦えば良い事だよ、何万の兵を率いてね..魔王でも20万人位で挑めばどうにかなるって、まぁ戦った20万人と王都の人は死ぬかも知れないけどね」
「それ違うわ…魔王は「勇者」しか倒せないから…そこまでして出来るのは封印よ!しかも「聖女」も「賢者」も居ないから精々が20年位しか持たない封印になるわ」
「その前に「剣聖」も居ないんじゃ…封印の間の時間稼ぎも難しい」
「別に良いんじゃない? それはセレスや僕たちが死んでからずうっと後だからね」
「本当に怒らせちゃいけなかったのは、魔王では無くて賢者でした…」
「賢者を怒らせた結果…国が滅びました…」
FIN
「ちょっと待ってよ、まだ終わらないよ..辞めてよ僕が真のボスキャラで終わるの!」
「だって、もう国詰んでいるいるわ…もう終わりじゃない?」
「国どころか世界が終わっても可笑しくない」
「だーから、それは遠い未来の話でしょう? これじゃ僕たちは幸せになれていないじゃんか..」
「世界を滅ぼした腹黒賢者が何を言うのかな?」
「そう、近い将来、世界は滅びる」
「だから、まだ終わってないし…それに、これは僕の復讐! だけど、セレスは違う…あれだけ僕たちが好きな子が、何かしない何て考えられないでしょう?」
「そう…そうだわ!」
「確かにそうだ…」
「だから、僕はセレスを応援しようと思うんだけど…二人はどうする?」
「決まっているじゃない…私がセレスの味方にならない訳ないわ」
「私だって、そうだ」
「それじゃ、決まり!」
もう既に世界は詰んでいるのに…まだそれは終わりじゃ無かった。
狙われた王都…
セレスは王都へ向かっていた。
最初に何処から手をつけようか?
ギルドを先にするか王宮を先にするか?
三人の様子を考えたら王宮を先にするのが正しい。
だけど、夜まで時間があるから嫌がらせ位しても良いだろう。
「おじさん、串焼き1本!」
「あいよ銅貨2枚ね!」
静かに記録水晶を用意した。
「あれっおじさんの所は串焼き1本金貨1枚じゃないの?」
「金貨1枚…ああっそう言えば、ムカつく聖女にそんな事言った事があったな!」
馬鹿な奴だな…こんな簡単に言質がとれた。
僕は街の衛兵を呼んだ。
「どうしたんだ..」
「これを見て下さい!」
「おい、俺何かしたのか? 悪い事した記憶がないんだが…まさか腐っていたとか? そんな訳ないよな!」
「この画像がどうかしたのか?」
勇者支援法の話をした。
クラリス達は過去の功績を剥奪されただけで「聖女」「剣聖」「賢者」じゃ無くなった訳ではない。
多分、何か起きた時に呼び戻せるように地位はそのままになっていた。
「勇者支援法で勇者パーティーは他の人間より安く物が買える」
当たり前の事だ、魔王を倒す為に戦っているから、支援する目的で最安値で物が買えるそういう法律だ
「それがどうかしたのか?」
「このお店は聖女様に串焼き1本金貨1枚で販売した、そういった…と言う事は法律で串焼き1本あたり金貨1枚以下で販売出来ない筈ですよ!」
「うっ、確かに…そうなるな..」
「あの、それはどういう事なのでしょうか?」
「この店は、串焼き1本金貨1枚以下での販売は出来ないそう言う事ですよ!」
「そんな、串焼き1本金貨1枚じゃ誰も買わないし潰れちゃいます」
「そうだな…仕方ない見逃してやる」
「お恐れながら..勇者支援法を無視した人間の処罰をしないなら訴えますよ」
訴えられたら「首になる」そういう法律だ。
「仕方ない…法は法だ、この店は今後串焼き1本金貨1枚以下で販売する事はまかりならぬ…破った場合は、店の許可が無くなり罰がある..そう考えるんだな」
「そんな..もう仕事が出来ないじゃないか?..おい、お前何でこんな事するんだよ? こんな事してお前になんの得があるんだ!」
「別に…僕は法を犯した犯罪者を正して貰っただけですよ?」
お店の親父の泣き声が聞こえてきたが知らないな、僕は「法律」に則って裁いて貰っただけだ。
セレスは同じ様に、安宿も訴え、安宿なのに金貨1枚以下では泊まれないようにした。
「そんな…俺はどうすれば良かったんだよ..犯罪まがいの事をしていた奴らにちょっとした嫌がらせをしただけじゃないか?」
「彼女達は魅了でやらされていた…だけどあんたは「本当に犯罪」をしていた…罰されて当たり前じゃないかな」
泣き言言っても仕方ないだろう…だって本当の犯罪者なんだからな。
他にもクラリス達に酷い事した人間は沢山居るけど特定できないから仕方ないな。
そして夜を待った。
ギルドへの仕返しは時間の関係で後まわしだ…
今回王宮から返して貰うのは、エリクサイヤーと彼女達の武器とお金だ。
世界に僅かしかないエリクサイヤーのうち5本がこの国の王宮がある。
この5本のエリクサイヤーを手に入れるのが今回のメイン、その次に彼女達の武器に嫌がらせに聖剣…そして収納袋に入るだけの財宝。
そんな物だ。
しかし、簡単すぎる…これは王宮側が無能なのでなくリタが優秀…そう言う事だ。
姿が全く見えない状態で王宮に入り….解錠の呪文で扉を開く、簡単だ。
簡単に宝物庫と薬品庫に入り込み、目的の物と思われる薬品らしきものを片っ端からしまい込んだ。
ついでに聖剣から魔剣、聖杖を含む武具まで全部…
これで長居は無用だな…最後に火を放っておしまいだ。
明日には大騒ぎになるだろうから…とっと王都を後にしよう…
その頃、リタ達は交易の街ザールに来ていた。
「リタ、ザールに何か用があるの?」
「ここは魔族との戦いが終わった後に開かれた交易場所だと言うのは知っているよね?」
「ええっ知っているわよ」
「勿論だ」
「だからね、此処には高位の魔族が居る…名指しで言うなら悪魔神官ジャガルが居るよ!」
「嘘、彼奴がいるの?」
「あんな物騒な奴が…」
「そこで質問…「聖女」と「剣聖」と「賢者」が此処にいて勇者が居ない…そして何があっても三職は王都を助けに行かない!そう話したら、面白くない?」
「そんな事したら王都が危ない目に会うわ」
「場合によっては王都が襲われるぞ」
「それで良いんじゃないかな? 元々僕らが居なければ終わっていた街だし…」
「リタ、人類の将来を終わらせただけじゃなく…そこ迄するの!」
「幾ら何でもそこ迄する必要は無いだろう…」
「多分、セレスは国を相手に何かすると思うんだ、僕…多分バレないと思うけど将来気が付かれて追手が掛かるかも知れない、なら少しでも王都が危機になる方法を保険として掛けておきたいんだ」
「そう言う事なら仕方ないわね…王都の人達には犠牲になって貰いましょう」
「まだ確実にそうなる…決まって無い」
こうして私達は、ジャガルに会いに向かった。
王宮にて…
その日王宮はパニックになっていた。
宝物庫から火が起こり、その火は大きくなっていた。
そして、薬品庫からも火が起きた。
火そのものは水を使う魔法使い達によって消し止められたが…その際にエリクサイヤーを含む貴重な薬品。
聖剣を含む聖武具が無くなっていた。
「それは誠か?」
「はぁっ! 燃えて無くなったのか、盗まれたか解りませんが無くなっておりました」
「宰相よ…これらの物が無くなった事から考えられる事は無いか!」
「王よ、想像もつきません! 聖剣や聖武具は有名すぎて裏社会でも売れないでしょうし…エリクサイヤーも同じです」
「確かに…」
「お恐れながら…」
「おお、司祭よ何か気が付いた事があるか?」
「それは魔族が行ったとは考えられませぬか?」
「何故、司祭はそう考えたのだ」
司祭は説明した。
聖剣に聖武具は貴重品だが売れないから価値はない。
収集家でも持っているのを見つかれば死罪は免れない為盗まないだろう。
では、それらが一番欲しいのは誰か…魔族だ。
聖剣や聖武具が無ければ次の戦いの時に魔族は有利。
しかも、今現在勇者は処刑されて居ない。
聖女、賢者、剣聖はボロボロでエリクサイヤーが無ければもう元には戻せない。
つまり、次に戦う時に「聖女」「賢者」「剣聖」は戦えない。
全てが魔族に有利に働いている。
そして、何より王城に忍び込んで盗めるような物は「盗賊」のジョブ持ちでも無理だろう。
「確かに一理ある…では余は何をすれば良いのだ!」
「現状では何も出来ないと思います…「聖女」「賢者」「剣聖」を召喚してもエリクサイヤーが無いから治せない…他国から買おうにも高額過ぎて買えない…しかも聖武具も無いから、完全に詰みです」
「あのクズ勇者に忖度した為に…最大の戦力が無くなってしまった…そういう事か」
「それもありますが、魅了に掛かった時…遅くとも無罪を言い渡した時にエリクサイヤーを使うべきだったのでは無いでしょうか?」
「確かに、あの時なら勇者を処刑した後、そうすれば良かったのかも知れぬ…そして爵位の陸爵を約束して貴族の妻として手元に置くべきだった」
「だが、もう…」
「解っておる!もう全てが遅い…聖剣や聖武具を失った事もエリクサイヤーを失った事も口外してはならぬ、敵は魔族だけではない! これらを失った事が知らられば、魔王討伐国の名誉も無くなる…良いな」
「「「はっ」」」
この判断が恐ろしい事に繋がるとはこの時は誰も気が付かなかった。
ザールの街にて
私は、今ザールという街に来ている。
ザールは魔族領と人間領の境にある街で停戦後に出来た交易都市だ。
お目当ての人物は..居た。
凄いわね..流石幹部という感じだわ。
お伴迄連れて..
「お久しぶりね、悪魔神官、ジャガル」
「女、無礼だぞ、この方は..」
「良い、見知った顔だ…久しいな 聖女クラリスに賢者リタに剣聖エルザ!」
「聖女達..」
「此処では話も落ち着いて出来ぬ..屋敷迄来るか?」
「いくわ」
へぇー 凄い馬車ね」
「クラリス..これでも儂は魔族四天王だぞ..この位は当然じゃ..それよりお主は..伴も居ないのか?」
「はい、居ませんよ! 人間は魔族より酷い人ばかりですので!」
「愚痴は聞かんよ」
「それより、私の事は恨んでないの?」
「恨まない..何故なら魔族は力が全て..強い敵には敬意すら払う..のうノリス」
「はい..戦争が終わった今..恨む必要もありません」
「そう、良かったわ」
「着いたぞ、此処が今の儂の屋敷じゃ..」
「羨ましいわ..凄い家ね..」
メイド迄いて、お茶が出てきた。
魔族の方が良いわね..
「それで、儂に何か用か?昔話をしに来た訳でもあるまい!」
「簡単に言うと、王都襲ってみない? 勇者は死んだし、私達は恨みがあるから助けないわよ!」
「それは本当か? 勇者が死んだのは聞いたし、お前達が酷い目にあったのは聞いたが、にわかに信じられぬよ」
「後は小細工して、今居る勇者が死んだらもう勇者は生まれない様に細工をしたのよね、リタ?」
「うん、そうだよ!」
リタは自分が何をしたのか、ジャガルに話した。
「お前は何をしたのか…まぁ解っていてやっているんじゃろうな?」
「うん…まぁね」
「それで一体何が欲しいのじゃ! 次の魔王様の復活で確実にこの世界は我らの物になる…そして今直ぐにでも王都は襲えば我らの物、これなら大概の物は上げられるが」
「そうだね、そうだ…何か寿命が延びるような物があったら欲しいな…4つ」
「何だ、そんな物で良いのか? だったら…そうだネクトールが5つあるから、それをやろうか?」
「ネクトールって神になる薬じゃないの?」
「飲めば不老になるが…不死にはならんよ! 魔族は元から長命だし、飲むと毒だからある意味一番要らない物じゃな」
どうしてでしょうか? 人間よりも魔族が真面に思えますね。
僕もそう思うな…
私もそう思う..
「「「ありがとう」」」
「なぁーに、多分半年もしないうちに王都は終わるんじゃないかな? 帝国にでも移ったら良いんじゃないか?」
「何から何までありがとう」
「それでは、もう多分…不死になれば会うかも知れんな..達者でな」
「「「それじゃぁ」」」
「さて、やる事やったし、ルシアに帰ってセレスを待ちましょう」
「「うん」」
三人は何事も無かったようにルシアに帰っていった。
人間なんて知らない
僕はどう説明するか悩んでいた。
彼女達に喜んで貰いたくて、やってしまったが。
喜んで貰えるかが凄く心配だ…
案外「盗み」を働いた事で嘆かわしいと思われるかも知れない。
それならそれで良い。
この薬さえ飲んで貰えれば…多分元通りだ。
その後、もし嫌われたら黙って居なくなれば良いさ…
「ただいま~」
「「「お帰りなさい!」」」
「それでどうでした指名依頼は大変でしたか」
「それなんだけど」
僕は素直に自分がした事について話した。
「ごめん」
「何で謝る事があるんですか?」
「そうだよ? 僕の為に頑張って盗ってきてくれたんでしょう? 寧ろこれは僕がお礼を言う話だよ!」
「リタ、僕のじゃなくて、私達の為だ…感謝しか無いよ」
僕は早速、エリクサイヤーを渡した。
「これがエリクサイヤー聖女でしたが初めて見たわ…ありがとう!」
「僕も、研究者だけどこれは初めてだよ!」
「これが秘薬エリクサイヤーかぁ」
受取ると三人は一気に飲み干した。
「ああああっ熱い、熱いわぁぁぁぁ」
「これは想像以上に凄いね..体が燃えるように熱い」
「まるで熱湯を掛けられた様だ…」
「大丈夫!」
「大丈夫です…これは体が新しくなっていく証拠なのですから」
「うん、凄い細胞が新しくなって行くような気がする」
「凄いなこれは体の芯から熱くなる」
「凄い、凄い…体の傷が無くなっている」
「どうかな? 私…」
「僕はどう?」
「私はどうだ!」
「凄く綺麗です! 元から綺麗でしたが..本当に、本当に綺麗!」
「良かった、セレスにそう言って貰えて…嬉しいよ」
「これで、僕はもう99点じゃ無くて100点だね..」
「凄いな、傷だけでなく目も手も生えてくるなんて信じられない!」
「これで全部元通りだね…後はこれ..」
「懐かしいわ 聖杖 癒しの白杖、これを手にするのは久しぶりです」
「僕も同じだよ…破魔の黒杖、これさえあれば僕は無敵だよ」
「魔剣星砕き…再び手にするとは思わなかったよ」
「良かったですね 「聖女クラリス」「賢者リタ」「剣聖エルザ」完璧に復活ですね!」
「そして、「勇者セレス」の誕生ですね!」
「勇者セレス、爆誕って感じだね」
「そうだ、勇者の誕生だ」
「何を言っているんですか僕は「勇者」じゃないですよ!」
「セレス、試しに聖剣エクスソードを抜いてみて」
「僕になんて聖剣は抜けませんよ!」
「まぁまぁ僕を信じて抜いてみてよ!」
「騙されたと思ってさぁ抜いてみ」
言われるままに聖剣を抜いてみた。
あれっ抜けてしまった。
しかも青色に聖剣が輝いている。
「聖剣は勇者にしか抜けないし筈なのに何で抜けるたんですか?」
「ふふふっ僕は賢者だよ! 僕には簡単なことさ!」
「流石は 賢者リタ様…凄い!」
「セレス、僕をもっと崇めても良いんですよ? 何だったら今夜は僕が独り占め..っ痛いよクラリス!」
「はいはい、綺麗な体で抱いて貰いたいのは皆同じだよ」
「抜け駆けは許さない!」
「まぁそれは別として、セレスは勇者…これは確定だから安心して…まぁ理由は秘密と言う事で」
流石に、クロードの死体の一部を食べさせたのは言えませんね。
そうだな。
「今度は私達の番ね..はいこれを飲みましょう?」
「それ、何ですか?」
「ふふふっこれこそが秘薬ネクトール、これを飲めば何と不老…歳を取らなくなるんだよ」
「別にリタが作った訳じゃないよな!」
4人で一斉にネクトールを飲み干した。
「これ、若返ったりしないんだ..26歳で固定なんだね!」
「僕も26歳のままだ」
「私もな…セレスは15歳で固定だから羨ましいな」
「「あーーっ」」
「それでこれからどうしようか?」
「セレスの予定が無いなら帝都にいきませんか?」
「まぁセレスも王都を騒がせちゃった訳だし、バレるといけないから引き払った方が良いかもね?」
「使わないにしても聖武具を持ってたら不味い事になるかもな..」
「それじゃ、帝国に行こうか? 皆が元に戻ったんならもう怖い物も無いしね」
「「「うん」」」
それから約1か月後、王都は魔族の進行により滅びた。
聖武具が無くなった事で、軍を増強しようとしたことが、魔族に攻撃をする為に兵を集めている。
そう考えられ…魔族は進行を早めた。
セイル達4人は活躍の場を帝国に移したが、能力を取り戻した彼らにはどんな依頼も簡単にかたずけられた。
その為、簡単に元のS級冒険者に返り咲いた。
それから数年後、魔族が帝国に進行してくると、S級のライセンスを返上して逃げ出した。
やがて魔王が復活して各国が戦っている時も、一切戦わずに最果ての街まで逃げていた。
そして50年後また、他の街に逃げようとした所、ジャガルに遭遇した。
「おや? お久しぶりですね?」
「本当に久しぶりですね…」
「しかし、勇者、聖女、賢者に剣聖まで居るのに戦わないのですか?」
「まぁ ネクトールも貰ったし…」
「それは王都の戦い限定の話だった筈ではないですか」
「僕たちは義理堅いからね…」
「もうこの世界の4/5は魔族の世界ですよ? 戦わないで良いんですか?」
「「「「うん、良いや」」」」
「そこ迄人間が嫌いなら…邪神様を信仰して魔族になられては如何ですか?」
「なれるんですか?」
「そりゃ、天使だって堕天使になれるんですから、邪神様を信仰すればなれますよ!」
「どうしますか?」
「この分だと人間は全て奴隷扱いになりそうだからなっちゃおうか?」
「僕もそれが良いと思うな」
「あの、聖女がなった場合、ジョブはどうなるのでしょうか?」
「与えた能力は神であっても取り上げられないから能力は残ります..ただ名前は変わるかも知れませんが」
結局、4人は邪神を信仰して「魔族」となった…
そして未来永劫…楽しく暮らしました。
FIN
あとがき
最後まで読んで頂き有難うございました。
第一章が終わって復讐編を書いてみましたが、途中から失速してしまいました。
拙い文章に最後までお付き合い頂き有難うございました。
これからも執筆を続けて行きますのでまた宜しければお目汚し下さい。
石のやっさん。