黒薔薇様が見ている

総ての始まり
私の名前はジョディ…ランディウス子爵家の令嬢。

そう言えば、聞こえは良いけど…実質は貧乏貴族の娘、しかも妾腹だし四女継承権なんて全く無い。

そして、更にランディウス家はその貧乏貴族の中でも超がつく程の貧乏..しかも領地は辺境にあるから田舎者でもあるわ。

うん、自分でも自覚している。

私って、本当に貴族らしくない..だってお母さんだってラルフお父様の妾だし…自由気ままに遊んで過ごしてきたから。

まぁ、何故か本妻の奥様ともお母さまは仲が良いから..うん問題はない。

私はきっと田舎でこのまま暮らして、恐らくこの領地から出ないで一生を終えるのだと思う…

ところが…

「ねぇジュディお願いがあるの…私の娘、貴方から見たらお姉さんのシャルロットがねぇ、元気ないの? 本当に申し訳ないけど、学園に通って貰えないかしら?」

「シャルロット姉さん、元気が無いんですか?」

「そうなのよ、最近では手紙も殆ど来ないの..学園は、貴族の子女しか入れないから使用人を使う訳にはいかないのよ…通いたく無かったら..シャルロットの卒業と一緒に退学しても良いわ、もし、学びたい、そう思ったらそのまま卒業まで居ても構わないわよ」

「あの、奥様お金は大丈夫なのですか?」

「それは私がどうにかするから心配しないで良いわ」

「そうですね、シャルロット姉さんとなら学園も楽しそうです…喜んで通わせて貰います」

「そう、そう言って貰えると助かるわ、早速だけど来月から通ってくれるかしら、簡単な試験はあるけど、形だけだから大丈夫よ」

「解りました…」

だが、私は知らなかった…これが地獄の始まりだという事に…

前日 
翌月、私は試験を受け無事にここ王立白百合学園に通う事が決まった。

試験と言っても、形ばかりの物だ..ここは貴族の子女であれば余程も事が無い限り落ちることは無い。

貴族というだけでほぼ受かる…逆に一般市民でここに居る者はかなり優秀といえる。

ここでは、マナーや学問を学ぶ事になる。

私は途中入学なので別に式とかは行われない。

寮生活に必要な荷物を運び入れ、それで終わり。

今日はそのまま寮で休み、明日担任がクラスで自己紹介をしてくれる。

そういう話だ。

私はまずはシャルロット姉さんの様子を見に行く事にした。

シャルロット姉さんの部屋は同じ寮にある。

というか、この学園の寮は大きな建物が一つあるだけだ。

ノックをしてみた。

だれも出て来ない。

再度ノックをした。

「もういい加減に許して下さい…」

消えるような小さい声で返事が返ってきて、ドアが開かれた。

「シャルロット姉さん、久しぶり、ジュディです、明日からこちらの学園に入学が決まったので挨拶をしにきました」

「えっジュディなの…本当に懐かしいわ..入って」

私はそのまま部屋に入って周りをみた。

可笑しいな、何でこんなに質素なの。

可笑しい、可笑しすぎる…何で何も無いの?

確かにランディウス家は貧乏だけど…幾ら何でも長女の彼女には色々持たせていた筈だ。

この部屋は正直いって私の部屋よりも質素…いや物が無さすぎる。

「姉さん、この部屋は何?」

シャルロット姉さんは儚げにクスリと笑い。

「可笑しいのよ…何故か私の部屋には何度も泥棒が入るのよ、茶器も茶葉も悪いわね…ここの食堂から借り受けた物なの」

《可笑しいわ..姉さんはピンクの茶器を持っていた、それは安物だけど、おばあ様の贈り物なので凄く大切にしていた筈..値打ちが無いから..普通は盗まない》

「それが本当なら、学園に伝えないといけないわ…私が言ってあげようか?」

「言うだけ無駄よ!」

「何で?」

「それは私の明日からの生活を見れば解るわ..それから、明日からは私に関わらない方が良いわ」

「何で、そんな事言うの?」

「いいから、今日は嫌な事は忘れたいわ..もし知りたいと思ったら明日又話して…今日は楽しくお茶をしましょう」

話はこれで終わり、そういう雰囲気だ。

「そうねお付き合いしますわ、シャルロット姉さん」

私はシャルロット姉さんのお茶につきあった。

シャルロット姉さんの現状
次の日、シャルロット姉さんを見て私は解った。

シャルロット姉さんは酷い虐めにあっている。

それは見ただけでわかった。

何しろ、シャルロット姉さんだけが裸足なのだ。

靴下もはいてない。

そして、その足を何かの遊びだろうか通る令嬢が踏みつけている。

まだ、授業が始まるまで時間がある…暫くシャルロット姉さんを見ていた。

あの、明るく優しかった姉さんが一切笑わないのだ…こうなるまでにはかなり長い時間いじめを受けていたに違いない。

《これはどうにかしなくちゃいけない》

私はシャルロット姉さんに近づいた。

シャルロット姉さんは目で私に構わないで…そう言っているようだった。

だけど、そんなのは無視だ。

「シャルロット姉さん..靴も盗まれてしまったんですか? 人の靴を盗むなんて凄い貧乏な人がこの学園にはいるんですね….とりあえず…履物を借りに行きましょう」

「ジュディ…私に構わない方が良い..貴方迄」

「うーん嫌ですね! 実の姉が陰湿ないじめに逢っているんです放って置けません..さぁ行きましょう」

「まったく、貴方という人は本当に!」

シャルロット姉さんが少し笑ったような気がした。

周りの令嬢は信じられない者を見た、そんな感じの顔をしていた。

その中の一人の令嬢の足を思いっきり踏みつけた。

「痛いわね..何をするの!」

「あれっ痛いの? てっきり人の足を踏んずけても気が付かないから足に神経が通ってないと思っていたわ」

「貴方、顔を覚えたわよ、覚えておきなさい」

制服の紋章を見る…貴族の紋章じゃない平民の紋章だ…これなら怖くは無い。

「こっちこそ、貴方の顔を覚えたわ…」

「あのさ、貴方、もしかして事情を知らないの?」

「ええ、知らないわ…だけど、シャルロット姉さんは実の姉だものどんな事情でも放って置けないわ」

「そう、わかったわ..だったら精々気を付ける事ね」

私は無視して、そのまま姉さんを連れて職員室に行った。

そして教員の一人を見つけると事情を話した。

「また、シャルロットさん靴を無くしたのいい加減にして下さい」

《シャルロット姉さんは被害者だ》

「先生、それは無いんじゃないですか? 姉さんは靴を盗まれたんですよ..これは学園のせいじゃないんですか?」

教員は一瞬信じられない..そういう顔をした。

「では、正式に盗難届けを出しますか?」

「はい、お願いします」

教員は困った顔をしている。

「ジュディ..良いから..」

「良くないわ..こういう事はしっかりとしないといけないわ!」

「ジュディ..ちゃんと説明するから..今は辞めて..お願い」

「解かった」

《何故教員がホッとした顔をするの…解らないわ》

私は暗い顔の姉さんを連れて職員室を後にした。

とられた物は弱い者から取り返せば良いんだ
シャルロット姉さんに詳しい事情を聴いた。

何て事は無い..ただシャルロット姉さんが入学した時に虐められている子が居た。

シャルロット姉さんは..うん、正義感が強かったから虐めを許せなくてその子を庇った。

その結果、虐めの標的がシャルロット姉さんに移った。

それだけの事だ。

「なんだそんな事だったの?だったらシャルロット姉さんは悪く無いじゃん!」

「そうよ、私は悪くないわ…だけど、その虐めていた子には後ろ盾が居たのよ」

「やっぱり、そうじゃ無ければ平民がああまで強気で居られる訳はないわね」

「うん、ロンベルグ侯爵家のロザリオ様がね..その虐めの主犯格の子を気に入っていたのよ」

「侯爵家!…しかもロンベルグ..はぁ、お金も権力もうちじゃ敵わないわね..どうしようか?」

「下手に逆らわずに…嵐が過ぎ去るのを待つしか無いと思う..流石に学園だもの殺されたり犯されたりはしないわ」

「姉さん…大丈夫なの? 事情が事情だから..退学させて貰った方が良いんじゃない? どうせ、貧乏なランディウスだものそれ位で何かが変わることは無いわ….」

「だけど、駄目..お母さまには心配を掛けたく無いの」

「学園の職員に間に入って貰う事は出来ないの?」

「今日の様子を見て解らなかった? ロザリオ様が絡んでいるから何を言っても無駄よ」

「本当に手詰まりね..聞けば聞く程…助かる道がないわ…当面は私が矢面に立ちながらどうにかするしか無いかな」

「えっ」

「私、無駄に体力だけはあるから..権力はどうしようも無いけど…まぁ任せて」

次の日から直ぐに私は行動を起こした。

休み時間は直ぐに走っていき姉さんと過ごした。

私がいれば姉さんに手を出しにくいだろう。

さぁ反撃だ。

本来はやりたくはないが、貴族である事を利用した。

貴族に手を挙げる事は本来は平民には出来ない。

表ざたになれば、子供だけでなく、親が責任をとらされる。

まずは、姉さんが取り上げられたもので平民が持って居る物を取り返しにかかる。

「その靴は姉さんの物よね」

「それが何か?」

「帰して貰えないかな?」

「これはシャルロットさんに貰ったのよ」

私は殴る素振りをする。

「無理やり奪っても相手が認めれば良いのね? ならば、私にくれないその靴くれるの? くれないの?」

「お返しします..こんな物..」

投げてよこすのね…私はその女の横っ面を殴った。..ええグーで。

「何をしますの!」

「私はね..貧乏だけど貴族なの? 解るかな? 平民の貴方が物を投げてよい存在なのかしら?」

「すみませんでした..お返しします…ごめんなさい」

「足りないわ…そうだ、その筆箱頂戴…それで許してあげる」

「これはシャルロットさんには関係ありません」

「だけど、無理やり靴を持っていってただ返しただけで終わり? 償いじゃないよね? しかも貴族に対しての態度じゃないよね?」

「解りました…渡します..」

「素直に渡せば良いのよ..うん」

正直どっちが悪者か解らない..だけど、シャルロット姉さんの物のうち貴族に採られた物は取り返せないから..平民からとるしかないじゃない…最初に姉さんに暴力を振るって取り上げたこいつ等が悪いんだし…

1週間たった。

シャルロット姉さんの部屋はもう欠けている物は無い。

ただ、平民の評価は最悪だ。

職員も文句をいうものも居たが..はっきりと言い返した。

「採られた物を取り返して何が悪いの? だったら、これを取り返してきて」

《全部、高位貴族に取り上げられ返って来ない物だ》

「ねぇ先生は正しいわ..だから先生がこれを取り返してくれたらちゃんと返すわ」

「それは私には」

「出来ないのよね? だったら私に言うの可笑しいわ…私達はとられて無くなったから他から取っているの? 取られなければ何もしないわ」

結局、教師は黙った。

幾ら貧乏貴族でも貴族は貴族…平民には手が出せない。

強い者に取られたら…取り返せば良い..それだけだ。

だが、この行為を見ていた者がいた。

そいつは悪のくせに正義の名前を語り…私達に襲いかかって来ることを私は知らなかった。

罠と決闘と敗北
「私はロンベルグ侯爵家のロザリオ、ランディウス家のジュディさん、貴方の平民への横暴を同じ貴族として許せません..決闘を申し込むわ」

《よく言うわ..さんざん、自分がシャルロット姉さんを虐めておいて》

私が考えて黙っていると

「散々、貴族の特権を振りかざして置いて義務を負わないのですか?」

《此処で逃げたら..前より状況は悪くなるわ..受けるしかない..現況の此奴に勝てば全て終わる》

「横暴なのはどちらか解りませんが…良いわ受けてたちます」

「そう、場所と時間は上位の貴族に権利があります。時間はこれから..場所は教練場、宜しいわね」

私の後ろから「クス」という声が聞こえて来た。

この時私は後ろを振り返るべきだった。

それから10分後

「辞めて下さい..もう辞めて下さい!」

「あらあら、さっきまでの勇ましさはどうしたのかしら?」

私は裸にひん剥かれて..凄まじい暴行を受けている。

「こんなのって…ひぐ、ひご。うええあえあえあえあえあえあえあえあえ」

裸で転がっている私に容赦なく蹴りが振り注いできた。

動けなくなった私を女が髪の毛を掴んで引きずりまわした。

「侯爵家に逆らうからこうなるんだ..馬鹿な奴だ」

女は私に馬乗りになり拳で顔を何回も殴りつけた…鼻の骨が折れる音がした目の片方は塞がって見えない。

「嫌、嫌、嫌いあいあいあいあいあいあいあいいあいあいいやー..やめてー」

幾ら叫んでも辞めては貰えない。

多分、私の顔は..きっとカエルのように膨れ上がっていると思う。

顔が潰れ、体中が痣だらけになり、手足の骨が折れた..もう動く事も出来ないし叫ぶ事も出来ない。

「ううあえあうううううううう」

「あらあら、随分と醜い姿になりましたわね…もう見ていても面白くないわ…止めをさして終わりにしましょう..」

「わかりました」

女は動けない私の股を広げた

《まさか..嫌だ..それだけは嫌だ…》

「うっ..やめて..それだけはやめて…」

「そうね…ブタの物まねでもしたらかんがえようかしら?」

《それで助かるなら..やるしかない》

「ぶーぶー….」

「似てないわね..それじゃだめだわ」

私の股は開かれ..そこに太い棒が突っ込まれた」

「ギヤヤアあああああああっ…..ああ!」

私は凄まじい痛みが私を襲った。

まどろみのなか…

「シャルロットさん、面白いおもちゃを提供してくれたから、もう貴方には手出ししませんわ」

「ありがとうございます…ロザリオ様」

そんな声が聞こえてきた。

敵は身内の中にも居た
体の痛みで目が覚めた。

私はそのまま裸のまま教練場に倒れていた。

恐らく、後遺症が残らない位の簡単な手当はされていたのだろう..四肢はちゃんと動く。

顔は晴れているが..さっき程じゃない..よく見ると私の歯が数本落ちている。

体中が痣だらけだ..

《うっ痛い..》

私は自分の下半身を見た…股の所から出血している..

《私の女としての人生は…終わった…少なくとも貴族としての人生は..》

私の処女は…木の棒に奪われた。

「うわわわわわわわわわわわわーん、オエエググエーァぁぁぁぁぁ」

《こんなのって無い…シャルロット姉さん….》

「うえぁぁぁぁぁぁ」

《貴方もグルだったのね..》

一しきり泣いた。

少しは気が納まった。

時は少し遡る。

決闘を受けたあと、私は教練場にむかった。

そこには沢山の生徒が集まっていた。

全ての生徒はロザリオの味方だ。

「「「「「「「「「ロザリオ、ロザリオ、ロザリオ」」」」」」」」」

ロザリオの応援しか聞こえて来ない。

《正直、煩い…シャルロット姉さん..ロザリオの近くに…逃げないように人質か..汚い》

「さぁ..きたわよ! はじめましょうか!」

《姉さんの敵..とってやる》

「そうね、観客も集まったしはじめましょう..私は侯爵令嬢なので..野蛮な事は好みません」

「それならなんで…」

「だから、こちらの方に代理を頼みましたの」

「卑怯な..それどう見ても騎士じゃないの? 騎士を使うのは反則じゃないの」

「私は騎士では無い..元騎士だ..今は銀級の冒険者だ..問題はないだろう」

《へ理屈だ》

「逃げても良いのよ..」 

姉さんの肩をロザリオが抱いた。

そう、人質なのね…逃げられない

多少は田舎暮らしで体力があるものの、戦いのプロに敵う訳もなく..

捕まってからはただの嬲り者にされただけだった。

私は痛む体を引きずりながらシャルロット姉さんの部屋へ向かった。

「あら、豚が歩いているわ」

「私が同じ目に会ったら生きていけないわ..良く生きているわね」

「棒切れが最初の相手なんて..女としておしまいね」

誹謗中傷が山ほど聞こえてきた。

私は睨む気力もなく..ただ歩いた。

普通なら直ぐにたどり着く場所なのに幾ら歩いてもたどり着く気がしなかった。

「シャルロット姉さん…私を騙したの..」

「私は、嘘はいってないわ..虐められていたのは本当よ..」

「それは解っているわ…そこから逃げるために私を利用したの?」

「ええ、そうよ..私はランディウスの跡とり..貴方は妾腹で四女..私の為に犠牲になるのは当たり前でしょう」

「ええ、そうね..だけど、それはランディウス家の人は知っていたのかしら?」

「そうよ..侯爵家には敵わないわ..だから、私は虐めから逃げるためには新しい生贄が必要なのよ..私のお母さまが考えてくれたの」

「そう..ランディウス家が…だったらもう、ここに居る必要はないわ..辞めるわこんな所」

「辞めても行く場所がないでしょう..」

「煩いわ..何処に行こうが私の勝手だわ..ここまでされたんだからランディウス家の為に働く必要はないわ」

「ちょっと待って…貴方が居なくなったら..また私が虐められてしまうわ..」

「貴方は私の敵よ..姉さん..いえシャルロット..あんたの事なんて考える必要はないわ」

「待って.待って」

「待たない!」

私は速足で部屋を出た。

そのまま部屋に向かう…そしてカバンに荷物を積み込みそのまま部屋を飛び出した。

部屋から飛び出し外に出るまで沢山の罵倒が飛んできたが気にしない..少しでも早くここを出たかったから。

シャルロットが追いかけてきて掴んだが関係ない。

「煩いわ..もう貴方には関係ないでしょう..」

「待って、貴方にいかれたら私はまた虐められてしまう」

「そう..死ねば良いんじゃない? 楽になるからさ..もう私は貴方の事で心配する事も悲しむ事も無い..そうね赤の他人..いや憎むべき相手だわ..知らないわよ..あんたなんか」

「…..解かったわ..だけど、貴方が此処を出て行ったら貴方のお母さん困るんじゃない!」

一瞬、母親の事が頭をよぎったが、今はどうしてもここから逃げたかった。

「貴方、そこまで腐っていたのね..私は出て行く..だけど、母さんに何かしたら..貴方は絶対に殺す..殺すわ」

「待って、言い過ぎた..待って」

「死ねばいい」

要約、門にたどり着いた..私は後ろを振り返らず..立ち去った。

廃墟にて…運命は動き出す。
学園を飛び出したが..私には行くあても無い。

ここは王都とはいえ郊外だからこれから宿屋に行っても城下町はしまっているだろう。

そしてたどり着いても…肝心のお金が無い。

《どうする事も出来ないわ…今日はこれから野宿出来る所を探すとして明日からはどうしよう…》

私は野宿できそうな場所を探した。

運が良いんだか悪いんだか解らないが…朽ち果てた廃墟を見つけた。

《流石にこれなら人はいないだろうな…屋根がある分..ここの方がましだろう》

廃墟の中に入っていく….不思議と怖いとは思わない。

それは多分、本当の意味で怖いのは人間だと解かったからかも知れない。

《あの学園の奴らに比べたら幽霊の方がましね…》

廃墟の割にはしっかりしていてちゃんと鍵が閉まっている。

「中には入れないか..仕方ない」

暫く歩くと、黒薔薇が沢山生えている場所があった。

その近くにはテラスがあり、ベンチがあった。

「月が綺麗ね…薔薇も綺麗だわ…」

私はそこで寝る事にした。

学園をでてほっとしたからなのか..急に今日あった事を思い出した。

「うっうっうっうわわわわわわわわわわわわひぐっ」

泣いても喚いても仕方ない事は解る..だが考えれば考える程悲しさが止まらなくなった。

一しきり泣くと不安が襲ってきた。

《もう疲れた…帰る所も無い..これからやれる事も無い…下手すれば体を売らなければ生活ができないかも知れない..だけど..それさえ..傷ついたこれじゃできない…生きてても、私を見たあいつ等はきっと笑い者にするんでしょうね…だったら死んだ方がまし..かな》

「死のうかな…だけど..今は休みたい」

私は瞼を閉じた。

《おやおや、久しぶりに客人が来たかと思えば散々喚くだけ喚いて寝てしまった…このままじゃ風邪ひくぞ…つれ帰るか?》

埃っぽさで目が覚めた。

可笑しい…私は外で寝ていたのにベットで寝ている。

《暖かいのは良いのだけど…この毛布、埃まみれだわ..ゲヘゴホ》

あれっだけど私は何でここで寝ているの?

外で寝ていた筈…

その前にここは何処だろう…嘘、ここは牢屋…何でこんな所にいるの?

「ようやく目を覚ましたようだな」

目の前に黒いドレスを着た、綺麗な少女がいた。

「もしかして、貴方がここに運んでくれたのですか?」

「まぁな..あのままじゃ風邪ひくし、場合によっては凍死する..ここの方がまだまし..そう思わない?」

「そうですね、有難うございました..私は..ジュディと申します」

「お主、恰好からしたら貴族だろう..何故苗字を名乗らないのかしら」

「これから、捨てる気ですから..」

「訳ありって事ね?」

「まぁそうですけど..」

「話しなさい」

可笑しい、この子に見つめられると…体が寒くなる..話したく無いのに話さずいられなかった。

「きゃははははははは…面白い….何なのそれ..受けるわ」

「人の不幸がそんなに面白いの?…最低ね、出て行きます」

「まぁ、待て笑ったのは、何故、勝てる決闘を捨てるのかなって、思ってさ..馬鹿だわジュディ、それはあんたが悪い!」

「何故そうなるの!」

「まずは獲物を用意してなかった..決闘を舐めすぎだろう?」

「……」

「だんまりか? まがいなりにも決闘、剣は無理でもナイフ位は忍ばせなきゃだわ」

「….だけど」

「人は殺せないか..か」

「そうです…」

「だから駄目なんだわ…相手は貴方を追い込む為に手を打っていた…お前はただ、行っただけ、どっちが真剣に決闘を考えていたか…相手の方が真剣だった」

「だけど」

「だけどじゃないわよ…現状が物語っているわ..相手は勝って楽しい学園生活…貴方は惨めに廃墟で寝てる…結果は出てるじゃない」

「そうですね…」

「それでこれからどうするの?」

「決めてません」

「まぁそうよね..敢えて聞くわ..泣き寝入りするわけ?」

「仕返ししたくても私にはできなない…..」

「じゃぁ出来たらしたいのね?」

「当たり前じゃないですか..殺してやりたい..全員」

「そう…だったら殺しちゃおうか? 全員」

「出来るわけ無いでしょう…」

「じゃぁ…やれるようにしてあげるって言ったら…貴方は逃げないって約束できるかしら?」

「本当に殺せる力が手に入るなら、絶対に逃げません」

「そう..だったら、これは何かの縁…貴方に憑りついて鍛えてあげるわ」

「えっ憑りつくって..何」

「このフルール.ルーラン最後の黒薔薇が貴方を一本の剣のように鋭く強くしてあげる…対価は訓練期間の私への絶対服従..そして逃げない事」

「本当に強くなれるなら..逃げだしません」

「よく言いましたね…なら弱弱しい少女から、私は..一本の黒薔薇を作る約束をしましょう」

体中に痛みが走った..そして私の右胸に黒薔薇の入れ墨が浮かんだ。

黒薔薇への道?(はじまり)
「何をしたの?」

「憑依したのよ? 後は逃げれないように呪印を打ったわ!」

「呪印?」

「そう、呪印…私に逆らったり、逃げようとしたら心臓が止まって死ぬわよ!」

「そんな..何故そんな事を?」

「貴方..本当に馬鹿なのね…決闘で真剣に戦わないから負けて…私の話も真剣に聞かないから命まで握られるのよ..」

此奴も同じ..私を食い物にしたいのか..

「あらっ..私は約束は守るわよ…ただ逃げられたくないから..そうしただけよ..最愛の弟子に昔、まんまと逃げられたのよ..だから、逃げられない様にした..それだけよ? 後…ついて来れないなら死ぬわね」

「そう、私は逃げないわ」

《皆んな、そう言って逃げるのよね》

「そう..ならいいいわ」

「それで、どうするの? まさか貴方が女神様で私を勇者にしてくれるとか?」

「それはないわ…だけど、最後までついて来れたら勇者なんか殺せる位にはしてあげるわ..」

「勇者より強く..ははは冗談を」

「冗談じゃないわよ?….実際に私は数多くの勇者と言われる人間や英雄と言われる人間を殺してきたわ」

「そんな訳無いじゃない..そんなの居たら魔王だわ」

「私の名前..もう有名じゃ無いのかしら?フルール.ルーランと言えば私が生きていた時代なら..恐怖の代名詞だったんだけどな..本当に知らない?」

「ルーラン…確か滅ぼされてしまった国の名前..フルール..まさかあの、冷酷女王、黒薔薇のルーラン…拷問狂..歴史上一番冷酷な王妃と呼ばれたフルール」

「それであっているわ」

「だけど、貴方が本物だとしても、黒騎士が居ないじゃない? 確か貴方は拷問が得意だけど..戦って強かった..そんな話は聞いた事がないわ」

「黒騎士より弱い者が黒騎士なんて束ねられないわ…」

「本当に…」

「ええ..」

「時間が惜しいわ…それじゃ、まずは お腹もすいたでしょう? ウサギでも捕まえてきて」

「ウサギ…何で?」

「それが、貴方の大一歩よ」

こんな簡単な事で強くなれるのか…先行きが不安にしか思えなかった。

だが..違った..前の環境が地獄なら..これは恐怖の始まりだった。

黒薔薇への道? (田舎者怖っ)ややグロ
私はウサギを三羽狩ってきた。

「案外上手なのね」

「田舎者ですから..こんなの簡単ですよ! だけど、こんなので強くなれるのですか?」

《ふふふ..強がっていられるのも今のうちだわ》

「さぁ…その生きているウサギの首を斬り落として、目を抉り皮をむしるのです」

「はい」

私は言われるままに、ウサギの首を斬り落として目を抉った…死んだウサギの目を抉って意味があるのかな? そして皮を剥いだ..ピンクのウサギだった物がピクピクしている。
そして首が無いのに逃げようとして動く…そのままむんずと捕まえて…ナイフで切った。

「貴方…何とも思わないの?」

《可笑しいな…普通の子は「できません」とか「こんな可愛い者殺せない」とか言うんだけどな…マリアは別として…》

「だって田舎者ですから…普通にニワトリを絞めたり…ウサギを解体したり..お祝いの日にはブタの解体を手伝ったりしていましたから」

《何、それ貴族の令嬢のする事じゃないわ…まぁ血や内臓に耐性があるのは良いわね….なら》

「そう、じゃぁ少しでい良いわ、そのまま生で食べなさい」

「そうですよね…刺身で食べるのは..新鮮なうちじゃないと食べれませんよね…では」

《美味しそうに食べているわ…口を血だらけにして》

「流石に内蔵は生じゃ食べれません..焼きますよ」

「いいわ..」

「だけど1羽しか流石に食べれませんね…解体して干し肉にしていいですか?」

おかしいな…生物を殺す残酷さを教えるつもりだったんだけど….

淡々とこなすわね…

これなら田舎の令嬢や平民なら第一段階が省けたって事ね….

解かった事は一つだわ

《田舎者怖っ》だわ。

黒薔薇への道? 死と新生 (グロ注意! 残酷な描写あり)
昨日、ウサギを食べたせいか..まだお腹が一杯だ。

あと2羽いるから..今日の分は大丈夫。

「おはよう」

「おはようございます」ってそうか私..フルール様に憑りつかれたんだっけ。

「さぁ..今日も頑張って一人前の黒薔薇を目指すわよ」

「あの…本当にこんなんで復讐なんてできるのでしょうか? 昨日はウサギを食べただけですよ」

《黒薔薇のフルール…この人の何処が冷酷なのかしら…むしろ出会った人の中で一番優しいかも知れない…怨霊だけど》

「出来るわ..出来ないときは死ぬだけよ..今日は次の段階に行きますわ!」

「次の段階?」

「流石に貴方には荷が重いから…貴方の体を借りますわよ」

「ちょっと待って」

気が遠くなった、頭が重くなり暗くなった。

「おぎゃーおぎゃー…」

《あれっ赤ちゃん》

「そう、赤ちゃんよ!」

「へぇ..可愛いですね…どうしたんですか?」

「勿論攫ったのよ!」

「へぇ攫ってきたんですか…えっ」

「そうよ、攫ってきたのよ…貴方の為にね」

「この赤ちゃんどうするんですか? ….まさか?」

「ええ、殺して貰うわ…出来るだけ残酷にね」

《さぁ..これが最初の試金石..貴方が咲き誇るか枯れはてるかだわ》

「そんな、この子は何も悪い事をしてないでしょう…何で殺さなければいけないのですか?」

「弱いから..それだけよ」

「私にはできません!」

「だったら終わりね…呪印を強めるから死ねば良いわ」

《嘘、何でこんな事になるの…》

「くくくくくるしいぇわ…やめて…」

「貴方が何で負けたか解らないのね? 弱いから.覚悟が無いからよ..これの何処が逃げないのかしら?たかが赤子1人殺す覚悟も無く..強さを求めるの? もう心が負けているの…ロザリオなら笑いながら殺せるでしょうね…シャルロットだって同じだわ..本当に覚悟がないわ..ねぇ聞かせて」

「や、やります」

《顔が青いわね..やろうとするだけまだましだわ》

「ねぇ-何時やるの? 手が止まっているわよ?」

「はい..」

私は顔を青くしながら手を伸ばした。

「何をぐずぐずしているの? サッサとやれですわ!」

「はい」

「出来るだけ残酷に..刃物を使いなさい」

何も知らずに赤ちゃんは指をくわえて笑っていた。

私はその首にナイフを宛がうと一気に押し込んだ。

赤ちゃんは一旦大きな声で泣いたが..首を切り離すと泣かなくなり静かになった。

「何、泣いているのかしら? ウサギと同じ様にしなさい」

「ウッグ…うえぁぁぁぁぁぁ」

私は胃の中の物を吐き出した。

「あぁ本当に汚いわね..仕方ないわ..出すだけだしちゃいなさい」

「うぐ、うぐうえぁぁぁぁぁぁ..」

もう吐く物は無いようだ..ただ液体だけが吐き出されている。

「もう吐く物は無いようね..続けなさい..」

前と同じ様に首を拾い…目を潰した。

そして皮を剥いだ…

「うぷうぷっ..うえぁぁぁぁぁ」

「まだ吐くの…汚いわ..良い手を止めちゃ駄目よ..続けなさい」

私は赤ちゃんを…解体した。

「おおお、終わりました..うぷっ」

「何が終わったの? ウサギの時はどうしたんだっけ? 終わって無いでしょう? ほら…食べなさい」

《人を食べるの? 何で..私は人間..それは嫌だ》

「嫌です….」

「逆らう事は許しません」

私に着いた黒薔薇の入れ墨が..急に痛み出した。

「逆らえば..その痛みは増していくわ..まだナイフを刺された位の痛みだけど..そのうち耐えられないような痛みになる..そして最後は狂うか死ぬかね..生き残りたいなら…食べなさい」

「痛い、痛い、痛い..痛い..うがががあががあがっ」

「強情ね..何処まで耐えるのかしら?」

《苦痛耐性は強そうね…》

「嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だよー」

「駄目ね..死にたく無いなら..貴方を貶めた相手を殺したいなら..食べなさい」

「それでも私は…嫌だ..私は人間だ..わ」

「そう..だけど人間だから食べれるのよ..貴方の敵の顔を思い出しなさい! 凄く残酷だったんじゃない? 多分、総ての生物の中で..一番残酷なのは人間よ!」

どの位の時間がたったのかな…胃液まで大量に吐いて..小さい方も大きい方もまき散らした。

頭が虚ろになり…心が飛んだ… もう、これ以上痛いのは..嫌だ…

私は、目の前の肉に手を出した。

口に含んだ途端に痛みが消えた。

柔らかい頬っぺたは簡単に千切れた..咀嚼した。

《何だ..美味しいじゃない…》

《人間なんてただの肉じゃない…何で私は拒んだんだろう..ブタは普通に食べていたのに..》

「美味しい…だけど残りは固くてこのままじゃ食べれない…」

「焼いて良いわよ..ウサギと一緒よ…」

「はいっ!」

さっき迄泣いていたのに強い子だわ。

これは、マリアみたいな天才には要らない事。

マリアは躊躇せず、最初から考えられない位の拷問を笑いながら行っていたわ。

だけど、私は最初から拷問なんて出来なかった。

目を抉っただけで吐いたわ。

そんな私に先代黒薔薇のお母さまが行ったのが、同じ、人を食べる事。

これが終わって食べきった時から..私は人を殺すのも拷問するのも何とも思わなくなった。

ただの人間が悪魔の様な残酷さを身に着ける為には必要な事なの。

貴方も私も天才じゃない..凡才だわ。

だけど、今の貴方は..もう残酷さじゃまず、他の人間には負けないはず。

ジュディ…貴方は今、一度死んで、生まれ変わったの..もう搾取される側には居ない..搾取する側になれたはず。

弱いジュディはもう居ない..貴方は狼..他の奴は豚..豚に負ける狼は居ないのよ。

赤ん坊を食べるジュディを愛おしい、そんな目でフルールは見ていた。

黒薔薇への道? 売り飛ばす。
《ジュディは凄い..単純に思った..》

「良く食欲があるわね?」

《私がこの試練を受けた時には暫くは食欲が無く..食事がとれなかった》

「私、結構大食いなので..」

「そう、まぁ食欲がある事は良い事だわ…赤ちゃんの骨はとっておいてね…使うから」

「そうですか…」

「しかし..朝から良くウサギが食べれるわね」

「私、お肉大好きですよ」

《マリアと違った意味で凄いわ…キモが座っているというか、何と言うか凄い》

「さてと..」

「今日は何をするんですか?」

《昨日、赤ん坊を食べさせたのに..普通は平気でいられないと思うんだけど! 今日は休ませるつもりだったんだけど..まぁ良いわ》

「今日はお金と人脈を作りに行きます…今日は完璧な憑依ではなく、貴方の意識を残したまま憑依します、私のやり方を見て下さい」

「それって?何をするの」

意識が遠のいていく..再び意識が戻ると…あれっ体が動かない。

「どう、こんな感じよ」

「成程、私とフルールの意識が逆になった感じなのね」

「そういう事…だから、貴方は今日は見ているだけでい良いわ」

「解りました..後でちゃんと体返してくださいね」

「解っているわ」

私は村に来ている..

私に憑りついたフルールが誰かを探している。

「みーつけたと…あのどうかなさったのですか?」

「昨日から私の子供が行方不明なんです..一生懸命探してるのですが見つからなくて」

「そうですか..それは大変ですね…もしかして、それは赤ん坊ではないですか?」

「そうですけど..なにかご存知なのですか?」

「さっき若い女が赤ん坊を連れて…街の方に向かうのを見ました…追い掛けましょう」

「主人に相談してから….」

「それでは間に合いません…私も手を貸しますから..直ぐにいきましょう」

「ですが、主人に相談させて下さい」

「間に合わなくて良いんですか? 急がないと息子さんに二度と会えなくなってしまいます」

「解りました、行きましょう」

彼女をつれて街に向かった。

「私の名前はジュディと申します、貴方の名前は?」

「はい、クリスチーナです。」

「そう、クリスチーナね、いい名前だわ」

「そうでしょうか?」

「ではクリスチーナ急ぎましょう」

「はい」

街についた。

「ここに入っていくのを見たのです、私が聞いてきてあげましょう..クリスチーナは此処で待っていて下さい」

「はい」

……………………..

……….

「あの、随分と時間が掛かりましたね..息子はその」

「その事についてですが息子さんは金髪でグリーンアイの赤ちゃんですか?」

「そうです」

「それは不味い事になったわ..貴方の赤ちゃんここに売られたみたいです」

「そんな…どうにか取り返せませんか…その為なら私何でもします」

「何でも..良かった..実は貴方が暫く働くなら子供は返しても良いという事でした」

「仕方ありません..働きます」

「では、書類を預かっていますのでこちらにサイン下さい」

「はい…これで子供は帰して貰えるのですね」

「約束します」

「さぁ行きましょう…」

「はい」

薄暗いカウンターの中に小太りの男が座っていた。

「早速、連れてきた…書類の確認をして」

「はいよ..確かに不備はないようだ…ほら約束の金だ」

「ジュディさんこれは一体…」

「大丈夫ですよクリスチーナさん…子供は返ってきますから」

「本当ですか…有難うございます」

《売られたとも知らないで..》

「おい、女こっちにこい..」

「あの..私の子は…」

「そうだ、ちゃんとサインをしたんだから…返さなきゃだわ…はい」

「この骨はなんですか?」

「貴方の赤ちゃんですわ..」

「これが…嘘嘘嘘よ」

「本当だよ…赤ちゃんは返したんだから…ちゃんと働いてね20年」

「私のサニーが、サニーが嘘だって言ってよ..嘘でしょう!」

「現実は残酷ですね…」

「そういえば、20年….何が20年なんですか」

「さっき、働くなら息子は返す、そういう約束だったでしょう?」

「ええっ..だけど..息子は..ヒグッ、グス」

「約束は約束です」

「解りました、何をすれば良いんですか?」

「性処理奴隷として20年の契約ですよ…頑張って」

「嘘…嘘でしょう…嘘よ…」

「それじゃ…さようなら..」

「私を騙したのね…」

「騙して無いでしょう..ちゃんと貴方の子供は返したわよ…死体だけどね」

「おい、お前..お前はもう、うちの商品だこっちにこい」

「私騙されたんだです…そんな契約だなんて知らなかった。」

「あのなぁ…ちゃんとした書類にあんたがサインしたんだろう? 」

「ですが..」

「ですがじゃないんだ..おいこの女を地下に連れて行け」

「嫌々いやいや..離して、離してったら…」

「煩いぞ..静かにしろ」

横っ面を殴られ、そのまま骨と一緒に連れていかれた。

「今度は中古じゃなくて.新品の処女を売りに来るから宜しくね」

「その時は高く買いますのでどうか今後とも御贔屓に」

奴隷商人に見送られ..私は奴隷商を後にした。

黒薔薇への道? お買い物
お金が出来たので..これから必要な物の購入に来た。

「あの、フルールこれは幾ら何でも…」

「煩いのですわ..貴方も私もお金がないのですわ…戦うには武器が必要なのですわ!」

「そりゃそうだけど…」

「あの女も貴方と同じ..弱いから虐げられる..当たり前の事よ!」

「そうは言っても..」

「だったら、貴方が代わってあげればいいわ..子供を産んだ中古女より処女の貴方の方が奴隷商も喜びましてよ….出来ないでしょう? 所詮人間なんてそんな物なの! 世の中には偽善者しかいないのですわよ」

「そうだね..そうだ..姉も義母も表向きは善人を装っていたわ..」

「そう、うっかり忘れそうになった、ありがとうフルール」

「解ればよいのですよ….貴方も私と同じ悪人なの..だったらそんな考えドブに捨ててしまえですわね」

「そうね…優しさなんて..要らないわね」

《だけど、それなら貴方が私にしてくれてる事は何かしら..これは優しさじゃないの?》

「その本質を知っていれば貴方の不幸は防げた..解かった」

そしてフルールは薬品やら武器を交渉して買い集めていった。

「さぁこれで必要な物は揃ったわ…帰るわよ..」

「はい..」

「案外、中古女でもお金になったでしょう? 世の中に沢山落ちていて誰も拾わない物…それは人間なのよ..」

「解りました」

「貴方は今日一日で沢山の物を手に入れた 奴隷商人との顔つなぎ、お金、戦う武器や薬品…此処までくればあと一息…ですわ」

フルールは楽しそうに私の顔で笑っていた。

やっている事は悪い事…だけど、私の人生の中でこれ程、親身になってくれている人はお母さま以外にいない。

やっぱり、フルール..貴方は私には優しいよ…

黒薔薇への道 黒薔薇誕生
「さてと…帰ってきましたわね..流石に疲れましたわ..少し眠ります..今日はゆっくりしてていいわ」

「フルール..時間が惜しいんじゃないの」

「それなら、大丈夫..後は夜ですわよ」

それからフルールは何度語りかけても答えなかった。

「ねぇ ジョディ起きてる?」

「ええ..」

「今の貴方に足りない物は何か解る..」

「強さですか?」

「それは勿論だけど…一番足らないのは経験よ」

「そうですね…だけど、それはどうしても手に入りませんよ」

「そう、だからズルをするのよ」

「ズル?」

「そう、私が経験した事..私が身につけた物..その全てを貴方にあげるわ」

「えっ、それって」

「今迄したのは、その為の器作り..今の貴方じゃ耐えられるかどうかは五分五分..頑張ってね」

いきなり視界が無くなった。

そして暗闇が広がっていく…

《嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘…これがフルールの記憶なの..》

そこには唯々殺戮や拷問をしていた少女が居た。

そう、これが黒薔薇…拷問や殺戮、恐怖の象徴よ。

私はね、他の黒薔薇とは違う..普通の黒薔薇は将来の王妃候補の女性をランダムに定めて拷問をして耐えた物から王妃に相応しいと思う者を選ぶの、だけど、私の父は元裏騎士だった。

だから、最初から黒薔薇になれるように私を育てた。

これが最初の私の殺人…殺したのは母さん

小さな子供が縛られている母親を拷問しながら殺す映像が浮かんだ。

《何で、何で、普通にこんな事が出来るの》

可哀想..そういう感情がないからよ…

幼い頃から目を抉り、人の顔を焼き、指や四肢の切断..暇さえあれば毒殺に暗殺、拷問。

それだけしか無かった。

暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問、暗殺、拷問

本当にそれしかなかった。

私、王妃になってからも贅沢なんてしてないわ..正直言って宝石の価値も解らないのよ。

さぁ…受け入れて..そして耐えて。

《うががががががががががががががががっ 体中が痛い..ああああああ》

自分の力で押さえつけるの…

《頭がいたいいあいあいあいあいあいいあいあいあいあいあい痛い..破裂する》

自分の意思で押さえつけて

《心が心が痛い痛いいあたいあたいあたいたいた..》

ちゃんと押さえつけなさい..もう少しよ..もう少し..

《あががががががががががががががあぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱっ》

もう少し

《殺して、殺して、これ以上人を殺したくない…殺したくない》

あと少しよ、飲み込まれないで..

《死にたい、死にたい、死にたいのよ..こんな事する位なら死ぬわ..》

もう終わりは近いわ。

気が付くと私は体中から体液をぶちまけていた。

目からは涙、鼻からは鼻水…体は汗だらけ..下は糞尿をまき散らしている。

なのに、体は清々しい…

「耐えきったのね..大丈夫?」

「大丈夫です..寧ろ体は清々しいです」

「そう、だけど貴方は乙女として凄く汚いわ..水浴びをしてきなさい」

「きゃぁ..」

「直ぐにいってきなさい」

「終わったわ」

「どうしたんですか急に..」

「全てが終わった…貴方には私の全てを渡したわ、私がここで幽霊になってもしたかった事は 次の黒薔薇を育てる事だった」

「今の私なら解ります…フルールの人生はこれしか無かったのね」

「そうよ..私の最後の仕事は、次の黒薔薇を育てる事だったわ」

「マリアさんですね」

「そう、あの子は私の最高傑作..それをバカ息子が逃がす口実を作ってしまった」

「それで息子さんを助けなかったのですか」

「ええっだって子供なんてただ血が繋がっているだけの肉塊だわ」

「私もそう思います」

「そう、だから見捨てた..そして王が亡くなった後は国もね…」

「だから国が滅んだ後も貴方だけは見つからなかったのね」

「全て受け渡した貴方なら全て解っているでしょう..」

「死ぬまで弟子探しですか..凄いですね」

「だけど、誰もついて来れなかったわ…正直時間があればこんなズルでなく本格的に貴方を鍛えたかったけど、時間がなかったの…だから、私を受け渡す事で、それを埋めた」

「ええっ解っています」

「貴方を何とか黒薔薇を名乗れる位にはしました..まぁ私と同じ凡才ですが..」

「貴方は凡才ではないですよ、マリアが天才なら、貴方は秀才だと思います」

「そう、本当は黒薔薇になった貴方には王族との婚約が約束されるのだけど..国がないからあげられないわ..そうだ、これをあげる」

「ブローチですか?」

「ええ、安物だけど子供の頃から私が持っていたものよ..」

「ありがとうございます」

「さぁ、最後の試練が始まるわ..私を安心させて」

「お前が俺の子を殺して妻を売り飛ばしたのか!」

「ええ、そうよ何か悪いのかしら?」

「貴様、それでも人間か? 殺してやる..」

「そう、出来るならやれば!」

男は剣を抜き突っ込んできた。

凄い、太刀筋が簡単に見える。これがフルール、黒薔薇なんだ。

私は左によけ..ナイフで片目を抉った

「うわわわわわわわっ 貴様」

「弱いのにしゃしゃりでてくるからだわ..この程度で」

「来るな、来るな」

私は素早く駆け寄り首筋を切り上げた..首から男は血を噴き上げ..動かなくなった。

「お見事…あれでも彼奴はこの辺りじゃ有名な冒険者よ..これで私も安心していけるわ」

「そうなのかな..そんなに強くは無かったよ!」

「当たり前よ..貴方は」

「黒薔薇だからね」

「クス..そうね..そろそろ」

「行くの」

「ええっ 私の執念は次の黒薔薇を育てる事だった..それが叶った今、もう自分が保てないみたいね」

「そう、私は泣かないわ..黒薔薇だからね」

「それで良いのよ..今の貴方なら復讐など容易いでしょう…頑張るのよ」

「はい、やっぱり貴方は優しいわ、誰よりも」

「うふふ、冷酷女王、黒薔薇のルーラン…拷問狂と言われた私が?」

「ええっ、少なくとも私には優しかったわ」

「貴方がそう感じたなら貴方が黒薔薇候補だったからよ…黒薔薇を目指す子は私の宝だもの」

「今迄、本当にありがとうございました」

「貴方は黒薔薇…私の作った最後の黒薔薇..どこまでも気高く狂い咲きなさい」

「はい」

フルールはそのまま消えるようにいなくなった。

最後にフルールは私に微笑んだような気がした。

さようならフルール…私は..貴方の様に狂い咲いてみせる。

黒薔薇は舞い降りた…最初の復讐
お金は充分あるから、今私は宿屋にいる。

流石に体が臭かったわ…田舎育ちとはいえ臭い物は臭い。

新しい服を買って..身ぎれいにして…うんこれで一応は令嬢っぽくなった筈だ。

服は黒のゴシックロリータ風の服だ..フルールと同じような服。

赤にするか迷ったけど…フルールに併せたわ…師匠みたいなもんだからね。

奴隷商に挨拶にいった。

「おじさんお元気かしら?」

「あぁ、この間の方ですね….儂は元気ですが、良い話ですかな?」

「多分…まぁ失敗しなければだけどね」

私は奴隷商の主人ダクラスに説明をし、条件を記載した無記名の契約書を複数用意して貰った。

「本当にこんな旨い話があるんですか?」

「今回も利益は余り要らないから..ね..良いお客でしょう?」

「そうですな、最高のお客様かも知れません」

「その代わり…もしこれが旨く行ったら繋いで欲しいのよ、これは貴方にしか出来ない事だからね」

「そうですが、それは私にとっても大勝負と言えます」

「そう、なら、もう一つの商会の方に頼もうかしら」

「解りました..載りますよジュディ様に…」

そして、私は奴隷商の馬車で学園近くまで送って貰った。

帰ってくる日を今日にしたのには理由がある。

今は王都で園遊会が開かれている…だから有力な貴族の娘はいない、園遊会は2週間行われる。

その間はここには下級貴族の娘と平民の娘しかしない。

本当に良いチャンスだわ。

「いつも、ご苦労様…私が呼びに来たら..あそこの馬車の人呼んで貰えるかしら?」

私は学園の門番に銀貨1枚渡した。

「解りました…急いで呼ぶようにします」

《可愛いそうに…辞めるんだな..良い子だったのに…》

私は門をくぐり校舎に入った

《とりあえず、シャルロットの様子でも見ようかしら?》

相変わらず虐められているのね。

「シャルロット..ごきげんよう! やっぱりうちの実家は貧乏だっから園遊会に行けなかったのかしら? それとも送ってもらったドレスは燃やされたとかかしら?」

「あんたが居なくなったせいで私は、私は..」

「良く言えるわね…だけど良いわ…そういう態度なら気になったから戻ってきたけどまた出て行くわ」

「待って、ごめんなさい…戻ってきてくれて嬉しいわ..ありがとう」

「あのね…流石に今度は私も抵抗はするわよ…良いわね」

「良いわよ《おもちゃとしていてくれるならね》」

「….という訳で、私が暴れても良いってシャルロットが保証したわ」

「それがどうかしたの子ブタちゃんの責任を大豚がおうそれだけのことですよね..それが何か..子豚さん」

「豚が何で服着ているのかしら? あれ意外に良い物よね…貰っちゃおうか?」

豚豚豚豚…沢山の罵詈雑言が飛んでくる。

彼女達は見たはずだった…貴族がどれだけ残酷なのかを…

そして無様な姿をさらした彼女もまた貴族なのだ。

「豚と一緒に生活なんて気持ち悪いわね..臭い、臭い本当に嫌だわ!」

「だったら、息を止めればい良いわ..」

「はぁー何を言って..」

「私、ジョディ、ランディウスは貴方に決闘を申し込むわ!」

「何を言っているの?」

「場所はここ、時間はたった今..」

「はぁ..貴方頭が可笑しいんじゃない?」

「開始ですわ」

ジュディはナイフを抜くと走り出す…そしてお腹をさした。

「ああああああああ!痛い! 何ですのこれは、いきなり..うぐっ 私のお腹が痛い痛い痛いうぅぅぅぅ」

「当たり前のことですわ…貴族を罵倒したから、この国の法律作法に則って決闘をしたのよ! どこに問題があるのかしら?」

お腹を押さえて蹲る令嬢の頭を踏みつける。

周りは理解が頭に回らずにただ見ていた。

「さぁ..早く抵抗して来なさい..虫けらの平民さん…ランディウスに逆らうからこうなるのよ!」

「待って..ゴホっ..このままじゃ死んじゃう..降参します..許して」

「あの、勘違いしてない、決闘で命の保証があるのは貴族だけ..平民には保証はないわ..嫌なら贖いなさい」

「うっ、そんな..死にたくないわ、死にたく」

「駄目ね..」

私は女の傍に行き、そのまま喉を掻き切った。

血が噴き出し…そのまま虫けらは絶命した。

《貴方はついているわ…最初だから楽に殺してあげたのよ》

「はい..勝者は私事、ジュディ..うふふふふふっ 」

「人殺し..人殺しだわああああああ!」

「早く、早く知らせなきゃ」

「何を言っているのかしら? 決闘はちゃんとした法律に則った権利だわ..さぁ始めるわ..次は貴方!」

「わ、私、何で、何で私なのよ..」

「貴方、さっき、私を豚って呼びましたわね? これは立派な侮辱罪だわ..貴族相手に豚..当たり前の事でしょう?」

「待って、待って..謝る、謝るから..ねぇ..ねぇ辞めてよ」

「私、ジョディ、ランディウスは貴方に決闘を申し込むわ」

「待って、ねぇそうだお金、お金で解決..それが良いわ、ねぇ」

「場所はここ、時間はたった今..」

「ちょっと辞めて.お願い、私は.戦ったことは無いわ..嫌だ、嫌だ」

「駄目ね、決闘の場所も時間も上位の方が決められるのよ? 無理だわ」

「そうだ、降参、降参、します…負けました..これなら問題ないわよね..ねぇ助けて」

「降伏は認められた権利だわ、受け入れるかどうかは別としてね、そう、だったらこれにサインして..それでい良いわよ」

「何、これ…」

「貴方は負けたのよね…さっさとサインしなさい!」

「書くわ、書きます、それで良いのよね..」

「さぁ、ここに居る全員に一対一の決闘を申し込むわ..覚悟しなさい」

結局、この騒動で殺された者が三人…書類にサインした物が22人..職員が来た頃にはそれ程の犠牲者が出ていた。

「何をしているの? ジュディさん..戻ってきたそうそうに..これは何ですか..何で泣いているの?
何をしたのです..嘘、そこの三人は死んでいるの..貴方自分がした事が解っているの?」

「ねぇ先生酷いわ..先生はロザリオ様がした事を黙認されましたわ..私も貧乏だけど貴族でしてよ…同じ権利は持って居ますのよ」

「それは..」

「文句ならランディウス家やロンベルク家に言ってからにして欲しいですわね!」

「それは、私には..その権利はありません」

「そうでしょう! これは王都の警備隊に訴えても無駄ですわ..正当な貴族の権利ですからね!」

「ですが、ここまで、ここまで何故するのですか…..」

「それは私がされていた時に言って欲しかったですわね..遅いですよ!」

「ねぇ辞めましょう..貴方は明るい子だった筈よ」

「その結果があれですわ…もう時間は戻りません..私偽善者も嫌いなのよ..私、ジョディ、ランディウスは貴方に決闘を申し込むわ」

「何を言っているの?ジュディさん」

「場所はここ、時間はたった今..」

私はこのムカつく偽善者の胸にナイフを突き立てた。

他に教員が二人来たけど..めんどくさいから..決闘法を用いて殺した。

これは当然の権利なのだから文句は言わせない..おばさんは価値が無いから殺すにかぎるわ。

それから、門番に伝えて馬車の中から「ダグラス達」を呼んで貰った。

「ダグラスよく来たわね」

「ジュディ様はここの生徒だったんですね…驚きました」

「これは書類よ..これも顔つなぎだから半額で売るわよ…その代わり条件どおりにお願いね」

「それはお任せください」

「何を言っているのですか…この人たちはいったい何なの!」

「サインしたでしょう! 貴方達は奴隷として売られるのよ?」

「嘘よ..そんな、なんで、そんな」

「泣いても無駄よ..だけど、そうだ、部屋にある物全部と今身に着けているもの全部で、手紙を書かせてあげるわ」

「そんな、総て取り上げるなんて、裸になるの何て嫌よ…」

「勘違いしないで..これは慈悲よ、この学校に通えるなら実家は金持ちでしょう? 一旦、奴隷に落として裸になれば..もう恨みは忘れるわ…貴方達にはそこまでの事をされた訳じゃないしね..」

「ですが、奴隷になったら..終わりだわ」

「馬鹿ね…その為の手紙でしょう? 実家に頼んで買い上げて貰えば…助かるじゃない! 商品にされるまで3日間..まだ何もされる前に助かるわよ」

「そう..それが貴方の最後の慈悲なのね…解かったわ..私達にはそれしか助かる道は無いのね..良いわ..」

1人の令嬢が泣きながら服を脱ぎ捨てると次々に令嬢は服を脱いだ。

結局22人全員が裸になった。

裸になった女たちは手紙を書いた後、馬車に載せられた。

人前で肌など晒した事無い彼女達はこちらを憎しみの目で見ていた。

「ちょっとした金持ちね..うん」

「あの、ジュディ..こんな事して良かったの不味いんじゃないの?」

「何を言っているの? シャルロット姉さん..自分が命令したくせに..」

「私?…何で」

「思い出して..」

「あのね…流石に今度は私も抵抗はするわよ…良いわね」

「良いわよ《おもちゃとしていてくれるならね>」

「….という訳で、私が暴れても良いってシャルロットが保証したわ」

「保証したわよね..だから、これは貴方に頼まれてした事よ」

「私のせいなの?..」

「そりゃそうなるでしょうね..頑張ってねシャルロット姉さん..責任はあなたにあるわ」

わざと奴隷に落とされた令嬢たちに聞こえるように大きな声でやりとりした。

ランディウスは貧乏貴族だ…沢山の借金がある。

これで王都の商家ではお金が二度と借りれないだろう..もしかしたら借金の返済を迫られるかも知れない。

いい気味だ…

閑話 未来の無い乙女たち
「泣くんじゃありません、実家から助けがきますから」

「ぐすん..そうよね、私のお父様はライノ商会の会長ですもの大丈夫だよね」

「ええっ王都には奴隷商は2件しかありませんわ..確実に助けにきます..安心ですわ」

「しかし、彼奴はムカつきますわランディウス何て貧乏貴族じゃない..貴族という名の貧乏人ですわ」

「そう言えば、私の実家がランディウスにお金を貸していましたわ」

「だったら、今度は商人の恐ろしさを教えなくてはね」

「お金の怖さ…教えてあげるわ」

「ですが、可笑しいですわね..いい加減、奴隷商につく頃ですのに」

彼女達は知らなかった。

ジュディは黒薔薇だ..その彼女がそんな甘い事等しない。

奴隷商人には王都の店に戻らず..隣国の帝国に向かっている。

国内であれば彼女達の親が買い戻しができる。

だからこそ、帝国の奴隷商に売るように頼んでいた。

今でこそ戦争はしていないが、帝国と王国は仲が悪い、そこへ性処理奴隷として売り飛ばされたのだ。

彼女達にはもう未来は無い..

ガサツな帝国の男に犯され..子供が出来たら降ろされ、又性処理をする。

そんな未来しか最早ない..唯一の自由は..死ぬ事だけだ。

小金持ち気分
22人を売り飛ばした金額は思った以上に高かった。

1人当たりが1200万ゴールド計算だったので2億6千400万ゴールド..うん、もう働かないでも生活できる。

それから、全員分の荷物も…一部を除き全部ダグラスに持っていって貰った。

3割手数料を持っていくらしいけど..各種専門店に売り払いに行ってくれるそうだ。

《最低限しか無かった部屋が随分華やかになったわね》

「あの..ジュディ、流石にこれは不味いんじゃないかな?」

「法律上は問題ないわよ…だって同じ事をロザリオさんもやったじゃない? 更に、私を罰すると芋吊る式にロザリオさんの行動までたどり着くのよ…黙認するしかないでしょうね」

《ただし、助かるのは私だけ..ランディウス家の方は..終りね..だってもう誰もお金を貸してくれないから..今年の冬は越せないんじゃないかな》

「そうなんだ、良かったわ、それでこれからどうするの?」

「残りまだ2週間近くあるから、下級貴族狩りを楽しもうかしら?」

「ジュディ…貴族に迄手を出すの?..流石に不味くないかしら」

「大丈夫よ..これは認められた権利だわ..それにこの2週間以内に出来るだけ下級貴族を狩って..ロザリオさん達を待つのよ..流石に上級貴族はどうする事も出来ないから…そこで手打ちね」

「手打ち?」

「そうよ…手に入れた物の半分を献上するのよ…そうしたら多分、ロザリオさんと仲良くなれるわ、結構な金額になるし、中にはお金で買えない物もあるはずだから、多分後ろ盾になってくれるはずよ…その関係を学園を卒業しても続ければ、ランディスウス家も安泰..家に帰る時には二人ともきっと褒められるわよ」

「そうか..確かにそうだわ..ジュディ..私..本当にごめんなさい」

「良いのよ…その代り旨く行ったら…そうねブドウ園の周辺の土地を少し頂戴..母さんとのんびり過ごしたいのよ」

「そんなので良いの? ジュディがここまで優秀なんて知らなかったわ…私の片腕として領地経営を手伝って貰っても良いのよ?」

「私は揉め事は嫌いだから…姉さんや、ちい姉さんですればいいわ…元通り静かに過ごさせて..駄目かなシャルロット姉さん」

「全く、貴方は欲がないのね」

「ええ」

《あはははははははは..おかしいの、ランディウス何てもう無くなるまで秒読みなのに..何も解らないのね、既にお金を貸してくれそうな商家はいない….これから、貴族を狩れば、独立して最後は敵対..嫌われ者になったランディウスなんて、どんなもの好きが助けるのかしら》

実際は貧乏だけど…子爵は子爵、本来ならギリギリ園遊会に行けるレベル。

だから、ここに居るのは全て格下..誰から狩ろうかしら。

「ギルリアさん、貴方も私の事を随分馬鹿にしてくれましたね..シャルロット姉さんにも随分な事もしてくれたわ」

「それがどうかしたのかしら? 私の実家は王宮騎士なのですよ…つまり..騎士爵..地位は低いですが、決闘なら負ける気がしませんわよ」

「なら簡単だわ、私、ジョディ、ランディウスは貴方に決闘を申し込むわ!」

「正式な決闘なのね、なら私が貴方を殺しても問題無いわね、場所はどうするの? 時間は?」

「場所はここ、時間はたった今..」

「随分、舐められたものね、私は将来は騎士を目指しているのよ..ただの令嬢の貴方が勝てる訳ないじゃない」

「それでは開始ですわ」

ギルリアは旨く隠していた剣を取り出した。

「多分、決闘になると解っていたわ..だから剣を隠し持っていたのよ..卑怯とは言わないわよね」

「別に構わないわよ..」

「ならば、ギルリア.ソルティマが騎士の怖さを教えてあげる」

……………………………..

………….

無様にギルリアが膝磨づいている…馬鹿ね、たかが騎士見習い以下が黒薔薇の私に勝てる訳もないのに…

「貴方は大した物よ..さぁ騎士の誇りと一緒に死になさい」

ギルリアの片腕はもうない…正確に言うなら切り落とされて近くに落ちている。

「私の腕が、腕が..ああ..あああああ」

「ふふふ、その腕じゃ騎士にはなれないわね、貴方の人生は..終わり..可哀想だから終わりにしてあげる」

「嫌だ、嫌だ..死ぬのは嫌だ..お願い..いやお願いします..助けて」

「ええ..良いわよ…残った腕でサインしてくれたら許してあげる」

「それは奴隷契約..そんな」

「死ぬのとどっちがよいのかしら? 選んで良いわ?」

「書きます、書かせて下さい」

これで一人終わり..この子が他の下級貴族の希望だった見たいだから..もう逆らう人は居ないはず。

だけど、片手が無いけど..どうしようかな..そうだ、記憶にある「うにうに」でも作ってみようかしら。

うにうに
私は今、地下室にいる。

もう私に逆らう者は今は居ない。

私にはフルールの経験がある..その中には不具者の旨い使い方もあった。

「うーうーうー」

ギルリアは今猿轡をはめて喋れなくなっている。

「ねぇ、ギルリアさん、貴方はね私の奴隷になったのよ?…騎士爵とはいえ貴族だから高く売れる筈なんだけど..方輪じゃ価値がないわ」

「うーうーうー…《それは貴方がしたんじゃない》」

「だからね、貴方を高く売れるように改造する事にしたの..うふふ楽しみね」

「うーうーうーうー」

「そうね、まずは邪魔なもう一本の腕を取っちゃおうか?」

「うーうー..《やめて、やめてよ..お願い》」

ゴリゴリゴリ….どうにか取れたわ..

「ほら、腕がとれたわよ…何も喋らないわね..気絶しちゃったのかしら..まぁ良いわ」

死なれると困るから特別な薬品を使って傷口を塞ぐのよ..これで良い…

さてと、今度は両足ね..右から..

「うーーーーーうーーーーー《痛い..あたしの腕が無い..足も、足も切るの》」

「気が付いた? これから足を切るのよ..」

ギコギコギコ..ゴリ..又気を失いましたわね…あぁ、おもらし迄して汚いわね..

固定する場所が少なくなりましたわ..仕方ない麻酔薬を使いますか..

手足を切り落とし終わったから..今度は歯を抜かないと…

歯を一本一本全部抜いて…声帯はどうしようかしら? まぁ残した方が面白そうね…

もう猿轡も要らないわね…

薬湯でまんべんなく浸して..体を弄って..完成だわ。

「う、うん、痛い痛い痛い痛い..嘘、私の手も足も..何もないのよーーーーー」

「起きましたかしら? 多分痛いのは気のせいよ..痛みは無い筈だから」

「私をこれからどうしようと言うの..こんな事までして」

「貴方は「うにうに」になったのよ..究極の性処理奴隷にね..これから売るつもりだから残りの人生頑張ってね」

「そう..私は終わったのね..だけど、貴方の自由にはならない..死ぬわ..あれ」

「そう、手足も無い..貴方の口には歯も無いのよ..ほら..私が手を突っ込んでも怪我はしないわ」

「うううう」

「ねぇ、幾ら噛んでもそんな物よ? 貴方には死ぬ自由も無いわ…」

「そんな、ねぇお願い、私を..殺して」

「駄目ね..貴方は究極の性処理奴隷うにうにになったの…高額で売れるのに殺す意味がないわ」

「お願い...殺して殺して殺して殺して殺してーーーーー」

「無理」

私は再び使いを使ってダグラスを呼び出した。

「ねぇ、ダグラス..うにうにって知っている」

「うにうにですか?..何です、それ?」

《嘘、この時代じゃ、うにうには知らないの..まぁい良いか》

「これよこれ..」

私はギルリアを見せた。

「これは..ダルマ奴隷ですね..まさか作られたのですか?..普通は作っている最中にショック死してしまい..本当はただの嘘だと伝えられている..ダルマ女を..凄いですな」

「ダルマ女じゃないわ..うにうによ」

「違うのですか?」

「かなりね..まずは..胸とか触るじゃない」

「気持ちいい..お願いもっと、もっと触ってーーーお願い」

「薬品を使って感度をあげたから、この子は喜んで男の相手をするわ」

「凄い物ですな..うん、凄い」

「それだけじゃないのよ..良かったらお尻を触ってみない?」

「良いのですか? この感触..何て柔らかいのですか?」

「これが、うにうにの特徴..赤子の様に体が柔らかいのよ..だけどこれでまだ完成じゃないのよ..この特性のエサを与えて行けば..もっと柔らかくなるわ」

「この吸いつくような肌がまだ完成でないのですか?」

「そうよ、このエサを一か月あげていれば吸いつくような凄い体になるわ」

「それは凄い」

「体は全てが性感帯で感じまくり…肌は吸い付く様に柔らかい、穴も全て最高級な感触..それを抱いた感触は..どんな高級娼婦も叶わない..一度抱いたら、病みつきになる…それがうにうに」

「凄いですね…それで幾らで譲って貰えるのですか?」

「そうね、これも言い値で良いわ….但し二人目からは高額にするつもりだけど..お試し価格で」

「そうですね..それでは7000万ゴールドで如何ですか?」

《思った以上に高く売れたわね》

「それで良いわ..でも価格の根拠は何かしら?」

「ダルマ女じたい、今では作れる職人が殆どいないんですよ..ダルマ女で通常5000万以上…そこに今回は2000万上乗せしました..すいません、うにうにの価値は正直解りませんので」

「そうよね..ありがとう..また次も宜しくね」

「はい、ジュディ様は最高のお客様ですのでこちらこそ宜しくお願い致します」

「ええ、宜しくね」

最後の幕開け
結局、貴族の令嬢たちも全員を奴隷送りに出来た。

騎士見習いのギルリアさんの惨状を見た他の令嬢は戦いはしなかった。

甘い事に、一回奴隷に落ちても実家に買い戻して貰えば良い..そう考え平民たちと同じ様にした。

人数は7人..また良いお金になりますわ。

貴族の令嬢という事で1人辺り3000万ゴールドで売れた。

合計で9人..2億7千万ゴールドだ。

「うふふ、2億6千万に7000万に2億7千万..合計6億ゴールド…これだけあれば帝国に行って爵位を購入しても悠々自適に暮らせますわね」

「あのジュディ..本当に大丈夫..大丈夫なのよね」

《本当に馬鹿ですわね..もう大丈夫なわけ無いじゃない? 貴族の令嬢を纏めて売ったのよ..もうランディウスは潰れるんじゃなくて殺されるんじゃないかしら? 王宮騎士~下級貴族…全部敵にしてふふふ…生き残れるわけ無いわね….貴方ももう解っているんでしょう? だけど認めたくないんでしょうね》

「そう、大丈夫よ..しかし本当に静かになりましたね」

「だって、それはジュディが…殺したり、売ったりするから…ここにはもう使用人と僅かな職員しかいません..からね」

「まぁ良いわ..これで後は…待つだけね」

「ええっ..ロザリオさんを待って…献上して後ろ盾になって貰うのよね」

《此奴は..頭がお花畑なのね..そんな訳無いのに気が付かないのか…はぁ放って置いてもランディウスは滅んだわ..大丈夫かしら》

……………….

………

そして、園遊会が終わって上級貴族が帰ってきた。

《本当は全員地獄に突き落としたいけど..流石に無理ね…ロザリオだけで我慢するしかないわ》

さぁ、最後の幕があがる…

私は…黒薔薇として咲き誇るだけだわ。

ドナドナ
勝負は早い方が良い..どうせこちらの動向位は知っているだろう。

こちらの仕掛けがばれる前に勝負をつける…

私は大広間に帰ってきたロザリオを見つけた。

「私、ランディウス、ジュディは、はロンベルク、ロザリオに決闘を申し込むわ!」

「あら、誰かと思えばブタさんね、良いわよ受けてあげるわ..場所は教練場..時間はたった今よ..良いわね」

《やはり、思った通り…相手に対して考える余裕を与えない..策略や罠を考える隙も与えない為に 直ぐに決断して決める…昔の私じゃ勝てない筈だわ…》

「おや..どうしたのかしら..おじけづいたのかしら?」

「いや、ロザリオっていい女だなぁってさ」

《黒薔薇になったから解る..此奴は同類だ..もっとも今はただの小娘みたいな物だけど..》

「あら..それは褒めて頂いたのかしら? だけど、手加減はしなくてよ!」

「これは本心から思ったのよ…手加減は無用だわ」

「そう、安心したわ..ならお礼をいっておくわね..ありがとう」

………………..

……….

「「「「「「「「「ロザリオ、ロザリオ、ロザリオ」」」」」」」」」

相変わらずロザリオ、ロザリオ煩いわね、ロザリオが戦う訳じゃないでしょうに。

「さてと決闘をはじめようかしら? 今回も私はこちらの方に代理人を頼みますわ」

「はいはい..銀ハエ冒険者かしら? そう言えば名前を聞いてなかったわ..今回はちゃんと名乗りをあげられますか?」

「貴様..私は金級冒険者のセイラだ..ハエ呼ばわりした事を思い知らせてやる」

「あら、金級にあがったの? その程度で? 変なの」

「貴様..この前以上にいたぶってやる覚悟しろ」

「はいはい..出来るのならどうぞ.. 何なら先手も譲ってあげるわ」

「貴様」

あははははは、全然遅いわね..

「全然相手にならないわね..剣も使っても良いのよ」

「貴様は殺す..」

「はいはい…..所で貴方..」

「何だ!」

「硫酸はお好きかしら!」

私は隠し持っていた硫酸を頭から振りかけた。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ」

「あら、あら目に入ったようね..セイラさんはついているわね…この化け物みたいな姿を見なくて済むんだから」

「痛い、痛い、痛い、痛いのよ..助けて」

「あらっ大丈夫よ簡単には死なない程度にしてあるから..さてと需要はないと思うけどとりあえずひん剥こうかしら」

「うわうわ..」

「あら、化け物のヌード..だれも嬉しくないわね..男一人満足させられそうもないわね」

「ううううう、助けて、助けて..ロザリオ様…」

「こういっているわよ」

「……」

「助けは来ないわね..そうね、もうその胸も化け物には必要ないわね..切り落とそうかな?」

「やめやめ..うぐうううう」

「はい、簡単に切れたわね…このおもちゃ売れないし価値はないわね…ロザリオも何も言わないから…殺しちゃおう..そうすれば私の勝ちだから..」

「ころ、殺さないでお願い..」

「残念ね…貴族で無い、貴方の命の保証は必要ないのよ」

そのまま、乳房の無くなった胸ににナイフを突き刺した。

「これで私の勝ちだわ..ねぇロザリオさん」

「そうね….私は貴方のいう事一つ何でも聞かなくちゃいけないのよね..最も命の保証はあるからそれ以外でね」

「そうね、それじゃ奴隷に落とそうかしら」

「それで良いのね? 私は侯爵家の令嬢よ..奴隷になっても上位貴族の地位は下級貴族と違って消えないわ
つまり、侯爵家で奴隷..だれも買えないし、明日には解放されて終わるわ..それなら他の物の方が良いんじゃないかしら?」

「いえ、それで良いわ」

「そう、解ったわ..この恨みはいつか何倍にもして返してあげるわ」

「無理ね.」

私はラグラスさんを呼んだ。

「その男が奴隷商人ね..連れて行くと良いわ..どうせ檻に入るのは1日だけ..貴方も覚えておきなさい」

「貴方は奴隷商には運びません、王宮に行きます」

「そう、もう手が回ったのね、私の婚約者は第二王子..保護される..そういう事ね」

「いいえ、お前は 第四王子の「初めての儀」の相手としてもう買われたのだ」

「「初めての儀」何それ..ねぇ」

「簡単に説明すると第四王子の童貞の卒業の為の奴隷として売り飛ばしたのよ…流石に弟のお古を兄が貰う事はないわ…めでたく婚約も破棄…悲しい人生のはじまりね」

そう、ダグラスは王家ご用達の奴隷商でもある…王家にこいつを売り飛ばす為にパイプを繋ぐ必要があった。

「そんな事、クラソ第二王子が許すわけ無いわ…」

「侯爵家でも奴隷だから売れるのよ..ただ、手が出せないだけ..だったら王家に売れば良いだけよ」

「貴方、この借りは絶対返すわ..例え体が汚されようと権力はそのまま..絶対に殺す」

「解かった、楽しみにしているわロザリオさん」

私は笑顔でロザリオを見送った…ドナドナを歌いながら。

おしまい
やっぱり知らないのね。

王族の童貞喪失の相手は普通は下級貴族から選ばれる。

そして、相手をした後は、そのまま家臣全員の慰み者として弄ばれて..飽きたら殺される運命しかないのに。

何故、そうするのか? 

仮にも王族である以上は平民や奴隷を相手にする事は出来ない。

更に言うなら…他の男性のお手付きになった者の相手をさせる訳にもいかない。

そこで選ばれるのが王家には逆らえない下級貴族の令嬢から選ぶ制度だ。

この時ばかりは滅多に頭を下げない王が頭を下げる。

そりゃそうだ「お前の娘を慰み者にして殺すけど、許せ」そういう意味だからだ。

だがこの行為で子供が出来たら…その子供には王位継承権が発生する。
それは凄く、不味い…だから…もし妊娠しても王族の子だと立証できない様に沢山の男に抱かせて捨てる方法を取るようになった..だが、それすら確実性が無いとして、最近では王族が童貞を捨てた後、数日楽しみ、家臣に回されて…最後は騎士達の慰み者になり..首を跳ねる..そういう制度に変わった。

もうロザリオの死は確定しているのに..どうやって復讐するのかしら?

「ジュディ..どうするのよ…これ..」

「そうね、責任はシャルロット姉さんがとれば良いだけだわ..私は実家からシャルロット姉さんを助けて欲しい…そう言われただけだからね」

「だけど、これじゃ..」

「助かったでしょう? 少なくとも卒業まで虐められずにすむわよ」

「……」

「実はね、私はもうランディウスじゃ無いのよ?だから責任なんて取る必要がないの」

「何ですって….」

「ロザリオを売った代金の代わりに..国王様から貴族を辞めて自由にして良いって権利を貰ったのよ..だから、帝国にでも母さんを連れていこうと思うの」

《第四王子の相手が見つからなくて困っていた王様、恩が売れたダグラス…そして自由を得た私..正に全員が得する良い取引だった。》

「そんな事、そんな事許さない」

「関係ありません、王命ですから、それにもう馬車が母さんを迎えに行っているわ」

「頑張って、次期ランディウス当主、シャルロット様…潰れなければだけどね」

「許さないわ」

「だったら決闘をします? 受けるわよ」

「しないわ」

「そう、じゃぁ私は行くわ」

帝国に行ったら、小さな領地を買って..母さんと一緒にリンゴでも育てながら暮らそうかな..

そうだ、黒いバラを沢山植えよう…フルールが好きだった黒薔薇を

数年後…帝国の外れに黒薔薇とリンゴを名産にする領地が現れた。

その領地の真ん中には黒薔薇で囲まれた教会があり、そこには黒い服を着た女神が祭られている。

その女神の名前は誰も知らない

                                 FIN