婚約破棄はされなかった。
私の名前はリアーナ…この国の公爵家の娘で王太子の婚約者でもある。
そして、何故か聖女と言われている。
この話を聞くと凄く幸せに感じる人も多いと思います。
だけど、私は、本当は聖女なんかじゃない。
ただ、神力(神の力)が強いから知らない間に聖女に祭りあげられてしまった。
私の本当の正体は「女神」。
王太子の婚約何て全く関心もないし興味が無かったわ。
いや寧ろ面倒だから、「王太子の婚約者になんて本当は成りたく無い」それが本音。
私の正体は正確には「女神」だけど目立ちたくないから、力を封じて人間に転生して折角静かに暮らしていたのに迷惑だわ。
あのまま公爵家で枯れていきたかったのに、そしたら何も起こらず静かに死んで次に転生できる。
この日は、何故か、態々王宮に呼び出され、妹の横に居るルドル王太子からお叱りを受けている。
何で怒られるのか…本当に解らないわ、目立ちたくないから、殆ど宮中の行事は最低線しか出ていないし、友達も理由があり作りたくないから、殆ど一人で居たのに、本当に解らない。
「数々のアリアへの陰湿な嫌がらせ、申し開きはあるか、リアーナ」
アリアへの嫌がらせ? 全く覚えは無いわ、大体私は目立ちたくないから派手な妹とは挨拶位しかしてない物。
私は静かに暮らしたいから、アリアを含み派手な女性は好まないし自分からは近づかない。
「アリアへの嫌がらせ…身に覚えは本当にありません!」
本当に身に覚えは無いわ、そもそも私は実家で嫌われているせいか、廊下で会っても妹のアリアとは挨拶だけで立ち話もしない。
アリアとは交流その物が殆どない。当然妹のアリアに何かをした記憶など全く無いし、聖女としての英才教育を無理やりされているから、忙しいしそんな事している暇なんて、全く無いわ。
「身に覚えが無いだと! あれ程、陰湿な事をしながらお前という女は良心が全く無いのか!」
本当に身に覚えが無いわ…聖女の仕事が忙しすぎてそんな事する暇なんて本当に私には無いもの。
「ルードルさま…本当に何の事か解りません、言わせて頂ければ、私は実家に嫌われているので、妹のアリアとは交流が殆どありません、しかも、聖女の勉強が本当に忙しいから学園にも余り来ません、そんな私が何でそんな事が出来るのでしょうか?」
周りは静まりかえり、王子の取り巻きたちは距離を置いて私たちを見ているわね。
誰もが、黙ってその様子を見ていた。
「待って、ルードル殿下そんなに姉を怒らないであげて下さい」
「アリア、もう庇わなくて良いんだ、無視や取り巻きを使っての嫌がらせの数々、そんな陰湿な事を繰り返すような女なんてな」
何なのかな?この茶番…取り巻きなんて、私には一人も居ないわよ? 傍に居るのは王妃様がつけた私のエチケット係(聖女としての振舞いを教える人間)しか居ない…私はある理由から友達が作れないから友達何て1人も居ないわ。
ルードル様の言葉を聞いた周囲が、ひそひそと話し出しているけど、これで、何で私が一方的に言われるのか、本当に解らない。
「俺は貴様のような女の婚約者であったことが恥ずかしい」
もしかして婚約破棄なのかしら…まぁそれで良いわ。
聖女なんて物も、王太子の婚約者も興味なんて無いわ。
更に貴族籍も無くして貰えたら恩の字ですね。
まぁ良いでしょう、2人が望む未来にすれば良いと思いますよ。
「では、ルードル様はどの様にしたいのですか! どの様なお話しでも謹んで罪をお受け致しますわ」
これで静かに暮らせる、それで良い…
「黙れ! 気安く俺の名前を呼ぶな!」
何も怒鳴る必要も無いでしょうに…冤罪を受け入れると言うのに。
「そうですか、ではどのようにしたいかお決め下さい…」
ルードル様は雰囲気に酔っているのか、両手を広げて声を上げる。
まるで舞台に立つ役者のよう。
「今日この時より、ルードル・ルーランはリアーナ・ポートランドとの婚約を破棄する!…そして、俺は、代わりにアリア・ポートランドとの婚約を宣言する」
まぁ、これで終わったわね…静かに此処を去って、実家も私を追い出すでしょうから、後は静かに暮らせば良いわ。
「私は婚約破棄を受け入れました、そうですねついでに「聖女の地位」もアリアに譲りましょう、王家と実家の方にはルードル様とアリア様から正式にお伝えください…私はそうですね、このまま他国にでも行きましょう」
王族と貴族の婚約…そして聖女の地位の譲渡、如何に王太子でも大変だと思いますよ。
「解った、王太子としてその辺りはしっかりする」
「それでは、王家の正式の言葉として婚約破棄を受け入れました」
「良かろう王家として正式の言葉として伝えよう」
これだけの沢山の貴族の前での宣言だ如何に王太子とて取り消しはきかないだろう。
「謹んで、リアーナ.ポートランド婚約破棄をお受けします、あとルードル様、私リアーナの貴族籍の抹消とアリア様、私のポートランドからの追放の命令をお出しください。」
「リアーナ、何を言っているんだ! そこ迄の事は俺は言っていない」
「お姉さま、私もそこ迄の事は言っていないわ」
私は首を振る。
「何をいっているのでしょうか? 王太子への不敬罪に未来の王妃への虐めで私は裁かれたのですよ! 更に王太子との結婚破棄、その状態で貴族として生きれるとでも? 冤罪かどうかでなく、王族と高位貴族がその罪があると言った、その時点でもう終わりですわ、国外追放、それが当たり前でしてよ」
周りの貴族が白い目で見ている。
当たり前だ、冤罪で一人の貴族を国外追放、如何に王太子や公爵令嬢でも軽蔑位するだろう。
「いや、そこ迄の事は俺は言っていない」
「お姉さま、私だって」
「王家の正式の言葉としてお受けしたのは此処にいる全ての方が見られています、それが嘘と言われるのですか」
自分達がどれ程の事を言っていたのか気がつかなかったのね。
私はおとなしく、自分が不利にならない様に立ち回っていたから「国外追放」で済むのよ。
貴方達がやった事は場合によっては「人一人の人生を終わらせる事」だわ。
もし、あそこで私が泣き喚いたら、それこそ王太子に無礼を働いたとして殺されたかも知れない。
もし掴みかかったら傍の騎士に斬り捨てられただろう。
素直にこの国を出て行く、そう思って居たけど…うん、こいつ等は凄く嫌い。
やっぱり出て行くのやめよう。
「お別れに私の本当の姿を見せてあげるわ!」
「「えっ」」
私は女神なのよ?
本来の私の姿は全ての人間の理想の姿、その者。
髪はプラチナブロンドに目はブルーアイ、そしてプロポーションは絶対的な黄金比で作られている。
さぁ、貴方達はこの私を目の前にして「本物の愛」を貫けるかしら。
「お姉ちゃん、それが本当の姿なの?」
「ええっ、そうよアリア…どうかしたのかしら?」
「私、婚約なんて破棄する、ずうっとお姉ちゃんの傍にいる…だから出て行かないで」
「リアーナ…」
「どうかしましたか?ルードル様!」
「俺は婚約破棄をしていない」
「急に何を言われるのですか? さっき「王家の言葉」としてしっかりとおっしゃったじゃないですか?」
「あれは気の迷いだ、王太子と貴族の結婚だ、王である父上の意思なくして破棄など出来ない、赦してくれ」
「まぁ良いですが…」
だけど、良いのかしら、これ程多くの貴族の前での婚約破棄に復縁。
大変だわ、しかも「国外追放」まで話には出ていたんだからね。
「それじゃ、この場所はしっかりと治めて下さいね、私は疲れたので休ませて貰います」
「解った、済まない…本当に悪かった」
「任せて、お姉ちゃん」
大丈夫かな..まぁ良いけど。
私は、その場を立ち去った。
不幸なのかな?
これで、この国は終わってしまうかも知れないわ。
地味な姿は私の仮初の姿。
女神である姿こそが本当の姿。
エルフだろうと、どんな美女だって絶対に人間である限り、私より美しい訳が無い。
だって、私は女神、全ての人間に「愛される存在」なのだから。
同じ女神でない限り私を越える存在等ありえない。
私よりもし美しい存在がいるとしたら多分「美の女神」位しか居ないわね。
私は女神の中でも有数の美しい存在なのだから
仮初の姿でいる時は私の女神の力は 1/数億 に抑えられている。
美しい、本来の私の姿を現した時、その能力は完璧に発動される。
溢れんばかりの女神の力が周りの人間に恩恵を預けるのよ。
その恩恵はどんなに嫌がっても受け取る事になる。
「お姉ちゃん、ポートランド家が火事に会って屋敷が燃えてしまったそうです」
この姿になった途端これだわ。
まぁ女神の姿は男だけでなく女も魅了してしまうから仕方ないわ。
「そう?お父様とお母さまはご無事かしら?」
「それが屋敷の人間は誰1人怪我人が出て無いそうです」
そりゃそうよ、私が居る限り…死人等でないわ。
「良かったじゃない?」
「ただ、ポートランド家は相当貧窮してしまいます」
「別に良いじゃない? 生きていればそれだけで幸せよ」
その後もポートランド家は数々の厄災に会うもメイド1人死ななかった。
ルードルは前回の愚行が元で廃太子となり、只の王子となった。
そして、その後もリアーナとの婚約を継続していた。
「可笑しいのだ、ここ暫く宝物庫のお金が盗賊に入られ無くなる」
「それは大変ですね」
「うむ、しかも、何故か帝国との小競り合いには負けて領土がどんどん侵されて小さく我が国はなっていく」
「犠牲者は出られているのですか?」
「それが、犠牲者は不思議と出てはいない」
それはそうですね、まぁ私が居る限り犠牲者は出ないわ。
それから、暫くして、ポートランド家はどんどん衰退し、生活だけ出来るお金を残し財産が無くなった。
だが、不思議な事に病弱だった当主を含み家族は健康になっていった。
普通これだけ貧乏になれば爵位も下がりそうな物だが、爵位は公爵のままだった。
「お姉ちゃん、今後は仕送りが以前の1/3になるそうです」
「仕方無いわね…仕方が無い事だわ」
王国は王国でドンドン領地を失っていき、今や小国となった。
だが、不思議な事に他の国に疫病が流行り、餓死が出るような事態でもこの国には死者が出なかった。
だが、貧困に耐えられなくなった国民や貴族はは次々と他の国に移るようになった。
その中にはポートランド家も含まれる。
そして、遂には国を維持できなくなり…国その物が無くなった。
そして、その最中、リアーナは忽然と姿を消した。
女神? 最終話
折角、私が恩恵を預けてあげたというのに、皆が不幸になってしまったわね。
アリアもルードルも試練には勝てなかったわね。
女神が傍に居るという幸せを感受出来ない。
たった一つの犠牲を受け入れれば、人として幸せに生きられる。
だが、そのたった一つを無くしただけで、人は不安になり不幸と考えるようになる。
私は、一つの欲望を捨ててくれるなら、最高の幸せをあげられるの。
私という女神の元に幸せに成りたいのなら、一つの犠牲が必要なのよ。
それだけ、差し出せば幸せにしてあげるのに…
「富」それだけを諦めてくれるなら、幸せになれるのよ。
私の加護を受ければ、大病にも掛からなくなるし、素敵な伴侶にも恵まれるわ、きっと友情にも恵まれて幸せになれるわ。
その代り、金運には恵まれなくなる。
それが、不幸だって!
どうして、そうなるのかな?
この小説を読んでいる貴方!
私を信仰したとするじゃない?
もう、どんな病気にも掛からないのよ、 癌にもならないし、マスクしないでも伝染病に絶対に掛からない、男でも女でも貴方が憧れているアイドル、同級生誰とでも恋人に慣れて幸せになれるのよ! そして全ての友人が親友になるし、事故にも絶対に会わないわ…ほら幸せじゃないかな。
但し、但し、一つだけ 金運これだけは最悪になる。
仕方無いじゃない、私は「女神」
そういう女神なのよ…そう「貧乏神 リアーナ」 それが女神としての正しい名前なんだから。
だけど、勘違いしないで、人間を本当に不幸にするのは「疫病神」
私は「金運」を奪う代わりに他の全てを与える事が出来るのよ
貧乏さえ受け入れれば、他の全てを与えることが出来る神…それが私なの。
あとがき
この話は、よく疫病神と貧乏神を間違えている人が多いので書いてみました。
この話の主人公は「貧乏神」です。
実は海外の貧乏神は美人が多く、「貧乏」以外の全ての幸せをくれる神も多いのです。
その辺りを書きかくて書いてみました。
また何処かで
石のやっさん。